(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】カム駆動のぜん動ポンプを備えた送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
A61M5/142 522
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521452
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021053458
(87)【国際公開番号】W WO2022076337
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボー ヤン ユー
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ピッツォチェロ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.リチャード ギョリー
(72)【発明者】
【氏名】マーク ウッド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066FF04
4C066HH01
(57)【要約】
インスリンなどの薬剤を患者に送達するための送達装置は、ハウジングおよび内部空洞を囲む基部を含む。ハウジング内には、薬剤を含むための容器、患者に薬剤を送達するための送達機構、および容器および送達機構と流体連通するポンプが含まれている。基部は、容器および送達機構と流体連通する、可撓性膜で覆われた一体的に形成された流路を有する。ぜん動ポンプ機構は、複数のカムを有するカムアセンブリと、流路を通って流体を進めるために可撓性膜と順次に係合する複数の突起を備えたカム従動子アセンブリと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の送達装置であって、
基部を有するハウジングであって、薬剤容器を囲む内部空洞を有するハウジングと、前記薬剤容器に接続され、患者に薬剤を送達するように構成された送達機構と、前記薬剤容器と前記送達機構との間に配置されたぜん動性のポンプ機構と、を備え、
前記ポンプ機構は、前記基部の表面上に形成され、前記薬剤容器と連通する入口端部と前記送達機構と連通する出口端部との間に延在する流路を形成する開放凹部と、前記基部上の可撓性膜であって、前記凹部を囲んで前記流路を形成する可撓性膜と、前記膜を前記基部に向かって、かつ前記流路内に順次に歪ませて、薬剤を前記容器から前記送達機構に移動させる複数のアクチュエータを有するアクチュエータアセンブリと、を備える、送達装置。
【請求項2】
前記基部は、前記内部空洞に面する上面と、患者に接触するよう構成された底面と、を有し、前記開放凹部は前記上面に形成される、請求項1に記載の送達装置。
【請求項3】
前記ポンプ機構は、前記空洞内に配置される、請求項2に記載の送達装置。
【請求項4】
前記可撓性膜は、上面および底面を有するシート材料を含み、前記底面は、前記基部の前記表面に結合されて、前記開放凹部および前記ポンプ機構に面する前記基部の前記上面を囲う、請求項3に記載の送達装置。
【請求項5】
前記ポンプ機構はカムアセンブリを含み、前記アクチュエータアセンブリはカム従動子アセンブリを含み、前記カム従動子アセンブリは前記可撓性膜と係合して、前記流路の流体を前記入口端部から前記出口端部に押し進める、請求項4に記載の送達装置。
【請求項6】
前記カム従動子アセンブリは、前記基部に結合されたベース部分と、前記ベース部分から延在する複数の可撓性脚とを含み、それぞれの前記脚は、前記膜に接触して、前記流路を閉じるために前記膜を内側に歪ませるように構成される、請求項5に記載の送達装置。
【請求項7】
前記カムアセンブリは、前記カム従動子アセンブリのそれぞれの脚を関わるように構成された複数のカム部材を含む、請求項6に記載の送達装置。
【請求項8】
前記カム従動子アセンブリのそれぞれの前記脚は、前記カムアセンブリのそれぞれのカムに接触するように構成された上面と、前記膜に接触して歪ませるように構成された底面とを有する、請求項7に記載の送達装置。
【請求項9】
前記カム従動子アセンブリの前記脚の前記底面は、前記膜に向かって延在し、前記膜を歪ませて前記流路を閉じるように構成された突出部を有する、請求項8に記載の送達装置。
【請求項10】
前記カム部材は、前記カム従動子アセンブリのそれぞれの脚に順次に接触して、前記流路を順次に閉じて、前記流路の前記流体を前記入口端部から前記出口端部に押し進める、請求項9に記載の送達装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、第1の内部領域および第2の内部領域を画定する障壁をさらに備え、前記流路は、前記第1の内部領域と前記第2の内部領域との間に延在する、請求項1に記載の送達装置。
【請求項12】
前記薬剤はインスリンであり、前記送達機構は、患者の皮膚を貫通するための遠位端と、近位端と、を有するカニューレと、前記カニューレの前記近位端と前記流路の前記出口端部との間に延在する導管と、を含む、請求項1に記載の送達装置。
【請求項13】
患者に薬剤を送達するための送達装置であって、
内部空洞および前記空洞を囲う基部を有するハウジングと、前記薬剤を含むための、前記空洞内の容器と、患者に前記薬剤を送達するためのカニューレを有する送達機構と、長手方向に延在する凹部を有し、前記内部空洞に面する上面と、使用者の皮膚に取り付けるように構成された底面と、を有する前記基部と、前記凹部を覆い流路を形成する前記上面上の可撓性膜と、
前記容器から前記カニューレに前記薬剤を誘導するための前記空洞内のポンプ機構であって、前記ポンプ機構は、複数のカム部材を有するカムアセンブリおよびカム従動子アセンブリを含み、前記カム従動子アセンブリは、前記膜を前記流路内へ順次に歪ませて前記流路を閉じ、前記流路の流体を前記流路の入口から前記流路の出口に押し進めるように配置された突出部を有する複数の可撓性部分を含む、ポンプ機構と、
を備える、送達装置。
【請求項14】
前記カムアセンブリは、複数の回転カム部材を含み、前記カム従動子アセンブリは、前記基部に結合されたベース部分を含み、前記複数の前記可撓性部分は、それぞれのカム部材によって作動する、請求項13に記載の送達装置。
【請求項15】
前記カム従動子アセンブリは、打ち抜き金属部品である、請求項13に記載の送達装置。
【請求項16】
前記カム従動子アセンブリは、複数の可撓性カム従動子部材を含み、前記カム部材のそれぞれは支持体に結合される、請求項13に記載の送達装置。
【請求項17】
前記ポンプ機構の前記カムアセンブリは、関連する駆動機構を有する複数のカム部材を含み、前記カム従動子アセンブリは、支持体に結合された複数のカム従動子部材を含む、請求項13に記載の送達装置。
【請求項18】
前記ハウジングは、第1の内部領域および第2の内部領域を画定する障壁をさらに備え、前記流路は、前記第1の内部領域と前記第2の内部領域との間に延在する、請求項13に記載の送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月9日に出願された米国仮特許出願第63/089.922号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医療機器に関し、より具体的には、患者に薬剤を送達するための送達機構に、インスリンなどの薬剤を移動させるための少なくとも1つの流路を備えた薬剤送達装置に関する。送達装置には、カム駆動ぜん動ポンプ機構が含まれる。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、糖尿病患者が必要なときに適切なレベルのインスリン産生を維持できないことに起因した高い血糖値によって特徴付けられる疾患群である。糖尿病は、それが治療されない場合罹患した患者にとって危険なものとなり得、深刻な合併症や早死につながる可能性がある。しかし、そのような合併症は、糖尿病を制御することと合併症のリスクを軽減することに役立つ1つ以上の治療選択肢を用いることで最小限に抑えることができる。
【0004】
糖尿病患者のための治療選択肢には、特別な食物療法、経口薬、および/またはインスリン療法が含まれる。糖尿病治療の主な目的は、糖尿病患者の血糖値ないし糖値を制御することである。しかし、適切な糖尿病管理を維持することは、糖尿病患者の活動とバランスを取らなければならないため複雑な場合がある。1型糖尿病(T1D)患者は、一般に体がインスリンを産生することができないことから、血流からグルコースを移動させるために(例えば、注射または注入を介して)インスリンを服用する必要がある。2型糖尿病(T2D)患者は一般にインスリンを産生することができるが、その身体は血糖値を医学的に許容される範囲内に維持するように適切にインスリンを活用することができない。T1Dの人とは対照的に、T2Dの人の大部分は、通常、生存するために1日用量のインスリンを必要としない。多くの人は、健康的な食事、身体活動の増加、または経口薬によって自分の状態を管理することができる。しかしながら、血糖値を調節できない場合は、インスリンを処方されることになる。例えば、24時間基礎インスリンと、血糖管理制御のために食事時間に服用される短期作用の即効型インスリンと、からなる頻回注射(MDI)を用いる推定620万人の2型糖尿病患者(例えば、米国、西ヨーロッパ、およびカナダ)が存在する。
【0005】
1型糖尿病(T1D)および時には2型糖尿病(T2D)の治療には、毎日のインスリン療法について主要な2つの方法がある。第1の方法では、糖尿病患者は、必要に応じて注射器またはインスリンペンを用いてインスリンを自己注射する。この方法は、どの注射でも針刺しを必要とし、糖尿病患者は、1日に3~4回の注射を必要とする場合がある。インスリン注射に使用される注射器やインスリンペンは、比較的簡単に使用でき、費用対効果が高い。
【0006】
インスリン療法と糖尿病管理に効果的な方法は、注入療法ないし注入ポンプが用いられる注入ポンプン療法である。インスリンポンプは、糖尿病患者に対して、必要なインスリンを産生する、糖尿病に罹っていない人の膵臓が適切に作動している場合の機能や挙動により近い速度でインスリンを連続して注入することができ、糖尿病患者の血糖値を、糖尿病患者の個々のニーズに基づいて目標範囲内に維持できるようにすることができる。注入ポンプ療法には、糖尿病患者の皮膚を貫通し、それによってインスリンの注入が行われる、通常は注入針または柔軟なカテーテルの形態の注入カニューレが必要である。注入ポンプ療法は、インスリンの連続した注入、正確な投薬、およびプログラム可能な送達スケジュールという利点をもたらす。
【0007】
インスリンポンプは、単回注射よりも経時的にインスリンを送達することが有利であり、典型的には、推奨される血糖範囲内での変動が少ない。加えて、インスリンポンプは、糖尿病患者が耐えなければならない針刺しの回数を減らし、糖尿病患者の生活の質を高くするための糖尿病管理を改善し得るものである。例えば、インスリン治療を受けているT2D患者の多くは、改善されたコントロールに関する臨床的ニーズが満たされていないことで、注射から注入療法に移行することが予想される。すなわち、頻回注射(MDI)を受けるT2D患者のかなりの数が、目標血糖コントロールができていないか、あるいは処方されたインスリン療法を十分に遵守していない。
【0008】
注入療法を容易にするために、一般には、2種類のインスリンポンプ、すなわち、従来型ポンプおよびパッチポンプがある。従来型ポンプは、典型的には注入セット、チューブセットまたはポンプセットと呼ばれる使い捨て部品を用い、インスリンをポンプ内の容器から使用者の皮膚に移送する。注入セットは、ポンプコネクタ、チューブの長さ、および中空金属注入針または可撓性プラスチックカテーテルの形態のカニューレがそこから延びるハブないし基部を含む。基部は、通常、使用中に皮膚表面上にその基部を保持する接着剤を有する。カニューレは、手動で、または手動または自動の挿入機器を用いて皮膚に挿入することができる。挿入機器は、使用者によって用いられる別個のユニットとすることもできる。
【0009】
別の種類のインスリンポンプはパッチポンプである。従来型注入ポンプおよび注入セットの組み合わせとは異なり、パッチポンプは、流体部品の大部分または総てを単一のハウジングの中に組み合わせた、統合された機器である。一般に、ハウジングは、患者の皮膚上の注入部位に接着剤で取り付けられ、別の注入またはチューブセットを用いる必要がない。インスリンを含んだパッチポンプは、皮膚に付着して、結合された皮下カニューレを介して一定期間インスリンを送達する。パッチポンプの中には、(インスレット社がOmniPod(商標)というブランド名で販売している1つの機器のように)別個のコントローラ装置と無線で通信するものもあれば、完全に自己完結しているものもある。そのようなパッチポンプは、3日ごと、またはインスリン容器が枯渇したときなど、頻繁に交換される。そうしないと、カニューレまたは注入部位に関する制約など困難な事態が生じることがある。
【0010】
パッチポンプは、患者が着用する自己完結型ユニットであるように設計されていることから、好ましくは、使用者の活動を妨げないよう、パッチポンプは小型なものである。したがって、使用者の不快感を最小限に抑えるために、パッチポンプの全体の厚みを最小限に抑えることが好ましい。ただし、パッチポンプの厚みを最小限に抑えるために、その構成部品のサイズをできるだけ小さくする必要がある。
【0011】
現在のパッチポンプの設計では、プラスチックチューブなどのチューブが流路として用いられ、1つの内部部品から別の内部部品へ流体が送られる。例えば、チューブは、薬剤容器を送達針に接続することができるが、そのようなチューブを内部に収容するために必要なスペースは、パッチポンプの全体的なサイズを増すことになる。チューブの使用は、コストを増加させ、自動化された機器組み立て過程の間にさらなる複雑さをもたらす可能性がある。例えば、そのような機器アセンブリは、チューブを接続することを含み、これは、組み立て過程における工程の追加となる。さらに、そのような接続からの漏れを防ぐことは、さらなる課題を引き起こす可能性がある。
【0012】
従って、パッチポンプ機器の場合など限られたスペース環境で使用するための改善されたポンプ構造および流体経路設計が必要であり、これは、機器の全体的なサイズおよび複雑さを最小限に抑えまたは低減することができるものである。
【発明の概要】
【0013】
薬剤送達装置が、薬剤を損なうことのないポンプアセンブリを有し、薬剤を制御された投与量で容器から送達システムに送達するために提供される。医療送達装置は、ポンプ機構によって薬剤が供給される、送達システムとしてカニューレまたは針を有する。
【0014】
パッチポンプなどの本願送達装置の特徴は、薬剤を容器から患者に投与するための送達システムに移送するための少なくとも1つの流路を有することである。ポンプ機構は、送達装置の構成部品と共に形成することができる。ポンプ機構は、ポンプ機構の部品と薬剤の接触を最小限に抑えたポンプ作用をする。
【0015】
送達装置は、薬剤容器、患者に薬剤を送達するための送達機構、および容器から送達機構に薬剤を送達するためのポンプ機構を含む。送達機構は、典型的には、薬剤を皮内送達するために患者に挿入される針またはカニューレである。一実施形態では、ポンプ機構は、送達装置の構成部品で形成されたぜん動ポンプである。一実施形態の送達装置は、薬剤容器と送達機構との間に延在するように配置された流路を有した基部を含む。流路は、容器と送達機構との間に延在する、送達装置の一部の面における凹部によって形成することができる。可撓性膜が凹部を覆って閉鎖した流路を形成する。複数のアクチュエータを有するアクチュエータアセンブリは、順次膜を歪めて行き、流路にポンプ作用を生じさせる。
【0016】
アクチュエータアセンブリは、基部、プレートあるいはカバーなどの送達装置の構成部品に取り付けられたカムアセンブリとすることができる。カムアセンブリは、複数のカム従動子を作動させて可撓性膜と係合し膜を流路内に歪ませるための複数のカム部材を含む。カム機構は、その駆動によって、薬剤容器から薬剤を送達機構へ押し出して送り込むために流路内でポンプ作用を生じさせるように、カム従動子を順次に作動させて膜を歪ませる。
【0017】
一実施形態のポンプ機構は、複数のカムと、凹部を覆う可撓性膜に接触して歪ませるカム従動子とを含み、カムおよびカム従動子が薬剤に接触しないようにして薬剤に作用する剪断応力を最小限に抑え、薬剤の安定性を増すようにする。カム機構は、送達装置のハウジング内の利用可能な空間内に収まる微小なカムとすることができる。
【0018】
一実施形態のポンプ機構は、カム従動子を有する複数のカムを含み、カム従動子は打ち抜き金属板から形成される。カム従動子は、カム従動子アセンブリを形成する複数の可撓性部材を備えた単一のユニットとして形成することができ、カム従動子アセンブリは、カムによって変位させられて、流路を覆う膜を制御された順序で別々に歪ませて流路を通じて流体を押し出すことができる。可撓性部材は、カムによって駆動されたときに膜に接触するために膜に向かって延在する突出部を含むことができる。他の実施形態では、複数のカムおよびカム従動子は、カム従動子が支持体に取り付けられた別個のユニットまたは部材として形成される。それぞれのカムおよびカム従動子は、流路に沿って間隔を置いて配置され、カムは制御機構または制御回路によって独立して動作することができる。カム従動子は、別個の部材とすることができ、膜の平面および流路の長手方向に垂直な直線方向に動くように構成される。一実施形態では、カム従動子は、カム従動子の横方向ないし横断する動きを伴わずに、膜に対して直線方向にのみに動く。
【0019】
一実施形態の送達装置は、患者のところに配置された針または可撓性カニューレを介して患者に薬剤を送達するように構成される。装置は、薬剤を収容するための容器を含むハウジングを有する。流体侵入に対して密封することができる第1の内部空間は、送達装置の1つまたは複数の構成部品を含むことができる。流体の侵入に対して密封されていない第2の内部空間は、ポンプ機構など、送達装置の1つまたは複数の構成部品を含むことができる。ハウジングは、第1の内部空間と第2の内部空間とを分離する障壁を有することができる。送達カニューレは、患者の皮膚に薬剤を送達する。一実施形態では、基部は、患者の皮膚に向かって配向する底面と、内部空間に面する上面とを有する。基部の上面部分は、その中に配置された1つまたは複数の一体的に形成された流路を有する。
【0020】
送達装置は、ハウジングおよびハウジングを囲う基部を有して、ポンプ機構および送達装置のための他の作用部分を受け入れるための内部空洞を形成することができる。送達装置は、カニューレまたはカテーテルを介してインスリンを制御された速度で患者に送達するのに特に適している。送達装置は注入セットと共に使用するためのポンプ機構などの他の形態を有することができるが、送達装置はパッチポンプまたは注入ポンプとして示される。ハウジングまたは基部の少なくとも1つの面は、インスリンを送達装置の1つの構成部品からカニューレまたはカテーテルに送達するための一体的に形成された流路を有する。
【0021】
流路は、装置の基部の面の部分に成形された開放流路として形成することができる。流路は、基部を通って開放流路の反対側に至る、入口端部の開口部と出口端部の開口部を有し、これら開口部は装置の構成部品およびカニューレまたはカテーテルに接続され得る。可撓性のフィルムないし層などの可撓性膜が基部の面に貼られて開放流路を覆い、開放流路を囲んで流路を形成する。カム機構は、打ち抜き金属カム従動子などのカム従動子を順次に係合し、膜を制御された順序で変位させて、流路内にポンピング作用を生じさせ、流体を入口端から出口端へ進ませる。
【0022】
一実施形態では、患者に薬剤を送達するための送達装置は、開放端部を有するハウジングと、開放端部に結合され内部空洞を画定する基部とを含む。薬剤を収容する容器は、ハウジングの空洞内に設けられる。カニューレまたはカテーテルなどの送達機構、およびポンプ機構は、容器に接続されている。基部は、容器および送達機構と流体連通する流路を形成する基部における凹部を囲む可撓性膜を有した、一体的に形成された流路を有する。可撓性膜はカムおよびカム従動子によって変位され、ここで従動子は可撓性膜と係合する突出部を有した打ち抜き金属板である。
【0023】
本発明送達装置の追加のおよび/または他の態様および利点は、以下の説明に記載されるか、または、説明から明らかになるか、または、本発明の実施によって知り得るものである。本発明は、上記の態様のうちの1つ以上、および/またはその特徴および組み合わせのうちの1つ以上を有する、送達装置およびその形成並びに動作方法を含んでよい。本発明は、例えば、添付の特許請求の範囲に記載されている上記の態様の1つまたは複数の特徴、および/または、組み合わせを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
送達装置の実施形態の様々な態様および利点は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明からより容易に理解される。
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に従って構成された送達装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の送達装置の様々な構成部品の分解図である。
【
図4】
図4は、一実施形態における流路およびカムアセンブリの側面図である。
【
図6】
図6は、
図5の送達装置のポンプ機構断面の端面図である。
【
図7】
図7は、第1の位置にあるカムを示す、ポンプ機構の側断面図である。
【
図8】
図8は、第2の位置にあるカムを示す、ポンプ機構の側断面図である。
【
図9】
図9は、第3の位置にあるカムを示す、ポンプ機構の側断面図である。
【
図10】
図10は、別の実施形態におけるポンプ機構の斜視図である。
【
図11】
図11は、ポンプ機構のさらなる実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面に図示されている本発明の実施形態を詳細に参照し、ここでは、全体を通じて同様の参照番号は同様の要素を指している。本明細書で説明される実施形態は、図面を参照することによって、本発明を例示するものであるが、これに限定するものではない。
【0026】
当業者は、本開示が、以下の説明で記載されるかまたは図面に図示される、構造の詳細、および構成部品の配置に、その適用が限定されないことを理解する。本明細書の実施形態は、様々な方法で実施または実行することができる。また、本明細書で用いられる表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとみなすべきではないことが理解される。本明細書における“含む”、“備える”または“有する”、およびそれらの変形例の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物並びに追加の項目を包含することを意味する。特に限定されない限り、本明細書における“接続された”、“結合された”、および“装着された”という用語およびそれらの変形例は、広い範囲で用いられ、直接的および間接的な接続、結合および装着を包含する。さらに、“接続された”および“結合された”という用語、およびそれらの変形例は、物理的または機械的な、接続または結合に限定されない。さらに、上、下、底面、および上面などの用語は、相対的であって、説明を補助するために用いられるものであり限定するものではない。本明細書に開示される実施形態および/または要素および機能のいずれも、相反することなくまたは互いに矛盾しない限り、互いに組み合わされて、具体的に開示されないさまざまな追加の実施形態を形成することができる。“実質的に”、“約”および“おおよそ”のような程度を示す用語は、当業者によって、所与の値の周囲およびそれを含む合理的な範囲、ならびに所与の値の外側の範囲、例えば、実施形態の製造、組立、および使用に関連する一般的な許容範囲を指すように理解されるものである。構造または特性を指す場合の“実質的に”という用語は、大部分であるまたは完全である特性を含む。
【0027】
例示的な実施形態は、インスリン療法を用いた糖尿病管理を参照して説明される。これらの例示的な実施形態は、インスリン以外の異なる薬剤を使用して糖尿病以外の生理学的状態を処置するために、異なる薬物療法や養生法と共に使用することができることが理解される。
【0028】
図1は、薬剤送達装置の例示的な実施形態の斜視図である。一実施形態では、送達装置はパッチポンプ1として示されている。他の実施形態では、送達装置は、注入セットやポンプ装置などの他の構造および送達機構を有することができる。本明細書に記載の送達装置は、インスリン溶液の形態のインスリンを制御された速度で患者に送達するように構成される。
図2は、メインカバーを形成するハウジング20が例示される、
図1のパッチポンプの様々な構成部品の分解図である。パッチポンプ1の様々な構成部品として、インスリンを収容するための容器4、容器4からインスリンを送り出すためのポンプ3、1つまたは複数の電池の形態の電源5、カニューレを備えた挿入針を使用者の皮膚に挿入するための挿入機構7、およびスマートフォンを含む、リモートのコントローラやコンピュータなどの外部装置に対する任意の通信機能を備えた回路基板の形態の制御電子回路8を含む。ハウジング20上の一対の投与ボタンは、ボーラス投与を含むインスリン投与を作動させる。構成部品を支持するための基部22は、適切な留め具ないしスナップコネクタによってハウジング20に取り付けることができる。パッチポンプ1はまた、容器4からポンプで送り出されたインスリンを注入部位に移送する様々な流体コネクタラインを含む。カニューレは、本技術分野で知られているように、剛性カニューレまたは可撓性カテーテルとすることができる。
【0029】
着用可能な医療用送達装置(例えば、パッチポンプ1などのインスリン送達装置(IDD))は、ディスプレイ動作の中でも、特に、例えば、構成設定、パッチポンプへの無線接続が成功したときの表示、および用量が送達されているときの視覚的表示などの、パッチポンプ1の動作に関する視覚情報を使用者に提供するためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)ディスプレイを含むことができる、ポンプ1と無線で通信するリモートコントローラと共に動作することができる。ディスプレイは、ユーザインターフェイスの動作の中でも、特に、使用者が、ロックを解除するためのスワイプ、ボーラスを送達するための要求を確認するためのスワイプ、および確認または設定ボタンの選択などの、タッチ入力を与えることを可能にするようにプログラムされたタッチスクリーンディスプレイを含むことができる。
【0030】
パッチポンプ1として示される送達装置は、内部空洞を備えたハウジング20を形成するメインカバーを有する。基部22は、以下で説明するように、様々な構成部品を担持し、支持する。カバーと基部の間の気密シールは、流体の侵入を防止し、また、他の粒子がシールを通過するのを防ぐ。実施形態の送達装置はまた、ハウジングの内部と外部の大気との間の圧力均等化をもたらす通気口または通気膜を含む。
【0031】
図3を参照すると、ハウジング20および基部22は、障壁24を形成する壁によって分割された内部空洞を、第1の空洞を形成する第1の内部空間26と第2の空洞を形成する第2の内部空間28とする。障壁24は、ハウジングないしカバーの一部であり、カバーと一体的に形成することができる。代替構成として、内部障壁は、基部と共に形成されるか、または基部とカバーに結合される別個のユニットとして形成することができる。図示の実施形態では、障壁24は、好ましくは、障壁24とリブ30との間の境界面が適切な封止方法を用いて密閉して接合されるように、基部22上の突出するリブ30に密封される。障壁24は、第1の内部空間26を第2の内部空間28から分離し、第2の内部空間から第1の内部空間に流体が侵入しないようにする。一実施形態によれば、第2の内部空間は、流体侵入に対して密封されていない。
【0032】
第1の内部空間26には、ポンプ機構36、力感知抵抗器、送達装置の動作を制御し、また、患者への薬剤の送達を制御および監視するための電子機器などの構成部品が含まれている。電子機器の例としては、半導体チップ、コントローラ、ダイオード、アンテナ、コイル、バッテリ、他の構成部品(例えば、抵抗器やコンデンサ)、ならびにパッチポンプ1を操作および制御し、ポンプを操作するために用いられる回路基板がある。当業者には容易に理解されるように、これらの構成部品、特に電子機器の適切な動作のための乾燥した環境であることが望ましい。第2の内部空間28には、カニューレ32などの挿入機構7および送達アセンブリが含まれている。一実施形態によれば、挿入機構7は患者の皮膚と接続し、第2の内部空間28は、密閉された環境でもなく液体密閉環境でもない。本技術分野で知られているように、様々な挿入機構を用いることができる。
【0033】
一実施形態によれば、第1の内部空間26の構成部品は、第2の内部空間28の構成部品とは異なる。それに代わって、第1の内部空間と第2の内部空間は、同じ構成部品のいくつかを共有することができる。例えば、ある実施形態では、容器4の一部が、第1および第2の内部空間の両方に配置される。容器と挿入機構7が障壁24によって分離される場合、2つの内部空間は、送達装置の効果的な動作および容器およびポンプ機構からの流体の移送のために流体的に連通する。
【0034】
送達装置は、薬剤を容器4に供給するための導管に接続された充填口を含むことができる。充填口は、第1の内部空間26または第2の内部空間28に配置することができるが、典型的には、第1の内部空間26に配置される。いくつかの実施形態では、充填口は、容器4から出る薬剤の流路の一部として機能する部分を含むことができる。
【0035】
使用中、送達装置の底面は患者の皮膚に向いている。いくつかの実施形態では、底面は、基部を患者の皮膚に取り外し可能に取り付ける接着剤を含む。代替の実施形態では、
図1に示されるように、接着パッド34が、患者の皮膚と底面の両方に接着する。典型的には、3M(商標)医療用テープ(例えば、製品番号1776)が接着剤として使用されるが、様々な種類の既知の工業用接着剤を用いることができる。接着剤は、望ましくない反応を防ぐために人間の皮膚との親和性を確保するように選択される。また、接着剤とインスリンが混ざった場合に備えて、接着剤とインスリンの適合性が考慮される。
【0036】
一実施形態のポンプ機構36は、インスリンなどの薬剤を容器からカニューレ32または可撓性カテーテルなどの送達アセンブリに送達するためのぜん動ポンプである。ポンプ機構36は、送達装置の少なくとも1つの構成部品と共に形成される。開示の実施形態では、ポンプ機構36は、基部22と共に形成される。
図4に示されるように、基部22は、内部空洞28に面する上面38と、使用中に患者に接触するために外向きの底面40とを有する。カニューレなどの送達機構は、カニューレが患者に挿入される底面40から、患者の意図された深さおよび位置に薬剤を送達するための選択された深さまで突出する。
【0037】
図4に示されるように、基部22の上面38は、第1の位置から第2の位置まで基部22を通って流路44を形成するための少なくとも1つの凹部42を含む。流路44を形成する凹部42は、基部22の平面と平行に延びる長手方向寸法を有した、実質的にU字形または溝形状を有することができる。図示の実施形態では、凹部42は、上面38から外向きの開放側を有する。流路44は、基部22の平面と平行な長手方向に延在し、装置における第1の位置から装置における第2の位置に流体を向かわせるように構成され配置される。図示の実施形態では、流路44は、入口端部46と出口端部48を有した凹部42によって形成される。図示の実施形態の流路44を形成する凹部42は、基部22の上面38に成形される。流路44は、入口端部46が薬剤を受け入れるために容器と連通し、出口端部48がカニューレ32などの送達機構と連通するよう、構成される。
【0038】
流路44は、可撓性膜50によって囲まれて、凹部42を囲んで基部22と膜50との間に流体密封の流路を形成し、流体が構成部品の間および入口端46と出口端48との間を通過するようにする。可撓性膜50は、上面38に結合され、
図4に示されるように凹部に重ねてこれを覆い、薬剤の流体密封の流路を形成する可撓性シートまたはフィルムとすることができる。膜50は、支持体の上面38および流路を形成する凹部に適合する形状を有する。図示の実施形態では、支持体である上面38は実質的に平坦であり、膜50は実質的に平坦である。膜50は、基部22の上面に取り付けられた底面と、基部22から離れる方向に向く上面とを有する。
【0039】
図示の実施形態では、凹部は、送達装置の空洞に面する、基部22の上面に形成される。他の実施形態では、別個のプレートが、そのプレートの上面に形成された凹部を備えることができる。さらにまた、プレートを適切な取り付け機構によって基部に結合することができる。
【0040】
継ぎ手52は、可撓性の導管54を受け入れるための開放端を有した、流路44の出口端部48における上面38上に形成される。図示の実施形態では、導管は、流路の出口端部と挿入機構のカニューレ32との間に延在して、カニューレに薬剤を供給し、患者に送達する。送達装置のカニューレは、薬剤を患者に導入するための管腔を有する。カニューレは、当技術分野で知られているように、中空鋼カニューレまたは可撓性カテーテルとすることができる。
【0041】
流路44の入口端部46における上面38上の継ぎ手56は、流路と連通する。図示の実施形態では、継ぎ手56は、容器と流路との間に延在する導管58を受け入れて、容器から流路の入口に薬剤を供給する。図示の実施形態では、流路は、基部22の平面と平行に延在して、基部の上面における2つの離間した位置の間で流体を誘導する。流路は、ハウジングの空洞に配置された、送達装置の動作構成部品間に位置し、この間で流体連通させる長さを有する。一実施形態では、流路は、第1の内部空間26と第2の内部空間28との間の流体連通をもたらすために、入口端部と出口端部が障壁壁24について反対側にあるように方向が合わされまたは配置される。
【0042】
図4を参照すると、ポンプ機構36は、カムアセンブリ60とカム従動子アセンブリ62を含んだ駆動アセンブリを含む。膜50は、基部22の上面に取り付けられ、可撓性ポリマーなどの可撓性材料でできており、カムアセンブリによって内側に歪むことができる。図示の実施形態のカムアセンブリ60は、回転する駆動シャフト69に取り付けられた複数の回転カム64、66、および68を含み、カムおよび駆動シャフトを、ポンプ機構を動作させる位置に配置する適切な支持体によって支持される。駆動シャフト69は、図示されるように、駆動モータ71に接続される。各カム部材64、66、68は、流体を入口端部46から出口端部48にポンプ送付するために、選択された時系列でカム従動子アセンブリのカム従動子を作動させるように配置された丸みのある突出部70を含む。
図4および
図5に示されるように、シャフト69には、3つのカム64、66および68が設けられている。各カムにおいて突出部70は、約120度の間隔をおいて配置されている。他の実施形態では、3つ以上のカムを設けることができ、ここで、突出部は、流路を通して流体をポンプ送りするよう膜と連続的に係合する。
【0043】
カム従動子アセンブリ62は、基部22の上面38に結合されて、膜50とカムアセンブリ60とに隣接してカム従動子アセンブリを支持する支持体72上に取り付けられる。図示の実施形態では、カム従動子アアセンブリ62は、それぞれのカム64、66、および68と係合するための、および膜50と係合するための個々の部材を有した一体部材である。カム従動子アセンブリ62は、それぞれのカム64、66、および68によって作動されるときに歪むのに十分な柔軟性を有する打ち抜き金属で作ることができる。カム従動子アセンブリの柔軟性によって、膜50との効率的な接触が可能となり、流路を閉じるために膜を歪ませる。他の実施形態では、膜は、カムアセンブリによって作動され得る形状記憶合金から作製することができる。
【0044】
図示されるカム従動子アセンブリ62は、支持体72に結合された本体部分74と、本体部分74から延びる可撓性脚として示される複数の可撓性部分とを有する。図示の実施形態では、脚76は、本体部分74の平面と平行な面で延在する。他の実施形態では、脚76は、本体部分から独立して、適切な支持体によって独立して支持される別個の部材によって形成され得る。図示の実施形態では、脚76は、本体部分74から出る片持ち梁形態であり、膜50を歪ませるためにそれぞれのカム64の突出部70が接触したときに歪むのに十分に柔軟なものである。脚76は、それぞれのカムに接触するための上面80と、流路44の長さ方向に沿った特定の位置で膜50に接触するための底面82と共に遠位端部78を有する。図示の実施形態における底面82は、流路44を形成する凹部42の形状および寸法と相補的な形状および寸法を備えた、一体的に形成された突起84を有する。図示の実施形態では、突起84は、凹部の断面構成に実質的に対応するドーム状の形状を形成する凸型形状を有する。
【0045】
図4に示されるように、凹部42は、凹部の底面に形成された複数の離間した凹状窪み86を有する。各窪み86は、カム64、66および68の間隔に対応する距離で離間し、カム従動子アセンブリ62の突起84の位置に対応する間隔で離間している。窪み86の形状および寸法は、突起84の形状および寸法と相補的である。送達装置の動作中、シャフト69はモータ71によって回転してカムを回転させ、突出部70が膜50に順次接触するようにする。突出部70は、カム従動子アセンブリ60の脚76を作動させる寸法を有し、その結果、膜が内側に歪んで順次に流路を閉じ、ぜん動のポンプ作用を生じさせる。
【0046】
膜50は、カムがそれぞれのカム従動子を作動させるときに流路を閉じるために流路の構造に押し下げて歪ませることができる可撓性材料によって形成される。膜は、例えば、流路を開くようにカム従動子による力が除かれるときに、元の構造に戻るのに十分な記憶を有したプラスチック材料とすることができる。カム従動子は、元の形状および構造に戻るのに十分な記憶を有する材料で作られ、膜が流路を開くために元の構造に戻ることを可能にする。
【0047】
図7は、膜50を凹部42内に歪ませて流路を閉じるようにカム従動子アセンブリ62の個別の脚76を作動させている第1のカム64を示している。カム64は、シャフトの少なくとも約240度の回転で流路を閉じるように構成される。
図8に示されるように、カムアセンブリは、第1のカム64の位置で閉じている間に、第2のカム66が回転してカム従動子アアセンブリの個別の脚部と接触してカム従動子を作動させ、第2のカム66の位置で流路を閉じるように構成されている。流路を閉じるための第2のカム66の作動は、流路の流体を、
図8の矢印で示される方向で流路の出口端部に向けて推し進める。
図9に示されるように、次いで、第3のカム68は、第1のカム64が流路を開く位置に回転し、第2のカム66がカム従動子と接触したままで第2のカムの位置で閉じた流路を保持する間、膜50を歪ませて第3のカム68の位置で流路を閉じるように個別のカム従動子と接触する。流路が第2のカムの位置で閉じられている間の第3のカムの作動によって、流体は、
図9に示される矢印の方向で流路の出口端部に向けて押し出される。このようにして、シャフト69およびカム64、66および68の回転によって流路が順次に閉じて開き、流路を通って流体を送ることができる。カム64、66および68は、流路の出口端部に向かう方向の流体流れを制御するために、流路がカムおよびカム従動子のうちの1組によって常に閉じられるように、シャフトにおいて構成されおよび配置される。
【0048】
図10は、ポンプ機構の別の実施形態を示す。この実施形態では、個々のカムおよびカム従動子90は、膜50の面に垂直な方向において直線運動でききるように適切な支持体に取り付けられる。カム従動子90のそれぞれは、それぞれのカム64、66、68に接触する第1の端部と、可撓性膜50に接触する第2の端部とを有する。カムの回転によって、膜を押し下げてぜん動のポンプ作用を生じさせる順次の動きが生成される。
図10に示されるように、ばね部材92は、カム従動子90が膜50からを離れる方向に付勢するように設けられる。
【0049】
図11は、各カムが個々のカム従動子と協働する別個のユニットである、ポンプ機構の別の実施形態を示す。図示の実施形態では、各カム部材94は、個別の駆動機構96に動作可能に接続される。駆動機構96は制御ユニット98に接続されて、駆動機構96およびそれぞれのカム部材94が適切な順序で作動され、ぜん動性ポンプ動作が生じる。この実施形態では、各カム部材は、別個の可撓性膜100に関連付けられる。カム従動子100は、前述の実施形態のように構成される。カム従動子のそれぞれは、膜の平面および流路の長手方向に垂直な直線方向に動き、膜に対して横方向または横切る方向の動きがないように構成される。
【0050】
図示されるように、ポンプアセンブリは、安定性を高め、せん断応力を低減し、ポンプ機構の潤滑剤および金属またはプラスチック部品との薬剤の接触を避けるために、ポンプ動作中に薬剤に接触する薬剤とは異なる材料の数を最小限に抑える。
【0051】
図示の実施形態では、流路は、送達装置の基部の上面に形成される。他の実施形態では、流路は、送達装置の空洞内に取り付けることができるか、または基部またはハウジングの壁に取り付けることができる、別個のプレートに形成することができる。流路およびポンプ機構は、送達装置の基部または他の部分に取り付けられた別個のユニットとして形成することができる。流路は、送達装置のハウジング内に取り付けることができる、カムアセンブリおよびカム従動子アセンブリをも支持する支持部材に形成することができる。送達装置は、いくつかの部品が再利用可能である間、様々な部品が使用後に交換または廃棄することができるように構成することができる。一例では、基部は、ポンプ機構から分離することができる流路を支持して、ポンプ機構を保持し、再利用することができる。基部は使用後に交換され、使用中の流路の汚染を避けることができる。
【0052】
送達装置は、長期間にわたって患者にインスリンを送達するのに特に適している。送達装置は、カニューレ36を患者に挿入するように作動される。ポンプは、インスリンを患者に導入する場合に、インスリンを容器4からカニューレ36に制御された速度で運ぶように作動される。
【0053】
図示の実施形態では、ポンプ機構は、流路を通って流体薬剤を前進させるためのマイクロカムアセンブリおよびマイクロカム従動子アセンブリを含む。他の実施形態では、ポンプアセンブリはカム従動子アセンブリを含まず、カム部材が膜に直接接触して、膜を流路に変位させてぜん動のポンプ作用を生じさせるようにする。
【0054】
図に示されるように、流路は、第1の内部領域26と第2の内部領域28との間の障壁24の下に延在することができる。このようにして、流路は、障壁24を直接通ることなく、異なる囲まれた領域間で流体または薬剤を運ぶことができる。
【0055】
流路は、射出成形などの成形プロセスによって、またはフライス加工などの切削プロセスによって、基部の面から凹むようにされる(または基部の面に彫り込まれる)。他の実施形態では、流路は、ハウジングのメインカバーに、またはハウジングの内部空洞内の基部に配置される。同様の流路は、装置内の複数の位置に配置することができる。流路の断面形状および寸法は、所望の流れ特性によって定められる。流路の例示的な断面形状には、正方形、長方形、および半円形が含まれる。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の断面形状を用いることができることが理解できる。
【0056】
本発明装置のいくつかの実施形態のみが示され、説明されているが、本発明の装置は、説明された実施形態に限定されない。代わりに、本発明の原則と精神から逸脱することなく、これらの実施形態に変更が行われ得ることは、当業者によって理解される。異なる実施形態は、それらが互いに矛盾しない限り、他の実施形態と組み合わせることができる。当業者は、他の多くの仕方で上述した、様々な例示的な実施形態の様々な要素の様々な技術的態様を容易に組み合わせることができ、それらは総て開示の範囲およびその均等物の内にあると見なされることに特に留意されたい。
【国際調査報告】