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特表2023-544795抗原特異的T細胞応答を活性化するための多細胞コンジュゲート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】抗原特異的T細胞応答を活性化するための多細胞コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20231018BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20231018BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20231018BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231018BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/0784
A61K35/15
A61K35/17
A61P37/04
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521292
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 US2021053805
(87)【国際公開番号】W WO2022076585
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/088,056
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013274
【氏名又は名称】ウィスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ガンパーズ ジェニー エレン
(72)【発明者】
【氏名】バイウ ダナ カリナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065BA30
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA22
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB321
4C084ZB331
4C084ZB351
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB32
4C087ZB33
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、iNKT細胞及び樹状細胞(DC)を含むインビトロ誘導多細胞コンジュゲートを提供する。本発明はまた、多細胞コンジュゲートを作製する方法及び多細胞コンジュゲート及びそれを含む組成物を使用して、抗原に関連する1種又は複数の状態を治療する方法、又は免疫応答を活性化する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞と樹状細胞(DC)との間の安定なインビトロ誘導多細胞コンジュゲート。
【請求項2】
前記コンジュゲートが、培養物中で少なくとも30分間維持される、請求項1に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項3】
前記コンジュゲートが、培養物中で少なくとも24時間維持される、請求項1に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項4】
前記コンジュゲート内の前記iNKT細胞が、適切に再配置されたTCRを発現する、請求項1~3のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項5】
前記コンジュゲート中のiNKTが、CD4及びCD3からなる群より選択される1種又は複数のマーカーを発現する、請求項4に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項6】
前記コンジュゲートが、培養物中で少なくとも96時間維持される、請求項1~5のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項7】
前記DCが、主要組織適合抗原分子I又はII(MHC I又はMHC II)を発現する、請求項1~6のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項8】
前記DCが、前記iNKT細胞に対して同種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項9】
前記DCが、前記iNKT細胞に対して自家である、請求項1~8のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項10】
前記多細胞コンジュゲートが、IL-12p70、INFγ又はそれらの両方を培地中に分泌する、請求項1~9のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項11】
前記DC細胞が、その表面上に、CD80、CD83、CD86、CD134L(OX40L)、CD137L(41BBL)、CD215(IL-15Rα)及びこれらの組み合わせから選択される1種又は複数の分子を発現する、請求項1~10のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項12】
前記コンジュゲート内のDCが、インビトロで少なくとも24時間にわたり1種又は複数の共刺激分子を発現する、請求項1~11のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項13】
前記iNKT細胞が、その表面上に、コンジュゲート化後に、好ましくは少なくとも24時間、好ましくは少なくとも96時間にわたり、CD70を発現する、請求項1~12のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項14】
前記多細胞コンジュゲートが、コンジュゲート当り2つ又は3つの細胞を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項15】
前記DCが、抗原をロードされている、請求項1~14のいずれか1項に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項16】
前記抗原が、腫瘍抗原、病原性抗原及び超抗原から選択される、請求項15に記載の安定な多細胞コンジュゲート。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の多細胞コンジュゲート及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項18】
インバリアントナチュラルキラー(iNK)T細胞と樹状細胞(DC)との間の多細胞コンジュゲートを産生する方法であって、iNKT細胞とDCを、安定な多細胞コンジュゲートを形成するのに十分な時間にわたり共培養することを含む、方法。
【請求項19】
iNKT細胞及びDCが、1:1~約5:1のiNKT:DCの比率で共培養される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記DCを、共培養の前に、脂質付加されたヒト血清アルブミン又は1種又は複数のサイトカインと接触させて、前記接触が、前記DCのDC-iNKTコンジュゲートをインビトロ培養で形成する能力を高める、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記樹状細胞が、
(i)単球を、GM-CSF及びIL-4を含む培地中で、前記単球をDCに分化させるのに十分な時間にわたり培養すること
を含む方法により単球から得られる、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記単球を、少なくとも2日間にわたり,(i)中で培養する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、
(ii)分化の前に、前記単球を対象の血液試料から単離すること、又は
(iii)前記単球を対象の組織から単離すること、
を更に含む、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(iii)が、骨髄から単球を単離することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記単球がドナー対象由来である、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記DCが、
(i)CD34+造血前駆細胞を、骨髄試料、G-CSF動員末梢血、又は他の組織から、インビトロでDCへ分化させること;又は
(ii)誘導多能性幹細胞(iPSC)をDCヘ分化させること、
により生成される、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記DCが、
a)CD34+造血前駆細胞又は誘導多能性幹細胞からCD1a-/CD14+単球へ、培養により分化させること;
b)ステップ(a)のCD1a-/CD14+単球を単離すること;及び
c)GM-CSF及びIL-4を含む培地中で、十分な時間にわたり培養することにより、前記単離した単球をDCへ分化させること、
により生成され、増加したCD209及び減少したCD14を示すDCが産生される、請求項18~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
(a)前記iPSCが、必要としている前記対象から同種である;
(b)前記iPSCが、限られたMHC分子を発現するように遺伝子改変される;
(c)前記iPSCが、治療される前記対象に適合するMHC分子を発現する;又は
(d)(a)~(c)の組み合わせである、
請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
(a)前記iNKT細胞との共培養の前に、前記DCを培養により抗原と接触させること、
(b)前記DCを抗原と同時に接触させて、前記iNKT細胞と共培養すること;又は
(c)前記iNKT+DCコンジュゲートを、コンジュゲート形成後に前記抗原と接触させること、
を更に含む、請求項18~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗原が、腫瘍抗原、病原性抗原及び超抗原から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、対象から前記iNKT細胞を取得することを更に含む、請求項18~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記iNKT細胞が、誘導多能性幹細胞から分化される、請求項18~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記iNKT細胞を取得する方法が、
(a)(i)末梢血単核球、(ii)骨髄、又は(iii)リンパ球を含むドナー由来の組織、由来のCD1d四量体+CD4+CD3+iNKT細胞を選別すること;及び
(b)前記選別したCD1d四量体+CD4+CD3+iNKT細胞を培養により増幅すること、
を含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が、
前記ステップ(a)の選別ステップの前に、対象の血液試料から末梢血単核球を単離すること、を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、血液試料を遠心処理して、前記末梢血単核球を得ることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(b)が、前記選別されたiNKT細胞を、コンジュゲート化の前に、培養によりiNKT細胞を増殖するための有効量で1種又は複数の刺激剤と共に培養することを含む、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記DCが、前記iNKT細胞に対し同種である、請求項18~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法が、
(a)iNKT細胞を取得すること;
(b)前記iNKT細胞を培養により増幅すること;
(c)前記増幅されたiNKT細胞を貯蔵のために凍結すること;及び
(d)その後に、DCとの共培養の前に、前記凍結したiNKT細胞を解凍すること、
を含む、請求項18~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記iNKT細胞が、
(i)ドナー対象から単離すること;又は
(ii)誘導多能性幹細胞(iPSC)から分化させること、
により得られる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法が、
前記培養物から前記多細胞コンジュゲートを選択すること、
を含む、請求項18~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
抗原に関連する状態の対象を治療する方法であって、有効量の請求項1~16のいずれか1項に記載の多細胞コンジュゲート又は請求項17に記載の組成物を投与して、前記状態を治療することを含む、方法。
【請求項42】
前記多細胞コンジュゲート中のDCが、前記対象への投与の前に、抗原又はそのフラグメントをロードされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記多細胞コンジュゲート中のDCが、抗原に関連する前記状態の対象から得られる、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記状態ががんであり、前記抗原が腫瘍抗原である、請求項41~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記多細胞コンジュゲートが、がんの対象から得られたDCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記多細胞コンジュゲートが、腫瘍抗原又はそのフラグメントをロードされたMHC I又はMHC IIを発現するDCを含む、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記方法が、前記対象にチェックポイント阻害剤を投与することを更に含む、請求項41~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記状態が病原体感染症であり、前記多細胞コンジュゲートが少なくとも1種の病原体抗原又はそのフラグメントをロードされたDCを含む、請求項41~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記病原体が細菌である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記病原体がウィルスである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記病原体が真菌である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記多細胞コンジュゲートが、インビボで前記対象内の免疫原性部位に移動できる、請求項41~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
T細胞の活性化を必要としている対象においてT細胞の活性化をするための方法であって、有効量の請求項1~16のいずれか1項に記載の多細胞コンジュゲート又は請求17に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、T細胞を活性化する、方法。
【請求項54】
前記T細胞が、CD8+T細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
対象内の抗原に対する免疫応答を活性化する方法であって、有効量の請求項1~16のいずれか1項に記載の多細胞コンジュゲート又は請求項17に記載の組成物を前記対象に投与することを含み、前記対象中の前記抗原に対して免疫応答を活性化する、方法。
【請求項56】
前記抗原が腫瘍抗原である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記免疫応答が、CD4+T細胞応答である、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記免疫応答が、CD8+T細胞応答である、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項59】
前記免疫応答が、前記対象内の1種又は複数のサイトカインの増大を更に含む、請求項55~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
請求項1~16のいずれか1項に記載の多細胞コンジュゲートと、抗原に関連する疾患又は状態の治療に使用するための、又は対象の免疫応答を活性化するための説明書とを含むキット。
【請求項61】
前記多細胞コンジュゲート内の前記iNKT細胞及び前記DCが、相互に同種である、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
がんを治療するためのものである、請求項61又は62に記載のキット。
【請求項63】
チェックポイント阻害剤を更に含む、請求項62に記載のキット。
【請求項64】
前記iNKT細胞、前記DC又は両方が、前記状態の治療を必要としている対象に対し同種である、請求項61~63のいずれか1項に記載のキット。
【請求項65】
凍結iNKT細胞と、多細胞コンジュゲートを産生するための説明書とを含むキット。
【請求項66】
前記iNKT細胞を培養により増殖させるための培地及び1種又は複数の刺激因子を更に含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
抗原を更に含む、請求項65又は66に記載のキット。
【請求項68】
前記説明書が、対象から単球を単離する方法及び前記単球をDCに分化させる方法を提供する、請求項61~67のいずれか1項に記載のキット。
【請求項69】
凍結された改変DC集団を更に含み、好ましくは、前記DCが限られたHLA分子を発現するように改変されている、請求項65~67のいずれか1項に記載のキット。
【請求項70】
単球及び/又はDCの単離に使用するための1種又は複数の抗体を更に含む、請求項68又は69に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年10月6日出願の米国特許仮出願第63/088,056号に対する優先権を主張する。この仮出願特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
連邦政府支援研究に関する記載
本発明は、米国国立衛生研究所により認可された研究助成金番号第AI136500号に基づく政府の支援により行われた。米国政府は本発明に対し一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
がん及び慢性ウィルス感染症を含む多くの疾患では、免疫系は、抗原特異的Tリンパ球が抑制されるためにその疾患を除去できない。現在の臨床的免疫療法は、チェックポイント阻害を用いて抑制経路を遮断すること、又はがん細胞を直接死滅させるために、キメラ抗原受容体(CAR-T)細胞などの遺伝子改変細胞溶解性エフェクター細胞を送達することに注力している。CAR-T治療は、患者の細胞を回収し、遺伝子改変し、2~3週間培養して十分な量を生成する必要があるので、煩雑で、時間のかかる治療である。チェックポイント阻害剤療法は、臨床試験でまちまちの結果を示し、更に、抗原特異的ではない。
従って、当該技術分野において、単純、迅速で、効果的な免疫療法に対するニーズは根強くある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞と樹状細胞(DC)との間のインビトロ培養多細胞コンジュゲート(conjugate)を提供する。コンジュゲートは、培養により約30分後に形成され、培養物中で少なくとも24時間(1日間)、好ましくは少なくとも48時間(2日間)、より好ましくは少なくとも96時間(4日間)維持される。
【0004】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の多細胞コンジュゲート及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。
別の態様では、本開示は、インバリアントナチュラルキラー(iNK)T細胞と、樹状細胞(DC)との間の多細胞コンジュゲートを産生する方法を提供し、該方法は、iNKT細胞及びDCを十分な時間にわたり共培養して安定な多細胞コンジュゲートを形成することを含む。
さらなる態様では、本開示は、抗原に関連する状態の対象を治療する方法を提供し、該方法は、有効量の本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物を投与することを含む。
別の態様では、本開示は、本明細書で記載の多細胞コンジュゲート及び抗原に関連する疾患又は状態の治療に使用するための説明書を含むキットを提供する。
さらなる態様では、本開示は、凍結iNKT細胞及び多細胞コンジュゲートを産生する説明書を含むキットを提供する。
別の態様では、本開示は、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞と樹状細胞(DC)との間の安定なインビトロ誘導(in vitrо‐derived)多細胞コンジュゲートを提供し、好ましくは、コンジュゲートは、培養物中で少なくとも30分間維持される。
【0005】
さらなる態様では、T細胞の活性化を必要としている対象に、その方法を提供し、該方法は、有効量の本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物を対象に投与することを含み、T細胞が活性化される。いくつかの態様では、T細胞は、CD8+T細胞である。
別の態様において、本開示は対象内の抗原に対する免疫応答を活性化する方法を提供し、概方法は、有効量の本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物を対象に投与することを含み、対象の抗原に対する免疫応答が活性化される。
他の実施形態及び態様は、本明細書で記載される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】iNKT細胞とDCの組み合わせは、ヒトT細胞の抗原依存性活性化を促進する。末梢血試料を健康な成人対象から採取した。単離単球をインビトロ培養し、実施例に記載のようにDCをインビトロで産生した。DCに対して自家であるT細胞を同じ試料から単離した。CD4+iNKT細胞を実施例に示すように生成し、これは、通常、DCに対し同種であるドナーから産生した。DCを、1:1の比率のiNKT細胞と同時インキュベートしてコンジュゲートの形成を可能としたか、又は単独で培養した。DC含有培養物を、エプスタイン・バール(Epstein-Barr)ウィルス(EBV Ag)、毒素性ショック症候群毒素超抗原(TSST SAg)、又は破傷風トキソイド抗原(TT Ag)を含む、抗原と同時インキュベート、又はモック処理(Agなし)し、次に、DCに対し自家であるT細胞と共培養し、それにより、DCは、培養物中の総細胞の2%を構成した。T細胞増殖性が測定された場合には、T細胞を蛍光染料(例えば、cell trace violet)で事前標識し、細胞分裂を受けたT細胞集団のパーセンテージの分析を可能にした。(A)は、EBV抗原をロードしたiNKT細胞及びDCの組み合わせに対するCD8+(左)及びCD4+(右)T細胞の増殖性応答の経時的増大を示すプロットである。単独のiNKT細胞及びEBV抗原に応答したT細胞増殖性は検出されなかった。
図1B】(B)は、TSST超抗原をロードしたiNKT細胞及びDCの組み合わせに対するCD8+(左)及びCD4+(右)T細胞の増殖性応答の経時的増大を示すプロットである。プロットは、TSST超抗原により特異的に活性化されるサブセットである、Vβ2+T細胞受容体を有するT細胞の応答を示す。
図1C-D】(C)は、DC単独、iNKT細胞とDC混合物、又はリポ多糖活性化DC単独(+LPS)に24時間曝露後に、サイトカインインターフェロンγ(IFNγ)を産生するCD4+T細胞の頻度を示すプロットである。各記号は、独立したT細胞活性化実験を表す。iNKTは、T細胞及びDCに同種であった。(D)は、T細胞活性化を促進するには、少ない頻度のiNKT細胞が必要であるに過ぎないことを示すプロットである。T細胞を、培養物の2%を含む自家DCと共にインキュベートし、iNKT細胞を示した頻度で加え、24時間後にIFNγ産生T細胞の頻度を分析した。
図1E】(E)結果は、iNKT細胞+DCのT細胞活性化効果には、細胞接触が必要であることを示す。T細胞及び自家DCをiNKT細胞とウェル(下室、接触条件)中で一緒に共培養するか、又はT細胞及び自家DCを、トランスウェル膜により分離されたiNKT細胞及びDCに曝露した(上室、分泌因子のみに曝露)。培養物中に分泌されたIFNγの量をELISAにより測定した。
図2A】培養したヒトiNKT細胞と単球由来DCは、強く接着したコンジュゲートを形成する。末梢血試料を健康な成人対象から採取した。単離単球を培養し、単球由来樹状細胞(DC)を産生した。CD4+iNKT細胞を末梢血から単離し、培養により増殖させた。ほとんどの場合、iNKT細胞及びDCは、非血縁血液ドナー由来であった(即ち、相互に同種)。(A)iNKT-DC共培養物中の接着細胞の検出。iNKT細胞及びDCを1:1比率で混合し、一緒に24時間培養した。iNKT+DC共培養由来細胞のフローサイトメトリー分析は、接着細胞内の存在を明らかにし(左下段のプロット、別の光散乱特性を有する集団を示す)、DCにより発現されたマーカー(DC-SIGN)又はiNKT細胞により発現されたマーカー(CD5)の分析は、DC及びiNKT細胞がコンジュゲートを形成したことを示した(右側下段プロット)。
図2B】(B)異種接着の実証。iNKT細胞を青紫色蛍光染料(CTV)で細胞内標識し、DCをフルオレセイン由来色素(CFSE)で細胞内標識した。蛍光標識iNKT細胞及びDCを1:1の比率で一緒に混合し、培地中で24時間インキュベートした後、(結合が弱い細胞をバラバラにするために)細胞を、カルシウムキレート化剤を含む緩衝液中に激しく再懸濁した。プロットは、単独培養DC(中央パネル)及び単独培養iNKT細胞(左パネル)と比較した、iNKT+DC共培養物のフローサイトメトリー分析結果(右パネル)を示す。右プロットのボックス枠のイベントは、両方の蛍光色を有し、従って、iNKT細胞及びDCの強く結合したコンジュゲートを表す。
図2C】(C)は、強く接着した細胞のほぼ全ては、1つのDC及び1つのiNKT細胞からなっている。iNKT細胞及びDCを1:1比率で混合し、24時間共培養した。プロットは、示したiNKT細胞及びDC組成物を含む3回の反復共培養によるiNKT+DCコンジュゲートの、イメージングフローサイトメトリーにより評価したパーセントを示すプロットである。
図2D】(D)培養物内のコンジュゲートの頻度は、添加される因子により調節できることを示す。DCは、ウシ血清を含む標準培地中で培養されるか、又は結合脂質を含むヒト血清アルブミン(HSA)に事前曝露された後、1:1比率でiNKT細胞と同時インキュベートされた。プロットは、フローサイトメトリー分析の結果であり、(A)iNKT-DCコンジュゲートの頻度は、DCがHSAと事前処理される場合に、増大することを示す。
図2E】(E)iNKT細胞は、誘導多能性幹細胞(iPSC)から生成されたDCとコンジュゲートを形成することの実証。iPSCを骨髄単球系統に再分化させた後に、DCを産生するように更に分化させた。iPSC由来DCを1:1比率でiNKT細胞と共に24時間培養し、安定に接着した細胞の頻度をフローサイトメトリーにより評価した。
図3A】iNKT-DCコンジュゲートのインビトロ及びインビボでの耐久性。(A)iNKT細胞を青紫色蛍光染料(CTV)で細胞内標識し、DCをフルオレセイン由来色素(CFSE)で細胞内標識した。蛍光標識iNKT細胞及びDCを1:1の比率で一緒に混合し、培地中で示した時間インキュベートした後、iNKTコンジュゲート化DCの頻度をフローサイトメトリーで測定した。プロットは、iNKT細胞とコンジュゲート化したDCのパーセントは、インビトロで少なくとも96時間維持されることを示す。
図3B】(B)iNKT+DC共培養物の蛍光顕微鏡による画像化は、示した量のインキュベーション時間後に、iNKT細胞(赤)及びDC(緑)のコンジュゲートを示す。
図3C】(C)免疫不全マウスへの投与後に、ヒトiNKT細胞とDCの接着対がインビボで検出できることの実証。CTV(赤色)及びCFSE標識(緑色)iNKT細胞で標識したDCを、24時間培養し、コンジュゲートを生成させた後、混合物を免疫不全マウス系統(NSG)に静脈内注入した。注入の24時間後に組織を収集し、蛍光顕微鏡により接着iNKT-DC対の証拠を分析した。パネルは、iNKT細胞と密接に結合しているDC(黄色矢印)を含むマウス肺の組織を示す。
図3D】(D)注入の24時間後に収集した、マウス脾臓、肺、及び肝臓組織中で検出された単離iNKT細胞、単離DC、及びiNKT-DCコンジュゲートの定量化。
図4A】iNKT+DCコンジュゲートによる共刺激分子の発現上昇。DCをiNKT細胞、又は合成アジュバントGLA(グルコピラノシル脂質アジュバント)と共培養、又はモック処理した後、フローサイトメトリー染色を実施して、共刺激分子又は抗原提示分子の細胞表面発現を検出した。(A)プロットは、独立の実験からの集約結果を示す。これは、iNKT+DCコンジュゲート上の示した分子の表面発現をモック処理DCのそれぞれの発現レベルで正規化したものである(即ち、コンジュゲート化により誘導された共刺激マーカー及び抗原提示分子の発現上昇を示す)。示したマーカーの全てが、モック処理DCに比較して、iNKT+DCコンジュゲート上で有意に発現上昇されている。
図4B】(B)プロットは、独立の実験からの集約結果を示す。これは、共培養の24時間後のiNKT+DCコンジュゲート上の示した分子の表面発現をGLA処理DCの発現で正規化したものである(即ち、合成アジュバントの効果に比べたコンジュゲート化の効果の比較)。従来の共刺激分子(CD80、CD86、CD83)及びクラスII MHC分子(HLA-DR)は、iNKT+DCコンジュゲート上で、GLA処理DCと類似のレベルで発現されるが、クラスI MHC分子(HLA-ABC)及び一連の異常共刺激分子は、GLA処理DC上よりも、iNKT+DCコンジュゲート上で有意により高いレベルで発現される。
図4C-D】(C)プロットは、PD-L1(抑制分子、別名「チェックポイント」リガンド)の発現レベルは、GLA処理DC上よりも、iNKT+DCコンジュゲート上で約50%少ないことを示す。(D)DC単独、iNKT+DC共培養、又はiNKT細胞単独からの培養上清のIL-12p70(T細胞によるTH1応答を促進することが知られているサイトカイン)、又はIFNγ(Th1サイトカイン)の濃度を試験した。結果は、iNKT-DC共培養で両サイトカインが分泌されることを示す。
図5A】iNKT細胞及びDCはそれぞれ、コンジュゲートの共刺激プロファイルに寄与する。(A)ImageStream測定器を用いて分析したiNKT+DC共培養による蛍光染色コンジュゲート化細胞のイメージングフローサイトメトリー分析は、iNKT細胞及びDCにより発現されたマーカーを示した。iNKTはCD70を発現したが、DCは発現せず、一方、DCは他の共刺激分子を発現したが、iNKT細胞は発現しなかった。
図5B】(B)プロットは、2~3週間の培養により増殖させたiNKT細胞(培養iNKT細胞)上のレベル又はDCにコンジュゲート化したiNKT細胞(コンジュゲート化iNKT細胞)に比べて、新たに単離したヒト脾臓(一次iNKT細胞)由来のiNKT細胞上に発現したCD70のレベルを示す。CD70は、一次iNKT細胞上に比べて、培養iNKT細胞上で有意に発現上昇しており、いくつかの事例では、iNKT細胞がDCとコンジュゲートを形成した場合は、更に発現上昇するように見える。
図6A】重要な共刺激分子は、コンジュゲート化細胞上で選択的に上方制御され、上方制御発現は、インビトロで少なくとも96時間維持される。(A)示したマーカーが、同じ培養で、非コンジュゲート化DC上に比べて、iNKT+DCコンジュゲート上で上方制御されている程度の比較。従来の共刺激分子(CD80、CD86、CD83)は、わずかに増大したが、一方、一連の厳密に調節された共刺激分子(CD70、4-1BBL、OX40L、及びIL-15Rα)は、コンジュゲート上で大幅に上方制御される。
図6B】(B)プロットは、重要な共刺激分子の上方制御発現は、iNKT+DCコンジュゲート上で、インビトロで少なくとも96時間維持されることを示す。
図7A】iNKT+DC混合物の抗腫瘍効果。ヒトTリンパ球による抗腫瘍応答を促進するiNKT細胞+DCの能力を、ヒト化マウスリンパ腫モデルを用いて試験した。ヒト臍帯血単核球(Bリンパ球、Tリンパ球、単球、及びDCを含む)は、エプスタイン・バールウィルス(EBV、B細胞リンパ腫の形成を促進するヒト細胞特異的γ-ヘルペスウィルス)に短時間曝露される。EBV暴露細胞は、免疫不全マウスの腹腔内に注入される。これは、3週以内に腹膜腔中でヒトB細胞リンパ腫の形成をもたらす。腫瘍は通常、膵臓、肝臓、胆管などの臓器を侵襲する。多くのヒトがんと同様に、T細胞は抑制され、腫瘍を死滅させることができない。(A)iNKT細胞+DCは、Tリンパ球による特異的殺作用を促進する。ヒトT細胞は、28日後に、腫瘍を発症したマウス(左プロット)、又は非感染臍帯血単核球を注入され、腫瘍がなかったマウスから(EBVにナイーブ、右プロット)採取された。T細胞を、自家DC、又は自家DC及び同種iNKT細胞と混合し、IncuCyte生細胞イメージング測定器を用いて自家標的細胞の殺傷をインビトロで試験した。プロットは、反復試験試料による標的細胞の経時的特異的溶解を示す(略号及びエラーバーは、平均及び標準偏差である)。
図7B】(B)iNKT細胞+DCの投与は、インビボでの腫瘍除去を促進する。マウスにEBV処理ヒト臍帯血単核球を注入し、ヒトB細胞リンパ腫の形成をインビボで促進した。25日後、マウスにiNKT細胞単独、自家DC単独、iNKT細胞+自家DCの1:1混合物を静脈内に注入、又は無菌緩衝液(ビークル)によるモック治療を実施した。6日後、マウスを安楽死させ、全ての目視可能な腫瘍組織を腹膜腔から切り取った。プロットは、腫瘍量を示し、各記号は個別のマウス由来の結果を表す。
図7C】(C)ヒトEBV促進リンパ腫モデルマウスからの膵臓組織の組織学的切片。左の画像は、ビークル処理マウスからの組織を示し、膵臓は、リンパ腫細胞により大きく侵襲されている。右の画像は、マウスの特定のiNKT細胞及びDC由来の組織を示し、以前に腫瘍に侵襲されていた可能性の高い膵臓の領域は、リンパ腫細胞が取り除かれたように見える。
図7D】(D)3匹のiNKT+DC処理マウス及び3匹のビークル処理マウスからの脾臓組織のヒト免疫関連遺伝子の発現プロファイルを試験した。iNKT+DC混合物を受けたマウス中の種々の遺伝子が有意に発現上昇した(赤色バー)が、一方、これらは、ビークルを受けたマウス中では、下方制御された。iNKT+DC混合物を受けたマウス中で、より少ない数の遺伝子が、有意に下方制御された(青色バー)が、ビークルを受けたマウスで発現上昇した。iNKT+DCでは、発現上昇群は、T細胞活性化に関連する同義遺伝子であったが、一方、iNKT+DC処理後に下方制御された群は、EBV感染B細胞に関連する遺伝子を含んだ。
図7E】(E)EBV促進B細胞リンパ腫担持マウスは、25日後に、マウス中でEBV感染B細胞及びT細胞に対し同種(allo)又は自家(autol)であるDCと組み合わせたiNKT細胞を静脈内注入された。プロットは、各個別のマウスの腫瘍量を示す。NSは、iNKT細胞及び及び同種DCの投与後に腫瘍量の有意な減少がないことを示す。一方、iNKT細胞及び自家DCの投与は、有意な(P=0.0025)腫瘍量の減少を生じる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、本明細書においては、「多細胞コンジュゲート」、「iNKT+DCコンジュゲート」又は「コンジュゲート」と呼ばれる、ヒトインバリアントナチュラルキラー(iNKT細胞)と樹状細胞(DC)との安定で耐久性のある多細胞コンジュゲート(接着対)を調製する方法、及びその調製物に関する。本発明は、ヒトT細胞を活性化するために、及び抗原特異的応答及び免疫応答を促進するために、コンジュゲートを用いる方法に更に関する。
【0008】
本明細書で記載の多細胞コンジュゲートは、インビトロで人為的に操作されて、iNKTとDC細胞の細胞-細胞接着対が形成される。本明細書記載の方法は、多細胞コンジュゲートが、インビトロ組織培養の培養の約30分後に形成され、リゾリン脂質を含むヒト血清アルブミン(HSA)の培養条件への添加が、コンジュゲートの数を増大させ、これは、インビトロで形成されるコンジュゲートの数の増大を可能にすることを示す。何らかの理論に束縛されるものではないが、より多くのコンジュゲートをインビトロで形成する能力は、インビボ適用に使用される多細胞コンジュゲートの効力に寄与でき、効果的療法に必要な細胞の数を減らすことができる。実施例で更に示すように、これらのコンジュゲートは、培養物中で少なくとも24時間維持され、培養物中で少なくとも96時間後に、まだ接着されたままであることが示された。更に、実施形態は、これらの多細胞コンジュゲートが、インビボ投与後に接着したまま残り得ることを示し、投与の少なくとも24時間後にインビボで検出されることが実証された。これらの多細胞コンジュゲートは、インビボで対象内の投与の部位から活性部位へ移動できる。
【0009】
多細胞コンジュゲート中のDCは、本明細書で記載の1種又は複数の共刺激分子及びHLAを発現する。多細胞コンジュゲート中のiNKT細胞は、CD70共刺激分子を発現し、これは、一次iNKT細胞上には通常認められない。iNKT細胞とDCの組み合わせは、刺激サイトカインを生成し、従って、複数の強力な活性化シグナルをT細胞に与えるインビトロ改変複合体を構成する。
【0010】
本明細書で記載の安定な多細胞コンジュゲートは、インビトロ及びインビボの両方で、耐久性のある強い接着性を有するように開発された。用語「安定な」は、「強く接着した」、「堅固な接着」、及びコンジュゲートに対する「耐久性のある」と同義に使用され、一定期間にわたり(例えば、インビトロ培養中)相互に接着したまま残るiNKT-DCコンジュゲートの能力を意味する。コンジュゲートは、カルシウム及びマグネシウム不含で、2mMのEDTAを含むリン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液に10分間~1時間にわたり曝露された後に、及び/又は激しいピペット操作及び遠心分離に付随する剪断力に晒された後に、安定に結合したまま(又は、強く接着したまま)残る。安定なコンジュゲートは、更に、インビトロ及びインビボの両方中で維持できる。コンジュゲートは、インビトロ培養物中で24~96時間にわたり、及びインビボ投与後、少なくとも24時間にわたり、相互に接着したままであり得る。従って、用語の「安定な」は、コンジュゲートとして、少なくとも24~96時間にわたり維持されるコンジュゲートの能力を包含する。多細胞コンジュゲートは、実施例で示すように、抗原依存性CD8+T細胞(細胞傷害性T細胞と呼ばれることも多い)及びCD4+T細胞(ヘルパーT細胞と呼ばれることも多い)を活性化する。従って、本開示は、これらの新しく開発したiNKT-DC多細胞コンジュゲートの製造方法及びこれらを含む組成物を提供する。
【0011】
調製物を作成するために、ヒトiNKT細胞は、ヒト樹状細胞(DC)とインビトロで組み合わされる。T細胞と接触時に(例えば、対象への投与後に)抗原特異的免疫応答を誘発するためのiNKT+DCコンジュゲートの能力を促進するために、下記の方法で詳述されるように、DCは、iNKTとのコンジュゲート化の前に、その間に、又はその後に、抗原に曝露され、抗原をロードされ得る。一実施形態では、DCは、インビトロで抗原と接触させられ、ロードされたDC(即ち、抗原又はそのフラグメントを提示しているDC)はその後、iNKT細胞と培養されて、iNKT+DCコンジュゲートが形成される。別の実施形態では、DCは、抗原及びiNKT細胞と共に同時にインキュベートされて、iNKT+DCコンジュゲートが形成される。別の実施形態では、iNKT+DCコンジュゲートは、抗原とのインキュベーションの前に形成され、それにより、抗原は、iNKT+DCコンジュゲート内のDC上にロードされる。これらの異なる方法は、既知の抗原を用いたiNKT+DC細胞の特異的抗原ローディングを可能にする。この抗原ロードiNKT+DCコンジュゲートは、対象に投与された場合、対象中で抗原特異的免疫応答、特に抗原特異的T細胞応答を誘発できる。I型又は古典的なNKT細胞としても知られる、iNKT細胞は、以下に詳述する利用可能な方法を用いて、健康な対象の血液から単離し、組織培養で増殖できる。DCは、以下に詳述する利用可能な方法を用いて、新たに単離した単球を分化させることにより、又は多能性幹細胞又は造血前駆細胞から分化させることにより、組織培養で生成できる。いくつかの実施形態では、iNKT+DCコンジュゲート化細胞は、調製中の非コンジュゲート化細胞から更に選択又は分離して、純粋な多細胞コンジュゲート調製物を得ることができる。いくつかの実施形態では、選択又は分離ステップは必須ではない。理由は、本明細書で記載のように、精製ステップなしで対象への使用及び投与のために十分な、インビトロ培養で形成されたコンジュゲートが存在するためである。これらの多細胞コンジュゲート調製物は、限定されないが、がん、病原体感染症などを含む抗原に関連する状態を治療するために使用し得る抗原特異的免疫応答を誘発する。
【0012】
企図される別の実施形態では、iNKT+DCコンジュゲートは、インビボで、抗原、例えば、iNKT+DCコンジュゲートの抗原を含む部位への局所投与(例えば、腫瘍の内部、骨髄、皮内、感染症部位など)に曝露される場合がある。これは、インビボ由来抗原に特異的な免疫応答を刺激するように、iNKT+DCコンジュゲートによる抗原物質のインサイツ取り込みを可能にする。
【0013】
それらの表面上では、多細胞コンジュゲートは、Tリンパ球の効率的活性化に必要な、CD80及びCD86共刺激分子及びMHC分子などの種々のリガンドを発現し、これらのリガンドは、活性化されなかったDCの表面上よりも高いレベルで存在する。更に、コンジュゲートは、合成アジュバント(グルコピラノシル(glucopuranosyl)脂質アジュバント、GLA)で処理された非コンジュゲート化DCに比べて、(iNKT細胞上の)共刺激リガンドCD70及び4-1BBL(CD137L)、OX40L(CD134L)、及びIL-15受容体アルファ鎖(CD215)、又はこれらの組み合わせのより高い発現、及び阻害性リガンドPD-L1のより低い発現を示す。更に、iNKT+DCコンジュゲートは、接触依存性方式で、抗原特異的ヒトT細胞を活性化する。この抗原特異的T細胞活性化は、抗原に関連する状態を治療する、例えば、対象中の腫瘍細胞を減らす、抑制する又は除去する。実施例で示すように、エプスタイン・バールウィルス(EBV)誘導B細胞リンパ腫のヒト化マウスモデルへのコンジュゲートの投与は、腫瘍塊を除去し、iNKT+DCコンジュゲートへの曝露は、インビトロで標的細胞を死滅させるために、EBV誘導リンパ腫担持マウス由来のT細胞を選択的に生じさせた。
【0014】
本明細書で記載の、及び本明細書の方法により産生された多細胞コンジュゲートは、次記の特性の1つ又は複数を有し得る。多細胞コンジュゲート中のiNKT及びDC細胞は、形成後、インビトロで、少なくとも24時間にわたり、好ましくは少なくとも2日間(48時間)にわたり、より好ましくは少なくとも4日間(96時間)にわたり強く結合したまま残る。多細胞コンジュゲートは、2つ~3つの細胞を含むのが好ましく、更に、1つのiNKT細胞と1つのDCを含むのが好ましい。本明細書で記載の多細胞コンジュゲートは、インビトロで、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも4日間にわたり、コンジュゲート上に1種又は複数の共刺激分子の発現を維持する。多細胞コンジュゲートは、高レベルのCD70を発現するiNKT細胞、及び本明細書で記載の1種又は複数の他の共刺激分子/リガンドを発現しているDCを含む。これらのコンジュゲートを生成するために使用されるiNKT細胞は、それらの細胞表面上にCD70をほとんど又は全く発現しない一次iNKT細胞とは異なる。本明細書で記載の多細胞コンジュゲート上の、CD70発現及び1種又は複数の共刺激分子(CD215、CD137、CD252、CD80、CD86など)の組み合わせは、対象から単離された細胞上には認められず、本発明の多細胞コンジュゲートに特有である。コンジュゲートは、iNKT細胞とDC細胞の培養物中での約30分間以上の共培養により形成でき、その後、少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも96時間にわたり強く結合したまま残る。
【0015】
多細胞コンジュゲート中に使用されるiNKT細胞は、それらが、非多形性抗原提示分子であるCD1dを認識するので、同種及び自家免疫療法の両用途に好適する。iNKT細胞は、凍結させて、後で使用するために貯蔵できるので、本発明はまた、新規細胞免疫療法を提供し、この場合、コンジュゲーション対応の「既製の」同種iNKT細胞が、単球又は治療が必要な個別の対象由来の他の細胞から必要に応じ生成されるDCとのコンジュゲート化のために提供される。あるいは、iNKT細胞は、特異的MHC型(即ち、HLA型)を発現するように選択又は改変された誘導多能性幹細胞(iPSC)由来のDCにコンジュゲート化され、従って、個別の対象から収集された生体物質を必要としない完全に「既製の」試薬を許容し得る。このようにして調製されたiNKT+DCコンジュゲートは、以下に詳述のように、1種又は複数の抗原(例えば、腫瘍細胞抗原又は病原性抗原)をロードし、患者のT細胞を活性化するための細胞免疫療法剤として投与できる。
【0016】
本発明は、現在の免疫療法に優る利点を提供する。(1)本発明は、T細胞を活性化し、同時に、チェックポイント阻害戦略がT細胞抑制経路を妨害する;従って、2つの手法は、相乗的に作用することが予測される。(2)本発明の治療作用モードは、抗原特異的であり、一方、チェックポイント阻害戦略は抗原特異的ではない;従って、この戦略は、不適切なT細胞活性化から生ずる病態をもたらす可能性が少ないと予測される。(3)本発明は、CAR-T細胞の生成の場合に必要になるような、レシピエントの細胞の遺伝子改変を必要としない。(4)本発明のiNKT+DCコンジュゲートは、ただの数日で調製でき、CAR-T細胞の治療薬量を生成するのに通常必要な数週間より遙かに迅速である。(5)本発明は、比較的少数の対象からの一次細胞しか必要としない。理由は、抗原をロードしたDCは、高度に効率的なT細胞活性化剤であるためである。
【0017】
多細胞コンジュゲートの産生方法
本開示は、iNKT細胞とDCとの間の多細胞コンジュゲートを産生する方法を提供し、該方法は、iNKT及びDCを選択的に配合された培地中で、安定な多細胞コンジュゲートを形成するために十分な時間にわたり共培養することを含む。iNKT細胞は、培養物中(例えば、37℃、5%CO2)で少なくとも15分間、好ましくは少なくとも30分間、あるいは少なくとも1時間DCと混合され、更に、培養物中に、2日間(48時間)以上、あるいは、4日間(96時間)以上、そのままで残すことができる。iNKT細胞及びDCは、多細胞コンジュゲートを産生するために、好適な比率、例えば、5:1~1:1のiNKT:DC比率で共培養される。この方法で使用されるiNKT細胞は、脂質抗原(α-ガラクトシルセラミド又は種々の関連化学化合物の1つ)をロードした組換え型CD1d分子の結合により特定される適切に再編成されたT細胞受容体の発現により、又は特異的モノクローナル抗体(例えば、クローン6B11(BioLegendで商業的に入手できる、例えば、Rout N,et al.2010.PLoS One 5:e9787.(FC)も参照されたい))及びCD4共受容体の同時発現により測定して、実質的に純粋な(例えば、95%超)CD4+iNKT細胞集団であることが適切である。
【0018】
いくつかの実施形態では、iNKT細胞集団中で、95%、98%、99%超の細胞がiNKT細胞であり、好ましくは、100%を含む、99%超がiNKT細胞である。好適なiNKT細胞集団は、下記で考察される。
この方法で使用されるDCはまた、実質的に純粋な集団(95%超)のDCであるのが適切である。DCのキャラクタリゼーションは、MHCクラスI又はMHCクラスII分子の発現、1種又は複数のDCマーカー又はDC上で見つかる共刺激分子(例えば、CD209、CD86、CD80など)、及び非DC上で見つかるマーカーの低発現、例えば、CD14(単球マーカー)の低発現を含み得、以下でさらなる詳細を説明する。いくつかの実施形態では、DCは、少なくとも98%純粋、あるいは、100%純粋を含む、少なくとも99%純粋である。
【0019】
iNKT-細胞コンジュゲートは、好ましくは2つ~3つの細胞を含み、好ましくは、2つの細胞、1つのiNKT細胞と1つのDCを含む。
iNKT細胞及びDCは、安定なコンジュゲートを形成する少なくとも20%のiNKT細胞及びDCを生じる条件でコンジュゲート化されるのが好ましい。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、例えば、サイズにより、又は本明細書で記載の他の方法により、非コンジュゲート細胞から選択される必要があり得る。
【0020】
樹状細胞
DCは、骨髄中に起源に持つ抗原提示骨髄及び形質細胞様白血球の異種集団であり、又はいくつかの事例では、インビボで循環前駆細胞集団(例えば、単球)から分化され得る。DCは、抗原性のタンパク質を捕捉及びプロセッシングした後、MHC分子により、それらの表面上に提示するために、タンパク質をペプチドに変換し、それにより、ペプチド抗原は、T細胞受容体(TCR)により認識できる。これは、DCの抗原ロードと呼ばれる(即ち、DCの表面上のMHC分子上の抗原又はそのフラグメントの提示)。
【0021】
1種又は複数の特異的抗原を提示しているDCを含むiNKT+DCコンジュゲートは、次に、対象内の抗原特異的T細胞を活性化するために使用できる。好適な抗原は、以下で考察される。DCは、血液又は骨髄(BM)試料から単球を得た後、それらを特異的サイトカインと共に培養して、単球をDCに分化させることにより、インビトロで導き得る。
あるいは、樹状細胞は、当該技術分野において既知の方法による誘導多能性幹細胞(iPSC)又は造血前駆細胞の分化から導き得る。
【0022】
特質上、本明細書で記載の多細胞コンジュゲートで使用するためのDCは、本明細書で記載の1種又は複数のDCマーカー又は共刺激分子に加えて、主要組織適合抗原(MHC)クラスI又はMHCクラスII分子を発現する。好ましくは、一実施形態では、DCは、それらの表面上に、MHCクラスI及びMHCクラスIIマーカーのいずれか又は両方の増大した発現を有し得る。例えば、DCは、増大したMHC分子及び樹状細胞に関連する1種又は複数のマーカー(例えば、CD209(DC-SIGN)、CD1a、CD1b、又はCD1c)を発現し、CD80及び/又はCD86共刺激分子の発現を高め、単球及びマクロファージ上で高められているマーカーをほとんど又は全く発現しない(例えば、CD14、CD68)。更に、DCは、他の白血球のマーカー(例えば、CD19(B細胞)、CD3(T細胞)、CD56(NK細胞))に陰性である。従って、いくつかの実施形態では、樹状細胞は、CD80、CD83、CD86、CD134L(OX40L)、CD137L(4-1BBL)、CD215(IL-15Rα)及びこれらの組み合わせから選択される1種又は複数の共刺激マーカーを発現し得る。DC上に発現される他の共刺激分子は、当技術分野において既知であり、本明細書で企図される。DCは、一次リンパ球に比べて、それらのわずかに大きなサイズで知られ、平滑な(高度にざらざらではない)細胞質を有する。それらは細胞表面で複数の突出部(樹状突起)を提示し、極わずかに接着性である(即ち、高度に接着性ではなく、組織培養プレートの表面上に引き延ばされているか、又は水平になっている)。いくつかの実施形態では、DCは、CD209及び低レベルのCD14を発現する。いくつかの実施形態では、DCは単球由来であり、CD209を発現し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「主要組織適合抗原又はMHC」という用語は、T細胞活性化のために、細胞内由来のペプチドフラグメント及びタンパク質を提示するように機能するDCの表面上に見出される分子を意味する。ヒトでは、ヒト白血球抗原(HLA)タンパク質は、主要組織適合抗原(MHC)遺伝子複合体によりコードされるタンパク質である。従って、本明細書で使用される場合、「MHC」という用語は、ヒトのHLA分子を包含する(即ち、MHC Iは、HLAクラス1(HLA A、B、及びC)を包含し、MHC IIは、ヒトのHLA DP、DQ及びDRを包含する)。いくつかの好ましい実施形態では、DCは、MHCクラスIタンパク質(例えば、ヒト細胞上のHLA A、B及びCタンパク質)又はMHCクラスIIタンパク質(例えば、ヒト細胞上のHLA DR、DP、DQタンパク質)のいずれか又は両方の増大した細胞表面発現を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、DCは、コンジュゲート化iNKT細胞に対し同種である。他の実施形態では、DCは、コンジュゲート化iNKT細胞に対し自家である。更に他の実施形態では、DCは、治療を必要としている対象に対し自家であり、コンジュゲート化iNKT細胞は、治療を必要としている対象に対し同種である。更に他の実施形態では、DC及びコンジュゲート化iNKT細胞は、両方とも、治療を必要としている対象に対し同種である。治療される対象に応じて、DCは同種であり得るが、しかし、治療対象に対し、部分的に又は完全にHLA適合され得る。あるいは、DCがiPSC由来である場合、DCは、限定的なHLAアロタイプを発現するように改変され、治療対象に適合するように選択され得る。
【0025】
本発明で使用されるDCは、単球由来であり得る。DCは、単球をDCに分化させるのに十分な時間にわたり好適な培地中で培養することを含む方法により単球から得ることができる。例えば、単球は、単球をDCに分化させるのに十分な量の組換えヒトGM-CSF及び組換えIL-4を含む培地中で、培養されるCD14+単球であり得る。単球のDCへの分化は、当技術分野において既知のように、例えば、CD14(単球マーカー)の発現の減少、1種又は複数のDCマーカーの発現の増大(例えば、CD209、CD1a、CD1b、又はCD1c発現、CD80、CD83、CD86、MHC IIの上昇)、又は非DCマーカー、例えば、B細胞マーカー、T細胞マーカーなどの発現の欠如、又はこれらの組み合わせにより、特徴付けることができる。単球は、GM-CSF及びIL-4の存在下で少なくとも2日間、あるいは、少なくとも3日間培養され得るのが適切である。DCは、当該技術分野において既知の方法、例えば、抗DC抗体(例えば、抗CD209)、抗CD80又はCD86抗体を用いて、磁気ビーズ又はフローサイトメトリーソーティングにより、及びいくつかの実施例では、他のマーカー(CD14-、CD19-、CD3-、CD56-など)の欠如により、培養物から更に選別され得る。例えば、CD209+CD14-細胞が、培養単球から単離され得る。
【0026】
単球は、当該技術分野において既知の方法により得られる。一実施形態では、単球は、血液試料から単離され得る;特に単球は、血液試料由来の末梢血単核球から単離できる。末梢血単核球(PBMC)は、丸い核を有するいずれかの末梢血細胞、例えば、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)及び単球である。PBMCは、血液試料から当該技術分野において既知の方法により、例えば、フィコール(GE Healthcareの商標)などの親水性ポリサッカライド、又はLymphoprep(StemCell Technologiesの商標)を用いて、血液試料を層、特に、血漿の最上層、続いて、PBMCの層及び多形核細胞底部画分(即ち、好中球及び好酸球)及び赤血球に分離させる密度勾配遠心分離により、血液試料から単離できる。単球は、限定されないが、例えば、他の細胞型を取り除くためのロゼット遠心分離、接着メッキ(adherence plating)(単球はプラスチックに接着するが他のリンパ球は接着しない)、及び単球特異的抗体を用いた(例えば、抗CD14抗体を用いた)細胞の磁気又は蛍光選別などの当該技術分野において既知の方法によりPBMCから更に単離できる。いくつかの実施形態では、CD14+単球が、磁気選別又はフローサイトメトリーによりPBMCから単離される。単球はまた、それらの光散乱(前方及び側方散乱)特性に基づいて、CD14、CD11b又はCD11cを用いて染色して、フローサイトメトリー選別より、又は赤血球と望ましくないPBMCとの間で、当技術分野において既知の、フィコール又はLymphoprepを用いた勾配遠心分離により除去できるロゼットを形成させて、ネガティブ選択することにより単離され得る。いくつかの実施形態では、単球は、CD1a-/CD14+単球である。例えば、限定されないが、CD1a-/CD14+単球は、例えば、抗CD14-Ig結合磁気マイクロビーズ(MACS CD14 マイクロビーズ、ヒト(130-050-201);Miltenyi Biotec,Germany)を用いてポジティブ選択により、又はネガティブ枯渇(MACS単球単離キットII、ヒト(130-91-153);Miltenyi Biotec,Germany)により、単離できる。
【0027】
本明細書で使用されるDCは、当該技術分野において既知の成長因子の種々の組み合わせを用いて、単球から分化させることができる。単球を樹状細胞に分化させるために好適な成長因子には、限定されないが、例えば、特に、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、組換えヒトIL-4、及びこれらの組み合わせが挙げられる。DCはまた、CD34+造血幹細胞又は前駆細胞(HSPC)から、又は多能性幹細胞、例えば、当該技術分野において既知の方法による胚性幹細胞又は誘導多能性幹細胞から導き得る。前駆体細胞もまた、当技術分野において既知のように、骨髄から単離され、DCに分化させ得る。CD34+HSPC由来のDCを分化する好適な方法は当技術分野において既知であり、Bedke N,Swindle EJ,Molnar C,Holt PG,Strickland DH,Roberts GC,Morris R,Holgate ST,Davies DE,Blume C.A method for the generation of large numbers of dendritic cells from CD34+ hematopoietic stem cells from cord blood.J Immunol Methods.2020 Feb;477:112703.doi:10.1016/j.jim.2019.112703.Epub 2019 Nov 9.PMID:31711888;PMCID:PMC6983936,及びCurti A,Fogli M,Ratta M,Tura S,Lemoli RM.Stem cell factor and FLT3-ligand are strictly required to sustain the long-term expansion of primitive CD34+DR- dendritic cell precursors.J Immunol.2001 Jan 15;166(2):848-54.doi:10.4049/jimmunol.166.2.848.PMID:11145659、が挙げられる。これらの文献の内容は、DCを分化する方法に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。誘導多能性幹細胞からDCを分化させる好適な方法は、当技術分野において既知であり、例えば、Choi KD,Vodyanik M,Slukvin II.Hematopoietic differentiation.2012 Jun 10.In:StemBook [Internet].Cambridge(MA):Harvard Stem Cell Institute;2008-.PMID:23658971,Choi KD,Vodyanik M,Slukvin II.Hematopoietic differentiation and production of mature myeloid cells from human pluripotent stem cells.Nat Protoc.2011 Mar;6(3):296-313.doi:10.1038/nprot.2010.184.Epub 2011 Feb 17.PMID:21372811;PMCID:PMC3066067,Vodyanik MA,Slukvin II.Directed differentiation of human embryonic stem cells to dendritic cells.Methods Mol Biol.2007;407:275-93.doi:10.1007/978-1-59745-536-7_19.PMID:18453262、並びに米国特許第7,811,821号、同第8,846,395号及び同第8,435,785号、に記載の方法が挙げられる。これらの文献の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。誘導多能性幹細胞は、対象から導きかれ得、いくつかの実施形態では、対象は、ドナー対象であり得る。いくつかの実施形態では、iPSC由来DCは、限定的なHLAアロタイプを発現するように更に遺伝子改変され、治療される対象のHLAに適合するように選択される。他の実施形態では、対象は、本明細書で記載の多細胞コンジュゲートを用いて治療される抗原に関連する状態を有し、従って、DCは、治療される対象に対し自家である。
【0028】
単離DCは、iNKT細胞と共培養及び多細胞コンジュゲートの形成の前に、その間に、その後に、培養物中で抗原と共にインキュベートされるか、又は抗原と接触させられる。一実施形態では、DCは、iNKTとのコンジュゲート化の前に、抗原と共にインキュベートされる。別の実施形態では、DCは、抗原及びiNKT細胞と共に同時にインキュベートされて、コンジュゲートが形成される。さらなる実施形態では、iNKT+DCコンジュゲートが形成され、続けて、対象に投与される前に、抗原に曝露される。DCは、抗原の由来源をロードされ、DCによるその表面上での、抗原又はそのフラグメントのプロセッシング及び提示を可能にする。DC表面上のこの抗原の提示により、T細胞との接触時に、対象の抗原特異的T細胞集団を活性化できる。用語の抗原の「ロード」は、抗原と接触時に、DCが、DC表面上で抗原又はそのフラグメントを(主要組織適合抗原(MHC)クラスI又はII分子への結合を介して)取り込む、プロセッシングする及び発現又は提示する工程を意味する。抗原は、DCにより取り込まれ、プロセッシングできる任意の好適な形態でDC培地に添加され得る。例えば、抗原は、特に、抗原(例えば、腫瘍細胞)、全タンパク質、抗原発現細胞から直接的に導かれた又は組換えで産生された全タンパク質、合成ペプチドもしくは分子を発現する全体又は部分不活化細胞の形態であり得る。いくつかの実施形態では、抗原は、DNA/RNA構築物を用いて送達され、ペプチド又はDCによるタンパク質の合成及び発現を可能にし得る(例えば、DC内で抗原タンパク質又はペプチドに翻訳できる外来性のポリヌクレオチドを含む改変DC)。好適な外来性のポリヌクレオチドを導入する方法は、当技術分野において既知であり、これには、限定されないが、ウィルス形質導入、DNA/RNA遺伝子導入が含まれ、プラスミド、ベクター、又は他のポリヌクレオチド配列の形態であり得る。次に、DCは抗原又はそのフラグメントを、その表面に輸送し、しばらくの間維持されるMHC分子中にロードし、抗原提示DCを生じる(これは、「抗原ロード」DCとも呼ぶことができる)。培養によりDCにロードする方法は、当技術分野において既知であり、当業者により実施できる。使用に好適な抗原は、対象の治療される状態に応じて、使用方法セクションで下記される。
【0029】
iNKT細胞
iNKT細胞は、対象から、例えば、末梢血から単離できる。iNKT細胞は、血液中では希であり、通常、末梢血単核球(PBMC)の約0.01~1%のみを含む。しかし、本発明で使用されるiNKT細胞は、血液又は他の組織、例えば、健康なドナー由来の血液試料から得て、後述のように、エクスビボの組織培養で増殖できる。代替実施形態では、iNKT細胞は、多能性幹細胞から分化させることができる。
【0030】
ヒトiNKT細胞及びT細胞ではない特定のリンパ球(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞)は、いくつかの細胞表面分子を共有するが、iNKT細胞は、選択的にTRBV25(Vβ11としても知られる)を含むTCRβ鎖と結合したTCRα鎖(TRAV10-TRAJ18、Vα24-Jα18としても知られる)から構成されるセミインバリアントαβT細胞受容体(TCR)を発現する別のT細胞集団である。従来のT細胞は、主要組織適合抗原(MHC)分子により提示される抗原を認識するが、iNKT細胞は、CD1d、非多形性MHCクラスI様分子により提示される脂質又は糖脂質抗原を認識する。特質上、iNKT細胞は、一般にTリンパ球上に認められる1種又は複数のマーカー(例えば、CD2、CD3、CD5)を発現するが、CD19などのB細胞マーカーを発現しない。iNKT細胞を特定するのに使用されるマーカーの表面発現を検出するために好適する既知の方法には、限定されないが、フローサイトメトリーが含まれる。iNKT細胞はまた、α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)、糖脂質、及び糖部分の異常な構造を含む関連化合物を認識し、それらにより強力に活性化されることを特徴とする。
【0031】
対象からiNKT細胞を得る方法は、当技術分野において既知であり、例えば、iNKT細胞を対象から(血液試料により)単離されたPBMC由来のiNKT細胞を分離することを含む。iNKT細胞を単離する好適な方法は当技術分野において既知であり、例えば、iNKT細胞により使われるセミインバリアント型のTCRを特異的に認識する抗体で、又はα-GalCer又は関連脂質をロードした組換えCD1d分子で細胞を標識し、iNKT細胞をPBMC内の他の細胞から選別(例えば、磁気細胞選別又はフローサイトメトリーセルソーティングにより)することによる方法が既知である。例えば、下記実施例で記載のように、対象から得られたPBMC試料を市販で得られるCD3、CD4、CD19、脂質ロード組換えCD1d試薬(例えば、ヒトCD1d PBS-57 PE、「CD1d-四量体」と呼ばれる)、又はこれらの組み合わせに対する蛍光標識抗体で標識し、CD4+CD3+CD1d-四量体+iNKT細胞(例えば、CD4、CD3、及びCD1d四量体に対し陽性染色細胞)で選別(例えば、フローサイトメトリーにより選別)できる。単離されると、CD4+CD3+CD1d-四量体+iNKT細胞集団は、実質的に純粋な(例えば、95%超純粋な、好ましくは98%超純粋な、あるいは、少なくとも99%純粋な)CD4+iNKT細胞集団である。
【0032】
単離されると、iNKT細胞は、エクスビボで増殖できる。iNKT細胞をエクスビボで増殖する方法は、当業者に理解されている。例えば、iNKT細胞が対象由来のPBMCから単離された後、iNKT細胞は、iNKT細胞を活性化して増幅できる1種又は複数の刺激剤の存在下で培養される。iNKT細胞を許容できる好適な刺激剤は、当技術分野において既知である。例えば、一実施形態では、非増殖性フィーダー細胞(iNKT細胞に対して自家又は同種の細胞を含む)及びIL-2を含む培地中のT細胞受容体にシグナルを送る薬剤が、iNKT細胞を増殖させる1種又は複数の刺激剤として使用される。例えば、脂質をロードした組換えCD1d分子又は特異的刺激抗体で標識したビーズなどの他の方法が当技術分野において既知である(例えば、East JE,Sun W,Webb TJ.Artificial antigen presenting cell(aAPC)mediated activation and expansion of natural killer T cells.J Vis Exp.2012 Dec 29;(70):4333.doi:10.3791/4333.PMID:23299308,及びExley MA,Hou R,Shaulov A,Tonti E,Dellabona P,Casorati G,Akbari O,Akman HO,Greenfield EA,Gumperz JE,Boyson JE,Balk SP,Wilson SB.Selective activation,expansion,and monitoring of human iNKT cells with a monoclonal antibody specific for the TCR alpha-chain CDR3 loop.Eur J Immunol.2008 Jun;38(6):1756-66.doi:10.1002/eji.200737389.PMID:18493987,the contents of which are incorporated by reference in their entireties)。企図される別の実施形態は、特に、CD1d及び共刺激リガンドを発現するように遺伝子操作された非増殖細胞である(例えば、Exley MA,Hou R,Shaulov A,Tonti E,Dellabona P,Casorati G,Akbari O,Akman HO,Greenfield EA,Gumperz JE,Boyson JE,Balk SP,Wilson SB.Selective activation,expansion,and monitoring of human iNKT cells with a monoclonal antibody specific for the TCR alpha-chain CDR3 loop.Eur J Immunol.2008 Jun;38(6):1756-66.doi:10.1002/eji.200737389.PMID:18493987;PMCID:PMC2864538などを参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。「非増殖性フィーダー細胞」及びそれらを作製する方法は、当技術分野において既知である。一例では、非増殖性フィーダー細胞は、対象、例えば、健康な成人ドナーから単離されたPBMCを含み得る。いくつかの実施形態では、フィーダー細胞は、iNKT細胞ドナー由来である。フィーダー細胞は、iNKT細胞との培養の前に、当該技術分野において既知の方法により処理され(例えば、共培養の前に照射される)、望ましくない細胞(例えば、フィーダー細胞)の増殖が停止される。フィーダー細胞は、培養成分(例えば、サイトカイン及び他の成長因子、細胞表面リガンド)を提供し、インビトロ培養でiNKT細胞増殖を可能にする。フィーダー細胞を調製する好適な方法は、当技術分野において既知であり、例えば、PBMCが、X線照射器又はセシウム照射器などのγ粒子照射器を用いて約70Gyの電離放射線で照射され、iNKT細胞と共に培養の前に、IL-2及び活性化化合物(例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)、又は特異的抗体)を含む培地中に再懸濁される。他の実施形態では、フィーダー細胞由来の順化培地、又は組換えサイトカイン(例えば、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18)を1種又は複数の刺激剤として使用できる。
【0033】
iNKT細胞及び少なくとも1種の刺激剤/因子(例えば、フィーダー細胞、ビーズ、抗体、PHAなど、及びIL-2)が組織培養プレートに提供され、iNKT細胞が増殖するのに十分な時間にわたり培養される。iNKT細胞の増殖に好適な培養物中のIL-2の濃度は当技術分野において既知であり、例えば、約5U/ml~約1000U/ml、好ましくは約25U/ml~約400U/ml、好ましくは約200U/mlである。
【0034】
好ましくは、iNKT細胞が培養され、合成培地、好ましくは、ゼノゲンフリー培地中でコンジュゲートが形成される。いくつかの実施形態では、培地は無血清である。さらなる実施形態では、培地は、無血清及びゼノゲンフリーである。用語「合成」は、培地内の全ての成分が既知の培地を意味する。好適なゼノゲンフリー培地は当技術分野において既知であり、限定されないが、例えば、X-VIVO-10(Lonza)、CTS OpTmizer T cell Expansion SFM又はAIM C Medium(Gibco)が挙げられる。
【0035】
1種又は複数の刺激剤がiNKT/フィーダー培養物に添加される。好適な刺激剤には、限定されないが、例えば、特に、フィトヘマグルチニン(PHA)、抗CD3 mAb、iNKT-TCR特異的抗体(例えば、6B11)、α-GalCer(又はPBS57などの他の関連化合物)をロードした組換えCD1d分子、CD1d及び他の重要な活性化分子を発現する改変細胞株が挙げられる。好適な刺激剤は当該技術分野において既知であり、本発明での使用が企図されるであろう。一実施形態では、次の刺激剤の片方又は両方が、iNKT/フィーダー培養物に添加される:1~5μg/mlの最終濃度のフィトヘマグルチニン、又は10~30ng/mlの抗CD3 mAb(例えば、クローンOKT3又はSPVT3b)。細胞は、iNKT細胞の増殖を可能にするのに十分な時間にわたり培養される。細胞は、少なくとも2週間、あるいは、少なくとも4週間、あるいは、少なくとも6週間、あるいは、少なくとも8週間培養され得る。iNKT細胞は、培養中に、iNKT細胞の数が増大するように見える限り、培養され得る。更に、iNKT細胞の増殖が遅くなるように見えると、iNKT細胞は、増殖を増大させるために、1種又は複数の刺激剤を再度加えることにより、再刺激され得る。多くのこのような再刺激を一定期間にわたり順次実施することにより、iNKT細胞の培養は、1年を越える期間にわたり増殖させ得る。iNKT細胞は、細胞が組織培養皿上で集密度に達すると、追加の培養液に分割される。iNKT細胞は、0.5x106/cm2(1ml/cm2の体積中で)を越える密度に達すると、分割でき、それらが2x106/cm2以上である場合、分割しなければならない。必要に応じ、iNKT細胞は、フローサイトメトリー又は磁気選別により、培養物から更に精製して、汚染細胞を除去し、(1種又は複数のiNKT細胞マーカー、例えば、CD4、CD3、及び/又はCD1d-四量体(即ち、CD4+iNKT細胞)の染色により示されるように)実質的に純粋なiNKT細胞集団、例えば、95%超のiNKT細胞、好ましくは98%超、最も好ましくは少なくとも99%超のiNKT細胞を得ることができる。いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象の血液試料から得た末梢血単核球からCD1d-四量体+CD4+CD3+iNKT細胞を選別すること、及び(b)選別したCD1d-四量体+CD4+CD3+iNKT細胞を培養により増殖すること、を含む。
【0036】
別の実施形態では、iNKT細胞は、単一選別iNKT細胞の増殖(即ち、クローン培養)から生成できる。iNKT細胞の選別方法は、当技術分野において既知であり、本明細書で記載される(例えば、FACS、磁気選別など)。いくつかの実施形態では、複数のiNKTクローン培養(即ち、単一細胞由来の集団)が、コンジュゲートの形成で使用する前に、一緒に混合される。
【0037】
いくつかの実施形態では、iNKT細胞は、凍結培地中で、約1~20x106細胞/mlの濃度の一定分量で凍結され、多細胞コンジュゲートの作製で使用するための解凍まで、-80℃で貯蔵される。好適な凍結培地は当技術分野において既知であり、市販で入手でき、例えば、特にCryoStor CS10凍結培地(StemCell Technologies)、Cryoprotective Freezing Medium(Lonza)、Recovery Freezing Medium(Gibco)、又は臨床クレードCTS Synth-a-Freeze(Gibco)が挙げられる。
iNKT細胞は、培養、増殖、及びその後、多細胞コンジュゲートが作製される時点まで凍結できる。
【0038】
多細胞コンジュゲート及び組成物
多細胞コンジュゲートは、ヒトiNKT細胞(健康な対象の血液から単離され、組織培養で増殖された)をヒトDC(例えば、新たに単離した単球を組織培養でDCに分化させることにより生成される)と組み合わされることにより調製される。いくつかの実施形態では、iNKT細胞及びDCは、少なくとも20%の細胞が2つ又は3つの細胞を含むコンジュゲートとして強く接着するような条件で培養される。他の実施形態では、培養物は、iNKT細胞及びDCを含むダブレット又はダブレットとトリプレットによって選択又は選別され、純粋なコンジュゲート調製物を得るこことができる。上述のDCは、コンジュゲート化の前に、その間に、又はその後に、1種又は複数の抗原をロードされ得る。好ましい実施形態では、DCは、iNKT細胞及び抗原と同時にインキュベートされる。例えば、一実施形態では、方法は、(a)対象からiNKT細胞を得ること;(b)iNKT細胞を培養で増殖すること;(c)増殖させたiNKT細胞を貯蔵するために凍結すること;(d)第2の対象から単球を収集すること;(e)DCへの分化を誘導する条件を用いてインビトロで単球を培養すること;(f)凍結iNKT細胞を解凍すること;及び(g)解凍したiNKT細胞をDC、及び多細胞iNKT+DCコンジュゲートを形成するのに十分な比率の抗原と共培養すること、を含む。別の実施形態では、方法は、(a)対象からiNKT細胞を得ること;(b)iNKT細胞を培養で増殖すること;(c)増殖させたiNKT細胞を貯蔵するために凍結すること;(d)対象から単球を収集すること;(e)DCへの分化を誘導する条件を用いてインビトロで単球を培養すること;(f)DCを抗原と接触させること;(g)凍結iNKT細胞を解凍すること;及び(h)解凍したiNKT細胞を多細胞iNKT+DCコンジュゲートを形成するのに十分な比率の、抗原に接触させたDCと共培養すること、を含む。
【0039】
別の実施形態では、ヒトDC(例えば、組織培養により、新たに単離した単球をDCに分化させることにより生成されたDC)が、iNKT細胞とインキュベーションの前に、ヒト血清アルブミン(HSA)又はサイトカインを含む培地に曝露される。このDCの前処理ステップは、iNKT細胞との共培養中に生成される多細胞コンジュゲートの量を増大させることができる。例えば、限定されないが、方法は、リゾリン脂質を含む結合脂質を含む高度に精製された又は組換えヒト血清アルブミン(HSA)を使用し得るか、又は腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン-1β(IL-1β)、又はインターフェロンγ(IFNγ)などのサイトカインを使用し得る。DCは、iNKTコンジュゲート化の前に、HSA又はサイトカインの存在下で、十分な時間にわたり培養され、それにより、プレインキュベーションステップは、形成される多細胞コンジュゲート量を増大させる。一方法では、DCは、無血清培地(例えば、X-VIVO-10(Lonza)、CTS OpTmizer T cell Expansion SFM又はAIM C Medium(Gibco))中で1~8時間培養された後、HSAが培地に添加され、iNKT細胞と混合される前に、DCは更に1~8時間培養される。別の方法では、DCがiNKT細胞と組み合わされる前に、1~8時間にわたり、TNFα、IL-1β、及び/又はIFNγなどのサイトカインがDC培養物に添加される。例えば、iNKT細胞とのインキュベーション後、記載方法による培養物中のDCの少なくとも20%、あるいは、少なくとも40%、あるいは、少なくとも60%超が多細胞コンジュゲート内に存在する。この方法は、コンジュゲートのためのさらなる精製又は単離ステップの必要なしに、細胞調製物が使用できる十分な多細胞コンジュゲートを産生する。この場合でも、上述のDCは、コンジュゲート化の前に、その間に、又はその後に、抗原をロードされる。好ましい実施形態では、DCは、iNKT細胞と同時に抗原とインキュベートされる。例えば、一実施形態では、方法は、(a)対象からiNKT細胞を得ること;(b)iNKT細胞を培養で増殖すること;(c)増殖させたiNKT細胞を貯蔵するために凍結すること;(d)第2の対象から単球を収集すること;(e)DCへの分化を誘導する条件を用いてインビトロで単球を培養すること;(f)凍結iNKT細胞を解凍すること;(g)DCを無血清培地及びHSA及び/又は添加したサイトカインで処理すること;及び(h)解凍したiNKT細胞を前処理したDC、及びiNKT+DC細胞の多細胞コンジュゲートを形成するのに十分な比率の抗原と共培養すること、を含む。この方法は、多細胞コンジュゲートの使用前に、追加の単離又は分離ステップを必要としないのが好ましい。いくつかの実施形態では、HSAは、iNKTとDCのコンジュゲート化の間、培地中に残される。他の実施形態では、HSAは、コンジュゲート化の間に培地中に供給されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、多細胞コンジュゲートは、培養によりiNKT及びDC細胞がコンジュゲートを形成する(例えば、培養物の20%超がコンジュゲートである、あるいは、培養物中の細胞の40%超、あるいは、培養物中の細胞の50%がコンジュゲートである)条件下で形成される。何らかの理論に拘泥する物ではないが、いくつかの実施形態では、本発明のコンジュゲートは、培養での非コンジュゲート化細胞の単離の必要なしに、本明細書で更に記載される治療方法で使用され得る。
【0041】
さらなる実施形態では、上記方法は、培養物から多細胞コンジュゲートを選択又は選別するステップを更に含み得る。一実施形態では、コンジュゲートは、フローサイトメトリーでそれらの光散乱により選択され得る。多細胞コンジュゲートを選別する他の方法は、当技術分野において既知である。例えば、多細胞コンジュゲートをそれらが形成された培養物から選別する好適な方法には、限定されないが、例えば、iNKT及びDC発現マーカーを用いたフローサイトメトリーセルソーティングが挙げられる。更に、好ましい方法は、抗体の使用(及び種々のフルオロフォアで事前標識されているNKT細胞とDCの使用)を回避すべきであろう。別の実施形態では、多細胞コンジュゲートは、特定のサイズを越える(例えば、4つ以上の細胞を含む)細胞凝集体から分離し、更に未変化の樹状細胞以下のサイズの物質を除去すべきであろう。
【0042】
iNKT+DCコンジュゲートは、接触依存性方式で、抗原特異的ヒトT細胞を活性化する。これは、次に、抗原特異的免疫応答、特に、それを必要としている対象の抗原特異的T細胞応答を活性化する能力を可能にする。実施例では、発明者らは、エプスタイン・バールウィルス(EBV)誘導ヒトB細胞リンパ腫のヒト化マウスモデルへのiNKT+DCコンジュゲートの投与が、腫瘍塊を除去し、iNKT+DCコンジュゲートへの曝露がT細胞による標的細胞殺傷をインビトロで促進することを示した。従って、iNKT+DCコンジュゲートは適切な抗原由来源(例えば、腫瘍細胞抗原又は病原性(例えば、ウィルス、細菌性、真菌)抗原)をロードでき、多細胞免疫療法剤として投与して、対象内の特異的T細胞集団を活性化し、抗原関連状態の治療及び回復を支援できる。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載の多細胞コンジュゲートは、サイトカインIL-12p70を、他の因子と一緒に培地中に分泌する。別の実施形態では、多細胞コンジュゲートは、サイトカインIFNγを、培地中に発現する。コンジュゲートのDC及びiNKT細胞はそれぞれ、コンジュゲート化後に、それらの表面上に特定のマーカーを発現し、いくつかの実施形態では、それらの非コンジュゲート化対応物と比べて、特定のマーカー又は刺激因子を上方制御又は下方制御し得る。例えば、多細胞コンジュゲートの細胞は、MHCクラスI及びクラスII、CD40、CD70、CD80、CD83、CD86、CD134L(OX40L)、CD137L(4-1BBL)、CD215(IL-15Rα)又はこれらの組み合わせをその表面上に発現できる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、非コンジュゲート化DCに比べて、共刺激リガンドCD70、CD86、CD134L、CD137L、CD215又はこれらの組み合わせの高レベルの細胞表面発現、及び阻害性リガンドPD-L1のより低い発現を示した。例えば、一実施形態では、コンジュゲートのiNKT細胞は、CD70を発現し、コンジュゲートのDCは、CD80、CD86、CD134L、CD137L、CD215又はこれらの組み合わせから選択される1種又は複数のマーカーを発現する。細胞表面発現のレベルは、当該技術分野において既知の方法により、例えば、フローサイトメトリー分析、免疫蛍光顕微鏡、及び当業者により実施される他の好適な方法により測定できる。
【0044】
同じものを含む多細胞コンジュゲート及び組成物は、対象で免疫応答を誘発するために使用できる。いくつかの実施形態では、CD4+T細胞応答が誘発される。他の実施形態では、CD8+T細胞応答が誘発される。さらなる実施形態では、多細胞コンジュゲート及びその組成物は、対象内の1種又は複数の免疫活性化サイトカイン、例えば、IL-12p70、INFγなどの発現を高めるために使用される。多細胞コンジュゲート及びその組成物はまた、炎症促進性サイトカインの発現を調節するために使用できる。医薬組成物等の組成物は、本発明の多細胞コンジュゲート調製物を含む。多細胞コンジュゲートに加えて、このような組成物は、薬学的に許容可能な担体を含み得る。用語「薬学的に許容可能な」は、規制当局(例えば、連邦又は州政府当局)により対象への投与用として承認された組成物を意味し得る。用語「担体」は、医薬組成物が一緒に投与できる希釈剤、賦形剤、又はビークルを意味し得る。薬学的に許容可能な担体は、当技術分野において既知であり、限定されないが、例えば、特に、希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、リポソーム、ナノ粒子が挙げられる。薬学的に許容可能な担体は、貯蔵及び対象への送達のために多細胞コンジュゲートの生存率を維持するのが適切である。更に、このような薬学的に許容可能な担体は、水性又は非水性溶媒中の、溶液、懸濁液、及び乳剤であり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、及びオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルである。好適な水性溶媒担体としては、等張性溶液、アルコール性/水性溶液、乳剤あるいは懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝化媒体を含む。水単独は、好適な生理学的に許容可能な担体として企図されない。いくつかの実施形態では、対象への投与のために生理学的に許容可能な追加の成分が、細胞生存率を保ち、本発明のコンジュゲートを維持するために添加され得る。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの追加の薬学的に許容可能な物質を適切な生理学的条件に対する必要性に応じて含み得る。
【0045】
組成物は、従来のよく知られた、多細胞コンジュゲートの生存率を維持する滅菌技術により滅菌できる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は、投与方法に従って選択する必要がある。緩衝液としては、限定されないが、リン酸塩、クエン酸及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;血清、アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びブドウ糖、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又はツイーン(商標)ブランド界面活性物質、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)界面活性物質などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。薬学的に許容可能な担体は、限定されないが、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液又は0.9%の生理食塩水を含み得る。他の好適な薬学的に許容可能な担体も企図されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、多細胞コンジュゲート及び1種又は複数のチェックポイント阻害剤を含む。好適なチェックポイント阻害剤としては、例えば、限定されないが、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、CTLA-4、及びCSF-1R、並びにこのようなチェックポイント阻害剤の組み合わせを含むT細胞免疫チェックポイント受容体の遮断ができる薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。チェックポイント阻害を行う薬剤は、小さい化学物質又はポリマー、抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体又は限定されないが、二重特異的抗体及びディアボディを含む他の抗体構築物であってよい。本発明により使用され得る免疫チェックポイント阻害薬としては、限定されないが、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗LAG-3抗体、及び/又は抗TIM-3抗体が挙げられる。米国で承認されたチェックポイント阻害剤には、アテゾリズマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、及びニボルマブが挙げられる。第3相臨床試験中の他のものには、チスレリズマブが含まれる。阻害剤は、抗体である必要はないが、小分子又は他のポリマーであり得る。阻害剤が抗体の場合、それは、ポリクローナル、モノクローナル、フラグメント、単鎖、又は他の抗体バリアント構築物であり得る。阻害剤は、限定されないが、CTLA-4、PD-L1、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、及びB-7リガンドファミリーを含む当該技術分野において既知のいずれかの免疫チェックポイントを標的にし得る。単一標的免疫チェックポイントのための阻害剤、又は異なる免疫チェックポイントに対する異なる阻害剤の組み合わせを使用し得る。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、PD-1又はPD-L1又はCTLA-4阻害剤チェックポイント阻害剤である。
【0047】
チェックポイント阻害剤は市販で入手でき、当該技術分野において既知である。例えば、特に、抗CTL4抗体のトレメリムマブは、MedImmune(AstraZeneca)から入手可能であり、米国特許第6682736号及び欧州特許1141028に記載されている;アテゾリズマブは、抗PD-L1であり、Genentech,Inc.(Roche)から入手可能であり、米国特許第8217149号に記載されている;抗CTLA-4であるイピリムマブは、Bristol-Myers Squibb Coから入手可能であり、特に、米国特許第7605238号、同第6984720号、同第5811097号、及び欧州特許1212422に記載されている;抗PD-1抗体であるペムブロリズマブは、Merck and Coから入手可能であり、米国特許第8952136号、同第83545509号、同第8900587号、及び欧州特許2170959に記載されている;抗PD-1抗体であるニボルマブは、Bristol-Myers Squibb Coから入手可能であり、米国特許第7595048号、同第8728474号、同第9073994号、同第9067999号、同第8008449号及び同第8779105号に記載されている;チスレリズマブは、BeiGeneから入手可能であり、米国特許第8735553号に記載されている。
【0048】
いくつかの実施形態では、下記で更に記載のように、この組成物は、がんの治療に使用するためのものである。組成物は、以降でより詳細に記載されるように、がんの治療のために、多細胞コンジュゲート単独、又は多細胞コンジュゲート及び1種又は複数のチェックポイント阻害剤を含み得る。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、他の免疫療法剤と併せて投与され得る。例えば、iNKT+DCコンジュゲートは、除去するためにがん細胞を標的にするように設計された、CAR-T細胞免疫療法剤、NK細胞ベース免疫療法剤、又は抗体媒介免疫療法剤と併せて投与され得る。好適な免疫療法剤は、当技術分野において既知であり、例えば、標的化がん療法剤は、免疫系B細胞の表面上にあるCD20に対するキメラモノクローナル抗体であるリツキシマブであり、特定のタイプのがん(例えば、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞悪性腫瘍など)を治療するために使用される。別の実施形態では、コンジュゲートは、免疫応答を活性化するように設計されている他の生物学的製剤(例えば、IL-15などのサイトカイン、又はI型もしくはIII型インターフェロン)又は手法(例えば、特定の照射プロトコル)と組み合わせて投与され得る。
【0049】
治療方法
本明細書で記載の多細胞コンジュゲート(及びそれらを含む組成物)は、ヒト抗原特異的T細胞応答の活性化を必要としている対象でそれを行うために使用できる。iNKT+DCコンジュゲートは、Tリンパ球を活性化することが知られている多種多様のリガンドの細胞表面発現レベルを高めたので、これは、多細胞コンジュゲートが標的にする特異的抗原に対してT細胞活性化を高めることを可能にする。本明細書で記載の多細胞コンジュゲートは、実施例で示されるように、接触依存性方式で、抗原特異的ヒトT細胞を活性化できる。このような多細胞コンジュゲートのマウス腫瘍モデルへの投与は、腫瘍塊を除去し、iNKT+DCコンジュゲートへの曝露がT細胞による標的細胞殺傷をインビトロで促進することを示した。iNKT+DCコンジュゲートは、抗原に関連する状態を治療するために特異的抗原に対して、同種又は自家方式で使用できる。例えば、治療を必要としている対象由来の同種iNKT細胞を増殖し、更に後で行われる自家DCとのコンジュゲート化のために凍結できる。いくつかの実施形態では、多細胞コンジュゲート及びその組成物は、対象内のCD4+T細胞を活性化する方法で使用できる。別の実施形態では、多細胞コンジュゲート及びその組成物は、抗原依存性方式でCD8+T細胞を活性化するために使用できる。いくつかの実施形態では、CD8+及び/又はCD4+T細胞は、抗腫瘍効果を生じ、腫瘍の細胞成長及び増殖を阻害又は低減できる。
【0050】
本開示は、培養iNKT細胞(例えば、「既製の」iNKT細胞)を生成することを含む、抗原に関連する状態を治療する方法及びキット、並びに同種iNKT細胞を、治療を必要としている患者から新たに生成された単球由来DCとコンジュゲート化するために使用する方法を提供する。例えば、多細胞コンジュゲートは、iNKT細胞にコンジュゲート化された適切な抗原由来源(例えば、腫瘍細胞抗原又は病原体抗原)をロードしたDCから作製され、多細胞コンジュゲート(即ち、細胞免疫療法剤)として投与されて、患者のT細胞を抗原に対して活性化させ得る。
【0051】
従って、一実施形態では、本開示は、抗原に関連する状態の対象を治療する方法を提供する。方法は、有効量の本明細書で記載の多細胞コンジュゲートを、状態を治療するために投与することを含む。上述のように、多細胞コンジュゲートは、状態に関連する抗原をロードしたDCを含む。本明細書で使用される場合、「抗原に関連する状態」という用語は、1種又は複数の特異的抗原が関連する特徴である状態又は疾患を意味し、1種又は複数の抗原に対する細胞性免疫応答(特に、T細胞応答)が疾患又は状態の低減、抑制又は除去をもたらす。「抗原」という用語は、身体中の免疫応答を誘導する分子を意味する。用語「抗原」は、用語「免疫原」と同じ意味で使用できる。特に、本発明での使用に好適する抗原は、細胞性免疫応答、特に、T細胞応答を誘発できる抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、本明細書で更に記載される、超抗原であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗原は改変された超抗原又はそのフラグメントである。超抗原は、免疫反応を免疫調節できる微生物タンパク質又は合成タンパク質である。超抗原は通常、細菌、ウィルス及びマイコプラズマなどの微生物から導かれる。免疫系に対するそれらの効果は、抗原に直接接触しない抗原提示細胞上のMHC分子の外側部分及びT細胞抗原受容体(TCR)の部分の両方に対するそれらの結合を介して得られる。いくつかの事例では、超抗原は、免疫活性化を調節する微生物由来のタンパク質を模倣する合成ペプチドである。好適な超抗原は、特に、連鎖球菌性発熱性外毒素(SPE)、ブドウ状球菌エンテロトキシン(SE)、及び毒素原性大腸菌(ETEC)から導かれ得る。これらは、当該技術分野においてよく知られている。超抗原は、当該技術分野においてよく知られており、限定されないが、Superantigens:mechanism of T-cell stimulation and role in immune responses.Herman A,Kappler JW,Marrack P,Pullen AM.Annu Rev Immunol.1991;9:745-72.doi:10.1146/annurev.iy.09.040191.003525.PMID:1832875;Heterologous Chimeric Construct Comprising a Modified Bacterial Superantigen and a Cruzipain Domain Confers Protection Against Trypanosoma cruzi Infection.Antonoglou MB,Sanchez Alberti A,Redolfi DM,Bivona AE,Fernandez Lynch MJ,Noli Truant S,Sarratea MB,Iannantuono Lopez LV,Malchiodi EL,Fernandez MM.Front Immunol.2020 Jun 30;11:1279.doi:10.3389/fimmu.2020.01279.eCollection 2020.PMID:32695105、に記載の超抗原又はこれらで見つかるものから導かれる。これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
上述のように、DCは、抗原の由来源と接触させられるか、又はそれをロードされる。このようにロードしたDCは、iNKT+DCコンジュゲートを介して投与される場合、T細胞の抗原特異的集団を、コンジュゲート内のDCにロードされた抗原に応じて、活性化できる。
【0054】
この段階で使用される抗原は、治療される疾患に依存する。関連抗原は、特に、全不活化腫瘍細胞、全タンパク質(例えば、腫瘍細胞から直接導かれたか、又は組換えで産生された全タンパク質)、合成ペプチド又は分子の形態でDC培地に添加できる。DCは、これらの抗原、即ち、タンパク質を、それらがDCのMHC分子中に細胞内ロードするペプチド中に取り込み、プロセッシングした後、これらは、細胞表面に輸送される。DC表面上に輸送されると、抗原をロードしたMHC分子は、T細胞と接触時に、抗原特異的T細胞と相互作用し、そのT細胞応答を活性化できる。全細胞又は全タンパク質を抗原由来源として使用する利点は、その個別のDCの特定のMHC分子(即ち、MHCクラスII分子)を介してロードできる特異的ペプチド配列を特定する必要がないことである。全タンパク質が、DC内で細胞内プロセッシングされ、その後、適切な抗原フラグメントがMHC分子を介してDC表面上に発現され得る。他の実施形態では、MHC分子上に提示できることが知られているペプチドは使用できる。一実施形態では、DCと接触させられた又はそれとインキュベートされた抗原は、取り込まれ、DC上のMHCクラスII分子上での発現のためにプロセッシングされ、これは、次に、抗原特異的CD4+T細胞を活性化できる。
【0055】
別の実施形態では、DCとインキュベートされた抗原は、取り込まれ、DC上のMHCクラスI分子により提示され(「交差提示」として知られる工程)、これは、次に、抗原特異的CD8+T細胞の活性化を可能にする。別の実施形態では、合成ペプチドは、特異的MHCクラスI分子に結合する既知の抗原エピトープを含むDCとインキュベートでき、次に、CD8+T細胞の活性化を可能にする。別の実施形態では、ペプチド又はタンパク質抗原は、外来性ポリヌクレオチド配列(例えば、プラスミド、ウィルスベクターなど)により、又はDNA又はRNA形質導入もしくは遺伝子導入を介して、細胞中で発現され得、これは、DC表面上のMHC/HLA分子中の抗原の合成、プロセッシング及び発現を可能にする。
【0056】
いくつかの実施形態では、状態はがんであり、抗原は腫瘍抗原である。特に、いくつかの実施形態では、多細胞コンジュゲートは、がんの患者から取得されたDCを含む。いくつかの実施形態では、多細胞コンジュゲートは、腫瘍抗原又はそのフラグメントに結合したMHC II又はMHC Iを発現しているDCを含む。
一実施形態では、抗原に関連する状態は、がん又は腫瘍である(例えば、抗原は腫瘍抗原又はがん抗原である)。腫瘍抗原は、腫瘍細胞により産生される抗原である。これらの抗原は、時として、腫瘍細胞のみにより発現され、正常な非腫瘍細胞によっては決して発現されることがなく、従って、腫瘍特異的抗原と呼ばれる。いくつかの事例では、腫瘍特異的抗原は、腫瘍特異的変異に起因する。いくつかの腫瘍関連抗原(TAA)は、腫瘍細胞及び正常細胞により提示されるが、腫瘍細胞上で発現上昇した量で見られる抗原である。腫瘍特異的抗原及び腫瘍関連抗原の両方は、本発明で使用するために企図されている。
【0057】
腫瘍に選択的に関連付けられる腫瘍抗原は、次の3つの主要分類に分けられる:i)特定の患者の個別の体細胞変異に由来する、及び患者間で希にしか共有されない新抗原(即ち、患者特異的腫瘍抗原);ii)特異的タイプの腫瘍により特徴的に発現されるタンパク質(即ち、共通の腫瘍特異的抗原);iii)発がんウィルス由来のウィルスタンパク質。本発明は、1種又は複数の腫瘍抗原を使用することが企図されている。患者特異的腫瘍抗原(新抗原)は、患者自身のがん細胞由来の物質にDCを曝露することにより、最も効率的に送達され得る。がん細胞は、生検を介して得られ、DCへの曝露の前に、照射又は他の方法により死滅させられる。DCは、腫瘍細胞、又は腫瘍細胞から生成された総タンパク質抽出物に直接曝露される。あるいは、特異的新抗原は、ゲノム又は質量分光分析、及び合成により産生された対応するタンパク質/ペプチドにより特定され得る。
【0058】
共通の腫瘍抗原には、複数のタイプのがんにより発現される特徴がはっきりした、及び多くの異なる患者に共通の腫瘍関連抗原が含まれ、これらには、NY-ESO-1などのがん精巣抗原、及び黒色腫関連抗原(MAGE)ファミリーのメンバー(例えば、MAGE-A3)が挙げられる。更に、ある特定の型の腫瘍(例えば、乳がん、造血器悪性腫瘍)を有する非血縁個体で発現される腫瘍特異的抗原が特定されている。
【0059】
多数の腫瘍抗原が当技術分野において既知であり、限定されないが、例えば、次記が挙げられる:(i)NY-ESO-1、SSX2、SCP1並びにRAGE、BAGE、GAGE及びMAGEファミリーポリペプチド、例えば、GAGE-1、GAGE-2、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、及びMAGE-12(これらは、例えば、黒色腫、肺、頭頸部、NSCLC、乳、胃腸、及び膀胱腫瘍に対処するために使用できる)などのがん-精巣抗原、(ii)変異抗原、例えば、p53(種々の固形腫瘍、例えば、結腸直腸、肺、頭頸部がんに関連)、p21/Ras(例えば、黒色腫、膵臓がん及び結腸直腸がんに関連)、CDK4(例えば、黒色腫に関連)、MUM1(例えば、黒色腫に関連)、カスパーゼ8(例えば、頭頸部がんに関連)、CIA0205(例えば、膀胱がんに関連)、HLA-A2-R1701、βカテニン(例えば、黒色腫に関連)、TCR(例えば、T細胞非ホジキンリンパ腫に関連)、BCR-abl(例えば、慢性骨髄性白血病に関連)、トリオースリン酸イソメラーゼ、KIA0205、CDC-27、及びLDLR-FUT、(iii)過剰発現抗原、例えば、ガレクチン4(例えば、結腸直腸がんに関連)、ガレクチン9(例えば、ホジキン病に関連)、プロテイナーゼ3(例えば、慢性骨髄性白血病に関連)、WT1(例えば、種々の白血病に関連)、炭酸脱水酵素(例えば、腎がんに関連)、アルドラーゼA(例えば、肺がんに関連)、PRAME(例えば、黒色腫に関連)、HER-2/neu(例えば、乳、結腸、肺及び卵巣がんに関連)、αフェトプロテイン(例えば、肝細胞腫に関連)、KSA(例えば、結腸直腸がんに関連)、ガストリン(例えば、膵臓及び胃がんに関連)、テロメラーゼ触媒タンパク質、MUC-1(例えば、乳及び卵巣がんに関連)、G-250(例えば、腎細胞癌に関連)、p53(例えば、乳、結腸がんに関連)、及び癌胎児抗原(例えば、乳がん、肺がん、及び結腸直腸がんなどの胃腸管のがんに関連)、(iv)共通抗原、例えば、MART-1/Melan A、gp100、MC1R、メラノサイト刺激ホルモン受容体、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質-1/TRP1及びチロシナーゼ関連タンパク質-2/TRP2(例えば、メラノーマに関連)などのメラノーマ-メラノサイト分化抗原、(v)例えば、前立腺がんに関連する、PAP、PSA、PSMA、PSH-P1、PSM-P1、PSM-P2などの前立腺関連抗原、(vi)免疫グロブリンイディオタイプ(例えば、骨髄腫及びB細胞リンパ腫に関連する)、並びに(i)シアリルTn及びシアリルLex(例えば、乳及び結腸直腸がんに関連)並びに種々のムチンなどの糖タンパク質;糖タンパク質は、担体タンパク質に結合され得る(例えば、MUC-1は、KLHに結合され得る);(ii)リポポリペプチド(例えば、脂質部分に結合したMUC-1);(iii)ポリサッカライド(例えば、Globo H合成六糖類)、これは、担体タンパク質に結合され得る(例えば、KLHに)、(iv)GM2、GM12、GD2、GD3などのガングリオシド(例えば、脳、肺がん、黒色腫に関連)、を含むポリペプチド及びサッカライド含有抗原などの他の腫瘍抗原など。当技術分野において既知の追加の腫瘍抗原には、p15、Hom/Mel-40、H-Ras、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタイン・バーウィルス抗原、EBNA、E6及びE7を含むヒトパピローマヒトパピローマ(HPV)抗原、B及びC型肝炎ウィルス抗原、ヒトT細胞リンパ向性ウィルス抗原、TSP-180、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、mn-23H1、TAG-72-4、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、p16、TAGE、PSCA、CT7、43-9F、5T4、791 Tgp72、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3(CA 27.29/BCAA)、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68/KP1、CO-029、FGF-5、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC-関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPSなどが挙げられる。
【0060】
別の実施形態では、対象は、がん又は腫瘍の患者であり、方法は、多細胞コンジュゲート及びチェックポイント阻害剤をがんの患者に投与することを含む。好適なチェックポイント阻害剤としては、例えば、限定されないが、PD-1、PD-L1、TIM-3、LAG-3、CTLA-4、及びCSF-1R、並びにこのようなチェックポイント阻害剤の組み合わせを含むT細胞免疫チェックポイント受容体の遮断ができる薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬には、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗LAG-3抗体、及び/又は抗TIM-3抗体が挙げられる。好適な阻害剤には、例えば、特に、トレメリムマブ、アテゾリズマブ、イピリムマブ(ipilumumab)、ペムブロリズマブ、及びニボルマブ、チスレリズマブが挙げられる。阻害剤は、抗体である必要はないが、小分子又は他のポリマーであり得る。好ましい実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤などである。好適なPD-1阻害剤には、限定されないが、例えば、特に、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、及びセミプリマブ(リブタヨ)が挙げられる。好適な抗PD-L1阻害剤には、例えば、限定されないが、特に、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンチオ)、及びデュルバルマブ(イミフィンジ)を含む、抗PD-L1抗体が挙げられるがこれに限定されない。
【0061】
「がん」又は「腫瘍」は、固形及び非固形腫瘍を含む細胞のなんらかの異常な増殖又は無制御成長を意味している。本発明の方法は、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病を含む、なんらかのがん、なんらかのその転移、及びなんらかのその化学療法残留増殖(chemo-residual growth)を治療するために使用できる。本明細書で記載の多細胞コンジュゲート及び組成物、方法及びキットにより治療可能な適合性がんとしては、限定されないが、リンパ腫、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、結腸直腸がん、子宮頸がん(uterine cervical cancer)、子宮内膜癌、唾液腺癌腫、中皮腫、腎臓がん、外陰がん、膵臓がん、甲状腺がん、肝癌、皮膚がん、黒色腫、脳がん、神経芽腫、骨髄腫、様々なタイプの頭頸部がん、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、及び末梢性神経上皮腫が挙げられる。本開示の組成物及び方法はまた、非ホジキンリンパ腫、白血病などの非固形腫瘍がんを治療するためにも利用できる。
【0062】
用語「転移」、「転移腫瘍」又は「二次腫瘍」は、二次的部位、例えば、原発腫瘍組織の外側に伝播したがん細胞を意味する。二次的部位には、限定されないが、リンパ系、皮膚、遠隔臓器(例えば、肝臓、胃、膵臓、脳など)等が挙げられる。
【0063】
本開示はまた、がんの対象のがん細胞増殖を低減又は抑制する方法を提供し、該方法は、有効量の本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物を投与して、がん細胞増殖を低減又は抑制することを含み、多細胞コンジュゲートは、腫瘍抗原をロードしたDCを含む。抗原特異的多細胞コンジュゲートを得る好適な方法は、本明細書で記載される。
【0064】
本発明では、「治療すること(treating)」又は「治療(treatment)」は、対象の疾患、状態又は障害との戦いの管理及び世話をすることを表す。治療は、症状又は合併症の発症を減らす、防止する、良くする及び/又は改善して、症状もしくは合併症を軽減、又は疾患、状態、もしくは障害を低減もしくは除去する本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物の投与を含む。
【0065】
例えば、対象のがんの治療は、がん増殖の低減、抑制、遅延化又は防止;腫瘍体積の低減;及び/又は腫瘍の転移の防止、抑制、遅延化もしく低減を含む。対象のがんの治療はまた、対象中の腫瘍細胞の数の低減を含む。用語「治療(treatment)」は、次記の少なくとも1つにより特徴付け得る:(a)がん及びがん細胞の増殖の低減、遅延化又は抑制、これには、転移性がん細胞の増殖の遅延化又は抑制を含む;(b)腫瘍のさらなる増殖の防止;(c)対象中のがん細胞の転移の低減又は防止;及び(d)がんの少なくとも1つの症状の低減又は改善。いくつかの実施形態では、最適有効量は、定型実験を用いて、当業者により容易に決定できる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書記載の方法は、iNKT-DCコンジュゲートで治療後に調節される免疫遺伝子の変化を生ずる抗腫瘍がん効果を有する。いくつかの実施形態では、本開示は、対象の免疫応答を調節する方法を提供し、該方法は、多細胞コンジュゲート又はその組成物を、免疫学的な機能を決定する遺伝子の発現の上方制御及び/又は下方制御することにより示されるように、免疫応答を調節するのに十分な量で、対象に投与することを含む。一例は、図7Dで示され、ヒト免疫遺伝子発現の調節が、iNKT-DCコンジュゲートのEBV誘導ヒトB細胞リンパ腫担持マウスに投与後に起こる。この例で示されるように、iNKT-DC治療後、キナーゼ(PIK3アイソフォーム、MAPK1、AKT3)などのシグナル伝達分子及びカルシウムチャネル調節因子STIM1、転写因子(NFAT3C、FOXO3、KLF2)、及びT細胞活性化及び輸送を調節する細胞表面受容体(CD28、ITGAL、S1PR1)を含む、T細胞活性化に付随する同義遺伝子が、発現上昇された。このようにiNKT-DC治療後に下方制御された遺伝子には、IL-10、FcRL1、及びCD22を含む、EBV感染B細胞に関連する遺伝子が含まれた。従って、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の多細胞コンジュゲート及び組成物は、免疫細胞遺伝子の発現を変えるために使用でき、方法は、十分な量の本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物を投与することを含む。
【0067】
別の実施形態では、方法は、改変超抗原のように機能し、それらのT細胞受容体(TCR)と、iNKT-DCコンジュゲート上に発現したMHC分子との間で架橋を形成することにより、Tリンパの球サブセットを特異的に活性化する化合物を使用する。この実施形態では、DCは、iNKT細胞とのコンジュゲート化の前に、その間に、又はその後に、合成ペプチド又はポリペプチドとインキュベートされる。合成TCR-MHC架橋を有する多細胞コンジュゲートは、その後、対象に投与され、それにより、対象中で見出されたT細胞のサブセットの活性化を可能にする。
【0068】
別の実施形態では、抗原に関連する状態は、病原体感染症である。方法は、病原体感染症を治療するために、有効量の多細胞コンジュゲート又は多細胞コンジュゲートを含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、多細胞コンジュゲートのDCは、構築物の形成及び対象への投与の前に、少なくとも1種の病原体抗原と接触させられる。用語「病原体感染症の治療」は、病原体の増殖の低減、抑制又は防止、及び/又は病原体感染症の1種又は複数の症状の低減又は抑制を含む。
【0069】
病原体感染症は、病原体により引き起こされる疾患である。用語「病原体」は、感染性微生物又は病原体、例えば、ウィルス、細菌、原生動物、又は真菌(fungus)を意味する。好ましい実施形態では、病原体感染症はウィルス感染症である。別の実施形態では、感染症は細菌感染症である。
病原体抗原は、病原体に関連する抗原、例えば、ウィルス抗原、細菌抗原、原生動物抗原及び真菌抗原である。
【0070】
いくつかの実施形態では、病原体感染症はがんをもたらし、例えば、多数のウィルスが異なるがんに関連し、最も良く特徴がわかっている2種は、ヒトパピローマウィルス(HPV)及びエプスタイン・バールウィルス(EBV)である。HPVは、頸部、肛門、及び頭頸部がんに関連している。最も広範に存在するHPVの発がん性の株は、HPV-16であり、この株のE7タンパク質は、腫瘍関連抗原として明確に特徴づけられている。EBVは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、及び胃がんに関連している。T細胞により認識される腫瘍抗原として明確に特徴づけられるEBVタンパク質には、LMP1及びLMP2Aが挙げられる。
【0071】
好適な細菌性抗原には、例えば、細菌から単離、精製又は導かれたタンパク質、ポリサッカライド、リポ多糖、及び外膜小胞が挙げられる。加えて、細菌性抗原には、細菌性溶解物及び及び不活化細菌配合物が含まれ得る。細菌抗原はまた、組換え発現により産生され得る。細菌性抗原は、そのライフサイクルの少なくとも1つの段階で、細菌の表面上に曝露されるエピトープを含むのが好ましい。好適な細菌性抗原としては、限定されないが、例えば、特に、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、化膿性連鎖球菌(グループA連鎖球菌)(Streptococcus pyogenes)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、破傷風菌(破傷風)(Clostridium tetani)、ジフテリア菌(ジフテリア)(Corynebacterium diphtheriae)、インフルエンザ菌B型(Hib)(Haemophilus influenzae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ストレプトコッカス・アガラクチア(グループB連鎖球菌)(Streptococcus agalactiae)、及び大腸菌(Escherichia coli)の1種又は複数から誘導される抗原が挙げられる。
【0072】
好適なウィルス抗原には、例えば、不活化(又は死滅)ウィルス、弱毒化ウィルス、分割ウィルス配合物、精製サブユニット配合物、ウィルスから単離、精製又は導かれたウィルスタンパク質及びウィルス様粒子(VLP)が挙げられる。あるいは、ウィルス抗原は、組換えで発現され得る。ウィルス抗原は、そのライフサイクルの少なくとも1つの段階中で、ウィルスの表面上に曝露される、及び/又はウィルス産生細胞上で発現されるエピトープを含むのが好ましい。好適なウィルス抗原には、限定されないが、特に、オルソミクソウィルス(インフルエンザ)、ニューモウィルス(RSV)、パラミクソウィルス(PIV及びおたふくかぜ)、モルビリウィルス(はしか)、トガウィルス(風疹)、エンテロウィルス(ポリオ)、ヘルペスウィルス、HBV、コロナウィルス(SARS)、及び水痘帯状疱疹ウィルス(VZV)、エプスタイン・バーウィルス(EBV)、パピローマウィルス(Papillomavavirus)(例えば、HPV)、HIVのファミリーの1種又は複数から導かれる抗原が挙げられる。
【0073】
別の病原体抗原には、病原性真菌由来の真菌抗原が含まれる。好適な病原性真菌には、限定されないが、例えば、特に、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウイ(Aspergillus sydowii)、アスペルギルス・フラバタス(Aspergillus flavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、ブラストシゾミセス・カピタツス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クセイ(Candida kusei)、カンジダ・パラクエセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondi)、クラドスポリム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリクム・クラバタム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ピシウムン・インシジオスム(Pythiumn insidiosum)、ピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum ovale)、サッカロミセス・ブラウディ(Sacharomyces cerevisae)、サッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、スケドスポリウム・アピオスペルム(Scedosporium apiosperum)、スポロトリクス・シェンキィ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)、マラセチア属菌種(Malassezia spp.)、フォンセセア属菌種(Fonsecaea spp.)、ワンギエラ属菌種(Wangiella spp.)、スポロトリクス属菌種(Sporothrix spp.)、バシジオボラス属菌種(Basidiobolus spp.)、コニディオボルス属菌種(Conidiobolus spp.)、リゾプス属菌種(Rhizopus spp.)、ムコール属菌種(Mucor spp.)、アブシディア属菌種(Absidia spp.)、モルチエレラ属菌種(Mortierella spp.)、クニンガメラ属菌種(Cunninghamella spp.)、サクセネア属菌種(Saksenaea spp.)、アルタナリア属菌種(Alternaria spp.)、クルブラリア属菌種(Curvularia spp.)、ヘルミントスポリウム属菌種(Helminthosporium spp.)、フサリウム属菌種(Fusarium spp.)、アスペルギルス属菌種(Aspergillus spp.)、ペニシリウム属菌種(Penicillium spp.)、モノリニア属菌種(Monolinia spp.)、リゾクトニア属菌種(Rhizoctonia spp.)、ペシロマイセス属菌種(Paecilomyces spp.)、ピソマイセス属菌種(Pithomyces spp.)、及びクラドスポリウム属菌種(Cladosporium spp.)、エピデルモフィトン・フロッコーサム(Epidermophyton floccusum)、ミクロスポルム・オドウィニ(Microsporum audouini)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・ディストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・エクイヌム(Microsporum equinum)、ミクロスポルム・ジプスム(Microsporum gypsum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、トリコフィトン・コンセントリクム(Trichophyton concentricum)、トリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・ガリネ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・ジプセウム(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・キンケアヌム(Trichophyton quinckeanum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・シェーンレイニ(Trichophyton schoenleini)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ベルコスム(Trichophyton verrucosum)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、及び/又はトリコフィトン・ファビホルメ(Trichophyton faviforme)を含む皮膚糸状菌(Dermatophytres)が挙げられる。
【0074】
「投与」は、多細胞コンジュゲート又は組成物を身体中に、好ましくは体循環中に導入するための任意の手段を意味している。例には、経口、頬側、舌下、肺、経皮、経粘膜、並びに皮下、腹腔内、静脈内、及び筋肉注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の多細胞コンジュゲート又は医薬組成物のがんの治療に好ましい投与方法は、静脈内投与によるものである。投与はまた、多細胞コンジュゲート又は組成物を局所的ながんへの導入、例えば、限定されないが、局所治療又は腫瘍部位への注入(例えば、腫瘍内投与(固形腫瘍)、骨髄への投与(AMLなどの場合)など)、又はリンパ節及び他の免疫調節部位に達するように全身的な導入を含む。
【0076】
病原性感染を治療するための本発明の多細胞コンジュゲート又は医薬組成物の好ましい投与方法には、病原体感染部位への静脈内投与又は局所投与が含まれる。例えば、肺炎の場合、肺への局所投与は、吸入又は洗浄を介することが企図され得る。
【0077】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、有益な、又は望ましい生物学的及び/又は臨床成績をもたらすのに十分な量を意味する。例えば、このような結果は、がん細胞(薬剤耐性がん細胞又は治療抵抗性がん細胞を含む)の増殖の低減、抑制もしくは防止;がん細胞の転移又はがん細胞もしくは転移の侵襲を低減、抑制もしくは防止;又はがんもしくはその転移の少なくとも1つの症状、又は生体系のいずれか他の望ましい変化を低減、緩和、抑制もしくは防止できる。病原体感染症の場合、結果は、特に、病原体の増殖及び蔓延を低減、抑制又は防止、病原体感染症の1種又は複数の症状を低減又は防止できる。
【0078】
「効果的治療」は、有益な効果、例えば、疾患又は状態の少なくとも1種の症状の改善をもたらす治療を意味する。有益な効果は、ベースラインに対する改善、即ち、方法による療法の開始前になされた測定又は観察に対する改善の形態を取ることができる。がんの場合、有益な効果はまた、がん細胞のさらなる増殖の低減、抑制もしくは防止の形態;がん細胞の転移もしくはがん細胞もしくは転移の侵襲の低減、抑制又は防止の形態;又はがんもしくはその転移の少なくとも1つの症状の低減、緩和、抑制もしくは防止の形態を取ることもできる。このような効果的治療は、例えば、患者の疼痛を減らし、がん細胞のサイズもしくは数を減らし、細胞の転移を減らすもしくは防止し、又はがんもしくは転移細胞の増殖を遅らせ得る。
【0079】
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトを意味している。対象は治療を必要としているヒトであるのが適切である。しかし、本発明では、獣医学による使用も意図されている。「哺乳動物」は、限定されないが、ヒト、チンパンジー及び他の類人猿並びにサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタなどの家畜(farm animal);ウサギ、イヌ及びネコなどの愛玩動物(domestic animal);ラット、マウス、及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などの哺乳綱のいずれかのメンバーを意味する。用語「対象」は特定の年齢又は性別を表すものではない。好ましい実施形態では、対象はヒトである。好ましい実施形態では、対象は、抗原に関連する疾患又は状態を有する。一実施形態では、ヒトはがんを有する。別の実施形態では、ヒトは病原体感染症を有する。
【0080】
キット
さらなる実施形態では、本開示は、本明細書記載の方法を実施するためのキットを提供する。一実施形態では、キットは、本明細書で記載の多細胞コンジュゲート及び使用説明書を含む。キットは、抗原に関連する状態を治療するために使用し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、多細胞コンジュゲートを形成するための凍結iNKT細胞及び使用説明資料を含むキットが想定されている。いくつかの実施形態では、既製の凍結iNKT細胞集団を用いて、多細胞コンジュゲートを用いた治療を必要としている対象由来のDCと共に多細胞コンジュゲートを形成できる。使用説明資料は、治療を必要としている対象由来の血液試料から単球を単離し、単球をDCに分化させる際の説明書を提供し得る。PBMCから及び血液から単球を単離する方法は、当技術分野において既知であり、上記されている。更に、キットは、抗原又はiNKT細胞とコンジュゲート化の前に、DC細胞を抗原とインキュベートすることによりDC細胞に抗原をロードするための説明書を含み得る。
【0082】
別の実施形態では、キットは、凍結同種iNKT細胞及び本明細書で記載の多細胞コンジュゲートを作製するための説明書を含む。キットは、抗原、血液試料から単球を単離するための説明書を更に含み得る。単球をDCに分化させる方法に関する追加の説明書が提供され得る。キットは、本明細書で記載の多細胞コンジュゲートの増殖、単離及び産生のための培地及び追加の成分、例えば、刺激因子、成長因子、抗体などを更に含み得るのが適切である。別の実施形態では、キットは、DCに抗原をロードする際の説明書、及び/又はDCへのロードのための抗原の選択及び使用のための説明書を更に含み得る。
【0083】
別の実施形態では、キットは、がんの治療のための本明細書で記載の多細胞コンジュゲート又は組成物、及び使用説明書を含む。キットは、多細胞コンジュゲート又はこれを含む組成物と組み合わせて使用するためのチェックポイント阻害剤を更に含み得る。
【0084】
発明概念から逸脱することなく、既に記載されたものに加えて、多くの追加の変更が可能であることは、当業者には明らかなはずである。本開示の解釈において、全ての用語は、文脈に適合させて可能な限り最も広くなるように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」の語尾変化は、非排他的に、要素、成分、又はステップを言及するとして解釈されるべきであり、したがって言及された要素、成分、又はステップは、明示的に言及されない他の要素、成分、又はステップと組み合わせられ得る。「含む(comprising)」として言及される実施形態はまた、これらの要素「から基本的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」としても企図されている。この用語は、「から基本的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of」は、特許調査手順マニュアル(MPEP)及び関連連邦巡回控訴裁判所(Federal Circuit)の解釈に準拠して解釈されるべきである。「から基本的になる(consisting essentially of)」という移行句は、指定された材料又はステップに対する請求項及び請求発明の基礎的で新しい特徴に実質的には影響を及ぼさない材料又はステップに限定するものである。「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲に指定されていない要素、ステップ、又は成分を除外する閉鎖型用語である。例えば、配列に関して、「からなる(consisting of)」は、配列番号でリストとされた配列を意味し、その一部としてその配列番号を含み得るより大きな配列を意味しない。
【0085】
本明細書で言及する全ての出版物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合には、定義を含めて本明細書が優先される。
【0086】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態の説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。別に定めのない限り、全ての技術及び化学的用語は、本発明が属する当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているのと類似又は同等の方法及び材料を、本発明を実施又は試験するために使用することが可能であるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。更に、材料、方法、及び実施例は、例示としてのみの目的のために示されており、限定する意図はない。
【実施例
【0087】
実施例1
我々は、DCの存在下で、抗原をロードした樹状細胞(DC)により、インバリアントナチュラルキラーT細胞(iNKT細胞)が、抗原特異的T細胞の活性化を促進できることを見出した。CD4+iNKT細胞は、健康な成人対象の末梢血から選別され、高度に純粋な培養物を生成するために、インビトロで増殖された。DCは、iNKT細胞ドナーに遺伝的に関連しない(即ち、iNKT細胞に同種の)健康な成人対象から採取された末梢血試料から単離された単球から導かれた。DCを、1:1の比率のiNKT細胞と共インキュベートしてコンジュゲートの形成を可能としたか、又は単独で培養した。iNKT-DCコンジュゲート又はDC単独含有培養物を、エプスタイン・バールウィルス(EBV Ag)、毒素性ショック症候群毒素超抗原(TSST SAg)、又は破傷風トキソイド抗原(TT Ag)を含む、抗原と同時インキュベート、又はモック処理(Agなし)した。次に、それらを、DCに対し自家であるT細胞と共培養し、それにより、DCは、培養物中の総細胞の2%を構成した。
【0088】
抗原ロードiNKT-DCコンジュゲートのT細胞増殖性を活性化する能力を調査するために、我々は、細胞分裂を受けた細胞のパーセントの測定を可能にする蛍光染料でT細胞を標識した。図1A及び図1Bに示すように、EBV抗原をロードしたiNKT-DCコンジュゲートへの曝露は、EBV抗原をロードした単独DCに曝露したT細胞に比べて、分裂T細胞の頻度の増大をもたらした。同様に、TSST超抗原で事前標識したiNKT-DCコンジュゲートへの曝露は、TSST超抗原に結合するTCR型含有T細胞サブセットにより、TSST標識単独DCに曝露したものより大きな増殖をもたらした。抗原担持iNKT-DCコンジュゲートへの曝露により誘導された増殖の増大は、CD8+及びCD4+T細胞の両方で観察された。
【0089】
抗原ロードiNKT-DCコンジュゲートのT細胞によるサイトカイン産生を活性化する能力を試験するために、DCに破傷風トキソイド抗原を適用するか、又はモック処理し、同種iNKT細胞及び自家T細胞と混合した。24~48時間の共培養後、細胞内サイトカイン染色を細胞混合物に対し実施し、試料をフローサイトメトリーで分析して、サイトカインIFNγを産生し始めたCD4+T細胞(iNKT細胞を除く)の頻度を決定した。図1Cに示すように、抗原処理DC含有培養物にiNKT細胞が添加されると、細胞内IFNγ含有CD4+T細胞の数の増大が観察され、iNKT細胞がCD4+T細胞のDCによる抗原依存性活性化を促進することを示す。iNKT細胞の効果は、DCをリポ多糖類(LPS、免疫応答を開始するシグナルを提供することが既知のトール様受容体リガンド)と少なくとも同程度に強力であり、iNKT細胞は培養物の単に0.25%だけを含むことが必要であるように見えた(図1D)。
【0090】
iNKTの細胞刺激効果は、物理的接触を必要とするかどうかを判定するために、DCをiNKT細胞及びT細胞と共に、それらを同じウェル中に入れて、又はトランスウェル膜により分離して、共培養した。IFNγ分泌の定量化により、高められたT細胞活性化は、iNKT細胞及びDCが相互に接触できる場合、及びT細胞がiNKT細胞及びDCの両方に接触できる場合にのみ観察されることが明らかになった(図1E)。DC又はT細胞がiNKT分泌因子にのみ暴露された場合は、高められたT細胞活性化が観察されず、iNKT細胞のアジュバント活性効果は接触依存性であることを示している。
【0091】
この活性化の機序を調べるために、iNKT細胞をDCと共に培養した。意外にも、フローサイトメトリー分析は、iNKT細胞と対形成したDCの強く接着したコンジュゲート化集団の存在を明らかにした(図2A及び図2B)。ほとんどのコンジュゲート(>80%)は、1つのiNKT細胞及び1つのDCを含み、10%未満が合計4つ以上の細胞を含んだ(図2C)。iNKT細胞との共インキュベーションの前の、リゾリン脂質を含む結合脂質含有の、高度に精製されたヒト血清アルブミンへのDCの事前曝露は、より高い頻度のiNKT-DCコンジュゲートを生じた(図2D)。コンジュゲートはまた、iNKT細胞と、誘導多能性幹細胞(iPSC)から再分化されたDCとの間でも観察された(図2E)。
【0092】
図3A及び図3Bに示すように、iNKT細胞及びDCのコンジュゲートは、培養物中で少なくとも96時間にわたり強く接着したまま残る。免疫不全マウスの静脈内に注入された24時間後のマウス組織中で、密接して結合したiNKT細胞とDC(明白なコンジュゲート)が観察された(図3C及び図3D)。
【0093】
iNKT細胞とDCのコンジュゲートは、Tリンパ球を活性化することが知られている多種多様のリガンドの細胞表面発現レベルを高めたことを示している(図4A)。更に、合成アジュバント(グルコピラノシル(glucopuranosyl)脂質アジュバント、GLA)で処理されたDCに比べて、iNKT+DCコンジュゲートは、MHCクラスI分子(HLA_ABC)、共刺激リガンドCD70、CD134L(OX40L)、CD137L(41BBL)、CD215(IL-15Rα)のより高い発現、及び阻害性リガンドPD-L1のより低い発現を示す(図4B及び図4C)。この共刺激分子セットは、DCコンジュゲート化iNKT細胞上で選択的に上方制御され、iNKT細胞に曝露されたがコンジュゲートを形成しなかったDC上でわずかな上方制御を示し、コンジュゲート上の上方制御発現は、インビトロで少なくとも96時間維持される(図6)。T細胞による抗腫瘍及び抗ウィルス応答を促進することが既知の分泌されたIL-12p70及びIFNγ、サイトカインは、iNKT細胞とDCの共培養で増大した(図4D)。
【0094】
イメージングフローサイトメーターを用いたさらなる分析により、iNKT細胞は、CD70を発現し、DCは、他の共刺激性受容体を発現する成分であるので、iNKT細胞とDCの両方が、コンジュゲートの共刺激プロファイルに寄与することが明らかになった(図5A)。更に、CD70は、インビトロ培養中にiNKT細胞上で発現上昇され、一次iNKT細胞は、直のエクスビボでは、ほとんどCD70発現を示さない(図5B)。
【0095】
iNKT+DCコンジュゲートがT細胞を活性化して自家腫瘍の攻撃に使用可能かどうかを試験するために、ヒト臍帯血単核球(Bリンパ球、Tリンパ球、単球、及びDCを含む)を、エプスタイン・バールウィルス、B細胞リンパ腫の形成を促進することが知られているヒトB細胞特異的γ-ヘルペスウィルスに短時間曝露し、細胞を免疫不全マウスの腹腔内に注入した。EBV誘導リンパ腫担持マウスから採取したヒトT細胞をiNKT+DCコンジュゲートに曝露することにより、標的細胞の高められた殺作用を生じ、一方、EBVナイーブT細胞をiNKT+DCコンジュゲートに曝露した場合には、標的細胞殺傷は高められなかった(図7A)。iNKT+DCコンジュゲートの投与がインビボでヒト腫瘍の除去を促進するかどうかを試験するために、EBV誘導B細胞リンパ腫担持マウスにiNKT細胞単独、DC単独、iNKT+DCを注入するか、又はモック治療した。6日後の腫瘍量の検査により、iNKT+DC混合物の投与が腫瘍量の低減に繋がり、一方iNKT細胞単独、又はDC単独の同じ投与は、モック治療マウスと類似の腫瘍量であることが明らかとなった(図7B)。ビークル治療マウス由来の膵臓組織の組織学的分析は、リンパ腫瘍の存在と一致する広範なリンパ球性の浸潤を明らかにしたが、一方、iNKT-DCコンジュゲートを投与されたマウス由来の膵臓組織は、リンパ球性浸潤が除去されたように見える領域を示した(図7C)。脾臓組織を3匹のiNKT-DCコンジュゲートを投与されたEBVリンパ腫担持マウス、及び3匹のビークル治療されたEBVリンパ腫担持マウスから採取し、NanoString免疫プロファイリング分析に供し、約700個のヒト免疫関連遺伝子の発現レベルを評価した。この分析により、ビークル治療マウスに比べて、iNKT-DCコンジュゲートを投与されたマウス中で有意に発現上昇された49個の遺伝子、及びビークル治療マウスに比べて、iNKT-DCコンジュゲートを投与されたマウス中で有意に下方制御された11個の遺伝子が明らかになった(図7D)。この分析により、iNKT-DC治療後、キナーゼ(PIK3アイソフォーム、MAPK1、AKT3)などのシグナル伝達分子及びカルシウムチャネル調節因子STIM1、転写因子(NFAT3C、FOXO3、KLF2)、及びT細胞活性化及び輸送を調節する細胞表面受容体(CD28、ITGAL、S1PR1)を含む、T細胞活性化に付随する同義遺伝子が、発現上昇されることが明らかになった。iNKT-DC治療後に下方制御された遺伝子には、IL-10、FCRL1、及びCD22を含む、EBV感染B細胞に関連する遺伝子が含まれた。T細胞及びEBV感染Bリンパ腫細胞に対し自家であるDCと対形成したiNKT細胞の投与の有意な抗腫瘍効果とは対照的に、T細胞及びB細胞に対し同種であるiNKT細胞及びDCの投与は有意な抗腫瘍効果がなく(図7E)、iNKT-DCコンジュゲートが自家T細胞により特異的応答を活性化することを裏付けた。
【0096】
材料及び方法:
iNKT細胞の単離:末梢血(15~50ml)を健康な成人ドナーからヘパリン処理チューブ(10~30 USPヘパリン/ml血液)中に採取した。末梢血単核球(PBMC)を、製造業者のプロトコルに従って密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque、GE Healthcare)により単離し、1%のウシ血清アルブミン(PBS/BSA)を含む無菌リン酸塩緩衝生理食塩水中に懸濁させる。PBMCを、市販のCD3、CD4、CD19に対する蛍光標識抗体、及び脂質ロードCD1d四量体試薬(例えば、ヒトCD1d PBS-57PE(Emory UniversityのNIH Tetramer Facilityから))を用いて、4℃で30分間にわたり標識する。細胞を遠心分離(300gで10分)によりペレット化し、無菌PBS/BSA中にそれらを再懸濁することにより、非結合染色試薬を洗い流す。CD4+iNKT細胞(CD4、CD3、及びCD1d四量体に対し陽性細胞)をフローサイトメトリーで50%ウシ仔ウシ血清含有RPMI1640培地の溶液中に選別する。
【0097】
iNKT細胞の増殖及び貯蔵:PBMCを健康な成人ドナーから単離し、「フィーダー」細胞として使用する。注意すべきは、これらの細胞は、iNKT細胞を単離するために使用した対象と同じ人由来である必要なないことである。フィーダーPBMCは、X線照射器を用いて、70Gyの電離放射線を照射され、次の処方に従って調製される無菌成長培地中に懸濁される:10%の加熱不活性化ウシ胎仔血清、5%の加熱不活性化した仔ウシ血清(化学的に定義された/補充された)、3%のプールされたヒトAB血清、1%のL-グルタミン(2mMの最終濃度)、1%のPenn/Streo(100 IU/mlのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンの最終濃度)、200U/mlの組換えヒトIL-2で希釈されたRPMI1640培地、(成長培地の最終グルコース濃度は約8.9mMでなければならない)。成長培地中に懸濁された照射フィーダーPBMCを1x106細胞/mlの濃度で無菌ポリスチレン組織培養プレートに加える。選別されたiNKT細胞を5x103~5x105細胞/mlの最終濃度まで加える。次の刺激剤の片方又は両方をウェルに加える:1~5μg/mlの最終濃度のフィトヘマグルチニン(成人PBMC由来のポリクローナルT細胞を用いて事前の用量設定実験により決定される)、10~30ng/mlの抗CD3 mAb(例えば、クローンOKT3又はSPVT3b)。細胞を加湿インキュベーター中で、5%CO2下、37℃で培養し、1~2日毎に培地の酸性化の証拠として目視で、及び光学顕微鏡検で増殖の徴候を監視する。酸性化が明らかになると(黄色)、25~50%の培養上清を新鮮培地と交換し、細胞を再懸濁し、新鮮培地で希釈し、十分な増殖が起こった場合はいつでも、新しいウェルに分割する。十分なiNKT細胞増殖が起こり、培養物の増殖を損なうことなく分析が可能になると(通常、2~3週間後)、約5~10x104細胞を取り出し、フローサイトメトリーにより試験して、CD3、CD4に対する抗体、及び脂質ロードCD1d四量体試薬又はiNKT細胞のT細胞受容体の特異的な抗体(クローン6B11)を用いて培養物の純度を確定する。必要に応じて、培養物をフローサイトメトリー又は磁性選別を用いて更に精製し、汚染細胞を除去する(通常、99%以上のCD4+iNKT細胞を含む培養物のみがコンジュゲートを生成するために使用される)。iNKT細胞の十分な増殖が起こり、増殖速度が約3~4日毎に二倍にまでおそくなった後(通常、培養の4~6週後)に、iNKT細胞の一定分量を5~20x106細胞/mlの濃度で、CryoStor CS10凍結培地(StemCell Technologies)を用いて凍結する。
【0098】
単球由来樹状細胞の生成:末梢血(5~50ml)をヘパリン処理チューブ(10~30 USPヘパリン/ml血液)中に採取する。注意すべきは、特定の状況(例えば、造血幹細胞移植を受けた患者)では、DCドナーは、異なる人である可能性があるが、ほとんどの場合、この試料は、iNKT+DCコンジュゲート免疫療法を最終的に受けるはずの人から採取されるであろう。PBMCは、密度勾配遠心分離により単離され、単球は、CD14被覆ビーズ(Miltenyi Corp.又はStemCell Technologies)を用いて製造業者のプロトコルに従って、ポジティブ選択磁性選別により単離される。精製CD14+単球を次の処方に従って調製した培地中に懸濁させる:RPMI1640培地、10%のウシ胎仔血清、100 IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、300 U/mlの組換えヒトGM-CSF、200U/mlの組換えヒトIL-4。細胞を、無菌ポリスチレン組織培養プレートに0.5~1x106細胞/mlで加え、加湿インキュベーターを用い、5%CO2下、37℃で培養する。樹状細胞(DC)表現型への分化は通常、培養の2日以内に明らかになり始めるが、我々は通常、分化培地中で3日間インキュベートした細胞からコンジュゲートを生成する。成功裡の分化及び得られた培養物の純度を、CD14、CD209(DC-SIGN)、CD83、CD3、CD19、CD56に対する蛍光標識抗体を用いて、フローサイトメトリー分析により検証する。未成熟DCは、CD209発現細胞として特定され、CD14がわずかに検出できるか、又は検出できず、他のマーカーを欠いている。必要に応じて、培養物を磁性又はフローサイトメトリーソーティング選別により更に精製できる。
【0099】
iNKT+DCコンジュゲートの生成:コンジュゲート化の前に、iNKT細胞を1~2日間解凍し、上記のiNKT細胞成長培地中で培養する。DCを関連抗原の由来源に曝露する。iNKT細胞及びDCを、DC当り1~5iNKT細胞の比率で混合し、10%のウシ胎仔血清、100 IUのペニシリン及び100μgのストレプトマイシンを含むRPMI1640培地に懸濁し、加湿インキュベーター中で、5%CO2下、37℃で1~24時間、共培養する。本明細書で開示のほとんどの実験では、24時間の共培養を用いて、コンジュゲートを生成した。しかし、我々は、コンジュゲート形成は、1時間内に起こり、コンジュゲートは、培養物中で少なくとも96時間存続するように見える。フローサイトメトリー分析を実施して、iNKT+DCコンジュゲート形成及び重要な共刺激分子(例えば、CD70、CD80、CD86)の発現上昇を検証する。これらの実験では、我々は、有効性を評価するために、未分離のiNKT+DC混合物を使用した。しかし、我々は、免疫療法試薬を生成するために、iNKT+DCコンジュゲートを使用する前に、フローサイトメトリーソーティングにより単離するであろう。
図1A
図1B
図1C-D】
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C-D】
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
【国際調査報告】