(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】2つのカーカス層を備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 3/04 20060101AFI20231018BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20231018BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20231018BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B60C3/04 Z
B60C3/04 B
B60C9/08 C
B60C9/18 F
B60C9/18 K
B60C9/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520318
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-03
(86)【国際出願番号】 FR2021051745
(87)【国際公開番号】W WO2022074343
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】デュシュマン シルヴィー
(72)【発明者】
【氏名】ギマール ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ムーロー ピエール
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
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3D131DA43
3D131DA54
3D131LA28
(57)【要約】
乗用車用のタイヤ(11)は、クラウン(12)と、2つのビード(32)と、各々が各ビード(32)をクラウン(12)に連結する2つのサイドウォール(30)と、各ビード(32)に固定されたカーカス補強体(34)とを備える。タイヤ(11)は、LI>LI’+1であって、LI’がETRTO規格マニュアル(2019)に準拠した同じサイズのEXTRA LOADタイヤの荷重指数である荷重指数LIを有する。タイヤ(11)は、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠してSWをタイヤの公称断面幅、ARをタイヤの公称アスペクト比とした場合に、H=SW×AR/100で定義されるサイドウォール高さHがH≧95である。カーカス補強体(34)は第1及び第2のカーカス層(36、37)を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウン(12)と、2つのビード(32)と、前記ビード(32)の各々を前記クラウン(12)に連結する2つのサイドウォール(30)と、前記ビード(32)の各々に固定されたカーカス補強体(34)と、を備える乗用車用のタイヤ(11)であって、前記クラウン(12)は、クラウン補強体(16)とトレッド(14)とを備え、前記カーカス補強体(34)は前記サイドウォール(30)の各々内を延びると共に前記クラウン(12)内で前記クラウン補強体(16)の半径方向内側を延びており、
前記タイヤ(11)は、LI>LI’+1であって、LI’がETRTO規格マニュアル(2019)に準拠した同じサイズのEXTRA LOADタイヤの荷重指数である荷重指数LIを有し、
前記タイヤ(11)は、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠してSWを前記タイヤの公称断面幅、ARを前記タイヤの公称アスペクト比とした場合に、H=SW×AR/100で定義されるサイドウォール高さHがH≧95であり、
前記カーカス補強体(34)は、第1及び第2のカーカス層(36、37)を備える、タイヤ(11)。
【請求項2】
LI’+1≦LI≦LI’+4、好ましくはLI’+2≦LI≦LI’+4である、請求項1に記載のタイヤ(11)。
【請求項3】
前記第1及び第2のカーカス層(36、37)の各々は、前記カーカス層(36、37)の2つの軸方向縁(361、362、371、372)によって軸方向に区切られ、軸方向に前記カーカス層(36、37)の一方の軸方向縁から他方の軸方向縁まで、前記タイヤ(11)の周方向(X)と、絶対値で80°から90°までの範囲にある角度を成す主方向に延びるカーカス布地繊維状補強要素(360、370)を備える、請求項1又は2に記載のタイヤ(11)。
【請求項4】
225から315までの範囲にある公称断面幅SW、25から55までの範囲にある公称アスペクト比、18から23までの範囲にある公称リム径、及び98から116までの範囲にある荷重指数LIを有し、好ましくは245から315までの範囲にある公称断面幅SW、30から45までの範囲にある公称アスペクト比、18から23までの範囲にある公称リム径、及び98から116までの範囲にある荷重指数LIを有する、請求項1から3のいずれか記載のタイヤ(11)。
【請求項5】
0.88≦H/LI≦0.98である、請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ(11)。
【請求項6】
以下のサイズ及び荷重指数:225/55R18 105、225/55ZR18 105、205/55R19 100、205/55ZR19 100、235/45R21 104、235/45ZR21 104、285/45R22 116、285/45ZR22 116、245/40R19 101、245/40ZR19 101、255/40R20 104、255/40ZR20 104、245/40R21 103、 245/40ZR21 103、255/40R21 105、255/40ZR21 105、265/40R21 108、265/40ZR21 108、255/40R22 106、255/40ZR22 106、275/35R21 105、275/35ZR21 105、285/35R21 108、285/35ZR21 108、295/35R22 111、295/35ZR22 111、275/35R23 108、275/35ZR23 108、325/30R21 111、325/30ZR21 111から選択されたサイズ及び荷重指数LIを有する、請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ(11)。
【請求項7】
前記クラウン補強体(16)は、半径方向内側ワーキング層(24)と、前記半径方向内側ワーキング層(24)の半径方向外側に配置された半径方向外側ワーキング層(26)とを含むワーキング補強体(20)を備える、請求項1から6のいずれかに記載のタイヤ(11)。
【請求項8】
前記ワーキング層(24、26)の各々は、前記ワーキング層(24、26)の2つの軸方向縁(241、242、261、262)によって軸方向に区切られ、軸方向に前記ワーキング層(24、26)の一方の軸方向縁から他方の軸方向縁まで実質的に互いに平行に延びるワーキング繊維状補強要素を備える、請求項7に記載のタイヤ(11)。
【請求項9】
前記ワーキング繊維状補強要素の各々は、前記タイヤ(11)の周方向(X)と、絶対値で、厳密には10°より大きい、好ましくは15°から50°までの範囲、より好ましくは20°から35°までの範囲にある角度を成す主方向に延びる、請求項8に記載のタイヤ(11)。
【請求項10】
前記クラウン補強体(16)はフープ補強体(22)を備え、前記フープ補強体(22)は、前記フープ補強体(22)の2つの軸方向縁(261、282)によって軸方向に区切られ、前記フープ補強体(22)の前記軸方向縁((261、282)の間を軸方向に延びるように螺旋状に周方向に巻かれた少なくとも1つのフーピング繊維状補強要素を備える、請求項1から9のいずれかに記載のタイヤ(11)。
【請求項11】
前記又は各フーピング繊維状補強要素は、前記タイヤ(11)の周方向(X)と、絶対値で10°以下、好ましくは7°以下、より好ましくは5°以下である角度を成す主方向に沿って延びる、請求項10に記載のタイヤ(11)。
【請求項12】
リム(200)を備える取付け支持体(100)と、
前記リム(200)に取り付けられる請求項1から11のいずれか1項に記載のタイヤ(11)と、
を備える取付け組立体(10)。
【請求項13】
前記クラウン補強体(16)は、半径方向で前記トレッド(14)と前記カーカス補強体(34)との間に配置されて、少なくとも1つの軸方向に最も狭いワーキング(26)を含むワーキング補強体(20)を備え、前記軸方向に最も狭いワーキング層(26)がmm単位で表される軸方向幅T2を有し、前記リム(200)がETRTO規格マニュアル(2019)に準拠してmm単位で表されるリム幅Aを有する場合に、比率T2/Aは、T2/A≦1.00である、請求項12に記載の取付け組立体(10)。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の少なくとも1つのタイヤ(11)、又は請求項12又は13に記載の取付け組立体(10)を備える乗用車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、そのようなタイヤを備える取付け組立体、及びそのようなタイヤ又はそのような取付け組立体を備える車両に関する。タイヤとは、取付け組立体の支持要素と協働してキャビティを形成し、このキャビティが大気圧を超える圧力まで加圧可能であるように意図された囲いを意味すると理解される。本発明による取付け組立体は、タイヤの主軸と一致する取付け組立体の主軸に関して回転対称性を示す実質的に円環体形状の構造を有する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車の開発は、特に、車両の航続距離に実質的に比例して比較的高重量のバッテリのために、車両重量の増加を引き起こしている。このように、例えば、電気自動車の航続距離を伸ばすために、バッテリのサイズを大きくする必要があり、結果的に車両の重量が増加する。
【0003】
簡単に言えば、今日、電気モータの航続距離が1キロメートル伸びると車両の重量が1キログラム増加すると推定されている。従って、航続距離500kmを達成するためには、内燃機関車両の重量を約500kg増加させる必要がある。このような車両に装備するためには、非常に高い荷重に耐えることのできるタイヤを使用する必要がある。
【0004】
従来から、比較的高い荷重に耐えることのできる乗用車用のタイヤが知られている。このタイヤは、MICHELIN(商標)のブランド名でPilot Sport 4シリーズとして販売されており、サイズが255/35R18である。このタイヤには、ETRTO規格マニュアル(2019)で定められたEXTRA LOAD(XLと略記)バージョンがあり、このEXTRA LOADバージョンは、94に等しい荷重指数を有する。つまり、このタイヤは、290kPaの圧力で670kgの荷重に耐えることができる。この耐荷重性は、同じサイズでSTANDARD LOAD(SLと略記)と呼ばれる、荷重指数が90に等しく250kPaの圧力で600kgの荷重に耐えられるタイヤと比較して、相対的に高い。
【0005】
このようなタイヤを市場に出すためには、規制試験に合格する必要がある。例えばヨーロッパでは、タイヤは、UN/ECE規則第30号の附則VIIに記載される荷重/速度性能試験に合格する必要がある。
【0006】
しかしながら、EXTRA LOADバージョンでは、STANDARD LOADバージョンではなおさら、このようなタイヤは、所望の航続距離を達成するために必要なバッテリに対応する余分な荷重に耐えることができない。従って、タイヤメーカは、この新しいニーズに応えるために新しい解決策を提案する必要がある。
【0007】
タイヤメーカが考える解決策の1つは、所与の車両に対して、より大きなサイズを有し、それによってより大きな荷重に耐えられるタイヤを使用することである。このように、所与の車両には、より高い荷重指数を有するタイヤを装着することができる。例えば、EXTRA LOADバージョンで上述のタイヤを装着した車両には、EXTRA LOADバージョンのサイズ275/35R19のタイヤを装着することができ、これは100に等しい荷重指数を有し、290kPaの圧力で、670kgの荷重よりも遥かに大きい800kgの荷重に耐えることができる。
【0008】
このようなタイヤサイズの増大は、必然的に車両の内部空間の減少又は車両の外部嵩の増大のいずれかを伴うが、これらは、収容性能及びコンパクト性の理由からいずれも望ましくない。
【0009】
さらに、このようなタイヤサイズの増大は、車両シャーシの再設計を必要とし、これは、明白なコストの理由から望ましくない。
【0010】
最後に、タイヤのサイズ、特に公称断面幅の増加は、タイヤから発生する外部騒音の増大、そして転がり抵抗の増大を伴い、これも騒音公害及び車両のエネルギ消費を低減するためには望ましくない。
【0011】
例えば、タイヤメーカが考える別の解決策は、所与のサイズ及び所与のバージョンのタイヤについて、推奨空気圧を高くすることである。これは、空気圧が高いほど、タイヤが高荷重に耐えられるからである。
【0012】
しかしながら、比較的高い推奨空気圧を使用すると、タイヤが硬くなって、車両の乗員にとっては快適性が損なわれるので、乗員の快適性が耐荷重よりも優先される場合、これは明らかに一部の自動車メーカが望まない。
【0013】
タイヤメーカが遭遇する別の問題は、比較的高いサイドウォールを有するタイヤのカーカス補強体の比較的高い張力であり、張力は、耐荷重が大きくなるほど、より一層高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、タイヤの推奨圧力の増加を必ずしも伴うことなく、既存のタイヤよりも大きな荷重に耐えるが、収容性能、コンパクト性及び快適性を犠牲にすることなく、依然としてタイヤのカーカス補強体の張力を制御できるタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明の主題は、クラウンと、2つのビードと、各々が各ビードをクラウンに連結する2つのサイドウォールと、各ビードに固定されたカーカス補強体と、を備える乗用車用のタイヤであって、クラウンは、クラウン補強体とトレッドとを備え、カーカス補強体は、各サイドウォール内を延びると共にクラウン内でクラウン補強体の半径方向内側を延びており、
タイヤは、LI>LI’+1であって、LI’がETRTO規格マニュアル(2019)に準拠した同じサイズのEXTRA LOADタイヤの荷重指数である荷重指数LIを有し、
タイヤは、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠してSWをタイヤの公称断面幅、ARをタイヤの公称アスペクト比とした場合に、H=SW×AR/100で定義されるサイドウォール高さHがH≧95であり、
カーカス補強体は第1及び第2のカーカス層を備える。
【0016】
本発明によれば、タイヤは乗用車用のタイヤである。このようなタイヤは、例えば、ETRTO(欧州タイヤ及びリム技術機構)規格マニュアル(2019)に規定されている。このようなタイヤは、一般にサイドウォールの少なくとも1つに、ETRTO規格マニュアル(2019)のマーキングに準拠してX/YαVUβの形でタイヤのサイズを示すマーキングを有し、Xは公称断面幅を指定し、Yは公称アスペクト比を指定し、αは構造を指定してR又はZRであり、Vは公称リム径を指定し、Uは荷重指数を指定し、βは速度定格を指定する。
【0017】
荷重指数LI’は、同じサイズ、すなわち同じ公称断面幅、同じ公称アスペクト比、同じ構造(R及びZRは同一と見なす)及び同じ公称リム径を有するタイヤの荷重指数である。荷重指数LI’は、ETRTO規格マニュアル(2019)に、具体的には、「乗用車用タイヤ-メートル法指定によるタイヤ」と題するセクション、20~41頁に与えられる。
【0018】
本発明によるタイヤの荷重指数を、EXTRA LOADバージョンにおける同じサイズのタイヤの荷重指数と比べて増大させることにより、本発明は、それが使用される車両の収容能力、コンパクト性及び快適性を変更することなく、取付け組立体の耐荷重性能を高めることができる。なぜなら、本発明によるタイヤのサイズがEXTRA LOADバージョンのタイヤのサイズと同一であるため、取付け組立体は、EXTRA LOADバージョンのタイヤよりも多くのスペースを取ることがないからである。本発明によるタイヤには、これをSTANDARD LOADバージョン及びEXTRA LOADバージョンと区別するために、例えばタイプHL(HIGH LOAD)又はXL+(EXTRA LOAD+)のマーキングなど、特徴のあるマーキングを付与することができる。このようなマーキングは、高耐荷重(HIGH LOAD CAPACITY)タイヤを指定するために、特にETRTO規格マニュアル(2021)の「一般的注意事項-乗用車用タイヤ」のセクションの3頁に開示されている。また、サイズの例は、ETRTO規格マニュアル(2021)の44頁、「乗用車用タイヤ-メートル法指定によるタイヤ」セクションのパラグラフ9.1に開示されている。
【0019】
上記で説明したように、サイドウォール高さが比較的大きいタイヤは、カーカス補強体、特に、例えばビードワイヤなどの周方向補強要素の周りで折り返すことによってビードに固定されたカーカス補強体の部分について比較的高い張力をもたらし、これは、サイドウォール高さが比較的小さいタイヤと比べて、それらが収容する膨張ガスの比較的大きな体積が原因である。この張力は、支える荷重が高いほど大きくなり、これは、本発明による荷重指数LIを有するタイヤの場合である。従って、2つのカーカス層を使用することが不可欠であり、それによって、各カーカス層の張力を大幅に低減することが可能となる。
【0020】
さらに、サイドウォールが比較的短い、すなわちH<95のタイヤとは対照的に、本発明によるタイヤは、その比較的大きな高さに起因して、カーカス補強体の比較的低い圧縮を示す。それゆえ、2つのカーカス層が存在するにも拘わらず、特に高荷重の下で且つ比較的低い圧力でカーカス補強体が早期に劣化するというリスクが回避される。
【0021】
各第1及び第2のカーカス層は、各第1及び第2のカーカス層のそれぞれ2つの軸方向縁によって軸方向に区切られ、各第1及び第2のカーカス層のそれぞれ一方の軸方向縁から他方の軸方向縁まで軸方向に延びるカーカス繊維状補強要素を備える。
【0022】
公称断面幅SW及び公称アスペクト比ARは、タイヤのサイドウォールにETRTO規格マニュアル(2019)に準拠して刻まれるサイズマーキングによって示される。
【0023】
本発明によるタイヤは、タイヤの回転軸と実質的に一致する回転対称軸の周りの円環体形状を有する。この回転対称軸は、当業者が従来から使用している3つの方向、軸方向、周方向及び半径方向を規定する。
【0024】
軸方向とは、タイヤ又は取付け組立体の回転対称軸、すなわちタイヤ又は取付け組立体の回転軸に実質的に平行な方向であると理解される。
【0025】
周方向とは、軸方向に対してもタイヤ又は取付け組立体の半径に対しても実質的に垂直な(換言すれば、タイヤ又は取付け組立体の回転軸の周りの円に接する)方向であると理解される。
【0026】
半径方向とは、タイヤ又は取付け組立体の半径に沿う方向、つまり、タイヤ又は取付け組立体の回転軸と交差してその軸に対して実質的に垂直なあらゆる方向であると理解される。
【0027】
タイヤの正中面(Mで示す)とは、2つのビードの軸方向中間に位置してクラウン補強体の軸方向中央を通る、タイヤの回転軸に対して垂直な平面であると理解される。
【0028】
タイヤの赤道周面とは、子午断面において、正中面と半径方向とに垂直な、タイヤの赤道を通る平面であると理解される。タイヤの赤道は、子午断面(周方向に垂直で半径方向及び軸方向に平行な平面)において、タイヤの回転軸に平行であり、地面と接触するように意図されたトレッドの半径方向最外点と、支持体、例えばリムと接触するように意図されたタイヤの半径方向最内点と、の間で等距離に位置する軸である。
【0029】
子午面とは、タイヤ又は取付け組立体の回転軸に平行でそれを含み、周方向に垂直な平面であると理解される。
【0030】
「~の半径方向内側に」及び「~の半径方向外側に」は、それぞれ、「~よりもタイヤの回転軸に近い」及び「~よりもタイヤの回転軸から遠い」を意味すると理解される。「~の軸方向内側に」及び「~の軸方向外側に」は、それぞれ、「~よりもタイヤの正中面に近い」及び「~よりもタイヤの正中面から遠い」を意味すると理解される。
【0031】
ビードとは、タイヤを取付け支持体に、例えばリムを備えたホイールに取り付けることができるように意図されたタイヤの部分であると理解される。従って、各ビードは特に、リムの取付けを可能にするリムのフランジと接触するように意図される。
【0032】
表現「aとbとの間」で示す値の範囲は、aより大からbより小に広がる(つまり、端点a及びbを除外する)値の範囲を表すのに対して、表現「aからbまで」で示す値の範囲は、aからbまで広がる(つまり、厳密な端点a及びbを含む)値の範囲を意味する。
【0033】
好ましくは、各第1及び第2のカーカス層は、各サイドウォール内を延びると共にクラウン内でクラウン補強体の半径方向内側を延びる。
【0034】
随意的ではあるが、それでもなお有利な実施形態では、H≧100である。
【0035】
有利な一実施形態では、LI’+1≦LI≦LI’+4、好ましくはLI’+2≦LI≦LI’+4である。従って、タイヤの耐荷重性能はさらに高まる。
【0036】
随意的に、各第1及び第2のカーカス層は、カーカス層の2つの軸方向縁によって軸方向に区切られ、軸方向に一方の軸方向縁から他方の軸方向縁まで、タイヤの周方向と、絶対値で80°から90°までの範囲にある角度を成す主方向に延びるカーカス布地繊維状補強要素を備える。
【0037】
繊維状要素とは、円形、楕円形、長方形、多角形、特に矩形又は正方形又は長円形といった断面の形状に関わらず、その断面の最大寸法よりも少なくとも10倍大きい長さを示す要素であると理解される。矩形断面の場合、繊維状要素はストリップの形態をとる。
【0038】
布地とは、粘着性組成物をベースとする1又は2以上の被覆層で任意に被覆された1又は2以上の布地基本モノフィラメントを備えた繊維状要素を意味すると理解される。この又はこれらの布地基本モノフィラメントは、例えば、溶融紡糸、溶液紡糸又はゲル紡糸によって得られる。各布地基本モノフィラメントは、有機材料、特にポリマ材料、或いは無機材料、例えばガラス又はカーボンなどから作製される。ポリマ材料は、例えば脂肪族ポリアミド、特にポリアミド6、6、及びポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートなど、熱可塑性タイプのものとすることができる。ポリマ材料は、例えば芳香族ポリアミド、特にアラミド、及び天然又は人造のセルロース、特にレーヨンなどの非熱可塑性タイプのものとすることができる。
【0039】
好ましい実施形態では、第1及び第2のカーカス層の1つは、各ビードの周方向補強要素の周りに巻きを形成し、当該カーカス層の軸方向内側部分が当該カーカス層の軸方向外側部分の軸方向内側に配置されるようになっている、及び、当該カーカス層の各軸方向端が各周方向補強要素の半径方向外側に配置されるようになっている。
【0040】
特定の好ましい変形形態では、サイドウォール高さに関わらず、巻きを形成するカーカス層の各軸方向端は、半径方向でタイヤの赤道の内側に配置され、より一層好ましくは、各ビードの各周方向補強要素の半径方向内端から30mm以下の半径方向距離に配置される。
【0041】
巻かれたカーカス層の各軸方向端をタイヤの赤道の内側に配置することにより、カーカス補強体の質量が著しく削減される。さらに、現在、乗用車用タイヤに使用されているリムの大部分は、全ての事例において高さが30mm未満であるJ型フランジを有する。リムのフランジに対して半径方向に実質的に対応する領域内への各軸方向端の非常に好ましい配置により、各軸方向端を機械的に保護することが可能となる。というのは、各軸方向端は、それが各ビードの各周方向補強要素の半径方向上方にあまりに遠く配置されると、すなわち、各周方向補強要素の半径方向内端から厳密に30mmを超える半径方向距離に配置されると、過剰に大きな応力を受けるタイヤの可撓性領域に存在することになり、その応力は、高耐荷重(HIGH LOAD CAPACITY)タイヤの場合に非常に高いからである。
【0042】
第1及び第2のカーカス層の存在に適合する好ましい第1の構成では、第1のカーカス層が各ビードの各周方向補強要素の周りに巻きを形成し、第1のカーカス層の軸方向内側部分が第1のカーカス層の軸方向外側部分の軸方向内側に配置されるように、並びに第1のカーカス層の各軸方向端が各周方向補強要素の半径方向外側に配置され、第2のカーカス層の各軸方向端が、第1層の各軸方向端の半径方向内側で、
-軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分と軸方向外側部分との間に、又は
-軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分の内側に、
配置されるように、好ましくは、第2のカーカス層の各軸方向端は、軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分と外側部分との間に配置されるようになっている。
【0043】
第1及び第2のカーカス層のこのような配置により、第1及び第2のカーカス層の間の効果的な機械的結合を得ることが可能となり、第1及び第2のカーカス層の間の剪断応力を低減することが可能となる。従って、タイヤのエネルギ散逸と温度上昇が低減され、高荷重下で剪断応力が特に大きくなる場合には、なおさらである。
【0044】
実際、カーカス補強体のこのような配置は、95≦H≦155の場合に特に有利である。なぜなら、タイヤのサイドウォール高さを、95≦H≦155となるようなサイドウォール高さHに制限することによって、ガスの体積が減り、ひいてはカーカス補強体の張力が妥当なレベルまで低減するからである。
【0045】
さらに、第1及び第2のカーカス層に関する特定の配置によって、驚くべきことに、特に高荷重下で、並びにSTANDARD LOAD又はEXTRA LOADバージョンでの同じサイズのタイヤに対する推奨圧力以下の圧力で、サイドウォールにおける最適なエネルギ散逸と動作温度とを備えたタイヤが得られる。このことは、第1及び第2のカーカス層に関する特定の配置がタイヤの一領域に位置し、この事例ではビード内又はビード近傍に位置し、これにより、ビードから離れたタイヤの別領域、この事例ではサイドウォールでのエネルギ散逸を低減することが可能になるので驚くべきことである。カーカス補強体の特定の配置、すなわち、第2のカーカス層の各軸方向端が、軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分と外側部分との間に、又は軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分の内側に配置されることにより、第1のカーカス層と第2のカーカス層との間で張力の差を低減できることが見出されている。実際のところ、第1のカーカス層と第2のカーカス層との間で張力の差が小さくなればなるほど、これら第1のカーカス層と第2のカーカス層との間に生じる剪断応力が小さくなり、エネルギの散逸も少なくなる。
【0046】
第1及び第2のカーカス層の存在に適合する第2の構成では、第1のカーカス層が各ビードの各周方向補強要素の周りに巻きを形成し、軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分が第1のカーカス層の軸方向外側部分の内側に配置されるようになっており、及び、第1のカーカス層の各軸方向端が半径方向で各周方向補強要素の外側に配置され、第2のカーカス層の各軸方向端が半径方向で第1層の各軸方向端の内側に配置され、軸方向で第1のカーカス層の各軸方向外側部分の外側に配置されるようになっている。
【0047】
この第2の構成は、H>155の場合に特に有利である。というのは、H>155であるような非常に高いサイドウォール高さを有する高耐荷重(HIGH LOAD CAPACITY)タイヤでは、第1のカーカス層の端部における張力が非常に高くなるので、第1の構成で説明した配置とは異なり、第2のカーカス層の各軸方向端が軸方向で第1のカーカス層の各軸方向外側部分の外側に配置されるからである。カーカス補強体のこのような配置により、第1のカーカス層の端部における張力は、妥当なレベルまで低減されることになる。
【0048】
サイドウォール高さが非常に高い、すなわちH>155の高耐荷重(HIGH LOAD CAPACITY)タイヤの場合、第1のカーカス層と第2のカーカス層との間で張力の差が依然として大きいとしても、サイドウォール高さによって、エネルギを効果的に散逸させる比較的大きな剪断面積を有することが可能となり、このようなタイヤの場合、第1の構成で説明した第1及び第2のカーカス層の配置は好ましくない。
【0049】
各カーカス布地繊維状補強要素は、475tex以下の総番手を有する少なくとも2つのマルチフィラメントプライの集合体を備えることが好ましい。
【0050】
これは、2つのカーカス層が存在することで、各層の各カーカス布地繊維状補強要素の総番手を減らすことが可能となる一方で、依然として機械的強度が十分なカーカス補強体を有するからである。
【0051】
随意的に、各第1及び第2のカーカス層の各カーカス布地繊維状補強要素は、それぞれ、D1≦0.90mm且つD2≦0.90mm、好ましくはD1≦0.85mm且つD2≦0.85mm、並びにより好ましくはD1≦0.75mm且つD2≦0.75mmであるような、平均直径D1、D2を有する。
【0052】
このような比較的小さな直径D1及びD2により、各第1及び第2のカーカス層の端部に近い位置における亀裂の発生を抑えることが可能となる。これは、各カーカス布地繊維状補強要素の端部が、詳細には当該要素が何らかの粘着性組成物を欠き、結果としてそれが埋め込まれる隣接した母材にあまり粘着しないという事実に起因して、亀裂が始まりやすい点をもたらすからである。各直径D1、D2を小さくすることで、端部の表面積が減少し、結果として亀裂の発生するリスクが低減される。同様に随意的に、D1及びD2は、D1≧0.55mm且つD2≧0.55mm、好ましくはD1≧0.60mm且つD2≧0.60mmである。
【0053】
各プライ及び繊維状補強要素の番手(又は線密度)は、ASTM規格D885/D885M-10a(2014)に準拠して決定される。番手は、tex(製品1000mのグラム単位での重量(メモとして)、0.111texは1デニールに等しい)単位で与えられる。
【0054】
各カーカス布地繊維状補強要素の直径は、カーカス布地繊維状補強要素が外接する最小円の直径である。平均直径は、各カーカス層の10cmの長さに沿って位置を定めるカーカス布地繊維状補強要素の直径の平均値である。
【0055】
各マルチフィラメントプライは、ポリエステルマルチフィラメントプライ、芳香族ポリアミドマルチフィラメントプライ及び脂肪族ポリアミドマルチフィラメントプライの中から選択され、好ましくはポリエステルマルチフィラメントプライ及び芳香族ポリアミドマルチフィラメントの中から選択される。
【0056】
ポリエステルマルチフィラメントプライとは、エステル結合で結び付いた群で形成される線状巨大分子のモノフィラメントで構成されたマルチフィラメントプライであると理解される。ポリエステルは、ジカルボン酸又はその誘導体の1つとジオールとのエステル化による重縮合で製造される。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合で製造することができる。公知のポリエステルの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、又はポリプロピレンナフタレート(PPN)を挙げることができる。
【0057】
芳香族ポリアミドマルチフィラメントプライとは、アミド結合で結び付いた芳香族基で形成される線状巨大分子のモノフィラメントで構成されたマルチフィラメントプライであると理解され、その少なくとも85%は2つの芳香環に直接結合しており、特にポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(又はPPTA)繊維は光学異方性紡糸組成物から非常に長い間生産されてきた。芳香族ポリアミドの中で、ポリアリルアミド(又はPAA、詳細にはSolvay社から商品名Ixefで知られる)、ポリ(メタキシリレンアジパミド)、ポリフタルアミド(又はPPA、詳細にはSolvay社から商品名Amodelで知られる)、非晶質半芳香族ポリアミド(又はPA6-3T、詳細にはEvonik社から詳細には商品名Trogamidで知られる)、或いはパラアラミド(又はポリ-パラフェニレンテレフタラミド又はPA PPD-T、詳細にはDuPont de Nemours社から商品名Kevlarで、又はTeijin社から商品名Twaronで知られる)を挙げることができる。
【0058】
脂肪族ポリアミドのマルチフィラメントプライとは、アミド基を含み芳香環を持たないポリマ又はコポリマの線状巨大分子のモノフィラメントであると理解され、カルボン酸とアミンの重縮合で合成することができる。脂肪族ポリアミドの中で、ナイロンPA4、6、PA6、PA6、6又はPA6、10、並びに、詳細にはDupont社のZytel、Solvay社のTechnyl、又はArkema社のRilsamidを挙げることができる。
【0059】
非常に好ましくは、本集合体は、2つのポリエステルマルチフィラメントプライの集合体、及び、ポリエステルマルチフィラメントプライと芳香族ポリアミドマルチフィラメントプライとの集合体から選択される。
【0060】
好ましい実施形態では、本タイヤは、225から315までの範囲にある公称断面幅SW、25から55までの範囲にある公称アスペクト比、18から23までの範囲にある公称リム径、及び98から116までの範囲にある荷重指数LIを有し、好ましくは245から315までの範囲にある公称断面幅SW、30から45までの範囲にある公称アスペクト比、18から23までの範囲にある公称リム径、及び98から116までの範囲にある荷重指数LIを有する。上記で説明したように、本発明によるタイヤは、比較的高い荷重を支えるように意図されており、必然的に、EXTRA LOADバージョンの同じサイズのタイヤと比較して、相対的に激しい摩耗につながる。従って、トレッドに加わる圧力を、結果的には摩耗を低減するために、比較的大きな公称断面幅を有するタイヤを使用することが特に有利である。
【0061】
有利には、0.88≦H/LI≦0.98である。従って、本発明は、比較的大きな撓みを有すると見込まれるタイヤに適用されることが好ましく、というのは、それらのタイヤが、所与のサイドウォール高さに対して比較的高い荷重指数を有する、すなわちH/LI≦0.98を満たすからである。これは、カーカス補強体の特定の配置によって可能となり、サイドウォールの撓みが大きいにも拘わらず、エネルギ散逸を低減することができる。しかしながら、サイドウォールが荷重指数に対して短すぎる場合、すなわちH/LI<0.88を満たす場合には、サイドウォールの撓みが第1のカーカス層の比較的高い圧縮をもたらし、結果としてはエネルギ散逸が増大する。
【0062】
特に好ましい実施形態は、タイヤは以下のサイズ及び荷重指数から選ばれたサイズ及び荷重指数LIを有する:225/55R18 105、225/55ZR18 105、205/55R19 100、205/55ZR19 100、235/45R21 104、235/45ZR21 104、285/45R22 116、285/45ZR22 116、245/40R19 101、245/40ZR19 101、255/40R20 104、255/40ZR20 104、245/40R21 103、 245/40ZR21 103、255/40R21 105、255/40ZR21 105、265/40R21 108、265/40ZR21 108、255/40R22 106、255/40ZR22 106、275/35R21 105、275/35ZR21 105、285/35R21 108、285/35ZR21 108、295/35R22 111、295/35ZR22 111、275/35R23 108、275/35ZR23 108、325/30R21 111、325/30ZR21 111。
【0063】
一部の実施形態では、クラウン補強体は、半径方向内側ワーキング層と、半径方向内側ワーキング層の半径方向外側に配置された半径方向外側ワーキング層とを含むワーキング補強体を備える。
【0064】
一部の実施形態では、各ワーキング層は、当該ワーキング層の2つの軸方向縁によって軸方向に区切られ、軸方向に当該ワーキング層の一方の軸方向縁から他方の軸方向縁まで実質的に互いに平行に延びるワーキング繊維状補強要素を備える。
【0065】
随意的に、各ワーキング繊維状補強要素は、タイヤの周方向と、絶対値で、厳密には10°より大きい、好ましくは15°から50°までの範囲、より好ましくは20°から35°までの範囲にある角度を成す主方向に沿って延びる。
【0066】
好ましくは、ワーキング補強体が、半径方向最内ワーキング層と、半径方向最内ワーキング層の半径方向外側に配置された半径方向最外ワーキング層とを備える実施形態では、半径方向最内ワーキング層の各ワーキング繊維状補強要素が延びる主方向と、半径方向最外ワーキング層の各ワーキング繊維状補強要素が延びる主方向とは、タイヤの周方向に関して反対向きの角度を成す。
【0067】
随意的に、クラウン補強体はフープ補強体を備え、フープ補強体は、2つの軸方向縁によって軸方向に区切られ、各軸方向縁の間を軸方向に延びるように螺旋状に周方向に巻かれた少なくとも1つのフーピング繊維状補強要素を備える。
【0068】
好ましくは、フープ補強体はワーキング補強体の半径方向外側に配置される。
【0069】
好ましくは、当該又は各フーピング繊維状補強要素は、タイヤの周方向と、絶対値で10°以下、好ましくは7°以下、より好ましくは5°以下である角度を成す主方向に沿って延びる。
【0070】
本発明のさらなる主題は、
-リムを備える取付け支持体と、
-リムに取り付けられる上記で規定したタイヤと、
を備える取付け組立体である。
【0071】
有利には、クラウン補強体は、半径方向でトレッドとカーカス補強体との間に配置されて、少なくとも1つの軸方向に最も狭いワーキングを含むワーキング補強体を備え、軸方向に最も狭いワーキング層が、mm単位で表される軸方向幅T2を有し、リムが、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠してmm単位で表されるリム幅Aを有する場合に、比率T2/Aは、T2/A≦1.00である。
【0072】
本発明によるタイヤの動作中に構造体内でのエネルギ散逸及び温度を制御するために、軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅がリムの幅に対して正しいサイズを有することを保証することが好ましい。というのは、先行技術から知られるものを超える高負荷の場合、タイヤの撓み、すなわち、無負荷での取付け組立体の半径とその負荷下での取付け組立体の半径との差は、かなり増大するからである。この撓みの増大は、タイヤの構造体、特にビードにおいて、比較的高いエネルギ散逸と比較的大きな温度上昇をもたらす。
【0073】
これを制御するために、タイヤの半径方向剛性を高めて、タイヤの過度の撓みと、タイヤの構造体内でのエネルギ散逸及び温度の増大を回避することを目的として、タイヤのサイドウォールを真っ直ぐにする、すなわちサイドウォールを半径方向により真っ直ぐにすることが好ましい。従って、
-所与のリム幅Aに対して、軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2を小さくし、それによって接地面の幅が小さくなり、結果としてタイヤのサイドウォールが半径方向に真っ直ぐになるように、
-所与の軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2に対して、リム幅Aを大きくし、それによってもタイヤのサイドウォールが半径方向に真っ直ぐとなるように、
比率T2/Aを1.00以下の値まで下げることが推奨される。
【0074】
当業者が軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2を変更する場合には、タイヤのクラウンの特徴、詳細にはワーキング補強体といずれかのフープ補強材とを備えるクラウン補強体の特徴、及びトレッドの特徴を、自分で決定することになる軸方向幅T2の関数として適合させることになる。
【0075】
どちらの場合にも、タイヤの半径方向剛性が高まり、結果として所与の負荷に対してタイヤの撓みが減少し、それによって負荷増大の影響を少なくとも部分的に相殺することが可能となり、従ってタイヤの構造体に加わる応力が減少し、それゆえタイヤの動作中のエネルギ散逸及び温度上昇も減少する。
【0076】
車両上で回転する質量の増加を抑えるためだけでなく、取付け組立体が占めるスペースを減らして車両の収容性能及びコンパクト性を促進するために、リム幅Aを大きくするよりも軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2を小さくすることが優先されることになる。軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅は、子午面内のタイヤ断面で測定され、ワーキング層の2つの軸方向端の間の軸方向幅に対応する。
【0077】
好ましくは、軸方向に最も狭いワーキング層は、ワーキング補強体の半径方向外側ワーキング層である。
【0078】
同様に有利な実施形態では、0.85≦T2/A、好ましくは0.90≦T2/A、より好ましくは0.93≦T2/A≦0.97である。
【0079】
比率T2/Aは、過度に小さくないことが好ましい。具体的には、所与のリム幅Aに対して、軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2の値を過度に小さくしないことが好ましく、なぜなら、そうしないと縁に沿った曲げ剛性、結果として大旋回時のコーナリング剛性が低下するからである。さらに、軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2の値が小さくなりすぎると、接地面の幅が減少し、それによってトレッドに加わる圧力、結果として摩耗が増加するが、この摩耗は、本発明によるタイヤが比較的高い荷重を支えるように意図されていることから増大し、必然的に激しい摩耗、どんな場合でも小さい荷重を支えることが求められるEXTRA LOADバージョンの同じサイズのタイヤよりも激しい摩耗につながる。所与の軸方向に最も狭いワーキング層の軸方向幅T2については、上記で説明したように、車両上で回転する質量の増加を抑えるためだけでなく、取付け組立体が占めるスペースを減らして車両の収容能力及びコンパクト性を促進するために、リム幅Aの値をあまり大きくしないこともまた好ましい。
【0080】
好ましい実施形態では、タイヤは、T2≧SW-75、好ましくはT2≧SW-70となるような公称断面幅SWを有する。所与の公称断面幅に対して、主に接地面の幅を規定する軸方向に最も狭いワーキング層は、あまり小さくない。実際、上記で説明したように、これによって、比較的激しい摩耗を必然的にもたらす比較的高い負荷をタイヤが支えるように意図されているにも拘わらず、タイヤの良好な摩耗性能を維持することが可能となる。
【0081】
好ましい実施形態では、タイヤは、T2≦SW-27、好ましくはT2≦SW-30となるような公称断面幅SWを有する。
【0082】
これらの実施形態では、本発明全般に見られるように、公称断面幅は、タイヤのサイドウォールに刻まれたサイズマーキングによって示される幅である。
【0083】
小さすぎて、タイヤのショルダ部の比較的高度の曲がりをもたらすようなリム幅を備えたリムにタイヤが取り付けられるリスクを低減するために、タイヤと共に使用できるリムを限定することが優先されることになる。従って、リムは、以下の中から選択される:
-リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム(measuring rim)幅コードに等しく、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠して規定されるリム、
-リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム幅コードから0.5を引いたものに等しいリム、及び
-リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム幅コードに0.5を加えたものに等しいリム。
【0084】
基準リム(measuring rim)は、特に、ETRTO規格マニュアル(2019)の「乗用車用タイヤ-メートル法指定によるタイヤ」のセクションの20頁から41頁に規定される。
【0085】
車両上で回転する質量の増加を抑えるためだけでなく、取付け組立体が占めるスペースを減らして車両の収容性能及びコンパクト性を促進するために、リムは、タイヤサイズに対する基準リム幅コードから0.5を引いたものに等しいリム幅コードを有することが好ましい。
【0086】
有利には、タイヤは、200kPaから350kPaまで、好ましくは250kPaから330kPaまでの範囲にある圧力に膨らむ。この圧力は、タイヤを走行させない、25℃における取付け組立体の圧力である。これは、多くの場合、自動車メーカが推奨する空気圧の1つに対応する。
【0087】
タイヤの耐荷重性能を優先させることが望まれる用途では、270kPa以上の比較的高い圧力が使用されることになる。
【0088】
乗員の快適性と車両の挙動、特に乾いた地面でのグリップを優先させることが望まれる用途では、270kPa以下の比較的低い圧力が使用されることになる。
【0089】
本発明のさらなる対象は、上記に規定した少なくとも1つのタイヤ又は取付け組立体を備える乗用車である。
本発明は、図面を参照して単に非限定的な例として与えられる以下の説明を読むとより良く理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】本発明の第1の実施形態による取付け組立体の子午断面図である。
【
図2】
図1の取付け組立体のタイヤの子午断面図である。
【
図3】
図1のタイヤのカーカス補強を示す、
図2の平面III-III’に沿う断面図である。
【
図4】先行技術の取付け組立体の撓みと
図1の取付け組立体の撓みとを比較した
図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
各図には、タイヤの通常の軸方向(Y)、半径方向(Z)及び周方向(X)にそれぞれ対応する基準系X、Y、Zが示されている。
【0092】
以下の説明では、無負荷で非膨張のタイヤに関して、又は子午面内のタイヤの部分に関して行われた測定値を採用する。
【0093】
図1は、本発明による、全体が参照番号10で表される取付け組立体を示す。取付け組立体10は、タイヤ11と、リム200を含む取付け支持体100とを備える。タイヤ11は、この場合、200kPaから350kPaまで、好ましくは250kPaから330kPaまでの範囲にある圧力、この事例では270kPaに等しい圧力に膨らむ。
【0094】
タイヤ11は、軸方向Yと実質的に平行な回転対称軸Rの周りに実質的に円環形状を有する。タイヤ11は乗用車向けである。様々な図において、タイヤ11は新品として、つまりまだ走行していないものとして図示される。
【0095】
タイヤ11は、タイヤ11のサイズを示すマーキング、さらにまた速度定格及び速度コードを有する2つのサイドウォール30を備える。この例では、タイヤ11は、225から315の範囲、好ましくは245から315の範囲にあり、ここでは225に等しい公称断面幅SWを有する。タイヤ11はまた、25から55までの範囲にある、ここでは55に等しい公称アスペクト比ARを有する。タイヤ11は、18から23までの範囲にある、ここでは18に等しい公称リム径を有する。従って、タイヤ11は、SW×AR/100で定義されるサイドウォール高さH=124≧95を有し、好ましくはH≧100である。
【0096】
本発明によれば、マーキングはまた、98から116までの範囲にある荷重指数LIを含み、LI’をETRTO規格マニュアル(2019)に準拠した同じサイズのEXTRA LOADタイヤの荷重指数とした場合に、LI≧LI’+1であるようになっている。好ましくは、LI’+1≦LI≦LI’+4であり、さらにはLI’+2≦LI≦LI’+4である。
【0097】
EXTRA LOADバージョンでのサイズ225/55R18のタイヤは、ETRTO規格マニュアル(2019)の「乗用車用タイヤ-メートル法指定によるタイヤ(Passenger Car Tyres-Tyres with Metric Designation)」の部分の28頁に示されるように、102に等しい荷重指数を有する。従って、タイヤ11の荷重指数LIは、LI≧103、好ましくは103≦LI≦106、さらには104≦LI≦106であるようになっており、この場合、LI=105である。この105に等しい荷重指数は、ETRTOマニュアル(2021)に示されるサイズ225/55R18の高耐荷重(HIGH LOAD CAPACITY)タイヤの荷重指数に相当する。従って、タイヤ11は、明らかに高耐荷重タイプである。
【0098】
このようなサイズの場合、ETRTO規格マニュアル(2019)は、「乗用車用タイヤ-メートル法指定によるタイヤ」の部分の28頁で、リム幅コードが7に等しい基準リムを指示する。従って、取付け組立体10のリム200は、以下の中から選択される:
-リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム幅コードに等しく、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠して規定されるリム、
-リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム幅コードから0.5を引いたものに等しいリム、及び
-リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム幅コードに0.5を加えたものに等しいリム。
【0099】
この場合、取付け組立体10のリム200は、リム幅コードがタイヤサイズに対する基準リム幅コードから0.5を引いたものに等しい、従ってこの場合、6.5に等しいリムである。リム200は、ETRTO規格マニュアル(2019)に準拠して、タイプJの外形とリム幅Aとを有する。この例では、リム200の外形がタイプ6.5Jであるため、mm単位で表したそのリム幅Aは、165.10mmに等しい。
【0100】
図2を参照すると、タイヤ11はクラウン12を備え、クラウン12は、走行時に地面と接触するように意図されたトレッド14と、クラウン12内を周方向Xに延びるクラウン補強体16とを備える。タイヤ11はまた、膨張ガスに対して気密な層18を備え、この層は、ひとたびタイヤ11が取付け支持体100に取り付けられると、タイヤ11に関して取付け支持体100で閉じられた内部キャビティを画定するように意図されている。
【0101】
クラウン補強体16は、ワーキング補強体20とフープ補強体22とを備える。ワーキング補強体16は、少なくとも1つのワーキング層を備え、この場合、2つのワーキング層を備え、半径方向外側ワーキング層26と、その半径方向内側に配置された半径方向内側ワーキング層24とを備える。半径方向内側層24と半径方向外側層26のうち、軸方向に最も狭い層は、半径方向外側層26である。
【0102】
フープ補強体22は、少なくとも1つのフーピング層を備え、この場合、1つのフーピング層28を備える。
【0103】
クラウン補強体16には、半径方向にトレッド14が載せられている。この場合、フープ補強体22、この事例ではフーピング層28は、ワーキング補強体20の半径方向外側に配置され、従って半径方向でワーキング補強体20とトレッド14との間に挿入される。
【0104】
2つのサイドウォール30は、クラウン12を半径方向内方へ延ばす。タイヤ10はまた、サイドウォール30の半径方向内側に2つのビード32を有する。各サイドウォール30は、各ビード32をクラウン12に連結させる。
【0105】
タイヤ11は、カーカス補強体34を備え、カーカス補強体34は、各ビード32に固定され、この事例では周方向補強要素33の周りに巻きを形成する。カーカス補強体34は、各サイドウォール30において半径方向に、クラウン12において軸方向に、クラウン補強体16の半径方向内側に延びる。クラウン補強体16は、半径方向でトレッド14とカーカス補強体34との間に配置される。カーカス補強体34は、少なくとも1つのカーカス層36を備え、この場合、第1及び第2のカーカス層36、37を備える。第1及び第2のカーカス層36、37は、各サイドウォール30内を延びると共にクラウン12内でクラウン補強体16の半径方向内側を延びる。
【0106】
フープ補強体22、この事例ではフーピング層28は、2つの軸方向縁281、282によって区切られ、1又は2以上のフーピング繊維状補強要素を備え、それらは、タイヤ10の周方向Xと、絶対値で10°以下、好ましくは7°以下、より好ましくは5°以下である角度AFを成す主方向に沿って、各軸方向縁281、282の間で周方向に螺旋状に巻き付けられる。この場合、AF=-5°である。
【0107】
各半径方向内側ワーキング層24及び半径方向外側ワーキング層26は、各ワーキング層24、26の2つの軸方向縁241、242、261、262によってそれぞれ軸方向に区切られる。半径方向内側ワーキング層24は軸方向幅T1=174.00mmを有し、半径方向外側ワーキング層26は軸方向幅T2=160.00mmを有し、半径方向外側ワーキング層26は軸方向に最も狭いワーキング層となる。
【0108】
SW=225及びT2=160は、以下の関係、T2≧SW-75、好ましくはT2≧SW-70、及びT2≦SW-27、好ましくはT2≦SW-30を満たすことに留意されたい。
【0109】
図1に示すように、取付け組立体10は、タイヤ11が半径方向に真っ直ぐなサイドウォールを有するようなものである。具体的には、比率T2/Aは、0.85≦T2/A≦1.00、好ましくは0.90≦T2/A≦1.00、より好ましくは0.93≦T2/A≦0.97であるようになっており、この場合、T2/A=0.97である。
【0110】
各ワーキング層24、26は、その一方の軸方向縁241、261から他方の軸方向縁242、262まで、それぞれに反対向きの角度AT1及びAT2を成す主方向に沿って互いに実質的に平行に延びるワーキング繊維状補強要素を備え、それらの角度は、タイヤ10の周方向Xと、絶対値で、厳密には10°より大きい、好ましくは15°から50°までの範囲、より好ましくは20°から35°までの範囲にある。この場合、AT1=-26°であり、AT2=+26°である。
【0111】
各第1及び第2のカーカス層36、37は、それぞれ2つの軸方向縁361、362、371、372によって軸方向に区切られ、それぞれ、一方の軸方向縁361、371から他方の軸方向縁362、372まで、角度ACを成す主方向D3に延びるカーカス布地繊維状補強要素360、370を備え、この角度は、タイヤ10の周方向Xと、絶対値で80°から90°までの範囲にあり、この場合はAC=+90°である。
【0112】
第1のカーカス層36は、各ビード32の各周方向補強要素33の周りに巻きを形成して、軸方向で第1のカーカス層36の軸方向内側部分3611、3621が第1のカーカス層36の軸方向外側部分3612、3622の内側に配置されるように、並びに半径方向で第1のカーカス層36の各軸方向端361、362が各周方向補強要素33の外側に配置されるようにする。第2のカーカス層37の各軸方向端371、372は、第1のカーカス層の各軸方向縁361、362の半径方向内側に配置され、軸方向で第1のカーカス層36の軸方向内側部分3611、3621と軸方向外側部分3612、3622との間に配置される。
【0113】
第1のカーカス層36の各軸方向端361、362は、タイヤの赤道Eの半径方向内側に配置される。より具体的には、第1のカーカス層36の各軸方向端361、362は、各ビード32の各周方向補強要素33の半径方向内端331から30mm以下の半径方向距離RNCに配置される。この場合、RNC=23mmである。
【0114】
各ワーキング層24、26、フーピング層28及びカーカス層36は、対応する層の繊維状補強要素のためのカレンダ加工母材を備える。好ましくは、カレンダ加工母材は、タイヤの分野で通常使用されるようなポリマであり、より好ましくはエラストマである。
【0115】
各フーピング繊維状補強要素は従来、2つのマルチフィラメントプライを備え、各マルチフィラメントプライは、脂肪族ポリアミド、この事例ではナイロンのモノフィラメントの紡績糸で構成され、番手は140texに等しく、これら2つのマルチフィラメントプライは、1メートル当たり250巻きで螺旋状に個々に撚られ、次いで反対方向に1メートル当たり250巻きで螺旋状に共に撚られる。これら2つのマルチフィラメントプライは、互いに螺旋状に巻き付けられる。変形形態として、脂肪族ポリアミド、この事例ではナイロンのモノフィラメントの紡績糸で構成されて番手が140texに等しい1つのマルチフィラメントプライと、芳香族ポリアミド、この事例ではアラミドのモノフィラメントの紡績糸で構成されて番手が167texに等しい1つのマルチフィラメントプライと、を備えるフーピング繊維状補強要素を利用することができ、これら2つのマルチフィラメントプライは、一方向に1メートル当たり290巻きで螺旋状に個々に撚られ、次いで反対方向に1メートル当たり290巻きで螺旋状に撚られる。これら2つのマルチフィラメントプライは、互いに螺旋状に巻き付けられる。さらに別の変形形態では、各々が芳香族ポリアミド、この事例ではアラミドのモノフィラメントの紡績糸で構成されて番手が330texに等しい2つのマルチフィラメントプライと、脂肪族ポリアミド、この事例ではナイロンのモノフィラメントの紡績糸で構成されて番手が188texに等しい1つのマルチフィラメントプライとを備えたフーピング繊維状補強要素を利用することができ、これらマルチフィラメントプライの各々は、一方向に1メートル当たり270巻きで螺旋状に個々に撚られ、次いで反対方向に1メートル当たり270巻きで螺旋状に撚られる。これら2つのマルチフィラメントプライは、互いに螺旋状に巻き付けられる。
【0116】
一般に、高荷重の使用は、タイヤの許容限界速度の低下をもたらし、また、その挙動、例えばコーナリング剛性の低下を招く。従って、例えば1又は2以上の芳香族ポリアミドストランドを備えた上記最後の2つの変形形態で説明したものなど、1又は2以上の高弾性フーピング繊維状補強要素を用いることによって、タイヤの許容限界速度を高め、その挙動、特にそのコーナリング剛性を改善することが可能である。
【0117】
各ワーキング繊維状補強要素は、4本の鋼製モノフィラメントの集合体4.26であり、2本のモノフィラメントの内層と、その内層の周りに、例えば方向Sに14.0mmのピッチで螺旋状に一緒に巻き付けられた2本のモノフィラメントの外層とを備える。このような集合体4.26は、640Nに等しい破断力、0.7mmに等しい直径を有する。各鋼製モノフィラメントは、0.26mmに等しい直径と、3250MPaに等しい機械的強度とを有する。変形形態として、0.23mmに等しい直径を有し、第1の方向、例えばZ方向に12.5mmのピッチで螺旋状に互いに一緒に巻かれた2本のモノフィラメントの内層と、第1の方向とは反対の第2の方向、例えばS方向に12.5mmのピッチで内層の周りに螺旋状に巻き付けられた4本のモノフィラメントの外層とを備えた、6本の鋼製モノフィラメントの集合体を利用することも可能である。
【0118】
図3に示すように、各第1及び第2のカーカス層36、37の各カーカス布地繊維状補強要素360、370は、少なくとも2つのマルチフィラメントプライ363、364及び373、374の集合体を備える。各マルチフィラメントプライ363、364、373、374は、ポリエステルマルチフィラメントプライ、芳香族ポリアミドマルチフィラメントプライ及び脂肪族ポリアミドマルチフィラメントプライの中から選択され、好ましくはポリエステルマルチフィラメントプライ及び芳香族ポリアミドマルチフィラメントの中から選択される。この例では、集合体は、2つのポリエステルマルチフィラメントプライの集合体、並びに1つのポリエステルマルチフィラメントプライと1つの芳香族ポリアミドマルチフィラメントプライとの集合体から選択され、この事例では、2つのPETマルチフィラメントプライで構成され、これら2つのマルチフィラメントプライが一方向に1メートル当たり420巻きで個別に螺旋状に撚られ、次いで反対方向に1メートル当たり420巻きで螺旋状に撚られる。これらのマルチフィラメントプライの各々は114texに等しい番手を有するので、集合体の総番手は、475tex以下、この事例では228texに等しい。
【0119】
各カーカス布地繊維状補強要素360、370は、mm単位で表した場合に、それぞれD1≦0.90mm且つD2≦0.90mm、好ましくはD1≦0.85mm且つD2≦0.85mm、さらに好ましくはD1≦0.75mm且つD2≦0.75mmとなるような、並びにD1≧0.55mm且つD2≧0.55mm、好ましくはD1≧0.60mm且つD2≧0.60mmとなるような、平均直径D1、D2を有する。この場合、D1=D2=0.62mmである。
【0120】
ここで、本発明の第2の実施形態によるタイヤについて説明する。
【0121】
第1の実施形態とは対照的に、第2の実施形態によるタイヤは、255に等しい公称断面幅SW、40に等しい公称アスペクト比AR、21に等しい公称リム径、並びに95以上である、SW×AR/100で定義されるサイドウォール高さH=102を有する。EXTRA LOADバージョンでのサイズ225/40R21のタイヤは、ETRTO規格マニュアル(2019)の「乗用車用タイヤ-メートル法指定によるタイヤ(Passenger Car Tyres-Tyres with Metric Designation)」の部分の34頁に示されるように、102に等しい荷重指数を有する。従って、第2の実施形態によるタイヤの荷重指数LIは、LI≧103、好ましくは103≦LI≦106、さらには104≦LI≦106であるようになっており、この場合、LI=105である。この105に等しい荷重指数は、ETRTOマニュアル(2021)に示されるサイズ225/40R21の高耐荷重(HIGH LOAD CAPACITY)タイヤの荷重指数に相当する。従って、第2の実施形態によるタイヤは、実際に高耐荷重タイプである。
【0122】
第1の実施形態によるタイヤとは異なり、第2の実施形態によるタイヤは、0.88≦H/LI≦0.98であり、この場合、H/LI=0.97である。
【0123】
比較試験
【0124】
張力シミュレーション
【0125】
本発明の利点を実証するために、本発明者らは、複数のタイヤの各カーカス繊維状補強要素の張力をシミュレートした。
【0126】
これらの試験の各々について、各カーカス繊維状補強要素の張力を、2.8barに等しい圧力に膨らみ、UN/ECE規則第30号の附則VIIに記載される荷重/速度性能試験に使用される荷重よりも遥かに高い荷重を受けるタイヤに関してシミュレートした。
【0127】
以下のサイズ、255/35R20、235/60R18、255/60R18の様々なタイヤを次のようにシミュレートした:
-タイヤが、本発明による第1及び第2のカーカス層を備えたカーカス補強体を有し(参照番号INV1、INV2で表す)、第2のカーカス層の各軸方向端は、第1層の各軸方向端の半径方向内側に配置され、軸方向で第1のカーカス層の軸方向内側部分と外側部分との間に配置される(第1の構成)、
-タイヤが、本発明による第1及び第2のカーカス層を備えたカーカス補強体を有し(参照番号INV1’、INV2’で表す)、第2のカーカス層の各軸方向端は、第1層の各軸方向端の半径方向内側に配置され、軸方向で第1のカーカス層の各軸方向外側部分の外側に配置される(第2の構成)、
-タイヤが、タイヤINV1及びINV2と同様のカーカス補強体を備えるが、サイドウォール高さHが厳密には95未満である(COMP0)、及び
-タイヤが、単の一カーカス補強体を備え(COMP1、COMP2)、サイドウォール高さHが厳密に95未満である(COMP0’)。
【0128】
各カーカス繊維状補強要素の張力は、単一のカーカス層を備えたタイヤについては単一カーカス層の端部で、2つのカーカス層を備えたタイヤについては各ビードの周方向補強要素の周りに巻きを形成する第1のカーカス層の端部で測定する。
【0129】
これらのシミュレーションの結果は以下の表1にまとめてある。
【表1】
【0130】
最初に、第1及び第2のカーカス層を有するタイヤの場合、単一のカーカス層を有するタイヤとは対照的に、カーカス繊維状補強要素の張力が著しく低下することが示されている。このように、第1及び第2のカーカス層の使用によって、カーカス補強体の張力が制御される。
【0131】
さらに、カーカス補強体の張力に関するこの制御は、95以上のサイドウォール高さを有するタイヤに対してだけ必要であることが分かる。なぜなら、厳密に95未満のサイドウォール高さを有するタイヤのカーカス補強体の張力は、単一のカーカス層を備えたカーカス補強体の場合でさえ、制御されたままだからである。
【0132】
また、所与の数のカーカス層(複数可)について、その張力は、サイドウォールが高いほど大きくなることに留意されたい。従って、第1の構成によるカーカス補強体の配置でカーカス補強体の張力を妥当なレベルまで低減することが望まれる場合、サイドウォール高さは155以下の値に制御されることになる。サイドウォール高さが155より厳密に大きい場合には、上記で説明したように、第2の構成によるカーカス補強体の配置を優先して、この張力を低減することになる。
【0133】
走行試験のシミュレーション
【0134】
155以下のサイドウォール高さを有するタイヤについて、第2の構成を上回る第1の構成のカーカス補強体の配置に関する任意選択の利点を実証するために、本発明者らは、タイヤの走行をシミュレートした。
【0135】
これらの試験の各々について、UN/ECE規則第30号の附則VIIに記載される荷重/速度性能試験と同様の走行を、さらに厳しい荷重及び圧力条件の下でシミュレートした。以下のサイズ、255/40R21、235/60R18及び255/60R18の様々なタイヤを次のようにシミュレートした:
-タイヤが、第1の構成によるカーカス補強体の配置を備える(INV1、INV2、INV3で表す)、
-タイヤが、第2の構成によるカーカス補強体の配置を備える(INV1’、INV2’、INV3’で表す)。
【0136】
これらのシミュレーションの間、第1及び第2のカーカス層のカレンダ加工母材の一部分について最大体積エネルギ散逸DNRJを記録し、この部分は、軸方向で第1及び第2のカーカス層の間でサイドウォールに位置し、daN/mm
2単位で表した。この値が高いほど、タイヤ構造によるエネルギ散逸が大きくなり、温度上昇も大きくなる。これらのシミュレーションの結果を以下の表2にまとめてある。
【表2】
【0137】
第1の構成によるカーカス補強体の配置は、エネルギ散逸を低減するのに有利であり、第2の構成によるカーカス補強体の配置は、エネルギ散逸をそれほど低減できないということに留意されたい。それは、サイドウォールの高さH≦130、好ましくはH≦120、より好ましくはH≦110の場合に特に有利である。というのは、そのようなサイドウォール高さでは、最大体積エネルギ散逸DNRJが相対的に高いため、第1の構成によるカーカス補強体の配置の使用により、エネルギ散逸を絶対値で許容できるレベルまで著しく低減することが可能となるからである。
【0138】
エネルギ散逸は、絶対値に関して、サイドウォールの高さが130以下の場合よりも130を超える場合の方が小さいとしても、それでもなお、第1の構成によるカーカス補強体の配置により、このエネルギ散逸を約50%低減することが可能となる。
【0139】
静的試験
【0140】
有利ではあるが本発明の範囲では任意である、サイドウォールを真っ直ぐにする効果を説明するために、
図4は、サイズ225/55R18のタイヤに対する静的圧縮試験の結果を示しており、このタイヤは上述のタイヤと同一であるが、比率T2/Aが1.05に等しい(左側に図示するタイヤ)、並びに比率T2/Aが0.97に等しい(右側に図示するタイヤ)。各タイヤに加えられた荷重は、250kPaの圧力で925kgに等しい。
【0141】
左側タイヤの撓みが右側タイヤの撓みよりも遥かに大きいことに留意されたい。これは、左側のタイヤにおける回転軸Rから地面までの距離DR1が、右側のタイヤにおける回転軸Rから地面までの距離DR2よりも小さいからである。
【0142】
特に、右側タイヤのサイドウォールが左側タイヤのサイドウォールよりも半径方向に真っ直ぐであることに留意されたい。これは、各サイドウォール上の同じ半径方向点において、接地面とは反対側に位置するサイドウォールの外面と、タイヤの回転軸Rに垂直であってリムの軸方向幅Aを画定するリムの支承面を通過する平面SAとの距離DF1及びDF2を比較することで分かる。このことは、接地面と並んで位置する各サイドウォールの同じ半径方向点において、サイドウォールの外面と垂直平面SAとの距離DF1’とDF2’を比較することでも分かる。DF1>DF2であること、及びDF1’>DF2’であることが観察されることになる。
【0143】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【国際調査報告】