(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】老視、遠視、乱視、低減した立体視、および低下したコントラスト感度を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/522 20060101AFI20231018BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231018BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20231018BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20231018BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20231018BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20231018BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61K31/522
A61P27/02
A61K31/4178
A61K31/27
A61K31/407
A61K31/439
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023515156
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 US2021048985
(87)【国際公開番号】W WO2022055796
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523079037
【氏名又は名称】イントラタス-ネバダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ナンドゥリ パドマ
(72)【発明者】
【氏名】ダイアー アーロン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA58
4C084NA05
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4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA22
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA78
4C206NA05
4C206ZA33
4C206ZC52
4C206ZC75
(57)【要約】
老視、遠視、または乱視に起因する損なわれた視力の治療のための方法および組成物ならびにコントラスト感度および立体視を強化するための方法および組成物が、開示される。通常、約0.05~10wt%のメチル化キサンチンおよび約1~10wt%の眼科用縮瞳剤を含む局所用組成物が、対象の少なくとも1つの眼瞼の外表面に適用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のメチル化キサンチンまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルと組み合わせて、損なわれた視力、低下したコントラスト感度、または低減した立体視を対象において治療する際の使用のための、眼科用縮瞳剤であって、該組合せが、該対象の少なくとも1つの眼瞼への局所適用のために製剤化される、前記眼科用縮瞳剤。
【請求項2】
ピロカルピン、カルバコール、セビメリン、またはフィゾスチグミンを含む、請求項1記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項3】
前記組合せが、1~10wt%のピロカルピン、1~3wt%のカルバコール、4~15wt%のセビメリン、または0.25~3wt%のフィゾスチグミンを含む、請求項1記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項4】
ピロカルピンを含む、請求項1記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項5】
カルバコールを含む、請求項1記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項6】
フィゾスチグミンである、請求項1記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項7】
セビメリンである、請求項1記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項8】
メチル化キサンチンが、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、およびペントキシフィリン、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩より選択される、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項9】
メチル化キサンチンがカフェインである、請求項8記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項10】
メチル化キサンチンがペントキシフィリンである、請求項8記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項11】
メチル化キサンチンがテオフィリンである、請求項8記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項12】
メチル化キサンチンが前記組合せの0.05~10wt%を構成する、請求項8記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項13】
メチル化キサンチンがカフェインである、請求項12記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項14】
メチル化キサンチンがペントキシフィリンである、請求項12記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項15】
メチル化キサンチンがテオフィリンである、請求項12記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項16】
前記組合せにより、視覚に関する少なくとも1つのパラメーターの改善がもたらされる、請求項1~15のいずれか一項記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項17】
視覚に関する少なくとも1つのパラメーターが少なくとも4時間改善される、請求項16記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項18】
視覚に関する少なくとも1つのパラメーターの改善が、改善された遠近調節、改善された遠見視力、上昇した近方視力、改善されたコントラスト感度、改善された立体視、およびそれらの組合せより選択される、請求項16または17記載の使用のための眼科用剤。
【請求項19】
前記組合せにより、眼科用縮瞳薬を含む組成物の眼への投与と比べて、眼のぼやけ、眼の不快感、眼痛、眉毛痛、霧視、光過敏性、近視、夜盲症、および遠見視力の低下からなる群より選択される少なくとも1つの有害事象の、より低い発生率がもたらされる、請求項1~18のいずれか一項記載の使用のための眼科用縮瞳剤。
【請求項20】
損なわれた視力が、遠視、老視、または乱視である、請求項1~19のいずれか一項記載の使用のための眼科用剤。
【請求項21】
眼科用縮瞳剤と組み合わせてメチル化キサンチンを含む、老視、遠視、乱視、低下したコントラスト感度、または低減した立体視を対象において治療するための組成物であって、該組合せが、該対象の眼瞼への局所適用のために製剤化される、前記組成物。
【請求項22】
治療することにより、眼に適用された場合の前記眼科用縮瞳剤の使用に関連する少なくとも1つの有害事象の発生率の低下がもたらされ、該有害事象が、眼のぼやけ、眼の不快感、眼痛、眉毛痛、霧視、光過敏性、縮瞳、近視、夜盲症、および遠見視力の低下からなる群より選択される、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記組合せにより、視覚に関する少なくとも1つのパラメーターの改善がもたらされる、請求項21記載の組成物。
【請求項24】
視覚に関する少なくとも1つのパラメーターの前記改善が、縮瞳および誘発近視の実質的非存在下で起こる、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
メチル化キサンチンが、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、およびペントキシフィリン、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群より選択される、請求項21記載の使用のための組成物。
【請求項26】
1~10wt%のピロカルピン、1~3wt%のカルバコール、4~15wt%のセビメリン、または0.25~3wt%のフィゾスチグミンを含む、請求項21記載の組成物。
【請求項27】
メチル化キサンチンが、前記組成物の0.05~10wt%を構成する、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
メチル化キサンチンがカフェインを含み、前記眼科用縮瞳剤がカルバコールを含む、請求項21~27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
メチル化キサンチンがカフェインを含み、前記眼科用縮瞳剤がピロカルピンを含む、請求項21~27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
メチル化キサンチンがペントキシフィリンであり、前記眼科用縮瞳剤がカルバコールである、請求項21~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項31】
メチル化キサンチンがペントキシフィリンであり、前記眼科用縮瞳剤がピロカルピンである、請求項21~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【請求項32】
メチル化キサンチンがペントキシフィリンであり、前記眼科用縮瞳剤がフィゾスチグミンである、請求項21~27のいずれか一項記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、老視、遠視、または乱視が原因で損なわれた視力の治療のための方法および組成物、ならびにコントラスト感度および立体視を強化するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
老視は、他の点では健常な眼における視覚能力障害の主要原因である。これは、眼の天然水晶体が徐々に肥厚し、かつ柔軟性が失われる、加齢に伴う一連の変化である。加齢に伴うこれらの変化は、水晶体中のタンパク質内で起こり、それによって、時間とともに水晶体が硬くなり弾性が低くなる。加齢に伴う変化はまた、水晶体の周囲の筋線維においても起こる。弾性が低い場合、眼が近くの物体に焦点を合わせることが困難になる。
【0003】
若者の適切に機能している眼は、近距離で見ることができ、これは、加齢とともに劣化する能力である。通常、老視は、人間が年を取るにつれて発症し、遠近調節の自然に起こる進行的低減に関連している。老視眼は、近距離の物体に迅速かつ容易に焦点を合わせる能力を失う。
【0004】
老視に対する最も一般的な治療は、医師の処方箋なしで購入できる老眼鏡の使用である。老眼鏡を用いると、眼は、近くの物体に焦点を合わせ、明瞭な画像を維持することができるようになる。このアプローチは、遠視または遠眼を治療するアプローチと同様である。
【0005】
例えば、モノビジョン(一方の眼を遠方視力について矯正し、他方の眼を近方視力について矯正する)矯正または二重焦点レンズもしくは多焦点レンズのいずれかを用いての左右両側の矯正に依拠することによる、コンタクトレンズおよび眼内レンズ(IOL)もまた、老視を治療するために使用されている。レーザーアブレーションもまた、老視を治療するために使用されている。これらの手法は、思い切った処置(手術、レーザーアブレーションなど)を用いて長期的目的のために問題を修正しようとするものであるか、または矯正用レンズを装着することを要する。
【0006】
遠視または遠眼は、遠方の物体は明瞭に見えるが近くの物体がぼやける場合がある、一般的な視覚病態である。遠眼の程度は、眼が焦点を合わせる能力に影響を与える。重度の遠眼の人は、近くの物体と遠くの物体の両方に対して霧視を示すのに対し、軽度の遠眼の人は、通常、遠方に対しては霧視を示し、近い物体には重度の霧視を示す。
【0007】
たいていの場合、遠視は、出生時から発現しており、遺伝する傾向がある。遠視は、眼鏡またはコンタクトレンズを用いて容易に矯正される。別の治療選択肢は手術である。
【0008】
乱視は屈折異常の一種であり、乱視では、眼が網膜上に光を均等に集めず、その結果、距離にかかわらず、歪んで見えるかまたはぼやけて見える。他の症状には、眼精疲労、頭痛、および夜間運転が困難であることが含まれ得る。乱視が幼少期に起こる場合、その後、弱視を招く可能性がある。乱視の原因は明らかではないが、遺伝因子にある程度関係していると考えられている。背景にあるメカニズムには、角膜の不規則な湾曲または眼の水晶体の異常が含まれる。
【0009】
乱視は、眼鏡、コンタクトレンズ、または屈折矯正手術を用いて矯正され得る。眼鏡が最も容易で安全であるが、コンタクトレンズの方が、より広い視野を与えることができる。屈折矯正手術では、眼の形状を恒久的に変えることにより、矯正用レンズを装着する必要を完全になくすことができるが、あらゆる待期的手術と同様に、非侵襲性の選択肢よりも大きなリスクと費用の両方を伴う。
【0010】
コントラスト感度は、物体を背景と区別する視覚的能力である;これは、視力と同じではない。不十分なコントラスト感度は、白内障、糖尿病性網膜症、および多くの網膜障害を含む多くの視覚障害において多く認められる。これらの患者のコントラスト感度は、通常、高コントラストフィルターの使用、照明の改善、およびよりはっきりした高コントラスト材料の使用によって処置される。白内障患者では、白内障の外科的切除によってコントラスト感度が有意に低下する可能性がある。
【0011】
立体視とは、正常に発達した両眼視を有する個体によって、2つの眼に由来する視覚情報に基づいて得られる、奥行きおよび三次元構造の知覚を意味する。立体視覚の低下の最も一般的な原因は、屈折異常に起因する、近方視力または遠見視力の低下である。片方の眼が視覚皮質への十分な情報を作り出せない斜視(偏位眼)または弱視に、および不同視に起因する、両眼視の衰えは、立体視についてのそれほど一般的ではない他の原因である。
【0012】
明所視は、十分に明るい条件(輝度レベル10~108cd/m2)下での眼の視覚である。ヒトおよび多くの他の動物において、明所視は、錐体細胞によって媒介される色知覚、ならびに暗所視によって得られるよりも有意に高い視力および時間分解能を与える。ほとんどの高齢者において、明順応の空間コントラスト感度は低下する。70代の成人は、高い空間周波数を感知するために、20代の成人と比べて約3倍のコントラストを必要とする。
【0013】
暗所視は、低光量レベル(輝度レベル10-6~10-3.5cd/m2)下での眼の視覚である。ヒトの眼において、錐体細胞は、可視光が少ない状況では機能しない。暗所視は、もっぱら桿体細胞によってもたらされ、桿体細胞は、498nm前後の波長(緑~青)に感受性が最も高く、約640nmより長い波長(赤みを帯びたオレンジ色)には非感受性である。この状態はプルキンエ効果と呼ばれる。
【0014】
視覚適応は、明所視下の方がはるかに速く、例えば、明所視の場合は5分で起こり得るが、明順応から暗順応への移行は30分かかり得る。
【0015】
薄明視は、外部の光量と、桿体系を完全に作動させるためのエネルギーを供給する生化学的プロセスの速度との両方に左右される。薄明視における問題は、明所視から暗所視への病理学的移行に関係しており、臨床的には夜盲症として現れ得る。
【0016】
現在のところ、老視、遠視、乱視、または不十分なコントラスト感度もしくは低減した立体視を矯正するために利用可能な承認された薬学的療法はない。したがって、手術を受けることも、矯正眼鏡もしくは矯正コンタクトレンズを使用することも、視力不足に対応するために環境を変えることも望まない患者を対象としてこれらの視覚病態を改善または緩和するニーズが、依然としてある。
【発明の概要】
【0017】
開示の概要
本開示の1つの局面において、その必要がある対象における、損なわれた視力、低下したコントラスト感度、または低減した立体視を治療する方法であって、メチル化キサンチンおよびコリン作動薬を含む局所用組成物を該対象の少なくとも1つの眼瞼に適用する段階を含み、視力、コントラスト感度、立体視、またはそれらの組合せが改善される、方法が提供される。特定の態様において、損なわれた視力は、老視、遠視、または乱視である。
【0018】
この局面の態様において、損なわれた視力、コントラスト感度、または低減した立体視の治療は、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、またはそれより長い時間、視覚に関する少なくとも1つのパラメーターの改善をもたらす。特定の態様において、組成物は、毎日少なくとも1回または1日に少なくとも2回、少なくとも1つの眼瞼に適用される。特定の態様において、組成物は、対象の両眼のうちの少なくとも1つの眼瞼に適用される。
【0019】
特定の態様において、メチル化キサンチンは、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、ペントキシフィリン、または薬学的に許容されるその塩である。特定の態様において、コリン作動薬は、ピロカルピン、カルバコール、セビメリン、もしくはフィゾスチグミン、または薬学的に許容されるその塩である。特定の態様において、組成物は、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、ペントキシフィリン、および薬学的に許容されるそれらの塩より選択されるメチル化キサンチン、ならびにピロカルピン、カルバコール、セビメリン、フィゾスチグミン、および薬学的に許容されるそれらの塩より選択されるコリン作動薬を含む。特定の態様において、眼瞼に適用される組成物は、0.05~10wt%のメチル化キサンチンを含む。特定の態様において、組成物は、約0.05~1wt%のメチル化キサンチン、例えばカフェイン、および約3~8wt%のピロカルピン、1~3wt%のカルバコール、0.25~3wt%のフィゾスチグミン、または4~15wt%のセビメリンを含む。
【0020】
本開示の別の局面において、老視、遠視、乱視、低下したコントラスト感度、または低減した立体視を治療し、かつ眼科用縮瞳剤を対象の眼に適用することに関連する少なくとも1つの有害事象の発生率を低下させるための方法であって、眼科用縮瞳剤と組み合わせて0.05~10wt%メチル化キサンチンを含む局所用組成物を、該対象の眼瞼の外側に適用する段階を含む、方法が提供される。特定の態様において、1つまたは複数の有害作用は、毛様体の痙攣、毛様体に起因する眉毛痛、毛様体に起因する頭痛、眼の発赤、霧視、遠見視力の低下、近視、縮瞳、眼のぼやけ、眼の不快感、眼痛、遠方視力の低下、および光過敏性からなる群より選択される。特定の態様において、視力、コントラスト感度、および立体視からなる群より選択される、視覚に関する少なくとも1つのパラメーターの改善は、縮瞳および近視の実質的非存在下で起こる。
【0021】
この局面の特定の態様において、縮瞳薬は、カルバコール、ピロカルピン、フィゾスチグミン、およびセビメリン、または薬学的に許容されるそれらの塩より選択される。特定の態様において、メチル化キサンチンは、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、およびペントキシフィリン、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩より選択される。
【0022】
特定の態様において、改善される、視覚に関する少なくとも1つのパラメーターは、増大した遠近調節、上昇した遠見視力、上昇した近方視力、上昇したコントラスト感度、増大した立体視、またはそれらの組合せより選択される。
【0023】
本開示のこの局面の特定の態様において、組成物は、約3~8wt%のピロカルピン、1~3wt%のカルバコール、0.25~3wt%のフィゾスチグミン、または4~15wt%のセビメリンを含む。特定の態様において、組成物は、約0.05~1wt%のカフェインまたはペントキシフィリンを含む。
【0024】
特定の態様において、組成物は、約0.05~1wt%のカフェイン、テオフィリン、またはペントキシフィリン、および約3~8wt%のピロカルピンを含む。
【0025】
特定の態様において、組成物は、約0.05~1wt%のカフェイン、テオフィリン、またはペントキシフィリン、および約1~3wt%のカルバコールを含む。
【0026】
特定の態様において、組成物は、約0.05~1wt%のカフェイン、テオフィリン、またはペントキシフィリン、および約0.25~1wt%のフィゾスチグミンを含む。
【0027】
本開示の別の局面において、メチル化キサンチンおよび眼科用縮瞳剤を含む、乱視、老視、遠視、低下したコントラスト感度、または低減した立体視の治療のための局所用組成物であって、その必要がある対象の少なくとも1つの眼瞼の外表面に該組成物を適用することが、視覚に関する、乱視、老視、遠視、または低下したコントラスト感度の影響をそれぞれ受ける少なくとも1つのパラメーターの改善を、実質的な縮瞳も近視も引き起こすことなくもたらす、該局所用組成物が提供される。特定の態様において、メチル化キサンチンは、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、テオブロミン、アミノフィリン、およびペントキシフィリン、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩より選択される。特定の態様において、眼科用縮瞳剤は、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン、またはセビメリンである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の詳細な説明
定義
他に規定されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、主題が関連する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0029】
本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において特に規定がない限り、複数の指示対象を含む。
【0030】
「視力」という用語は、視覚の敏感さまたは鋭敏さを意味し、眼内の網膜焦点の敏感さによって決まり、定められた基準に従って所与の距離から文字または数字を識別する能力として測定される。
【0031】
本明細書において使用される「損なわれた視力」とは、矯正用の眼鏡もコンタクトレンズも用いずに見る能力が低下していることを意味する。「視力損傷」または「損なわれた視力」とは、最高矯正視力が20/40または20/60より悪いことである。本明細書において使用される場合、「損なわれた視力」という用語は、盲目も法的盲も意味しない。後者は、20/200またはそれより悪い視力である。
【0032】
「治療的有効量」という用語は、老視、遠視、乱視、低下したコントラスト感度、もしくは低減した立体視を必要に応じて治療するためまたは少なくとも1つの視覚パラメーターを改善するために個体に投与された場合に有効である量を意味する。治療的有効量の組成物が各病態を対象として個体に投与された場合の、老視、遠視、乱視、低下したコントラスト感度、または低減した立体視の治療における視覚改善および/または成功の程度は、本明細書において説明されるように、当業者には容易に特定可能であろう。
【0033】
「近視」という用語は、眼に見える像の焦点が網膜より前で合ってしまい、その結果、遠くの物体を見ることに特に欠陥が生じて近眼を引き起こしている、眼の病態を意味する。
【0034】
本明細書において使用される「老視」という用語は、眼の水晶体の弾性が失われることにより遠近調節に欠陥が生じ、近方視力のために敏感に焦点を合わせることができなくなっている、視覚的病態を意味する。老視は、遠くから近くに焦点を再び合わせる能力が加齢に伴って進行的に低下する状態であり、中間および近くを読む役割を果たす機能の低下をもたらす。通常、老視は、特に中年で起こる。
【0035】
本明細書において使用される「遠視」または「遠眼」という用語は、入射光線が焦点の合った画像に収束する前に網膜に当たり、その結果、近傍の物体をはっきりと見ることが困難である、眼の病態を意味する。老視と遠視の主要な違いは、各病態の原因である。高齢化が老視を招くのに対し、遠視には遺伝要素がある。遠視は出生時から認められ、視覚補正メカニズムは年齢とともに悪化して、霧視をもたらす。遠視は年齢に大きく影響されないことが多いのに対し、老視は、40歳を過ぎたほとんどの人に発症する。
【0036】
本明細書において使用される「乱視」という用語は、眼の1つまたは複数の屈折面、通常は角膜の不均等な湾曲が、光線が網膜上の単一点にはっきりと焦点を合わせるのを妨げ、その結果、霧視をもたらす、視覚的異常を意味する。
【0037】
本明細書において使用される「コントラスト感度」という用語は、濃淡および模様の微妙な違いを見付ける能力である。コントラスト感度は、はっきりした輪郭を持たない物体を見付け、それらの背景から物体または細部を見分ける際に重要である。コントラスト感度は、見ることができるために、模様のコントラストがどれくらい異ならなければならないかという指標であり、一方、「視力」は、見ることができるために、物体がどれくらい大きくなければならないかを示す。コントラスト感度は、視覚の質に影響する重要な因子として次第に認識されつつある。正常な視力を有する人達において、視力とコントラスト感度のどちらも、広範囲にばらついている。視力では、0.8(20/25、6/9)が、低い正常値であり、最も高い正常値は3倍の大きさ、すなわち2.5(20/8、6/2.5)である。様々なレベルのコントラスト減少についての基準には、0.48logコントラスト未満である甚大な減少、0.52~1.00である重度の減少、1.04~1.48である中度の減少が含まれ、60歳を超える個体にとっての正常値は1.52~1.76であり、60歳およびそれより若い個体にとっての正常値は1.72~1.92logコントラストである。
【0038】
本明細書において使用される「低減したコントラスト感度」または「不十分なコントラスト感度」とは、「正常な視覚」を有する対象と比べてコントラスト感度が小さいことを意味する。コントラスト感度は、例えば、ほとんどの臨床研究調査のために使用される、ペリーロブソンコントラストチャートを用いて測定することができる。ペリーロブソンチャートは、三つ組として文字を示す。各三つ組は、0.08log単位ずつ薄くなる。様々なレベルのコントラスト減少についての基準では、患者が6~7列(12~14個の三つ組)を読むことができる場合、「正常」である。中度のコントラスト減少の基準は、患者が4~5列しか読むことができないことである。重度の減少の場合、患者は2~3列しか読むことができず、甚大なコントラスト減少の場合、患者は1列またはそれ未満しか読むことができない。
【0039】
ペリーロブソンチャートの代わりとなる検査は、Marsレターコントラスト感度検査である。Mars検査では、3つの近用チャートからなるセットを使用する。各文字は0.04log単位ずつ薄くなり、ペリーロブソンチャートを用いた場合に可能であるよりも正確にコントラスト減少を測定することが可能になる。見ることができる文字の数に基づいて、患者にlogコントラストスコアが与えられる。1メートルの検査距離を用いるペリーロブソン検査とは異なり、Mars検査は50センチメートルの試験距離を用いる。様々なレベルのコントラスト減少についての基準には、0.48logコントラスト未満である甚大な減少、0.52~1.00である重度の減少、1.04~1.48である中度の減少が含まれ、60歳を超える個体にとっての正常値は1.52~1.76であり、60歳およびそれより若い個体にとっての正常値は1.72~1.92logコントラストである。
【0040】
「持続放出」という用語は、本明細書においてその通常の意味で使用され、本明細書において開示される組成物が、長期間にわたって薬物をゆっくりと放出するように設計されていることを意味する。
【0041】
「裸眼近見視力」(「UNVA」)という用語は、いかなる視覚補助器(例えば眼鏡またはコンタクトレンズ)も用いずに、身体から腕を伸ばした距離内に含まれる(例えば眼から33~41cm離れた位置の)物体の細部を見る、人間の能力を意味する。同様に、「距離補正近見視力」(「DCNVA」)という用語は、遠方視力の問題を修正する眼鏡またはコンタクトレンズなどの視覚補助器を用いて、身体から腕を伸ばした距離内に含まれる(例えば眼から33~41cm離れた位置の)物体の細部を見る人間の能力を意味するために、本明細書において使用される。「近見視力」、「近方の視力」、および「近方視力」という用語は同義的に使用され得る。
【0042】
「裸眼遠見視力」(「UDVA」)という用語は、いかなる視覚補助器(例えば眼鏡またはコンタクトレンズ)も用いずに、身体から腕を伸ばした距離より離れた、例えば眼から4メートル超離れた物体の細部を見る、人間の能力を意味する。「遠見視力」、「遠方の視力」、および「遠方視力」という用語は同義的に使用され得る。
【0043】
本明細書において使用される「快適性スコア」という用語は、0~10の段階で疼痛感受性を評価するスコアを意味し、スコアが高いほど疼痛感受性が大きい。快適性スコアは、0(快適ではない)から4(非常に快適である)までである。快適性スコアは、快適レベルを測定するために評価された。快適レベルは、標準のコリン作動性アゴニストを用いると、疼痛を引き起こす避けられない調節痙攣が原因で急激に低下することが当技術分野において公知である。毛様体筋痙攣および縮瞳に起因する不快感および疼痛は、通常、眼への縮瞳薬の適用から30分以内に、眼痛、眼周囲の疼痛、頭痛、ピリピリ感、灼熱感、および/または発赤を引き起こす。
【0044】
「視覚明瞭性スコア」という用語は、対象が自身の視覚の全般的な質に対して持つ印象を意味する。明瞭性スコアの範囲は、0(悪い)~4(大変良い)である。コリン作動薬療法を用いる現在の技術による全体的視覚の明瞭性は、毛様体筋痙攣によって遠方視力がぼやける原因となり、一定の距離で起こる近視性の近方視力をもたらす。結果として、視覚経験の全体的明瞭性は低下する。
【0045】
本明細書において使用される「屈折力」という用語は、離れた位置から眼が焦点を合わせる力の測定値を意味する。屈折は、ヒトの眼の内部で起こる光の屈曲を意味する。屈折異常には、近眼(近視)、遠眼(遠視)、および乱視が含まれる。
【0046】
「中間距離の視力」、「中間の視力」、および「中間視力」という用語は、近方の視覚範囲と遠方の視覚範囲の間の距離にある物体の細部を見る人間の能力を意味するために使用され得る。このような距離範囲は、腕の長さの距離よりおおよそ遠い(眼から約40~60cm離れた)距離と眼から約4メートル未満の距離との間の距離とみなされている。「距離補正中間視力」(「DCIVA」)という用語は、遠方視力の問題を修正する眼鏡またはコンタクトレンズなどの視覚補助器を用いて、中間距離に位置する物体の細部を見る人間の能力を意味するために使用され得る。
【0047】
「視覚パラメーター」または「視覚のパラメーター」という用語は、測定することができ、かつ本明細書において説明される組成物および方法を用いて改善することが可能である、患者の視覚についての任意の特徴を意味する。本明細書において説明される様々な態様において改善され得る視覚パラメーターには、近方の視力、中間視力、遠見視力、夜間視力、昼間視力、光学収差(例えば、グレア、光散乱)、コントラスト感度、立体視、および調節不全が含まれるが、それらに限定されるわけではない。限定されるわけではないが、近見視力、中間視力、および/または遠見視力、コントラスト感度、立体視、ならびにそれらの組合せを含む、視覚改善または視覚的改善は、例えば、投薬後の任意の時点において正確に読み取られる視覚検査チャート上の文字の数が、ベースライン(すなわち処置前)から増えることに反映され得る。夜間視力の改善は、薄暗い照明または暗い照明のもとでの(例えば、薄明視条件または暗所視条件下での)患者の視覚的改善に反映され得る。昼間視力の改善は、日照時間内に存在する明るい光または日光のもとでの(例えば明所視条件下での)患者の視覚的改善に反映され得る。立体視が改善されると、三次元視覚または深径覚の改善が実現し得る。本明細書において説明される組成物および方法を用いる視覚改善はまた、老眼鏡、水晶体を改変する医用薬剤、および眼内レンズ(IOL)を含む老視の外科的選択肢を非限定的に含む、他の視覚補助器および補助装置と組み合わせた場合またはそれらを使用する場合にも、実現することができる。
【0048】
本明細書において使用される「遠近調節」という用語は、眼が遠くの像から近くの像に焦点を変えるメカニズムを意味する。遠近調節は、眼からの物体の距離が変動するのに合わせて、その物体の焦点を網膜上に保つための、眼のレンズの調節である。遠近調節は、毛様体筋が小帯線維に働きかけて起こる水晶体の形状変化によってもたらされる。水晶体は、小児期および若年成人期に最も柔軟であり、形状を変える能力を加齢に伴って次第に失い、結果として老視が起こる。
【0049】
「縮瞳」という用語は、本明細書において、瞳孔の過剰な収縮を意味するために使用される。縮瞳は、光の増加に対する正常な応答の結果として起こり得るか、または縮瞳薬、例えば、コリン作動薬などの特定の薬物もしくは病理学的状態が原因で起こり得る。
【0050】
本明細書において同義的に使用される「縮瞳薬」もしくは「縮瞳薬(miotic)」または「眼科用縮瞳剤」もしくは「眼科用縮瞳薬(ophthalmic miotic)」という用語は、視覚病態を治療するために使用され、眼球に直接的に適用された場合に眼の瞳孔を収縮させる、任意の薬物または薬学的有効作用物質(API)を意味する。縮瞳薬(miotic)は、ピロカルピン、セビメリン、およびカルバコールなどの、直接的なムスカリン様作用を有する副交感神経様作用(コリン作動性の刺激を与える)薬、またはフィゾスチグミン、ネオスチグミン、エコチオファート、およびデメカリウムなどの、アセチルコリンエステラーゼの作用を妨害し、それによってアセチルコリンにその作用を起こさせる、抗コリンエステラーゼ薬のいずれかである。いくつかの縮瞳薬(miotic)は、α-アドレナリン作動性受容体またはβ-アドレナリン作動性受容体を妨害することによって作用する。例えば、ダピプラゾールおよびチモキサミンはα-アドレナリン作動性受容体を妨害し、プロプラノロールはβ-アドレナリン作動性受容体を妨害する。眼球に直接的に適用された場合、眼科用縮瞳剤は、しばしば、望ましくなく痛みを伴う副作用、例えば、調節痙攣、眼痛、頭痛、霧視、および明るさが少ない光または暗い環境光のもとで機能する能力の低下を引き起こす。
【0051】
本明細書において使用される場合、「コリン作動薬」または「コリン作動性アゴニスト」という用語は、神経伝達物質であるアセチルコリン、すなわち副交感神経系内の神経インパルスの主要な伝達物質、またはブチリルコリンの作用を促進または模倣する化合物を意味する。ある物質が、アセチルコリンもしくはブチリルコリンを生成、変更、もしくは放出するか(「間接作用」)、または身体のアセチルコリン受容体型(「直接作用」)もしくはブチリルコリン受容体型(「直接作用」)のうちの1つもしくは複数においてそれらの挙動を模倣することができる場合、該物質はコリン作動性である。このような模倣物は、副交感神経様作用薬またはコリン様作用薬と呼ばれ、本明細書において使用される「コリン作動薬」のカテゴリーに含まれる。「コリン作動薬」という用語はまた、このような化合物の塩およびエステルも意味する。本明細書において開示される組成物に含まれるコリン作動薬の非限定的な例には、眼科用縮瞳剤、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン、およびセビメリンが含まれる。ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン、およびセビメリンに関して、「コリン作動薬」、「コリン作動性アゴニスト」、「縮瞳薬」、「縮瞳薬(miotic)」、「眼科用縮瞳剤」、および「眼科用縮瞳薬(ophthalmic miotic)」という用語は、本明細書において同義的に使用される。
【0052】
本明細書において使用される場合、「メチル化キサンチン」または「メチルキサンチン」という用語は、植物によっても動物によっても天然に産生されるプリン塩基キサンチンに由来する薬物クラスに含まれる化合物を意味する。メチルキサンチンの非限定的な例には、テオフィリン、ダイフィリン、カフェイン、テオブロミン、アミノフィリン、およびペントキシフィリンが含まれる。
【0053】
本明細書において使用される「眼瞼」という用語は、各眼を覆っている保護的な薄い皮膚でできた動かせる2つのひだのうちの1つを意味し、その縁に沿って睫毛ならびに睫毛腺およびマイボーム腺がある。上眼瞼と下眼瞼は、瞼裂で隔てられている。老視、遠視、乱視、不十分なコントラスト感度、または低減した立体視を治療するための本発明の方法の各態様において、治療物質が、必要に応じて、片眼または両眼の上眼瞼、下眼瞼、または上眼瞼と下眼瞼の両方の皮膚外表面に適用されることが理解される。
【0054】
本発明者らは、眼瞼の外表面に投与するための薬物含有局所用組成物にメチル化キサンチンを添加すると、眼内への薬物の持続放出および浸透促進が実現することを以前に発見した。(その全体が参照により本明細書に組み入れられるU.S.9.034,830)。1つの特定の理論に縛り付けられることを望むものではないが、メチル化キサンチン、例えばカフェインは、組成物中に含まれる活性物質に対する可溶化剤の役割を果たして、該活性物質の生物学的利用能を高めることができると考えられている。また、メチル化キサンチンが、まばたきする筋肉に作用して、小規模で局所的な不随意筋収縮(筋れん縮)を引き起こし、この収縮が、組成物内に含まれる薬物を眼の眼瞼および循環系の中に送り込むとも考えられている。
【0055】
本発明者らは、今回、メチル化キサンチンとコリン作動薬または他の縮瞳薬との組合せを含む組成物を、遠視、乱視、老視、または不十分なコントラスト感度もしくは低減した立体視などの、霧視を引き起こす視覚障害と診断されたかまたはそれらを有する個体の眼瞼に適用すると、例えば点眼薬による眼への縮瞳薬、例えばコリン作動薬の適用に関連する有害な副作用を起こすことなく、治療される病態に応じて、遠方視力、周辺視力、もしくは近方視力が改善するか、またはコントラスト感度もしくは立体視が改善することを、発見した。本開示の組成物および方法は、本開示の組成物を老視の対象の1つまたは複数の眼瞼に局所適用することにより、眼痛、頭痛、霧視、誘発近視、縮瞳、遠方視力の低下、および/または薄暗い光条件もしくは暗い光条件における視力の低下を引き起こすことなく、焦点の奥行きを改善し、かつ遠近調節をもたらすことによって、老視を治療する。本開示の組成物および方法は、例えば、近方視力を改善することによって遠視を治療し、視覚明瞭性を改善することによって乱視を治療する。本発明の組成物および方法は、コントラスト感度を高めることによって、不十分なコントラスト感度を治療する。これらの各々の眼病態の治療において、メチル化キサンチンとコリン作動薬または他の縮瞳薬との組合せを含む本開示の組成物を眼瞼に局所適用すると、縮瞳も近視も発生することなく、視覚が改善する。
【0056】
本開示の組成物および方法は、瞳孔に大きな影響を与えずに、対象が焦点を合わせる能力または遠近調節する能力に選択的に影響を与える。本開示の方法は、本発明の組成物の毛様体中への吸収をもたらす。毛様体とは、眼の内部にある輪状の組織肥厚部であり、後眼房と硝子体とを隔てている。毛様体中への吸収は、眼瞼の脈管系を介する。その結果、本発明の組成物および方法によって、眼の前房中に大量の有効成分が注入されることはない。本開示の方法および組成物は、毛様体痙攣を引き起こさず、かつ瞳孔に大きな影響をほとんどまたは全く与えずに、対象が焦点を合わせる能力に影響を及ぼす。したがって、本開示の方法および組成物は、生理学的範囲の瞳孔の大きさを維持することができる。すなわち、瞳孔の直径は、本開示の組成物を眼瞼に適用した後も、(眼の色に応じて変わる)生理学的範囲の瞳孔の大きさにとどまり、したがって、コントラスト感度の低下、もしくは夜盲症、または視力の低下が回避される。
【0057】
完全に散大した瞳孔の大きさが、典型的には4~8ミリメートルであるのに対し、収縮した瞳孔の大きさは3mm未満、典型的にはピンポイント瞳孔の大きさ、すなわち1.5~1.9mm、または2.5mm程度である。米国眼科学会によれば、瞳孔の大きさは、通常、2~8mmの範囲である。本開示の方法および組成物は、瞳孔をこの範囲内で維持するのに対し、縮瞳薬を単独で眼に適用すると、瞳孔が顕著に、例えば2.5mm未満に収縮する原因となる。
【0058】
医薬品において、コリン作動性アゴニストおよび他の縮瞳薬の使用は、副交感神経系の制御下にある任意の器官において有害作用を引き起こす性質が理由で制限されている。有害作用には、霧視、縮瞳、近視、筋痙攣および下痢、低血圧および心拍数減少、悪心および嘔吐、唾液分泌過多および発汗、息切れ、ならびに尿意頻数の増加が含まれる。例えば、眼科用点眼液におけるコリン作動性化合物ピロカルピンの現在の使用は、一般に起こったいくつかの有害事象が原因で制限されている。該有害事象には、側頭部および眼窩周囲の頭痛(すなわち、眉毛痛)が含まれ、これは、少なくともある程度、急速な毛様体筋収縮、毛様体痙攣、縮瞳に起因する夜間視力および薄明視力の減退、遠方視力の減退、コントラスト感度の減退、ならびに近視が原因でおこり得る。ピロカルピンはまた、虹彩括約筋上に存在するムスカリン性コリン受容体にも作用して筋肉を収縮させて、瞳孔収縮(すなわち縮瞳)を引き起こす(Levin et al., Adler's Physiology of the Eye, 11th edition by Saunders Elsevier (Edinburgh), pp. 56, 57, and 509-510)。これらの有害作用が原因で、ピロカルピンは、点眼薬中で低用量、例えば1.0~2%w/vでのみ使用され、遠方視力の低下および近視を理由として片眼にのみ適用される。同様に、緑内障を治療するために液剤(点眼薬)として眼に適用されるコリン様作用化合物であるカルバコールも、夜間視力の低下を引き起こし、低投与量、すなわち約1.0%でのみ適用される。有害な副作用を制限するために低投与量が必要とされることから、これらの薬物の任意の有益な作用は、持続期間が短く、例えば4時間またはそれ未満であり、1日当たり数回の適用を必要とし、このため、有害作用がさらに悪くなる。
【0059】
ピロカルピン点眼薬の使用に伴ってしばしば観察される有害な副作用を抑制するために、多くの場合、薬物をコリン作動性アンタゴニストと組み合わせる。しかし、このような組合せは、しばしば、ピロカルピンの使用に関係する副作用に加えて、新たな副作用を伴う。
【0060】
本開示の組成物および方法を使用すると、コリン作動性化合物または他の縮瞳薬、例えば、ピロカルピン、フィゾスチグミン、もしくはカルバコールを含む点眼薬の使用に伴って観察される有害作用、例えば、縮瞳もしくは近視が、なくなるか、または少なくとも有意に低減する。さらに、本開示の組成物は眼球に直接的にではなく眼瞼に適用するために製剤化されるため、その中に含まれるコリン作動薬または他の縮瞳薬は、眼瞼中および眼瞼の全域ならびに眼中にゆっくりと放出されて、高投与量の活性成分の使用、およびそれゆえ、視覚に対して長く持続する有益な作用が実現する。
【0061】
本開示の1つの局面において、老視、乱視、遠視、または不十分もしくは低減したコントラスト感度、または低減した立体視を治療するための、眼瞼に適用するための眼科用局所用組成物が提供される。本明細書において説明される態様において、治療的量のコリン作動薬または他の縮瞳薬を有効量のメチル化キサンチンと組み合わせて含む組成物が、老視もしくは遠視の対象、もしくは乱視の対象、またはコントラスト感度が不十分もしくは立体視が不十分な対象の1つまたは複数の眼瞼に、それぞれの眼病態を治療するために局所的に適用される。
【0062】
本明細書において説明される組成物は、対象の眼瞼への局所適用のために製剤化される。本明細書において使われる「局所的」という用語は、本明細書において説明されるように、適切な薬学的担体中に混和され1つまたは複数の眼瞼の外表面に適用される組成物の、使用に関する。該組成物は、必要に応じて、片方または両方の眼の眼瞼の外表面に適用され得る。典型的な局所用組成物は、該組成物が眼瞼の皮膚外表面に直接的に適用される、薬学的に許容される形態である。このような薬学的形態の非限定的な例には、軟膏剤、リニメント剤、クリーム剤、洗髪剤、ローション剤、パスタ剤、ゼリー剤、スプレー剤、噴霧剤が含まれる。これらの組成物はまた、貼付剤または含浸させた包帯を介して適用することもできる。「軟膏剤」という用語は、油性、水溶性、およびエマルジョン型の基剤、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ならびにこれらの混合物を有する製剤を含む。
【0063】
本開示の様々な組成物および方法において使用され得るメチル化キサンチンには、例えば、眼瞼または眼瞼縁への局所適用のための、カフェイン、テオフィリン、ダイフィリン、またはアミノフィリンが含まれる。
【0064】
本明細書において説明される組成物に含めるために有用であるコリン作動薬には、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン、セビメリン、ネオスチグミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ドネペジル、ガランタミン、タクリン、リバスチグミン、メトリホナート、ピリドスチグミン、アンベノニウム、デマルカリウム、セビメリン、エドロホニウム、フペルジンA、ラドスチギル、ジイソプロピルフルオロホスファート(Floropryl)、ヨウ化ホスホリン(エコチオファート)、およびフィゾスチギミン(エゼリン)、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩およびエステルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本開示のあらゆる局面の特定の態様において、コリン作動薬は、ピロカルピン、フィゾスチグミン、カルバコール、セビメリン、または薬学的に許容されるその塩もしくはエステル、またはそれらの組合せである。
【0065】
通常、本開示の組成物は、組成物の約0.1~約10wt%である治療的有効量で、1種または複数種のコリン作動薬または他の縮瞳剤を含む。本明細書において説明される組成物は、点眼薬の場合のように眼球に直接的にではなく、眼瞼に適用されるため、より多量の活性物質、例えばコリン作動薬を組成物中に含め、それによって、これらの作用物質を眼内で直接的に使用した場合に認められる通常の副作用を起こすことなく、該作用物質の使用に伴って観察される視覚への有益な作用をさらに良くすることができる。例として、例えば眼瞼に適用される、1~10wt%もしくは3~8wt%もしくは4~6wt%もしくは6~8wt%の量のコリン作動薬、例えばピロカルピン、または1~3wt%もしくは1.5~2.5wt%もしくは2~3wt%の量のカルバコール、または0.25~3wt%もしくは0.5~2.5wt%もしくは1~2wt%の量のフィゾスチグミン、または4~15wt%、4~12wt%、もしくは4~10wt%のセビメリンの適用によって、例えば、視覚明瞭性および近方視力、ならびに/またはコントラスト感度および/または立体視が改善し、その際、縮瞳剤を単独で眼に適用した場合に観察される、遠方視力への悪影響、縮瞳、もしくは近視が、いずれも起こらないか、または少なくとも有意に低減している。治療を必要とする対象の眼瞼への本開示の組成物の適用は、眼のぼやけ、眼の不快感、眼痛、眉毛痛、霧視、光過敏性、夜盲症、ピンホール視覚、コントラスト感度の低下、近視、および遠見視力の低減などの少なくとも1つまたは複数の有害事象の、ピロカルピン、カルバコール、フィジオスチグミン、または他のコリン作動薬を含む点眼液の投与と比べて、より低い発生率をもたらす。さらに、本明細書において説明される組成物の眼瞼への適用は、該組成物中にメチル化キサンチンを含むことにより、コリン作動薬または縮瞳剤の眼内への持続放出をもたらす。メチル化キサンチンは、持続的な期間にわたって、まばたきする筋肉に小規模で局所的な不随意筋収縮(筋れん縮)を引き起こして、持続的な期間にわたって、例えば、適用後少なくとも4時間および少なくとも10時間まで、または少なくとも12時間もしくは24時間まで、眼内に活性成分を送り込む。本明細書において説明される態様において、組成物は、必要に応じて毎日1回、毎日2回、またはさらに多い頻度で、投与され得る。特定の態様において、組成物は、毎日1回投与される。投与される場合、組成物は、丸一日に十分な作用持続期間を有し得る。いくつかの態様において、組成物は、少なくとも4時間、例えば4時間を超える、例えば、少なくとも6時間、少なくとも8時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、または最長24時間、ならびに間にあるすべての時点の、作用持続期間を有し得る。いくつかの態様は、12時間、またはさらに24時間の作用持続期間を有する組成物を提供することができる。作用持続期間とは、投与された組成物が、老視、遠視、乱視、低下したコントラスト感度、または低減した立体視に関連している少なくとも1つの視覚パラメーターに対して良い効果を有している持続期間を意味する。本開示のすべての局面の特定の態様において、本開示の組成物は、1~10wt%、例えば、2~9wt%、3~9wt%、4~9wt%、5~9wt%、もしくは6~9wt%、またはこれらの間の任意の量の、コリン作動薬、例えば、ピロカルピン、フィゾスチグミン、セビメリン、もしくはカルバコールのうちのいずれか1つまたは薬学的に許容されるそれらの塩もしくはエステルを、0.05~10wt%のメチル化キサンチン、例えば、カフェイン、テオフィリン、ペントキシフィリン、アミノフィリン、またはテオブロミンと組み合わせて含むことができる。本開示の組成物の他の例には、0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、または0.5wt%のカフェインまたは他のメチル化キサンチンと組み合わせて、6~8wt%のピロカルピン、もしくは1~3wt%のカルバコール、もしくは0.25~3wt%のフィゾスチグミン、もしくは4~15%のセビメリン(またはこれらのコリン作動薬の薬学的に許容される塩もしくはエステル)を含む組成物が含まれる。いくつかの態様において、本明細書において説明される組成物中に含まれるコリン作動薬または縮瞳剤のいずれかと共に使用されるメチル化キサンチンの量は、0.05~2.5wt%、例えば、0.06wt%、0.07wt%、0.08wt%、0.09wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、0.9wt%、1.0wt%、1.1wt%、1.2wt%、.13wt%、1.4wt%、1.5wt%、1.6wt%、1.7wt%、1.8wt%、1.9wt%、2.0wt%、2.1wt%、2.2wt%、2.3wt%、2.4wt%、または2.5wt%である。特定の態様において、本開示の組成物中のカフェインの量は、0.2~0.5wt%、例えば0.32wt%である。他の態様において、ペントキシフィリンの量は、0.05~1wt%である。いくつかの態様において、本明細書において開示される組成物中に含まれるテオフィリンの量は、0.1~0.5wt%である。
【0066】
本開示の組成物には、以下を含む組成物が含まれるが、それらに限定されるわけではない: 1~10wt%のピロカルピンおよび0.05~1wt%のカフェイン;1~10wt%のピロカルピンおよび0.05~1wt%のテオフィリン;1~10wt%のピロカルピンおよび0.05~1wt%のペントキシフィリン;1~3wt%のカルバコールおよび0.05~1wt%のカフェイン;1~3wt%のカルバコールおよび0.05~1wt%のテオフィリン;1~3wt%のカルバコールおよび0.05~1wt%のペントキシフィリン;0.25~3wt%のフィゾスチグミンおよび0.05~1wt%のカフェイン;0.25~3wt%のフィゾスチグミンおよび0.05~1wt%のペントキシフィリン;0.25~3wt%のフィゾスチグミンおよび0.05~1wt%のテオフィリン;4~15%のセビメリンおよび0.05~1wt%のカフェイン;4~15wt%のセビメリンおよび0.05~1wt%のテオフィリン;4~15wt%のセビメリンおよび0.05~1wt%のペントキシフィリン。
【0067】
本明細書において説明される組成物は、水性液剤、クリーム剤、軟膏剤、または生理学的に許容される油中に配合することができる。このような製剤は、ディスペンサーに応じて、保存剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、パラヒドロキシ安息香酸、ならびに硝酸塩、塩化物、酢酸塩、およびホウ酸塩などのフェニル水銀塩、または抗酸化剤、ならびにEDTA、ソルビトール、およびホウ酸などのような添加剤を、添加剤として含んでも含まなくてもよい。さらに、水性液剤は、粘度上昇剤、例として多糖類、例えば、メチルセルロース、ムコ多糖、例えば、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、または多価アルコール、例えばポリビニルアルコールも含んでよい。適用の容易さのために、組成物は、眼瞼またはまつ毛の根元、例えば眼瞼縁への適用のために適切なスティック状アプリケーターまたは他の化粧品アプリケーターとして製剤化することができる。
【0068】
本開示はまた、低下した視力、低下したコントラスト感度、または低減した立体視を示している対象を治療するための医薬の製造における、本明細書において説明される眼科用縮瞳剤と組み合わせたメチル化キサンチンの使用も提要する。
【0069】
本明細書において開示される1種または複数種の組成物を含むキットもまた、提供される。これらのキットは、本明細書において開示される組成物の単回使用剤形を含んでもよく、または患者もしくはアプリケーターそれ自体によって量り取られる複数用量を含む、例えばバイアルを含んでもよい。さらに、キットは、異なる眼瞼もしくは皮膚領域に、かつ/または治療レジメンの期間中の異なる時点に適用されることが意図される、老視の治療用の様々な治療物質の製剤を含んでもよい。キットはまた、必要があれば、適切な投与レジメンのための説明書も含む。
【0070】
以下の実施例は、本質的に例示的であり、限定することを決して意図しない。
【実施例】
【0071】
実施例1
治療の即時効果
至近距離の視覚に問題があることに最近気付いた45歳の患者を、6wt%のピロカルピンおよび0.32wt%のカフェインを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両眼の眼瞼に適用した。
【0072】
処置前に、以下のデータポイントを取得した:
瞳孔
屈折力: +25SPH
Plano SPH > +1.75ADD
裸眼近方
裸眼DV
快適性(1+~4+)
明瞭性(1+~4+)
処置前の瞳孔 5.0mm
近方視力 JS
遠方視力 sc20/20
快適性 3+
明瞭性 3+
【0073】
以下の処置後測定を行った:
処置後1時間目
瞳孔 4.5mm
裸眼近方視力(VA)がJ2に上昇した
裸眼遠方視力は20/20のままであった
快適性スコアは4+に改善した
明瞭性スコアは4+に改善した
処置後2時間目
瞳孔の大きさ 5.0mm
裸眼近方視力が、最高レベルのJ1に上昇した
裸眼遠方VA 20/20
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後3時間目
瞳孔の大きさ 4.5mm
近方視力はJ1に上昇したままであった
遠方視力は依然として20/20であった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後4時間目
瞳孔の大きさ 4.5mm
近方視力はJ1に上昇したままであった
遠方視力は20/20のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後5時間目
瞳孔の大きさ 4.0
近方視力は最適なJ1のままであった
遠方視力は申し分のない20/20のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
【0074】
近方視力の上昇は、1回の処置後、12時間維持された。有害作用は観察されなかった。
【0075】
治療の概略: 正視眼の老視をピロカルピン6%および0.32%カフェインで処置した結果、それぞれの眼において、遠方視力を保持しつつ、自発的な近距離視力および中間距離視力を生じさせることができた。右眼の遠方視力が改善された。
【0076】
実施例2
49歳の女性が、遠視性乱視を示し、老視の急な発症ならびに近方視力および遠方視力の低下が両眼で認められた。この患者は、不耐症が原因で、コンタクトレンズを希望しなかった。さらに、この患者は、眼鏡をかけた場合に、悪心を伴う眼精疲労および視野狭窄を経験していた。
【0077】
処置前に、患者は以下を示した:
処置前:
屈折力:
OD: +1.25 +1.25×105 20/20、+2.00 ADD
OS: +1.75 +0.25×105 20/20、+2.00 ADD
処置前:
裸眼視力:
遠方: 右眼20/80、左眼20/30
近方: リーディングカードを全く読むことができない
瞳孔: 右眼(OD)5mm、左眼(OS)4.8mm
快適性スコア 2+
明瞭性スコア 0
【0078】
患者を、0.32wt%のカフェインおよび6wt%のピロカルピンを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両方の眼瞼の外表面に適用した。
【0079】
組成物は、毎日1回、3日間、午前中に眼瞼に適用した。この患者の報告によれば、最初の処置の直後に近方視力が改善し、その改善が、午前中に組成物を1回適用した後に昼間/夜の間ずっと続いた。毎日1回、3日間の組成物適用の後に、以下のデータを取得した:
処置後
裸眼視力:
遠方視力は、右眼20/25、左眼20/20に上昇した
近方視力: J4、この時点で、電話と文章を容易に読むことができる
瞳孔: 右眼5mm、左眼4.5mm
快適性は4+に上昇した、明瞭性4+
【0080】
治療を継続すると、患者の読書視力は、J2の裸眼読書視力まで上昇し、それぞれの眼において、改善された良好な遠方視力を維持した。この患者は、毎日1回の処置を1年間受けている間、遠方視力と近方視力の両方について眼鏡をかけずに済ませることができた。
【0081】
治療の概略: ベースラインの視力が悪く重度の老視(近方視力および中間視力がぼやけている)を併発した乱視ありの遠視を、ピロカルピン6%および0.32%カフェインで処置した結果、それぞれの眼において、遠方視力の著しい改善がもたらされた。近方視力および中間視力における自発的な読取り能力が回復した。
【0082】
実施例3
至近距離の視覚に問題があることに最近気付いた54歳の男性対象を、8wt%のピロカルピンおよび0.10wt%のテオフィリンを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両眼の眼瞼に適用した。
【0083】
処置前に、以下のデータポイントを取得した:
瞳孔 5.0mm
屈折力:
OD +0.25 +0.50@015 +2.00読書用ADD
OS +0.25 +0.25@175 +2.00読書用ADD
処置前
近方視力は裸眼でJ10であり、これは近距離で20/100である
裸眼遠方視力は右眼20/25、左眼20/20
快適性スコア 2+
明瞭性スコア 1+
【0084】
以下の処置後測定を行った:
処置後: 処置後1時間目: 瞳孔4.5mm;近方視力はJ8に上昇した;遠方視力はそれぞれの眼において20/20に上昇した。
快適性スコア 3+
明瞭性スコア 1+
処置後2時間目: 瞳孔の大きさ 5.0mm、近方視力は再びJ7に上昇した;遠方視力は右眼が20/20、左眼が20/15に上昇した
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 2+
処置後3時間目: 瞳孔の大きさ 4.5mm、近方視力はJ5に上昇したままであった;遠方視力は、依然として右眼20/20、左眼20/15であった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 2+
処置後4時間目: 瞳孔の大きさ 4.5mm、近方視力はJ4に上昇したままであった;遠方視力は、それぞれの眼について、右眼20/20、左眼20/15のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
5時間目: 瞳孔の大きさ 4.0、近方視力はJ1で最適であった;遠方視力は、それぞれの眼について、20/20のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
【0085】
近方視力の上昇は、1回の処置後、12時間維持された。有害作用は観察されなかった。
【0086】
実施例4
至近距離の視覚が衰えている56歳の対象を、3wt%のカルバコールおよび0.16wt%のテオフィリンを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両眼の眼瞼に適用した。
【0087】
処置前に、以下のデータポイントを取得した:
処置前:
瞳孔 5.0mm
近方視力は裸眼でJ7であり、これは近距離で20/100である
それぞれの眼の裸眼遠方視力 20/20
快適性スコア 2+
明瞭性スコア 1+
屈折力:
OD: -0.25sph ADD+2.00
OS: -0.75sph ADD+2.00
【0088】
処置後、1時間ごとの測定値を確認した:
処置後1時間目: 瞳孔5.0mm;近方視力はJ5に上昇した;遠方視力はそれぞれの眼において20/20のままであった
快適性スコア 3+
明瞭性スコア 1+
処置後2時間目: 瞳孔の大きさ 4.5mm、近方視力は再びJ2に上昇した;それぞれの眼の遠方視力は20/20
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後3時間目: 瞳孔の大きさ 4.5mm、近方視力は再びJ1に上昇した;それぞれの眼の遠方視力は、依然として20/20であった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後4時間目: 瞳孔の大きさ 4.0mm、近方視力はJ1で高いままであった;遠方視力は、それぞれの眼について、20/20のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後5時間目: 瞳孔の大きさ 5.0、この時点の近方視力はJ1で最適であった;遠方視力は、それぞれの眼について、20/20のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
【0089】
近方視力の上昇は、1回の処置後、12時間維持された。有害作用は観察されなかった。
【0090】
実施例5
ペントキシフィリンと2種の直接作用型のコリン作動性アゴニストAPI: ピロカルピンおよびカルバコール
ペントキシフィリン0.05%およびピロカルピン8%
ペントキシフィリン1.0%およびピロカルピン8%
ペントキシフィリン0.05%およびカルバコール3%
ペントキシフィリン1.0%およびカルバコール3%
【0091】
ペントキシフィリン用量範囲の調査:
低用量ペントキシフィリン0.05%: 遠視および老視を0.05%ペントキシフィリンおよび8%ピロカルピンで治療した
至近距離の視覚が不良であり遠方がぼやけて見える59歳の患者を、8wt%のピロカルピンおよび0.05wt%のペントキシフィリンを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両眼の眼瞼に適用した。
【0092】
処置前に、以下のデータポイントを取得した:
処置前の瞳孔 4.0mm
近方視力は裸眼でJ8であり、これは近距離で20/80である
裸眼遠方視力はOD 20/40、OS 20/25
快適性スコア 2+
明瞭性スコア 1+
OD: 球面度数+1.00、読書用ADD+2.00
OS: 球面度数+1.75、読書用ADD+2.00
【0093】
以下の処置後測定を行った:
処置後1時間目:
瞳孔の大きさ 4.5mm
近方視力がJ6に上昇した
遠方視力はOD 20/40、OS 20/25のままであった
快適性スコア 3+
明瞭性スコア 2+
処置後2時間目:
瞳孔の大きさ 4.0mm
近方視力は、より機能的なレベルJ4、すなわち20/40に上昇した
遠方視力は、それぞれの眼において、20/20に改善した
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後3時間目:
瞳孔の大きさ 3.5mm
近方視力はJ4に上昇したままであった
遠方視力は、それぞれの眼において、依然として、改善した20/20のレベルであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後4時間目:
瞳孔の大きさ 3.5mm
近方視力が再びJ2に急上昇した
遠方視力は、それぞれの眼において、20/20に上昇したままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後5時間目:
瞳孔の大きさ 3.5
近方視力は、この時点で、最適な視力レベルであるJ1に達した
遠方視力は、20/20と良好なままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
【0094】
近方視力の上昇は、1回の処置後、12時間維持された。有害作用は観察されなかった。
【0095】
高用量ペントキシフィリン1.0%: 遠視および老視を1.0%ペントキシフィリンおよび8%ピロカルピンで治療した
至近距離の視覚が不良であり遠方がぼやけて見える59歳の対象を、8wt%のピロカルピンおよび1.0wt%のペントキシフィリンを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両眼の眼瞼に適用した。
【0096】
処置前に、以下のデータポイントを取得した:
処置前の瞳孔 4.0mm
近方視力は裸眼でJ8であり、これは近距離で20/80である
裸眼遠方視力はOD20/40、OS20/25
快適性スコア 2+
明瞭性スコア 1+
OD: 球面度数+1.00、読書用ADD +2.00
OS: 球面度数+1.75、読書用ADD +2.00
【0097】
以下の処置後測定を行った:
処置後1時間目:
瞳孔の大きさ 3.5mm
近方視力がJ4に上昇した
遠方視力はOD 20/25、OS 20/20に改善した
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 3+
処置後2時間目:
瞳孔の大きさ 3.0mm
近方視力は、最適に近いレベルJ2、すなわち20/25に上昇した
遠方視力は、それぞれの眼において、くっきりした20/20に改善した
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後3時間目:
瞳孔の大きさ 3.5mm
近方視力は、J1、すなわち20/20に最適化された
遠方視力は、それぞれの眼において、最適な20/20のままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後4時間目:
瞳孔の大きさ 3.0mm
近方視力は、J1、すなわち20/20で安定
遠方視力は、それぞれの眼において、20/20に上昇したままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
処置後5時間目:
瞳孔の大きさ 3.5
近方視力は、最適な視力レベルであるJ1で安定
遠方視力は、20/20と良好なままであった
快適性スコア 4+
明瞭性スコア 4+
【0098】
近方視力の上昇は、1回の処置後、12時間維持された。有害作用は観察されなかった。
【0099】
実施例6
カルバコール3%を併用する場合のペントキシフィリンの用量範囲: メチルキサンチン低用量範囲: ペントキシフィリン0.05%およびカルバコール3%
54歳の女性が、軽度の遠視性乱視を示し、老視の急な発症ならびに近方視力および遠方視力の低下が両眼で認められた。この患者は、コンタクトレンズの練習に耐えられず、不安を示しており、コンタクトレンズまたは眼科手術を希望しなかった。さらに、この患者は、眼鏡をかけた場合に、悪心を伴う慢性的な眼精疲労を経験していた。
【0100】
処置前に、患者は以下を示した:
処置前:
屈折力:
OD: +0.25 +0.50×105 20/20、+2.00 ADD
OS :+0.25 +0.25×105 20/20、+2.00 ADD
裸眼視力:
遠方: 右眼20/30 +3、左眼20/20 -3
近方: リーディングカードを全く読むことができない
瞳孔: 両眼とも5mm
快適性スコア 0
明瞭性スコア 0
【0101】
患者を、0.05wt%のペントキシフィリンおよび3wt%のカルバコールを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両方の眼瞼の外表面に適用した。
【0102】
組成物は、毎日1回、3日間、午前中に眼瞼に適用した。この患者の報告によれば、最初の処置の直後に近方視力が改善し、その改善が、午前中に組成物を1回適用した後に昼間/夜の間ずっと続いた。毎日1回、3日間の組成物適用の後に、以下のデータを取得した:
裸眼視力:
遠方視力は、右眼が20/25、左眼がよりくっきりした20/20に上昇した
近方視力: J4、この時点で、電話と文章を実用的に読むことができる
瞳孔: 両眼とも4.5mm
快適性コアが2+に上昇した
明瞭性スコア 3+
【0103】
この患者は、毎日1回の処置を受けている間、遠方視力と近方視力の両方について眼鏡をかけずに済ませることができた。
【0104】
実施例7
メチルキサンチンペントキシフィリン高用量範囲: ペントキシフィリン1%およびカルバコール3%
実施例6で説明した54歳の女性患者は、0.5wt%のペントキシフィリンおよび3wt%のカルバコールの効果を「取り除く」ために、4週間治療を中止した。4週間後、患者を、高用量のペントキシフィリン(1wt%)および3wt%のカルバコールで処置した。
【0105】
1wt%のペントキシフィリンおよび3wt%のカルバコールによる処置の前に、患者は以下を示した:
屈折力:
OD: +0.25 +0.50×105 20/20、+2.00 ADD
OS: +0.25 +0.25×105 20/20、+2.00 ADD
裸眼視力:
遠方視力: 右眼20/30 +3、左眼20/20 -3
近方視力: リーディングカードを全く読むことができない
瞳孔: 両眼とも5mm
快適性スコア 0
明瞭性スコア 0
【0106】
対象を、1.0wt%のペントキシフィリンおよび3wt%のカルバコールを含む局所用組成物で処置した。組成物は、両方の眼瞼の外表面に適用した。
【0107】
組成物は、毎日1回、3日間、午前中に眼瞼に適用した。この対象の報告によれば、最初の処置の直後に近方視力が改善し、その改善が、午前中に組成物を1回適用した後に昼間/夜の間ずっと続いた。毎日1回、3日間の組成物適用の後に、以下のデータを取得した:
裸眼視力:
遠方視力は、右眼が20/25、左眼がよりくっきりした20/20に上昇した
近方視力: J1、この時点で、メニュー、電話、およびコンピューターを容易に読むことができ、VA 20/20である
瞳孔: 両眼とも4.0mm
快適スコアは4+に上昇した
明瞭性スコア 4+
【0108】
この対象は、毎日1回の処置を受けている間、遠方視力と近方視力の両方について眼鏡をかけずに済ませることができ、読書が著しく容易であった(対象は「実に鮮明」と説明した)。
【0109】
実施例8
1wt%のフィゾスチグミンおよび0.32wt%のカフェイン
至近距離の視覚に問題があることに最近気付いた54歳の患者を、1wt%のフィゾスチグミンおよび0.32wt%のカフェインを含む組成物を両眼の眼瞼の外側に局所適用して処置した。
【0110】
処置前に、以下のデータを得た:
屈折力:
OD +0.25 +0.50@015 +2.00 読書用ADD
OS +0.25 +0.25@175 +2.00 読書用ADD
処置前の瞳孔 5.0mm
近方視力は裸眼でJ10であり、これは近距離で20/100である
裸眼遠方視力は右眼20/25、左眼20/20
快適性2+、明瞭性1+
【0111】
以下の処置後測定を行った:
処置後1時間目 瞳孔4.5mm、近方視力はJ9に上昇し、遠方視力はそれぞれの眼において20/20に上昇した
快適性3+、明瞭性1+
2時間目、瞳孔の大きさ 5.0mm、近方視力は再びJ7に上昇した;遠方視力は右眼が20/20であり、左眼が20/15に上昇した
快適性4+、明瞭性2+
3時間目、瞳孔の大きさ 4.5mm、近方視力はJ5に上昇し、遠方視力は依然として右眼が20/20、左眼が20/15であった
快適性4+、明瞭性2+
4時間目、瞳孔の大きさ 4.5mm、近方視力はJ3に再び上昇し、遠方視力はそれぞれの目について右眼が20/20、左眼が20/15のままであった
快適性4+、明瞭性4+
5時間目、瞳孔の大きさ 4.0、この時点の近方視力はJ1で最適でり、遠方視力は、それぞれの眼について、20/20のままであった
快適性4+、明瞭性4+
【0112】
近方視力の上昇は、1回の処置後、12時間維持された。有害作用は観察されなかった。
【0113】
実施例9
3名の対象を、6wt%のピロカルピンおよび0.32wt%のカフェインを含む組成物で処置した。46歳の男性、42歳の男性、および53歳の男性は全員、読書視力の衰えを示し、老眼鏡を必要としていた。全員が、遠視の正視者であった。
【0114】
対象1: 46歳の男性
ベースラインの遠方視力20/25、CS 50%(LogCS 0.3)
ベースラインの近方視力 20/114、スネレンイエーガー 11、CS 40%
ベースラインの立体視: 立体視なし
【0115】
6wt%のピロカルピンおよび0.32wt%のカフェインを含むローション剤を両眼の眼瞼の皮膚外表面に適用することによって、対象を処置した。視覚的改善およびコントラスト感度の改善が、処置から3時間以内に認められ、12時間最適なままであった。
【0116】
近方視力: ベースラインの視力近距離でのイエーガー 11、スネレン 20/114、近距離でのコントラスト39.81%(logCS 0.4)。両眼の処置から2時間以内に、視力は、近距離で20/25、イエーガー2に有意に上昇し、15.85% CS(log 0.8)であった。
近方視力のコントラスト感度は、ベースラインと比べて2倍超に上昇し、260%(2.6倍)になった。
【0117】
遠方視力: ベースライン視力 20/25、コントラスト感度 50.12%(log 0.3)。遠方視力は、処置によって20/20に上昇し、コントラスト感度は39.81%(log 0.4)であった。
遠方視力のコントラスト感度は改善して、ベースラインより33%高くなった。
【0118】
立体視: 両眼視視力は、完璧に近いスコアである、円8/9に改善した。
【0119】
対象2: 42歳の男性
ベースラインの遠方視力: 20/20、CS 39.81%(log 0.4)
ベースラインの近方視力: スネレン 20/40、イエーガー 4、CS 50.12%(log 0.3)
ベースラインの立体視: 円5/5
【0120】
6wt%のピロカルピンおよび0.32wt%のカフェインを含むローション剤を両眼の眼瞼の皮膚外表面に適用することによって、対象を処置した。視覚的改善およびコントラスト感度の改善が、処置から3時間以内に認められ、12時間最適なままであった。
【0121】
近方視力: ベースラインの近方視力: スネレン 20/40、イエーガー 4、CS 50.12%(log 0.3)。両眼の処置から2時間以内に、対象の視力は、近距離で20/20、イエーガー1に上昇し、15.85% CS(log0.8)であった。
近方視力のコントラスト感度は、ベースラインと比べて3倍超に上昇し、333%(3.3倍)になった。
【0122】
遠方視力: ベースライン視力 20/20、コントラスト感度 39.81%(log 0.4)。遠方視力は、処置によって20/20に上昇し、コントラスト感度は19.95%(log 0.7)であった。遠方視力のコントラスト感度は倍増、すなわちベースラインより100%高くなった。
【0123】
立体視: 両眼視視力の測定値は有意に改善し、ベースラインから2倍になり、完璧なスコア、すなわち円9/9になった。
【0124】
対象3: 53歳の男性
ベースラインの遠方視力: 20/25、CS 50.12%(log 0.3)
ベースラインの近方視力: スネレン 20/114、イエーガー 11、CS 79.43%(log 0.1)
立体視: チトマス検査に失敗、深径覚なし
【0125】
6wt%のピロカルピンおよび0.32wt%のカフェインを含むローション剤を両眼の眼瞼の皮膚外表面に適用することによって、対象を処置した。視覚的改善およびコントラスト感度の改善が、処置から3時間以内に認められ、12時間最適なままであった。
【0126】
近方視力: ベースラインの近方視力: スネレン 20/114、イエーガー 11、CS 50.12%(log 0.3)。両眼の処置から6時間以内に、対象の視力は、近距離で20/30、イエーガー3に有意に上昇し、25.12% CS(log0.6)であった。
近方視力のコントラスト感度は、低い視力での不十分なベースラインコントラスト感度と比べて倍増し100%(2倍)になった。
【0127】
遠方視力: ベースライン視力 20/25、コントラスト感度 50.12%(log 0.3)。遠方視力は、処置によって20/20に上昇し、コントラスト感度は25.12%(log 0.6)であった。
遠方視力のコントラスト感度は倍増、すなわちベースラインより100%高くなった(2倍)。
【0128】
立体視: 両眼視視力は、ベースラインでの失敗から改善し、完璧に近いスコア、すなわち円8/8になった。
【国際調査報告】