(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ハイドロテンショナ
(51)【国際特許分類】
F16H 7/08 20060101AFI20231018BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F16H7/08
F02B67/06 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520335
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 US2020054276
(87)【国際公開番号】W WO2022075967
(87)【国際公開日】2022-04-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】フリーマントル、ポール
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA01
3J049AA08
3J049BB13
3J049BB26
3J049BB35
3J049CA01
(57)【要約】
要約
ピンまたはロッドの外面の周りを摺動するピストンを有し、ピストン内径とロッド外径との間の領域によってチェーン制御用の高圧室が生じるハイドロテンショナを提供する。ピストンロッドの外側の周囲にあるばねは、ピストンの底部に押し付けられ、低油圧状態でピストンを外側に付勢する。好ましくは、ピストンは鋼であり、ロッドはアルミであり、これは先行技術の設計とは反対であり、すなわち、温度が上昇するにつれてピストンと孔との隙間が減少することを意味する。これにより、オイル粘度の低下を相殺し、作動温度で同じ性能を維持することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロテンショナであって、
a)本体と、
b)前記本体に固定された第1端部、第2端部、低圧室を形成する内孔及び外面を有するロッドと、
c)内端部と、外端部と、前記ロッドの外面の周りに摺動可能に嵌合された内孔とを有するピストンであって、前記ピストンの前記内孔と前記ロッドの前記第2端部とが高圧室を形成するピストンと、
d)前記ロッドの前記第2端部に取り付けられ、前記高圧室と前記低圧室との間の流量を制御する第1逆止弁と、
e)前記ロッドの前記外面の周りに取り付けられ、前記本体と前記ピストンの前記内端部との間に前記ピストンを本体に対して外側に付勢する力を与える外部ばねと、を含むハイドロテンショナ。
【請求項2】
前記ロッドの前記第1端部は前記本体に圧入されている請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項3】
前記ロッドの前記第1端部は前記本体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項4】
前記ロッドはアルミで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項5】
前記ピストンは鋼で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項6】
前記ロッドの前記第2端部に、前記ピストンの前記内孔にシールされた高圧室用シールをさらに含む請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項7】
前記ロッドの前記第1端部に、前記低圧室からの流量を制御する第2逆止弁をさらに含む請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項8】
前記第1逆止弁はプラスチックで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【請求項9】
前記第1逆止弁は鋼で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイドロテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン又はベルトのテンショナの分野に属する。より具体的には、本発明は、ハイドロテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車用ハイドロテンショナの多くは、テンショナ本体の内孔に取り付けられたピストンを使用している。孔内の高圧オイルは、ピストンをアームに対して外側に付勢し、チェーンまたはベルト駆動タイミングシロッドを制御するための張力を提供する。通常、ピストンはアルミ、本体は鋼である。
【0003】
従来技術のテンショナの多くは、鋼とアルミの熱膨張係数の差により、エンジン内のオイル温が上昇すると増大するピストンとボアとの隙間を有するように設計されている。これは温度によるオイルの粘度の低下と相まって、テンショナの性能が温度によって変化することを意味し、望ましくない。
【発明の概要】
【0004】
ハイドロテンショナは、ピンまたはロッドの外面の周りを摺動するピストンを有し、ピストン内径とロッド外径との間の領域によってチェーン制御用の高圧室が生じる。ピストンロッドの外側の周囲にあるばねは、ピストンの底部に押し付けられ、低油圧またはゼロ油圧の条件下でピストンを外側に付勢する。好ましくは、ピストンは鋼であり、ロッドはアルミであり、これは先行技術の設計とは反対であり、すなわち、温度が上昇するにつれてピストンと孔との隙間が減少することを意味する。これにより、オイル粘度の低下を相殺し、作動温度で同じ性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本発明の実施形態に係るテンショナの上面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るテンショナの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1~3を参照すると、改良されたハイドロテンショナは、他の材料も可能であるが、好ましくはアルミで製作された本体1を有する。本体1は、取付耳7の穴6にボルトを通すなど、現在と同様にテンショナをエンジンにボルトで固定することを可能にする。本体1は、押し出し、ダイカスト、ビレットからの加工、又は当業者に知られている他の方法で製造することができる。
【0007】
中空ピン、チューブ又はロッド4は、例えばロッド4の第1端部18を圧入嵌合するか、又はスクリューを用いて本体1内に挿入することにより、本体1に固定される。ロッド4は、後述するエンジンからのオイル供給源25と流体連通する内孔5を有する。ロッド4は、アルミダイカスト製、あるいは必要に応じて他の材料や方法で製作される。好適には、テンショナは、本体1とロッド4とが一体となるようなデザインに形成してもよい。ロッド4の外面17はピストン2の摺動面を形成する。
【0008】
ピストン2はロッド4に摺動可能に収容されている。ピストン2は鋼製であるが、アルミ等の材料も可能である。ピストン2の外端部12は、タイミングチェーンまたはベルト(図示せず)を緊張させるために、タイミングシシステム内のアームに押し当てられるように配置されることが好ましい。
【0009】
アルミ製のロッド4と鋼製のピストン2とを形成することにより、温度が高くなるにつれて隙間が小さくなる。
【0010】
ロッド4の内孔5内に低圧室(LPC)19が形成されている。
【0011】
ロッド4の外面17及び第2端部16とピストン2の内孔2aとの間に高圧室(HPC)3が形成されている。第1逆止弁15は、HPC3内にロッド4とピストン2の内孔2aとの間に存在し、HPC3へのオイルの流入を許容するが流出を止める。第1逆止弁15は、球形逆止弁やディスクバルブ等の種々の設計が可能である。
図1に示す設計では、第1逆止弁15は本体9と逆止要素11とを有し、逆止要素11は当業者に知られている内部ばね10によって付勢されている。第1逆止弁15は、必要に応じて、鋼やプラスチック等の異なる材料で形成され得る。第1逆止弁15は、ロッド4の先端部にクリップ及びシール14を介して任意に取り付けることができる。シール14は、アルミ製のロッド4と鋼製のピストン2との間にオイルが流れないようにロッド4の周囲のピストン2をシールするために使用することもできる。必要に応じて、第1逆止弁15とシール14とを噴射防止機構として使用することができる。
【0012】
逆止弁15(図示せず)に小穴を設けて、オイルの流れとそれに続くテンショナ剛性の「調整」を可能にしてもよい。調整は、プラスチックシール(図示せず)内の蛇行経路によっても達成され得る。
【0013】
外部ばね8は、ピストン2を伸張させ、また油圧が存在しないときに伸張を維持するように付勢を生じさせる。ピストン2の外側にばね8を有することにより、荷重/速度の設計上の制約が少ない。また、ばね8をロッド4の外側に取り付けることにより、より大径のばねを使用することが可能になり、これにより、応力を低減し、ばね剛性を低下させることができ、新品チェーンと摩耗チェーンとの間でばね荷重のばらつきを小さくすることができる。
【0014】
ロッド4の第1端部18には、任意の第2逆止弁13を設けることができる。第2逆止弁13は、ピストン2が「ノーズアップ」してエンジンがオフにされた後にオイルを排出可能な用途において、テンショナ後方のエンジンオイル供給源から流入穴25及びオイル供給源27を介してLPC19に流入する流量を制御してLPC19内のオイルを捕捉する。次回のエンジン始動時にLPC19内の後続のオイル溜まりを呼び出すことができ、これにより、始動音を防止するとともに、クランキング中及びエンジンの最初の回転中のチェーン制御を向上させることができる。
【0015】
オイル供給源25からのオイルは、給油管27を介してLPC19に流れる。一実施形態では、流体は、給油管27、第2逆止弁13を通ってLPC19に入る。第2逆止弁13は、テンショナとピストンとを「ノーズアップ」にしてエンジンに装着した場合に、オイルを捕捉するのに寄与する。あるいは、オイルはオイル供給源からLPC19に直接流れるようにしてもよい。
【0016】
流体の力がHPC3内に存在する流体の力よりも大きい場合、流体はLPC19から第1逆止弁15を通ってHPC3内に入ることができる。ピストン2の外端部12がテンショナアームを介してベルト又はチェーンから圧力を受けると、ピストン2はばね8を圧縮し、第1逆止弁15によりHPC3からの流体の流出が阻止される。
【0017】
第1逆止弁15は、LPC19とHPC3とを分離する。一実施形態では、第2逆止弁13は、エンジンがシャットダウンされるとエンジン内のオイル供給源25からオイルが排出された場合、LPC19内のオイルを保持するのに寄与し、これにより、エンジン再始動時に瞬間的なオイル量を確保できる。
【0018】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用例にすぎないことが理解されるべきである。本明細書において示された実施形態の詳細への参照は特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではなく、それら自体が本発明に不可欠であるとみなされる特徴を列挙している。
【国際調査報告】