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特表2023-544753単為生殖遺伝子の改変されたプロモーター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】単為生殖遺伝子の改変されたプロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20231018BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20231018BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231018BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20231018BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20231018BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20231018BHJP
【FI】
C12N15/10 200Z
C12N15/29 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/04
A01H1/00 A
A01H5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520327
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021078281
(87)【国際公開番号】W WO2022079087
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20201578.0
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508186875
【氏名又は名称】キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オプ デン キャンプ, リク ヒューベルトゥス マルティニュス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ダイク, ピーター ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB04
2B030AD20
2B030CA17
2B030CA19
2B030CB01
2B030CD09
2B030CD13
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA53
(57)【要約】
本発明は、変異遺伝子を作出する方法であって、前記遺伝子が改変されたプロモーターを含み、前記遺伝子が単為生殖表現型を植物に誘導することが可能である、方法を提供する。本発明は、前記変異遺伝子、前記変異遺伝子を含む単離された核酸分子、構築物又はベクターをさらに提供する。また、本発明は、変異遺伝子を含む単為生殖植物を作出する方法、及びそのように得られる単為生殖植物を提供する。変異遺伝子は、配列番号5を有するセイヨウタンポポのPAR遺伝子及びそのオルソログに基づく。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単為生殖表現型を誘導することが可能である変異遺伝子を作出する方法であって、
(a)1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を含むプロモーターに作動可能に連結された、配列番号1、6若しくは11のPARタンパク質又はその任意のオルソログをコードする配列を含む遺伝子を用意するステップと;
(b)前記1つ又は複数のMYB結合部位の上流の配列を改変することによって前記プロモーターを改変して、コードされた前記PARタンパク質の転写を増大させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
インサート又は欠失を前記プロモーターに、前記1つ又は複数のMYB結合部位のすぐ上流において導入することによって前記プロモーターが改変される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロモーターがランダム又は標的突然変異誘発によって改変される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)において用意される遺伝子が、植物細胞、好ましくは植物プロトプラストに含まれ、好ましくは、前記変異遺伝子が前記植物細胞において単為生殖を誘導する又は増大させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)において用意される遺伝子が内因性遺伝子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)において用意される遺伝子が、任意選択で天然又はキメラ遺伝子である導入遺伝子である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
配列番号1、6若しくは11のPARタンパク質又はその任意のオルソログをコードする配列を含む、単為生殖表現型を誘導することが可能である変異遺伝子であって、請求項1~6のいずれか一項に定義の改変を含む変異遺伝子。
【請求項8】
請求項7に記載の変異遺伝子を含む核酸分子、構築物又はベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の変異遺伝子及び/又は請求項8に記載の核酸分子、構築物若しくはベクターを含む植物細胞、好ましくは植物細胞プロトプラスト。
【請求項10】
請求項7に記載の変異遺伝子及び/又は請求項8に記載の核酸分子、構築物若しくはベクターを含む植物であって、単為生殖植物であり、好ましくは、請求項1~6のいずれか一項に定義の変異遺伝子を作出することによって入手可能である植物。
【請求項11】
アポマイオシスがさらに可能であり、好ましくはアポミクティックである、請求項10に記載の植物。
【請求項12】
(a)請求項9に記載の植物細胞から植物組織又は植物を再生及び/又は生長させるステップと;
(b)任意選択で、ステップ(a)において得られた植物組織又は植物をスクリーニング及び/又は遺伝子型決定するステップと
を含む、単為生殖植物を作出する方法。
【請求項13】
請求項12に記載のステップを含み、ステップa)の遺伝子が、アポマイオシスが可能である植物細胞、好ましくは植物プロトプラストに含まれる、アポミクティック植物を作出する方法。
【請求項14】
(I)有性生殖する第1の植物を第2の植物の花粉と他家受精させて、F1雑種種子を生産するステップであって、前記第2の植物が、請求項7に記載の変異遺伝子及び/又は請求項8に記載の核酸分子、構築物若しくはベクターを含み、前記第1及び/又は第2の植物はアポマイオシスが可能である、生産するステップと;
(II)任意選択で、前記F1雑種種子から、好ましくは遺伝子型決定により、アポミクティック表現型を含む種子を選別するステップと
を含む、アポミクティックF1雑種種子を生産する方法。
【請求項15】
単為生殖表現型をプロトプラスト、植物細胞又は植物に誘導するための、請求項8に記載の変異遺伝子、核酸、構築物又はベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーの分野に、特に、植物育種を含む植物バイオテクノロジーに関する。本発明は、例えばアポミクシス及び単数体誘導に関連し且つこれらにおいて有用な遺伝子の同定及び使用に特に関する。本発明は、単為生殖に関連する遺伝子の変異プロモーターに特に関する。本発明は、植物及び作物において単為生殖を誘導する方法に、アポマイオシス性遺伝子(複数可)と特に組み合わせたアポミクシスのための、又はその染色体を倍加して倍加単数体を生産することができる単数体植物の作出のための、遺伝子及び/又はプロモーターの使用に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
アポミクシス(無融合種子形成(agamospermy)とも呼ばれる)とは、種子を通しての無性植物生殖である。アポミクシスはおよそ400種の顕花植物種で報告されている(Bicknell及びKoltunow、2004)。顕花植物のアポミクシスは以下の2つの形態で生じる:
(1)配偶体のアポミクシス、この場合、胚は、単為生殖によって、非減数未受精卵細胞から発生する;
(2)胞子体アポミクシス、この場合、胚は、胞子体細胞から体細胞性に発生する。
配偶体アポミクトの例は、タンポポ(タンポポ属の種(Taraxacum sp.))、ヤナギタンポポ(ヤナギタンポポ属の種(Hieracium sp.))、ケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ(Poa pratensis))及びイースタンガマグラス(トリプサクム・ダクチロイデス(Tripsacum dactyloides))である。胞子体アポミクシスの例は、シトラス(シトラス属の種(Citrus sp.))及びマンゴスチン(ガルシニア・マンゴスタナ(Garcinia mangostana))である。配偶体のアポミクシスは、2つの発生プロセス:
(1)減数分裂組換え及び減数の回避(アポマイオシス);及び
(2)受精なしでの卵細胞の胚への発生(単為生殖)
が、関与する。
【0003】
アポミクティック的に生産された種子は、親植物と遺伝的に同一である。アポミクシスは植物育種に極めて有用であり得ることはずっと以前から認識されていた(Asker、1979;Hermsen、1980;Asker及びJerling、1990;Vielle-Calzadaら、1995)。作物へのアポミクシスの導入に関して最も明白な利点とは、ヘテロ強勢F1雑種の純粋な育種である。ほとんどの作物では、F1雑種は優良の品種である。しかし、有性作物では、F1雑種の自家受精は、F2後代植物のゲノムにおける組換えによるヘテロ強勢の喪失を引き起こすので、F1雑種は、再度、同系交配のホモ接合型の両親の交配によって各世代で作出する必要がある。有性F1種子を生産することは、何度も繰り返される、複雑な、費用のかかるプロセスである。対照的に、アポミクティックF1雑種は、永続的に純粋種を生み出すと思われる。換言すれば、種子を通してのF1雑種の遺伝的固定及び均一な後代植物の作出が可能となる。
【0004】
アポミクシスによるF1固定とは、その遺伝的複雑さが何であれ、任意の遺伝子型が一段階で純粋種を生み出すことになる、アポミクシスの一般的特性の特例である。このことが意味するところは、アポミクシスを使用して、多遺伝子性の定量的形質を即座固定することが可能であることである。ほとんどの収量形質は多遺伝子性であることに留意されたい。アポミクシスは、多重形質(例えば、種々の耐性、いくつかの導入遺伝子、又は多重量的形質遺伝子座)のスタッキング(又はピラミッド化)に使用可能である。アポミクシスを使用しない場合、そのような一連の形質を固定するためには、各形質の遺伝子座を個別にホモ接合型とし、後に組み合わせる必要がある。形質に関与する遺伝子座の数が増加するにつれて、交配によってこれらの形質遺伝子座をホモ接合型にすることは、時間がかかり、事業遂行上難しい課題となり、それによって費用がかかるようになる。さらに、対立遺伝子間の特定のエピスタシス相互作用は、ホモ接合性によって喪失する。アポミクシスを使用すると、このタイプの非相加的な遺伝的変異を固定することが可能になる。したがって、アポミクシス、種子を通してのクローン繁殖は、植物育種、商業的種子生産及び農業におけるパラダイムシフトを引き起こす可能性を有する(van Dijkら2016)。
【0005】
任意の遺伝子型を即座に固定することに加えて、その複雑性が何であれ、アポミクシスのさらなる重要な農業用途が存在する。有性種間雑種及び同質倍数体については、減数分裂の問題に起因する不稔に悩まされている場合が多い。アポミクシスは減数分裂をスキップするので、アポミクシスを使用すると、種間雑種と同質倍数体に関するそういった不稔の問題を解決できる。アポミクシスは雌性ハイブリダイゼーションを防止するので、雄性不稔と組み合わせたアポミクシスは、トランスジェニック作物の野生関連種における導入遺伝子の遺伝子移入を防止する、導入遺伝子の封じ込め向けに提案された(Daniell、2002)。虫媒受粉作物(例えば、アブラナ属(Brassica))では、アポミクティック種子結実は、不十分な受粉媒介者のサービスによって制限されないはずである。これは、受粉ハチの集団の増大する健康問題(ミツバチヘギイタダニ(Varroa mite)感染症、アフリカ系キラービー等)と照らして、より重要となってきている。ジャガイモのような塊茎増殖作物では、アポミクシスは、クローン的に優れた遺伝子型を維持するが、クリーンな生産、封じ込め及び認証におけるウイルス伝染及び関連するコストの現在のリスクを軽減又は排除をもすると思われる。また、アポミクティック種子の貯蔵コストは、塊茎又はその他の栄養繁殖した植物部分の貯蔵コストよりもはるかに低い。観賞用では、アポミクシスは労働集約的で費用のかかる組織培養増殖に取って代わる可能性がある。一般に、アポミクシスは栽培品種の開発と植物増殖のコストを強力に削減すると考えられる。
【0006】
残念なことに、アポミクシスは主たる作物のいずれでも存在しない。有性作物にアポミクシスを導入する試みは数多くある。例をあげると、アポミクシス遺伝子の遺伝子移入、有性モデル種の突然変異、ハイブリダイゼーションによるアポミクシスのデノボ生産、及び候補遺伝子のクローニング。遠縁交配による野生アポミクトから作物種へのアポミクシス遺伝子の遺伝子移入は、これまで成功していない(例えば、トリプサクム・ダクチロイデスからトウモロコシへのアポミクシス - Savidan,Y.、2001;Morganら、1998;国際公開第97/10704号)。突然変異有性モデル種に関して、国際公開第2007/066214号では、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)においてDyadと呼ばれるアポマイオシス変異体の使用が記載されている。しかし、Dyadは浸透率が極めて低い劣性突然変異である。作物種では、この突然変異の用途は限定される。2つの有性エコタイプ間のハイブリダイゼーションによるデノボでのアポミクシスの生産は、農業上興味深いアポミクトをもたらさなかった(米国特許出願公開第2004/0168216A1号及び米国特許出願公開第2005/0155111A1号)。トウモロコシにおけるトランスポゾンタグ付けによる候補アポミクシス遺伝子のクローニングが、米国特許出願公開第2004/0148667号に記載されている。アポミクシスを誘導すると仮定される、伸長遺伝子のオルソログが特許請求された。しかし、Barrell及びGrossniklaus(2005)によると、伸長遺伝子は減数分裂IIをスキップし、したがって母親の遺伝子型を維持せず、このことによって、その伸長遺伝子は有用性がかなり低いものとなる。
【0007】
米国特許出願公開第2006/0179498号では、いわゆる逆育種がアポミクシスの代替となると思われることが記載された。しかし、逆育種は、技術的に複雑なin vitroの実験室手順であり、一方、アポミクシスは植物自体によって実行されるin vivo手順である。さらに、逆育種を使用する場合、いったん親系統が再構築されると(倍加配偶子ホモ接合体)、交配をなおも実行する必要がある。
【0008】
天然アポミクトにおけるアポミクシスは一般に遺伝的ベースを有する(Ozias-Akins及びVan Dijkによるレビュー、2007)。したがって、代替法は、天然アポミクティック種からのアポミクシス遺伝子の単離となり得る。しかし、これは容易なタスクではない、その理由は、天然アポミクトは倍数体ゲノムを有することが多く、倍数体でのポジショナルクローニングは極めて困難である。他の複雑な要因とは、アポミクシスに特異的な染色体領域における組換えの抑制、反復配列、交配における分離の歪みである。
【0009】
本明細書に記載のように、現在の技術水準の限界の少なくとも一部がない、作物においてアポミクシスを誘導するための手順に対するニーズがある。特に、アポミクティック植物及びアポミクティック種子を生産するための方法に対するニーズがある。また、アポミクシスの発生プロセス、特に単為生殖に関与する遺伝子及びタンパク質を提供するニーズもあり、これら遺伝子及びタンパク質は、作物にアポミクシス又は(倍加)単数体を導入する際に使用するのに適しているとともに、アポミクティック経路を実質的に模倣することができる。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、単為生殖遺伝子座及び遺伝子、単為生殖表現型に関連する対立遺伝子(本明細書では単為生殖対立遺伝子又はPar対立遺伝子として指示される)及び非単為生殖表現型(本明細書では単為生殖遺伝子の有性対立遺伝子又はpar対立遺伝子として指示される)、それらの遺伝子配列、すなわちプロモーター配列、5’UTR、コード配列、3’UTR配列並びにコードされたタンパク質配列を同定且つ単離した。
【0011】
本発明は、par対立遺伝子を、前記par対立遺伝子のプロモーター配列を変更することによって、Par対立遺伝子に改変又は変更する方法を提供する。本発明は、内因性par対立遺伝子を、好ましくはランダム又は標的突然変異誘発によって、及び任意選択で形質転換によって、Par対立遺伝子に改変するのに特に有用である。結果として得られる変異対立遺伝子は、植物及び/又はその子孫を、受精なしで卵細胞を胚へと発生させる能力を有するか又はその増大した能力を有する植物に形質転換させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図1B】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図1C】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図1D】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図1E】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図1F】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図1G】タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型変異体及び有性レタスにおける補完及び形質転換実験の図である。A)タンポポ属LOP変異体の補完に使用した異なるプロモーター-遺伝子構築物、及び成功裏に補完された系統の数。ToParプロモーター及びレタス由来の有性相同体(Lspar)、並びにタンポポ属Par遺伝子を有するシロイヌナズナ属卵細胞(EC1.1)プロモーターを示す。B)シロイヌナズナ属卵細胞EC1.1プロモーター)によって駆動された、タンポポ属ToPar遺伝子でのレタスの同様の形質転換。C)、D)、E)、pEC1.1::Par構築物で形質転換したレタスの頂芽切除した花序における胚様構造。C)頂芽切除の75時間後の、非形質転換対照レタス由来の胚嚢。未受精卵細胞(ec)及び中央細胞(cc)核が可視である。D)頂芽切除の75時間後の、発育胚様構造を有する胚嚢。E)複数の胚様構造を有する胚嚢。アスタリスクは個々の胚様構造を示す。F)自己受粉の5日後の非形質転換対照レタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。G)、頂芽切除の5日後のpEC1.1::Par構築物を保有するトランスジェニックレタス由来の胚嚢のフローサイトメトリー解析。
図2】タンポポ属Par/parプロモーターにおける多型を示す図である。Par対立遺伝子と3つの有性対立遺伝子:セイヨウタンポポのpar-1及びpar-2(Topar)並びにゴムタンポポであるロシアタンポポ(Taraxacum koksaghyz)の有性対立遺伝子(Tkpar)との、ATG開始コドン(下線)の350bp上流の領域のClustalWアラインメント。1335bpのMITE挿入はToParプロモーターから除去されている。MITEの挿入部位である6bpの直列反復配列を下線で示す。13のSNPのうち、3つはPARプロモーターと有性プロモーターとの間にあり(太字及び下線);10は有性プロモーター間で生じる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本明細書で使用される場合、「遺伝子座(locus)」(複数形:遺伝子座(loci))という用語は、例えば、遺伝子又は遺伝子マーカーが見いだされる染色体上の特定の1つの場所(若しくは複数の場所)又は部位を意味する。例えば、「単為生殖遺伝子座」とは、単為生殖遺伝子が位置するゲノムの位置を指す。2つの機能的バリアントが、単為生殖遺伝子、すなわち、本明細書では単為生殖遺伝子の単為生殖対立遺伝子若しくはPar対立遺伝子として指示される、単為生殖表現型に寄与する対立遺伝子、及び/又は本明細書では単為生殖遺伝子の有性対立遺伝子若しくはpar対立遺伝子として指示されるその有性カウンターパート(複数可)に対して同定されている。
【0014】
「単為生殖において機能的」である遺伝子、対立遺伝子、タンパク質又は核酸とは、本明細書では、単為生殖表現型に寄与するもの及び/又は卵細胞を胚へと発生させる植物若しくは植物細胞への能力を増大させる若しくは変換するもの、であると理解されたい。
【0015】
「単為生殖遺伝子」とは、単為生殖に関連する遺伝子であり、「に関連する」とは、本明細書では、単為生殖又は非単為生殖(有性)表現型を指示すると理解されたい。単為生殖を付与する(優性)対立遺伝子(Par対立遺伝子)及びその2つの有性カウンターパート(単為生殖遺伝子のpar対立遺伝子又は有性対立遺伝子)の遺伝子配列は、参照により本明細書に組み込まれる国際出願PCT/EP2020/064991に記載されている三倍体アポミクトセイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)分離株A68において初めて同定された。好ましくは、Par対立遺伝子は単為生殖を開始する。単為生殖を付与する(優性)対立遺伝子は、配列番号5の遺伝子配列を有し、配列番号2の配列を有するプロモーター、配列番号3の配列を有するコード配列及び配列番号4の配列を有する3’UTRを含む。有性対立遺伝子のうちの一方は、配列番号10の遺伝子配列を有し、配列番号7の配列を有するプロモーター、配列番号8の配列を有するコード配列及び配列番号9の配列を有する3’UTRを含む。他方の有性対立遺伝子は、配列番号15の遺伝子配列を有し、配列番号12の配列を有するプロモーター、配列番号13の配列を有するコード配列及び配列番号14の配列を有する3’UTRを含む。オーソロガス遺伝子は、これらの単為生殖遺伝子によってコードされるタンパク質(PARタンパク質として指示される)の特色に基づいて、他の種において同定されている。卵細胞におけるPARタンパク質の存在は、胚形成の阻害因子の消失を招き、受精なしでの細胞分裂を惹起し得る。これらのPARタンパク質は、ジンクフィンガーC2H2型ドメイン(IPR13087)、好ましくは、CXXCXXXXXXX[K/R]AXXGHX[R/N]XH(配列番号37)と注記を付けることもできる(式中、Xは、天然に存在する任意のアミノ酸であってもよく、[K/R]は、アミノ酸がリジン又はアルギニンであることを指示し、R/N]は、アミノ酸がアルギニン又はアスパラギンであることを指示する)、コンセンサス配列C.{2}C.{7}[K/R]A.{2}GH.[R/N].Hを有するジンクフィンガーK2-2様ドメインを含むことを特徴とする(Englbrechtら、2004を参照されたい)。ジンクフィンガーC2H2型ドメイン、好ましくは本明細書で定義のジンクフィンガーK2-2様ドメインに加えて、タンパク質は、コンセンサスアミノ酸配列DLNXXP(配列番号58)又はDLNXP(配列番号59)を有するEAR(エチレン応答性エレメント結合因子関連両親媒性抑制)モチーフを含む(式中、Xは天然に存在する任意のアミノ酸とすることができる)(Kagaleら、2010;及びYangら、2018を参照されたい)。好ましくは、前記EARモチーフはC末端に位置する。好ましくは、ジンクフィンガーC2H2型ドメインは前記EARモチーフのN末端に位置する。好ましくは、PARタンパク質は最大で400アミノ酸の長さを有し、ここで、前記タンパク質は、本明細書で指示される1つ又は2つのEARモチーフ及び本明細書で定義のジンクフィンガーK2-2様ドメインを含む。好ましくは、タンパク質は最大で400アミノ酸の長さを有し、ここで、前記タンパク質は、本明細書で指示される1つ又は2つのみのEARモチーフ、及び本明細書で定義の1つのみのジンクフィンガーK2-2様ドメインを含む、すなわち、本明細書で定義のさらなるEARモチーフ及び本明細書で定義のさらなるジンクフィンガーK2-2様ドメインを含まない。最大サイズ400個のアミノ酸、本明細書で指示される1つ又は2つのみのEARモチーフ、及び定義された単一のジンクフィンガーK2-2様ドメインの特徴に加えて、PARタンパク質は、ジンクフィンガーコンセンサス配列C.{2}C.{12}H.{3}Hを有するさらなる1つのみのジンクフィンガードメインを含むことができ、これは:CXXCXXXXXXXXXXXXHXXXH(配列番号38)と注記を付けることもできるが、より好ましくは、ジンクフィンガーコンセンサス配列C.{2}C.{12}H.{3}H(配列番号38)を有するさらなるジンクフィンガードメインを含まない。好ましくは、PARタンパク質は最大で500アミノ酸の長さを有する。PARタンパク質は、約50~500個、100~300個又は約150~200個のアミノ酸であってもよい。PARタンパク質は、約170アミノ酸の長さを有してもよい。オーソロガス単為生殖遺伝子は、それらに限定されないが、以下からなる群から選択されるPARタンパク質のうちのいずれか1つをコードする遺伝子であり得る:パイナップル(Ananas comosus)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A199URK4)、アポスタシア・シェンゼニカ(Apostasia shenzhenica)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2I0AZW3)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:Q8GXP9、A0A178V2S4、O81793、A0A178V1Q3、A0MFC1、O81801)、セイヨウミヤマハタザオ亜種リラタ(Arabidopsis lyrata subsp.Lyrata)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:D7MC52又はD7MCE8)、アラキス・イパエンシス(Arachis ipaensis)由来のPARタンパク質(例えば配列番号45又は配列番号49)、ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:I1J0D9)、ヤセイカンラン変種オレラセア(Brassica oleracea var.oleracea)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A0D3A1Q6又はA0A0D3A1Q3)、ブラシカ・カンペストリス(Brassica campestris)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A398AHT1)、ブラシカ・ラパ(Brassica rapa)由来のPARタンパク質(例えば配列番号47)、ブラシカ・ラパ亜種ペキネンシス(Brassica rapa subsp.Pekinensis)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:M4D574又はM4D571)、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A3P6ESB1又はA0A3P6F726)、ブラシカ・カンペストリス由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A3P5ZMM3又はA0A3P5Z1M1)、キマメ(Cajanus cajan)由来のPARタンパク質(例えば配列番号46)、ルベラナズナ(Capsella rubella)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:R0H2J1又はR0H0C2)、フクロユキノシタ(Cephalotus follicularis)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1Q3CSK1)、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A3Q7YBZ1、A0A1S2YZL9、A0A3Q7Y0Z6若しくはA0A1S2YZM6;又は配列番号55、56若しくは57)、エンダイブ(Cichorium endivia)のPARタンパク質(例えば配列番号39)、キュウリ(Cucumis sativus)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A0A0KGW4又はA0A0A0L0X7)、マスクメロン(Cucumis melo)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1S3BLF2又はA0A1S3B298)、キュウリ由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A0A0KAW8)、ニホンカボチャ(Cucurbita moschata)由来のPARタンパク質(例えば配列番号43)、アメリカネナシカズラ(Cuscuta campestris)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A484MGR1)、キバナノセッコク(Dendrobium catenatum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2I0V7N9、A0A2I0X2T2又はA0A2I0W0Q8)、ドルコセラス・ヒグロメトリカム(Dorcoceras hygrometricum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2Z7D3Y1)、ユートレマ・サルスギネウム(Eutrema salsugineum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:V4LSH0;又は配列番号44)、ヨーロッパブナ(Fagus sylvatica)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2N9E5Y5、A0A2N9HAB9、又はA0A2N9H993)、ゲンリセア・アウレア(Genlisea aurea)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:S8E1M6)、ダイズ(Glycine max)由来のPARタンパク質(例えば配列番号51、52、53又は54)、リクチワタ(Gossypium hirsutum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1U8LDU9)、ヒマワリ(Helianthus annuus)由来のPARタンパク質(例えば配列番号21)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)由来のPARタンパク質(例えば配列番号42)、コウリンタンポポ(Hieracium aurantiacum)のPARタンパク質(例えば配列番号40)、ペルシャグルミ(Juglans regia)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2I4E6B1)、レタス(Lactuca sativa)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2J6KZF7;又は配列番号22)、ユウガオ(Lagenaria siceraria)由来のPARタンパク質(例えば配列番号48)、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:G7K024)、マルバグワ(Morus notabilis)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:W9SMY3又はW9SMQ7)、ビロードマメ(Mucuna pruriens)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A371ELJ8)、ニコチアナ・アテヌアタ(Nicotiana attenuata)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1J6IQI6)、ニコチアナ・シルベストリス(Nicotiana sylvestris)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1U7VXJ0)、タバコ(Nicotiana tabacum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1S4A651又はA0A1S3YHQ2)、イネ亜種ジャポニカ(Oryza sativa subsp.Japonica)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:B9FGH8)、オリザ・バルシー(Oryza barthii)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A0D3FWX3)、キビ(Panicum miliaceum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A3L6Q010又はA0A3L6T1D6)、パラスポニア・アンデルソニイ(Parasponia andersonii)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2P5BMI5)、ギンドロ(Populus alba)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A4U5PSY9)、ブラックコットンウッド(Populus trichocarpa)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:B9H661)、ザクロ(Punica
granatum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2I0IBB9、A0A218XB85又はA0A218W102)、セネシオ・カンブレンシス(Senecio cambrensis)由来のPARタンパク質(例えば配列番号41)、モモ(Prunus persica)由来のPARタンパク質(例えば配列番号50)、ウラジロエノキ(Trema orientale)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2P5EB04)、ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2K3N851)、ジモグリツメクサ(Trifolium subterraneum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2Z6MYD3又はA0A2Z6MDR7)、ムラサキツメクサ由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2K3PR44)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A438C778、A0A438ESC4又はA0A438DBR4)及びトウモロコシ(Zea mays)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A1D6HF46、B6UAC5、A0A3L6F4S1、A0A3L6EMC6、A0A3L6EMC6、K7UHQ6又はA0A1D6KHZ4)。かかる遺伝子はまた、以下からなる群から選択されるPARタンパク質をコードすることができる:オニマタタビ(Actinidia chinensis)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2R6S2S9)、テンサイ(Beta vulgaris)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:XP_010690656.1)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:XP_015159151.1)、トマト(Solanum lycopersicum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A3Q7GXB3、Solyc05g055500又はSolyc06g060480)、キイロトウガラシ(Capsicum baccatum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A2G2WJR7)、ナス(Solanum melongena)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:AVC18974.1)、ツルマメ(Glycine soja)由来のPARタンパク質(例えばGenBank受託:XP_028201014.1、XP_006596577.1又はUniprotKB:A0A445M3M6)、ナンキンマメ(Arachis hypogaea)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A444WUX5)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:V7CIF6)、ニンジン(Daucus carota)由来のPARタンパク質(例えばGenBank受託:XP_017245413.1)、パンコムギ(Triticum aestivum)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A3B6RP64)、イネ亜種インディカ(Oryza sativa subsp.indica)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A2YH63)、イネ亜種ジャポニカ由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:Q5Z7P5)及びカカオ(Theobroma cacao)由来のPARタンパク質(例えばUniProtKB:A0A061DL63)。任意選択で、オーソロガス遺伝子は、好ましくは、例えば、デフォルトパラメータを用いてNeedleman and Wunschアルゴリズム(グローバル配列アラインメント)を使用してペアワイズアラインメントを行って、全長にわたって比較した場合、それぞれ、配列番号1、6及び11のうちのいずれか1つと、並びに/又は本明細書で提供の上記のオルソログのうちのいずれか1つと、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%又はそれ超の同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれらからなるPARタンパク質をコードする遺伝子である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「対立遺伝子(複数可)」という用語は、特定の遺伝子座での遺伝子の1つ又は複数の代替形態のいずれかを意味する。生物の二倍体細胞及び/又は倍数体細胞では、所与の遺伝子の対立遺伝子は、染色体上の特定の位置又は遺伝子座に位置し、この場合、1つの対立遺伝子が、相同染色体のセットの各染色体上に存在する。二倍体及び/若しくは倍数体生物又は植物種は、特定の遺伝子座に非常に多数の様々な対立遺伝子を含むことができる。
【0017】
本明細書で使用される「優性対立遺伝子」という用語は、1つの対立遺伝子の効果(すなわち優性対立遺伝子)が、同じ遺伝子座での第2の対立遺伝子(すなわち劣性対立遺伝子)の寄与をマスクする、一遺伝子の対立遺伝子間の関係を指す。常染色体(性染色体以外の任意の染色体)上の遺伝子の場合、対立遺伝子と対立遺伝子の関連形質は常染色体優性又は常染色体劣性である。優性とは、メンデルの遺伝及び古典的遺伝学における重要な概念である。任意選択で、優性対立遺伝子は機能性タンパク質をコードし、一方、劣性対立遺伝子はコードしない。任意選択で、優性対立遺伝子及び劣性対立遺伝子は同じ又は実質的に同じ機能性タンパク質をコードすることができ、一方、劣性対立遺伝子とは異なり、優性対立遺伝子のみが、特定の状況下及び/又は特定の組織においてある特定の量の前記機能性タンパク質を発現させ、それによって単為生殖のような特定の表現型を変換することが可能である。
【0018】
本明細書で使用される「雌性子房(ovary)」(複数形:「子房(ovaries)」)という用語は、胞子が形成される包囲体を指す。雌性子房は、単一の細胞から構成される場合もあり、又は多細胞である場合もある。すべての植物、真菌、及び他の多くの系列が、それらのライフサイクルのある時点で子房を形成する。子房は有糸分裂又は減数分裂によって胞子を生産することができる。一般的に、各子房内で、大胞子母細胞の減数分裂によって、4つの単数体大胞子が生産される。裸子植物及び被子植物では、これらの4つの大胞子のうちの1つだけが成熟時に機能的であり、他の3つは退化する。残っている大胞子は、有糸分裂的に分裂し、雌性配偶体(大配偶体)に生長し、これが最終的に1つの卵細胞を生産する。
【0019】
本明細書で使用される「雌性配偶子」という用語は、正常な(有性)状況下で、有性的に生殖する生物において受精(受胎)過程に別の(「雄性」)細胞と融合する細胞を指す。形態学的に明確に異なる2つタイプの配偶子を生産し、各個体が1つのタイプのみ生産する種では、雌とは、より大きなタイプの配偶子(胚珠(卵子)又は卵細胞と呼ばれる)を作り出す任意の個体である。植物では、雌性胚珠は花の子房によって生産される。成熟すると、単数体胚珠は雌性配偶子を生産し、これが次いで受精に備える。雄性細胞は(ほとんどが単数体)花粉であり、葯によって生産される。
【0020】
「遺伝子マーカー」又は「多型マーカー」という用語は、ゲノムDNA上のある領域を指し、これを使用して染色体上の特定の位置を「マーク」することができる。遺伝子マーカーが遺伝子に密接に連結されているか、又は遺伝子「上に(‘on’)」ある場合、遺伝子マーカーは当該遺伝子が見いだされるDNAを「マークし(‘marks’)」、したがって、(分子)マーカーアッセイにおいて遺伝子マーカーを使用して、例えばマーカー支援育種/選別(MAS)法において、当該遺伝子の存在を選別又は当該遺伝子の存在に対抗して選別することができる。遺伝子マーカーの例は、AFLP(増幅断片長多型、欧州特許第534858号)、マイクロサテライト、RFLP(制限断片長多型)、STS(配列タグ化部位)、SNP(単一ヌクレオチド多型)、SFP(単一特徴多型;Borevitzら、2003を参照されたい)、SCAR(配列が特徴づけられた増幅領域)、CAPSマーカー(切断された増幅された多型配列)等である。マーカーが遺伝子からさらに離れているほど、マーカーと遺伝子の間で組換え(交叉)が起こり、それによって連鎖(及びマーカーと遺伝子の共分離)が喪失する可能性が高くなる。遺伝子座間の距離は、組換え頻度の点で測定され、cM単位(センチモルガン;1cMとは、1%の2マーカー間の減数分裂組換え頻度である)で与えられる。ゲノムサイズは種間で大いに異なるため、1cMによって表される実際の物理的距離(すなわち、2つのマーカー間のキロベース、kb)も種間で大いに異なる。
【0021】
本明細書で「連結された」マーカーに言及する場合、これはまた、遺伝子それ自体「上の」マーカーも包含することが理解される。
【0022】
「MAS」とは、「マーカー支援選抜」を指し、これによって、(エリート)育種系統への、マーカーを含む(及び任意選択で隣接領域を欠く)DNA領域の移入を加速するために、植物が、1つ又は複数の遺伝子マーカー及び/又は表現型マーカーの存在及び/又は非存在についてスクリーニングされる。
【0023】
「分子マーカーアッセイ」(又は試験)とは、植物又は植物部分の対立遺伝子、例えば、Par対立遺伝子又はpar対立遺伝子の存在又は非存在を(直接的又は間接的に)指示する(DNAベースの)アッセイを指す。好ましくは、このアッセイによって、任意の個々の植物において単為生殖遺伝子座にて、特定の対立遺伝子がホモ接合型とヘテロ接合型のどちらであるかを判定すること、が可能となる。例えば、一実施形態では、PCRプライマーを使用して単為生殖遺伝子座に連結された核酸を増幅し、増幅産物を酵素的に消化し、増幅産物の電気泳動的解像度パターンに基づいて、どの対立遺伝子(複数可)が任意の個々の植物に存在し、単為生殖遺伝子座での対立遺伝子の接合性を決定することができる(すなわち、各遺伝子座での遺伝子型)。例としては、SCARマーカー(配列特徴づけ増幅領域)、CAPSマーカー(切断増幅多型配列)及び類似のマーカーアッセイがある。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ接合型」という用語は、異なる2つの対立遺伝子が、特定の遺伝子座に存在するが、細胞の相同染色体の対応するセット上に個別に配置されている場合に存在する、遺伝子状態を意味する。逆に、本明細書で使用される場合、「ホモ接合型」という用語は、同一の2つの(又は倍数体の場合には2超の)対立遺伝子が特定の遺伝子座に存在するが、細胞の相同染色体の対応するセット上に個別に配置されている場合に存在する、遺伝子状態を意味する。
【0025】
「品種」とは、UPOV条約に準拠して本明細書で使用され、最も低い既知のランクの単一植物分類群内の植物のグループ分けを指し、このグループ分けは、特徴の発現によって定義することができ、前記特徴のうちの少なくとも1つの発現によって他の任意の植物のグループ分けと区別を付けることができ、変化せずに(安定して)繁殖させるための適合性に関する単位であると考えられる。
【0026】
「タンパク質」又は「ポリペプチド」という用語は交換可能に使用され、特定の様式の作用、サイズ、3次元構造又は起源と関係なく、アミノ酸鎖から構成される分子を指す。したがって、タンパク質の「断片」又は「部分」は、なおも「タンパク質」と呼ぶことができる。
【0027】
「遺伝子」という用語は、適切な調節領域(例えば、プロモーター)に作動可能に連結された、細胞でRNA分子(例えば、mRNAにプロセシングされるプレmRNA)に転写される領域(転写領域)を含むDNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、いくつかの作動可能に連結された配列、例えば、プロモーター、例えば翻訳開始に関与する配列を含む5’リーダー配列、(タンパク質)コード領域(cDNA又はゲノムDNA)、及び例えば転写終止部位を含む3’非翻訳配列を含むことができる。
【0028】
「キメラ遺伝子」(又は組換え遺伝子)とは、種においては天然では通常は見いだされない任意の遺伝子、特に、天然では互いに会合してないヌクレオチド配列の1つ又は複数の部分が存在する、遺伝子を指す。例えば、プロモーターは、転写された領域の一部若しくは全部と又は別の調節領域と、天然では会合していない。
【0029】
「天然の遺伝子」とは、天然に存在する遺伝子にも見いだすことができる、プロモーター配列、コード配列、及び任意選択で3’-UTR配列を含む任意の遺伝子を指す。任意選択で、天然の遺伝子のヌクレオチド配列は、天然に見いだされる配列と同一である。本明細書では、天然の遺伝子は導入遺伝子であってもよいことが理解される。本実施形態では、天然の遺伝子は植物種に存在し、ここで、植物種は前記天然の遺伝子を天然には含まない。
【0030】
「内因性遺伝子」とは、本明細書では、その天然環境における、すなわち、それが天然に含まれている植物種に存在する、天然の遺伝子として理解される。
【0031】
「3’UTR」又は「3’非翻訳配列」(3’非翻訳領域又は3’末端とも呼ばれることが多い)とは、遺伝子のコード配列の下流に見いだされるヌクレオチド配列を指し、これは、例えば、転写終止部位、及び(真核生物mRNAのすべてではないがほとんどにおいて)ポリアデニル化シグナル(例えば、AAUAAA又はそのバリアントなど)を含む。転写の終止後、mRNA転写物は、ポリアデニル化シグナルの下流で切断されてもよく、mRNAの細胞質(翻訳が行われる)への輸送に関与するポリA尾部が付加されてもよい。
【0032】
「5’UTR」又は「リーダー配列」又は「5’非翻訳領域」とは、mRNA転写が始まる+1の位置とコード領域の翻訳開始コドン(通常、mRNA上のAUG又はDNA上のATG)の間の、mRNA転写物の領域、及び対応するDNAである。5’UTRは、翻訳、mRNA安定性及び/又は代謝回転、並びにその他の調節エレメントにとって重要な部位を、通常は含有する。
【0033】
「遺伝子の発現」とは、適当な調節領域、特にプロモーターに作動可能に連結されたDNA領域が、生物学的に活性である、すなわち生物学的に活性なタンパク質若しくはペプチド(若しくは活性ペプチド断片)に翻訳可能である、又はそれ自体が活性である(例えば、転写後の遺伝子サイレンシング若しくはRNAi)、RNAに転写されるプロセスを指す。活性タンパク質とは、例をあげるとある特定の遺伝子の発現の、前記遺伝子の5’UTRの調節エレメントに結合することによる阻害であり得る、タンパク質の機能を果たすことが可能であるタンパク質を指す場合がある。ある特定の実施形態での活性タンパク質とは、構成的活性型であるタンパク質を指す。コード配列は、センス配向であり、所望の、生物学的に活性なタンパク質若しくはペプチド、又は活性なペプチド断片をコードすることが好ましい。遺伝子サイレンシングアプローチでは、DNA配列は、アンチセンスDNA又は逆方向反復DNAの形態で存在することが好ましく、標的遺伝子の短い配列をアンチセンスで又はセンス方向及びアンチセンス方向で含む。
【0034】
「転写調節配列」とは、本明細書では、転写調節配列に作動可能に連結された(コード)配列の転写速度を調節することが可能であるヌクレオチド配列と定義される。したがって、本明細書で定義の転写調節配列は、転写開始に(プロモーターエレメント)、転写を維持するのに及び調節するのに、例えばアテニュエーター又はエンハンサーを含めて、必要な配列エレメントのすべてを含むことになる。大部分は、コード配列の上流(5’)転写調節配列を指すが、コード配列の下流(3’)に見いだされる調節配列もまたこの定義に包含される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、転写開始部位の転写の方向に対して上流に位置して、1つ又は複数のDNA領域の転写を制御するように機能する、並びに、それらに限定されないが、転写因子結合部位、リプレッサー及びアクチベーターのタンパク質結合部位、及び直接的又は間接的に作用してプロモーターからの転写量を調節する、当業者に知られるヌクレオチドの他の任意の配列を含めて、DNA依存性RNAポリメラーゼのための結合部位、転写開始部位及び他の任意のDNA配列、の存在によって構造的に同定される核酸断片を指す。任意選択で、本明細書では「プロモーター」という用語にはまた、5’UTR領域が含まれるが(例えば、プロモーターは、本明細書では、遺伝子の翻訳開始コドンの上流(5’)に1つ又は複数の部分を含むことができるが)、その理由は、この5’UTR領域が転写及び/又は翻訳を調節する上である役割を有することができるからである。
【0036】
「構成的」プロモーターとは、ほとんどの生理学的及び発生条件下でほとんどの組織で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターとは、生理学的(例えば、ある特定の化合物の外部適用によって)又は発生的に調節されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定のタイプの組織又は細胞においてのみ活性である。「植物又は植物細胞において活性なプロモーター」とは、植物又は植物細胞内で転写を駆動するためのプロモーターの一般的な能力を指す。このことは、プロモーターの時空間的活性については何ら意味合いをなさない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、機能的関係にあるポリヌクレオチドエレメントの連鎖を指す。核酸は、別のヌクレオチド配列との機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結されている」。例をあげると、プロモーターは、又はむしろ転写調節配列は、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたとは、連結されているDNA配列が通常は隣接しており、必要に応じて、プロモーター配列をタンパク質コード配列に、又はタンパク質コード配列を3’UTRに接続することを意味する。「核酸構築物」又は「ベクター」とは、本明細書では、組換えDNA技術の使用から得られ、宿主細胞への外来性DNAの送達に使用される、人造の核酸分子を意味すると理解される。ベクター骨格は、例えば、当該技術分野において知られているように且つ本明細書の他の箇所に記載のように、バイナリー若しくはスーパーバイナリーベクター(例えば、米国特許第5,591,616号、米国特許出願公開第2002/138879号、及び国際公開第95/06722号を参照されたい)、同時統合ベクター又はT-DNAベクターとすることができ、こういったベクターへと遺伝子又はキメラ遺伝子が統合され、或いは、適切な転写調節配列がすでに存在する場合、所望のヌクレオチド配列(例えば、コード配列、アンチセンス配列又は逆方向反復配列)のみが、転写調節配列の下流に統合される。ベクターは通常は、例えば、選択マーカー、マルチクローニングサイト等などの、分子クローニングにおけるベクターの使用を容易にする遺伝的エレメントをさらに含む。
【0038】
「組換え宿主細胞」又は「形質転換細胞」又は「トランスジェニック細胞」とは、所望のタンパク質をコードする導入遺伝子及び/若しくはキメラ遺伝子、又は発現されると本明細書で定義のPARタンパク質などの特定のタンパク質をもたらすヌクレオチド配列を特に含む少なくとも1つの核酸分子が細胞に導入された結果として生じる、新たな個々の細胞(又は生物)を指す用語である。「単離された核酸」とは、もはやその天然の環境にはない、例えば、in vitro又は組換え細菌細胞若しくは植物宿主細胞にある、核酸を指すために使用される。
【0039】
「宿主細胞」とは、導入遺伝子で形質転換されて組換え宿主細胞となる、当初の細胞である。宿主細胞は、植物細胞又は細菌細胞であることが好ましい。組換え宿主細胞は、染色体外で(エピソームで)複製する分子として核酸構築物を含有することができるか、又は、より好ましくは、宿主細胞の核若しくは色素体ゲノムに統合された遺伝子若しくはキメラ遺伝子を含む。
【0040】
「組換え植物」又は「組換え植物部分」又は「トランスジェニック植物」とは、遺伝子が発現しない場合があるとしても又はすべての細胞で発現しない場合があるとしても、組換え遺伝子又はキメラ遺伝子又は導入遺伝子を含む植物又は植物部分(例えば、種子又は果実又は葉)である。
【0041】
「エリートイベント」とは、植物の良好な表現型及び/又は農学的特徴をもたらす、ゲノム中の位置に組換え遺伝子又は導入遺伝子を含むように選抜された組換え植物である。統合部位の隣接DNAを配列決定して、統合部位を特徴づけること及びゲノム中の他の位置で同じ組換え遺伝子を含む他のトランスジェニック植物から上記イベントを区別することができる。
【0042】
「選択マーカー」という用語は、当業者によく知られている用語であり、本明細書では、発現した場合、当該選択マーカーを含有する1つの細胞又は複数の細胞を選別するのに使用することができる任意の遺伝的実体を記載するために、使用される。選択マーカー遺伝子産物は、例えば、抗生物質抵抗性、又はより好ましくは、除草剤抵抗性若しくは別の選択可能な形質、例えば表現型形質(例えば色素沈着の変化)若しくは栄養要求性を、付与する。「レポーター」という用語は緑色蛍光タンパク質(GFP)、eGFP、ルシフェラーゼ、GUS等などの可視マーカーを指すために、主として使用される。
【0043】
遺伝子又はタンパク質の「オルソログ」という用語は、本明細書では、当該遺伝子又はタンパク質と同じ機能を有するが、当該遺伝子を宿す種が分岐した時点から配列において(通常は)分岐した、別の種において見いだされる相同な遺伝子又はタンパク質を指す(すなわち、種分化によって共通の祖先から進化した遺伝子)。したがって、タンポポ属の単為生殖遺伝子のオルソログは、配列比較(例えば、配列全体にわたる又は特定のドメインにわたる配列同一性のパーセンテージに基づく)と機能解析の両方に基づいて、他の植物種において同定することができる。
【0044】
「相同」及び「異種」という用語は、特にトランスジェニック生物の文脈において、核酸配列又はアミノ酸配列とその宿主細胞又は宿主生物との間の関係を指す。したがって、相同配列は宿主種に天然に見いだされ(例えば、レタス遺伝子で形質転換されたレタス植物)、一方、異種配列は、宿主細胞には天然に見いだされない(例えば、ジャガイモ植物由来の配列で形質転換されたレタス植物)。文脈に応じて、「ホモログ」又は「相同」という用語は、共通の祖先の配列の子孫である配列を代替的に指す場合がある(例えば、それらはオルソログであってもよい)。
【0045】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」を使用して、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列を同定することができる。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、様々な状況において異なることになる。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度及びpHにて、特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5℃低くなるよう選択される。Tmとは、標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度及びpH下で)である。通常は、塩濃度はpH7にて約0.02モル濃度であり、温度は少なくとも60℃である、ストリンジェントな条件が選ばれることになる。塩濃度の低下及び/又は温度の上昇によって、ストリンジェンシーが高まる。RNA-DNAハイブリダイゼーション(例えば100ntのプローブを使用したノーザンブロット)にとってストリンジェントな条件とは、例えば、63℃での0.2×SSCにおける20分間の少なくとも1回の洗浄を含む条件、又は同等条件である。DNA-DNAハイブリダイゼーション(例えば100ntのプローブを使用したサザンブロット)にとってストリンジェントな条件とは、例えば、少なくとも50℃の、通常は約55℃の温度での、0.2×SSCにおける20分間の少なくとも1回の洗浄(通常2回)を含む条件又は同等条件である。Sambrookら(1989)並びにSambrook及びRussell(2001)も参照されたい。
【0046】
「高ストリンジェンシー」条件については、例えば、6×SSC(3.0M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウムを含有する20×SSC、pH7.0)、5×デンハルト(2%フィコール、2%ポリビニルピロリドン、2%ウシ血清アルブミンを含有する100×デンハルト)、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び非特異的コンペティタとして20μg/ml変性キャリアDNA(一本鎖のサカナ精子DNA、平均長120~3000ヌクレオチドを有する)を含有する水溶液中65℃でのハイブリダイゼーションによって、提供することができる。ハイブリダイゼーションに続いて、0.2~0.1×SSC、0.1%SDS中で上記ハイブリダイゼーション温度での最終洗浄(約30分間)という条件で、高ストリンジェンシー洗浄をいくつかの段階で行ってもよい。
【0047】
「中ストリンジェンシー」とは、上に記載の溶液中のハイブリダイゼーションと同等であるが約60~62℃にての条件を指す。その場合、最終洗浄を、1×SSC、0.1%SDS中で上記ハイブリダイゼーション温度にて行う。
【0048】
「低ストリンジェンシー」とは、約50~52℃にての上に記載の溶液中のハイブリダイゼーションと同等の条件を指す。その場合、最終洗浄を、2×SSC、0.1%SDS中で上記ハイブリダイゼーション温度にて行う。Sambrookら(1989)並びにSambrook及びRussell(2001)も参照されたい。
【0049】
「配列同一性」及び「配列類似性」は、2つの配列の長さに応じて、グローバル又はローカルのアラインメントアルゴリズムを使用して2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列のアラインメントによって決定することができる。同様の長さの配列は、配列を全長にわたり最適に整列するグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman Wunsch)を使用して整列するのが好ましいが、一方、実質的に異なる長さの配列は、ローカルアライメントアルゴリズム(例えば、Smith Waterman)を使用して整列するのが好ましい。次いで、配列は、(例えば、デフォルトパラメータを使用してプログラムGAP又はBESTFITにより最適に整列される場合に)、(本明細書で定義した)配列同一性の少なくともある特定の最少パーセンテージを共有する場合、「実質的に同一の」又は「本質的に類似の」と呼ぶことができる。配列同一性のパーセントは、シーケンス・アナリシス・ソフトウェア・パッケージ(Sequence Analysis Software Package)(商標)(バージョン10;Genetics Computer Group,Inc.、Madison、Wis.)の「BESTFIT」又は「GAP」プログラムを使用して決定することが好ましい。GAPは、Needleman及びWunschのグローバルアライメントアルゴリズム(Needleman及びWunsch、Journal of Molecular Biology 48:443~453、1970)を使用して、2つの配列をそれらの全長(完全長)にわたり整列し、一致の数を最大化し、ギャップの数を最小化する。グローバルアライメントは、2つの配列が類似の長さを有する場合に配列同一性を決定するのに適切に使用される。一般に、ギャップ作成ペナルティ=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティ=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)の条件で、GAPデフォルトパラメータが使用される。ヌクレオチドの場合、使用されるデフォルトスコアリングマトリックスはnwsgapdnaであり、タンパク質の場合、デフォルトスコアリングマトリックスはBlosum62である(Henikoff & Henikoff、1992、PNAS 89、915~919)。配列アラインメント及び配列同一性パーセンテージのスコアは、コンピュータプログラム、例えば、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121-3752米国から入手可能なGCG Wisconsin Packag、バージョン10.3を使用して、又はオープンソースソフトウェア、例えば、上のGAPと同じパラメータを使用するか、若しくはデフォルト設定を使用するEmbossWINバージョン2.10.0のプログラム「needle」(グローバルNeedleman Wunschアルゴリズムを使用する)若しくは「water」(ローカルSmith Watermanアルゴリズムを使用する)を使用して、決定してもよい(「needle」及び「water」の両方について並びにタンパク質及びDNAアライメントの両方について、デフォルトギャップオープンペナルティは10.0であり、デフォルトギャップ伸長ペナルティは0.5である;デフォルトスコアリングマトリックスは、タンパク質についてはBlosum62であり、DNAについてはDNAFullである)。「BESTFIT」は、2つの配列間において、類似性の最良のセグメントの最適なアラインメントを実施し、Smith及びWatermanのローカル相同性アルゴリズムを使用して一致の数を最大化するようにギャップを挿入する(Smith及びWaterman、Advances in Applied Mathematics、2:482~489、1981、Smithら、Nucleic Acids Research 11:2205~2220、1983)。配列が実質的に異なる全長を有する場合は、ローカルアラインメント、例えばSmith Watermanアルゴリズムを使用するものが好ましい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」とは、2つの最適にアラインメントされたポリヌクレオチド又はペプチド配列が、成分、例えば、ヌクレオチド又はアミノ酸のアラインメントの範囲の全体にわたって不変である程度を指す。試験配列及び参照配列のアラインメントされたセグメントの「同一性の割合」とは、2つのアラインメントされた配列によって共有される同一成分の数を、参照配列セグメントにおける、すなわち、参照配列全体又は参照配列のより小さい定義された部分における成分の総数で割った数である。「同一性パーセント」とは、同一性の割合を100倍したものである。
【0051】
配列同一性を決定する有用な方法は、Guide to Huge Computers、Martin J.Bishop編、Academic Press、San Diego、1994、並びにCarillo,H.、及びLipton,D.、Applied Math(1988)48:1073にも開示されている。より詳細には、配列同一性を決定するのに好ましいコンピュータプログラムとしては、National Library of Medicine、National Institute of Health、Bethesda、Md.20894のNational Center Biotechnology Information(NCBI)から公的に入手可能である基本ローカルアラインメント検索ツール(BLAST)プログラムが挙げられる。BLAST Manual、Altschulら、NCBI、NLM、NIH;Altschulら、J.Mol.Biol.215:403~410(1990)を参照されたい。BLASTプログラムのバージョン2.0以降は、ギャップ(欠失及び挿入)のアラインメントへの導入を可能にし;ペプチド配列の場合、BLASTXが、配列同一性を決定するために使用することができ;ポリヌクレオチド配列の場合、BLASTNが、配列同一性を決定するために使用することができる。
【0052】
或いは、類似性又は同一性のパーセンテージは、FASTA、BLAST等などのアルゴリズムを使用して、公共データベースに対して検索することにより決定してもよい。したがって、本発明の核酸配列及びタンパク質配列は、「クエリ配列」としてさらに使用して、公共データベースに対して検索を実施し、例えば、他のファミリーメンバー又は関連配列を同定することができる。このような検索は、Altschul、ら(1990)J.Mol.Biol.215:403~10のBLASTn及びBLASTxプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施して、本発明のオキシドレダクターゼ核酸分子に相同なヌクレオチド配列を入手することができる。BLASTタンパク質検索は、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施して、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を入手することができる。比較の目的でギャップを加えたアライメントを入手するには、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389~3402に記載のように、Gapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTのプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、BLASTx及びBLASTn)を使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/で、National Center for Biotechnology Informationのホームページを参照されたい。
【0053】
本明細書で使用される「有性植物生殖」という用語は、「大胞子母細胞」と呼ばれる(例えば二倍体)体細胞が減数分裂を経て4つの減数大胞子を生産する発生経路を指す。これらの大胞子のうちの1つは有糸分裂で分裂して、減数卵細胞(すなわち、母親と比較して染色体数が減少した細胞)及び2つの減数極核を含有する大配偶体(胚嚢としても知られている)を形成する。花粉粒の1つの精細胞による卵細胞の受精は、(例えば二倍体)胚を生じ、一方、第2の精細胞による2つの極核の受精は、(例えば三倍体)胚乳を生じる(重複受精と呼ばれるプロセス)。
【0054】
本明細書で使用される「大胞子母細胞(megaspore mother cell)」又は「メガ胞子母細胞(megasporocyte)」という用語は、雌性配偶体へと発生する4つの単数体大胞子を創り出すために、減数、通常は減数分裂によって大胞子を生産する細胞を指す。被子植物(顕花植物としても知られる)では、大胞子母細胞は、大胞子形成(珠心における大胞子、又は大胞子嚢の形成)、及び大配偶子形成(大配偶体への大胞子の発生)を含む異なる2つのプロセスを通して大配偶体へと発生する、大胞子を生産する。
【0055】
本明細書で使用される「無性植物生殖」という用語は、受精なしで且つ配偶子の融合なしで植物の生殖が行われるプロセスである。無性生殖によって、突然変異又は体細胞組換えが生じる場合を除いて、親植物と及び互いに遺伝的に同一である新しい個体が生産する。植物は、栄養生殖(すなわち、当初の植物の栄養片の出芽、分げつ等を含む)及びアポミクシスを含めて、主要な2つのタイプの無性生殖を有する。
【0056】
本明細書で使用される「アポミクシス」という用語は、無性プロセスによる種子の形成を指す。アポミクシスの一形態は以下によって特徴づけられる:1)アポマイオシス、これは子房での非減数胚嚢の形成を指す、及び2)単為生殖、これは非減数卵の胚への発生を指す。数百の野生植物種は、アポミクティック繁殖を特徴とし、無性的に殖える。アポマイオシスとは、母植物の体細胞組織と同じ染色体数と同一又は高度に類似の遺伝子型とを備える、非減数卵細胞の生産をもたらすプロセスである。非減数卵細胞は、非減数大胞子(複相胞子生殖)に又は体細胞の始原細胞(無胞子生殖)に、由来することができる。複相胞子生殖の場合、大胞子形成は有糸分裂に又は改変された減数分裂に代わる。改変された減数分裂とは、組換えなしの第一分裂復旧型のものであるのが好ましい。或いは、改変された減数分裂とは、第二分裂復旧型のものであってもよい。好ましい実施形態では、アポマイオシスとは、第一減数分裂に影響を与える複相胞子生殖型タイプのものである。アポミクシスは、配偶体のアポミクシスと胞子体のアポミクシス(不定胚形成とも呼ばれる)として知られる少なくとも2つの形態を含む様々な形態で生じることが知られている。配偶体のアポミクシスが生じる植物の例としては、タンポポ(タンポポ属の種)、ヤナギタンポポ(ヤナギタンポポ属の種)、ケンタッキーブルーグラス(ナガハグサ)、イースタンガマグラス(トリプサクム・ダクチロイデス)及びその他などが挙げられる。胞子体のアポミクシスが生じる植物の例としては、シトラス(シトラス属の種)、マンゴスチン(ガルシニア・マンゴスタナ)及びその他などが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される「複相胞子生殖」という用語は、非減数胚嚢が、有糸分裂によって又は中断された減数分裂イベントによって、直接的にいずれかで大胞子母細胞に由来する、状況を指す。複相胞子生殖に関して主たる3つのタイプが報告されており、これらのタイプが生じる植物の名を取って命名されており、その植物はタンポポ属、ニガナ属(Ixeris)及びアンテンナリア属(Antennaria)である。タンポポ属タイプでは、減数分裂前期が開始されるが、その後プロセスが中断され、2つの非減数二分染色体がもたらされ、そのうちの1つが有糸分裂によって胚嚢を生じる。ニガナ属タイプでは、8つの核体の胚嚢を生じる核のさらなる2回の有糸分裂は、減数分裂前期の後の均等分裂に従う。タンポポ属タイプ及びニガナ属タイプは、減数分裂の改変を伴うので、減数分裂複相胞子生殖として知られる。対照的に、有糸分裂複相胞子生殖と呼ばれるアンテンナリア属タイプでは、大胞子母細胞は減数分裂を開始せず、直接3回分裂して非減数胚嚢を生産する。複相胞子生殖による配偶体のアポミクシスでは、非減数配偶体が非減数大胞子から生産される。この非減数大胞子は、有糸分裂様の分裂(有糸分裂の変形(displory))又は改変された減数分裂(減数分裂の変形)のいずれかの結果生じる。無胞子生殖による配偶体のアポミクシスと複相胞子生殖による配偶体のアポミクシスの両方では、非減数卵細胞は、胚へと単為生殖的に発生する。タンポポ属のアポミクシスは、複相胞子生殖型のものであり、これは、第一雌性減数分裂(reduction division)(減数分裂(meiosis)I)はスキップされ、その結果、母植物と同じ遺伝子型を有する2つの非減数大胞子が生じることを意味する。これらの大胞子のうちの一方は退化し、他方の生存している非減数大胞子は、非減数大配偶体(又は胚嚢)を生じ、これは非減数卵細胞を含有する。この非減数卵細胞は、母植物と同じ遺伝子型を有する胚へと受精することなく発生する。配偶体のアポミクシスのプロセスの結果生じる種子は、アポミクティック種子と呼ばれる。
【0058】
「複相胞子生殖機能」という用語は、好ましくは雌性子房の中での、好ましくは大胞子母細胞の中での及び/又は雌性配偶子の中での、植物の複相胞子生殖を誘導する能力を指す。したがって、複相胞子生殖機能が導入されている植物は、複相胞子生殖プロセスを行うことが可能である、すなわち、減数分裂I復旧型を介して非減数配偶子を生産することができる。
【0059】
本明細書で使用される「アポミクティック種子」という用語は、アポミクティック植物種から、又は、アポミクシス、特に複相胞子生殖による配偶体のアポミクシスを経るように誘導された植物若しくは作物により得られる、種子を指す。アポミクティック種子は、クローンであり、親植物と遺伝的に同一であり、純粋な育種が可能である植物を発芽することを特徴とする。本発明では、「アポミクティック種子」とは、「クローンのアポミクティック種子」も指す。
【0060】
本明細書で使用される「アポミクティック植物(複数可)」という用語は、受精なしで、それ自体、無性生殖する植物を指す。アポミクティック植物とは、アポミクティックとなるように改変された有性植物であってよく、例をあげると、アポミクティック植物又はアポミクティック植物の子孫である植物を得るように本明細書で教示の単為生殖遺伝子のうちの1つ又は複数で遺伝子改変された、有性植物である。その場合、アポミクティック的に作出された後代は、親植物と遺伝的に同一である。
【0061】
細胞、植物、植物部分又は種子の「クローン」は、それらが、それらの同胞種と並びにそれらが由来する親植物と、遺伝的に同一であることを特徴とする。個々のクローンのゲノムDNA配列はほとんど同一であるが、しかし、突然変異が軽微な差異を引き起こす場合がある。
【0062】
本明細書で使用される「純粋な繁殖」又は「純粋な繁殖生物」(純血生物としても知られる)という用語は、その子孫に未変化又はほとんど未変化のある特定の表現型形質を常に伝える生物を指す。ある生物は、当該生物があてはまる各形質について純粋な育種と称され、「純粋な育種」という用語はまた、個々の遺伝形質を記載するためにも使用される。
【0063】
本明細書で使用される「F1雑種」(又は雑種第一代)という用語は、明確に異なる親タイプの子孫の最初の雑種世代を指す。親タイプは、近交系であってもよいが、そうでなくてもよい。F1雑種は、遺伝学において及び選抜育種において使用され、この場合、それはF1交配種として現れ得る。親タイプが明らかに異なる子孫は、両親からの特徴の組合せを伴う新しい均一な表現型を生み出す。F1雑種は雑種強勢などの明確な利点を伴い、したがって、農業の実践で高度に所望されている。本発明の実施形態では、本明細書で教示の方法、遺伝子、タンパク質、それらのバリアント又は断片を使用して、その遺伝的複雑性にかかわらず、F1雑種の遺伝子型を固定することができ、それらによって、一段階で純粋育種を行うことができる生物の作出が可能になる。
【0064】
本明細書で使用される「受粉」又は「受粉すること」という用語は、花粉が植物の葯(雄の部分)から柱頭(雌の部分)に移され、それによって受精及び生殖が可能になるプロセスを指す。受粉は、被子植物、花をつける植物に固有である。花粉粒それぞれが、雄性単数体配偶体であり、雌性配偶体に輸送されるように構成されており、ここで、雄性単数体配偶体は、重複受精のプロセスにおいて、雄性配偶子(又は複数の配偶子)を生産することによって受精を行うことができる。雄性配偶子を含有する成功した被子植物の花粉粒(配偶体)は、柱頭に運搬され、ここで、発芽し、その花粉管は、子房に花柱を下方へと生長させる。その2つの配偶子は、雌性配偶子を含有する配偶体(複数可)が心皮内で保持されているところまで管を下方へ進む。一方の核は極体と融合して胚乳組織を生産し、他方の核は胚珠と融合して胚を生産する。
【0065】
本明細書で使用される「単為生殖」という用語は、受精なしで胚の生長及び発生が生じる無性生殖の形態を指す。本発明の遺伝子及びタンパク質は、好ましくは複相胞子生殖型因子、例をあげると、遺伝子又は化学因子との組合せで、アポミクティック子孫を作出することができる。
【0066】
本明細書で使用される「単為生殖表現型」という用語は、受精なしで卵細胞から胚を生長及び発生させる植物及び/又はその子孫の能力を指す。
【0067】
本明細書で使用される「ピラミッド化遺伝子又はスタッキング遺伝子」という用語は、望ましい又は好ましい形質(例えば、耐病害性形質、色、干ばつ耐性、有害生物耐性等)の根底にある、異なる親系統からの関連又は非関連遺伝子を、1つの植物へと組み合わせるプロセスを指す。ピラミッド化遺伝子又はスタッキング遺伝子は、従来の育種法を使用して実行することができるか、又は、分子マーカーを使用することによって加速して、所望の対立遺伝子の組合せを含有する植物を同定及び維持し且つ所望の対立遺伝子の組合せを備えない植物を破棄することができる。本発明の一実施形態では、本明細書で教示の単為生殖遺伝子を、遺伝子のピラミッド化プログラム又はスタッキングプログラムにおいて有利に使用して、アポミクティック植物を作出すること又は有性作物にアポミクシスを導入することができる。
【0068】
本文書及びその特許請求の範囲において、動詞「を含む(to comprise)」及びその語形変化は、この単語に続く項目が包含されるが、特に言及されていない項目が除外されないことを意味するよう、その非限定な意義で使用される。加えて、文脈が、1つであること及び要素のうちの1つのみであることを明らかに要求しない限り、不定冠詞「a」又は「an」による要素の言及は、2つ以上の要素が存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は通常、「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において「配列」に言及する場合、一般に、サブユニット(例えば、アミノ酸)のある特定の配列を有する実際の物理的な分子を指すことがさらに理解される。
【0069】
本明細書で使用される場合、「植物」という用語には、植物細胞、植物組織若しくは器官、植物プロトプラスト、植物を再生することができる植物細胞組織培養物、植物カルス、植物細胞塊、及び植物おいてインタクトな植物細胞、又は植物の部分、例えば、胚、花粉、胚珠、果実、花、葉(例えば、収穫されたレタス作物)、種子、根、根端等が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【0070】
本発明は、変異遺伝子を作出する方法を提供し、ここで、変異遺伝子は単為生殖において機能的である。好ましくは、方法は、本明細書ではpar対立遺伝子として指示される単為生殖遺伝子の有性バリアントのプロモーター配列を突然変異させて、コードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップを含む。結果として得られる変異遺伝子は、単為生殖表現型を植物に誘導することが可能であるので、Par対立遺伝子であると考えられる。par対立遺伝子が、優性Par対立遺伝子を欠いている植物又は植物細胞の内因性対立遺伝子である場合、本発明の方法は、前記par対立遺伝子のプロモーターの改変によって、単為生殖を示さない植物又は植物細胞の、単為生殖を示す植物又は植物細胞への形質転換をもたらす。本発明は、par対立遺伝子のプロモーター配列の改変によって、有性par対立遺伝子を単為生殖Par対立遺伝子に変換する方法を提供する。本発明は、
(a)プロモーターに作動可能に連結された、PARタンパク質をコードする配列を含む遺伝子を用意するステップと;
(b)PARタンパク質をコードする配列の上流の配列を改変することによってプロモーターを改変して、好ましくは成熟雌性配偶体におけるコードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと
を含む、単為生殖において機能的である変異遺伝子を作出する方法を提供する。
より特には、本発明は、
(a)1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を含むプロモーターに作動可能に連結された、PARタンパク質をコードする配列を含む遺伝子を用意するステップと;
(b)1つ又は複数の転写因子MYB結合部位の上流の配列を改変することによってプロモーターを改変して、好ましくは成熟雌性配偶体におけるコードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと
を含む、単為生殖において機能的である変異遺伝子を作出する方法を提供する。
【0071】
PARタンパク質をコードする配列の上流、好ましくは1つ又は複数の転写因子MYB結合部位の上流の配列は、PARタンパク質の発現を増強するエンハンサー配列を導入すること、及び/又はPARタンパク質の発現を抑制するリプレッサー配列を除去することによって改変することができる。好ましくは、エンハンサー配列、好ましくは雌性配偶体特異的エンハンサー配列が挿入される。前記インサートは、本明細書で定義のMITE配列であってもよい。代替的に又は加えて、PARタンパク質をコードする配列の上流、好ましくは1つ又は複数のMYB結合部位の上流のプロモーター配列は、1つ又は複数のヌクレオチド置換、挿入及び/又は欠失をもたらして、1つ若しくは複数のエンハンサー配列を導入する及び/又はコードされたPARタンパク質の発現を増大させる(ランダム)突然変異誘発によって変更される。
加えて又は代替的に、本発明は、
(a)1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を含むプロモーターに作動可能に連結された、PARタンパク質をコードする配列を含む遺伝子を用意するステップと;
(b)1つ又は複数の転写因子MYB結合部位のうちの少なくとも1つを改変することによってプロモーターを改変して、コードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと
を含む、単為生殖において機能的である変異遺伝子を作出する方法を提供する。
【0072】
好ましくは、本発明の変異遺伝子の改変されたプロモーターは、植物に存在する場合、未改変のカウンターパート、すなわち本発明のプロモーターが得られる、本明細書で定義の(内因性又は天然)プロモーターと比較して、改変されたプロモーターに作動可能に連結されたコード配列によってコードされるPARタンパク質の発現の増大をもたらす。好ましくは、発現の前記増大は、少なくとも、本発明の改変されたプロモーター及び/又は変異遺伝子を含む植物の卵細胞におけるものである。好ましくは、発現の増大は、当初の非変異遺伝子(すなわち本発明の方法のステップ(a)の遺伝子)と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100%の増大である。
【0073】
一実施形態では、ステップa)におけるPARタンパク質をコードする遺伝子は、シロイヌナズナに起源を持つ遺伝子ではない。一実施形態では、本発明の変異遺伝子は、1つ又は複数のMYB結合部位に突然変異を有する、シロイヌナズナに由来する変異プロモーターDAZ3を含まない。
【0074】
ステップ(a)において用意される遺伝子は、単為生殖遺伝子、好ましくは遺伝子の有性バリアント、すなわちpar対立遺伝子である。結果として得られる変異遺伝子は単為生殖において機能的であるので、本発明の方法は、単為生殖遺伝子の有性対立遺伝子(par対立遺伝子)を単為生殖において機能的である対立遺伝子(Par対立遺伝子)に変換する方法と考えることもできる。
【0075】
転写因子MYB結合部位(本明細書では「MYB結合部位」としても指示される)とは、転写因子MYBが認識及び結合するプロモーター内の配列である。MYBタンパク質とは、DNAをMYB結合部位に結合させ、それによって転写を調節する能力を付与する様々な数のMYBドメイン反復配列を含むDNA結合タンパク質のファミリーである。
【0076】
本発明者らは、par対立遺伝子の開始コドンの約50~150bp上流の領域において1つ又は複数のMYB結合部位を同定した。MYB結合部位は、本明細書では、NACCNNN、好ましくはAACCNNN、より好ましくはAACCGNN、さらにより好ましくはAACCG[C/T]N、さらにより好ましくはAACCG[C/T]Cのヌクレオチド配列を有することが好ましく、AACCGCC、AACCGTC又は[T/A]AACCGCCであってもよい、好ましくは7ヌクレオチドの配列と定義される(Borgら、2011)。好ましくは1つ又は複数のMYB結合部位は、PARタンパク質をコードする配列の開始コドンの約60~140bp、70~130bp、80~120bp又は90~110bp上流、好ましくは、開始コドンの最大約200、190、180、170、160又は150、140、130、120又は110ヌクレオチド上流に位置し、さらにより好ましくは、1つ又は複数、好ましくは2つのMYB結合部位の3’末端は、PARタンパク質をコードする配列の開始コドンの85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109又は110ヌクレオチド上流に位置する。一部の場合では、2つのMYB結合部位は前記領域に位置する。例をあげると、レタスでは、第1のMYB結合部位は、ATG開始コドンの117~110ヌクレオチド上流の位置に位置し、第2のMYB結合部位は、ATG開始コドンの104~98ヌクレオチド上流の位置に位置する。
【0077】
MYB結合部位は、転写因子MYBの結合部位として作用することが好ましく、ここで、MYB転写因子は、R2R3転写因子又はR2R3-MYB転写因子であり、前記転写因子MYBは、DUO1(UniProtKB受託A0A178VEK7)であり得るか、又はDUO1のバリアント、ホモログ若しくはオルソログであり得る。転写因子は、配列番号62と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有することが好ましい。
加えて又は代替的に、本発明は、単為生殖表現型を植物に誘導することが可能である変異遺伝子を作出する方法と考えることもでき、ここで、前記方法は、
(a)PARタンパク質をコードする配列を含む遺伝子を用意するステップであって、配列がプロモーターに作動可能に連結されており、プロモーターが、任意選択で、1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を含む、用意するステップと;
(b)好ましくは、
i)本明細書で定義のPARタンパク質をコードする配列の開始コドンの上流、さらにより好ましくは本明細書で定義の1つ又は複数のMYB結合部位の上流又はすぐ上流のプロモーター配列にインサートを導入して、好ましくはエンハンサー配列を導入すること又はリプレッサー配列を除去することによって、コードされたPARタンパク質の発現を増大させること;
ii)本明細書で定義のPARタンパク質をコードする配列の開始コドンの上流、さらにより好ましくは本明細書で定義の1つ又は複数のMYB結合部位の上流又はすぐ上流のプロモーター配列に置換及び/又は欠失を導入することであって、置換及び/又は欠失が、好ましくはエンハンサー配列を導入すること又はリプレッサー配列を除去することによって、コードされたPARタンパク質の発現を増大させる、導入すること;並びに
(iii)(i)と(ii)との組合せ
のうちの少なくとも1つによってプロモーターを改変して、コードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと
を含む。
【0078】
本発明の方法におけるプロモーターを改変するステップは、当技術分野で知られている任意の従来の方法を使用して、例えば、それに限定されないが、インサート又は欠失をプロモーターに、好ましくは任意選択で相同組換えを介したランダム又は標的突然変異誘発によって、本明細書で定義の1つ又は複数のMYB結合部位のすぐ上流において導入して、実施することができる。
【0079】
任意選択で、プロモーターにおけるインサート、置換又は欠失は、本明細書で定義の1つ又は複数のMYB結合部位を改変又は除去することができる。
したがって、本発明は、単為生殖表現型を植物に誘導することが可能である変異遺伝子を作出する方法と考えることもでき、ここで、前記方法は、
(a)PARタンパク質をコードする配列を含む遺伝子を用意するステップであって、配列が1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を含むプロモーターに作動可能に連結されている、用意するステップと;
(b)インサート又は欠失をプロモーターに、本明細書で定義のプロモーターにおける1つ又は複数のMYB結合部位のすぐ上流において導入することにより、1つ又は複数の転写因子MYB結合部位の上流の配列を改変することによってプロモーターを改変して、コードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと
を含む。
【0080】
加えて、又は代替的に、本発明の方法は、本明細書で定義の1つ又は複数のMYB結合部位を誘導、改変又は除去することによってプロモーターを改変するステップを含むことができる。
【0081】
プロモーターが1つ又は複数、好ましくは2つの本明細書で定義のMYB結合部位を含む場合、任意選択で、プロモーターの1つ若しくは複数、好ましくは2つのMYB結合部位は、転写因子MYBの結合を減少させるために改変若しくは除去される、及び/又はインサート若しくは欠失がプロモーターの1つ若しくは複数のMYB結合部位の上流に導入される。本発明の方法におけるMYB結合部位の改変は、配列がもはやMYB結合部位ではなくなるような、1、2、3、4、5、6、又は7つのヌクレオチド、好ましくは1、2又は3つのヌクレオチド、さらにより好ましくは1つのヌクレオチドの改変であり得る。好ましくは、前記改変は、少なくとも、上で指示された7ヌクレオチド長のMYB結合モチーフの1番目、2番目、3番目、4番目又は5番目の位置に位置する突然変異(ヌクレオチド交換、挿入又は欠失)、すなわち、モチーフAACCGNNのA、A、C、C及びGのうちの少なくとも1つの改変である。好ましくは、前記改変は、少なくとも、上で指示された7ヌクレオチド長のMYB結合モチーフの1番目、2番目、3番目又は4番目の位置に位置する突然変異(ヌクレオチド交換、挿入又は欠失)、すなわち、モチーフAACCGNNのA、A、C及びCのうちの少なくとも1つの改変、任意選択で、これらの位置における2、3又は4つすべてのヌクレオチドの改変である。
【0082】
好ましくは、改変は、転写因子MYBのMYB結合部位への結合の低減又は消失をもたらす。好ましくは、結合親和性は、適切な実験条件下で、例えばKelemenら、前出に記載されているように試験された場合、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は100%減少する。任意選択で、MYB結合部位の改変は、前記MYB結合部位の欠失であってもよい。前記改変は、ランダム突然変異誘発(例をあげると化学的若しくは放射線突然変異誘発による)又は標的突然変異誘発(例をあげるとCRISPR-エンドヌクレアーゼ媒介突然変異誘発)によって実施することができる。任意選択で、遺伝子に存在する複数(2、3又はそれ超)のMYB結合部位は、本発明の方法において、本明細書で定義されるように改変される。任意選択で、変異遺伝子は、レタスの改変されたプロモーターを含み、ここで、前記プロモーターは配列番号17の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は、レタスPARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された前記プロモーターを含み、好ましくは、前記コード配列は配列番号33の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は配列番号35の配列を含むか又はそれからなる。本発明はまた、変異遺伝子及び/又は構築物を含む植物又は植物細胞、好ましくはレタス植物又は植物細胞も含む。
【0083】
一実施形態では、有性遺伝子、好ましくはpar遺伝子のプロモーターは、1つ又は複数のMYB結合部位の上流にインサートを導入することによって改変することができる。インサートは、1つ又は複数のMYB結合部位の非常に近く又はすぐ隣に導入することができる。インサートとMYB結合部位、又は複数のMYB結合部位の場合はコード配列から最も上流に位置するMYB結合部位との間の距離は、最大で10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0ヌクレオチドであることが好ましい。好ましくは、インサートは、1つ又は複数のMYB結合部位のすぐ上流に導入される。本発明の方法において遺伝子のプロモーターに導入することができるインサートは、核酸インサート、好ましくは二本鎖DNAインサートを含むことが好ましく、ここで、前記インサートは、50~2000bpの間、100~1900bpの間、200~1800bpの間、300~1700bpの間、400~1600bpの間、500~1500bpの間、600~1400bpの間、1000~1400の間、1200~1400の間、又は1300~1400bpの間の長さを有する。さらにより好ましくは、前記インサートは約1300bpの長さを有する。代替的に又は加えて、インサートは、約1~50bpの間、約5~30bpの間又は約10~20bpの間である。好ましくは、前記インサートは、好ましくはMYB結合部位とインサート、好ましくはインサートの3’末端との間の距離が、0~200bpの間、好ましくは最大で0、10、20、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200bpとなるように、本明細書で定義のMYB結合部位の上流(5’)のプロモーターに導入される。好ましくは、前記インサートは、インサートの3’末端ヌクレオチドが、配列番号2のヌクレオチド1798の及び/又は配列番号5のヌクレオチド1798の位置に相同である位置となるように、局在する。好ましくは、前記インサートは、オープンリーディングフレームがない。
【0084】
前記インサートは、非自律的転位因子、好ましくはhAT由来非自律的トランスポゾンエレメントであってもよい。インサートは、エンハンサーエレメント、好ましくは雌性配偶体特異的エンハンサーエレメントを含んでもよい。さらにより好ましくは、前記インサートは、ミニチュア逆方向反復転位因子(MITE)又はMITE様配列であり、ここで、前記MITE又はMITE様配列は、小直列反復配列(標的部位の重複、TSD)が隣接する末端逆方向反復配列(TIR)が隣接する、オープンリーディングフレームがない内部配列を含有することを特徴とする、非自律的エレメント、好ましくは非自律的転位因子である。TIRは、配列CAGGGCCGG及び/又はCCGGCCCTGを有し得る。TSDは配列ACTGCTACを有し得る。MITE、TIR、及び配列の詳細については、参照により本明細書に組み込まれる、Guoら、Scientific Reports.2017年6月1日;7(1):2634、を参照されたい。前記インサート、好ましくは前記MITE又はMITE様配列は、配列番号60と少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%又はそれ超の同一性を有することができる。インサートは、合成、組換え及び/又は標的ゲノム編集によって導入することができる。
【0085】
任意選択で、変異遺伝子は、レタスの改変されたプロモーターを含み、ここで、前記プロモーターは配列番号18の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は、レタスPARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された前記プロモーターを含み、好ましくは、前記コード配列は配列番号33の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は配列番号36の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は、レタスの改変されたプロモーターを含み、ここで、前記プロモーターは配列番号18の配列を含むか又はそれからなり、前記プロモーターは、セイヨウタンポポPARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結されており、好ましくは、前記コード配列は配列番号3の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は配列番号64の配列を含むか又はそれからなる。本発明はまた、変異遺伝子及び/又は構築物を含む植物又は植物細胞、好ましくはレタス植物又は植物細胞も含む。
【0086】
任意選択で、変異遺伝子は、セイヨウタンポポのParプロモーターを含み、ここで、前記プロモーターは配列番号2の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は、PARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された前記プロモーターを含み、ここで、前記PARタンパク質は(天然)セイヨウタンポポPARタンパク質ではない。任意選択で、変異遺伝子は、上に本明細書で定義のオーソロガスPARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された前記プロモーターを含む。任意選択で、変異遺伝子は、セイヨウタンポポのParプロモーターを含み、ここで、前記プロモーターは配列番号2の配列を含むか又はそれからなり、プロモーターはレタスPARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結されており、好ましくは、前記コード配列は配列番号33の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は配列番号65の配列を含むか又はそれからなる。
【0087】
別の実施形態では、有性遺伝子、好ましくはpar遺伝子のプロモーターは、1つ又は複数のMYB結合部位の上流に欠失を導入することによって改変することができる。欠失は、1つ又は複数のMYB結合部位の非常に近く又はすぐ隣に導入することができる。欠失とMYB結合部位、又は複数のMYB結合部位の場合はコード配列から最も上流に位置するMYB結合部位との間の距離は、最大で200、150、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1ヌクレオチドであることが好ましい。好ましくは、欠失は、1つ又は複数のMYB結合部位のすぐ上流に導入される。本発明の方法において遺伝子のプロモーターに導入することができる欠失は、核酸欠失、好ましくは二本鎖DNA欠失を含むことが好ましく、ここで、前記欠失は、10~1000bpの間、50~900bpの間、100~800bpの間、200~700bpの間、350~600bpの間、好ましくは約400bpの長さを有する。好ましくは、前記欠失はオープンリーディングフレームがない。欠失は、組換え及び/又は標的若しくはランダムゲノム編集によって導入することができる。任意選択で、変異遺伝子は、レタスの改変されたプロモーターを含み、ここで、前記プロモーターは配列番号20の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は、レタスPARタンパク質をコードする配列に作動可能に連結された前記プロモーターを含み、好ましくは、前記コード配列は配列番号33の配列を含むか又はそれからなる。任意選択で、変異遺伝子は配列番号61の配列を含むか又はそれからなる。本発明はまた、変異遺伝子及び/又は構築物を含む植物又は植物細胞、好ましくはレタス植物又は植物細胞も含む。
【0088】
好ましくは、本発明の方法のステップa)の遺伝子、及び本発明の方法によって入手可能な変異遺伝子は、核酸分子、好ましくはDNA分子、さらにより好ましくはゲノムDNA分子であるか又はその一部である。任意選択で、前記ゲノムDNA分子は、植物細胞、好ましくは植物プロトプラストに存在する。本発明の方法による、植物細胞に位置する場合の有性遺伝子のプロモーターの改変は、対照植物と比較して、前記植物細胞に由来する植物の単為生殖表現型の有意な増大をもたらすことができ、ここで、好ましくは、対照植物は単為生殖表現型を示さず、一方、本発明の変異遺伝子を含む植物は単為生殖表現型を示す。対照植物は好ましくは、par対立遺伝子のプロモーターが本明細書で定義のように改変されていないという点のみが前記植物細胞に由来する植物と異なる。好ましくは、対照植物又は対照植物細胞は、本明細書で定義の遺伝子改変を含まないという点のみが、それぞれ本発明の植物細胞又は植物と異なる。
【0089】
好ましくは、ステップ(a)の遺伝子はpar対立遺伝子であり、本明細書で定義の、単為生殖が不可能である植物細胞に位置する場合のpar対立遺伝子のプロモーターの改変は、単為生殖表現型を示す植物をもたらす。本発明の方法によって入手可能な変異遺伝子は単為生殖において機能的であるので、変異遺伝子はPar対立遺伝子と考えることができ、本発明の方法もまた、par対立遺伝子をPar対立遺伝子に変換する方法と考えることができる。
【0090】
任意選択で、本発明の方法によるプロモーターの改変は、転写因子MYBのプロモーターへの結合に影響を及ぼし、プロモーターを含む遺伝子によってコードされるPARタンパク質の発現の増大をもたらす。任意選択で、改変は、転写因子MYBの結合の低減又は消失をもたらす。転写因子MYBのプロモーターへの結合は、当業者によって知られている適切な任意のアッセイ、例えば、それに限定されないが、in vivo酵母ワンハイブリッドシステムによって評価することができる(例えば、Kelemenら、PLoS One.2015;10(10):e0141044を参照されたい)。
【0091】
ランダム突然変異誘発は、それらに限定されないが、化学的突然変異誘発、ガンマ線照射、X線又は高速中性子照射であり得る。化学的突然変異誘発の非限定的な例としては、それらに限定されないが、EMS(メタンスルホン酸エチル)、MMS(メタンスルホン酸メチル)、NaN3(アジ化ナトリウム)D)、ENU(N-エチル-N-ニトロソ尿素)、AzaC(アザシチジン)及びNQO(4-ニトロキノリン1-オキシド)が挙げられる。任意選択で、TILLING(ゲノム中の標的化誘発局所的損傷(Targeting Induced Local Lesions IN Genomics;McCallumら、2000、Nat Biotech 18:455、及びMcCallumら 2000、Plant Physiol.123、439~442、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)などの突然変異誘発系を使用して、本明細書で定義の改変された遺伝子を有する植物系統を作り出してもよい。TILLINGでは、従来の化学的突然変異誘発(例えばEMS突然変異誘発)を、これに続いて、突然変異向けにハイスループットスクリーニングを使用する。したがって、1つ又は複数の所望の突然変異を有する遺伝子を含む植物、種子及び組織を、TILLINGを使用して入手してもよい。標的突然変異誘発とは、特定のヌクレオチド又は核酸配列を変更するように設計することができる突然変異誘発である。標的突然変異誘発は、それらに限定されないが、オリゴ指向性突然変異誘発、RNA誘導エンドヌクレアーゼ(例えばCRISPRテクノロジー)、TALEN又はジンクフィンガーテクノロジー、及びそれらの組合せから選択することができる。
【0092】
任意選択で、本発明の方法のステップ(a)の遺伝子は天然の配列である。本発明の方法のステップ(a)の遺伝子は、PARタンパク質をコードする配列に、任意選択でこれに続く3’UTR配列に、作動可能に連結されたプロモーターを含むか又はそれからなることが好ましい。ステップ(a)において用意される遺伝子は、単為生殖遺伝子の単為生殖対立遺伝子を含まない植物細胞、好ましくは植物プロトプラストの一部であってもよい。好ましくは、前記植物細胞又はプロトプラストは非単為生殖である、すなわち、前記細胞又はプロトプラストから再生された植物は単為生殖表現型を示さない。換言すれば、ステップ(a)において用意される遺伝子は、植物細胞、好ましくは植物プロトプラストに含まれることが好ましく、ここで、本明細書で定義の突然変異は、植物細胞の単為生殖の誘導又は増大をもたらす、すなわち、前記突然変異した細胞又はプロトプラストから再生された植物は単為生殖表現型を示す。
【0093】
本発明の方法のステップ(a)において用意される遺伝子は、好ましくは植物細胞に天然に存在する天然の遺伝子であってもよい。天然の配列とは、天然に見いだされる配列であり、本明細書では「野生型」又は「天然」としても指示される。したがって、本実施形態では、プロモーター、コード配列及び任意選択の3’UTRは、単一の植物種由来である。
【0094】
或いは、本発明の方法のステップ(a)において用意される遺伝子は、キメラ遺伝子とも本明細書で称される天然ではない及び/又は合成の遺伝子である。任意選択で、前記キメラ遺伝子では、プロモーターはPARタンパク質をコードするコード配列及び/又は3’UTRに作動可能に連結されており、ここで、前記コード配列及び/又は3’UTRはプロモーターに対して異種である。非限定的な例として、プロモーターは、コード配列及び/又は3’UTRと別の植物種のものであってもよい。任意選択で、プロモーター及び3’UTRは単一の植物種由来であり、コード配列は別の植物種由来である。
【0095】
好ましくは、本発明の方法のステップ(a)において用意される遺伝子は植物細胞又はプロトプラストに存在する。したがって、本発明の方法は、遺伝子のプロモーターを改変するステップに先行する、ステップ(a)の遺伝子を含むプロトプラスト又は植物細胞を用意するステップを含んでもよい。好ましくは、遺伝子は、プロトプラスト又は植物細胞のゲノムに存在する内因性遺伝子である。好ましくは、前記プロトプラスト又は植物細胞は、植物、好ましくは非単為生殖植物から単離される。好ましくは、前記植物はそのゲノムにPar対立遺伝子を有さない。好ましくは、プロトプラスト又は植物細胞内の、ステップ(a)において用意される遺伝子のプロモーターは、標的又はランダム突然変異誘発、好ましくは標的突然変異誘発によって本明細書で定義のように改変される。
【0096】
本発明の方法の特定の実施形態では、ステップ(a)の遺伝子を含む植物細胞は、植物種子に位置してもよい。好ましくは、前記種子はそのゲノムにPar対立遺伝子を有さない。好ましくは、前記種子内の遺伝子のプロモーターは、本発明の方法において、標的又はランダム突然変異誘発、好ましくはランダム突然変異誘発によって改変される。
【0097】
遺伝子のプロモーターを改変するステップの後に、本発明の方法は、前記プロトプラストから植物を再生するステップ又は前記種子から植物を生長させるステップを含んでもよい。
【0098】
加えて、本発明の方法は、スクリーニング及び/又は遺伝子型決定するステップを含んでもよい。遺伝子型決定は、改変ステップ後のプロモーターの少なくとも一部を配列決定すること(任意選択で、目的のプロモーターを含むゲノムDNA及び/若しくは標的配列のPCR増幅が先行する)、又はそれらに限定されないが、シーケンスをベースとするジェノタイピング(SBG)若しくはキージーン(KeyGene)(登録商標)SNPSelect解析などの当技術分野で知られている任意のゲノム変異解析法若しくは分子マーカーアッセイによって実施することができる。また、「イベント固有の」PCR診断法を開発することもできるが、この場合、PCRプライマーは、改変に隣接する植物DNAをベースとする、米国特許第6,563,026号を参照されたい。同様に、トランスジェニック植物又はそれに由来する任意の植物、種子、組織若しくは細胞を同定する、イベント固有のAFLPフィンガープリント又はRFLPフィンガープリントを開発してもよい。遺伝子型決定は、改変ステップの直後、又はプロトプラスト若しくは種子由来のカルス、組織若しくは植物を生長させた後のいずれかにおいて実施することができる。
【0099】
単為生殖における機能性についてのスクリーニングは、本発明の方法によって入手される変異遺伝子を含む植物(本明細書では試験植物として指示される)の、未受精卵細胞から胚を生長及び発生する能力を比較することによって直接評価することができる。好ましくは、この能力は、好ましくは本発明の方法によって入手される変異遺伝子を含まない点のみが試験植物と異なる対照植物のかかる能力と比較される。好ましくは、前記対照植物はPar対立遺伝子を含まない植物である。
【0100】
代替的に又は加えて、本発明の方法によって入手される変異遺伝子の単為生殖における機能性は、アポミクシス喪失型植物を有する植物を、本発明の変異遺伝子を含む構築物で補完することによって評価することができる。かかるアポミクシス喪失型植物は、機能的Par対立遺伝子を改変することによって(例えば、欠失又はノックアウトによって)アポミクティック表現型を喪失するように改変されたセイヨウタンポポ分離株A68であってもよい。かかるアポミクシス喪失型植物は、本明細書で定義の配列番号23(配列番号32のPARタンパク質をコードする)が、それぞれ配列番号28~31のタンパク質をコードする配列番号24~27のうちのいずれか1つに改変された、Par対立遺伝子を含むセイヨウタンポポ分離株A68であってもよい(表1を参照されたい)。セイヨウタンポポ分離株A68のアポミクシス植物のかかる喪失は、CRISPR-Cas9/ガイドRNA複合体を使用して標的ゲノム編集によって得てもよく、ここで、本明細書に例示のように、前記ガイドRNA(本明細書ではgRNAとしても指示される)は、配列番号19の標的特異的配列を含む。セイヨウタンポポ分離株A68のPar対立遺伝子の欠失によって、単為生殖喪失型、したがってアポミクシス喪失型、がもたらされる。本発明の方法によって入手される変異遺伝子は、単為生殖を誘導する能力を有し、アポミクティック表現型は、前記変異遺伝子を含む構築物又はベクターの導入又はトランスフェクションにより回復(又はレスキュー)されることになる。セイヨウタンポポ分離株A68の場合、他家受粉の非存在下での高い種子結実は、アポミクシスの明確な指標である。この分離株での自家受粉については代替の説明として排除することができるが、その理由は、不均衡な三倍体の雄と雌の減数分裂に起因して、有性生殖した卵細胞と花粉粒は受精能が極めて低いことになるからである。好ましくは、上に記載の補完アッセイにおいて、本発明の変異遺伝子は、当初の非変異遺伝子とは異なり、機能喪失型植物においてアポミクシスを回復することが可能である。好ましくは、前記能力は、好ましくは500のうち1、600のうち1、700のうち1、800のうち1、900のうち1、又は1000のうち1未満の、当初の非変異遺伝子(すなわち、本発明の方法のステップa)において用意される遺伝子)で形質転換した植物と比較して、アポミクシスが、少なくとも、200のうち1、100のうち1、100のうち10、100のうち20、100のうち30、100のうち40、100のうち50、100のうち60、100のうち70、100のうち80、100のうち90において回復するか、又は変異遺伝子で形質転換したすべての機能喪失型植物がアポミクシスを示すことを意味する。
【0101】
本発明はまた、本発明の方法によって入手されるか又は入手可能な変異遺伝子を提供する。好ましくは、変異遺伝子は、インサート若しくは欠失、及び/又は1つ若しくは複数の改変若しくは除去されたMYB結合部位を本明細書で定義のプロモーターに含む点(のみ)が内因性又は天然の遺伝子と異なる。好ましくは、本明細書で定義の改変されたプロモーターを含む本発明の変異遺伝子は、単為生殖表現型を植物に誘導することが可能である。換言すれば、好ましくは、本発明の改変されたプロモーターを含む変異遺伝子は、単為生殖において機能的である。
【0102】
任意選択で、本発明の方法のステップ(a)の遺伝子及び/又は本発明の方法によって入手される変異遺伝子は、単離された核酸分子又は核酸構築物又は(発現)ベクターであるか又はその一部である。本発明はまた、前記変異遺伝子を含むかかる単離された核酸分子、構築物又は(発現)ベクターを提供し、ここで、前記構築物又はベクターは、前記植物にベクターの前記構築物をトランスフェクトすることにより、植物の変異遺伝子を変換することが可能である。前記核酸分子は、それに限定されないが、DNAであってもよく、ゲノムDNAであってもゲノムDNAに由来してもよい。本発明はまた、プロトプラスト、植物細胞若しくは植物の単為生殖表現型を増大させるか又は単為生殖表現型をプロトプラスト、植物細胞若しくは植物に誘導するための、本発明の変異遺伝子及び/又は前記変異遺伝子を含む単離された核酸、構築物若しくはベクターの使用を提供する。
【0103】
本発明の変異遺伝子は、任意選択で遺伝子構築物又は核酸ベクターの一部である、本明細書で定義のキメラ遺伝子であってもよい。本発明の変異遺伝子は、任意選択で、単離された核酸、構築物又はベクターに含まれる。本発明の一実施形態では、本発明の変異遺伝子を含むか又はそれからなる核酸は、核酸の宿主細胞への移入、及び前記核酸によってコードされる機能的(好ましくは、単為生殖を誘導可能である)タンパク質の宿主細胞における産生のための、この核酸を含む構築物及び/又はベクターを作製するために使用することができる。
【0104】
本発明の変異遺伝子の植物細胞への導入に適したベクターは、本明細書において、すなわち「発現ベクター」と呼ばれる。宿主細胞は植物細胞であることが好ましい。任意選択で一過性であるが好ましくは安定な、宿主細胞のゲノムへの変異遺伝子配列の導入のための変異遺伝子、構築物及び/又はベクターの構築は、当技術分野で一般に知られている。
【0105】
本発明はまた、本発明の方法によって入手されるか若しくは入手可能な変異遺伝子を含む、及び/又は核酸分子若しくはベクターを含む植物細胞、植物プロトプラスト、植物組織、種子又は植物を提供する。
【0106】
本発明はまた、変異遺伝子、本明細書で定義の変異遺伝子を含む核酸分子、構築物又はベクターを含む植物細胞、植物プロトプラスト、植物組織、種子又は植物を提供する。任意選択で、前記植物細胞、植物プロトプラスト、植物組織、種子又は植物は、アポマイオシス、好ましくはアポミクシスが可能である。
【0107】
好ましくは、本発明の核酸は単離された核酸である。一実施形態では、本発明の核酸は、タンポポ属系統(例えば、広義のセイヨウタンポポ)に又はその他の植物種に由来することができる。一実施形態では、本発明の核酸は、タンポポ属又は広義のセイヨウタンポポとは異なる起源に由来する。
【0108】
任意選択で、本発明の方法によって入手されるか又は入手可能な変異遺伝子を含むか又はそれからなる本発明の核酸又は核酸構築物は、単一植物細胞の核ゲノムへ安定して挿入することができ、そのように形質転換された植物細胞を使用して、変化した表現型、すなわち単為生殖表現型を有する形質転換植物を作出することができる。非限定的な例では、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)において、本明細書で教示の変異遺伝子を含むT-DNAベクターを使用して、植物細胞を形質転換することができ、その後、形質転換植物は、例えば、欧州特許第0116718号、欧州特許出願公開第0270822号、PCT公開国際公開第84/02913号及び公開欧州特許出願第0242246号に並びにGouldら(1991)に記載の手順を使用して、形質転換植物細胞から再生することができる。アグロバクテリウム媒介植物形質転換用のT-DNAベクターの構築は当技術分野でよく知られている。T-DNAベクターは、欧州特許第0120561号及び欧州特許第0120515号に記載のバイナリーベクター、又は欧州特許第0116718号に記載のように、相同組換えによってアグロバクテリウムTiプラスミドへと統合することができるコインテグレートベクター、のいずれかにしてもよい。レタス形質転換プロトコルが、例えば、Michelmoreら(1987)及びChupeauら(1989)に記載されている。
【0109】
境界配列は、Gielenら(1984)に記載されている。もちろん、他のタイプのベクターを使用して、直接遺伝子導入(例えば、欧州特許出願公開第0223247号に記載の)、花粉媒介形質転換(例えば、欧州特許第0270356号及び国際公開第85/01856号に記載の)、例えば米国特許第4,684,611号に記載のプロトプラスト形質転換、植物RNAウイルス媒介形質転換(例えば、欧州特許出願公開第0067553号及び米国特許第4,407,956号に記載の)、リポソーム媒介形質転換(例えば、米国特許第4,536,475号に記載の)、及びその他の方法などの手順を使用して、植物細胞を形質転換することができる。
【0110】
さらなる実施形態では、本発明の変異遺伝子は、体細胞ハイブリダイゼーションによって導入してもよい。体細胞ハイブリダイゼーションは、プロトプラスト融合によって行ってもよい(例えばHolmes、2018を参照されたい)。
【0111】
本発明の変異遺伝子はまた、例をあげると、ゲノムの適当な部位に二本鎖切断を導入するための1つ又は複数の特定のエンドヌクレアーゼ(CRISPR-エンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体などの)とゲノムに統合するための本発明の変異遺伝子を含むドナー構築物とを使用して、ゲノムに統合することができる。当業者であれば、統合に適した二本鎖切断及びドナー構築物を導入するためのかかるCRISPR-エンドヌクレアーゼ/ガイドRNA複合体を設計する方法を知っている(レビューについては、Bortesi及びFischer、2015を参照されたい)。
【0112】
同様に、形質転換細胞からの形質転換植物の選別及び再生は、当技術分野でよく知られている。明らかに、様々な種に対して、単一種の様々な品種又は栽培品種に対してさえ、高頻度で形質転換体を再生するように特異的にプロトコルは構成されている。本発明はまた、単為生殖を示し、本発明の変異遺伝子を含む形質転換植物の後代も包含する。
【0113】
核ゲノムの形質転換に加えて、色素体ゲノム、好ましくは葉緑体ゲノムの形質転換も本発明に含まれる。色素体ゲノムの形質転換の一利点とは、導入遺伝子(複数可)の拡散のリスクを低減し得ることである。色素体ゲノムの形質転換は、当技術分野で知られているように実施することができ、例えば、Sidorovら(1999)又はLutzら(2004)を参照されたい。
【0114】
結果として得られる形質転換植物は、従来の植物育種スキームにおいて使用して、変異遺伝子を含有するより多くの形質転換植物を作出することができる。シングルコピー形質転換体は、例えばサザンブロット解析又はPCRベースの方法又はインベーダー(Invader)(登録商標)テクノロジーアッセイ(Third Wave Technologies,Inc.)を使用して、選別することができる。形質転換細胞及び植物は、本明細書で定義の改変されたプロモーターを含むことを特徴とする本発明の変異遺伝子の存在によって、非形質転換細胞及び植物と容易に区別することができる。変異遺伝子の挿入部位に隣接する植物DNAの配列も配列決定することができ、それにより、ルーチン使用向けに「イベント固有の」検出方法を開発することができる。例えば、統合された配列及び隣接(ゲノム)配列に基づくエリートイベント検出キット(PCR検出キットなどの)について記載する、例えば国際公開第0141558号を参照されたい。
【0115】
一実施形態では、本発明は、本来非単為生殖(及び非アポミクティック)であり、本発明の方法によって改変される植物に起源を持つpar対立遺伝子に由来する変異遺伝子を包含する。かかる植物は、野生又は栽培植物であり得る。前記変異遺伝子は、本発明の方法によるプロモーターの改変によって入手されることが好ましく、プロモーターにインサート若しくは欠失、及び/又は本明細書で定義のプロモーターに1つ若しくは複数の改変若しくは除去されたMYB結合部位を含むことを特徴とする。
【0116】
一実施形態では、本発明の変異遺伝子、又は前記変異遺伝子を含む核酸、ベクター若しくは構築物は、配列番号1のアミノ酸配列を有する機能性タンパク質、又はそのバリアント若しくは機能的断片、例えば、別の植物(すなわち、タンポポ属若しくは広義のセイヨウタンポポ以外)で見いだされる、そのオルソログ若しくは断片、を(過剰)発現することによって好ましくは提供される、(遺伝的に)優勢な機能を有する。
【0117】
好ましくは、本発明の変異遺伝子、又は前記変異遺伝子を含む核酸、ベクター若しくは構築物は、植物で産生される場合に機能的であり、単為生殖を誘導及び/又は増強するタンパク質又はその機能的断片(複数可)をコードする。
【0118】
好ましくは、改変されたプロモーター、変異遺伝子、核酸、ベクター及び/又は構築物は、天然には存在しない、すなわち自然界には存在しない。
【0119】
本発明の方法のステップ(a)において用意される遺伝子は、植物細胞又はプロトプラストのゲノムに存在する内因性遺伝子であってもよい。好ましくは、前記植物細胞又はプロトプラストは、単為生殖表現型を有さない植物(本明細書では起源植物として指示される)の一部であるか又はそれから単離される。本発明の方法によって入手される変異遺伝子を含む植物細胞又はプロトプラストは、単為生殖表現型を有するか又は起源植物と比較して単為生殖表現型の有意な増大を示す植物の一部であっても、それに再生してもよい。したがって、本発明はまた、植物の単為生殖表現型を変換する方法又は植物の単為生殖表現型を増大させる方法を提供する。換言すれば、本発明の方法は、単為生殖植物の作出を実現する。
したがって、本発明は、
(A)本明細書で定義の変異遺伝子を作出する方法によって入手可能な変異遺伝子を含む植物細胞又はプロトプラストから植物組織又は植物を再生及び/又は生長させるステップと;
(B)任意選択で、ステップ(A)において得られた植物組織又は植物をスクリーニング及び/又は遺伝子型決定するステップと
を含む、単為生殖植物を作出する方法を提供する。
したがって、本発明はまた、単為生殖植物を作出する方法を提供し、ここで、前記方法は、
a)プロモーターに作動可能に連結されたPARタンパク質をコードする遺伝子を含む、1つ又は複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子を用意するステップであって、プロモーターが、好ましくは1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を含む、用意するステップと;
b)1つ若しくは複数の転写因子MYB結合部位及び/又は1つ若しくは複数の転写因子MYB結合部位の上流の配列のうちの少なくとも1つを改変することによってプロモーターを改変して、コードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと;
c)任意選択で、ステップb)において得られた、改変された植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は種子から1つ又は複数の植物を生長させるステップと;
d)任意選択で、ステップb)において得られた植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織若しくは種子、又はステップb)若しくはc)において得られた植物をスクリーニング及び/又は遺伝子型決定するステップと
を含む。
【0120】
代替的に又は加えて、本発明は、単為生殖植物を作出する方法を提供し、ここで、前記方法は、
a)1つ又は複数の転写因子MYB結合部位を任意選択で含むプロモーターに作動可能に連結されたPARタンパク質をコードする遺伝子を含む、1つ又は複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子を用意するステップと;
(b)好ましくは、
i)本明細書で定義のPARタンパク質をコードする配列の開始コドンの上流、好ましくは1つ又は複数の転写因子MYB結合部位の上流又はすぐ上流のプロモーター配列にインサートを導入することであって、好ましくはインサートがエンハンサー配列を導入するか又はリプレッサー配列を除去する、導入すること;
ii)本明細書で定義のPARタンパク質をコードする配列の開始コドンの上流、好ましくは1つ又は複数の転写因子MYB結合部位の上流又はすぐ上流のプロモーター配列に置換及び/又は欠失を導入することであって、好ましくは置換及び/又は欠失が、エンハンサー配列を導入するか又はリプレッサー配列を除去する、導入すること;並びに
(iii)(i)と(ii)との組合せ
のうちの少なくとも1つによってプロモーターを改変して、コードされたPARタンパク質の発現を増大させるステップと;
c)任意選択で、ステップb)において得られた、改変された植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は種子から1つ又は複数の植物を生長させるステップと;
d)任意選択で、ステップb)において得られた植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織若しくは種子、又はステップb)若しくはc)において得られた植物をスクリーニング及び/又は遺伝子型決定するステップと
を含む。
【0121】
本発明の方法によって作出される単為生殖植物は、正常な減数分裂機能を有する、すなわちアポマイオシスを示さない、好ましくは複相胞子生殖型ではない及び/又は複相胞子生殖を示さない植物であり得る。好ましくは、前記植物の配偶体は、その体細胞と比較して低下した倍数性を有することができる。二倍体植物(すなわち二倍体体細胞を有する)の場合、前記低下した倍数性は、モノハプロイド(mono-haploid)であり得る。本発明の方法を介して単為生殖を植物に誘導することにより、前記植物の配偶体は、倍数性が低下した植物、好ましくは単数体植物を発生することができる。したがって、本発明の方法は、倍数性が低下した植物を作出する方法、好ましくは単数体植物を作出する方法であり得る。方法は、上に定義の方法によって入手可能な単為生殖植物を用意するステップと、前記植物に受精なしで種子を生産させ、前記種子のうちの1つ又は複数を発芽させ、低下した倍数性の植物、好ましくは単数体植物に再生するその後のステップとを含むことが好ましい。前記方法は、本明細書で定義の単為生殖を誘導するステップと、これに続く、前記植物に受精なしで種子を生産させ、前記種子のうちの1つ又は複数を発芽させ、低下した倍数性の植物、好ましくは単数体植物(単数体体細胞を有する植物)に再生するステップとを含んでもよい。
【0122】
倍数性が低下したゲノム、好ましくは、単数体ゲノムは、自発的に又は好ましくは化学的処理によって誘導されて倍加し得る。好ましい化学的処理は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるTouchell DHら、Front Plant Sci.2020年6月3日;11:722に記載されている。化学的処理は、コルヒチン、オリザリン、トリフルラリン及び亜酸化窒素のうちの少なくとも1つでの処理であってもよい。植物の化学的処理は好ましくは、倍加単数体ゲノムを有する植物をもたらす。
【0123】
倍加モノハプロイド植物とは、すべての遺伝子座においてホモ接合性を達成した、好ましくは本明細書に記載の方法を使用して、モノハプロイドゲノムの全ゲノム重複によって入手することができる植物である。かかる完全にホモ接合型の植物は、F1雑種種子の生産における親植物として使用されるので、とりわけ商業的に重要である。したがって、本発明はまた、任意選択でゲノム重複を化学的に誘導するステップを含む、本明細書で定義の単為生殖植物を作出するステップと、倍加モノハプロイド種子を選別するステップと、任意選択で、前記種子を発芽させ、倍加単数体植物に再生するステップとを含む、倍加モノハプロイド植物を作出する方法を提供する。
【0124】
本発明の方法は、倍加モノハプロイド植物の作出に限定されない。本明細書に記載の方法は、他の倍加単数体植物、例えば、それらに限定されないが、倍加ダイハプロイド植物、倍加トリハプロイド植物、倍加テトラハプロイド植物、倍加ペンタハプロイド植物及び倍加ヘキサハプロイド植物を作出するのに等しく適している。
【0125】
非限定的な例として、倍数体作物(例えば四倍体ジャガイモ)において、本発明の方法は、ダイハプロイド子孫の作出に使用することができる。子孫のダイハプロイドのヘテロ接合性の程度は、倍数体親のヘテロ接合性の程度よりもはるかに低くなる。したがって、ダイハプロイドレベルでの選別は、四倍体レベルよりもはるかに効率的となる。本発明の方法は、完全にホモ接合型である子孫のダイハプロイドからモノハプロイドを作り出すためにさらに使用することができる。ダイハプロイドは、遺伝子マップの構築を容易にし、段階ごとの全ゲノム配列の構築を可能にすることができる。野生二倍体種の目的の有用な形質は、本発明の方法によって作出される栽培品種由来のダイハプロイドの使用により、遺伝子移入することができる。有用な遺伝子移入された形質を有する、得られたダイハプロイドは、例えば本明細書で上に記載の化学的処理を使用して倍加ダイハプロイドにすることができ、それによって目的の形質の四倍体栽培品種への遺伝子移入を可能にする。当業者であれば、類似の方法が、野生種の遺伝子移入された目的の形質を有する二倍体、三倍体、五倍体、六倍体、七倍体(heptaploid)、七倍体(septaploid)などの栽培品種を作出するのに使用できることを容易に理解する。
【0126】
好ましくは、ステップa)におけるPARタンパク質をコードする遺伝子はpar対立遺伝子である。好ましくは、遺伝子のプロモーターは、本明細書で定義のステップb)において改変され、それによってpar対立遺伝子をPar対立遺伝子に変換する。Par対立遺伝子は優性であり得るので、植物若しくは植物細胞の単一のpar対立遺伝子をPar対立遺伝子に変更すること、又は本発明の変異遺伝子を植物若しくは植物細胞に、例をあげると前記植物若しくは植物細胞に前記変異遺伝子を含むベクターをトランスフェクトすることによって、導入することは、植物を有性表現型から単為生殖表現型に変換する、すなわち、受精なしで卵細胞から胚を生長及び発生させることが可能である植物及び/又はその子孫をもたらすのに十分であり得る。したがって、好ましくは、植物細胞に存在する単一の有性遺伝子、好ましくは、内因性遺伝子は、本発明の方法によって改変される。任意選択で、植物細胞に存在する複数の遺伝子、好ましくは、内因性遺伝子は、本発明の方法によって改変される。
【0127】
改変されたプロモーターが植物細胞又はプロトプラストに存在する場合、前記植物細胞又はプロトプラストは、それによって非単為生殖表現型を有する植物から単為生殖表現型を有する植物に変換される植物の一部であるか又はそれに再生することができる。したがって、本発明はまた、par対立遺伝子のプロモーターを改変することによって、単為生殖表現型を示さない植物に単為生殖表現型を付与する方法を提供する。換言すれば、本発明の方法は、単為生殖を示さない植物を、単為生殖を示す植物に形質転換する方法である。好ましくは、ステップa)の1つ又は複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子は、Par対立遺伝子を欠いている、及び/又は単為生殖表現型を示さない。同様に、本発明の方法は、限定された単為生殖を示す植物を、増大した単為生殖を有する植物に形質転換する方法である。好ましくは、単為生殖の増大又は誘導とは、好ましくは500のうち1、600のうち1、700のうち1、800のうち1、900のうち1、又は1000のうち1未満の、当初の非変異遺伝子(すなわち、本発明の方法のステップa)において用意される遺伝子)で形質転換した植物と比較して、少なくとも、200のうち1、100のうち1、100のうち10、100のうち20、100のうち30、100のうち40、100のうち50、100のうち60、100のうち70、100のうち80、100のうち90、又はすべての、本発明の変異遺伝子で形質転換した植物が単為生殖を示すことを意味する。
【0128】
好ましくは、本発明の方法のステップa)の遺伝子は天然の遺伝子である。任意選択で、本発明の方法によって改変される遺伝子は、セイヨウタンポポの、又は本明細書で定義のオーソロガス単為生殖遺伝子のいずれか1つのpar対立遺伝子である。好ましくは、前記par対立遺伝子は、Par対立遺伝子を欠いており、したがって単為生殖表現型を有さない植物、植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子に存在する。前記par対立遺伝子をPar対立遺伝子に付与することによって、本発明の方法は好ましくは、単為生殖表現型を有さない植物の、単為生殖表現型を有する植物への形質転換をもたらす。
【0129】
任意選択で、複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子はステップa)において用意され、ステップb)の後に、好ましくは本明細書で定義の遺伝子型決定及び/又はスクリーニングによって決定された本発明の改変、すなわち、インサート若しくは欠失及び/又は改変若しくは除去された1つ若しくは複数のMYB結合部位を含む、1つ又は複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子が選別される。したがって、ステップB)におけるスクリーニングは、単為生殖表現型についてのスクリーニングであり得る。
【0130】
植物細胞(植物組織、植物種子若しくは全植物の一部であってもよい)又は植物プロトプラストに天然に存在するpar対立遺伝子を遺伝的に改変して前記par対立遺伝子をPar対立遺伝子に付与すること、並びに前記細胞又はプロトプラストを単為生殖植物へと生長及び/又は発生させることの他に、単為生殖植物は、本発明の変異遺伝子、すなわち、本明細書で定義のPARタンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結され、任意選択で3’UTR配列に連結された、改変されたプロモーターを含む変異遺伝子を含む核酸、構築物又はベクターで植物又は植物細胞を形質転換することによっても入手することができる。
【0131】
本発明の方法によって入手される変異遺伝子は、形質転換、遺伝子移入、体細胞ハイブリダイゼーション及び/又はプロトプラスト融合によって、1つ又は複数の植物細胞に導入することができる。かかる変異遺伝子は、外因性核酸、すなわち、天然で前記植物細胞に存在しない核酸上に位置してもよい。
したがって、本発明はまた、単為生殖植物を作出する方法を提供し、ここで、前記方法は、
a.1つ又は複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子を用意するステップと;
b.本発明の変異遺伝子を含む核酸構築物で1つ又は複数の植物、植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は植物種子を形質転換するステップと;
c.任意選択で、ステップb)において形質転換された植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織又は種子から1つ又は複数の植物を生長させるステップと;
d.任意選択で、ステップb)において得られた植物プロトプラスト、植物細胞、植物組織若しくは種子、又はステップb)若しくはc)において得られた植物をスクリーニング及び/又は遺伝子型決定するステップと
を含む。
【0132】
好ましくは、ステップa.の1つ又は複数の植物はPar対立遺伝子を欠いている、及び/又は単為生殖表現型を示さない。
【0133】
さらなる態様では、本発明は、上に定義の方法のいずれかによって入手される植物(例えば、植物細胞、器官、種子及び植物部分を含めて)に関する。好ましくは、これらの植物は単為生殖植物であるか、又は天然の若しくは未改変の植物と比較して増大した単為生殖を示す。好ましくは、本発明の植物は、技術的手段によって、好ましくは本明細書に記載の方法によって得られる。かかる技術的手段は当業者によく知られており、この技術的手段には、例えば、ランダム突然変異誘発、標的突然変異誘発、及び核酸挿入又は欠失のうちの少なくとも1つなどの遺伝子改変が含まれる。
【0134】
好ましくは、本発明の植物は、本質的に生物学的なプロセスによって得られない。好ましくは、本発明の植物は、本質的に生物学的なプロセスによってだけでは得られない。好ましくは、本発明の植物は、植物に単為生殖を導入するという本質的に生物学的なプロセスによって、得られない、好ましくは直接には得られない。好ましくは、本発明の植物は、植物に単為生殖を導入するという本質的に生物学的なプロセスによってだけでは得られない。好ましくは、本発明の植物は、天然起源の植物ではない、すなわち、天然に存在する植物ではない。
【0135】
一実施形態では、本発明の方法の遺伝子のプロモーターは、例えば遺伝子の翻訳開始コドン及び/又は転写開始部位の上流約2000bp以内の上流転写調節領域であり、TAIL-PCR(Liuら、1995;Liuら、2005)、リンカー-PCR、又は逆PCR(IPCR)などの既知の方法を使用して、アポミクティック植物及び/又は他の植物から単離することができる。本明細書で定義のキメラ遺伝子は、プロモーターを、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列又はその機能的バリアント及び/若しくは断片を有する本明細書で教示のコード配列に連結し、その後、任意選択で、コード配列を適切な3’末端非翻訳領域(「3’末端」又は3’UTR)の上流(すなわち5’)に連結することによって作出することができる。適切な3’末端には、CaMV 35S遺伝子(「3’35S」)、ノパリンシンターゼ遺伝子(「3’nos」)(Depickerら、1982)、オクトピンシンターゼ遺伝子(「3’ocs」)(Gielenら、1984)及びT-DNA遺伝子7(「3’遺伝子7」)(Velten及びSchell、1985)の3’末端が含まれ、これらは形質転換植物細胞等において3’-非翻訳DNA配列として作用する。一実施形態では、天然の単為生殖遺伝子の3’UTR、又はそれに由来する3’UTRが使用される。例えば、配列番号4に由来する任意の3’UTR、又はそれらのバリアント若しくは断片を使用してもよい。3’UTRは、配列番号4のヌクレオチド配列を有していてもよい。
【0136】
アグロバクテリウムへのT-DNAベクターの導入は、エレクトロポレーション又は三系交雑などの既知の方法を使用して実行することができる。
【0137】
本明細書で教示の変異遺伝子は、選択マーカー又はスコア可能マーカーをコードする遺伝子(米国特許第5,254,799号;Vaeckら、1987)に、例えば、カナマイシン耐性をコードするneo(又はnptII)遺伝子(欧州特許第0242236号)などにインフレームで連結されたハイブリッド遺伝子配列として植物ゲノムに任意選択で挿入することができ、その結果、核酸を含む植物は、容易に検出可能となる。
【0138】
任意選択で、本発明の変異遺伝子は、場合により(さらなる)転写因子結合部位を改変するように、好ましくは、遺伝子転写を抑制する転写因子のための結合部位を改変するように変化させることができる。
【0139】
一実施形態では、本明細書で教示の本発明の核酸によってコードされるPARタンパク質は、任意選択で様々なプロモーターの制御下で、単一宿主での単為生殖、アポマイオシス又はアポミクシスを、制御する、好ましくは増強又は誘導する他のタンパク質と、共発現する。かかる他の遺伝子は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/039452A1号に記載の、複相胞子生殖などのアポマイオシスを付与するための遺伝子であってもよい。
【0140】
別の実施形態では、本発明の変異遺伝子は、アポマイオシスを付与するための遺伝子(例えば、複相胞子生殖用の遺伝子)などの興味深い他の遺伝子を好ましくは含む生殖質に遺伝子移入される。交配と選抜を介して、興味深いいくつかの遺伝子をスタッキングすることができる雑種が作出される。
【0141】
任意選択で、本発明の方法によって突然変異又は形質転換された植物は、アポマイオシスが可能である植物である。好ましくは、アポマイオシスが可能である植物は、本明細書で定義の単為生殖において機能的である変異遺伝子を含むように改変される。次いで、かかる突然変異又は改変は、アポミクティック植物又は植物細胞をもたらすことになる。その場合、本明細書で定義の単為生殖植物を作出する方法のステップB)におけるスクリーニングは、アポミクティック表現型についてのものであり得る。アポマイオシスが可能である植物細胞は、アポマイオシスを付与することが可能である核酸の導入によって入手することができる。任意選択で、前記核酸は、本発明の変異遺伝子の導入の前、導入と一緒、又は導入の後に植物細胞に導入される。
【0142】
本発明はまた、
(1)有性生殖する第1の植物を第2の植物の花粉と他家受精させて、F1雑種種子を生産するステップと;
(2)任意選択で、前記F1種子からアポミクティック表現型を含む種子を選別するステップと
を含む、アポミクティック雑種種子を生産する方法を提供し、ここで、前記第1及び/又は第2の植物はアポマイオシスが可能であり、前記第2の植物は本発明の方法によって入手されるか又は入手可能な単為生殖植物であり、好ましくは前記選別するステップは遺伝子型決定によって実施される。任意選択で、前記方法は、前記F1から、好ましくは遺伝子型決定により、アポミクティック表現型を含む種子を選別するステップと、任意選択で、前記F1雑種種子から少なくとも1つのF1植物を生長させるステップとをさらに含む。
【0143】
好ましくは、選抜目的向けとともに雑草防除オプション向けにも、本発明のトランスジェニック植物はまた、除草剤に対する耐性を付与するタンパク質をコードするDNAで、形質転換されるが、例をあげるなら、広域スペクトル除草剤、例えば、有効成分としてグルホシネートアンモニウム(例えば、リバティ(Liberty)(登録商標)又はBASTA;PAT又はbar遺伝子によって耐性が付与される;欧州特許第0242236号及び欧州特許第0242246号を参照されたい)又はグリホサート(例えば、ラウンドアップ(RoundUp)(登録商標);EPSPS遺伝子によって耐性が付与される;例えば、欧州特許第0508909号及び欧州特許第0507698号を参照されたい)、をベースとする除草剤である。選択マーカーとして除草剤耐性遺伝子(又は所望の表現型を付与する他の遺伝子)を使用することで、抗生物質耐性遺伝子の導入を回避することができるという利点をさらに有する。
【0144】
代替的に又は加えて、抗生物質耐性遺伝子などの他の選択マーカー遺伝子を使用してもよい。形質転換宿主植物では抗生物質耐性遺伝子を保持することは一般に認められていないので、これらの遺伝子は、形質転換体の選別に続いて再び除去することができる。導入遺伝子の除去については様々な技術が存在する。除去を行う一方法とは、導入遺伝子を、lox部位で隣接させ、選別に続いて、形質転換植物をCREリコンビナーゼ発現植物と交配することによるものである(例えば、EP506763B1を参照されたい)。部位特異的組換えは、マーカー遺伝子の切除をもたらす。別の部位特異的組換え系は、EP686191及び米国特許第5,527,695号に記載のFLP/FRT系である。CRE/LOXやFLP/FRTなどの部位特異的組換え系も遺伝子スタッキングの目的で使用することができる。さらに、一成分切除系が記載されており、例えば、国際公開第97/37012号又は国際公開第95/00555号を参照されたい。
【0145】
好ましくは、本発明の変異遺伝子は、単為生殖表現型が増強された、トランスジェニック植物細胞、植物、植物種子など、及びそれらの任意の派生体/後代を作り出すために使用される。好ましくは、本発明のトランスジェニック植物は、未改変の対照植物と比較して増強された単為生殖を含む。その結果、例えば、増強された単為生殖を含むトランスジェニックレタス植物が提供される。こうして、本発明の変異遺伝子を含む植物は、前記変異遺伝子を含まない同じ植物と比較して、単為生殖の有意な増大を示す。適切な時間及び/又は位置で単為生殖を誘導することが可能な本発明の変異遺伝子によってコードされる適切な量のタンパク質を発現させることによって、単為生殖表現型の増強を微調整することができる。かかる微調整は、最も適当なプロモーター改変を決定することによって、及び/又は所望の発現レベルを示すトランスジェニック「イベント」を選別することによって、行ってもよい。
【0146】
本発明の変異遺伝子によってコードされるタンパク質の所望のレベルを発現する形質転換体、雑種又は近交系は、例えば、コピー数(サザンブロット分析)、mRNA転写レベル(例えば、本発明の変異遺伝子によってコードされるタンパク質を増幅可能なプライマー対若しくは隣接プライマーを使用するRT-PCR)を解析することによって、又は種々の組織中の単位生殖タンパク質の存在及びレベルを解析する(例えば、SDS-PAGE;ELISAアッセイ等)ことによって、選別される。例をあげると調節の理由から、単一コピーの形質転換体を選別してもよいが、変異遺伝子の挿入部位に隣接する配列を解析して、好ましくは配列決定して、「イベント」を特徴づける。本発明の変異遺伝子によってコードされるタンパク質の高度又は中度の発現をもたらすトランスジェニックイベントを、安定な導入遺伝子を有する高性能エリートイベントが得られるまで、さらなる開発向けに選別する。
【0147】
本発明の変異遺伝子を含む形質転換体はまた、(他の)導入遺伝子、例えば、耐病性を付与する又は他の生物的及び/又は非生物的ストレスに対する耐性を付与する、又は複相胞子生殖を付与する導入遺伝子を含むことができる。「スタッキングされた」導入遺伝子を有するかかる植物を得るために、他の導入遺伝子を前記形質転換体に導入してもよく、又は前記形質転換体を1つ又は複数の他の遺伝子で引き続き形質転換してもよく、又は代替的にいくつかのキメラ遺伝子を使用して植物系統又は品種を形質転換してもよく、いずれかでよい。例えば、いくつかの導入遺伝子が、単一のベクター上に存在してもよく、又は共形質転換される様々なベクター上に存在してもよい。
【0148】
一実施形態では、以下の遺伝子が本発明の変異遺伝子と組み合わされる:既知の病害抵抗性遺伝子、特に壊死病原体に対して耐性の増強を付与する遺伝子、ウイルス耐性遺伝子、昆虫抵抗性遺伝子、非生物的ストレス耐性遺伝子(例えば耐乾性、耐塩性、耐熱性又は耐寒性等)、除草剤耐性遺伝子等。したがって、スタッキングされた形質転換体は、病原体耐性、昆虫耐性、線虫耐性、塩分、低温ストレス、熱ストレス、水ストレス等に対して、さらに広い生物的及び/又は非生物的ストレス耐性を有することができる。
【0149】
本明細書に記載の植物のいずれかの全植物、植物部分(例えば、種子、細胞、組織)、及び植物産物(例えば、果実)及び後代は、本明細書に包含される。上記全植物、植物部分及び植物産物及び子孫については、変異遺伝子の存在によって、例えば、全ゲノムDNAをテンプレートとして使用した及び本発明の変異遺伝子に特異的なPCRプライマーペアを使用したPCR解析によって、並びに又はそれらに限定されないが、シーケンスをベースとするジェノタイピング(SBG)やキージーン(KeyGene)(登録商標)SNPSelect解析などのゲノム変異解析を使用することによって、同定することができる。また、「イベント固有の」PCR診断法を開発することもできるが、この場合、PCRプライマーは、挿入された改変又は導入遺伝子に隣接する植物DNAをベースとする、米国特許第6,563,026号を参照されたい。同様に、本発明のトランスジェニック若しくは変異植物、又はそれに由来する任意の植物、種子、組織若しくは細胞を同定する、イベント固有のAFLPフィンガープリント又はRFLPフィンガープリントを開発してもよい。
【0150】
本発明によるトランスジェニック又は変異植物は好ましくは、収量の減少、病害に対する(特に死体栄養性(necrotroph)に対する)感受性の増強、又は望ましくない構造変化(矮化、変形)等の望ましくない表現型を示さないこと、並びに、かかる表現型が一次形質転換体に見られる場合、これらを従来の方法によって除去し得ること、が理解される。本明細書に記載のトランスジェニック又は変異植物のいずれもが、変異遺伝子に関して、ヘテロ接合型であっても、ホモ接合型であっても、ヘミ接合型であってもよい。
【0151】
本発明はまた、本明細書に詳述の方法によって入手される又は入手可能な、好ましくは本発明の変異遺伝子、本発明の核酸及び/又は本発明の構築物を含む、植物、種子、植物部分(例えば、植物細胞)及び植物産物に関する。好ましくは、前記変異遺伝子、核酸及び/又は構築物は、本明細書に詳述のように、単為生殖を誘導することが可能及び/又は単為生殖において機能的である。本発明の植物は好ましくは、適切な宿主植物として本明細書に列記の種のものである。本発明の植物を入手するかかる方法としては、それらに限定されないが、ランダム若しくは標的突然変異誘発、植物から後代への本発明の変異遺伝子の遺伝子移入、及び/又は本発明の変異遺伝子による植物細胞の形質転換、並びに前記植物細胞からの植物のその後の再生が挙げられる。
【0152】
好ましくは、植物、植物部分及び/又は植物産物は、広義のセイヨウタンポポ種のものではないが、本発明の変異遺伝子を含む。好ましくは、植物、植物部分及び/又は植物産物は、真性双子葉植物である。前記植物又は植物細胞は好ましくは、適切な宿主植物として本明細書に列記の種のものであり、好ましくは、アブラナ科(Brassicaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、マメ科(Fabaceae)、イネ科(Gramineae)、ナス科(Solanaceae)及びキク科(Asteraceae(コンポジテ(Compositae)))からなる群から選択される科由来である。
【0153】
好ましくは、本発明の変異遺伝子を含む植物、植物部分及び/又は植物産物は、遺伝子改変によって又は遺伝子移入によって入手され、ここで、好ましくは、前記変異遺伝子は植物、植物部分及び/又は植物産物のゲノムに位置する。好ましくは、前記植物、植物部分及び/又は植物産物は、単為生殖することが可能である、及び/又は単為生殖を示す。さらにより好ましくは前記植物、植物部分及び/又は植物産物は、アポマイオシスがさらに可能である。本発明は、本発明の植物の種子、植物部分若しくは植物産物又は植物細胞を提供する。
【0154】
本発明はまた、本発明の植物に由来する植物部分及び植物産物にも関し、ここで、植物部分及び/又は植物産物は、本明細書で定義の本発明の変異遺伝子、本明細書で定義の本発明の核酸、及び/又は本明細書で定義の本発明の構築物、を含むが、これらは、植物産物の植物部分が由来する植物におけるかかるタンパク質、変異遺伝子、核酸又は構築物の存在を評価することを可能にする、本明細書で定義の断片であってもよい。かかる部分及び/又は産物は、種子又は果実及び/又はそれに由来する産物(例えば、糖類又はタンパク質)であってもよい。かかる部分、産物、及び/又はそれに由来する産物は、非増殖性材料であってもよい。
【0155】
いずれもの植物が適切な宿主となり得るが、最も好ましくは、宿主植物種は、単為生殖の増強から利益を得ると思われる植物種であることが求められる。適切な宿主には、いずれもの植物種が含まれる。特に、栽培品種又はそうでなければ良好な農業特性を有する育種系統が好ましい。当業者であれば、適切な対照植物と一緒に、トランスジェニック植物を作り出すこと及び単為生殖を評価することにより、本明細書で教示の変異遺伝子、及び/又はそれらのバリアント若しくは断片が、単為生殖の必要とされる増大又は低減を宿主植物上へと付与することができるか否かを試験する方法を知っている。
【0156】
適切な宿主植物には、例えば、アブラナ科、ウリ科、マメ科、イネ科(Gramineae)、ナス科、キク科(コンポジテ)、バラ科(Rosaceae)及びイネ科(Poaceae)、に属する宿主が含まれる。
【0157】
好ましい実施形態では、宿主植物は、タンポポ属、アキノノゲシ属(Lactuca)、エンゾウ属(Pisum)、トウガラシ属(Capsicum)、ナス属(Solanum)、キュウリ属(Cucumis)、トウモロコシ属(Zea)、ワタ属(Gossypium)、ダイズ属(Glycine)、コムギ属(Triticum)、イネ属(Oryza)属及びモロコシ属(Sorghum)からなる群から選択される植物種であってもよい。
【0158】
好ましい実施形態では、本明細書で教示の植物、植物部分、植物細胞又は種子は、タンポポ属、アキノノゲシ属、エンゾウ属、トウガラシ属、ナス属、キュウリ属、トウモロコシ属、ワタ属、ダイズ属、コムギ属、イネ属、ネギ属(Allium)、アブラナ属(Brassica)、ヒマワリ属(Helianthus)、フダンソウ属(Beta)、キクニガナ属(Cichorium)、キク属(Chrysanthemum)、ペンニセツム属(Pennisetum)、ライムギ属(Secale)、オオオムギ属(Hordeum)、ウマゴヤシ属(Medicago)、インゲンマメ属(Phaseolus)、バラ属(Rosa)、ユリ属(Lilium)、コーヒーノキ属(Coffea)、アマ属(Linum)、アサ属(Canabis)、キャッサバ属(Cassava)、ニンジン属(Daucus)、カボチャ属(Cucurbita)、スイカ属(Citrullus)、及びモロコシ属からなる群から選択される植物種由来である。
【0159】
適切な宿主植物には、例えば、トウモロコシ/コーン(トウモロコシ属種)、小麦(コムギ属種)、大麦(例えば、オオムギ(Hordeum vulgare))、オートムギ(例えば、アヴィーナ・サティヴァ(Avena sativa))、ソルガム(モロコシ(Sorghum bicolor))、ライ麦(ライムギ(Secale cereale))、大豆(ダイズ属種(Glycine spp)、例えばダイズ)、コットン(ワタ属種(Gossypium species)、例えば、リクチワタ、G.バルバデンス(G.barbadense))、アブラナ属種(Brassica spp.)(例えば、セイヨウアブラナ(B.napus)、カラシナ(B.juncea)、メキャベツ(B.oleracea)、カブ(B.rapa)等)、ヒマワリ(ヒグルマ(Helianthus annus))、ベニバナ、ヤム、キャッサバ、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa))、イネ(イネ属種(Oryza species)、例えば、オリザ・サティバ(O.sativa)インディカ栽培品種群又はジャポニカ栽培品種群)、イソマツ(forage grasses)、トウジンビエ(pearl millet)(ペンニセツム属種(Pennisetum spp.)、例えば、P.グラウクム(P.glaucum))、樹種(マツ(Pinus)、ポプラ、モミ、オオバコ等)、チャノキ、コーヒーノキ、オイルパーム、ココナッツ、野菜種、例えば、エンドウマメ、ズッキーニ、豆類(例えば、インゲンマメ(Phaseolu)属種)、トウガラシ、キュウリ、アーティチョーク、アスパラガス、ナス、ブロッコリー、ニンニク、ニラ、レタス、タマネギ、ダイコン、カブ、トマト、ジャガイモ、メキャベツ、ニンジン、カリフラワー、チコリー、セロリ、ホウレンソウ、エンダイブ、ウイキョウ、ビート、果肉を有する果物(ブドウ、モモ、プラム、イチゴ、マンゴー、リンゴ、プラム、サクランボ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、シトラス、キウイ、イチジク、レモン、ライム、ネクタリン、ラズベリー、スイカ、オレンジ、グレープフルーツ等)、観賞用種(例えば、バラ、ペチュニア、キク、ユリ、ガーベラ種)、ハーブ類(ミント、パセリ、バジル、タイム等)、木質の樹木(例えば、ヤマナラシ属(Populus)、ヤナギ属(Salix)、コナラ属(Quercus)、ユーカリ属(Eucalyptus)の種)、繊維種、例えば、亜麻(アマ(Linum usitatissimum))及び大麻(アサ(Cannabis sativa))が含まれる。
【0160】
本発明の方法によって入手されるか若しくは入手可能な変異遺伝子、又は前記変異遺伝子を含む本発明の核酸は、単為生殖を付与するために、倍数性を増加させるためのアポミクシスを付与するために、及び/又は倍加単数体を作出するために、使用することができる。好ましくは、前記使用は、植物バイオテクノロジー及び/又は育種におけるものである、すなわち、植物又は植物細胞における/対するものである。
【0161】
単為生殖はアポミクシスのエレメントであり、単為生殖の遺伝子をアポマイオシス(例えば複相胞子生殖)の遺伝子との組合せで使用して、アポミクシスを作り出し、その結果好ましくは、本明細書に列記の適用向けにアポミクシスを使用し得る。これらの遺伝子を、形質転換、遺伝子移入によって、又は内因性の適切な遺伝子を改変することによって有性作物に導入し、それによって単為生殖遺伝子をアポメイオティック(apomeiotic)(又は複相胞子生殖型)遺伝子に変換することができる。アポミクシス遺伝子の構造と機能に関する知識を使用して、内因性の有性生殖遺伝子がアポミクシス遺伝子となるように、これらの遺伝子を改変することもできる。好ましい使用とは、有性生殖が新しい遺伝子型を作り出す場合にアポミクシスをスイッチオフに、エリート遺伝子型を増殖させるためにアポミクシスが必要な場合にスイッチオンにすることができるように、アポミクシス遺伝子を誘導性プロモーターの下に置くことである、と思われる。
【0162】
本発明の変異遺伝子は、アポミクシスの成分として使用することができる。機能性配偶体のアポミクシスには、アポマイオシスと単為生殖の両方が必要である。アポマイオシスは、減数分裂に影響を与える突然変異の組合せによって行うことができ(Crismaniら、2013)、大胞子において染色体の減数を生じないこと、すなわち減数分裂ではなく有糸分裂の結果を伴う。後成的な変化を通して配偶体の運命をとる体細胞(Grimanelli、2012)は、非減数配偶子(卵細胞)を生じることができる可能性がある、非減数胞子様細胞ももたらす。別の実施形態では、アポマイオシスは、天然のアポマイオシス遺伝子のトランスジェニック又は非トランスジェニック発現によって行われる。非減数卵細胞を形成するどんな手段を用いても、本発明の変異遺伝子からの適当な時間的及び空間的発現によって、接合子として振る舞い、受精の非存在下で分裂するように卵細胞を誘導することができる。
【0163】
本発明の変異遺伝子は、例えばアポミクシスのツールとして直接的に使用されるのではなく、まったく新しい方法で使用することができる。例えば、アポミクシスでは単為生殖とアポマイオシスの両方が単一植物で組み合わされるが、一方、1つの世代でアポマイオシスを使用し且つ次世代で単為生殖を使用すると、アポマイオシスにより倍数性レベルが上昇し単為生殖により倍数性レベルが低下することによって、二倍体で及び倍数体レベルで作物の有性遺伝子プールが、結びつくと思われる。このようなことは非常に有用であり、その理由は、倍数体集団は、より多くの突然変異を許容することができるので、突然変異誘導にとってより良好であり得るからである。倍数体植物はより強壮であるとすることもできる。しかし、二倍体集団は選別にとってより良好であり、二倍体の交配は遺伝的マッピング、BACライブラリーの構築等にとってより良好である。倍数体の単為生殖は二倍体と交配することができる単数体を作り出すことができる。二倍体の複相胞子生殖は、倍数体由来の花粉によって受精して、倍数体の子孫を作出することができる非減数2n卵細胞を作り出す。こうして、異なる育種世代におけるアポマイオシスと単為生殖の交代は、二倍体と倍数体遺伝子プールとを結びつける。
【0164】
アポマイオシスを伴わない本発明の変異遺伝子の別の使用とは、単数体子孫の作出であり、これは、単数体の作出にとって且つ倍加単数体(DH)のゲノム倍加(例えば、自発的ゲノム倍加、コルヒチン、アジドナトリウム又はその他の化学物質)によって、使用し得る。倍加単数体を両親として使用して、有性F1雑種を作出することができる。倍加単数体は、植物をホモ接合にするための最速の方法である。倍加単数体によれば植物をホモ接合型と為すことができるが、一方、2番目に速い方法、自家受粉によれば、二倍体植物でホモ接合性が有意に高いレベルに達するには、5~7世代かかる。倍加単数体を作出するいくつかの方法がある。一部の植物種では、小胞子培養によって単数体を作り出すことができる。他の方法とは、照射された花粉(メロン)での受粉、又は特定の受粉媒介者ストック(トウモロコシ、ジャガイモ)での受粉による、単数体胚の生産(雌性発生)である。これらの方法には、コスト、遺伝子型の不応性、労働集約性等などの制限がある。一部の作物では、単数体作出の方法が存在しない(例えばトマト)。単為生殖遺伝子の優性対立遺伝子によれば、雌性発生の頻度が著明に向上し、単数体作出のコストが削減される可能性がある。
【0165】
以下の非限定的な実施例では、本発明の様々な実施形態を例示する。実施例に別段の記載がない限り、すべての組換えDNA技法は、Sambrookら(1989)、及びSambrook及びRussell(2001);並びにAusubelら(1994)の巻1と2、に記載の標準プロトコルに従って実施される。植物分子研究の標準的な材料及び方法が、R.D.D.CroyによるPlant Molecular Biology Labfax(1993)、BIOS Scientific Publications Ltd(英国)及びBlackwell Scientific Publications、英国による共同出版、に記載されている。
【0166】
【表1】

【実施例
【0167】
実施例1
Parプロモーターによる単為生殖の誘導
タンポポ属Parプロモーターが単為生殖の遺伝子制御における役割を果たすか否かを試験するために、タンポポ属Parプロモーターを有性種由来のParコード配列ホモログと組み合わせて単為生殖を誘導することができるか否かを試験した。タンポポ属Parプロモーターを使用して、関連するキク科の種であり重要な野菜作物植物であるレタス由来の相同遺伝子(Lspar)の発現を駆動した。この構築物を、A68系統に由来する3×PAR CRISPR変異体と二倍体植物FCH72由来の花粉との交配に由来し、生存可能な種子を生産することができない、自家不和合性の四倍体タンポポ属CRISPR/Cas9単為生殖喪失型(LOP)変異体に形質転換した。Par対立遺伝子は優性であるので、試験は一次形質転換植物(T0)で行った。注目すべきことに、Par::Lspar構築物は、4つの独立した形質転換体において、種子の形成及び四倍体(優性複相胞子生殖遺伝子の存在に起因する)子孫を生じた(表2)。このことは、タンポポ属Parプロモーターがレタス遺伝子を起動させて単為生殖を誘導できることを実証する。ToParコード配列に特異的な遺伝子多型(有性対立遺伝子par1及びpar2と比較した場合における)はレタス遺伝子に見いだされず、コード配列多型を単為生殖の原因から除外した。Par ATG開始部位から上流に目を向けると、MITE挿入は、タンポポ由来の3つの有性対立遺伝子と比較した場合(par1、par2及びparTKS図2)、アポミクティック対立遺伝子に固有の最初の遺伝子多型を表す。ATGの350bp上流(MITEをPAR対立遺伝子から切除する場合)において、わずか13のSNPが4つのタンポポ属プロモーター間で見いだされ、そのうちの3つのみがPar対立遺伝子特異的である。総合すると、このことは、Par遺伝子のタンポポ対立遺伝子間の機能的差異がプロモーターによって引き起こされ、コード配列によっては引き起こされないことの強力な証拠を提供する。これまでに実証されているように、Par遺伝子が卵細胞特異的シロイヌナズナ属EC1(pEC1::Par)プロモーター下で発現する異なる構築物もまた、CRISPR/Cas9 LOP変異体の補完をもたらすことができ、このことは、PARの卵細胞発現が単為生殖を引き起こし得るという仮説と矛盾しない(国際出願PCT/EP2020/064991の実施例2、及び表3を参照されたい)。
【0168】
本実験は、有性レタス遺伝子の発現を駆動するタンポポ属Parプロモーターが単為生殖喪失型タンポポ属植物において単為生殖表現型をレスキューすることを証明する。換言すれば、有性レタス遺伝子の発現を駆動するタンポポ属Parプロモーターは単為生殖を誘導することが可能である。
【0169】
【表2】
【0170】
【表3】
【0171】
実施例2
植物材料
本実験では、野生型レタス:Iceberg型、レガシー、タキイ種苗株式会社及びRed Romaine型、Baker Creek Heirloom Seedsを使用した。
【0172】
DNA構築物
バイナリーベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号34によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築する:レタスのLSAT_8X112340 CDS配列(配列番号33)の発現を駆動するレタスのLSAT_8X112340プロモーター(配列番号16)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。かかるバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(Gateway)(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(Gibson Assembly)(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統を、コードpKG20001で番号付けする。
【0173】
第2のバイナリーベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号35によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築する:レタスのLSAT_8X112340 CDS配列(配列番号33)の発現を駆動する、配列AACCGCCA及びAACCGTCを有する2つのMYB結合部位を除去するように修正されたレタスのLSAT_8X112340プロモーター(配列番号17)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。かかるバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統を、コードpKG20002で番号付けする。
【0174】
第3のバイナリーベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号36によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築する:レタスのLSAT_8X112340 CDS配列(配列番号33)の発現を駆動する、セイヨウタンポポMITEプロモーターエレメントのPar対立遺伝子の遺伝子の挿入を有するレタスのLSAT_8X112340プロモーター(配列番号18)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。かかるバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統を、コードpKG20003で番号付けする。
【0175】
第4のバイナリーベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号61によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築する:レタスのLSAT_8X112340 CDS配列(配列番号33)の発現を駆動する、2つのMYB結合部位の上流に欠失を有するレタスのLSAT_8X112340プロモーター(配列番号20)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。かかるバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統を、コードpKG20003で番号付けする。
【0176】
植物の形質転換法
アグロバクテリウムの形質転換を、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを使用してレタスの遺伝子型非依存性形質転換によって実施する。かかる方法は当技術分野でよく知られており、例えばCurtisら(1994)に教示されている。Michelmoreら(1987)又はChupeauら(1989)に記載されているなどの、レタスの遺伝的形質転換に適した他の任意の方法を使用して、所望のT-DNAを宿す植物を作出してもよい。
【0177】
結果
上の「DNA構築物」のセクションの下で記載のように、導入遺伝子の存在について陽性と試験された植物を、単為生殖の発生について評価する。形質が優勢であるので、試験は一次形質転換植物(T0)で行う。他家受精又は自家受精の非存在下では、単為生殖卵細胞は胚へと発生する。導入遺伝子を宿す任意の植物の受精を防止するために、植物を温室で育成し、顕微鏡観察に先立ち、すべての花を手で除雄する。除雄については、花冠が生長する前に、総苞をクリップすることによって実行する。単為生殖については、透徹化した胚珠のNomarski Differential Interference Microscopy(DIC)によって、顕微鏡的に非アポミクティック植物において検出される。ここでは、抱水クロラールを使用した透徹化方法を適用する、これは、顕微鏡イメージング用に植物の胚珠を透徹化するのに一般に使用される方法である(例えばFranks RG、2016を参照されたい)。除雄後75時間で、花芽を収穫し、抱水クロラールで胚珠を透徹化する。pKG20002及びpKG20003のトランスジェニック系統において、複数の胚がこれらの透徹化胚珠中に観察され得る。胚嚢のプールに対するフローサイトメトリーは、これらの胚が単数体であることを示すことができる。同様に除雄及び画像化される非形質転換対照植物及びpKG20001の評価されたトランスジェニック系統では、胚はまったく観察されなかった。
【0178】
これらの結果は、セイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子由来のMITEプロモーターエレメントを挿入すること、又はレタスのLSAT_8X112340プロモーターからMYB結合部位を除去することのいずれも、LSAT_8X112340遺伝子がレタスにおいて単数体胚形成を誘導できるように発現を改変するのに十分であることを実証する。
【0179】
実施例3
植物材料
本実験では、野生型レタス:Red Romaine型、Baker Creek Heirloom Seedsを使用した。
DNA構築物
バイナリーベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号63によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築した:セイヨウタンポポのPar CDS配列(配列番号3)の発現を駆動するレタスのLSAT_8X112340プロモーター(配列番号16)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。このようなバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統を、コードpKG20004で番号付けする。
【0180】
第2のバイナリーベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号64によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築した:セイヨウタンポポのPar CDS配列(配列番号3)の発現を駆動する、セイヨウタンポポMITEプロモーターエレメントのPar対立遺伝子の遺伝子の挿入を有するレタスのLSAT_8X112340プロモーター(配列番号18)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。かかるバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統を、コードpKG20006で番号付けする。
【0181】
第3のベクターを、以下の連続したエレメントからなる配列番号65によって表される構築物を含むT-DNA領域で構築した:レタスのLSAT_8X112340 CDS配列(配列番号33)の発現を駆動するセイヨウタンポポのPar対立遺伝子プロモーター(配列番号2)、これに続くセイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子の3’UTRの最初の1000塩基(配列番号4の最初の1000塩基)、これに続く35Sターミネーター及び選別用ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)。このようなバイナリーベクターを作り出すのに適した技術は、ゲートウェイ(登録商標)、Golden Gate、又はギブソンアセンブリ(登録商標)である(例えば、Maら、2015を参照されたい)。このT-DNAを宿すトランスジェニック系統には、コードpKG20008で番号付けする。
植物の形質転換法
アグロバクテリウムの形質転換を、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを使用してレタスの遺伝子型非依存性形質転換によって実施する。かかる方法は当技術分野でよく知られており、例えばCurtisら(1994)に教示されている。Michelmoreら(1987)又はChupeauら(1989)に記載されているなどの、レタスの遺伝的形質転換に適した他の任意の方法を使用して、所望のT-DNAを宿す植物を作出してもよい。
【0182】
結果
上の「DNA構築物」のセクションの下で記載のように、導入遺伝子の存在について陽性と試験された植物を、単為生殖の発生について評価した。形質が優勢であるので、試験は一次形質転換植物(T0)で行った。他家受精又は自家受精の非存在下では、単為生殖卵細胞は胚へと発生する。導入遺伝子を宿す任意の植物の受精を防止するために、植物を温室で育成し、顕微鏡観察に先立ち、すべての花を手で除雄した。除雄については、花冠が生長する前に、総苞をクリップすることによって実行した。単為生殖については、透徹化した胚珠のNomarski Differential Interference Microscopy(DIC)によって、顕微鏡的に非アポミクティック植物において検出した。ここでは、抱水クロラールを使用した透徹化方法を適用した、これは、顕微鏡イメージング用に植物の胚珠を透徹化するのに一般に使用される方法である(例えばFranks RG.2016を参照されたい)。除雄後75時間で、花芽を収穫し、抱水クロラールで胚珠を透徹化する。pKG20005、pKG20006、pKG20007及びpKG20008のトランスジェニック系統において、複数の胚がこれらの透徹化胚珠中に観察された(表3を参照されたい)。胚嚢のプールに対するフローサイトメトリーは、これらの胚が単数体であることを示すことができる。同様に除雄及び画像化された標準GUS構築物形質転換対照植物及びpKG20004の評価されたトランスジェニック系統では、胚はまったく観察されなかった。
【0183】
これらの結果は、セイヨウタンポポのPar対立遺伝子の遺伝子由来のMITEプロモーターエレメントが、LSAT_8X112340遺伝子がレタスにおいて単数体胚形成を誘導できるように発現を改変するのに十分であることを実証した。他家受精又は自家受精の非存在下では、卵細胞は胚へと発生したので、これは、レタスLSAT_8X112340遺伝子のプロモーター改変によりレタスにおいて単為生殖を誘導することの明確な一例である。
【0184】
【表4】
【0185】
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
【配列表】
2023544753000001.app
【国際調査報告】