(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】新規ペプトイド及び慢性疼痛の予防又は治療におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 5/103 20060101AFI20231018BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20231018BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20231018BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C07K5/103
C07K7/06
A61K38/07
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521558
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 FR2021051694
(87)【国際公開番号】W WO2022074313
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517124033
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・クレルモン・オーヴェルニュ
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】522132465
【氏名又は名称】シグマ・クレルモン
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】515085211
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュセロール,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ブリネ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】タイユフミエール,クロード
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】ノートン,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】アイソーニ,ユセフ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA16
4C084NA14
4C084ZA08
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、慢性疼痛、特に末梢神経障害から生じる慢性疼痛の予防及び/又は治療のための新規ペプチド模倣体(又はペプトイド)分子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、独立して、CH
3(L-Ala)、CH(CH
3)
2(L-Val)、CH(CH
3)CH
2CH
3(L-Ile)、CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu及びD-Leu)、CH
2C(CH
3)
3、C(CH
3)
3、CH
2(シクロブチル)であり、
R
2及びR
3は、独立して、CH
2CH(CH
3)
2、CH
2CH
2NH
2、CH
2CH
2OH、CH
2CH
2CH
2OH、CH
2CH(OH)CH
3、CH
2CONH
2、CH
2CH
2CONH
2から選択され、
R
4は、以下の:
【化2】
から選択される脂肪族又は芳香族基であり、
R
5は、独立して、CH
3、CH(CH
3)
2、CH
2C
6H
5、C
6H
4X(式中、オルト、メタ又はパラ位のXは独立して、H、OMe、CF
3、CH
3、CH
2CH
3、F、Br、Cl、NO
2である)、3-インドリル、3-キノリニルである]のペプトイド。
【請求項2】
以下の式:
【化3】
【化4】
のものである、請求項1に記載のペプトイド。
【請求項3】
以下の一般式(II):
【化5】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は請求項1で定義したとおりであり、
R
6は、R
3、H、COR
5(式中R
5は上記定義のとおりである)又はR
7であり、
R
7は、独立して、以下のうちの1つ:
【化6】
である]のペプトイド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のペプトイドと、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項5】
医薬として使用するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプトイド又は請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
慢性疼痛の予防又は治療における使用のための、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプトイド又は請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記慢性疼痛が神経障害起源のものである、請求項6に記載の使用のためのペプトイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性疼痛、特に(例えば化学療法によって誘発される)末梢神経障害から生じる慢性疼痛の予防及び/又は治療のための新規ペプチド模倣分子(又はペプトイド、ペプチド-ペプトイドハイブリッド又はペプトマーとも呼ばれる)に関する。
【0002】
以下の説明では、角括弧([])での参照は、本文の最後に示される参考文献一覧を指す。
【背景技術】
【0003】
直近技術
慢性疼痛は世界中で15億人が罹患しており、その者らにとって治療奏功は明らかに不十分である(Finnerup NB et al.,2015)[1]。最近の疫学調査は、慢性疼痛は成人の約20%及び高齢者の50%が罹患していると推定している(von Hehn et al.,2012)[2]。世界では、疼痛を有する人々の60%は仕事をする能力が低くなり、20%が疼痛により仕事を失ったと報告している。同時に、2010年に200億単位の鎮痛薬が販売され、2005年の140億単位から増加した(+9.3%)。2017年には、世界の疼痛市場は610億5000万ドルに達し、2023年までに771億3000万ドルに値し、2017年から2023年まで、4%の年間成長率で成長すると予想されている。
【0004】
神経障害性疼痛は、全般集団の約7%及び慢性疼痛を有する患者の25%が罹患している。神経障害性疼痛には2つのタイプ、すなわち、末梢神経障害性疼痛(その起源に応じて、神経叢、根、若しくは幹の領域が関与し得、又は多発性神経障害の状況ではより拡散し得る)及び中枢神経障害性疼痛(感覚経路又は疼痛制御に影響を及ぼす病変)がある。化学療法によって誘発される末梢神経障害は、多くの抗癌剤の頻繁な有害作用であり、この末梢神経障害は、患者の生活の質に対して持続的な作用を有する著しい慢性疼痛を特徴とし、臨床的有効性の低下のリスクを伴う投与量調整をもたらす。より乏しくなりつつある鎮痛薬物類(2011年にDi-antalvicの撤退)は、古く、多くの場合忍容性の悪い治療を特徴とする。
【0005】
革新は50年以上にわたって行き詰まっており、提案されている新薬の大部分は、既存の薬物の単純な再製剤又は組み合わせである。最近のメタアナリシスは、ガバペンチン及びデュロキセチンを除いて、神経障害性疼痛に対する治療が今日まで実際に有効ではなく、有効性スコアは依然として低いことを示している(Hershman et al.,2014)[3]。
【0006】
HCNイオンチャネルのファミリー(Ludwig et al.,Nature 1998;Santoro et al.,1998;Seifert et al.,1999)[4-6]は、4つのHCN 1~4メンバーを含んでおり、新規心拍数低下薬及び新規な鎮痛薬の開発のための優れた機会を提供し得る。HCNチャネルは、疼痛経路に広く分布しており、神経障害性疼痛の発症及び維持において重要な役割を果たす(Dunlop et al.,2009;Lewis et al.,2011)[7,8]。非選択的HCNブロッカーは、神経障害性疼痛のげっ歯類モデルにおいて疼痛症状を減少させることが示されている(Descoeur et al.,2011;Young
et al.,2014)[9,10]。しかし、それらの心臓及び視覚副作用(例えば、汎-HCNブロッカー)により、神経障害性疼痛を治療するためのそれらの使用の臨床的解釈が限定される。
【0007】
興味深いことに、HCNチャネル機能は、心臓において発現されない補助サブユニットであるRab8b相互作用タンパク質(TRIP8b)によって厳しく調節される。この細胞質タンパク質は、2つの接触部位を介してHCNチャネルサブユニットのC末端に結合する(Lewis et al.,2009)[11]。更に、HCN2のC末端を表す6つのアミノ酸ペプチドとの複合体におけるTRIP8bのテトラトリコペプチド(TPR)領域の原子構造が、X線結晶学によって決定された(Bankston et al.,2012)[12]。
【0008】
研究の大部分がHCNチャネルに直接作用する阻害剤を開発することに焦点を当てている現在の状況では、TRIP8b及び/又はTRIP8b-HCN相互作用を標的とすることにより、心臓及び視覚機能に影響を及ぼすリスクなしに疼痛状態におけるHCN活性を調節する新しい可能性がもたらされ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の説明
本発明は、HCNチャネルによって誘発される電流(Ih)の減少をもたらすTRIP8b-HCN相互作用の破壊が、オキサリプラチンによって誘発される急性及び慢性末梢神経障害のげっ歯類モデルにおいて鎮痛効果を有し得、ヒトの症候学を忠実に再現するという仮説に基づく。
【0010】
この戦略の有効性の証明は、TRIP8b-HCN相互作用を破壊することができる20,000分子ライブラリースクリーニングからの分子であるNUCC-5953を用いて初めて検証された(Han et al.,2015)[13]。こうして、本発明者らは、オキサリプラチン誘発性急性寒冷過敏症が、NUCC-5953の髄腔内(
図2)又は全身(
図3)注射によって用量依存的に反転することを実証した。歩行運動活性の変化は観察されなかった。準備データはまた、NUCC-5953の投与が膜アドレッシングを減少させ、ひいては、神経障害の動物において観察されるHCN1及び2の活性を減少させることを示した(
図5B)。更に、NUCC-5953のin vitro適用は、心臓細胞におけるHCN活性化誘発電流に対する作用を示さなかった(HCNチャネルの非特異的ブロッカーとは対照的、
図6)。
【0011】
次いで、本発明者らは、2つのタンパク質の相互作用様式に基づいて、TRIP8b-HCN相互作用の特異的ブロッカーを設計することを決めた。しかし、タンパク質-タンパク質相互作用(ppi)は、細胞機能の全てのレベルで必須の役割を果たし、それらを紛れもなく治療標的にしており、強力なPPI阻害剤の設計は依然として現実の課題である。低分子量分子は、広くスクリーニングされているが、大きな表面(>800Å)を伴う相互作用と競合するのにはあまり適していない。更に、有効な阻害剤を設計するためには、タンパク質/タンパク質認識セグメントをその生物活性「ホットセグメント」立体構造で模倣できることが重要である。ペプチドは、それにより代謝安定性及び立体構造安定性の問題だけでなく、細胞内標的に到達するための細胞透過の問題も解決することができる条件で、これらの新規な阻害剤を設計するために選択される化合物である。
【0012】
次いで、本発明者らは、タンパク質-タンパク質相互作用を標的とする阻害剤の開発に特に適合され、またペプトマー(すなわち、「ペプトイド」モノマー及び「アミノ酸」モノマーを組み合わせたオリゴマー、Ostergaard et al 1997[17]-すなわちペプチド-ペプトイドハイブリッド)とも呼ばれ得る、ペプトイド(N置換グリシンオリゴマー)の合成を介するペプチド模倣化学物質に目を向けた。
【0013】
これらは合成ペプチド模倣体であり、そのオリゴマー性は、サイズ及び化学的多様性に関して大きなモジュール性を可能にする。
【0014】
それらは、微細な構造設計を可能にし、ペプチドよりも良好な生物学的利用能(プロテアーゼ耐性、より良好な膜透過性、非免疫原性骨格)を有する。
【0015】
このことから、本発明者らは、TRIP8bのTPRドメインとHCNのC末端との間の相互作用を標的とし、有害な心臓又は視覚作用なしにオキサリプラチン誘発性急性神経障害のモデルにおいて鎮痛効果を発揮することができる新規なペプトイドを設計した。
【0016】
したがって、本発明は、以下の一般式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、独立して、CH
3(L-Ala)、CH(CH
3)
2(L-Val)、CH(CH
3)CH
2CH
3(L-Ile)、CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu及びD-Leu)、CH
2C(CH
3)
3、C(CH
3)
3、CH
2(シクロブチル)であり、
R
2、R
3、及びR
4は、第一級アミンからの合成中に逐次的に組み込まれるペプトイド単位の側鎖であり、
R
2及びR
3は、独立して、CH
2CH(CH
3)
2、CH
2CH
2NH
2、CH
2CH
2OH、CH
2CH
2CH
2OH、CH
2CH(OH)CH
3、CH
2CONH
2、CH
2CH
2CONH
2から選択される]のペプトイドに関する。アルコール又はアミン官能基を有する側鎖は、保護された形態、すなわちアルコール官能基についてはシリルエーテル及びアミン官能基についてはtert-ブチルカルバメート(Boc)でオリゴマーに組み込まれており、
R
4は、以下の:
【化2】
から選択される脂肪族又は芳香族基である。
R
5は、独立して、CH
3、CH(CH
3)
2、CH
2C
6H
5、C
6H
4X(式中、オルト、メタ又はパラ位のXは独立して、H、OMe、CF
3、CH
3、CH
2CH
3、F、Br、Cl、NO
2である)、3-インドリル、3-キノリニルである。
【0017】
有利には、R
4は、以下の:
【化3】
から選択される脂肪族又は芳香族基である。
【0018】
有利には、R5は、独立して、CH3、CH2C6H5、C6H4X(式中、オルト、メタ又はパラ位のXは、独立して、H、OMe、CF3、CH3、CH2CH3、F、Br、Clである)、3-インドリル、3-キノリニルである。
【0019】
有利には、本発明のペプトイドは、一般式(I):
[式中、
R
1は、独立して、CH
3(L-Ala)、CH(CH
3)
2(L-Val)、CH(CH
3)CH
2CH
3(L-Ile)、CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu及びD-Leu)、CH
2C(CH
3)
3、C(CH
3)
3、CH
2(シクロブチル)であり、
R
2、R
3、及びR
4は、第一級アミンからの合成中に逐次的に組み込まれるペプトイド単位の側鎖であり、
R
2及びR
3は、独立して、CH
2CH
2NH
2、CH
2CH
2OH、CH
2CH
2CH
2OH、CH
2CH(OH)CH
3、CH
2CONH
2、CH
2CH
2CONH
2から選択される]のペプトイドから選択される。アルコール又はアミン官能基を有する側鎖は、保護された形態、すなわちアルコール官能基についてはシリルエーテル及びアミン官能基についてはtert-ブチルカルバメート(Boc)でオリゴマーに組み込まれており、
R
4は、以下の:
【化4】
から選択される脂肪族又は芳香族基である。
R
5は、独立して、CH
3、CH
2C
6H
5、C
6H
4X(式中、オルト、メタ又はパラ位のXは、独立して、H、OMe、CF
3、CH
3、CH
2CH
3、F、Br、Clである)、3-インドリル、3-キノリニルである。
【0020】
好ましくは、一般式(I)の本発明のペプトイドは、第2の単位(C末端から始まる)上に2個の炭素原子を有する。
【0021】
有利には、本発明のペプトイドは、以下の一般式(I’):
【化5】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、上記定義のとおりである]のペプトイドから選択される。
【0022】
特定の実施形態によれば、本発明のペプトイドは、以下の式を有する。
【化6】
【化7】
【0023】
本発明はまた、一般式(I)のペプトイドの合成のための中間体に関し、当該ペプトイドは3単位を含む。当該合成中間体は、以下の一般式(II):
【化8】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は上記定義のとおりであり、
R
6は、H、R
3、COR
5(式中R
5は上記定義のとおりである)又はR
7であり、
R
7は、独立して、
【化9】
のうちの基である]のペプトイドである。
【0024】
特に、本発明は、R6がHである式(II)のペプトイドに関する。
【0025】
特に、本発明は、R6がCOR5である式(II)のペプトイドに関する。
【0026】
特に、本発明は、R6がR7である式(II)のペプトイドに関する。
【0027】
特に、本発明は、R6がR3である式(II)のペプトイドに関する。
【0028】
有利には、本発明によるペプトイドは、以下の一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId):
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
5及びR
7は、上記定義のとおりである]のペプトイドから選択することができる。
【0029】
好ましくは、式(II)、(IIa)、(IIb)、(IIc)又は(IId)の本発明のペプトイドは、第2の単位(C末端から始まる)上に2個の炭素原子を有する。有利には、ペプトイドは、以下の式(II’)、(II’a)、(II’b)、(II’c)又は(II’d):
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
5、R
6及びR
7は、上記定義のとおりである]のペプトイドから選択される。
【0030】
本発明はまた、本発明によるペプトイドと、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0031】
本発明はまた、医薬として使用するための、本発明によるペプトイド又は医薬組成物に関する。
【0032】
本発明はまた、慢性疼痛、特に神経障害起源の慢性疼痛、より具体的には例えば化学療
法によって誘発される末梢神経障害性疼痛の予防又は治療に使用するための本発明によるペプトイド又は医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ビヒクル又はオキサリプラチン(6mg/kg、腹腔内)投与の4日後のDRGニューロンにおけるHCN1(A)、HCN2(B)及びTRIP8b(C)タンパク質の発現を示す。ビヒクル若しくはオキサリプラチン(6mg/kg、腹腔内)投与の4日後(D)又はビヒクル若しくはオキサリプラチンの反復投与(週2回、3週間)後(E)の脊髄の後角におけるTRIP8bタンパク質発現、N=3/群、マン・ホイットニー検定。
【
図2】ビヒクル又はNUCC5953(0.2μg、1μg又は5μg、髄腔内)で処置したOIPN(オキサリプラチン誘発性神経障害モデルマウス)(n=8)における、(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒)の平均±SEMの時間的推移及び(C)用量依存的鎮痛作用の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、vs。群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図3】ビヒクル、NUCC5953(4mg/kg、皮下)又はデュロキセチン(30mg/kg、皮下)で処置したOIPNマウス(n=8)における、(A)試験デザイン、(B)足浸漬潜時(秒)の平均±SEMの時間的推移及び(C)用量依存的鎮痛効果の曲線下面積(AUC、sec.min)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析及びTukey事後検定。
【
図4】ビヒクル又はNUCC5953(4mg/kg、皮下)で処置し、速度を速めながら(10分かけて4rpmから40rpmまで)ロータロッド試験に供したマウスの転倒までの潜時(A)及び転倒する速度(B)を示すヒストグラムを表す。
【
図5】ビヒクル(V)、オキサリプラチン(O)、又はオキサリプラチン+NUCC5953(5nmol、髄腔内)(N)で処置した動物由来のDRGにおけるHCN1、HCN2、及びTRIP8bの(A)試験設計、(B)細胞内(膜)発現を表す。
【
図6】イバブラジン(VIA)とは対照的に、If電流振幅に対するNUCC5953の作用の欠如を表す。
【
図7】マウスの心拍数(HR)を表す:(A)ベースライン値、(B)NUCC5953(4mg/kg、皮下)の注射後30分間の平均心拍数、及び(C)30分の終わりの平均値。値は平均±SEM(n=3)である。
【
図8】SNLペプチドと相互作用するTRIP8bの分子動力学を表す。
【
図9】ビヒクル又はペプトイドYC55(0.2、1又は5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=8)における、(A)試験設計、(B)足浸漬潜時(秒)の平均±SEMの時間的推移、及び(C)用量依存的鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図10】ビヒクル又はペプトイドYC55(2.5mg/kg、5mg/kg又は10mg/kg、皮下)で処置したOIPNマウス(n=8)における、(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒)の平均±SEMの時間的推移及び(C)用量依存的鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図11】ビヒクル、YC55(2.5mg/kg、5mg/kg、若しくは10mg/kg、皮下)、又はバリウム(2.5mg/kg、皮下)で処置し、速度を速めたロータロッド試験(10分かけて4rpmから40rpmまで)に供したマウスの転倒までの潜時(A)及び転倒する速度(B)を示すヒストグラムを表す。***p<0.001所与の分子について、投与30分後のT(■)対T0(□)のスチューデントt検定。
【
図12】ビヒクル又はペプトイドYC55(0.2、1又は5μg、髄腔内)で処置したPTXラット(n=7~9)の(A)試験設計、(B)機械的閾値(g)及び足浸漬潜時閾値(秒)の平均±SEMの時間的推移、並びに(C)曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析及びTukey事後検定
【
図13】ビヒクル(●)又はペプトイドYC55(■)(5μg、髄腔内)で処置した神経障害性ラット(n=7~9)の足浸漬潜時閾値(秒単位)の(A)試験設計、(B)平均±SEMの時間的推移を表す。***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析及びTukey事後検定。
【
図14】ビヒクル又はペプトイドMP208、MP405、若しくはYC55(5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒単位)の平均±SEMの時間的推移、及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図15】ビヒクル又はペプトイドMP376、MP354、若しくはMP341(10mg/kg、皮下)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒)の平均±SEMの時間的推移、及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図16】ビヒクル又はペプトイドLF108、LF306、若しくはLF188(5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒単位)の平均±SEMの時間的推移、及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図17】ビヒクル又はペプトイドLF295、LF400、若しくはLF329(5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒単位)の平均±SEMの時間的推移及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図18】ビヒクル又はペプトイドLF126、LF261若しくはLF275(5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒単位)の平均±SEMの時間的推移、及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図19】ビヒクル又はペプトイドLF222、LF239、若しくはLF176(5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒単位)の平均±SEMの時間的推移及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析(Two-way ANOVA)及びTukey事後検定。
【
図20】ビヒクル又はペプトイドLF369(5μg、髄腔内)で処置したOIPNマウス(n=7~9)の(A)試験設計、(B)足浸漬潜時閾値(秒)の平均±SEMの時間的推移及び(C)鎮痛効果の曲線下面積(AUC、秒.分)を表す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、対ビヒクル群、二元配置分散分析及びTukey事後検定。
【発明を実施するための形態】
【0034】
鎮痛剤の分野における治療の革新が停滞している状況において、本発明のペプトイド及びそれらの治療可能性は、抗癌薬によって誘発される神経障害性疼痛に罹患している患者の生活の質及び場合によりその患者らの生存の改善に対して著しい影響を及ぼし得る。更に、HCNチャネルはまた、様々な神経障害性及び炎症性の疼痛状態の病因に関与するので、本発明のペプトイドにより、様々な型の慢性疼痛に対してより広範に活性である新しいクラスの鎮痛薬のための道が敷かれる。
【実施例】
【0035】
実施例1:材料及び方法
動物
実験を、Janvier Laboratories(France)によって提供された20~24gの雄C57Bl/6JRjマウス又は150~175gの雄Sprague-Dawleyラットに対して行い、12時間の明/暗サイクルで維持し、適宜給餌及び給水を行った。行動実験を、所与の試験について同じ実験者によって静かな部屋で盲検的に実施し、動物の不快感を最小限に抑えるか又は回避するように細心の注意を払った。全ての動物飼育手順は、地元の飼育倫理委員会によって承認され、実験を、欧州共同体によって提供された動物飼育の管理及び使用に関するガイドライン(Directive
2010/63/EU)に従って実施した。
【0036】
行動試験
Von Frey試験:機械的感受性を、0.07g、0.6g又は1.4gの較正Von Freyフィラメントを用いて評価した。後足の足の裏の表面に対して垂直に、剛性が増加する順にフィラメントを5回適用し、それらが曲がるまで押した。所与のフィラメント力に対する応答数を計数した。
【0037】
浸漬試験:収縮が観察されるまで、尾又は足を10℃又は46℃に設定した水浴中に浸漬した(カットオフ時間:30秒)。逃避潜時の2回の別々の測定の平均を計算した(Janssen,Nimegeers&Dony,1963)[14]。
【0038】
ラットにおける足圧試験:ラットを、Randall及びSelitto(1957)[15]によって以前に記載された足圧試験に供した。疼痛の徴候(鳴き出し閾値)が得られるまで(カットオフは750gであった)、ラットの右後足に圧力を高めて加えることによって、Ugo Basile鎮痛計(Apelex、プローブ先端直径1mm、重量30g)を用いて、グラム単位で表される侵害受容閾値を測定した。処置の前に、ラットを足の圧力にさらすことなく取り扱うことによって、ラットを試験に慣れさせた。次いで、2つの連続した安定鳴き出し閾値を得た後、15分、30分、45分、60分、90分、及び120分後に治療効果を評価した。結果は、鳴き出し閾値としてグラム単位で表される。全体的な効果を調査するために、鎮痛効果の時間的推移曲線下面積(AUC、g.分)を、台形法を使用して、各時点での個々のスコアから計算した。データを、二元配置分散分析、続いてボンフェローニ検定によって分析し、その際、効果の時間的推移を試験した。一元配置分散分析、続いてStudent Newman-Keuls検定を使用して、CSAによって決定された異なる処置の効果を分析した。統計的有意性のレベルをp<0.05に設定した。
【0039】
ロータロッド試験:ロータロッド試験(Bioseb)のために、動物を最初に固定シリンダー上に10分間留まるように慣らした後、4rpmの回転速度で更に10分間に切り替えた。訓練直後に動物に薬物を与え、30分後に試験を行った。試験は、5分間にわたって回転を4rpmから40rpmまで線型的に速めながら、動物が転倒するまでの潜時を測定することからなっていた。3回の試行にわたる2つの最も近い値の平均を計算し
た。
【0040】
In vivo心拍数記録:ECG遠隔測定記録を、以前に公開されたように(Mesircaら、2014年)[27]、胸郭上に配置された対のワイヤ電極を有する、皮下パウチ内のTA10EA-F20遠隔測定送信機(DSI)を使用して実施した。
【0041】
動物疼痛モデル
マウスにおけるオキサリプラチン誘発性急性神経障害:マウスに、最初の行動評価の直後に、5%グルコースに溶解した6mg/kgオキサリプラチンを腹腔内(i.p.)注射した。ピーク痛覚過敏に達するのに必要な時間に対応する、薬物投与の90時間後(Descoeur et al.,2011)[9]に、低温感受性及び機械的感受性の第2の評価を行った。
【0042】
ラットにおける急性パクリタキセル誘発性神経障害:ラットにジメチルスルホキシド(DMSO;溶媒)又は1mg/kg/1mLのパクリタキセル(Sigma-Aldrich,Lyon,France)を0日目(D0)、2日目(D2)、4日目(D4)、及び7日目(D7)に腹腔内注射した。最初のパクリタキセル注射の日(D0)並びにパクリタキセル注射後10日目(D10)及び14日目(D14)に、行動試験を行った。
【0043】
ラットにおける脊髄神経結紮誘発神経障害:Kim及びChung(1992)[16]の手順に従って、ラットを仰臥位に置き、10mg/kgのキシラジン及び75mg/kgのケタミン(i.p)で麻酔した。次いで、脊椎の左側の毛を剃り、皮膚を露出させた。皮膚を脊椎に平行に切り、傍脊椎筋を分離した。L5脊髄神経が露出するまで、L5横骨端を除去した。L5神経を単離し、絹糸で結紮した。最後に、筋肉及び皮膚切開部を縫合し、創傷をヨードフォア及び75%のエチルアルコールで消毒した。偽群において、ラットは、神経結紮を伴わない同じ外科手術を受けた。
【0044】
Ex vivo試験
RNA単離及び定量:腰椎セグメントL4~L6からのDRG対を切除し、プールした。TRIzol(登録商標)試薬)(Nitrogen)を製造業者(Thermofisher)の指示書に従って使用して、RNAを抽出した。RNA品質をAgilent
2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)によって評価し、8超のRIN(RNA Integrity Number)を有する試料を更なる分析のために保持した。逆転写を、Invitrogenによって提供されるプロトコルに従って、SuperScript II逆転写酵素を用いて行った。リアルタイム定量的PCRのために、Light Cycler Fast Start DNAキット(Roche diagnostics)を使用して増幅を行い、Mastercycler Realplexサーマルサイクラー(Eppendorf)を用いてリアルタイムでDNAの量を測定した。各三連におけるcDNAの相対量を、標準濃度曲線を用いて平均し、GUS遺伝子cDNAに対して正規化した。
【0045】
増幅条件は以下のとおりであった:95℃で7分間のプレインキュベーション、続いて、95℃で20秒間及びプライマー対の特異的ハイブリダイゼーション温度で20秒間、続いて72℃で20秒間を50サイクル。
【0046】
RNA配列決定:本発明者らは、オキサリプラチン(3mg/kg、腹腔内)又はビヒクルで週2回3週間処置したマウス由来のL4-L5-L6 DRGに対するRNA配列決定分析を使用した。実験の最後(D21)に、マウスを麻酔して殺し、L4-L5-L6 DRGを迅速に採取し、液体窒素中で凍結し、使用するまで-80℃で保存した。L4-L5-L6 DRGからの全RNAを、製造業者のプロトコルに従ってRNeasy
Microキット(Qiagen)を使用して抽出し、リボソームRNAを、Ribo-0 Plus rRNA枯渇キット(Illumina)を使用して除去した。Take3 Nucleic Acid Quantification Plate(Epoch,BioTek,USA)を使用してRNA濃度を決定した。RNAの完全性をキャピラリー電気泳動装置(Fragment Analyser、Agilent(登録商標))によって分析し、Fasteris(https://www.fasteris.com)をRNA配列決定に使用した。Illumina TruSeqプロトコルを使用してライブラリーを調製し、HiSeq 2500プラットフォーム(Illumina)を使用してSBSベースの配列決定を行った。分析を様々なステップで行った。スプライス部位マッピング(TopHat2)、計数(HTSeq-count)、フィルタリング、正規化(edgeR、DESeq及びDESeq2)並びに差次的解析(edgeR、DESeq及びDESeq2)を、Benjamin Bertin及びYoan Renaud(GREd、Clermont-Ferrand)によって行った。
【0047】
膜分画:組織を、プロテアーゼ阻害剤を含有するHEPES緩衝液(20mM HEPES pH 7.4、320mMスクロース、5mM EDTA、5mM EGTA)中、4℃でホノジナイズし、超音波処理し、4℃で15分間、1000gで遠心分離した。ペレットを廃棄した。オルガネラスピンについては、上清を4℃で10分間、15,000gで遠心分離し、オルガネラペレットを保持した。細胞質スピンについては、上清を4℃で1時間、100,000gで遠心分離した。細胞質画分は上清中にあり、膜画分はペレット中にあった。次いで、膜ペレットをSB緩衝液(20mM HEPES pH 7.4、1M KI、5mM EDTA、5mM EGTA、4℃)に再懸濁し、4℃で1時間、100,000gで遠心分離して、弱く結合した膜タンパク質を除去した。次いで、膜画分を、Triton(1%)及びプロテアーゼ阻害剤を含有するRB緩衝液(20mM HEPES pH 7.4、100mM NaCl、5mM EDTA、5mM EGTA)中に再懸濁した。氷浴で超音波処理した後、続いて膜画分を4℃で2時間穏やかに撹拌した。可溶化した膜画分を、4℃で1時間、100,000gで遠心分離した。膜画分は上清中にあった。
【0048】
ウェスタンブロット:3匹のマウスからのL4~L6 DRGをプールし、トリトン(1%)及びプロテアーゼ阻害剤を含有する溶解緩衝液中でホノジナイズした。ホモジネートを4℃で20分間、18,000gで遠心分離し、上清を回収した。50μgの総タンパク質を、7.5%ゲル上のSDS-PAGEによって分離した。一次抗体を、ニトロセルロース膜に移し、BSA(5%)で飽和させた後、HCN1及びHCN2(Neuromab)については1/500、TRIP8b(Neuromab)については1/1000、アクチン (Sigma-Aldrich)については1/5000の希釈で使用した。TBSTで3回連続して洗浄した後、対応するHRP結合二次抗体(ThermoFisher)を1:10,000希釈でインキュベートし、化学発光基質(SuperSignal West Pico Chemiluminescent Substrate、Thermofisher)で検出した。
【0049】
パッチクランプ記録:電気生理学的実験を、以前に記載されたように(Marger et al.,2011)[28]、単離されたペースメーカー心臓細胞に対して行った。Axopatch 200A増幅器(Axon Instruments Inc.増幅器(Axon Instruments Inc.,Foster USA)を用いて、HCNチャネルによって生成されたIf電流を記録した。約5mMΩの抵抗の記録電極を、mM/L:K+-アスパラギン酸塩、130mM/L;NaCl、10mM/L;ATP-Na+塩、2mM/L;クレアチンリン酸、6.6mM/L;GTP-Mg2+、0.1mM/L;CaCl2、0.04mM/L(PCa=7);Hepes-KOH、10mM/L;(KOHでpH=7.2)を含有する細胞内溶液で充填した。IK1電流
を遮断するために5mM BaCl2を含有する、Tyrode細胞外溶液を使用した。If電流振幅及び動態に対するNUCC5953(5μM)の作用を、イバブラジン(3μM)の作用と、両方とも細胞外溶液中で希釈して比較した。データ取得を、pClampソフトウェア(ver.9,Axon Instruments Inc.)を使用して行った。
【0050】
in vitroアッセイ
蛍光偏光アッセイ:蛍光偏光(FP)に基づくアッセイを使用して、公開されているように(Han et al.,2015)[13]、HCNとTRIP8b尾部との間の相互作用を破壊することができる化合物を特定した。
【0051】
実施例2:結果
初めて、TRIP8b mRNAの存在(DRGマウスから得られたRNAseqデータは、スプライスバリアント2~5:NM_01163516、NM_01163517、NM_01289505、NM_01310460の存在(FPKM>1)を示した)、並びにマウスのDRG及びTGニューロンにおけるタンパク質が観察された。加えて、HCN1-2チャネル及びTRIP8bの転写物及びタンパク質発現は、対照と比較してオキサリプラチン処置動物の末梢ニューロンにおいて有意に増加し、これは、OIPN(オキサリプラチン誘発性神経障害モデルマウス)の発生における2つのタンパク質の関与を示唆する(
図1 A~C)。オキサリプラチン対ビヒクルの単回投与で(
図1D)又は反復投与後(
図1E)に処置した動物の脊髄におけるTRIP8bタンパク質発現の分析は、オキサリプラチンの作用下でのTRIP8bタンパク質の明らかな増加を示す。
【0052】
TRIP8b-HCN相互作用を破壊することができる分子であるNUCC5953(Han et al.,2015)[13]を使用して、オキサリプラチン誘発性急性寒冷過敏症が、髄腔内(0.2);15μg/マウス;
図2)又は全身的(4mg/kg;
図3)のいずれかで用量依存的に逆転され得ることが示された。
【0053】
NUCC5953(4mg/kg)を皮下投与してマウスを処置した場合、ロータロッド試験において歩行運動活性の変化は観察されなかった(
図4)。
【0054】
同時に、準備データはまた、NUC5953の投与が、OIPN動物由来のDRGニューロンの膜画分におけるHCN1及び2並びにTRIP8bタンパク質の過剰発現を減少させることを示唆している(
図5)。
【0055】
単離された心臓ペースメーカー細胞に対するパッチクランプ実験は、汎-HCNブロッカーであるイバブラジンとは対照的に、If電流振幅に対するNUCC5953の作用を示さなかった(
図6)。
【0056】
鎮痛用量(4mg/kg、腹腔内)で投与した場合、NUCC5953は心拍数にin
vivoで影響を及ぼさない(
図7)。結果は、平均心拍数が、NUCC5953注射前(A)、注射時(B)及び注射30分後(C)の3匹のマウスにおいて変化しないことを示す。
【0057】
実施例3:ペプチド模倣体の設計
ペプチド模倣体の設計
四量体ペプチド模倣体
HCN2チャネルのカルボキシ末端の配列を模倣するペプチド模倣化合物を設計し、合成した。これらのペプチド模倣体の設計は、タンパク質データベース(pdb:4 EQF)において入手可能な、HCN2のC末端領域とのTRIP8bの共結晶の広範なX線
構造試験に基づいた。この構造を完成させ、改良するための準備モデリング作業を行った。欠損部分を、TRIP8bと30~60%の範囲の配列同一性を示す異なるPEX5構造(PDB:1FCH、3R9A、4KXK、4KYO、2J9Q、2C0M及び2C0L)からの配列相同性によってモデル化した。得られたモデルにより、HCN-TRIP8b複合体の形成に関与する残基間の接触を特定した。特に、本試験は、TRIP8bのTPRドメインにおける2つの疎水性ポケットを特定するものであり、この2つの疎水性ポケットは、このタンパク質ドメインに対するリガンドの良好な親和性に必須である(
図8)。
【0058】
TRIP8bの疎水性ポケット1により、リガンドのC末端残基を固定する側鎖が得られる。リガンドと、HCNのCNBDドメインに対する結合部位として特定されたTRIP8bの中央領域付近に位置する疎水性ポケット2との効果的な相互作用もまた、阻害剤の親和性を増強する。これらの疎水性ポケットを標的とすることができる様々な側鎖を有するいくつかの4残基ペプチド-ペプトイドハイブリッドオリゴマーを設計し、分子動力学(MD)によって評価した。
【0059】
構造に基づく設計により、TRIP8bのSNLペプチド結合部位(TPRドメイン)で相互作用するペプチド模倣リガンドが特定された。これらのリガンドは、上記のLF108の式又は以下の一般式(I):
【化19】
[式中、
R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、上記定義のとおりである]によって表される式を有する。
【0060】
この化合物は、ペプチド-ペプトイドハイブリッドオリゴマー(ペプトマー)であるOstergaard et al.,1997)[17]。これらは、配列のC末端に配置されたα-アミノ酸を含む4つの残基、及び3つの連続したペプトイド残基を含む。第3の残基(N末端から)は、β-ペプトイド単位又はα-ペプトイド単位のいずれかである。概して「ペプトイド」と呼ばれるα-ペプトイドは、N-置換グリシンオリゴマーを指す(Simon et al.,1992)[18]。ペプチドと比較して、側鎖は、α-炭素原子ではなくアミド結合の窒素原子に結合している。β-ペプトイドは、N-置換β-アミノプロピオン酸単位から構成されるオリゴマーである(Hinder et al.,1998)[19]。したがって、β-ペプトイド残基は、α-ペプトイド残基と比較して骨格中に追加のメチレン基を含有する。ペプトイドは、生物活性化合物の開発に有利な特徴を有する。それらは、各々の新規な単位が2ステップで構築される、段階を踏む「サブモノマー」アプローチを使用して、固相合成に適している(Zuckermann et al.,1992)[20]。ペプトイドは、多種多様な側鎖、タンパク質構成側鎖及び非天然側鎖の両方を組み込み得る(Culf et al.,2010)[21]。「サブモノマー」合成では、単純な出発分子、例えば、α-単位の構築のためにはブロモ酢酸及び第一級アミン、並びにβ-ペプトイド単位の構築のためには塩化アクリロイル及び第一級アミンを使用する。側鎖が組み込まれる第一級アミンは、何百もが市販
されているか、又は適切な場合にはそれらの使用前に調製することができる。N,N-二置換アミド(第三級アミド)に基づくペプトイド骨格は、プロテアーゼに耐性であることが示されている(Miller et al.,1995)[22]。第三級アミド結合の存在はまた、それらに、より良好な細胞透過性を与え(Kwon et al.,2007;Vollrath et al.,2013)[23、24]、いくつかの試験では、ペプトイドがペプチドよりも免疫原性が低いことを示す傾向がある(Li et al.,2010;Chongsiriwatana et al.,2008)[25、26]。
【0061】
合成を、2-クロロトリチルクロライド(2-CTC)樹脂上で行い、切断後にペプトマーのC末端にカルボン酸をもたらした。支持体上に固定化された第1の残基であるα-アミノ酸は、SNLペプチドのC末端に対応するL-ロイシンをはじめとする、疎水性タンパク質構成アミノ酸の群から主に選択された。α-アミノ酸を、保護されたN-Fmoc形態で樹脂上に固定化した。Fmoc基の除去後、ペプトイド残基による鎖伸長を、「サブモノマー化学」アプローチによって達成した。既知のプロトコルを実施したが、β-ペプトイドモノマーの合成にはいくつかの技術的調整が必要であった。N末端をアシル化した後、酸性条件下でヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いて切断し、ジクロロメタン中でトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて側鎖を脱保護した。
【0062】
粗ペプトマー化合物をLC-MSによって分析し、次いで214nm及び220nmでのUV検出を用いてC18フラッシュクロマトグラフィーカートリッジで精製した。純粋な画分を回収し、凍結乾燥した。純粋な化合物を、Nucleodur(登録商標)C4カラム(5μm、300Å、250mm×4.6mm)での逆相HPLCによって分析した。以下の表2に、化合物のHRMS及びHPLCデータを示す。
【表1】
aLCMS。UHPLC Ultimate 3000 RSLC鎖(ThermoScientific)、Kinetex EVO C18カラム(100×2.1mm、1.7μm)(Phenomenex)、流量:0.45mL/分、カラムオーブン:30℃、H2O勾配(0.1%ギ酸/ACN(0.1%ギ酸):t=0分95:5;t=7.5分1:99、t=8.5分1:99;t=9分95:5;t=11分95:5。
bHPLC。Series 1100 Agilent鎖、Nucleodur(登録商標)C4カラム(5μm、300Å、250mm×4.6mm)、流速0.5mL/分。H2O/ACN勾配(0.1%TFA):t=0分95:5;t=5分95:5;t=25分5:95;t=35分5:95、t=40分95:5、t=50分95:5。
cUV 214nm検出。
【0063】
側鎖
R
1は、独立して、CH
3(L-Ala)、CH(CH
3)
2(L-Val)、CH(CH
3)CH
2CH
3(L-Ile)、CH
2CH(CH
3)
2(L-Leu及びD-Leu)、CH
2C(CH
3)
3、C(CH
3)
3、CH
2(シクロブチル)であり、
R
2、R
3、及びR
4は、第一級アミンからの合成中に逐次的に組み込まれるペプトイド単位の側鎖であり、
R
2及びR
3は、独立して、CH
2CH(CH
3)
2、CH
2CH
2NH
2、CH
2CH
2OH、CH
2CH
2CH
2OH、CH
2CH(OH)CH
3、CH
2CONH
2、CH
2CH
2CONH
2から選択される。アルコール又はアミン官能基を有する側鎖は、保護された形態、すなわちアルコール官能基についてはシリルエーテル及びアミン官能基についてはtert-ブチルカルバメート(Boc)でオリゴマーに組み込まれており、
R
4は、以下の:
【化20】
から選択される脂肪族又は芳香族基である。
R
5は、独立して、CH
3、CH(CH
3)
2、CH
2C
6H
5、C
6H
4X(式中、オルト位、メタ位又はパラ位のXは、独立して、H、OMe、CF
3、CH
3、CH
2CH
3、F、Br、Cl、NO
2である)、3-インドリル、3-キノリニルである。
【0064】
C末端にα-アミノ酸、続いてβ-及び2つのα-ペプトイド残基を組み込むN-アシル化ペプトマーの合成のための2-クロロトリチルクロリド樹脂上での代表的な合成スキーム。
【化21】
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン;Fmoc:フルオレニルメチルオキシカルボニル;DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;DIC:ジイソプロピルカルボジイミド;HFIP:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール;t.a.:室温;TFA:トリフルオロ酢酸
【0065】
【0066】
合成
一般式(I)に対応する化合物を、シンター及びストップコックを備えた5mLプラスチックシリンジ内の2-クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem 100~200メッシュ)上で合成した。反応中、シリンジをオービタルシェーカー加熱プラッ
トフォーム上に置いた。
【0067】
C末端のL-ロイシン及びこのアミノ酸の前のβ-ペプトイド残基で記載される典型的な合成において、2-クロロトリチルクロリド樹脂(1.33mmolg-1、0.100g、0.133mmol)を、2mLの乾燥CH2Cl2中で膨潤させた(2×20分)。濾過後、Fmoc-Leu-OHの2.2M CH2Cl2溶液0.12mL(2.0当量)を添加し、続いてDIEAの0.4M CH2Cl2溶液2.0mL(6.0当量)を添加した。混合物を25℃で40分間撹拌した。樹脂を排出し、CH2Cl2(2×2mL)で洗浄し、Fmoc-ロイシンの樹脂への結合を同じ条件下で繰り返した。樹脂をCH2Cl2(5×2mL)で洗浄した。20%ピペリジンDMF溶液2.0mLを添加し、室温で15分間撹拌することにより、Fmoc基を除去した。同じ条件下で操作を繰り返し、その後、樹脂をDMF(5×2mL)で洗浄し、排出した。
【0068】
β-ペプトイド残基の導入。樹脂を、-CH2Cl2で2回-20℃にて洗浄することにより冷却した。-20℃に冷却した塩化アクリロイルの0.22M CH2Cl2溶液1.21mL(2.0当量)を添加し、続いて冷却(-20℃)したEt3N(3.0当量)の0.5M CH2Cl2溶液0.8mLを添加した。樹脂を25℃で1時間撹拌し、排出し、次いで同じ条件下、塩化アクリロイルで再び処理した。樹脂を濾過し、CH2Cl2(5×2mL)で洗浄し、排出した。得られたアクリルアミドを、アミンR2NH2の2.0Mイソプロパノール溶液(12.0当量)で、50℃で24時間処理した。樹脂を濾過した後、同じ条件下でアザ-マイケル反応を繰り返した。樹脂をイソプロパノール(5×2mL)で洗浄した後、2つのα-ペプトイド残基のサブモノマー合成を行った。
【0069】
α-ペプトイド残基の合成。樹脂に、ブロモ酢酸の0.4M DMF溶液2.0mL(6.0当量)、続いてCIDの0.5M DMF溶液2.13mL(8.0当量)を添加した。25℃で5分間撹拌した後、樹脂を排出し、DMF(5×2mL)で洗浄した。次いで、得られたブロモアセトアミドを、アミンR3NH2(20.0当量)の2.0M DMF溶液で処理し、混合物を撹拌プラットフォーム上に40℃で1時間放置した。樹脂を濾過し、DMF(5×2mL)で洗浄した。最後の2つのブロモアセチル化及び置換ステップを同じ条件下で繰り返して、所望のR4側鎖を有する第4の残基を構築した。次いで、ペプトマーのN末端を、以下に記載される全般的手順の1つに従ってアシル化した後、樹脂からその除去を行った。
【0070】
切断のために、樹脂をHFIPの2.4M CH2Cl2溶液1.5mLで処理した。25℃で40分間撹拌した後、樹脂を濾過し、CH2Cl2(5×2mL)で洗浄した。溶媒を減圧下で除去した。最後に、ペプトマーをCH2Cl2中25%(v/v)TFA
2mLで、室温で10分間処理することによって、側鎖のシリル化保護基又はBoc保護基を除去した。最終生成物を含有する反応混合物をCH2Cl2(5mL)で希釈した後、真空中で完全に蒸発させた。全ての微量のTFAを除去するために、CH2Cl2に溶解した生成物を真空下で蒸発させ、この操作を5回繰り返した。
【0071】
樹脂結合ペプトマーのN末端のアシル化のための全般的手順。
アセチル化:樹脂に、無水酢酸の1.7M DMF溶液1.56mL(20.0当量)、続いてDIEAの2.0M DMF溶液0.8mL(12.0当量)を添加した。25℃で90分間撹拌した後、樹脂を濾過し、DMF(5×2mL)で洗浄した。
【0072】
ベンゾイル化:樹脂に、塩化ベンゾイルの1.0M CH2Cl2溶液0.8mL(6.0当量)、続いてDIEAの2.0M CH2Cl2溶液0.8mL(12.0当量)を添加した。25℃で40分間撹拌した後、樹脂を排出し、CH2Cl2(5×2mL)
で洗浄した。
【0073】
カルボン酸からのアシル化:フェニル酢酸からの本明細書に記載される典型的なカップリング反応において、フェニル酢酸の0.4M DMF溶液2.0mL(6.0当量)及びDICの0.5M DMF溶液2.13mL(8.0当量)を、樹脂に連続的に添加した。25℃で1時間撹拌した後、樹脂を排出し、DMF(5×2mL)で洗浄した。
【0074】
合成した化合物(YC55、YC-60)のうち、YC55は、TRIP8b-HCN相互作用の破壊においてNUCC5953と等しい効力を示した(表1:ペプトイドのIC50)。
【表2】
【0075】
髄腔内又は全身的のいずれかで注射された新規ペプチド模倣化合物の鎮痛効果が、マウスにおけるオキサリプラチン誘発性急性神経障害性疼痛において実証された。
【0076】
こうして、リード化合物YC55は、髄腔内投与した場合、OIPNマウスにおいて用量依存的鎮痛効果を示した(
図9)。
【0077】
化合物YC55はまた、皮下投与した場合も、OIPNマウスにおいて用量依存的鎮痛効果を示した(
図10)。
【0078】
マウスをYC55で皮下投与して処置した場合、ロータロッド試験において歩行運動活性の変化は観察されなかった(
図11)。
【0079】
YC55はまた、パクリタキセル誘発性神経障害のラットモデルにおいて、髄腔内投与した場合に用量依存的鎮痛効果を示した(
図12)。
【0080】
YC55の髄腔内投与は、外傷性坐骨神経損傷によって誘発された神経障害のモデルにおいて抗痛覚過敏効果を示し(
図13)、TRIP8b相互作用を破壊するストラテジーが、いくつかの神経障害性疼痛状態において鎮痛作用を有し得ることを示唆した。
【0081】
化合物MP208、MP405(5μg、髄腔内)及びMP341、MP354、MP376(10mg/kg、皮下)は、マウスのオキサリプラチン誘発性神経障害モデルにおいて鎮痛効果を示した(それぞれ
図14及び
図15)。
【0082】
同様に、化合物LF108、LF306、LF188(
図16)、LF400、LF329、及びLF295(
図17)、LF275、LF261、及びLF126(
図18)、LF239、LF222、及びLF176(
図19)は、マウスのオキサリプラチン誘発性急性神経障害モデルにおいて鎮痛効果(5μg、髄腔内)を示した。
【0083】
B-三量体ペプト模倣体
三量体ペプトマー化合物はまた、HCN2チャネルのカルボキシ末端配列の模倣体である。それらは、TRIP8bとHCN2のC末端領域(bp:4EQF)との共結晶の広範なX線構造試験に基づいて設計された。
【0084】
これらのリガンドは、以下の式LF369又は以下の一般式(II):
【化24】
[式中、
R
1、R
2及びR
3は、先に定義したとおりであり、
R
6は、H、R
3、COR
5(式中R
5は、先に定義したとおりである)、又はR
7であり、
R
7は、独立して、以下のうちの1つ:
【化25】
である]によって表される式を有する。
【0085】
この化合物は、ペプチド-ペプトイドハイブリッドオリゴマー(ペプトマー)であるOstergaard et al.,1997)[17]。これらは、配列のC末端に配置されたα-アミノ酸、続いて2つのペプトイド残基を含む、3つの単位を含む。
【0086】
合成を、tert-ブチルエステルとして保護されたα-アミノ酸(LF369の合成の場合、Xaa-tBu、L-Leu-tBu)から溶液中で行った。また、これらの合成を、四量体ペプチド模倣体について先に記載したように、樹脂上で行い得る。この単位から、一般式(I)に対応する分子に関して伸長を、「サブモノマー化学」アプローチによって行った。コア単位がβ-ペプトイド型のものである場合、その構築に必要な2つのステップは、Xaa-tBuと塩化アクリロイルとの反応、続いて所望の側鎖(R2)を骨格に導入するためのアザ-マイケル反応である。第3のα-ペプトイド単位を、二量体を臭化ブロモ酢酸でアシル化し、続いて臭素原子をアミンで置換することによって構築する。R6がHである場合、使用するアミンは第一級アミンR3NH2である。R6がCOR5である場合、R3NH2で処理した後に得られた第二級アミンを、カップリング条件下で酸塩化物、酸無水物又はカルボン酸でアシル化する。R6=R7である化合物を、N末端ブロモアセチル化二量体を第二級アミンR3R7NHで処理することによって得る。それらを、N末端にNHR3を有する化合物の還元的アミノ化によっても得ることができる。最終ステップは、TFAでの処理によって側鎖及びC末端を脱保護することである。
【0087】
LF369の合成のための正確な実験プロトコルは以下のとおりである。
フラスコ内で、L-leu-tBu(1.74g、7.8mmol)を45mLの無水THFに溶解する。不活性アルゴン雰囲気下のフラスコを0℃に冷却する。トリエチルアミン(2.3mL、31.4mmol、4当量)を添加し、続いて塩化アクリロイル(0.76mL、9.4mmol、1.2当量)を添加する。0℃で3時間撹拌した後、薄層クロマトグラフィー(50/50シクロヘキサン/AcOEt)によると完全な変換を示
す。形成した塩を濾過により除去し、濾液を真空下で蒸発させ、得た生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(50/50シクロヘキサン/AcOEt)により精製する。アクリルアミドを収率93%(1.76g、7.27mmol)で白色固体として単離する。
【0088】
アザ-マイケル反応。先に形成したアクリルアミド(1.76g、7.27mmol)を20mLのエタノールに溶解する。tert-ブチルジメチルシリルエーテルとして保護されたアルコール官能基を有するエタノールアミン(2.68g、15.28mmol、2.1当量)を添加し、反応混合物を60時間加熱還流する。次いで、溶媒を蒸発させ、反応粗製物をシリカゲルクロマトグラフィー(90/10/0.1 AcOEt/MeOH/Et3N)により精製して、二量体を収率90%収率(2.74g、6.58mmol)で黄色がかった油状物として得る。
【0089】
二量体のアシル化反応。二量体(2.74g、6.58mmol)を10mLのTHFに溶解し、反応器をアルゴンで不活性化し、次いで-20℃に冷却する。トリエチルアミン(1.1mL、7.89mmol、1.2当量)を溶液に添加し、続いて臭化2-ブロモアセチル(0.62mL、7.89mmol、1.2当量)を添加する。-20℃で3時間撹拌した後、反応混合物を濾過する。得られた濾液を蒸発させ、反応粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理する(60/40/0.1のシクロヘキサン/AcOEt/Et3N)。ブロモアセチル化二量体を収率67%(2.36g、4.4mmol)で黄色がかった油状物として単離する。
【0090】
置換反応。先に得た生成物(2.36g、4.4mmol)を10mLのTHFに溶解する。トリエチルアミン(1.2mL、8.8mmol、2当量)、次いで保護エタノールアミンH2NCH2CH2OTBDMS(2.31g、13.2mmol、3当量)を溶液に添加する。アルゴン雰囲気下の反応媒体を室温で一晩撹拌する。次いで、反応混合物を濾過し、得た濾液を蒸発させる。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(95/5/0.1のAcOEt/MeOH/Et3N)により精製して、三量体を収率83%(2.30g、3.64mmol)で油状物として得る。
【0091】
三量体のアセチル化。得られたアミン(2.3g、3.64mmol)を20mLの酢酸エチルに溶解する。トリエチルアミン(2.02mL、14.5mmol、4当量)、次いで無水酢酸(2.75mL、29mmol、8当量)を溶液に添加する。反応物をアルゴン下に、室温で60時間置く。溶媒を蒸発させた後、得た粗製物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理(90/10/0.1のAcOEt/シクロヘキサン/Et3N)して、N-アセチル化三量体を収率92%(2.27g、3.36mmol)で無色油状物として得る。
【0092】
側鎖及びC末端の脱保護。三量体化合物(502mg、0.776mmol、1当量)を4mLのTFA/CH2Cl2/H2O(47.5:47.5:5)混合物に溶解する。室温で2時間撹拌した後、10mLのジクロロメタンを添加する。反応媒体を真空下で蒸発させ、次いでジクロロメタンとの5回の共蒸発を行う。次いで、生成物を5mLの蒸留水に再溶解し、室温で2時間撹拌下のままにする。溶媒を蒸発させ、次いでトルエンとの5回の共蒸発を行い、LF369(362mg)を油状物として得る。
【0093】
側鎖
R
1、R
2及びR
3は、先に定義したとおりであり、
R
6は、R
3、H、COR
5(式中、R
5は、先に定義したとおりである)、又はR
7であり、
R
7は、独立して、以下のうちの1つ:
【化26】
である。
【0094】
一般式(II)のペプトイド、例えばLF369の溶液合成のための代表的な合成スキーム。
【化27】
【0095】
一般式(II)のペプトイド、例えばLF369の支持合成のための代表的な合成スキーム。
【化28】
【0096】
【0097】
合成
化合物LF369(5μg、髄腔内)は、オキサリプラチン誘発性神経障害のマウスモデルにおいて鎮痛効果を示した(
図20)。
【0098】
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