(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】シャフト炉における銑鉄の製造方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20231018BHJP
C21B 11/02 20060101ALI20231018BHJP
C21B 9/10 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C21B5/00 310
C21B11/02
C21B5/00 316
C21B5/00 322
C21B9/10 305
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521385
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2021075844
(87)【国際公開番号】W WO2022073751
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】102020212806.5
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Strasse 100,47166 Duisburg Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012BB00
4K012BD00
4K012CB00
(57)【要約】
本発明は、シャフト炉の上部領域に原料が供給され、前記原料が重力の影響を受けてシャフト炉内で沈下するシャフト炉における銑鉄の製造方法に関するものである。いくつかの原料は、シャフト炉内の雰囲気の影響を受けて溶融及び/又は少なくとも部分的に還元され、高温ガス流がシャフト炉の下部領域に導入され、前記ガス流は、シャフト炉内の雰囲気を通って流れ、雰囲気の化学組成及び温度に影響を与え、低温ガス流は、少なくとも1つの熱交換器に供給され、その中で低温ガス流は700℃より高い温度に加熱され、高温ガス流が形成される。本発明によれば、低温ガス流は、少なくとも1つの熱交換器に導入される前に少なくとも5体積%のCO
2成分を含み、不純物に加えて、低温ガス流は残りの空気及び/又は純酸素を含むことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力の影響を受けてシャフト炉内で沈降する原料が前記シャフト炉の上部領域に装入され、前記シャフト炉内で優勢な雰囲気の作用を受けて前記原料の一部が溶融及び/又は少なくとも部分的に還元され、前記シャフト炉の下部領域に導入された高温ガス流が、前記シャフト炉内で優勢な雰囲気を通って流れ、化学組成及び温度に関して前記シャフト炉内に存在する前記雰囲気に影響を与え、低温ガス流が少なくとも1つの熱交換器に供給され、前記低温ガス流が700℃より高い温度に加熱されて高温ガス流となる、前記シャフト炉内で銑鉄を製造する方法であって、前記低温ガス流は前記少なくとも1つの熱交換器に導入される前に、少なくとも5体積%のCO
2成分を含み、前記低温ガス流が不純物以外に残留成分として空気及び/又は純酸素を含み得ることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記低温ガス流が、不純物以外にCO
2、空気及び任意に純酸素を含有し、空気の割合が50体積%以下に制限される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低温ガス流が、不純物以外にCO
2及び任意に純酸素を含有し、CO
2の割合が少なくとも70体積%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CO
2がCO
2分離により供給される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水素が前記シャフト炉の前記下部領域に更に導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
純酸素が前記シャフト炉の前記下部領域に更に導入される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
炭素が前記シャフト炉の前記下部領域に更に導入される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水素が電気分解により生成及び供給され、前記純酸素が空気分離プラントから供給される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記低温ガス流の少なくとも空気成分が、前記他の成分と組み合わされる前に、かつ前記低温ガス流が前記少なくとも1つの熱交換器に導入される前に、周囲圧力を超える圧力まで圧縮される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記低温ガス流が前記少なくとも1つの熱交換器に導入される前に、前記低温ガス流が周囲圧力を超える圧力まで圧縮される、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフト炉内で銑鉄を製造する方法に関し、重力の影響を受けてシャフト炉内に落下する原料がシャフト炉の上部領域に装入され、シャフト炉内に存在する雰囲気の作用を受けて原料の一部が溶融及び/又は少なくとも部分的に還元され、シャフト炉の下部領域に導入された高温ガス流は、特に向流で、シャフト炉内に存在する雰囲気を通って流れ、化学組成及び/又は温度に関してシャフト炉内に存在する雰囲気に影響を与え、特に、シャフト炉プロセスの上流にある低温ガス流は、少なくとも1つの熱交換器に供給され、低温ガス流は700℃より高い温度に加熱されて高温ガス流となる。
【背景技術】
【0002】
持続的に運転されるブラスト炉などのシャフト炉での銑鉄の製造は、世界的に最も一般的で標準的な方法であり、世界の銑鉄需要の80%以上がこの方法で製造される。従来、還元法では、シャフト炉の上部領域は、炉頂部と呼ばれる部分を介して、鉄鉱石と、含まれていてもよい石灰と、コークス及び/又は石炭と、更に必要に応じて添加剤や他の酸化性又は金属性の出発材料/原材料とを含む、装入物として知られる原料が装入される。重力とバッチ式投入、特に、不連続な湯出し、それによる液状物質の取り出しにより、原料は落下する。大気の化学組成(還元条件)により、下部領域の方向に温度が上昇することから、鉄鉱石は還元される。シャフト炉の下部領域、特に、熱風と呼ばれる高温ガス流、並びに炭素及び/又は酸素などの更に含まれていてもよい添加物の導入領域では、鉄鉱石又は還元鉄を溶融させるような温度となり、様々な液相が炉床領域と呼ばれるところに確立され、この領域には、様々なレベルで、液状の鉄と、密度が低いために液状の鉄を覆う溶融スラグが集まる。特に、液相はそれぞれ様々な吐出点/湯出し点を介して引き出され、これらは更なるプロセスに送られる場合がある。
【0003】
従来、熱風は、熱気とも呼ばれる周囲空気であり、スターティングバーを介して冷風と呼ばれる低温ガス流として吸い込まれ、規定の圧力に圧縮されて少なくとも1つのブラスト加熱器に供給され、そこで圧縮周囲空気(冷風)は少なくとも700℃の温度に加熱され、次いで、これがシャフト炉の下部領域のブラスト羽口と呼ばれるものを介して、ブラスト炉内に導入又は吹き込まれる。カウパーストーブ(Cowper stove)とも呼ばれるブラスト加熱器の形態の熱交換器は、高温ガスで交互に満たされ、高温ガスは、ブラスト加熱器内で規定の温度に達するまでブラスト加熱器内に留まり、次いで、高温ガスは除去され、圧縮された周囲空気(冷風)で満たされ、所定の温度、一般に700~1400℃の間の温度に達するまでブラスト加熱器内に留まり、その結果、高温周囲空気は、次いで、熱風(熱風流)として引き出され、ブラスト炉に供給される。高温ガスをブラスト加熱器に供給する経済的に実行可能な確立された方法として、炉頂部から炉頂ガスと呼ばれる廃熱流を利用する方法があり、ブラスト加熱器内で更にガス(空気/天然ガス)と共に再燃焼させる。持続的な運転を維持するために、ブラスト炉の規模に応じて、少なくとも2つ、特に少なくとも3つのブラスト加熱器が並列に接続され、適切にオンとオフを切り替えることができ、例えば、ブラスト加熱器の1つは、高温ガスで満たされ、熱放出を伴うブラスト炉の加熱に利用され、別のブラスト加熱器は冷風で満たされ、熱吸収で加熱されて熱風を与え、第3のブラスト加熱器は運転可能であり、ブラスト炉に熱風を供給している。原理的には、2つのブラスト加熱器を交互運転してガスを満たして使用することも可能である。
【0004】
炭素を主成分とする銑鉄の製造はCO2を大量に排出し、CO2の増加は大気中の温室効果を高めて気候に悪影響を及ぼすという点で環境を汚染する。長年、シャフト炉の運転者は、この排出量をどのように低減できるかを検討してきた。CO2の制約や認証に関連する国内/国際的な規定によって状況は悪化し、プラント運転者は、特定の前提条件の下でプラントの運転を更に可能にする措置を講じざるを得なくなっている。経済的な運転も引き続き保証されるべきである。
【0005】
従来技術には、シャフト炉への媒体(固体、液体及び気体)の添加を制御して、CO2排出量に対するプラスの効果及び低減効果を達成するための多くの手法が述べられている。例として、刊行物である中国特許第CN101871026号明細書及び国際公開第2019/057930号明細書が挙げられる。
【0006】
また、従来のシャフト炉プロセスでは、CO2だけでなく、他の、特に「有害な」、ガス化合物及び液体が物質の流れの中に発生し、シャフト炉プロセスだけでなく、下流のアプリケーションにも悪影響を及ぼす可能性がある。約79体積%程度の窒素からなり、温度及び圧力に応じてブラスト炉に吹き込むための高温ガス流又は熱風として使用される空気(低温ガス流、冷風)は、シャフト炉の雰囲気中及び炉頂ガス中の、及びブラスト加熱器内であってもよいが窒素酸化物排出物(NOx)、シアン化水素(HCN)及びシアン化カリウム化合物の形成に寄与する。窒素は更に不活性であり、その存在はプロセスの最適化に繋がることはない。代わりに、窒素は、例えば、炉頂ガスでの発熱量の減少に寄与し、ウォッベ指数(WI)に影響を及ぼす。ブラスト炉プロセス(上流及び下流を含む)では、窒素の存在により、効率は最適ではない。更に、形成された窒素化合物、特に、シアン化水素(HCN)及びシアン化カリウム化合物は、利用時、特に、炉頂ガス及びそこから形成されるガス混合物の燃焼において、窒素酸化物排出量(NOx)の増加をもたらす。関連する廃ガス制限を遵守できるようにするために、特に、発電プラントや焼結プラントでは、高いレベルの経済的不利益(脱NOxプラント)が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第CN101871026号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/057930号明細書
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、ブラスト炉で銑鉄を製造する方法を特定することであり、それによって最適なプロセスを提供することができ、窒素酸化物排出物及びシアン化水素又はシアン化カリウム化合物などの他の窒素化合物を低減又は本質的に防止することができる。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0010】
本発明者らは、CO2を供給することによって、既存の従来のプロセスで吸い込まれた空気(低温ガス流、冷風)の一部又は全部を置換できることを見出した。本発明によれば、低温ガス流は、少なくとも1つの熱交換器に導入される前に、少なくとも5体積%のCO2成分を含み、低温ガス流は、不純物と同様に、残留成分として空気及び/又は純酸素を含むことができる。低温ガス流は、特に、低温ガス流中の空気成分を低減又は部分的もしくは完全に置換するために、少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも20体積%、より好ましくは少なくとも30体積%、特に、好ましくは少なくとも40体積%のCO2を含んでもよい。
【0011】
本発明の文脈における不純物、特に、不可避の不純物は、低温ガス流/高温ガス流の組成における成分又は付随要素であり、最大2.0体積%まで、特に、最大1.5体積%まで、好ましくは最大1.0体積%まで存在し得るが、大きな寄与をしないか、又は全く重要ではなく、したがってプロセスに影響を及ぼさない。空気の例を用いると、主成分は酸素と窒素であり、不純物は希ガス(アルゴン)や二酸化炭素を含み、合計すると約1体積%になる。
【0012】
シャフト炉及び/又はシャフト炉の運転モードに応じて、低温ガス流中の空気の一部をCO2によってほとんど置換するか又は排除することができ、その結果、プロセス全体を通して体積流又は物質流内で供給又は循環される窒素が少なくなる。結果として、第一に、NOx、HCN及びシアン化カリウム化合物の還元が保証され、第二に、低温ガス流中でのCO2の使用には、プロセス全体にわたってCO2バランスにプラスの効果がある。CO2は空気よりも比熱容量が大きく、これは約26%大きいため、同じ体積流量で高い発熱密度を達成することができるため、熱交換器やブラスト加熱器(カウパーストーブ)の効率を高めることができる。更に、CO2の粘度(運動学的、動的)は空気と比較して低く、このことは、上流及び下流を含めて、熱交換器/ブラスト加熱器及びシャフト炉で有益な効果をもたらすことができる。
【0013】
熱交換器(ブラスト加熱器)で現在慣例となっている温度に加熱されたCO2は、700℃~1400℃の温度範囲では不安定であり、これは、ブラスト炉の下部領域でレースウェイと呼ばれる部分に吹き込まれた後、有形熱を消費して(代替)還元剤と接触し、COに分解されることを意味する。炭素との反応の場合、例えば、約172kJ/molが消費される。水素との反応の場合、例えば、わずか約30.9kJ/molである。この熱消費は、酸素との燃焼において同時に放出される熱によって本質的にカバーされるため、混合比によっては、正味でかなりのエネルギー余剰が依然として存在し得る。したがって、冶金的に有効な(還元剤として利用可能であることを意味する)最適化された高温ガス流(熱風)がレースウェイで最初から利用可能であり、これによりブラスト炉の効率を更に高めることができる。
【0014】
炭素は、ブラスト羽口を介して高温ガス流(熱風)中でCO2と共に直接導入され、その結果、従来の運転に比べて、原料、特に、コークスの供給だけでなく、炭素の追加注入の量も減らすことが可能である。
【0015】
更に有効な構成及び展開は、以下の説明から明らかになるであろう。また、特許請求の範囲、明細書、及び図面からの1つ又は複数の特徴は、その1つ又は複数の他の特徴と組み合わせて、本発明の更なる構成を与えることもできる。独立請求項からの1つ又は複数の特徴が、1つ又は複数の他の特徴によってリンクされることも可能である。
【0016】
本発明の方法の一構成では、低温ガス流(冷風)は、不純物に加えてCO2及び空気を含有し、かつ純酸素を含有していてもよく、空気の割合は、50体積%以下、特に40体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは20体積%以下、特に好ましくは10体積%以下に制限される。空気の部分的な使用には、例えば、低温ガス流又は高温ガス流が物質流(熱風)中に水又は水蒸気の形態で、ある「含水率」を有するという長所があり、この「含水量」は、低温/高温ガス流中の空気の割合及び周囲条件に依存し、シャフト炉へ高温ガス流(熱風)を導入する前に、例えば、水蒸気を高温ガス流に導入することで十分であるか、又は制御された方法で再度調整可能であるかのいずれかである。「ブラスト含水量」は、シャフト炉内の穏やかで均一な運転モードに有効な場合がある。ブラスト含水量の調節により、吸熱特性を介して、RAFTと呼ばれるレースウェイ内での燃焼温度を制御することができる。同時に、ブラスト含水量は、炉頂ガス中の水素含有量にも影響を及ぼし得る。
【0017】
低温ガス流に導入されていてもよい純酸素は、熱を放出するための酸化剤として、及び還元剤として、特に、一酸化炭素を使用することによって、電力密度を高めて効率を上げるために、温度を上げることができる。この効果は、部分的に、窒素に対する酸素の比率が高くなるという事実に基づく。CO2を使用する場合、酸素を更に別個に注入することを部分的又は完全に省略することが可能である。代替的に、特に、熱交換器において、空気又は空気中の窒素とのあらゆる可能な反応によりNOx、HCNが発生する可能性を防ぐために、高温ガス流をシャフト炉に導入する前に、最初に純酸素を高温ガス流(熱風)に導入していてもよい。この関連で「されていてもよい」とは、純酸素が低温ガス流又は高温ガス流のいずれにも供給されないことを意味する。
【0018】
低温ガス流(冷風)は、不純物に加えてCO2を含み、かつ純酸素を含んでいてもよく、CO2の割合は、少なくとも70体積%、特に、少なくとも75体積%、好ましくは少なくとも80体積%、より好ましくは少なくとも85体積%、特に、好ましくは少なくとも90体積%である。低温ガス流は、実質的に空気又は窒素を含まないため、少なくとも高温ガス流によってシャフト炉内でNOx排出物の放出が行われることはなく、したがって炉頂ガスも窒素及び窒素化合物を含まず、その結果、炉頂ガスは従来の抽出された炉頂ガスと比較してより良好な発熱量と排出値を有する。本質的に窒素を含まない炉頂ガスのために、その使用は、熱交換器(ブラスト加熱器)の効率を高めるためだけでなく、CO2の直接分離、又は、特に、酸素燃料プロセスと呼ばれるプロセスでCO2を下流で分離することにも適している。
【0019】
低温ガス流に導入されていてもよい純酸素を温度上昇させることができ、酸化剤を使用して熱を放出し、かつ還元剤、特に、一酸化炭素(CO)を形成することで、電力密度を高めて効率を向上させることができる。この効果は、部分的に、窒素に対する酸素の比率が高くなるという事実に基づく。CO2を使用する場合、酸素を更に別個に注入することを部分的又は完全に省略することが可能である。代替的に、含まれていてもよい純酸素も、高温ガス流をシャフト炉に導入する前に、高温ガス流にのみ導入することもできる。この関連で「されていてもよい」とは、純酸素が低温ガス流又は高温ガス流のいずれにも供給されないことを意味する。低温ガス流、及び場合によっては高温ガス流も、特定の場合には、不純物を含むCO2のみで構成されることがある。
【0020】
本発明の方法の好ましい構成では、低温ガス流用のCO2は、CO2分離から供給されるが、これは、熱交換器又はブラスト加熱器で燃焼された廃ガスから分離されるか、又は、特に冶金プラントのすぐ近くにある他のプロセスから生成又は堆積され得る。他のプロセスとは、例えば、シャフト炉プロセス(統合冶金プラント)に結合され得る直接還元(DR)からCO2を使用/分離することができる。代替的に、純度の高い工業用ガスとして、又は純度の要求が低いガスとして、CO2を供給することも考えられる。
【0021】
本発明の方法の一構成では、水素がシャフト炉の下部領域に更に導入される。水素は、代替還元剤と呼ばれ、高温ガス流(熱風)から導入されたCO2と共に石炭とコークスの需要を低下させ、したがって経済的実行可能性を高めることに貢献することができる。水素の使用は、例えば、製造される銑鉄1トン当たり0.005%~0.1%、特に0.01%~0.08%、好ましくは0.015%~0.07%であり得る。
【0022】
本発明の方法の一構成では、純酸素がシャフト炉の下部領域に更に導入される。高温ガス流(熱風)を介して導入されていてもよい純酸素が燃焼に不十分であるか、又は高温ガス流と共に追加の純酸素が導入されない場合、シャフト炉の運転に必要なエネルギーを確保するために、別途、酸素の導入が必要となる場合がある。追加酸素の使用量は、例えば、製造される銑鉄1トン当たり0.1%~13%であり得る。酸素を追加しない運転の場合、1モルのCO2当たり0.5モルの酸素が高温のCO2含有ガス流から放出される。
【0023】
本発明の方法の一構成では、炭素がシャフト炉の下部領域に更に導入される。高温ガス流(熱風)を介して導入された高温ガス流のCO2からの炭素、及び/又は頂部からの石炭/コークスの投入が不十分である場合、炉内で還元反応が起こる温度レベルを達成するために、シャフト炉内への入熱を得るために、別途、炭素の導入が必要となる場合がある。レースウェイの目標温度は1800℃~2500℃の範囲である。
【0024】
本発明の方法の一構成では、水素及び酸素は、(水又はクロルアルカリ)電解から生成及び供給される。また、他の水素源、特に、ブラスト炉ガスやコークス炉ガス混合物自体に存在する水素も考えられる。更に、高温電解も考えられ、これは、統合冶金プラント内の多種多様な異なる熱源と効率的に統合することができるためである。酸素はまた、他の供給源、例えば、空気分離プラントからも得られる可能性がある。
【0025】
本発明の方法の一構成では、低温ガス流(冷風)に空気が供給される場合、低温ガス流の少なくとも空気成分は、他の成分と結合される前に、他の成分と結合される前に、かつ低温ガス流が少なくとも1つの熱交換器に導入される前に、周囲圧力を超える圧力まで圧縮される。熱交換器(ブラスト加熱器)への圧縮空気の導入は、従来の一連の活動に対応する。CO2及び/又は含まれていてもよい純酸素には、プロセスの結果として、周囲圧力を上回る圧力が既に加えられている場合があり、その結果、この成分/これらの成分は圧縮後に低温ガス流に供給され、したがってコンプレッサーの処理量が減少するため、コンプレッサーの運転コストを低減することができる。
【0026】
低温ガス流の複数の成分又は1つの成分が非加圧形態で、又は周囲圧力のレベルで供給される場合、低温ガス流は、低温ガス流が少なくとも1つの熱交換器(ブラスト加熱器)に導入される前に、周囲圧力を超える圧力まで、特に、完全に圧縮される。
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の具体的な構成を詳細に説明する。結果として得られる特徴の図面及び付随する説明は、それぞれの構成に限定されるものとして読まれるべきではなく、代わりに例示的な構成の説明に役立つ。更に、それぞれの特徴は、特に図示されていない追加の構成の場合、本発明の更なる発展及び改良のために、互いに一緒に、又は上記の説明の特徴と共に利用されてもよい。同一の部分には、常に同一の参照番号が付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来の運転モードにおける、上流ブラスト加熱器と対応する物質の流れを有するブラスト炉の概略図である。
【0029】
【
図2】本発明の運転モードにおける、上流ブラスト加熱器と対応する物質の流れを有するブラスト炉の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、上流ブラスト加熱器を有する従来のブラスト炉の概略図を示す。1つのブラスト加熱器(熱交換器)のみが象徴的に示されているが、シャフト炉/ブラスト炉の周囲には、原則として少なくとも2台、特に、少なくとも3台のブラスト加熱器(熱交換器)が配置されている。熱交換器(ブラスト加熱器)の運転モードは従来技術である。従来、空気は、周囲から吸い込まれ、コンプレッサー(図示せず)に導かれて圧縮され、低温ガス流(冷風)として、既に適切な温度にある熱交換器(ブラスト加熱器)の少なくとも1つに導入される。ブラスト加熱器は冷風で満たされ、ブラスト加熱器に貯えられた熱は圧縮された冷風に伝達され、所定の温度、一般に700℃~1400℃に達すると、高温ガス流(熱風)として、銑鉄が製造されたシャフト炉又はブラスト炉のブラスト羽口(羽口、ノズル)に供給される。シャフト炉の上部領域では、銑鉄の製造に必要な原料が炉頂から装入される。重力の影響を受けて、原料はシャフト炉内に落下し、シャフト炉内に存在する雰囲気の作用を受けて原料の一部が溶融及び/又は少なくとも部分的に還元される。シャフト炉の下部領域では、高温ガス流(熱風)が導入され、これは向流でシャフト炉内の雰囲気を通って流れ、その化学組成及び温度に影響を及ぼす。更に、運転モードに応じて、高温ガス流とは別にシャフト炉の下部領域に炭素(炭素系添加剤)及び/又は酸素を導入することが可能である。ブラスト炉プロセス及びその運転モードも従来技術である。従来、約79体積%の窒素と約21体積%を含む空気は、低温ガス流(冷風)又は高温ガス流(熱風)としてシャフト炉内に導入される。コークスは、燃料として、及びブラスト炉で銑鉄を製造する主原料である鉄鉱石の還元のための炭素キャリアとして使用され、このコークスは、鉄鉱石と同様に、それぞれの場合に層状又は混合状になって装入物として頂部からシャフト炉に導入され、必要に応じて更に微粉炭が導入され、必要であれば、更に微粉炭が、特に、ブラスト羽口から追加的に注入される。代替的に、プラントの設計に応じて、加熱油、天然ガス、コークス炉ガス、プラスチック又は水素などを、例えば、代替還元剤として使用することも可能であり、これらは特定の装置を介して注入される。炉頂ガスは約140℃~250℃で炉頂部から排出され、通常の運転モードでは、銑鉄1トン当たり1500~1850標準立方メートル(m
3(STP))の炉頂ガスを得ることができる。炉頂ガスの一部又は全部は、ブラスト加熱器の燃料となり、更に、例えば、天然ガスや空気などのガスと混合して再燃焼させる。通常運転で測定された炉頂ガスの組成は、体積%で、21%のCO、21%のCO
2、2%のH
2、及び56%のN
2を含み、そのうち0.0025%~1.2%のHCN及び0.001%~0.15%のNOxが存在する場合がある。
【0031】
図2は、上流の熱交換器(ブラスト加熱器)を有する同じ従来のシャフト炉(ブラスト炉)の概略図を示すが、本発明によれば、低温ガス流(冷風)としてCO
2を、全体的又は部分的に使用するという違いがある。
図2では純酸素が*で示されているが、これは、シャフト炉に高温ガス流(熱風)が導入される前に、低温ガス流及び/又は高温ガス流のいずれかに酸素が導入されることを意味していると考えられる。代替的に、不純物を含むCO
2のみを低温/高温ガス流として使用することも可能であり、CO
2を最大50体積%までの空気及び/又は最大30体積%までの純粋な酸素と共に使用することも可能である(ここでは図示せず)。
図2の本発明の実施例では、実質的に100体積%のCO
2を使用することで、第一にプロセス全体のCO
2バランスがプラスになり、第二にプロセス内の窒素のレベルを低下させることができるか、又は存在しないため、更に従来の運転モードと比較して、ただ、プロセス内で、NOx排出量がゼロに低減し、シアン化カリウム化合物又はシアン化水素がゼロに低減することだけが得られることが分かる。ある実験では、直接還元プロセス(代替的には酸素燃料プロセス)からCO
2を分離し、6バールの圧力で供給した状態で、低温ガス流(冷風)中で空気をCO
2で完全に置換した結果、従来からある(ブラスト)コンプレッサーを使用する必要がなくなり、したがってこの装置の電力を節約することが可能になった。熱交換器(ブラスト加熱器)において、CO
2を1200℃に加熱し、高温ガス流(熱風)としてブラスト炉内に注入した。更に、水素は、ブラスト炉が複数の(ブラスト)羽口を備えている場合、特に、ブラスト羽口(羽口)毎に、最大1000m
3(STP)/hで注入され、この場合、水素の還元の場合、更に、例えば、石炭粉としての炭素及び/又は酸素を別々に注入することが特に可能である。炉頂部を介して、特に、製造される銑鉄1トン当たり250~400kgのコークスが供給される。銑鉄1トン当たり最大12000m
3(STP)の炉頂ガスが得られ、組成は、CO
2が47体積%、COが38体積%、H
2が15体積%であることが確認された。窒素や「有害な」NOx、シアン化カリウム化合物又はシアン化水素による汚染が炉頂ガス中になかったため、炉頂ガスの発熱量は向上し、排出特性も良好であった。熱交換器(ブラスト加熱器)での後燃焼用のガスの使用を更に減らすことができたが、この場合、空気を使用せず、窒素を使用しない燃焼のために純酸素を使用した。燃焼後にブラスト加熱器から排出される廃ガス/燃焼ガスは、廃ガス中に扱い難い成分が少ないため、CO
2をリサイクルCO
2として比較的容易かつ効率的に(ブラスト炉)プロセスにフィードバックすることができ、リサイクル適性に優れていた。
【0032】
また、低温ガス流(冷風)中にはCO2が、少なくとも5体積%、特に少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも20体積%、より好ましくは少なくとも30体積%、特に好ましくは少なくとも40体積%含まれているので、本発明は低温ガス流(冷風)中の空気及び/又は純酸素の割合で実施可能であり、そのため空気の一部又は全部を置換することで、窒素に起因するNOx排出量の低減に繋げることができ、これにより、例えば、(全体)プロセスの効率を高める/向上させることもできる。
【0033】
本発明は、任意のタイプのシャフト炉に適用可能であり、即ち、ブラスト炉に限定されるだけでなく、説明された作用原理によって機能するキューポラ炉、一次エネルギー炉などでも実施可能である。
【国際調査報告】