(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】CLN2疾患の眼症状に対する遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20231018BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231018BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231018BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231018BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20231018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231018BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20231018BHJP
C12N 15/57 20060101ALN20231018BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
A61K35/76
A61P27/02
A61P25/00
A61K48/00
A61K38/48
A61P43/00 105
C12N15/864 100Z
C12N15/57
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521316
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 US2021053802
(87)【国際公開番号】W WO2022076582
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518362720
【氏名又は名称】レジェンクスバイオ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ マリア オーンズマン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジョセフ パコーラ
(72)【発明者】
【氏名】シェリ ヴァン エベレン
(72)【発明者】
【氏名】パウロ ファラベーラ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マーストン ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス アレクサンダー ピアズ サシャ バス
(72)【発明者】
【氏名】クゥイ ヒエ キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA33
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC02
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC541
4C084ZC542
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA33
4C087ZB21
4C087ZC54
(57)【要約】
例えば、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターなどの組換えウイルスベクターを含む、眼の病態を処置するための、ヒト対象の眼の網膜/硝子体液への治療用産物(例えば治療用タンパク質(例えば、抗体)、治療用RNA(例えば、shRNA、siRNA、及びmiRNA)、及び治療用アプタマー)の送達のための組成物及び方法を記載する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLN2バッテン病に関連する眼症状の処置を必要とする対象においてそれを行う方法であって、前記方法が、前記対象の眼に、キャプシド及びベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含み、前記rAAVが、AAV9であり、前記ベクターゲノムが、
a.AAV5’逆方向末端反復(ITR)と、
b.プロモーターと、
c.ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするCLN2コード配列と、
d.AAV3’ITRと、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記AAV5’ITR及び/またはAAV3’ITRが、AAV2由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)の前記コード配列が、配列番号2の天然ヒトコード配列に対して少なくとも70%同一である、コドン最適化ヒトCLN2である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(c)の前記コード配列が、配列番号3である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記プロモーターが、ニワトリベータアクチンプロモーターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記プロモーターが、CBAプロモーター配列及びサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントを含むハイブリッドプロモーターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ベクターゲノムが、ポリAを更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリAが、合成ポリAであるか、またはウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、SV40、ウサギβ-グロビン(RGB)、もしくは修飾RGB(mRGB)由来である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イントロンを更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記イントロンが、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、オバルブミン、またはp53由来である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エンハンサーを更に含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記エンハンサーが、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34、ApoEである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベクターゲノムが、約3キロベース~約5.5キロベースのサイズである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクターゲノムが、約4キロベースのサイズである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
2×10
10ゲノムコピー/眼の前記rAAVを投与する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
6×10
10ゲノムコピー/眼の前記rAAVを投与する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、中心網膜厚(CRT)におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、外顆粒層(ONL)厚におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、瞳孔計測によって測定される、瞳孔光反射におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、黄斑の厚さ/体積におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、全網膜厚におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、網膜神経線維層におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、内顆粒層におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、光受容体(PR)+網膜色素上皮(RPE)におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、外側セグメント+前記RPE(OS+RPE)におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、SD-OCTによって測定される、エリプソイドゾーン(EZ)におけるベースラインからの変化を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、標準治療を伴う同等の臨床的進行と比較して、網膜劣化の発症の遅延を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、標準治療を伴う同等の臨床的進行と比較して、視力喪失の発症の遅延を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、前記対象への前記rAAVの投与の3か月以内に、前記対象の前記眼の硝子体液及び/または房水中の検出可能なTPP1発現レベルをもたらす、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
硝子体液及び/または前記房水中のTPP1発現の前記レベルが、前記rAAVの投与前に検出不能であった、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象の血清中のTPP1発現の前記レベルが、検出不能のままである、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、脳室内Brineura(登録商標)酵素補充療法を同時に受けている、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、ヒトである、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2020年10月7日出願の米国シリアル番号63/088,911、及び2021年2月5日出願の米国シリアル番号63/146,134(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
電子提出した配列表の参照
本出願は、「12656-144-228_Sequence_Listing.txt」という名称であり、2021年9月30日に作製され、サイズが42,746バイトである、テキストファイルとして、本出願とともに提出された配列表を参照により組み込む。
【背景技術】
【0003】
1.背景技術
神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、希少かつ遺伝性の神経変性障害の群である。それらは、神経遺伝学的貯蔵疾患の中で最も一般的であると考えられており、患者に見られるセロイド及びリポフスチンに類似した自己蛍光性脂肪色素の蓄積を伴う。NCLは、異常に増加した筋緊張またはけいれん、失明または視力障害、認知症、筋協調性の欠如、知的障害、運動障害、発作及び不安定な歩行を含む、可変的でありながら進行性の症状に関連している。この疾患の頻度は、12,500人当たりおよそ1人である。NCLには3つの主要なタイプがある:成人(KufsまたはParry病)、若年及び後期幼児(Jansky-Bielschowsky病)。神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、元々、それらの発症年齢及び臨床症状によって(本明細書に記載のように)定義された。しかしながら、それ以来、それらはより新しい分子所見に基づいて再分類されており、これは以前に臨床表現型によって示唆されていたよりもはるかに多くの異なる遺伝的バリアントの重複の証拠を提供している。
【0004】
少なくとも20の遺伝子が、NCLに関連して同定されている。CLN2変異を有するNCL患者は、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)と呼ばれるペプスタチン非感受性リソソームペプチダーゼが欠損している。TPP1は、ポリペプチドのN末端からトリペプチドを除去する。変異は、CLN2遺伝子の全ての13エクソンで報告されている。いくつかの変異は、より長期化した経過をもたらす。発症は、通常、後期幼児期であるが、その後の発症が記載されている。CLN2には58を超える変異が記載されている。
【0005】
バッテン病の一形態であるCLN2疾患は、稀なリソソーム貯蔵障害(LSD)であり、推定発生率は、10万人の出生児当たり0.07~0.51である(Augestad et al.,2006、Claussen et al.,1992、Mole et al.,2013、National Batten Disease Registry、Poupetova et al.,2010、Santorelli et al.,2013、Teixeira et al.,2003)。CLN2疾患は、染色体11q15上に位置し、可溶性リソソーム酵素トリペプチジル-ペプチダーゼ-1(TPP1)をコードする、CLN2遺伝子の変異により引き起こされる致命的な常染色体劣性神経変性LSDである。CLN2遺伝子の変異、及びその後のTPP1酵素活性の欠乏は、貯蔵物質のリソソーム蓄積、ならびに脳及び網膜の神経変性をもたらす(Liu et al.,1998、Wlodawer et al.,2003)。CLN2疾患は、2~4歳での早期発症を特徴とし、通常、再発性発作(てんかん)及び協調運動困難(運動失調)を含む初期特徴を有する。この疾患はまた、以前に獲得したスキルの喪失(発達退行)をもたらす。てんかんは、しばしば薬物療法に難治性であり、精神運動機能の全般的な衰退は、小児期中期までの早期死亡前の3歳から5歳の誕生日の間に急速かつ均一である(Schulz et al.,2013)(Nickel M et al.,2016、Worgall et al.,2007)。
【0006】
古典的な神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)疾患に関連する網膜変性は、両側性、進行性、対称性の低下として現れ、中心黄斑部からブルズアイパターンで始まり、末期疾患で末梢網膜に拡大する(Orlin et al,2013 PLoS One.2013 Aug 28;8(8):e73128)。網膜変性は、重要な2年間にわたる光コヒーレンストモグラフィー(OCT)における中心網膜厚(CRT)の急速な喪失を特徴とする(Kovacs et al,2020;Ophthalmol Retina.2020;4(7):728-36)。しかしながら、視覚喪失が遅れているあまり一般的ではない減衰した表現型は、思春期という遅い時期に現れる可能性がある(Kohlschutter et al,2019)。
【0007】
組換えTPP1(Brineura(登録商標)セルリポナーゼアルファ、BioMarin Pharmaceuticals)を用いた酵素置換療法(ERT)は、最近、CLN2疾患の処置のために米国(US)及び欧州連合(EU)において承認され、永久植え込みデバイスを介して、側脳室への隔週注入として投与される。Brineura(登録商標)の臨床的利益は、FDAによって運動機能の安定化に限定されるように指定されたが、欧州医薬品庁(EMA)は、言語スキルにも同様にプラスの影響があると判定した(Brineura(登録商標)、FDA新医薬品承認審査概要、Brineura(登録商標)欧州公開医薬品審査報告書[EPAR]、Schulz et al.,2016)。Brineura(登録商標)は、脳にポートを直接植え込むための専門的な知見を必要とし、脳室内(ICV)投与に精通した訓練を受けた専門家によって、医療現場で2週間ごとに4時間の注入中に投与されなければならない。反復注入が必要なのは、部分的にBrineura(登録商標)の短いCSF及びリソソーム半減期のためであり、これらはそれぞれ、7時間及び11.5日と推定されている(Brineura(登録商標)、EPAR)。したがって、CLN2疾患を有する患者の中枢神経系(CNS)において、ERTの反復投与に関連する高い患者負担及び罹患率なしに、耐久性及び長期的なTPP1酵素活性を提供することができる新しい治療法のための重要な未充足のニーズが残っている。したがって、CLN2疾患の処置を必要とする対象においてTPP1を送達及び発現するのに有用な組成物が必要である。イヌTPP1(rAAV2.caTPP1)を発現する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の1回投与は、主に上皮細胞においてTPP1の高発現をもたらし、酵素を脳脊髄液中に分泌して臨床的利益をもたらすことが示された。Katz et al,Sci Transl Med.2015 Nov 11;7(313):313ra180、及びKATZ,et al,Gene therapy 2017 Feb 24(4):215-223(これらは参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。しかしながら、AAV2は脳実質に浸透せず、ニューロンを標的としないため、新規の神経向性AAVで達成できるものと比較して期待される利益を限定する。
【0008】
後期幼児神経セロイドリポフスチン症(CLN2)疾患では、CLN2遺伝子の変異は、TPP1酵素活性の欠如につながり、中枢神経系及び網膜内の深刻な神経変性をもたらす。膨大な数の眼疾患及び眼に病理学的症状を伴う疾患が、遺伝的改変またはタンパク質制御不全に起因し得る(Stone et al.,2017,Ophthalmology 124(9):1314-1331)。ゲノミクス及びプロテオミクスにおける近年の進歩は、かかる眼の疾患または症状の根底にある疾患機序及び/または遺伝的基盤の理解に大きな影響を与えている。遺伝子療法は、ある特定の眼疾患の処置において採用されている(例えば、国際特許出願第PCT/US2017/027650号(国際公開第2017/181021A1号)を参照されたい)。
【0009】
CLN2疾患の眼症状を処置するために現在承認されている治療法はなく、視力喪失は重要な未充足のニーズを呈している。利用可能な治療選択肢がないため、CLN2疾患を有する全ての小児は、視力喪失及び失明への進行に関連する黄斑変性を経験するであろう(Kovacs et al,2020、Williams et al,2017、Nickel et al,2018)。CLN2疾患の処置のためのERTの開始前及び開始以来、先導的な研究機関は、CLN2集団における視力喪失につながる網膜変性の経過を理解するために自然歴データを収集してきた。1)ERTは、CLN2疾患に関連する網膜変性の軌跡を変化させないこと、2)網膜変性の発症は、両眼が同時にかつ同じ程度に影響を受ける両側性であること、及び3)網膜変性は、経時的に、眼間で対称的に進行することが見出されている。
【発明の概要】
【0010】
2.発明の概要
一態様では、CLN2バッテン病に関連する眼症状の処置を必要とする対象においてそれを行う方法を本明細書に提供し、当該方法は、当該対象の眼に、キャプシド及びベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含み、rAAVは、AAV9であり、ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)、(b)プロモーター、(c)ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。一部の実施形態では、AAV5’ITR及び/またはAAV3’ITRは、AAV2由来である。一部の実施形態では、(c)のコード配列は、配列番号2の天然のヒトコード配列に対して少なくとも70%同一である、コドン最適化ヒトCLN2である。一部の実施形態では、(c)のコード配列は、配列番号3である。
【0011】
一部の実施形態では、プロモーターは、ニワトリベータアクチンプロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、CBAプロモーター配列及びサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントを含むハイブリッドプロモーターである。
【0012】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、ポリAを更に含む。一部の実施形態では、ポリAは、合成ポリAであるか、またはウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、SV40、ウサギβ-グロビン(RGB)、もしくは修飾RGB(mRGB)由来である。
【0013】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、イントロンを更に含む。一部の実施形態では、イントロンは、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、オバルブミン、またはp53由来である。
【0014】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、エンハンサーを更に含む。一部の実施形態では、エンハンサーは、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34、ApoEである。
【0015】
一部の実施形態では、ベクターゲノムは、約3キロベース~約5.5キロベースのサイズである。一部の実施形態では、ベクターゲノムは、約4キロベースのサイズである。
【0016】
一部の実施形態では、2×1010ゲノムコピー/眼のrAAVを投与する。一部の実施形態では、6×1010ゲノムコピー/眼のrAAVを投与する。
【0017】
一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、中心網膜厚(CRT)におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、瞳孔計測によって測定される、瞳孔光反射におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、黄斑の厚さ/体積におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、外顆粒層(ONL)厚におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、全網膜厚におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、内顆粒層におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、光受容体(PR)+網膜色素上皮(RPE)におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、外側セグメント+RPE(OS+RPE)におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、対象は、SD-OCTによって測定される、エリプソイドゾーン(EZ)におけるベースラインからの変化を有する。
【0018】
一部の実施形態では、対象は、標準治療を伴う同等の臨床的進行と比較して、網膜劣化の発症の遅延を有する。一部の実施形態では、対象は、標準治療を伴う同等の臨床的進行と比較して、視力喪失の発症の遅延を有する。
【0019】
一部の実施形態では、方法は、対象へのrAAVの投与の3か月以内に、対象の眼の硝子体液及び/または房水中の検出可能なTPP1発現レベルをもたらす。一部の実施形態では、硝子体液及び/または房水中のTPP1発現のレベルは、rAAVの投与前に検出不能であった。一部の実施形態では、対象の血清中のTPP1発現レベルは、検出不能のままである。
【0020】
一部の実施形態では、対象は、脳室内Brineura(登録商標)酵素置換療法を同時に受けている。
【0021】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
3.図面の簡単な説明
【
図1A】AAV.CB7.CI.hTPP1co.RBGベクターゲノムの概略表現である。ITRは、AAV2逆方向末端反復を表す。CB7は、サイトメガロウイルスエンハンサーを有するニワトリベータアクチンプロモーターを表す。RBGポリAは、ウサギベータグロビンポリアデニル化シグナルを表す。
【0023】
【
図1B】AAV.hTPP1coベクターの産生プラスミドのマップを提供する。
【0024】
【
図1C】AAVシスプラスミドコンストラクトのマップを提供する。ITR:逆方向末端反復、CMV IEプロモーター:サイトメガロウイルス前初期プロモーター、CBプロモーター:ニワトリβ-アクチンプロモーター ニワトリβ-アクチンイントロン、hCLN2:ヒトCLN2 cDNA、ウサギグロビンポリA:ウサギベータグロビンポリアデニル化シグナル、Kan-r:カナマイシン耐性遺伝子。
【0025】
【
図1D】AAVトランスパッケージングプラスミドコンストラクトのマップを提供する。
【0026】
【
図1E】アデノウイルスヘルパープラスミドのマップを提供する。
【0027】
【
図2】CLN2 CRS-MXスコアリングフローチャートを提供する。
【0028】
【
図3】2~3歳齢未満の対象のCLN2 CRS-LXスコアリングフローチャートを提供する。
【0029】
【
図4A】コンストラクトIの網膜下注射後のカニクイザルの房水及び硝子体液の両方におけるTPP1濃度を示す。用量は、GC/眼であり、データは、平均+/-SEMとして提示される。
【
図4B】コンストラクトIの網膜下注射後のカニクイザルの房水及び硝子体液の両方におけるTPP1濃度を示す。用量は、GC/眼であり、データは、平均+/-SEMとして提示される。
【0030】
【
図5】コンストラクトIの網膜下注射後のカニクイザルにおける血清TPP1濃度を示す。用量は、GC/眼であり、データは、平均+/-SEMとして提示される。
【0031】
【
図6A】カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下注射後に、眼において検出されたベクターDNAを示す。データは、平均及び標準偏差として提示される。
【
図6B】カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下注射後に、眼において検出されたベクターDNAを示す。データは、平均及び標準偏差として提示される。
【0032】
【
図7A】網膜下注射による4週間後のコンストラクトIベクターDNAの末梢生体内分布を示す。定量限界下(BLQ):50コピー/μgのDNA。データは、平均及び標準偏差として提示される。
【
図7B】網膜下注射による13週間後のコンストラクトIベクターDNAの末梢生体内分布を示す。定量限界下(BLQ):50コピー/μgのDNA。データは、平均及び標準偏差として提示される。
【0033】
【
図8】コンストラクトI投与後のカニクイザル網膜におけるTPP1の免疫蛍光染色を示す。TPP1に対する免疫蛍光染色、網膜細胞層を示すNissl対比染色のストリップ。
【0034】
【
図9】TPP1免疫反応性の閾値画像分析。示されるデータを、ビヒクルを注射した動物と比較し、1×10
12GC/眼の網膜下用量は、このより高い用量でのより高い形質導入レベルを示す、TPP1免疫染色の有意に大きい面積(**いずれかのビヒクルに対してp=0.0013、一元配置分散分析、事後ボンフェローニ)をもたらした。
【0035】
【
図10】RGX-381によるCLN2患者RPEの形質導入。CLN2 RPEは、対照RPEと比較して、TPP1発現の非存在を示す。3つの異なる用量の形質導入されたCLN2 RPEは、用量依存的な様式で処置の21日後にTPP1を発現する。
【0036】
【
図11】網膜オルガノイドの特性評価。網膜オルガノイドは、分化の80日目及び200日目に特性評価した。TPP1及びリカバリン(Recoverin)は、200日目に発現したが、80日目には発現しなかった(
図11A)。TPP1の非存在下で、200日目にCLN2 ROのSCMAS蓄積が検出される(
図11B)。
【0037】
【
図12】RGX-381によるROの処理。88日目に、RGX-381により処理されたROは、未処置のCLN2 ROにおいて検出されたSCMAS蓄積を防止した。MOI3:感染様式は、3E+06 GC/細胞であった。
【発明を実施するための形態】
【0038】
4.発明を実施するための形態
バッテン病の処置、特にバッテン病に関連する眼症状の処置のための方法及び組成物を、本明細書に提供する。バッテン病に関連する眼症状には、視力喪失、網膜萎縮及び/または網膜変性が含まれるが、これらに限定されない。かかる組成物には、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)、AAVキャプシドを含む当該rAAV、及びその中にパッケージングされたベクターゲノムが含まれ、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、(d)セクション4.1に記載されるようなAAV3’ITRを含む。セクション4.1.8に記載されるような、懸濁細胞培養物を使用して本明細書に記載のrAAVを製造する方法もまた、本明細書に提供する。組換えAAVを含む組成物、例えば、セクション4.2に記載の組成物も提供される。本明細書、例えば、セクション4.3に記載のように、TPP1をコードするベクター(rAAVなど)を、それを必要とする対象に送達することを含む、CLN2遺伝子の欠損によって引き起こされるバッテン病の眼症状を処置するための方法もまた、本明細書に提供する。
【0039】
4.1 コンストラクト及び製剤
本明細書に提供する方法において使用するための、治療用産物(例えば、TPP1)をコードする組換えウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、標的化ベクター、例えば、網膜色素上皮細胞を標的とするベクターである。
【0040】
一部の態様では、本開示は、使用するための核酸を提供し、核酸は、本明細書に記載のプロモーターまたはエンハンサー-プロモーターに作動可能に連結した治療用産物をコードする。
【0041】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を含む組換えベクターを本明細書に提供する。核酸は、DNA、RNA、またはDNA及びRNAの組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、DNAは、プロモーター配列、目的の治療用産物をコードする配列、非翻訳領域、及び終止配列からなる群から選択される配列のうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、目的の治療用産物をコードする配列に作動可能に連結したプロモーターを含む。
【0042】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示する核酸(例えば、ポリヌクレオチド)及び核酸配列は、例えば、当業者に公知である任意のコドン最適化技術(例えば、Quax et al.,2015,Mol Cell 59:149-161による概説を参照されたい)を介して、コドン最適化され得る。
【0043】
4.1.1 組換えウイルスベクター
組換えウイルスベクターには、組換えアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV2tYF、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAVrh10)、レンチウイルス、ヘルパー依存性アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、センダイウイルス(hemagglutinin virus of Japan(HVJ))、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、及びレトロウイルスベクターが含まれる。レトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MLV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベースのベクターが含まれる。アルファウイルスベクターには、セムリキ森林ウイルス(SFV)及びシンドビスウイルス(SIN)が含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えウイルスベクターは、それらがヒトにおいて複製欠損であるように改変される。ある特定の実施形態では、組換えウイルスベクターは、ハイブリッドベクター、例えば、「無力な」アデノウイルスベクターに配置されたAAVベクターである。ある特定の実施形態では、第1のウイルスからのウイルスキャプシド及び第2のウイルスからのウイルスエンベロープタンパク質を含む組換えウイルスベクターを本明細書に提供する。特定の実施形態では、第2のウイルスは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)である。より特定の実施形態では、エンベロープタンパク質は、VSV-Gタンパク質である。
【0044】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えウイルスベクターは、AAVベースのウイルスベクターである。好ましい実施形態では、本明細書に提供する組換えウイルスベクターは、AAV9ベースのウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、本明細書に提供するAAV9ベースのウイルスベクターは、網膜細胞に対する向性を保持する。ある特定の実施形態では、本明細書に提供するAAVベースのベクターは、AAV rep遺伝子(複製に必要とされる)及び/またはAAV cap遺伝子(キャプシドタンパク質の合成に必要とされる)をコードする。複数のAAV血清型が同定されている。ある特定の実施形態では、本明細書に提供するAAVベースのベクターは、AAVの1つまたは複数の血清型からの成分を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供するAAVベースのベクターは、AAV1、AAV2、AAV2tYF、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAVrh10のうちの1つまたは複数からのキャプシド成分を含む。好ましい実施形態では、本明細書に提供するAAVベースのベクターは、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAVrh10血清型のうちの1つまたは複数からの成分を含む。
【0045】
具体的な実施形態では、制御エレメントの制御下にあり、ITRに隣接している、治療用産物の発現のためのカセットを含むウイルスゲノム及びAAV9キャプシドタンパク質のアミノ酸配列を有するまたはAAV9キャプシドタンパク質(配列番号9)のアミノ酸配列に少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは99.9%同一であると同時にAAV9キャプシドの生物学的機能を保持するウイルスキャプシドを含むAAV9ベクターを提供する。ある特定の実施形態では、コードされたAAV9キャプシドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸置換を伴う配列番号9の配列を有し、AAV9キャプシドの生物学的機能を保持している。
【0046】
AAV9ベースのウイルスベクターは、本明細書に記載の方法のある特定の実施形態で使用される。AAVベースのウイルスベクターの核酸配列、ならびに組換えAAV及びAAVキャプシドの作成方法は、例えば、米国特許第7,282,199B2号、米国特許第7,790,449B2号、米国特許第8,318,480B2号、米国特許第8,962,332B2号及び国際出願第PCT/EP2014/076466号(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に説かれている。一態様では、治療用産物をコードするAAV(例えば、AAV9)ベースのウイルスベクターを本明細書に提供する。
【0047】
ある特定の実施形態では、上記で一本鎖AAV(ssAAV)が使用され得る。ある特定の実施形態では、自己相補性ベクター、例えば、scAAVが使用され得る(例えば、Wu,2007,Human Gene Therapy,18(2):171-82、McCarty et al,2001,Gene Therapy,Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254;ならびに米国特許第6,596,535号;同第7,125,717号;及び同第7,456,683号(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0048】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法において使用される組換えウイルスベクターは、組換えアデノウイルスベクターである。組換えアデノウイルスは、E1欠失を伴う、E3欠失を伴うまたは伴わない、かついずれかの欠失領域に発現カセットが挿入された、第1世代ベクターであることができる。組換えアデノウイルスは、E2及びE4領域の完全または部分的な欠失を含有する、第2世代ベクターであることができる。ヘルパー依存性アデノウイルスは、アデノウイルス逆方向末端反復及びパッケージングシグナル(phi)のみを保持する。治療用産物は、パッケージングシグナル及び3’ITR間に挿入され、ゲノムをおよそ36kbの野生型サイズ付近に維持するためのスタッファー配列を伴うまたは伴わない。アデノウイルスベクターを産生するための例示的なプロトコルは、Alba et al.,2005,“Gutless adenovirus:last generation adenovirus for gene therapy,”Gene Therapy 12:S18-S27(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0049】
4.1.2 遺伝子発現のプロモーター及び修飾因子
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、治療用産物の送達または発現を調節する構成要素(例えば、「発現制御エレメント」)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、治療用産物の発現を調節する構成要素を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、細胞への結合または標的化に影響を及ぼす構成要素を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、取り込み後に細胞内の治療用産物をコードするポリヌクレオチドの局在化に影響を及ぼす構成要素を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、例えば、治療用産物をコードするポリヌクレオチドを取り込んだ細胞を検出または選択するための検出可能または選択可能なマーカーとして使用することができる構成要素を含む。
【0050】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、1つまたは複数のプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。ある特定の実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。治療有効性に関して望ましいように治療用産物の発現をオン及びオフに切り替え得るように、誘導性プロモーターが好ましくあり得る。かかるプロモーターには、例えば、低酸素誘導性プロモーター及び薬物誘導性プロモーター、例えばラパマイシン及び関連作用物質によって誘導されるプロモーターが含まれる。低酸素誘導性プロモーターには、HIF結合部位を伴うプロモーターが含まれ、例えば、Schodel,et al.,2011,Blood 117(23):e207-e217及びKenneth and Rocha,2008,Biochem J.414:19-29(各々、参照により低酸素誘導性プロモーターの教示に関して組み込まれる)を参照されたい。加えて、コンストラクトにおいて使用され得る低酸素誘導性プロモーターには、エリスロポエチンプロモーター及びN-WASPプロモーターが含まれる(エリスロポエチンプロモーターの開示に関しては、Tsuchiya,1993,J.Biochem.113:395を、N-WASPプロモーターの開示に関しては、Salvi,2017,Biochemistry and Biophysics Reports 9:13-21(両方とも、参照により低酸素誘導性プロモーターの教示に関して組み込まれる)を参照されたい)。あるいは、組換えベクターは、薬物誘導性プロモーター、例えば、ラパマイシン及び関連類似体の投与によって誘導可能なプロモーターを含有し得る(例えば、国際特許出願公開第WO94/18317号、同第WO96/20951号、同第WO96/41865号、同第WO99/10508号、同第WO99/10510号、同第WO99/36553号、及び同第WO99/41258号、ならびに米国特許第US7,067,526号(ラパマイシン類似体を開示する)(これらは、参照により薬物誘導性プロモーターの開示に関して本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。誘導性プロモーターはまた、エクジゾンプロモーター、エストロゲン応答性プロモーター、及びテトラサイクリン応答性プロモーター、またはヘテロ二量体リプレッサースイッチを含む公知のプロモーターから選択され得る。Sochor et al,An Autogenously Regulated Expression System for Gene Therapeutic Ocular Applications.Scientific Reports,2015 Nov 24;5:17105及びDaber R,Lewis M.,A novel molecular switch.J Mol Biol.2009 Aug 28;391(4):661-70,Epub 2009 Jun 21(両方とも参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0051】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、低酸素誘導性プロモーターである。ある特定の実施形態では、プロモーターは、低酸素誘導因子(HIF)結合部位を含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、HIF-1α結合部位を含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、HIF-2α結合部位を含む。ある特定の実施形態では、HIF結合部位は、RCGTGモチーフを含む。HIF結合部位の位置及び配列に関する詳細については、例えば、Schodel,et al.,Blood,2011,117(23):e207-e217(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。ある特定の実施形態では、プロモーターは、HIF転写因子以外の低酸素誘導性転写因子のための結合部位を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、低酸素状態で優先的に翻訳される1つまたは複数のIRES部位を含む。低酸素誘導性遺伝子発現及びそれに関与する因子に関する教示については、例えば、Kenneth and Rocha,Biochem J.,2008,414:19-29(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0052】
別の実施形態では、プロモーターは、細胞特異的である。「細胞特異的」という用語は、組換えベクターのために選択された特定のプロモーターが、特定の細胞または組織型における最適化されたTPP1コード配列の発現を指示することができることを意味する。
【0053】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、ユビキタスまたは構成的プロモーターである。
【0054】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、CB7プロモーターである(Dinculescu et al.,2005,Hum Gene Ther 16:649-663(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、CB7プロモーターは、ベクターによって駆動される治療用産物の発現を増強する他の発現制御エレメント、例えば、(1)CAGプロモーター;(2)CBAプロモーター;(3)CMVプロモーター;(4)1.7kb赤錐体オプシンプロモーター(PR1.7プロモーター);(5)ロドプシンキナーゼ(GRK1)光受容体-特異的エンハンサー-プロモーター(Young et al.,2003,Retinal Cell Biology;44:4076-4085);(6)hCARpプロモーター、これはヒト錐体アレスチンプロモーターである;(7)hRKp、これはロドプシンキナーゼプロモーターである;(8)錐体光受容体特異的ヒトアレスチン3(ARR3)プロモーター;(9)ロドプシンプロモーター;及び(10)U6プロモーター(特に、治療用産物が低分子RNA、例えばshRNAまたはsiRNAである場合)を含む。
【0055】
ある特定の実施形態では、プロモーターは、nt3396~4061で配列番号5に示される配列などの、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーエレメントを有するハイブリッドニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターである。別の実施形態では、プロモーターは、CB7プロモーターである。他の好適なプロモーターとしては、ヒトβ-アクチンプロモーター、ヒト伸長因子-1αプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、サルウイルス40プロモーター、及び単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。例えば、Damdindorj et al,(August 2014)A Comparative Analysis of Constitutive Promoters Located in Adeno-Associated Viral Vectors.PLoS ONE 9(8):e106472を参照されたい。更に他の好適なプロモーターとしては、ウイルスプロモーター、構成的プロモーター、調節可能なプロモーターが挙げられる(例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照されたい)。あるいは、生理学的手がかりに応答するプロモーターを、本明細書に記載の発現カセット、rAAVゲノム、ベクター、プラスミド、及びウイルスにおいて利用してもよい。一実施形態では、プロモーターは、AAVベクターのサイズ制限のために、1000bp未満の小さいサイズである。別の実施形態では、プロモーターは、400bp未満である。他のプロモーターは、当業者によって選択され得る。
【0056】
更なる実施形態では、プロモーターは、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、ファージラムダ(PL)プロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、テトラサイクリン制御トランスアクチベーター応答性プロモーター(tet)システム、長い末端反復(LTR)プロモーター(例えば、RSV LTR、MoMLV LTR、BIV LTRまたはHIV LTR)、モロニーマウス肉腫ウイルスのU3領域プロモーター、グランザイムAプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(複数可)、CD34プロモーター、CD8プロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、B19パルボウイルスプロモーター、PGKプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、熱ショックタンパク質(HSP)プロモーター(例えば、HSP65及びHSP70プロモーター)、免疫グロブリンプロモーター、MMTVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、lacプロモーター、CaMV 35Sプロモーター、ノパリンシンテターゼプロモーター、MNDプロモーター、またはMNCプロモーターから選択される。そのプロモーター配列は、当業者に公知であるか、または公的に、例えば、文献においてもしくはデータベース、例えば、GenBank、PubMedなどにおいて入手可能である。
【0057】
ある特定の実施形態では、他の発現制御エレメントには、ニワトリβ-アクチンイントロン及び/またはウサギβ-グロビンポリAシグナルが含まれる。ある特定の実施形態では、プロモーターは、TATAボックスを含む。ある特定の実施形態では、プロモーターは、1つまたは複数のエレメントを含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のプロモーターエレメントは、互いに対して逆方向または移動させ得る。ある特定の実施形態では、プロモーターのエレメントは、協調的に機能するように配置されている。ある特定の実施形態では、プロモーターのエレメントは、独立して機能するように配置されている。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、ヒトCMV前初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RS)の長い末端反復、及びラットインスリンプロモーターからなる群から選択される1つまたは複数のプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、AAV、MLV、MMTV、SV40、RSV、HIV-1、及びHIV-2 LTRからなる群から選択される1つまたは複数の長い末端反復(LTR)プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、1つまたは複数の組織特異的プロモーター(例えば、網膜色素上皮細胞特異的プロモーター)を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、RPE65プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、VMD2プロモーターを含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、プロモーター以外の1つまたは複数の制御エレメントを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、エンハンサーを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、リプレッサーを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、イントロンまたはキメライントロンを含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、ポリアデニル化配列を含む。
【0059】
4.1.3 シグナルペプチド
治療用産物が治療用タンパク質である、ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、タンパク質送達を調節する構成要素を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、1つまたは複数のシグナルペプチドを含む。シグナルペプチドは、本明細書では「リーダー配列」または「リーダーペプチド」も称され得る。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、治療用産物が細胞内で適切なパッケージング(例えば、グリコシル化)を達成することを可能にする。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、治療用産物が細胞内で適切な局在化を達成することを可能にする。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、治療用産物が細胞からの分泌を達成することを可能にする。本明細書に提供する組換えベクター及び治療用産物に関連して使用されるシグナルペプチドの例は、表1に見出され得る。
【表1】
【0060】
4.1.4 非翻訳領域
治療用産物が治療用タンパク質である、ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、1つまたは複数の非翻訳領域(UTR)、例えば、3’及び/または5’UTRを含む。ある特定の実施形態では、UTRは、所望のタンパク質発現レベルに関して最適化されている。ある特定の実施形態では、UTRは、治療用タンパク質をコードするmRNAの半減期に関して最適化されている。ある特定の実施形態では、UTRは、治療用タンパク質をコードするmRNAの安定性に関して最適化されている。ある特定の実施形態では、UTRは、治療用タンパク質をコードするmRNAの二次構造に関して最適化されている。
【0061】
4.1.5 逆方向末端反復
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えウイルスベクターは、1つまたは複数の逆方向末端反復(ITR)配列を含む。ITR配列は、組換え治療用産物発現カセットを、組換えウイルスベクターのビリオンにパッケージングするために使用され得る。ある特定の実施形態では、ITRは、AAV、例えば、AAV8またはAAV2に由来する(例えば、Yan et al.,2005,J.Virol.,79(1):364-379;米国特許第7,282,199B2号、米国特許第7,790,449B2号、米国特許第8,318,480B2号、米国特許第8,962,332B2号及び国際特許出願第PCT/EP2014/076466号(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0062】
4.1.6 治療用産物
別の態様では、ヒト対象に治療用産物を送達する方法を本明細書に提供する。一部の実施形態では、治療用産物は、TPP1である。一部の実施形態では、患者は、限定されないが、視力喪失、網膜萎縮及び/または網膜変性を含む、バッテン病に関連する眼症状を経験している。特定の実施形態では、有効量のTPP1治療用産物を対象に送達する方法を本明細書に提供し、対象は、バッテン病に関連する眼症状を経験する。
【0063】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、治療用産物は、トリペプチジル-ペプチダーゼ1(TPP1)である。CLN2としても知られるTPP1遺伝子は、トリペプチジル-ペプチダーゼI活性を有するリソソームセリンプロテアーゼである、トリペプチジル-ペプチダーゼ1をコードする。また、リソソームプロテイナーゼによって産生される分解産物からトリペプチドを生成し、非置換N末端を有する基質を必要とする非特異的リソソームペプチダーゼとしても作用すると考えられている。本明細書で使用する場合、「TPP1」、「CLN2」、及び「トリペプチジル-ペプチダーゼ1」という用語は、コード配列を指すときに互換的に使用される。ヒトトリペプチジル-ペプチダーゼ1をコードする天然核酸配列は、NCBI参照配列NM_000391.3に報告され、ここでは配列番号2に再現される。ヒトトリペプチジル-ペプチダーゼ1の2つのアイソフォームは、UniProtKB/Swiss-ProtアクセッションO14773-1及びO14773-2として報告されている(ここでは、配列番号1及び4として再現される)。CLN2遺伝子の変異は、後期幼児NCL(LINCL)疾患に関連している。
【0064】
ある特定の実施形態では、ヒト(h)TPP1をコードする最適化cDNAは、最適なコドン使用のためにカスタム設計され、合成されてもよい。ある特定の実施形態では、配列番号3として再現されるhTPP1co cDNAは、次いで、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー(C4)とニワトリベータアクチンプロモーターとの間のハイブリッドであるCB7プロモーターによって駆動される、導入遺伝子発現カセットに配置されてもよく、一方、このプロモーターからの転写は、ニワトリベータアクチンイントロン(CI)の存在によって増強される(
図1A及び1B)。ある特定の実施形態では、発現カセットのためのポリAシグナルは、ウサギベータ-グロビン(RBG)ポリAである。
【0065】
一態様では、ヒト(h)TPP1をコードするコドン最適化された操作された核酸配列を提供する。ある特定の実施形態では、天然TPP1配列(配列番号2)と比較して翻訳を最大化するように設計された、操作されたヒト(h)TPP1 cDNAを、(配列番号3として)本明細書に提供する。好ましくは、コドン最適化TPP1コード配列は、全長天然TPP1コード配列(配列番号2)に対して、約80%未満の同一性、好ましくは約75%の同一性を有する。一実施形態では、コドン最適化TPP1コード配列は、配列番号2の天然TPP1コード配列に対して約74%の同一性を有する。一実施形態では、コドン最適化TPP1コード配列は、AAV媒介性送達(例えば、rAAV)後の天然TPP1と比較して、改善された翻訳速度を特徴とする。一実施形態では、コドン最適化TPP1コード配列は、配列番号2の全長天然TPP1コード配列に対して、約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%未満またはそれ以下の同一性を共有する。一実施形態では、コドン最適化核酸配列は、配列番号3のバリアントである。別の実施形態では、コドン最適化核酸配列、配列番号3と約99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%またはそれ以上の同一性を共有する配列。一実施形態では、コドン最適化核酸配列は、配列番号3である。別の実施形態では、核酸配列は、ヒトでの発現に最適化されたコドンである。他の実施形態では、異なるTPP1コード配列が選択される。
【0066】
ゲノムの全長、遺伝子コード配列の全長、または少なくとも約500~5000ヌクレオチドの断片にわたり得る、配列同一性比較の長さが所望される。しかしながら、より小さい断片間、例えば、少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20~24ヌクレオチド、少なくとも約28~32ヌクレオチド、少なくとも約36以上のヌクレオチドの同一性もまた所望され得る。
【0067】
タンパク質、ポリペプチド、約32アミノ酸、約330アミノ酸、もしくはそれらのペプチド断片、または対応する核酸配列コード配列の全長にわたるアミノ酸配列について、パーセント同一性を容易に決定することができる。好適なアミノ酸断片は、少なくとも約8アミノ酸の長さであってもよく、最大約700アミノ酸であってもよい。一般に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、または「類似性」を指す場合、「同一性」、「相同性」、または「類似性」は、「アラインメントされた」配列を参照して決定される。「アラインメントされた」配列または「アラインメント」は、参照配列と比較して、欠損または追加の塩基もしくはアミノ酸の補正を含むことが多い、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。
【0068】
同一性は、配列のアラインメントを調製することによって、及び当該技術分野で公知の、または市販されている種々のアルゴリズム及び/またはコンピュータープログラムの使用によって決定され得る[例えば、BLAST;ExPASy;ClustalO;FASTA;例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム、Smith-Watermanアルゴリズムを使用する]。アラインメントは、様々な公的にまたは商業的に入手可能な多重配列アラインメントプログラムのうちのいずれかを使用して行われる。配列アラインメントプログラム、例えば、「Clustal Omega」、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び「Match-Box」プログラムが、アミノ酸配列に対して利用可能である。一般に、これらのプログラムのうちのいずれかは、デフォルト設定で使用されるが、当業者は、必要に応じてこれらの設定を変更することができる。あるいは、当業者は、参照されるアルゴリズム及びプログラムによって提供されるものと少なくとも同一性またはアラインメントのレベルを提供する別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,“A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0069】
核酸配列については、複数の配列アラインメントプログラムも利用可能である。かかるプログラムの例としては、「Clustal Omega」、「Clustal W」、「CAP配列アセンブリ」、「BLAST」、「MAP」、及び「MEME」が挙げられ、これらは、インターネット上のウェブサーバーを介してアクセス可能である。かかるプログラムの他のソースは、当業者に公知である。あるいは、Vector NTIユーティリティも使用される。上記のプログラムに含まれるものを含む、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる、当該技術分野で公知のいくつかのアルゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を使用して比較することができる。Fasta(商標)は、クエリと検索配列との間の最適なオーバーラップ領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、参照により本明細書に組み込まれるGCGバージョン6.1で提供されるように、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのNOPAM因子)を有するFasta(商標)を使用して決定することができる。
【0070】
コドン最適化コード領域は、様々な異なる方法によって設計することができる。この最適化は、オンラインで利用可能な方法(例えば、GeneArt)、公開された方法、またはコドン最適化サービスを提供する会社、例えば、DNA2.0(Menlo Park,CA)を使用して行われ得る。1つのコドン最適化方法は、例えば、米国国際特許公開第2015/012924号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。例えば、米国特許公開第2014/0032186号及び米国特許公開第2006/0136184号も参照されたい。好適に、産物のオープンリーディングフレーム(ORF)の全長が修飾される。しかしながら、一部の実施形態では、ORFの断片のみが変更され得る。これらの方法のうちの1つを使用することにより、任意の所与のポリペプチド配列に周波数を適用し、ポリペプチドをコードするコドン最適化コード領域の核酸断片を産生することができる。
【0071】
コドンへの実際の変更を行うため、または本明細書に記載のように設計されたコドン最適化コード領域を合成するために、いくつかの選択肢が利用可能である。かかる修飾または合成は、当業者に周知の標準的及びルーチン分子生物学的操作を使用して行うことができる。1つのアプローチでは、各々が80~90ヌクレオチドの長さであり、所望の配列の長さにまたがる一連の相補性オリゴヌクレオチド対が、標準的な方法により合成される。これらのオリゴヌクレオチド対は、アニーリング時に、それらが粘着末端を含有する80~90塩基対の二本鎖断片を形成するように合成され、例えば、対における各オリゴヌクレオチドは、対における他のオリゴヌクレオチドに相補的な領域を超えて3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の塩基を伸長するように合成される。各オリゴヌクレオチド対の一本鎖末端は、別のオリゴヌクレオチド対の一本鎖末端とアニーリングするように設計されている。オリゴヌクレオチド対をアニーリングさせ、次いで、これらの二本鎖断片のうちのおよそ5~6個を、粘着性一本鎖末端を介して一緒にアニーリングさせ、次いで、それらを一緒にライゲーションし、標準的な細菌クローニングベクター、例えば、Invitrogen Corporation(Carlsbad,Calif)から入手可能なTOPO(登録商標)ベクターにクローニングする。次いで、コンストラクトを標準的な方法によって配列決定する。一緒にライゲーションされた80~90塩基対断片のうちの5~6個の断片、すなわち、約500塩基対の断片からなるこれらのコンストラクトのうちのいくつかを調製し、その結果、所望の配列全体が一連のプラスミドコンストラクトで表される。次いで、これらのプラスミドの挿入物を適切な制限酵素で切断し、一緒にライゲーションして、最終コンストラクトを形成する。次いで、最終コンストラクトを標準的な細菌クローニングベクターにクローニングし、配列決定する。追加の方法は、当業者に直ちに明らかになるであろう。加えて、遺伝子合成は、容易に商業的に入手可能である。
【0072】
一実施形態では、TPP1をコードする核酸配列は、それに共有結合したタグポリペプチドをコードする核酸を更に含む。タグポリペプチドは、限定されないが、mycタグポリペプチド、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグポリペプチド、緑色蛍光タンパク質タグポリペプチド、myc-ピルビン酸キナーゼタグポリペプチド、His6タグポリペプチド、インフルエンザウイルスヘマグルチンタグポリペプチド、フラグタグポリペプチド、及びマルトース結合タンパク質タグポリペプチドを含む、公知の「エピトープタグ」から選択されてもよい。
【0073】
別の態様では、TPP1をコードする核酸配列を含む発現カセットを提供する。一実施形態では、配列は、コドン最適化配列である。別の実施形態では、コドン最適化核酸配列は、ヒトTPP1をコードする配列番号3である。
【0074】
一部の実施形態では、TPP1をコードするヌクレオチド配列は、調節配列(限定されないが、イニシエーター配列、エンハンサー配列、及びプロモーター配列を含む)に作動可能に連結してもよく、これらは、それらが作動可能に連結している核酸配列をコードするタンパク質の転写を誘導、抑制、または他の方法で制御する。一部の実施形態では、TPP1をコードするヌクレオチド配列は、国際特許出願公開第2020/102369号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているヌクレオチド配列である。
【0075】
4.1.7 コンストラクト
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、以下のエレメントを以下の順序で含む:a)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、及びb)治療用産物をコードする配列。ある特定の実施形態では、治療用産物をコードする配列は、IRESエレメントによって分離された複数のORFを含む。ある特定の実施形態では、治療用産物をコードする配列は、F/F2A配列によって分離された1つのORF内に複数のサブユニットを含む。
【0076】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、本明細書に提供する組換えベクターは、以下のエレメントを以下の順序で含む:a)第1のITR配列、b)第1のリンカー配列、c)構成的または低酸素誘導性プロモーター配列、d)第2のリンカー配列、e)イントロン配列、f)第3のリンカー配列、g)第1のUTR配列、h)治療用産物をコードする配列、i)第2のUTR配列、j)第4のリンカー配列、k)ポリA配列、l)第5のリンカー配列、及びm)第2のITR配列。
【0077】
ある特定の実施形態では、AAV.hTPP1coベクターの6841bp産生プラスミド(AAV.CB7.CI.hTPP1co.RBG)は、AAV2由来ITRに隣接する本明細書に記載のhTPP1co発現カセット、ならびに選択的マーカーとしてのアンピシリンに対する耐性を用いて構築され得る(
図1B)。ある特定の実施形態では、カナマイシンに耐性を有する同様のAAV.hTPP1co産生プラスミドもまた構築され得る。ある特定の実施形態では、両方のプラスミドに由来するベクターは、本明細書に記載のhTPP1co発現カセットに隣接するAAV2由来ITRを有する一本鎖DNAゲノムであり得る。
【0078】
ある特定の実施形態では、AAV.hTPP1coベクターは、三重トランスフェクションによって作製され、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)からなり、0.001% Pluronic F68(PF68)を含有する賦形剤で製剤化されてもよい。例えば、Mizukami,Hiroaki,et al.,A Protocol for AAV vector production and purification,Diss.Di-vision of Genetic Therapeutics,Center for Molecular Medicine,1998を参照されたい。ある特定の実施形態では、産生されたベクターのゲノム力価は、液滴デジタルPCR(ddPCR)を介して決定され得る。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。例示的なAAV.hTPP1coベクターが本明細書に記載され、これは、本明細書では、AAV9.CB7.hCLN2と称されることがある。
【0079】
一部の実施形態では、組換えベクターは、国際特許出願公開第2020/102369号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の組換えベクターである。
【0080】
本明細書で使用する場合、「発現カセット」とは、TPP1タンパク質、プロモーターのコード配列を含む核酸分子を指し、そのための他の調節配列を含んでもよく、カセットは、ウイルスベクター(例えば、ウイルス粒子)のキャプシドにパッケージングされてもよい。典型的には、ウイルスベクターを生成するためのかかる発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナル及び本明細書に記載のものなどの他の発現制御配列に隣接する、本明細書に記載のCLN2配列を含有する。例えば、AAVウイルスベクターの場合、パッケージングシグナルは、5’逆方向末端反復(ITR)及び3’ITRである。AAVキャプシドにパッケージングされた場合、発現カセットと併せたITRは、本明細書では、「組換えAAV(rAAV)ゲノム」または「ベクターゲノム」と称され得る。一実施形態では、発現カセットは、TPP1タンパク質をコードするコドン最適化核酸配列を含む。一実施形態では、カセットは、宿主細胞内でTPP1をコードするコドン最適化核酸配列の発現を指示する発現制御配列と作動可能に関連するコドン最適化CLN2を提供する。
【0081】
別の実施形態では、AAVベクターで使用するための発現カセットが提供される。その実施形態では、AAV発現カセットは、少なくとも1つのAAV逆方向末端反復(ITR)配列を含む。別の実施形態では、発現カセットは、5’ITR配列及び3’ITR配列を含む。一実施形態では、5’及び3’ITRは、TPP1をコードするコドン最適化核酸配列に隣接し、任意選択で、宿主細胞内でTPP1をコードするコドン最適化核酸配列の発現を指示する追加の配列を有する。したがって、本明細書に記載のように、AAV発現カセットは、その5’末端で5’AAV逆方向末端反復配列(ITR)に隣接し、その3’末端で3’AAV ITRに隣接する上記の発現カセットを記載することを意味する。したがって、このrAAVゲノムは、発現カセットをAAVウイルス粒子、すなわち、AAV5’及び3’ITRにパッケージングするのに必要な最小限の配列を含む。AAV ITRは、本明細書に記載のように、任意のAAVのITR配列から得てもよい。これらのITRは、得られる組換えAAVにおいて用いられるキャプシドと同じAAV起源のものであってもよく、または異なるAAV起源のもの(AAV擬似型を産生するため)であってもよい。一実施形態では、AAV2からのITR配列を使用する。しかしながら、他のAAV源からのITRが選択されてもよい。ITR源がAAV2由来であり、AAVキャプシドが別のAAV源由来である場合、得られるベクターは、擬似型と称され得る。典型的には、AAVベクターゲノムは、AAV5’ITR、TPP1コード配列及び任意の調節配列、ならびにAAV3’ITRを含む。しかしながら、これらのエレメントの他の構成が好適であり得る。ΔITRと呼ばれる5’ITRの短縮版が記載されており、その中でD配列及び末端分離部位(trs)が欠失している。他の実施形態では、全長AAV5’及び3’ITRを使用する。次いで、各rAAVゲノムを産生プラスミドに導入することができる。
【0082】
一態様では、本明細書に記載の発現カセットのうちのいずれかを含むベクターが提供される。本明細書に記載のように、かかるベクターは、種々の起源のプラスミドであり得、ある特定の実施形態では、本明細書に更に記載の組換え複製欠損ウイルスの生成に有用である。
【0083】
一実施形態では、ベクターは、その記載される発現カセット、例えば、「ネイキッドDNA」、「ネイキッドプラスミドDNA」、RNA、及びmRNAを含む非ウイルス性プラスミドであり、例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物及び他のポリマー、脂質及び/またはコレステロールベースの核酸コンジュゲート、ならびに本明細書に記載の他のコンストラクトを含む、様々な組成物及びナノ粒子とカップリングされる。例えば、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8(3),pp 774-787;ウェブ刊行物:2011年3月21日;WO2013/182683、WO2010/053572及びWO2012/170930(全て、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。かかる非ウイルスTPP1ベクターは、本明細書に記載の経路によって投与され得る。ウイルスベクター、または非ウイルスベクターは、遺伝子導入及び遺伝子療法の用途で使用するための生理学的に許容される担体とともに製剤化することができる。
【0084】
別の実施形態では、ベクターは、記載される発現カセットをその中に含むウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、外因性または異種CLN2核酸導入遺伝子を含む。一実施形態では、本明細書に記載の発現カセットは、薬物送達またはウイルスベクターの産生のために使用されるプラスミド上に操作され得る。好適なウイルスベクターは、好ましくは複製欠損であり、脳細胞を標的とするものの中から選択される。ウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、パルボウイルスなどを含むが、これらに限定されない、遺伝子療法に好適な任意のウイルスが挙げられ得る。
【0085】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、複製欠損であり得る。「複製欠損ウイルス」または「ウイルスベクター」は、目的の遺伝子を含有する発現カセットがウイルスキャプシドまたはエンベロープ内にパッケージングされた合成または組換えウイルス粒子を指し、ウイルスキャプシドまたはエンベロープ内にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列は、複製欠損であり、すなわち、それらは、子孫ビリオンを生成することができないが、標的細胞を感染させる能力を保持する。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要な酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要なシグナルに隣接する目的の導入遺伝子のみを含有する「ガットレス(gutless)」であるように操作することができる)が、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、子孫ビリオンによる複製及び感染は、複製に必要なウイルス酵素の存在下でなければ起こり得ないため、遺伝子療法での使用は安全であると考えられる。
【0086】
別の実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターが提供される。rAAVは、AAVキャプシド、及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを損なう。
【0087】
ベクターゲノムは、一実施形態では、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするコード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。別の実施形態では、ベクターゲノムは、本明細書に記載の発現カセットである。一実施形態では、CLN2配列は、全長TPP1タンパク質をコードする。一実施形態では、TPP1配列は、配列番号1のタンパク質配列である。別の実施形態では、コード配列は、配列番号3またはそのバリアントである。
【0088】
ITRまたは他のAAV成分は、AAVから当業者に利用可能な技術を使用して容易に単離または操作され得る。かかるAAVは、単離されてもよく、操作されてもよく、または学術的、商業的、もしくは公的なソース(例えば、American Type Culture Collection、Manassas,VA)から入手されてもよい。あるいは、AAV配列は、文献においてまたは例えばGenBank、PubMedなどのデータベースにおいて入手可能であるような公開された配列を参照することにより、合成または他の好適な手段を介して操作されてもよい。AAVウイルスは、従来の分子生物学技術によって操作されてもよく、これらの粒子を、核酸配列の細胞特異的送達のため、免疫原性を最小化するため、安定性及び粒子寿命を調整するため、効率的な分解のため、核への正確な送達のためなどに最適化することが可能になる。
【0089】
AAVの断片は、種々のベクター系及び宿主細胞において容易に利用され得る。望ましいAAV断片の中には、vp1、vp2、vp3及び超可変領域を含むcapタンパク質、rep78、rep68、rep52、及びrep40を含むrepタンパク質、ならびにこれらのタンパク質をコードする配列が含まれる。かかる断片は、単独で、他のAAV血清型配列もしくは断片と組み合わせて、または他のAAVもしくは非AAVウイルス配列由来のエレメントと組み合わせて使用してもよい。本明細書で使用する場合、人工AAV血清型としては、限定されないが、非天然に存在するキャプシドタンパク質を有するAAVが挙げられる。かかる人工キャプシドは、本発明の新規のAAV配列(例えば、vp1キャプシドタンパク質の断片)を、別のAAV血清型(既知または新規)、同じAAV血清型の非連続部分、非AAVウイルス源、または非ウイルス源から得ることができる異種配列と組み合わせて、任意の好適な技術によって生成され得る。人工AAV血清型は、限定されないが、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、または「ヒト化」AAVキャプシドであり得る。一実施形態では、ベクターは、AAV9 cap及び/またはrep配列を含有する。米国特許第7,906,111号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0090】
一実施形態では、配列番号6のアミノ酸配列を特徴とするAAV9キャプシドを有するAAVベクターを本明細書に提供し、ここでは、古典的な後期幼児神経セロイドリポフスチン症2(CLN2)遺伝子をコードする核酸が、それを必要とする患者におけるその発現を指示する調節配列の制御下で提供される。
【0091】
本明細書で使用する場合、「AAV9キャプシド」は、配列番号6の異なる長さのタンパク質をもたらす代替スプライスバリアントとして典型的に発現される約60個の可変タンパク質(vp)のアセンブリであるDNAse耐性粒子を特徴とする。Genbankアクセッション番号AAS99264.1(参照により本明細書に組み込まれる)も参照されたい。US7906111及びWO2005/033321も参照されたい。本明細書で使用する場合、「AAV9バリアント」は、例えば、WO2016/049230、US8,927,514、US2015/0344911、及びUS8,734,809に記載されるものを含む。アミノ酸配列を配列番号6に再現し、コード配列を配列番号7に再現する。一実施形態では、AAV9キャプシドは、配列番号7によってコードされるキャプシド、またはそれと少なくとも約90%、95%、95%、98%もしくは99%の同一性を共有する配列を含む。
【0092】
最大のタンパク質であるvp1は、一般に、配列番号6のアミノ酸配列の全長(配列番号6のaa1~736)である。ある特定の実施形態では、AAV9 vp2タンパク質は、配列番号6の138~736のアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、AAV9 vp3は、配列番号6の203~736のアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、vp1、2または3タンパク質は、切断(例えば、N末端またはC末端に1つまたは複数のアミノ酸)であり得、それを有し得る。AAV9キャプシドは、約60個のvpタンパク質で構成され、ここで、vp1、vp2及びvp3は、組み立てられたキャプシド内に約1 vp対約1 vp2対約10~20 vp3タンパク質の比率で存在する。この比率は、使用される産生系に応じて異なる場合がある。ある特定の実施形態では、操作されたAAV9キャプシドは、vp2が存在しない場合に生成され得る。
【0093】
DNA(ゲノムもしくはcDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)を含む、このAAV9キャプシドをコードする核酸配列を設計することは、当該技術分野における技能の範囲内である。ある特定の実施形態では、AAV9 vp1キャプシドタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号7に提供される。他の実施形態では、配列番号7に対して70%~99.9%の同一性の核酸配列を選択して、AAV9キャプシドを発現させてもよい。ある特定の他の実施形態では、核酸配列は、配列番号7に対して少なくとも約75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または少なくとも99%~99.9%同一である。
【0094】
本明細書で使用する場合、AAVの群に関連するような「クレード」という用語は、AAV vp1アミノ酸配列のアラインメントに基づいて、(少なくとも1000個の複製のうちの)少なくとも75%のブートストラップ値及び0.05以下のポアソン補正距離測定値により近隣結合アルゴリズムを使用して決定されるように、互いに系統的に関連するAAVの群を指す。隣接結合アルゴリズムは、文献に記載されている。例えば、M.Nei and S.Kumar,Molecular Evolution and Phylogenetics,Oxford University Press,New York(2000)を参照されたい。このアルゴリズムを実装するために使用することができるコンピュータープログラムが利用可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、修正されたNei-Gojobori法を実装する。これらの技術及びコンピュータープログラム、ならびにAAV vp1キャプシドタンパク質の配列を使用して、当業者は、選択されたAAVが、本明細書で特定されるクレードのうちの1つ、別のクレードに含まれるか、またはこれらのクレードの外側にあるかを容易に決定することができる。例えば、G Gao,et al,J Virol,2004 Jun;78(10):6381-6388(クレードA、B、C、D、E及びFを識別し、新規のAAV、GenBankアクセッション番号AY530553~AY530629の核酸配列を提供する)を参照されたい。WO2005/033321も参照されたい。AAV9は更に、クレードF内にあることを特徴とする。他のクレードF AAVとしては、AAVhu31及びAAVhu32が挙げられる。
【0095】
本明細書で使用する場合、AAVに関連して、バリアントという用語は、アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%またはそれ以上の配列同一性を共有するものを含む、公知のAAV配列に由来する任意のAAV配列を意味する。別の実施形態では、AAVキャプシドは、記載されたまたは公知のAAVキャプシド配列からの最大約10%の変異を含み得るバリアントを含む。すなわち、AAVキャプシドは、本明細書に提供する、及び/または当該技術分野で公知のAAVキャプシドに対して約90%の同一性~約99.9%の同一性、約95%~約99%の同一性、または約97%~約98%の同一性を共有する。一実施形態では、AAVキャプシドは、AAV9キャプシドと少なくとも95%の同一性を共有する。AAVキャプシドの同一性パーセントを決定するとき、比較は、可変タンパク質(例えば、vp1、vp2、またはvp3)のうちのいずれかに対して行われ得る。一実施形態では、AAVキャプシドは、vp1、vp2またはvp3に対してAAV9と少なくとも95%の同一性を共有する。
【0096】
本明細書で使用する場合、「人工AAV」は、限定されないが、非天然に存在するキャプシドタンパク質を有するAAVを意味する。かかる人工キャプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1キャプシドタンパク質の断片)を、異なる選択されたAAV、同じAAVの非連続部分、非AAVウイルス源、または非ウイルス源から得ることができる異種配列と組み合わせて、任意の好適な技術によって生成され得る。人工AAVは、限定されないが、シュードタイプAAV、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、または「ヒト化」AAVキャプシドであり得る。1つのAAVのキャプシドが異種キャプシドタンパク質に置き換えられる、シュードタイプベクターは、本発明において有用である。一実施形態では、AAV2/9及びAAV2/rh.10は、例示的なシュードタイプベクターである。
【0097】
別の実施形態では、自己相補性AAVが使用される。「自己相補性AAV」とは、組換えAAV核酸配列によって担持されるコード領域が、分子内二本鎖DNAテンプレートを形成するように設計された発現カセットを有するプラスミドまたはベクターを指す。感染すると、第2の鎖の細胞媒介性合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的な半分が会合して、即時の複製及び転写の準備ができている1つの二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成する。例えば、D M McCarty et al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254を参照されたい。自己相補性AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、及び同第7,456,683号(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0098】
更に別の実施形態では、本明細書に記載されるもののうちのいずれかを含む発現カセットは、組換えAAVゲノムを生成するために用いられる。
【0099】
一実施形態では、本明細書に記載の発現カセットは、ウイルスベクターを生成するために、及び/または宿主細胞、例えば、ネイキッドDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどへの送達のために有用な好適な遺伝要素(ベクター)に操作され、これは、その上に担持されるCLN2配列を転送する。選択されたベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングされたペレット、ウイルス感染及びプロトプラスト融合を含む、任意の好適な方法によって送達され得る。かかるコンストラクトを作製するために使用される方法は、核酸操作の当業者に公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を含む。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。
【0100】
発現カセットまたはrAAVゲノムまたは産生プラスミドをビリオンにパッケージングするために、ITRは、発現カセットと同じコンストラクトにおいてシスで必要な唯一のAAV成分である。一実施形態では、AAVベクターを生成するために、複製(rep)及び/またはキャプシド(cap)のコード配列をAAVゲノムから除去し、トランスでまたはパッケージング細胞株により供給する。
【0101】
対象への送達に好適なAAVウイルスベクターを産生及び単離するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第7790449号、米国特許第7282199号、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、及びUS7588772B2を参照されたい。1つの系では、プロデューサー細胞株は、ITRに隣接する導入遺伝子をコードするコンストラクト及びrep及びcapをコードするコンストラクト(複数可)で一時的にトランスフェクトされる。第2の系では、ITRに隣接する導入遺伝子をコードするコンストラクトで、rep及びcapを安定的に供給するパッケージング細胞株が、一時的にトランスフェクトされる。特定の実施形態では、プロデューサー細胞株またはパッケージング細胞株は、本明細書に記載のAAVウイルスベクターが、プロデューサー細胞株またはパッケージング細胞株を懸濁培養において増殖させることによって製造することができるような懸濁細胞株である。これらの系の各々では、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスの感染に応答してAAVビリオンが産生され、汚染ウイルスからrAAVを分離する必要がある。より最近では、AAVを回復させるためにヘルパーウイルスによる感染を必要としない系が開発されており、必要なヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスE1、E2a、VA、及びE4またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、及びUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた、トランスで、系により供給される。これらの新しい系では、ヘルパー機能は、必要なヘルパー機能をコードするコンストラクトによる細胞の一時的なトランスフェクションにより供給することができるか、または細胞は、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定的に含有するように設計することができ、その発現は、転写レベルまたは転写後レベルで制御することができる。
【0102】
なお別の系では、ITR及びrep/cap遺伝子に隣接する発現カセットは、バキュロウイルスベースのベクターによる感染により昆虫細胞に導入される。これらの産生系に関するレビューについては、一般に、例えば、Zhang et al.,2009,“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929(この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これら及び他のAAV産生系を作製及び使用する方法はまた、以下の米国特許に記載されており、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:第5,139,941号、第5,741,683号、第6,057,152号、第6,204,059号、第6,268,213号、第6,491,907号、第6,660,514号、第6,951,753号、第7,094,604号、第7,172,893号、第7,201,898号、第7,229,823号、及び第7,439,065号。一般に、例えば、Grieger&Samulski,2005,“Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications,“Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:119-145、Buning et al.,2008,“Recent developments in adeno-associated virus vector technology,”J.Gene Med.10:717-733、及び以下に引用される参考文献(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0103】
一態様では、rAAVを産生することができる懸濁細胞株を懸濁培養物において増殖させることを含む、本明細書に記載のrAAVを製造する方法を本明細書に提供する。
【0104】
ある特定の実施形態では、懸濁細胞株は、無血清及び動物成分を含まない培養培地を使用して細胞を懸濁培養に適応させることによって、接着細胞株に由来する。特定の実施形態では、懸濁細胞株は、HEK293懸濁細胞株である。
【0105】
本発明の任意の実施形態を構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者に公知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。同様に、rAAVビリオンを生成する方法は周知であり、好適な方法の選択は、本発明に対する限定ではない。例えば、K.Fisher et al,(1993)J.Virol.,70:520-532及び米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0106】
「プラスミド」は、一般に、当業者によく知られている標準的な命名規則に従って、本明細書では、大文字及び/または数字の前及び/または後の小文字のpによって指定される。本発明に従って使用することができる多くのプラスミド及び他のクローニング及び発現ベクターは、周知であり、当業者に容易に入手可能である。更に、当業者は、本発明での使用に好適な任意の数の他のプラスミドを容易に構築することができる。本発明におけるかかるプラスミド、ならびに他のベクターの特性、構築及び使用は、本開示から当業者に容易に明らかになるであろう。
【0107】
一実施形態では、産生プラスミドは、本明細書に記載されるもの、またはWO2012/158757(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものである。様々なプラスミドは、rAAVベクターを産生する際の使用について当該技術分野で公知であり、本明細書で有用である。産生プラスミドは、AAVキャップ及び/またはrepタンパク質を発現する宿主細胞内で培養される。宿主細胞では、各rAAVゲノムが救出され、キャプシドタンパク質またはエンベロープタンパク質にパッケージングされて、感染性ウイルス粒子を形成する。
【0108】
一態様では、上記の発現カセットを含む産生プラスミドが提供される。一実施形態では、産生プラスミドは、
図1Bに示されるものである。このプラスミドは、rAAV-ヒトコドン最適化TPP1ベクターの生成の実施例において使用される。かかるプラスミドは、5’AAV ITR配列、選択されたプロモーター、ポリA配列、及び3’ITRを含有するものであり、加えて、ニワトリベータ-アクチンイントロンなどのイントロン配列も含有する。例示的な概略図を
図1Aに示す。更なる実施形態では、イントロン配列は、約3キロベース(kb)~約6kb、約4.7kb~約6kb、約3kb~約5.5kb、または約4.7kb~5.5kbのサイズのrAAVベクターゲノムを維持する。TPP1コード配列を含む産生プラスミドの例は、配列番号5に見出すことができる。別の実施形態では、産生プラスミドは、最適化されたベクタープラスミド産生効率に修飾される。かかる修飾には、他の中性配列の付加、またはベクタープラスミドのスーパーコイルのレベルを調節するためのラムダスタッファー配列の包含が含まれる。かかる修飾が、本明細書で企図される。他の実施形態では、ターミネーター及び他の配列が、プラスミドに含まれる。
【0109】
ある特定の実施形態では、rAAV発現カセット、ベクター(rAAVベクターなど)、ウイルス(rAAVなど)、及び/または産生プラスミドは、AAV逆方向末端反復配列、TPP1をコードするコドン最適化核酸配列、及び宿主細胞内でコードされるタンパク質の発現を指示する発現制御配列を含む。他の実施形態では、rAAV発現カセット、ウイルス、ベクター(rAAVベクターなど)、及び/または産生プラスミドは、イントロン、Kozak配列、ポリA、転写後調節エレメントなどのうちの1つまたは複数を更に含む。一実施形態では、転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント(WPRE)である。
【0110】
発現カセット、ベクター及びプラスミドは、例えば、本明細書に記載のコドン最適化を含む、当該技術分野で公知の技術を使用して特定の種に対して最適化することができる他の成分を含む。
【0111】
他の実施形態では、本明細書に記載の発現カセット、ベクター、プラスミド及びウイルスは、他の適切な転写開始、終結、エンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;TATA配列;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);イントロン;タンパク質安定性を向上させる配列;及び必要に応じて、コードされる産物の分泌を向上させる配列を含有する。発現カセットまたはベクターは、本明細書に記載のエレメントのうちのいずれも含有しないか、いずれかを1つまたは複数含有することができる。
【0112】
好適なポリA配列の例としては、例えば、合成ポリA、またはウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、SV40、ウサギβ-グロビン(RGB)、もしくは修飾RGB(mRGB)由来のものが挙げられる。更なる実施形態では、ポリAは、配列番号5のnt33~159の核酸配列を有する。
【0113】
好適なエンハンサーの例としては、数ある中で、例えば、CMVエンハンサー、RSVエンハンサー、アルファフェトプロテインエンハンサー、TTR最小プロモーター/エンハンサー、LSP(TH結合グロブリンプロモーター/アルファ1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー)、APBエンハンサー、ABPSエンハンサー、アルファmic/bikエンハンサー、TTRエンハンサー、en34、ApoEが挙げられる。
【0114】
一実施形態では、正しい開始コドンからの翻訳を増強するために、TPP1コード配列の上流にKozak配列が含まれる。別の実施形態では、CBAエクソン1及びイントロンは、発現カセットに含まれる。一実施形態では、TPP1コード配列は、ハイブリッドニワトリβアクチン(CBA)プロモーターの制御下に置かれる。このプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサー、近位ニワトリβアクチンプロモーター、及びイントロン1配列に隣接するCBAエクソン1からなる。
【0115】
別の実施形態では、イントロンは、CBA、ヒトベータグロビン、IVS2、SV40、bGH、アルファ-グロブリン、ベータ-グロブリン、コラーゲン、オバルブミン、p53、またはそれらの断片から選択される。
【0116】
一実施形態では、発現カセット、ベクター、プラスミド及びウイルスは、5’ITR、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター、CMVエンハンサー、CBAエクソン1及びイントロン、ヒトコドン最適化CLN2配列、ウサギグロビンポリA及び3’ITRを含有する。更なる実施形態では、発現カセットは、配列番号8のnt1~4020を含む。なお更に別の実施形態では、5’ITRは、配列番号5のnt3199~nt3328の核酸配列を有し、3’ITRは、配列番号5のnt248~nt377の核酸配列を有する。更なる実施形態では、産生プラスミドは、
図1C~1Eにも示される、配列番号5の配列を有する。
【0117】
4.1.8 ベクターの製造及び試験
本明細書に提供する組換えベクター(例えば、組換えウイルスベクター)は、宿主細胞を使用して製造され得る。本明細書に提供する組換えベクターは、哺乳動物宿主細胞、例えば、A549、WEHI、10T1/2、BHK、MDCK、COS1、COS7、BSC 1、BSC 40、BMT 10、VERO、W138、HeLa、293、Saos、C2C12、L、HT1080、HepG2、初代線維芽細胞、肝細胞、及び筋芽細胞を使用して製造され得る。本明細書に提供する組換えベクターは、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、またはハムスターからの宿主細胞を使用して製造され得る。他の実施形態では、「宿主細胞」という用語は、バッテン病のためにインビボで処置されている対象の脳細胞を指すことが意図される。かかる宿主細胞としては、脳室系の上皮内層である上衣を含むCNSの上皮細胞が挙げられる。他の宿主細胞としては、ニューロン、アストロサイト、オリゴエデンドロサイト、及びミクログリアが挙げられる。
【0118】
組換えウイルスベクターについては、宿主細胞は、治療用産物及び関連するエレメント(すなわち、ベクターゲノム)、ならびに宿主細胞においてウイルスを産生する手段、例えば、複製及びキャプシド遺伝子(例えば、AAVのrep及びcap遺伝子)をコードする配列を用いて安定に形質転換される。AAV8キャプシドを伴う組換えAAVベクターの産生方法については、米国特許第7,282,199B2号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の発明を実施するための形態のセクションIVを参照されたい。当該ベクターのゲノムコピー力価は、例えば、TAQMAN(登録商標)分析によって決定し得る。ビリオンは、例えば、CsCl2沈降法によって回収し得る。
【0119】
インビトロアッセイ、例えば、細胞培養アッセイを使用して、本明細書に記載のベクターからの治療用産物発現を測定することができる、ゆえに、例えば、ベクターの効力を示すことができる。例えば、ヒト胚性網膜細胞に由来する細胞株であるPER.C6(登録商標)細胞株(Lonza)、または網膜色素上皮細胞、例えば、網膜色素上皮細胞株hTERT RPE-1(ATCC(登録商標)から入手可能)を使用して、治療用産物発現を評価することができる。一度発現すると、発現された治療用産物の特徴を決定することができ、これには翻訳後修飾パターンの決定が含まれる。加えて、細胞発現治療用産物の翻訳後修飾から生じる利益は、当該技術分野で公知のアッセイを使用して決定することができる。
【0120】
4.2 組成物
本明細書に記載の治療用産物をコードする組換えベクター及び好適な担体を含む組成物を記載する。好適な担体(例えば、脈絡膜上、網膜下、強膜近傍、硝子体内、結膜下、及び/または網膜内投与用)は、当業者によって容易に選択されるであろう。
【0121】
本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、リン酸カリウム一塩基性、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性無水物、スクロース、及び界面活性剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0122】
一部の実施形態では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、イオン性塩賦形剤または緩衝剤、スクロース、及びポロキサマー188を含む薬学的組成物を提供する。一部の実施形態では、イオン性塩賦形剤または緩衝剤は、リン酸カリウム一塩基性、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性無水物、リン酸ナトリウム六水和物、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、トロメタミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Tris-HCl)、アミノ酸、ヒスチジン、塩酸ヒスチジン(ヒスチジン-HCl)、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム6-水和物、硫酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウムからなる群からなる1つまたは複数の成分であり得る。
【0123】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約60mM~115mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約60mM~100mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約65mM~95mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約70mM~90mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約75mM~85mMのイオン強度を有する。
【0124】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約30mM~100mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約35mM~95mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約40mM~90mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約45mM~85mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約50mM~80mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約55mM~75mMのイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約60mM~70mMのイオン強度を有する。
【0125】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、60mM~115mMの範囲のイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、60mM~100mMの範囲のイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、65mM~95mMの範囲のイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、70mM~90mMの範囲のイオン強度を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、75mM~85mMの範囲のイオン強度を有する。
【0126】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、30mM~100mMのイオン強度範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、35mM~95mMのイオン強度範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、40mM~90mMのイオン強度範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、45mM~85mMのイオン強度範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、50mM~80mMのイオン強度範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、55mM~75mMのイオン強度範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、60mM~70mMのイオン強度範囲を有する。
【0127】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.2g/Lの濃度で塩化カリウムを含む。
【0128】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.2g/Lの濃度でリン酸カリウム一塩基性を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、5.84g/Lの濃度で塩化ナトリウムを含み、
【0130】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、1.15g/Lの濃度でリン酸ナトリウム二塩基性無水物を含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、3%(重量/体積、30g/L)~18%(重量/体積、180g/L)の濃度のスクロースを含む。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、4%(重量/体積、40g/L)の濃度のスクロースを含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.001%(重量/体積、0.01g/L)の濃度でポロキサマー188を含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.0005%(重量/体積、0.005g/L)~0.05%(重量/体積、0.5g/L)の濃度のポロキサマー188を含む。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.001%(重量/体積、0.01g/L)の濃度でポロキサマー188を含む。
【0134】
一部の実施形態では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、イオン性塩賦形剤または緩衝剤、スクロース、及び界面活性剤を含む薬学的組成物を提供する。一部の実施形態では、イオン性塩賦形剤または緩衝剤は、リン酸カリウム一塩基性、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性無水物、リン酸ナトリウム六水和物、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物、トロメタミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Tris-HCl)、アミノ酸、ヒスチジン、塩酸ヒスチジン(ヒスチジン-HCl)、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム6-水和物、硫酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウムからなる群からなる1つまたは複数の成分であり得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、及びポリソルベート80からなる群からの1つまたは複数の成分であり得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.0005%(重量/体積、0.05g/L)~0.05%(重量/体積、0.5g/L)の濃度のポリソルベート20を含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、0.0005%(重量/体積、0.05g/L)~0.05%(重量/体積、0.5g/L)の濃度のポリソルベート80を含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物のpHは、約7.4である。
【0138】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物のpHは、約6.0~9.0である。
【0139】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物のpHは、7.4である。
【0140】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物のpHは、6.0~9.0である。
【0141】
本明細書で使用する場合、及び別段の指定がない限り、「約」という用語は、所与の値または範囲のプラスまたはマイナス10%以内を意味する。
【0142】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、疎水性コーティングされたガラスバイアルにある。
【0143】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、シクロオレフィンポリマー(COP)バイアルにある。
【0144】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、Daikyo Crystal Zenith(登録商標)(CZ)バイアルにある。
【0145】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、TopLyoでコーティングされたバイアルにある。
【0146】
ある特定の実施形態では、(a)組換えAAV、(b)0.2g/Lの濃度の塩化カリウム、(c)0.2g/Lの濃度のリン酸カリウム一塩基性、(d)5.84g/Lの濃度の塩化ナトリウム、(e)1.15g/Lの濃度のリン酸ナトリウム二塩基性無水物、(f)4重量/体積%(40g/L)の濃度のスクロース、(g)0.001重量/体積%(0.01g/L)の濃度のポロキサマー188、及び(h)水からなる薬学的組成物を本明細書に開示し、組換えAAVは、AAV9である。
【0147】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物のベクターゲノム濃度(VGC)は、約3×109GC/mL、約1×1010GC/mL、約1.2×1010GC/mL、約1.6×1010GC/mL、約4×1010GC/mL、約6×1010GC/mL、約1×1011GC/mL、約2×1011GC/mL、約2.4×1011GC/mL、約2.5×1011GC/mL、約3×1011GC/mL、約6.2×1011GC/mL、約1×1012GC/mL、約3×1012GC/mL、約2×1013GC/mLまたは約3×1013GC/mLである。
【0148】
ある特定の実施形態では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)、リン酸カリウム一塩基性、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム二塩基性無水物、スクロース、及びポロキサマー188を含む薬学的組成物または製剤を提供する。一部の実施形態では、組換えAAVは、AAV9由来の成分を含む。一部の実施形態では、AAVは、AAVキャプシド、及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。
【0149】
好ましい実施形態では、導入遺伝子を送達するために使用されるAAVは、ヒト網膜細胞または光受容体細胞に対して向性を有するべきである。かかるAAVは、非複製組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含むことができ、特にAAV9キャプシドを有するものが好ましい。別の特定の実施形態では、本明細書に記載のウイルスベクターまたは他のDNA発現コンストラクトは、コンストラクトIであり、コンストラクトIは、以下の構成要素:AAVキャプシド、及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。
【0150】
一部の実施形態では、薬学的組成物は、(a)目的の導入遺伝子をコードするAAVキャプシドパッケージングベクター、(b)0.2g/Lの濃度の塩化カリウム、(c)0.2g/Lの濃度のリン酸カリウム一塩基性、(d)5.84g/Lの濃度の塩化ナトリウム、(e)1.15g/Lの濃度のリン酸ナトリウム二塩基性無水物、(f)4重量/体積%(40g/L)の濃度のスクロース、(g)0.001重量/体積%(0.01g/L)の濃度のポロキサマー188、及び(h)水からなり、目的の導入遺伝子は、目的のRNAまたは目的のタンパク質、例えば、ヒトTPP1をコードする。
【0151】
一部の実施形態では、薬学的組成物は、液体組成物である。一部の実施形態では、薬学的組成物は、凍結組成物である。一部の実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に開示される液体組成物からの凍結乾燥組成物である。一部の実施形態では、薬学的組成物は、再構成された凍結乾燥製剤である。
【0152】
一部の実施形態では、薬学的組成物は、約1%~約7%の残留水分含有量を含む凍結乾燥組成物である。一部の実施形態では、薬学的組成物は、約2%~約6%の残留水分含有量を含む凍結乾燥組成物である。一部の実施形態では、薬学的組成物は、約3%~約4%の残留水分含有量を含む凍結乾燥組成物である。一部の実施形態では、薬学的組成物は、約5%の残留水分含有量を含む凍結乾燥組成物である。
【0153】
ある特定の態様では、対象における疾患を処置または予防する方法であって、対象に薬学的組成物を投与することを含む方法を本明細書に開示する。一部の実施形態では、本明細書に提供する薬学的組成物は、1つ、2つまたはそれ以上の投与経路による投与に好適である(例えば、脈絡膜上及び網膜下投与に好適である)。
【0154】
提供される方法は、導入遺伝子をコードする組換えAAVを含む薬学的組成物の産生において使用するのに好適である。一部の実施形態では、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするrAAVウイルスベクターを本明細書に提供する。一部の実施形態では、TPP1をコードするrAAV9ベースのウイルスベクターを本明細書に提供する。一部の実施形態では、CLN2をコードするrAAV9ベースのウイルスベクターを本明細書に提供する。
【0155】
ある特定の態様では、対象における疾患を処置または予防する方法であって、対象に、薬学的組成物を静脈内投与、皮下投与、筋肉注射、脈絡膜上注射(例えば、マイクロニードルを有するマイクロインジェクターなどの脈絡膜上薬物送達デバイスを介した)、経硝子体アプローチ(外科的手順)を介した網膜下注射、脈絡膜上腔を介した網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔に挿入し、後極に向かって通すことができるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを介した外科的手順であって、小さな針が網膜下腔に注射する)、及び/または後強膜近傍デポー手順(例えば、チップを挿入し、強膜表面に対して直接並置で維持することができるカニューレを備える強膜近傍薬物送達デバイスを介した)によって投与することを含む方法を本明細書に開示する。
【0156】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供する薬学的組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉注射、脈絡膜上注射(例えば、マイクロニードルを有するマイクロインジェクターなどの脈絡膜上薬物送達デバイスを介した)、経硝子体アプローチ(外科的手順)を介した網膜下注射、脈絡膜上腔を介した網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔に挿入し、後極に向かって通すことができるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを介した外科的手順であって、小さな針が網膜下腔に注射する)、及び/または後強膜近傍デポー手順(例えば、チップを挿入し、強膜表面に対して直接並置で維持することができるカニューレを備える強膜近傍薬物送達デバイスを介した)に好適である。
【0157】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉注射、脈絡膜上注射(例えば、マイクロニードルを有するマイクロインジェクターなどの脈絡膜上薬物送達デバイスを介した)、経硝子体アプローチ(外科的手順)を介した網膜下注射、脈絡膜上腔を介した網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔に挿入し、後極に向かって通すことができるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを介した外科的手順であって、小さな針が網膜下腔に注射する)、及び/または後強膜近傍デポー手順(例えば、チップを挿入し、強膜表面に対して直接並置で維持することができるカニューレを備える強膜近傍薬物送達デバイスを介した)に好適な所望の粘度を有する。
【0158】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉注射、脈絡膜上注射(例えば、マイクロニードルを有するマイクロインジェクターなどの脈絡膜上薬物送達デバイスを介した)、経硝子体アプローチ(外科的手順)を介した網膜下注射、脈絡膜上腔を介した網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔に挿入し、後極に向かって通すことができるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを介した外科的手順であって、小さな針が網膜下腔に注射する)、及び/または後強膜近傍デポー手順(例えば、チップを挿入し、強膜表面に対して直接並置で維持することができるカニューレを備える強膜近傍薬物送達デバイスを介した)に好適な所望の密度を有する。
【0159】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、静脈内投与、皮下投与、筋肉注射、脈絡膜上注射(例えば、マイクロニードルを有するマイクロインジェクターなどの脈絡膜上薬物送達デバイスを介した)、経硝子体アプローチ(外科的手順)を介した網膜下注射、脈絡膜上腔を介した網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔に挿入し、後極に向かって通すことができるカテーテルを含む網膜下薬物送達デバイスを介した外科的手順であって、小さな針が網膜下腔に注射する)、及び/または後強膜近傍デポー手順(例えば、チップを挿入し、強膜表面に対して直接並置で維持することができるカニューレを備える強膜近傍薬物送達デバイスを介した)に好適な所望の浸透圧を有する。特定の実施形態では、網膜下投与のための所望の浸透圧は、160 430mOsm/kg H2Oである。他の特定の実施形態では、脈絡膜上投与の所望の浸透圧は、600mOsm/kg H2O未満である。
【0160】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約100~500mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約130~470mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約160~430mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約200~400mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約240~340mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約280~300mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約295~395mOsm/kg H2Oの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、600mOsm/kg H2O未満の浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、200mOsm/L~660mOsm/Lの浸透圧範囲を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約200mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約250mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約300mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約350mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約400mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約450mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約500mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約550mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約600mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約650mOsm/Lの浸透圧を有する。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、約660mOsm/Lの浸透圧を有する。
【0161】
導入遺伝子を送達するために使用される組換えベクターは、ヒト網膜細胞または光受容体細胞に対して向性を有するべきである。かかるベクターは、非複製組換えアデノ随伴ウイルスベクター(「rAAV」)を含むことができるが、レンチウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、または「ネイキッドDNA」コンストラクトと称される非ウイルス発現ベクターを含むがこれらに限定されない他のウイルスベクターを使用してもよい。
【0162】
ある特定の実施形態では、遺伝子療法コンストラクトは、製剤緩衝液中のAAVベクター活性成分の凍結滅菌単回使用溶液として供給される。特定の実施形態では、網膜下投与に好適な薬学的組成物には、生理学的に適合性の水性緩衝液、界面活性剤及び任意選択の賦形剤を含む、製剤緩衝液中の組換えベクターの懸濁液が含まれる。特定の実施形態では、コンストラクトは、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水及び0.001%ポロキサマー188(pH=7.4)中で製剤化される。
【0163】
4.3 遺伝子療法
一態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象の眼に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。一部の実施形態では、rAAVは、網膜下に投与する。一部の実施形態では、rAAVは、脈絡膜上に投与する。
【0164】
一態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を網膜下投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含み、この方法は、当該ヒト患者の眼に硝子体切除を行うことを含まない。ある特定の実施形態では、投与工程は、当該ヒト対象の眼の網膜下腔に、当該ヒト対象の眼の脈絡膜上腔を介して組換えウイルスベクター治療用産物を投与することを含む。ある特定の実施形態では、投与工程は、脈絡膜上腔に挿入でき、脈絡膜上腔を後極に向かって通すことができ、後極で細針を網膜下腔に注射するカテーテルを含む、網膜下薬物送達デバイスの使用によるものである。ある特定の実施形態では、投与工程は、網膜下薬物送達デバイスのカテーテルを脈絡膜上腔に挿入すること及び脈絡膜上腔を通すことを含む。
【0165】
別の態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を網膜下投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含み、この方法は、当該ヒト患者の眼に硝子体切除を行うことを含む。ある特定の実施形態では、硝子体切除は、部分硝子体切除である。
【0166】
別の態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を脈絡膜上投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、投与工程は、組換えウイルスベクターを、脈絡膜上腔に、脈絡膜上薬物送達デバイスを使用して注射することによるものである。ある特定の実施形態では、脈絡膜上薬物送達デバイスは、マイクロインジェクターである。
【0167】
別の態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象の強膜の外表面に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、投与工程は、カニューレの先端を強膜表面に挿入し、強膜表面に直接並置させることができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスの使用によるものである。ある特定の実施形態では、投与工程は、カニューレの先端を強膜表面に挿入すること及び強膜表面に直接並置させることを含む。
【0168】
別の態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を硝子体内投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、投与工程は、組換えウイルスベクターを、硝子体腔に、硝子体内薬物送達デバイスを使用して、注射することによるものである。ある特定の実施形態では、硝子体内薬物送達デバイスは、マイクロインジェクターである。
【0169】
別の態様では、対象におけるCLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防する方法であって、それを必要とする対象の眼の硝子体腔に、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含む方法を本明細書に提供し、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、投与工程は、組換えウイルスベクターを、硝子体腔に、硝子体内薬物送達デバイスを使用して、注射することによるものである。ある特定の実施形態では、硝子体内薬物送達デバイスは、マイクロインジェクターである。
【0170】
一態様では、CLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防するための硝子体切除を伴う網膜下投与の方法であって、処置を必要とするヒト対象の眼の網膜下腔に、rAAVを投与することを含む方法を本明細書に提供し、この方法は、当該ヒト患者の眼に硝子体切除を行うことを含み、rAAVは、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、硝子体切除は、部分硝子体切除である。
【0171】
一態様では、CLN2バッテン病の眼症状を処置及び/または予防するための網膜下投与の方法であって、処置を必要とするヒト対象の後眼部に位置する視神経乳頭、中心窩及び黄斑の周囲の網膜下腔に、rAAVを投与することを含む方法を本明細書に提供し、この方法は、当該ヒト患者の眼に硝子体切除を行うことを含まず、rAAVは、AAVキャプシド及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、注射工程は、経硝子体注射によるものである。ある特定の実施形態では、経硝子体投与の方法は、眼全体にわたって治療用産物の均一な発現をもたらす(例えば、注射部位での発現レベルの変動は、眼の他の領域での発現レベルと比較して5%、10%、20%、30%、40%、または50%未満である)。ある特定の実施形態では、経硝子体注射は、上眼側または下眼側を介して強膜に鋭針を挿入し、鋭針を硝子体に完全に通過させて、組換えウイルスベクターを反対側の網膜下腔に注射することを含む。ある特定の実施形態では、針は、2時または10時の位置にて挿入される。ある特定の実施形態では、経硝子体注射は、套管針を強膜に挿入し、カニューレを套管針に挿入して、硝子体を通して、組換えウイルスベクターを反対側の網膜下腔に注射することを含む。
【0172】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、投与工程は、治療有効量のrAAVを当該ヒト対象の網膜に送達する。
【0173】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、治療有効量のrAAVゲノムによってコードされたタンパク質(例えば、TPP1)は、当該ヒト対象のヒト網膜細胞によって産生される。
【0174】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、治療有効量のrAAVゲノムによってコードされたタンパク質(例えば、TPP1)は、当該ヒト対象の外境界膜におけるヒト光受容体細胞、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞、及び/または網膜色素上皮細胞によって産生される。
【0175】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、ヒト光受容体細胞は、錐体細胞及び/または桿体細胞である。
【0176】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、網膜神経節細胞は、ミゼット細胞、パラソル細胞、二層化細胞、巨大網膜神経節細胞、感光性神経節細胞、及び/またはミュラーグリアである。
【0177】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、組換えウイルスベクターは、rAAVベクター(例えば、rAAV8、rAAV2、rAAV9、またはrAAV5ベクター)である。
【0178】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、組換えウイルスベクターは、rAAV9ベクターである。
【0179】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、眼への送達は、眼の網膜、脈絡膜、及び/または硝子体液への送達を含む。
治療有効量の組換えベクター(すなわち、組換えウイルスベクターまたはDNA発現コンストラクト)を、眼の病態を有するヒト対象に投与するための方法を記載する。一部の実施形態では、組換えベクターは、コンストラクトIであり、コンストラクトIは、以下の構成要素:AAVキャプシド、及びその中にパッケージングされたベクターゲノムを含み、当該ベクターゲノムは、(a)AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列、(b)プロモーター、(c)ヒトTPP1をコードするCLN2コード配列、及び(d)AAV3’ITRを含む。一部の実施形態では、5’及び/または3’ITRは、AAV2由来である。一部の実施形態では、プロモーターは、ニワトリベータアクチンプロモーターである。一部の実施形態では、本明細書に提供する方法は、限定されないが、視力喪失、網膜萎縮、及び網膜変性を含む、バッテン病の眼症状の処置のためのものである。
【0180】
特に、治療有効量の組換えベクター(すなわち、組換えウイルスベクターまたはDNA発現コンストラクト)を、ヒト対象に、以下のアプローチのうちの1つを介して投与するための方法を記載する:(1)硝子体切除を伴わない網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔を介したまたは周囲注射を介した網膜下腔への投与)、(2)脈絡膜上投与、(3)強膜の外側の腔への投与(すなわち、強膜近傍投与)、(4)硝子体切除を伴う網膜下投与、(5)硝子体内投与、及び(6)結膜下投与。
【0181】
ある特定の実施形態では、網膜下または脈絡膜上腔への送達は、国際公開第2016/042162号、同第2017/046358号、同第2017/158365号、及び同第2017/158366号(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載及び開示されている方法及び/またはデバイスを使用して行うことができる。
【0182】
4.3.1 標的患者集団
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、本明細書に提供する方法は、バッテン病に関連する眼症状を有する患者への投与のためのものである。バッテン病に関連する眼症状には、進行性視力喪失、網膜萎縮及び/または網膜変性が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、ヒト対象は、≦20/20及び≧20/400であるBCVAを有する。別の特定の実施形態では、ヒト対象は、≦20/63及び≧20/400であるBCVAを有する。
【0184】
一部の実施形態では、ヒト対象は、二対立遺伝子CLN2変異を有する。
【0185】
一部の実施形態では、ヒト対象は、低下した白血球TPP1活性を有する。
【0186】
一部の実施形態では、ヒト対象は、CLN2疾患と一致する臨床徴候もしくは症状(例えば、発達遅延、発達低下、発作、視力喪失、または他の徴候症状)を有し、及び/または対象は、確認されたCLN2診断を有する兄姉を有する。
【0187】
一部の実施形態では、ヒト対象は、脳室内Brineura酵素補充療法を受けたことがあるか、または受けている。
【0188】
一部の実施形態では、ヒト対象は、片眼または両眼において約210μmまたは約210μm未満のCRTを有する。一部の実施形態では、ヒト対象は、片眼または両眼において約140μmまたは約140μmを超えるCRTを有する。
【0189】
一部の実施形態では、ヒト対象は、CLN2疾患が兄弟姉妹におけるCLN2疾患の家族歴に起因して無症候性患者で診断された場合、罹患した兄弟姉妹における視力喪失の発症は、84か月齢前またはその付近で生じる。
【0190】
一部の実施形態では、ヒト対象は、片眼または両眼において約140μmまたは約140μm未満のCRT、及び5を超えるワイル・コーネル眼科重症度スコアを有する。
【0191】
一部の実施形態では、ヒト対象は、顕著なレンズまたは角膜混濁、緑内障、弱視、及び/または肉眼的網膜解剖学的異常を有しない。
【0192】
一部の実施形態では、ヒト対象は、右眼と左眼との間のCRT測定のスクリーニングにおいて10μmを超える差異を有しない。
【0193】
一部の実施形態では、ヒト対象は、以前のグレード3または4の過敏症反応、例えば、気管支けいれん及び静脈内処置を必要とする低血圧、心機能障害、脳室内Brineura注入に対するアナフィラキシーを有しない。
【0194】
一部の実施形態では、ヒト対象は、以下の範囲の屈折異常(近視≧-2.00、遠視≧+4.00、乱視≧+1.50)または顕著な不同視を有しない。
【0195】
一部の実施形態では、ヒト対象は、任意の種類の事前の眼内注射、例えば、適応外使用の硝子体内Brineuraを受けていない。
【0196】
一部の実施形態では、ヒト対象は、例えば、コンストラクトI処置を開始する前の6か月以内に眼科手術を受けていない。
【0197】
一部の実施形態では、ヒト対象は、以前に骨髄移植を受けたことがない。
【0198】
一部の実施形態では、ヒト対象は、コンストラクトI処置を開始する前の30日以内に、以下の薬剤を使用していない:ゲムフィブロジル、ミコフェノール酸塩、プレドニゾン、またはNCL(喘息の適応症を含まない)を処置するという意図された目的のための他のステロイド、フルピルチン。
【0199】
一部の実施形態では、ヒト対象は、全身性免疫抑制に対する禁忌を有しない。
【0200】
一部の実施形態では、ヒト対象は、別のCLN遺伝子に変異を有しない。
【0201】
一部の実施形態では、ヒト対象は、眼内手術に対する禁忌(例えば、重度の凝血障害)を有しない。
【0202】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、女性である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、男性である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、小児である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、1か月齢、2か月齢、3か月齢、4か月齢、5か月齢、6か月齢、7か月齢、8か月齢、9か月齢、10か月齢、11か月齢、1歳齢、1.5歳齢、2歳齢、2.5歳齢、3歳齢、3.5歳齢、4歳齢、4.5歳齢、または5歳齢である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、1.5か月齢、2か月齢、3か月齢、4か月齢、5か月齢、6か月齢、7か月齢、8か月齢、9か月齢、10か月齢、11か月齢、1歳齢、1.5歳齢、2歳齢、2.5歳齢、3歳齢、3.5歳齢、4歳齢、4.5歳齢未満、または5歳齢未満である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、1~2か月齢、2~3か月齢、3~4か月齢、4~5か月齢、5~6か月齢、6~7か月齢、7~8か月齢、8~9か月齢、9~10か月齢、10~11か月齢、11か月齢~1歳齢、1~1.5歳齢、1.5~2歳齢、2~2.5歳齢、2.5~3歳齢、3~3.5歳齢、3.5~4歳齢、4~4.5歳齢未満、または4.5~5歳齢である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、6か月齢~5歳齢である。別の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、18歳齢以上のヒト成人である。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、18歳未満のヒト小児である。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、84か月未満のヒト小児である。
【0203】
4.3.2 投与量及び投与様式
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、治療有効用量の組換えベクターは、(1)硝子体切除を伴わずに網膜下腔に(例えば、脈絡膜上腔を介してまたは周囲注射を介して)投与される、(2)脈絡膜上腔に投与される(3)強膜の外側の腔に投与される(すなわち、強膜近傍投与)、(4)硝子体切除を介して網膜下腔へ投与される、または(5)硝子体腔へ投与され、容量は、投与方法に応じて、50~100μlまたは100~500μl、好ましくは100~300μlの範囲、最も好ましくは、250μlである。ある特定の実施形態では、治療有効用量の組換えベクターは、100μl以下の容量で、例えば、50~100μlの容量で脈絡膜上投与される。ある特定の実施形態では、治療有効用量の組換えベクターは、強膜の外側表面に、(例えば、後強膜近傍デポー手順によって)500μl以下の容量で、例えば、10~20μl、20~50μl、50~100μl、100~200μl、200~300μl、300~400μl、または400~500μlの容量で投与される。ある特定の実施形態では、治療有効用量の組換えベクターは、周囲注射を介して網膜下腔に、50~100μlまたは100~500μl、好ましくは100~300μl、及び最も好ましくは、200μlの容量で投与される。
【0204】
特定の実施形態では、治療有効用量の組換えベクターは、200μLの容量で網膜下に投与される。
【0205】
ある特定の実施形態では、眼投与に関する本明細書に記載の任意の投与経路に使用できる、Altavizによって製造された、微小容量インジェクター送達システム(例えば、国際特許出願公開第2013/177215号、米国特許出願公開第2019/0175825号、及び米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)を本明細書に記載する。微小容量インジェクター送達システムは、高力送達及び改善された精度を提供するガス駆動モジュールを含み得、これは米国特許出願公開第2019/0175825号及び米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるとおりである。加えて、微小容量インジェクター送達システムは、一定の用量率を提供するための油圧ドライブ、及びガス駆動モジュール、ひいては流体送達を制御するための低力作動レバーを含み得る。
【0206】
ある特定の実施形態では、微小容量インジェクターに使用できる微小容量インジェクター送達システムは、用量ガイダンスを備えた微小容量インジェクターであり、例えば、脈絡膜上針(例えば、Clearside(登録商標)針)、網膜下針、硝子体内針、強膜近傍針、結膜下針、及び/または網膜内針とともに使用することができる。微小容量インジェクターを使用する利点は、以下を含む:(a)より制御された送達(例えば、正確な注射流量制御及び用量ガイダンスを有するため)、(b)外科医1人、片手、指1本の操作;(c)10μLの増分投与量の空圧駆動;(d)硝子体切除機からの離別;(e)400μLシリンジ用量;(f)デジタル的にガイドされた送達;(g)デジタル的に記録された送達;及び(h)制限の少ない先端(例えば、MedOne 38g針及びDorc 41g針を網膜下送達に使用できる一方で、Clearside(登録商標)針及びVisionisti OYアダプターを網膜下送達に使用することができる)。
【0207】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、組換えベクターは、脈絡膜上に(例えば、脈絡膜上注射によって)投与される。特定の実施形態では、脈絡膜上投与(例えば、脈絡膜上腔への注射)は、脈絡膜上薬物送達デバイスを使用して行われる。脈絡膜上薬物送達デバイスは、眼の脈絡膜上腔への薬物の投与を伴う、脈絡膜上投与手順においてしばしば使用される(例えば、Hariprasad,2016,Retinal Physician 13:20-23、Goldstein,2014,Retina Today 9(5):82-87、Baldassarre et al.,2017(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。本明細書に記載の本発明に従う脈絡膜上腔に組換えベクターを堆積させるために使用することができる脈絡膜上薬物送達デバイスは、Clearside(登録商標)Biomedical,Inc.により製造された脈絡膜上薬物送達デバイス(例えば、Hariprasad,2016,Retinal Physician 13:20~23を参照されたい)及びMedOne脈絡膜上カテーテルを含むが、これらに限定されない。別の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って使用することができる脈絡膜上薬物送達デバイスは、眼投与に関する本明細書に記載の任意の投与経路に使用できる、Altavizによって製造された、微小容量インジェクター送達システムを含む(例えば、国際特許出願公開第2013/177215号、米国特許出願公開第2019/0175825号、及び米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)。微小容量インジェクター送達システムは、高力送達及び改善された精度を提供するガス駆動モジュールを含み得、これは米国特許出願公開第2019/0175825号及び米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるとおりである。加えて、微小容量インジェクター送達システムは、一定の用量率を提供するための油圧ドライブ、及びガス駆動モジュール、ひいては流体送達を制御するための低力作動レバーを含み得る。現在利用可能な脈絡膜上腔(SCS)送達のための技術が存在する。前臨床的には、SC注射は、強膜フラップ技術、カテーテル、及び標準的な皮下注射針、ならびにマイクロニードルで達成されている。中空穴750um長のマイクロニードル(Clearside Biomedical,Inc.)を部分に挿入することができ、臨床治験において有望性を示している。力計測技術を用いて設計されたマイクロニードルを、Chitnisらによって記載されるように、SC注射に利用することができる(Chitnis,G.D.,et al.A resistance-sensing mechanical injector for the precise delivery of liquids to target tissue.Nat Biomed Eng 3,621-631(2019)。https://doi.org/10.1038/s41551-019-0350-2)。Oxular Limitedは、脈絡膜上腔に照明されたカニューレを前進させる送達システム(Oxulumis)を開発している。Orbitデバイス(ジャイロスコープ)は、柔軟なカニューレによる脈絡膜上腔のカニューレ挿入を可能にする特別に設計されたシステムである。カニューレ内のマイクロニードルを網膜下腔に前進させて、標的用量送達を可能にする。SCSへの眼内アクセスは、最小侵襲性緑内障手術(MIGS)デバイスとして機能する、マイクロステントを使用して達成することもできる。例としては、CyPass(登録商標)マイクロステント(Alcon、Fort Worth,Texas,US)及びiStent(登録商標)(Glaukos)が挙げられ、これらは、前房からSCSに導管を提供して、フィルタリングブレブを形成することなく房水を排出するために外科的に植え込まれる。脈絡膜上送達のために企図される他のデバイスとしては、英国特許公開第GB2531910A号及び米国特許第10,912,883B2号に記載されるものが挙げられる。
【0208】
微小容量インジェクターは、用量ガイダンスを備えた微小容量インジェクターであり、例えば、脈絡膜上針(例えば、Clearside(登録商標)針)または網膜下針とともに使用することができる。微小容量インジェクターを使用する利点は、以下を含む:(a)より制御された送達(例えば、正確な注射流量制御及び用量ガイダンスを有するため)、(b)外科医1人、片手、指1本の操作;(c)10μLの増分投与量の空圧駆動;(d)硝子体切除機からの離別;(e)400μLシリンジ用量;(f)デジタル的にガイドされた送達;(g)デジタル的に記録された送達;及び(h)制限の少ない先端(例えば、MedOne 38g針及びDorc 41g針は網膜下送達に使用できる一方で、Clearside(登録商標)針及びVisionisti OYアダプターを、脈絡膜上送達に使用することができる)。別の実施形態では、本明細書に記載の方法に従って使用することができる脈絡膜上薬物送達デバイスは、Visionisti OYによって製造されたアダプター(好ましくは、更に針ガイド)を備えた通常の長さの皮下注射針を含むツールであり、このアダプターは、通常の長さの皮下注射針を、アダプターから露出している針先端の長さを制御することにより、脈絡膜上針へと変える(例えば、米国意匠特許第D878,575号;及び国際特許出願公開第2016/083669号を参照されたい)。特定の実施形態では、脈絡膜上薬物送達デバイスは、1ミリメートルの30ゲージ針を備えたシリンジである。このデバイスを使用する注射中に、針が強膜の基部を貫通し、薬物を含有する液体が脈絡膜上腔に入り、脈絡膜上腔の拡張につながる。その結果、注射中に触覚的及び視覚的なフィードバックが得られる。注射後、液体は後方に流れ、脈絡膜及び網膜で主に吸収される。これにより、全網膜細胞層及び脈絡膜細胞から治療用産物が産生される。このタイプのデバイス及び手順を使用すると、合併症のリスクが低く、迅速で診療室内で簡単に処置することが可能になる。100μlの最大容量を、脈絡膜上腔に注射することができる。
【0209】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、組換えベクターは、硝子体切除を介して網膜下に投与される。硝子体切除を介した網膜下投与は、訓練を受けた網膜外科医によって行われる外科的手順であり、局所麻酔下の対象での硝子体切除、及び網膜への遺伝子療法の網膜下注射を伴う(例えば、Campochiaro et al.,2017,Hum Gen Ther 28(1):99-111(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0210】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、組換えベクターは、硝子体切除を伴わずに網膜下に投与される。
【0211】
本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、硝子体切除を伴わない網膜下投与は、網膜下薬物送達デバイスの使用により脈絡膜上腔を介して行われる。ある特定の実施形態では、網膜下薬物送達デバイスは、網膜下腔に薬物を送達するための外科的手順中に、後眼部周辺の脈絡膜上腔に挿入される及び脈絡膜上腔を通すカテーテルである。この手順は、硝子体を無傷のままにすることができるため、合併症のリスクが少なくなり(遺伝子療法撤退、ならびに網膜剥離及び黄斑円孔などの合併症のリスクが少なくなり)、硝子体切除を伴わないと、結果として生じるブレブがより拡散的に広がって、網膜のより多くの表面領域がより少ない容量で形質導入されることを可能にし得る。この手順の後に白内障が誘発されるリスクは最小限に抑えられ、これは若年患者にとって望ましい。更に、この手順は、標準的な経硝子体アプローチよりも安全に中心窩の下にブレブを送達することができ、これは、形質導入の標的細胞が黄斑にある中心視に影響する遺伝性網膜疾患の患者にとって望ましい。この手順は、他の送達経路(例えば脈絡膜上及び硝子体内)に影響を与え得る、全身循環中に存在するAAVに対する中和抗体(Nab)を有する患者にとっても好ましい。加えて、この方法は、標準的な経硝子体アプローチよりも網膜切開部位からの放出が少ないブレブを作製することが示されている。元々Janssen Pharmaceuticals,Inc.によって、今はOrbit Biomedical Inc.によって製造されている網膜下薬物送達デバイス(例えば、Subretinal Delivery of Cells via the Suprachoroidal Space:Janssen Trial.In:Schwartz et al.(eds)Cellular Therapies for Retinal Disease,Springer,Cham、国際特許出願公開第2016/040635A1号を参照されたい)を、かかる目的のために使用することができる。
【0212】
別の特定の実施形態では、硝子体切除を伴わない網膜下投与は、網膜への周囲注射(すなわち、後眼部に位置する視神経乳頭、中心窩及び黄斑の周囲)を介して行われる。これは、経硝子体注射によって達成することができる。
【0213】
一実施形態では、鋭針を、上眼側または下眼側(例えば、2時または10時の位置)を介して強膜に挿入し、硝子体に完全に通過させて、反対側の網膜に注射する。別の実施形態では、套管針を強膜に挿入して、網膜下カニューレを眼に挿入することを可能にする。カニューレを套管針に挿入し、所望の注射領域まで硝子体を通す。いずれの実施形態でも、組換えベクターを、網膜下腔に注射し、眼の反対側の内面上に組換えベクターを含有するブレブを形成する。注射の成功は、ドーム形状の網膜剥離/網膜ブレブの出現によって確認される。
【0214】
自己照明レンズを、経硝子体投与の光源として使用し得る(例えば、Chalam et al.,2004,Ophthalmic Surgery and Lasers 35:76-77(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。あるいは、必要に応じて、1つまたは複数の套管針を光(または注入)用に配置することもできる。更に別の実施形態では、網膜下注射を視覚化するために、套管針を介して光ファイバーシャンデリアを利用することができる。
【0215】
ある特定の実施形態では、網膜下または脈絡膜上腔への送達は、国際公開第WO2016/042162号、同第WO2017/046358号、同第WO2017/158365号、及び同第WO2017/158366号(各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載及び開示されている方法及び/またはデバイスを使用して行うことができる。
【0216】
1回、2回、またはそれ以上の周囲注射を行って、組換えベクターを投与することができる。このようにして、組換えベクターを含有する1つ、2つ、またはそれ以上のブレブを、視神経乳頭、中心窩及び黄斑の周囲の網膜下腔に作成することができる。驚くべきことに、組換えベクターの投与は、周囲注射ブレブに限定されているが、このアプローチを使用すると、網膜全体での治療用産物の発現を検出することができる。
【0217】
特定の実施形態では、硝子体内投与は、眼投与に関する本明細書に記載の任意の投与経路に使用できる、Altavizによって製造された、微小容量インジェクター送達システムを含む硝子体内薬物送達デバイス(例えば、国際特許出願公開第2013/177215号)、米国特許出願公開第2019/0175825号、及び米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)を用いて行われる。微小容量インジェクター送達システムは、高力送達及び改善された精度を提供するガス駆動モジュールを含み得、これは米国特許出願公開第2019/0175825号及び米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるとおりである。加えて、微小容量インジェクター送達システムは、一定の用量率を提供するための油圧ドライブ、及びガス駆動モジュール、ひいては流体送達を制御するための低力作動レバーを含み得る。微小容量インジェクターは、用量ガイダンスを備えた微小容量インジェクターであり、例えば、硝子体内針とともに使用することができる。微小容量インジェクターを使用する利点は、以下を含む:(a)より制御された送達(例えば、正確な注射流量制御及び用量ガイダンスを有するため)、(b)外科医1人、片手、指1本の操作;(c)10μLの増分投与量の空圧駆動;(d)硝子体切除機からの離別;(e)400μLシリンジ用量;(f)デジタル的にガイドされた送達;(g)デジタル的に記録された送達;及び(h)制限の少ない先端(例えば、MedOne 38g針及びDorc 41g針は網膜下送達に使用できる一方で、Clearside(登録商標)針及びVisionisti OYアダプターを、網膜下送達に使用できる)。
【0218】
ある特定の実施形態では、周囲注射は、眼全体にわたる治療用産物の均一な発現をもたらす(例えば、注射部位での発現レベルの変動は、眼の他の領域での発現レベルと比較して5%、10%、20%、30%、40%、または50%未満である)。眼全体にわたる治療用産物の発現は、そのような目的のために当該技術分野で公知の任意の方法によって、例えば、眼もしくは網膜のホールマウント免疫蛍光染色によって、または凍結眼切片上の免疫蛍光染色によって測定することができる。
【0219】
経硝子体注射により網膜下腔ではなく硝子体の組換えベクターが失われる事象では、任意選択の硝子体切除を行って、硝子体に注射された組換えベクターを除去することができる。次に、硝子体切除を伴う網膜下注射を行って、250μlの組換えベクターを網膜下腔に送達することができる。あるいは、いくらかの注射された組換えベクターが硝子体へと堆積し、硝子体から組換えベクターを除去するための硝子体切除が行われない場合、固定化された(例えば、共有結合した)抗AAV抗体(例えば、抗AAV9抗体)を伴うカテーテルを、硝子体へと挿入して、硝子体から過剰な組換えベクターを捕捉及び除去することができる。
【0220】
特定の実施形態では、網膜下投与は、眼投与に関する本明細書に記載の任意の投与経路に使用できる、Altavizによって製造された、微小容量インジェクター送達システムを含む網膜下薬物送達デバイス(例えば、国際特許出願公開第2013/177215号、米国特許出願公開第2019/0175825号、及び米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)を用いて行われる。微小容量インジェクター送達システムは、高力送達及び改善された精度を提供するガス駆動モジュールを含み得、これは米国特許出願公開第2019/0175825号及び米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるとおりである。加えて、微小容量インジェクター送達システムは、一定の用量率を提供するための油圧ドライブ、及びガス駆動モジュール、ひいては流体送達を制御するための低力作動レバーを含み得る。微小容量インジェクターは、用量ガイダンスを備えた微小容量インジェクターであり、例えば、網膜下針とともに使用することができる。微小容量インジェクターを使用する利点は、以下を含む:(a)より制御された送達(例えば、正確な注射流量制御及び用量ガイダンスを有するため)、(b)外科医1人、片手、指1本の操作;(c)10μLの増分投与量の空圧駆動;(d)硝子体切除機からの離別;(e)400μLシリンジ用量;(f)デジタル的にガイドされた送達;(g)デジタル的に記録された送達;及び(h)制限の少ない先端(例えば、MedOne 38g針及びDorc 41g針は網膜下送達に使用できる一方で、Clearside(登録商標)針及びVisionisti OYアダプターを、脈絡膜上送達に使用することができる)。
【0221】
ある特定の実施形態では、組換えベクターは、強膜の外側表面に投与される(例えば、カニューレの先端を強膜表面に挿入し、強膜表面に直接並置させることができるカニューレを含む強膜近傍薬物送達デバイスの使用による)。特定の実施形態では、強膜の外側表面への投与は、薬物を鈍端湾曲カニューレに引き込み、次いで、眼球を穿刺することなく強膜の外側表面と直接接触するように送達する、後強膜近傍デポー手順を使用して行われる。特に、露出強膜に小さな切開を作製した後、カニューレの先端を挿入する。カニューレシャフトの湾曲部分を挿入し、カニューレの先端を強膜表面に直接並置した状態に保つ。カニューレを完全に挿入した後、滅菌綿棒でカニューレシャフトの上部及び側面に沿って軽い圧力を維持しながら、薬物をゆっくりと注射する。この送達方法は、眼内感染及び網膜剥離のリスク、治療剤を眼に直接注射することに関連することが多い副作用を回避する。
【0222】
特定の実施形態では、強膜近傍投与は、眼投与に関する本明細書に記載の任意の投与経路に使用できる、Altavizによって製造された、微小容量インジェクター送達システムを含む強膜近傍薬物送達デバイス(例えば、国際特許出願公開第2013/177215号、米国特許出願公開第2019/0175825号、及び米国特許出願公開第2019/0167906号を参照されたい)を用いて行われる。微小容量インジェクター送達システムは、高力送達及び改善された精度を提供するガス駆動モジュールを含み得、これは米国特許出願公開第2019/0175825号及び米国特許出願公開第2019/0167906号に記載されるとおりである。加えて、微小容量インジェクター送達システムは、一定の用量率を提供するための油圧ドライブ、及びガス駆動モジュール、ひいては流体送達を制御するための低力作動レバーを含み得る。微小容量インジェクターは、用量ガイダンスを備えた微小容量インジェクターであり、例えば、強膜近傍針とともに使用することができる。微小容量インジェクターを使用する利点は、以下を含む:(a)より制御された送達(例えば、正確な注射流量制御及び用量ガイダンスを有するため)、(b)外科医1人、片手、指1本の操作;(c)10μLの増分投与量の空圧駆動;(d)硝子体切除機からの離別;(e)400μLシリンジ用量;(f)デジタル的にガイドされた送達;(g)デジタル的に記録された送達;及び(h)制限の少ない先端。
【0223】
ある特定の実施形態では、赤外線熱カメラを使用して、体温よりも低温である溶液の投与後の眼表面の熱プロファイルの変化を検出して、眼表面の熱プロファイルの変化を検出することができ、これにより例えば、SCS内での溶液の広がりを視覚化することが可能になり、投与が成功裏に完了したか否かを潜在的に判断できる。これは、ある特定の実施形態では、投与される組換えベクターを含有する製剤が最初に凍結され、室温(68~72°F)にされ、短時間(例えば、少なくとも30分)解凍されてから投与されるためであり、ゆえに、製剤は、注射の時点ではヒトの眼(約92°F)よりも低温(場合によっては室温よりも低温)である。薬剤は、典型的には、解凍の4時間以内に使用し、最も温かくても溶液は室温であろう。好ましい実施形態では、手順は、赤外線ビデオでビデオ化される。
【0224】
赤外線熱カメラは、温度の小さな変化を検出できる。それらはレンズを通して赤外線エネルギーを捉え、そのエネルギーを電子信号に変換する。赤外光は、エネルギーを熱画像に変換する赤外線センサーアレイに焦点を合わせる。赤外線熱カメラは、本明細書に記載の任意の投与経路、例えば、脈絡膜上投与、網膜下投与、結膜下投与、硝子体内投与、または脈絡膜上腔への低速注入カテーテルを使用した投与を含む、眼への任意の投与方法に使用することができる。特定の実施形態では、赤外線熱カメラは、FLIR T530赤外線熱カメラである。FLIR T530赤外線熱カメラは、±3.6°Fの精度でわずかな温度差を捉えることができる。カメラは、76,800ピクセルの赤外線解像度を有する。カメラは更に、より小さな視野を捉える24°レンズを利用する。高い赤外線解像度と組み合わせたより小さな視野は、操作者がイメージングしているもののより詳細な熱プロファイルに寄与する。ただし、わずかな温度変化を捉えるための異なる能力及び精度を有し、異なる赤外線解像度、及び/または異なる度のレンズを備えた他の赤外線カメラを使用することができる。
【0225】
特定の実施形態では、赤外線熱カメラは、FLIR T420赤外線熱カメラである。特定の実施形態では、赤外線熱カメラは、FLIR T440赤外線熱カメラである。特定の実施形態では、赤外線熱カメラは、Fluke Ti400赤外線熱カメラである。特定の実施形態では、赤外線熱カメラは、FLIRE60赤外線熱カメラである。特定の実施形態では、赤外線熱カメラの赤外線解像度は、75,000ピクセル以上である。特定の実施形態では、赤外線熱カメラの熱感度は、30℃で0.05℃以下である。特定の実施形態では、赤外線熱カメラの視野(FOV)は、25°×25°以下である。
【0226】
ある特定の実施形態では、鉄フィルターを赤外線熱カメラとともに使用して、眼表面の熱プロファイルにおける変化を検出する。好ましい実施形態では、鉄フィルターの使用は、疑似カラー画像を生成することができ、最も暖かいまたは高温の部分は白く着色され、中間の温度は赤色及び黄色であり、最も冷たいまたは低温の部分は黒色である。ある特定の実施形態では、他のタイプのフィルターを使用して、熱プロファイルの疑似カラー画像を生成することもできる。
【0227】
各投与方法に関する熱プロファイルは、異なり得る。例えば、一実施形態では、脈絡膜上注射の成功は、(a)暗い色のゆっくりとした広い放射状の広がり、(b)最初の非常に暗い色、及び(c)注射物のより明るい色への緩やかな変化、すなわち、より明るい色によって示される温度勾配を特徴とすることができる。一実施形態では、脈絡膜上注射の失敗は、(a)暗い色の広がりがないこと、及び(b)分布を伴わず注射部位に局在する色のわずかな変化を特徴とすることができる。ある特定の実施形態では、小さな局所的な温度低下は、カニューレ(低温)が眼組織(高温)に接触することに起因する。一実施形態では、硝子体内注射の成功は、(a)暗い色の広がりがないこと、(b)注射部位に局在する非常に暗い色への最初の変化、及び(c)より暗い色への眼全体の緩やか及び均一な変化を特徴とすることができる。一実施形態では、眼球外流出は、(a)眼の外面の外側での急速な流れ、(b)最初の非常に暗い色、及び(c)より明るい色への急速な変化を特徴とすることができる。
【0228】
治療用産物が継続的に生産されるため(構成的プロモーターの制御下で、または低酸素誘導性プロモーターを使用する場合は低酸素状態によって誘導される)、低濃度の維持が効果的であり得る。硝子体液濃度は、硝子体液または前房から収集した液体の患者試料において直接測定することができる、あるいは治療用産物の患者の血清濃度を測定することにより推定及び/またはモニターすることができる-治療用産物への全身曝露対硝子体曝露の比率は、約1:90,000である。(例えば、Xu L,et al.,2013,Invest.Opthal.Vis.Sci.54:1621頁の1616-1624及び1623頁の表5(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において報告されたラニビズマブの房水及び血清濃度を参照されたい。
【0229】
ある特定の実施形態では、投与量は、患者の眼に投与される(例えば、脈絡膜上、網膜下、硝子体内、強膜近傍、結膜下、及び/または網膜内に投与される)ゲノムコピー/mlまたはゲノムコピーの数によって測定される。ある特定の実施形態では、1×109ゲノムコピー/ml~1×1015ゲノムコピー/mlを投与する。特定の実施形態では、1×109ゲノムコピー/ml~1×1010ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、1×1010ゲノムコピー/ml~1×1011ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、1×1010~5×1011ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1011ゲノムコピー/ml~1×1012ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、1×1012ゲノムコピー/ml~1×1013ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、1×1013ゲノムコピー/ml~1×1014ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、1×1014ゲノムコピー/ml~1×1015ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×109ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1010ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1011ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1012ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1013ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1014ゲノムコピー/mlを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1015ゲノムコピー/mlを投与する。ある特定の実施形態では、1×109~1×1015ゲノムコピーを投与する。特定の実施形態では、1×109~1×1010ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1010~1×1011ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1010~5×1011ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1011~1×1012ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1012~1×1013ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1013~1×1014ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1013~1×1014ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、1×1014~1×1015ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×109ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1010ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1011ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1012ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1013ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1014ゲノムコピーを投与する。別の特定の実施形態では、約1×1015ゲノムコピーを投与する。ある特定の実施形態では、約3.0×1013ゲノムコピー/眼を投与する。ある特定の実施形態では、最大約3.0×1013ゲノムコピー/眼を投与する。
【0230】
ある特定の実施形態では、約2.0×1010ゲノムコピー/眼を投与する。ある特定の実施形態では、約6.0×1010ゲノムコピー/眼を投与する。
【0231】
ある特定の実施形態では、約1.0×1010~2.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約2.0×1010~3.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約3.0×1010~4.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約4.0×1010~5.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約5.0×1010~6.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約6.0×1010~7.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約7.0×1010~8.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約8.0×1010~9.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約9.0×1010~1.0×1011ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約1.0×1011~2.0×1011ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。
【0232】
ある特定の特定の実施形態では、約2.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。ある特定の特定の実施形態では、約6.0×1010ゲノムコピー/眼を、網膜下注射によって投与する。一部の実施形態では、網膜下注射の注射量は、200μLである。
【0233】
ある特定の実施形態では、約2×1010~3×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約3×1010~4×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約4×1010~5×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約5×1010~6×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約6×1010~7×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約7×1010~8×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約8×1010~9×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約9×1010~1×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約1×1011~2×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約2×1011~3×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約3×1011~4×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約4×1011~5×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約5×1011~6×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約6×1011~7×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約7×1011~8×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約8×1011~9×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約9×1011~1×1012ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。
【0234】
ある特定の実施形態では、約2×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約3×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約4×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約5×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約6×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約7×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約8×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約9×1010ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約1×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約1.5×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約2×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約2.5×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。ある特定の実施形態では、約3×1011ゲノムコピー/眼を、脈絡膜上注射によって投与する。
【0235】
ある特定の実施形態では、単回脈絡膜上注射を投与する。ある特定の実施形態では、二回脈絡膜上注射を投与する。ある特定の実施形態では、脈絡膜上注射の注射量は、100μlである。
【0236】
本明細書で使用する場合、及び別段の指定がない限り、「約」という用語は、所与の値または範囲のプラスまたはマイナス10%以内を意味する。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、列挙された正確な数を包含する。
【0237】
4.3.3 試料採取及び有効性のモニタリング
ある特定の実施形態では、ヒト対象がCNS及び眼の両方に疾患症状を有する場合(例えば、ヒト対象がバッテン病を有する場合)、本明細書に提供する方法は、本明細書に記載の組換えベクター(すなわち、組換えウイルスベクターまたはDNA発現コンストラクト)を、ヒト対象に、中枢神経系(CNS)送達経路及び眼送達経路(例えば、本明細書に記載の眼送達経路)の両方を介して投与することを含む。ある特定の実施形態では、眼送達経路は、以下:(1)硝子体切除を伴わない網膜下投与(例えば、脈絡膜上腔を介したまたは周囲注射を介した網膜下腔への投与)、(2)脈絡膜上投与、(3)強膜の外側の腔への投与(すなわち、強膜近傍投与)、(4)硝子体切除を伴う網膜下投与、(5)硝子体内投与、及び(6)硝子体内投与のうちの1つから選択される。ある特定の実施形態では、CNS送達経路は、以下:脳室内(ICV)送達、大槽内(IC)送達、または腰部髄腔内(IT-L)送達のうちの1つから選択される。
【0238】
視覚障害に対する本明細書に提供する方法の効果は、BCVA(最良矯正視力)、眼内圧、細隙灯生体顕微鏡検査、及び/または倒像眼底検査によって測定され得る。
【0239】
特定の実施形態では、視覚障害に対する本明細書に提供する方法の効果は、本明細書に記載の方法によって処置されるヒト患者の眼が、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に、43文字を超えるBCVAを達成するか否かによって測定され得る。43文字のBCVAは、20/160近似スネレン等価視力に相当する。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって処置されるヒト患者の眼は、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に、43文字を超えるBCVAを達成する。
【0240】
特定の実施形態では、視覚障害に対する本明細書に提供する方法の効果は、本明細書に記載の方法によって処置されるヒト患者の眼が、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に、84文字を超えるBCVAを達成するか否かによって測定され得る。84文字のBCVAは、20/20近似スネレン等価視力に相当する。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって処置されるヒト患者の眼は、処置後(例えば、処置後46~50週または98~102週)に、84文字を超えるBCVAを達成する。
【0241】
眼/網膜への物理的変化に対する本明細書に提供する方法の効果は、SD-OCT(SD-光コヒーレンストモグラフィー)によって測定され得る。
【0242】
有効性は、網膜電図検査(ERG)によって測定して、モニターし得る。
【0243】
本明細書に提供する方法の効果は、視覚喪失、感染、炎症及び他の安全性事象、例えば網膜剥離の兆候を測定することによってモニターし得る。
【0244】
網膜厚をモニターして、本明細書に提供する方法の有効性を決定し得る。いずれの特定の理論にも拘束されないが、網膜の厚さを臨床的読み出しとして使用してよく、網膜厚における減少が大きい、または網膜の肥厚までの時間がより長いと、処置はより有効である。網膜機能は、例えば、ERGによって決定され得る。ERGは、ヒトでの使用がFDAによって承認された網膜機能の非侵襲的電気生理的検査であり、これは、眼の光感受性細胞(桿体及び錐体)、及びにそれが接続している神経節細胞、特に、その閃光刺激への応答を検査する。網膜厚は、例えば、SD-OCTによって決定され得る。SD-OCTは、低コヒーレンス干渉法を使用して、目的の物体から反射される後方散乱光のエコー時間遅延及び振幅を決定する三次元画像化技術である。OCTを使用して、3から15μmの軸方向分解能で組織試料(例えば、網膜)の層をスキャンすることができ、SD-OCTは、その技術の以前の型よりも軸方向分解能及びスキャン速度を改善する(Schuman,2008,Trans.Am.Opthamol.Soc.106:426-458)。
【0245】
本明細書に提供する方法の効果は、National Eye Institute視覚機能質問票、Raschスコア版(NEI-VFQ-28-R)(複合スコア、活動制限ドメインスコア、及び社会生活-精神的機能ドメインスコア)におけるベースラインからの変化によっても測定され得る。本明細書に提供する方法の効果は、National Eye Institute視覚機能質問票25項目版(NEI-VFQ-25)(複合スコア及び心の健康サブスケールスコア)におけるベースラインからの変化によっても測定され得る。本明細書に提供する方法の効果は、黄斑疾患治療満足度質問票(MacTSQ)(複合スコア;安全性、有効性、及び不快ドメインスコア;ならびに情報提供及び利便性ドメインスコア)におけるベースラインからの変化によっても測定され得る。
【0246】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法の有効性は、約4週、12週、6か月、12か月、24か月、36か月、または他の所望の時点での視覚における改善によって反映される。特定の実施形態では、視覚における改善は、BCVAにおける増加、例えば、1文字、2文字、3文字、4文字、5文字、6文字、7文字、8文字、9文字、10文字、11文字、もしくは12文字、またはそれ以上の増加を特徴とする。特定の実施形態では、視覚における改善は、ベースラインからの視力における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上の増加を特徴とする。
【0247】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法の有効性は、約4週、12週、6か月、12か月、24か月、36か月、または他の所望の時点での中心網膜厚(CRT)または外顆粒層厚(OLN)における低減、例えば、ベースラインからの中心網膜厚における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上の減少によって反映される。
【0248】
特定の実施形態では、処置後の眼に炎症はない、または処置後の眼に炎症はほとんどない(例えば、炎症レベルの増加は、ベースラインから10%、5%、2%、1%またはそれ未満である)。
【0249】
視覚障害に対する本明細書に提供する方法の効果は、視運動性眼振(OKN)によって測定され得る。
理論に拘束されないが、この視力スクリーニングは、OKN不随意反射の原理を使用して、患者の眼が動く標的を追跡できるか否かを客観的に評価する。OKNを使用することにより、検査員及び患者間での口頭でのコミュニケーションは必要とされない。そのため、OKNを使用して、言語習得前及び/または言語を用いない患者の視力を測定することができる。ある特定の実施形態では、OKNを使用して、1か月齢、2か月齢、3か月齢、4か月齢、5か月齢、6か月齢、7か月齢、8か月齢、9か月齢、10か月齢、11か月齢、1歳齢、1.5歳齢、2歳齢、2.5歳齢、3歳齢、3.5歳齢、4歳齢、4.5歳齢、または5歳齢である患者の視力を測定する。ある特定の実施形態では、iPadを使用して、患者がiPad上で動きを見ている際のOKN反射の検出を通して視力を測定する。
理論に拘束されないが、この視力スクリーニングは、OKN不随意反射の原理を使用して、患者の眼が動く標的を追跡できるか否かを客観的に評価する。OKNを使用することにより、検査員及び患者間での口頭でのコミュニケーションは必要とされない。そのため、OKNを使用して、言語習得前及び/または言語を用いない患者の視力を測定することができる。ある特定の実施形態では、OKNを使用して、1.5か月齢、2か月齢、3か月齢、4か月齢、5か月齢、6か月齢、7か月齢、8か月齢、9か月齢、10か月齢、11か月齢、1歳齢、1.5歳齢、2歳齢、2.5歳齢、3歳齢、3.5歳齢、4歳齢、4.5歳齢、または5歳齢未満である患者の視力を測定する。別の特定の実施形態では、OKNを使用して、1~2か月齢、2~3か月齢、3~4か月齢、4~5か月齢、5~6か月齢、6~7か月齢、7~8か月齢、8~9か月齢、9~10か月齢、10~11か月齢、11か月齢~1歳齢、1~1.5歳齢、1.5~2歳齢、2~2.5歳齢、2.5~3歳齢、3~3.5歳齢、3.5~4歳齢、4~4.5歳齢、または4.5~5歳齢である患者の視力を測定する。別の特定の実施形態では、OKNを使用して、6か月齢~5歳齢である患者の視力を測定する。ある特定の実施形態では、iPadを使用して、患者がiPad上で動きを見ている際のOKN反射の検出を通して視力を測定する。
【0250】
ある特定の実施形態では、視力は、バッテン-CLN2関連視覚喪失を呈する患者において、患者を、トリペプチジル-ペプチダーゼ1(TPP1)をコードするAAV、好ましくはAAV9を用いて処置する前にOKNを測定することによって評価される。具体的には、バッテン-CLN2関連視覚喪失を呈する患者は、上記の年齢である、及び/または上記の年齢範囲内である。ある特定の実施形態では、視力は、バッテン-CLN2関連視覚喪失を呈する最大で5歳齢までの患者において、患者を、トリペプチジル-ペプチダーゼ1をコードするAAV、好ましくはAAV9を用いて処置した後にOKNを測定することによって評価される。ある特定の実施形態では、OKNに基づく視力評価は、AAV遺伝子療法を用いた処置後に視力が低減しないことを決定する。ある特定の実施形態では、OKNに基づく視力評価は、AAV遺伝子療法を用いた処置後の患者において視力が、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40% 45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%改善することを決定する。ある特定の実施形態では、OKNに基づく視力評価は、AAV遺伝子療法を用いた処置後の患者において視力が更に悪化しないことを決定する。
ある特定の実施形態では、視力は、バッテン-CLN2関連視覚喪失を呈する患者において、患者を、TPP1をコードするAAV、好ましくはAAV9を用いて処置する前にOKNを測定することによって評価される。具体的には、バッテン-CLN2関連視覚喪失を呈する患者は、上記の年齢である、及び/または上記の年齢範囲内である。ある特定の実施形態では、視力は、バッテン-CLN2関連視覚喪失を呈する最大で5歳齢までの患者において、患者を、トリペプチジル-ペプチダーゼ1をコードするAAV、好ましくはAAV9を用いて処置した後にOKNを測定することによって評価される。ある特定の実施形態では、OKNに基づく視力評価は、AAV遺伝子療法を用いた処置後に視力が低減しないことを決定する。ある特定の実施形態では、OKNに基づく視力評価は、AAV遺伝子療法を用いた処置後の患者において視力が、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40% 45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または少なくとも100%改善することを決定する。ある特定の実施形態では、OKNに基づく視力評価は、AAV遺伝子療法を用いた処置後の患者において視力が更に悪化しないことを決定する。
ヒト患者が小児である場合、視覚機能は、視運動性眼振(OKN)ベースのアプローチまたは修正されたOKNベースのアプローチを使用して評価することができる。
【0251】
本明細書に提供する方法の効果はまた、瞳孔計測により経時的に測定される、瞳孔光反射における変化、例えば、ベースラインから約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月での、ベースラインからの瞳孔光反射における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の変化によっても測定され得る。
【0252】
本明細書に提供する方法の効果はまた、SD-OCTにより経時的に測定される、黄斑の厚さ及び/または体積における変化、例えば、ベースラインから約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月での、ベースラインからの黄斑の厚さ及び/または体積における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の変化によっても測定され得る。
【0253】
本明細書に提供する方法の効果は、網膜劣化の加速された低下段階(例えば、210μm CRTに到達する)までの時間における変化、例えば、網膜劣化の加速された低下段階までの時間、またはCRTにおける30μm喪失までもしくは約110μm未満のCRTまでの時間における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以上の変化(例えば、CRTにおける30μm喪失までまたは約110μm未満のCRTまで約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月)によっても測定され得る。
【0254】
本明細書に提供する方法の効果はまた、SD-OCT解剖学的マーカー、例えば、傍中心窩エリプソイドゾーン、ELM、RNFL、全網膜圧、内顆粒層、外顆粒層(ONL)、光受容体(PR)+網膜色素上皮(RPE)、外側セグメント+RPE(OS+RPE)、及び/またはエリプソイドゾーン(EZ)における経時的な変化、例えば、ベースラインから約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月での、SD-OCT解剖学的マーカー、例えば、傍中心窩エリプソイドゾーン、ELM、RNFL、全網膜圧、内顆粒層、外顆粒層(ONL)、光受容体(PR)+網膜色素上皮(RPE)、外側セグメント+RPE(OS+RPE)、及び/またはエリプソイドゾーン(EZ)におけるベースラインからの5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の変化によっても測定され得る。
【0255】
本明細書に提供する方法の効果はまた、修正したWCBSにより経時的に測定される、眼底写真上の眼底の様子における経時的な変化、例えば、ベースラインから約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月での、ベースラインからの修正したWCBSにより測定される、眼底写真上の眼底の様子における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の経時的な変化によっても測定され得る。
【0256】
本明細書に提供する方法の効果はまた、PedEyeQを使用して経時的に測定される、介護者により報告された視覚的転帰における経時的な変化、例えば、ベースラインから約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月での、ベースラインからの修正したWCBSにより測定される、PedEyeQを使用して経時的に評価される、介護者により報告された視覚的転帰における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の経時的な変化によっても測定され得る。
【0257】
本明細書に提供する方法の効果はまた、VABs III及びMSEL-視覚的受容を使用して経時的に評価される、認知能力に基づく適応行動における経時的な変化、例えば、ベースラインから約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、もしくは24か月での、ベースラインからのVABs III及びMSEL-視覚的受容を使用して経時的に評価される、認知能力に基づく適応行動における5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の経時的な変化によっても測定され得る。
【0258】
本明細書に提供される方法の効果はまた、処置された眼及び対照眼を使用したハンブルクスケール運動機能スコアにおける経時的な変化、例えば、約1~2、2~4、4~6、8~10、10~12、12~14、12~16、16~18、18~20、20~22、22~24か月、または約1、3、6、9、12、15、18、21、または24か月での、ベースラインからの修正したWCBSによって測定される、処置された眼及び対照眼を使用したハンブルクスケール運動機能スコアの5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の経時的な変化によっても測定され得る。
【0259】
別の態様では、ベクター排出は、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、涙液、血清または尿などの生体液中のベクターDNAを測定することによって決定され得る。一部の実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後の任意の時点で、生体液(例えば、涙液、血清または尿)中で検出可能ではない。一部の実施形態では、1000未満、500未満、100未満、50未満または10未満のベクター遺伝子コピー/5μLは、投与後の任意の時点で、生体液(例えば、涙液、血清または尿)中の定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である。特定の実施形態では、210ベクター遺伝子コピー/5μL以下が、血清中で検出可能である。一部の実施形態では、1000未満、500未満、100未満、50未満または10未満のベクター遺伝子コピー/5μLが、投与後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14週までに、生体液(例えば、涙液、血清または尿)中の定量的ポリメラーゼ連鎖反応によって検出可能である。特定の実施形態では、ベクター遺伝子コピーは、ベクターの投与後14週までに血清中で検出可能ではない。
【0260】
別の態様では、導入遺伝子(例えば、コンストラクトIによってコードされる導入遺伝子、またはTPP1)の発現レベルは、コンストラクトIが投与された対象の血清及び/またはCSF中の導入遺伝子産物を測定することによってモニターされ得る。導入遺伝子産物(例えば、TPP1)の発現レベルはまた、コンストラクトIが投与された対象の眼(例えば、房水及び/または硝子体液)においてモニターされ得る。導入遺伝子発現は、限定されないが、ウエスタンブロッティング、メソスケールディスカバリー(MSD)プラットフォームを使用して実装される電気化学発光(ECL)イムノアッセイ、及びELISAを含む、当該技術分野で公知の任意の好適なアッセイによって測定され得る。
【0261】
一部の実施形態では、眼内のTPP1の発現レベルは、眼の異なる領域間で変化してもよく、例えば、高レベルのベクターDNAは、ブレブの領域で網膜及び脈絡膜/RPE(側頭、注射による)ならびに上、下及び鼻の象限において検出されてもよく、一方、低レベルは、視神経、視交叉及び後頭葉において検出されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に提供するrAAV(例えば、コンストラクトI)は、視覚経路に沿って限定された順行性向性を示す。
【0262】
一部の実施形態では、対象への本明細書に提供するrAAV(例えば、コンストラクトI)の投与は、対象へのrAAVの投与の約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約15か月、約18か月、約21か月、または約24か月以内に、対象の眼の硝子体液及び/または房水における検出可能な(例えば、本明細書に記載の方法、または当該技術分野で公知の方法を使用して検出可能な)TPP1発現レベルをもたらし、rAAVの投与前に、硝子体液及び/または房水におけるTPP1発現のレベルが検出不能であった。一部の実施形態では、対象への本明細書に提供するrAAV(例えば、コンストラクトI)の投与は、対象へのrAAVの投与の約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約15か月、約18か月、約21か月、または約24か月以内に、対象の眼の硝子体液及び/または房水における検出可能な(例えば、本明細書に記載の方法、または当該技術分野で公知の方法を使用して検出可能な)TPP1発現レベルをもたらし、rAAVの投与前に、硝子体液及び/または房水におけるTPP1発現のレベルが検出不能であり、対象の血清におけるTPP1発現レベルは、検出不能(例えば、本明細書に記載の方法または当該技術分野で公知の方法を使用して検出不能)のままである。一部の実施形態では、TPP1は、免疫蛍光アッセイを使用して検出可能または検出不能である。一部の実施形態では、TPP1は、免疫染色アッセイを使用して検出可能または検出不能である。
【0263】
一部の実施形態では、対象への本明細書に提供するrAAV(例えば、コンストラクトI)の投与は、rAAVの投与前のTPP1発現レベルと比較して、対象へのrAAVの投与の約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約15か月、約18か月、約21か月、または約24か月以内に対象の眼の硝子体液及び/または房水におけるTPP1発現レベルの増加(例えば、約100倍~約500倍、約500倍~約1000倍、約1000倍~約1500倍、約1500倍~約2000倍、約2000倍~約2500倍、約2500倍~約3000倍、約3000倍~約4000倍、約4000倍~約5000倍、約5000倍~約10,000倍、約10,000倍~約15,000倍、約15,000~約20,000倍、または約20,000倍超の増加)をもたらす。一部の実施形態では、対象への本明細書に提供するrAAV(例えば、コンストラクトI)の投与は、rAAVの投与前のTPP1発現レベルと比較して、対象へのrAAVの投与の約3か月、約6か月、約9か月、約12か月、約15か月、約18か月、約21か月、または約24か月以内に対象の眼の硝子体液及び/または房水におけるTPP1発現レベルの増加(例えば、約100倍~約500倍、約500倍~約1000倍、約1000倍~約1500倍、約1500倍~約2000倍、約2000倍~約2500倍、約2500倍~約3000倍、約3000倍~約4000倍、約4000倍~約5000倍、約5000倍~約10,000倍、約10,000倍~約15,000倍、約15,000~約20,000倍、または約20,000倍超の増加)をもたらし、対象の血清におけるTPP1発現レベルは、投与前のTPP1発現レベルと比較してほぼ一定のままである(例えば、約10%以内のままである)。一部の実施形態では、TPP1発現は、免疫蛍光アッセイを使用して測定される。一部の実施形態では、TPP1発現は、免疫染色アッセイを使用して検出可能または検出不能である。
【0264】
一部の実施形態では、対象への本明細書で提供するrAAV(例えば、コンストラクトI)の投与は、対象の網膜におけるTPP1発現、例えば、網膜色素上皮及び/または光受容体外側セグメントにおける発現、またはその割合、または網膜の全深さにわたる発現をもたらす。一部の実施形態では、TPP1発現は、ニューロンに限定され得る。
【0265】
導入遺伝子産物レベルは、処置された眼の前房からの硝子体液及び/または房水の患者試料において測定することができる。あるいは、硝子体液濃度は、導入遺伝子産物の患者の血清濃度を測定することにより推定及び/またはモニターすることができる-導入遺伝子産物への全身曝露対硝子体曝露の比率は、約1:90,000である。(例えば、Xu L,et al.,2013,Invest.Opthal.Vis.Sci.54:1621頁の1616-1624及び1623頁の表5(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において報告されたラニビズマブの房水及び血清濃度を参照されたい。
【0266】
コンストラクトIに対する免疫原性を評価することができ、抗導入遺伝子産物抗体(房水、血清、及びCSF)、抗AAV9抗体(血清、CSF)、ならびに酵素結合免疫スポット(ELISPOT;全血)を介してAAV9及びコンストラクトI導入遺伝子産物に対するT細胞反応性として評価される。
【0267】
一部の実施形態では、疾患の進行は、小児患者へのCLN2 CRS-MXの投与によって評価され得る。一部の実施形態では、疾患の進行は、成人患者へのCLN2 CRS-MXの投与によって評価され得る。一部の実施形態では、CLN2バッテン病に関連する眼症状の処置を必要とする対象においてそれを行う方法を本明細書に提供し、当該方法は、当該対象の眼に、キャプシド及びベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含み、rAAVは、AAV9であり、ベクターゲノムは、
AAV5’逆方向末端反復(ITR)と、
プロモーターと、
ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするCLN2コード配列と、
AAV3’ITRと、を含み、
この方法は、ベクターの投与中及び/または投与後の当該患者のCLN2 CRS-MX評定における変化、またはその欠如をモニターすることを更に含む。一部の実施形態では、対象は、+1ポイント、+2ポイント、+3ポイント、+4ポイント、+5ポイント、または+6ポイントのCLN2 CRS-MX評定におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、この方法は、対象におけるCLN2バッテン病に関連する眼症状の進行を遅延させるか、または停止させ、1か月以上、2か月以上、3か月以上、6か月以上、1年以上、または2年以上の期間にわたる対象のCLN2 CRS-MX評定における遅延した減少及び/またはその維持によって決定される。
【0268】
一部の実施形態では、疾患の進行は、小児患者へのCLN2 CRS-LXの投与によって評価され得る。一部の実施形態では、CLN2バッテン病に関連する眼症状の処置を必要とする対象においてそれを行う方法を本明細書に提供し、当該方法は、当該対象の眼に、キャプシド及びベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を投与することを含み、rAAVは、AAV9であり、ベクターゲノムは、
AAV5’逆方向末端反復(ITR)と、
プロモーターと、
ヒトトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)タンパク質をコードするCLN2コード配列と、
AAV3’ITRと、を含み、
この方法は、ベクターの投与中及び/または投与後の当該患者のCLN2 CRS-LX評定における変化、またはその欠如をモニターすることを更に含む。一部の実施形態では、対象は、+1ポイント、+2ポイント、+3ポイント、+4ポイント、+5ポイント、または+6ポイントのそれらのCLN2 CRS-LX評定におけるベースラインからの変化を有する。一部の実施形態では、この方法は、対象におけるCLN2バッテン病に関連する眼症状の進行を遅延させるか、または停止させ、1か月以上、2か月以上、3か月以上、6か月以上、1年以上、または2年以上の期間にわたる対象のCLN2 CRS-LX評定における遅延した減少及び/またはその維持によって決定される。
【0269】
4.4 本明細書に記載の処置方法に使用される処置システム、デバイス、または装置
本明細書に記載の処置方法に使用される処置システム、デバイス、及び装置も本明細書に提供し、これらは、以下:ボトル、チューブ、光源、マイクロインジェクター、及びフットペダルのうちの1つまたは複数を含み得る。ある特定の実施形態では、光源は、自己照明コンタクトレンズであり、これを使用して、後眼部にベクターを堆積させ、特に、視神経乳頭、中心窩及び/または黄斑の損傷を回避することができる(例えば、Chalam et al.,2004,Ophthalmic surgery and lasers.35.76-77(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、自己照明コンタクトレンズを、網膜下注射を可視化するために周囲注射中に利用する(例えば、Chalam et al.,2004,Ophthalmic surgery and lasers.35.76-77(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、光ファイバーシャンデリアは、網膜下注射を可視化するための第2の套管針を介して利用される。
【0270】
4.5 併用療法
本明細書に提供する方法は、1つまたは複数の追加の治療法と組み合わせてよい。
【0271】
追加の治療法は、遺伝子療法処置の前、同時、または後に施してよい。一部の実施形態では、追加の治療法は、組換えTPP1(例えば、Brineura(登録商標)セルリポナーゼアルファ)を用いた酵素置換療法(ERT)である。
5.配列
【表2】
【実施例】
【0272】
6.実施例
このセクション(すなわち、セクション6)の実施例は、限定ではなく、例示として提供される。
【0273】
6.1 実施例1:ヒト対象を処置し、コンストラクトIによる処置の有効性を評価するためのプロトコル
本実施例は、コンストラクトI処置の有効性の評価を可能にするための、ヒト対象の処置のための例示的なプロトコルを提供する。コンストラクトIは、約もしくは少なくとも約2×1010GC/眼または約もしくは少なくとも約6×1010GC/眼の用量で投与されてもよい。コンストラクトIは、約1×1011GC/mL~約3.0×1011GC/mLの濃度で、200μLの容量で網膜下に投与されてもよい。
【0274】
6.1.1 患者集団
この実施例に記載の方法に従って処置される患者は、二対立遺伝子CLN2変異を有し、白血球TPP1活性が低下している。患者はまた、CLN2疾患と一致する臨床的徴候または症状(例えば、発達遅延、発達低下、発作、視力喪失、もしくは他の徴候症状)を示すか、または確認されたCLN2診断を有する兄姉を有する。
【0275】
患者は、脳室内Brineura酵素補充療法を受けている。患者は更に、両眼においてベースラインで≦210μmのCRT、及びベースラインで≧140μmのCRTを有し、最大84か月齢である。あるいは、患者は症状が出る前であり、両眼においてベースラインで>210μmのCRTを有する場合があり、12~48か月齢である。CLN2疾患が兄弟姉妹のCLN2疾患の家族歴に起因して無症候性患者において診断された場合、罹患した兄弟姉妹の視力喪失の発症は、84か月以下でなければならない。患者はまた、両眼においてベースラインで<140μmのCRT、及びワイル・コーネル眼科重症度スコア<5(年齢制限なし)を有する場合がある。
【0276】
患者は、OKNベースのVA検査で測定可能な視力(VA)を有する。
【0277】
患者は、プレドニゾロン(1mg/kg/日で7日間(すなわち、-3日目~4日目)、最大用量40mg/日)を、コンストラクトI処置と同時に受けることができる。7日後(術前3日、手術日、術後3日)、患者は、0.5mg/kg/日の減少用量を受け、最大用量20mg/日を更に10日間(すなわち、5日目~14日目)受けることができる。
【0278】
患者は、CLN2バッテン病の処置のために2週間ごとに脳室内Brineura酵素補充療法を受けている可能性がある。
【0279】
6.1.2 有効性エンドポイント
有効性の一次エンドポイントは、360日目にSD-OCTによって測定したCRTにおけるベースラインからの変化である。他の有効性エンドポイントは、以下を含む:
・血清及び尿中でPCRによって検出されたAAV9、
・360日目(またはそれ以上)にOKNによって測定される、VAにおけるベースラインからの変化、
・360日目(またはそれ以上)にSD-OCTによって測定される、中心1mmのONL厚におけるベースラインからの変化、
・360日目にSD-OCTによって測定される、測定値におけるベースラインからの変化及び経時的な網膜層の出現、
・360日目に経時的な瞳孔計測によって測定される、瞳孔光反射におけるベースラインからの変化、
・360日目にSD-OCTによって測定される、黄斑の厚さ/体積におけるベースラインからの変化、
・210μm CRTに到達すると定義される網膜変性症の加速減少期までの時間、CRT≦210μmから30μmの損失までの時間、
・360日目にSD-OCTによって測定される、CRTにおけるベースラインからの変化、
・SD-OCT解剖学的マーカー、例えば、傍中心窩エリプソイドゾーン、ELM、RNFL、
・修正したWCBSによって測定される、経時的な眼底写真の眼底外観におけるベースラインからの変化、
・360日目のFAFにおけるベースラインからの変化、CRT≦110μmとして定義される末期疾患までの時間、
・PedEyeQを使用して評価される、介護者報告の視覚転帰におけるベースラインからの経時的な変化、
・VAB III及びMSEL-Visual Receptionを使用して評価される、認知能力に基づく適応行動におけるベースラインからの経時的な変化、
・処置した眼及び対照眼を使用したハンブルクスケール運動機能スコアにおけるベースラインからの変化、
・処置した眼及び対照眼を使用した修正ハンブルクスケール運動機能スコアにおけるベースラインからの変化。
【0280】
6.1.3 薬力学的エンドポイント
房水、血清及びCSFにおけるTPP1のレベルもまた評価される。AAV9濃度は、CSFで測定される。AAV9に対する抗体は、血清及びCSF中で測定されてもよく、コンストラクトI(TPP1)の導入遺伝子産物に対する抗体は、血清、CSF及び房水中で測定されてもよい。AAV9及びコンストラクトI TPに対するT細胞反応性を、全血を用いたELISPOTを使用してPBMCで試験する。
【0281】
6.1.4 有効性評価
コンストラクトIによる処置の有効性は、様々なアッセイを使用して評価することができる。例えば、網膜イメージングは、ハイデルベルク・スペクトラリスモジュールイメージングシステムを使用するスペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)(両眼黄斑及び視神経乳頭)を使用して実施することができる。
【0282】
処置した眼及び対照眼の軸方向長は、A-スキャン超音波検査を使用して行うことができる。視運動性眼振検査(OKN検査)による視力を実施してもよい。
【0283】
研究眼の眼底自発蛍光は、Flex Moduleを有するハイデルベルク・スペクトラリスOCT器具を使用して行うことができる。
【0284】
研究眼のマルチカラー眼底イメージングは、Flex Moduleを有するハイデルベルク・スペクトラリスOCT器具を使用して行ってもよい。
【0285】
瞳孔測定を伴う瞳孔光反射を実施することができる。
【0286】
PedEyeQを使用して、17歳までの小児の眼関連の生活の質及び機能的視力に対する小児期の眼疾患の効果を評価することができる(Hatt et al,2019,Am J Ophthalmol.200:201-17)。PedEyeQには、小児、代理人、親用の複数のバージョンがあり、0~4歳、5~11歳の年齢層に合わせて調整することができる。各年齢別代理人質問票は、5歳以上の患者のみを対象とした3つの一般的なドメイン(機能的視力、眼/視力が苦になる、社会的)及び2つのドメイン(フラストレーション/心配、及び眼のケア)からなる。各ドメインは、5~10項目からなる。介護者は、「決してない」、「時々」、または「常に」の各項目に対する回答を選択することができ、それぞれ2、1、または0のスコアに対応する。各ドメインは、独立して、ドメインの全ての完了した項目の平均Rasch較正値によってスコアリングすることができる。ドメインスコアは、0~100のスケールに変換することができ、0が考えられる最悪とみなされ、100が生活の質または機能的視力の考えられる最良の尺度とみなされる。
【0287】
Vineland適応行動スケール(VABS)-III(Sparrow et al,2016,Vineland Adaptive Behavior Scales.3rd ed.Bloomington,MN:Pearson)は、幼児期から90歳までの個体における神経認知に基づく適応行動を評価するために使用され得る。コミュニケーション、日常生活スキル、社会化、及び運動スキルの4つのドメインは、7歳未満の小児に適しているため、評価することができる。各ドメインの項目は、個体が各適応スキル/行動を示す頻度に基づいて、2から0までのスコアを付けられ、2はほとんど常に、0は決してないに対応する。個々の項目を集計し、次いで、平均が100、標準偏差が15の標準的な年齢適合ベル曲線と比較される集成値として計算する。小児のスコアがどのパーセンタイルに達するかに応じて、彼らの全体的な適応行動能力は、低い、中程度に低い、適度、中程度に高い、または高いとして記録することができる。
【0288】
Mullenの早期学習スケール(MSEL)は、認知発達の尺度として一般的に使用される標準化された評価である(Mullen,1995,Scales of Early Learning(AGS ed.).Circle Pines,MN:American Guidance Service Inc.)。MSELは、(a)粗大運動、(b)微細運動、(c)視覚的受容(または非言語的問題解決)、(d)受容的言語、及び(e)表現的言語スキルを測定する5つのサブスケールで構成されている。各サブスケールを標準化して、標準スコア、パーセンタイル、及び年齢当量スコアを計算することができる。
【0289】
MSELは、視覚処理及び問題解決に対する処置の潜在的な効果を測定するための臨床転帰評価として本研究で使用するために適合されている(すなわち、MSEL-視覚的受容)。標準的な視覚的受容サブスケールに加えて、視覚的受容ドメインの修正版(最初の7つの項目)を評価してもよく、すなわち、認知及び微細運動の器用さへの依存を最小限に抑えながら、固視及び追跡に重点を置いてもよい。例としては、三角形を固視して追跡すること、動いているブルズアイを180度追跡すること、及び落下したスプーンを探すことが挙げられる。
【0290】
CLN2臨床評定スケール(CRS)は、個体の運動機能、言語、発作、及び視力の経時的な変化を評価するために、CLN2疾患に対して特異的に開発された。元の12ポイントハンブルクスケール(Steinfeld et al,2002,Am J Med Genet.112(4):347-54)は、遡及的にも前向きにも患者を評価するために開発された。これは、最大の縦断的自然歴データ収集に使用されている(Nickel et al,2018,Lancet Child Adolesc Health.2(8):582-590.doi:10.1016/S2352-4642(18)30179-2.Epub 2018 Jul 2)。2018年には、スケールの運動ドメイン及び言語ドメインに対する更新が公開され(Wyrwich et al,2018,J Inborn Errors Metab Screen.6:1-7)、これにより運動及び言語スコアのスケール文言は、臨床治験における前向きデータ収集に使用されるために、より詳細な定義を与える。運動ドメイン及び言語ドメインは、合わせて0~6ポイントのスコアを形成する。各ドメインの最高スコアは、通常または最大能力に対応する3ポイントであるが、0のスコアは、そのドメインに能力が残っていないことを示す。これらのスケールは、Brineuraの臨床的有効性を評価するために使用される6点運動-言語スケールなどの臨床研究で以前に使用されている(Schulz et al,2018,N Engl J Med.378(20):1898-1907)。運動機能スケールは、元のハンブルクスケール及び2018年の修正版の両方を使用して評価することができる。患者は、OD(右目)スコア及びOS(左目)スコアが記録されるように、各眼を閉塞して1回、各検査を2回行うことができる。合計で、2つのスケールについて4つのスコアを記録することができる。
【0291】
6.1.5 安全性評価
コンストラクトIの投与の安全性は、例えば、眼科検査、身体検査バイタルサイン評価、または臨床安全性実験室評価(例えば、血清化学、血液学的測定及び尿分析を含む)により評価され得る。
【0292】
6.1.6 ベクター排出
ベクター導入遺伝子は、排出(標的細胞に感染せず、糞便または体液を介して身体から除去されたベクターの放出)、動員(導入遺伝子複製及び標的細胞からの移行)、または生殖系伝達(精液を介した子孫への遺伝子伝達)から意図しないレシピエントに拡散する可能性を有する。ベクター排出は、例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、涙液、血清または尿などの生体液中のベクターDNAを測定することによって決定され得る。
【0293】
AAV9ベクター濃度の測定のために、血液(血清)、尿、及び涙液の試料採取を、コンストラクトI患者に対して行ってもよい。
【0294】
これらの生体液で収集された排出データは、標的患者集団におけるコンストラクトIの排出プロファイルを提供することができ、未処置個体への伝播の可能性を推定するために使用され得る。排出は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して測定することができる。
【0295】
6.2 実施例2:カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下注射は、眼における超生理学的レベルのTPP1をもたらす
後期幼児神経セロイドリポフスチン症(CLN2)疾患では、CLN2遺伝子の変異は、TPP1酵素活性の欠如につながり、中枢神経系及び網膜内の深刻な神経変性をもたらす。CLN2疾患の眼症状を処置するために現在承認されている治療法はなく、視力喪失は重要な未充足のニーズを呈している。この研究の目的は、網膜下注射によりコンストラクトIを投与し、CLN2疾患の眼症状を予防するのに十分なレベルのTPP1酵素を産生することであった。CLN2疾患のマウスモデルは、網膜病理学を明らかに示さないため、コンストラクトIの薬力学、生体内分布、免疫原性及び毒性をカニクイザルにおいて評価した。カニクイザルの群(4~5/群)に、コンストラクトIを≧1×1010GC/眼の用量で網膜下注射(100μL)によって投与し、血清、房水及び硝子体液中の導入遺伝子発現(TPP1濃度)及び生体内分布を最大13週間評価した。TPP1濃度の増加は、房水及び硝子体液中で見られたが、血清中では見られなかった。導入遺伝子発現は3か月間持続したが、一部の眼では血清抗TPP1抗体の発生により、TPP1濃度が部分的に減少した。眼では、網膜及び脈絡膜/RPEにおいて、ブレブ(側頭)及び非ブレブ(上、下及び鼻の象限)の両方の領域で高レベルのベクターDNAが観察された。ベクターDNAはまた、視神経、視交叉及び後頭葉にも低レベルで存在したが、他の脳領域には存在せず、順行性向性を示唆した。免疫染色は、TPP1タンパク質が網膜の広範囲の領域に存在し、主に光受容体内に存在するが、他の細胞層にも少ない程度で存在することを示した。1×1010GC/眼では、TPP1濃度は、未処置の動物よりも150倍(房水)及び200倍(硝子体液)高かった。これは、コンストラクトIの網膜下注射が、CLN2患者に見られる網膜変性を減衰させるのに十分なレベルのTPP1を提供し得ることを実証する。
【0296】
6.3 実施例3:カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下注射は、眼における超生理学的レベルのTPP1をもたらす
本研究の目的は、ヒトCLN2(hCLN2)発現カセットを含有する血清型9(AAV9)の組換えアデノ随伴ウイルスであるコンストラクトIの網膜下注射後のカニクイザルの網膜におけるヒトTPP1のレベルを評価することであった。
【0297】
6.3.1 方法
若いカニクイザルの群(n=5/群、約2~3歳齢)に、コンストラクトIの単回網膜下注射(100μL)を、0(ビヒクル)または>1×1010GC/眼の用量で両眼に投与した。動物を、投与後4週間(2/群)または13週間(3/群)のいずれかで安楽死させた。本研究では、房水、硝子体液(末端試料)及び血清中のTPP1濃度、血清中の免疫原性(抗AAV9中和抗体[NAb]及び抗TPP1抗体)、生体内分布(ベクターDNA)ならびにTPP1免疫染色の評価が含まれた。
【0298】
TPP1濃度は、メソスケールディスカバリー(MSD)プラットフォームを使用して実装される電気化学発光(ECL)イムノアッセイによって決定した。
【0299】
6.3.2 結果
一部のコンストラクトIで処置した動物は、投与前にNAbが陽性であり、コンストラクトIの投与後に薬力学または生体内分布に顕著な効果をもたらさなかった。
【0300】
健常なカニクイザルの眼へのコンストラクトIの網膜下注射は、研究の経過にわたって房水における、ならびに3か月後の硝子体液(末端試料のみ)におけるTPP1濃度の増加をもたらした(
図4A及び4B)。これは、血清には反映されず、研究を通して対照動物と同等のままであった(
図5)。コンストラクトIで処置した動物からの末端試料は、抗TPP1抗体の発生率の増加を示し、これは一部の動物では、水性TPP1濃度の減少をもたらした可能性がある。
【0301】
高レベルのベクターDNAが、網膜及び脈絡膜/RPEにおいて、ブレブの領域(側頭)ならびに上、下及び鼻の象限で検出された(
図6A及び6B)。
【0302】
ベクターDNAは、≧1×10
11GC/眼で、視神経、視交叉及び後頭葉において低レベルで検出され、視覚経路に沿った限定された順行性向性を示唆した(
図7A及び7B)。
【0303】
TPP1免疫反応性は、網膜の広範囲の領域内で観察された。>1×10
10GC/眼では、網膜色素上皮、光受容体外側セグメントの一部、及び水平細胞またはアマクリン細胞の時折の標識のみに強力なTPP1免疫反応性が存在した(1×10
11GC/眼でより明らかであった)。1×10
12GC/眼では好対照で、網膜の深さ全体にわたって強力なTPP1免疫反応性が観察された(
図8)。1×10
12GC/眼では、TPP1免疫染色は、網膜神経節細胞及び他の2つの用量のいずれよりもはるかに高い割合の光受容体細胞を含む、存在する全てのタイプのニューロンを標識するように見えた。用量にかかわらず、網膜内のTPP1免疫反応性は、網膜下ベクター堆積物が配置された場所に隣接していても、ミュラーグリア細胞の明らかな染色を伴わないニューロンに限定されているように見えた。
【0304】
TPP1染色網膜の%面積は、ビヒクルで処置した動物に存在するものよりも、コンストラクトIで処置した動物において大きかった(
図9)。
【0305】
6.3.3 結論:
1×1010GC/眼の用量は、未処置のカニクイザルにおけるTPP1の濃度よりもおよそ170倍(房水)及び200倍(硝子体液)高いTPP1濃度をもたらした。
【0306】
免疫染色は、網膜色素上皮内及びある割合の光受容体の外側セグメントにおいて強力なTPP1免疫反応性を示し、1×1010GC/眼では、水平細胞またはアマクリン細胞であると推定される時折の標識のみを伴う。
【0307】
カニクイザルにおいて生成されたデータは、コンストラクトIの網膜下注射が、CLN2患者に見られる網膜変性を減衰させるのに十分なレベルのTPP1を提供し得ることを実証する。
【0308】
6.4 実施例4:カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下注射は、好ましい安全性レベルにつながる
本研究の目的は、カニクイザルにおける3か月の毒性研究によって、ヒトCLN2(hCLN2)発現カセットを含有する血清型9(AAV9)の組換えアデノ随伴ウイルスであるコンストラクトIの安全性を評価することであった。毒性研究の標準エンドポイントに加えて、この研究には眼の生理学的変化の評価が含まれていた。幼若毒性、生殖毒性、及び遺伝毒性もまた、CLN2疾患の小児における高い未充足の臨床ニーズを考慮して議論された。
【0309】
6.4.1 方法
カニクイザルの群に、1×1010~1×1013GC/眼の範囲の用量での網膜下注射によってコンストラクトIを投与した。血清中のトリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)濃度、房水及び硝子体液、ならびに生体内分布を評価して、導入遺伝子発現を確認した。研究中の眼は、直接及び間接眼底検査、OCT、網膜電図、眼底写真、及び組織病理学によって検査した。効果を、最大3か月にわたって評価した。2~3歳の若いカニクイザルを研究に含めた。
【0310】
6.4.2 結果
カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下注射は、TPP1の生体内分布の上昇及び持続レベルを示し、この研究では、正常な導入遺伝子発現を示した。
【0311】
結果は、1×1010GC/眼の用量が、この研究の無観察有害作用レベル(NOAEL)であることを示唆した。有害作用または所見には、眼の炎症、OCT及び眼底写真所見、ならびに視覚機能の低下が含まれた。
【0312】
雄及び/または雌カニクイザルへの1×1010、1×1011、1×1012、または1×1013GC/眼のコンストラクトIの網膜下投与は、用量≧1×1011GC/眼での有害所見に関連していた。1×1011または1×1012GC/眼の用量では、水性細胞、硝子体混濁、または硝子体細胞において観察された眼の炎症は、最高用量で観察されたものよりも重症度が低かった。また、より低い用量(例えば、1×1011または1×1012GC/眼)で観察された眼の炎症は、全身及び/または局所抗炎症療法に良好に応答した。
【0313】
1×1010GC/眼で観察された時折の硝子体細胞の炎症は、有害作用とはみなされなかった。1×1010GC/眼では、22日目までに時折の硝子体細胞の炎症の重症度が低下したが、一部の眼では3か月間持続した。1匹の動物は、重度の水性細胞、中程度に重度のフレア、及び中程度に重度の硝子体混濁を伴うより重度の炎症を示した。しかしながら、これは15日目にのみ片眼で観察され、局所抗炎症療法が適用された。1×1010GC/眼用量では、眼底カラー写真、ERG、または視覚誘発電位に対するベクター関連の影響は観察されなかったため、顕微鏡評価に関する研究の最後に、片眼において最小限の単核細胞浸潤が観察されたにもかかわらず、硝子体細胞の炎症が視覚機能への影響と相関しなかったことが実証された。これは、1×1010GC/眼での時折の硝子体細胞の炎症が、視覚機能に影響を及ぼさず、軽度のレベル内で制御され得ることを示唆した。
【0314】
カニクイザルでは、3か月の毒性研究を通じて、神経行動、呼吸器、または顕微鏡的(心血管)変化は観察されなかった。
【0315】
1×1010GC/眼用量での生殖器系への影響を示唆する所見はなかった。ベクターDNAは、1×1010GC/眼の用量までの全ての動物の精巣または卵巣において検出されなかった。対照的に、ベクターDNAは、同じ用量下で、29日目及び92日目の眼組織において主に検出された。この区別は、1×1010GC/眼が、その中の検出不能なベクターDNAレベルのために生殖系にとって安全であり得ることを支持する。
【0316】
用量≧1×1011GC/眼での非常に低いコピー数でのベクターDNAの存在は、生殖系への影響を示唆しなかった。1×1011GCを網膜下に投与した1匹の雄及び1.0×1012GC/眼を網膜下に投与した1匹の雄において、ベクターDNAは、92日目に、それぞれ340及び109コピー/μgのDNAである非常に低いレベルで精巣において検出された。1×1012GC/眼で脈絡膜上腔(SCS)に投与された1匹の雌では、29日目に卵巣において344コピー/μgのDNAが検出された。精巣及び卵巣における顕微鏡的な変化は観察されなかった。生殖系におけるかかる変化の欠如は、非常に低いDNAコピーが、研究における最高用量までの用量が≧1×1011GC/眼であっても、有害作用とみなされ得ないことを示唆する。
【0317】
コンストラクトIは、遺伝毒性のリスクが低い場合がある。入手可能な科学文献及び臨床データは、AAVベクターの統合が観察されていないことを報告している(Wang et al.,Adeno-associated virus vector as a platform for gene therapy delivery,Nature Reviews Drug Discovery,2019,18:358-378)。野生型AAVの統合機構がなければ、コンストラクトIは、形質導入細胞内で複製することができない。最近承認されたAAV9、onasemnogene abeparvovec-xioi(ZOLGENSMA USPI,2019)は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が挿入変異原性のリスクが低いことを支持している。
【0318】
コンストラクトIを用いた免疫毒性研究は、免疫応答によって評価され得る。この研究では、体液性応答は、AAV9キャプシドに対する抗体、及び導入遺伝子産物、すなわち、カニクイザルにおける抗TPP1抗体に対して指向された抗体の検出によってモニターされた。
【0319】
コンストラクトIの幼若毒性は、2~3歳のカニクイザルにおいて評価することができる。欧州医薬品庁のガイドラインによると、この年齢範囲はおそらく思春期前のサルを対象としているため、評価には妊娠年齢が含まれている(EMEA/CHMP/SWP/169215/2005)。
【0320】
6.4.3 結論
1×1010GC/眼の用量レベルは、この実施例では、カニクイザルへのコンストラクトIの網膜下投与のためのNOAELであった。臨床研究では、2×1010GC/眼の開始用量レベルをNOAELとして実施してもよい。1×1011または1×1012GC/眼の用量で観察された眼の炎症は、全身性及び/または局所抗炎症療法に良好に応答した。
【0321】
カニクイザルにおける3か月の毒性研究から生成されたデータは、コンストラクトIの網膜下投与が好ましい安全性プロファイルを提供し得ることを実証する。コンストラクトIのSRまたはSCS投与後、神経行動、呼吸器、または顕微鏡的変化は記載されなかった。特定の幼若毒性、生殖毒性、または遺伝毒性は観察されなかった。
【0322】
6.5 実施例5:CLN2疾患の網膜チップモデルにおけるコンストラクトIの評価
本研究の目的は、網膜チップ(RoC)モデルにおいてヒト誘導多能性幹細胞株(hiPSC)網膜オルガノイド(RO)とhiPSC RPEとを組み合わせることによって、CLN2疾患におけるヒト網膜の生理学的に関連する三次元インビトロモデルを開発することであった。この新規の生体模倣プラットフォームにより、増強された内側及び外側のセグメントの形成及び保存、RPEと光受容体との間の直接的な相互作用、ならびに正確に制御可能な血管系のような灌流が可能になる。動物モデルでは不可能であるか、またはCLN2の小児では理解されない疾患表現型を特性評価することと同様に、このモデルは、コンストラクトIの作用機序及び潜在的な有益性に対する支持を提供する。
【0323】
6.5.1 方法
CLN2疾患からの死亡前の小児から収集された皮膚線維芽細胞を、ヒト誘導多能性幹細胞株に再プログラムし、Achberger et al.eLife 2019,8,e46188(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、RPE及び網膜オルガノイド(RO)に分化した。
【0324】
6.5.2 結果
対照RPEとは異なり、CLN2 RPEは、TPP1を発現しない。TPP1発現の回復を、コンストラクトIによる形質導入の21日後のCLN2 RPEに示した(
図10)。
【0325】
RPEの単離後、ROを更に成熟させた。光受容体マーカーであるリカバリンは、分化の200日目に陽性であり、80日目に非存在であった。対照株では、TPP1発現は、200日目のROにおいて、主に光受容体の領域においてのみ検出され、TPP1発現の空間的及び時間的特異性を示唆した。興味深いことに、CLN2で同定された蓄積された基質のうちの1つであるATPシンターゼサブユニットC(SCMAS)は、対照ROでTPP1発現が検出される光受容体の領域において、200日目にのみCLN2 RO中に存在した(
図11)。
【0326】
SCMAS蓄積の検出前の88日目のコンストラクトIによるCLN2 ROの処置は、未処置のCLN2 ROとは対照的に、予防SCMAS蓄積とともにTPP1発現を示し、早期介入がROにおける貯蔵物質の蓄積を遅らせるかまたは防止することができることを示唆した(
図12)。
【0327】
6.5.3 結論
コンストラクトIを用いてヒトCLN2 RPEにおいて生成されたデータは、ヒトCLN2 RPE及びROがTPP1を欠くことを示し、コンストラクトIを用いた処置は、処置後にTPP1の発現を回復することができる。更に、CLN2 ROを未処置のまま放置すると、CLN2疾患の特徴であるSCMASの蓄積があり、これは、コンストラクトIによる前処置によって防止された。このデータは、コンストラクトIによるRO(光受容体を含む)の形質導入が、CLN2変性に関連するリソソーム貯蔵物質の蓄積を防止することを示す。
【0328】
6.6 実施例6:CLN2疾患の網膜チップモデルにおけるコンストラクトIの評価のためのプロトコル
本研究の目的は、ヒトCLN2(hCLN2)発現カセットを含有する血清型9(AAV9)の組換えアデノ随伴ウイルスであるコンストラクトIの、網膜チップモデルを使用してヒト対象におけるCLN2の眼症状を処置する際の有効性を評価することである。
【0329】
6.6.1 患者及び対照iPSCの網膜オルガノイド(RO)への分化
4つのヒト誘導多能性幹細胞株(iPSC、2人のCLN2患者)及び2つの対照株を解凍し、Zhong et al.Nat.Commun.2013,5,4047及びAchberger et al.eLife 2019,8,e46188(各々、参照により本明細書に組み込まれる)に記載の網膜分化プロトコルに従って網膜オルガノイド(RO)に分化させる。ROは、最小3~6か月間培養される。分化したROから、色素沈着したRPE細胞塊を手作業で切離することによって採取する。これらのRPE細胞を分離し、接着培養する。全ての利用可能な株からのRPE細胞を、使用時まで培養または凍結する。
【0330】
6.6.2 コンストラクトIによる網膜オルガノイドの処置
セクション6.6.1で産生された利用可能な株の80日目のROは、内部品質基準(例えば、セグメントの形成、上皮線状痕、大きな壊死領域の非存在)に従って選択される。
【0331】
選択したオルガノイドを、例えば、96ウェルフォーマットに入れ、コンストラクトIに供する。このために、3つの異なる濃度を利用可能な患者株に適用する。更に、1つの濃度の空のAAVを1つの患者株に適用して、TPP1遺伝子発現効果の特異性を評価する。細胞に対する治療法の効果は、コンストラクトIの最初の添加の5週間後にモニターする。エンドポイント法は、qPCRを介したRNA分析(条件当たり4つの生物学的複製)及び免疫細胞化学を介したタンパク質分析(条件当たり10試料)を含む。ROは、異なる網膜細胞型マーカー、リソソームマーカー(例えば、LAMP1またはLAMP2)、TPP1発現及びミトコンドリアATPシンターゼサブユニットC(SCMAS)について染色される。
【0332】
前述の手順を、120日目にROで繰り返す。
【0333】
6.6.3 コンストラクトIによる網膜チップの処置
網膜チップ(RoC)実験では、全ての利用可能な株からの80日目及び120日目のROは、セクション6.6.2に適用されるのと同じ基準で選択される。セクション6.6.1において産生された利用可能な株のRPEは、内部品質基準(継代、培養時間、色素沈着、六角形の細胞形状及び一般的な外観)に従って選択される。3つの異なる濃度のコンストラクトIならびにビヒクル対照が、利用可能な患者株に適用される。RoCに対する治療法の効果は、コンストラクトIの最初の添加の5週間後にモニターする。エンドポイント法は、qPCRを介したRNA分析、及び凍結切片作製を介したタンパク質分析、続いて免疫細胞化学(条件当たり8試料)を含む。異なる網膜細胞型マーカー、リソソームマーカー(例えば、LAMP1またはLAMP2)、TPP1発現及びSCMASについて、RoCを染色する。
【0334】
6.7 実施例7:コンストラクトIを用いたヒトRPEオルガノイドの処置及びSCMAS蓄積の調査のためのプロトコル
本研究の目的は、ヒトRPEオルガノイドをコンストラクトIで処置し、RPEオルガノイド及び網膜オルガノイドにおけるフローサイトメトリー、単細胞RNA配列決定、及び高分解能共焦点顕微鏡検査によってSCMAS蓄積を調査することである。
【0335】
6.7.1 患者及び対照のiPSCの網膜オルガノイド(RO)への分化
4つのヒトiPSC株、2つの患者株及び2つの対照株を解凍し、セクション6.6.1のように網膜オルガノイド(RO)に分化させる。分化したROから、色素沈着したRPE細胞塊を手作業で切離することによって採取する。これらのRPE細胞を懸濁液中で培養して、RPEオルガノイドを形成する。
【0336】
6.7.2 TPP1遺伝子療法による網膜色素上皮細胞オルガノイド(RPEorg)の処置
我々のデータによれば、限られた期間に単層上で培養された接着性RPE細胞は、ATP-C堆積物などの疾患表現型を再現するための正確なモデルを表すものではない。一方、RPEorgは、それらの3D構造及び長期培養により、TPP1変異効果及びATP-C蓄積を研究するための固体モデルであることが示され、RPE細胞におけるTPP1遺伝子療法の効果を評価するための興味深いプラットフォームとなった。この目的のために、セクション6.7.1で産生された利用可能な株の>150日目(表現型の発症)でのRPEorgは、内部品質基準(例えば、均一な色素沈着、非RPE領域の非存在)に従って選択される。選択したRPEorgを、例えば、96ウェルフォーマットに入れ、コンストラクトIでの処置に供する。細胞に対する治療法の効果は、コンストラクトIの最初の添加の5週間後にモニターする。エンドポイント法は、qPCRを介したRNA分析(条件当たり4つの生物学的複製)及び免疫細胞化学を介したタンパク質分析(条件当たり10試料)を含む。TPP1発現、SCMAS及びリソソームマーカー(例えば、LAMP1またはLAMP2)についてROを染色する。
【0337】
6.7.3 RPEorgに対するTPP1変異及びTPP1遺伝子療法効果の分析
>150日目における2つの対照株、2つの患者株及びある濃度のTPP1遺伝子療法(例えば、コンストラクトI)で処置した2つの患者株からのRPEorgを、AAV処置の5週間後に選択し、解離し、単一細胞RNA配列決定(sc-RNAseq)を受ける。sc-RNAseq評価は、SCMAS蓄積を含むがこれらに限定されない、遺伝子発現に対するTPP1変異の効果を決定する。最後に、分析は、RPE細胞シグナル伝達、生存及びアポトーシスに対するTPP1遺伝子療法(例えば、コンストラクトI)の結果を特定する。
【0338】
6.7.4 ROに対するTPP1変異及びTPP1遺伝子療法の効果に関する細胞型特異的分析
120日目における2つの対照株、2つの患者株及びある濃度のTPP1遺伝子療法(例えば、コンストラクトI)で処置した2つの患者株からのROを、AAV処置の5週間後に選択し、解離し、単一細胞RNA配列決定(sc-RNAseq)を受ける。この分析は、TPP1を発現する網膜細胞型(対照株)、及びTPP1遺伝子療法によってより効率的に感染される細胞型(患者株)を評価する。更に、sc-RNAseq評価は、SCMAS蓄積を含むがこれらに限定されない、遺伝子発現に対するTPP1変異の効果を決定する。最後に、分析は、細胞シグナル伝達、生存及びアポトーシスに対するTPP1遺伝子療法の結果を特定する。
【0339】
6.7.5 SCMAS蓄積の調査
SCMAS堆積物の影響を受ける網膜細胞型を同定し、TPP1発現/非存在とSCMASとの間の相関を強調するために、SCMAS、TPP1及び各網膜細胞型(ロッド、コーン、ミュラーグリア、水平細胞、アマクリン細胞、双極細胞)についての1つの特異的抗体で染色した後、フローサイトメトリー(FC)によってROを分析する。
【0340】
この目的のために、これらの抗体のFC検出のためのプロトコルが最初に確立される。その後、120日目における2つの対照株、2つの患者株及びある濃度のTPP1遺伝子療法(例えば、コンストラクトI)で処置した2つの患者株からの3~5つのROを、AAV処置の5週間後に選択し、解離し、ATP-C、TPP1、及び各網膜細胞型についての1つの特異的抗体で染色した後にフローサイトメトリー分析を受ける。
【0341】
最後に、SCMAS蓄積を示す網膜細胞の種類を、高分解能共焦点顕微鏡によって更に分析する。この目的のために、>155日における2つの対照株及び2つの患者株からの3~5つのROを、SCMAS沈着形態及び細胞局在化の評価のために、SCMAS及び個々のマーカーまたは網膜サブタイプについて染色する。
【0342】
6.8 実施例8:拡張されたCLN2臨床評定スケール運動(CLN2 CRS-MX)は、歩行機能の評価を改善する。
後期幼児神経セロイドリポフスチン症2(CLN2)疾患では、疾患の急速な進行は、元々ハンブルクCLN2スケールを使用して定量化された。その後、ハンブルクモータードメインをCLN2臨床評価スケール運動(CLN2 CRS-M)に適合させ、セリポナーゼアルファ心室内酵素置換療法(ERT)に対する治療応答と比較して、自然疾患経過における運動機能の喪失を定量化するために使用した。CLN2疾患の障害には、運動失調、緊張低下、過緊張、及び虚弱が含まれる。しかしながら、小児では、小児の疾患進行が遅いため、ERT上で進化する表現型は知覚されにくい。
【0343】
この研究の目的は、CLN2-CRS-MXと呼ばれるより広範かつより粒度の高い測定を提供して、CLN2疾患の障害が歩行能力に及ぼす影響を評価することであった。
【0344】
6.8.1 方法
項目の導出は、目的の主要なCLN2疾患概念の特定に基づいていた。
【0345】
主要な概念は、的を絞った文献レビュー、臨床医専門家インタビュー、2つのバーチャル介護者フォーカスグループ、及び6人のCLN2臨床医専門家との1年間の進行中の隔週会議から特定された。
【0346】
臨床医のインタビュー及び介護者フォーカスグループでは、特に運動機能に関連するCLN2の主な症状及び影響、ERT処置及びERT未処置の患者における疾患進行の差異、及びCLN2 CRSにおける運動機能評価の粒度を改善して臨床治験での治療効果を評価するためにより有用にする方法について議論した。
【0347】
反復開発プロセスには、パイロットアプリケーション及び多数の項目改訂が含まれた。追跡マトリックスを使用して、全てのスケール反復及び変更の根拠を文書化した。
【0348】
評定者間の信頼性、すなわち、臨床医間の合意のレベルは、4人の評定者間の合意のパーセントとして計算された。
【0349】
評価は一次臨床医によって投与され、スコアリングされ、観察者臨床医によっても独立してスコアリングされた。
【0350】
各評価はビデオ撮影され、2人の追加の臨床医によって独立してスコアリングされた。
【0351】
生後20か月~16歳(平均7.8歳)の30人の患者は、各々CLN2 CRS-MXスケールで4人の臨床医によってスコアリングされた。現在は、全員がERTを受けている。
【0352】
6.8.2 結果
この研究では、CLN2 CRS-MXスケールの詳細な管理、スコアリング、及びトレーニングマニュアルが開発された。
【0353】
この研究では、症状の進行を決定するための典型的な歩行タスクが開発された。一般に、臨床医及び介護者は、歩行に有害な影響を与える症状の著しい進行によってCLN2疾患を特性評価した。体幹緊張低下、四肢過緊張及び運動失調は、運動機能に影響を及ぼす症状が一般的に報告されていた。症状が悪化するにつれて、患者がもはや歩くことができなくなるまで、援助、例えば、バランスのために片手、両手または胴体を握ることの必要性の増加が報告された。本研究では、臨床医は、元のCLN2 CRS-Mの10歩歩行タスクを、歩行距離を延ばし、安全に停止する能力を考慮し、方向の変化を評価し、歩行に必要な支援のレベルを測定する歩行タスクに拡張することを支持した。
【0354】
表2は、評定基準の概要、及び元のCLN2 CRS-Mとの比較を提供する。
図2は、可動性評定を決定するためのCLN2 CRS-MXスコアリングフローチャートの概要を示す。
【表3】
【0355】
評定者間の合意では、CLN2 CRS-MXの臨床医間の合意レベルは1.0であり、完全/完璧な合意を示す(Landis,JR,Koch,GG.An application of hierarchical kappa-type statistics in the assessment of majority agreement among multiple observers,Biometrics,1977.Level of agreement range 0.81-0.99を参照されたい)。
【0356】
6.8.3 結論
CLN2 CRS-MXは、より高い粒度、改善された項目関連性を提供し、歩行能力に対するCLN2疾患の影響の測定における応答選択肢の数を増加させた。
【0357】
このスケールは、CLN2を有する小児向けに設計されたが、同様の疾患障害とともに存在する他の神経筋または神経変性障害に関連する可能性がある。
【0358】
6.9 実施例9:拡張されたCLN2臨床評定スケール言語(CLN2 CRS-LX)は、言語機能の評価を改善する
ERTでの治療応答と比較した自然なCLN2疾患経過における言語機能の喪失を、CLN2臨床評価スケール言語(CLN2 CRS-L)を使用して定量化した。しかしながら、ERT処置における小児に疾患の進行及び表現型の進化は遅く、知覚されにくい。本研究の目的は、CLN2 CRS-LXと呼ばれるより広範かつより粒度の高い測定を提供し、表現言語及び非言語コミュニケーション能力の変化を捕捉することであった。
【0359】
6.9.1 方法
項目の導出は、目的の主要なCLN2疾患概念の特定に基づいていた。
【0360】
主要なCLN2疾患概念は、的を絞った文献レビュー[資料において特定されない]、臨床医専門家インタビュー、2つのバーチャル介護者フォーカスグループ、及び6人のCLN2臨床医専門家との1年間の進行中の隔週会議から特定された。
【0361】
臨床医のインタビュー及び介護者フォーカスグループでは、特に言語機能に関連するCLN2の主な症状及び影響、ERT処置及びERT未処置の患者における疾患進行の差異、及びCLN2 CRSにおける言語機能評価の粒度を改善して臨床治験での治療効果を評価するためにより有用にする方法について議論した。
【0362】
反復開発プロセスには、パイロットアプリケーション及び多数の項目改訂が含まれた。追跡マトリックスを使用して、全てのスケール反復及び変更の根拠を文書化した。
【0363】
評定者間の信頼性、すなわち、臨床医間の合意のレベルは、4人の評定者間の合意のパーセントとして計算された。
【0364】
評価は一次臨床医によって投与され、スコアリングされ、観察者臨床医によっても独立してスコアリングされた。
【0365】
各評価はビデオ撮影され、2人の追加の臨床医によって独立してスコアリングされた。
【0366】
生後20か月~16歳(平均7.8歳)の30人の患者は、各々CLN2 CRS-MXで4人の臨床医によりスコアリングされた。現在は、全員がERTを受けている。
【0367】
6.9.2 結果
この研究では、CLN2 CRS-LXの詳細な管理、スコアリング、及びトレーニングマニュアルが開発された。このマニュアルには、表現言語及び非言語コミュニケーション能力を決定するためのプロンプトの使用に関する具体的なガイダンスが含まれる。
【0368】
CLN2 CRS-LXは、喃語、語彙及びフレーズの発達、ならびに理解できない発声及びジェスチャーを含む、要求及び必要性を伝える小児の表現言語能力を測定した。一般に、臨床医及び介護者は、CLN2を有する小児が、日常活動に影響を及ぼす進行性言語喪失を経験することを報告した。彼らは、2~3.5歳の年齢範囲で20~100単語のピーク単語数を報告し、CLN2を有する小児は、単一の単語及び2単語フレーズ、理解できない発声及びジェスチャーを含む、一連のコミュニケーション戦略を使用したことを報告した。本研究では、臨床医は、年齢により機能的期待を区別し、より多くの応答選択肢を含み、語彙及びフレーズの発達、発声及びジェスチャーを考慮した言語のための拡張されたCLN2 CRSの開発を支持した。
【0369】
評定基準の概要及び元のCLN2 CRS-Lとの比較を表3及び4に提供する。スコアリングフローチャートは、各CLN2 CRS-LX年齢カテゴリー(1~2歳未満、2~3歳未満及び3歳以上)について作成した。
図3は、例として2~3歳未満のフローチャートを示す。
【表4】
【表5】
【0370】
評定者間の合意では、CLN2 CRS-LXの臨床医間の合意レベルは0.933であり、完全/完璧な合意を示す(Landis,JR,Koch,GG.An application of hierarchical kappa-type statistics in the assessment of majority agreement among multiple observers,Biometrics,1977.Level of agreement range 0.81-0.99を参照されたい)。
【0371】
6.9.3 結論
CLN2 CRS-LXは、より高い粒度を提供し、項目の関連性を改善し、表現言語及び非言語的コミュニケーション能力に対するCLN2疾患の影響の測定における応答選択肢の数を増加させた。
【0372】
このスケールは、CLN2を有する小児向けに特異的に設計されたが、同様の疾患障害とともに存在する他の神経筋または神経変性障害に関連する可能性がある。
【0373】
等価物
本発明を、その特定の実施形態を参照しながら詳細に説明しているが、機能的に等価である変更が、本発明の範囲内であることは理解されるだろう。実際、本明細書に示す及び記載するものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明及び添付の図面から当業者に明らかとなるだろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。当業者は、単に慣習的な実験を使用して、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識する、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0374】
本明細書で言及されている刊行物、特許及び特許出願はいずれも、個々の刊行物、特許及び特許出願が参照によりその全体が本明細書に組み込まれることが具体的及び個々に記された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】