(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】密閉断熱タンク
(51)【国際特許分類】
B65D 90/02 20190101AFI20231018BHJP
F17C 3/06 20060101ALI20231018BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20231018BHJP
B67D 9/00 20100101ALN20231018BHJP
【FI】
B65D90/02 B
F17C3/06
B63B25/16 F
B67D9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521508
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021077768
(87)【国際公開番号】W WO2022074148
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デラノー セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】デルトル ブルーノ
【テーマコード(参考)】
3E083
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E083BB20
3E170AA08
3E170AA09
3E170AB29
3E170BA10
3E170DA02
3E170LA06
3E170VA07
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB02
3E172BB12
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172CA10
3E172CA21
3E172CA22
3E172CA32
3E172DA13
3E172DA23
(57)【要約】
本発明は液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクの壁(1)に関し、当該壁(1)は、少なくとも1つの断熱バリア(6)と、断熱バリア(6)に固定されて液化ガスと接触する密閉メンブレン(8)と、を備えており、断熱バリア(6)は、第1の断熱パネル(7)と、第1の断熱パネルの第1の縁部に沿って配置された第2の断熱パネル(7)と、を備えており、第1の断熱パネル(7)には少なくとも1つの第1のアンカー要素(20)が設けられていると共に、第2の断熱パネル(7)には少なくとも1つの第2のアンカー要素(20)が設けられており、第1及び第2のアンカー要素(20)には密閉メンブレン(8)が溶接されており、密閉メンブレン(8)は、平坦部(19)によって互いに離間したコルゲーション(17,18)を有し、平坦部(19)のうち少なくとも1つは第1の断熱パネル(7)と第2の断熱パネル(7)とに跨るように配置されると共に、第1のアンカー要素(20)と第2のアンカー要素(20)とに溶接されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクの壁(1)であって、
少なくとも1つの断熱バリア(6)と、前記断熱バリア(6)に固定されて前記液化ガスと接触する密閉メンブレン(8)と、を備えており、
前記断熱バリア(6)は、第1の断熱パネル(7)と、前記第1の断熱パネルの第1の縁部に沿って配置された第2の断熱パネル(7)と、を備えており、
前記第1の断熱パネル(7)には少なくとも1つの第1のアンカー要素(20)が設けられていると共に、前記第2の断熱パネル(7)には少なくとも1つの第2のアンカー要素(20)が設けられており、
前記第1及び第2のアンカー要素(20)には前記密閉メンブレン(8)が溶接されており、
前記密閉メンブレン(8)は、平坦部(19)によって互いに離間したコルゲーション(17,18)を有し、
前記平坦部(19)のうち少なくとも1つは前記第1の断熱パネル(7)と前記第2の断熱パネル(7)とに跨るように配置されると共に、前記第1のアンカー要素(20)と前記第2のアンカー要素(20)とに溶接されている
ことを特徴とする壁(1)。
【請求項2】
前記密閉メンブレン(8)は、第1の方向に対して平行に延在する第1のコルゲーション(17)と、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に対して平行に延在する第2のコルゲーション(18)と、を備えている、
請求項1記載の壁(1)。
【請求項3】
前記第1及び第2の断熱パネル(7)は平行六面体の形状を有し、前記第1及び第2の断熱パネル(7)はそれぞれ、前記第1の方向に対して平行な2つの相反対側の縁部と、前記第2の方向に対して平行な2つの相反対側の縁部と、を有する、
請求項1又は2記載の壁(1)。
【請求項4】
前記第1の断熱パネル(7)には複数の第1のアンカー要素(20)が設けられると共に、前記第2の断熱パネル(7)には複数の第2のアンカー要素(20)が設けられており、
前記平坦部(19)のうち複数の平坦部(19)が前記第1の断熱パネル(7)と前記第2の断熱パネル(7)とに跨るように配置されると共に、当該複数の各平坦部(19)はそれぞれ前記第1のアンカー要素(20)のうち1つと前記第2のアンカー要素(20)のうち1つとに溶接されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項5】
前記密閉メンブレン(8)は、プラグ溶接(22)又は透過溶接によって前記少なくとも1つの第1のアンカー要素(20)と前記少なくとも1つの第2のアンカー要素(20)とに溶接されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1のアンカー要素(20)及び前記少なくとも1つの第2のアンカー要素(20)はそれぞれ、前記第1及び第2の断熱パネル(7)のうち1つに形成された穿孔凹部に固定されたメタルプレートを備えている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項7】
前記メタルシートは正方形、方形又は円板の形状を有する、
請求項6記載の壁(1)。
【請求項8】
前記第1及び第2の断熱パネル(7)は、前記密閉メンブレン(8)の前記コルゲーション(17,18)側に弛緩スロットを有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1のアンカー要素(20)及び前記少なくとも1つの第2のアンカー要素(20)はそれぞれ、前記第1の断熱パネル(7)又は前記第2の断熱パネル(8)の縁部分であって前記第1又は第2の断熱パネル(7)の前記弛緩スロットのうち少なくとも1つによって画定された縁部分に配置されている、
請求項8記載の壁(1)。
【請求項10】
前記密閉メンブレン(8)は複数のコルゲート状メタルシート(16)を備えており、
前記各コルゲート状メタルシート(16)はそれぞれ、隣のコルゲート状メタルシート(16)の縁部に重ね溶接された縁部を有する、
請求項1から9までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項11】
前記第1の断熱パネル(7)と前記第2の断熱パネル(7)とに跨るように配置されると共に前記第1及び第2のアンカー要素(20)に溶接された前記平坦部は、1枚のコルゲート状メタルシート(16)から単一部材で作製されている、
請求項10記載の壁(1)。
【請求項12】
前記第1の断熱パネル(7)と前記第2の断熱パネル(7)とに跨るように配置されると共に前記第1及び第2のアンカー要素(20)に溶接された前記平坦部は、前記コルゲート状メタルシート(16)のうち1つのコルゲート状メタルシート(16)の第1の縁部分に属し、
前記第1の縁部分には、隣のコルゲート状メタルシート(16)の第2の縁部分が重なっており、
前記第1の縁部分は、第1のプラグ溶接部(22)によって前記第1のアンカー部材(20)に溶接されると共に、第2のプラグ溶接部(22)によって前記第2のアンカー部材(20)に溶接されており、
前記第2の縁部分は前記第2のプラグ溶接部(22)と前記第1のプラグ溶接部(22)の少なくとも一部とに重なると共に、前記第1の縁部分に密閉するように隅肉溶接されている、
請求項11記載の壁(1)。
【請求項13】
前記第1の断熱パネル(7)と前記第2の断熱パネル(7)とに跨るように配置されると共に前記第1及び第2のアンカー要素(20)に溶接された前記平坦部は、互いに重ね溶接された2つの隣り合うコルゲート状メタルシート(16)の第1の縁部分及び第2の縁部分から成る、
請求項10記載の壁(1)。
【請求項14】
前記第1の縁部分には前記第2の縁部分が重なり、前記第1の縁部分は溶接部によって前記第1のアンカー部材(20)に溶接されており、
前記第2の縁部分は前記第2のアンカー部材(20)に溶接されており、前記溶接部の少なくとも一部と重なり、前記第1の縁部分に密閉するように隅肉溶接されている、
請求項14記載の壁(1)。
【請求項15】
前記第1及び第2の断熱パネル(7)はそれぞれ、前記コルゲート状メタルシート(16)の縁部を向いた熱保護要素(23)を有する、
請求項10記載の壁(1)。
【請求項16】
前記熱保護要素(23)は、アルミニウムのシートから形成され、又は、少なくとも1つのアルミニウム箔に対して少なくとも1つのガラス繊維マットを設けたものを含む複合フィルムから形成されている、
請求項15記載の壁(1)。
【請求項17】
前記断熱バリア(6)は、前記第1の断熱パネル(7)の第2の縁部に沿って配置された第3の断熱パネル(7)と、前記第1の断熱パネル(7)の第3の縁部に沿って配置された第4の断熱パネル(7)と、前記第1の断熱パネル(7)の第4の縁部に沿って配置された第5の断熱パネル(7)と、を備えており、
前記第3の断熱パネル(7)には第3のアンカー要素(20)が設けられており、前記第4の断熱パネル(7)には第4のアンカー要素(20)が設けられており、前記第5の断熱パネル(7)には第5のアンカー要素(20)が設けられており、
前記密閉メンブレン(8)は、前記第1の断熱パネル(7)と前記第3の断熱パネル(7)とに跨るように配置された平坦部(19)であって、それぞれ前記第1のアンカー要素(20)のうち1つと前記第3のアンカー要素(20)のうち1つとに溶接された平坦部(19)と、前記第1の断熱パネル(7)と前記第4の断熱パネル(7)とに跨るように配置された平坦部(19)であって、それぞれ前記第1のアンカー要素(20)のうち1つと前記第4のアンカー要素(20)のうち1つとに溶接された平坦部(19)と、前記第1の断熱パネル(7)と前記第5の断熱パネル(7)とに跨るように配置された平坦部(19)であって、それぞれ前記第1のアンカー要素(20)のうち1つと前記第5のアンカー要素(20)のうち1つとに溶接された平坦部(19)と、を備えている、
請求項1から16までのいずれか1項記載の壁(1)。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の壁(1)を備えた密閉断熱タンク。
【請求項19】
船殻(72)と、当該船殻に配置された請求項18に記載の密閉断熱タンク(71)と、を備えた、流体を輸送するための船舶(70)。
【請求項20】
流体を移送するための移送システムであって、
請求項19記載の船舶(70)と、
前記船舶の船殻に配置された前記密閉断熱タンク(71)を浮体式又は沿岸貯蔵設備(77)に接続するように配置された断熱パイプライン(73,79,76,81)と、
前記断熱パイプラインを介して前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備から前記船舶の密閉断熱タンクへ、又は前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備へ流体を送るためのポンプと、
を備えていることを特徴とする移送システム。
【請求項21】
請求項19記載の船舶(70)の積込み又は揚げ荷を行うための方法であって、
断熱パイプライン(73,79,76,81)を介して浮体式又は沿岸貯蔵設備(77)から前記船舶の密閉断熱タンク(71)へ又は前記密閉断熱タンク(71)から前記浮体式又は沿岸貯蔵設備(77)へ流体を搬送する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの貯蔵及び/又は輸送用の密閉断熱タンクの分野、例えば-50℃~0℃等の温度の液化石油ガス(LPGとも称される)の輸送用、又は大気圧で約-163℃の液化天然ガス(LNG)の輸送用のタンクの分野に関する。
【0002】
上記のタンクは、沿岸又は浮体構造物に設置することができる。浮体構造物の場合、タンクは、当該浮体構造物の推進用燃料として用いられる液化ガスを入れるため又は液化ガスを輸送するためのものとすることができる。
【背景技術】
【0003】
従来技術から、支持構造に保持されたタンク壁を備えた密閉断熱タンクが公知となっており、このタンク壁はタンクの外側から内側に向かう厚さ方向に、支持構造に保持された二次断熱バリアと、二次断熱バリアに保持された二次密閉メンブレンと、二次密閉メンブレンに保持された一次断熱バリアと、一次断熱バリアに保持されたコルゲート状の一次密閉メンブレンと、を備えている。かかる密閉断熱タンクは、特に船舶等の浮体構造物に搭載される、液化天然ガス(LNG)等の液化ガスの輸送に特に使用することができる。
【0004】
有利にはコルゲーションが互いに垂直に延在する複数のコルゲート状シートを組み立てることによって一次密閉メンブレンを製造することが慣用手段となっている。このコルゲーションによって一次密閉メンブレンにある程度のフレキシビリティが与えられ、これにより一次密閉メンブレンは、熱的応力や機械的応力の作用を受けたときに変形することができ、かかる応力は特に、タンクに貯蔵された液化ガスによって生じる応力と、支持構造の変形に関連する応力である。一次密閉メンブレンは一次断熱バリアの断熱パネルに固定されている。この固定を行うため、各シートがそれぞれ一次断熱バリアの複数の断熱パネルに跨るように配置される。さらに、上述の複数のシートはその縁部に沿って互いに溶接接合されていると共に、当該シートの縁部に沿って、上記の断熱パネルに固定されたアンカー要素に溶接接合されている。具体的には、複数のシートは、当該シートの縁部に沿って各コルゲーションの両側に配置されたアンカー要素に溶接接合されている。
【0005】
出願人の企業は、上述のようなタンクでは、一次密閉メンブレンのコルゲーションにかかる応力が一様にならないことを観察した。特に、一次断熱バリアは不連続であり、すなわち複数の断熱パネルを並べて作製されるものであるため、支持構造が変形し、及び/又は、タンク内に貯蔵されている液化ガスにより生じた熱的応力や機械的応力の作用を受けたとき、一次断熱バリアの振舞いは一様にならない。よって出願人の企業は、第1の断熱パネルに固定された第1のアンカー要素と第2の断熱パネルに固定された第2のアンカー要素とに跨るゾーンに位置するコルゲーションは、他のコルゲーションより高い応力を受けることを観察した。ここで、特に一次密閉メンブレンの寿命を最大限にするため、一次密閉メンブレンのコルゲーション間において応力が可能な限り一様に分布することを保証することが重要となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の背景となる一思想は、一次密閉メンブレンが受ける応力が当該密閉メンブレンのコルゲーション間でより一様に分布する密閉断熱タンクを提案するという思想である。
【0007】
一実施形態では、本発明は液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクの壁に関するものであり、前記壁は、少なくとも1つの断熱バリアと、前記断熱バリアに固定されて前記液化ガスと接触する密閉メンブレンと、を備えており、前記断熱バリアは、第1の断熱パネルと、前記第1の断熱パネルの第1の縁部に沿って配置された第2の断熱パネルと、を備えており、前記第1の断熱パネルには少なくとも1つの第1のアンカー要素が設けられていると共に、前記第2の断熱パネルには少なくとも1つの第2のアンカー要素が設けられており、前記第1及び第2のアンカー要素には前記密閉メンブレンが溶接されており、前記密閉メンブレンは、平坦部によって互いに離間したコルゲーションを有し、前記平坦部のうち少なくとも1つは前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとに跨るように配置されると共に、前記第1のアンカー要素と前記第2のアンカー要素とに溶接されている。
【0008】
このようにして、密閉メンブレンにおける隣り合う断熱パネルに跨るように配置された平坦部は、当該断熱パネルを機械的に接続する機能を果たす。かかる構成は、当該断熱パネルが離れるのを阻止し、一次断熱バリア全体にわたって荷重支持構造の変形をより一様に分布させることに寄与する。実際、断熱バリアと密閉メンブレンとから構成される組立体の挙動は、断熱パネルの剛性が一般に密閉メンブレンの剛性より低いことにより定まる。よって、断熱パネルの変形を支配するのは密閉メンブレンの変形となる。これにより、密閉メンブレンのコルゲーションにかかる応力をより一様にすることができる。
【0009】
実施形態では、上記のタンク壁は以下の構成のうち1つ又は複数を具備することができる。
【0010】
一実施形態では、第1及び第2の断熱パネルの剛性は密閉メンブレンの平坦部の剛性より低い。これにより、断熱バリアの変形は密閉メンブレンの変形によって定まることが保証される。例えば、第1及び第2の断熱パネルの剛性は密閉メンブレンの平坦部の剛性の1/3である。
【0011】
一実施形態では、第1及び第2のアンカー要素の中心が互いに8~25cmの距離だけ、好適には10~20cmの距離だけ離間するように、当該第1及び第2のアンカー要素が配置される。
【0012】
一実施形態では、第1のアンカー要素は少なくとも第1の断熱パネルの第1の縁部に沿って配置されると共に、第2のアンカー要素は少なくとも、第1の断熱パネルの第1の縁部の隣の第2のパネルの縁部に沿って配置されている。
【0013】
一実施形態では、前記密閉メンブレンは、第1の方向に対して平行に延在する第1のコルゲーションと、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に対して平行に延在する第2のコルゲーションと、を備えている。
【0014】
一実施形態では、前記コルゲーションは連続している、すなわち途切れていない。
【0015】
一実施形態では、前記第1及び第2の断熱パネルは平行六面体の形状を有し、前記第1及び第2の断熱パネルはそれぞれ、前記第1の方向に対して平行な2つの相反対側の縁部と、前記第2の方向に対して平行な2つの相反対側の縁部と、を有する。
【0016】
一実施形態では、前記第1の断熱パネルには複数の第1のアンカー要素が設けられると共に、前記第2の断熱パネルには複数の第2のアンカー要素が設けられており、前記平坦部のうち複数の平坦部が前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとに跨るように配置されると共に、当該複数の各平坦部はそれぞれ前記第1のアンカー要素のうち1つと前記第2のアンカー要素のうち1つとに溶接されている。
【0017】
一実施形態では、前記密閉メンブレンは、プラグ溶接又は透過溶接(through-transmission welding)によって前記少なくとも1つの第1のアンカー要素と前記少なくとも1つの第2のアンカー要素とに溶接されている。
【0018】
一実施形態では、前記少なくとも1つの第1のアンカー要素及び前記少なくとも1つの第2のアンカー要素はそれぞれ、前記第1及び第2の断熱パネルのうち1つに形成された穿孔凹部に固定されたメタルプレートを備えている。
【0019】
一実施形態では、前記密閉メンブレンは複数のコルゲート状メタルシートを備えており、前記各コルゲート状メタルシートはそれぞれ、隣のコルゲート状メタルシートの縁部に重ね溶接された縁部を有する。
【0020】
一実施形態では、前記平坦部のうち前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとに跨るように配置されると共に前記第1及び第2のアンカー要素に溶接された少なくとも1つの平坦部は単一部材で、すなわち1枚のコルゲート状メタルシートから作製されている。
【0021】
一実施形態では、前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとに跨るように配置されると共に前記第1及び第2のアンカー要素に溶接された前記平坦部は、前記コルゲート状メタルシートのうち1つのコルゲート状メタルシートの第1の縁部分に属し、前記第1の縁部分には、隣のコルゲート状メタルシートの第2の縁部分が重なっており、前記第1の縁部分は、第1のプラグ溶接部によって前記第1のアンカー部材に溶接されると共に、第2のプラグ溶接部によって前記第2のアンカー部材に溶接されており、前記第2の縁部分は前記第2のプラグ溶接部と前記第1のプラグ溶接部の少なくとも一部とに重なると共に、前記第1の縁部分に密閉するように隅肉溶接されている。
【0022】
一実施形態では、前記第1の断熱パネルと前記第2の断熱パネルとに跨るように配置されると共に前記第1及び第2のアンカー要素に溶接された前記平坦部は、互いに重ね溶接された2つの隣り合うコルゲート状メタルシートの第1の縁部分及び第2の縁部分から成る。
【0023】
一実施形態では、前記第1の縁部分には前記第2の縁部分が重なり、前記第1の縁部分はプラグ溶接部等の溶接部によって前記第1のアンカー部材に溶接されており、前記第2の縁部分は前記第2のアンカー部材に溶接されており、前記溶接部の少なくとも一部と重なり、前記第1の縁部分に密閉するように隅肉溶接されている。
【0024】
一実施形態では、前記第1及び第2の断熱パネルはそれぞれ、前記コルゲート状メタルシートの縁部を向いた熱保護要素を有する。
【0025】
一実施形態では、前記熱保護要素は、アルミニウムのシートから形成され、又は、少なくとも1つのアルミニウム箔に対して少なくとも1つのガラス繊維マットを設けたものを含む複合フィルムから形成されている。
【0026】
一実施形態では前記断熱バリアは、前記第1の断熱パネルの第2の縁部に沿って配置された第3の断熱パネルと、前記第1の断熱パネルの第3の縁部に沿って配置された第4の断熱パネルと、前記第1の断熱パネルの第4の縁部に沿って配置された第5の断熱パネルと、を備えており、前記第3の断熱パネルには第3のアンカー要素が設けられており、前記第4の断熱パネルには第4のアンカー要素が設けられており、前記第5の断熱パネルには第5のアンカー要素が設けられており、前記密閉メンブレンは、前記第1の断熱パネルと前記第3の断熱パネルとに跨るように配置された平坦部であって、それぞれ前記第1のアンカー要素のうち1つと前記第3のアンカー要素のうち1つとに溶接された平坦部と、前記第1の断熱パネルと前記第4の断熱パネルとに跨るように配置された平坦部であって、それぞれ前記第1のアンカー要素のうち1つと前記第4のアンカー要素のうち1つとに溶接された平坦部と、前記第1の断熱パネルと前記第5の断熱パネルとに跨るように配置された平坦部であって、それぞれ前記第1のアンカー要素のうち1つと前記第5のアンカー要素のうち1つとに溶接された平坦部と、を備えている。
【0027】
一実施形態では、第1のアンカー要素は少なくとも第1の断熱パネルの第1の縁部に沿って配置されると共に、第2のアンカー要素は少なくとも、第1の断熱パネルの第1の縁部の隣の第2のパネルの縁部に沿って配置されている。
【0028】
一実施形態では、第1のアンカー要素は第1の断熱パネルの第1、第2、第3及び第4の縁部に沿って配置されている。
【0029】
一実施形態では、各断熱パネルのアンカー要素が前記断熱パネルの4つの縁部に沿って配置されている。
【0030】
一実施形態では、第1の断熱パネルの第1の縁部と第2の縁部とが接触し、前記壁は、第2の断熱パネルの縁部に沿うと共に第3の断熱パネルの縁部に沿って配置された第6のパネルを備えており、当該第6のパネルには第6のアンカー要素が設けられている。
【0031】
一実施形態では、平坦部のうち1つは第1の断熱パネルと第2の断熱パネルと第3の断熱パネルと第6の断熱パネルとに跨るように配置されると共に、第1のアンカー要素のうち1つと、第2のアンカー要素のうち1つと、第3のアンカー要素のうち1つと、第6のアンカー要素のうち1つと、に固定されている。
【0032】
一実施形態では、前記第1及び第2の断熱パネルは、前記密閉メンブレンの前記コルゲーション側に弛緩スロットを有し、この弛緩スロットはより具体的には、密閉メンブレンにおける前記第1及び第2の断熱パネル側の各コルゲーションを向いている。
【0033】
一実施形態では、前記少なくとも1つの第1のアンカー要素及び前記少なくとも1つの第2のアンカー要素はそれぞれ、前記第1の断熱パネル又は前記第2の断熱パネルの縁部分であって前記第1又は第2の断熱パネルの前記弛緩スロットのうち少なくとも1つによって画定された縁部分に配置されている。
【0034】
一実施形態では、第1又は第2のパネルの縁部のうち1つの縁部の隣の各弛緩スロットは、これに垂直な弛緩スロットと合わさって複数の縁部ゾーンを画定し、これらの各縁部ゾーンにはそれぞれ第1又は第2のアンカー要素が設けられている。
【0035】
一実施形態では、前記密閉メンブレンは一次密閉メンブレンであると共に前記断熱バリアは一次断熱バリアであり、前記壁はさらに、支持構造に対して保持された二次断熱バリアと、当該二次断熱バリアに固定されて当該二次断熱バリアと一次断熱バリアとの間に配置された二次密閉メンブレンと、を備えている。
【0036】
一実施形態では、本発明は上記の壁を備えた密閉断熱タンクに関する。
【0037】
上記の実施形態のうち一の実施形態のタンクは、例えばLNG貯蔵用等の沿岸貯蔵設備の一部とすることができ、又は、近海若しくは沖合の浮体構造物、特にエタンタンカー、メタンタンカー、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)、浮体式生産貯蔵積出施設(FPSO)等に設置することができる。浮体構造物の場合、タンクは、当該浮体構造物の推進用燃料として供される液化天然ガスを入れるためのものとすることができる。
【0038】
一実施形態では、本発明は流体を輸送するための船舶を提供し、当該船舶は、二重船殻等の船殻と、当該船殻に配置された上記のタンクと、を備えている。
【0039】
一実施形態では、本発明は上述の船舶の積込み又は揚げ荷を行うための方法を提供し、当該方法は、断熱パイプラインを介して浮体式若しくは沿岸貯蔵設備から前記船舶の密閉断熱タンクへ又は前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備へ流体を搬送することを特徴とする。
【0040】
一実施形態では、本発明は流体を移送するための移送システムを提供し、当該システムは、上記の船舶と、前記船舶の船殻に配置された前記密閉断熱タンクを浮体式又は沿岸貯蔵設備に接続するように配置された断熱パイプラインと、前記断熱パイプラインを介して前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備から前記船舶の密閉断熱タンクへ、又は前記密閉断熱タンクから前記浮体式若しくは沿岸貯蔵設備へ流体の流れを送るためのポンプと、を備えている。
【0041】
添付の図面を参照して、本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明を読めば、本発明をより良好に理解できると共に、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点がより明らかとなる。以下の説明の特定の実施形態はあくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】タンク壁の多層構造の概略的な断面図である。
【
図3】一次密閉メンブレンのコルゲート状メタルシートの斜視図である。
【
図5】一実施形態の一次アンカー装置の部分断面図である。
【
図6】液化天然ガス貯蔵用のタンクを備えた船舶と、当該タンクの荷役作業を行うためのターミナルと、を示す概略的な抜粋図である。
【
図7】
図2~4の実施形態における2つの隣り合うコルゲート状メタルシートの縁部間の重なりを示す概略的な断面図である。
【
図8】
図2と同様の、他の一実施形態のタンク壁の一部抜粋図である。
【
図9】
図8の実施形態における2つの隣り合うコルゲート状メタルシートの縁部間の重なりを示す概略的な断面図である。
【
図10】
図8の実施形態の一変形形態における2つの隣り合うコルゲート状メタルシートの縁部間の重なりを示す概略的な断面図である。
【
図11】
図8の実施形態の他の一変形形態における2つの隣り合うコルゲート状メタルシートの縁部間の重なりを示す概略的な断面図である。
【
図12】他の一実施変形形態のタンク壁の一部断面図である。
【
図13】
図2及び
図8と同様の、さらに他の一実施変形形態のタンク壁の断面の一部抜粋図である。
【
図14】
図13の実施形態のアンカー要素の細部断面図である。
【
図15】他の一実施変形形態の断熱パネルの斜視図である。
【
図16】
図14の断熱パネルに固定されるアンカー要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
慣例により、「外」及び「内」との用語は、タンクの外部及び内部を基準として他の要素に対する一要素の相対的位置を定義するものである。
【0044】
図1は、液化ガスを貯蔵するための密閉断熱タンクの壁1の多層構造を概略的に示す図である。各壁1はタンクの外部から内部に向かって、支持構造4に固定された二次パネル3を備えた二次断熱バリア2と、二次断熱バリア2に対して設けられている二次密閉メンブレン5と、二次密閉メンブレン5に対して設けられて二次パネル3に固定された一次パネル7を備えた一次断熱バリア6と、一次断熱バリア6に対して設けられてタンクに入った液化ガスと接触する一次密閉メンブレン8と、を備えている。
【0045】
支持構造4は、特に、船舶の船殻又は二重船殻により構成することができる。支持構造4は、通常は多面体形状のタンクの全体形状を決定する複数の壁を備えている。
【0046】
図2を参照すると、二次断熱バリア2が複数の二次パネル3を備えていることが分かる。二次パネル3は、不図示の二次アンカー装置によって支持構造4に固定されている。二次パネル3の全体形状は平行六面体となっており、二次パネル3は互いに平行な複数の二次列に配置されている。例えば図中の実施形態では、二次パネル3は、断熱ポリマー発泡体層9を外部シート10と内部シート11との間に挟んだものを備えている。外部シート10及び内部シート11は例えば合板により作製され、断熱ポリマー発泡体層9に接合されている。断熱ポリマー発泡体は特にポリウレタン系発泡体とすることができ、このポリウレタン系発泡体はオプションとしてガラス繊維強化されたものである。上記では、二次パネル3の構造を例示して説明した。他の一実施形態では、二次パネル3は、例えば国際公開第2012/127141号に記載された全体構造等の他の全体構造を採用することも可能である。他の一実施形態では、二次パネル3がタンク内のどの場所に設置されるかに応じて、二次断熱バリア2は少なくとも2つの異なる種類の構造を有する複数の二次パネル3を備え、これら少なくとも2つの異なる種類の構造は例えば、上記の2つの構造とされる。
【0047】
図2に二次密閉メンブレン5の一部を示しており、この二次密閉メンブレン5は、複数の金属ストレーキ12の連続した一層を有し、これは2つの平行な折返し縁部を有する。ストレーキ12はその折返し縁部によって、平行な溶接サポートに溶接接合されており、これらの溶接サポートは、二次パネル3の内部シート11に形成された溝に収容されたものである。ストレーキ12は例えば、鉄とニッケルとの合金であるインバー(Invar、登録商標)から成り、その膨張係数は典型的には、1.2×10
-6~2×10
-6・K
-1である。また、鉄とマンガンとの合金を使用することも可能であり、その膨張係数は典型的には7~9×10
-6・K
-1のオーダである。他の一実施形態では、上記の金属メンブレンはコルゲーションを有し、例えば、ストレーキと同じ合金から作製することができる。
【0048】
さらに、一次断熱バリア6は複数の一次パネル7を備えており、これらの一次パネル7は一次アンカー装置によって二次断熱バリア2に固定されている。これについては、下記にて
図5を参照して説明する。一次パネル7の全体形状は平行六面体となっており、一次パネル7は、互いに平行な列で配置されている。
【0049】
一次パネル7は、二次パネル3の多層構造と同様の多層構造を有することができる。よって図中の実施形態では、一次パネル7は壁1の厚さ方向に順に、例えば合板等の外部シート13と、断熱ポリマー発泡体層14と、例えば合板等の内部シート15と、を備えている。断熱ポリマー発泡体層14は例えばポリウレタン系発泡体であり、このポリウレタン系発泡体はオプションとしてガラス繊維強化されたものである。上記では、一次パネル7の構造を例示して説明した。
【0050】
図2に示すように、一次側パネル7の外部シート13には、二次密閉メンブレン5のストレーキ12の折返し縁部を入れる溝が設けられている。
【0051】
また、一次密閉メンブレン8は、複数のコルゲート状メタルシート16を組み立てたものであり、その1つが
図3に示されている。コルゲート状メタルシート16は、例えばステンレス鋼製又はアルミニウム製である。一次密閉メンブレン8の厚さは1~2mm、好適には1.2~1.8mmである。各コルゲート状メタルシート16はそれぞれ、互いに垂直なコルゲーション17,18の2列を有する。コルゲーション17,18は方形の平坦部19によって互いに離間されており、有利には、平坦部19は正方形である。コルゲート状メタルシート16は方形であり、好適には、コルゲーション間の間隔の整数倍かつ一次パネル7の寸法の整数倍の幅寸法及び長さ寸法を有する。この実施形態では、コルゲーション17、18は、連続的であり、互いに交差する。不図示の一変形実施形態では、各コルゲーション17,18は、平坦部を散りばめたしわ部を有する。よって、コルゲーションは不連続である。有利には、しわ部は互いに交差しない。
【0052】
図2に示されているように、一次密閉メンブレン8のコルゲート状メタルシート16はアンカー要素20に溶接されている。一実施形態では、アンカー要素20は、内部シート15に設けられた穿孔凹部に入れられる金属板であり、この金属板は例えば、リベット若しくはねじ等の締結具及び/又はボンディングによって穿孔凹部に固定される。コルゲート状メタルシート16は複数の一次パネル7に跨るように配置されると共に、当該コルゲート状メタルシート16の縁部及びコルゲーション17,18の両方の向きが一次パネル7の縁部に対して平行又は垂直になるように配置される。
【0053】
一次密閉メンブレン8のコルゲート状メタルシート16は、各一次パネル7の縁部に沿って固定されている。少なくとも2つの一次パネル7に跨る一次密閉メンブレン8の各平坦部19は、一次パネル7のうち1つに固定されたアンカー要素20に固定されると共に、隣り合う一次パネル7のうち他方に固定された他の1つのアンカー要素20に固定されている。有利には、1つの平坦部19が溶接接合された2つのアンカー要素20であって2つの隣り合う一次パネル7にそれぞれ固定された2つのアンカー要素20は、その中心が8~25cmの距離だけ、好適には10~20cmの距理だけ互いに離間するように配置される。これにより、アンカー要素20におけるコルゲート状メタルシート16の溶接部にかかり得る応力、特にうねり又はスロッシングによる船殻の変形現象に起因する応力のレベルを抑えることができる。
【0054】
よって、本実施形態では一次密閉メンブレン8の固定はコルゲート状メタルシート16の縁部で行われるのではなく、各一次パネル7の縁部に対応する平坦部において行われる。平坦部19は少なくとも2つの隣り合う一次パネル7に跨るように配置され、これにより一次パネル7を機械的に接続する機能を果たす。かかる構成は、一次パネル7が離れるのを阻止し、一次断熱バリア6全体にわたって荷重支持構造4の変形をより一様に分布させることに寄与する。また、4つの隣り合う一次パネル7の4つのコーナゾーンに跨る特定の平坦部19は、当該4つの隣り合う各一次パネル7に属するアンカー要素20に固定されていることも観察される。
【0055】
さらに、
図2に示されているように、各一次パネル7は弛緩スロット21を有し、これらの弛緩スロット21はそれぞれ、一次密閉メンブレン8の各対応するコルゲーション17,18側に延在する。これらの弛緩スロット21により、一次パネル7に過剰な機械的応力をかけることなく一次密閉メンブレン8を変形することができるので、コルゲーション17,18をフル活用することが可能になる。
【0056】
図示の実施形態では、各一次パネル7はそれぞれ、第1の方向に対して平行な3つのコルゲーション17と、第1の方向に対して垂直な第2の方向に対して平行な3つのコルゲーション18と、に対向する。また、各一次パネル7はそれぞれ、第1の方向に対して平行である3つの弛緩スロット21であってそれぞれコルゲーション17のうち1つに対向して配置された弛緩スロット21と、第2の方向に対して平行である3つの弛緩スロット21であってそれぞれコルゲーション17,18のうち1つに対向して配置された弛緩スロット21と、を有する。よって、弛緩スロット21間の離間間隔は、当該弛緩スロット21に対して平行なコルゲーション17,18間の間隔に相当する。しかし、一次パネル7の各縁部の隣の弛緩スロット21と、当該縁部との離間距離は、当該弛緩スロットに対して平行なコルゲーション間の間隔の略半分に相当する。一次パネル7の縁部のうち1つの縁部の隣の各弛緩スロット21は、これに垂直な弛緩スロットと合わさって複数の縁部ゾーンを画定し、これらの各縁部ゾーンにはそれぞれアンカー要素20が設けられている。
【0057】
一次密閉メンブレン8のコルゲート状メタルシート16は、溶接によってアンカー要素20に固定されている。
【0058】
図2に示されている第1の実施形態では、コルゲート状メタルシート6はプラグ溶接部22を用いてアンカー要素20に固定されている。かかる固定を行うために、コルゲート状メタルシート16は少なくとも1つの貫通孔を有する。この貫通孔は、図中の実施形態ではスロットの形態であるが、任意の他の形状をとることができ、特に円形とすることができる。この貫通孔は、各アンカー要素20に沿って形成されている。上記の各孔には溶接材が充填され、これにより一次密閉メンブレン8とアンカー要素20との間の接続が形成される。
【0059】
他の一実施形態ではコルゲート状メタルシート16は、溶加材を用いずにレーザ光源を用いる溶接である透過溶接を用いて、アンカー要素20に固定されている。この場合、コルゲート状メタルシート16はいかなる孔も有しない。
【0060】
さらに、一次密閉メンブレン8のコルゲート状メタルシート16は、その縁部に沿って重ね溶接されている。
【0061】
図2~4の実施形態では、コルゲート状メタルシート16の縁部は一次パネル7の縁部からオフセットしている。また、
図4に示されているように、一次パネル7の内部シートは有利には、コルゲート状メタルシート16の縁部に沿って熱保護要素23を備えている。熱保護要素23は例えば、アルミニウムのシートから形成され、又は、少なくとも1つのアルミニウム箔に対して少なくとも1つのガラス繊維マットを設けたものを含む複合フィルムから形成されている。熱保護要素23は有利には、一次パネル7の内部シート15に形成された穿孔凹部に入れられ、縁部と弛緩スロット21との間のギャップ内、又は、2つの弛緩スロット21間のギャップ内に配置される。熱保護要素23は、ボンディング及び/又はステープルによって一次パネル7の内部シート15に固定されている。熱保護要素23は、メタルシートをその縁部に沿って互いに溶接する作業の間、一次パネル7、特にその断熱ポリマー発泡体層14に損傷を与えやすい温度から、一次パネル7、特にその断熱ポリマー発泡体層14を保護するものである。
【0062】
図3に示されている実施形態ではコルゲーション17,18の配置は、
図3中一点鎖線で示されている2つの中心軸を基準として対称的にはなっていない。各中心軸は、コルゲート状メタルシート16の2つの相反対側の縁部に対して平行であり、コルゲート状メタルシート16を二等分する。より具体的には、他の1つのコルゲート状メタルシート16の縁部と重なる縁部のうち1つに隣接すると共に当該1つの縁部に対して平行な各コルゲーション17,18から隣の縁部までの距離d1又はd2は、隣のメタルシートの縁部と重なる反対側の縁部に隣接すると共に当該反対側の縁部に対して平行なコルゲーション17,18と当該反対側の縁部との間の距離d3,d4より大きい。これにより、隣り合うコルゲート状メタルシート16の縁部間の重なりのゾーンの幅を拡大することができる。
【0063】
図7に概略的に示されているように、2つの隣り合う一次パネル7に跨るように配置された2つの隣り合うメタルシート16間の重なりのゾーンでは、コルゲート状メタルシート16のうち、当該2つの隣り合う一次パネル7それぞれに属する2つのアンカー要素に溶接接合される縁部は、他の1つの隣のメタルシートの隣の縁部と重なる縁部である。よって、上記にて
図3を参照して提案したように重なりの幅を拡大することにより、プラグ溶接部22の少なくとも一部が覆われることが分かる。これにより、流体密性を保証しなければならない一次密閉メンブレン8の流体密性を決定的に左右するプラグ溶接部22の長さを抑えることができる。代替的に、特定のアンカー要素20ではプラグ溶接部22に代えて透過溶接と隅肉溶接とを用いることが可能である。
【0064】
不図示の一実施形態では、設置される熱保護要素23の数を制限するため、1つのコルゲート状メタルシート16の縁部付近に配置されるアンカー要素20は、一次パネル7の縁部から当該コルゲート状メタルシート16の当該縁部に沿って、一次パネル7の当該縁部の隣かつ当該縁部に対して平行な弛緩スロット21と同程度の距離にわたって延在する。よって、このアンカー要素20はこのようなゾーンでは、一次密閉メンブレン8の固定と、コルゲート状メタルシート16の縁部を互いに重ね溶接接合する際における一次パネル7の熱保護と、の両方に供される。
【0065】
不図示の他の一実施形態では、一次密閉メンブレン8のコルゲート状メタルシート16は縁部において一次断熱バリア6にも固定されている。この場合、
図4に示されている熱保護要素23に代えて、金属のアンカー要素が設けられる。
【0066】
図5に示されているように、一次パネル7はそのコーナ部に切欠部24を有し、外部シート13がその断熱ポリマー発泡体層14と内部シート15とからはみ出すようにする。このようにして、外部シート13は一次パネル7のコーナ部において、一次アンカー装置27の押さえ板部26と直接的又は間接的に協働する支持ゾーン25を形成する。さらに、図示の実施形態ではブロック28が外部シート13に追加されており、このブロック28は支持ゾーン25の形状と同様の形状を有し、押さえ板部26と協働して一次パネル7を固定する。各一次アンカー装置27は、隣接する4つの一次パネル7のコーナ部それぞれに属する4つの支持ゾーン25と協働する。各一次アンカー装置27はそれぞれ、二次パネル3のうち1つから突出するスタッド29と、スタッド29の端部に固定された押さえ板部26と、を備えており、押さえ板部26は、隣接する4つの一次パネル7の4つの支持ゾーン25に支持され、これらを二次断熱バリア2に当てて保持する。押さえ板部26は、スタッド29に嵌められる孔を有する。スタッド29のねじ端部にナット30が係合して、押さえ板部26を固定する。さらに、有利な一実施形態ではスタッド29に弾性ベルビルワッシャーがナット30と押さえ板部26との間に嵌められており、これにより一次パネル7が弾性により二次断熱バリア2に固定される。
【0067】
スタッド29はベース31に固定されており、ベース31自体は二次パネル3の内部シート11に固定されている。これを達成するためには、ベース31は例えばねじ部を有し、このねじ部は、スタッド29の相補的なねじ端部と係合する。また、二次パネル3の内部シート11は、ベース31を収容する切欠部も有する。この切欠部は、段状の肩部を形成するように、第1の径の内側部分と、第1の径より大きい第2の径の外側部分と、を有する。ベース31は、切欠部の形状に対して相補的な形状を有する。よって、ベース31の内面は二次パネル3の内部シート11の内面と同一面上に揃い、二次密閉メンブレン5を支持する平坦な支持面を形成する。また、ベース31はその内側部分より大きい径の外側部分を有し、これにより、当該ベースの外側部分が切欠部の肩部に当接する。また、ベース31は二次パネル3にボンディングされている。
【0068】
さらに、スタッド29は、二次密閉メンブレン5に形成された開口部に密閉状態で通されている。
【0069】
図8に示されている実施形態が上記の実施形態と相違する点は、一次密閉メンブレン8のコルゲート状メタルシート16が一次パネル7の列に対して実質的に整列していることである。換言すると、コルゲート状メタルシート16の縁部は、一次パネル7の一部の縁部に沿って延在する。これを達成するためには、コルゲート状メタルシート16は好適には、隣り合うコルゲート状メタルシート16の重なり合いのゾーンの寸法如何にかかわらず、コルゲーション間の間隔の値丸々又は整数倍であると共に一次パネル7の寸法の整数倍の幅寸法及び長さ寸法を有する。よって、
図8に示される実施形態では、各コルゲート状メタルシート16の縁部のうち2つの縁部の長さが、一次パネル7の辺長の3倍に略等しく、それに対して第2の他の縁部の長さは、一次パネル7の辺長に略等しい。
【0070】
図9は、
図8の実施形態における2つの隣り合うコルゲート状メタルシート16間の重なりのゾーンを示す図である。この実施形態では、隣り合うコルゲート状メタルシート16の互いに重なる2つの縁部分が、プラグ溶接22又は透過溶接によってアンカー要素20に溶接接合されている。これら2つの縁部分は、例えば隅肉溶接部等の溶接部によって互いに溶接接合されており、この溶接部は、2つの隣り合う各一次パネルにそれぞれ固定された2つのアンカー要素20間に配置される。かかる実施形態により、寸法が抑えられたコルゲート状メタルシートであって当該コルゲート状メタルシートの2つの中心軸を基準としてコルゲーション17,18がセンタリングされたコルゲート状メタルシートを使用することが可能になる。
【0071】
図10は、一実施変形形態の隣り合う2つのコルゲート状メタルシート16の間の重なりのゾーンを示す。この実施変形形態では、互いに重なるように配置された2つの縁部分がそれぞれ、
図9の変形形態と同様にプラグ溶接22又は透過溶接によってアンカー要素20のうち1つに溶接接合されているが、本実施形態では、重なる縁部分が他の縁部分のプラグ溶接部22又は透過溶接の少なくとも一部を覆う。こうするためには、
図3を参照して説明及び図示したように、コルゲート状メタルシート16の構造を、コルゲーションが2つの中心軸を基準として対称的に配置されない構造とする。
【0072】
最後に
図11の実施形態では、当該2つの隣り合う一次パネル7それぞれに属する2つのアンカー要素20にプラグ溶接部22によって溶接接合される縁部分は、他の縁部分と重なる縁部分である。このようにして、他の縁部分は、2つの隣り合う各一次パネルに固定されたアンカー要素20に沿ってプラグ溶接部22を覆う。これにより、流体密性を保証しなければならない一次密閉メンブレン8の流体密性を決定的に左右するプラグ溶接部22の長さをより一層抑えることができる。
【0073】
図12は他の一実施形態を示す図である。この実施形態が
図2~4を参照して説明及び図示した実施形態と相違する点は、コルゲート状メタルシート16のコルゲーション17,18が2つの中心軸を基準として対称的に配置されていることと、コルゲート状メタルシート16の縁部のうち他の1つのコルゲート状メタルシートの隣の縁部と重なる縁部が、いかなるプラグ溶接部22とも重ならないことのみである。これにより、コルゲート状メタルシート16の寸法を抑えることができる。
【0074】
図13及び
図14は他の一実施形態を示す図である。この実施形態が
図8を参照して説明した実施形態と相違する点は、アンカー要素20の構造と、コルゲート状メタルシート16をアンカー要素20に取り付けるために行われる溶接の種類である。
【0075】
図14に示されているように、アンカー要素20は、一次断熱パネル7に固定されたベース32と、一次密閉メンブレン8に密閉するように溶接されると共にベース32に固定された密閉カラー33と、を備えている。こうするためには、ベース32はねじ孔34を有し、このねじ孔34にねじ軸部35が螺合して、一次密閉メンブレン8に形成された開口部に通される。密閉カラー33は一次密閉メンブレン8の内面に支持され、開口部の全周を囲むように一次密閉メンブレン8に溶接接合されて密閉を保証する。
【0076】
図15及び
図16は、本発明の他の一実施形態を示す。この実施形態では、アンカー要素20は円板36の形態の挿入物から成り、この挿入物は、一次断熱パネル7の内表面に形成された穿孔凹部に入れられて一次断熱パネル7に固定される。図示の実施形態では、円板状の挿入物36はねじ軸部37を有し、このねじ軸部37は、一次断熱パネル7に固定された金具38に形成されたねじ孔に受容される。
【0077】
図6を参照すると、メタン運搬船70の抜粋図が、船舶の二重船殻72に取り付けられた全体形状が角柱形の密閉断熱タンク71を示している。タンク71の壁71は、タンクに入ったLNGと接触する一次密閉メンブレンと、一次密閉メンブレンと船舶の二重船殻72との間に配置された二次密閉メンブレン5と、一次密閉メンブレンと二次密閉メンブレンとの間及び二次密閉メンブレンと二重船殻72との間にそれぞれ配置された2つの断熱バリアと、を備えている。
【0078】
自明の通り、LNGのカーゴをタンク71へ又はタンク71から移送するため、適切な接続部を用いて、船舶の上甲板に配置された荷役パイプライン73を海上又は港湾ターミナルに接続することができる。
【0079】
また、
図6は海上ターミナルの一例を示しており、この海上ターミナルは荷役ステーション75と水中パイプ76と沿岸設備77とを備えている。荷役ステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78とを備えた定置の沿岸設備である。可動アーム74は、荷役パイプライン73に接続可能な断熱性の可撓性ホース束79を支持する。方向調整可能な可動アーム74は、あらゆるサイズのメタン運搬船に適合するように調整することができる。タワー78内部には、不図示の接続パイプが上方に向かって延設されている。荷役ステーション75は、メタン運搬船70から沿岸施設77へ又は沿岸施設77からメタン運搬船70への荷役を行えるものである。沿岸施設77は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプ76によって荷役ステーション75に接続された接続パイプ81と、を備えている。水中パイプ76は、例えば5km等の長距離にわたって荷役ステーション75と沿岸設備77との間で液化ガスを移送できるものであり、これにより、荷役作業中にメタン運搬船70を沿岸から遠距離に停泊した状態に維持することができる。
【0080】
液化ガスを移送するために必要な圧力を生成するためには、船舶70上に搭載されたポンプ及び/又は沿岸設備77に備え付けられたポンプ及び/又は荷役ステーション75に備え付けられたポンプが使用される。
【0081】
複数の特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これは本発明を何ら限定するものではなく、本発明は、ここに記載した手段の技術的均等態様であって本発明の範囲に属する全ての技術的均等態様及びその組み合わせも含むことが、極めて明らかである。
【0082】
特許請求の範囲において、いかなる括弧書きの符号も、特許請求の範囲に限定を課すものと解すべきではない。
【国際調査報告】