(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】受動相互変調を低減するための磁性フィルムを有するシステム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20231018BHJP
H01P 1/04 20060101ALI20231018BHJP
H01P 1/23 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
H05K9/00 H
H01P1/04
H01P1/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519595
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 IB2021058252
(87)【国際公開番号】W WO2022069979
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ブルゾーン,チャールズ エル.
(72)【発明者】
【氏名】トステンルード,ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハメード,ゾハイブ
(72)【発明者】
【氏名】キーニー,ジェフリー ディー.
【テーマコード(参考)】
5E321
5J011
【Fターム(参考)】
5E321AA01
5E321AA23
5E321BB31
5E321BB44
5E321BB60
5E321GG07
5J011DA11
(57)【要約】
無線通信システムが、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体と、第1の実質的に線形の受動媒体に近接して配置された導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体と、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも一部分を覆う第1の磁性フィルムとを含む。送信機が第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するときに、第1の実質的に線形の受動媒体及び第1の実質的に非線形の受動媒体は、第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で内部を伝播する第1の信号及び第2の信号を発生させる。nF1+mF2(m及びnは正又は負の整数)に等しい周波数F3を有する少なくとも1つの相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体において発生する。第1の磁性フィルムは、少なくとも1つの相互変調信号を少なくとも2dBだけ低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、
導電性の第1の実質的に線形の受動媒体と、
前記第1の実質的に線形の受動媒体に近接して配置された導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体と、
前記第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分及び導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う、第1の磁性フィルムと、を含み、前記送信機が前記第1の電磁波及び前記第2の電磁波を送信するときに、前記第1の実質的に線形の受動媒体及び前記第1の実質的に非線形の受動媒体が、前記第1の電磁波及び前記第2の電磁波を受信し、それぞれの前記周波数F1及びF2で内部を伝播する第1の信号及び第2の信号を発生させ、少なくとも1つの相互変調信号が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体において前記第1の信号及び前記第2の信号から発生し、前記少なくとも1つの相互変調信号が、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数であり、前記第1の磁性フィルムが、前記少なくとも1つの相互変調信号の前記発生を少なくとも2dBだけ低減する、無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の実質的に線形の受動媒体において前記第1の信号及び前記第2の信号から発生する任意の相互変調信号が振幅Aを有し、前記第1の実質的に非線形の受動媒体において発生する前記少なくとも1つの相互変調信号の振幅がBであり、BがAよりも少なくとも3dB大きい、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1の磁性フィルムが、前記第1の実質的に線形の受動媒体の周りに少なくとも部分的に巻き付いている、請求項1又は2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の磁性フィルムが、前記実質的に線形の受動媒体の一部分を前記第1の磁性フィルムの両端の間に露出させたままで前記第1の実質的に線形の受動媒体の周りに部分的にのみ巻き付いており、露出した前記部分が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体とは反対側に面している、請求項1~3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1の磁性フィルムが、前記第1の実質的に線形の受動媒体の周りに螺旋状に巻き付いている、請求項1~3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1の実質的に線形の受動媒体が、前記送信機を支持するための支持構造体の一部分であり、前記第1の実質的に非線形の受動媒体が、前記支持構造体に取り付けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
無線通信システムであって、
それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、
導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分と、
前記第1の実質的に非線形の受動媒体部分に近接して配置された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分であって、前記送信機が前記第1の電磁波及び前記第2の電磁波を送信するときに、前記第1の電磁波及び前記第2の電磁波を受信し、それぞれの前記周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させ、前記第1の信号及び前記第2の信号が、前記導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分に向かって前記第1の実質的に線形の受動媒体部分を第1の経路に沿って伝播し、相互変調信号が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体部分において前記第1の信号及び前記第2の信号から発生し、前記相互変調信号が、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分と、
前記第1の実質的に線形の受動媒体部分の少なくとも第1の部分を前記第1の経路に沿って覆い、前記第1の実質的に線形の受動媒体部分を伝播する発生した前記第1の信号及び前記第2の信号を、前記第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生した前記相互変調信号よりも大きく減衰させるように配置された第1の磁性フィルムと、
を含む、無線通信システム。
【請求項8】
前記第1の実質的に線形の受動媒体部分において前記第1の信号及び前記第2の信号から発生する任意の相互変調信号が振幅Aを有し、前記第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生する前記相互変調信号の振幅がBであり、BがAよりも少なくとも3dB大きい、請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
少なくとも前記第1の相互変調信号及び前記第2の相互変調信号が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体部分において前記第1の信号及び前記第2の信号から発生し、前記第1の相互変調信号及び前記第2の相互変調信号が、それぞれ異なる周波数F3及びF3’を有し、F3及びF3’の各々がnF1+mF2に等しく、m及びnは正又は負の整数であり、前記第1の磁性フィルムが、前記第1の相互変調信号及び前記第2の相互変調信号をそれぞれ少なくとも2dBだけ低減する、請求項7又は8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
F1とF2との間の差が、約5MHz~約1GHzである、請求項1~9のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項11】
F1及びF2の各々が、約100MHz~約10GHzである、請求項1~10のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項12】
受動相互変調を低減するためのシステムであって、
それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの前記周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体であって、前記第1の信号及び前記第2の信号が、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体に向かって前記第1の実質的に線形の受動媒体を第1の経路に沿って伝播し、相互変調信号が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体において前記第1の信号及び前記第2の信号から生成され、前記相互変調信号が、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体と、
前記第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分を前記第1の経路に沿って覆い、前記第1の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う第1の磁性フィルムと、
を含む、システム。
【請求項13】
受動相互変調を低減するためのシステムであって、
それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの前記周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体であって、前記第1の信号及び前記第2の信号が、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体に向かって前記第1の実質的に線形の受動媒体を第1の経路に沿って伝播し、相互変調信号が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体において前記第1の信号及び前記第2の信号から生成され、前記相互変調信号が、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体と、
前記第1の実質的に線形の受動媒体の第1の部分を前記第1の経路に沿って覆い、前記第1の実質的に線形の受動媒体の第2の部分を露出させたままにする第1の磁性フィルムであって、前記第1の磁性フィルムが、前記第1の実質的に非線形の受動媒体に面し、前記第2の部分が、前記第1の実質的に非線形の受動媒体とは反対側に面する、第1の磁性フィルムと、
を含む、システム。
【請求項14】
前記第1の実質的に線形の受動媒体において前記第1の信号及び前記第2の信号から生成される任意の相互変調信号が振幅Aを有し、前記第1の実質的に非線形の受動媒体において生成される前記相互変調信号の振幅がBであり、BがAよりも少なくとも3dB大きい、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
受信機を更に含み、前記相互変調信号が生成されるときに、前記相互変調信号が、周波数F3で電磁波を放射し、前記受信機が、放射された前記電磁波を検出し、前記第1の磁性フィルムが、前記受信機によって検出される放射された前記電磁波を少なくとも2dBだけ低減する、請求項12~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
無線通信ネットワークが進化するにつれて、信号品質(より具体的には、信号対雑音比、つまりSNR)がますます重要になってくる。非常に高いデータ速度を達成するために、より高次の変調が使用され、それに応じて、より高いレベルのSNRが必要とされる。SNR劣化の一般的な原因は、ネットワークの性能及び能力を著しく低減し得る受動相互変調(Passive Intermodulation、PIM)歪みである。PIM歪みは、複数の周波数が非線形の材料又は特徴部に遭遇したときに生成され、次いで、基本周波数及びそれらの高調波の和及び差の組み合わせ(積)を発生させる。得られた積は、しばしば、対象の信号が非常に弱いアップリンク/受信周波数帯域で生じ、コヒーレント受信が非常に困難に、あるいは不可能になる。
【0002】
PIMを生成又は伝播し得る多くのメカニズムが多く存在する。典型的には、システム内における導電性の機械的構成要素の相互作用及び相互接続は、システム内に非線形要素を生成し得る。場合によっては、アンテナ取り付けブラケットの位置における金属間の接触不良によって、又はブラケットが異種材料間の接合部を含む場合に、非線形性部が生じ得る。非線形性部の他の原因は、汚染、緩んだ接続、近傍の金属物体、又は様々な他の原因であり得る。
【発明の概要】
【0003】
本明細書は、概して、少なくとも1つの磁性フィルムを含む、無線通信システムなどのシステムに関する。磁性フィルムは、無線通信システムにおける受動相互変調歪みの影響を軽減するために含まれ得る。
【0004】
本明細書のいくつかの態様では、無線通信システムが提供される。無線通信システムは、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体と、第1の実質的に線形の受動媒体に近接して配置された導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体と、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分及び導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う第1の磁性フィルムと、を含む。送信機が第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するときに、第1の実質的に線形の受動媒体及び第1の実質的に非線形の受動媒体は、第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で内部を伝播する第1の信号及び第2の信号を発生させる。少なくとも1つの相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から発生する。少なくとも1つの相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。第1の磁性フィルムは、少なくとも1つの相互変調信号の発生を少なくとも2dBだけ低減する。
【0005】
本明細書のいくつかの態様では、無線通信システムが提供される。無線通信システムは、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分と、第1の実質的に非線形の受動媒体部分に近接して配置された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分であって、送信機が第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するときに、第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させる導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分と、を含む。第1の信号及び第2の信号は、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分に向かって第1の実質的に線形の受動媒体部分を第1の経路に沿って伝播する。相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において第1の信号及び第2の信号から発生する。相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。無線通信システムは、第1の実質的に線形の受動媒体部分の少なくとも第1の部分を第1の経路に沿って覆い、第1の実質的に線形の受動媒体部分を伝播する発生した第1の信号及び第2の信号を、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生した相互変調信号よりも大きく減衰させるように配置された第1の磁性フィルムを更に含む。
【0006】
本明細書のいくつかの態様では、受動相互変調を低減するためのシステムが提供される。システムは、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体を含む。第1の信号及び第2の信号は、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体に向かって第1の実質的に線形の受動媒体を第1の経路に沿って伝播する。相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から生成される。相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。システムは、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分を第1の経路に沿って覆い、第1の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う第1の磁性フィルムを更に含む。
【0007】
本明細書のいくつかの態様では、受動相互変調を低減するためのシステムが提供される。システムは、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体を含む。第1の信号及び第2の信号は、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体に向かって第1の実質的に線形の受動媒体を第1の経路に沿って伝播する。相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から生成される。相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。システムは、第1の実質的に線形の受動媒体の第1の部分を第1の経路に沿って覆い、第1の実質的に線形の受動媒体の第2の部分を露出させたままにする第1の磁性フィルムを更に含む。第1の磁性フィルムは、第1の実質的に非線形の受動媒体に面し、第2の部分は、第1の実質的に非線形の受動媒体とは反対側に面する。
【0008】
これら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、いかなる場合も、この簡潔な概要は、特許請求の範囲の主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書の一実施形態による無線通信システムの概略側面図である。
【
図2】本明細書の一実施形態による無線通信システムにおいて信号を伝播させ得る導電性受動媒体の概略側面図である。
【
図3】本明細書の一実施形態による、磁気吸収フィルムを有する導電性受動媒体の概略側面図である。
【
図4】本明細書の一実施形態による、第1の導電性部分と第2の導電性部分との間の接合部を示す、導電性受動媒体の概略側面図である。
【
図5】本明細書の代替的な実施形態による、金属と金属酸化物との間の接合部を示す、導電性受動媒体の概略側面図である。
【
図6】本明細書の代替的な実施形態による、金属腐食を示す導電性受動媒体の概略側面図である。
【
図7】本明細書の一実施形態による、無線通信システムの送信周波数及び相互変調周波数を示す概略グラフである。
【
図8A】本明細書のいくつかの実施形態による、受動変調を低減するためのシステムの概略図である。
【
図8B】本明細書のいくつかの実施形態による、受動変調を低減するためのシステムの概略図である。
【
図8C】本明細書のいくつかの実施形態による、受動変調を低減するためのシステムの概略図である。
【
図8D】本明細書のいくつかの実施形態による、受動変調を低減するためのシステムの概略図である。
【
図8E】本明細書のいくつかの実施形態による、受動変調を低減するためのシステムの概略図である。
【
図8F】本明細書のいくつかの実施形態による、受動変調を低減するためのシステムの概略図である。
【
図9】本明細書のいくつかの実施形態による、磁性フィルムの透磁率対周波数のプロットである。
【
図10】本明細書のいくつかの実施形態による、磁性フィルムの透磁率対周波数のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施され得る点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0011】
無線通信ネットワークが進化するにつれて、信号品質(より具体的には、信号対雑音比、つまりSNR)がますます重要になってくる。非常に高いデータ速度を達成するために、より高次の変調(64QAM、256QAMなど)が使用され、それに応じて、より高いレベルのSNRが必要とされる。SNR劣化の一般的な原因は、ネットワークの性能及び能力を著しく低減し得る受動相互変調(PIM)歪みである。PIM歪み(略して「PIM」)は、複数の周波数が非線形の材料又は特徴部に遭遇したときに生成され、次いで、基本周波数及びそれらの高調波の和及び差の組み合わせ(積)を発生させる。得られた積、典型的に3次積、5次積及び/又は7次積は、しばしば、対象の信号が非常に弱いアップリンク/受信周波数帯域で生じ、コヒーレント受信が非常に困難に、あるいは不可能になる。
【0012】
PIMは、システムが、ケーブル、コネクタ、アンテナ、取り付けブラケット、及びシステムの伝送経路内又は伝送経路の近傍にある他の物体などの、受動デバイスを介して複数の周波数の信号を同時に送信するときに、無線通信システム内で発生する電磁干渉の一形態である。PIM干渉は、セルラー基地局のアンテナなど、高電力で送信するノードにおいて特に顕著になる。PIMは、システムの機械的構成要素における非線形性部に起因して、異なる周波数の2つ以上の信号が互いに混合したときに発生する。2つの信号が(振幅変調によって)合成され、無線システムの動作帯域内で、信号の高調波内に含めて和信号及び差信号が生成されて、干渉を引き起こすことがある。
【0013】
PIMを生成又は伝播し得る多くのメカニズムが多く存在する。典型的には、システム内における導電性の機械的構成要素の相互作用及び相互接続は、システム内に非線形要素を生成し得る。場合によっては、アンテナ取り付けブラケットの位置における金属間の接触不良によって、又はブラケットが異種材料間の接合部を含む場合に、非線形性部が生じ得る。例えば、セルラー基地局の基本周波数(例えば、F1及びF2)は、亜鉛めっき鋼マスト上に取り付けられたアンテナにより放射され得る。これらの周波数で鋼マストに信号(例えば、電流及び/又は電圧)が誘導されると、それらの信号は、取り付けブラケット(すなわち、非線形性部)に遭遇し、非線形性部内で混合されて、新しい周波数F3の第3の信号(すなわち、相互変調信号)を形成し得る。相互変調信号は、ブラケットからPIMとして放射されることがあり、かつ/又は、導電性の線形部分によって、ブラケットから離れるように伝導されることがあり、その導電性の線形部分はPIMのためのアンテナとして機能し、かつ、非線形のブラケットよりも更に良好な効率でPIMを放射し得る。ブラケットをカプセル化し、ブラケットによるPIMの放射を防止するために、導電性シールドがしばしば適用されるが、相互変調信号(例えば、電流)は依然として、ブラケットから構造全体を通って、並びに他のアンテナまで移動し、最終的には、再放射され、ネットワークを劣化させ得る。
【0014】
非線形性部の(したがって、PIMの)他の原因は、汚染、(例えば、錆、腐食、汚れ、酸化など)、緩んだ接続、近傍の金属物体(例えば、支線、アンカー、屋根用雨押さえ、パイプなど)、又は様々な他の原因であり得る。
【0015】
本明細書のいくつかの態様によれば、無線通信システム(例えば、構成要素としてセルラー基地局を含むシステム)は、導電性の受動媒体(例えば、アンテナマストの金属製の構造体)であって、それぞれ異なる周波数F1及びF2の第1の電磁信号及び第2の電磁信号を導電性の受動媒体に沿って同時に伝播することができる導電性の受動媒体を含む。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号の少なくとも1つが、電流を含む。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号の少なくとも1つが、電圧を含む。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、類似しているが異なる周波数(すなわち、F1及びF2)で送信される2つの無線周波数(RF)信号により発生し得る。いくつかの実施形態では、F1及びF2の各々は、約100MHz~約10GHz、約200MHz~約5GHz、又は約300MHz~約3GHzである。いくつかのそのような実施形態又は他の実施形態では、F1とF2との間の差が、約5MHz~約1GHz、約10MHz~約900MHz、約10MHz~約800MHz、又は約10MHz~約700MHzである。
【0016】
例えば、一実施形態では、F1は869MHzであってもよく、F2は894MHzであってもよく、外部デバイス(例えば、モバイルデバイス)から返される信号のための隣接する受信帯域を有する。例えば、隣接する受信帯域は、824~849MHzであり得る。別の受信帯域は、送信帯域よりも上の周波数範囲(すなわち、送信帯域周波数の範囲よりも上の周波数)に隣接し得る。これらの基本周波数を混合して、式nF1+mF2に基づいて、新しい周波数の積を生成することができ、m及びnは、正又は負の整数である。この例における(例えば、mとnの両方が+1であるときの)変調された信号の単純な加算は、869+894=1763MHzの信号を生成し、(例えば、nが+1であり、mが-1であるときの)信号間の差は、894-869=25MHzとなる。25MHzと1763MHzは、両方ともセルラーシステムの対象の受信帯域から外れており、したがって、これらの信号は、その特定のセルラーシステムにとって懸念ではない(しかし、これらの周波数は、近くの別のシステムの対象の受信帯域又は受信スペクトル内であることがあり、したがって、それらのシステムにおいて、PIM干渉を引き起こし得る)。しかしながら、これらの信号を合成して3次積(m及びnの絶対値の和が3であるとき)を、時にはより高次の積を形成する場合、これらは、対象の受信帯域内のPIM信号を発生させることができる。例えば、2F1-F2(844MHz)及び2F2-F1(919MHz)は、PIM歪みにつながり得る、セルラー帯域の受信部分内の3次積を生成する。
【0017】
いくつかの実施形態では、導電性受動媒体は、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分に隣接する導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分を含む。相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において第1の信号及び第2の信号から発生し得る。相互変調信号は、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用(例えば、第1の実質的に非線形の受動媒体と相互作用する第1の信号及び第2の信号から生じる間接的な相互作用)に基づいて発生し得る。例えば、いくつかの実施形態では、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分は、セルラーアンテナが取り付けられた金属製マスト(例えば、亜鉛めっき鋼マスト)であってもよく、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分は、異種金属製の取り付けブラケットであってもよい。異種材料のこの接合部又は合流点は、(周波数F1及びF2の)第1の信号及び第2の信号を混合して新しい周波数の相互変調信号(PIM)を生成する、ダイオードと同様に作用する非線形性部を生成し得る。いくつかの実施形態では、非線形性部は、2つの異種金属間の接合部により生成され得る。いくつかの実施形態では、非線形性部は、金属と金属酸化物(例えば、酸化効果により生じる金属酸化物)との間の接合部により生成され得る。いくつかの実施形態では、非線形性部は、腐食領域又は汚染領域(例えば、錆の領域、汚れなどの汚染物質、金属間の接触不良、など)に反応し得る。
【0018】
媒体部分は、媒体の一部分である。媒体部分は、例えば、媒体、又は隣接する材料間の接触点若しくは接合部であり得る。隣接する材料間の接触点又は接合部が、接合部又は接触点を含み、かつ接合部又は接触点による影響を著しく受ける電気特性を有する媒体として、実質的に非線形の媒体を画定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、異なるフェルミ準位を有する2つの金属間の接合部によって生成される非線形性部について、接合部にわたる電荷の移動が生じて、フェルミ準位を等化し、かつ接合部の周りの(例えば、金属の全体寸法と比べて小さいが、金属の原子格子間隔と比べて大きくなり得る厚さを有する)薄い領域の電気特性に著しく影響を及ぼす双極子を作り出し、それにより、この領域が実質的に非線形の媒体を画定する。第1の(含まれる場合には、それぞれ第2、第3などの)実質的に線形の受動媒体部分は、第1の(それぞれ第2、第3などの)実質的に線形の受動媒体であり得る。これは、媒体の一部分を媒体とみなすことができるためであり、同様に、第1の(含まれる場合には、それぞれ第2、第3などの)実質的に非線形の受動媒体部分は、第1の(それぞれ第2、第3などの)実質的に非線形の受動媒体であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムが、第1の実質的に線形の部分の導電性の外面に近接して配置され得る。いくつかの実施形態では、無線通信システムは、第1の実質的に線形の受動媒体部分の反対側で導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分に隣接する、導電性の第2の実質的に線形の受動媒体部分を更に含み得る(例えば、実質的に非線形の部分は、第1の実質的に線形の部分と第2の実質的に線形の部分との間に「挟まれ」得る)。いくつかの実施形態では、第2の磁性フィルムが、第2の実質的に線形の部分の導電性の外面に近接して配置されてもよく、第1の信号及び第2の信号が、第1の実質的に線形の部分に沿って実質的に非線形の部分に向かって伝播するときに、第1の磁性フィルムが、第1の信号及び第2の信号の少なくとも一部分を吸収することによって、第1の実質的に非線形の部分における相互変調信号の発生を低減する。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号の残りの部分の少なくとも一部分が第1の実質的に非線形の部分において混合して、第1の実質的に非線形の部分及び第2の線形部分を通って伝播する相互変調信号を発生させ、相互変調信号は、第2の磁性フィルムによって少なくとも部分的に吸収される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、導電性の実質的に線形の受動媒体に結合されたアンテナから送信される電磁放射によって誘導され得る。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、第1の実質的に線形の受動媒体部分に結合された第2の実質的に非線形の受動媒体から放射される電磁放射によって誘導され得る。つまり、PIM歪みは、実質的に線形の部分に結合された第2の実質的に非線形の部分において生成され、かつ、第2の実質的に非線形の部分から放射され、実質的に線形の部分において信号を誘導させ得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、相互変調信号は、第1の実質的に非線形の受動媒体に沿って伝播するnF1+mF2と等しい周波数F3を有し得、m及びnは正又は負の整数である。例えば、本明細書の他の箇所で論じられるように、nは2であってもよく、mは-1であってもよく、又は、nは-1であってもよく、mは2であってもよい。これらの値は例にすぎず、他の値のn及びmが可能である。いくつかの実施形態では、m及びnのうちの一方は負の整数であり、m及びnのうちの他方は正の整数である。いくつかの実施形態では、nは-1に等しくてもよく、mは+2に等しくてもよく、したがって、F3は2F2-F1に等しい。いくつかの実施形態では、nは+2に等しくてもよく、mは-1に等しくてもよく、したがって、F3は2F1-F2に等しい。いくつかの実施形態では、nは+1に等しくてもよく、mは+1に等しくてもよく、したがって、F3はF1+F2に等しい。いくつかの実施形態では、nは+2に等しくてもよく、mは+2に等しくてもよく、したがって、F3は2F1+2F2に等しい。いくつかの実施形態では、F1とF2は両方とも約6GHz未満である。いくつかの実施形態では、F1とF2は両方とも約600MHz~4GHzである。いくつかの実施形態では、F1とF2は両方とも約600MHz~800MHzである。いくつかの実施形態では、F1及びF2は、約100MHz未満離れている周波数、又は約50MHz未満離れている周波数である。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号が、第1の実質的に線形の受動媒体部分に沿って第1の実質的に非線形の受動媒体部分に向かって伝播するときに、磁性フィルムが、第1の信号及び第2の信号の少なくとも一部分を減衰させることによって、第1の実質的に非線形の受動媒体における相互変調電流の発生を低減する(例えば、対応する構造を通る信号の伝播を妨げる)ように、第1の磁性フィルムが、第1の実質的に線形の媒体部分の導電性の外面に近接して配置される。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、第1の実質的に非線形の受動媒体部分によって発生し、第1の実質的に非線形の受動媒体部分から放射される相互変調放射の強度を、少なくとも2dB、少なくとも3dB、少なくとも3.5dB、少なくとも4dB、少なくとも5dB、又は少なくとも6dB(例えば、2dB~100dB又は3dB~50dB)だけ低減し得る。
【0023】
磁性フィルムは、約100MHz~約10GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に対して約10よりも大きい実数部を有する比透磁率を有し得る。磁性フィルムは、約100MHz~約10GHzの範囲内の少なくとも1つの周波数に対して約5よりも大きい虚数部、又は本明細書の他の箇所に記載される任意の範囲内の虚数部を有する比透磁率を有し得る。磁性フィルムは、導電性であるか、若しくは導電層を含んでもよく、又は磁性フィルムは非導電性でもよい。非導電性フィルムが、各方向に沿って(例えば、互いに直交する面内方向に沿って、かつ厚さ方向に沿って)、またフィルムが2つ以上の層を有するいくつかの実施形態におけるフィルムの各層について、(低周波数(例えば、約1kHz以下)で評価されるか、又は静的(直流)に評価される)0Ωm少なくとも100Ωmの電気抵抗率を有し得る。非導電性フィルムは、電気絶縁性フィルムと呼ばれることもある。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム又は他の磁性フィルムは、磁気吸収体であってもよい。磁気吸収体の一例は、3M Company(St.Paul,MN)により製造された、3M(商標)EMI Shielding Absorber AB6000HFシリーズの遮蔽フィルムである。他の適切な磁気吸収体は、3M Companyから入手可能な、3M(商標)FFDM EM25TPなどの3M(商標)Flux Field Direction Material(FFDM)を含む。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは導電層を含む(例えば、3M(商標)EMI Shielding Absorber AB6000HFフィルムは導電性遮蔽層を含む)。他の実施形態では、導電層が含まれない(例えば、3M(商標)Flux Field Direction Material(FFDM)EM25TPフィルムは、導電層なしで入手可能である)。
【0025】
いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、第1の信号及び第2の信号により発生した磁場の少なくとも一部分を吸収することによって、第1の信号及び第2の信号を減衰させ得る。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に非線形の媒体部分のいかなる部分も覆わず、又は任意の実質的に非線形の媒体のいかなる部分も覆わない。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分を(例えば、第1の経路に沿って)覆い、第1の実質的に非線形の受動媒体の約50%以下、又は導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約50%以下を覆う。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分を(例えば、第1の経路に沿って)覆い、第1の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下、又は導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分を(例えば、第1の経路に沿って)覆い、第1の実質的に非線形の受動媒体の約10%以下、又は導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約10%以下を覆う。導電性の実質的に非線形の受動媒体のX%(例えば、50%、20%又は10%)は、導電性受動媒体の連続した非線形部分全体のX%を指し、非線形部分のある部分のX%だけを指す訳ではない。例えば、第1の取り付けブラケットの錆びた部分が実質的に非線形の媒体である実施形態では、導電性の実質的に非線形の受動媒体のX%は、第1の取り付けブラケットの錆びた部分全体のX%を指す。別の例として、第1の取り付けブラケットの連続した第1の錆びた部分が第1の実質的に非線形の媒体であり、第1の取り付けブラケット又は第2の取り付けブラケットの連続した第2の錆びた部分が第2の実質的に非線形の媒体であり、第1の錆びた部分と第2の錆びた部分が互いに離間している(すなわち、第1の錆びた部分と第2の錆びた部分が互いに連続していない)実施形態では、導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約X%以下を覆うとは、第1の錆びた部分全体のX%以下が覆われ、第2の錆びた部分全体のX%以下が覆われることを意味する。導電性の実質的に非線形の受動媒体のX%を磁性フィルムで覆うとは、磁性フィルムに面する実質的に非線形の媒体の面積のX%を覆うことを意味すると理解することができる。例えば、取り付けブラケットが非線形媒体である実施形態では、実質的に非線形の媒体のX%を覆うとは、取り付けブラケットの外面の面積のX%を覆うことを意味すると理解され得る。別の例として、実質的に非線形の媒体が接合部によって画定される実施形態では、実質的に非線形の媒体のX%を覆うとは、接合部の面積のX%を覆うことを意味すると理解することができる。
【0026】
本明細書のいくつかの態様によれば、無線通信システムは、アンテナ(例えば、セルラーアンテナ)と、導電性の実質的に非線形の受動媒体部分(例えば、取り付けブラケット及びアンテナマストなどの2つの異種材料の接合部)と電気的に相互接続された導電性の実質的に線形の受動媒体部分であって、アンテナが、それぞれ異なる周波数F1及びF2の第1の電磁波及び第2の電磁波を放射するときに、第1の電磁波及び第2の電磁波が、第1の実質的に非線形の受動媒体部分を通って伝播する、それぞれの第1の信号及び第2の信号を誘導し、第1の実質的に非線形の受動媒体部分は、第1の信号と第2の信号とを混合して、周波数nF1+mF2を有し、かつ、実質的に非線形の受動媒体部分及び実質的に線形の受動媒体部分に沿って伝播する、第3の信号(すなわち、相互変調電流、又はPIM)を発生させ、m及びnは、正又は負のいずれかであり得る整数である、導電性の実質的に線形の受動媒体部分と、を含む。いくつかの実施形態では、磁性フィルムが、実質的に線形の受動媒体部分に配置されるが、実質的に非線形の受動媒体部分に配置されず、第3の信号の少なくとも一部分を吸収する。例えば、いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、取り付けられたアンテナ取り付けブラケット(実質的に非線形の媒体部分)の前に、伝播経路に隣接して、かつ、伝播経路内のアンテナマスト(実質的に線形の媒体部分)の周りに巻き付けられる、磁気吸収フィルムであり得る。いくつかの実施形態では、実質的に線形の媒体部分に磁性フィルムを配置することで、(例えば、信号によって生成される磁場を吸収することに少なくとも部分的に起因して信号を減衰させることによって)PIM干渉に寄与し得る信号の伝播が妨げられ得る。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、実質的に線形の受動媒体部分と実質的に非線形の受動媒体部分の一部分との両方に配置され得る。実質的に線形の受動媒体において信号を減衰させることで、実質的に非線形の媒体部分における相互変調信号の低減をもたらすことができる。実質的に非線形の媒体部分における相互変調信号の低減を、実質的に線形の媒体部分における信号の低減よりも大きくすることができる。例えば、3次(|m|+|n|=3)の相互変調信号に対して、実質的に非線形の媒体部分における相互変調信号の電力の約3dBの低減を、実質的に線形の媒体部分における信号の電力の1dBの低減毎に生じさせることができる。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、主に、第1の実質的に線形の受動媒体部分を伝播する第1の信号及び第2の信号の少なくとも一部分を減衰させるように配置される。実質的に線形の受動媒体部分の一部分のみを覆う磁性フィルム、又は実質的に線形の受動媒体部分の一部分及び実質的に非線形の受動媒体部分の一部分を覆う磁性フィルムであって、実質的に線形の受動媒体部分を伝播する第1の信号及び第2の信号の少なくとも一部分を、実質的に非線形の受動媒体部分における信号の少なくとも一部分を減衰させるよりも大きく減衰させることにより、相互変調信号のより大きな減衰をもたらす磁性フィルムは、主に、第1の実質的に線形の受動媒体部分を伝播する第1の信号及び第2の信号の少なくとも一部分を減衰させるように配置されると説明され得る。
【0027】
本明細書のいくつかの態様によれば、無線通信システム(例えば、セルラー基地局)は、1つ以上のアンテナと、複数の間隔を空けた導電性の第1のセクション(例えば、1つ以上の取り付けブラケット、又は不規則な溶接)と、複数の導電性の第2のセクション(例えば、アンテナマストのセクション)であって、1つ以上のアンテナが、それぞれ異なる周波数F1及びF2の第1の電磁波及び第2の電磁波を放射するときに、第1の電磁波及び第2の電磁波が、第1のセクション及び第2のセクションを通って伝播し得る、それぞれの周波数F1及びF2のそれぞれの第1の信号及び第2の信号を誘導するように、第1のセクションと相互接続する、複数の導電性の第2のセクションと、を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のセクションは、第1の信号と第2の信号との混合により(例えば、振幅変調により合成して)、F1及びF2とは異なる周波数F3の第3の信号(例えば、相互変調信号)を発生させ得る。いくつかの実施形態では、発生した第3の信号は、第1のセクション及び第2のセクションに沿って伝播し得、新しい周波数F3の信号を第1のセクションに発生させるが、第2のセクションに発生させず、この信号は、第2のセクションに沿って伝播し得、次いで、周波数F3の電磁エネルギーを放射し得る。いくつかの実施形態では、第2のセクションも、放射される電磁エネルギーの一因となり得る、周波数F3の電気信号を発生させ得る。いくつかの実施形態では、信号のこの「混合」は、第1のセクションにおける非線形性部によって引き起こされ得る。例えば、取り付けブラケットの腐食、緩んだ接続部、又はいくつもの他の原因により、第1のセクションにおける非線形性部が生じることがあり、第1のセクションを信号(例えば、電流又は電圧)ミキサとして機能させ、第1の信号及び第2の信号並びにそれぞれの周波数に基づいて、第3の(相互変調)信号が生成される。いくつかの実施形態では、第2のセクションに沿って伝播する第3の信号の少なくとも一部分を吸収するために、磁性フィルム(例えば、磁気吸収体)が、各第2のセクションの導電性表面に配置され得る(例えば、セクションの外面の周りに巻き付けられる、又は外面に配置される)。
【0028】
本明細書のいくつかの態様によれば、無線通信システムであって、1つ以上のアンテナ(例えば、セルラー基地局上の複数のセルラーアンテナ)と、1つ以上のアンテナに結合された1つ以上のトランシーバ(例えば、モバイルデバイスとセルラーネットワークとの間の無線通信を容易にするために使用される、ベーストランシーバ基地局つまりBTSに収容されたトランシーバ)と、複数の導電性の非線形受動媒体部分と相互接続された複数の導電性の実質的に線形の受動媒体部分と、実質的に線形の媒体部分の少なくとも一部分に配置されるが、実質的に非線形の媒体部分に配置されない、磁性フィルム(例えば、磁気吸収体)と、を含む無線通信システムが提供される。いくつかの実施形態では、実質的に線形の媒体部分及び実質的に非線形の媒体部分はそれぞれ、それぞれ異なる周波数F1及びF2の第1の電磁信号及び第2の電磁信号を同時に伝播することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、実質的に非線形の受動部分はそれぞれ、第1の信号と第2の信号とを混合して、さもなければ合成して、周波数nF1+mF2(m及びnは正又は負の整数である)を有する第3の信号を発生させることができるが、実質的に線形の受動部分は第3の信号を発生させることができない。いくつかの実施形態では、第3の信号は、実質的に非線形の受動媒体部分に沿って、かつ/又は実質的に線形の受動部分に沿って伝播する。いくつかの実施形態では、線形部分に配置された磁気吸収体は、他の場合には実質的に非線形の部分に遭遇したときの第3の信号(例えば、PIM信号)の発生の一因となり得る、実質的に線形の部分における信号の形成を妨げ得る。いくつかの実施形態では、PIM信号は、トランシーバが使用する対象の周波数帯域(例えば、セルラー帯域)内の全体的な雑音レベルを増大させ、通信信号の低下又は歪みにつながる、PIM放射を引き起こすことがある。
【0029】
実質的に線形の媒体又は媒体部分及び実質的に非線形の媒体又は媒体部分は、以下のように理解することができる。第1の信号及び第2の信号が媒体又は媒体部分において誘導され、変調信号又は少なくとも1つの相互変調信号が、(例えば、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用に基づいて)実質的に非線形の媒体又は媒体部分において第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分における第1の信号及び第2の信号から発生するときに、(例えば、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用に基づいて)実質的に線形の媒体において第1の信号及び第2の信号から発生する任意の相互変調信号が振幅Aを有し、実質的に非線形の受動媒体において発生する相互変調信号又は少なくとも1つの相互変調信号の振幅がBであり、BはAよりも少なくとも2.5dB大きい。いくつかの実施形態では、システムが、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体又は媒体部分と、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分とを含む。いくつかの実施形態では、(例えば、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用に基づいて)第1の実質的に線形の受動媒体又は媒体部分において発生する任意の相互変調信号が振幅Aを有し、第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分において発生する相互変調信号又は少なくとも1つの相互変調信号の振幅がBであり、BはAよりも少なくとも3dB、少なくとも4dB、少なくとも5dB、少なくとも6dB、少なくとも8dB、少なくとも10dB、少なくとも15dB、又は少なくとも20dB大きい。
【0030】
本明細書のいくつかの態様によれば、無線通信システムであって、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体と、第1の実質的に線形の受動媒体に近接して配置された導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体と、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分を覆い、いくつかの実施形態では、導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う、第1の磁性フィルムと、を含み、送信機が第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するときに、第1の実質的に線形の受動媒体及び第1の実質的に非線形の受動媒体が、第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で内部を伝播する第1の信号及び第2の信号を発生させる、無線通信システムが提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から発生する。少なくとも1つの相互変調信号は、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用に基づいて第1の実質的に非線形の受動媒体において発生し得る。非線形相互作用は、直接的又は間接的な相互作用であり得る。例えば、非線形作用は、第1の実質的に非線形の受動媒体によって媒介され得る。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、第1の実質的に非線形の受動媒体と相互作用して、少なくとも1つの相互変調信号を発生させる。少なくとも1つの相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、少なくとも1つの相互変調信号の発生を少なくとも2dBだけ、又は他の箇所で説明される範囲内の量だけ低減する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの相互変調信号は、実質的に非線形の媒体及び/又は実質的に線形の媒体を伝播する(例えば、少なくとも1つの相互変調信号は、実質的に非線形の媒体において発生し、実質的に非線形の媒体を実質的に線形の媒体に伝播し、次いで、実質的に線形の媒体を伝播することができる)。いくつかの実施形態では、第1の実質的に線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から発生する任意の相互変調信号が振幅Aを有し、第1の実質的に非線形の受動媒体において発生する少なくとも1つの相互変調信号の振幅がBであり、Bは、Aよりも少なくとも3dBだけ、又は他の箇所で説明される量だけ大きい。
【0031】
本明細書のいくつかの態様によれば、無線通信システムであって、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するように構成された送信機と、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分と、第1の実質的に非線形の受動媒体部分に近接して配置された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分であって、送信機が第1の電磁波及び第2の電磁波を送信するときに、第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させる、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分とを含む、無線通信システムが提供される。第1の信号及び第2の信号は、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分に向かって第1の実質的に線形の受動媒体部分を第1の経路に沿って伝播する。いくつかの実施形態では、相互変調信号(又は少なくとも1つの相互変調信号又は少なくとも2つの相互変調信号)が、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において第1の信号及び第2の信号から発生する。いくつかの実施形態では、相互変調信号が、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用に基づいて、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生する。いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、第1の実質的に非線形の受動媒体部分と相互作用して(例えば、第1の信号と第2の信号との間の間接的な非線形相互作用をもたらし)、相互変調信号を発生させる。相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。無線通信システムは、第1の実質的に線形の受動媒体部分の少なくとも第1の部分を第1の経路に沿って覆い、第1の実質的に線形の受動媒体部分を伝播する発生した第1の信号及び第2の信号を、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生した相互変調信号よりも大きく減衰させるように配置された第1の磁性フィルムを更に含む。例えば、減衰される(例えば、吸収される)相互変調信号がほとんどない又は実質的にない場合でも、第1の実質的に線形の受動媒体部分を伝播する信号を減衰させることで、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生する相互変調信号の実質的な低減を実質的にもたらすことができる。これは、低減が、発生した相互変調信号の減衰によるのではなく、相互変調信号の発生の低減により起こり得るためである。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、相互変調信号を部分的に減衰させることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生した相互変調信号がいくらか減衰するように、第1の実質的に非線形の受動媒体部分の一部分も覆い得る。いくつかの実施形態では、第1の実質的に線形の受動媒体部分において第1の信号及び第2の信号から発生する任意の相互変調信号が振幅Aを有し、第1の実質的に非線形の受動媒体部分において発生する相互変調信号の振幅がBであり、Bは、Aよりも少なくとも3dBだけ、又は他の箇所で説明される量だけ大きい。導電性受動媒体が、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分と、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分とを含み得る。
【0032】
本明細書のいくつかの態様によれば、受動相互変調を低減するためのシステムであって、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成された導電性の第1の実質的に線形の受動媒体を含み、第1の信号及び第2の信号が、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体に向かって第1の実質的に線形の受動媒体を第1の経路に沿って伝播する、システムが提供される。導電性の第1の実質的に線形の受動媒体が、第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、例えば、受信された電磁波から信号を発生させることが可能な材料(例えば、鋼又は他の金属)で作られることによって第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成され得る。第1の電磁波及び第2の電磁波を受信し、第1の信号及び第2の信号を発生させるように構成された適切な実質的に線形の受動媒体が、送信機を支持するための(例えば、金属製の)構造要素(例えば、アンテナマスト)を含む。いくつかの実施形態では、相互変調信号(又は少なくとも1つの相互変調信号又は少なくとも2つの相互変調信号)が、第1の実質的に非線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から生成される。いくつかの実施形態では、相互変調信号は、第1の信号と第2の信号との間の非線形相互作用に基づいて、第1の実質的に非線形の受動媒体において生成される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の信号及び第2の信号は、第1の実質的に非線形の受動媒体と相互作用して、相互変調信号を生成する。相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。システムは、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1のものを第1の経路に沿って覆う第1の磁性フィルムを含む。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下、又は任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に線形の受動媒体の第1の部分を第1の経路に沿って覆い、第1の実質的に線形の受動媒体の第2の部分を露出させたままにし、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に非線形の受動媒体に面し、第2の部分は、第1の実質的に非線形の受動媒体とは反対側に面する。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、相互変調信号を少なくとも2dBだけ、又は他の箇所で説明される範囲内の量だけ低減する。いくつかの実施形態では、第1の実質的に線形の受動媒体において第1の信号及び第2の信号から生成される任意の相互変調信号が振幅Aを有し、第1の実質的に非線形の受動媒体において生成される相互変調信号の振幅がBであり、Bは、Aよりも少なくとも3dBだけ、又は他の箇所で説明される量だけ大きい。
【0033】
次に図を参照すると、
図1は、本明細書のいくつかの実施形態による無線通信システムの側面図である。いくつかの実施形態では、無線通信システム200は、導電性受動媒体10(例えば、金属製のアンテナマスト又は取り付け構造)上に配置された(例えば、導電性受動媒体10上に取り付けられた、導電性受動媒体10によって支持される)1つ以上のアンテナ50を含む。いくつかの実施形態では、導電性受動媒体10は、異なる2つの部分を、導電性の線形受動部分11(例えば、メインシャフトなど、取り付け構造の主要な実質的に異質な要素)と、導電性の非線形受動部分12(例えば、取り付けブラケット、溶接ビード、又は他の接続構造)と、を含み得る。非線形部分12は、線形部分11に対して異なる材料及び/又は異なる状態が存在することにより生成され得ることに留意されたい。つまり、非線形要素は、緩んだ若しくは破損したコネクタポイント又はケーブルにより、錆、腐食、汚れ、酸化などにより、屋根用雨押さえ又はパイプなどの近傍の金属製の物体により、あるいは、いくつかの他の原因のうちのいずれかにより、異なる2つの金属間の(例えば、アンテナマストの亜鉛めっき鋼とマストに取り付けられた取り付けブラケットで使用された金属との間の)境界面で生成され得る。例示を目的として、
図1には、アンテナの取り付けブラケットと一致する非線形要素12が示されているが、実際には、任意の適切な原因又は状態の任意の適切な非線形性部であり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、無線通信システム200はまた、アンテナ50に結合された1つ以上のトランシーバ60(例えば、セルラー基地局のためのベーストランシーバ基地局に収容されたトランシーバ)を含み得る。いくつかの実施形態では、トランシーバ60を使用して、外部デバイスと無線ネットワークとの間の無線通信を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、トランシーバ60は、高電力のトランシーバ(例えば、20W以上)であり得る。
【0035】
動作時、いくつかの実施形態では、無線通信システム200のトランシーバ60は、各々が固有の周波数にある2つ以上の無線周波数(RF)信号を発生させ得る。信号は、伝送路(例えば、同軸ケーブル又は光ファイバ)を通って伝播して、アンテナ50(例えば、第1のアンテナ50a)から電磁放射40としてブロードキャスト/放射される。いくつかの実施形態では、電磁放射40は、周波数F1で放射する第1の電磁波40aと、周波数F2で放射する第2の電磁波40bとを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の電磁波40a及び第2の電磁波40bが、線形部分11及び非線形部分12をそれぞれ備える構造に衝突すると、第1の電磁波40a及び第2の電磁波40bは、非線形部分12において対応する周波数F1及びF2の第1の信号20及び第2の信号21をそれぞれ誘導し得る(第1の信号20及び第2の信号21が
図2に示される)。いくつかの実施形態では、非線形部分12は、第1の信号20と第2の信号21とを合成して、第3の周波数F3の第3の信号(すなわち、相互変調信号)22を生成するミキサとして機能し得る。第3の信号22(並びに、第1の信号20及び第2の信号21)は、次いで、導電性受動媒体10全体を通って伝播する(例えば、金属製のアンテナマストの経路を流れる)ことができ、場合によっては、流れてトランシーバ60若しくは1つ以上のアンテナ50に戻る、又は、第2の電磁放射41として新しい周波数F3で空間に再放射されることによって、1つ以上のアンテナ50に戻る。いくつかの実施形態では、第2のアンテナ50bが、1つ以上の非線形性部12/12aにおいて生成された周波数F3のPIM信号を含めて、第1のアンテナ50aにおいて元々発生した(基本周波数F1及びF2を有する)RF信号を再送信又は受信し得る。これらのRF信号(特にF3信号)は、トランシーバ60における雑音の増大として確認されることがあり、対象とする信号のSNRを大幅に低下させる。
【0036】
PIMの影響を軽減するために、1つ以上の磁性フィルム30(いくつかの実施形態では、30a及び30bを含む)は、線形媒体部分11の導電性の外面13上に、又はその近くに配置され得る。いくつかの実施形態では、磁性フィルム30は、非線形部分12における相互変調信号22の発生を低減又は防止することができる。いくつかの実施形態では、相互変調信号22は、磁性フィルム30によって、いくつかの方法で低減され得る。いくつかの実施形態では、磁性フィルム30は、第1の信号と第2の信号の一方又は両方を非線形部分12に入る前に減衰させることができ、それにより、相互変調信号22は発生しない、又は著しく低減される。いくつかの実施形態では、磁性フィルム30は、非線形部分12からの信号又は放射エネルギーが非線形部分12を出て、線形部分11/11a/11bに入る前に、非線形部分12からの信号又は放射エネルギーを遮断し得る。いくつかの実施形態では、構造において誘導される信号又は構造を通過する信号を減衰させるのを助けるために、追加の線形部分11(部分11a及び/又は11bなど)に、又は追加の線形部分11に近接して、追加の磁性フィルム30(フィルム30a及び/又は30bなど)を配置し得る。いくつかの実施形態では、例えば、非線形部分12において発生した信号、又は非線形部分12を出る信号が減衰及び/又は除去されるように、非線形部分12の両側の線形部分11に磁性フィルム30(例えば、磁気吸収体)を配置し得る。
【0037】
図2は、
図1の導電性受動媒体10の側面図であり、相互変調信号の生成に関する更なる詳細を示している。近くのアンテナによりブロードキャストされる、又は(
図1に示すように)別の導電構造により放射される電磁放射(RF信号)は、導電性受動媒体10(例えば、アンテナマストの金属製の部分)において、第1の信号20(基本周波数F1を有するRF信号に対応する)と、第2の信号21(基本周波数F2を有するRF信号に対応する)と、を誘導する。いくつかの実施形態では、第1の信号20及び第2の信号21は、導電性受動媒体10の導電性の線形受動部分11において誘導され、次いで、構造の他の部分全体を通って移動し得る。これらの実施形態では、第1の信号20及び第2の信号21は、導電性の非線形受動部分12に遭遇するまで、導電性の線形受動部分11を通って伝播し得る。本明細書の他の箇所で説明するように、非線形部分12は、異種材料間の接合部、機械部品間の緩んだ接続部、腐食又は損傷した領域、他の導電性構成要素(例えば、パイプ又は屋根用雨押さえ)の近接、などを含むがこれらに限定されない、いくつかの事柄により生成され得る。第1の信号20及び第2の信号21が非線形部分12に入ると、非線形性部により、第1の信号20と第2の信号21とが混合して、新しい周波数を有する新しい信号が発生し得る。いくつかの実施形態では、少なくとも第3の信号22が発生し、第3の信号22は、例えば、式F3=nF1+mF2を用いて計算され得る、F1及びF2の3次高調波を表し得る周波数F3を有し、n及びmは正又は負の整数であり得る。別の言い方をすれば、第3の信号は、周波数F3を有する相互変調信号であってもよく、相互変調信号は、アンテナ又は他の構造から放射されると、外部デバイス(例えば、セルラー電話などのモバイルデバイス)からの信号を受信するように意図された周波数領域においてアンテナ50によって受信され、それにより、雑音レベルを上昇させ、受信信号の忠実度を低減し得る。次いで、これにより、モバイルデバイスからアンテナ50に情報を転送できる速度が低減されることになる、又は、モバイルデバイスからアンテナへの接続が失われること(すなわち、「通話の途切れ(dropped call)」)がある。他の実施形態では、第1の信号20及び第2の信号21は、(線形部分11において生じ、非線形部分12に伝播するのではなく)非線形部分12において直接誘導され得る。これらの実施形態では、信号20及び21の各々、並びに相互変調信号22は、非線形部分12から出て離れ、隣接する線形部分11に伝播し得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、磁性フィルム30は、非線形部分12に隣接して導電性受動媒体10の線形部分11上に配置され得る(例えば、外面に配置される、又は線形部分11の周りに巻き付けられる)。いくつかの実施形態では、磁性フィルム30は、(線形セクションに隣接して信号20及び21が生成する磁場の吸収を通じて)第1の信号20及び第2の信号21、並びに、信号20及び21により生成される任意の電磁場の少なくとも一部分を、信号が非線形部分12に入る前に少なくとも部分的に減衰させる、磁気吸収体であり得る。第1の信号20及び第2の信号21を非線形部分12に入る前に低減又は除去することによって、第3の(相互変調)信号22の生成を防止又は著しく低減することができる。いくつかの実施形態では、第1の信号20及び第2の信号21が非線形部分12において最初に発生したときに、磁性フィルム30は、非線形部分12を出ようとする第1の信号20、第2の信号21、及び第3の信号22を含む任意の信号(例えば、電流)を制限又は排除することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、非線形部分12において発生し得るPIM信号が、導電性受動媒体10の他の部分全体に伝播することを防止又は低減するために、複数の線形部分11に(例えば、取り付けブラケットなどの非線形部分の上方と下方の両方に延びるアンテナマストのシャフトに)、2つ以上の磁性フィルム30を配置し得る。
図3は、本明細書の一実施形態による、磁気吸収フィルムを有する導電性受動媒体10の側面切り欠き図である。図示された実施形態では、導電性受動媒体10は、導電性の第1の線形受動媒体部分11(又は「第1の線形部分」)と、導電性の第2の線形受動部分11a(又は「第2の線形部分」)とを含み、それらの両方とも、導電性の第1の非線形受動媒体部分12(又は「非線形部分」)に隣接している。つまり、第1の線形部分11及び第2の線形部分11aは、非線形部分12の両側に配置されている。第1の磁性フィルム30は、第1の線形部分11の導電性の外面13に近接して配置され(例えば、第1の線形部分11の周りに巻き付けられる)、第2の磁性フィルム30aは、第2の線形部分11aの導電性の外面13aに近接して配置される。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム30及び第2の磁性フィルム30aの少なくとも一方は、それぞれの外面13、13aの少なくとも一部分に実質的に適合する。いくつかの実施形態では、第1の誘導信号20及び第2の誘導信号21は、第1の線形部分11に沿って伝播し、非線形部分12に入る。非線形部分12に入ると、第1の信号20と第2の信号21とが混合して、第3の信号又は相互変調信号22を生成し、第3の信号又は相互変調信号22は、次いで、表面波として非線形部分12から外に伝播し得る。第1の磁性フィルム30及び第2の磁性フィルム30aを非線形部分の両側に配置する(すなわち、第1の線形部分11及び第2の線形部分11aに配置する)ことによって、磁性フィルム30及び30aは、非線形部分12に入ろうとする(混合して新しい周波数の新しい信号を生成し得る)任意の電気信号、又は非線形部分12を出ようとする任意の電気信号のいずれかを吸収し得る。これらの信号(生成された任意のPIM信号を含む)を吸収することによって、加えて、信号に起因する電磁場を吸収すること、又は電磁場の形成を防止することによって、磁性フィルム30及び30aは、PIM干渉を除去又は著しく低減することができる。
【0040】
図3に示した例示的な非線形性部(すなわち、非線形部分12)は、導電性受動媒体10とは十分に異なる材料製の、又は導電性受動媒体10に緩く接続されている、取り付けブラケット又は取り付けハードウェアにより生成されてもよく、それにより、相違が非線形構成要素をもたらす。別の例では、非線形性部は、導電性受動媒体10の2つの部分を接続する、又は受動媒体10とは十分に異なる材料の2つの部分を接続する、錆びたボルト又は他の締結具であり得る。
図4、
図5、及び
図6は、無線通信システムの同様の実施形態の側面切り欠き図を提供し、様々な構成要素及び/又は状態が非線形性部を生成し、潜在的に本明細書の説明によるPIM干渉の生成につながる。
図4、
図5、及び
図6は各々、
図3と共通であり、同様の機能を果たす、同様の番号が付された要素を含む。
図3に関して既に説明した同様の番号が付された要素は、必要な場合を除き、
図4、
図5、及び
図6については再び論じられない場合がある。
【0041】
いくつかの実施形態では、磁性フィルムは非導電性である。いくつかのそのような実施形態又は他の実施形態では、磁性フィルム(例えば、第1の磁性フィルム30)が、第1の実質的に線形の受動媒体の第1の部分に接触する第1の主面(例えば、主面31)と、少なくとも部分的に露出した反対側の第2の主面(例えば、主面32)とを有する。例えば第2の主面の、面積の50%超が露出していてもよい(例えば、導電層などの追加の層によって覆われていなくてもよい)。
【0042】
図4は、第1の金属11と第2の異なる金属15との間の接合部14によって非線形性部12-1が生成されている、導電性受動媒体10の側面切り欠き図である。例えば、第1の金属11と第2の異なる金属15との間の表面接触領域は、非線形のI/V曲線(非線形接合部)を生成する、異なる電気化学ポテンシャルを有し得る。非線形性部12-1に隣接して外面13/13aに配置された1つ以上の磁性フィルム30/30aの使用は、この非線形接合部に伝播する誘導信号と、この非線形接合部から離れて伝播する、PIM影響の生成の一因となり得る相互変調信号を吸収/軽減することができる。
【0043】
図5は、金属11と金属酸化物17との間の接合部によって非線形性部12-2が生成されている、導電性受動媒体10の側面図である。例えば、いくつかの実施形態では、酸素が存在するときに、露出した金属の表面上でイオン化学反応が起こることがあり、金属からの電子を酸素分子に移動させ、金属上に酸化物表面を生成することができる負の酸素イオンを生成する。元の金属と生成された金属酸化物との間の境界面は、PIM源であり得る。非線形性部12-2に隣接して1つ以上の磁性フィルム30を配置することは、本明細書で説明するように、PIM歪みの生成を軽減するのに役立ち得る。
【0044】
図6は、導電性受動媒体10の錆領域18によって非線形性部12-3が生成されている、導電性受動媒体10の側面図である。非線形性部を生成することになり得る他の状態としては、汚染物質(例えば、汚れた接続)、緩んだ接続、不規則な金属間接触(例えば、溶接不良ビード)、及び不均一な接触面が含まれるが、これらに限定されない。非線形性部12-3に隣接して1つ以上の磁性フィルム30を配置することは、本明細書で説明するように、PIM歪みの生成を軽減するのに役立ち得る。
【0045】
図7は、本明細書で説明するような、無線通信システムにおける送信信号及び相互変調信号の周波数を示すグラフである。y軸は、信号の相対振幅(強度)を示し、x軸は、信号の相対周波数帯域を示す。グラフの中央において、送信帯域又はTx帯域は(この例では)、本明細書の他の箇所で説明するように、それらの対応する周波数F1及びF2に基づいてラベル付けされた、対象とする送信のための2つの信号を含む。Tx帯域信号からいずれかの方向に移動すると、Tx帯域信号の混合により発生し得る奇数の受動相互変調信号がある。F1信号からページの左側へ移動すると、3次相互変調、5次相互変調、7次相互変調などがある。F2信号からページの右側へ移動すると、別の3次相互変調、5次相互変調、7次相互変調などがある。例えば、F1信号の直ぐに左側の信号は、n=+2かつm=-1(すなわち、2F1-F2)であるときに式nF1+mF2により生成された3次受動相互変調放射(PIM)である。
図7に見られるように、この3次相互変調は、無線通信システムにより使用されている対象とする受信帯域又はRx帯域のうちの1つに入り、信号の振幅は、依然として比較的高い。これらのタイプのPIM信号は、騒音レベルを上昇させ、信号の信号対雑音比(SNR)を低減することによって、対象とする正当な信号の受信と干渉し得る。本明細書に記載するような磁気吸収体の使用は、これらのPIM歪み信号の生成を軽減し、かつ、対象とする無線システム信号のSNRを改善するのに役立ち得る。
【0046】
図8A~
図8Fは、本明細書のいくつかの実施形態による無線通信システムの概略図である。無線通信システム500、500’、500’’、500’’’、500’’’’は、送信機150(例えば、アンテナ)と、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体111(導電性の第1の実質的に線形の受動媒体部分と呼ばれることもある)と、第1の実質的に線形の受動媒体111に近接して配置された導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体112(導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体部分と呼ばれることもある)と、第1の実質的に線形の受動媒体111の少なくとも第1の部分及び導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う第1の磁性フィルム130、130’、130’’、131、130’’’、130’’’’とを含む。無線通信システム500、500’、500’’、500’’’、500’’’’、又は送信機150がないシステムは、受動相互変調を低減するためのシステムと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム(例えば、130、130’、130’’、131、130’’’、130’’’’)は、第1の実質的に線形の受動媒体の少なくとも第1の部分に実質的に適合する(例えば、名目上適合する、又は磁性フィルムの厚さの約3倍以下のスケールの変動に適合する、又は第1の部分の最大寸法若しくは直径の約20%以下若しくは約10%以下のスケールの変動に適合する)。
図8Aは、無線通信システム500の概略側面図であり、
図8Bは、無線通信システム500の概略背面図である。
図8C~
図8Fはそれぞれ、無線通信システム500’、500’’、500’’’、500’’’の概略背面図であり、これらは、磁性フィルムの配置を除いて無線通信システム500に対応する。いくつかの実施形態では、第1の実質的に線形の受動媒体111は、送信機150を支持するための支持構造体122の一部分であり、第1の実質的に非線形の受動媒体112は、支持構造体122に取り付けられている。図示の実施形態では、支持構造体122は、アンテナマスト121であるか、又はそれを含み、第1の実質的に線形の受動媒体111は、アンテナマスト121の一部分であり、第1の実質的に非線形の受動媒体112は、アンテナマスト121に取り付けられている。他の実施形態では、支持構造体は、例えば、アンテナを支持するために使用される、例えば、セルラー基地局内の他の構造体であり得る。図示の実施形態では、送信機150は、第1の取り付けブラケット141及び第2の取り付けブラケット142によってアンテナマスト121に取り付けられている。他の実施形態では、単一の取り付けブラケットが使用されてもよく、又は2つよりも多くの取り付けブラケットが使用されてもよい。取り付けブラケットの1つ以上は、実質的に非線形の媒体であることもありく、又はマスト121と取り付けブラケットの1つ以上との間の接合部が、実質的に非線形の媒体であることもあり、又は取り付けブラケットの1つ以上の錆、若しくはアンテナマストの1つ以上に隣接するアンテナマスト121の錆(
図8Aにおいて取り付けブラケット141に概略的に示されている)が、実質的に非線形の媒体112となり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の実質的に線形の受動媒体の周りに少なくとも部分的に巻き付いている。
図8A~
図8Bの実施形態では、第1の磁性フィルム130は、第1の実質的に線形の受動媒体111の周りに部分的にのみ巻き付いている。いくつかの実施形態では、導電性の第1の実質的に線形の受動媒体111が、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する第1の電磁波及び第2の電磁波(例えば、放射40、41に対応する)を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で第1の信号及び第2の信号(例えば、信号20、21に対応する)を生成するように構成され、第1の信号及び第2の信号は、導電性の第1の実質的に非線形の受動媒体112に向かって第1の実質的に線形の受動媒体111を第1の経路113に沿って伝播する。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム130が、第1の実質的に線形の受動媒体111の第1の部分を第1の経路113に沿って覆い、第1の実質的に線形の受動媒体111の第2の部分116を露出させたままにし、第1の磁性フィルム130は、第1の実質的に非線形の受動媒体112に面し、第2の部分116は、第1の実質的に非線形の受動媒体112とは反対側に面する。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム130は、第1の実質的に線形の受動媒体111の周りに部分的にのみ巻き付き、第1の磁性フィルム130の対向する端部117と119との間で露出した実質的に線形の受動媒体の部分116を残し、露出した部分116は、第1の実質的に非線形の受動媒体112とは反対側に面する。
【0048】
図8Cの実施形態では、第1の磁性フィルム130’は、第1の実質的に線形の受動媒体111の周りに完全に巻き付いている。図示の実施形態では、磁性フィルム130’の端部が、互いに重なり合っている。いくつかの実施形態では、システム500’’が、第1の磁性フィルム130’’を含み、第1の実質的に線形の受動媒体111の少なくとも第2の部分及び導電性の任意の実質的に非線形の受動媒体の約20%以下を覆う、第2の磁性フィルム131を更に含む。
図8E~
図8Fに示される実施形態では、第1の磁性フィルム130’’’、130’’’’は、第1の実質的に線形の受動媒体の周りに螺旋状に巻き付いている。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム130’’’は、第1の実質的に線形の受動媒体の周りに螺旋状に重なり合わずに巻き付いている。磁性フィルム130’’’は、隣接するラップ間に隙間を有して、又は有さずに、第1の実質的に線形の受動媒体111の周りに、螺旋状に重なり合わずに巻き付けることができる。実質的に非線形の媒体112に面する隣接するラップ間に隙間を有さないことは、相互変調信号の改善された低減をもたらすことが分かっている。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム130’’’’は、第1の実質的に線形の受動媒体111の周りに螺旋状に重なり合って巻き付いている。
図8Eに示される実施形態では、第1の磁性フィルム130’’’は、実質的に非線形の媒体であり得る取り付けブラケット141の一部分を覆う。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム130’’’は、取り付けブラケット141の約20%以下を覆う。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム130’’’(又は磁性フィルム130’、130’’、130’’’’、131)は、第1の実質的に線形の受動媒体又は媒体部分の少なくとも第1の部分を第1の経路113に沿って覆い、第1の実質的に線形の受動媒体又は媒体部分を伝播する発生した第1の信号及び第2の信号を、第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分において発生した相互変調信号よりも大きく減衰させるように配置される。
【0049】
本明細書の他の箇所で更に説明されるように、送信機150は、それぞれ異なる周波数F1及びF2を有する少なくとも第1の電磁波240及び第2の電磁波241を送信するように構成され、送信機150が第1の電磁波240及び第2の電磁波241を送信するときに、第1の実質的に線形の受動媒体又は媒体部分及び第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分は、第1の電磁波240及び第2の電磁波241を受信し、それぞれの周波数F1及びF2で内部を伝播する第1の信号及び第2の信号(例えば、信号20、21に対応する)を生成する。相互変調信号(例えば、信号22に対応する)、又は少なくとも1つの相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分において第1の信号及び第2の信号から発生する。相互変調信号又は少なくとも1つの相互変調信号は、nF1+mF2に等しい周波数F3を有し、m及びnは正又は負の整数である。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、相互変調信号又は少なくとも1つの相互変調信号の発生を、少なくとも2dB、少なくとも3dB、少なくとも3.5dB、少なくとも4dB、少なくとも5dB、又は少なくとも6dB(例えば、2dB~100dB又は3~50dB)だけ低減する。いくつかの実施形態では、少なくとも第1の相互変調信号及び第2の相互変調信号が、第1の実質的に非線形の受動媒体又は媒体部分において第1の信号及び第2の信号から発生するか又は生成される。第1の相互変調信号及び第2の相互変調信号は、それぞれ異なる周波数F3及びF3’を有する。F3及びF3’の各々は、nF1+mF2に等しく、m及びnは正又は負の整数である。例えば、第1の相互変調信号は、
図7に概略的に示されるPIM信号の1つ(例えば、周波数2F1-F2を有する信号)に対応することができ、第2の相互変調信号は、
図7に概略的に示されるPIM信号の異なる1つ(例えば、周波数3F1-2F2を有する信号又は周波数2F2-F1を有する信号)に対応することができる。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルムは、第1の相互変調信号及び第2の相互変調信号の各々を、少なくとも2dB、少なくとも3dB、少なくとも3.5dB、少なくとも4dB、少なくとも5dB、又は少なくとも6dB(例えば、2dB~100dB又は3dB~50dB)だけ低減する。
【0050】
いくつかの実施形態では、システム500、500’、500’’、500’’’、500’’’’は、受信機160を含み得、相互変調信号(例えば、信号22に対応する)又は少なくとも1つの相互変調信号が第1の実質的に非線形の受動媒体112において発生するか又は生成されるときに、相互変調信号又は少なくとも1つの相互変調信号が周波数F3で電磁波242を放射し、受信機160は、放射された電磁波242を検出する。いくつかの実施形態では、第1の磁性フィルム(例えば、130、130’、130’’、130’’’、130’’’’、131)、又は1つ以上の磁性フィルムの組み合わせ(例えば、130’’及び131)は、受信機によって検出される放射された電磁波を少なくとも2dBだけ低減する。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、受信機によって検出される放射された電磁波を、少なくとも3dB、少なくとも3.5dB、少なくとも4dB、少なくとも5dB、又は少なくとも6dB(例えば、3dB~100dB又は3.5dB~50dB)だけ低減する。
【0051】
図9~
図10は、様々な磁性フィルムについての透磁率対周波数のプロットである。
図9は、3M(商標)製のFlux Field Direction Material(FFDM)EM25TP-0100(100マイクロメートル厚の複合磁性FFDM層を有する)の透磁率を示す。
図10は、担体樹脂中に磁性フィラーを有する磁気吸収層を含む関連する磁性フィルムの透磁率を示す。透磁率の実数(μ)部及び虚数(μ)部が示されている。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、F1又はF2の少なくとも一方に対して、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、又は少なくとも約20の虚数部を有する比透磁率を有する。いくつかのそのような実施形態又は他の実施形態では、磁性フィルムは、F3に対して少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、又は少なくとも約20の虚数部を有する比透磁率を有する。いくつかの実施形態では、比透磁率は、F1、F2及びF3の各々に対して、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、又は少なくとも約20の虚数部を有する。いくつかの実施形態では、磁性フィルムは、約25マイクロメートル~約1mmの範囲又は約40マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する磁気吸収層を含む。いくつかの実施形態では、吸収層がF1及び/又はF2で高いμ’’(例えば、少なくとも約10)及び/又は磁気損失正接(例えば、少なくとも約2のμ’’/μ’)を有する場合、より薄い吸収層が使用されてもよく、層のμ’’及び/又は磁気損失正接がより低い場合、より厚い吸収層が使用されてもよい。
【0052】
実施例/比較例
2つの取り付けブラケット(例えば、
図8A~
図8E参照)でクランプを用いてアンテナマスト(亜鉛メッキ鋼ポール)に取り付けられたアンテナ(CommScope,Inc.(Hickory,NC)から入手可能なCOMMSCOPE LNX-6513DS-A1M)を含む無線通信システムが、無響室に配置された。アンテナの高さは約4.5フィートであり、アンテナマストの外径は約2インチであった。アンテナは、主にアンテナマストとは反対側に放射するように配置された。PIM分析器(Kaelus(Spokane Valley,WA)から入手可能なSummiTek iQA850B)が、同軸ケーブルでアンテナのポートに取り付けられた。871MHz及び894MHzの2つの43dBm(20W)連続波(CW)搬送波が、アンテナの単一ポートに入力され、848MHz(2*871MHz-894MHz)の反射PIM信号が、同じポートを通してPIM分析器によって測定された。外部PIM源がない場合、PIM分析器は、-126.9dBmのPIM信号を報告し、これは、43dBmの入力電力での-169.9dBcに相当し、低ノイズフロアを示し、ノイズフロアは少なくとも5分間にわたって安定していた。磁性フィルムを使用して実施された実験は、PIM源(例えば、スチールウール)を配置し、磁性フィルムを適用し、次いで、磁性フィルムを除去し、よって、磁性フィルムが存在しない場合のベースラインを再確立することを含んでいた。この手順は、PIM源が実験中に妨害されないことを確実にした。
【0053】
下部取り付けブラケットの上部にスチールウールを配置してPIM信号を生成し、次いで、13インチ(アンテナマストに平行な垂直方向の寸法)幅の磁性フィルムを下部取り付けブラケット付近でアンテナマストの周りに巻き付けた。
図9~
図10に示される透磁率を有する磁性フィルムでは、磁性フィルムの幅を13インチから6.5インチに変化させ、かつ/又はフィルムの位置を約4インチだけマストの上方に(下部取り付けブラケットとは反対側に)シフトさせることで、PIM信号は、顕著に変化しなかった。
【0054】
次いで、スチールウールを上部ブラケット及び下部ブラケットの各々に配置した。磁性フィルム(3M(商標)FFDM EM25TP-0150の6.5インチ幅のストリップであり、これは、合計厚さ約250μmの多層磁性フィルムであり、ライナー、接着剤層、及び厚さ150μmの磁気吸収層を含んでいた)を上部ブラケットの上部若しくは下部及び/又は下部ブラケットの上部若しくは下部でアンテナマストの周りに巻き付けた。上部ブラケットの上部に磁性フィルムを配置することで、PIM信号は、ほとんど影響を受けなかった。下部ブラケットの上部に別の磁性フィルムを配置することで、磁性フィルムが存在しない場合に比べて、PIM信号は約10dBだけ低減した。これらの磁性フィルムを除去し、磁性フィルムが存在しない場合のベースラインを再確立し、次いで、上部ブラケットの下部及び下部ブラケットの上部に磁性フィルムを配置することで、PIM信号は約14dBだけ低減した。これらの磁性フィルムを除去し、磁性フィルムが存在しない場合のベースラインを再確立し、次いで、上部ブラケットの上部及び下部並びに下部ブラケットの上部及び下部に磁性フィルムを配置することで、PIM信号は約15dBだけ低減した。
【0055】
別の実験では、スチールウールを上部ブラケット及び下部ブラケットの各々の上部に配置し、次いで、3.5インチ、2.5インチ又は1インチ幅の磁性フィルム(3M(商標)FFDM EM25TP-0150)を、下部取り付けブラケットの上部でアンテナマストの周りに巻き付けた。3.5インチ及び2.5インチ幅では、PIM信号は9~10dBだけ低減した。1インチ幅では、PIM信号は約8dBだけ低減した。
【0056】
別の実験では、スチールウールを下部ブラケットの上部に配置し、次いで、3M(商標)FFDM EM25TP-0150の3.5インチ幅のストリップを下部ブラケットの上部でアンテナマストの周りに巻き付け、様々な巻き付け率を試験した。磁性フィルムは、100%の巻き付けでPIM信号の7~8dBの低下をもたらした。磁性フィルムがスチールウールに面し、マストの覆われていない部分がスチールウールとは反対側に面する場合、同様の結果が、30%、50%及び90%の巻き付けについて見出された。マストの覆われていない部分がスチールウールに面する場合、又はラップ間の隙間及びスチールウールに面する螺旋状ラップ間の隙間を有する螺旋状ラップを使用した場合、PIM信号の有意に少ない低減が観察された。
【0057】
別の実験では、スチールウールを下部ブラケットの上部に配置し、次いで、3M(商標)FFDM EM25TPの3.5インチ幅のストリップを下部ブラケットの上部でアンテナマストの周りに巻き付け(完全な1回転)、様々な厚さの磁気吸収層を試験した:厚さ25μmの磁気吸収層を有するEM25TP-0025、厚さ50μmの磁気吸収層を有するEM25TP-0050、厚さ100μmの磁気吸収層を有するEM25TP-0100、厚さ150μmの磁気吸収層を有するEM25TP-0150を試験した。厚さ25μm及び50μmの磁気吸収層では、PIM信号の1~2dBの減少が観察され、厚さ100μm及び150μmの磁気吸収層では、4~5dBの減少が観察された。
【0058】
別の実験では、スチールウールを下部ブラケットの上部に配置し、次いで、3.5インチ幅の磁性フィルムのストリップを下部ブラケットの上部でアンテナマストの周りに完全に2回巻き付けた。3M(商標)FFDM EM25TP-0150と、厚さ60μmの磁気吸収層及び
図10に示される透磁率を有する磁性フィルムとを試験した。厚さ60μmの磁気吸収層を有する磁性フィルムは、厚さ10μmの接着剤層も含んでいた。3M(商標)FFDM EM25TP-0150では、PIM信号の6dBの低下が観察された一方、
図10に示される透磁率を有する磁性フィルムでは、2dBの低下が観察された。
【0059】
別の実験では、スチールウールを下部ブラケットの上部に配置し、次いで、3.5インチ幅の磁性フィルムのストリップを下部ブラケットの上部でアンテナマストの周りに完全に2回巻き付けた。試験された磁性フィルムは、3M(商標)FFDM EM25TP-0150と、厚さ10μmの接着剤層、及び
図10に示される透磁率を有する厚さ60μmの磁気吸収層を有する磁性フィルムと、厚さ10μmの接着剤層、及び
図10に示される透磁率を有する厚さ60μmの磁気吸収層をそれぞれ有する2つの磁性フィルムの積層体から形成された磁性フィルムとを含む。3M(商標)FFDM EM25TP-0150フィルムでは、PIM信号の約4~5dBの低下が観察された一方、厚さ60μmの磁気吸収層を2つ有するフィルムでは、2~3dBの低下が観察され、厚さ60μmの磁気吸収層を1つ有する磁性フィルムでは、1~2dBの低下が観察された。
【0060】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって別途明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。特定の値の約、ほぼとして与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、本明細書に使用及び記載されている文脈において当業者にとって明らかではない場合には、約1の値を有する量とは、その量が0.9~1.1の値を有すること、及び、その値が1である場合もあることを意味する。
【0061】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0062】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【国際調査報告】