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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20231018BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20231018BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231018BHJP
   C09J 177/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
H01M50/121
C09J177/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520390
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 FR2021051731
(87)【国際公開番号】W WO2022074331
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2010238
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハブラント, エロイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルマネ, ピエール-ジャン
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
4J040
5H011
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB04
4J001DC13
4J001EB09
4J001EB10
4J001EB71
4J001EC05
4J001EC29
4J001EC83
4J001EE28C
4J001FB06
4J001FB07
4J001FC07
4J001FD01
4J001JA07
4J001JA18
4J002CL031
4J002FD166
4J002GJ01
4J002GQ00
4J040EG001
4J040JB01
4J040NA19
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD02
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド、そのポリアミドを含む組成物、その使用、及びそれに由来する成形品、並びにその製造方法に関する。上記ポリアミドは、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であるポリアミドであって、酸成分が、酸成分の1モル当たり、25~50モル%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー、46~70モル%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;及び0~11モル%の少なくとも1つの連鎖制限剤;を含み、アミン成分が、アミン成分の1モル当たり、13~29モル%の少なくとも1つの脂肪族ジアミン;及び66~82モル%の少なくとも1つの脂環式ジアミンを含む。上記ポリアミドは、熱に弱い電池、例えばリチウムポリマー電池の低圧低温オーバーモールド用ホットメルト接着剤としての使用に特に好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であるポリアミドであって、
酸成分が、酸成分の1モル当たり:
25~50モル%、優先的には30~50モル%、非常に優先的には35~50モル%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー;
46~70モル%、優先的には49~70モル%、非常に優先的には52~70モル%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;
0~11モル%、優先的には0~10モル%、非常に優先的には2~5モル%の少なくとも1つの連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分が、アミン成分の1モル当たり:
13~29モル%、優先的には16~26モル%、非常に優先的には19~23モル%の少なくとも1つの脂肪族ジアミン;
66~82モル%、優先的には69~79モル%、非常に優先的には72~76モル%の少なくとも1つの脂環式ジアミン;及び
0~15モル%、優先的には0~10モル%、非常に優先的には3~5モル%の少なくとも1つのポリエーテルアミン;
を含み、
ポリアミドが、1.00~1.20、優先的には1.04~1.15、非常に優先的には1.07~1.11の-COOH/(-NH及び/又は-NH)のモル比を含む、ポリアミド。
【請求項2】
脂肪酸ダイマーが、不飽和モノカルボン酸;優先的には10~22個の炭素原子を含む不飽和モノカルボン酸から選択された不飽和モノカルボン酸;12~18個の炭素原子を含む不飽和モノカルボン酸から選択された不飽和モノカルボン酸;非常に優先的には16~18個の炭素原子を含む不飽和モノカルボン酸から選択された不飽和モノカルボン酸のカップリング反応の生成物である、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
脂肪族二塩基酸が、飽和脂肪族ジカルボン酸;優先的には線状又は分岐状の飽和脂肪族ジカルボン酸;非常に優先的には4~22個の炭素原子を有する線状の飽和ジカルボン酸;より優先的にはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプシン酸、及びそれらの混合物;更により優先的にはアゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から2のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項4】
連鎖制限剤が、モノカルボン酸、無水物、モノハロゲン化酸、モノエステル又はモノイソシアネートから選択され;優先的には、連鎖制限剤が、モノカルボン酸であり;非常に優先的には、連鎖制限剤が、脂肪族モノカルボン酸、脂環式酸、芳香族モノカルボン酸、及びそれらの混合物から選択され;より優先的には、連鎖制限剤が、脂肪族モノカルボン酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項5】
脂肪族ジアミンが、線状又は分岐状の飽和脂肪族ジアミン;優先的には式HN-(CH-NH(nは2と12の間である)の飽和線状脂肪族ジアミン;非常に優先的にはエチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン、及びそれらの混合物から選択され;より優先的には、脂肪族ジアミンが、エチレンジアミンである、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項6】
脂環式ジアミンが、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン、ピぺラジン、アミノエチルピぺラジン、ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、ピぺラジン、シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、イソホロンジアミン(IPDA)、ジメチルピぺラジン、ジピペリジルプロパン、ノルボルナンジアミン、及びそれらの混合物から選択され;優先的には、脂環式ジアミンが、ピぺラジンである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項7】
ポリエーテルアミンが、200~4000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリオキシアルキレンジアミンから選択され;優先的には、ポリエーテルアミンが、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ビス(ジアミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン、及びそれらの混合物から選択され;非常に優先的には、ポリエーテルアミンが、ポリオキシプロピレンジアミンである、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項8】
ポリアミドが、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であり、
酸成分が、酸成分の1モル当たり:
35~50モル%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー;
52~70モル%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;
2~5モル%の少なくとも1つの連鎖制限剤;
を含み、
アミン成分が、アミン成分の1モル当たり:
19~23モル%の少なくとも1つのエチレンジアミンである脂肪族ジアミン;
72~76モル%の少なくとも1つのピぺラジンである脂環式ジアミン;及び
3~5モル%の少なくとも1つのポリオキシプロピレンジアミンであるポリエーテルアミン;
を含み、
ポリアミドが、1.07~1.11の-COOH/(-NH及び/又は-NH)のモル比を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリアミドを含む組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの添加剤;優先的には充填剤、酸化防止剤又は安定剤、離型剤、接着促進剤、顔料、及びそれらの混合物から選択された少なくとも1つの添加剤を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリアミド組成物が、150℃の温度で、10000mPa・s以下;優先的には3000~6000mPa・sの粘度を有する、請求項9から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリアミド組成物が、150℃以下;優先的には100~145℃;非常に優先的に115℃~140℃の軟化点を有する、請求項9から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
インサート、優先的にはリチウムポリマー電池、及び請求項9から12のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を含み、インサートが少なくとも部分的にポリアミド組成物でオーバーモールドされている、成形品。
【請求項14】
成形品を製造する方法であって、
金型を提供する工程;
金型にインサート、優先的にはリチウムポリマー電池を挿入する工程;
ポリアミド組成物を150℃以下、優先的には120℃~150℃の温度に加熱して、溶融ポリアミド組成物を得る工程;
0.5×10~50×10Pa、優先的には2×10~40×10Paの圧力で溶融ポリアミド組成物を射出する工程;
射出されたポリアミド組成物を冷却する工程;
得られた成形品を金型から任意選択で取り出す工程を含む、方法。
【請求項15】
熱に弱い電池の低圧オーバーモールド用ホットメルト接着剤としての、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリアミド又はそれを含む組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド、それを含む組成物、及びその使用に関し、また、それに由来する成形品、及びそれを製造する方法に関する。上記ポリアミドは、熱に弱い電池、例えばリチウムポリマー電池の低圧低温オーバーモールド用ホットメルト接着剤として特に好適である。
【背景技術】
【0002】
数多くの携帯用電子デバイスが電池を備えていることで、電力供給ネットワークに接続する必要なく使用することができる。それらに十分な強度を付与し、それらを環境条件から保護し、かつ利用者による不適切な取扱いを防止するために、電池は通常、保護ケーシングにパッケージングされる。通常、電池のケーシングは、低圧で射出されたプラスチックから、例えばポリアミドから開始してオーバーモールドすることにより形成することができる。
【0003】
十分な性能を示す電池、例えばリチウムイオン電池が既に利用可能であるが、新たな技術上(電池の寿命、性能、重量等)、産業上(出発物質等)、及び/又は規制上(相互運用性、リサイクル性等)の制約が、別の技術、例えばリチウムポリマー電池の開発を必要としている。
【0004】
リチウムポリマー電池(又はリチウムイオンポリマー電池)は、LiPo、LIP、Li-ポリ、リチウム-ポリとも表され、液体電解質の代わりにポリマー電解質を用いた再充電可能な電池である。これらの電池は、電池を含む電子デバイスを破壊又は損傷することなく交換することができる点で有利である。このことは、電子デバイスの寿命を増大させることを可能にする。更に、このことは、電池を含む電子デバイスが壊れた場合の電池のリサイクルを可能にする。最後に、これらの電池は、十分な性能を示す。一方で、これらの電池には、温度及び圧力に弱いという不都合がある。例えばリチウムイオン電池に用いられる低圧オーバーモールドのための従来の方法は、それらが通常200℃より高い高温で射出される必要のあるプラスチック、例えばポリアミドを用いるという点で適さない。
【0005】
オーバーモールドする方法及び/又は様々な種類のポリアミドがよく知られている。
【0006】
例えば、出願EP1533331A1は、特に、少なくとも1つの二量体化不飽和C12~C24脂肪酸、及び少なくとも1つの脂肪族C~C18ジカルボン酸を含む酸成分と;少なくとも1つのC~Cアルキレンジアミン、少なくとも1つのC24~C48アミドダイマー、及び少なくとも1つのポリオキシアルキレンジアミンを含むアミン成分との重縮合生成物であるポリアミドに関する。
【0007】
特許EP2094802B1は、特に、ホットメルト接着剤を含む、固定デバイスとしての金属又は合成材料の基板に結合する成形エレメントに関し、また、成形エレメントの製造のためのポリアミド系ホットメルト接着剤の使用に関し、ポリアミドが、20~50モル%のダイマー脂肪酸及び/又はC~C18ジカルボン酸、0~5モル%のC12~C22脂肪酸モノマー、5~50モル%の脂肪族ポリアミド、0~40モル%の脂環式ジアミン、並びに0~35モル%のポリエーテルジアミンを含み、ホットメルト接着剤が、150℃から250℃の間に達する軟化温度及び1~35Mpa.sの引張力を有する。
【0008】
特許EP2298830B1は、特に、低圧射出成形方法における成形パーツの製造のための、少なくとも1つのダイマー脂肪酸、少なくとも1つの脂肪族C~C24ジカルボン酸、並びに脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び/又はポリエーテルジアミンの反応生成物に基づき、アミン成分の量が、末端位に含まれるのが主にアミン基となるように選択され、2~20mgKOH/gのアミン価を有する、ポリアミドの使用に関する。
【0009】
出願CN108148198Aは、特に、低圧射出成形することのできるホットメルトポリアミド接着剤であって、80~100モル%の少なくとも1つのC14~C18ジカルボン酸、10~90モル%の少なくとも1つのC~C20脂肪族アミン、10~80モル%の脂環式アミン、及び0~80モル%の少なくとも1つのポリエーテルアミンを反応させることにより得られたポリアミドを含有し、ポリアミドが脂肪酸ダイマーを含まず、ジアミンの合計が100モル%である、ホットメルトポリアミド接着剤に関する。
【0010】
出願CN109705797Aは、特に、電池をパッケージングするためのポリアミド型射出成形材料であって、50モル%の成分A及び50モル%の成分Bを含み;成分Aが80~95モル%の脂肪族脂肪酸ダイマー、5~20%の脂肪族ジカルボン酸を含み;成分Bが70~90モル%のジアミン、10~30%のポリエーテルアミンを含み;5~20重量%のロジン型樹脂を含む、ポリアミド型射出成形材料に関する。
【0011】
出願WO2017/007648A1は、水素化脂肪酸のダイマー、飽和線状C~C14カルボン酸、脂肪族C~Cジアミン、及びジピぺリジンの反応生成物である透明ポリアミドに関する。
【0012】
特許EP2311118B1は、特に、電池を製造する方法に関し、この方法により、セルケーシング内の少なくとも1つの個々のセルからなるセルパッケージと、電子安全回路及び電池の外部接触表面が全く同じ電子部品の構成要素となるように一体化され、被覆された硬化プラスチックパーツから基本的になる電子部品とを、電池の一段階製造の間に射出成形金型に搭載し、配置し、残りの空いた空間を後で硬化される液体プラスチックの塊で満たすことができる。
【0013】
しかしながら、ホットメルト接着剤に用いることができ、低圧低温の射出成形方法に好適なポリアミドを提供することが実際に必要とされている。特に、熱に弱いエレメント、特にリチウムポリマー電池をオーバーモールドする方法に好適なポリアミドを提供することが必要とされている。特に、十分な機械的特性及び熱的特性を保ちながら従来のオーバーモールドする方法より低温で射出成形することができるポリアミドを提供することが必要とされている。熱に弱いデバイスの上に射出成形された後、容易にリサイクルできるポリアミドを提供することもまた必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、第一に、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であるポリアミドであって、
酸成分が、酸成分の1モル当たり:
- 25~50モル%、優先的には30~50モル%、非常に優先的には35~50モル%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー;
- 46~70モル%、優先的には49~70モル%、非常に優先的には52~70モル%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;
- 0~11モル%、優先的には0~10モル%、非常に優先的には2~5モル%の少なくとも1つの連鎖制限剤;
を含有し、
アミン成分が、アミン成分の1モル当たり:
- 13~29モル%、優先的には16~26モル%、非常に優先的には19~23モル%の少なくとも1つの脂肪族ジアミン;
- 66~82モル%、優先的には69~79モル%、非常に優先的には72~76モル%の少なくとも1つの脂環式ジアミン;及び
- 0~15モル%、優先的には0~10モル%、非常に優先的には3~5モル%の少なくとも1つのポリエーテルアミン;
を含有し、
ポリアミドが、1.00~1.20、優先的には1.04~1.15、非常に優先的には1.07~1.11の-COOH/(-NH及び/又は-NH)のモル比を含む、ポリアミドに関する。
【0015】
実施形態では、脂肪酸ダイマーが、不飽和モノカルボン酸;優先的には10~22個の炭素原子を含む不飽和モノカルボン酸から選択された不飽和モノカルボン酸;非常に優先的には12~18個の炭素原子を含む不飽和モノカルボン酸から選択された不飽和モノカルボン酸;より優先的には16~18個の炭素原子を含む不飽和モノカルボン酸から選択された不飽和モノカルボン酸のカップリング反応の生成物である。
【0016】
実施形態では、脂肪族二塩基酸が、飽和脂肪族ジカルボン酸;優先的には線状又は分岐状の飽和脂肪族ジカルボン酸;非常に優先的には4~22個の炭素原子を有する線状の飽和ジカルボン酸;より優先的にはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、タプシン酸、及びそれらの混合物;更により優先的にはアゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びそれらの混合物から選択される。
【0017】
実施形態では、連鎖制限剤が、モノカルボン酸、無水物、モノハロゲン化酸、モノエステル又はモノイソシアネートから選択され;優先的には、連鎖制限剤が、モノカルボン酸であり;非常に優先的には、連鎖制限剤が、脂肪族モノカルボン酸、脂環式酸、芳香族モノカルボン酸、及びそれらの混合物から選択され;より優先的には、連鎖制限剤が、脂肪族モノカルボン酸である。
【0018】
実施形態では、脂肪族ジアミンが、線状又は分岐状の飽和脂肪族ジアミン;優先的には式HN-(CH-NH(nは2から12の間である)の飽和線状脂肪族ジアミン;非常に優先的にはエチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン、及びそれらの混合物から選択され;より優先的には、脂肪族ジアミンが、エチレンジアミンである。
【0019】
実施形態では、脂環式ジアミンが、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン、ピぺラジン、アミノエチルピぺラジン、ジメチルピぺラジン、4,4’-トリメチレンジピぺリジン、1,4-シクロヘキサンジアミン、炭素系骨格(例えばノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン)を有する脂環式ジアミン、及びそれらの混合物から選択され;優先的には、脂環式ジアミンが、ピぺラジンである。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリエーテルアミンが、200~4000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリオキシアルキレンジアミンから選択され;優先的には、ポリエーテルアミンが、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ビス(ジアミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン、及びそれらの混合物から選択され;非常に優先的には、ポリエーテルアミンが、ポリオキシプロピレンジアミンである。
【0021】
実施形態では、ポリアミドが、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であり、
酸成分が、酸成分の1モル当たり:
35~50モル%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー;
52~70モル%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;
2~5モル%の少なくとも1つの連鎖制限剤;
を含有し、
アミン成分が、アミン成分の1モル当たり:
19~23モル%の少なくとも1つのエチレンジアミンである脂肪族ジアミン;
72~76モル%の少なくとも1つのピぺラジンである脂環式ジアミン;及び
3~5モル%の少なくとも1つのポリオキシプロピレンジアミンであるポリエーテルアミン;
を含有し、
ポリアミドが、1.07~1.11の-COOH/(-NH及び/又は-NH)のモル比を含む。
【0022】
本発明は、第二に、先に規定したポリアミドを含有する組成物に関する。
【0023】
実施形態では、組成物が、少なくとも1つの添加剤;優先的には充填剤、酸化防止剤又は安定剤、離型剤、接着促進剤、顔料、及びそれらの混合物から選択された少なくとも1つの添加剤を含有する。
【0024】
実施形態では、ポリアミドが、150℃の温度で、10000mPa.s以下;優先的には3000~6000mPa.sの粘度を有する。
【0025】
実施形態では、ポリアミド組成物が、150℃以下;優先的には100~145℃;非常に優先的に115℃~140℃の軟化点を有する。
【0026】
本発明は、第三に、インサート、優先的にはリチウムポリマー電池、及び先に規定したポリアミド組成物を含み、インサートが少なくとも部分的にポリアミド組成物でオーバーモールドされている、成形品に関する。
【0027】
本発明は、第四に、成形品を製造する方法であって、
- 金型を提供する工程;
- 金型にインサート、優先的にはリチウムポリマー電池を挿入する工程;
- ポリアミド組成物を150℃以下、優先的には120℃~150℃の温度に加熱して、溶融ポリアミド組成物を得る工程;
- 0.5×10~50×10Pa、優先的には2×10~40×10Paの圧力で溶融ポリアミド組成物を射出する工程;
- 射出されたポリアミド組成物を冷却する工程;
- 得られた成形品を金型から任意選択で取り出す工程を含む、方法に関する。
【0028】
本発明は、第五に、熱に弱い電池の低圧オーバーモールド用ホットメルト接着剤としての、先に規定したポリアミド又はそれを含有する組成物の使用に関する。
【0029】
本発明は、上述した要求を満たすことを可能にする。
【0030】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明のポリアミドが電池、特にリチウムポリマー電池のケーシングの製造に特に好適であることを実証した。これは、ポリアミド、又はそれを含有する組成物が、低圧及び低温で、熱に弱いエレメント、特に熱に弱い電池のオーバーモールドに特に好適である、特に150℃以下の温度で射出することができるためである。更に、ポリアミドの粘度及び軟化点は、電池をオーバーモールドする方法に用いられる公知のポリアミドの粘度及び軟化点より低いが、オーバーモールドにより得られたケーシングは、使用中の(例えば季節及び電子デバイスの加熱に応じた)高い温度勾配で十分な機械的特性及び熱的特性、特に十分な衝撃強度を示す。最後に、射出成形されたポリアミドの様々な種類の基板(例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン又はABS基板)への接着は、十分である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を、以下の説明においてより詳細にかつ非限定的に、これから記載する。
【0032】
本発明の目的のために、用語「ホットメルト」は、熱の影響下でポリアミドが融解する能力を意味することを意図している。
【0033】
本明細書では、別途指示がない限り、示された全ての百分率は、モル百分率である。
【0034】
本発明の目的のために、表現「...から...の間」又は「...~...」は、限界値が記載の範囲に含まれることを意味するものと意図している。
【0035】
ポリアミド
第一の態様において、本発明は、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であるポリアミドであって、
酸成分が、酸成分の1モル当たり:
- 25~50モル%、優先的には30~50モル%、非常に優先的には35~50モル%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー;
- 46~70モル%、優先的には49~70モル%、非常に優先的には52~70モル%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;
- 0~11モル%、優先的には0~10モル%、非常に優先的には2~5モル%の少なくとも1つの連鎖制限剤;
を含有し、
アミン成分が、アミン成分の1モル当たり:
- 13~29モル%、優先的には16~26モル%、非常に優先的には19~23モル%の少なくとも1つの脂肪族ジアミン;
- 66~82モル%、優先的には69~79モル%、非常に優先的には72~76モル%の少なくとも1つの脂環式ジアミン;及び
- 0~15モル%、優先的には0~10モル%、非常に優先的には3~5モル%の少なくとも1つのポリエーテルアミン;
を含有し、
ポリアミドが、1.00~1.20、優先的には1.04~1.15、非常に優先的には1.07~1.11の-COOH/(-NH及び/又は-NH)のモル比を含む、ポリアミドに関する。
【0036】
カルボン酸官能基と、含有量がmgKOH/gで表される第一級及び/又は第二級アミン官能基との間の-COOH/(-NH及び/又は-NH)のモル比は、電位差測定法により決定される。
【0037】
ポリアミドは、従来の方法に従って酸成分とアミン成分との重縮合により得ることができる。用いられる方法に応じて、ポリアミドは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよく、優先的にはランダムポリマーである。
【0038】
脂肪酸ダイマー
脂肪酸ダイマーは、2つの酸官能基を保有する生成物の混合物をもたらす不飽和脂肪酸のカップリング反応から製造された化合物を示す重合脂肪酸である。脂肪酸ダイマーは、不飽和モノカルボン酸の二量体化反応により得ることができる。従って、脂肪酸ダイマーは、不飽和モノカルボン酸のカップリングの反応生成物である。不飽和モノカルボン酸は、10~22個の炭素原子(C10~C22)を含む不飽和モノカルボン酸;優先的には12~18個の炭素原子(C12~C18)を含む不飽和モノカルボン酸;非常に優先的には16~18個の炭素原子(C16~C18)を含む不飽和モノカルボン酸から選択することができる。
【0039】
脂肪酸ダイマーは、例えば特許出願US2793219及びUS2955121に記載のようなよく知られた方法により、不飽和モノカルボン酸から得ることができる。不飽和モノカルボン酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0040】
それらが粗生成物であるか蒸留されているかによって、脂肪酸ダイマーは、商用グレードによって、モノマー、トリマー、及びより高級な同族体の量の多少がある混合物として、75%~98%超の範囲のダイマー含有量を示す。
【0041】
脂肪酸ダイマーは、OleonからRadiacid(登録商標)の名称で、CrodaからPripol(登録商標)の名称で、又はKratonからUnydime(登録商標)の名称で市販されている。
【0042】
脂肪族二塩基酸
本明細書を通して、表現「二塩基酸」、「カルボキシル二塩基酸」及び「ジカルボン酸」は、同じ製品を示す。
【0043】
脂肪族二塩基酸は、飽和脂肪族ジカルボン酸;優先的には線状又は分岐状の飽和脂肪族ジカルボン酸;非常に優先的には4~22個の炭素原子(C~C22)を有する飽和脂肪族ジカルボン酸;より優先的にはコハク酸(ブタン二酸)(C)、グルタル酸(ペンタン二酸)(C)、アジピン酸(ヘキサン二酸)(C)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)(C)、スベリン酸(オクタン二酸)(C)、アゼライン酸(ノナン二酸)(C)、セバシン酸(デカン二酸)(C10)、ウンデカン二酸(C11)、ドデカン二酸(C12)、ブラシル酸(トリデカン二酸)(C13)、テトラデカン二酸(C14)、ペンタデカン二酸(C15)、タプシン酸(ヘキサデカン二酸)(C16)、及びそれらの混合物;更により優先的にはアゼライン酸(C)、セバシン酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0044】
連鎖制限剤
本発明のポリアミドは、必要に応じて少なくとも1つの連鎖制限剤の存在下、従来の方法で合成される。
【0045】
連鎖制限剤は、モノカルボン酸、無水物(例えば無水フタル酸)、モノハロゲン化酸、モノエステル又はモノイソシアネートから選択することができ;優先的には、連鎖制限剤は、モノカルボン酸であり;非常に優先的には、連鎖制限剤は、脂肪族モノカルボン酸、脂環式酸、芳香族モノカルボン酸、及びそれらの混合物から選択され;より優先的には、連鎖制限剤は、脂肪族モノカルボン酸である。
【0046】
モノカルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、乳酸、バレリアン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバル酸、イソ酪酸、又はそれらの混合物から選択された脂肪族モノカルボン酸であることができる。脂環式酸は、シクロヘキサンカルボン酸であることができる。芳香族モノカルボン酸は、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0047】
連鎖制限剤は、OleonからRadiacid(登録商標)の名称で市販されている。
【0048】
脂肪族ジアミン
脂肪族ジアミンは、線状又は分岐状の飽和脂肪族ジアミン;優先的には式HN-(CH-NH(nは2から12の間である)の飽和線状脂肪族ジアミン;非常に優先的にはエチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン、及びそれらの混合物から選択することができ;より優先的には、脂肪族ジアミンは、エチレンジアミンである。有利な分岐状脂肪族ジアミンとしては、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、メチルペンタンジアミン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0049】
脂環式ジアミン
脂環式ジアミンは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、イソホロンジアミン、ピぺラジン、アミノエチルピぺラジン、ジメチルピぺラジン、4,4’-トリメチレンジピぺリジン、1,4-シクロヘキサンジアミン、炭素系骨格(例えばノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパン)を有する脂環式ジアミン、及びそれらの混合物から選択することができ;優先的には、脂環式ジアミンは、ピぺラジンである。
【0050】
これらの脂環式ジアミンの非包括的なリストが、刊行物「Cycloaliphatic Amines」(Encyclopedia of Chemical Technology、Kirk-Othmer、第4版(1992)、第386~405頁)において得られる。
【0051】
ポリエーテルアミン
ポリエーテルアミンは、200~4000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有するポリオキシアルキレンジアミンから選択することができる。好ましくは、ポリエーテルアミンは、鎖末端にアミン基を保有するポリオキシアルキレン鎖に関する。ポリエーテルアミンは、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ビス(ジアミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン、及びそれらの混合物から選択することができ;非常に優先的には、ポリエーテルアミンは、ポリオキシプロピレンジアミンである。
【0052】
ポリエーテルアミンは、HuntsmanからJeffamine(登録商標)の名称で、BASFからBaxxodur(登録商標)の名称で市販されている。
【0053】
1つの特定の実施形態では、ポリアミドが、酸成分とアミン成分との重縮合の生成物であり、
酸成分が、酸成分の1モル当たり:
- 35~50%の少なくとも1つの脂肪酸ダイマー;
- 52~70%の少なくとも1つの脂肪族二塩基酸;
- 2~5%の少なくとも1つの連鎖制限剤;
を含有し、
アミン成分が、アミン成分の1モル当たり:
- 19~23%の少なくとも1つのエチレンジアミン(C)である脂肪族ジアミン;
- 72~76%の少なくとも1つのピぺラジンである脂環式ジアミン;及び
- 3~5%の少なくとも1つのポリオキシプロピレンジアミンであるポリエーテルアミン;
を含有し、
ポリアミドが、1.07~1.11の-COOH/(-NH+-NH)のモル比を含む。
【0054】
ポリアミドは、従来の方法に基づいて調製することができる。例えば、全ての試薬を、混合機を備えた適切な反応器に投入し、次いで窒素下で190~250℃の間の温度で20~500分間(窒素フラッシュ下で蒸留物の容積がもはや増えなくなるまで)加熱する。次いで、反応器を5×10から500×10mPa(5から500mbar)の間の圧力で減圧下に置き、所望の粘度が得られるまでこれらの条件下に保持する。
【0055】
組成物
第二の態様において、本発明は、上記に規定したポリアミドを含有する組成物に関する。
【0056】
ポリアミド組成物は、酸成分とアミン成分との重縮合により得られたポリアミドに加えて、少なくとも1つの添加剤を含有することができる。
【0057】
添加剤は、充填剤、酸化防止剤又は安定剤、離型剤、接着促進剤、顔料、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0058】
接着剤組成物は、ポリアミドの重量に対して0~5%、優先的には0.5~5%の添加剤を含有することができる。
【0059】
1つの実施形態では、ポリアミド組成物が、粘着付与樹脂を含有しない。
【0060】
ポリアミド組成物は、150℃の温度で、10000mPa.s以下;優先的には3000~6000mPa.sの粘度を有することができる。粘度は、Brookfield装置及びSC4-A27スピンドルを用い、ASTM D3236規格に準拠して測定される。
【0061】
ポリアミド組成物は、150℃以下;優先的には100~145℃;非常に優先的に115~140℃の軟化点(軟化温度)を有することができる。軟化点は、「カップ&ボール」装置及び温度勾配2℃/分を用いて、ASTM D3461規格に準拠して測定することができる。
【0062】
ポリアミド組成物はまた、1.5~3.1MPaの引張強度を有することができる。引張強度は、1A型の試験片を調製し、動力計を用いて速度50mm/分でこれらの試験片に張力をかけることにより、ISO 527規格に準拠して測定することができる。
【0063】
ポリアミド組成物はまた、70~170%の破断点伸びを有することができる。破断点伸びは、1A型の試験片を調製し、動力計を用いて速度50mm/分でこれらの試験片に張力をかけることにより、ISO 527規格に準拠して測定することができる。
【0064】
ポリアミド組成物はまた、60~80のショアA硬さを有することができる。ショアA硬さは、硬度計を用いて直後及び15秒後の値を記録することにより、ISO 868規格に準拠して測定することができる。
【0065】
ポリアミド組成物はまた、15~30%のショアD硬さを有することができる。ショアD硬さは、硬度計を用いて直後及び15秒後の値を記録することにより、ISO 868規格に準拠して測定することができる。
【0066】
成形品
第三の態様において、本発明は、インサート、及び上述したポリアミド組成物を含み、インサートが少なくとも部分的にポリアミド組成物でオーバーモールドされている、成形品に関する。インサートは、電池、優先的には熱に弱い電池、非常に優先的にはリチウムポリマー電池であることができる。
【0067】
成形品は、更に、基板を含むことができる。基板は、プラスチック、金属、ガラス、セラミック又はあらゆる他の適切な物質から選択された材料、優先的にはプラスチックから得ることができ;非常に優先的には、プラスチックは、熱可塑性ポリマーである。例えば、熱可塑性ポリマーは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)であることができる。
【0068】
1つの実施形態では、ポリアミド組成物は、2つの部品を合わせた接着を確保するためにインサートと基板との間に射出することができる。この構造では、基板が成形品の外側ケーシングを形成する。別の実施形態では、ポリアミド組成物は、インサート、及び存在する場合は基板の周りに射出することができる。この構造では、オーバーモールドされたポリアミド組成物が成形品の外側ケーシングを形成する。あらゆる別の構造を想定することができる。
【0069】
周りにポリアミド組成物がオーバーモールドされるインサートは、あらゆる適切なインサート、特に電池、特に再充電可能な電池、例えば電話及びノートパソコンのような電子デバイスに用いられる電池であることができる。1つの好ましい実施形態では、インサートは、ポリマーリチウム電池である。
【0070】
成形品は、あらゆる適切な成形方法、例えば押出成形、キャスト成形、射出成形、圧縮成形、又はトランスファー成形により得ることができる。1つの好ましい実施形態では、成形品は、以下に記載するような低温低圧射出による方法により得られる。
【0071】
成形品を製造する方法
第三の態様において、本発明は、成形品を製造する方法に関する。
【0072】
低温低圧射出による方法は、
- 金型を提供する工程;
- 金型に、接着結合される部品(インサート)、優先的にはリチウムポリマー電池を挿入する工程;
- ポリアミド組成物を150℃以下、優先的には120℃~150℃の温度に加熱して、溶融ポリアミド組成物を得る工程;
- 0.5×10~50×10Pa、優先的には2×10~40×10Paの圧力で溶融ポリアミド組成物を射出する工程;
- 射出されたポリアミド組成物を冷却する工程;
- 得られた成形品を金型から任意選択で取り出す工程を含むことができる。
【0073】
構造に応じて、金型は、成形品の不可欠な一部を形成してもよく(例えばポリアミド組成物がインサートと基板との間に射出される場合)、ポリアミド組成物のオーバーモールド後に取り出さしてもよい。
【0074】
成形品を得るためのポリアミド組成物の使用は、ポリアミド組成物が低圧で成形できる点、ポリアミド組成物が150℃以下の成形温度で十分な流動特性を示す点、及びポリアミド組成物が成形状態で十分な温度強度を示す点で特に有利である。これらの特性は、高温に弱く熱を発生させる電子デバイス、特にリチウムポリマー電池の成形に好適である。
【0075】
使用
第四の態様において、本発明は、熱に弱い電池、優先的にはリチウムポリマー電池、及び任意選択でその基板の低圧オーバーモールド用ホットメルト接着剤としての、上述したポリアミド又はそれを含有するポリアミド組成物の使用に関する。
【実施例
【0076】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【0077】
使用した材料
脂肪酸ダイマー:Oleon製のRadiacid 0970(登録商標)(脂肪酸ダイマー、精製品、高純度);
脂肪族一塩基酸:Oleon製のRadiacid 0944(登録商標)(脂肪族一塩基酸);
脂肪族二塩基酸1:セバシン酸;
脂肪族二塩基酸2:ドデカン二酸;
脂肪族二塩基酸3:アゼライン酸;
脂肪族ジアミン:エチレンジアミン;
環式ジアミン:ピぺラジン;
ポリエーテルアミン:Huntsman製のJeffamine D2000(登録商標)(ポリオキシプロピレンジアミン);
充填剤:カーボンブラック(2.5~10%)をベースとする液体染料;
離型剤:エチレンビス-ステアリン酸アミド。
【0078】
ポリアミドの調製方法
全ての反応物を、混合機を備えた適切な反応器に投入し、次いで窒素下で4時間30分、225℃の温度まで加熱した。続いて、反応器をこの温度に2時間30分保持し、次いで1000と5000Paの間の圧力で1時間、減圧下に置いた。
【0079】
ポリアミド
【0080】
ポリアミド組成物
【0081】
充填剤及び成形剤の質量百分率は、ポリアミドの質量に応じて表される。
【0082】
結果
【0083】
ポリアミドP1~P4をそれぞれ含有する組成物1~4は、熱に弱いインサート、特にリチウムポリマー電池をオーバーモールドする方法におけるホットメルト接着剤としてのそれらの使用に特に好適な粘度及び軟化点を有し、十分な機械的特性及び熱的特性を有する成形品を得ることを可能にする。
【国際調査報告】