(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】高衝撃強度を有する単峰性ポリプロピレンランダムコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 210/06 20060101AFI20231018BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08F210/06
C08L23/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520099
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 US2021053165
(87)【国際公開番号】W WO2022072825
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】カールト,ジョン・ケイ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB141
4J002BB151
4J002EC056
4J002ED086
4J002EG076
4J002EG086
4J002EP006
4J002EW046
4J002EW146
4J002FD206
4J002GG01
4J002GG02
4J100AA02Q
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4J100CA03
4J100CA31
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4J100DA49
4J100DA51
4J100DA52
4J100DA62
4J100FA09
4J100FA22
4J100HA51
4J100HC36
4J100HE32
4J100HE35
4J100JA58
(57)【要約】
優れた耐衝撃性を有するビスブロークン単峰性ランダムポリプロピレンコポリマーが開示される。ポリマーは単峰性であるため、ポリマーは優れた光学特性も有する。ポリマーを製造するために、高分子量及び低メルトフローレートのポリプロピレンポリマーを、耐衝撃性を劇的に改善することが見出されている溶融条件下でビスブレーキング剤と合わせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
単峰性ビスブロークンポリプロピレンポリマーを含み、前記ポリプロピレンポリマーがランダムプロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーを含み、前記ポリプロピレンポリマーが230℃及び2.16kgの荷重で約10g/10分未満のメルトフローレート及び約2.5~約4の多分散指数を有し、前記ポリマー組成物が約400J/m超の23℃でのアイゾット耐衝撃性を示し、前記ポリマー組成物が任意に成核剤を含有する、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が前記成核剤を含有し、前記ポリマー組成物が約15%未満の1mmでのヘイズを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレンポリマーが約0.8g/10分~約4g/10分のメルトフローレートを有し、前記ポリプロピレンポリマーが約4~約20のクラッキング比を有する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリプロピレンポリマーが約0.4g/10分~約1.5g/10分のメルトフローレートを有し、前記ポリプロピレンポリマーが約2~約8のクラッキング比を有する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ランダムプロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーが、プロピレン及びエチレンランダムコポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記プロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーが、前記アルファ-オレフィンを約2.5重量%~約5.5重量%の量、例えば約3.7重量%~約4.6重量%の量で含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリプロピレンポリマーが、約5%超のキシレン可溶分含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレンポリマーが、約6重量%~約20重量%、例えば約7重量%~約15重量%、例えば約8重量%~約12重量%のキシレン可溶分含有量を有する、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、約450J/m超、例えば約480J/m超、例えば約500J/m超、例えば約550J/m超、一般に約1100J/m未満のアイゾット耐衝撃性を示す、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記成核剤がノニトール、ソルビトール、リン酸エステル、ジカルボキシレート金属塩又はそれらの混合物を含み、前記成核剤が前記ポリマー組成物中に約400ppm超の量、例えば約1000ppm超の量、例えば約1500ppm超の量、例えば約2000ppm超の量及び約5000ppm未満の量で存在する、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリマー組成物が、前記ポリプロピレンポリマーを約70重量%超の量、例えば約80重量%超の量、例えば約90重量%超の量、例えば約95重量%超の量で含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記ランダムプロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーがランダムプロピレン及びエチレンコポリマーを含み、前記コポリマーが約3.7重量%~約4.6重量%の量でエチレンを含有し、前記ポリプロピレンポリマーが約8重量%~約15重量%のキシレン可溶分含有量を有し、前記ポリプロピレンポリマーが約0.6g/10分~約4g/10分のメルトフローレートを有し、前記ポリマー組成物が成核剤を含有し、前記ポリマー組成物が約15%未満の1mmでのヘイズを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリプロピレンポリマーが、フタレート不含有触媒を使用してチーグラー・ナッタ触媒処理されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記ポリプロピレンポリマーが約5未満の分子量分布を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成された成形物品。
【請求項16】
前記成形物品が射出成形物品、押出ブロー成形物品又は熱成形物品である、請求項15に記載の成形物品。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物から形成された貯蔵容器。
【請求項18】
前記貯蔵容器が食品包装材又はボトルを含む、請求項17に記載の貯蔵容器。
【請求項19】
単峰性ポリプロピレンポリマーをビスブレーキングすることを含む、ポリプロピレンポリマーを調製する方法であって、前記ポリプロピレンポリマーがランダムプロピレン及びランダムオレフィンコポリマーを含み、前記ポリプロピレンポリマーが、230℃及び2.16kgの荷重において約0.5g/10分未満の初期メルトフローレートを有し、前記プロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーが、前記アルファ-オレフィンを約2.5重量%~約5.7重量%の量で含有し、前記ポリプロピレンポリマーが、約6重量%~約20重量%のキシレン可溶分含有量を有し、前記ポリプロピレンポリマーが3超のクラッキング比を達成するようにビスブレーキングされ、前記ビスブロークンポリプロピレンポリマーが、約400J/m超の23℃におけるアイゾット耐衝撃性を有する、方法。
【請求項20】
前記ポリプロピレンポリマーが、ランダムプロピレン及びエチレンコポリマーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ビスブロークンポリプロピレンポリマーが単峰性ポリマーである、請求項19又は20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年10月2日に出願された米国仮特許出願第63/086,947号に基づき、その優先権を主張し、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンポリマーは、多数の多様な用途及び分野で使用される。ポリオレフィンポリマーは、例えば、容易に加工することができる熱可塑性ポリマーである。ポリオレフィンポリマーはまた、リサイクル及び再利用することができる。ポリオレフィンポリマーは、石油化学物質から得られ、豊富に利用可能であるプロピレン及びアルファ-オレフィンなどの炭化水素から形成される。
【0003】
ポリオレフィンポリマーの一種であるポリプロピレンポリマーは、一般に、プロピレンモノマーに基づく線状構造を有する。ポリプロピレンポリマーは、様々な異なる立体特異的配置を有し得る。ポリプロピレンポリマーは、例えば、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックであり得る。アイソタクチックポリプロピレンは、おそらく最も一般的な形態であり、高度に結晶性であり得る。生成され得るポリプロピレンポリマーとしては、ホモポリマー、変性ポリプロピレンポリマー、及びポリプロピレンターポリマーを含むポリプロピレンコポリマーが挙げられる。ポリプロピレンを変性するか、又はプロピレンを他のモノマーと共重合することによって、特定の用途に所望の特性を有する様々な異なるポリマーを生成することができる。
【0004】
1つの用途において、ポリプロピレンポリマーは、高い透明性と組み合わせて高衝撃強度を有するように配合及び設計される。例えば、高衝撃強度及び高透明度を有するポリマーの組み合わせは、内容物を保護するだけでなく、容器の壁を通して包装材の内容物を見ることができる包装材又は容器などの様々な異なる製品の製造に非常に有用であることができる。このようなポリマーは、例えば、全ての異なるタイプの容器、消費者製品、器具部品などの製造に使用することができる。
【0005】
過去には、ゴム状プロピレン-アルファ-オレフィンコポリマー相がブレンドされたホモポリマーマトリックスを含有する、高い耐衝撃性を有するポリプロピレンポリマーが製造された。コポリマー相は、低温などにおいて耐衝撃性を増した。プロピレン-アルファ-オレフィンコポリマーは、ほぼ非晶質であることができ、したがってポリマー組成物中にゴム相を形成するエラストマー特性を有することができる。プロピレン-アルファ-オレフィンコポリマーの異相ポリマー組成物への包含によって、耐衝撃性が改善されるが、光学特性が犠牲になる。別の態様において、異相ポリマーは、ポリプロピレンポリマーをプラストマー又は直鎖低密度ポリエチレンとブレンドするなど、異なるポリマーを共に配合することによって製造することができる。
【0006】
異相ポリプロピレンポリマーの透明性を改善するために、ゴム相サイズを減少させる、又はゴムのエチレン含有量を変更する試みがなされてきたが、特に低温での耐衝撃性が犠牲となる。更に、光学特性を改善するために種々の透明化剤がポリマーに添加されてきた。
【0007】
異相ポリプロピレンポリマーは当該分野において大きな進歩を遂げたが、ポリマーの製造は幾分複雑である。例えば、ポリマーは典型的には複数の反応器を使用して製造され、及び/又は特定の配合ステップを必要とする。その結果、単一の反応器で製造することができる、高衝撃強度及び良好な光学特性を有するポリプロピレンポリマーが現在必要とされている。より詳細には、二次相を添加する必要なく、高衝撃強度及び低いヘイズを有するポリプロピレンポリマーに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、概して、優れた耐衝撃性を有する単峰性ポリオレフィンポリマーに関する。単峰性ポリマーは、単一反応器で製造された単一ポリマーからなるポリマーである。ポリマーは、低いヘイズを含む良好な光学特性を有するように配合することもできる。本開示はまた、ポリマーを製造するプロセスに関する。特に有利なことに、高耐衝撃性ポリマーは、フタレート不含有チーグラー・ナッタ触媒を使用して単一反応器で製造することができる。
【0009】
一態様では、例えば、本開示は、単峰性ビスブロークンポリプロピレンポリマーを含有するポリマー組成物に関する。ポリプロピレンポリマーは、ランダムプロピレン及びアルファ-オレフィンコポリマーを含む。ビスブロークンポリプロピレンポリマーは、23℃及び2.16kgの荷重で約10g/10分未満のメルトフローレート並びに約2.5~約6、例えば約2.5~約4の多分散指数を有することができる。ポリプロピレンポリマーは、優れた耐衝撃性を有し、約400J/m超、例えば約450J/m超、例えば約480J/m超、例えば約500J/m超、例えば約550J/m超、一般に約1100J/m未満の23℃におけるアイゾット耐衝撃性を示すことができる。
【0010】
優れた耐衝撃性を有することに加えて、本開示のポリマー組成物はまた、比較的低いヘイズを示すことができる。ポリマー組成物は、例えば、任意に成核剤を含有することができ、1mmの厚さを有する研磨型内で製造された射出成形試料上で、約15%未満、例えば約14%未満、例えば約13%未満、例えば約12%未満、例えば約11%未満のヘイズを示すことができる。成核剤は、一態様では、成核剤の一種である透明化剤であることができる。
【0011】
本開示のポリプロピレンポリマーは、比較的高い分子量及び比較的低いメルトフローレートを有するランダムポリプロピレンコポリマーを最初に形成することによって製造することができる。例えば、ポリマーの初期メルトフローレートは、約2g/10分未満、例えば約1g/10分未満、例えば約0.5g/10分未満、例えば約0.3g/10分未満であることができる。次いで、ポリプロピレンポリマーは、メルトフローレートを上昇させる過酸化物にポリマーを接触させるビスブレーキングプロセスに供される。例えば、ビスブレーキングの後、ポリプロピレンポリマーは、約2超、例えば約3超、例えば約4超、例えば約5超、例えば約7超、例えば約8超、例えば約9超、例えば約10超、一般に約20未満、例えば約15未満のクラッキング比を受けることができる。クラッキング比は、ビスブレーキング前のポリプロピレンポリマーの初期メルトフローレートで割ったビスブレーキング後のポリプロピレンポリマーの最終メルトフローレートの比を指す。
【0012】
一実施形態において、ビスブロークンポリプロピレンポリマーは、約0.4g/10分~約1.5g/10分、例えば約0.4g/10分~約1.2g/10分のメルトフローレートを有することができ、約2~約8のクラッキング比を有することができる。別の実施形態では、ビスブロークンポリプロピレンポリマーは、約0.8g/10分超、例えば約1.5g/10分超、及び一般に約4g/10分未満、例えば約3g/10分未満、例えば約2.5g/10分未満のメルトフローレートを有することができ、約5~約20、例えば約8~約12のクラッキング比を有することができる。
【0013】
上記のように、ポリプロピレンポリマーは、ランダムプロピレン-アルファ-オレフィンコポリマーである。アルファ-オレフィンコモノマーは、ポリプロピレンポリマー中に、約2.5重量%~約6重量%の量、例えば約3重量%~約5.7重量%の量、例えば約3.7重量%~約4.6重量%の量で存在することができる。アルファ-オレフィンコモノマーは、例えばエチレンであることができる。ポリプロピレンランダムコポリマーは、一般に、約5重量%超、例えば約6重量%~約20重量%の量、例えば、約7重量%~約15重量%の量、例えば、約8重量%~約12重量%の量のキシレン可溶分含有量を有することができる。
【0014】
特定の一態様では、ポリプロピレンポリマーは、約3.7重量%~約4.6重量%の量のエチレンを含有するプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーである。ポリプロピレンポリマーは、約8%~約15%のキシレン可溶分含有量を有することができ、約1g/10分~約4g/10分のメルトフローレートを有することができる。ビスブロークンポリプロピレンコポリマーは、約5~約20のクラッキング比を有することができる。ポリプロピレンポリマーを含有するポリマー組成物はまた、成核剤を含有することができ、約14%未満の1mmでのヘイズを示すことができる。
【0015】
本開示のポリマー組成物から様々な異なる成形物品を作製することができる。ポリマー組成物は、一般に、約70重量%超の量、例えば約80重量%超の量、例えば約90重量%超の量、例えば約95重量%超の量のポリプロピレンポリマーを含有することができる。ポリマー組成物を使用して、射出成形物品、ブロー成形物品、及び熱成形物品を製造することができる。ポリマー組成物は、ボトル及び包装材を含む貯蔵容器などの全ての異なるタイプの容器の製造に特によく適している。一態様では、ポリマー組成物を使用して、食品包装材を製造することができる。別の態様では、ポリマー組成物を使用して、任意の好適なサイズの押出ブロー成形ボトルを製造することができる。一実施形態では、ボトルは成形ハンドルを含むことができ、約20オンス~約250オンスの内部容積を有することができる。本開示に従って作製された容器は、自立壁を有して半剛性又は剛性であることができる。
【0016】
本開示は、ポリプロピレンポリマーを製造する方法にも関する。当該方法は、ポリプロピレンランダムコポリマーをビスブレーキングするステップを含む。ポリプロピレンランダムコポリマーは、プロピレン-アルファ-オレフィンコポリマーであることができ、約2g/10分未満、例えば約1g/10分未満、例えば約0.5g/10分未満の初期メルトフローレートを有することができる。ランダムプロピレンコポリマーは、アルファ-オレフィンコモノマーを約2.5重量%~約5.7重量%の量で含有することができ、約6重量%~約20重量%のキシレン可溶分含有量を有することができる。ランダムポリプロピレンコポリマーは、約3超、例えば約5超、例えば約8超、一般に約20未満、例えば約15未満のクラッキング比を達成するようにビスブレーキングされる。ビスブレーキング後、ポリプロピレンコポリマーは、約400J/m超の23℃でのアイゾット耐衝撃性を示す。ポリプロピレンコポリマーは、約15%未満、例えば約13%未満の1mmでのヘイズを達成するために、透明化剤などの成核剤と任意に組み合わせることができる。
【0017】
本開示の他の特色及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【0018】
定義及び試験手順
メルトフローレート(Melt flow rate、MFR)は、本明細書で使用される場合、プロピレン系ポリマーについて2.16kgの重量で230℃でASTM D1238試験法に従って測定される。メルトフローレートは、ペレット形態で、又は反応器粉末で測定することができる。反応器粉末を測定するとき、2000ppmのCYANOX2246酸化防止剤(メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール))、2000ppmのIRGAFOS168酸化防止剤(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)、及び1000ppmの酸捕捉剤ZnOを含む安定化パッケージが添加される。
【0019】
キシレン可溶分(Xylene solubles、XS)は、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂の試料を高温キシレンに溶解し、溶液を25℃に冷却した後に溶液中に残る樹脂の重量パーセントとして画定される。これは、60分の沈殿時間を使用するASTM D5492-06による重量XS法とも呼ばれ、本明細書では「湿式法」とも呼ばれる。
【0020】
上述のASTM D5492-06法を使用して、キシレン可溶部分を決定する。一般に、手順は、2gの試料を秤量すること、及び24/40の継手を備えた400mLフラスコ中で200mLのo-キシレンに試料を溶解することからなる。フラスコを水冷冷却器に接続し、内容物を撹拌し、窒素(N2)下で加熱還流し、次いで、更に30分間還流を維持する。次いで、溶液を25℃の温度制御された水浴中で60分間冷却して、キシレン不溶性画分の結晶化を可能にする。溶液が冷却され、不溶性画分が溶液から沈殿すると、キシレン不溶部分(XI)からのキシレン可溶性部分(XS)の分離は、25ミクロン濾紙を通して濾過することによって達成される。100mLの濾液を予め秤量したアルミニウムパンに収集し、o-キシレンをこの100mLの濾液から窒素流下で蒸発させる。溶媒が蒸発したら、パン及び内容物を100℃の真空オーブンに30分間又は乾燥するまで入れる。次いで、パンを室温まで冷却し、秤量する。キシレン可溶性部分は、XS(重量%)=[(m3-m2)*2/m1]*100として計算され、式中、m1は使用される試料の元の重量であり、m2は空のアルミニウムパンの重量であり、m3はパン及び残留物の重量である(本明細書及び本開示の他の箇所のアスタリスク*は、識別された用語又は値が乗算されることを示す)。
【0021】
XSはまた、以下のようなViscotek法に従って測定することができる。0.4gのポリマーを、130℃で60分間撹拌しながら20mLのキシレンに溶解する。次いで、溶液を25℃に冷却し、60分後、不溶性ポリマー画分を濾別する。得られた濾液を、THF移動相を1.0mL/分で流すViscotek ViscoGEL H-100-3078カラムを使用するフローインジェクションポリマー分析によって分析する。カラムを、45℃で動作する光散乱の粘度計及び屈折計検出器を備えたViscotek Model 302 Triple Detector Arrayに結合する。機器較正を、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準で維持する。二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)グレードなどのポリプロピレン(PP)ホモポリマーを参照材料として使用して、Viscotek機器及び試料調製手順が一貫した結果を提供することを確実にする。参照ポリプロピレンホモポリマーの値は、最初に上記のASTM法を用いた試験から得られる。
【0022】
多分散指数(PDI)は、TA Instruments製の応力制御動的分光計であるAR-G2レオメーターによって、Zeichner G R,Patel P D (1981)”A comprehensive Study of Polypropylene Melt Rheology” Proc.of the 2nd World Congress of Chemical Eng.,Montreal,Canadaによる方法を使用して測定する。ETCオーブンを使用して温度を180℃±0.1℃に制御する。窒素を使用してオーブン内部をパージし、試料が酸素及び水分によって劣化しないようにする。一対の直径25mmのコーンとプレート試料ホルダーを使用する。試料を50mm×100mm×2mmの平板に圧縮成形する。次いで試料を19mm角に切断し、下部プレートの中央に載せる。上部コーンの幾何形状は、(1)コーン角度:5:42:20(度:分:秒);(2)直径:25mm;(3)切断ギャップ:149ミクロンである。下部プレートの形状は25mm円柱である。
試験手順:
(1)コーンプレート試料ホルダーをETCオーブン内で180℃にて2時間加熱する。次いで、窒素ガスブランケット下でギャップをゼロにする。
(2)コーンを2.5mmまで上昇させ、試料を下部プレートの上面に載せる。
(3)2分間の計時を開始する。
(4)垂直抗力を観測することにより、上部コーンを直ちに降下させて試料の上部で軽く静止させる。
(5)2分後、上部コーンを降下させることによって、試料を165ミクロンギャップまで押しつぶす。
(6)垂直抗力を観測する。垂直抗力が0.05ニュートン未満まで低下したら、過剰な試料をスパチュラによってコーンプレート試料ホルダーの縁から除去する。
(7)上部コーンを149ミクロンである切断ギャップまで再び降下させる。
(8)以下の条件で発振周波数掃引試験を行う。
・
○(i)180℃で5分間試験を遅延させる。
○(ii)周波数:628.3r/秒~0.1r/秒。
○(iii)データ取得速度:5点/ディケード。
○(iv)歪み:10%
(9)試験が完了したら、クロスオーバー弾性率(Gc)を、TA Instrumentsによって供給されたRheology Advantage Data Analysisプログラムによって検出する。
(10)PDI=100,000÷Gc(Pa単位)。
【0023】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)(「MWD」とも呼ばれる)及びより高い平均分子量(Mz及びMz+1)は、ポリプロピレンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析法に従って高温GPCによって測定される。ポリマーは、IR5 MCT(テルル化カドミウム水銀高感度、熱電冷却IR検出器)、Polymer Charの四細管粘度計、Wyattの8角MALLS、及び3つのAgilent Plgel Olexis(13um)を備えた、Polymer Char High Temperature GPCで分析する。オーブン温度を150℃に設定する。溶媒は、約200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する窒素パージされた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。流速は1.0mL/分であり、注入量は200μlであった。2mg/mLの試料濃度は、試料をN2パージ及び予熱したTCB(200ppmのBHTを含有)に、穏やかに撹拌しながら160℃で2時間溶解させることによって調製する。
【0024】
GPCカラムセットは、20種の狭い分子量分布のポリスチレン標準を実行することによって較正される。標準の分子量(MW)は266~12,000,000g/molの範囲であり、標準は6つの「カクテル」混合物に含有されていた。各標準混合物は、個々の分子量間に少なくとも1ディケードの分離を有する。ポリスチレン標準は、1,000,000g/mol以上の分子量については20mLの溶媒中0.005gで、1,000,000g/mol未満の分子量については20mLの溶媒中0.001gで調製される。ポリスチレン標準を撹拌しながら160℃で60分間溶解する。狭い標準混合物が最初に実行され、分解の影響を最小限に抑えるために、分子量が最も高い成分の順で実行する。対数分子量較正は、溶出体積の関数として4次多項式フィットを使用して生成される。同等のポリプロピレン分子量は、報告されているポリプロピレン(Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,and A.M.G.Brands,J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))及びポリスチレン(E.P.Otocka,R.J.Roe,N.Y.Hellman,P.M.Muglia,Macromolecules,4,507(1971))のMark-Houwink係数を使用して次の式を使用して計算され、
【数1】
式中、MppはPP相当のMWであり、MPSはPS相当のMWであり、logK、並びにPP及びPSのMark-Houwink係数の値を以下に列挙する。
【表1】
【0025】
「タクチシティ」という用語は、一般に、高分子又はポリマー中の隣接するキラル中心の相対立体化学を指す。例えば、プロピレン系ポリマーでは、2つのプロピレンモノマーなどの隣接するモノマーのキラリティは、同様の立体配置又は反対の立体配置のいずれかであり得る。「二連子」という用語は、2つの連続的なモノマーを表記するために使用され、3つの隣接するモノマーは、「三連子」と呼ばれる。隣接するモノマーのキラリティが同じ相対立体配置である場合、二連子は、アイソタクチックであるとみなされる。立体配置が反対である場合、シンジオタクチックと称される。立体配置的な関係について記載するための別の方法は、同じキラリティを有するモノマーの連続対をメソ(m)と称し、反対の立体配置のモノマーの連続対をラセミ(r)と称することである。
【0026】
一般に高分子、特にポリプロピレン又はポリプロピレンランダムコポリマーのタクチシティ又は立体化学は、三連子の濃度を参照することによって記載又は定量化することができる。典型的には省略記号「mm」で識別されるイソタクチック三連子は、同じ立体配置を有する2つの隣接するメソ二連子で構築され、そのため、三連子の立体規則性は、「mm」として識別される。3つのモノマー配列中の2つの隣接するモノマーが同じキラリティを有し、それが第3の単位の相対立体配置と異なる場合、この三連子は「mr」タクチシティを有する。「rr」三連子は、いずれかの隣接するものと反対の立体配置を有する中央モノマー単位を有する。ポリマー中の各タイプの三連子の画分を決定することができ、100で乗算すると、ポリマー中に見出されるそのタイプのパーセントを示す。mmのパーセントは、本明細書におけるポリマーを識別し、特徴付けるために使用される。
【0027】
ポリマー中のモノマーの配列分布は、13C-NMRによって決定することができ、これにより、隣接するプロピレン残基に関連してエチレン残基を位置特定することもできる。13C NMRは、エチレン含有量、三連子分布、及び三連子タクチシティを測定するために使用することができ、以下のように実行される。
【0028】
試料は、0.025MのCr(AcAc)3を含有するテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約2.7gをNorell 1001-7の10mmのNMR管内の試料0.20gに添加することによって調製される。加熱ブロックを使用して管及びその内容物を150℃に加熱することによって、試料は、溶解及び均質化される。各試料は、均質性を確実にするために目視検査される。
【0029】
データは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えたBruker 400MHz分光計を使用して収集する。データは、データファイルごとに512のトランジェント、6秒のパルス反復遅延、90度のフリップ角、及び120℃の試料温度での逆ゲート減結合を使用して取得される。全ての測定は、ロックモードで非スピン試料に対して行われる。試料を、データ取得の前に10分間熱平衡化させる。mmタクチシティのパーセント及びエチレンの重量%は、当該技術分野で一般的に使用される方法に従って計算し、これは、以下のように簡潔に要約される。
【0030】
共鳴の化学シフトの測定に関して、頭-尾結合からなり、同じ相対キラリティを有する5個の連続プロピレン単位の配列中の第3の単位のメチル基は、21.83ppmに設定される。上述の値を参照として使用することによって、他の炭素共鳴の化学シフトが決定される。メチル炭素領域(17.0~23ppm)に関するスペクトルは、第1の領域(21.1~21.9ppm)、第2の領域(20.4~21.0ppm)、第3の領域(19.5~20.4ppm)、及び第4の領域(17.0~17.5ppm)に分類することができる。スペクトル中の各ピークは、例えば、Polymer,T.Tsutsui et al.,Vol.30,Issue 7,(1989)1350-1356及び/又はMacromolecules,H.N.Cheng,17(1984)1950-1955(これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)における論文などの文献源を参照して帰属される。
【0031】
便宜上、エチレン含有量はまた、フーリエ変換赤外法(Fourier Transform Infrared method、FTIR)を使用して測定され、これは、最初の方法として、上記の13C NMRを使用して決定されたエチレン値に相関される。2つの方法を使用して実施された測定間の関係及び一致は、例えば、J.R.Paxson,J.C.Randall,「Quantitative Measurement of Ethylene Incorporation into Propylene Copolymers by Carbon-13 Nuclear Magnetic Resonance and Infrared Spectroscopy」,Analytical Chemistry,Vol.50,No.13,Nov.1978,1777-1780に記載されている。
【0032】
曲げ弾性率は、ASTM D790-10の方法Aに従って、ASTM 3641のタイプ1試験片を使用して1.3mm/分で決定され、ASTM D4101に従って成形される。
【0033】
IZOD衝撃強度は、ASTM D 256及びD4101に従って測定される。
【0034】
ヘイズは、ASTM試験D1003の手順Aに従って、最新バージョンの試験を使用して決定される。ヘイズは、試験プラーク上で、又はボトル、カップ、容器、若しくはフィルムなどの成形物品上で測定することができる。ヘイズはBYK Gardner Haze-Gard Plus 4725装置を用いて測定することができる。ヘイズ測定について試験される射出成形試験試料は、ノニトールが成核剤として存在するときには200~230Cの温度で、ソルビトールが成核剤として存在するときには250~260Cの温度で、又は不溶性の粒子状成核剤が存在するときには200~260Cの温度で射出成形することができる。
【0035】
融点又は溶融温度及び結晶化温度は、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)を使用して決定される。融点は、試験中に形成される一次ピークであり、典型的には、形成する二次ピークである。「結晶性」という用語は、結晶構造を形成する原子又は分子の配列の規則性を指す。ポリマー結晶性は、DSCを使用して調べることができる。Tmeは、溶融が終了する温度を意味し、Tmaxは、ピーク溶融温度を意味し、両方とも、最終加熱ステップからのデータを使用してDSC分析から当業者によって決定される。DSC分析のための1つの好適な方法は、TA Instruments,IncからのモデルQ1000(商標)DSCを使用する。DSCの較正は、以下の様態で実行される。最初に、アルミニウムDSCパン内で、いずれの試料もない状態でセルを-90℃から290℃まで加熱することによってベースラインを得る。次いで、7ミリグラムの新鮮なインジウム試料を、試料を180℃まで加熱し、試料を10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、続いて試料を140℃で1分間等温的に保ち、続いて試料を10℃/分の加熱速度で140℃から180℃まで加熱することによって分析する。インジウム試料の融解熱及び溶融の開始を決定し、溶融の開始については156.6℃から0.5℃以内であり、融解熱については28.71J/gから0.5J/g以内であることを確認する。次いで、脱イオン水を、DSCパン中の新鮮な試料の小滴を10℃/分の冷却速度で25℃から-30℃まで冷却することによって分析する。試料を-30℃で2分間等温的に保ち、10℃/分の加熱速度で30℃まで加熱する。溶融の開始を決定し、0℃から0.5℃以内であることを確認する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
当業者は、本考察が例示的な実施形態の説明のみであり、本開示のより広い態様を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【0037】
一般に、本開示は、ポリマー組成物に、及び高衝撃強度特性を有するポリマーを製造する方法に関する。ポリマー組成物は、優れた光学特性を有するように配合することもできる。本開示に従って製造されるポリオレフィンポリマーは、ランダムポリプロピレンコポリマー、例えばランダムプロピレン及びエチレンコポリマーであることができる。比較的高い分子量及び比較的低いメルトフローレートを有するランダムポリプロピレンコポリマーが最初に製造される。本開示によれば、ランダムポリプロピレンコポリマーは、次いで、メルトフローレートを上昇させるビスブレーキングステップに供される。得られたビスブロークンポリマーは、流動及び加工特性が改善されているだけでなく、耐衝撃性も劇的に改善されている。
【0038】
特に有利なことに、本開示のポリプロピレンポリマーは、単一反応器で製造することができる。得られたポリプロピレンポリマーは、単峰性である実質的に均質なポリマーであることができる。過去において、例えば、ポリプロピレンポリマーの耐衝撃性は、ゴム又はエラストマー相ポリマーと組み合わされたマトリックスポリマーを含有する異相ポリマーを製造することによって上昇した。ゴム相ポリマーは耐衝撃性が上昇したが、ゴム相ポリマーはポリマー組成物のヘイズ特性に悪影響も及ぼした。一方、本開示に従って製造されるポリプロピレンポリマーは単峰性ポリマーであるため、優れたヘイズ特性及び光学特性を有する。加えて、本開示の単峰性ポリプロピレンポリマーは、複数の反応器又は複数の配合ステップを必要とせずに、比較的効率的な方法で作製することができる。
【0039】
以下で詳細に説明するように、本開示のポリプロピレンポリマーは、フタレート不含有触媒を使用して製造することもできる。一態様では、例えば、ポリプロピレンポリマーは、触媒系における内部電子供与体として置換フェニレン芳香族ジエステルを使用して、チーグラー・ナッタ触媒処理することができる。
【0040】
高い耐衝撃強度及び良好な光学特性を有するポリプロピレンポリマーなどのポリオレフィンポリマーは、様々な異なる物品及び製品を製造するための様々な用途での使用によく適している。特に有利には、本開示のポリプロピレンポリマー組成物は、あらゆる異なるタイプの成形プロセスで使用することができる。例えば、ポリプロピレンポリマー組成物は、射出成形、ブロー成形、熱成形などを行うことができる。ポリプロピレンポリマー組成物を使用して、あらゆる様々なタイプの剛性及び半剛性物品を製造することができる。例えば、ポリプロピレンポリマー組成物は、あらゆる様々なタイプの容器、例えば貯蔵容器、ボトル、食品包装容器などを製造するのによく適している。一態様では、ポリマー組成物を使用して、任意の好適なサイズの押出ブロー成形ボトルを製造することができる。例えば、ポリマー組成物を使用して、洗濯洗剤などの消費者製品を収容するボトルを製造することができる。ボトルにハンドルを形成することができる。
【0041】
本開示のポリプロピレンポリマーを配合するために、比較的高い分子量及び比較的低いメルトフローレートを有するランダムポリプロピレンコポリマーが最初に製造される。特に有利なことに、ポリプロピレンコポリマーは、以下により詳細に記載するように、チーグラー・ナッタ触媒を使用して単一反応器中で製造することができる。一態様では、ポリマーを製造するために使用されるチーグラー・ナッタ触媒はフタレートを含まない。
【0042】
ランダムポリプロピレンコポリマーは主要モノマーとしてプロピレンを、少なくとも1つの他のアルファ-オレフィンコモノマーと組み合わせて含む。アルファ-オレフィンモノマーは、例えばエチレンであることができる。一態様では、ランダムポリプロピレンコポリマーは、約2.5重量%超の量、例えば約3重量%超の量、例えば約3.3重量%超の量、例えば約3.7重量%超の量のアルファ-オレフィンコモノマー単位を含む。ランダムポリプロピレンコポリマーは、約6重量%未満の量、例えば約5.7重量%未満の量、例えば約5.5重量%未満の量、例えば一般に約5.0重量%未満の量、例えば約4.8重量%未満の量、約4.6重量%未満の量でアルファ-オレフィンコモノマー単位を含む。
【0043】
ランダムポリプロピレンコポリマーの初期メルトフローレートは一般に、約2g/10分未満、例えば約1.5g/10分未満、例えば約1g/10分未満、例えば約0.8g/10分未満、例えば約0.5g/10分未満、例えば約0.4g/10分未満、例えば約0.3g/10分未満、例えば約0.2g/10分未満である。ランダムポリプロピレンコポリマーのメルトフローレートは一般に、約0.01g/10分超、例えば約0.08g/10分超、例えば約0.12g/10分超である。
【0044】
ランダムポリプロピレンコポリマーの分子量(Mw)は一般に、約350,000g/mol超、例えば約400,000g/mol超、例えば約450,000g/mol超、例えば約500,000g/mol超及び一般に約1,000,000g/mol未満、例えば約600,000g/mol未満であることができる。
【0045】
本開示によれば、比較的高い分子量及び比較的低いメルトフローレートのランダムポリプロピレンコポリマーが製造されると、ポリマーはビスブレーキングプロセスに供される。ビスブレーキング中、ポリプロピレンポリマーのより高いモル質量鎖は、より低いモル質量鎖との関連で切断される。ビスブレーキングは、ポリマーの平均分子量の全体的な減少及びメルトフローレートの上昇をもたらす。ビスブレーキングによって、より低い分子量分布又は多分散指数を有するポリマーを製造することができる。ポリマー内で起こるビスブレーキングの量は、クラッキング比を用いて定量化することができる。クラッキング比は、ポリマーの最終メルトフローレートをポリマーの初期メルトフローレートで割ることによって計算される。非常に高い分子量のポリプロピレンポリマー、特にランダムポリプロピレンコポリマーをビスブレーキングすると、ポリマーの光学特性に悪影響を及ぼすことなく、ポリマーの耐衝撃性を劇的に改善できることが発見された。
【0046】
ランダムポリプロピレンコポリマーは、ビスブレーキング剤として過酸化物を使用して、本開示によるビスブレーキングに供することができる。典型的な過酸化物ビスブレーキング剤は、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3(DYBP)、ジクミルペルオキシド(DCUP)、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド(DTBP)、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド(BCUP)及びビス(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン(DIPP)である。上記の過酸化物は、単独で又はブレンドで使用することができる。
【0047】
ランダムポリプロピレンコポリマーのビスブレーキングは、押出機での溶融加工中に行うことができる。例えば、ランダムポリプロピレンコポリマーを押出機を通じて供給することができ、ポリマーが溶融状態になったら、ビスブレーキング剤を押出機に添加することができる。又は、ビスブレーキング剤をポリプロピレンポリマーとプレブレンドすることができる。一態様では、例えば、ビスブレーキング剤を最初にポリプロピレンポリマーなどのポリマーと配合して、マスターバッチを形成することができる。次いで、ビスブレーキング剤を含有するマスターバッチをポリプロピレンポリマーとブレンドし、押出機を通じて供給することができる。一般に、任意の好適な押出機をビスブレーキング中に使用することができる。例えば、押出機は、単軸押出機、逆回転二軸押出機、同方向回転二軸押出機、遊星歯車押出機、リング押出機、又は任意の好適な混練装置であることができる。
【0048】
ランダムポリプロピレンコポリマーに添加されるビスブレーキング剤の量は、所望のクラッキング比を含む様々な要因に依存し得る。一般に、ビスブレーキング剤又は過酸化物は、約0.001重量%超、例えば約0.005重量%超、例えば約0.01重量%超、例えば約0.015重量%超、例えば約0.02重量%超、例えば約0.04重量%超、例えば約0.1重量%超、例えば約0.2重量%超の量でランダムポリプロピレンコポリマーに添加することができる。一般に、ビスブレーキング剤は、約1重量%未満、例えば約0.5重量%未満、例えば約0.3重量%未満の量でポリプロピレンポリマーに添加される。
【0049】
ビスブレーキング後、ランダムポリプロピレンコポリマーは、より高いメルトフローレートを有し、より狭い分子量分布又は多分散指数を有することもできる。一般に、ポリプロピレンポリマーは、約3超、例えば約3.5超、例えば約5超、例えば約8超、例えば約10超、一般に約20未満、例えば約15未満、例えば約12未満のクラッキング比を有するようにビスブレーキングに供することができる。ビスブロークンポリマーのメルトフローレートは、一般に約0.5g/10分超、例えば約0.8g/10分超、例えば約1.2g/10分超、例えば約1.5g/10分超、例えば約1.8g/10分超である。ビスブロークンポリマーのメルトフローレートは、一般に約10g/10分未満、例えば約7g/10分未満、例えば約5g/10分未満、例えば約3g/10分未満、例えば約2.5g/10分未満である。
【0050】
ビスブロークンランダムポリプロピレンコポリマーの多分散指数は、一般に約2.5超、例えば約3超、一般に約4未満である。
【0051】
ビスブロークンランダムポリプロピレンコポリマーは、一般に低分子量成分を有する。例えば、ビスブロークンポリマーは、約5%超、例えば約6%超、例えば約7%超、例えば約8%超、例えば約9%超、例えば約10%超のキシレン可溶分含有量を有することができる。ビスブロークンポリマーのキシレン可溶分含有量は、一般に約20重量%未満、例えば約15重量%未満、例えば約13重量%未満、例えば約12重量%未満である。
【0052】
高分子量ランダムポリプロピレンコポリマーのビスブレーキングは、耐衝撃性を劇的に改善できることが発見された。例えば、ポリマーのアイゾット耐衝撃性は、約20%超、例えば約30%超、例えば約40%超、例えば更に約50%超増加することができる。ビスブロークンポリマーは、例えば23℃で約400J/m超、例えば約450J/m超、例えば約480J/m超、例えば約500J/m超、例えば約520J/m超、例えば約550J/m超、例えば約570J/m超、例えば更に約600J/m超のアイゾット耐衝撃性を有することができる。耐衝撃性は、一般に約1100J/m未満である。
【0053】
優れた耐衝撃性に加えて、本開示のポリプロピレンポリマーは、特に成核剤と合わせた場合に、優れた光学特性も有する。例えば、ポリプロピレンポリマーを含有するポリマー組成物は、約15%未満、例えば約14%未満、例えば約12%未満、例えば約11%未満の1mmでのヘイズを示すことができる。ポリマーは、一般に約20%未満、例えば約18%未満、例えば約17%未満の1.6mmでのヘイズを示すことができる。3mmの厚さで試験した場合、ポリマー組成物は、約43%未満、例えば約42%未満のヘイズを示すことができる。上記ヘイズ特性は、射出成形物品で測定することができる。
【0054】
上記のように、ポリプロピレンポリマーはチーグラー・ナッタ触媒処理される。触媒は、特定の用途に応じて変化し得る固体触媒成分を含むことができる。
【0055】
固体触媒成分は、(i)マグネシウム、(ii)周期表IV~VIII族の元素の遷移金属化合物、(iii)ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、並びに/又は(i)及び/若しくは(ii)のアルコキシド、並びに(iv)(i)、(ii)、及び(iii)の組み合わせを含み得る。好適な触媒成分の非限定的な例としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及びマグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、及びそれらの組み合わせのアルコキシドが挙げられる。
【0056】
一実施形態では、触媒成分の調製は、混合マグネシウム及びチタンアルコキシドのハロゲン化を含む。
【0057】
様々な実施形態では、触媒成分は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(MagTi)、又は安息香酸含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)である。一実施形態では、触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水塩化マグネシウム及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシド又はアリールオキシドが挙げられる。一実施形態では、MagMo前駆体は、マグネシウムジ(C1~4)アルコキシドである。更なる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0058】
別の実施形態では、触媒成分は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgdTi(ORe)fXgを有し、式中、Reは、1~14個の炭素原子又はCOR′を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、又はR’が、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、各ORe基は、同じであるか、又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116、又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。前駆体は、その調製に使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈殿によって調製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特にクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタン又は三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去すると固体の前駆体が沈殿し、これは特に望ましい形状及び表面積を有する。更に、得られた前駆体は、粒子サイズが特に均一である。
【0059】
別の実施形態では、触媒前駆体は、安息香酸含有塩化マグネシウム材料(「BenMag」)である。本明細書で使用される場合、「安息香酸含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸内部電子供与体を含有する触媒(すなわち、ハロゲン化触媒成分)であり得る。BenMag材料は、ハロゲン化チタンなどのチタン部分も含み得る。安息香酸内部供与体は不安定であり、触媒及び/又は触媒合成中に他の電子供与体によって置き換えられることができる。好適な安息香酸基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸メチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-クロロベンゾエートが挙げられる。一実施形態では、ベンゾエート基はエチルベンゾエートである。一実施形態では、BenMag触媒成分は、安息香酸化合物の存在下で、任意の触媒成分(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であり得る。
【0060】
別の実施形態では、固体触媒成分は、マグネシウム部分、チタン部分、エポキシ化合物、有機ケイ素化合物、及び内部電子供与体から形成することができる。一実施形態では、有機リン化合物を固体触媒成分に組み込むこともできる。例えば、一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び炭化水素溶媒を含む混合物中に溶解することができる。得られた溶液を、有機ケイ素化合物の存在下でチタン化合物で処理し、任意選択的に内部電子供与体で処理して、固体沈殿物を形成することができる。次いで、固体沈殿物を更なる量のチタン化合物で処理することができる。触媒を形成するために使用されるチタン化合物は、以下の化学式を有することができる:
Ti(OR)gX4-g
式中、各Rは、独立して、C1~C4アルキルであり、Xは、Br、Cl、又はIであり、gは、0、1、2、3、又は4である。
【0061】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素は、モノマー化合物又はポリマー化合物である。有機ケイ素化合物は、-Si-O-Si-基を1分子中又は他の分子間に含んでいてもよい。有機ケイ素化合物の他の例示的な例としては、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシランが挙げられる。そのような化合物は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。有機ケイ素化合物は、アルミニウムアルコキシド及び内部電子供与体と組み合わせて使用することができる。
【0062】
上記で言及したアルミニウムアルコキシドは、式Al(OR’)3を有するものであってもよく、式中、各R’は、個々に、20個までの炭素原子を有する炭化水素である。これは、各R’が個々にメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチルなどである場合を含み得る。
【0063】
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物の例としては、例えば、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びフッ化マグネシウムが挙げられる。一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は塩化マグネシウムである。
【0064】
エポキシ化合物の例としては、以下の式のグリシジル含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【化1】
【0065】
式中、「a」は1、2、3、4、又は5であり、XはF、Cl、Br、I、又はメチルであり、Raは、H、アルキル、アリール、又はシクリルである。一実施形態では、アルキルエポキシドはエピクロロヒドリンである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、ハロアルキルエポキシド又は非ハロアルキルエポキシドである。
【0066】
有機リン化合物としては、例えば、トリアルキルリン酸エステル等のリン酸エステルを用いることができる。そのような化合物は、次式で表すことができる:
【化2】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、メチル、エチル及び直鎖又は分岐鎖(C
3~C
10)アルキル基からなる群から選択される。一実施形態では、トリアルキルリン酸エステルは、トリブチルリン酸エステルである。
【0067】
更に別の実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成されてもよい。このプロセスでは、MgCl2-nROH溶融物(nが1~6である)は、20~80oCの温度で容器の上部に不活性ガスを導入しながら容器内に噴霧される。溶融液滴を、-50~20oCの温度で不活性ガスが導入される結晶化領域に移し、溶融液滴を、球形の非凝集固体粒子に結晶化する。球状のMgCl2粒子は、次いで、所望のサイズに分類される。望ましくないサイズの粒子は、リサイクルすることができる。触媒合成のための好ましい実施形態では、球状のMgCl2前駆体は、約15~150マイクロメートル、好ましくは20~100マイクロメートル、最も好ましくは35~85マイクロメートルの間の平均粒径(Malvern d50)である。
【0068】
触媒成分は、ハロゲン化によって固体触媒に変換することができる。ハロゲン化は、内部電子供与体の存在下で触媒成分をハロゲン化剤と接触させることを含む。ハロゲン化は、触媒成分中に存在するマグネシウム部分を、チタン部分(チタンハロゲン化物など)が堆積されているハロゲン化マグネシウム担体へと変換する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ハロゲン化中、内部電子供与体は、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム及びチタン部分の、それぞれのハロゲン化物への変換を促進し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の微結晶サイズを調節すると考えられる。したがって、内部電子供与体の提供は、立体選択性が向上した触媒組成物をもたらす。
【0069】
一実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORe)fXhを有するハロゲン化チタンであり、式中、Re及びXが、上記のように定義され、fは、0~3の整数であり、hは、1~4の整数であり、f+hは、4である。一実施形態では、ハロゲン化剤は、TiCl4である。更なる実施形態では、ハロゲン化は、塩素化又は非塩素化芳香族液体、例えばジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンの存在下で行われる。更に別の実施形態では、ハロゲン化は、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物であって、40~60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiCl4を含む混合物の使用によって行われる。
【0070】
反応混合物は、ハロゲン化中に加熱することができる。触媒成分及びハロゲン化剤は、約10℃未満、例えば約0℃未満、例えば約-10℃未満、例えば約-20℃未満、例えば約-30℃未満の温度で最初に接触される。初期温度は、一般に、約-50℃より高く、例えば約-40℃より高い。次いで、混合物は、0.1~10.0℃./分の速度で、又は1.0~5.0℃/分の速度で加熱される。内部電子供与体は、ハロゲン化剤と触媒成分との間の最初の接触期間の後に、後で添加され得る。ハロゲン化の温度は、20℃.~150℃.(又はそれらの間の任意の値若しくは部分範囲)、あるいは0℃.~120℃である。ハロゲン化は、内部電子供与体が実質的に存在しない状態で5~60分、又は10~50分の期間にわたって継続され得る。
【0071】
触媒成分、ハロゲン化剤、及び内部電子供与体の接触の仕方は変化し得る。一実施形態では、触媒成分は、最初に、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族化合物を含有する混合物と接触される。得られた混合物を撹拌し、必要に応じて加熱することができる。次に、前駆体を単離又は回収することなく、内部電子供与体を同じ反応混合物に添加する。前述のプロセスは、自動プロセス制御によって制御される様々な成分を添加して、単一の反応器内で行われ得る。
【0072】
一実施形態では、触媒成分は、ハロゲン化剤と反応する前に内部電子供与体と接触される。
【0073】
触媒成分と内部電子供与体との接触時間は、少なくとも-30℃、又は少なくとも-20℃、又は少なくとも10℃から最大150℃.、最大120℃.、又は最大115℃.、又は最大110℃の温度で、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも1時間である。
【0074】
一実施形態では、触媒成分、内部電子供与体、及びハロゲン化剤は、同時に又は実質的に同時に添加される。
【0075】
ハロゲン化手順は、必要に応じて1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返すことができる。一実施形態では、得られた固体材料は、反応混合物から回収され、少なくとも約10分間、又は少なくとも約15分間、又は少なくとも約20分間、及び最大約10時間、又は最大約45分、又は最大約30分で、少なくとも約-20℃.又は少なくとも約0℃.、又は少なくとも約10℃.から最大約150℃.、又は最大約120℃.、又は最大約115℃の温度で塩素化芳香族化合物中のハロゲン化剤の混合物と同じ(又は異なる)内部電子供与体成分が存在しない状態(又は存在下)で1回以上接触される。
【0076】
前述のハロゲン化手順の後、得られた固体触媒組成物は、例えば、湿性フィルタケーキを生成するため、濾過により最終プロセスで用いられる反応媒体から分離される。次いで、湿性フィルタケーキをすすぎ液体希釈剤で洗浄して未反応のTiCl4を除去することができ、必要に応じて、残留液体を除去するために乾燥させてもよい。典型的には、得られた固体触媒組成物は、イソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、又はオクタンなどの脂肪族炭化水素などの液体炭化水素である「洗浄液体」で1回以上洗浄される。次いで、固体触媒組成物は、分離及び乾燥され、又は炭化水素、特に更なる貯蔵若しくは使用のために鉱油などの比較的重質の炭化水素中でスラリー化され得る。
【0077】
一実施形態では、得られる固体触媒組成物は、総固形分重量に基づいて約1.0重量パーセント~約6.0重量パーセント、又は約1.5重量パーセント~約4.5重量パーセント、又は約2.0重量パーセント~約3.5重量パーセントのチタン含有量を有する。固体触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比は、好適には約1:3~約1:160、又は約1:4~約1:50、又は約1:6~1:30である。一実施形態では、内部電子供与体は、約0.005:1~約1:1、又は約0.01:1~約0.4:1の内部電子供与体対マグネシウムのモル比で触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントは、触媒組成物の総重量に基づく。
【0078】
触媒組成物は、固体触媒組成物の単離の前又は後に、以下の手順の1つ以上によって更に処理されてもよい。所望であれば、固体触媒組成物を更なる量のハロゲン化チタン化合物と接触(ハロゲン化)させてもよい。これは、メタセシス条件下で、フタロイルジクロリド又はベンゾイルクロリドなどの酸塩化物と交換されてもよいし、水洗又は洗浄、熱処理してもよいし、又はエージングしてもよい。前述の更なる手順は、任意の順序で組み合わせられてもよく、別々に使用されてもよく、又は全く使用されなくてもよい。
【0079】
上記のように、触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体の組み合わせを含み得る。触媒組成物は、触媒成分及び内部電子供与体を内部電子供与体が組み込まれたマグネシウム部分とチタン部分との組み合わせに変換する前述のハロゲン化手順によって、生成される。触媒組成物が形成される触媒成分は、マグネシウム部分前駆体、混合マグネシウム/チタン前駆体、ベンゾエート含有塩化マグネシウム前駆体、マグネシウム、チタン、エポキシ、及びリン前駆体、又は球状前駆体を含む、上述の触媒前駆体のいずれかであり得る。
【0080】
様々な異なる種類の内部電子供与体が固体触媒成分に組み込まれてもよい。一態様では、内部電子供与体はフタレートを含まない。実際、ポリマーを製造するために使用される全ての触媒成分は、フタレートを含まないことができる。一実施形態では、内部電子供与体は、フェニレン置換ジエステルなどのアリールジエステルである。一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有し得る:
【化3】
【0081】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、各々1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は、分岐鎖若しくは直鎖構造を有するか又は7~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E1及びE2は、同じであっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、1~20個の炭素原子を有するアリール、1~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択的にヘテロ原子を含んでいてもよい不活性官能基からなる群から選択され、X1及びX2は、各々O、S、アルキル基、又はNR5であり、R5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐状若しくは非分岐状、飽和若しくは不飽和の、環式、多環式、縮合、又は非環式種、並びにそれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI、及びVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基を含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子により置換されたヒドロカルビル基である。ケイ素原子は、炭素鎖中にあってもよく、又はなくてもよい。
【0084】
一態様では、置換フェニレンジエステルは以下の構造(I)を有する:
【化4】
【0085】
一実施形態では、構造(I)は、イソプロピル基であるR1及びR3を含む。R2、R4、及びR5~R14の各々は、水素である。
【0086】
一実施形態では、構造(I)は、R1、R5、及びR10の各々をメチル基として含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R6~R9、及びR11~R14の各々は、水素である。
【0087】
一実施形態では、構造(I)は、R1、R7、及びR12の各々をメチル基として含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0088】
一実施形態では、構造(I)は、R1をメチル基として含み、R3は、t-ブチル基である。R7及びR12の各々は、エチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0089】
一実施形態では、構造(I)は、R1、R5、R7、R9、R10、R12、及びR14の各々をメチル基として含み、R3は、t-ブチル基である。R2、R4、R6、R8、R11、及びR13の各々は、水素である。
【0090】
一実施形態では、構造(I)は、R1をメチル基として含み、R3は、t-ブチル基である。R5、R7、R9、R10、R12、及びR14の各々は、i-プロピル基である。R2、R4、R6、R8、R11、及びR13の各々は、水素である。
【0091】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,536,372号に詳細に記載されているR1~R14の各々の代替物を含む、構造(II)~(V)からなる群から選択される構造を有する。
【0092】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12のそれぞれはエトキシ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0093】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、フッ素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0094】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0095】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、臭素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0096】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、ヨウ素原子である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0097】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R6、R7、R11、及びR12の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R8、R9、R10、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0098】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R6、R8、R11、及びR13の各々は、塩素原子である。R2、R4、R5、R7、R9、R10、R12、及びR14の各々は、水素である。
【0099】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R2、R4、及びR5~R14の各々は、フッ素原子である。
【0100】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、トリフルオロメチル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0101】
一態様では、構造(I)は、メチル基などのC1~C4アルキル基としてR1及びR4を含む。R2又はR3の一方はヘテオゲンであり、他方はシクロアルキル基である。例えば、R2又はR3は、シクロペンチル基、シクロヘキサル基、又はシクロオクチル基であることができる。その一方では、R5~R14は水素であることができる。
【0102】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、エトキシカルボニル基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0103】
一実施形態では、R1はメチル基であり、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、エトキシ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0104】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3はt-ブチル基である。R7及びR12の各々は、ジエチルアミノ基である。R2、R4、R5、R6、R8、R9、R10、R11、R13、及びR14の各々は、水素である。
【0105】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含み、R3は2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基である。R2、R4、及びR5~R14の各々は、水素である。
【0106】
一実施形態では、構造(I)は、R1及びR3を含み、これらの各々は、sec-ブチル基である。R2、R4、及びR5~R14の各々は、水素である。
【0107】
一実施形態では、構造(I)は、各々メチル基であるR1及びR4を含む。R2、R3、R5~R9、及びR10~R14の各々は、水素である。
【0108】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるR1を含む。R4は、i-プロピル基である。R2、R3、R5~R9、及びR10~R14の各々は、水素である。
【0109】
一実施形態では、構造(I)は、R1、R3、及びR4を含み、これらの各々は、i-プロピル基である。R2、R5~R9、及びR10~R14の各々は、水素である。
【0110】
上記の固体触媒成分に加えて、本開示の触媒系はまた、共触媒を含むことができる。共触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウムの水素化物、アルキル、又はアリール、及びそれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、助触媒は、式R3Alで表されるヒドロカルビルアルミニウム助触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビルラジカルであり、2つ又は3つのRラジカルは、環式ラジカルに接合され、ヘテロ環式構造を形成することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビルラジカルである各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキルラジカルは、直鎖又は分岐鎖であり得、そのようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであり得、すなわち、ラジカルは、アルキル、アリール、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシルである。
【0111】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、次のとおりである:トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジ-n-ヘキシルアルミニウム、二水素化イソブチルアルミニウム、二水素化n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウム。一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、及び水素化ジ-n-ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0112】
一実施形態では、共触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1である。別の実施形態では、アルミニウム対チタンのモル比は、約45:1である。
【0113】
例えば、好適な触媒組成物としては、固体触媒成分、共触媒、及び2つ以上の異なる成分の混合外部電子供与体(mixed external electron donor、M-EED)であり得る外部電子供与体を挙げることができる。好適な外部電子供与体又は「外部供与体」としては、1つ以上の活性制限剤(ALA)及び/又は1つ以上の選択性制御剤(SCA)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「外部供与体」は、触媒性能を改変するプロ触媒形成とは関係なく添加される成分、又は成分の混合物を含む組成物である。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」は、触媒の存在下で重合温度が閾値温度(例えば、約95℃超の温度)を上回って上昇するにつれて触媒活性を低下させる組成物である。「選択性制御剤」は、ポリマーのタクチシティを改善する組成物であり、改善されたタクチシティは、一般に、増加したタクチシティ若しくは減少したキシレン可溶分、又はこれらの両方を意味すると理解される。上記定義は相互に排他的ではなく、単一の化合物が、例えば、活性制限剤及び選択性制御剤の両方として分類され得ることが理解されるべきである。
【0114】
本開示に従った選択性制御剤は、一般に有機ケイ素化合物である。例えば、一態様では、選択性制御剤はアルコキシシランであり得る。
【0115】
一実施形態では、アルコキシシランは、一般式:SiRm(OR’)4-m(I)を有し得、式中、Rは、独立して、出現ごとに、水素、あるいは任意選択的に1つ以上の14、15、16、若しくは17族のヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基により置換されたヒドロカルビル又はアミノ基であり、当該R’は、水素及びハロゲンを除く最大20個の原子を含有し、R’は、C1~4アルキル基であり、mは、0、1、2、又は3である。一実施形態では、RはC6-12アリール、アルキル又はアラルキル、C3-12シクロアルキル、C3-12分岐アルキル、又はC3-12環式又は非環式アミノ基であり、R’はC1-4アルキル、及びmは、1又は2である。一実施形態では、例えば、第2の選択性制御剤はn-プロピルトリエトキシシランを含むことができる。使用可能な他の選択性制御剤としては、プロピルトリエトキシシラン又はジイソブチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0116】
一実施形態では、触媒系は、活性制限剤(ALA)を含むことができる。ALAは、重合反応器の不具合を抑制又はそうでなければ防止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇するにつれて増加する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点温度近くで高い活性を維持する。発熱重合反応によって発生した熱は、凝集物を形成するポリマー粒子を生じさせる可能性があり、最終的にポリマー生成プロセスの継続を中断することにつながる場合がある。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それによって、反応器の不具合を防止し、粒子の凝集を低減(又は防止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0117】
活性制限剤はカルボン酸エステルであってもよい。脂肪族カルボン酸エステルは、C4~C30脂肪族酸エステルであり得、モノ又はポリ(2つ以上)のエステルであり得、直鎖又は分岐状であり得、飽和又は不飽和であり得、及びそれらの任意の組み合わせであり得る。C4~C30脂肪族酸エステルはまた、1つ以上の14、15、又は16族のヘテロ原子を含有する置換基により置換され得る。好適なC4~C30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4~30モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C4~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アリルモノ及びジエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルエステル、並びにC2~100(ポリ)グリコール又はC2~100(ポリ)グリコールエーテルのC4~20モノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。更なる実施形態では、C4~C30脂肪族酸エステルは、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、セバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジオレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2~40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ-エステル、及びそれらの混合物であり得る。更なる実施形態では、C4~C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステート又はジ-n-ブチルセバケートである。
【0118】
一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、別々に反応器内に添加され得る。別の実施形態では、選択性制御剤及び活性制限剤は、事前に一緒に混合され、次いで混合物として反応器内に添加され得る。更に、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、異なる方法で反応器に添加され得る。例えば、一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、流動床反応器などの反応器に直接添加され得る。あるいは、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、例えばサイクルループを通して供給することによって、反応器容積に間接的に添加され得る。選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、反応器に供給される前にサイクルループ内で触媒粒子と結合され得る。
【0119】
上記のような本開示の触媒系は、オレフィン系ポリマーを製造するために使用することができる。本プロセスは、重合条件下でオレフィンを触媒系と接触させることを含む。
【0120】
1つ以上のオレフィンモノマーを重合反応器内に導入して、触媒系と反応させ、ポリマー、例えばポリマー粒子の流動床を形成することができる。第一級オレフィンモノマーは、例えば、プロピレンであることができ、エチレンなどの1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマーと組み合わせることができる。流動床反応器、撹拌ガス反応器、移動充填床反応器、マルチゾーン反応器、バルク相反応器、スラリー反応器又はそれらの組み合わせを含む任意の好適な反応器を使用することができる。好適な市販の反応器としては、UNIPOL反応器、SPHERIPOL、SPHERIZONE反応器などが挙げられる。一実施形態では、ポリマーは単一反応器内で製造される。
【0121】
本明細書で使用される場合、「重合条件」とは、触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに好適な重合反応器内の温度及び圧力パラメータである。重合プロセスは、1つ、又は2つ以上の反応器内で操作する、気相、スラリー、又はバルク重合プロセスであり得る。
【0122】
一実施形態では、重合は、気相重合によって生じる。本明細書で使用される場合、「気相重合」は、流動媒体によって流動化状態に維持されたポリマー粒子の流動床を介した触媒の存在下で、上昇流動媒体、1つ以上のモノマーを含有する流動媒体の通過である。「流動化」、「流動化された」又は「流動化する」とは、微細ポリマー粒子の床がガスの上昇流によって持ち上げられ、かき混ぜられるガス-固体接触プロセスである。流動化は、粒子の床の細隙を通る流体の上向きの流れが、粒子状物質の重量を上回る圧力差及び摩擦抵抗の増大を獲得した場合に粒子状物質の床で生じる。したがって、「流動床」とは、流動媒体の流れによって流動化された状態で懸濁された複数のポリマー粒子である。「流動媒体」とは、1つ以上のオレフィンガス、任意選択的に、キャリアガス(例えば、H2又はN2)、及び任意選択的に気相反応器を通って上昇する液体(例えば、炭化水素)である。
【0123】
典型的な気相重合反応器(又は気相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動床、分配板、入口及び出口配管、圧縮機、循環ガス冷却器又は熱交換器、並びに生成物排出システムを含む。容器は、反応ゾーン及び速度低下ゾーンを含み、これらのそれぞれは分配板上に位置する。床は、反応ゾーンに位置する。一実施形態では、流動媒体は、プロピレンガスと、オレフィンなどの少なくとも1つの他のガス及び/又は水素若しくは窒素などのキャリアガスと、を含む。
【0124】
一実施形態では、接触は、触媒組成物を重合反応器に供給し、オレフィンを重合反応器に導入することによって生じる。一実施形態では、共触媒は、触媒組成物を重合反応器に導入する前に、触媒組成物と混合(予め混合)することができる。別の実施形態では、共触媒は、触媒組成物とは独立して重合反応器に添加される。共触媒の重合反応器への独立した導入は、触媒組成物供給物と同時に、又は実質的に同時に起こり得る。
【0125】
一実施形態では、重合プロセスは、前活性化工程を含み得る。活性化前には、触媒組成物を共触媒及び選択性制御剤及び/又は活性制限剤と接触させることを含む。続いて、得られた予備活性化触媒流を重合反応ゾーン内に導入し、重合させるオレフィンモノマーと接触させる。任意選択的に、追加の量の選択性制御剤及び/又は活性制限剤を添加してもよい。
【0126】
本プロセスは、選択性制御剤(及び任意選択的には活性制限剤)を触媒組成物と混合することを含み得る。選択性制御剤は、共触媒と錯体を形成し、触媒組成物とオレフィンとの間の接触前に触媒組成物と混合(予混合)することができる。別の実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、重合反応器に独立して添加され得る。一実施形態では、選択性制御剤及び/又は活性制限剤は、サイクルループを介して反応器に供給することができる。
【0127】
本開示に従って作製されたポリプロピレンポリマーを、成形物品を製造するための様々なポリマー組成物に組み込むことができる。ポリマー組成物は、例えば、一般に約70重量%超の量、例えば約80重量%超の量、例えば約90重量%超の量、例えば約95重量%超の量の高耐衝撃性の単峰性ランダムポリプロピレンコポリマーを含有することができる。ランダムポリプロピレンコポリマーに加えて、ポリマー組成物は、様々な添加剤及び成分を含有することができる。例えば、ポリマー組成物は、1つ以上の酸化防止剤を含有することができる。例えば、一態様では、ポリマー組成物は、立体障害フェノール系酸化防止剤及び/又はホスファイト酸化防止剤を含有することができる。ポリマー組成物は、ステアリン酸カルシウムなどの酸捕捉剤も含有することができる。更に、ポリマー組成物は、着色剤、UV安定剤などを含有することができる。上記添加剤の各々は、一般に約0.015重量%~約2重量%の量でポリマー組成物中に存在することができる。
【0128】
本開示のポリマー組成物は、任意の好適な成形プロセスを使用して、様々な異なる物品及び製品に成形することができる。例えば、ポリマー組成物は、射出成形することができ、押出ブロー成形プロセスにおいて使用することができ、又は熱成形プロセスにおいて使用することができる。
【0129】
一実施形態では、コポリマー組成物は、成核剤を更に含有することができる。成核剤は、組成物の透明性特性を更に改善するために添加することができる。一態様では、成核剤は、組成物内にゲル化ネットワークを生成することができる化合物を含むことができる清澄剤であり得る。
【0130】
一実施形態では、成核剤は、ソルビトールアセタール誘導体などのソルビトール化合物を含み得る。一実施形態では、例えば、成核剤は、ジベンジルソルビトールを含み得る。
【0131】
いくつかの実施形態において添加剤として使用することができるソルビトールアセタール誘導体に関して、ソルビトールアセタール誘導体を式(I)に示し、
【化5】
式中、R1~R5は、水素及びC1~C3アルキルから選択される同じ又は異なる部分を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、R1~R5は水素であり、そのため、ソルビトールアセタール誘導体は2,4-ジベンジリデンソルビトール(「DBS」)である。いくつかの実施形態では、R1、R4、及びR5は水素であり、R2及びR3はメチル基であり、そのため、ソルビトールアセタール誘導体は1,3:2,4-ジ-p-メチルジベンジリデン-D-ソルビトール(「MDBS」)である。いくつかの実施形態では、R1~R4はメチル基であり、R5は水素であり、そのため、ソルビトールアセタール誘導体は1,3:2,4-ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール(「DMDBS」)である。いくつかの実施形態では、R2、R3、及びR5はプロピル基(-CH2-CH2-CH3)であり、R1及びR4は水素であり、そのため、ソルビトールアセタール誘導体は1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-(4-プロピルフェニルメチレン)ノニトール(「TBPMN」)である。
【0133】
使用され得る成核剤の他の実施形態としては、
1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール、
1,3:2,4-ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、
ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、
ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、及び
ビス(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフチリデン)ソルビトールが挙げられる。
【0134】
一実施形態では、成核剤はまた、ベンゼントリスアミドなどのビスアミドを含み得る。上述の成核剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0135】
成核剤は、リン酸エステル、ジカルボキシレート金属塩、又はそれらの混合物も含むことができる。一態様では、成核剤は、ヘキサヒドロフタル酸の金属塩、例えばヘキサヒドロフタル酸カルシウムとすることができる。別の態様では、成核剤は、二環式ジカルボキシレート金属塩とすることができる。例えば、成核剤は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウムとすることができる。
【0136】
使用され得る他の成核剤としては、旭電化工業から市販されているADK NA-11 (メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩)及びADK NA-21(アルミニウムヒドロキシビス[2,4,8,10テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12 H-ジベンゾ-[d,g] ジオキサ-ホスホシン-6-オキシド]を含む)が挙げられる。Milliken&Companyから入手可能なMillad NX8000(ノニトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン)]、Millad 3988(3,4-ジメチルベンジリデンソルビトール)、Millad 3905及びMillad 3940は、同様に利用することができる清澄剤/成核剤の他の例である。
【0137】
組成物に使用することができるさらなる市販のアルファ成核剤は、例えば、Ciba Specialty Chemicals製のIrgaclear XT 386(N-[3,5-ビス-(2,2-ジメチル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-2,2-ジメチルプロピオンアミド)、Milliken&Company製のHyperform HPN-68L及びHyperform HPN-20Eである。
【0138】
1つ以上の成核剤は、ポリマー組成物中に、約100ppm超の量、例えば約300ppm超の量、例えば約1000ppm超の量、例えば約2000ppm超の量、及び一般に約20,000ppm未満、例えば約10,000ppm未満、例えば約4000ppm未満の量で存在することができる。
【0139】
1つ以上の成核剤が清澄剤であるとき、清澄剤は、約1,500ppm超の量、例えば約1,800ppm超の量、例えば約2,000ppm超の量、例えば約2,200ppm超の量で添加され得る。1つ以上の清澄剤は、一般に約20,000ppm未満、例えば約15,000ppm未満、例えば約10,000ppm未満、例えば約8,000ppm未満、例えば約5,000ppm未満の量で存在する。
【0140】
上記のように、本開示に従って製造されたポリマー組成物は、多くの利点及び利益を提供する。改善された耐衝撃強度を有するランダムポリプロピレンコポリマーは、例えば、単一反応器を使用して形成することができる。得られたポリプロピレンコポリマーは、単峰性であるポリマーであることができる。したがって、ポリプロピレンポリマーは、作製及び製造するのに効率的であるだけでなく、低いヘイズなどの優れた光学特性を本質的に有する。
【0141】
本開示は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
【0142】
実施例
様々な異なるランダムポリプロピレンコポリマーを作製し、物性について試験した。より具体的には、ランダムプロピレン及びブテンコポリマー並びにランダムプロピレン及びエチレンコポリマーを製造し、本開示に従って製造されたランダムプロピレン及びエチレンコポリマーと比較した。全てのランダムポリプロピレンコポリマーは、置換フェニレン芳香族ジエステルを内部電子供与体として含むフタレート不含有触媒系を用いて気相反応器中で製造した。使用した触媒系は、W.R.Grace&Companyから市販されているCONSISTA触媒であった。全てのコポリマーを、外部電子供与体及び共触媒としてトリエチルアルミニウムを使用して作製した。
【0143】
以下の表の試料番号6、7及び8は、本開示に従って作製した。試料番号6、7及び8を、押出機内でランダムコポリマーを過酸化物ビスブレーキング剤と接触させるビスブレーキングプロセスに付した。使用したビスブレーキング剤は、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンであった。
【0144】
各ランダムポリプロピレンコポリマーを、Millikenから市販されている2500ppmのNX8000E又は2000ppmのNX8000成核剤を含む添加剤パッケージと合わせた。
【0145】
次いで、ポリマー組成物を種々の特性について試験した。以下の結果を得た。
【表2】
【0146】
上に示したように、本開示に従って作製したビスブロークンポリプロピレンポリマーは、劇的に改善されたアイゾット耐衝撃強度を有していた。試料番号6、7及び8はまた、光学特性の改善を示した。
【0147】
本発明に対するこれら及び他の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲により具体的に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全部又は一部において相互に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者は、前述の説明が単なる例示によるものであり、そのような添付の特許請求の範囲に更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【国際調査報告】