(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】サーマサット太陽熱推進システム
(51)【国際特許分類】
F03H 99/00 20090101AFI20231018BHJP
【FI】
F03H99/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520254
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 US2021052875
(87)【国際公開番号】W WO2022103509
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523118107
【氏名又は名称】サーマサット インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハウ トロイ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハウ スティーブン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ジャック アール.
(57)【要約】
サーマサット(商標)推進システムは、安全かつ非爆発性の推進剤として水を使用し、水は、打上げ時に加圧されていない。太陽熱推進を利用することにより、小型かつ効率的なキャパシタが水を蒸気へと加熱して、高い推力及び高いトータルインパルスを発生する。先進的な光学系により、突出した集中器またはメインバスからの電力の引込みを伴わずに太陽エネルギーのみを介してサーマルキャパシタをチャージすることができる。サーマサットに取り付けられたボディである追加の太陽光パネルは、太陽光が直接入射しないときにサーマルキャパシタの補助的な加熱をもたらして、非太陽ポインティング動作を促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進システムであって、
少なくとも2つの層を備える光透過システムであって、前記2つの層が、
複数の選択的透過体、または、
少なくとも1つの透過体及び少なくとも1つの吸収体、または、
複数の選択的吸収体
を備える、光透過システムと、
前記光透過システムを通過する光からの吸収熱を貯蔵するためのサーマルキャパシタと
を備え、
前記選択的吸収体の層は、光の長波長が境界を通過するのを妨げながらより短い波長を通過させる、推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の推進システムであって、
前記選択的吸収体の層は、前記光透過システムなしで可能とされるよりも加熱温度を高く上昇させる、推進システム。
【請求項3】
請求項1に記載の推進システムであって、
水または他の推進剤が加熱されて推進力を生み出す、推進システム。
【請求項4】
請求項1に記載の推進システムであって、
前記選択的吸収体は、フォトニック結晶である、推進システム。
【請求項5】
請求項1に記載の推進システムであって、
前記少なくとも2つのミラーのうちの一方は、ゴールドミラーであり、前記少なくとも2つのミラーのうちの他方は、ホットミラーである、推進システム。
【請求項6】
請求項1に記載の推進システムであって、さらに、
構造体と相互作用するように離間されたスラスタマウントを備える、推進システム。
【請求項7】
請求項1に記載の推進システムであって、
ある期間にわたって熱を収集し、より短い期間内で前記熱を推進剤内に放出することによる宇宙推進のために、相変化材料が使用される、推進システム。
【請求項8】
請求項1に記載の推進システムであって、
太陽熱収集器の単位面積当たりの最大動作出力レベルは、宇宙空間内の所定の点における自然の太陽照射量のそれを超えて高まる、推進システム。
【請求項9】
請求項1に記載の推進システムであって、
前記システムは、熱ロケット推進のために使用される、推進システム。
【請求項10】
請求項1に記載の推進システムであって、
選択的透過体または選択的吸収体は、コンポーネントの温度を上昇させる選択的エミッタであり、前記コンポーネントは、宇宙、他の惑星、または真空空間において使用されるコンポーネントを含む、推進システム。
【請求項11】
請求項1に記載の推進システムであって、
前記システムは、推進力のために相変化材料に太陽エネルギーを貯蔵する、推進システム。
【請求項12】
請求項1に記載の推進システムであって、
前記システムは、放射熱伝達システムと結合された相変化材料を使用する、推進システム。
【請求項13】
請求項12に記載の推進システムであって、
前記放射熱伝達システムは、前記相変化材料の前記温度をその自然の平衡を超えて上昇させる、推進システム。
【請求項14】
推進システムであって、
複数のモジュール式セクションを備え、
前記複数のモジュール式セクションは、サーマルキャパシタ及び光学系と、液体貯蔵タンクと、複数の中間圧力タンクとを含む、推進システム。
【請求項15】
請求項14に記載の推進システムであって、さらに、
追加の複数のサブシステムを備える、推進システム。
【請求項16】
請求項15に記載の推進システムであって、さらに、
少なくとも2つの層であって、
複数の選択的透過体、または、
少なくとも1つの透過体及び少なくとも1つの吸収体、または、
複数の選択的吸収体
を備える、少なくとも2つの層と、
前記光透過システムを通過する光からの吸収熱を貯蔵するためのサーマルキャパシタと
を備え、
前記選択的吸収体の層は、光の長波長が境界を通過するのを妨げながらより短い波長を通過させる、推進システム。
【請求項17】
請求項16に記載の推進システムであって、
前記選択的吸収体の層は、前記光透過システムなしで可能とされるよりも加熱温度を高く上昇させる、推進システム。
【請求項18】
請求項16に記載の推進システムであって、
水または他の推進剤が加熱されて推進力を生み出す、推進システム。
【請求項19】
請求項16に記載の推進システムであって、
前記システムは、推進力のために相変化材料に太陽エネルギーを貯蔵する、推進システム。
【請求項20】
請求項16に記載の推進システムであって、
前記システムは、放射熱伝達システムと結合された相変化材料を使用する、推進システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年9月30日に出願した米国仮特許出願第63/085,915号の出願日の利益を主張し、この参照により、その開示全体が援用される。
【0002】
[概要]
超小型衛星は、より一般にはキューブサットとして知られており、急速に現れた数百万ドル規模の産業であるU級宇宙機である。それらは、宇宙探査及び技術実証を行う手段を、予算の限られた計画にとって実現可能な価格で大学及び企業に提供する。キューブサットは、専用の展開機構とともに二次ペイロードとして打上げ機に追加されることを可能にする小型のフォームファクタを有する。キューブサットを用いることで、従来の人工衛星よりも多くのミッションが、より低いコストでありながらより迅速なペースで行われ得る。当初は技術実証に限られていたが、それらの小型のフォームファクタ、低い製造コスト、及び軌道へのより低い打上げコストは、キューブサットを新たな宇宙革命の最前線に位置付けた。産業界は、地球観測、通信ネットワーク、及び宇宙での商業化機会を形成する機器の分散ネットワークのための人工衛星のコンステレーション・ネットワークを確立している最中である。
【0003】
NASAのベンチャー・クラス打上げサービス契約の導入、地球規模の通信要求の増加、及び、地球観測データは、次の10年以内に軌道に打ち上げられるマイクロ衛星及びナノ衛星の数を増大させることになるであろう。多くのサブシステムが急速に進歩したが、改善を必要としている主要なシステムは、推進である。これらのシステムは、軌道保持、軌道マヌーバ、及びコンステレーション展開に必要とされる。通信及び地球観測のためのコンステレーション・ネットワークの確立を試みる会社は、その人工衛星のネットワークを軌道に打ち上げるための天文学的なコストに直面する。たとえ新たな打上げサービスが出現したとしても、一次ペイロードの有無に関わらず単一の打上げ機から複数のキューブサットを打ち上げることは、より経済的可能性がある。典型的には推進システムが欠けているため、これらの人工衛星は、軌道内に拘束され、それら自体をコンステレーション・ネットワークのために効率的に配置することができない。これらのネットワークを確立するコストを低減させるために、キューブサットのコンステレーション、迎撃機、及び惑星間ミッションは、多用途の高推力推進システムを必要とするであろう。
【0004】
典型的には、キューブサットのための推進システムは、電気的システム及び非電気的システムに分類される。電気的システムは、すでに電力制限された宇宙機からの電力を必要とし、高比推力で低推力を実現する。それにより効率的なマヌーバがもたらされるものの、これらのマヌーバを完了するのに要する電力及び時間は多大である。もう一方の推進分類は、低温ガス、液体ロケットシステム、及び固体ロケットシステムなどの非電気的システムである。これらのシステムは、推進剤の点火を調整するための電力を必要とするのみである。これらのシステムは、一般的に、電気的システムよりも高い推力及び低い比推力で働く。これらのシステムの多くは、大型の人工衛星のためにこれまで開発されてきており、ナノ衛星サイズの宇宙機への拡張性が欠け、また、有害な推進剤、高い貯蔵圧力、ならびに現在、将来、または全てのキューブサット規格及びミッションに適さない複雑な設計を必要とすることが多い。
【0005】
本装置及びシステムは、本明細書においてサーマサット(商標)と称される高性能太陽熱スラスタを提供し、このスラスタは、キューブサットのミッション能力を大幅に拡大し、かつ、従来の推進システムの欠点を緩和する。これは、コンステレーションの確立コストを減少させ、かつ、これらのネットワークを確立することの高いコストにより当初は目を背けた産業を励ますであろう。これは、通信ネットワーク、地球観測コンステレーション、及び機器の分散ネットワークを実現して、今まで世界に知られていなかったレベルの接続性及び地球科学を促進するであろう。
【0006】
1つの態様では、サーマサット推進システムは、キューブサットのフォームファクタに実装される太陽熱推進(STP)システムである。従来のSTPシステムは、太陽エネルギーをサーマルキャパシタに集中させるのに大型の集光器を必要としており、著しい複雑性、複数の故障モード、及び過度の質量が追加される。サーマサットは、光学フィルタ及びフォトニック結晶の最先端のシステムを使用して太陽熱放射を相変化サーマルキャパシタ内に捕獲することにより、集光器の必要性を排除している。光学フィルタシステムにフォトニック結晶を含むことにより、並外れた太陽放射加熱及び高温が可能となる。非常に優れたグリーン推進剤である水が、サーマルキャパシタによって加熱され、従来のノズルの外へ膨張されて、高い推力レベルを発生する。この推進剤は、非爆発性であり、容易に入手可能であり、かつ、一次ペイロードにほとんど危険を及ぼさないので、従来の推進剤が直面する多くの問題を緩和する。サーマサットは、展開可能な構造を全く必要としないので大抵の人工衛星にとっての重大な故障モードを制限し、また、動作するのにわずかな電力しか必要としないので一次ペイロードに対して多くの電力を残しておける。
【0007】
本装置及びサーマサットシステムは、フォトニック結晶、グリーン推進剤、及び相変化物質を介したエネルギー貯蔵を利用する先進的な太陽熱推進技法を研究することにより、キューブサット推進技術に進歩をもたらす。その結果は、コンステレーション展開、電力の貯蔵及び生成、ならびに惑星間キューブサットミッションを含む、いくつかの用途に適用され得る。特に小型衛星のための新たな打上げ機サービスのデビューは、より新しい技術が出現するにつれて、1キログラム当たりの打上げコストを下げている。打上げコストの削減及びナノ衛星の小型のフォームファクタは、通信ネットワーク、リモートセンシング衛星、及び商業打上げサービスで宇宙を商業化することへの大きな躍進を達成しようとしている。堅牢な推進システムは、衛星コンステレーションを確立するためのコストをさらに削減し、かつ、マイクロ衛星及びナノ衛星のミッション能力を大幅に向上させる。
【0008】
現在のキューブサット市場は、2023年までに3億7千5百万ドルに達すると推定されており、小型衛星市場全体では301億ドルを超えると推定されている。サーマサット推進システムは、あらゆるミッション及びあらゆる人工衛星にも適合するモジュール式構造により、様々な人工衛星サイズに利用され得る。このシステムは、キューブサット形式のためにこれまで設計されてきたものの、他のフォームファクタに容易に拡張可能である。新たな宇宙革命への高まりは、より安い打上げサービスを約束している多数の新たな打上げ機だけでなく、小型衛星によっても駆り立てられている。打ち上げコストは、競争によって、これまで下がってきてはいるものの、依然として、コンステレーション・ネットワークの構築における最も高額な出費である。この数字は、打上げ機供給者と相乗り提供者との間で大きく変動する。一群の人工衛星のための専用の打上げを行わないことを選択する人々は、典型的には、第三者相乗り提供者を経由しなければならない。ベンチャークラスの打上げ機は、これまでの打上げ提供者よりも大幅に低い打上げ価格を提示する。軌道上への1キログラム当たりのコストは、従来の打上げ提供者のそれを上回る場合があるものの、ベンチャークラスの打上げ機は、小型衛星のための専用ミッションを提示して、新規市場を魅了する。新たな打上げ機のほとんどは、軌道まで数百キログラムに対応し、50キログラム以下を宣伝しているのはごく少数である。これらのネットワークを確立することは、打上げコストだけで数百万、場合によっては数十億かかる可能性がある。
【0009】
これらのコストの一例は、各々が45°の位相差を有する8基の人工衛星のコンステレーションを単一の軌道に確立することであろう。キューブサットを軌道に送る従来の方法は、大手打上げ会社との相乗りである。これらの相乗りは、Spaceflight Industriesからの3U及び6U人工衛星(尚、3Uは、長さ方向に積み重ねられた3基のキューブサットで構成され、6Uは、長さ方向に積み重ねられた6基のキューブサットで構成される)の場合、295,000~545,000ドル以上のコストがかかるであろう。合計8基の6U人工衛星を軌道に送るには、おおよそ4,360,000ドルのコストがかかるであろう。全てのこれらの人工衛星が単一の打上げ機に相乗りするように運用された場合、推進システムは、45°の位相差を確立するためにそれらの人工衛星をコンステレーション内の正しい位置へマヌーバさせる必要があるであろう。人工衛星を正しいコンステレーション軌道に配置するであろう8回の別々の打上げが見つかる可能性は低いので、軌道上でマヌーバする能力は、主要な必要事項であろう。
【0010】
小型衛星打上げ会社の出現は、キューブサット・コンステレーションの確立に有望である。1回の打上げ当たりのコストが最も低い会社が、Aphelion Orbitalsである。(仮の見積もりに過ぎないが)単回打上げに対して750,000ドルと見積もられているので、この会社は、軌道に到達するのに、はるかに安い単回打上げコストの選択肢を提示している。8回の別々の打上げは、総計で6,000,000ドルのコストがかかるであろう。この価格は、依然として、相乗りで6Uコンステレーションを確立する価格を超えている。
【0011】
別の選択肢は、正しい軌道への複数のペイロードを有する専用のミッションを提供する打上げ提供者を選択することであろう。Vector Launchは、推進システムにより8基のキューブサット全てを軌道上に配置する能力があり得るようなビークルを1,500,000ドルで提示している。それらの人工衛星を配置するのに推進システムを用いると、相乗りミッションに対して2,860,000ドルの節約になり、また、Aphelion Orbitalsが軌道を確立するために個別の打上げを行うのと比較して4,500,000ドルの節約になる。現在及び将来のコンステレーションは、数百基の、潜在的には数千基の人工衛星を含むであろう。堅牢な推進システムにより単一の人工衛星群を打ち上げてそれら自体を組織化する能力は、数百万ドルを節約し得る(ただし、ペイロード体積が制約されているため、これらのシナリオでは1キログラム当たりコストの代わりに総打上げコストが選択された(打上げ機は低地球軌道(LEO)まで250kgを打ち上げることができるものの、250kgの人工衛星はペイロード体積許容度を超過する可能性がある))。
【0012】
顧客が関心を持たなければならない追加のコストは、軌道上の役目を終えた人工衛星を交代させるための価格である。推進システムのない典型的なキューブサットは、大気圏で燃え尽きるのに十分にその軌道が低下するまで、ほんの数年間しか存続しない。これにより、会社は、キューブサットを製造し、関係するロジスティクスを作り出すためのコストは言うまでもなく、相乗りで3U人工衛星を軌道上に送るのに最低でも295,000ドルを費やす必要があろう。長期間にわたって軌道上に留まることができるコンステレーションは、コストを大幅に減少させ、完全なハードウェア障害または打上げ失敗の場合にしか交代を必要としないであろう。
【0013】
さらに、学術及び産業界内のキューブサットは、短い開発時間に直面することが多く、また、しばしば試験が短くなることがあり得る。それにより、重要なシステムが全面的に十分に試験されないことになり、一部の見積もりでは、キューブサット・ミッションの53~65%だけが、完全な成功を収めている。キューブサット・ミッションが失敗し得る様々な理由が存在するものの、失敗の主な原因は、展開可能な機構を含む人工衛星の複雑さに由来する。より厳密な試験及び開発を経験するより大型の人工衛星においても、太陽電池パネルの故障が、人工衛星故障モードの大部分をこれまで占めてきた。人工衛星のうちの65%のみがそれらのミッションにおいて成功に達した場合、交代の人工衛星を製造して打ち上げるのに、数百万ドルとまではいかなくとも何十万ドルもが必要とされるであろう。
【0014】
上述のように、現在の推進技術は、電気推進及び非電気推進に焦点を当てている。電気推進技術は、宇宙機バスから電力の大部分を必要とするが、これは、他のキューブサット・サブシステムの性能の妨げになる。これらのシステムは、典型的には、利用可能な電力を増大させるために、展開可能な太陽電池パネルを必要とする。これらアレイの展開に失敗することは、宇宙機がその推進システムのための十分な電力を受けられず、結果的に姿勢制御の困難につながることになるので、キューブサットにとっては最大の故障モードのうちの1つである。さらに、これらのシステムがもたらすのは非常に低い推力であるため、マヌーバが完了するのに数週間または数月を要する場合があり、そのような展開方法の一定の人員配置は、複数のコンステレーション展開にとって実現可能ではない。現在の非電気スラスタには、単元推進剤、低温ガス、固体モータ、ハイブリッドモータ、及び二元推進剤のスラスタが含まれる。
【0015】
単元推進剤スラスタは、これまでに何十年にもわたって開発されてきており、非常に多くの飛行実績がある。これまでに利用されてきた主な単元推進剤は、ヒドラジンである。この推進剤は、有害であるという点で評判が良くないが、より大型の宇宙機のためのいくつかの主要な推進システムだけでなくADCSシステムのための高い性能をもたらす。ヒドラジンは、高い比重により150~250sの比推力を発生する。ヒドラジンの毒性は、一次ペイロードだけでなく地上作業にも危険をもたらし、広範な市場でのヒドラジンの使用を困難にしている。提案された何千もの人工衛星のための推進剤として使用された場合、犠牲の大きい悲惨な事故が起きる確率も高まる。ヒドラジンに類似した特性を有する新たに現れつつある「グリーン推進剤」は、有望な単元推進剤代替物である。ヒドラジンに優る性能の向上だけでなく、毒性及び取扱いの危険性の低下が、クリーンな代替物を魅力的にしている。
【0016】
現在利用可能な最も簡素なスラスタのうちの1つは、低温ガススラスタであり、低温ガススラスタでは、ノズルに加圧ガスを押し通して推力を発生する。低温ガススラスタは、設計が簡素であるが、高推力に欠け、もたらされる性能が限られているので、主に姿勢制御に限定されたままである。暖温ガススラスタは、それらの低温ガスの相対物よりも優れた性能をもたらすが、ヒータを動作させるのに最大で15Wの電力を必要とする可能性があり、それは、宇宙機システム上で大きな電力消費である。
【0017】
固体ロケットモータは、従来の固体ロケット推進だけでなく、より革新的な電気制御固体推進剤(ESP)を有する小型衛星でこれまで実証されてきている。この方法により、電流を介して(また、電流が印加されたときだけ)固体推進剤を点火することができる。ロスアラモス国立研究所は、燃料と酸化剤との組合せを分離する固体推進システムを開発した。このシステムは、燃料と酸化剤との組合せが別々に貯蔵されるので、打上げ中に燃料と酸化剤との組合せが偶発的に爆発する危険性を低下させる。革新的ではあるものの、これらのモータが精密なΔV制御のためにオン及びオフされる能力は、依然として疑問の余地がある。従来の複合粒子は、打上げ中に燃料粒子が砕けた場合に破滅的な結果に直面し、上記のシステムは、依然として、この特徴にさらされ得る。これら推進剤の単純性及び高推力は、精密なΔV制御ができないことで隠れてしまっている。
【0018】
ハイブリッドロケットモータは、反応して推力を発生する燃料粒子及び液体または気体の酸化剤を含む。この技術は、これまでにより大きな規模で実証されてきているものの、キューブサット開発にとっては依然として初期段階にある。ハイブリッドモータシステムの主な利点は、比較的高い比推力、高い推力、及び、酸化剤と燃料とを別々に貯蔵して打上げ中の一次ペイロードへの危険を限定する能力である。より複雑なシステムでは、一部の酸化剤は、ADCSシステムのための単元推進剤スラスタ(すなわち、銀触媒床上での過酸化水素分解)として使用され得る。しかしながら、ハイブリッドロケットエンジンの性能は、粒子の幾何学形状、分解速度、及び、酸化剤対燃料比などの多くの変数に焦点を当てた複雑な体系である。各マヌーバ噴射の後、これらの変数が変化して、次のマヌーバの設定を複雑にする可能性があり得る。
【0019】
二元推進剤スラスタは、最高性能の従来の推進システムとみなされている。二元推進剤スラスタは、他の非電気推進技法と比較して、高い推力出力とともに高い比推力を達成することができる。キューブサットのために使用される1つの革新的な方法は、Tethers UnlimitedのHYDROSシステムによる、軌道上での水の電気分解である。この二元推進剤システムは、気体状水素及び酸素スラスタで構成され、このスラスタは、液体水タンクから宇宙で電解される。しかしながら、微小重力における水の電気分解は、システムに複雑さを加える上、宇宙機バスから電力を浪費させる。別の会社であるBenchmark Space Systemsは、高濃度過酸化水素(HTP)及びアルコール二元推進剤スラスタを開発中であり、双方とも大気条件において貯蔵可能であり、8kgのキューブサットに最大で160m/sのΔVをもたらすように、285sの比推力及び1.25Nの推力が可能である。これらのシステムは高い推力及び高い比推力をもたらすものの、システムに含まれる複雑さが多くの故障モードをもたらす。
【0020】
ナノ衛星及びマイクロ衛星のミッションが増えるにつれて、それらのミッションは、推進システムからのより高い性能を求めるであろう。Pumpkin Space Systems、Aster Labs、及びDr. Craig Hardgroveから集められた情報によると、市場は、より安全でより信頼性の高い推進剤の方へ向かっているようである。安全な推進剤を使用しない高推力推進システムのほとんどは、それらのより高いインフラコスト及び危険性により、困難に直面することになるであろう。市場は、人々または環境に危険を及ぼさないグリーン推進剤により大きく依存し始めるであろう。
【0021】
本サーマサットシステムは、地上での取扱いの危険性を低下させる安全な推進剤を利用しているので、宇宙機を輸送するのに特殊な容器及び特殊な手順を必要としないため、コストをさらに削減する。
【0022】
いくつかある態様の中でも、本サーマサットシステムのモジュール式コンポーネントは、サーマルキャパシタ/光学系、中間圧力タンク、及び液体水貯蔵タンクを含む。サーマサットシステムは、顧客のミッションパラメータに正確に適合するコンポーネントを顧客が注文することを可能にするモジュール式コンポーネントを含み、また、特定ユースケースのシステムを設計することに関連するコストを削減して、システムを構築するのに必要とされる製造及び試験施設の複雑さを軽減するであろう。少数のモジュール式システムの大量生産は、ばらつき及び顧客のためのリードタイムを減少させ、コストを削減し、利幅を増大させる。
【0023】
光学系は、受動的な加熱手段を提供し、多くの宇宙機の問題に対処することができる。サーマルキャパシタもまた、多くのエネルギーを貯蔵できるので、将来のミッションにおいて有用であり得る。大抵の従来の電池よりも高い1.5MJ/kgの比エネルギーを有するので、サーマサットのキャパシタは、長期間にわたって太陽エネルギーを利用することができないミッションにおいて、エネルギー貯蔵のために使用され得る。光学系は、上述されたのとは異なる用途に使用されてもよく、また、月、金星、及び水星が太陽に近いことから、主に月、金星、または水星の周りでの惑星間ミッションに適用されてもよい。
【0024】
サーマサットシステムの別の態様は、主要推進剤としての水の使用において、従来の推進システムに比べてもたらされる著しい利点である。これは、システムの設計を大いに簡素化し、かつ、より揮発性のまたは低温の推進剤を収容するのに必要とされ得る特殊な材料を必要としない。
【0025】
太陽熱推進は、太陽エネルギーを捕捉してサーマルキャパシタ内に向けるという概念に基づいて動作し、サーマルキャパシタは、熱を貯蔵してその熱を推進剤の流れの中に急速に放出することによって機能する。サーマルキャパシタがピーク温度に達すると、推進剤は、キャパシタに導入され、加熱され、そして従来のノズルの外へ膨張されて、推力を発生する。これは、レジストジェットまたは核熱ロケット(NTR)と方式が似ているが、主な違いは熱エネルギーのためのエネルギー源である。これらの太陽熱システムは、高温、及びこの方法が提供し得る高性能の能力により、深宇宙へのミッションに使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の実施形態の理解を助ける例が、本明細書に添付された図を参照しながら以下で説明される。図では、2つ以上の図に現れる同一の構造、要素、または部品は、概して、それらが現われる全ての図において同じ番号が付される。図に示されたコンポーネント及び特徴の寸法は、概して、表示の利便性及び明確性のために選択されており、必ずしも縮尺どおりに示されていない。提示された図の多くは、概略図の形態であるため、特定の要素は、図解の明確性のために、非常に簡略化して描かれているか、または、縮尺に従わずに描かれている場合がある。図は、製作図であることを意図されていない。図は、以下に挙げられる。
【0027】
【
図1】サーマサット推進システムの第1の実施形態を示している。
【
図3】例示的なフォトニック結晶構造を示している。
【
図4】サーマサットシステムとともに赤外波長を減少させるのに利用され得る選択的エミッタの反射率及び透過挙動を示している。
【
図7】外部の光子を反射するか、または、内部で発生した光子を捕捉しながら、赤外波長の通過を妨げる光学系を示している。
【
図8】透過率ゴールドミラー、ホットミラー、及びフォトニック結晶の例を示している。
【
図9】光学系を通過した後にサーマルキャパシタに達している太陽熱エネルギーを示している。
【
図10】太陽エネルギーを使用してサーマルキャパシタをチャージするのに要する時間を示している。
【
図11A-11B】サーマルキャパシタの温度が動作中に急速に低下することを示している。
【
図12】高推力マヌーバが可能なサーマサットシステムの別の実施形態を示している。
【
図14】様々な量の推進剤によるサーマサットシステムのデルタV能力を示している。
【
図15】天底ポインティングレジーム及びランダムポインティングレジームによる6U宇宙機の例示的なミッションを示している。
【
図16】様々な高度に対する8kgの6U宇宙機の寿命チャートを示している。
【
図17】ISSから打ち上げられた6Uキューブサットの高度変化及び推進剤質量を示している。
【
図18】いくつかの人工衛星の軌道への例示的なコンステレーション展開であって、各人工衛星間の位相が等しいコンステレーション展開を示している。
【
図19】展開可能な太陽熱集中器を有するサーマサット・プラス構成を示している。
【
図22】平坦なまたはパネル張りの集中器を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載されている実施形態の説明及び添付の図は、範囲を限定することなく、より良好な理解のためにのみ役立つことが明らかであるべきである。当業者が本明細書を読んだ後に添付の図及び上記の実施形態に対する調整または変更を行い得ることもまた、明らかであるべきであり、そのような調整または変更もなお本開示に含まれるであろう。
【0029】
[詳細な説明]
本開示は、特定の光学系に限定されず、光学系は、当然ながら変わり得る。本明細書において使用される用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、限定的なものとして意図されていないことも理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容から明らかにそうでないことが示されていなければ、単数及び複数の指示対象を含む。
【0030】
そうでないことが定められていない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって常識的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0031】
大抵のSTPシステムは、サーマルキャパシタに光を集中させるために大型の集中器を必要とするものの、サーマサットシステムは、集中器または任意の展開可能な構造を必要としない。これは、選択的フォトニック放射を通じて温度を上昇させるために温室効果を模倣するフィルタ及びフォトニック結晶を備える光学系を通じて行われる。この新規のSTPサーマサットシステムは、
図1に示されており、サーマサット推進システムは、10kgの人工衛星の場合に最大で+200m/sのΔVが可能な6x1Uキューブサットを構築するためのモジュール式セクションを含むものとして例示的な構成で示されている。ペイロードは、液体貯蔵タンクの側面に取り付けられ得るか、または、システムの前方部分における任意選択のペイロード容積内に収容され得る。
図1は、サーマサットシステム100を示し、サーマサットシステム100は、構造体200を有し、かつ、約1.5Uのサーマルキャパシタ及び光学系300と、約2.5から3.5Uの液体貯蔵タンク400と、約1Uの複数の中間圧力タンク500と、約0から1Uの他の複数のサブシステム600のための任意選択の容積とを含んでいる。相変化塩に埋め込まれた黒鉛マトリックスを備えているサーマルキャパシタは、光学系内に入れられて推進システムの後端に位置する。複数の中間圧力タンクは、ガス状蒸気を貯蔵し、かつ、蒸気ドームを通じて推進剤を予熱する。液体水を収容している燃料タンクが、推進剤を低温かつ低圧で貯蔵して、打上げ中の電力消費及び一次ペイロードに対する危険を低減する。推進剤は、軌道上に配置されるまで液体状態に保たれるので、漏れ、及び厚壁圧力容器の必要性を低減する。
【0032】
スペクトル操作は、放射性同位体熱光起電力(RTPV)システム及び太陽光発電システムを含む他のシステムとは対照的なサーマサットシステムの別の態様である。放射性同位体を燃料としたシステムなどのより低出力のシステムの場合、良好な断熱が、有用な動作温度に達するのを支援し得る。宇宙では、主要な排熱方法は、放射熱伝達を通じたものであり、そのため、露出面を適切に修正することが、物体の加熱または冷却への主な効果を有し得る。
【0033】
サーマルキャパシタ及び光学系:
フォトニック結晶:
物質と相互作用する光は、反射されるか、吸収されるか、または透過されることになる。金箔のような薄い構造体は、著しく吸収することがないので、薄い構造体は、透過または反射のためにのみ使用される。固体の物体は、透過させず、代わりに反射または吸収することになるだけである。あらゆる所与の光の波長について、吸収または透過する能力は、熱放射を通じて放射する能力に等しい。フォトニック結晶(PhC)及びフィルタは、光の長波長を優先的に反射するように設計され得るという点で有用である。
【0034】
フォトニック結晶とは、「光の特定の周波数範囲の伝播を禁ずるバンドギャップを有する周期的誘電体構造」であり(例えば、http://ab-initio.mit.edu/book/photonic-crystals-book.pdfを参照されたい)、非常に小さな穴を表面に有する金属から作られ得る。黒鉛サーマルキャパシタ370の表面上には、PhC372のアレイが存在する(
図2及び3参照)。これらの構造は、光の長波長を優先的に放射する選択的エミッタとして作用する。表面上にこの材料を有することは、サーマルキャパシタの全放射放出を制限することにおける第1のステップである。排熱する能力がない場合、表面は、自然に温度が上昇することになる。
【0035】
ホットミラー:
図2は、黒鉛、相変化材料、及びタンタルフォトニック結晶から作られたサーマルキャパシタを示す。光学系は、電力入力をほとんど伴わずに1000°Kを超える温度までキャパシタを加熱することができる。これは、ゴールドミラー320と、ホットミラー330と、フォトニック結晶360とを備えている光学系を介して達成される。サーマルキャパシタのチャージはまた、太陽熱入力を補完するための内部加熱フィラメントを介して起こり得る。
図2に示されたサーマルキャパシタ300はまた、構造体310と、ゴールドミラー320と、ホットミラー330と、複数の流路340と、複数のシリカエアロゲルスペーサ350と、複数のタンタルフォトニック結晶360と、黒鉛及びPCMサーマルキャパシタ370と、スラスタマウント380とを含んでいる。サーマルキャパシタを囲繞している
図2に示された第2のミラー330は、ダイクロイックフィルタとして知られた誘電体ミラーの一種である。ダイクロイックフィルタは、波長を分離することでよく知られている。特殊なタイプのダイクロイックフィルタであるホットミラー330は、近づいて来る光に対して垂直に使用されてよく、可視光を透過させながら赤外線を反射することに特に重点を置くことができる。ホットミラーの透過スペクトルの例が、
図4に示されている。このミラーは、短波長において優れた透過を有するものの、長波長内のある範囲に対しては顕著なギャップを有する。この範囲内の波長は、ホットミラー330を通過して、ホットミラー330を囲繞しているゴールドミラー320によって反射されることになる。この第2のミラー330は、システムから漏出する赤外波長をさらに減少させるために存在している。
【0036】
ゴールドミラー:
金で裏打ちされた第1の表面石英ミラーは、赤外光を反射するための最も外側の「フィルタ」として作用する。金は、天然の選択的エミッタとして作用して、赤外波長を反射しかつ可視光を透過させる。第1の表面ゴールドミラーからの反射率の例を
図4に見ることができる。
図4は、サーマサット光学系内で赤外波長を減少させるのに利用可能な市販の選択的エミッタの反射率及び透過挙動を示す。銀もまた、天然の選択的エミッタとして作用するので、同様に潜在的なミラーコーティングであるが、より高い全体的性能のためにこの目的には金が使用される。
【0037】
この光学系は、光学系の中心に位置しているキャパシタによって透過された赤外波長を減少させるようにこれまで設計されてきている。放射された赤外波長の減少は、物体の排熱する能力を制限するので、高い動作温度を得るのに重要である。
【0038】
サーマルキャパシタ:
サーマルキャパシタは、その円筒状の幾何学形状に基づき、太陽に対して実質的にあらゆる角度においてもエネルギーを吸収することができる。これは、宇宙機における姿勢制御要件を減少させるために行われた。円筒状のサーマルキャパシタが光学系に囲繞されて
図2に示されている。サーマルキャパシタのサイズは、サーマサットシステムの設計に対して必要な動作温度に達するのに十分な太陽エネルギーを吸収するのに適している。持続したΔV噴射を行っているときに、固体サーマルキャパシタが使用されている場合にはコアの温度が急速に低下して、噴射の始まりと噴射の終わりとの間に大きな性能差がもたらされることになる。多量の熱を貯蔵し、かつ、高温を維持することができる材料を使用することは、効果的な暖温ガススラスタを有することにおいて重要である。したがって、サーマサットは、黒鉛ケーシング内に収容された相変化材料(PCM)を使用している。
【0039】
PCMは、相変化を行うのに潜熱エネルギーを必要とする。長期間噴射のための高温を持続する相変化材料として、塩、すなわち80LiOH+20LiFが、その約700°Kの溶融点及び高い融解潜熱のために選ばれた。
【0040】
推進システムの小さなサイズ、及び、太陽スペクトルの一部を受け付けない光学系の傾向により、液体推進剤タンク上の小型光起電力アレイからの補充電力のために、加熱フィラメントがサーマルキャパシタ内に含まれている。このアレイは、真空空間において実行可能な動作温度を維持するのに十分な小ささであり、かつ、推進剤タンクを太陽から遮蔽するという追加の効果を有している。
図2に示された例示的な実施形態では、合計で21個の流路がサーマルキャパシタを通過している。これら流路は、蒸気がノズルの外へ放出される前に流れてサーマルキャパシタから熱を吸収することになる所である。
【0041】
推進システム:
推進剤:
水は、低温において液体であり、大気圧において容易に貯蔵され、かつ、爆発の虞も腐食の虞も一切ない、容易に入手可能なグリーン推進剤である。水は、他の推進剤よりも高い分子量を有しているものの、その高い密度は、大きなΔV予算を伴う高推力マヌーバのために、より多くの推進剤がキューブサットに搭載されることを可能にする。
【0042】
液体水タンク:
サーマサット上の最大の構造体は、液体推進剤タンク400である。
図5に示されるような1つの例示的な構成では、タンク400は、約2.7Uを占め、かつ、300度Kにおいて1気圧に加圧される。
図5は、2.5~3Uのタンク400と、構造体410と、液体NH
3と、層状断熱材430と、サブシステムのための任意選択の空間440とを備えている液体水貯蔵器を示す。タンクのサイズは、ペイロード質量のほかに、ミッションプロファイルに基づいて追加のサブシステムを含むための要件にも依存している。この例示的な実施形態では、推進剤タンクは、水を1気圧で貯蔵する。層状断熱材または複数のPVセルが、推進剤タンクの外側に取り付けられ得る。タンク400は、液体水をタンク400から押し出すのを助けるために、背面にガスの小袋を有している。圧力は、打上げ中の一次ペイロードにとって懸念されるほどには高くなく、また、その低温貯蔵は、キューブサットの電力系統への依存を軽減する。液体タンクのサイズは、ミッションプロファイルに応じて異なる量の推進剤を収容するだけでなく、追加の電力のための複数の補助的なPVセルをサポートするように、カスタマイズされ得る。
【0043】
中間ガス状蒸気タンク:
9個の中間圧力タンク500が、液体推進剤タンクとサーマルキャパシタとの間に位置している。これらのタンク500は、高圧ガス状蒸気を保持するように設計されており、
図6に示されている。
図6に示されるように、中間圧力タンクは、ガス状蒸気を保持する。同じく
図6に示されるように、タンク500は、構造体510と、複数の高圧NH
3貯蔵タンクと、複数のADCSスラスタ530とを含む。単一の大型タンクと比べて高い構造的完全性のために、複数の圧力容器が選択された。ロール制御スラスタが、複数の中間圧力タンクとサーマルキャパシタとの間に配置されている。液体水は、サーマルキャパシタの相変化材料に類似したエネルギー入力を必要とする、液体と気体との間での相変化を行う。サーマルキャパシタが液体水を加熱して直接気体にするのに使用された場合、推進剤を気化させるのに著しい量のエネルギーが浪費されるので、サーマルキャパシタはその有効性をひどく低下させる。
【0044】
代わりに、このシステムは、小さなΔV噴射のために十分な液体水を推進剤タンクに注入する。気体状態に達するのに要する温度は太陽が見えるだけで達成可能であるので、注入された液体は気化して気体になることになる。注入された液体は、いったん気体状態になると、サーマルキャパシタを通して放出され得る。
【0045】
タンク内の応力を低く保ち、かつ、漏れまたは破裂に対する冗長性をもたらすために、いくつかのより小型の圧力容器が使用される。キューブサットの遠端に位置するノズルは、宇宙機のピッチ及びヨーを制御するために、ジンバル上で回転され得る。中間タンクの間には、メインノズル近傍の弁によって供給される4つの姿勢制御スラスタ530が存在する。これらは、姿勢制御システム(ACS)としてガス状の水を利用する。これらのスラスタは、150s以上の比推力を有し、キューブサットのロール動作に影響を与える。
【0046】
ガススラスタの動作は、ノズルから放出されるときの推進剤の温度に大きく影響される。これは、スラスタの主な駆動力が熱交換器または燃焼室内の推進剤の熱膨張に由来するためであり、熱膨張は、ガスの体積を増大させて、ノズルから急速に放出させる。このシステムは、高温及び高性能を達成するための熱源として自然の太陽光を使用するものであり、
図7に示されている。
図7はまた、外部の光子を反射するか、または、内部で発生した光子を捕捉しながら赤外波長の通過を妨げる光学系を示す。複数のフォトニック結晶が、より短い波長を吸収し、かつ、赤外放射放出を妨げる。吸収したエネルギーを放射する能力がない場合、サーマルキャパシタは、温度上昇を余儀なくされて、光学系を通過し得るより短い波長で放射する。
【0047】
当然ながら、太陽にさらされた表面は、エネルギーを吸収し、温度が上昇して、吸収エネルギーと放射エネルギーの大きさが等しくなるまでエネルギーを放射することになる。この新規のSTPシステムのサーマルキャパシタを加熱するのに重要なことは、黒体放射スペクトルの低エネルギー/長波長部分を制限する光学系の能力である。物体の温度は、どの波長でその物体がエネルギーを放射することになるのかを決定付ける。物体は、温度が上昇するにつれて、より短く、よりエネルギーを有する波長でエネルギーを放射するようになる。より低い温度では、表面は、赤外スペクトルにおいてエネルギーを放射する。しかしながら、これらの波長は、PhC内で存在するには大き過ぎるため、放射放出は大幅に制限される。吸収エネルギーを放射する能力がない場合、サーマルキャパシタは、構造体の内側で存在し得る短い波長で放射し始めるまで、温度が上昇することになる。
【0048】
製造欠陥または周期的構造間の間隙といったPhCにおけるいかなる欠陥を補強するために、任意の放射された長波長の光子を反射するための光学ミラーの2つの層が含まれている。これが起こった場合、光子は、光学ミラーによって反射され、PhCによって再度反射され、表面によって再吸収されるか、最終的に透過を介して漏出するまで、元のところへ反射される。
【0049】
入射する太陽エネルギーは、サーマルキャパシタを加熱するが、光学系の特性による影響も受ける。太陽スペクトルは、波長1ミクロン以上の光の帯域内にその全エネルギーのおおよそ30%を有する。システムはそのような光を放射または吸収することができないので、そのような光は反射されて、通常、失われる。しかしながら、残りの太陽照射は、サーマルキャパシタを加熱し続け、また、表面からの放射冷却の不足により、遙かに高い定常温度がもたらされる。これは、「温室効果」と称されることが多い。
【0050】
動作中、サーマルキャパシタは、温度上昇を続け、次第に小さくなる波長での放射を続ける。最終的に、サーマルキャパシタは、吸収されたエネルギーが放射されたエネルギーと等しくなる平衡点に達する。この時点で、サーマルキャパシタは、この光学系を使用せずに達したであろう熱平衡を遙かに超える温度に達している。これは、太陽集光器、及び外部供給源からの(たとえあったとしても)限られた電力を必要とせずに、全て達成される。
【0051】
複数の光学ミラーの複数の層の積み重ね、及び、フォトニック結晶放射率データへの結合により、光学系をモデル化することができ、熱性能を予測することができる。得られるスペクトルは、市販の実証済みの光学系、及び、Mesodyne Incによって提供されるPhC挙動のための経験的データから決定され得る。層状光学系は、以下の式(1)を利用して合算された。
【0052】
【0053】
ここで、Tは、システムの正味透過パーセントであり、T
1及びT
2は、各フィルタの透過である。透過は、光学組立体を通過する透過スペクトルをもたらす各波長においてモデル化され得る。ゴールドミラー、ホットミラー、及びPhCの組合せから得られる透過範囲の一例が、
図8に示されている。
図8はまた、ゴールドミラー、ホットミラー、及びフォトニック結晶の例示的な透過率を示す。組み合わせられると、赤外スペクトル範囲は、高エネルギー波長の大部分を保ちながら、著しく縮小される。フォトニック結晶は、2ミクロンを超える波長を厳しく制限するように作用する。光学系の得られる放射率を利用すると、吸収される全太陽エネルギーを決定することができる。
図9は、光学系を通過した後でサーマルキャパシタに達する太陽熱エネルギーを示す。このシステムにより吸収されるエネルギーは、4.4Wに達する可能性があり、追加の電力を引き込む必要性を潜在的に排除する。
図9に示されるように、得られるスペクトル範囲、及び、サーマルキャパシタによって吸収されるエネルギーは、太陽放射に直接さらされる同等の領域よりも著しく小さい。しかしながら、これは、サーマルキャパシタの加熱に役立つ。前述のように、サーマルキャパシタは、より短い波長を放射してエネルギーを放出するのに十分な高温に達するまで、熱が上がる。これが起きると、サーマルキャパシタは、平衡状態にある。この例示的なシステムの場合、吸収されるエネルギーは、4.4Wに達するように設計される。表面の異常または他の熱伝達方法による損失がない場合、サーマルキャパシタは、PVアレイからの電力入力なしに1000°Kを超える温度まで熱が上がり得る。
【0054】
しかしながら、いくつかの異なる要因により、損失が導入される可能性がある。観測される可能性がある主な損失は、サーマルキャパシタを保持している支持構造との伝導を通じたものである。さらに、光学系における欠陥も、同様に損失を誘発し得る。フォトニック結晶板の縁及び角は、大きな波長が放射される表面を提供する。これらの損失を予測するのは難しいものの、対流熱伝達を計算することはでき、また、損失を踏まえて供給されるエネルギーの余裕を増やすことによって、欠陥を緩和できる。1つの例示的な実施形態では、シリカエアロゲル断熱スペーサが、サーマルキャパシタを推進システムの残りの部分から分離して伝導損失を減少させ、また、液体推進剤タンクの周りのPVアレイが、約2.5Wまでの追加の電力を提供する。
【0055】
サーマサットシステムは、適切な実行の欠如が性能の低下をもたらすだけでミッションの失敗をもたらさないので、フェイルセーフ動作及び冗長性の面で特に堅牢である。多くの場合、これらの問題は、自動修正するものであり得る。例えば、サーマルキャパシタと太陽との位置のずれは、エネルギー入力の減少をもたらし得るが、低温ガススラスタとしてACSを点火してシステムを再度位置合わせすることによって修正され得る。減少した入力は、動作に余裕を与えて正確な方向付けの必要性を軽減する小型PVアレイによって補強される。汚れまたは損傷が入力エネルギーを減少させる可能性があるものの、これは、チャージの遅延をもたらすに過ぎない。
【0056】
1つの態様では、低い吸収エネルギー及び宇宙機バスからの低い補助的電力の欠点は、キャパシタのためのチャージ時間が長引くことである。
図10は、太陽エネルギーを使用してサーマルキャパシタをチャージすることを含む、システムに必要とされるチャージ時間を示す。グラフの平坦な部分は、相変化材料が固体から液体になるときの潜熱ゾーンを示す。チャージされると、サーマルキャパシタは、再度チャージを必要とする前に複数回使用され得る。この例示的なシナリオでは、キャパシタをその動作温度まで加熱するのに45時間を超える時間が必要とされるが、最初にいったんチャージされると、システムは、複数回噴射することができ、また、連続的に使用されなければ高い動作温度を維持することができる。
【0057】
推進性能特性:
図11は、15.4kgのペイロードを有した300sの噴射に対して例示的な得られる温度、I
sp、推力、及びΔVを示す。I
spは、サーマルキャパシタの温度に依存しており、以下の式で表すことができる。
【0058】
【0059】
この場合、goは、重力定数であり、kは、比熱比であり、Ruは、気体定数であり、Tcは、サーマルキャパシタ温度であり、Mは、燃料のモル質量であり、Peは、出口圧力であり、Pcは、燃焼室圧力である。前項において決定されたコアの温度及び式3を使用すると、推力を式3から決定することができる。
【0060】
【0061】
ここで、Fは、力であり、mドットは、燃料の質量流量である。標準的なロケット方程式は、速度変化を決定するために使用され、式4において説明される。
【0062】
【0063】
ここで、m
oは、宇宙機の初期質量であり、m
fは、噴射後の宇宙機の最終質量である。
図11は、サーマルキャパシタからの燃料抽出エネルギーにより温度がどのように低下するのかを示す。このエネルギーの損失によって、サーマルキャパシタの温度が低下し、また、式2に基づいて、I
spも同様に降下する。50秒前後において、エネルギーの損失は、サーマルキャパシタの温度をPCMの融点まで低下させており、700°Kの温度を維持している。すると、これにより、融解潜熱がサーマルキャパシタから抽出されて温度が低下し始めるまで、I
spが一定値に保たれる。このプロセスにわたって得られる推力及びΔVが、
図10に示されている。サーマルキャパシタのエネルギーが使い果たされるまでのこの噴射持続時間により、60m/sを超えるΔVが可能である。
【0064】
図11A及び11Bでは、推力及びΔVへの影響を見ることができる。示されるように、サーマルキャパシタの温度は、動作中に急速に低下するものの、PCMの潜熱は、比推力、推力、及び温度を長時間にわたって安定して保つ。温度がPCMの融点まで急速に降下することにより、推力の減少が初期に観測される。最高の性能は、高温に起因した噴射の始まりに起こる。しかしながら、この噴射の高インパルス及び高推力の部分は、数秒間しか持続しない。ΔVの大部分は、PCMの内部に貯蔵された熱に由来し、これは、システムの性能に著しく役立つ。水は、サーマルキャパシタに注入される前に気体に変換されるはずであるものの、この例示的な実施形態では、噴射持続時間は、60秒間未満のより短い間隔に制限される。より長い噴射が望まれる場合には、より多くのガス状蒸気を貯蔵するために、中間圧力容器のサイズを増大させる必要があろう。
【0065】
1つの例示的な実施形態では、2500cm3(2.5U)弱の例示的な量の液体燃料体積により、推進システムは、15.4kgのペイロードに対して200m/sのΔVをもたらすことができる。30秒の噴射を伴う一定の700°Kで動作すると、サーマサット推進システムは、4.4Nの平均推力、及び150sのIspを有する。
【0066】
サーマサットシステムは、モジュール式で予測可能かつ安全な方法で、キューブサットの推進力ニーズの全てを提供する。推進システムは、軌道計算の単純化及び有人操作時間の削減のためのインパルス噴射をもたらすことになる。また、推進システムによって、軌道保持マヌーバがペイロードに長くて予測可能な寿命を与えることができるようになる。最後に、ミッションの終わりに、推進システムは、人工衛星を大気圏内に突入させる最終終焉噴射を遂行することになり、最終終焉噴射において、人工衛星は、軌道から外されて、過剰なデブリの一因とならない。以下の表は、上記の例示的なキューブサットでこれらの目的を達成するための各年に対するΔV予算を示す。
【0067】
【0068】
例示的なサーマサットシステムの別の実施形態が、以下の
図12に示されている。上記で詳述されたシステムと同様に、
図12に示されたサーマサットは、8~50kgの範囲内を含む宇宙機のための迅速なマヌーバを可能にする、キューブサットのための太陽熱推進システムである。従来の太陽熱発電システムは、太陽エネルギーを一点に集中させて推進剤の流れを直接加熱するために大型の突出した集中器を必要とし、それにより、推力を発生するための推進剤の急速な加熱及び膨張を引き起こすが、サーマサットは、太陽エネルギーを介してサーマルキャパシタを加熱するために新規の光学系を利用する。サーマサットは、宇宙機バスからの電力入力をほとんど用いずに、1Nの推力及び200s超の比推力とともに1000Kを超える温度に達することができる。そのようなシステムの利点のうちのいくつかは、以下を含む:
1.電力の引込みがほとんどないことにより、宇宙機バスからシステムに電力を供給する必要性が減少する。
2.無害かつ低圧の水推進剤により、統合中、打上げ中、及びISSまたは他の宇宙機の周りでの運用中における安全上の懸念が減少する。
3.少数の可動部品による極めて単純な設計により、複雑性及び潜在的故障箇所が減少する。
4.軌道上のデブリ及び他の人工衛星を回避するための迅速な機動性。
5.以下を行うための軌道上の位置保持:
a.抗力を相殺して軌道寿命を延ばすこと。
b.近接性を維持するためのコンステレーション維持。
c.高度に比例して画像解像度を高めるためにより低い軌道を可能にすること。
d.新規の環境を調査するための電離層ミッションを可能にすること。
6.寿命の終わりに人工衛星を軌道から離脱させること。
7.推進剤による低いRF干渉。
8.指令及び制御盤、ACS、無線などのコンポーネントのサーマサット内での任意選択のコロケーション。
9.宇宙機バスの残りの部分からの断熱。
【0069】
1つの例示的な実施形態では、基本的サーマサットシステムは、2U構造体に収まって、6U及びより大型の宇宙機に高い推力及びトータルインパルスをもたらす。したがって、サーマサットは、6U人工衛星上で2Uの空間を占め、4Uを他のバスコンポーネント及びペイロードのために残す。1つの例示的な構成では、サーマサットシステムは、以下の特性を有する:
・動作相変化材料(PCM)温度:1,052K
・推力:1.02N
・比推力:203.1N
・トータルインパルス:1,800Ns
・最小インパルスビット:0.04~0.1Ns
・最大インパルスビット:60Ns
・全備質量:2,445g
・乾燥質量:1,445g
【0070】
図12は、203sの比推力及び1.02Nの推力による高推力マヌーバが可能なサーマサット推進システムのレンダリングを示す。底部(1230)上の金の光学系は、高温動作及び高性能を可能にする。
図12はまた、支持構造体1210と、推進剤タンク1220と、光ファイバ1230と、流路1240と、1Nノズル1250と、断熱材1260と、表面実装太陽電池パネル1270と、中間圧力容器1280とを有するサーマサット1200を示す。
図13は、様々な圧力及び温度を有する推進回路図を示し、略図は、液体水タンク1220(この例では101.325Paで示される)に接続された充填弁1256を示している。タンク1220は、弁1254により中間圧力容器1280(この例では311.870Pa及び408Kで示される)に接続されている。中間圧力容器1280は、弁1252により高温サーマルキャパシタ1300(この例では1052Kで示される)に接続され、高温サーマルキャパシタ1300は、流路1240を含み、ノズル1250に接続されている。
図13に示されたサーマサット推進システムの略図は、システム内の様々な温度及び圧力を含むが、打上げ前、打上げ中、及び打上げ後の低応力を保証するために、1気圧を超える圧力は存在しない。少なくとも1つの例示的な実施形態では、液体水タンクは、打上げ時に1気圧まで加圧される。スラスタの動作中、推進剤をサーマルキャパシタに導入して高推力を発生する前に推進剤を加圧するために中間圧力容器が使用される。少なくとも1つの例示的な実施形態では、推進剤をノズルの外へ膨張させる前に推進剤を1,052Kのその最大動作温度まで加熱するために、サーマルキャパシタ内の長い流路が使用される。少なくとも1つの例示的な実施形態では、サーマサットは、高インパルス及び迅速なマヌーバのために最大で60sまで噴射すると評価されている。リアクションホイールの飽和度を下げるために、より小さなインパルスビットのマヌーバが利用可能である。この広範なインパルスビットは、電池よりも遙かに大きい出力密度を有するサーマルキャパシタによって可能となっている。可動コンポーネントがほとんどないことにより、推進システムの簡素さが保証される。動作中の推進システムの健全性を監視するために、推進システムの様々なコンポーネントにセンサが取り付けられてもよい。
【0071】
少なくとも1つの例示的な実施形態では、サーマサット上の標準的な推進剤タンクは、約1kgまでの推進剤を収容する。様々なデルタ-v要求に対応するために、追加のまたはより小型の推進剤タンクがカスタマイズされ得る。
図14は、様々なペイロードサイズ及び様々なペイロードサイズに対する推進剤質量に関する性能を示す。さらに、
図14は、様々な量の推進剤によるサーマサットのデルタ-V能力を示す。ペイロード質量は、サーマサットが輸送することになる宇宙機バスの乾燥質量を含む。この場合、「ペイロード」は、推進システム以外の全て(バスコンポーネント、科学ペイロード、構造体など)を指す。推進剤タンクのサイズが縮小され得るので、コンポーネントのコロケーションは、より低いデルタ-v要求で可能である。
【0072】
サーマサットシステムが成功する1つの鍵は、サーマルキャパシタがその動作温度に達するのを可能にする、その新規な光学系である。この光学系は、直接的な太陽エネルギーを介して1,000Kを超える温度に達するための好ましい非プランク形の放射スペクトルを生成する、いくつかの天然の選択的エミッタ及び注文で作られた選択的エミッタを備える。光学系は、極めて特定の波長が通過することを可能にし、また、光学系は、この領域外の波長、主に赤外領域内の波長を受け付けない。サーマルキャパシタは、太陽のエネルギーによって温度が上昇するにつれて、赤外領域内の光を放射し始める。しかしながら、新規の光学設計により、これらの波長は光学系を透過し得ない。これによって、サーマルキャパシタの温度が上昇し、システムへのエネルギー入力がエネルギー出力に等しくなるまで、サーマルキャパシタが次第に短くなる波長で放射する。光学系及びサーマルキャパシタは、例えば高温セラミックスを介して、宇宙機の残りの部分から断熱されている。これにより、宇宙機の機体の残りの部分への最小限の熱伝達が保証され、極めて重要なバスコンポーネントの損傷を防ぐ。
【0073】
主要推進剤タンクは、推進システムのための液体水を貯蔵する。液体水は打上げ時に加圧されていないので、このシステムは、打上げ機及び搭載された他の宇宙機に脅威を与えず、それを相乗りミッションに適したものにする。第2の中間圧力容器が、噴射のための推進剤を貯蔵するために使用される。この容器は、スラスタの噴射に十分な推進剤を保持する。少なくとも1つの例示的な実施形態では、推進剤は、サーマルキャパシタにより408Kまで受動的に加熱される。これが、推進剤を予熱してタンクを加圧し、動作中に推進剤が逆流しないことを保証することになる。加熱された推進剤は、サーマルキャパシタの流路に導入され、この流路は、サーマルキャパシタが高温に達するのを確実にするために、サーマルキャパシタを蛇行して通り抜ける。光学系及びサーマルキャパシタの外へ突出するノズルが、この蒸気を真空空間内へ膨張させて、推力を発生する。
【0074】
サーマルキャパシタのチャージは、太陽に対する入射角、宇宙機上の推進システムの位置、軌道、及びポインティングレジームを含む、いくつかの要因に依存する。ほとんどの場合、サーマルキャパシタは、直接的な太陽エネルギーを介して動作温度までチャージされることが可能であり、また、必要に応じて、主要宇宙機バスからの電気入力を伴わずに側面に取付けられた太陽電池パネルを介してチャージされることが可能である。
【0075】
推進システムをキューブサットの主要な太陽電池アレイと位置合わせすることにより、宇宙機も太陽から電力を受けながら、推進システムをチャージすることができるようになる。これは、宇宙機が太陽同期軌道上にある場合に、遥かに容易になる。これは極めて望ましい軌道であるものの、低地球周回軌道(LEO)上での天底ポインティングミッション、ランダムポインティングミッション、及び太陽ポインティングミッションは、ミッションを著しく妨げることなしに動作することができ、これは、
図15に示されている。
図15は、(地球に面する)天底ポインティングレジーム及びランダムポインティングレジームによる6U宇宙機の例示的なミッションを提供する。直接的な太陽エネルギー及び側面に取付けられた太陽電池パネルの入力を介して、システムをチャージするのに十分なエネルギーが生成される。グラフにおける一時的な下降は、サーマルキャパシタがエネルギーを放射するだけで吸収しない、食の時間を表す。ポインティングレジームは、サーマルキャパシタによって達成可能な最高温度に影響を及ぼすことになる。側面に取付けられた太陽電池パネルは、これらのポインティングレジーム中にサーマルキャパシタを支援するために含まれる。しかしながら、電力入力は、利用可能な他のスラスタと比較するとわずかである。
【0076】
軌道上で推進システムを使用する方法は、数多く存在する。サーマサットは、極めて有能であり、いくつかの異なるミッションシナリオに対して使用され得る。1つの例示的な使用事例は、特に400km未満のLEO上の人工衛星のための軌道保持を行うことである。軌道高度を下げることには、リモートセンシング衛星のための全通信スループットの増大及び解像度の向上などのいくつかの利点がある。
図16は、サーマサットが宇宙機バスからの電気入力をほとんど伴わずに軌道寿命をどの程度増大させることができるのかを示す。
図16に示されるように、0.02m2の抗力面積を有する8kgの6U宇宙機の様々な量の推進剤を含む場合及び含まない場合の様々な高度に対する寿命が示されている。この例では、6U人工衛星が、宇宙機の軌道減衰をシミュレートするためにNASAの汎用ミッション解析ツール(GMAT)のJacchia-Roberts抗力モデルとともに使用され、200cm
2の表面積が、(最大の6Uが地球に面する)常時天底ポインティングレジームにおける8kg乾燥質量の6Uキューブサットの最小の前面を表す。人工衛星の高度は、その高度がその元の位置から20km下がるたびに修正された。
【0077】
サーマサットは、様々な高度において宇宙機の寿命を著しく延長させることができ、これは、多くの利益を有し、かつ、様々なミッションを可能にする。
【0078】
1つの例では、人工衛星オペレータは、より高い画像解像度を得るために、人工衛星の高度を下げ、それらの従来の寿命をより低い高度に整合させることができる。将来のFCC規則が例えば北アメリカ上の約600~1000kmの軌道、赤道軌道などを含む一般軌道におけるキューブサットの寿命をさらに制限する場合、より高いデータ速度及びより良好なデータ解像度のためにより低い軌道におけるキューブサットの寿命を最大限に高めることができる可能性があるので、上記のことは極めて有利である可能性がある。形状を著しく変えることのない配置を含む、人工衛星のコンステレーションまたは配置はまた、サーマサットを用いてより長期間にわたってそれらの人工衛星を軌道上に保つことにより、著しい金額を節約することができる。これは、コンステレーションを補充しかつ維持することに関連する、あらゆる度重なるコストを節約する。
【0079】
比較的調査されていない電離層領域の様々な場所における研究も延長され得る。極度に低い電離層の研究は依然として困難ではあるものの、これらの関心領域に留まることができる時間は、実質的に増大する。時間ベースの研究も、天文学及び天体物理学などの様々なミッションにとって重要である。長い軌道寿命を維持することにより、ユーザは、彼らの人工衛星から遙かに多くのものを得ることができ、これは、高価値及び高コストのペイロードを用いるミッションにとっては特に重要である。
【0080】
(ISSからの)軌道上昇:
別の関心領域は、人工衛星の軌道を初期の打上げ位置から変更することである。1つのそのような例は、減衰を防ぎ、かつ、より多くのミッション柔軟性を提供するためにISSから離れて高度を上げるものであろう。これを達成することは、単純な作業ではあるが、加圧された容器、有害な推進剤、または大型の電池を含まない、特別な推進システムを必要とする。これらは全て、国際宇宙ステーション(ISS)上で起こるであろういかなる事故をも防ぐためのものである。サーマサットは、これらの重要性に完全に適合し、かつ、ISS軌道から迅速に離れることを保証するために高インパルスマヌーバを実行し得る。そのようなミッションが、ISS軌道からの打上げ及び人工衛星の軌道を50km上昇させていることを描いている
図17に見られる。
図17は、ISSから打ち上げられた6Uキューブサットの高度変化及び推進剤質量を示す。人工衛星の軌道をその最初の投入軌道を超えて上昇させることは、その人工衛星の能力を拡大するので、サーマサットは、その推進システムのための加圧された容器、有害物質、または大型の電池を含まないという点において他に類を見ない。1つの例示的な実施形態では、サーマサットは、追加の軌道保持及び最終的な軌道離脱を行うミッションの期間のために推進剤の余裕を持って、数日間で50kmの高度差に達し得る。
【0081】
図17に示された1つの例示的な実施形態では、サーマサットの高度が50km上昇するのにまさに3日余りかかる。これは、天底ポインティングミッションのためのその高度における予想チャージ時間を含む。ミッションが太陽ポインティングであった場合、なお一層速い展開の可能性がある。この構成では、人工衛星がFCCの割り当てられたウインドウ内で自然に減衰しないようであれば、軌道保持及び最終的な軌道離脱のための余分を残しながらこのマヌーバを行うために、0.5kgの推進剤のうちのほんの一部が使用される。
【0082】
軌道上昇は、打上げ機の一次ペイロードに完全に依存するわけではないミッションを達成するために、最初の投入軌道を修正するのと同様に、他の高度において使用され得る。サーマサットは、大きな高度変化が可能であり、かつ、人工衛星のための限定された傾斜変化を行うことができる。
【0083】
サーマサットはまた、それらが各人工衛星間で同じ位相を有することを確実にするために、同じ軌道においてコンステレーションを迅速に展開するために使用され得る。これは、可変抗力分離と比較して、機能的なコンステレーションを展開するのに必要とされる時間を大幅に減少させることができる。サーマサットは、可変抗力法に起因して人工衛星の寿命を犠牲にすることなしに、コンステレーションを展開することができる。
【0084】
コンステレーションの展開は、単にフェージング軌道を使用して人工衛星にとって必要とされる位相差を得ればよいだけのことである。一例が
図18に示されており、各人工衛星間に等しい位相を有する軌道へのいくつかの人工衛星の例示的なコンステレーション展開を示している。サーマサットの高推力及び高比推力により、コンステレーションを正確な位相角に迅速に到達させることができ、コンステレーションを展開するのに要する合計時間を減少させることができる。人工衛星が正確な位相角に達するのにかかる時間は、与えられたデルタ-vに依存する。最大で1,800Nsのトータルインパルスにより、サーマサットは、キューブサットのコンステレーションを迅速に段階的に行うとともに、軌道保持及び将来の他のマヌーバのための推進剤の余裕を持つことができる。
【0085】
サーマサットの3つの例示的なバージョンが、より多くのミッションを可能にし、かつ、異なる人工衛星に役立ち、かつ、サーマサット、サーマサット・プラス(TS+)、及びサーマサット・ライトを含む。サーマサット・ライトは、サーマサットシステムの小型版であり、推進のために3U人工衛星において使用され得る1U推進システムを含み、かつ、縮小されたサイズに起因してより低いトータルインパルスを有するだけで実質的にサーマサットシステムと同一の特徴を含む。サーマサット・ライト構成のためのチャージ時間は、基本的サーマサットモデルと比較的一致したままである。
【0086】
TS+は、基本的サーマサットよりも遥かに大型のバージョンであり、
図19に示されている。
図19は、推進剤として水素を用いる高比推力マヌーバのための展開可能な太陽熱集中器を有するサーマサット・プラス構成を示す。1つの例示的な実施形態では、サーマサット・プラスは、推進剤として水素を利用し、かつ、サーマルキャパシタ及び光学系上に光を集中させるために太陽集光器を使用する。この例示的な実施形態では、サーマサット・プラスの動作温度は、2,500Kであり、858sの比推力を可能にする。これらの特徴は、サーマサット・プラスを、静止遷移、及びLEOからの月ミッションを含むより大きな速度変化を達成するための高効率のマヌーバにとって好ましいものにする。TS+のためのそのようなミッションの一例は、24:6:1ウォーカーデルタコンステレーションにおける月GPSコンステレーションの確立である。そのような宇宙機は、それ自体をLEOパーキング軌道から月まで輸送して月面上での将来のミッションのためのGPSネットワークを形成することが可能であろう。TS+はまた、小惑星迎撃及び他の関心の対象などの即応ミッションのためのパーキング軌道において使用され得る。
【0087】
図20~23は、集中器が設計に含まれるべき実施形態において集束太陽光をサーマサットとともに使用することができる可能性がある、太陽集光器の設計を示す。太陽集光器は、
図20に示された構成などの皿(放物線状、球状、または他の形状)を含み得る(https://www.alternative-energy-tutorials.com/solar-hot-water/solar-dish-collector.htmlも参照されたい)。
図21は、桶型集熱器を示す(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0167732216307383も参照されたい)。
図22は、平坦なまたはパネル張りの集熱器を示す(https://www.nasa.gov/topics/solarsystem/features/10-144.htmlも参照されたい)。
図23は、集熱器としてのレンズ(フレネル、球状、または曲面状)を示す(http://www.meiyingoptics.com/quality-10993018-round-600mm-big-fresnel-lens-1-meter-fresnel-lens-fresnel-lens-solar-cooker-fresnel-lens-price-spotも参照されたい)。
【0088】
少なくとも1つの態様では、少なくとも2つの層を備える光透過システムであって、2つの層が、選択的透過体、少なくとも1つの透過体及び少なくとも1つの吸収体、または、選択的吸収体を含む、光透過システムと、光透過システムを通過する光からの吸収熱を貯蔵するためのサーマルキャパシタと、を含む、推進システムであって、選択的吸収体の層が、光の長波長が境界を通過するのを妨げながらより短い波長が通過するのを可能にする、推進システムが提供される。
【0089】
1つの態様では、推進システムは、複数の透過体、透過体及び吸収体、または複数の吸収体を含み得る。さらに、推進システムの選択的吸収体の層は、光透過システムなしで可能とされるよりも加熱温度を高く上昇させ得る。なおもさらに、水または他の推進剤が、推進力を生み出すために加熱され得る。少なくとも1つの実施形態では、選択的吸収体は、フォトニック結晶である。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも2つのミラーのうちの一方は、ゴールドミラーであり、少なくとも2つのミラーのうちの他方は、ホットミラーである。少なくとも1つの実施形態では、推進システムは、構造体と相互作用するように離間されたスラスタマウントをさらに備える。少なくとも1つの実施形態では、ある期間にわたって熱を収集して、より短い期間内でその熱を推進剤中に放出することによる宇宙推進のために、相変化材料が使用される。少なくとも1つの実施形態では、太陽熱集収器の単位面積当たりの最大動作出力レベルは、宇宙空間内の所定の点における自然の太陽照射量のそれを超えて高まる。少なくとも1つの実施形態では、システムは、熱ロケット推進のために使用される。少なくとも1つの実施形態では、選択的透過体または選択的吸収体は、宇宙、他の惑星、または真空空間において使用されるものを含むコンポーネントの温度を上昇させる選択的エミッタである。少なくとも1つの実施形態では、システムは、推進のために相変化材料に太陽エネルギーを貯蔵する。少なくとも1つの実施形態では、システムは、放射熱伝達システムと結合された相変化材料を使用する。少なくとも1つの実施形態では、放射熱伝達システムは、相変化材料の温度をその自然の平衡状態を超えて上昇させる。
【0090】
別の実施形態では、複数のモジュール式セクションを備える推進システムが提供され、複数のモジュール式セクションは、サーマルキャパシタ及び光学系と、液体貯蔵タンクと、中間圧力タンクとを含む。少なくとも1つの実施形態では、推進システムは、追加のサブシステムをさらに備える。少なくとも1つの実施形態では、推進システムは、少なくとも2つの層を含む光透過システムであって、2つの層が、選択的透過体、または、少なくとも1つの透過体及び少なくとも1つの吸収体、または、選択的吸収体を含む、光透過システムと、光透過システムを通過する光からの吸収熱を貯蔵するためのサーマルキャパシタとを備え、選択的吸収体の層は、光の長波長が境界を通過するのを妨げながらより短い波長が通過するのを可能にする。少なくとも1つの実施形態では、選択的吸収体の層は、光透過システムなしで可能とされるよりも加熱温度を高く上昇させる。少なくとも1つの実施形態では、水または他の推進剤が、推進力を生み出すために加熱される。少なくとも1つの実施形態では、システムは、推進力のために相変化材料に太陽エネルギーを貯蔵する。少なくとも1つの実施形態では、システムは、放射熱伝達システムに結合された相変化材料を使用する。
【0091】
上記の実施形態に対してその広範な発明的概念から逸脱することなしに変更がなされ得ることが、当業者によって理解されるであろう。例えば、弁、モータ、マイクロコンピュータ、または流量計は、追加の特徴を含み得る。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定められる本開示の精神及び範囲内の修正を包含することが意図されていることが、理解される。
【0092】
本開示は、この詳細な説明、例、及び特許請求の範囲を参照することにより、より容易に理解され得る。本開示は、そうでないことが言及されていない限り、開示された特定のシステム、装置、及び/または方法に限定されるものではなく、したがって当然ながら変化し得ることが、理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、単に特定の態様を説明する目的のためのものであり、限定的なものとして意図されていないこともまた、理解されるべきである。
【0093】
この説明は、現在知られている最良の態様での本開示の教示を可能にするものとして提供されている。当業者は、本開示の有益な結果をなおも得ながら、説明された態様に多くの変更がなされ得ることを、認識するであろう。本開示の望ましい利益のうちのいくつかは、他の特徴を利用することなしに本開示の特徴のうちのいくつかを選択することによって得られ得ることもまた、明らかであろう。したがって、当業者は、本開示に対する多くの修正及び適合が可能であり、そのような修正及び適合は、特定の状況では望ましいことすらあること、また、本開示の一部であることを、認識するであろう。したがって、この説明は、本開示の原理の例証として提供されており、本開示を限定するものではない。
【0094】
本明細書において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ボディ」への言及は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、2つ以上のボディを有する態様を含む。
【0095】
本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値から、及び/または「約」別の特定の値まで、と表され得る。そのような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用により近似値として表されている場合、特定の値が別の態様をなすことが、理解されるであろう。範囲の各々の端点は、他の端点との関連においてもまた他の端点とは無関係でも有意であることが、さらに理解されるであろう。
【0096】
本明細書において、「任意選択の」または「任意選択的に」という用語は、続いて説明される事象または状況が起こる場合もあれば起こらない場合もあること、ならびに、前述の事象または状況が起こる事例及び前述の事象または状況が起こらない事例を説明が含むことを意味する。
【0097】
本開示のいくつかの態様が上記の明細書で開示されてきたが、上記の説明及び関連する図面において提示された教示の利益を有する本開示の関係者が本開示の多くの修正及び他の態様を想到するであろうことが、当業者によって理解される。したがって、本開示は上記で開示された特定の態様に限定されないこと、及び、多くの修正及び他の態様が添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれるように意図されていることが、理解される。さらに、本明細書、及び本明細書に続く特許請求の範囲において特定の用語が用いられるものの、それらは、単に包括的かつ説明的な意味で使用されているのであって、説明された開示を限定する目的で使用されてはいない。
【国際調査報告】