(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】アレルゲンを削減するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4188 20060101AFI20231018BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231018BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20231018BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231018BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231018BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
A61K31/4188
A61Q19/00
A61Q17/00
A61K8/49
A61P37/08
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521470
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 GB2021052602
(87)【国際公開番号】W WO2022074393
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518290582
【氏名又は名称】アクドット・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】コールストン,ロジャー・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ハウ,アンドリュー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】レンダーユー,ジェシカ・アリス
(72)【発明者】
【氏名】エッセリン,ニコラス・サージ・ジャッキー
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB03
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB13
(57)【要約】
本発明は、アレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法に関する。本発明はまた、アレルゲンのアレルギー作用の治療及び/又は予防に使用するためのククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法であって、アレルゲンを有効量のククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物と物理的に接触させる工程を含み、好ましくは、前記ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物の有効量は、0.00001~50、0.00001~10、0.00005~5、0.00005~0.5、0.00005~0.05、0.00005~0.005%w/wの範囲である非治療的方法。
【請求項2】
ククルビットウリルが、ククルビット[4]ウリル~ククルビット[20]ウリルのいずれか一つからなる群から選ばれる、請求項1に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項3】
アレルゲンをククルビットウリルの混合物と物理的に接触させる工程を含む、請求項1又は請求項2に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項4】
ククルビットウリルの混合物が、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル及びククルビット[8]ウリルを含む、請求項3に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項5】
ククルビットウリルの混合物が、35~75%w/wのククルビット[6]ウリル、10~45%w/wのククルビット[7]ウリル及び5~30%w/wのククルビット[8]ウリルを含む、請求項4に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項6】
アレルゲンが、花粉、昆虫、カビ、ヒト以外の哺乳動物、食品、パラゴムノキ、悪臭、及び芳香物質からなる群から選ばれる発生源に由来する、前記請求項のいずれか1項に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項7】
ヒト以外の哺乳動物が、ネコ、イヌ、ハムスター、モルモット、ウサギ、チンチラ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及び齧歯類からなる群から選ばれる、請求項6に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項8】
花粉が、カバノキ花粉、シカモアカエデ花粉、クリ花粉、ハンノキ花粉、ハシバミ花粉、ヒッコリー花粉、オーク花粉、オオアワガエリ花粉、ペレニアルライグラス、カモガヤ、ギョウギシバ、及びブタクサ花粉からなる群から選ばれる、請求項6に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項9】
昆虫が、イエダニ又はゴキブリである、請求項6に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項10】
カビが、アルテルナリア属、アスペルギルス属、クラドスポリウム属及びペニシリウム属からなる群から選ばれる、請求項6に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項11】
アレルゲンが、Der p 1、Der f 1、Der f 2、Der f 15、Der f 18、Fel d 1、Can f 1、Mus m 1、Rat n 1、Bla g 2、Alt a 1、Asp f 1、Bet v 1、Phl p 5、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1~6のいずれか1項に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項12】
アレルゲンが、Der p 1、Fel d 1、Can f 1、Bet v 1、及びPhl p 5からなる群から選ばれる、請求項11に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項13】
ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物が、粒子状組成物、液体もしくは固溶体組成物、又は液体もしくは固体懸濁液組成物の形態である、前記請求項のいずれか1項に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項14】
ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物が、ホームケア製品、パーソナルケア製品、洗濯用製品、塗料又はコーティング、及びエアフィルターからなる群から選ばれる製品の形態である、請求項1~12のいずれか1項に記載のアレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法。
【請求項15】
ヒト又はヒト以外の動物においてアレルゲンのアレルギー作用を治療及び/又は予防するのに使用するための、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法に関する。本発明はまた、アレルゲンのアレルギー作用の治療及び/又は予防に使用するためのククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物にも関する。
【背景技術】
【0002】
アレルゲンは、知覚されなければ身体に対して無害であるのに、免疫系が脅威と知覚して撃退しようとするため、異常に活発な免疫応答を引き起こす抗原の一種である。そのような応答はアレルギー反応として知られている。抗原は、タンパク質、短鎖オリゴペプチド及び多糖でありうる。脂質及び核酸はタンパク質及び多糖と結び付いて初めて抗原になる。多糖及び脂質は抗原としての資格を有するが、それら自体では免疫応答(抗原提示細胞によるT細胞の活性化)を引き起こさないため、免疫原ではない。さらに、小型ペプチドも免疫応答を引き起こさないため、ペプチドが免疫応答を誘導するには十分な大きさが必要である。
【0003】
アレルギーは3つの異なる方法で治療される。最も一般的な治療法は、アレルゲンを完全に回避することである。第二の選択肢は、アレルギー症状を治療するために抗ヒスタミン剤などの薬物療法を使用することよるものである。ただしアレルギーそのものの治療ではない。第三の治療選択肢は、身体が免疫グロブリンE(IgE)の産生を減らし、アレルゲンに対する長期耐性を構築するのを手助けすることによって実際のアレルギー状態に影響を及ぼす免疫療法である。IgEは免疫系によって産生される抗体で、アレルゲンに応答して、化学物質を放出する細胞に移動し、アレルギー反応を引き起こす。
【0004】
ありふれたアレルゲンは、イエネコ(飼いネコ)、イエイヌ(飼いイヌ)、及びイエダニに由来するものなどである。
【0005】
ネコタンパク質アレルゲンには、Fel d 1~Fel d 8として知られる8種類がある。Fel d 1は最も有名なネコアレルゲンで、ヒトのネコアレルギーの96%を占める。アレルギーを起こしにくい低アレルゲンネコを含め、すべてのネコはFel d 1を産生する。これらのアレルゲンの主な拡散法は、ネコの唾液又は鱗屑(フケ)を通じてで、それらが衣服に付着することによる。Fel d 1は、セクレトグロブリンファミリーの一部である。これは哺乳動物だけに見られるタンパク質で、主に皮脂腺から分泌される。Fel d 4とFel d 7はリポカリンで、Fel d 1に次ぐ最もありふれたネコアレルゲンであり、唾液腺で産生され、毛繕いの最中にネコの鱗屑に付着する。
【0006】
イエイヌのタンパク質アレルゲンとしては、Can f 1~Can f 7の7種類が認められているが、どちらもリポカリンであるCan f 1とCan f 2が2大アレルゲンで、イヌの鱗屑に存在する。
【0007】
ヨーロッパイエダニ(ヤケヒョウヒダニ)(Dermatophagoides pteronyssinus)由来のタンパク質アレルゲンDer p 1及びアメリカイエダニ(コナヒョウヒダニ)(Dermatophagoides farina)由来のDer f 1は、温帯気候における主なイエダニアレルギー源である。
【0008】
その他のタンパク質アレルゲンは樹木や草の花粉に由来するもので、シラカンバ(Betula verrucosa)花粉の主要抗原であるBet v 1、及びオオアワガエリ(Phleum pratense)に由来するPhl p 5がある。
【0009】
Barrowら(‘Cucurbituril-Based Molecular Recognition’,Chemical Reviews,115,22,12320-12406(2015))は、選択されたククルビットウリルによるアミノ酸及び短鎖ペプチドの認識について検討している。
【0010】
非タンパク質のアレルゲン又はアレルゲン源としては、アミルシンナマール(CAS番号122-40-7)、ベンジルアルコール(CAS番号100-51-6)、シンナミルアルコール(CAS番号104-54-1)、シトラール(CAS番号5392-40-5)、オイゲノール(CAS番号97-53-0)、ヒドロキシシトロネラ-ル(CAS番号107-75-5)、イソオイゲノール(CAS番号97-54-1)、アミルシンナミルアルコール(CAS番号101-85-9)、サリチル酸ベンジル(CAS番号118-58-1)、シンナマール(CAS番号104-55-2)、クマリン(CAS番号91-64-5)、ゲラニオール(CAS番号106-24-1)、ヒドロキシ-メチルペンチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド(CAS番号31906-04-4)、アニシルアルコール(CAS番号105-13-5)、桂皮酸ベンジル(CAS番号103-41-3)、ファルネソール(CAS番号4602-84-0)、2-(4-tert-ブチルベンジル)プロピオンアルデヒド(CAS番号80-54-6)、リナロール(CAS番号78-70-6)、安息香酸ベンジル(CAS番号120-51-4)、シトロネロール(CAS番号106-22-9)、ヘキシルシンナムアルデヒド(CAS番号101-86-0)、d-リモネン(CAS番号5989-27-5)、メチルヘプチンカーボネート(CAS番号111-12-6)、3-メチル-4-(2,6,6-トリ-メチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン(CAS番号127-51-5)、オークモス及びツリーモスエキス(CAS番号90028-68-55)、ツリーモスエキス(CAS番号90028-67-4)(化粧品に対する2009年11月30日の欧州議会・理事会規則(EC)第1223/2009号(アネックスIII))からなる群から選ばれる芳香物質などが挙げられる。アレルゲンとなる更なる芳香物質は、オレンジ果皮油(Citrus sinensis peel oil)(CAS番号97766-30-8/8028-48-6)(リモネンがアレルゲン)、ラベンダー油(Lavendula offinialis oil)(CAS番号8000-28-0/90063-37-9)、ジャスミン油(Jasminum grandiflorum oil)(CAS番号8022-96-6)、セイヨウハッカ油(Mentha piperita oil)(CAS番号8006-90-4/84082-70-2)、及びバラ油(rose flower oil)(CAS番号90106-38-0/8007-01-0)である。
【0011】
アレルギー反応の発症前にアレルゲンに対抗する又は中和するための手段が長年求められてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Barrowら,Chemical Reviews,115,22,12320-12406(2015)
【発明の概要】
【0013】
本発明の第一の側面において、アレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法を提供する。該方法は、アレルゲンを、有効量のククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物と物理的に接触させる工程を含む。
【0014】
‘アレルギー作用’と言う場合、ヒト又はヒト以外の動物、例えば哺乳動物におけるそのような作用を意味する。適切なヒト以外の哺乳動物の例は、イエイヌ又はイエネコである。
【0015】
本発明の第二の側面において、ヒト又はヒト以外の動物(例えば哺乳動物)においてアレルゲンのアレルギー作用を治療又は予防するのに使用するためのククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物を提供する。
【0016】
理論に拘束されるわけではないが、本発明者らは、樽型分子でカルボニル基をその樽の入口に有するククルビットウリルがアレルゲン上の化学基と複合体を形成し、アレルギー反応を引き起こすその能力を妨害すると考えている。
【0017】
本発明を図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、Oderase
RTM(Aqdot Limited社、英国ケンブリッジ)として販売されているエアフレッシュナー中の混合ククルビットウリル(CB[n])の様々な濃度(ppm)についてのアレルゲン阻害率%を示す。
【
図2】
図2は、AqFresh
RTM(Aqdot Limited社、英国ケンブリッジ)として販売されている混合ククルビットウリル(CB[n])の様々な濃度(ppm)についてのアレルゲン阻害率%を示す。
【
図3】
図3は、バリアなし対照に対する寒天中のアレルゲンの削減率%w/wを示す。
【
図4】
図4は、水で湿らせた布と比較した、1%w/wのAqFresh
RTM水性懸濁液で湿らせた布で拭いた後のヒト毛髪上のアレルゲンの正味削減率%w/wを示す。
【
図5】
図5は、水による前処理対照と比較した、1%w/wのAqFresh
RTM水性懸濁液で湿らせた布で予め拭いたヒト毛髪上のアレルゲン%w/wを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一の側面において、アレルゲンのアレルギー作用を削減又は排除するための非治療的方法を提供する。該方法は、アレルゲンを、有効量のククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物と物理的に接触させる工程を含む。
【0020】
ククルビットウリルはキャビタンドファミリーの一員で、一般的なククルビットウリル構造は、メチレン架橋によって連結されたグリコールウリルサブユニットの環状配置に基づいている。
【0021】
ククルビットウリル化合物の製造及び精製については当該技術分野で十分に記載されている。例えば、Lagonaら(Angewandte Chemie Int.Ed.,44,31,4844-4870(2005))は、ククルビットウリルファミリーに含まれる誘導体及び類似体を含むククルビットウリル化合物の合成及び性質について検討している。
【0022】
例えば、ククルビット[8]ウリル(CB[8];CAS 259886-51-6)は、樽型のコンテナ分子で、8個の反復グリコールウリル単位と479A3の内部空洞容積を有する(下記構造参照)。CB[8]は標準技術を用いて容易に合成され、市販もされている(例えば、Sigma-Aldrich社、米国ミズーリ州)。
【0023】
【0024】
ククルビットウリルは、好ましくは、ククルビット[4]ウリル~ククルビット[20]ウリルのいずれか一つからなる群から選ばれる。好ましくは、ククルビットウリルは、異なるククルビットウリルの混合物として提供される。従って、ククルビットウリルは二つ以上のククルビットウリルの混合物として存在し、前記混合物は、ククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル、及びククルビット[8]ウリルから選ばれる少なくとも二つ、好ましくは少なくとも三つの異なるククルビットウリルを含む。具体的には、ククルビットウリルの混合物は、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル及びククルビット[8]ウリルを含みうる。
【0025】
ククルビット[5]ウリル、ククルビット[6]ウリル、ククルビット[7]ウリル、及びククルビット[8]ウリルに加えて、他のククルビットウリルが存在してもよい。例えば、該混合物はさらに、CB[n]のククルビットウリル(式中、nは4又は9~20の整数)、例えば、ククルビット[9]ウリル、ククルビット[10]ウリル、ククルビット[11]ウリルなどを含みうる。例えば、該混合物はさらに、ククルビット[4]ウリルもしくはククルビット[9]ウリル、又はククルビット[4]ウリルとククルビット[9]ウリルを含みうる。
【0026】
ククルビット[5]ウリルが存在する場合、ククルビット[5]ウリルの濃度は、ククルビットウリルの全重量を基にして、約0.01~約99%w/w、さらに詳しくは約0.05~約75%w/w、さらに詳しくは約0.05~約50%w/w、さらに詳しくは約0.05~約30%w/w、さらに詳しくは約0.05~約10%w/w、さらに詳しくは約0.05~約5%w/w、さらに詳しくは約0.05~約1%w/w、さらに詳しくは約0.05~約0.1%w/wでありうる。
【0027】
ククルビット[6]ウリルが存在する場合、ククルビット[6]ウリルの濃度は、ククルビットウリルの全重量を基にして、約0.1~約99%w/w、さらに詳しくは約1~約75%w/w、さらに詳しくは約5~約65%w/w、さらに詳しくは約20~約65%w/w、さらに詳しくは約40~約65%w/w、さらに詳しくは約50~約60%w/wでありうる。
【0028】
ククルビット[7]ウリルが存在する場合、ククルビット[7]ウリルの濃度は、ククルビットウリルの全重量を基にして、約0.1~約99%w/w、さらに詳しくは約5~約75%w/w、さらに詳しくは約10~約60%w/w、さらに詳しくは約10~約45%w/w、さらに詳しくは約15~約35%w/wでありうる。一態様において、CB[7]の濃度は、ククルビットウリルの全重量を基にして、45%w/w未満である。
【0029】
ククルビット[8]ウリルが存在する場合、ククルビット[8]ウリルの濃度は、ククルビットウリルの全重量を基にして、約0.1~約99%w/w、さらに詳しくは約0.5~約75%w/w、さらに詳しくは約1~約30%w/w、さらに詳しくは約5~約25%w/w、さらに詳しくは約15~約25%w/wでありうる。
【0030】
一態様において、ククルビットウリルの混合物は、35~75%w/wのククルビット[6]ウリル、10~45%w/wのククルビット[7]ウリル及び5~30%w/wのククルビット[8]ウリルを含む。
【0031】
ククルビットウリルの変異体は、グリコールウリルに構造的に類似した一つ又は複数の反復単位を有する構造を含みうる。反復単位はエチルウレア単位などでありうる。すべての単位がエチルウレア単位の場合、その変異体はヘミククルビットウリルである。変異体はヘミククルビット[12]ウリルでありうる(下記、Lagonaら(Angewandte Chemie Int.Ed.,44,31,4844-4870(2005))も参照)。
【0032】
【0033】
ククルビットウリルの誘導体は、1、2、3、4個又はそれ以上の置換グリコールウリル単位を有する構造である。置換ククルビットウリル化合物は下記構造によって表すことができる。
【0034】
【0035】
式中、nは4~20の整数であり;
そして、各グリコールウリル単位について:
各Xは、O、S又はNR3であり、そして
-R1及び-R2は、それぞれ独立に、-H、及び以下の置換されていてもよい基:-R3、-OH、-OR3、-COOH、-COOR3、-NH2、-NHR3及び-N(R3)2から選ばれ、前記-R3は、C1-20アルキル、C6-20カルボアリール、及びC5-20ヘテロアリールから独立に選ばれるか、又は-R1及び/又は-R2が-N(R3)2の場合、二つの-R3は一緒になってC5-7ヘテロサイクリック環を形成し;又は-R1及び-R2は共にC4-6アルキレンで、ウラシルフレームと一緒になってC6-8炭素環を形成する。
【0036】
一態様において、グリコールウリル単位の一つは置換グリコールウリル単位である。従って、-R1及び-R2は、n-1個のグリコールウリル単位について、それぞれ独立に-Hである。
【0037】
一態様において、nは、5、6、7、8、9、10、11又は12である。別の態様において、nは、5、6、7又は8である。
【0038】
一態様において、各XはOである。別の態様において、各XはSである。
【0039】
一態様において、R1及びR2は、それぞれ独立にHである。
【0040】
一態様において、各単位について、R1及びR2の一方はHであり、他方は、-H及び以下の置換されていてもよい基:-R3、-OH、-OR3、-COOH、-COOR3、-NH2、-NHR3及び-N(R3)2から独立に選ばれる。別の態様において、一単位について、R1及びR2の一方はHであり、他方は、-H及び以下の置換されていてもよい基:-R3、-OH、-OR3、-COOH、-COOR3、-NH2、-NHR3及び-N(R3)2から独立に選ばれる。この態様において、残りのグリコールウリル単位は、R1及びR2がそれぞれ独立にHであるようなものである。
【0041】
好ましくは、-R3は、C1-20アルキル、最も好ましくはC1-6アルキルである。C1-20アルキル基は、直鎖及び/又は飽和でありうる。各基-R3は、独立に非置換でも又は置換されていてもよい。好適な置換基は、-R4、-OH、-OR4、-SH、-SR4、-COOH、-COOR4、-NH2、-NHR4及び-N(R4)2から選ばれ、前記-R4は、C1-20アルキル、C6-20カルボアリール、及びC5-20ヘテロアリールから選ばれる。置換基は、-COOH及び-COOR4から独立に選ばれうる。
【0042】
一部の態様において、-R4は-R3と同じでない。一部の態様において、-R4は好ましくは非置換である。
【0043】
-R1及び/又は-R2が-OR3、-NHR3又は-N(R3)2の場合、-R3は好ましくはC1-6アルキルである。一部の態様において、-R3は、置換基-OR4、-NHR4又は-N(R4)2で置換されている。各-R4はC1-6アルキルであり、それ自体好ましくは置換されている。
【0044】
ククルビットウリルの誘導体又は変異体は、それらの溶解性、媒体中での分散性、そしてより一般的にはそれらの製剤及び取扱いがククルビットウリルよりも改善されているため、好適であることが多い。
【0045】
ククルビットウリル、その誘導体又はその変異体がアレルゲンと接触すると、アレルゲン-ククルビットウリル複合体が形成され、その結果、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンの能力が不活化されると考えられる。
【0046】
ククルビットウリル、その誘導体及びその変異体は単一分子体として存在するが、特に溶液中にある場合、それらは実際的には、粒子、特に多孔質粒子を形成することが多い。粒子はその後、(粒子の)凝集体を形成できる。単一分子体の形態であるか、粒子の形態であるか、又は粒子の凝集体の形態であるかに関わらず、ククルビットウリル、その誘導体及びその変異体とアレルゲンとの間で複合体化が起こり、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンの能力が破壊されると期待される。
【0047】
一定の場合において、ククルビットウリルはゲスト分子のホストとなり、ゲスト分子は、ククルビットウリルがアレルゲンと複合体を形成すると分子交換によって放出される。一態様において、ゲスト分子は家庭用ケア又はパーソナルケアに使用される分子である。特に、ゲスト分子は芳香分子である。ゲスト分子はククルビットウリルに物理的に結合し、ククルビットがアレルゲンと複合体を形成すると放出される。適切な芳香分子は当業者に公知であり、WO2017/141030(Aqdot limited社)の12~31ページに記載されている。
【0048】
ククルビットウリルと複合体を形成する場合、アレルゲンはククルビットウリルに物理的に結合されると考えられる。‘物理的に結合’という用語は、ファンデルワールス力による結合、疎水性結合、及び水素結合などのその他の種類の物理的結合を含む。‘物理的に結合’されることによって、多数の化学構造を有する多数のアレルゲンと複合体を形成できる。反応基を持たないアレルゲンとも複合体を形成できる。
【0049】
ククルビットウリル-アレルゲン複合体は、三元又は二元複合体でありうる。従って、ククルビットウリルは、その空洞を介して1個又は2個のアレルゲン分子を結合できる。ククルビットウリルが2個のアレルゲン分子を保持している場合、そのアレルゲン分子は同じでも又は異なっていてもよい。2個のアレルゲン分子を結合できるククルビットウリルは、単一のアレルゲン分子とも安定な二元複合体を形成することができる。三元ゲスト-ホスト複合体の形成は、中間体の二元複合体を経由して進行すると考えられている。
【0050】
一態様において、ククルビットウリルは三元複合体を形成できる。例えば、ククルビット[8]ウリルは三元複合体を形成できる。別の態様において、ククルビットウリルは二元複合体を形成できる。ククルビット[8]ウリルも二元複合体を形成できる。
【0051】
一態様において、ククルビットウリルは三元及び二元複合体を形成できる。例えば、ククルビット[8]ウリルは、ゲストの性質に応じて、三元又は二元複合体を形成できる。
【0052】
好ましくは、本発明の第一の側面の非治療的方法に使用される、すなわち好ましくはアレルゲンと接触されるククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物の有効量は、0.00001~50、0.00001~10、0.00005~5、0.00005~0.5、0.00005~0.05、0.00005~0.005%w/wの範囲である。
【0053】
アレルゲンは、分類学的分類の動物界、菌界及び植物界に由来する。テルペン又はテルペンの酸化誘導体などの選択された揮発性有機化合物(VOC)もアレルゲンと見なされる。好ましくは、アレルゲンは、花粉(樹木及び草などの主に風媒植物(花粉の空中分散に頼る植物)由来)、昆虫、カビ、ヒト以外の哺乳動物、食品、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、悪臭及び芳香物質からなる群から選ばれる発生源に由来する。
【0054】
ヒト以外の哺乳動物は、ネコ、イヌ、ハムスター、モルモット、ウサギ、チンチラ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、及び齧歯類からなる群から選ばれうる。
【0055】
花粉は、カバノキ花粉、シカモアカエデ花粉、クリ花粉、ハンノキ花粉、ハシバミ花粉、ヒッコリー花粉、オーク花粉、オオアワガエリ花粉、ペレニアルライグラス、カモガヤ、ギョウギシバ、及びブタクサ花粉からなる群から選ばれうる。
【0056】
昆虫は、イエダニ(例えばコナヒョウヒダニ(アメリカイエダニ)(Dermatophagoides farina)及び/又はヤケヒョウヒダニ(ヨーロッパイエダニ)(Dermatophagoides pteronyssinus))又はゴキブリ(例えばチャバネゴキブリ)でありうる。
【0057】
カビは、アルテルナリア属(例えば、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(アルテルナリア植物腐朽菌))、アスペルギルス属(例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)(普通のカビ))、クラドスポリウム属、及びペニシリウム属(例えば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum))からなる群から選ばれうる。
【0058】
食品は、魚類、甲殻類、穀類(例えば、オート麦、小麦、トウモロコシ、米、ライ麦及び大麦)、及びラッカセイ(Arachia hypogaea)からなる群から選ばれうる。ラッカセイタンパク質アレルゲンは、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 5、Ara h 8及びAra h 9からなる群から選ばれうる。
【0059】
パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)の一般的なタンパク質アレルゲンは、Hev b 1、Hev b 3、Hev b 5、及びHev b 6.02である。
【0060】
“悪臭”という用語は、日常生活の中でしばしば遭遇し、起源も様々な不快臭を指す。典型的な悪臭は、制御されていない産業活動から、ヒト及びペットの身体、例えば、汗及び排泄物から、台所及び食品加工から、タバコの煙から、そしてカビから発する臭気を含む。ヒトが最も不快に感じる悪臭のいくつかは、汗;糞便;尿;濡れたペット;調理臭、特にニンニク、キャベツ、魚及びタマネギなどである。悪臭は、消費者製品、例えば、石鹸、洗剤、シャンプー及びコンディショナーに含まれる脂肪酸及び脂肪酸誘導体から発生することもある。特に望ましくない悪臭のその他の例は、脱毛クリーム(硫黄化合物)から生ずるものである。WO2017/141029(Aqdot Limited社)には悪臭分子の例が10~12ページに開示されている。
【0061】
WO2017/141030(Aqdot Limited社)には芳香物質又は芳香分子の例が12~31ページに開示されている。
【0062】
アレルギー反応は、一つの供給源由来の化合物が別のアレルゲン源由来のアレルゲンに類似している場合の交差反応性によって引き起こされることもある。その結果、ホストの免疫系が化合物とアレルゲンを区別できず、ホストが化合物に暴露された場合もアレルギー反応がもたらされる。従って、適切なアレルゲンには、既知のアレルゲンに類似しているが既知アレルゲンの供給源とは異なる供給源に由来する化合物も含まれる。
【0063】
具体的に、アレルゲンは、Der p 1(ヤケヒョウヒダニ(ヨーロッパイエダニ)(Dermatophagoides pteronyssinus)由来)、Der f 1(コナヒョウヒダニ(アメリカイエダニ)(Dermatophagoides farina)由来)、Der f 2、Der f 15、Der f 18、Fel d 1(イエネコ(Felis domesticus)(F. catus)由来)、Can f 1(イエイヌ(Canis familiaris)(C. lupus familiaris)由来)、Mus m 1(ハツカネズミ(Mus musculus)(イエネズミ)由来)、Rat n 1(ドブネズミ(Rattus norvegicus)由来)、Bla g 2(チャバネゴキブリ(Blattella germanica)(ドイツゴキブリ)由来)、Alt a 1(アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(アルテルナリア植物腐朽菌)由来)、Asp f 1(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)(普通のカビ)由来)、Bet v 1(シラカンバ(Betula verrucosa)、ヨーロッパシラカンバ(Betula pendula)由来)、Phl p 5(オオアワガエリ(Phleum pratense)由来)、及びそれらの混合物からなる群から選ばれうる。特に、アレルゲンは、Der p 1、Fel d 1、Can f 1、Bet v 1、及びPhl p 5からなる群から選ばれうる。
【0064】
一態様において、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物は、粒子状組成物(例えば、粉末の形態又は顆粒として)、液体又は固溶体組成物、液体又は固体懸濁液組成物(例えばエマルションの形態)、又はゲルの形態である。
【0065】
より具体的には、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物は、ホームケア製品(例えば、タブレット、ワイプ、スポンジ、又はスプレーの形態)、パーソナルケア製品、洗濯用製品(例えば、タブレット、カプセル又はスプレーの形態)、塗料又はコーティング、個人用保護具(例えば、手袋、フェースマスク、及びガウン)、及びエアフィルターからなる群から選ばれる製品の形態でありうる。
【0066】
従って、前述の組成物又は製品は、当業者に公知の一つ又は複数の添加剤、例えば、保存剤、染料、顔料、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、増粘剤、レオロジー調整剤、ポリマー、及び抗酸化剤も含みうる。組成物又は製品の製造法は当業者に周知である。
【0067】
製品は、クレンジング組成物(例えば、洗濯用洗剤、硬質表面用クリーナー、石鹸、又はシャンプー、カーペットクリーナー)、液体柔軟剤(例えば、布用又は毛髪用コンディショナー)、柔軟仕上げ剤シート、布用消臭剤、エアフレッシュナー(消臭スプレー)、脱臭組成物、高級香料、ボディーミスト、クレンジング用ワイプ又はモップ、スタイリングジェル、吸湿剤、エアフィルター(不織布及び織布)、繊維仕上げ用製品、ブラシ、ペット製品(例えば、クレンジング組成物、液体柔軟剤、ブラシ、及び脱臭組成物)などでありうる。
【0068】
一態様において、組成物又は製品は、WO2017/141029(Aqdot Limited社)に記載されているように、悪臭中和特性(すなわち、悪臭源に暴露された者による悪臭知覚の強度の有意な減少)も提供しうる。
【0069】
従って、組成物又は製品は、一態様において、ククルビットウリルのほかに、悪臭の中和に有用な一つ又は複数の分子、分子の混合物又はポリマーを含みうる。悪臭の中和に有用な適切な分子、分子の混合物又はポリマーは当業者には公知で、他のホストタイプの分子を含む。例えば、シクロデキストリン、カリックスアレーン及びクラウンエーテルといったキャビタンドファミリの他のメンバーがククルビットウリルと組み合わせて使用できる。更なる適切なクラスの分子又は化合物には木炭も含まれる。
【0070】
本発明の第二の側面において、ヒト又はヒト以外の動物(例えば哺乳動物)においてアレルゲンのアレルギー作用を治療及び/又は予防するのに使用するための、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物を提供する。
【0071】
具体的には、ヒト又はヒト以外の動物におけるアレルゲンのアレルギー作用の治療は、ヒスタミンと、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物との複合体化によって達成できる。ヒスタミンは、外来病原体に対する免疫応答の一部で、炎症反応に関与し、痒みのメディエーターとして中心的役割を果たしている。従って、ヒスタミンと、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物との複合体化によってヒスタミンの活性を少なくとも抑制することは、アレルギー反応の影響を削減すると期待される。
【0072】
あるいは、ヒト又はヒト以外の動物(例えば哺乳動物)においてアレルゲンのアレルギー作用を治療及び/又は予防するための方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に、有効量のククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物を投与することを含む。
【0073】
治療薬の投与及び投与計画の決定の様式は当業者に周知である。
【0074】
あるいは、ヒト又はヒト以外の動物(例えば哺乳動物)におけるアレルゲンのアレルギー作用を予防するための医薬を製造するための、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物の使用を提供する。
【0075】
本発明の第二の側面の一態様において、ククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物は、鼻腔用又は喉用スプレーの形態でありうる。鼻腔用スプレーに通常使用される賦形剤は、水、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸、コハク酸二ナトリウム、ピログルタミン酸(PCA)、2-フェニルエタノール、亜鉛EDTA、酢酸亜鉛、及びPolysorbate 80などの非イオン性界面活性剤又は乳化剤などである。
【0076】
本発明の第二の側面で使用される、すなわち好ましくはアレルゲンと接触されるククルビットウリル、その誘導体、その変異体又はそれらの混合物の濃度は、0.00001~50、0.00001~10、0.00005~5、0.00005~0.5、0.00005~0.05、0.00005~0.005%w/wの範囲でありうる。
【実施例】
【0077】
実施例1:動物タンパク質アレルゲン
アレルゲンは、MARIARTMアレルゲンアッセイ(Indoor Biotechnologies Inc.社、米国バージニア州)及びLuminex MAGPIX又はxMAP 100/200コンパクト蛍光検出システム(Luminex Corporation社、米国テキサス州)を用いて同定及び定量した。使用のための詳細な説明はアッセイと共に提供する。
【0078】
MARIARTMアレルゲンアッセイは、アレルゲンの定量に使用される従来の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で使用されるのと同じ(又は同等の)抗体の組合せを用いる室内アレルゲンのためのマルチプレックスアレイである。捕捉抗体が、フルオロフォアで内部標識されたポリスチレンビーズに共有結合されている。異なるビーズタイプを異なる抗体と組み合わせることで、1回の試験で数種類のアレルゲンの同時測定が可能となる。Earleら(J.Allergy Clin.Immunol.,119,2,428(2007))は、MARIARTMアレルゲンアッセイの詳細な説明を提供している。
【0079】
Luminex MAGPIX又はxMAP 100/200コンパクト蛍光検出システムは、フローサイトメトリーを用いてビースを分離し、二つのレーザーを用いてビーズを励起し、個々のビースの色と色強度に従って出力を分析することによって蛍光ビーズベースのアッセイを分析する。
【0080】
主要なイエダニアレルゲンDer p 1、ネコアレルゲンFel d 1、及びイヌアレルゲンCan f 1を含有するアレルゲンマスター混合物をアッセイ説明書に従って調製した。サンプルは、アレルゲンマスター混合物を、OderaseRTM(Aqdot Limited社、英国ケンブリッジ)として販売されている、混合ククルビットウリルを含むエアフレッシュナー、又はAqFreshRTM(Aqdot Limited社、英国ケンブリッジ)として販売されている混合ククルビットウリルと、1重量部のアレルゲンマスター混合物:4重量部のOderaseRTM又はAqFreshRTMの比率で混合し、原液、1/10、1/100及び1/1000の4種類の異なる希釈率で希釈し、ローラーミキサー上、室温(20~25℃)で1時間インキュベートすることによって調製した。OderaseRTM は、0.5%w/wのAqFreshRTM、水、キサンタンガム及びフェノキシエタノールを含む。AqFreshRTMは、およそ35~75%w/wのククルビット[6]ウリル、10~45%w/wのククルビット[7]ウリル及び5~30%w/wのククルビット[8]ウリルと、1%w/w未満のククルビット[5]ウリルを含む。AqFreshRTMは0.5%w/w水性分散液として提供された。
【0081】
インキュベーション後、サンプル及びマスター混合物中のアレルゲンを、Luminex MAGPIX又はxMAP 100/200コンパクト蛍光検出システム(Luminex Corporation社、米国テキサス州)を用いて同定及び定量した。アレルゲンマスター混合物を含まないOderaseRTM又はAqFreshRTMのサンプルについても、何らかのバックグラウンド作用を識別するために評価した。
【0082】
各希釈におけるアレルゲン濃度を、ククルビットを含まないアレルゲンマスター混合物の濃度と比較して、各サンプル中に残っているアレルゲンの量を評価し、阻害率を計算した。
【0083】
アッセイの結果を以下の表1~6と
図1及び2にまとめた。
【0084】
表1:OderaseRTMとして販売されているエアフレッシュナーの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と4重量部のOderaseRTM)でのヤケヒョウヒダニ(ヨーロッパイエダニ)(Dermatophagoides pteronyssinus)Der p 1の阻害率%
【0085】
【0086】
a 3回測定の平均
Der p 1については、すべての希釈OderaseRTMサンプルが高レベルの阻害を示したが、原液サンプルは希釈サンプルほど良好にはアレルゲン検出を阻害しなかった。最高レベルのアレルゲン阻害は1/100希釈のときで、検出可能なDer p 1アレルゲンに96.4%の削減をもたらした。
【0087】
表2:OderaseRTMとして販売されているエアフレッシュナーの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と4重量部のOderaseRTM)でのイエネコ(Felis domesticus)(F. catus) Fel d 1の阻害率%
【0088】
【0089】
a 3回測定の平均
Fel d 1に関しては、阻害は全サンプル希釈で極めて類似しており、1/100が最大阻害を示し、検出可能なFel d 1アレルゲンを90.1%削減した。
【0090】
表3:OderaseRTMとして販売されているエアフレッシュナーの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と4重量部のOderaseRTM)でのイエイヌ(Canis familiaris)(C. lupus familiaris) Can f 1の阻害率%
【0091】
【0092】
a 3回測定の平均
Can f 1に関しては、Der p 1と非常に類似した阻害パターンが見られ、原液サンプルは希釈製品ほど良好な阻害を示さなかった。1/100及び1/1000希釈で、Can f 1アレルゲン検出に、それぞれ97.5%及び98.3%の削減を示した。
【0093】
表4:AqFreshRTMの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と0.5%w/w水溶液として提供されたAqFreshRTM4重量部)でのヤケヒョウヒダニ(ヨーロッパイエダニ)(Dermatophagoides pteronyssinus)Der p 1の阻害率%
【0094】
【0095】
a 3回測定の平均
* LODは検出限界
Der p 1については、AqFreshRTMのすべての希釈がアレルゲン検出の阻害をもたらした。1/100希釈ではサンプル中に何のアレルゲンも検出されず(結果はアッセイの検出限界未満)、従って、アレルゲン検出を100%阻害したと考えられた。最小阻害は1/1000希釈で見られた。
【0096】
表5:AqFreshRTMの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と0.5%w/w水溶液として提供されたAqFreshRTM4重量部)でのイエネコ(Felis domesticus)(F. catus) Fel d 1の阻害率%
【0097】
【0098】
a 3回測定の平均
Fel d 1の阻害は、AqFreshRTMのすべての希釈にわたって見られたが、OderaseRTMとはあまり一致していなかった。ここでも1/100が最大阻害を示し、検出可能なFel d 1アレルゲンを97.3%削減した。
【0099】
表6:AqFreshRTMの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と0.5%w/w水溶液として提供されたAqFreshRTM4重量部)でのイエイヌ(Canis familiaris)(C. lupus familiaris) Can f 1の阻害率%
【0100】
【0101】
a 3回測定の平均
AqFreshRTMによるCan f 1の阻害は、全希釈にわたってOderaseRTMほど総合的ではなかったが、1/100希釈で最大阻害が観察され、検出可能なCan f 1アレルゲンの削減率は99.8%であった。
【0102】
OderaseRTM又はAqFreshRTMを単独で分析した場合、蛍光の影響、従ってマトリックスの影響は観察されなかった。
【0103】
実施例2:花粉タンパク質アレルゲン
実施例1に記載のアッセイを、ヨーロッパシラカンバの花粉アレルゲンBet v 1及びオオアワガエリ(Phleum pratense)の花粉アレルゲンPhl p 5で繰り返し、結果を以下の表7~9にまとめた。
【0104】
表7:OderaseRTMとして販売されているエアフレッシュナーの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と4重量部のOderaseRTM)でのヨーロッパシラカンバ(Betula verrucosa)(Betula pendula) Bet v 1の阻害率%
【0105】
【0106】
a 2回測定の平均
OderaseRTMによるBet v 1の阻害はOderaseRTMの全希釈で示された。しかしながら、原液製品は希釈製品ほど良好にはアレルゲン検出を阻害しなかった。二つの希釈製品とも同じように高レベルの阻害を示した。
【0107】
表8:OderaseRTMとして販売されているエアフレッシュナーの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と4重量部のOderaseRTM)でのオオアワガエリ(Phleum pratense)Phl p 5の阻害率%
【0108】
【0109】
a 2回測定の平均
OderaseRTMによるPhl p 5の阻害はOderaseRTMの全希釈で示されたが、原液製品による阻害はごく低レベルであった。しかしながら、OderaseRTMの希釈率が増大すると阻害率も増大し、1/100で90%を超える阻害を示した。
【0110】
表9:AqFreshRTMの混合ククルビットウリルによる、様々な希釈比率(原液製品は1重量部のアレルゲンマスター混合物と0.5%w/w水溶液として提供されたAqFreshRTM4重量部)でのヨーロッパシラカンバ(Betula verrucosa)(Betula pendula) Bet v 1の阻害率%
【0111】
【0112】
a 2回測定の平均
AqFreshRTMによるBet v 1の阻害は全希釈で示された。製品の希釈率が増大すると阻害率も増大し、1/100希釈で90%を超える阻害を示した。
【0113】
実施例3:皮膚モデルにおけるネコ(Fel d 1)、イヌ(Can f 1)、イエダニ(Der p 1)、樹木(Bet v 1)及び草(Phl p 5)アレルゲンの拡散防止におけるAqFresh
RTM
の1%w/w水性懸濁液の効果
皮膚表面を再現するために、寒天(0.9%生理食塩水で1.5%)を小矩形(約1×1cm)に切り出し、顕微鏡のスライドに移した。2本のVaselineRTM線を引いて、アレルゲンがAqFreshRTM懸濁液周辺の寒天に拡散しないようにした。‘バリア’として機能する湿潤寒天に隣接した各スライドに懸濁液を適用した。さらに、バリアを含有しない対照サンプルも含めた。懸濁液サンプルは四重に調製し、対照サンプルは三重に調製した。カバースリップをスライドの上に載せ、前述の液体アレルゲンマスター混合物をバリアに隣接するカバースリップの下にピペッティングした。アレルゲンマスター混合物は、精製された形態のネコ(Fel d 1)、イヌ(Can f 1)、イエダニ(Der p 1)、樹木(Bet v 1)及び草(Phl p 5)アレルゲンを含有していた。
【0114】
スライドを加湿チャンバで2時間、室温(約20~25℃)でインキュベートした後、スライドから寒天を注意深く取り出し、0.5mlのリン酸緩衝液-Tween入りのマイクロ遠心管に移した。寒天の各サンプルを短時間のボルテックス(30秒)に続いて室温で一晩穏やかな振盪により抽出し、各抽出サンプル内のアレルゲンの量を前述のIndoor Biotechnologies Inc.社(米国バージニア州)のMARIA(登録商標)アッセイを用いて測定した。
【0115】
結果を
図3に示す。バリアなし対照に対する寒天中のネコ(Fel d 1)、イヌ(Can f 1)、イエダニ(Der p 1)、樹木(Bet v 1)、草(Phl p 5)のそれぞれと、樹木(Bet v 1)と草(Phl p 5)の合計の結果、及び全アレルゲンの合計についての%w/w削減率が示されている。
【0116】
実施例4:ネコ/ペット被毛/毛髪上のネコ(Fel d 1)、イヌ(Can f 1)、イエダニ(Der p 1)、樹木(Bet v 1)及び草(Phl p 5)アレルゲンのレベル削減におけるAqFresh
RTM
の1%w/w水性懸濁液の効果
使用された毛髪は、長さ8インチ(約20センチメートル)の‘Julia Virgin 4 Bundles Straight Peruvian Hair Weave Deals Human Hair Extensions’(https://www.juliahair.com/julia-virgin-4-bundles-straight-peruvian-hair-weave-deals-human-hair-extensions.html)であった。アレルゲンマスター混合物は前述のように調製し、下記アレルゲン:ネコ(Fel d 1)、イヌ(Can f 1)、イエダニ(Der p 1)、草花粉(Phl p 5)及び樹木花粉(Bet v 1)を含有していた。
【0117】
何らかのアレルゲン汚染の可能性を排除するために、すべての毛髪と綿布(7×15cm)を温水中(洗剤なし)で洗浄してから使用した。毛髪の各試験サンプルは、アレルゲンを付着させるために、クリップで留めて‘深さ’と毛髪表面を増した3層の毛髪(7cm幅)で構成されていた。
【0118】
600μlのアレルゲンマスター混合物をマルチチャンネルピペットを用いて毛髪全体に均等に加えた。10mlの水又はAqFreshRTMの1%w/w水性懸濁液で綿布を湿らせた後、これを用いて毛髪を拭いた。全毛髪サンプルを、平らに置いたジップロック(登録商標)バッグ内の20mlのPBS+0.05%Tween中に室温(20~25℃)で抽出した。サンプルは合計2時間抽出し、抽出効率を最大にするために20分ごとに揉んだ。
【0119】
毛髪からのAqFreshRTMの1%w/w水性懸濁液を用いたアレルゲン除去の有効性を決定するために、
1.アレルゲンマスター混合物を前述のように毛髪上に適用し、45分間放置して乾燥させた。
2.綿布を10mlの水(対照)又は水中1%w/w AqFreshで湿らせ、これを用いて毛髪をその固定点から外側に、全領域/繊維が湿るまで(濡れない程度)拭いた。全毛髪サンプルを同じパターンに従って15回拭いた。
3.毛髪と布を卓上に30分間放置した。
4.毛髪上に残っているアレルゲン濃度を決定するために、全サンプルをアレルゲン抽出のための改変Indoor Biotechnologies Inc.(米国バージニア州)アッセイを用いて抽出し、前述のMARIA(登録商標)アレルゲンアッセイを用いて分析した。
5.全対照及びサンプルとも3回繰り返し試験した。
【0120】
AqFreshRTMの1%w/w水性懸濁液を用いた進行中のアレルゲン削減を決定するために、
1.綿布を10mlの水(対照)又は水中1%w/w AqFreshRTMで湿らせ、これを用いて各毛髪サンプルをその固定点から外側に、全領域/繊維が湿るまで(濡れない程度)軽く拭いた。全毛髪サンプルを同じパターンに従って15回拭いた。
2.アレルゲンマスター混合物を湿った毛髪サンプル(前述の通り)に適用し、室温(20~25℃)で45分間インキュベートした。
3.アレルゲン濃度を決定するために、毛髪サンプルをアレルゲン抽出のための改変Indoor Biotechnologies Inc.(米国バージニア州)アッセイを用いて抽出し、前述のMARIA(登録商標)アレルゲンアッセイを用いて分析した。
4.全対照及びサンプルとも3回繰り返し試験した。
【0121】
結果を
図4及び5に示す。それぞれ、水中1%w/w AqFresh
RTMを含む布で拭いた後の、水だけの対照と比較した各アレルゲンのレベルの正味削減率%w/w、及び毛髪サンプルを水中1%w/w AqFresh
RTMで前処理した場合の、水による前処理対照と比較した各アレルゲンについてのアレルゲン%w/wが示されている。
【0122】
水だけの場合と比較して、水中1%w/w AqFreshRTMを加えると、全アレルゲンの即時除去が23.5%(Der p 1)~32.3%(Bet v 1)改善され、Bet v 1のレベルの差は、対応のないt検定を用いて統計的に有意であった(p<0.05)。水だけの場合と比較して、水中1%w/w AqFreshRTMで前処理された毛髪サンプル上の各アレルゲンのアレルゲン重量の削減率は約8%であった。
【国際調査報告】