IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイビン アイアールエル リミテッドの特許一覧

特表2023-544724吸入による幻覚発動薬の送達方法および方法を実施するためのシステム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】吸入による幻覚発動薬の送達方法および方法を実施するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4045 20060101AFI20231018BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 31/661 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61K9/72
A61K31/661
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/32
A61P25/36
A61P25/34
A61P25/28
A61P25/06
A61P29/02
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519831
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021077057
(87)【国際公開番号】W WO2022069690
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/086,830
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/114,769
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/241,891
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522452581
【氏名又は名称】サイビン アイアールエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,ブレット ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パルフレイマン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ニヴォロツキン,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ミノ,ロバート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD21
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086DA38
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA57
4C086NA11
4C086NA12
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
(57)【要約】
エアロゾルの形態の幻覚発動薬を吸入により投与することを含む、それを必要とする患者に幻覚発動薬を送達する方法、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を、エアロゾルの形態の幻覚発動薬の吸入により治療する方法、遠隔作動や遠隔制御によるものを含む、吸入による幻覚発動薬および亜酸化窒素混合物の送達のための装置、ならびに総ガスの15~25容量%の亜酸化窒素の量を有する亜酸化窒素/酸素混合物の吸入により、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達する方法であって、吸入により、エアロゾルを前記患者に投与することを含み、前記エアロゾルは、担体中に前記幻覚発動薬を含む、方法。
【請求項2】
前記担体は、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヘリウムと酸素の前記混合物は、約50℃~約60℃に加熱される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記幻覚発動薬は、ジメチルトリプタミン(DMT)、5-メトキシ-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)、または5-ヒドロキシ-ジメチルトリプタミン(5-OH-DMT)のうちの一つ以上を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記幻覚発動薬は、サイロシビンまたはサイロシンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記幻覚発動薬は、肺吸収により、前記患者の中枢神経系に送達される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記担体は、ヘリウムと酸素の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘリウムは、約50%、60%、70%、80%、または90%で、ヘリウムと酸素の前記混合物中に存在し、前記酸素は、約50%、40%、30%、20%、または10%で、ヘリウムと酸素の前記混合物中に存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記幻覚発動薬および前記担体を含む前記エアロゾルの投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記前治療は、前記患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与すること、および(ii)前記患者に、前記幻覚発動薬と、約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の前記混合物とを含むエアロゾルを、吸入により投与すること、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(i)および(ii)を、1回以上繰り返すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(i)および(ii)は、1~5回繰り返される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(i)および(ii)は、6回以上繰り返される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記幻覚発動薬は、前記患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の減少、またはそれらの組み合わせを提供する、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記エアロゾルは、ミストである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記エアロゾルは、前記幻覚発動薬の噴霧化によって調製される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記噴霧化は、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼気作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される構成要素を用いて実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記噴霧化は、亜酸化窒素を、前記噴霧化された幻覚発動薬の同伴のための駆動ガスとして使用して実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記亜酸化窒素は、使用されるガスの15~25容量%濃度で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記亜酸化窒素は、使用されるガスの15~20容量%濃度で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記エアロゾルは、20~60分間投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記エアロゾルは、30~45分間投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
吸入により、担体中に幻覚発動薬を含むエアロゾルを患者に投与することを含む、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療する方法。
【請求項25】
前記エアロゾルは、ミストである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記担体は、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記担体は、ヘリウムと酸素の混合物であり、ヘリウムと酸素の前記混合物は、前記患者に前記エアロゾルを投与する前に、約50℃~約60℃に加熱される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記CNS障害は、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、不安障害、強迫性障害、嗜癖障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮や自殺企図、双極I型障害、双極II型障害、気分循環障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会的不安障害、アルツハイマー病、群発性頭痛、片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛みと神経障害性の痛み、弱膜症、小児期発症性流性障害、認知症、軽度の神経認知障害、性機能障害、ギャンブル障害、摂食障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、むちゃ食い障害、性的倒錯、小児性障害、行動障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズム障害、性的サディズム障害、および異性装障害からなる群から選択される少なくとも一つの構成要素である、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記エアロゾルは、前記幻覚発動薬の噴霧化によって調製される、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記噴霧化は、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼気作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される構成要素を用いて実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記噴霧化は、亜酸化窒素を、前記噴霧化された幻覚発動薬の同伴のための駆動ガスとして使用して実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記亜酸化窒素は、使用されるガスの15~25容量%濃度で存在する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記亜酸化窒素は、使用されるガスの15~20容量%濃度で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記エアロゾルは、20~60分間投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記エアロゾルは、30~45分間投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達する方法であって、乾燥粉末吸入器を介する吸入により、前記幻覚発動薬を前記患者に投与することを含み、前記乾燥粉末吸入器が、前記幻覚発動薬を含む乾燥粉末を送達する、方法。
【請求項37】
前記乾燥粉末は、その表面上に前記幻覚発動薬を有する粒子担体を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記幻覚発動薬は、前記幻覚発動薬が、前記患者による吸入時に、前記患者内の前記粒子担体から放出されるように、前記粒子担体の表面上に放出可能に吸収される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記乾燥粉末は、固体粒子形態の前記幻覚発動薬から形成される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記幻覚発動薬は、ジメチルトリプタミン(DMT)、5-メトキシ-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)、または5-ヒドロキシ-ジメチルトリプタミン(5-OH-DMT)のうちの一つ以上を含む、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記幻覚発動薬は、サイロシビンまたはサイロシンである、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記幻覚発動薬は、肺吸収により、患者の中枢神経系に送達される、請求項36~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記患者への前記幻覚発動薬の投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、請求項36~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記前治療は、前記患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(i)前記患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与すること、および(ii)前記患者に、前記幻覚発動薬を、吸入により投与すること、をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(i)および(ii)を、1回以上繰り返すことをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ステップ(i)および(ii)は、1~5回繰り返される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ステップ(i)および(ii)は、6回以上繰り返される、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記幻覚発動薬は、患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の減少、またはそれらの組み合わせを提供する、請求項36~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
亜酸化窒素と幻覚発動薬との組み合わせを、それを必要とする患者による吸入により、送達するための吸入送達装置であって、
前記患者への亜酸化窒素と前記幻覚発動薬との前記組合せの投与のための吸入出口ポータルと、
亜酸化窒素ガスを、前記吸入出口ポータルに送達するように構成された容器と、
前記幻覚発動薬を含むエアロゾルを生成し、前記吸入出口ポータルに送達するように構成される、装置と、を備える、吸入送達装置。
【請求項51】
前記吸入出口ポータルは、患者の鼻および口を覆うマウスピースまたはマスクから選択される、請求項50に記載の吸入送達装置。
【請求項52】
前記エアロゾルを生成し、前記吸入出口ポータルに送達するように構成された前記装置は、ネブライザである、請求項50または51に記載の吸入送達装置。
【請求項53】
前記ネブライザは、ジェットネブライザであり、前記亜酸化窒素ガスは、前記ジェットネブライザの駆動ガスとして作用する、請求項52に記載の吸入送達装置。
【請求項54】
前記吸入送達装置の遠隔作動および動作制御を提供するように構成された電子機器をさらに含む、請求項50~53のいずれか一項に記載の吸入送達装置。
【請求項55】
中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療する方法であって、吸入により、亜酸化窒素と酸素または空気とのガス混合物を投与することを含み、前記亜酸化窒素が、総ガス混合物の15~25容量%の量で存在する、方法。
【請求項56】
前記亜酸化窒素は、総ガス混合物の15~20容量%の量で存在する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記投与することは、20~60分間実施される、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記投与することは、30~45分間実施される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記心理的障害は、急性幻覚クリーゼである、請求項55~58のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月2日出願の米国仮特許出願第63/086,830号の「Treatment Protocols for Inhalation Delivery of Psychedelic Medications」、2020年11月17日出願の米国仮特許出願第63/114,769号の「Treatment Protocols for Inhalation delivery of Psychedelic Medications」、および2021年9月8日出願の米国仮特許出願公開第63/241,891号の「Combination Drug Therapies」に関し、およびその利点を主張し、それら各々の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
吸入による幻覚発動薬の送達のための方法、ならびにそれらの方法を実施するためのシステムおよび装置が提供される。
関連技術の説明
【0003】
トリプタミン、フェネチルアミン、エルゴリン、およびその他の誘導体などの天然および合成の両方の幻覚化合物は、治療に有用であり得る、様々な価値のある治療特性を有する。
【0004】
幻覚発動薬は、ユーザへの経験的効果のために、そのように命名されている。幻覚体験は、ほとんどの場合、使用時に、ユーザの気分を高揚させるように作用する。しかしながら、治療剤としての幻覚発動薬の投与から生じる潜在的な心理的障害の一つは、患者には無益な経験のリスクであって、患者が後悔または苦痛の感情を経験する、俗称「バッドトリップ」の急性幻覚クリーゼとして観察される。
【0005】
多くの幻覚発動薬の治療係数は、比較的狭い範囲にある。したがって、潜在的な薬剤候補分子の治療的利益を最大化するには、用量滴定と共に、用量の微調整および投与経路を必要として、副作用を低減し、安全性を改善する。
【0006】
標準的な投与経路は、ほとんどの場合、経口送達によるものであり、多くの場合、代謝変換により複雑になり、有効性の低下および毒性の増加の両方をもたらす。一部の化合物については、経口経路は、完全に無効である。例えば、自然発生的ジメチルトリプタミン(DMT)は、民間薬のアヤフアスカのように、MAO阻害剤と組み合わせない限り、経口的に不活性である。
【0007】
薬剤投与の吸入方法は、一般的に、喘息、疼痛管理、または糖尿病の治療を含む、比較的一般的な医学的状況を対象とする。肺送達は、肺胞領域の大きな表面積による迅速な吸収、豊富な血管構造および薄い空気-血液関門、ならびに初回通過代謝の回避により、全身投与の経路として魅力的である。エアロゾル療法の有効性は、目的の沈着部位に到達する薬剤の量に大きく依存する。投与されたエアロゾルの沈着パターンは、主に、製剤および送達装置によって決定される。したがって、用量が制御され得る一方、肺系統を介して薬剤を全身に送達することができる、吸入により幻覚発動薬を送達するための方法および装置への医療ニーズが満たされることはない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、一つの目的は、幻覚発動薬(または幻覚発動薬を含む医薬品の組み合わせ)を、それを必要とする患者による吸入により、送達するための方法を提供することである。
【0009】
さらなる目的は、幻覚発動薬またはその誘導体を血流に迅速に送達して、初回通過代謝をバイパスするために、吸入により幻覚発動薬(または幻覚発動薬を含む薬剤の組み合わせ)を送達するための方法を提供することである。
【0010】
別の目的は、亜酸化窒素と酸素(または空気)の混合物を投与することによって、中枢神経系障害または心理的障害を治療するための方法を提供することである。
【0011】
さらなる目的は、吸入による幻覚発動薬および亜酸化窒素の併用投与による幻覚発動薬の送達のための方法を提供することであり、亜酸化窒素は、幻覚発動薬の噴霧化用の駆動ガスとして作用する。
【0012】
さらなる目的は、幻覚発動薬および亜酸化窒素の吸入による併用投与のための医療機器を提供することである。
【0013】
さらなる目的は、遠隔で作動され得、治療の用量および期間を制御するように制御され得る亜酸化窒素および幻覚発動薬の送達装置を提供することであり、これにより、遠隔医療により、療法士/精神科医の監督下で自宅での治療を提供し、それによって、薬剤投与における患者のコンプライアンスを支援し、過剰投与の防止に役立てる。
【0014】
これらのおよび他の目的は、単独または組み合わせにより、エアロゾルの形態の幻覚発動薬の吸入により投与することを含む、幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達する方法、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を、エアロゾルの形態の幻覚発動薬の吸入により治療する方法、遠隔作動や遠隔制御によるものを含む、吸入による幻覚発動薬および亜酸化窒素混合物の送達のための装置、総ガスの15~25容量%の亜酸化窒素の量を有する亜酸化窒素/酸素混合物の吸入により、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療するための方法の発見によって満たされた。
【0015】
したがって、以下の実施形態は、限定を意図しないように開示される。
【0016】
実施形態1:幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達する方法であって、吸入により、エアロゾルを患者に投与することを含み、エアロゾルは、担体中に幻覚発動薬を含む、方法。
【0017】
実施形態2:
担体は、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、実施形態1に記載の方法。
【0018】
実施形態3:
ヘリウムと酸素の混合物は、約50℃~約60℃に加熱される、実施形態2に記載の方法。
【0019】
実施形態4:
幻覚発動薬は、ジメチルトリプタミン(DMT)、5-メトキシ-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)、または5-ヒドロキシ-ジメチルトリプタミン(5-OH-DMT)のうちの一つ以上を含む、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
【0020】
実施形態5:
幻覚発動薬は、サイロシビンである、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
【0021】
実施形態6:
幻覚発動薬は、肺吸収により、患者の中枢神経系に送達される、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0022】
実施形態7:
担体は、ヘリウムと酸素の混合物である、実施形態2に記載の方法。
【0023】
実施形態8:
ヘリウムは、約50%、60%、70%、80%、または90%で、ヘリウムと酸素の混合物中に存在し、酸素は、約50%、40%、30%、または10%で、ヘリウムと酸素の混合物中に存在する、実施形態7に記載の方法。
【0024】
実施形態9:
幻覚発動薬および担体を含むエアロゾルの投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
【0025】
実施形態10:
前治療は、患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与することを含む、実施形態9に記載の方法。
【0026】
実施形態11:
(i)患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与すること、および(ii)患者に、幻覚発動薬と、約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物とを含むエアロゾルを、吸入により投与すること、をさらに含む、実施形態10に記載の方法。
【0027】
実施形態12:
ステップ(i)および(ii)を1回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態11に記載の方法。
【0028】
実施形態13:
ステップ(i)および(ii)は、1~5回繰り返される、実施形態12に記載の方法。
【0029】
実施形態14:
ステップ(i)および(ii)は、6回以上繰り返される、実施形態12に記載の方法。
【0030】
実施形態15:
幻覚発動薬は、患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の減少、またはそれらの組み合わせを提供する、実施形態6に記載の方法。
【0031】
実施形態16:
エアロゾルは、ミストである、実施形態1~15のいずれか一つに記載の方法。
【0032】
実施形態17:
エアロゾルは、幻覚発動薬の噴霧化によって調製される、実施形態1~16のいずれか一つに記載の方法。
【0033】
実施形態18:
噴霧化は、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼気作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される構成要素を用いて実施される、実施形態17に記載の方法。
【0034】
実施形態19:
噴霧化は、亜酸化窒素を、噴霧化された幻覚発動薬の同伴のための駆動ガスとして使用して実施される、実施形態17に記載の方法。
【0035】
実施形態20:
亜酸化窒素は、使用されるガスの15~25容量%濃度で存在する、実施形態19に記載の方法。一部の実施形態では、投与される幻覚発動薬の量は、亜酸化窒素と同時投与される場合、約2、5、10、20、30パーセントまたはそれ以上減少され得る。一部の実施形態では、幻覚発動薬の亜酸化窒素との併用投与は、亜酸化窒素または幻覚発動薬の投与から生じる副作用の数または重症度の減少をもたらす。
【0036】
実施形態21:
亜酸化窒素は、使用されるガスの15~20容量%濃度で存在する、実施形態20に記載の方法。
【0037】
実施形態22:
エアロゾルは、20~60分間投与される、実施形態19に記載の方法。
【0038】
実施形態23:
エアロゾルは、30~45分間投与される、実施形態22に記載の方法。
【0039】
実施形態24:
吸入により、担体中に幻覚発動薬を含むエアロゾルを投与することを含む、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療する方法。
【0040】
実施形態25:
エアロゾルは、ミストである、実施形態24に記載の方法。
【0041】
実施形態26:
担体は、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物である、実施形態24または25に記載の方法。
【0042】
実施形態27:
担体は、ヘリウムと酸素の混合物であり、ヘリウムと酸素の混合物は、患者にエアロゾルを投与する前に、約50℃~約60℃に加熱される、実施形態26に記載の方法。
【0043】
実施形態28:
CNS障害は、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、不安障害、強迫性障害、嗜癖障害、アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害、コカイン使用障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮や自殺企図、双極I型障害、双極II型障害、気分循環障害、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、社会的不安障害、アルツハイマー病、群発性頭痛、片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛みと神経障害性の痛み、弱膜症、小児期発症性流性障害、認知症、軽度の神経認知障害、性機能障害、ギャンブル障害、摂食障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、むちゃ食い障害、性的倒錯、小児性障害、行動障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的マゾヒズム障害、性的サディズム障害、および異性装障害からなる群から選択される少なくとも一つの構成要素である、実施形態24~27のいずれか一つに記載の方法。
【0044】
実施形態29:
エアロゾルは、幻覚発動薬の噴霧化によって調製される、実施形態24~28のいずれか一つに記載の方法。
【0045】
実施形態30:
噴霧化は、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、呼気作動型ネブライザ、および振動メッシュネブライザからなる群から選択される構成要素を用いて実施される、実施形態28に記載の方法。
【0046】
実施形態31:
噴霧化は、亜酸化窒素を、噴霧化された幻覚発動薬の同伴のための駆動ガスとして使用して実施される、実施形態28に記載の方法。
【0047】
実施形態32:
亜酸化窒素は、使用されるガスの15~25容量%濃度で存在する、実施形態31に記載の方法。
【0048】
実施形態33:
亜酸化窒素は、使用されるガスの15~20容量%濃度で存在する、実施形態32に記載の方法。
【0049】
実施形態34:
エアロゾルは、20~60分間投与される、実施形態31に記載の方法。
【0050】
実施形態35:
エアロゾルは、30~45分間投与される、実施形態34に記載の方法。
【0051】
実施形態36:
幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達する方法であって、乾燥粉末吸入器を介する吸入により、幻覚発動薬を患者に投与することを含み、乾燥粉末吸入器が、幻覚発動薬を含む乾燥粉末を送達する、方法。
【0052】
実施形態37:
乾燥粉末は、その表面上に幻覚発動薬を有する粒子担体を含む、実施形態36に記載の方法。
【0053】
実施形態38:
幻覚発動薬は、幻覚発動薬が、患者による吸入時に、患者内の粒子担体から放出されるように、粒子担体の表面上に放出可能に吸収される、実施形態37に記載の方法。
【0054】
実施形態39:
乾燥粉末は、固体粒子形態の幻覚発動薬から形成される、実施形態36に記載の方法。
【0055】
実施形態40
幻覚発動薬は、ジメチルトリプタミン(DMT)、5-メトキシ-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)、または5-ヒドロキシ-ジメチルトリプタミン(5-OH-DMT)のうちの一つ以上を含む、実施形態36~39のいずれか一つに記載の方法。
【0056】
実施形態41:
幻覚発動薬は、サイロシビンである、実施形態36~39のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
実施形態42:
幻覚発動薬は、肺吸収により、患者の中枢神経系に送達される、実施形態36~41のいずれか一つに記載の方法。
【0058】
実施形態43:
患者への幻覚発動薬の投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含む、実施形態36~42のいずれか一つに記載の方法。
【0059】
実施形態44:
前治療は、患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与することを含む、実施形態43に記載の方法。
【0060】
実施形態45:
(i)患者に、約90℃~約120℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与すること、および(ii)患者に、幻覚発動薬を、吸入により投与すること、をさらに含む、実施形態44に記載の方法。
【0061】
実施形態46:
ステップ(i)および(ii)を1回以上繰り返すことをさらに含む、実施形態45に記載の方法。
【0062】
実施形態47:
ステップ(i)および(ii)は、1~5回繰り返される、実施形態46に記載の方法。
【0063】
実施形態48:
ステップ(i)および(ii)は、6回以上繰り返される、実施形態46に記載の方法。
【0064】
実施形態49:
幻覚発動薬は、患者の中枢神経系に送達され、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%の減少、またはそれらの組み合わせを提供する、実施形態36~48のいずれか一つに記載の方法。
【0065】
実施形態50:
亜酸化窒素と幻覚発動薬との組み合わせを、それを必要とする患者による吸入により、送達するための吸入送達装置であって、
患者への亜酸化窒素と幻覚発動薬との組合せの投与のための吸入出口ポータルと、
亜酸化窒素ガスを、吸入出口ポータルに送達するように構成された容器と、
幻覚発動薬を含むエアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成される、装置と、を備える、吸入送達装置。
【0066】
実施形態51:
吸入出口ポータルは、患者の鼻および口を覆うマウスピースまたはマスクから選択される、実施形態50に記載の吸入送達装置。
【0067】
実施形態52:
エアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成された装置は、ネブライザである、実施形態50または51に記載の吸入送達装置。
【0068】
実施形態53:
ネブライザは、ジェットネブライザであり、亜酸化窒素ガスは、ジェットネブライザの駆動ガスとして作用する、実施形態52に記載の吸入送達装置。
【0069】
実施形態54:
吸入送達装置の遠隔作動および動作制御を提供するように構成された電子機器をさらに含む、実施形態50~53のいずれか一つに記載の吸入送達装置。
【0070】
実施形態55:
中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療する方法であって、吸入により、亜酸化窒素と酸素または空気とのガス混合物を投与することを含み、亜酸化窒素が、総ガス混合物の15~25容量%の量で存在する、方法。
【0071】
実施形態56:
亜酸化窒素は、総ガス混合物の15~20容量%の量で存在する、実施形態55に記載の方法。
【0072】
実施形態57:
投与することは、20~60分間実施される、実施形態55または56に記載の方法。
【0073】
実施形態58:
投与することは、30~45分間実施される、実施形態57に記載の方法。
【0074】
実施形態59:
心理的障害は、急性幻覚クリーゼである、実施形態55~58のいずれか一つに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下の発明を実施するための形態は、本質的に単に例示的であり、記載される組成物または方法を限定することを意図するものではない。
【0076】
一つの実施形態は、吸入により、ミストなどのエアロゾルに溶解された幻覚発動薬またはその誘導体を投与することを含む、幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達する方法を提供する。一部の実施形態では、エアロゾルは、外部から熱を加えることなく生成される(これは、振動メッシュまたは他のネブライザなどにより、エアロゾル自体の形成によって引き起こされるわずかな温度上昇を除外しないが、このようなわずかな温度上昇は、多くの場合、組成物の冷却をもたらす、薬剤の気化によって相殺され得る)。幻覚発動薬は、MDMA、MDEA、MBDB、TMA、DOM、DOET、DOI、DOCを含むが、これらに限定されないフェネチルアミン誘導体、DMT、5-MeO-DMT、サイロシビン,サイロシン、本明細書に記載される式(I)、式(II)、式(II-a)、式(II-b)、式(II-c)、式(II-d)、式III、式(III-a)、式(IV)、式(IV-a)、式(IV-b)、式(V)、式(V-a)、式(VI-b)、式(VI)、式(VI-a)、および式(VI-b)の化合物、本明細書に記載される任意の例示的な化合物、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないトリプタミン誘導体を含むが、これらに限定されない、幻覚効果を提供する任意の所望の薬剤であり得る。ある実施形態では、幻覚発動薬またはその誘導体は、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物などの担体を備えた、ミストなどのエアロゾルとして送達され得る。さらなる実施形態では、担体は、約50℃~約60℃に加熱されたヘリウムと酸素の混合物となり得る。
【0077】
一つの実施形態では、幻覚発動薬は、ジメチルトリプタミン(DMT)、5-メトキシ-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)、5-ヒドロキシ-ジメチルトリプタミン(5-OH-DMT)、またはその誘導体のうちの一つ以上を含み得る。さらなる実施形態では、幻覚発動薬は、サイロシビンまたはその誘導体であり得る。さらに、幻覚発動薬は、吸入による投与により、患者の中枢神経系に全身送達され得る。空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物は、約55℃~約56℃に加熱することができる。ヘリウムと酸素の混合物が担体として使用される場合、ヘリウムは、約50%、60%、70%、80%または90%で、酸素とヘリウムの混合物中に存在することができ、酸素は、約50%、40%、30%、20%、または10%で、混合物中に存在することができる。
【0078】
該方法は、幻覚発動薬またはその誘導体を含むエアロゾルの投与前に、前治療吸入療法を施すことをさらに含み得る。前治療は、患者に、約90℃~約120℃(例えば、約90、100、110、または120℃)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与することを含み得る。
【0079】
本方法は、(i)患者に、約90℃~約120℃(例えば、約90、100、110、または120℃)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、吸入により投与すること、続いて、(ii)患者に、約50℃~約60℃(例えば、約50、52、53、56、58、または60℃)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物と、幻覚発動薬またはその誘導体を含むエアロゾルを、吸入により投与すること、その後に、ステップ(i)と(ii)を反復することを含む。ステップ(i)および(ii)は、1、2、3、4、5、またはそれ以上の回数で繰り返してもよい。
【0080】
一つの実施形態は、吸入により、ミストなどのエアロゾルの形態の幻覚発動薬またはその誘導体を投与することを含む、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療する方法を提供する。
【0081】
幻覚発動薬またはその誘導体は、空気、酸素、またはヘリウムと酸素の混合物から選択される担体と共に、エアロゾルとして送達され得る。ヘリウムおよび酸素の混合物は、患者に幻覚発動薬またはその誘導体を含むエアロゾルを投与する前に、約50℃~約60℃(例えば、約50、52、53、56、58、または60℃)に加熱され得る。
【0082】
中枢神経系または心理的障害は、例えば、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、気分変調症、不安障害、強迫性障害、嗜癖(麻薬依存症、タバコ依存症、オピオイド依存症)、アルコール依存症、外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮や自殺企図、双極性障害と関連障害、全般性不安障害(GAD)、社会的不安障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、アルツハイマー病、群発性頭痛や片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛みと神経障害性の痛み、弱膜症、小児期発症性流性障害、認知症、軽度の神経認知障害、性機能障害、ギャンブル障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、むちゃ食い障害などの摂食障害、および、例えば、小児性障害、行動障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的なマゾヒズムまたはサディズム障害、および異性装障害などの性的倒錯であり得る。
【0083】
一つの実施形態では、幻覚発動薬は、吸入により、患者の中枢神経系に送達され、その結果、経口送達と比較して、薬剤の生物学的利用能の少なくとも25%(例えば、少なくとも約25、30、35、40、45、50%またはそれ以上)の改善、経口送達と比較して、Cmaxの少なくとも25%(例えば、少なくとも約25、30、35、40、45、50%またはそれ以上)の増加、経口送達と比較して、Tmaxの少なくとも50%(例えば、少なくとも50、60、70、80%またはそれ以上減少させる)の減少、またはそれらの組み合わせが得られる。
【0084】
例えば、DMT(塩の形態)を含むほとんどの幻覚発動薬の良好な水性溶解性により、ミストなどのエアロゾルの吸入は、可能な投与経路になる。しかしながら、ミストの吸入は、主に、薬剤の全身送達ではなく、局所送達に使用され、一貫性のない不完全な用量の送達、呼吸パターンの変動、上気道への用量の沈着などに関連する複数の課題に直面する。幻覚発動薬のミスト吸入投与のための方法を、本明細書に提供する。
【0085】
幻覚発動薬
【0086】
本開示の治療剤は、任意の所望の幻覚発動薬またはその誘導体を含み得る。本明細書で使用する用語「psychedelic(幻覚発動薬)」、「幻覚化合物」、「psychedelic agent(幻覚発動薬)」、または「psychedelic drug(幻覚発動薬)」は、セロトニン5-HT2A受容体アゴニスト(例えば、リセリン酸ジエチルアミド(LSD))、共感剤(すなわち、セロトニン(5-HT)放出剤、例えば、3,4-メチレチダートジメトメト酸メタン酸デアゴニストリン(MDMA))、および解離性麻酔薬(すなわち、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体アゴニスト;例えば、亜酸化窒素、ケタミンおよびデキストロメトルファン)を含む、複数の化合物を包含し得る。ほとんどの幻覚発動薬は、以下のトリプタミン、フェネチルアミン、またはリセルガミドの範囲内である。これらの薬剤はすべて、感覚知覚および認知に関与する脳内の主要回路の活性を調節する、セロトニン5-HT2A受容体を活性化する。トリプタミンには、例えば、5-メトキシ-ジメチルトリプタミン(5-MeO-DMT)、5-ヒドロキシ-ジメチルトリプタミン(5-OH-DMT)、ジメチルトリプタミン(DMT)、またはその誘導体が含まれる。5-OH-DMTはまた、ブホテニンとして知られる。5-MeO-DMTは、脱メチル化により、ブホテニンを産生するプロドラッグである。DMTは、N,N-ジメチルトリプタミンとしても知られ、アヤフアスカの一次有効成分である。その他の幻覚発動薬については、以下に説明する。
【0087】
誘導体は、例えば、幻覚発動薬中の一つの原子を別の原子もしくは原子団に置き換える、幻覚発動薬中の二つ以上の原子を再構成する、幻覚発動薬をイオン化する、または幻覚発動薬の一つの塩を生成することによって、本明細書に記載される幻覚発動薬の一つなどの幻覚発動薬から作製される任意の化合物を含む。
【0088】
逆に明確に示されない限り、用語「誘導体」は、誘導体が、出発物質または中間体として親化合物を使用して合成されることを意味するものではないが、場合により、誘導体は、親化合物から合成され得る。ある実施形態では、幻覚発動薬の誘導体は、治療活性を有する。
【0089】
本明細書で使用する「5-HT2Aアゴニスト」は、5-ヒドロキシトリプタミン2A受容体の活性を増加させる化合物を指す。このようなアゴニストの実施例は、サイロシビンおよびその誘導体、DOI(±)-1-(2.5-ジメトキシフェニル)-2-アミノプロパン塩酸塩と、(R)-DOI((R)-1-(2.5-ジメトキシ-4-ヨードフェニル)-2-アミノプロパン)(95%R鏡像異性体)(置換アンフェタミン)と、LA-SS-Az(2’S,4’S)-(+)-9,10-ジデヒドロ-6-メチルエルゴリン-8β-(トランス-2,4-ジメチルアゼチジド)(錯体トリプタミン)と、2C-BCB(4-ブロモ-3,6-ジメトキシベンゾシクロブテン-1-イル)メチルアミンと、3,4,5-トリメトキシフェネチルアミン(メスカリン)と、またはイボガインと、をさらに含むが、これらに限定されない。サイロシビンの誘導体としては、例えば、[3-[2-ジメチルアミノエチル)-1H-インドール-4-イル〕リン酸ジヒドロゲン、4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルトリプタミン、3-(2-メチルアミノエチル)-1H-インドール-4-イル〕リン酸ジヒドロゲン、4-ヒドロキシ-N-メチルトリプタミン、[3-(アミノエチル)-1H-インドール-4-イル〕リン酸ジヒドロゲン、4-ヒドロキシトリプタミン、[3-(2-トリメチルアミノエチル)-1H-インドール-4-イル〕リン酸ジヒドロゲン、または4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチルトリプタミンが含まれる。
【0090】
他の幻覚発動薬としては、例えば、以下の式(I)などのトリプタミン誘導体、または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、またはそのプロドラッグが挙げられる。
【化1】
【0091】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0092】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素と重水素から独立に選択される。
【0093】
一部の実施形態では、Rは、水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0094】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、ヒドロキシル、および非置換または置換アルコキシから独立に選択される。
【0095】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素とハロゲンから選択される。
【0096】
一部の実施形態では、RおよびR10は、非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリル、非置換もしくは置換アルケニル、非置換もしくは置換アルキニル、非置換もしくは置換シクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換アリール、および非置換もしくは置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0097】
一部の実施形態では、X1、X2、Y1、Y2、R2、R4、R5、R6、およびR7の少なくとも一つは、重水素である。幻覚発動薬は、式(II)による化合物、または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、またはそのプロドラッグを含み、XおよびXは、重水素である。
【化2】
【0098】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素と重水素から独立に選択される。
【0099】
一部の実施形態では、Rは、
【化3】

である。
【0100】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0101】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ヒドロキシル、非置換または置換アルコキシ、および非置換または置換ホスホリルオキシから独立に選択される。
【0102】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、およびハロゲンから選択される。
【0103】
一部の実施形態では、R、R10、およびR11は、水素、非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリル、非置換もしくは置換アルケニル、非置換もしくは置換アルキニル、非置換もしくは置換シクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換アリール、および非置換もしくは置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0104】
幻覚発動薬は、式(II-a)による化合物、または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、またはそのプロドラッグを含み得、XおよびXは、重水素であり、YおよびYは、水素である。
【化4】
【0105】
一部の実施形態では、Rは、
【化5】

である。
【0106】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0107】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ヒドロキシル、非置換または置換アルコキシ、および非置換または置換ホスホリルオキシから独立に選択される。
【0108】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、およびハロゲンから選択される。
【0109】
一部の実施形態では、R、R10、およびR11は、水素、非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリル、非置換もしくは置換アルケニル、非置換もしくは置換アルキニル、非置換もしくは置換シクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換アリール、および非置換もしくは置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0110】
幻覚発動薬は、式(II-b)による化合物、または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得、XおよびXは、重水素であり、YおよびYは、水素であり、Rは、
【化6】

である。
【化7】
【0111】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0112】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ヒドロキシル、非置換または置換アルコキシ、および非置換または置換ホスホリルオキシから独立に選択される。
【0113】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、およびハロゲンから選択される。
【0114】
一部の実施形態では、RおよびR10は、水素、非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリル、非置換もしくは置換アルケニル、非置換もしくは置換アルキニル、非置換もしくは置換シクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換アリール、および非置換もしくは置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0115】
幻覚発動薬は、式(II-c)による化合物、または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得、XおよびXは、重水素であり、YおよびYは、水素であり、Rは、
【化8】

である。
【化9】
【0116】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0117】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ヒドロキシル、非置換または置換アルコキシ、および非置換または置換ホスホリルオキシから独立に選択される。
【0118】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、およびハロゲンから選択される。
【0119】
一部の実施形態では、R、R10、およびR11は、水素、非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリル、非置換もしくは置換アルケニル、非置換もしくは置換アルキニル、非置換もしくは置換シクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換アリール、および非置換もしくは置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0120】
幻覚発動薬は、式(II-d)による化合物、または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得、XおよびXは、重水素であり、YおよびYは、水素であり、Rは、
【化10】

である。
【化11】
【0121】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、非置換または置換アルキル、非置換または置換アリル、非置換または置換アルケニル、非置換または置換アルキニル、非置換または置換シクロアルキル、非置換または置換ヘテロシクロアルキル、非置換または置換アリール、および非置換または置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0122】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ヒドロキシル、非置換または置換アルコキシ、および非置換または置換ホスホリルオキシから独立に選択される。
【0123】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、およびハロゲンから選択される。
【0124】
一部の実施形態では、R11は、非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリル、非置換もしくは置換アルケニル、非置換もしくは置換アルキニル、非置換もしくは置換シクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換アリール、および非置換もしくは置換ヘテロアリールから独立に選択される。
【0125】
一部の実施形態では、化合物は、以下からなる群から選択される。
【化12】

【化13】
【0126】
一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物、例えば、式(II)、式(II-a)、式(II-b)、式(II-c)、および式(II-d)の化合物は、重水素であるか、または重水素で置換されている、R2、、R、R、およびRのうちの少なくとも一つを有する。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物のRおよび/またはR、例えば、式(II)、式(II-a)、式(II-b)、式(II-c)、および式(II-d)の化合物は、ハロゲンである。
【0128】
一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物のRおよび/またはR、例えば、式(II-a)、式(II-b)、式(II-c)、および式(II-d)の化合物は、重水素であるか、または重水素で置換される。
【0129】
幻覚発動薬は、以下の式(III)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグなどのフェネチルアミン誘導体を含み得る。
【化14】
【0130】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0131】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素と重水素から独立に選択される。
【0132】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ハロゲン、非置換または置換のC-Cアルキル、および-ORから独立に選択される。
【0133】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、ハロゲン、-OR、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換もしくは置換のヘテロシクロアルキル、または非置換もしくは置換のヘテロアリールを形成する。
【0134】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0135】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0136】
一部の実施形態では、X、X、Y、Y、R、R、R、R、およびRの少なくとも一つは、重水素である。
【0137】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、-OR、および-SRであり、Rは、非置換であるか、または一つ以上の重水素で置換される、C-Cアルキルである。
【0138】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、-OR、および-SRであり、Rは、非置換であるか、または一つ以上の重水素で置換される、C-Cアルキルである。
【0139】
一部の実施形態では、Rは、-OCH、-OCD、-Brである。-SCH、-SCHCH、または-SCHCHCH、および/またはRは、水素、-OMe、または-OCDである。
【0140】
一部の実施形態では、RおよびRは、それらが結合される原子と共に、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールを形成する。
【0141】
一部の実施形態では、化合物は、以下に示す式(III-a)による構造を有し得る。
【化15】
【0142】
一部の実施形態では、各ZおよびZは独立に、水素または重水素である。
【0143】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、ハロゲン、非置換または置換のC-Cアルキル、および-ORから独立に選択される。
【0144】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0145】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素と重水素から独立に選択される。
【0146】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0147】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0148】
一部の実施形態では、Z、Z、X、X、Y、Y、R、およびRの少なくとも一つは、重水素である。
【0149】
一部の実施形態では、各RおよびRは独立に、水素、-CH、または-OCDである。
【0150】
一部の実施形態では、化合物は以下のとおりである。
【化16】

【化17】
【0151】
幻覚発動薬はまた、N-置換フェネチルアミン(NSP)およびその誘導体を含み得る。NSPは、式(IV)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化18】
【0152】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換されたC-Cアルキル、-ORa、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換または置換されたシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを、任意選択で、形成する。
【0153】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0154】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを、任意選択で、形成する。
【0155】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0156】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0157】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0158】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択される。
【0159】
一部の実施形態では、R11およびR12は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはR11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0160】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0161】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0162】
NSPは、式(IV-a)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化19】
【0163】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換されたC-Cアルキル、-ORa、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換または置換されたシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを、任意選択で、形成する。
【0164】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0165】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを、任意選択で、形成する。
【0166】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0167】
一部の実施形態では、XおよびXは、重水素である。
【0168】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0169】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択される。
【0170】
一部の実施形態では、R11およびR12は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはR11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0171】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0172】
一部の実施形態では、W、W、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0173】
NSPは、式(IV-b)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化20】
【0174】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換されたC-Cアルキル、-ORa、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換または置換されたシクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを、任意選択で、形成する。
【0175】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0176】
一部の実施形態では、RおよびRは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはRおよびRは、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを、任意選択で、形成する。
【0177】
一部の実施形態では、WおよびWは、重水素である。
【0178】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0179】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0180】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択される。
【0181】
一部の実施形態では、R11およびR12は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはR11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0182】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0183】
一部の実施形態では、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0184】
NSPは、式(V)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化21】
【0185】
一部の実施形態では、RおよびRは、-ORである。
【0186】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0187】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0188】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0189】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0190】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。
【0191】
一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択される。
【0192】
一部の実施形態では、R11およびR12は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはR11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0193】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0194】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0195】
NSPは、式(V-a)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化22】
【0196】
一部の実施形態では、RおよびRは、-ORである。
【0197】
一部の実施形態では、Rは、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0198】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0199】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0200】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0201】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。
【0202】
一部の実施形態では、R、R、R10、およびR11は、水素と重水素から独立に選択される。
【0203】
一部の実施形態では、R12は、ヒドロキシル、ハロゲン、非置換または置換のC-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0204】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0205】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0206】
NSPは、式(V-b)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化23】
【0207】
一部の実施形態では、RおよびRは、-ORである。一部の実施形態では、Rは、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0208】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0209】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0210】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0211】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0212】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。
【0213】
一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素と重水素から独立に選択される。
【0214】
一部の実施形態では、R11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0215】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0216】
幻覚発動薬は、式(VI)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化24】
【0217】
一部の実施形態では、RおよびRは、-ORである。
【0218】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0219】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0220】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0221】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0222】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。
【0223】
一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択される。
【0224】
一部の実施形態では、R11およびR12は、水素、重水素、ヒドロキシル、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから独立に選択され、またはR11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0225】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0226】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0227】
幻覚発動薬は、式(VI-a)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化25】
【0228】
一部の実施形態では、RおよびRは、-ORである。
【0229】
一部の実施形態では、Rは、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。一部の実施形態では、
およびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0230】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0231】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0232】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。
【0233】
一部の実施形態では、R、R、R10、およびR11は、水素と重水素から独立に選択される。
【0234】
一部の実施形態では、R12は、ヒドロキシル、ハロゲン、非置換または置換のC-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0235】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0236】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0237】
幻覚発動薬は、式(VI-b)による化合物または光学的に純粋な立体異性体、薬学的に許容可能な塩、溶媒和化合物、もしくはそのプロドラッグを含み得る。
【化26】
【0238】
一部の実施形態では、RおよびRは、-ORである。
【0239】
一部の実施形態では、Rは、シアノ、ハロゲン、非置換または置換C-Cアルキル、-OR、および-SRから選択される。
【0240】
一部の実施形態では、WおよびWは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0241】
一部の実施形態では、XおよびXは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0242】
一部の実施形態では、YおよびYは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0243】
一部の実施形態では、Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから選択される。
【0244】
一部の実施形態では、R、R、およびR10は、水素と重水素から独立に選択される。
【0245】
一部の実施形態では、R11およびR12は、それらが結合される原子と共に、非置換または置換シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル、またはヘテロアリールを形成する。
【0246】
一部の実施形態では、各Rは、水素、重水素、および非置換または置換のC-Cアルキルから独立に選択される。
【0247】
一部の実施形態では、W、W、X、X、Y、Y、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12の少なくとも一つは、重水素であるか、または重水素で置換されている。
【0248】
一部の実施形態では、化合物は、以下からなる群から選択される。
【化27】
【0249】
一部の実施形態では、幻覚発動薬は、MDMA、MDEA、MBDB、TMA、DOM、DOET、DOI、DOCを含むが、これらに限定されないフェネチルアミン誘導体、DMT、5-MeO-DMT、サイロシビン、サイロシン、式(I)、式(II)、式(II-a)、式(II-b)、式(II-c)、式(II-d)、式(III)、式(III-a)、式(IV)、式(IV-a)、式(IV-b)、式(V)、式(V-a)、式(V-b)、式(VI)、式(VI-a)、式(VI-b)の化合物、および本明細書に記載される任意の例示的な化合物を含むが、これらに限定されないトリプタミン誘導体を含むことができる。
【0250】
いくつかの実施形態では、5-HT2A受容体アゴニストとNMDA受容体拮抗薬は、医薬組成物中で組み合わせられる。驚くべきことに、5-HT2A受容体アゴニストおよびNMDA受容体拮抗薬(例えば、亜酸化窒素)は、治療有効性を提供する一方で、患者の経験を改善することが判明した。例えば、5-HT2A受容体アゴニストは、NMDA受容体拮抗薬(例えば、亜酸化窒素)と共に使用され、急性幻覚クリーゼ(バッドトリップ)などの心理的障害、および不快生理学的および心理学的副作用、または幻覚心理療法セッションに付随し得る他の有害事象を低減または除去することができる。
【0251】
幻覚発動薬の用量は、様々であり得る。医薬組成物は、幻覚発動薬が治療有効量で含有される、組成物を含み得る。「有効量」または「治療有効量」は、状態、障害、または疾患を治療または改善するのに十分な量の薬剤である。特定の用途に対して有効な実際の量は、特に、治療される状態に依存する。投与される幻覚発動薬物の用量および頻度(単回または複数回用量)は、様々な要因に応じて変化し得、その中には、投与経路と、被験者の体の大きさ、年齢、性別、健康状態、体重、肥満度指数、および食事と、治療される疾患の症状の性質および程度と、他の疾患またはその他の健康上の問題の存在と、併用療法の種類と、任意の疾患による合併症または治療計画と、を含む。他の治療計画または薬剤を、本明細書に開示される方法および化合物と併せて使用することができる。
【0252】
ヒトで使用するための治療有効量は、(例えば、動物モデルから)決定され得る。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが判明した濃度を達成するために製剤化され得る。ヒトにおける用量は、治療に対するヒトの応答を監視し、用量を上方または下方に調節することによって、調節され得る。投与される幻覚発動薬の用量および頻度の決定は、医療分野における当業者の能力の範囲内であることが容易であって、上述の様々な要因を考慮している。
【0253】
用量は、対象の要件および使用される幻覚発動薬に応じて、変化し得る。本明細書に提示される幻覚発動薬との関連で、対象に投与される用量は、経時的に対象において有益な治療応答をもたらすのに十分であるべきである。用量サイズはまた、任意の有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定されるであろう。治療は、幻覚発動薬の最適用量よりも少ない、より少用量で開始され得る。その後、用量は、該状況下で最適な効果に到達するまで、小さな増分で増加され得る。
【0254】
投与の量および間隔は、投与化合物の濃度を、治療される特定の臨床的徴候に有効なレベルに提供するために、個別に調整され得る。これにより、個人の疾患状態の重症度に見合う治療計画が提供されるであろう。
【0255】
効果的な予防的または治療的な治療計画を、実質的な毒性を引き起こさず、特定の患者が示す臨床症状を治療するのにさらに有効であるように、計画し得る。この計画は、化合物の効力、相対的な生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、投与様式、ならびに選択された幻覚発動薬の毒性プロフィールなどの要因を考慮することによって、幻覚発動薬の選択に関与し得る。
【0256】
幻覚発動薬は、吸入セッション当たり、例えば、約1μg、2μg、5μg、6μg、10μg、13μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、210μg、220μg、230μg、240μg、250μg、260μg、270μg、280μg、290μg、300μg、400μg、500μg、1.0mg、2.0mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、6.0mg、7.0mg、8.0mg、9.0mg、10.0mg以上の約1μg~約10.0mg以上(または約1μg~約10.0mgの間の任意の範囲)で、エアロゾル吸入により投与され得る。ある実施形態では、対象は、1日に約1、2、3、4、5回、またはそれ以上の吸入セッションを有し得る。ある実施形態では、対象は、隔日、週2回、または週3回に、約1、2、3、4、5回、またはそれ以上の吸入セッションを有することができる。ある実施形態では、対象は、隔月、月2回、月3回、または月4回に、約1、2、3、4、5回、またはそれ以上の吸入セッションを有することができる。
【0257】
幻覚発動薬を含む医薬組成物は、多種多様な剤形で、調製および投与され得る。液体形態の調製物には、溶液およびエマルションが含まれ、溶媒または担体は、例えば、水、水/プロピレングリコール溶液、または有機溶媒である。
【0258】
吸入使用に好適な水性溶液は、活性幻覚発動薬またはその誘導体を水に溶解することによって、調製され得る。好適な安定剤および増粘剤も添加され得る。吸入使用に好適な水性エマルジョンは、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の懸濁剤などの粘性材料を用いて、液体幻覚発動薬またはその誘導体を水中に分散させることによって作製され得る。
【0259】
一部の幻覚発動薬は、水への溶解性が限定されており、したがって、組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒を必要とし得る。このような共溶媒には、ポリソルベート20、60、および80と、プルロニック(登録商標)F-68、F-84、およびP-103と、シクロデキストリンと、ポリオキシル35ヒマシ油と、が含まれる。このような共溶媒は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%の濃度で用いられる。単純水溶液の粘性よりも大きな粘性は、製剤を分注する際の変動を低減して、製剤のエマルションの成分の物理的分離を低減し、および/または、それ以外では、製剤を改善するのに望ましい場合がある。このような粘性構築剤は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸ならびにその塩、ヒアルロン酸ならびにその塩、および上記物質の組合せを含む。このような薬剤は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%の濃度で用いられる。
【0260】
塩形態では、幻覚発動薬またはその誘導体はまた、有機溶媒中に溶解され得る。有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロメタン、ジクロロメタン、1,2-ジメトキシエタン、N、N-ジメチルアセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミド、1,4-ジオキサン、20エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2-メトキシエタノール、メチブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2-トリクロロエチレン、またはキシレンであり得る。有機溶媒は、エステル溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、アミド溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒などの官能基カテゴリーに属し得、それぞれを使用することができる。
【0261】
エアロゾル
【0262】
本明細書に記載の治療剤をエアロゾルとして送達するために使用される装置は、例えば、ネブライザ、加圧された定量吸入器(pMDI)、および乾燥粉末吸入器(DPI)に基づき得る。肺薬剤の送達は、局所的に作用する薬剤のための肺の作用部位、または全身に作用する薬剤の吸収部位のいずれに対するかに関わらず、薬剤標的化の形態である。前者については、肺送達の利点としては、比較的低用量、全身性副作用の発生率が低い可能性が含まれ、一部の薬剤については、作用の急速な発現が挙げられる。全身に作用する薬剤については、肺送達は、GI経路内の経口投与および有害な反応性を回避する、またはGI経路を介して十分に吸収されない薬剤の注射を回避する機会、ならびに、より有利な薬剤動態プロファイルの可能性を提供する。肺上皮は、>100mの面積から成り、厚さ<1マイクロメートルの上皮細胞層を有し、全身に作用する薬剤の魅力的な標的部位である。
【0263】
しかしながら、吸入により薬剤を送達することは、二つの主な理由から、比較的複雑であり得る。第一に、気道は、吸入された物質を肺に入れないことに加えて、それらが沈着された後に、それらを除去または不活化することを目的とする、防御機構を進化させた。第二に、患者が吸入装置を使用し、それを正しく使用することが必要である。吸入治療計画の不順守および送達装置の誤用は、一般的な問題である。これらの問題は、製薬業界および医療従事者にとって大きな課題となっている。薬剤送達のための吸入の使用における主な問題は、口腔咽頭領域および上気道におけるエアロゾル化粒子の沈着、ならびに患者訓練の欠如による、装置の作動と吸入との間の調整の欠如である。
【0264】
吸入薬剤送達のための装置は、二つの基本的な機能、すなわち、エアロゾル形成および肺へのエアロゾル輸送の促進を有する。受動装置と能動装置を区別する。受動装置が、吸入された空気流から、すなわち患者からエアロゾル形成に必要なエネルギーを導出する一方、能動装置は、患者の吸入とは独立にエアロゾルを生成する。吸入装置は、単回用量対複数回用量、または使い捨て式対再利用可能式など、様々な方法でさらに分類することができる。複数回投与装置は、コスト削減、携帯性、および携帯性、使いやすさ、および利便性などの長期治療に利益をもたらすことができる。不規則な投与および一回限りの用途については、使い捨て装置は、より好適であり得る。さらに、微生物増殖用の貯蔵部として作用し、抗生物質耐性の発現を可能にする、装置汚染のリスクなどの側面は、複数回または単回投与装置の選択に影響を与え得る。
【0265】
肺への送達には、主に三種類の吸入装置、すなわち、加圧定量吸入器(pMDI)、ネブライザ、軟質ミスト吸入器、および乾燥粉末吸入器(DPI)を使用できる。装置の各カテゴリーは、利点と欠点を有する。
【0266】
一般的に、pMDIは、患者が吸入できるよりも速くエアロゾルを生成する。装置作動と患者の吸入との間の調整は、小児および高齢者では特に困難である。一部のDPIにより、患者が最大限の力で吸入して粉末を分散させ、その後、粉末を吸入する必要があるが、これは、適切に訓練されなければ、ほとんど達成されない。これらの状況では、エアロゾルの大部分は、上気道に沈着する。pMDIに関しては、この問題は、スペーサーを提供することによって、または呼吸調整装置の代わりに、呼吸で作動される吸入器を設計することによって、対処され得る。
【0267】
肺送達の有効性はまた、患者の呼吸パターンに依存する。高速の吸気は、pMDIおよびネブライザを使用する場合、推奨されないが、これは、該吸気によって乱気流が生成され、上気道への衝撃による沈着を増加させるためである。しかしながら、高速の吸気流は、DPI装置における吸入用の薬剤粒子を分解するために必要である。
【0268】
ネブライザには、ジェットと超音波の主に二種類があり、それぞれの液体からエアロゾルを生成するために使用される力が異なる。ネブライザは、種類に応じて、1~5マイクロメートルの液滴を生成可能である。ネブライザは、吸入と作動との間の患者の調整を必要としないため、小児、高齢者、人工呼吸器付きで意識不明の患者、またはpMDIもしくはDPIを使用できない患者に有用である。ネブライザは、他のエアロゾル装置と比較して、投与時間をより長く要するにもかかわらず、より多用量を送達する能力を有する。
【0269】
ネブライザ装置は、呼吸を改善し、呼吸作動式の振動メッシュネブライザであり得る。呼気改善のジェットネブライザの設計は、吸気中の空気の同伴を可能にし、装置の外部に呼気を排出するように修正される。この手法の主な利点は、拍出量の速度を増大させることであり、これは、次に、投与時間を減少させる。
【0270】
呼気作動型ネブライザは、患者が息を吸うときにのみ、エアロゾル化された液滴を放出する。したがって、通常のジェットネブライザの場合のように、呼気中に薬剤が無駄になることはなく、高価なまたは毒性の薬剤の周囲環境への分散は回避される。
【0271】
振動メッシュネブライザは、圧電素子の作用により振動する場合、液体を非常に微細な液滴に分解し、肺胞内に沈着されるエアロゾルの容量を増加させる、メッシュプレートを有する。振動メッシュネブライザは、患者が適切に呼吸している場合に示す電子インジケータを有し得、その後にのみ、質量中央空気力学的直径の液滴サイズの4マイクロメートルと最小薬剤損失(約1%)により、用量薬を放出する。高性能装置は、患者の呼吸パターンに基づいて、エアロゾル放出を調節する適応性エアロゾル送達ソフトウェアと連結された振動メッシュネブライザを含み得、これは、薬剤損失を減少させ、吸入量を増加させる。このような装置は、患者の最終の三回の呼吸に基づいて、用量の送達を調整し、用量の送達後にフィードバックを提供できる。
【0272】
ソフトミスト吸入器(SMI)の吸入装置を使用して、本明細書に記載される組成物を送達可能である。SMIは、活性剤の溶液を微細液滴に分散させる、ネブライザである。このSMIは、外部電源を必要としないが、機械的ばねによって作動する手持ち式携帯装置であるという点で、従来のネブライザとは異なる。エアロゾルの瞬間的形成は、pMDIと同等であるため、適切な作動-吸入の調整が必要である。エアロゾル全体が生成されるまでに一般的に時間がより長くかかり(HFA-pMDIでは、1.5秒対0.21~0.36秒)、エアロゾルはゆっくり移動するミストとして放出されるが、これにより、比較的高い肺沈着が可能になる。
【0273】
ある実施形態では、エアロゾル吸入により幻覚発動薬を送達する方法が提供される。ミストなどのエアロゾルは、空気、酸素、および/または酸素とヘリウムの混合物を、担体ガスとして使用して送達され得る。空気、酸素、および/または酸素とヘリウムの混合物は、室温で送達または加熱され得る。ある実施形態では、幻覚発動薬またはその誘導体を含むミストなどのエアロゾルは、加熱されたヘリウム-酸素(ヘリオックス)の混合物を使用する吸入により送達される。ヘリウムの粘度が非常に低いため、ヘリウムと酸素の混合物は、肺領域の深部に到達し、吸入を介した用量の送達における主要な障害の一つである気道内の薬剤の沈着を低減するための非常に望ましい特徴である、層流によって特徴付けられるガス流を生成する。患者は、患者の肺の肺胞領域にミストとして、幻覚発動薬またはその誘導体の溶解された遊離塩基もしくは塩製剤を吸入することができる。幻覚発動薬または誘導体は、肺の肺胞領域の流体内層に送達され得、患者の血液循環に全身吸収され得る。有利なことに、これらの製剤は、肺の肺胞領域に吸入されると、血流に効果的に送達され得る。
【0274】
加熱または非加熱の空気、酸素、またはヘリウム-酸素の混合物の送達に好適な装置には、例えば、連続モードネブライザのFlo-Mist(Phillips社)およびHope(B&B Medical Technologies社)、ならびに、例えば、Medipure(商標)ヘリオックス-LCQ System(PraxAir社)の調整器、および、例えば、Precision Control Flow(PraxAir社)の制御ボックスなどの付属品が含まれる。別の実施形態では、完全送達装置は、例えば、ロシア特許第RU199823U1号に記載される装置であり得る。
【0275】
本明細書で使用する用語「ヘリオックス」は、ヘリウムガス(He)と酸素ガス(O2)の呼吸ガスの混合物を指す。一部の実施形態では、ヘリオックス混合物は、約50%、60%、70%、80%、または90%で、ヘリウムと酸素の混合物にヘリウムを含有し、約50%、40%、30%、20%、または10%で、ヘリウムと酸素の混合物に酸素を含有し得る。したがって、ヘリオックス混合物は、ヘリウムと酸素を、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10の比率で含有し得る。一部の実施形態では、ヘリオックスは、層流傾向の増加および乱流での抵抗の減少により、気道との抵抗をより少なく生成し得る。
【0276】
ヘリオックス混合物における熱の使用は、薬剤吸収のための重要な物理的障壁の浸透性を増加させることによって、薬剤送達をさらに改善することができる。粘膜表面の加熱により、末梢血循環を改善し、間質接合部、ならびに他の機序を弛緩させることによって、浸透性が増加され得る。ヘリウムは、酸素と窒素のほぼ10倍高い熱伝導率を有し、熱伝達をより効率的に促進することができる。乾燥ヘリオックス混合物は、最大110℃まで加温される(例えば、約70、80、90、100、または110℃に加熱される)場合、前治療ステップとして安全に使用することができ、これにより、乾燥ヘリオックス混合物は、肺および気道の粘膜表面をより効率的に加熱することができる。
【0277】
様々な種類のパーソナル吸入器を使用して、本明細書に記載される治療用組成物を送達することができ、当該技術分野で公知である。一般的に、パーソナル吸入器は、固形の薬剤または化合物を加熱することを特徴とする。吸入器は、固体の薬剤または化合物をくすぶり点まで直接加熱することによって、機能することができる。固体または固体濃縮物を気化させることは、熱伝導時の対流によって行うことができる。固体濃縮物の対流加熱は、その後気化する、水または別の液体と接触する発熱体を伴う。高温蒸気が固体または固体濃縮物を直接加熱して燻り、蒸気を放出し、ユーザによって吸入される。伝導性加熱は、固体または固体濃縮物と発熱体との間の直接接触を伴い、これは、固体をくすぶり点に至らしめて、蒸気を放出してユーザによって吸入される。吸入器は、肺損傷の点で喫煙を上回る利点を提示するが、気化される薬剤/活性剤は、気化熱によって略劣化され得る。
【0278】
蒸気は、その臨界温度よりも低い温度での気相中の固体物質であり、蒸気は、温度を低下させることなく、その圧力を増加させることによって、液体に凝縮され得ることを意味する。
【0279】
本明細書で使用されるエアロゾルは、気相(例えば、空気、酸素、ヘリウム、亜酸化窒素、および他のガス、ならびにそれらの混合物)における微細固体粒子または液滴の懸濁液である。本明細書で使用されるミストは、蒸気とは異なるエアロゾルのサブセットであり、気相(例えば、空気、酸素、ヘリウム、およびそれらの混合物)中に懸濁された液滴(液相)の分散である。ミストの液滴は、水性液体または有機溶媒中に溶解された幻覚発動薬またはその誘導体を含み得る。ミスト液滴の液相は、数千または数百万の分子を含有し得る。ミストの気相は、空気、酸素、ヘリウム、およびそれらの混合物を含み得る。ミストは、固体粒子を含まない。ミストは、例えば、吸入器またはネブライザの使用を含む、任意の好適な方法によって、生成することができる。
【0280】
ある実施形態では、幻覚発動薬は、ネブライザを介して送達され、これは、任意選択的に、加熱されたヘリウム-酸素の混合物と組み合わされる、幻覚発動薬を含有する、ミストなどの水性液滴エアロゾルを生成する。ある実施形態では、幻覚発動薬は、ネブライザを介して送達され、これは、亜酸化窒素または亜酸化窒素-空気の混合物と組み合わされる、幻覚発動薬を含有する、ミストなどの水性液滴エアロゾルを生成する。亜酸化窒素(NMDA受容体拮抗薬である)は、幻覚発動薬の効果を増強し、幻覚発動薬をより少ない量で使用して、同様のレベルの効果を得る能力を提供することができる。
【0281】
例えば、幻覚発動薬の調製物を液体媒体に入れ、ネブライザなどの装置によってエアロゾルに入れることができる。ある実施形態では、ネブライザは、例えば、空気圧縮機ネブライザ、超音波ネブライザ、振動メッシュもしくはホーンネブライザ、またはマイクロプロセッサ制御の呼気作動型ネブライザであり得る。別の実施形態では、ネブライザ装置は、例えば、ロシア特許第RU199823U1号に記載される装置であり得る。
【0282】
ネブライザは、溶液または懸濁液中の幻覚発動薬などの薬剤を、肺への送達のために、ミストなどの微細なエアロゾルに変換する装置である。ネブライザはまた、噴霧器と称され得る。噴霧することは、溶解した薬剤を、ミストなどのエアロゾル形態にすることである。噴霧化によって薬剤を送達するために、薬剤は、液体媒体、例えば、水、エタノール、またはプロピレングリコール中に分散され得る。さらに、幻覚発動薬またはその誘導体は、例えば、リポソーム、ポリマー、エマルション、ミセル、ナノ粒子、またはポリエチレンイミン(PEI)などの賦形薬で運搬され得る。ネブライザ用の液体薬剤形成は、例えば、水溶液または粘性溶液であり得る。溶解された幻覚発動薬は、分散用の原動力(例えば、ガスのジェット、超音波、またはメッシュの振動)を加えた後、液滴内に含有され、その後、これが吸入される。ミストは、空気中または別のガス混合物(例えば、ヘリウムと酸素の混合物)中に薬剤を含有する液滴を含み得る。
【0283】
ジェットネブライザ(空気式ネブライザまたはコンプレッサネブライザとも称される)は、圧縮ガスを使用してミストを生成する。ある実施形態では、ジェットネブライザは、マイクロプロセッサ制御の呼気作動型ネブライザであり、呼気作動型ネブライザとも称される。呼気作動型ネブライザは、患者が継続的にミストを生じるのではなく、吸入しているときにのみ、ミストを生成する。ミストは、例えば、ネブライザボウルまたはカップ内のベンチュリ管を、空気流を通過させることによって、生成され得る。ベンチュリ管は、円錐形状の管に流体を圧縮することによって、流体の流れを速めるためのシステムである。この制限では、流体は、その速度を増加させ、それによって、その圧力を減少させ、部分真空を生成しなければならない。流体が狭窄点から出ると、その圧力は、周囲またはパイプレベルの圧力へ再度増加する。これは、ネブライザボウル内の薬剤の溶液から供給管を通して液滴を引っ張る低圧領域を形成することができ、次いで、マウスピースに流れる霧状液滴の流れを生成する。空気の流れが大きくなると、粒子サイズは減少し、拍出量は増加する。放出ガスを飽和させる液滴および溶媒のために、ジェットネブライザは、ネブライザ内の薬剤溶液を冷却し、残留容量中の溶質濃度を増加させることができる。ネブライザボウルまたはカップ内のバッフルは、より大きな粒子によって影響を受け得、それらを保持し、ネブライザボウルまたはカップ内の溶液に戻し、再噴霧化させる。対象が吸入する際のネブライザボウルを通る空気の同伴により、吸気中のミスト拍出量が増加する可能性がある。ミストの生成は、粒子サイズの分布が小さいほど起こりうるが、使用する粒子サイズが小さいほど、噴霧時間は長くなり得る。
【0284】
液滴サイズに一般的に使用される測定単位は、質量による平均液滴直径として定義される、質量中央直径(MMD)である。この単位はまた、質量平均空気力学的直径、またはMMADと称され得る。ジェットネブライザのMMD液滴サイズは、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0マイクロメートル以上(または約1.0~10.0マイクロメートルの間の任意の範囲)であり得、これは、超音波ネブライザよりも小さくなり得る。
【0285】
超音波ネブライザは、交互電流を高周波(約1~約3MHz)の音響エネルギーに変換する、圧電結晶の振動を使用して、ミストを生成する。溶液は、表面で液滴に分解され、結果として生じるミストは、患者の吸入により装置から引き出されるか、または小さな圧縮機によって生成された装置を通るガス流によって押し出される。超音波ネブライザは、大容量の超音波ネブライザおよび小容量の超音波ネブライザを含み得る。液滴サイズは、ジェットネブライザよりも、超音波ネブライザで大きい傾向がある。超音波ネブライザのMMD液滴サイズは、約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0マイクロメートルまたはそれ以上(または約2.0~10.0マイクロメートルの間の任意の範囲)となり得る。超音波ネブライザは、約100、150、200、250、300マイクロメートル/Lまたはそれ以上の液滴を有する、高密度ミストを生成することができる。
【0286】
メッシュネブライザ装置は、圧電結晶の振動を使用して、ミストを間接的に生成する。メッシュネブライザは、例えば、能動メッシュネブライザおよび受動メッシュネブライザを含む。能動メッシュネブライザは、電流の印加で収縮および拡張するピエゾ素子を使用し、薬剤溶液と接触して精密にドリルされたメッシュを振動させて、ミストを生成する。圧電結晶の振動は、数千の穴があいた薄い金属板を振動させるために使用することができる。プレートの一側面は、噴霧化される液体と接触しており、振動により、この液体が強制的に穴を通って、小さな液滴のミストを生成する。受動メッシュネブライザは、テーパ状の穴のある穿孔板に受動振動を誘導する変換器ホーンを使用して、ミストを生成する。能動メッシュネブライザの実施例としては、Aeroneb(登録商標)(Aerogen、Galway、アイルランド)およびeFlow(登録商標)(PARI、Starnberg、ドイツ)が挙げられる一方、Microair NE-U22(登録商標)(Omron、Bannockburn、IL)は、受動メッシュネブライザである。メッシュネブライザは、精密でカスタマイズ可能である。装置は、メッシュの細孔サイズを変更することによって、異なる粘度の薬剤溶液で使用するように調整され得、拍出量の速度が変化した。この噴霧化方法を使用することで、いくつかの利点が提供され得る。液滴サイズが、メッシュ内の穴のサイズ(用途に合わせてカスタマイズされうる)によって決定され得るため、液滴のサイズは、極めて正確であり得る。ネブライザメッシュは、呼吸可能な範囲のガス中の液体粒子を生成するために、電着、電気めっき、およびレーザー切断などの方法を使用して、製造され得る。メッシュは、金属合金から作製することができる。メッシュ製造に使用される金属には、プラチナ、パラジウム、ニッケル、およびステンレス鋼が含まれ得る。液滴のサイズは、メッシュ穴の約二倍のサイズである。したがって、メッシュ穴は、約0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0マイクロメートルまたはそれ以上(または約0.1~5.0マイクロメートルの間の任意の値)であり得る。メッシュネブライザにおけるメッシュ生成は、メッシュの形状、メッシュが作られる材料、およびメッシュが生成される方法に基づいて変化し得る。言い換えれば、異なるメッシュは、ガス中に懸濁された異なるサイズの液体粒子を生成することができる。一般的に、メッシュネブライザのMMD液滴サイズは、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5.、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0マイクロメートルまたはそれ以上(または約1.0~7.0マイクロメートルの間の任意の値)であり得る。
【0287】
さらに、液滴サイズは、プログラム可能であり得る。特に、ネブライザに幾何学的変更を行い、特定の所望の液滴サイズを提供することができる。さらに、液滴サイズは、液滴速度とは独立に制御され得る。噴霧された液体の容量、および液滴速度は、メッシュ振動の周波数および振幅を調整することによっても、正確に制御することができる。さらに、メッシュ内の穴の数およびメッシュ上のそれらのレイアウトを、カスタマイズすることができる。メッシュネブライザは、電気または電池のいずれかによって、電力供給され得る。
【0288】
分あたりの立位クラウドmLでのミスト拍出量の速度(本明細書に記載される任意の噴霧化方法に対して)は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9mL/分またはそれ以上(または約0.1~0.9mL/分の間の任意の範囲)の範囲であり得、任意の種類のネブライザ貯蔵部の残留容量は、約0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mLまたはそれ以上(または約0.01~2.0mLの間の任意の範囲)の範囲であり得る。正確な液滴サイズ制御は、液滴サイズが、動態薬剤放出(KDR)に直接相関し得るため、有利であり得る。KDRの正確な制御は、液滴サイズの正確な制御によって達成可能である。幻覚発動薬またはその誘導体は、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0マイクロメートルまたはそれ以上(または約0.5~10.0マイクロメートルの間の任意の範囲)のMMD液滴サイズを有する任意の方法を使用して、ミストを介して送達され得る。
【0289】
ある実施形態では、幻覚発動薬は、連続的な陽性気道圧(CPAP)または他の圧力の支援による呼吸装置を介して、送達され得る。圧力の支援による呼吸装置は、マスクまたは鼻キャップを着用している患者の顔および鼻に対して、固定された指定圧力で、圧縮空気または他のガスの連続的なカラムを押し出す。患者の声門が開いて息を吸うと、圧力は気道全体に伝達され、それを開ける一助となる。患者が息を吐き出すと、収縮する肺と胸壁からの圧力により、二つの圧力が等しくなるまで、連続的な圧力に対して空気が押し出される。呼気終了時の気道内の気圧は、機械の外気圧と等しく、これにより、気道を「支持して」開ける一助となり、より良好な酸素供給と気道確保を可能にする。圧力の支援による呼吸装置は、呼吸回路内のガス流にミスト粒子を導入するための手段、および/または患者が息を吐く場合にミスト粒子の呼吸回路への導入を中止するための手段と結合され得る。例えば、米国特許第7,267,121号を参照のこと。
【0290】
別の実施形態では、ミストは、定量吸入器(MDI)(加圧定量吸入器またはpMDIとも呼ぶ)などの装置によって送達され得、これは、任意選択では、加熱されたヘリウム-酸素の混合物と組み合わされる、幻覚発動薬を含有する有機溶媒-液滴ミストを生成する。ある実施形態では、幻覚発動薬またはその誘導体は、定量用量の吸入器MDIを介して、送達され得る。MDI装置は、幻覚発動薬またはその誘導体を含有するキャニスタ、ならびに噴射剤、薬剤をキャニスタから分注する計量弁、キャニスタを受容し、経口吸入のための開口部を形成するアクチュエータ本体、および薬剤をキャニスタから受容し、それをアクチュエータ本体内の開口部外へと導くアクチュエータステムを含み得る。薬剤キャニスタを、アクチュエータ本体およびアクチュエータステムに対して移動させることにより、計量弁は、所定量の薬剤を放出する。ある実施形態では、幻覚発動薬またはその誘導体は、MDIの加圧容器に貯蔵された液体噴射剤混合物(少量の揮発性有機溶媒を含む場合もある)に溶解され得る。「定量用量」は、単回用量吸入器に予め包装された用量、または多用量吸入器が、吸入準備として、貯蔵部から自動的に測定される用量である。MDI装置は、スペーサーで補助され得る。MDIスペーサーは、MDIとMDIのユーザの口との間を通過するスペーサーである。MDIスペーサーにより、噴霧化された用量の液滴は、少量を沈殿させ、空気または他のガスと混合可能であり、したがって、吸入時に、ユーザの肺内への定量用量のより効果的な送達が可能になる。MDIスペーサーは、用量が非常に高速で移動し得るため、MDIからの霧状スプレーの液滴が、定量用量の薬剤が送達されるように設計されているユーザの肺に吸入されるのではなく、ユーザの喉の奥に当たり付着するMDIから、ユーザが定量用量を直接吸入するのを防止するのに役立つ。MDI装置は、薬剤の製造で制御可能である、定期的な投与の利点を提供する。
【0291】
薬剤はまた、乾燥粉末吸入器(DPI)によっても送達され得る。このようなDPI装置では、薬剤自体が粉末を形成するか、または粉末は、薬学的に許容可能な賦形剤もしくは担体から形成され得、薬剤は、吸入時に肺の中の水分が薬剤を表面から放出して全身吸収に供されるように、担体粉末の表面に放出可能に結合される。ある実施形態では、幻覚発動薬は、乾燥粉末吸入器(DPI)の使用によって送達される。薬剤は、使用される幻覚発動薬に応じて、必要な粉末自体に形成され得、または担体粉末の表面に放出可能に結合され得る。このような担体粉末は、当該技術分野で公知である(例えば、H. Hamishehkarらの「The Role of Carrier in Dry Powder Inhaler」、DOI:10.5772/51209(2012)を参照のこと)。
【0292】
DPIは、一般的に、1~5マイクロメートルの空気力学的粒子直径を有する粗い担体粒子と微粒子化された薬剤粒子との粉末混合物として製剤化される(Iidaらの「Preparation of dry powder inhalation by surface treatment of lactose carrier particles」。Chem Pharm Bull、511150009-2363 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12520118/2003)。担体粒子は、薬剤粒子の流動性を改善するためにしばしば使用され、したがって、投薬精度を改善し、薬剤製剤のみで観察される用量変動を最小化する一方で、製造作業中の取り扱いをより容易にする。担体粒子は、製剤原料と適合性がある、物理化学的安定性、生体適合性、および生分解性などのいくつかの特徴を有し、不活性、利用可能、および経済的でなければならない。担体粒子(含有量およびサイズの両方)の選択は、十分当業者の所掌範囲にある。最も一般的な担体粒子は、ラクトースまたは他の糖から作られ、α-ラクトース一水和物が、このような粒子担体の吸入場で使用される最も一般的なラクトース級である。
【0293】
ある実施形態では、上記送達装置のいずれかは、薬剤送達の遠隔作動を可能にする高性能技術を用いて製造することができる。遠隔作動は、コンピュータまたはモバイルアプリを介して、実施され得る。セキュリティを確保するため、遠隔作動装置は、パスワードでコード化され得る。この技術により、医療従事者は、患者と遠隔医療セッションを行うことが可能になり、その間、医療従事者は、患者を遠隔訪問で監督しながら、所望の送達装置を介して、幻覚発動薬を遠隔で作動し、投与することができる。
【0294】
ある実施形態では、送達装置は、亜酸化窒素と幻覚発動薬との組合せを、それを必要とする患者による吸入により、送達するための吸入送達装置であって、患者に、亜酸化窒素と幻覚発動薬との組合せを投与するための吸入出口ポータルと、亜酸化窒素ガスを、吸入出口ポータルに送達するように構成された容器と、幻覚発動薬を含むエアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成される、装置と、を備える。ある実施形態では、吸入出口ポータルは、患者の鼻および口を覆うマウスピースまたはマスクから選択される。ある実施形態では、エアロゾルを生成し、吸入出口ポータルに送達するように構成された装置は、ネブライザである。ある実施形態では、ネブライザは、ジェットネブライザであり、亜酸化窒素ガスは、ジェットネブライザの駆動ガスとして作用する。ある実施形態では、該装置は、上述の吸入送達装置の遠隔作動および動作制御を提供するように構成された電子機器をさらに含む。
【0295】
ある実施形態では、装置は、エアロゾルの形態などで幻覚発動薬を投与し、同時に、制御された量の亜酸化窒素を投与するように構成された二重送達装置である。上述のエアロゾル送達装置のいずれかは、このような装置に使用することができ、エアロゾル送達装置と同じ投与出口を通して、定量され制御された用量/流量の亜酸化窒素を提供するように構成された亜酸化窒素源が添加される。ある実施形態では、幻覚発動薬の噴霧化のための駆動ガスは、亜酸化窒素自体である。
【0296】
幻覚発動薬を亜酸化窒素と併用投与する場合、亜酸化窒素は、亜酸化窒素と酸素(または空気)の混合物の形態となり得、亜酸化窒素の量は、亜酸化窒素/酸素(または空気)混合物の15~25容量%、例えば、亜酸化窒素/酸素(または空気)混合物の約15~20容量%である。
【0297】
有利なことに、約90、60、45、30、15分またはそれ以下の時間での、約15~25(例えば、約25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15またはそれ以下)容量%、例えば、約15~20容量%の濃度の低濃度の亜酸化窒素は、良好な有効性を提供し、有意に低減された副作用プロファイルを有し得る。例えば、悪心、頭痛、不安、感情的不快感、混乱、めまい、および鎮静の量および/または重症度は、低濃度の亜酸化窒素(例えば、約15~25%のレベル)を使用する場合、低減され得る。さらなる実施形態では、亜酸化窒素と酸素(または空気)の混合物は、幻覚発動薬の投与なしに、投与される。このような実施形態では、亜酸化窒素と酸素(または空気)の混合物は、総ガスの15~25容量%の量、例えば、総ガスの15~20容量%の量で亜酸化窒素を含有する。亜酸化窒素/酸素(または空気)の混合物の投与時間は、例えば、20~60分または30~45分など、任意の所望の持続時間とすることができる。
【0298】
一部の追加的実施形態では、亜酸化窒素の量が、亜酸化窒素/酸素(または空気)の混合物の約15~25容量%、例えば、亜酸化窒素/酸素(または空気)の混合物の約15~20容量%である、亜酸化窒素と酸素(または空気)との混合物の形態での、幻覚発動薬の亜酸化窒素との併用投与により、約2、5、10、20、30、40、50、60、70%またはそれ以上で送達される幻覚発動薬の量が低減され得る(本明細書に記載される亜酸化窒素を送達しない用量と比較して)。幻覚発動薬の用量が少ないほど、急性幻覚クリーゼ(バッドトリップ)、不快生理学的および心理学的副作用、悪心、頭痛、不安、感情的不快感、錯乱、めまい、および鎮静などの心理的障害などの重症度のある副作用を少なくまたはその症状を低減する可能性がある。
【0299】
幻覚発動薬およびヘリウムと酸素の混合物の送達
【0300】
本明細書に開示される方法は、少用量の幻覚発動薬またはその誘導体の全身送達を提供する。特に、幻覚発動薬またはその誘導体は、患者のCNSに送達され得る。用量は、個々の患者の代謝および治療ニーズに対して、最適化され得る。用量が多いことによる有害または望ましくない副作用は、少用量で使用することによって、回避され得る。様々な中枢神経系(CNS)疾患および他の病態を治療する方法を、本明細書に記述する。該方法は、薬剤および空気、酸素、ヘリウム、またはヘリウムと酸素の混合物(すなわち、ヘリオックス混合物)などのガスを含むエアロゾルの吸入により、幻覚発動薬またはその誘導体を、それを必要とする患者に送達することを含み得る。ある実施形態では、空気、酸素、ヘリウム、または混合ヘリウムおよび酸素を、加熱することができる。方法は、抑制器と、ガスまたは空気接続管によって互いに接続されるマスクとを備えた酸素-ヘリウム混合物を有するバルーンを含有し、ガス混合物を120℃まで加熱可能な追加の発熱体と、それを通して5ミクロン未満のサイズの液滴の通過を確実にする、振動多孔性プレートまたはメッシュを有するネブライザと、消毒装置とを含有する装置を使用することをさらに含み得る。
【0301】
ある実施形態では、幻覚発動薬またはその誘導体は、下気道に、例えば、肺胞、肺胞管および/または細気管支などの肺区画に送達される。そこから、薬剤は血流に入り、中枢神経系に移動することが可能である。本開示の一つの実施形態では、ミストの吸入により、幻覚発動薬を、それを必要とする患者に送達することは、肝臓を通過することなく、幻覚発動薬を患者のCNSに送達することができる。吸入を介した投与により、ガス状薬剤または液体もしくはミスト中に分散したものは、幻覚発動薬またはその誘導体を血流に急速に送達して、初回通過代謝をバイパスすることが可能になる。初回通過代謝は、「初回通過効果」または「全身循環以前の代謝」とも称され、肝臓に進入し、広範な生体内変換を受ける薬剤を記述する。
【0302】
本開示の一つの実施形態は、約50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃またはそれ以上(50℃~60℃の間の任意の範囲)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物、噴霧化された幻覚発動薬およびその誘導体を、吸入により投与することによって、幻覚発動薬を、それを必要とする患者に投与することができる、治療ステップを提供する。ある実施形態では、幻覚発動薬のミストまたは蒸気は、約0.1ミクロン~約10ミクロン(例えば、約10、5、4、3、2、1、0.1またはそれ以下)の粒子サイズを有し得る。一部の実施形態では、幻覚発動薬またはその誘導体は、溶解された幻覚発動薬とのミストである吸入剤を生成するネブライザを介して、噴霧化され得る。一部の実施形態では、噴霧化された幻覚発動薬は、患者の吸入により、患者送達ラインに沿って駆動される。別の実施形態では、噴霧化された幻覚発動薬は、担体ガスを使用する患者の吸入により、患者送達ラインに沿って駆動される。担体ガスは、空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物であり得る。
【0303】
本開示の他の実施形態では、治療ステップは、前治療ステップによって先行され得る。いくつかの実施形態では、前治療ステップは、幻覚発動薬またはその誘導体のミストの投与前に、前治療吸入療法をまず施すことを含み得る。一部の実施形態では、前治療吸入ステップは、(i)吸入により、空気、酸素、または約90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120、またはそれ以上(または約90℃~120℃の間の任意の範囲)に加熱されたヘリウムと酸素の混合物を、投与することと、幻覚発動薬を投与しないこと、その後、(ii)吸入の治療ステップとして、空気、酸素、酸素とヘリウムの混合物、加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物を投与することを含み得る。加熱空気、加熱酸素、または加熱されたヘリウムと酸素の混合物は、噴霧化された幻覚発動薬またはその誘導体と組み合わせて、約50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、またはそれ以上(または約50℃~60℃の任意の範囲)に加熱され得る。
【0304】
本開示の一部の実施形態では、前治療ステップ(i)と治療ステップ(ii)を、0、1、2、3、4、5回またはそれ以上繰り返すことができる。本開示の一部の実施形態では、ステップ(i)および(ii)は、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され、その後、治療ステップが続いてもよく、治療ステップは、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され得る。本開示の一部の実施形態では、治療ステップは、前治療ステップなしで、0、1、2、3、4、5回、またはそれ以上繰り返され得る。
【0305】
治療は、任意選択の前治療により、週一回、週二回、一日一回、一日二回、一日三回またはそれ以上の頻度で投与することができる。各治療は、約1分、5分、10分、20分、30分、45分、60分またはそれ以上であり得る。
【0306】
薬剤送達の手順には、粘膜床を効果的に予熱し、その後、加熱されたヘリオックスによって再び駆動されるが、湿潤対乾燥吸入ガス流に対するより低い熱耐性によって決定される、より低い温度で、噴霧された幻覚発動薬を吸入するために、吸入されたプライミング非薬剤の高温ヘリオックス混合物が含まれ得る。結果として、この手順は、標的PKおよび薬剤曝露が、薬剤の濃度、温度、ヘリウム酸素混合物の流量、混合物の組成、サイクルの数および持続時間、時刻および上記の組み合わせによって制御される、複数回の反復サイクルで実施され得る。
【0307】
本明細書に記載される送達方法は、特定の疾患および障害を治療するために使用され得る。治療することおよび治療は、状態、障害、疾患、また状態、障害、もしくは疾患の一つ以上の症状、またはそれらの組み合わせを軽減または防止する方法を指す。治療することまたは治療には、状態、障害、疾患の進行の部分的または完全な停止、または状態、障害、疾患の部分的または完全な逆転を含み得る。治療は、患者が状態によって依然影響を受ける場合があるという事実にありながら、患者に改善が観察されるように、基礎症状、疾患、または障害に関連する生理学的または心理学的症状のうちの一つ以上の根絶または改善などの治療的利益を提供し得る。
【0308】
したがって、吸入により、加熱されたヘリウムと酸素の加熱された混合物、および噴霧化された幻覚発動薬を投与することを含む、中枢神経系(CNS)障害または心理的障害を治療する方法が、本明細書において提供される。治療は、障害の一つ以上の症状を軽減可能である。
【0309】
一部の実施形態では、幻覚発動薬は、CNS疾患または他の障害の治療のために投与され得る。一部の実施形態では、幻覚発動薬は、大うつ病、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、または気分変調症を含むが、これらに限定されない、うつ病を治療するために投与され得る。一部の実施形態では、幻覚発動薬は、不安障害、強迫性障害、嗜み(麻薬依存症、タバコ依存症、オピオイド依存症)、アルコール依存症、うつ病、および不安(慢性的または生命を脅かす疾患もしくは末期疾患の診断に関連する)、強迫行動、または関連する症状を含む心理的障害を治療するために投与され得る。
【0310】
一部の実施形態では、疾患または障害は、例えば、外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害(MDD)、治療抵抗性うつ病(TRD)、自殺念慮や自殺企図、双極および関連障害(双極I障害、双極II型障害、シクロ胸腺障害を含むが、これらに限定されない)、強迫性障害(OCD)、全般性不安障害(GAD)、急性幻覚クリーゼ、社会的不安障害を含む中枢神経系(CNS)障害および/または心理的障害、薬剤使用障害(アルコール使用障害、オピオイド使用障害、アンフェタミン使用障害、ニコチン使用障害およびコカイン使用障害を含むが、これらに限定されない)、アルツハイマー病、群発性頭痛や片頭痛、注意欠陥多動性障害(ADHD)、痛みと神経障害性の痛み、弱膜症、小児期発症性流性障害、認知症、軽度の神経認知障害、ギャンブル障害、神経性食欲不振症、神経性過食症、むちゃ食い障害などの摂食障害、および、例えば、小児性障害、行動障害、窃視障害、フェチシズム障害、性的なマゾヒズムまたはサディズム障害、異性装障害などの性的倒錯、および肥満を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、自律神経系(ANS)の状態を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、肺障害(例えば、喘息および慢性閉塞性肺障害(COPD))を含み得る。一部の実施形態では、疾患または障害は、心血管障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)を含み得る。
【0311】
本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を介してなど、吸入により(例えば、加熱されたヘリウム-酸素混合物を使用することを含む)、幻覚発動薬をCNSに送達する方法(全身薬剤送達)は、経口送達と比較して、複数のPKパラメータの有利な改善をもたらすことができる。特に、幻覚発動薬は、血液脳関門を通過し、脳に送達され得る。経口送達と比較して、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置などにより、任意選択で、加熱されたヘリオックス混合物などを用いて、吸入により、幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、経口送達と比較して、生物学的利用能を少なくとも25%増加させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置などを用いて、吸入により、幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、生物学的利用能を、約10%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上増加させることができる。本明細書に記載のネブライザを介して、幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、経口送達と比較して、Tmaxを少なくとも50%減少させることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のネブライザを介して,幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、Tmaxを、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上低減することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を介して、幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、経口送達と比較して、Cmaxを少なくとも25%増加させることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を介して、幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、Cmaxを、約10%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、またはそれ以上増加させることができる。さらに、本明細書に記載のネブライザまたは他の装置を介して、吸入により、幻覚発動薬をCNSに送達する方法は、用量滴定およびより制御された曝露を可能にする臨床プロトコルを可能にし得る。管理された曝露は、患者の経験を調整し、全体的に改善された治療転帰を提供することを可能にする。上述の吸入送達のための高性能技術によって可能となった装置により、用量調節および制御された送達は、医療従事者によって遠隔で行われ、患者は、自宅で快適に過ごせるようになり、患者の経験および転帰を改善することができる。
【0312】
ある実施形態では、幻覚発動薬(またはその誘導体または塩)化合物製剤の溶液を含む容器と、容器と物理的に結合または共包装され、約0.1ミクロン~約10ミクロン(例えば、約10、5、4、3、2、1、0.1またはそれ以下のミクロン)の粒子サイズを有する溶液のミストなどのエアロゾルを生成するように適合されたネブライザと、を含む、幻覚発動薬(またはその塩)を投与するためのシステムが提供される。
【0313】
患者または対象は、例えば、ヒトを含む任意の哺乳類であり得る。患者または対象は、治療される状態を有し得、または治療される状態に対して感受性があり得る。
【0314】
本明細書で使用する用語「および/または」は、関連する列挙された項目のうちの一つ以上のいずれかおよびすべての組み合わせを含む。本明細書の記述、およびそれに続く特許請求の範囲全体を通して使用する、「a」、「an」、および「the」の意味は、文脈が別途明確に示さない限り、単数に加えて複数の言及も含む。数値に関連する用語「約」は、値が5%上下に変動することを意味する。例えば、約100の値については、95~105(または95~105の間の任意の値)を意味する。
【0315】
本明細書の任意の場所で参照される全ての特許、特許出願、およびその他の科学的または技術的文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に説明的に記載する実施形態は、本明細書に具体的または非具体的に開示される任意の要素または複数の要素、限定、または複数の限定が存在せずに、適切に実施され得る。したがって、例えば、本明細書のそれぞれの例において、用語「含む」、「本質的にからなる」、および「からなる」のいずれかは、それらの通常の意味を保持しながら、他の二つの用語のいずれかで置き換えられ得る。用いられた用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示されそして記載される特徴またはその一部の任意の均等物を排除する意図はないが、様々な改変が、特許請求の範囲において可能であると認識される。したがって、本方法および組成物が、実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されるが、本明細書で開示の概念の改変および変形は、当業者に依存され得、またこのような改変および変形は、記載および添付の特許請求の範囲によって定義される組成物および方法の範囲内であるとみなされることは、理解されるべきである。
【0316】
本明細書に記載される任意の単一の用語、単一の要素、単一の語句、用語の群、語句の群、または要素の群はそれぞれ、特許請求の範囲から具体的に除外され得る。
【0317】
例えば、温度範囲、時間範囲、組成物、または濃度範囲などの範囲が本明細書で与えられる場合、全ての中間範囲および部分範囲、ならびに与えられた範囲に含まれる全ての個々の値は、本開示に含まれることが意図される。本明細書の記述に含まれる、ある範囲または部分範囲における任意の部分範囲または個々の値が、本明細書の態様から除外され得ることは理解されよう。当然のことながら、本明細書の記載に含まれる任意の要素またはステップが、請求項に記載される組成物または方法から除外され得ることは理解されよう。
【0318】
さらに、組成物および方法の特徴または態様が、マーカッシュグループまたは他の代替のグループ分けの観点から記述される場合、当業者は、組成物および方法もまた、それによって、マーカッシュグループまたは他のグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点から記述されることを認識するであろう。
【0319】
以下は、例示目的のみで提供され、上記の広義の用語で説明される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【0320】
実施例
【0321】
実施例1 噴霧化によるDMTの吸入送達
【0322】
DMT塩酸塩を、水(等張性リン酸緩衝液によりpH7に緩衝された)中で5mg/mlの濃度に溶解することによって、噴霧化用に製剤化した。新たに調製した溶液(5ml)を、パラジウムメッシュを含むAerogen Solo(Aerogen Corp.、Dangan、アイルランド)メッシュネブライザに詰めて、連続的噴霧管セットに接続した。ネブライザ区画への溶液の送達速度を、0.2~1ml/分に設定し、滴定による治療用量送達を可能にした。噴霧化されたエアロゾルを、フェイスマスクを介して患者に5~20分間送達した。最初の投与については、患者の報告およびEEGのその場の読み出しによって決定された、幻覚効果の発症を患者が達成した直後に、操作を終了した。
【0323】
実施例2 定量吸入器によるDMTの吸入送達
【0324】
DMT遊離塩基をHFA噴霧剤227(20mg/ml)に溶解し、0.1mlを標準薬剤用量として送達するように選択したレシファームにより、BespakのBK357バルブおよびアクチュエータ(オリフィスd=0.22mm)を備えた計量吸入器の加圧ステンレス鋼キャニスタ(V=14ml)に詰めた。用量滴定を達成するために、患者は、20分間にわたって2分ごとに最大10回の薬剤投与を受けた。最初の投与については、患者の報告およびEEGのその場の読み出しによって決定された、幻覚効果の発症を患者が達成した直後に、操作を終了した。
【0325】
明らかに、本開示の方法および組成物の多数の修正および変形は、上記の教示を鑑みて可能である。したがって、当然のことながら、添付の特許請求の範囲内において、組成物および方法は、本明細書に具体的に記載されるもの以外の方法で実施され得る。
【国際調査報告】