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特表2023-544694化学原料分配器及びそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】化学原料分配器及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20231018BHJP
   B01J 8/18 20060101ALI20231018BHJP
   B01J 8/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B01J4/00 101
B01J8/18
B01J8/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519080
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021052822
(87)【国際公開番号】W WO2022072603
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/085,266
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】プレッツ、マシュー ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、クアン
(72)【発明者】
【氏名】カマト、プリティシュ エム.
(72)【発明者】
【氏名】リー、リーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、リン
【テーマコード(参考)】
4G068
4G070
【Fターム(参考)】
4G068AA01
4G068AB01
4G068AC09
4G068AD16
4G068AD47
4G070AA01
4G070AB04
4G070BB31
4G070CA06
4G070CA18
4G070CB07
4G070CB15
(57)【要約】
1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器は、化学原料注入口と本体とを備え得る。化学原料注入口は、化学原料供給流を化学原料分配器に入れることができる。本体は、細長い化学原料供給流経路を画定し得る1つ以上の壁と、複数の化学原料排出口とを備え得る。複数の化学原料排出口は、壁上に離間され得る。複数の化学原料排出口は、化学原料供給流を化学原料分配器から排出するように動作可能であってもよい。細長い化学原料供給流経路は、上流側流体経路部分と下流側流体経路部分とを含むことができる。壁は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学原料分配器であって、
化学原料供給流を前記化学原料分配器に入れる化学原料注入口と、
1つ以上の壁及び複数の化学原料排出口を備える本体であって、前記1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し、前記複数の化学原料排出口は、前記細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部に沿って前記壁上に離間され、前記複数の化学原料排出口は、前記化学原料供給流を前記化学原料分配器から排出して容器に入れるように動作可能である、本体と、を備え
前記壁によって画定される前記細長い化学原料供給流経路は、前記化学原料注入口から始まる前記細長い化学原料供給流経路の距離の第1のセグメントに沿った上流側流体経路部分と、前記細長い化学原料供給流経路の距離の第2のセグメントに沿った下流側流体経路部分とを備え、前記壁は、前記上流側流体経路部分の平均断面積が前記下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置されている、化学原料分配器。
【請求項2】
前記細長い化学原料供給流経路の最小断面積が、前記細長い化学原料供給流経路の最大断面積の50%未満である、請求項1に記載の化学原料分配器。
【請求項3】
前記細長い化学原料供給流経路に対して最も下流側の前記化学原料排出口が、前記細長い化学原料供給流経路の終端点を画定する端部壁から2インチ以内に配置されている、請求項1又は2のいずれかに記載の化学原料分配器。
【請求項4】
前記細長い化学原料供給流経路に対して最も下流側の前記化学原料排出口が、前記細長い化学原料供給流経路の前記終端点において前記細長い化学原料供給流経路の内径に等しい距離内に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項5】
前記1つ以上の壁が、第1のパイプと、錐台形状の移行セクションと、第2のパイプとを備え、前記第1のパイプは前記錐台形状の移行セクションと接触しており、前記錐台形状の移行セクションは前記第2のパイプと接触している、請求項1~4のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項6】
前記第1のパイプの中心軸と前記第2のパイプの中心軸が平行である、請求項5に記載の化学原料分配器。
【請求項7】
前記1つ以上の壁が、第1の壁と、前記第1の壁以上の内径を有する第2の壁とを備え、前記第2の壁は前記第1の壁を取り囲み、前記第1の壁の内面は前記上流側流体経路部分を画定し、前記第1の壁の外面及び前記第2の壁の内面は前記下流側流体経路部分を画定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項8】
前記細長い化学原料供給流経路の前記下流側部分が、前記細長い化学原料供給流経路の前記上流側部分を取り囲む、請求項7に記載の化学原料分配器。
【請求項9】
前記第1の壁が第1の成形パイプを備え、前記第2の壁が第2の成形パイプを備える、請求項7に記載の化学原料分配器。
【請求項10】
前記化学原料分配器の前記本体内部に化学原料供給流ガイドを更に備え、前記化学原料供給流ガイドは、前記化学原料分配器の長さに沿った前記細長い化学原料供給流経路の一部に沿って断面積を減少させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項11】
前記化学原料供給流ガイドの平均断面積が、前記上流側流体経路部分よりも前記下流側流体経路部分において大きい、請求項10に記載の化学原料分配器。
【請求項12】
前記化学原料分配器が、前記本体の前記壁を裏打ちする耐火材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項13】
前記細長い化学原料供給流経路の前記下流側流体経路部分を画定する前記壁を裏打ちする耐火材料の厚さが、前記細長い化学原料供給流経路の前記上流側流体経路部分を画定する前記壁を裏打ちする耐火材料の厚さより大きい、請求項1~12のいずれか一項に記載の化学原料分配器。
【請求項14】
化学原料を分配するための方法であって、
化学原料供給流を化学原料注入口を通して化学原料分配器に入れることであって、前記化学原料分配器は、1つ以上の壁及び複数の化学原料排出口を備える本体を備え、前記1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し、前記複数の化学原料排出口は、前記細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部に沿って前記壁上に離間され、前記壁によって画定される前記細長い化学原料供給流経路は、前記化学原料注入口から始まる前記細長い化学原料供給流経路の距離の第1のセグメントに沿った上流側流体経路部分と、前記化学原料供給流経路の距離の第2のセグメントに沿った下流側流体経路部分とを備え、前記壁は、前記上流側流体経路部分の平均断面積が前記下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置される、ことと、
前記化学原料供給流を前記細長い化学原料供給流経路に沿って通過させ、前記化学原料分配器から排出して、前記複数の化学原料排出口を通して容器に入れることと、を含む、方法。
【請求項15】
前記容器内部の温度が650℃超であり、前記化学原料分配器の外周の最高表面温度が650℃を超えず、流動触媒が前記容器内に存在する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月30日出願の、「CHEMICAL FEED DISTRIBUTORS AND METHODS OF USING THE SAME」と題された米国特許仮出願第63/085,266号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書は、概して、化学処理に関し、より具体的には、化学原料供給流を導入するためのシステム及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ガス状化学物質は、供給分配器を通して反応器又は他の容器に供給され得る。供給分配器を利用して、このような反応器又は容器への供給化学物質流のバランスのとれた分配を促進することができる。このような供給化学物質の分配は、好ましい反応を促進することができ、化学システムにおける物質移動平衡を維持することができる。
【発明の概要】
【0004】
多くの化学プロセスにおいて、化学原料供給流は、化学原料分配器を通して反応器又は燃焼器などの高温環境中に供給される。これらの高温環境は、化学原料分配器の外周の最高表面温度を上昇させる可能性があり、その後コーキングと呼ばれる炭素質沈着物の形成のリスクを増大させ得る。これは、流動床容器において特に問題であり、容器内の流動固体は、放射性及び伝導性熱伝達を介して高温環境から供給分配器への熱伝達を大幅に向上させる。次に、コーキングは、閉塞及び流量不均等分布のリスクを生じさせる可能性がある。したがって、改良された化学原料分配器が必要とされている。流れ方向に従って化学原料分配器の長さに沿って概して減少する断面積を有する化学原料分配器は、化学原料分配器の外周の最高表面温度の低下を促進し得ることが見出された。そのような化学原料分配器の実施形態が本明細書に記載される。そのような化学原料分配器の1つ以上の実施形態は、その長さに沿って比較的安定した外周の最高表面温度を維持することができ、したがって、コーキングのリスク及びコーキングに関連する副次的影響を低減することができる。本開示の実施形態は、化学原料分配器の長さに沿って特定の熱伝達効率を維持する化学原料分配器の幾何学的形状を利用し、その結果、線速度が維持され得、化学原料分配器内の停滞ゾーンが低減され得ることによって、この必要性を満たす。
【0005】
一実施形態によれば、化学原料分配器は、化学原料注入口と、本体と、二次化学原料排出口とを備えることができる。化学原料注入口は、化学原料供給流を化学原料分配器に入れることができる。本体は、1つ以上の壁及び複数の化学原料排出口を備えてもよい。1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定してもよい。複数の化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部に沿って壁上に離間され得る。複数の化学原料排出口は、化学原料供給流を化学原料分配器から排出して容器に入れるように動作可能であってもよい。壁によって画定された細長い化学原料供給流経路は、上流側流体経路部分と下流側流体経路部分とを含むことができる。上流側流体経路部分は、細長い化学原料供給流経路の距離の第1のセグメントに沿っていてもよい。上流側流体経路部分は、化学原料注入口から始まってもよい。上流側流体経路は、細長い化学原料供給流経路の長さに沿った中間点で終わってもよい。下流側流体経路部分は、細長い化学原料供給流経路の距離の第2のセグメントに沿っていてもよい。下流側流体経路部分は、細長い化学原料供給流経路の長さに沿った中間点で開始してもよい。下流側流体経路部分は、細長い化学原料供給流経路の終端点の一部で終わってもよい。壁は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置することができる。
【0006】
別の実施形態によれば、化学原料供給流を分配するための方法は、化学原料供給流を化学原料注入口を通して化学原料分配器に入れることを含んでもよい。化学原料分配器は、本体を備えてもよい。本体は、1つ以上の壁及び複数の化学原料排出口を備えてもよい。1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定してもよい。複数の化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部に沿って壁上に離間され得る。壁によって画定された細長い化学原料供給流経路は、上流側流体経路部分と下流側流体経路部分とを含むことができる。上流側流体経路部分は、細長い化学原料供給流経路の距離の第1のセグメントに沿っていてもよい。上流側流体経路部分は、化学原料注入口から始まってもよい。下流側流体経路部分は、化学原料供給流経路の距離の第2のセグメントに沿っていてもよい。壁は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置される。方法は、化学原料供給流を細長い化学原料供給流経路に沿って通過させ、化学原料分配器から排出して、複数の化学原料排出口を通して容器に入れることを更に含むことができる。
【0007】
追加の特徴及び有益性は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、又は以下の「発明を実施するための形態」、及び特許請求の範囲を含む本明細書に開示された実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【0008】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の断面俯瞰図の概略図である。
図1B】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の第1の実施形態の斜視図の概略図である。
図1C】本開示の1つ以上の実施形態による、様々な化学原料分配器の概略図である。
図1D】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の第2の実施形態の断面俯瞰図の概略図である。
図1E】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の第3の実施形態の断面俯瞰図の概略図である。
図1F】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器の化学原料排出口の断面図の概略図である。
図2】本開示の1つ以上の実施形態による、容器の概略切断図である。
図3A】本開示の1つ以上の実施形態による、変化する平均断面積を有する化学原料分配器の外周の最高表面温度のモデルの概略図である。
図3B】本開示の1つ以上の実施形態による、変化する平均断面積を有さない化学原料分配器の外周の最高表面温度のモデルの概略図である。
図4】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器に沿った化学原料注入口からの距離に応じた、化学原料に暴露される化学原料分配器の壁のピーク温度のグラフ図である。
図5】本開示の1つ以上の実施形態による、化学原料分配器に沿った化学原料注入口からの化学原料排出口距離に応じた、化学原料排出口当たりの正規化流量のグラフ図である。
【0010】
ここで、様々な実施形態をより詳細に参照し、そのいくつかの実施形態が添付の図面に例示されている。可能な場合はいつでも、同じ又は類似の部分を参照するために、図面全体で同じ参照番号が使用されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載される1つ以上の実施形態によれば、本開示は、化学原料分配器及びそれを使用するための方法を対象とする。一般に、本明細書に記載される化学原料分配器は、化学原料注入口と、1つ以上の壁を備える本体と、複数の化学原料排出口とを備え得る。化学原料供給流は、化学原料注入口を通って化学原料分配器に送られてもよい。一般に、本明細書に記載の化学原料分配器は、化学原料分配器の長さに沿って減少する平均断面積を含む。化学原料供給流が化学原料分配器から複数の化学原料排出口を通って容器に入るとき、化学原料供給流の線形ガス速度は、化学原料分配器の長さに沿って減少する平均断面積に起因して、維持され得るか、又は少なくとも影響を受けにくくなり得る。
【0012】
本開示を通して使用されるとき、「断面積」は、3次元物体(すなわち、円筒)がある点においてある特定の軸に垂直にスライスされるときに得られる2次元形状の面積を指し得る。「平均断面積」は、三次元形状の特定の長さに沿って測定された複数の断面積の平均を指し得る。
【0013】
化学原料分配器の多くの実施形態が、添付の図面に関して説明される。しかしながら、ここで説明するように、これらの実施形態は、化学原料分配器の長さに沿って減少する平均断面積といった共通のテーマを共有することができる。例えば、図1A図1B図1C図1D、及び図1Eはそれぞれ、化学原料分配器の長さに沿って概して減少する平均断面積を同様に含む実施形態を示す。
【0014】
ここで図1A図1B図1C図1D、及び図1Eを参照すると、1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器100は、化学原料注入口101を備え得る。化学原料注入口101は、化学原料供給流102を化学原料分配器100に入れることができる。したがって、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を通って化学原料分配器100に送られることができる。本明細書に記載されるように、化学原料注入口101は、化学原料分配器100及び化学原料分配器100内の化学原料供給流102が容器110に入ることを可能にする、容器110内の入口の場所を指してもよい。
【0015】
化学原料分配器100は、本体105を備えてもよい。本体105は、1つ以上の壁106を備えてもよい。本体105はまた、複数の化学原料排出口107を備えてもよい。本明細書に記載されるように、複数の化学原料排出口107は、本体105の以上の(the or more)壁106における開口部であってもよく、化学原料分配器100から容器110への化学原料供給流102の通路を提供してもよい。実施形態では、複数の化学原料排出口107は、化学原料分配器に沿って単一の列に配置されてもよい。他の実施形態では、図1Bに示すように、複数の化学原料排出口107は、2列など、化学原料分配器100に沿って交互の位置に配置することができる。化学原料排出口107は、化学原料分配器100に沿って任意の構成で配置され得ることが企図される。複数の化学原料排出口107は、圧力降下を生じさせ、均一な分布を生じさせるために、各化学原料排出口107の始点にオリフィス107Aを備えることができる。複数の化学原料排出口107はまた、複数の化学原料排出口107を通過する表面ガス速度を減速させて、触媒摩耗又は化学原料分配器100の損傷を引き起こさないようにするためのディフューザ107Bを備えてもよい。ディフューザ107Bは、ガス速度が50フィート/秒(ft/sec)から300ft/secの範囲内になることを可能にすることができる。
【0016】
1つ以上の壁106は、細長い化学原料供給流経路109を画定してもよい。複数の化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の長さの少なくとも一部に沿って離間されてもよい。複数の化学原料排出口107の個々のものは、化学原料供給流102の部分103を化学原料分配器100から排出して容器110に入れるように動作可能であってもよい。化学原料分配器100に入る化学原料供給流102の総流量は、複数の化学原料排出口107のうちの個々の排出口を通過して容器110内に入る化学原料供給流102の部分103の流量に等しくてもよい。
【0017】
動作中、化学原料供給流102は、容器110内部の温度と比較して相対的に低い温度で供給され得る。1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流102の温度と容器110内の温度との差は、300℃超、例えば350℃超、400℃超、450℃超、500℃超、550℃超、600℃超、又は650℃超であってもよい。実施形態では、容器110内部の温度は500℃超であってよく、化学原料供給流102の温度は容器内部の温度より低くてもよい。動作中、容器110内部の温度は、化学原料分配器100を加熱し始めてもよく、したがって、化学原料分配器100の外周の最高表面温度を上昇させてもよい。外周の最高表面温度は、化学原料分配器100全体の最も高い表面温度を指すことができる。これは、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の温度も上昇させ得る。化学原料分配器100の外周の最高表面温度又は化学原料分配器100内部の化学原料供給流102の温度が過度に上昇する場合、化学原料供給流102は、化学原料分配器100上にコークスを沈着させ始める可能性がある。化学原料分配器100上にコークスが沈着すると、複数の化学原料排出口107において閉塞が始まる可能性があり、これにより流量不均等分布をもたらし得、動作上の問題をもたらし得る。本開示で使用されるとき、「流量不均等分布」は、複数の化学原料排出口107間の均一な流量分布の差を指し得る。
【0018】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、細長い化学原料供給流経路109は、1つ以上の壁106によって画定され得る。細長い化学原料供給流経路109は、上流側流体経路部分111と下流側流体経路部分112とを含むことができる。上流側流体経路部分111は、細長い化学原料供給流経路109の距離の第1のセグメントに沿っていてもよい。上流側流体経路部分111は、化学原料注入口101から始まってもよく、下流側流体経路部分112に続いてもよい。同様に、下流側流体経路部分112は、細長い化学原料供給流経路109の距離の第2のセグメントに沿っていてもよい。下流側流体経路部分112は、上流側流体経路部分111の終端から開始してもよく、化学原料分配器100の終点まで続いてもよい。終点は、端部壁106Cと同等であってもよい。端部壁106Cは、化学原料分配器100の本体105の最も下流側であってもよい。図1A図1Dにおいて、「L/2」は、上流側流体経路部分111と下流側流体経路部分112とが交わる場所を示すことができる。
【0019】
本開示で使用されるとき、「上流側」及び「下流側」という用語は、プロセス流の流れの方向に対する要素の相対的な位置を指すことができる。システムの第1の要素は、システムを通って流れるプロセス流が、第2の要素に遭遇する前に第1の要素に遭遇する場合、第2の要素の「上流側」と見なされ得る。同様に、第2の要素は、システムを通って流れるプロセス流が、第2の要素に遭遇する前に第1の要素に遭遇する場合、第1の要素の「下流側」であると見なされ得る。
【0020】
化学原料分配器100の壁106は、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積よりも大きいように配置することができる。実施形態では、細長い化学原料供給流経路109の最小断面積は、細長い化学原料供給流経路109の最大断面積の50%未満であってもよい。例えば、細長い化学原料供給流経路109の最小断面積は、細長い化学原料供給流経路109の最大断面積の40%未満、30%未満、又は20%未満であってもよい。細長い化学原料供給流経路109の最小断面積は、細長い化学原料供給流経路109の最大断面積の1%~30%、5%~25%、又は10%~20%であってもよい。
【0021】
上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積よりも大きくなるように壁106を位置決めすることにより、コーキングのリスク、ひいては閉塞及び流量不均等分布のリスクを低減することができる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、細長い化学原料供給流経路109の平均断面積が化学原料分配器100の長さに沿って減少すると、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の線形ガス速度がより良好に維持され得る。細長い化学原料供給流経路109の断面積が化学原料分配器100の長さに沿って一定に保たれる場合、化学原料供給流102の部分103が複数の化学原料排出口107を通過して容器110に入るとき、化学原料供給流102の体積流量は減少する。そのような化学原料供給流102の体積流量の減少は、望ましくないレイノルズ数の変化をもたらし得る。そのような化学原料供給流102の体積流量の減少は、低減された線形ガス速度をもたらし得、これは更に、化学原料分配器100の1つ以上の壁106の熱伝達率を減少させ得る。この望ましくないレイノルズ数の変化及び化学原料分配器100の1つ以上の壁106の熱伝達率の低下は、ひいては、化学原料分配器100内の化学原料供給流102のコーキングにつながり得る。上で詳述したように、コーキングは、閉塞及び流量不均等分布をもたらす可能性がある。逆に、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積より大きい場合、化学原料供給流102の線形ガス速度は、化学原料分配器100の長さに沿ってより良好に維持され得る。これは、望ましい数よりも低いレイノルズ数及び/又は化学原料分配器100内の停滞をもたらし、コーキング及びコーキングに関連する副次的影響を減少させ得る。すなわち、望ましいレイノルズ数を維持することにより、効率よく、コーキング、更には、複数の化学原料排出口107の閉塞及び流量不均等分布を最小限に抑えることができる。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、細長い化学原料供給流経路109に対して最も下流側の化学原料排出口107は、端部壁106Cから2インチ以内に配置されてもよい。端部壁106Cは、細長い化学原料供給流経路109の終端点を画定することができる。実施形態では、細長い化学原料供給流経路109に対して最も下流側の化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の終端点において細長い化学原料供給流経路109の内径に等しい距離内に配置されてもよい。1つ以上の化学原料排出口107は、個々の化学原料排出口107が他のものよりも下流側にないように配置され得ることが企図される。そのような場合、測定値は、細長い化学原料供給流経路109に対して最も下流側の1つ以上の化学原料排出口107のいずれか1つから取得されてもよい。例えば、細長い化学原料供給流経路109に対して最も下流側の化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の終端点において細長い化学原料供給流経路109の内径の半分に等しい距離内に配置されてもよい。化学原料供給流102の任意の残りの量は、上で詳述されたように、細長い化学原料供給流経路109に対して最も下流側の化学原料排出口107から排出され得る。
【0023】
本開示で使用されるとき、「化学原料」は、メタン、天然ガス、エタン、プロパン、水素、又は燃焼時にエネルギー値を含む任意のガスなどであるがこれらに限定されない、任意のプロセス原料供給流又は燃料ガスを指すことができる。
【0024】
加えて、本開示で使用されるとき、「容器」は、任意選択的に1つ以上の触媒の存在下で1つ以上の化学反応が1つ以上の反応物間で起こり得る反応器又は燃焼器などの、ガス又は固体を保持するための中空容器を指し得る。実施形態では、容器110は、最大55体積%の固体粒子体積分率を有してもよく、容器110内のガスの表面速度は、固体粒子の最小流動化速度よりも高くてもよい。
【0025】
加えて、本開示で使用されるとき、「コーキング」は、炭素質沈着物又はコークスの形成を指し得る。「閉塞」は、通路又はポートが部分的に制限されるか、又は完全に塞がれ得るようなコークスの蓄積を指し得る。
【0026】
図1A及び図1Bを参照すると、いくつかの実施形態では、1つ以上の壁106は、第1の壁106A及び端部壁106Cを備えてもよい。第1の壁106Aは、第1のパイプ120、錐台形状の移行セクション121、及び第2のパイプ122を画定することができる。本明細書で使用されるとき、パイプは任意の形状を含むことができる。例えば、パイプは、円形、円筒形、楕円形、長方形、又は任意の他の幾何学的形状である断面形状を有してもよい。第1のパイプ120は、化学原料注入口101と接触し、その下流側にあってもよい。錐台形状の移行セクション121は、第1のパイプ120と接触し、その下流側にあってもよい。第2のパイプ122は、錐台形状の移行セクション121と接触し、その下流側にあってもよい。第1のパイプ120、錐台形状の移行セクション121、及び第2のパイプ122は共に、細長い化学原料供給流経路109を画定することができる。複数の化学原料排出口107は、上で詳述したように、細長い化学原料供給流経路109の長さの一部に沿って、又は代替的に、第1のパイプ120、錐台形状の移行セクション121、及び第2のパイプ122の一部に沿って離間されてもよい。したがって、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を介して化学原料分配器100に入った後、細長い化学原料供給流経路109に沿って通過することができ、複数の化学原料排出口107を介して化学原料分配器100から出ることができる。
【0027】
図1A及び図1Bは、第1のパイプ120、錐台形状の移行セクション121、及び第2のパイプ122を備える化学原料分配器100を示すが、任意の数のパイプ(すなわち、パイプセグメント)及び錐台形状の移行セクションが利用され得ることが企図される。例えば、化学原料分配器100は、複数のパイプセグメント、例えば3つ、4つ、5つ、6つ等のパイプセグメントを備えてもよく、パイプセグメントのそれぞれの間に錐台形状の移行セクションを有する。更に、各パイプセグメントは正確に同じ長さを有する必要はないことに留意されたい。すなわち、個々の成形パイプセグメントは、他の個々の成形パイプセグメントよりも短くても長くてもよい。図1A及び図1Bの第1のパイプ120及び第2のパイプ122は、ほぼ同じ長さであり得るが、第1のパイプ120及び第2のパイプ122は、異なる長さであってもよいことが企図される。例えば、ここで図1Cを参照すると、様々なパイプセグメント構成を有する化学原料分配器100の様々な実施形態が示されている。いくつかの実施形態では、第1のパイプ120は、第2のパイプ122より短くてもよい。他の実施形態では、第1のパイプ120は、第2のパイプ122より長くてもよい。更に、いくつかの実施形態では、化学原料分配器100は、2つ(すなわち、第1のパイプ120及び第2のパイプ122)を超えるパイプセグメントを備えてもよい。すなわち、図1Cに示されるように、化学原料分配器は、例えば、3つのパイプセグメントを備え得る。
【0028】
再び図1A及び図1Bを参照すると、第1のパイプ120の中心軸及び第2のパイプ122の中心軸は同一線上にあり、平行であってもよい。すなわち、第1のパイプ120の壁106及び第2のパイプ122の壁106は、同心円を形成してもよい。このような実施形態では、錐台形状の移行セクション121は、360の回転対称の位数を含むことができる。他の実施形態では、第1のパイプ120の中心軸及び第2のパイプ122の中心軸は、非平行であり得る。すなわち、第1のパイプ120の壁106及び第2のパイプ122の壁106は、偏心円を形成してもよい。実施形態では、錐台形状の移行セクション121は、第1の成形パイプ120及び第2の成形パイプ122が「U」又は「V」を形成するように成形され得る。
【0029】
動作中、図1A及び図1Bの実施形態によれば、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を介して化学原料分配器100に入ることができる。化学原料供給流102は、第1のパイプ120、錐台形状の移行セクション121、及び第2のパイプ122を通過し得る。上記で詳述したように、細長い化学原料供給流経路109は、上流側流体経路部分111と下流側流体経路部分112とを含むことができる。化学原料供給流102が細長い化学原料供給流経路109に沿って通過するとき、化学原料供給流102の部分103は、複数の化学原料排出口107を通って化学原料分配器100を出ることができる。化学原料供給流102の部分103が複数の化学原料排出口107を通って化学原料分配器100を出るとき、化学原料供給流102の線形ガス速度は減少し得る。しかしながら、細長い化学原料供給流経路109に沿った平均断面積が減少するとき、化学原料供給流102の線形ガス速度を維持することができ、あるいは、化学原料供給流102の線形ガス速度の減少を最小限に抑えることができる。ガス線速度を維持するか、又はガス線速度の減少を最小限に抑えることによって、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の停滞を減少させることができる。化学原料供給流102の停滞を減少させることによって、コーキング、及びコーキングに関連する副次的影響も減少させることができる。
【0030】
ここで図1Dを参照すると、1つ以上の実施形態によれば、1つ以上の壁106は、第1の壁106A及び第2の壁106Bを備えてもよい。第2の壁106Bは、第1の壁106A以上の内径を備えてもよい。第2の壁106Bは、第1の壁106Aを取り囲むことができる。第1の壁106Aの内面は、上流側流体経路部分111を画定することができる。第1の壁106Aの外面及び第2の壁106Bの内面は、下流側流体経路部分112を画定することができる。第2の壁106Bは、第1の壁106A以上の内径を備えることができるが、下流側流体経路部分112は、依然として、上流側流体経路部分111より小さい平均断面積を備えることができる。すなわち、第2の壁106Bの平均断面積は、第1の壁106Aよりも大きくてもよいが、下流側流体経路部分112は、上流側流体経路部分111によって占められていない領域によってのみ画定されてもよい。
【0031】
更に図1Dを参照すると、細長い化学原料供給流経路109の下流側部分131は、細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130を取り囲むことができる。第1の壁106Aは、第1のパイプ120を画定し得る。第2の壁106Bは、第2のパイプ122を画定し得る。第1のパイプ120及び第2のパイプ122は、同じ形状のパイプを含んでもよく、又は異なる形状のパイプを含んでもよい。第1の壁106A及び第2の壁106Bは、同軸幾何学的形状を形成してもよい。また、第1の壁106A及び第2の壁106Bは、偏心幾何学的形状を形成してもよいことも企図される。細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130を画定する第1の壁106Aは、気密であってもよい。すなわち、化学原料供給流102は、第1の壁106Aが終端し、細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130が細長い化学原料供給流経路109の下流側部分131に接触する場所を除いて、第1の壁106Aを通過しなくてもよい。図1Dに示すように、第1の壁106Aは、第2の壁106Bよりも短い長さであってもよく、その結果、細長い化学原料供給流経路109は、化学原料分配器100の本体105を通って連続していてもよい。
【0032】
動作中、図1Dの実施形態によれば、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を介して化学原料分配器100に入ることができる。化学原料供給流102は、細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130を通過することができる。図1Dに示すように、細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130を画定する第1の壁106Aは、化学原料注入口101の反対側の本体105の端部の前で終端してもよい。これにより、化学原料供給流102を、細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130から細長い化学原料供給流経路109の下流側部分131へと続かせることができる。化学原料供給流102が細長い化学原料供給流経路109の下流側部分131に沿って移動すると、化学原料供給流102は、化学原料注入口101に向かって戻るが、細長い化学原料供給流経路109の上流側部分130を画定する第1の壁106Aの外側に移動することができる。化学原料供給流102が細長い化学原料供給流経路109の下流側部分に沿って移動するとき、化学原料供給流102の部分103は、複数の化学原料排出口107を通って化学原料分配器100を出ることができる。化学原料供給流102の部分103が複数の化学原料排出口107を通って化学原料分配器100を出るとき、化学原料供給流102の線形ガス速度は減少し得る。しかしながら、細長い化学原料供給流経路109の下流側部分131に沿った平均断面積が減少するとき、化学原料供給流102の線形ガス速度を維持することができ、あるいは、化学原料供給流102の線形ガス速度の減少を最小限に抑えることができる。ガス線速度を維持するか、又はガス線速度の減少を最小限に抑えることによって、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の停滞を減少させることができる。化学原料供給流102の停滞を減少させることによって、コーキング、及びコーキングに関連する副次的影響も減少させることができる。
【0033】
ここで図1Eを参照すると、1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器100は、化学原料分配器100の本体105の内部に化学原料供給流ガイド108を備えてもよい。化学原料供給流ガイド108は、化学原料分配器100の本体105の端部壁106Cと接触していてもよい。化学原料供給流ガイド108は、化学原料分配器100の長さに沿った細長い化学原料供給流経路109の一部に沿って断面積を減少させてもよい。化学原料供給流ガイド108を有する実施形態では、化学原料分配器100の本体105は、化学原料分配器100の長さに沿って一定の直径であってもよい。化学原料供給流ガイド108は、化学原料分配器100の本体105の直径を変化させることなく、化学原料分配器100の長さに沿って断面積を減少させるように機能し得る。しかしながら、1つ以上の実施形態によれば、化学原料分配器100の本体105は、化学原料分配器100の本体105の一部に沿って減少する断面積、並びに化学原料分配器100の本体105の内側の化学原料供給流ガイド108の両方を特徴としてもよいことが企図される。
【0034】
更に図1Eを参照すると、化学原料供給流ガイド108の平均断面積は、上流側流体経路部分111よりも下流側流体経路部分112の方が大きくてもよい。また、いくつかの実施形態では、化学原料供給流ガイド108は、化学原料分配器100の下流側流体経路部分112にのみ位置してもよいことが企図される。すなわち、いくつかの実施形態では、化学原料供給流ガイド108は、下流側流体経路部分112から上流側流体経路部分111まで延在しなくてもよい。1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流ガイド108は、任意の形状を含むことができる。例えば、化学原料供給流ガイド108は、円錐形状、円筒形状、矩形形状、球形状、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0035】
動作中、図1Eの実施形態によれば、化学原料供給流102は、化学原料注入口101を介して化学原料分配器100に入ることができる。化学原料供給流102は、細長い化学原料供給流経路109に沿って通過することができる。化学原料供給流102が細長い化学原料供給流経路109に沿って通過するとき、化学原料供給流102の部分103は、複数の化学原料排出口107を通って化学原料分配器100を出ることができる。ここでも、化学原料供給流102のガス線速度は、化学原料供給流102の部分103が複数の化学原料排出口107を通って化学原料分配器100を出る際に減少し得る。しかしながら、化学原料供給流ガイド108は、化学原料分配器100の長さに沿って断面積を減少させてもよい。細長い化学原料供給流経路109に沿った平均断面積が減少するとき、化学原料供給流102の線形ガス速度を維持することができ、あるいは、化学原料供給流102の線形ガス速度の減少を最小限に抑えることができる。ガス線速度を維持するか、又はガス線速度の減少を最小限に抑えることによって、コーキング、及びコーキングに関連する副次的影響も減少させることができる。
【0036】
ここで図1A図1B図1C図1D、及び図1Eを参照すると、化学原料分配器100は、本体105の壁106を裏打ちする耐火材料113を備え得る。本明細書で使用されるとき、耐火材料113は、熱、圧力、又は化学的侵食による分解に耐性があり得、高温で強度及び形状を保持し得る材料である。アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、及びカルシウムの酸化物は、耐火材料の製造に使用される一般的な材料であり得る。耐火材料113は、約14W/m-K未満の熱伝導率を有する断熱材であってもよい。1つ以上の実施形態によれば、細長い化学原料供給流経路109の上流側流体経路部分111及び下流側流体経路部分112を画定する壁106を裏打ちする耐火材料113の厚さは、異なっていてもよい。例えば、細長い化学原料供給流経路109の下流側流体経路部分112を裏打ちする耐火材料113の厚さは、細長い化学原料供給流経路109の上流側流体経路部分111を画定する壁106を裏打ちする耐火材料113より厚くてもよい。
【0037】
図2を参照すると、容器110の実施形態の概略切断図が示されている。図2は、接触脱水素プロセスのための流動燃料ガス燃焼器システムとして使用される容器110を示す。しかしながら、本明細書において詳述されるように、化学原料分配器100は、様々な容器110において使用され得る。再び図2を参照すると、容器110は、概して円筒形状の下部201と、錐台202を備える上部とを含んでもよい。錐台202と、錐台202と下側部分201との交点に引かれた内部水平仮想線との間の角度は、10~80度の範囲であり得る。10~80度の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示され、例えば、管状構成要素と錐台202構成要素との間の角度は、10、40、又は60度の下限から30、50、70、又は80度の上限までの範囲であり得る。例えば、角度は、10~80度、又は代替的に30~60度、又は代替的に10~50度、又は代替的に40~80度であり得る。更に、代替的な実施形態では、角度は、錐台202の高さに沿って、連続的又は不連続的に変化することができる。いくつかの実施形態では、容器110は、耐火材料で裏打ちされていても、されていなくてもよい。
【0038】
使用済み又は部分的に失活した触媒は、下降管203を通って容器110に入ることができる。代替の構成では、使用済み又は部分的に失活した触媒は、米国特許第9,370,759(B2)号に記載されているように、側面注入口から又は底部供給口から容器110に入り、空気分配器を通って上方に通過してもよい。使用済み触媒は、スプラッシュガード204に衝突し、それによって分配される。容器110は、スプラッシュガード204の高さに又はそれよりわずかに下に位置する空気分配器205を更に含むことができる。空気分配器205及び下降管203の出口206の上方には、グリッド207があってもよい。グリッド207の上方には、複数の化学原料分配器100があってもよい。1つ以上の追加のグリッド208が、化学原料分配器100の上方の容器110内に配置されてもよい。実施形態では、化学原料分配器100は、米国特許出願第14/868,507号(代理人整理番号DOW 77770)に記載されているように、容器110に入り、容器110を実質的に横切ることができる。
【0039】
本明細書で前述したように、1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流102を分配する方法は、化学原料供給流102を化学原料注入口101を通して化学原料分配器100内に入れることを含んでもよい。本方法は、化学原料供給流102を細長い化学原料供給流経路109に沿って通過させ、化学原料分配器100から出して、複数の化学原料排出口107を通して容器110に入れることを更に含むことができる。上記の様々な実施形態に従って説明したように、化学原料分配器100は、本体105を備えることができる。本体105は、1つ以上の壁106及び複数の化学原料排出口107を備えてもよい。1つ以上の壁106は、細長い化学原料供給流経路109を画定してもよい。複数の化学原料排出口107は、細長い化学原料供給流経路109の長さの少なくとも一部に沿って壁106上に離間され得る。壁106によって画定される細長い化学原料供給流経路109は、上流側流体経路部分111と下流側流体経路部分112とを含むことができる。上流側流体経路部分111は、化学原料注入口101から始まる細長い化学原料供給流経路109の距離の第1のセグメントに沿っていてもよい。下流側流体経路部分112は、細長い化学原料供給流経路109の距離の第2のセグメントに沿っていてもよい。壁106は、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積よりも大きくなるように配置することができる。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、容器110内部の温度は650℃より高くてもよく、化学原料分配器100の外周の最高表面温度は、容器110内部の温度を超えなくてもよい。他の実施形態では、容器110内部の温度は650℃より高くてもよく、化学原料分配器100の外周の最高表面温度は、500℃を超えなくてもよい。
【0041】
以下で更に説明するように、図3A図3B、及び図4は、本明細書に記載の実施形態による化学原料分配器100の外周の最高表面温度及びピーク表面温度を更に示す。図4は、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積よりも大きい実施形態(図4の402)を、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積に等しい化学原料分配器100(図4の401)と比較している。
【0042】
本明細書で前述したように、本明細書の実施形態の化学原料分配器100は、コーキングのリスクを低減することができる。コーキングは、閉塞及び流量不均等分布のリスクを生じ得るので、本明細書の実施形態の化学原料分配器100は、閉塞及び流量不均等分布のリスクを低減し得る。流量不均等分布はまた、化学原料分配器100内の化学原料供給流102の加熱によって引き起こされる場合があり、これは、熱誘発流量不均等分布と呼ばれる場合がある。化学原料分配器100内の化学原料供給流102の温度が上昇すると、化学原料供給流102の密度は減少し得る。質量流量は、ガス密度の平方根に比例する。化学原料供給流102の密度が化学原料分配器100の長さに沿って減少する場合、質量流量も化学原料分配器100の長さに沿って減少し得る。しかしながら、本開示の1つ以上の実施形態によれば、化学原料供給流102の温度上昇はより小さくてもよく、これは次に、化学原料供給流102の密度の任意の変化を減少させる。したがって、熱誘発流量不均等分布を低減することができる。
【0043】
本開示の実施形態では、流量不均等分布(熱誘発流量不均等分布を含む)の相対的低減は、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積に等しい実施形態と比較して、±30.0%未満、例えば、±27.5%未満、25.0%未満、22.5%未満、20.0%未満、17.5%未満、±15.0%未満、±12.5%未満、±10.0%未満、±7.5%未満、±7.0%未満、±6.5%未満、±6.0%未満、±5.5%未満、±5.0%未満、±4.5%未満、±4.0%未満、±3.5%未満、±3.0%未満、又は±3.0%未満であり得る。流量不均等分布は、第1原理質量、運動量保存及びエネルギー保存則に従ってシステム内の3D圧縮性流れ及び共役熱伝達を数値的に予測することができる計算流体力学(CFD)プログラムANSYS Fluent(登録商標)を使用することによって決定することができる。流量不均衡分布は、単に、分配器に沿った様々な点における完全な平均質量分布からの偏差である。
【0044】
図5に示すように、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積よりも大きい本開示の実施形態(図5の502)は、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積に等しい実施形態(図5の501)と比較して、流量不均等分布の減少を示す。実際に、本実施形態の流量不均等分布は、±15.0%未満であり得る。逆に、上流側流体経路部分111の平均断面積が下流側流体経路部分112の平均断面積に等しい実施形態の流量不均等分布は、図5に示すように、±21.0%もの大きさであり得る。
【実施例
【0045】
化学原料分配器を通して化学原料を分配するためのシステム及びプロセスの種々の実施形態は、以下の実施例によって更に明確にされる。実施例は、本質的に例示的なものであり、本開示の主題を限定するものと理解するべきではない。
【0046】
実施例1:上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きいことによる効果
実施例1では、3D計算流体力学(CFD)モデルを使用して、下流側流体経路部分の平均断面積より大きい上流側流体経路部分の平均断面積を有する化学原料分配器(以下、「化学原料分配器A」)を、上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分に沿って一定の断面積を有する化学原料分配器(以下、「化学原料分配器B」)と比較した。両方の化学原料分配器は、100インチの長さを有する。更に、両方の化学原料分配器は、46個の化学原料排出口を有する。メタン、エチレン、及びプロピレンを含むガス流を化学原料分配器に供給した。次いで、化学原料分配器は、ガス流よりも高く約680℃の温度で動作する流動床反応器内にガス流を導いた。両方の化学原料分配器は、約30~150ft/秒の同じ化学原料供給流入口線形ガス速度を有し、標準注入口速度は60~80ft/秒である。
【0047】
実施例1では、化学原料分配器Aは、下流側流体経路部分の直径の約2倍の直径を有する上流側流体経路部分を有する。逆に、化学原料分配器Bは、一定の直径を有する上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分を有する。更に、化学原料分配器Aの最後の化学原料排出口は、化学原料分配器の端部から0.5インチに配置される。化学原料分配器Bの最後の化学原料排出口は、化学原料分配器の端部から6.5インチに配置される。
【0048】
図3A及び図3Bに示されるように、上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分に沿って一定の断面積を有する化学原料分配器(図3A)は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積より大きい本開示による実施形態(図3B)と比較される。化学原料分配器の内壁の外周の最高表面温度は、CFDモデルから得られた。上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分に沿って一定の断面積を有する化学原料分配器と比較して、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きい化学原料分配器は、より低い外周の最高表面温度を示す。
【0049】
図4に示すように、上流側流体経路部分に沿って一定の断面積を有する化学原料分配器の化学原料注入口と反対側の端部は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きい化学原料分配器よりもはるかに高い外周の最高表面温度を有する。図4は、上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分に沿った断面積が一定のままである化学原料分配器(401)と比較して、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きい化学原料分配器(402)の長さ全体でより低くより均一な外周の最高表面温度を示す。更に、図4は、外周の最高表面温度が、上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分に沿った断面積が一定のままである実施形態(401)ほど高い温度に達しないことを実証する。このより低い外周の最高表面温度は、本明細書で前述したように、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きい場合の化学原料供給流の線形ガス速度によるものであり得る。外周の最高表面温度は、コーキングのリスクを低減するために、供給流、供給流の入口流量、化学原料供給流経路の全長、化学原料排出口の位置、並びに上流側流体経路部分及び下流側流体経路部分の平均断面積を調整することによって、プロセスの必要性に基づいて調整され得ることが当業者には明らかであろう。
【0050】
本開示の1つ以上の態様が本明細書で説明される。第1の態様は、化学原料供給流を化学原料分配器内に入れる化学原料注入口と、1つ以上の壁及び複数の化学原料排出口を備える本体であって、1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し、複数の化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部に沿って壁上に離間され、複数の化学原料排出口は、化学原料供給流を化学原料分配器から排出して容器に入れるように動作可能である、本体と、を備える、化学原料分配器を含むことができ、壁によって画定される細長い化学原料供給流経路は、化学原料注入口から始まる細長い化学原料供給流経路の距離の第1のセグメントに沿った上流側流体経路部分と、細長い化学原料供給流経路の距離の第2のセグメントに沿った下流側流体経路部分とを備え、壁は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置される。
【0051】
第2の態様は、細長い化学原料供給流経路の最小断面積が、細長い化学原料供給流経路の最大断面積の50%未満である、第1の態様を含み得る。
【0052】
第3の態様は、細長い化学原料供給流経路に対して最も下流側の化学原料排出口が、細長い化学原料供給流経路の終端点を画定する端部壁から2インチ以内に配置されている、第1又は第2の態様のいずれかを含み得る。
【0053】
第4の態様は、細長い化学原料供給流経路に対して最も下流側の化学原料排出口が、細長い化学原料供給流経路の終端点において細長い化学原料供給流経路の内径に等しい距離内に配置されている、第1~第3の態様のいずれかを含み得る。
【0054】
第5の態様は、1つ以上の壁が、第1のパイプと、錐台形状の移行セクションと、第2のパイプとを備え、第1のパイプは錐台形状の移行セクションと接触しており、錐台形状の移行セクションは第2のパイプと接触している、第1~第4の態様のいずれか1つを含み得る。
【0055】
第6の態様は、第1のパイプの中心軸と第2のパイプの中心軸が平行である、第5の態様を含み得る。
【0056】
第7の態様は、1つ以上の壁が、第1の壁と、第1の壁以上の内径を有する第2の壁とを備え、第2の壁は第1の壁を取り囲み、第1の壁の内面は上流側流体経路部分を画定し、第1の壁の外面及び第2の壁の内面は下流側流体経路部分を画定する、第1~第4の態様のいずれか1つを含み得る。
【0057】
第8の態様は、細長い化学原料供給流経路の下流側部分が、細長い化学原料供給流経路の上流側部分を取り囲む、第7の態様を含み得る。
【0058】
第9の態様は、第1の壁が第1の成形パイプを備え、第2の壁が第2の成形パイプを備える、第7の態様を含み得る。
【0059】
第10の態様は、化学原料分配器の本体内部に化学原料供給流ガイドを更に備え、化学原料供給流ガイドは、化学原料分配器の長さに沿った細長い化学原料供給流経路の一部に沿って断面積を減少させる、第1~第4の態様のいずれか1つを含み得る。
【0060】
第11の態様は、化学原料供給流ガイドの平均断面積が、上流側流体経路部分よりも下流側流体経路部分において大きい、第10の態様を含み得る。
【0061】
第12の態様は、化学原料分配器が、本体の壁を裏打ちする耐火材料を含む、第1~第11の態様のいずれか1つを含み得る。
【0062】
第13の態様は、細長い化学原料供給流経路の下流側流体経路部分を画定する壁を裏打ちする耐火材料の厚さが、細長い化学原料供給流経路の上流側流体経路部分を画定する壁を裏打ちする耐火材料の厚さより大きい、第1~第12の態様のいずれか1つを含み得る。
【0063】
第14の態様は、化学原料を分配するための方法を含むことができ、この方法は、化学原料供給流を化学原料注入口を通して化学原料分配器に入れることであって、化学原料分配器は、1つ以上の壁及び複数の化学原料排出口を備える本体を備え、1つ以上の壁は、細長い化学原料供給流経路を画定し、複数の化学原料排出口は、細長い化学原料供給流経路の長さの少なくとも一部に沿って壁上に離間され、壁によって画定される細長い化学原料供給流経路は、化学原料注入口から始まる細長い化学原料供給流経路の距離の第1のセグメントに沿った上流側流体経路部分と、化学原料供給流経路の距離の第2のセグメントに沿った下流側流体経路部分とを備え、壁は、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きくなるように配置される、ことと、化学原料供給流を細長い化学原料供給流経路に沿って通過させ、化学原料分配器から排出して、複数の化学原料排出口を通して容器に入れることと、を含む。
【0064】
第15の態様は、容器内部の温度が650℃超であり、化学原料分配器の外周の最高表面温度が650℃を超えず、流動触媒が容器内に存在する、第14の態様を含み得る。
【0065】
加えて、図5に示されるように、本開示の実施形態では、化学原料分配器全体の化学原料排出口当たりの流量は、はるかに安定している。すなわち、上流側流体経路部分の平均断面積が下流側流体経路部分の平均断面積よりも大きい場合、化学原料排出口当たりの流量は、より均一でかつ一定である。本明細書で前述したように、この流量不均等分布の低下は、化学原料分配器におけるコーキングの減少に起因し得る。
【0066】
最後に、特許請求された主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正及び変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書に記載される様々な実施形態のそのような修正及び変更を包含することを意図する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】