(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】トランスフォーミング増殖因子-β受容体I/ALK5の阻害剤としての2-(3-ピリジン-2-イル-4-キノリン-4-イル-ピラゾール-1-イル)-アセタミド誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20231018BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231018BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231018BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231018BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20231018BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C07D401/14
A61P11/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P11/06
A61P9/12
A61K31/4709
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519608
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021076730
(87)【国際公開番号】W WO2022069509
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522209664
【氏名又は名称】アゴマブ スペイン, エス.エル.ユー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】レイモン ボセール アータル
(72)【発明者】
【氏名】ベゴーニャ パンピン カサル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ カストロ パロミノ ラリア
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC67
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA59
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(別名:アクチビン受容体様キナーゼ5)(TGFβRI)/ALK5の強力な阻害剤としての新規の2-(3-ピリジン-2-イル-4-キノリン-4-イル-ピラゾール-1-イル)-アセタミド誘導体に関する。本発明の別の目的は、これらの化合物を調製するための手順;有効量のこれらの化合物を含む医薬組成物;特発性肺線維症、喘息、COPD、及び肺がんを含む呼吸器疾患、並びに皮膚及び眼部の線維化状態などのトランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善する可能性のある病的状態又は疾患の治療のための医薬品を生産するための該化合物の使用を提供することである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
(式中:
R
1は、以下:
a)非置換であるか、又はハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されているフェニル環、
b)非置換であるか、又はハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されている5員又は6員のヘテロアリール環
から選択される基を表し、
R
2は、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル
から選択される基であり、
R
3は、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、
c)ハロゲン原子
から選択される基を表し、
R
4及びR
5は独立に、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、
c)ハロゲン原子
から選択される基を表し、
nは、0~3の整数であり、
R
6は、以下:
a)-N(R
7)(R
8)(式中、R
7及びR
8は独立に、直鎖もしくは分岐C
1-C
6アルキル基又は水素原子を表す)、及び
b)酸素及び窒素からなる群から選択されるもう1つのヘテロ原子を任意に含む飽和4~10員単環式又は二環式含窒素ヘテロシクリルであって、C
1-C
3アルキル基から選択される基によって任意に置換されている、前記ヘテロシクリル
からなる群から選択される基を表す)
及びその医薬として許容し得る塩。
【請求項2】
R
2、R
4及びR
5が、水素原子を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R
3が、メチル基を表す、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
R
1が、1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表す、請求項1~3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
nが、1~2の整数であり、かつR
6が、-N(R
7)(R
8)基を表す、請求項1~4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R
7及びR
8が独立に、直鎖C
1-C
3アルキル基及び水素原子から選択される基を表す、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R
6が、任意にメチル基によって置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む飽和6員ヘテロ環式基を表す、請求項1~4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R
6が、ピペラジニル及びピペリジニル基から選択される基を表す、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R
2、R
4及びR
5が、水素原子を表し、R
3が、直鎖C
1-C
3アルキルを表し、R
1が、1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表し、nが、0~2の整数であり、かつR
6が、以下:
a)-N(R
7)(R
8)(式中、R
7及びR
8は、直鎖C
1-C
3アルキル基及び水素原子から選択される)、
b)任意にメチル基によって置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む飽和6員ヘテロ環式基、
c)1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタニル
からなる群から選択される基を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
以下:
2-(ジメチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート
2-(ジメチルアミノ)エチル 6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート
2-モルホリノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリネート
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジエチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
1-メチルピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(1-メチルピペリジン-4-イル)メチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(R)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(S)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
キヌクリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(アゼチジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(アジリジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(メチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-アミノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(エチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(イソプロピルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
ピペリジン-4-イルメチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
ピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
のうちの1つである、請求項1記載の化合物、又はその医薬として許容し得る塩。
【請求項11】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療のための医薬品の生産における、請求項1~10のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
肺がん、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、間質性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺動脈性肺高血圧症から選択される呼吸器疾患の治療において哺乳動物に投与するための医薬品の生産における、請求項1~10のいずれか1項記載の化合物の使用であって、
該投与が、経口投与である、前記使用。
【請求項13】
経口投与が、吸入投与である、請求項12記載の化合物の使用。
【請求項14】
医薬品としての使用のための、請求項1~10のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項15】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療における使用のための、請求項1~10のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項16】
前記疾患が、肺がん、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、間質性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺動脈性肺高血圧症から選択される呼吸器疾患からなる群から選択され、かつ
該投与が、経口投与である、請求項15記載の使用のための化合物。
【請求項17】
経口投与が、吸入投与である、請求項16記載の使用のための化合物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項記載の化合物、及び医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療に有用な薬剤から選択される治療的有効量の治療薬剤をさらに含む、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか1項記載の化合物、及び
少なくとも、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療に有用な薬剤から選択される治療薬剤
を含む組合せ製品。
【請求項21】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患の治療のための方法であって、それを必要としている患者への請求項1~10のいずれか1項記載の治療上有効な化合物の投与を含む、前記方法。
【請求項22】
前記疾患が、肺がん、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、間質性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺動脈性肺高血圧症から選択される呼吸器疾患からなる群から選択され、かつ
前記化合物の投与が、経口投与によるものである、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
経口投与が、吸入投与である、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(別名:アクチビン受容体様キナーゼ5)(TGFβRI)/ALK5の強力な阻害剤としての、新規の2-(3-ピリジン-2-イル-4-キノリン-4-イル-ピラゾール-1-イル)-アセタミド誘導体に関する。
【0002】
本発明の別の目的は、これらの化合物を調製するための手順;有効量のこれらの化合物を含む医薬組成物;特発性肺線維症、喘息、COPD、及び肺がんを含む呼吸器疾患、並びに皮膚及び眼部の線維化状態などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善する可能性のある病的状態又は疾患の治療のための医薬品を生産するための該化合物の使用を提供することである。
【背景技術】
【0003】
(技術水準)
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は、TGF-βスーパーファミリーに属しており、これは、特に、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、及び他のタンパク質からなる。TGF-βは、細胞増殖、細胞遊走、浸潤、上皮間葉転換、細胞外マトリックス産生、及び免疫抑制などの多くの細胞プロセスに関与する。TGF-β及びその受容体は、多くの場合、がん、炎症、組織線維症、及び自己免疫などのさまざまなヒト疾患において慢性的に過剰発現されている。従って、TGF-βシグナル伝達経路の遮断が、創薬の魅力的な標的と考えられている。(Heldin C. H.らの文献、「TGF-bファミリーメンバーのシグナル伝達受容体(Signaling Receptors for TGF-b Family Members」)、Cold Spring Harb Perspect Biol, 2016)。
【0004】
TGF-βは、2つの関連する膜貫通型I型及びII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体を介してシグナル伝達を行う。構成的に活性なII型受容体へのTGF-βの結合の後に、I型受容体(アクチビン受容体様キナーゼ5(ALK5)とも呼ばれる)が、リン酸化されて、Smad2及びSmad3タンパク質のための結合部位が作られ、これらは、さらにリン酸化される。リン酸化されたSmad2/Smad3タンパク質は、Smad4とヘテロメリック複合体を形成し、これは、核内に移行し、特定のDNA-結合補助因子及びコモジュレーターと集合体を形成し、細胞分化、増殖、アポトーシス、遊走、及び細胞外マトリックス産生に関与するTGF-β標的遺伝子のプロモーターに結合する。(Akhurst R. J.らの文献、「疾患におけるTGFβシグナル伝達経路の標的化(Targeting the TGFβ signalling pathway in disease)」、Nature/Reviews、2012年10月、第11巻)。
【0005】
大部分の細胞型において、アクチビン受容体様キナーゼ5-ALK5(別名:TGFβR1)は、TGFβ受容体IIを介してTGF-βによって活性化される主たるTGFβ受容体Iである。この相互作用は、シグナル伝達のために細胞外及び細胞内ドメインの双方を必要とする。また、ALK5及びTGFβ受容体IIタンパク質は、リガンドの非存在下で活性なヘテロオリゴマー複合体も形成することができる。これらの複合体は、双方の受容体が、相互作用に対するそれらの固有の親和性を理由として共発現されている場合に、基礎シグナル(basal signal)を伝達することができる。(Bierie B.らの文献、「TGF-β:がんの分子ジキルとハイド(TGF-β: the molecular Jekyll and Hyde of cancer)」、Nature Reviews, Cancer、第6巻、2006年7月)。
【0006】
機能的TGFβRII-TGFβRI(ALK5)ヘテロメリックシグナル伝達複合体は、通常、ヒトのがんに関連し、それは、下流のSmad依存性及びSmad非依存性の経路の活性化を調節する。実際に、多くの研究によって、TGF-β経路に関連する成分の変異が確認されており、これは、多くのヒト組織におけるがんの発生及び予後と相関している。TGF-β1の過剰発現は、乳房、結腸、食道、胃、肝細胞、肺、及び膵臓のがんと関連している。重要なことに、ヒトのがんにおけるTGF-βの過剰発現は、腫瘍の悪化、転移、血管新生、及び不良の予後成績と相関している。
【0007】
トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)サイトカインは、慢性呼吸器疾患の発症及び悪化において中心的役割を果たす。慢性の炎症、リモデリング、線維化プロセス、及びウイルス感染症に対する易罹患性におけるTGF-β過剰発現が、肺線維症、喘息、COPD、及び肺がんなどの最も蔓延している慢性呼吸器疾患において確立されている。
【0008】
(特発性肺線維症)
肺線維症は、繰り返される創傷及び修復プロセスが、不可逆的な構造変化及び組織硬化を招く、慢性かつ進行性の肺疾患である。病態生理学的段階には、外因性の刺激物による肺胞上皮損傷、線維芽細胞活性化、及び持続性の線維化反応が含まれる。肺線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化は、組織線維症の発症において鍵となる段階である。TGF-βは、筋線維芽細胞分化の誘導の最も強力な因子であり、この因子の発現の増加が、線維症の肺で報告されている。肺線維症におけるTGF-βの主要な細胞起源が、肺胞マクロファージ及び異形成II型肺胞上皮細胞であることが示されている。TGF-βは、低分子GTPアーゼの分子レギュレーターを誘導し、肝細胞増殖因子及びプロスタグランジンE2などの抗線維化分子の産生を抑制することによって肺線維症を促進する。さらに、TGF-βは、肺胞上皮細胞の増殖及び修復を阻害し、従って、これは、線維芽細胞及び肺胞上皮細胞の双方に対して作用する、線維化プロセスにおけるキープレーヤーである(Saito A.らの文献、「肺の健康及び疾患におけるTGF-βシグナル伝達(TGF-β Signaling in Lung Health and Disease)」, Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, 2460)。
【0009】
広範囲にわたる証拠によって、標準的なALK5/Smad3経路が、多くの組織における線維症の発病に決定的に関与していることが示唆されている。ALK5のキナーゼ活性の低分子量選択的阻害剤の経口投与が、進行性TGF-β1誘発性肺線維症のラットモデルにおける線維化を阻害した。さらに、Smad3欠損マウスは、広範囲の実験モデルにおいて減弱した線維症を示し、ブレオマイシン誘発性肺線維症に抵抗性である。(Biernacka、A.らの文献、「線維症におけるTGF-βシグナル伝達(TGF-β signaling in fibrosis), Growth Factors. 2011年10月; 29(5): 196-202)。
【0010】
(喘息及びCOPD)
喘息及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪は、一般に、ウイルス感染症に関連している。続いて起こる気道の炎症は、グルココルチコイド(GC)の抗炎症作用に対して抵抗性である。ウイルス感染症は、アクチビン様キナーゼ5(ALK5)の活性化を介してヒト気道上皮細胞におけるGCの作用を損なう成長因子であるトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)活性を誘発する。ある研究によって、ウイルス感染症によって引き起こされるGC抵抗性に対するTGF-β活性の寄与が調査され、GCが損なわれることが、選択的ALK5/TGFβRI阻害剤であるSB431542によって弱められ、かつウイルス感染症に関連するTGF-β活性を低下させた治療薬剤であるトラニラストによって妨げられることが示された。この研究では、ウイルス誘発性のグルココルチコイド非感受性が、内在性TGF-βの活性化によって部分的に媒介されることが示された(Xia Y Cらの文献、「ウイルスに感染した気道上皮細胞におけるグルココルチコイド非感受性は、トランスフォーミング増殖因子-β活性に依存性である(Glucocorticoid Insensitivity in Virally Infected Airway Epithelial Cells Is Dependent on Transforming Growth Factor-β Activity)」、PLoS Pathog、2017年1月3日, 13(1), doi:10.1371/journal.ppat.1006138)。
【0011】
特に、喘息は、2型ヘルパーT(Th2)細胞並びにいくつかのサイトカイン及びインターロイキンによって媒介される慢性気道炎症及び反応亢進を特徴とする。これらのサイトカインは、慢性の炎症、肺の好酸球増加症、粘液細胞過形成、平滑筋収縮、及び気道リモデリングを引き起こす。Th2細胞に加えて、IL-17A及びIL-17Fを分泌するTh17細胞も、アレルギー性の気道炎症の発症に関与する。喘息の病態形成におけるTGF-βシグナル伝達の重要性が、ゲノムワイド関連研究によって例証されている。気管支肺胞洗浄液におけるTGF-β濃度が、アトピー性喘息において上昇しており、TGF-β発現が、喘息患者の気管支検体において増加していることが示されている。喘息におけるTGF-βの病理学的役割は、気道リモデリングに限定されず、免疫応答に対するその作用は、以前に認識されていたものよりも重要であると考えられている。(Saito A.らの文献、「肺の健康及び疾患におけるTGF-βシグナル伝達(TGF-β Signalling in Lung Health and Disease), Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, 2460)。
【0012】
喘息患者の気道において、TGF-β1特異性抗体又は汎特異性抗体を用いる免疫組織化学的局在化は、TGF-βが、増加し、かつ線維芽細胞、平滑筋細胞、好酸球、マクロファージなどの粘膜下細胞及び炎症細胞、並びに気道の結合組織と主に結合していることを示し、また、上皮細胞における発現が様々であることも示す。喘息患者の気道におけるTGF-βの発現の増加は、好酸球及びマクロファージの数の増加に主に起因するものとされている。
【0013】
喘息患者の気道におけるTGF-βの発現の増加を示す研究と一致して、増加したリン酸化されたSmad2及び低下したSmad7免疫反応性を伴う増加したTGF-βシグナル伝達の証拠も存在する。さらに、気道リモデリングの動物モデルでの研究によって、TGF-β1の気管支肺胞洗浄レベルが増加していることが、TGF-β/Smadシグナル伝達の活性化の証拠と共に示されている。
【0014】
加えて、動物モデルからの証拠は、気道リモデリングが、TGF-βを標的とする薬剤を用いて予防又は反転され得ることを示唆する。従って、各TGF-β又はそれらの活性の調節は、喘息の有望な治療標的となる。(Howell, J. E.らの文献、「TGF-β:喘息におけるその役割及び治療的可能性(TGF-β: Its Role in Asthma and Therapeutic Potential)」、Current Drug Targets, 2006, 7, 547-565)。
【0015】
他方、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、不可逆的な気流閉塞、小気道炎症、及び気腔拡大を伴う肺胞構造の破壊を特徴とする。いくつかの研究によって、COPDの患者における損なわれたTGF-β1シグナル伝達が示されている。研究者らは、喫煙者及びCOPDの者の気道上皮における増加したTGF-β1及び阻害性Smadの発現の低下を確認している。肺線維症におけるTGF-βの役割に類似して、COPD患者においては、TGF-βは、線維化気道リモデリングを促進し、これはさらに、肺機能の低下の一因となることがある。COPD患者の気道上皮におけるTGF-β1の増加の一部は、この疾患状態の発症の最も重要なリスク因子であるタバコの煙に対する直接的な反応であり得る。(Aschner, Y.らの文献、「トランスフォーミング増殖因子-β:健康及び疾患における呼吸器系のマスターレギュレーター(Transforming Growth Factor-β: Master Regulator of the Respiratory System in Health and Disease)」、American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology, 2016. 54(5), 647-655)。
【0016】
(肺がん)
肺がんは、世界中におけるがん関連死の主要原因である。非小細胞性肺がん(NSCLC)は、組織学的サブタイプの腺癌及び扁平上皮細胞癌を含む肺がんの大部分を含む。上昇したTGF-β発現レベルは、リンパ節転移及びNSCLCにおける腫瘍血管新生に関連し、NSCLCから樹立された腫瘍細胞は、TGF-βリガンドを発現する。TGF-βが、上皮の細胞増殖を抑制し、腫瘍形成の初期段階において腫瘍抑制因子として働いて、腫瘍の悪化の間に二重の役割を果たしていることが確かなものであると広く考えられており;TGF-βシグナル伝達成分における機能喪失型変異が、いくつかのがん種で確認されている。
【0017】
がん細胞に対するその直接的な作用のほかにも、TGF-βは、がん細胞と腫瘍間質微小環境との互恵的な相互作用により浸潤及び転移性の広がりを促進する。TGF-βは、腫瘍間質の発達を組織化し、血管新生、免疫回避、及びリモデリングを促進する。おそらくTGF-βによって媒介される間質反応は、切除され肺腺癌における予後不良と関連する(Saito Aらの文献、「肺の健康および疾患におけるTGF-βシグナル伝達(TGF-β Signalling in Lung Health and Disease)」, Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, 2460)。
【0018】
(ウイルス感染症)
別の研究によって、マウスにおける先在するブレオマイシン誘導性線維症を背景とする同時のウイルス感染が、AE-IPFの個体において報告されるすりガラス状陰影及びコンソリデーションに良く似ている顕著かつ広範な炎症性の変化を招くことが示されている。TGFβ-ALK5シグナル伝達を、強力なかつ選択的なALK5アンタゴニストSB525334を用いる治療のための投薬によって遮断することは、シングルヒットブレオマイシン単独傷害マウスモデルにおける線維症の悪化を阻止するのに非常に効果的であるが、この薬剤の抗線維化作用は、同時のウイルス感染症の存在下で劇的に低下する。対照的に、この阻害剤は、同時のウイルス感染症に関連する広範な炎症性細胞浸潤を弱めるのに非常に効果的であり、これは、抗ウイルス性サイトカイン反応を増強した。
【0019】
これらの試験は、ウイルス感染症の存在に応じたALK5阻害への応答の種々の結果と共に、肺線維症におけるTGFβ-ALK5シグナル伝達軸の多面的な性質を強調する。従って、これらの知見は、肺線維症の文脈における、将来のTGFβシグナル伝達の標的化に関する重要な考慮すべき事柄を提起する:線維性の悪化に対する種々の結果が、ウイルス感染症に関連する安定なIPF対急性増悪IPFにおいて期待されている(Smoktunowicz、Nらの文献、「マウスにおける実験的な肺線維症でのTGFβ-ALK5シグナル伝達の阻害の抗線維化作用は、併発するγ-ヘルペスウイルス感染症の存在下で弱められる(The anti-fibrotic effect of inhibition of TGFβ-ALK5 signalling in experimental pulmonary fibrosis in mice is attenuated in the presence of concurrent γ-herpesvirus infection)」, Dis Model Mech. 2015 Sep 1; 8(9): 1129-1139)。
【0020】
自然及び獲得双方のTGF-β免疫シグナル伝達が、増加したHSV-1潜伏及び再活性化に繋がったことが示されている。これらの2つの免疫コンパートメントにおけるTGF-βシグナル伝達の協調的な活性は、ウイルス感染症の潜伏期の調節において本質的に重要であるように思われる。これらの結果から、臨床的なHSV-1感染が推定される場合、免疫細胞においてTGF-βシグナル伝達を遮断することは、ウイルス関連疾患の重要な新規の治療アプローチとなり得る(Allen、S Jらの文献、「獲得型及び自然型のトランスフォーミング増殖因子βシグナル伝達は、単純ヘルペスウイルス1の潜伏及び再活性化に影響を及ぼす(Adaptive and Innate Transforming Growth Factor β Signalling Impact Herpes Simplex Virus 1 Latency and Reactivation)」, Journal of Virology, Nov. 2011, p. 11448-11456)。
【0021】
重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルス(SARS-CoV)は、2003年のSARSの流行の原因となったものである。SARS-CoV感染は、気管支上皮剥離、線毛の喪失、多核化合胞細胞、扁平上皮異形成、並びに単球/マクロファージ及び好中球の肺組織内への経内皮遊走などの重篤な呼吸器の病気を誘発する。SARS-CoVは、SARS患者の肺線維症と関連する炎症促進性サイトカインストームを誘発する。回復したSARS患者の20%近くは、感染から9ヶ月後に依然として肺線維症を有する。
【0022】
SARSコロナウイルス(SARS-CoV)パパイン様プロテアーゼ(PLpro)が、ヒト肺上皮細胞及びマウス肺組織においてTGF-β 1媒介性線維化促進性反応を誘導するヒト前単球SARS-CoV PLproにおけるTGF-β1上方制御において確認されており、PLproが、TGF-β 1並びにグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)及びビメンチンなどのその関連遺伝子を上方制御した点で以前の報告と一致している。SARS-CoVヌクレオカプシドを除いては、PLproが、線維化促進性反応を活性化するようにリンクしたTGF-β 1産生を生じさせることが確認された。SARS-CoV誘発性サイトカインのうちで、TGF-β 1は、肺線維症の誘導に関連している可能性がある。従って、SARS-CoV PLproは、SARS病原のTGF-β 1媒介性肺線維症において重要な役割を果たす。(Li SWらの文献、「SARSコロナウイルスパパイン様プロテアーゼは、ROS/p38 MAPK/STAT3経路によるTGF-β1のEgr-1依存性上方制御を誘導する(SARS coronavirus papain-like protease induces Egr-1-dependent up-regulation of TGF-β1 via ROS/p38 MAPK/STAT3 pathway)」, Sci Rep. 2016年5月13日; 6: 25754)。
【0023】
利用可能な又は開発中の抗線維化療法は、IPFの患者においてCOVID-19のような重篤な他のコロナウイルス感染の予防において価値がある可能性があり、SARS-CoV-2感染後の線維症の予防に役割を有する可能性がある。従って、ブレオマイシンモデルを用いる慢性線維性肺疾患のために開発された抗線維化療法が、実際には、COVID-19に該病気の急性期及び長期的合併症の予防の双方において、有益であるかもしれない可能性がある。(George、P Mらの文献、「肺線維症及びCOVID-19:抗線維化療法に対する有望な役割(Pulmonary fibrosis and COVID-19: the potential role for antifibrotic therapy)」、www.thelancet.com/respiratory、2020年5月15日にオンライン公開)。
【0024】
抗線維化療法の主要な標的は、TGF-β経路である。αvβ6インテグリンに対するもの(BG00011 [Biogen, Cambridge, MA, USA]; PLN-74809 [Pliant Therapeutics, San Francisco, CA, USA])及びガレクチンに対するもの(TD139 [TD139 [Galecto Biotech, Copenhagen, Denmark])などの、この経路のさまざまな分子を標的とするいくつかの薬物が開発中である。ウイルス誘導性の肺損傷におけるこれら3種の薬物の使用を支持する実験データがいくつか存在する。
【0025】
(眼疾患)
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は、原発性開放隅角緑内障(POAG)の病態形成において役割を果たしている可能性がある。TGF-βは、POAGの病態形成に関係があるとされてきており、TGF-β標的化のために有望な分野としては、産生、活性化、下流へのシグナル伝達、及び局所的調節が挙げられる。上昇したTGF-βのレベルが、緑内障患者における眼房水中及び反応性視神経アストロサイト(reactive optic nerve astrocyte)中にみられる。最近の研究により、多くの知られていなかったことが明らかとされてきているものの、TGF-βの細胞内シグナル伝達経路のより深い理解が、有望なTGF-β治療介入戦略を設計するのに必要である(Wang, J.らの文献、「原発性開放隅角緑内障におけるトランスフォーミング増殖因子-βシグナル伝達の標的化(Targeting Transforming Growth Factor-b Signaling in Primary Open-Angle Glaucoma)」, J Glaucoma 2017;26:390-395)。
【0026】
線維増殖性の状態に関連する眼疾患としては、増殖性硝子体網膜症に伴う網膜再付着手術、眼内レンズ挿入術を伴う白内障摘出術が挙げられ、緑内障後排液手術は、TGF-β1過剰産生に関連する。
【0027】
本発明の発明者らは、TGF-βシグナル伝達経路の強力かつ選択的な阻害剤として、特に、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I/アクチビン様キナーゼ5(TGFβRI/ALK5)の阻害剤として都合よく置換された新規エステル誘導体を開発した。
【発明の概要】
【0028】
(発明の概要)
その態様のうちの1つ(態様1)において、本発明は、式(I):
【化1】
(式中:
R
1は、以下:
a)非置換であるか、又はハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されているフェニル環、
b)非置換であるか、又はハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されている5員又は6員のヘテロアリール環
から選択される基を表し、
R
2は、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル
から選択される基であり、
R
3は、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、
c)ハロゲン原子
から選択される基を表し、
R
4及びR
5は独立に、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、
c)ハロゲン原子
から選択される基を表し、
nは、0~3の整数であり、
R
6は、以下:
a)-N(R
7)(R
8)(式中、R
7及びR
8は独立に、直鎖もしくは分岐C
1-C
6アルキル基又は水素原子を表す)、及び
b)酸素及び窒素からなる群から選択されるもう1つのヘテロ原子を任意に含む飽和4~10員単環式又は二環式含窒素ヘテロシクリルであって、C
1-C
3アルキル基から選択される基によって任意に置換されている、前記ヘテロシクリル
からなる群から選択される基を表す)
の都合よく置換されたエステル誘導体、及びその医薬として許容し得る塩を意味する。
【0029】
第2の態様において、本発明は、態様1の化合物の調製のためのプロセスに関する。
【0030】
第3の態様において、本発明は、態様1の化合物および医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含む医薬組成物に関する。
【0031】
第4の態様において、本発明は、治療的有効量の肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患の治療に有用な薬剤から選択される治療薬剤をさらに含む、上述の第3の態様による医薬組成物に関する。
【0032】
第5の態様において、本発明は、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療のための医薬品の生産における態様1の化合物の使用に関する。
【0033】
第6の態様において、本発明は、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患の治療のための方法に関する。
【0034】
第7の態様において、本発明は、上述の第1の態様の化合物と、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患の治療において有用であることが知られているもう一つの治療薬剤とのの組合せ製品に関する。
【0035】
第8の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための態様1の化合物に関する。
【0036】
第9の態様において、本発明は、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療における使用のための態様1の化合物に関する。
【0037】
既に述べられているように、本発明のエステル誘導体は、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害剤による治療により改善されやすいことが知られている疾患の治療又は予防に有用である。
【0038】
従って、本発明の誘導体及びその医薬として許容し得る塩、並びにそのような化合物及び/又はそれらの塩を含む医薬組成物は、有効量の本発明のエステル誘導体又はその医薬として許容し得る塩を、該治療を必要とする対象に投与することを含む、人体の病的状態又は疾患の治療の方法に用い得る。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で使用される場合、Ca-Cbアルキルという用語は、a個からb個の炭素原子を有する直鎖又は分岐ラジカルを含む。好ましいラジカルは、1~4個の炭素原子を含む。直鎖又は分岐アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、及びヘキシルである。
【0040】
本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐Ca-Cbアルコキシという用語は、酸素原子に連結された直鎖又は分岐Ca-Cbアルキルラジカルを含むラジカル(CxH2x+1-O-)を示すのに用いられる。好ましいアルコキシラジカルとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される場合、5員又は6員のヘテロアリール環という用語は、環系にC、N、O、及びSからなる群から選択される5つ又は6つの環員を有する不飽和芳香環系であって、環員のうちの少なくとも1つが、N、O、及びSのうちの1つである、前記不飽和芳香環系を示すのに用いられる。該ラジカルは、任意に、ハロゲン原子、直鎖又は分岐C1-C3ハロアルキル、直鎖又は分岐C1-C3アルキル、直鎖又は分岐C1-C3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されていてもよい。好ましいラジカルは、任意に、置換ピリジニル、ピラゾリル、及びチアゾリル環である。ヘテロアリールラジカルが、2つ以上の置換基を有する場合、置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「飽和4~10員単環式又は二環式含窒素ヘテロシクリル」という用語は、1つ又は2つの環を含有していてもよい環系であって、該1つ又は2つの環が、合計で4から10の環員を有し、該環員のうちの少なくとも1つが、窒素原子である、前記環系を示すのに用いられる。該環系が、2つの環を有する場合、各環は、3~6つの環員を有してもよく、かつ該2つの環は、1つ以上の結合を共有してもよい。1つの結合を共有する2つの環の1例は、1-アザバイシクロ[2.2.0]ヘキサンであり、2つの結合を共有する2つの環の例は、1-アザバイシクロ[2.2.1]ヘプタンであり、3つの結合を共有する2つの環の例は、1-アザバイシクロ[2.2.2]オクタンである。単環式含窒素ヘテロシクリル基の例は、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、4-メチル-ピペラジニル、ピロリジニル、アゼチジニル、及びアジリジニルである。二環式含窒素ヘテロシクリル基の例は、1-アザバイシクロ[2.2.0]ヘキサニル、1-アザバイシクロ[2.2.1]ヘプタニル、及びデカヒドロキノリニルである。該ラジカルは、任意に、直鎖又は分岐C1-C3アルキル及びヒドロキシ基から選択される1、2、又は3つの基によって置換されていてもよい。好ましいラジカルは、任意に置換されたピペラジニル、ピペリジニル、モルホリニル、及び1-アザバイシクロ[2.2.2]オクタニル(キヌクリジニル)基である。
【0043】
本明細書で使用される場合、ハロゲン原子という用語は、塩素、フッ素、臭素、及びヨウ素原子、好ましくは、フッ素、塩素及び臭素原子を含む。ハロという用語は、接頭辞として使用される場合、同じ意味を有する。単なる例として、ハロアルキルは、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキルを意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、本発明の一般構造内に存在する原子、ラジカル、鎖、又は環の一部は、「任意に置換されている」。これは、これらの原子、ラジカル、鎖、又は環が、非置換であっても、任意の位置で、1つ以上、例えば、1、2、3、又は4つの置換基で置換されていてもよく、それによって、該非置換の原子、ラジカル、鎖、又は環に結合した水素原子が、化学的に許容し得る原子、ラジカル、鎖、又は環によって置き換えられることを意味する。2つ以上の置換基が存在する場合、各置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0045】
本明細書で使用される場合、医薬として許容し得る塩という用語は、医薬として許容し得る酸又は塩基との塩を示すのに用いられる。医薬として許容し得る酸としては、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、及び硝酸、並びに有機酸、例えば、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、又はp-トルエンスルホン酸の双方が挙げられる。医薬として許容し得る塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム又はカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム又はマグネシウム)の水酸化物、並びに有機塩基、例えば、アルキルアミン、アリールアルキルアミン、及びヘテロ環式アミンが挙げられる。
【0046】
本発明による他の好ましい塩は、当量の陰イオン(X-n)が、N原子の正電荷と会合している、四級アンモニウム化合物である。X-nは、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなどのさまざまな鉱酸の陰イオン、又は例えば、酢酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、酒石酸イオン、リンゴ酸イオン、マンデル酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、及びp-トルエンスルホン酸イオンなどの有機酸の陰イオンであり得る。X-nは、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、マレイン酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、又はトリフルオロ酢酸イオンから選択される陰イオンである。より好ましくは、X-nは、塩化物イオン、臭化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、又はメタンスルホン酸イオンである。
【0047】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R1は、非置換であるか、又は1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表す。好ましい実施態様において、R1は、1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表す。より好ましい実施態様において、R1は、1つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表す。
【0048】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R2は、水素原子を表す。
【0049】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R3は、水素原子及び非置換の直鎖又は分岐C1-C3アルキルから選択される基を表す。好ましい実施態様において、R3は、メチル基を表す。
【0050】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R4は、水素原子を表す。
【0051】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R5は、水素原子を表す。
【0052】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、nは、0~2の整数である。好ましい実施態様において、nは、1~2の整数である。
【0053】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R6は、-N(R7)(R8)基(式中、R7及びR8は独立に、直鎖C1-C3アルキル基及び水素原子から選択される基を表す)を表す。
【0054】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R6は、-(CH2)n-基に取り付けられた窒素原子、及び任意に、メチル基によって置換されていてもよい1つのさらなる窒素原子を含む飽和4~6員単環式含窒素ヘテロシクリルを表す。好ましい実施態様において、R6は、任意にメチル基によって置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む飽和6員ヘテロ環式基を表す。
【0055】
より好ましい実施態様において、R6は、ピペラジニル及びピペリジニル基から選択される基を表す。
【0056】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R6は、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタニル基を表す。
【0057】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R2、R4及びR5は、水素原子を表す。
【0058】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、nは、1~2の整数であり、かつR6は、-N(R7)(R8)基を表し、好ましくは、式中、R7及びR8は独立に、直鎖C1-C3アルキル基及び水素原子から選択される基を表す。
【0059】
本発明の一実施態様により、式(I)の化合物において、R2、R4及びR5は、水素原子を表し、R3は、直鎖C1-C3アルキルを表し、R1は、1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表し、nは、0~2の整数であり、かつR6は、以下:
a)-N(R7)(R8)(式中、R7及びR8は、直鎖C1-C3アルキル基及び水素原子から選択される)、
b)任意にメチル基によって置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む飽和6員ヘテロ環式基、
c)1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタニル
からなる群から選択される基を表す。
【0060】
特定の個々の本発明の化合物としては:
2-(ジメチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート
2-(ジメチルアミノ)エチル 6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート
2-モルホリノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリネート
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジエチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
1-メチルピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(1-メチルピペリジン-4-イル)メチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(R)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(S)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
キヌクリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(アゼチジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(アジリジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(メチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-アミノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(エチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(イソプロピルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
ピペリジン-4-イルメチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
ピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
及びその医薬として許容し得る塩が挙げられる。
【0061】
本発明の化合物は、下記の手順を用いることによって調製することができる。手順の説明を容易にするために、具体例が用いられているが、これらは決して、本発明の範囲を制限することはない。式(I)の化合物の合成の概略を、スキーム1に示す。
(スキーム1)
【化2】
【0062】
アミド形成反応a)は、以下の選択的条件:
選択肢1: 工程1. SOCl2、CH2Cl2、還流 工程2. HO-(CH2)n-R6、CH2Cl2、DIPEA、室温
選択肢2: 工程1. SOCl2、CH2Cl2、還流 工程2. HO-(CH2)n-R6、CH2Cl2、室温
選択肢3: 工程1. HO-(CH2)n-R6、HATU、DIPEA、DMF、室温
選択肢4: 工程1. HO-(CH2)n-R6、HOBT、EDCI、DIPEA、DMF、室温
のうちの1つに従い1又は2工程で行うことができる。
【0063】
基R6が、基アミン基(-N(R7)(R8))を表し、R7及びR8のうちの少なくとも1つが、水素原子である場合には、該アミン、該アミン基は、上で言及された反応の前にBOCで保護され(スキーム7を参照されたい)、該保護しているBoc基は、上記で言及した反応の後にHClジオキサン、ジオキサン、0℃~室温で切断される。
【0064】
一般式(I)のカルボン酸エステルは、2-(2-(3-(ピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)酢酸誘導体(II)から、酸性条件下での適当なアルコール(III)とのエステル化によって(Lee、J.-J.らの文献、「クロロアルカン用蛍光化学センサー(Fluorescent Chemosensor for Chloroalkanes)」, Organic Letters, 10(9), 1735-1738; 2008)又はカップリング試薬系の存在下で(Wang、X.らの文献、C-OMe結合切断によるアリールメチルエーテル誘導体のメタルフリーエーテル化(Metal-Free Etherification of Aryl Methyl Ether Derivatives by C-OMe Bond Cleavage)」, Organic Letters, 20(14), 4267-4272; 2018)調製される。
【0065】
R7又はR8が、水素基を表す化合物において、N-Bocで保護された前駆体の脱保護は、酸条件下で行われる。
【0066】
一般式(II)の化合物は、スキーム2に示され引用により組み込まれているWO2009123316A1に記載されているように、脱プロトン化及びそれに続く対応するブロモアセトアミド(V)との反応によって4-(3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)キノリン誘導体(IV)から数段階で調製される。
【0067】
(スキーム2)
【化3】
R
9=H又はtBu
(試薬及び条件:)
反応b)工程1. NaH、THF、DMF、0℃~室温。
R
9=tブチル基の化合物: 工程2. HCl・ジオキサン、ジオキサン、還流又は室温。
4-(3-(ピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)キノリン誘導体(IV)は、市販されているものもあり、スキーム3に示され引用により組み込まれているWO2004026302A1に記載されているように数工程で調製することができるもの(R
2が、Hであるもの)もある。
【0068】
(スキーム3)
【化4】
(試薬及び条件:)
反応c) LiHMDS、THF、-30℃~室温。
反応d) R
2=Hである化合物 工程1. DMF・DMA、AcOH、DMF、0℃~室温; 工程2. N
2H
4・H
2O、0℃~室温。
4-メチルキノリン誘導体(VI)を、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下で、2-ピリジンカルボン酸エチル(VII)と縮合させて、式(VIII)の化合物を得る。誘導体(VIII)のジメチルホルムアミドジメチルアセタールとの反応により、未単離のエナミン中間体を得て、それを、酢酸の存在下でヒドラジンとの反応によって直接環化させて、式(IVa)のピラゾール誘導体を得る。
【0069】
R
2が、1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキルである化合物(IVb)は、以下のスキーム4により調製され得る:
(スキーム4)
【化5】
(試薬及び条件:)
反応e): 工程1. NBS、CH
2Cl
2、0℃ 工程2. SemCl、Cs
2CO
3、DMF、0℃。
反応f): 工程1. R
2B(OH)
2、DMF、NaHCO
3、PdCl
2(PPh
3)
2 工程2. BCl
3、SMe
2、CH
2Cl
2、0℃。
【0070】
式(IVa)のピラゾール誘導体を、ピラゾール環の窒素の保護後に、コハク酸イミド誘導体としての標準的なハロゲン化試薬を用いてハロゲン化して、対応する式(IX)の化合物を得ることができる。C-Cカップリング及びその後のピラゾールの窒素の脱保護によって、式(IVb)の誘導体を得る。
【0071】
式式(V)のブロモアセトアミドは、スキーム5に示されるように、市販のアミン(X)から式(XI)のブロモアセチルブロミドとの反応によって1段階で容易に合成される(Shaw, S. J.らの文献、「9-置換-9-ジヒドロエリスロマイシンベースのモチリンアゴニストの構造と活性の関係: 効力及び安全性のための最適化(Structure-Activity Relationships of 9-Substituted-9-Dihydroerythromycin-Based Motilin Agonists: Optimizing for Potency and Safety)」, J. Med. Chem., 52, 6851-6859, 2009)。
(スキーム5)
【化6】
(試薬及び条件:)
反応g) THF、0℃~室温又はCH
2Cl
2、Et
3N、0℃~室温。
【0072】
アミン(X)は、市販されているものもありスキーム6に示されるように数工程で調製することができるものもある。
(スキーム6)
【化7】
R
9=
tBu
R
1は、以下:
a)非置換であるか、又は
ハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
4アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されているフェニル環
b)非置換であるか、又は
ハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
4アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されている5員又は6員のヘテロアリール環
から選択される基を表す。
反応h) Boc
2O、DMAP、THF、室温。
反応j) trans-4-ヒドロキシ-L-プロリン、CuI、NH
4OH、DMSO、80℃。
【0073】
Boc2O及び触媒量のDMAPを用いる反応による対応する酸(XII)のエステル化(Wright, S. W.らの文献、「2-、4-、5-、及び6-アミノニコチン酸 tert-ブチルエステルの調製(2-, 4-, 5-, and 6-aminonicotinic acid tert-butyl esters), J. Heterocyclic Chem, 2, 49, 442-445, 2012)、及びそれに続く、得られたエステルのCuIの存在下での水酸化アンモニウムでの処理(第XIa因子阻害剤としての置換テトラヒドロイソキノリン化合物(Substituted tetrahydroisoquinoline compounds as factor xia inhibitors)」, WO 2013056034)によって、式(X)のアミン誘導体を得た。
【0074】
R
7及び/又はR
8のうちの少なくとも1つが、水素原子を表す式(IIIb)の保護されたアミンは、スキーム7に示されるように、市販の未保護アミン(IIIa)から、Boc
2Oでの処理によって1段階で容易に合成される。
(スキーム7)
【化8】
R
7=H又は直鎖又は分岐C
1-C
6アルキル基。
反応k)Boc
2O、CH
2Cl
2、0℃~室温。
【0075】
(略語)
本出願において、対応する定義を有する以下の略語が用いられる:
AcOH: 酢酸
ACVR2B: アクチビンA受容体、II型B
ALKn: アクチビン受容体様キナーゼn
ATP: アデノシン三リン酸
Boc2O: 二炭酸terc-ブチル
Boc: tert-ブトキシカルボニル
Clint: 固有クリアランス
DIPEA: N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA: ジメチルアセトアミド
DMAP: 4-ジメチルアミノピリジン
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO: ジメチルスルホキシド
EDCI: N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド)
Et3N: トリエチルアミン
EtOAc: 酢酸エチル
EtOH: エタノール
FBS: ウシ胎仔血清
H: 時間
HATU: 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HOBT: ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC: 高速液体クロマトグラフィー
1H-NMR: プロトン核磁気共鳴
K2EDTA: エチレンジアミン四酢酸二カリウム塩
LC: 液体クロマトグラフィー
LiHMDS: リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
LLOQ: 定量下限
MeCN: アセトニトリル
MeOH: メタノール
Min: 分
MS: 質量分析
MTBE: メチルtert-ブチルエーテル
NBS: N-ブロモコハク酸イミド
NaCMC: ナトリウムカルボキシメチルセルロース
Rt: 保持時間
RT: 室温
Sem: 2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
TGFβ: トランスフォーミング増殖因子-β
THF: テトラヒドロフラン
THF:EtOH: テトラヒドロフラン:エタノール
UPLC: 超高速液体クロマトグラフィー
UV: 紫外
【0076】
(薬理活性)
(インビトロ酵素アッセイ: TGFβR-1の阻害)
ヒトTGFβR-1阻害実験を、ADP-Gloキナーゼアッセイキット(PromegaV9101)及びTGFβR-1キナーゼ酵素システム(Promega V4092)を用いて、白色ローフランジ384マイクロプレート(Corning 3572)中で行った。試験化合物及び標準ガルニセルチブ(Cayman 15312)、50ng/ウェルのTGFβR-1キナーゼ、及び50μM ATPを、キットで供給される反応バッファーをアッセイバッファーとして用いて、10μL/ウェルの最終体積で添加した。反応混合物を、穏やかに振盪しながら120分間室温でインキュベーションし、インキュベーション後、10μLのADP-Glo試薬を添加し、穏やかに振盪しながら40分間室温でインキュベーションした。20μLのキナーゼ検出試薬を添加し、プレートを、穏やかに振盪しながら30分間室温でインキュベーションした。発光(luminiscence)(1000ms)を、Perkin Elmer EnSpireマルチモードプレートリーダーで測定した。
【0077】
(結果)
表1は、一部の本発明の化合物の下記のアッセイの結果を示す。
(表1)
【表1】
範囲:
A: IC50≦100nM
B: 100nM<IC50<250nM
【0078】
(細胞内TGF-βキナーゼ活性(ALK-5)の決定)
本実験は、A549細胞株で行われた。30000個の細胞を、96ウェルマイクロプレート(Becton Dickinson 353072)上の、L-グルタミン(Sigma G7513)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen 11058)、及びFBS(Sigma F9665)を追加した200μLの培養培地(Sigma D6046)中に播種した。16時間後に、培地を、無血清培地に交換した。阻害剤リガンドとしてのガルニセルチブ(Cayman CAY-15312)及びALK-5の活性化因子としての組換えヒトTGF-β2(R&D Systems 302-B2-002)を、それらの対応するウェル中に添加し、Alphascreen AlphaLISA(登録商標) SureFire(登録商標) Ultra(商標) p-SMAD3(Ser423/425)キット(Perkin Elmer ALSU-PSM3-A500)の説明書に従いインキュベーションした。
【0079】
(結果)
表2は、本発明の一部の化合物の下記のアッセイの結果を示す。
(表2)
【表2】
範囲:
A: IC50≦1μM
B: IC50>1μM
【0080】
表2に記載された結果から分かるように、本発明の化合物は、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I((TGFβRI)/ALK5)の強力な阻害剤である。
【0081】
(一部の化合物の血漿安定性の決定)
健康なドナーからプールされたクエン酸塩管に採取されたヒト血漿を、アッセイに採用した。簡単に述べると、血漿中10μMの化合物(総体積:50μL)が入ったプレートを、37℃で種々の時間(0、30、120、及び360分)インキュベーションした。次いで、100μlのアセトニトリルを、血漿タンパク質を沈澱させるために添加し、プレートを、46000gで60分間5℃で遠心分離した。上清を採取し、試料の定量のためにUPLC/MS/MSによって分析した。固定相:逆相Acquity UPLC(登録商標) BEH C18 1.7μm(2.1 mm×50 mm)(Waters)。移動相:0.1%ギ酸水/アセトニトリル中0.1%のギ酸。
(グラジエント:)
【表3】
流速:0.6ml/分。採用されたクロマトグラフィー装置は、UPLC QSM Waters Acquityであった。化合物濃度を、MSピーク面積から計算した。
【0082】
(結果)
表3は、一部の化合物の下記アッセイの結果を示す。これは、試験が行われた種々の時間でのヒト血漿での試験された化合物のそれぞれについての残留百分率を示す。
(表3)
【表4】
【0083】
6時間後に初期量の60%まで残留していた比較例1、比較例2、及び比較例3の化合物とは異なり、試験された本発明の実施例は全て、ヒト血漿において低い安定性を示した。
【0084】
本発明の誘導体は、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害剤での治療によって改善されやすいことが知られている疾患の治療又は予防に有用である。そのような疾患は、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患である。
【0085】
従って、本発明の誘導体及びそれらの医薬として許容し得る塩、並びにそのような化合物及び/又はそれらの塩を含む医薬組成物は、有効量の本発明のエステル誘導体又はその医薬として許容し得る塩を、そのような治療を必要とする対象に投与することを含む、人体の障害の治療の方法に用い得る。
【0086】
本発明はまた、他の治療薬剤、担体又は希釈剤などの医薬として許容し得る賦形剤と共に、少なくとも式(I)のエステル誘導体又はその医薬として許容し得る塩を活性成分として含む医薬組成物を提供する。活性成分は、製剤の性質及び適用の前にさらなる希釈を行うかどうかに応じて、0.001重量%~99重量%、好ましくは0.01重量%~90重量%の組成物を含み得る。
【0087】
好ましくは、式(I)の化合物、医薬として許容し得る塩、及びそれらの組成物は、吸入、経鼻、経口、外用、又は点眼に適した形態で作製される。より好ましいやり方において、式(I)の化合物、医薬として許容し得る塩、及びそれらの組成物は、吸入投与に適した形態で作製される。
【0088】
本発明の組成物を形成するためにそのような化合物の活性化合物又は塩と混合される医薬として許容し得る賦形剤は、それ自体周知であり、用いられる実際の賦形剤は、特に、該組成物を投与する意図される方法次第で決まる。
【0089】
本発明の式(I)の化合物、その医薬として許容し得る塩、及び組成物は、好ましくは、経口投与用に適合するものとされる。この場合、経口投与用の組成物は、全てが本発明の化合物を含有する、吸入エアロゾル剤、吸入溶液、ドライパウダー吸入剤、錠剤、遅延錠、舌下錠、カプセル剤、又は液体製剤、例えば、混合物、エリキシル剤、シロップ剤、又は懸濁剤などの形態をとり得る;そのような製剤は、当技術分野において周知である方法によって作製され得る。
【0090】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患の治療における哺乳動物への式(I)の化合物の投与は、本発明の特定の態様であり、任意の実現可能なやり方で実施し得る。好ましくは、投与は、経口投与である。好ましくは、経口投与は、吸入投与である。
【0091】
組成物の調製物に用いられ得る希釈剤としては、望ましい場合には着色料又は香味料とともに、活性成分と適合性の液体及び固体の希釈剤が挙げられる。錠剤又はカプセル剤は、好都合には、2~500mgの活性成分又は等価な量のその塩を含有し得る。
【0092】
経口での使用に適合させた液体組成物は、溶液又は懸濁液の形態であり得る。溶液は、例えば、シロップ剤を形成するためのスクロースとの、活性化合物の可溶性の塩又は他の誘導体の水溶液であり得る。懸濁液は、水と共に、懸濁化剤又は香味料と一緒に、不溶性の本発明の活性化合物又はその医薬として許容し得る塩を含み得る。
【0093】
有効用量は、通常、1日あたり2~2000mgの活性成分の範囲である。1日分の投薬量は、1日あたり1回以上の処置、好ましくは、1~4回の処置で投与されてもよい。
【0094】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示する。以下は、例示として与えられるものであり、決して本発明の範囲を限定することはない。本発明の化合物の合成が、本発明の範囲を決して限定することがない中間体の調製を含む以下の実施例によって例示される。
【実施例】
【0095】
(実施例)
(全般)
試薬、溶媒、及び出発製品は、商業的供給業者から取得した。「濃縮」という用語は、Buchiのロータリーエバポレーターを用いる真空蒸発を指す。示されている場合、反応生成物は、示された溶媒系を用いてシリカゲル(40~63μm)での「フラッシュ」クロマトグラフィーによって又はVertex CombiFlashシステムを用いて精製された。分光学的データは、Varian Mercury 300分光計で測定された。融点は、Buchiの535装置で測定された。HPLC-MSは、Gilson 321ピストンポンプ、Gilson 864真空脱気装置、Gilson 189インジェクションモジュール、1/1000 Gilsonスプリッター、Gilson 307ポンプ、Gilson 170検出器、及びThermoquest Fennigan aQa検出器を取り付けたGilsonの装置で行われた。UPLC-MSは、Acquityサンプルマネージャー、Acquity 4溶媒マネージャー、Acquity PDA検出器、Acquity QDA検出器、及びVaccubrand真空ポンプを取り付けたAcquity H-Class(Waters)で行われた。
【0096】
(中間体1: 1-(6-メチルピリジン-2-イル)-2-(キノリン-4-イル)エタン-1-オン)
CO
2/アセトン外浴を利用して-30℃に冷却したTHF(50mL)中の4-メチルキノリン(5.0g、34.91mmol)の溶液に、LiHMDS(105mL、104.73mmol)を、1時間滴加し、反応混合物を低温で1時間撹拌した。反応を、別の時に-30℃で冷却し、エチル 6-メチルピリジン-2-カルボキシレート(6.3g、41.90mmol)を、5分間滴加し、混合物を、18時間撹拌し、室温とした。得られた懸濁液を濾過し、THF(40mL)で洗浄すると、黄色固体(7.04g、76%)が得られた。
【化9】
HPLC-MS: Rt 10.077 m/z 262.7 [M+H]
+。
【0097】
(中間体2: 4-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)キノリン)
9℃の氷/H
2O外浴を利用して冷却したDMF(35mL)中の1-(6-メチルピリジン-2-イル)-2-(キノリン-4-イル)エタン-1-オン(7.04g、26.58mmol)の溶液に、DMF-DMA(10.6mL、79.75mmol)を8分間添加した。AcOH(5.5mL、95.68mmol)を滴下し、反応混合物を17時間撹拌して、室温とした。反応混合物を、氷/H
2O外浴を用いて7℃で冷却し、N
2H
4・H
2O(6.45mL、50.06mmol、64~65%)を滴下し、低温で3時間撹拌した。H
2O(70mL)を滴下し、得られた懸濁液を室温で1晩撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、H
2O(60mL)で洗浄して、ベージュ色の固体(3.45g、45%)を得た。
【化10】
HPLC-MS: Rt 9.100 m/z 286.9 [M+H]
+。
【0098】
(中間体3: tert-ブチル 2-ヒドロキシエチルイソプロピルカルバメート)
氷/水外浴を利用して5℃まで冷却したジクロロメタン(10mL)中の2-(イソプロピルアミノ)エタノール(1.4g、9.69mmol)の溶液に、ジクロロメタン(5mL)中の二炭酸tert-ブチル(2.5g、11.63mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、室温とし、22時間撹拌し、ジクロロメタン(10mL)で希釈し、塩化アンモニウム(2×15mL、飽和水溶液)及びクエン酸(15mL、1M水溶液)で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、黄色オイル(2.1g)を得た。生成物は、追加の精製を行わずに次の工程で用いられた。
【化11】
【0099】
以下の中間体4~10を、中間体3について記載した手順に従い調製した。
【0100】
(中間体4: tert-ブチル 2-ヒドロキシエチルカルバメート)
【化12】
(中間体5: tert-ブチル 2-ヒドロキシエチルメチルカルバメート)
【化13】
(中間体6: tert-ブチル エチル 2-ヒドロキシエチルカルバメート)
【化14】
(中間体7: tert-ブチル 4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-カルボキシレート)
【化15】
(中間体8: tert-ブチル 4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)
【化16】
(中間体9: tert-ブチル 4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート)
【化17】
【0101】
(中間体10: tert-ブチル 6-ブロモピリジン-3-カルボキシレート)
THF(15)中の6-ブロモピリジン-3-カルボン酸(1g、4.95mmol)及び(4-ジメチルアミノ)ピリジン(50mg、0.08mmol)の懸濁液に、THF(2mL)中の二炭酸ジ-tert-ブチル(2.7g、12.38mmol)の溶液を滴下し、反応混合物を、5時間還流させた。反応物を、室温とし、17時間撹拌した。溶媒を、減圧下で蒸発させ、残渣を、MTBE(10mL)に溶解させ、H2O(×10mL)、クエン酸(10ml、0.5M水溶液)、H2O(10mL)、及びNaHCO3(10mL、飽和水溶液)で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾固するまで濃縮して、黄色固体(0.890g、70%)を得た。生成物は、追加の精製を行わずに次の工程で用いられた。
HPLC-MS: Rt 3.791 m/z 258.1 [M+H]+。
【0102】
(中間体11: tert-ブチル 5-アミノピコリネート)
ヨウ化第一銅(0.510g、2.68mmol)、trans-4-ヒドロキシ-L-プロリン(0.703g、5.36mmol)、及びtert-ブチル 5-ブロモピコリネート(3.46g、13.40mmol)を、ジメチルスルホキシド(20mL)と共に密閉管内で撹拌した。濃水酸化アンモニウム(15mL)を添加し、管を閉じ、均一な青色溶液を、80℃で17時間加熱した。反応混合物を、室温とし、濾過した。得られた固体を、ジクロロメタン(30mL)に溶解させ、飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)で洗浄した。水層を、ジクロロメタン(2×30mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、白色固体(2.16g、83%)を得た。
【化18】
HPLC-MS: Rt 8.607 m/z 195.2 [M+H]
+。
【0103】
以下の中間体12を中間体11について記載した手順に従い調製した。
(中間体12: tert-ブチル 6-アミノピリジン-3-カルボキシレート)
HPLC-MS: Rt 3.262 m/z 195.3 [M+H]+。
【0104】
(中間体13: tert-ブチル 5-(2-ブロモアセトアミド)ピコリネート)
tert-ブチル 5-アミノピコリネート(1.07g、5.51mmol)を、ジクロロメタン(15mL)中に懸濁させ、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(0.84mL、6.06mmol)を添加し、それに続き、ジクロロメタン(2mL)中のブロモアセチルブロミド(0.67mL、7.71mmol)の溶液を滴加した。反応混合物を、0℃で40分間撹拌し、次いで、室温まで昇温させた。得られた懸濁液を濾過し、ジクロロメタン(5mL)で洗浄した。固体を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(2→3% MeOH/CH
2Cl
2)によって精製して、橙色固体(1.11g、64%)を得た。
【化19】
HPLC-MS: Rt 9.514 m/z 313.0-315.0 [M-H]
-。
【0105】
(中間体14: 3-(2-ブロモアセトアミド)-5-フルオロ安息香酸)
H
2O/氷外浴中で冷却したTHF(60mL)中の3-アミノ-5-フルオロ安息香酸(6.0g、38.67mmol)の溶液に、2-ブロモアセチルブロミド(3.7mL、42.54mmol)を添加し、反応混合物を、低温で10分間撹拌し、室温とし、22時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、EtOAc(30mL)で洗浄し、母液を、乾固するまで濃縮し、固体を、Et
2O:ヘキサン(異性体混合物)の1:1混合物(25mL)を用いてスラリー化させて、白色固体(7.4g、70%)を得た。
【化20】
HPLC-MS: Rt 1.89 m/z 276.2 [M+H]
+。
【0106】
以下の中間体15及び16を、中間体14について記載した手順に従い調製した。
(中間体15: tert-ブチル 6-(2-ブロモアセトアミド)ピリジン-3-カルボキシレート)
【化21】
HPLC-MS: Rt 3.658 m/z 317.1 [M+H]
+。
(中間体16: 5-(2-ブロモアセトアミド)ピリジン-3-カルボン酸)
【化22】
HPLC-MS: Rt 1.205 m/z 257.1 - 259.2 [M+H]
+。
【0107】
(中間体17: 3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸)
EtOH/氷外浴を利用して-11℃で冷却したTHF(100mL)中の4-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)キノリン(3.5g、12.26mmol)の懸濁液に、NaH(1.5g、36.78mmol、鉱油中60%の分散物)を、一度に添加し、反応混合物を、低温で30分間撹拌した。THF(100mL)中の3-(2-ブロモアセトアミド)-5-フルオロ安息香酸(4.4g、15.94mmol)の溶液を、45分間滴下し、混合物を、3時間撹拌し、1晩室温とした。シリカを添加し、溶媒を、真空下で濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(8→15% MeOH/CH
2Cl
2+1% AcOH)によって精製して、ベージュ色の固体(4.71g、80%)を得た。
【化23】
HPLC-MS: Rt 3.018 m/z 482.1 [M+H]
+。
【0108】
以下の中間体18及び19を、中間体17について記載した手順に従い調製した。
(中間体18: tert-ブチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリネート)
残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(2.5→4% MeOH/CH
2Cl
2)によって精製して、黄色固体(0.950g、69%)を得た。
【化24】
HPLC-MS: Rt 10.376 m/z 521.1 [M+H]
+。
【0109】
(中間体19: tert-ブチル 6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピリジン-3-カルボキシレート)
【化25】
HPLC-MS: Rt 4.011 m/z 521.3 - 522.2 [M+H]
+。
【0110】
(中間体20: 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリン酸)
塩酸溶液(8ml、ジオキサン中4M溶液)中のtert-ブチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリネート(0.170mg、0.518mmol)の溶液を、2時間還流させ、室温とした。EtOAc(2×15mL)を添加し、溶媒を、真空下除去した。残渣粗体を、Combiflashシステムを用いるC18クロマトグラフィー(5→100% H
2O/MeCN)によって精製して、ベージュ色の固体(0.063g、26%)を得た。
【化26】
HPLC-MS: Rt 12.726 m/z 465.0 [M+H]
+。
【0111】
以下の中間体21を、中間体20について記載した手順に従い調製した。
(中間体21: 6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピリジン-3-カルボン酸)
HPLC-MS: Rt 3.158 m/z 465.1 [M+H]+。
【0112】
(中間体22: tert-ブチル 2-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)エチルエチルカルバメート)
DMF(4mL)中の3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸(0.20g、0.415mmol)の懸濁液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.21mL、1.24mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(0.26g、0.622mmol)を添加し、反応混合物を、室温で30分間撹拌した。DMF(1mL)中のtert-ブチル エチル2-ヒドロキシエチルカルバメート(0.15g、0.830mmol)の溶液を添加し、混合物を、室温で2時間撹拌した。反応混合物を、EtOAc(15mL)で希釈し、ブライン(3×10mL)で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、褐色のオイル(0.3g)を得て、それを、追加の精製を行わずに次の工程で用いた。
HPLC-MS: Rt 4.021 m/z 653.3 [M+H]+。
【0113】
以下の中間体23~28を、中間体22について記載した手順に従い調製した。
(中間体23: tert-ブチル 2-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)エチルイソプロピルカルバメート)
HPLC-MS: Rt 4.112 m/z 667.3 [M+H]+。
(中間体24: tert-ブチル 2-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)エチルカルバメート)
HPLC-MS: Rt 3.878 m/z 625.3 [M+H]+。
(中間体25: tert-ブチル 2-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)エチルメチルカルバメート)
HPLC-MS: Rt 3.954 m/z 639.3 [M+H]+。
(中間体26: tert-ブチル 4-(2-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)エチル)ピペラジン-1-カルボキシレート)
HPLC-MS: Rt 3.981 m/z 694.2 [M+H]+。
(中間体27: tert-ブチル 4-((3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボキシレート)
HPLC-MS: Rt 4.091 m/z 679.3 [M+H]+。
(中間体28: tert-ブチル 4-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)ピペリジン-1-カルボキシレート)
HPLC-MS: Rt 4.060 m/z 665.3 [M+H]+。
【0114】
(中間体29: メチル 3-(2-ブロモアセトアミド)-5-クロロベンゾエート
HPLC-MS: Rt 9.991 m/z 306.0 [M-H]-。
この中間体を、中間体17について記載した手順に従い調製した。
【0115】
(実施例)
(実施例1: 2-(ジメチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
ジクロロメタン(50mL)中の3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸(2.0g、4.150mmol)の懸濁液に、塩化チオニル(1.5mL、20.75mmol)を添加し、反応混合物を、還流下で1晩加熱した。反応物を、室温とし、溶媒を、減圧下で蒸発させた。残渣を、ジクロロメタン(50mL)中に懸濁させ、2-(ジメチルアミノ)エタノール(0.59mL、6.22mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3mL、17.48mmol)を添加し、混合物を、室温で30分間撹拌した。反応混合物を、水(50mL)の上に注ぎ、相を分離させ、有機相を、水(50mL)及びブライン(50mL)で洗浄した。有機層に、クエン酸水溶液を添加して、pH 1.7とし、層を分離し、最後の有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾固するまで濃縮した。アセトニトリル(25mL)を、残渣に添加し、混合物を、室温で20分間撹拌し、55℃に15分間加熱し、1晩室温とした。得られた懸濁液を濾過し、アセトニトリル(15mL)で洗浄して、ベージュ色の固体(1.24g、54%)を得た。
【化27】
UPLC-MS: Rt 3.562 m/z 553.4 - 554.4 [M+H]
+。
【0116】
以下の実施例2及び3を、実施例1について記載した手順に従い調製した。
(実施例2: 2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート)
【化28】
UPLC-MS: Rt 2.853 m/z 536.4 - 537.4 [M+H]
+。
(実施例3: 2-(ジメチルアミノ)エチル 6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート)
【化29】
UPLC-MS: Rt 2.911 m/z 536.4 - 537.4 [M+H]
+。
【0117】
(実施例4: 2-モルホリノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
ジクロロメタン(8mL)中の3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸(0.200g、0.397mmol)の懸濁液に、塩化チオニル(0.290mL、3.97mmol)を添加し、反応混合物を、還流下で3時間加熱し、室温とし、溶媒を、減圧下で蒸発させた。残渣を、ジクロロメタン(8mL)中に懸濁させ、2-モルホリノエタノール(0.145mL、1.19mmol)を添加し、混合物を室温で1晩撹拌した。溶媒を真空下除去し、残渣を、EtOAc(20mL)に溶解させ、重炭酸ナトリウム(2×20mL、飽和水溶液)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。反応生成物を、MeCN(10mL)中に懸濁させ、室温で4時間撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、MeCN(2×5mL)で洗浄して、白色固体(0.130g、55%)を得た。
【化30】
UPLC-MS: Rt 3.449 m/z 595.4 - 596.4 [M+H]
+。
【0118】
以下の実施例5~8を、実施例4について記載した手順を用いて合成した。
(実施例5: 2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリネート)
【化31】
UPLC-MS: Rt 2.682 m/z 536.5 [M+H]
+。
【0119】
(実施例6: 2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化32】
UPLC-MS: Rt 3.083 m/z 608.3 - 609.3 [M+H]
+。
【0120】
(実施例7: 2-(ジエチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化33】
UPLC-MS: Rt 3.393 m/z 581.4 - 582.4 [M+H]
+。
【0121】
(実施例8: 1-メチルピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化34】
UPLC-MS: Rt 3.248 m/z 579.4 - 580.4 [M+H]
+。
【0122】
(実施例9: (1-メチルピペリジン-4-イル)メチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
N,N-ジメチルホルムアミド(4mL)中の3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸(0.20g、0.415mmol)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.21mL、1.24mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.125g、0.623mmol)、及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(0.120g、0.623mmol)を添加し、反応混合物を、室温で40分間撹拌した。N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)中の(1-メチルピペリジン-4-イル)メタノール(0.11g、0.830mmol)の溶液を添加し、混合物を室温で3時間撹拌し続けた。反応混合物を、EtOAc(20mL)で希釈し、ブライン(3×15mL)で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣を、Combiflashシステムを用いてC18クロマトグラフィー(5→80% H
2O/MeCN+0.1%ギ酸)によって精製して、オフホワイトの固体(0.015g、6%)を得た。
【化35】
UPLC-MS: Rt 3.141 m/z 593.4 - 594.4 [M+H]
+。
【0123】
(実施例10: (R)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
N,N-ジメチルホルムアミド(4mL)中の3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸(0.20g、0.415mmol)の懸濁液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.21mL、1.24mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(0.23g、0.623mmol)を添加し、反応混合物を、室温で30分間撹拌した。この反応混合物に、(R)-キヌクリジン-3-オール(0.105g、0.830mmol)を添加し、室温で1晩撹拌し続けた。反応混合物を、EtOAc(30mL)で希釈し、ブライン(2×20mL)で洗浄した。有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣を、Combiflashシステムを用いてC18クロマトグラフィー(5→80% H
2O/MeCN + 0.1%ギ酸)によって精製して、オフホワイトの固体(0.057g、23%)を得た。
【化36】
UPLC-MS: Rt 3.144 m/z 591.4 - 592.4 [M+H]
+。
【0124】
以下の実施例11~14を、実施例10について記載した手順を用いて合成した。
(実施例11: (S)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化37】
UPLC-MS: Rt 3.045 m/z 591.4 - 592.4 [M+H]
+。
(実施例12: キヌクリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化38】
UPLC-MS: Rt 6.744 m/z 591.5 - 592.5 [M+H]
+。
(実施例13: 2-(アゼチジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化39】
UPLC-MS: Rt 3.887 m/z 565.5 - 566.5 [M+H]
+。
(実施例14: 2-(アジリジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化40】
UPLC-MS: Rt 3.439 m/z 551.4 - 552.4 [M+H]
+。
【0125】
(実施例15: 2-(メチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
ジオキサン(3mL)中のtert-ブチル 2-(3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロベンゾイルオキシ)エチルメチルカルバメート(0.30g、0.469mmol)の溶液に、HCl(0.58mL、2.34mmol、ジオキサン中4M溶液)を添加し、反応混合物を、室温で4時間撹拌した。溶媒を、減圧下濃縮し、残渣を、EtOAc(15mL)及びNaHCO
3(10mL、飽和水溶液)の混合物中に溶解させた。相を分離させ、有機層を、重炭酸ナトリウム(10mL、飽和水溶液)、塩化アンモニウム(10mL、飽和水溶液)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。反応生成物を、Combiflashシステムを用いるC18クロマトグラフィー(5→80% MeCN:H
2O+0.1ギ酸)によって精製して、白色固体(0.043g、17%)を得た。
【化41】
UPLC-MS: Rt 3.010 m/z 539.4 - 540.4 [M+H]
+。
【0126】
以下の実施例16~21を、実施例15について記載した手順を用いて対応するエステル誘導体から合成した。
(実施例16: 2-アミノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化42】
UPLC-MS: Rt 2.880 m/z 525.3 - 526.3 [M+H]
+。
(実施例17: 2-(エチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化43】
UPLC-MS: Rt 3.016 m/z 553.3 - 554.3 [M+H]
+。
(実施例18: 2-(イソプロピルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化44】
UPLC-MS: Rt 3.113 m/z 567.4 - 568.4 [M+H]
+。
(実施例19: 2-(ピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化45】
UPLC-MS: Rt 3.070 m/z 594.4 - 595.4 [M+H]
+。
(実施例20: ピペリジン-4-イルメチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化46】
UPLC-MS: Rt 3.068 m/z 579.4 - 580.4 [M+H]
+。
(実施例21: ピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化47】
UPLC-MS: Rt 3.012 m/z 565.4 - 566.4 [M+H]
+。
【0127】
(比較例1: シクロプロピルメチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
本化合物を、実施例1に記載した手順に従い調製した。
【化48】
UPLC-MS: Rt 4.16 m/z 536.5 - 537.5 [M+H]
+。
【0128】
(比較例2: メチル 3-クロロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化49】
EtOH/氷外浴を利用して冷却したDMF(8mL)中の4-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)キノリン(0.3g、1.06mmol)の懸濁液に、NaH(50mg、1.27mmol、鉱油中60%の分散物)を一度に添加し、反応混合物を低温で20分間撹拌した。DMF(2mL)中のメチル 3-(2-ブロモアセトアミド)-5-クロロベンゾエート(0.36g、1.17mmol)の溶液を滴下し、混合物を、16時間撹拌し、1晩室温とした。反応混合物を、減圧下濃縮し、粗体残渣を、NH
4Cl(15mL、飽和水溶液)に溶解させ、ジクロロメタン(2×10mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣を、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(0→3% MeOH/CH
2Cl
2)によって及びCombiflashシステムを用いるC18クロマトグラフィー(5→90% H
2O/MeOH)によって精製し、得られた固体を、ジエチルエーテル(2×3mL)を用いてスラリー化させて、ベージュ色の固体(0.257g、47%)を得た。
【化50】
HPLC-MS: Rt 19.792 m/z 512.1 [M+H]
+。
【0129】
(比較例3: 2-ヒドロキシエチル 3-フルオル-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート)
【化51】
本化合物を、DIPEAの代わりにEt
3Nを用いた以外は実施例1について記載した手順に従い調製した。
【化52】
UPLC-MS: Rt 3.135 m/z 526.4 - 527.4 [M+H]
+。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
及びその医薬として許容し得る塩
(式中:
R
1は、以下:
a)非置換であるか、又はハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されているフェニル環、
b)非置換であるか、又はハロゲン原子、直鎖又は分岐C
1-C
3ハロアルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、直鎖又は分岐C
1-C
3アルコキシ、シアノ基、及びヒドロキシ基から選択される1つ又は2つの基によって置換されている5員又は6員のヘテロアリール環
から選択される基を表し、
R
2は、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル
から選択される基であり、
R
3は、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、
c)ハロゲン原子
から選択される基を表し、
R
4及びR
5は独立に、以下:
a)水素原子、
b)1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子によって任意に置換されている直鎖又は分岐C
1-C
3アルキル、
c)ハロゲン原子
から選択される基を表し、
nは、0~3の整数であり、
R
6は、以下:
a)-N(R
7)(R
8)(式中、R
7及びR
8は独立に、直鎖もしくは分岐C
1-C
6アルキル基又は水素原子を表す)、及び
b)酸素及び窒素からなる群から選択されるもう1つのヘテロ原子を任意に含む飽和4~10員単環式又は二環式含窒素ヘテロシクリルであって、C
1-C
3アルキル基から選択される基によって任意に置換されている、前記ヘテロシクリル
からなる群から選択される基を表す)。
【請求項2】
R
2、R
4及びR
5が、水素原子を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R
3が、メチル基を表す、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
R
1が、1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表す、請求項1~3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
nが、1~2の整数であり、かつR
6が、-N(R
7)(R
8)基を表す、請求項1~4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
R
7及びR
8が独立に、直鎖C
1-C
3アルキル基及び水素原子から選択される基を表す、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R
6が、任意にメチル基によって置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む飽和6員ヘテロ環式基を表す、請求項1~4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
R
6が、ピペラジニル及びピペリジニル基から選択される基を表す、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R
2、R
4及びR
5が、水素原子を表し、R
3が、直鎖C
1-C
3アルキルを表し、R
1が、1つ又は2つのハロゲン原子によって置換されているフェニル環を表し、nが、0~2の整数であり、かつR
6が、以下:
a)-N(R
7)(R
8)(式中、R
7及びR
8は、直鎖C
1-C
3アルキル基及び水素原子から選択される)、
b)任意にメチル基によって置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む飽和6員ヘテロ環式基、及び
c)1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクタニル
からなる群から選択される基を表す、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
以下:
2-(ジメチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート
2-(ジメチルアミノ)エチル 6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ニコチネート
2-モルホリノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジメチルアミノ)エチル 5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリネート
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ジエチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
1-メチルピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(1-メチルピペリジン-4-イル)メチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(R)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
(S)-キヌクリジン-3-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
キヌクリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(アゼチジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(アジリジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(メチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-アミノエチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(エチルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(イソプロピルアミノ)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
2-(ピペラジン-1-イル)エチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
ピペリジン-4-イルメチル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート及び
ピペリジン-4-イル 3-フルオロ-5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ベンゾエート
からなる群から選択される、請求項1記載の化合物、又はその医薬として許容し得る塩。
【請求項11】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、及び好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療のための医薬品の生産における、請求項1~10のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
肺がん、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、間質性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺動脈性肺高血圧症から選択される呼吸器疾患の治療において哺乳動物に投与するための医薬品の生産における、請求項1~10のいずれか1項記載の化合物の使用であって、
該投与が、経口投与である、前記使用。
【請求項13】
経口投与が、吸入投与である、請求項12記載の化合物の使用。
【請求項14】
医薬品としての使用のための、請求項1~10のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項15】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、及び好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療における使用のための、請求項1~10のいずれか1項記載の式(I)の化合物。
【請求項16】
前記疾患が、肺がん、成人呼吸促迫症候群、特発性肺線維症、間質性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺動脈性肺高血圧症から選択される呼吸器疾患からなる群から選択され、かつ
該投与が、経口投与である、請求項15記載の使用のための化合物。
【請求項17】
経口投与が、吸入投与である、請求項16記載の使用のための化合物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項記載の化合物、及び医薬として許容し得る希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、及び好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療に有用な薬剤から選択される治療的有効量の治療薬剤をさらに含む、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~10のいずれか1項記載の化合物、及び
少なくとも、肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸促迫症候群、間質性肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、及び肺がんなどの呼吸器疾患;強皮症、腎性線維化性皮膚症、混合性結合組織病、硬化性粘液水腫、強皮症、及び好酸球性筋膜炎などの線維性皮膚疾患;ドライアイ、加齢黄斑変性、角膜及び結膜における瘢痕、白内障後線維症、増殖性硝子体網膜症、及び増殖性糖尿病性網膜症などの線維性眼疾患などの、トランスフォーミング増殖因子-β受容体I(TGFβRI)/ALK5の阻害によって改善することのできる疾患又は病的状態の治療に有用な薬剤から選択される治療薬剤
を含む組合せ製品。
【請求項21】
式(II)の化合物:
【化2】
又はその塩
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、請求項1~10のいずれか1項記載の通りである)。
【請求項22】
3-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)-5-フルオロ安息香酸;
5-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピコリン酸;及び
6-(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(キノリン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アセトアミド)ピリジン-3-カルボン酸、からなる群から選択される、請求項21記載の化合物又はその塩。
【請求項23】
請求項1~10のいずれか1項記載の式(I)の化合物又はその医薬として許容し得る塩の調製のための方法であって、
式(II)の化合物:
【化3】
又はその塩を、式(III)の化合物:
【化4】
又はその塩と反応させることを含む、前記方法
(式中、n、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、請求項1~10のいずれか1項記載の通りである)。
【国際調査報告】