(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】老化を遅らせる活性物質としてのコラーゲン加水分解物
(51)【国際特許分類】
C07K 2/00 20060101AFI20231018BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231018BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231018BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231018BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231018BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20231018BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20231018BHJP
C07K 1/12 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
C07K2/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/48
A61P43/00 111
A61P3/02
A61K38/39
C07K1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521621
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2021069480
(87)【国際公開番号】W WO2022073664
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】102020126594.8
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502084056
【氏名又は名称】ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ハウスマンス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ウルリヒ フレヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェン エッサー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA53
4C076BB01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA43
4C084CA18
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4C084MA17
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4C084NA05
4C084NA14
4C084ZC521
4C084ZC522
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA60
4H045FA16
(57)【要約】
本発明は、ヒト又は動物の体内の細胞の老化を遅らせるための活性物質として使用するためのコラーゲン加水分解物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の体内の細胞の老化を遅らせるための活性物質としての使用のためのコラーゲン加水分解物。
【請求項2】
前記体の細胞が線維芽細胞である、請求項1に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項3】
前記使用が非治療的使用、特に美容的使用である、請求項1又は2に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項4】
前記使用が加齢に伴う疾患を予防及び/又は治療するための治療的使用である、請求項1又は2に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項5】
前記コラーゲン加水分解物が、体の細胞のテロメアの短縮に対抗し、そして特にテロメアの短縮率を低下させる、請求項1~4のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項6】
前記コラーゲン加水分解物が、体の細胞内の酵素テロメラーゼを活性化する、請求項5に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項7】
前記コラーゲン加水分解物が経口投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項8】
前記コラーゲン加水分解物が、粉末、溶液、ゲル、錠剤またはカプセルの形態で投与される、請求項7に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項9】
前記コラーゲン加水分解物が、約0.5~約20gの1日用量で、好ましくは約2~約15gの1日用量で、より好ましくは約3~約10gの1日用量で、特に、約4~約8gの1日用量投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項10】
前記コラーゲン加水分解物が、500~15000Da、好ましくは1000~8000Da、より好ましくは1500~5000Da、最も好ましくは1800~2200Daの平均分子量を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項11】
前記コラーゲン加水分解物が、コラーゲンを含む出発材料の酵素加水分解によって生成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項12】
前記コラーゲン含有出発材料が、脊椎動物、好ましくは哺乳類、鳥類又は魚類の皮膚又は骨、特に牛又は豚の皮膚から選択される、請求項11に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項13】
前記コラーゲン加水分解物が、異なる特異性の少なくとも2つのエンドプロテアーゼ、特に少なくとも2つの異なるメタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼの連続作用によって生成される、請求項11又は12に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項14】
前記メタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼが、微生物バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)からの酵素から選択される、請求項13に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項15】
前記コラーゲン加水分解物のN末端アミノ酸の少なくとも50%が疎水性アミノ酸、特にアラニン、ロイシン、及びイソロイシンである、請求項14に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項16】
前記コラーゲン加水分解物が、組換え遺伝子発現によって生成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項17】
前記コラーゲン加水分解物が、身体の細胞のテロメアの短縮に対抗する少なくとも1つのさらなる活性物質と組み合わせて投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのさらなる活性物質が、アストララグス(トラガント)、シミシフガ(バグベイン、)、デンドロパナクス及びカッパフィクス属の植物の植物抽出物から選択される、請求項17に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項19】
前記コラーゲン加水分解物が、コラーゲン加水分解物以外のさらなる活性物質を含まない組成物で投与されるべきである、請求項1~16のいずれか1項に記載のコラーゲン加水分解物。
【請求項20】
前記投与される組成物が、実質的に完全にコラーゲン加水分解物からなる、請求項19に記載のコラーゲン加水分解物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の体内の細胞の老化を遅らせるための活性物質として使用するためのコラーゲン加水分解物に関する。
【背景技術】
【0002】
一方では、ヒトや動物の体の生物学的老化は、外部環境の影響に関連しており、生涯にわたって蓄積される。 しかしながら、このような環境の影響とは別に、体の個々の細胞のレベルでは、加齢と一生の間にテロメアが徐々に短くなるという一般的な関連性もある。テロメアは、染色体の末端にある DNA の反復部分で、最初は細胞が分裂するたびに短くなる。 この短縮は、DNA 合成酵素テロメラーゼによって部分的に補償される可能性があり、テロメラーゼの活性は細胞の種類によって大きく異なる。 テロメアの長さが特定の値を下回ると、それ以上の細胞分裂はない。
【0003】
生物の老化プロセス、つまり生物の寿命については、テロメアの短縮率として関連するのはテロメアの元の長さではなく、例えば、1年当たりの塩基対でのテロメアの平均短縮として定義できる(K Whittemore et al. in PNAS 116 (2019) 15122-15127を参照のこと)。
【0004】
しばらくの間、テロメアの短縮に対抗する活性物質が、ヒトや動物の体の細胞、及び従って組織、臓器、及び体全体の老化を遅らせるために、このように順に、求められて来た。このような考慮事項は、特に(排他的ではないが)皮膚の老化に関連している。
【0005】
老化を遅らせるための対応する活性物質として、様々な植物抽出物がすでに提案されており、例えば、国際公開第2005/044179 A2号 におけるアストララグス及びシミシフガ属の植物、又は 国際公開第2018/139835 A1号 におけるデンドロパナクス属及びカッパフィカス属の植物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヒト又は動物の体内の細胞の老化を遅らせる有効な活性物質を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的を達成するために、対応する活性物質としてコラーゲン加水分解物の使用が提案される。 以下で詳細に説明するように、細胞試験は、コラーゲン加水分解物がテロメアの短縮を大幅に抑制し、テロメラーゼを活性化することを示すことができた。
【0008】
特に、本発明は、皮膚の老化を遅らせるためのコラーゲン加水分解物の使用に関する。これは、典型的には、しわの形成、弾力性の喪失、いわゆる肝斑の形成などの形で表される。この場合、コラーゲン加水分解物の作用によって影響を受ける体の細胞は線維芽細胞である。
【0009】
本発明の範囲内で老化を遅らせることができる他のタイプの体細胞は、骨芽細胞及び軟骨細胞などの他の結合組織細胞、並びに筋肉細胞(筋細胞)、神経系細胞(ニューロン)及び免疫系の細胞である。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、コラーゲン加水分解物の使用は、非治療的使用、すなわち特に美容的使用である。 これは、身体の生物学的老化は、自然なプロセスとして、医学的な意味での治療を必要とする病的状態ではないという事実を考慮に入れている。 それでも、老化を遅らせることは、生活の質の向上に寄与する可能性がある。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、コラーゲン加水分解物の使用は、加齢関連疾患を予防及び/又は治療するための治療的使用である。 テロメアの短縮に関連するこの種の疾患は、特にアテローム性動脈硬化症、慢性肝疾患、炎症性腸疾患、及び副腎と脾臓の特定の疾患である。 加齢と共に累積的に発生するその他の疾患には、骨粗鬆症、関節症、サルコペニア、アルツハイマー病などの認知症がある。
【0012】
本発明による使用において、コラーゲン加水分解物は、好ましくは、身体の細胞におけるテロメアの短縮に対抗し、特にテロメア短縮率を低下させる。 前述のように、少なくとも異なる種間で比較すると、テロメアの短縮率は寿命と相関している。 ヒト線維芽細胞で実施された細胞試験は、コラーゲン加水分解物によるこの速度の低下を明確に示すことができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による使用の範囲内で、コラーゲン加水分解物は、体の細胞内の酵素テロメラーゼを活性化することができる。 ヒト線維芽細胞を用いた細胞試験でもこの効果を示すことができた。 しかしながら、テロメラーゼの活性化は、必ずしもテロメアの短縮に対抗する作用の唯一のメカニズムではない。
【0014】
特に骨粗鬆症や関節疾患との関連で、コラーゲン加水分解物からのプラスの生理学的効果がすでに長い間知られていることは事実である。 しかしながら、コラーゲン加水分解物とテロメアとの間の相互作用の兆候は全くなかったので、本発明の範囲内で観察された活性は全く驚くべきものである。
【0015】
コラーゲン加水分解物の使用が非治療的であるか治療的であるかに応じて、本発明の範囲内で、コラーゲン加水分解物は栄養補助食品として又は医薬品として投与され得る。 いずれにせよ、コラーゲン加水分解物は、健康上のリスクをまったく示さず、既知の有害な副作用がない製品である。
【0016】
好ましくは、コラーゲン加水分解物は経口投与される。 コラーゲン加水分解物のペプチドは、10000Daまでの比較的高分子量であっても、少なくともある程度は腸に再吸収されることが知られている。 従って、原則として経口投与されたコラーゲン加水分解物は、作用部位として全身の細胞に到達する可能性がある。
【0017】
コラーゲン加水分解物の実際の投与形態は、粉末、溶液、ゲル、錠剤又はカプセルであり得る。
【0018】
投与されるコラーゲン加水分解物の1日用量は、特に経口投与の場合、好ましくは約0.5~約20g、好ましくは約2~約15g、より好ましくは約3~約10g、特に 約 4~約8gである。
【0019】
本発明による活性物質として、コラーゲン加水分解物は、典型的には、500~15000Da、好ましくは1000~8000Da、より好ましくは1500~5000Da、最も好ましくは1800~2200Daの平均分子量を有する。それぞれの場合において、引用された数値は、特にゲル浸透クロマトグラフィーによって決定され得る重量平均分子量を指す。
【0020】
好ましくは、コラーゲン加水分解物は、コラーゲンを含む出発材料の酵素加水分解によって生成される。 この加水分解のために、特に微生物又は植物起源のエンドペプチダーゼ又はエキソペプチダーゼが使用される。 ペプチダーゼ及び加水分解条件の適切な選択により、それぞれ所望の分子量範囲のコラーゲン加水分解物を製造することが可能になる。
【0021】
コラーゲン含有出発材料は、典型的には、脊椎動物、好ましくは哺乳動物又は鳥類の皮膚又は骨、特に牛又は豚(牛のスプリット又は豚の皮)の皮膚から選択される。 別法として、コラーゲンを含む出発材料は、魚、特に冷水魚又は温水魚の皮膚、骨及び/又は鱗から選択することができる。
【0022】
しかし、出発材料としてコラーゲン加水分解物を無脊椎動物から得て、本発明の範囲内で使用することもできる。 例えば、コラーゲン加水分解物は、軟体動物又はクラゲから生成され得る。
【0023】
コラーゲン加水分解物は、これらの出発材料から一段階法で、又はゼラチンの中間段階を経て製造することができ、その場合、タイプAゼラチン及びタイプBゼラチンの両方を使用することができる。
【0024】
好ましくは、コラーゲン加水分解物は、特異性の異なる少なくとも2つのエンドプロテアーゼ、特に少なくとも2つの異なるメタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼ、すなわち、コラーゲン分子のアミノ酸配列の特定のアミノ酸の前後をそれぞれ切断するプロテアーゼの連続作用によって生成される。好ましくは、メタロプロテアーゼ及び/又はセリンプロテアーゼは、微生物バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)からの酵素である。
【0025】
適切なエンドプロテアーゼを選択した結果、コラーゲン加水分解物の特定の分子量分布を得ることができるだけでなく、加水分解物中のペプチドの末端のアミノ酸のタイプに影響を与えることも可能である。 これに関して、例えば、コラーゲン加水分解物のN末端アミノ酸の少なくとも50%が疎水性アミノ酸、特にアラニン、ロイシン及びイソロイシンである場合が好ましい。
【0026】
酵素加水分解の代替として、本発明の範囲内で、コラーゲン加水分解物は、組換え遺伝子発現によって生成され得る。特にウシ叉はブタ由来の天然コラーゲン配列を使用し、それらを遺伝子組み換え細胞(酵母、最近、又は植物細胞、特にタバコ)で発現させることにより、コラーゲンを含む対応する原材料の加水分解生成物と実質的に同一の生成物を生成することが可能である。この場合、より狭い又は正確に所定の分子量分布を得ることが可能である。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によれば、コラーゲン加水分解物は、体の細胞におけるテロメアの短縮に対抗する少なくとも1つのさらなる活性物質と組み合わせて投与される。 状況によっては、この種の組み合わせにより、さらに顕著な効果を達成することができる。
【0028】
テロメアの短縮に対抗する少なくとも1つのさらなる活性物質は、好ましくは、アストララグス(トラガント)、シミシフガ(バグベイン、)、デンドロパナクス及びカッパフィクス属の植物の植物抽出物から選択される。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によれば、コラーゲン加水分解物は、コラーゲン加水分解物以外のさらなる活性物質を含まない組成物で投与される。 特に、投与される組成物が実質的に完全にコラーゲン加水分解物からなることが提供され得る。
【0030】
コラーゲン加水分解物が唯一の活性物質として使用されない場合、本発明のさらなる実施形態によれば、正の生理学的効果を有する1つ又は複数のさらなる成分(例えば、栄養補助食品又は医薬品中)と組み合わせることができる。この種の成分は、好ましくは、以下から選択される:ビタミンC、ビタミンB群、D群、E群、K群、共役リノール酸、カフェインおよびその誘導体、ガラナエキス、緑茶エキス、没食子酸エピガロカテキン、クレアチン、L-カルニチン、L-シトルリン、L-アルギニン、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、NADH、D-リボース、アスパラギン酸マグネシウム、抗酸化物質、例えばアントシアニン、カロテノイド、フラボノイド、レスベラトロール、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ、及びキサンタン、例えばマンギフェリン、ミネラル、例えば鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレン、リン、及びさらにタンパク質、加水分解物又はペプチド、例えば加水分解物またはペプチド、例えば大豆、小麦、又はホエイプロテイン。
【0031】
さらに、本発明は、コラーゲン加水分解物をヒト又は動物に投与することを含む、ヒト又は動物の体内の細胞の老化を遅らせる方法に関する。 この方法の利点及び好ましい実施形態は、本発明によるコラーゲン加水分解物に関連して既に記載されている。
【0032】
テロメアの短縮に対するコラーゲン加水分解物の有効性は、以下の実施例を参照してより詳細に説明される。
【実施例】
【0033】
テロメアの長さとテロメラーゼの活性に対するコラーゲン加水分解物の影響に関して、以下に説明するヒト線維芽細胞のインビトロ試験は、スペインのマドリッドにある Life Length によって実施された。
【0034】
1. コラーゲン加水分解物のテロメア長への影響
1.1 細胞培養
全ての試験は、成人ヒト線維芽細胞の細胞培養で実施された。 接種は、10% ウシ胎児血清、100 単位/ml のペニシリン、及び 1,000 単位/ml のストレプトマイシンを補充した高グルコース DMEM (ダルベッコ変性イーグル培地) 中の 1cm2当たり 2,000 細胞で、それぞれの場合に実行された。 培地は2~3日ごとに交換し、細胞は4~5日ごとに70~80%集密度で継代した。
【0035】
標準条件下での細胞培養と並行して、細胞培養を酸化条件下でも試験し、この場合、上記の培養培地はさらに10μMのH2O2 を含んでいた。
【0036】
1.2 コラーゲン加水分解物
試験に使用されたコラーゲン加水分解物(KH)は、VERSIOL(登録商標)という名前で出願人によって販売されている。それは、豚皮のA型ゼラチンから酵素加水分解により生成され、平均分子量は約2000 Daである。
【0037】
コラーゲン加水分解物の効果は、広範囲の濃度で試験された。 このために、各場合において、0.01mg/ml、0.1mg/ml、1mg/ml又は10mg/mlのコラーゲン加水分解物を培地に添加した細胞培養物を増殖させた(標準及び酸化条件下の両方で)。 それぞれの対照バッチにはコラーゲン加水分解物を添加しなかった。
【0038】
1.3 集団倍増
細胞培養物を8週間増殖させ、各継代の集団倍増(PD)を毎週決定した。
【0039】
累積 PD は、標準条件と酸化条件について以下の表に示されている。
【0040】
【0041】
【0042】
予想通り、酸化条件下での集団倍増は、標準条件下よりも一貫して少なくなっている。 対照的に、コラーゲン加水分解物の存在はPDに有意な影響を与えず、つまり、細胞増殖自体はコラーゲン加水分解物の影響を受けない。
【0043】
1.4 テロメアの長さと短縮率の決定
テロメアの長さは、蛍光 現場ハイブリダイゼーション (FISH) によって決定される。 このために、3つの反復テロメア配列とハイブリダイズした蛍光標識ペプチド核酸プローブが使用される。 特定のテロメアの蛍光強度はその長さに比例し、既知のテロメア長の対照細胞を使用して定量化が行われる。
【0044】
試験したすべての細胞培養で、テロメアの長さは 4週間後と 8週間後に決定され、対照バッチでは培養開始時 (0 週) に決定された。 細胞を固定し、ペプシンを使用して溶解し、各時点及び各細胞培養について5回の細胞溶解を行った。 DNAを4‘,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色し、プローブを用いてテロメアのハイブリダイゼーションを行った。
【0045】
次に、蛍光顕微鏡を使用して DAPI 染色細胞核の位置を特定し、ハイブリダイズしたテロメアの蛍光を定量化し、15 の異なる画像セクションをバッチごとに評価した (細胞溶解)。 テロメアの長さと分布は、適切なソフトウェアを使用して計算され、スチューデントのt検定を使用して統計分析を受けた。
【0046】
1.5 結果
1.5.1テロメア長
テロメア長の中央値、20 パーセンタイル (いずれもキロベース ペア、kbp)、及び「短いテロメア」(3kbp 未満) の割合は、蛍光顕微鏡によって得られたデータから 4週間後及び 8 週間後の各細胞培養について計算された。結果を以下の表に示す。 また、それぞれのサンプルを、コラーゲン加水分解物を含まない対照バッチの対応するサンプルと比較する、t検定によるp値もそれぞれの場合に示されている。 対照 バッチとの差は、値が p<0.05 の場合に統計的に有意である。 これらの値は太字で示されている。
【0047】
【0048】
【0049】
これらのデータは、少なくとも線維芽細胞が 8週間培養された後、テロメアの長さに対するコラーゲン加水分解物による有意な効果を示している。 この効果は、標準条件下と H2O2 の存在下の両方で、試験したすべての濃度に適用される。
【0050】
1.5.2 テロメア短縮率
テロメア短縮率の計算では、各細胞培養の4 週間後及び8週間後のテロメア長から培養開始時のテロメア長を引いたものを、それぞれの PD 値で割った (セクション1.3 を参照のこと)。 従って、速度は、集団倍増当たりのテロメアの平均短縮を示す。
【0051】
結果を下の表に示す。ここでも、p 値が0.05 未満の対照バッチとの比較で統計的有意性がある。
【0052】
【0053】
【0054】
これらのデータは、少なくとも線維芽細胞が 8 週間培養された後、テロメア短縮率に対するコラーゲン加水分解物による有意な効果を示している。 この効果は、標準条件下とH2O2の存在下の両方で、試験したすべての濃度に適用される。
【0055】
2.コラーゲン加水分解物のテロメラーゼ活性への影響
2.1 細胞培養
この試験は、成人ヒト線維芽細胞の初代培養で実施された。 培養培地は、10%ウシ胎児血清、100単位/mlのペニシリン及び1,000単位/mlのストレプトマイシンを補充した高グルコースDMEM(ダルベッコ変性イーグル培地)であった。
【0056】
培養開始時と24時間後にテロメラーゼ活性を測定した。
【0057】
2.2 コラーゲン加水分解物
テロメアの長さを決定するためのものと同じコラーゲン加水分解物が使用された (セクション 1.2 を参照)。 これを0.01mg/ml、0.1mg/ml、1mg/ml又は10mg/mlの量で培地に添加した。 対照バッチにはコラーゲン加水分解物を添加しなかった。
【0058】
2.3 テロメラーゼ活性の測定
酵素テロメラーゼの活性は、TRAP法(テロメア反復増幅プロトコル)によって決定された。 このために、細胞を溶解し、タンパク質を抽出した。 オリゴヌクレオチド基質が添加され、そしてこれを抽出されたテロメラーゼによって天然のテロメアに対応する方法で伸長した。
【0059】
テロメラーゼの反応生成物は、定量的リアルタイムPCRを使用して増幅された。 測定変数は、蛍光が最初に閾値 (Ct 値) を超えた後のサイクル数であった。 異なる濃度のHeLa 細胞を用いたキャリブレーションにより、サンプルの相対テロメラーゼ活性 (RTA) を計算することが可能になった。
【0060】
2.4 結果
培養開始時及び 24 時間後の異なる KH 濃度に対する線維芽細胞の相対テロメラーゼ活性を、それぞれ3回測定しました。 以下の表は、平均値と標準偏差 (sd)、及びそれぞれの場合の対照バッチ (KH なし) との比較のための t 検定による p 値を示している。 p 値が 0.05 未満の場合、統計的有意性がある。
【0061】
【0062】
これらのデータは、繊維芽細胞におけるテロメラーゼ活性が、0.1、1、又は 10 mg/mlの濃度のコラーゲン加水分解物の添加によって増加することを示しているが、増加は0.1mg/ml の場合にのみ有意である。
【国際調査報告】