(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】RF受信機システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
A61B5/055 372
A61B5/055 355
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522376
(86)(22)【出願日】2021-09-26
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2021076424
(87)【国際公開番号】W WO2022078739
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン リエル フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】オウゾウノフ ソティル フィリポフ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB02
4C096AD10
4C096AD12
4C096CD05
4C096DA02
4C096DA30
(57)【要約】
磁気共鳴(MR)イメージングシステムの検査スペースからのMR情報を提供する無線周波数(RF)受信機システム1に対して、より良いイメージング性能のために無線周波数(RF)受信機システム1のダイナミックレンジを拡大する解決策が作成される。RF受信機システムのシグマデルタADCは、DACフィードバック強度を制御するために使用される自動利得制御(AGC)回路を使用してシングルビットモードで動作し、それによって受信機のダイナミックレンジがMRI信号に一致するように拡張される。本発明はまた、磁気共鳴(MR)イメージングシステム、無線周波数(RF)受信機システムのダイナミックレンジを拡張する方法、磁気共鳴(MR)イメージングシステム用のソフトウェアパッケージ、磁気共鳴(MR)イメージングシステムをアップグレードするためのソフトウェアパッケージ、及びコンピュータプログラム製品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージングシステムの検査スペースからの磁気共鳴情報を提供するRF受信機システムであって、
アナログ磁気共鳴情報信号を受信する少なくとも1つの接続ポートを備えた少なくとも1つのRFコイルと、
前記少なくとも1つの接続ポートに接続され、前記アナログ磁気共鳴情報信号をデジタル磁気共鳴情報信号に変換する少なくとも1つのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)であって、これによって、前記少なくとも1つのADCは、シングルビットシグマデルタADCであり、前記シングルビットシグマデルタADCは、ループフィルタ、前記アナログ磁気共鳴情報信号を量子化する量子化器ユニット、及び可変出力強度フィードバックデジタル/アナログコンバータ(DAC)ユニットを含む、少なくとも1つのADCと、
を含み、
前記RF受信機システムは更に、ADCサンプリング周波数の前記デジタル磁気共鳴情報信号を中間サンプリング周波数で変換する第1のデジタルダウンコンバータ及び前記中間サンプリング周波数の前記信号をベースバンドサンプリング周波数で変換する少なくとも第2のデジタルダウンコンバータを含む、信号処理チェーンと、
前記第1のデジタルダウンコンバータの後に配置され、前記中間サンプリング周波数で動作し、前記MRI信号の時間的な大きさを追跡し、それに応じて前記DACユニットの利得を調整する、少なくとも1つの自動利得制御回路と、
前記中間サンプリング周波数で動作し、前記MRI信号の時間的な大きさの関数としてDAC出力強度を調整する、少なくとも1つのフィードバック制御部と、
を含む、RF受信機システム。
【請求項2】
前記信号処理チェーンは更に、
RF搬送周波数を提供する数値制御オシレータと、
量子化された前記アナログ磁気共鳴情報信号を前記ベースバンドサンプリング周波数に周波数シフトする第1の乗算器と、
を含む、請求項1に記載のRF受信機システム。
【請求項3】
前記信号処理チェーンは更に、前記量子化器ユニットの後に配置された第2の乗算器を含み、前記第2の乗算器は、前記デジタル磁気共鳴情報信号に前記DAC利得のデジタル表現を乗算して、現在のDAC利得を補償するように前記デジタル磁気共鳴情報信号を調整する、請求項1又は2に記載のRF受信機システム。
【請求項4】
前記DACユニットは、高利得及び低利得の2レベルDACユニットであり、
前記信号処理チェーンは更に、キャリブレーションユニットを含み、前記キャリブレーションユニットは、前記量子化器ユニットの後に配置され、前記キャリブレーションユニットは、前記自動利得制御回路の高状態と低状態との間の相対利得に従って前記デジタル磁気共鳴情報信号を調整する、請求項1又は2に記載のRF受信機システム。
【請求項5】
前記自動利得制御回路は、前記信号の大きさが高閾値よりも大きい場合は、前記DACユニットが前記高状態に遷移し、前記信号の大きさが低閾値未満である場合は、前記DACユニットが前記低状態に遷移するように構成されている、請求項1又は2に記載のRF受信機システム。
【請求項6】
前記第1のデジタルダウンコンバータは、高デジタルダウンコンバータ及び低デジタルダウンコンバータを含み、前記高デジタルダウンコンバータ及び前記低デジタルダウンコンバータは、前記中間サンプリング周波数を有する前記信号処理チェーンのセクション内に配置され、前記自動利得制御回路の高状態信号及び低状態信号をダウンコンバートし、前記シングルビットシグマデルタADCは更に、
相対利得調整の後にのみ前記高状態信号及び前記低状態信号を組み合わせるサメータを含み、前記信号処理チェーンは更に、
前記数値制御オシレータによって、量子化された前記アナログ磁気共鳴情報信号を前記ベースバンドサンプリング周波数に周波数シフトする乗算器を、前記高デジタルダウンコンバータの前及び前記低デジタルダウンコンバータの前にそれぞれ含む、請求項5に記載のRF受信機システム。
【請求項7】
静磁場を発生させる主磁石と、
前記静磁場に重ね合わされた傾斜磁場を発生させる磁気傾斜コイルシステムと、
関心の被検体を内側に位置付けるために提供される検査スペースと、
前記検査スペースからの磁気共鳴情報を提供するための、少なくとも1つの請求項1から6のいずれか一項に記載のRF受信機システムと、
前記少なくとも1つのRF受信機システムによって提供されるデジタル磁気共鳴情報信号を処理するデジタル信号処理ユニットと、
を含む、磁気共鳴イメージングシステム。
【請求項8】
RF受信機システムのダイナミックレンジを拡張する方法であって、
請求項1に記載のRF受信機システムを提供するステップと、
前記RF受信機システム内の前記少なくとも1つのRFコイルの前記少なくとも1つの接続ポートでアナログ磁気共鳴情報信号を受信するステップと、
前記RF受信機システム内で、前記アナログ磁気共鳴情報信号のデジタル磁気共鳴情報信号へのアナログ/デジタル変換を実行するステップと、
ADCサンプリング周波数の前記デジタル磁気共鳴情報信号を、第1のデジタルダウンコンバータによって中間サンプリング周波数で変換するステップと、
前記自動利得制御回路で前記デジタル磁気共鳴情報信号の大きさを追跡するステップと、
前記デジタル磁気共鳴情報信号の大きさに関して前記DACユニットの利得を調整するステップと、
RF搬送周波数及びデジタルミキサを提供するために、数値制御オシレータによって、前記デジタル磁気共鳴情報信号をベースバンドサンプリング周波数で周波数シフトするステップと、
前記第2のデジタルダウンコンバータによって、中間サンプリング周波数の前記デジタル磁気共鳴情報信号をベースバンドサンプリング周波数で変換するステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記デジタル磁気共鳴情報信号に前記DAC利得のデジタル表現を乗算するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
高利得及び低利得の2レベルのデジタル/アナログコンバータユニットを提供するステップと、
前記量子化器ユニットの後にキャリブレーション回路を提供するステップと、
前記キャリブレーション回路によって、前記自動利得制御回路の高利得状態と低利得状態との間の相対利得で、前記デジタル磁気共鳴情報信号を調整するステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
高利得及び低利得の2レベルのデジタル/アナログコンバータを提供するステップと、
高デジタルダウンコンバータ及び低デジタルダウンコンバータを提供するステップであって、前記高デジタルダウンコンバータ及び前記低デジタルダウンコンバータは、前記中間サンプリング周波数を有する前記シングルビットシグマデルタADCのセクション内に配置されている、提供するステップと、
乗算器によって、前記高デジタルダウンコンバータの前及び前記低デジタルダウンコンバータのそれぞれ前に、前記数値制御オシレータによって、前記デジタル磁気共鳴情報信号を前記ベースバンドサンプリング周波数でシフトするステップと、
前記高デジタルダウンコンバータ及び前記低デジタルダウンコンバータによって、前記自動利得制御回路の高状態信号及び低状態信号を下方に変換するステップと、
サメータによって、相対利得調整の後に、変換された前記高状態信号及び前記低状態信号を組み合わせるステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の方法に従ってRF受信機システムを制御するための命令が含まれている、磁気共鳴イメージングシステム用のソフトウェアパッケージ。
【請求項13】
請求項8から11のいずれか一項に記載の方法に従ってRF受信機システムを制御するための命令が含まれている、磁気共鳴イメージングシステムをアップグレードするためのソフトウェアパッケージ。
【請求項14】
命令を含むコンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)イメージングの分野に関する。特に、本発明は、磁気共鳴(MR)イメージングシステムの検査スペースからのMR情報を提供する無線周波数(RF)受信機システムに関する。本発明は更に、磁気共鳴(MR)イメージングシステム、磁気共鳴(MR)イメージングシステムの無線周波数(RF)受信機システムのダイナミックレンジを拡張する方法、磁気共鳴(MR)イメージングシステム用のソフトウェアパッケージ、及び磁気共鳴(MR)イメージングシステムをアップグレードするためのソフトウェアパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
MRI信号のダイナミックレンジは、市販のADCのダイナミックレンジを超える。ADCに先立つ信号調節における可変利得及び/又は圧縮によって、ADCのダイナミックレンジを拡張する様々な手法が開発されてきている。シグマデルタADCの場合、従来のアプローチでは、マルチビットフィードバックDAC又は高次ループフィルタを使用してダイナミックレンジを拡大している。
【0003】
マルチビットフィードバックDACには、対応するマルチビット量子化器が必要である。これにより、ADCの複雑さだけでなく受信機の総消費電力量が増加する。フィードバックDAC内のエラーはシグマデルタ制御ループで補償できないため、マルチビットDACは、サンプリングされた信号の必要な高いダイナミックレンジや忠実度を損なわないように、高リニアでなければならない。シングルビットシグマデルタADCは、本質的にリニアであり、十分にリニアなマルチビットフィードバックDACの実現に伴う実装の複雑さが回避される。ループフィルタの次数を上げることはまた、消費電力量やチップ面積の点でもコストがかかり、設計が更に複雑になる。一般的に、高次ループフィルタの理論上の利点は、設計が非常に複雑でエラーに敏感であることから、部分的にしか達成できない。
【0004】
欧州特許出願第3565124号は、シングルビットシグマデルタ量子化器に基づくアナログ/デジタルコンバータを開示している。この既知のアナログ/デジタルコンバータは、レンジ制御回路に実装されたオートレンジ調節機能を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ダイナミックレンジが拡大された無線周波数(RF)受信機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって対処される。本発明の好ましい実施形態は、下位請求項に説明される。
【0007】
したがって、本発明によれば、磁気共鳴(MR)イメージングシステムの検査スペースからのMR情報を提供する無線周波数(RF)受信機システムが提供される。このRF受信機システムは、アナログMR情報信号を受信する少なくとも1つの接続ポートを備えた少なくとも1つのRFコイルと、少なくとも1つの接続ポートに接続され、アナログMR情報信号をデジタルMR情報信号に変換する少なくとも1つのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)であって、これによって、少なくとも1つのADCは、シングルビットシグマデルタADCであり、シングルビットシグマデルタADCは、ループフィルタ、アナログMR情報信号を量子化する量子化器ユニット、及び可変出力強度フィードバックデジタル/アナログコンバータ(DAC)ユニットを含む、少なくとも1つのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)とを含む。RF受信機システムは更に、信号処理チェーンであって、ADCサンプリング周波数のデジタルMR情報信号を中間サンプリング周波数で変換する第1のデジタルダウンコンバータを含む、信号処理チェーンと、少なくとも1つの自動利得制御回路であって、第1のDDCの後に配置され、中間サンプリング周波数で動作し、MRI信号の時間的な大きさを追跡し、それに応じてデジタル/アナログコンバータ(DAC)ユニットの利得(ADCの内側)を調整する、少なくとも1つの自動利得制御(AGC)回路と、少なくとも1つのフィードバック制御部であって、中間サンプリング周波数で動作し、MRI信号の時間的な大きさの関数としてDAC出力強度を調整する、少なくとも1つのフィードバック制御部とを含む。
【0008】
任意の特定のフィードバックDAC出力強度において、シングルビットADCは、MRI信号の本質的にリニアなデジタル化を提供する。中間サンプリング周波数は、信号の大きさの変動を追跡し、フィードバックの出力強度を制御してシグマデルタ制御ループにおけるオーバーフローを回避できるように十分に高くなければならない。DDC消費電力量を最小限に抑えるように可能な限り低いことが好ましい。更に、中間周波数は、ADCオーバーロードを引き起こし得るレベルまでMR信号強度が増加する間隔を決定する明確なMRイメージングモードに結合されている。
【0009】
本発明の実施形態では、信号処理チェーンは更に、RF搬送周波数を提供する数値制御オシレータ(NCO)と、量子化された信号をベースバンドサンプリング周波数(FBaseband)に周波数シフトする第1の乗算器とを含む。
【0010】
本発明の別の実施形態では、信号処理チェーンは更に、少なくとも第2のDDC(DDC2)を含む。少なくとも第2のDDC(DDC2)は、中間サンプリング周波数(FAGC)の信号をベースバンドサンプリング周波数(FBaseband)で変換する。
【0011】
本発明の更なる実施形態では、信号処理チェーンは、量子化器ユニットの後に配置された第2の乗算器を含み、第2の乗算器は、デジタルMR情報信号にDAC利得のデジタル表現を乗算して、デジタル信号を調整して現在のDAC利得を補償する。
【0012】
本発明の別の実施形態では、DACは、高利得及び低利得の2レベルDACであり、信号処理チェーンは更に、キャリブレーションユニットを含む。キャリブレーションユニットは、量子化器ユニットの後に配置される。キャリブレーションユニットは、AGCの高状態と低状態との間の相対利得に従ってデジタルMR情報信号を調整する。
【0013】
本発明の更に別の実施形態では、AGCは、信号の大きさが高閾値よりも大きい場合は、DACが高状態に遷移し、信号の大きさが低閾値未満である場合は、DACが低状態に遷移するように構成されている。
【0014】
本発明の実施形態では、第1のDDCは、高HDDC及び低LDDCを含む。高DDC及び低DDCは、中間サンプリング周波数を有する信号処理チェーンのセクション内に配置され、AGCの高状態信号及び低状態信号をダウンコンバートする。信号処理チェーンは更に、相対利得調整の後にのみ高状態信号及び低状態信号を組み合わせるサメータ(summator)を含む。シングルビットシグマデルタADCは更に、数値制御オシレータによって、量子化された信号をベースバンドサンプリング周波数で周波数シフトする乗算器を、高DDCの前及び低DDCのそれぞれ前に含む。
【0015】
本発明の別の態様では、上記目的は、磁気共鳴(MRI)イメージングシステムによって達成される。このシステムは、静磁場を発生させる主磁石と、静磁場に重ね合わされた傾斜磁場を発生させる磁気傾斜コイルシステムと、関心の被検体を内側に位置付けるために提供される検査スペースと、検査スペースからの磁気共鳴情報を提供するための、請求項1から3に記載の少なくとも1つの無線周波数受信機システムと、少なくとも1つのRF受信機システムによって提供されるデジタルMR情報信号を処理するデジタル信号処理ユニットとを含む。
【0016】
本発明の別の態様では、上記目的は、無線周波数(RF)受信機システムのダイナミックレンジを拡張する方法によって達成される。この方法は、
上記のRF受信機システムを提供するステップと、
RF受信機システム内の少なくとも1つのRFコイルの少なくとも1つの接続ポートでアナログMR情報信号を受信するステップと、
RF受信機システム内で、アナログMR情報信号のデジタルMR情報信号へのアナログ/デジタル変換を実行するステップと、
ADCサンプリング周波数のデジタルMR情報信号を、第1のデジタルダウンコンバータによって中間サンプリング周波数で変換するステップと、
自動利得制御回路でデジタルMR情報信号の大きさを追跡するステップと、
デジタルMR情報信号の大きさに関してDAC利得を調整するステップと、
RF搬送周波数及びデジタルミキサを提供するために、数値制御オシレータによって、デジタルMR情報信号をベースバンドサンプリング周波数で周波数シフトするステップと、
第2のDDCによって、中間サンプリング周波数の信号をベースバンドサンプリング周波数で変換するステップとを含む。
【0017】
本発明の実施形態では、上記の方法は更に、
デジタルMR情報信号にDAC利得のデジタル表現を乗算するステップを含む。
【0018】
本発明の別の実施形態では、上記の方法は更に、
高利得及び低利得の2レベルDACを提供するステップと、
量子化器ユニットの後にキャリブレーション回路を提供するステップと、
キャリブレーション回路によって、AGCの高利得状態と低利得状態との間の相対利得に、デジタルMR情報信号を調整するステップとを含む。
【0019】
本発明の更に別の実施形態では、上記の方法は更に、
高利得及び低利得の2レベルDACを提供するステップと、
高HDDC及び低LDDCを提供するステップであって、高DDC及び低DDCは、中間サンプリング周波数を有するシングルビットシグマデルタADCのセクション内に配置されている、提供するステップと、
乗算器によって、高DDCの前及び低DDCのそれぞれ前に、数値制御オシレータによって、デジタルMR情報信号をベースバンドサンプリング周波数でシフトするステップと、
高DDC及び低DDCによって、AGCの高状態信号及び低状態信号を下方変換するステップと、
サメータによって、相対利得調整の後に、変換された高状態信号及び低状態信号を組み合わせるステップとを含む。
【0020】
本発明の別の態様では、上記目的は、上記の方法に従って無線周波数(RF)受信機システムを制御するための命令が含まれている、磁気共鳴(MR)イメージングシステム用のソフトウェアパッケージによって達成される。
【0021】
本発明の別の態様では、上記目的は、上記の方法に従って無線周波数(RF)受信機システムを制御するための命令が含まれている、磁気共鳴(MR)イメージングシステムをアップグレードするためのソフトウェアパッケージによって達成される。
【0022】
本発明の更に別の態様では、上記目的は、命令を含むコンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、上記の方法に従ってステップを実行させる、コンピュータプログラム製品によって達成される。つまり、本発明のコンピュータプログラム(製品)は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、本発明の方法(のステップ)を実行させる命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。ただし、このような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって、本発明の範囲を解釈するためには、特許請求の範囲及び本明細書を参照するものとする。
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による無線周波数(RF)受信機システムのブロック図を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の別の実施形態による、2レベル(高/低)DACを備えた無線周波数(RF)受信機システムのブロック図を概略的に示す。
【
図4】
図4は、本発明の別の実施形態による、中間信号周波数で高/低キャリブレーションが実施される2レベル(高/低)DACを備えた無線周波数(RF)受信機システムのブロック図を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による、無線周波数(RF)受信機システムのADCのダイナミックレンジを拡張する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態による無線周波数(RF)受信機システムのブロック図を概略的に示している。RF受信機システム1は、アナログMR情報信号を受信する少なくとも1つの接続ポート2を備えた少なくとも1つのRFコイルを含む。RF受信機システム1は、アナログMR情報信号を増幅するための低雑音増幅器LNAを更に含む。増幅されたMR情報信号は、アナログ/デジタルコンバータADCに伝播される。この実施形態におけるADCは、可変出力強度フィードバックDACを備えたRFシングルビットシグマデルタアナログ/デジタルコンバータである。ループフィルタLF、量子化器ユニットQUANT、及びデジタル/アナログコンバータDACが、シグマデルタADC制御ループを形成する。DACの出力強度は、ADCクロックF
ADCの各期間中のLNA出力におけるすべての信号レベルを補償するのに十分である(つまり、最大入力よりも大きい)必要がある。DACの出力強度(又は利得)が高いと、高い信号の大きさを追跡できる。DAC利得が低いと、量子化雑音が低くなり、小さな信号に対してそれぞれ高い分解能が得られる。したがって、DAC利得は、入力信号強度に関してADCの動作範囲をシフトする可能性を提供し、理想的には他のすべてのパラメータ(量子化や熱雑音など)を同じに保つことができる。ただし、入力信号が高い場合、DAC利得も高くなると、SDM内部の信号レベルが増加してSNDRの劣化につながるため、多数の非リニア効果が現れ始めることに留意されたい。更に、DAC利得設定では、入力信号が高い場合、ADC動作に非リニア性が現れ、これは、SNDRの減少としても観察される。この流れでは、適切な動作を行うためには、低DAC利得と高DAC利得とをタイミングよく切り替えることが不可欠である。信号の大きさが高い期間にのみDAC利得を増加させることで、DRは必要なときにのみ拡張され、SNDRにおける対応する減少が最小限に抑えられる。これは、限られた持続期間だけ高いMRIエコー信号に特に有利であり、SNDRの減少を制限する。実際には、このSNDRの減少はわずかである。
【0026】
図1の自動利得制御AGC回路は、検出された信号の大きさを追跡し、それに応じてDAC利得G
DACを調整する。同時に、DAC利得のデジタル表現G
ADJを使用して、現在のDAC利得を補償するためにデジタル信号を調整する。この補償は、デジタル信号にG
ADJを乗算することによって実行される。
【0027】
回路の残りの部分はレンジ調節受信機を含む。量子化された信号は、デジタルミキサMIXでベースバンドに周波数シフトされる。必要なRF搬送周波数は、数値制御されたオシレータNCOによって生成される。その後、ベースバンド信号はローパスフィルタリングされ、デジタルダウンコンバータDDCによってベースバンドに間引きされる。このメカニズムにより、スイッチングポイントを十分に高速且つ正確に決定し、完全なダイナミックレンジを表す均一なビットストリームを再構成できるように、デジタルデータが自動キャリブレーション(等化)される。
【0028】
AGCを中間周波数FAGCで動作させることが有利である。このために、DDCは、DDC1、DDC2の2つの部分に分割される。DDC1は、FADCの信号を、AGCが動作する中間サンプリング周波数FAGCに変換する。次に、DDC2は、信号をベースバンドサンプリング周波数FBASEBANDで更に変換する。
【0029】
図2は、本発明の別の実施形態による、2レベル(高/低)DACを備えた無線周波数(RF)受信機システムのブロック図を概略的に示している。この実施形態では、DACは高利得H及び低利得Lの2レベルDACである。キャリブレーション回路CALは、DACのH状態とL状態との間の相対利得に従って、サンプリングされた信号を調整する。CALは、H状態のときにQUANTが出力するシングルビット値を置き換える符号付きデジタル値で構成されている。例えばL状態で1.0の公称利得を、H状態で5.0の公称利得を有するDACは、実際には4.9963の相対利得を有する。その結果、CALは、利得状態とQUANT出力の関数として次の値を生成する。
【表1】
【0030】
相対DAC利得を正確に決定するには、キャリブレーション手順が必要になる。或いは、DACは、例えば抵抗器のレーザートリミングによって製造中にキャリブレーションされてもよい。キャリブレーションされた相対利得値は、入力信号のダイナミックレンジ全体にわたるのに十分な精度を持っている必要があるため、必然的に多数のビットが必要である。例えば、MRI信号は通常、約90dBのダイナミックレンジを有し、この結果、相対DAC利得を正確に表すには少なくとも(約90/6.02)=約15ビットが必要である。これにより、DDC消費電力量が大幅に増加する。
【0031】
図3は、閾値TH及び閾値TLの図を概略的に示している。H状態とL状態との間の過剰な遷移を回避するために、AGCはヒステリシスとともに実装される。これには、高閾値TH及び低閾値TLが必要である。信号の大きさが高閾値よりも大きい場合(X>TH)、DACはH状態に遷移する。信号の大きさが低閾値よりも小さい場合(X<TL)、DACはL状態に遷移する。
【0032】
図4は、本発明の別の実施形態による、中間信号帯域幅で高/低キャリブレーションが実施される2レベル(高/低)DACを備えた無線周波数(RF)受信機システムのブロック図を概略的に示す。DDC消費電力量は、信号を表すのに必要なビット数と、それが動作するサンプリング周波数との両方に比例する。G
ADJは、アナログG
DACを十分な精度に補償するために、必然的に多数のビットを必要とする。これにより、ベースバンドにダウンコンバートするのに必要なDDC消費電力量が増加する。最初に(未調整の)信号を低い中間サンプリング周波数にコンバートすることにより、高いサンプリング周波数でのビットカウントが減少する。したがって、FAGCは、AGCが追跡できる最大信号帯域幅とDDCの消費電力量とのトレードオフを提供する。
【0033】
未調整信号はFAGCにダウンコンバートされるため、H状態信号及びL状態信号を同時にダウンコンバートする必要があり、これら2つを相対利得調整の後にのみ組み合わせる。これは、高DDC(HDDC)信号パス及び低DDC(LDDC)信号パスによって実行される。信号経路は、キャリブレーション後にサメータSUMによって合計される。ダウンコンバートされた信号が乗算/ミキシング前のデジタル処理によりマルチビット信号になったため、キャリブレーションでは、次に、デジタルドメインでの乗算MIXが必要になる。
【0034】
図5は、本発明の実施形態による、無線周波数(RF)受信機システムのADCのダイナミックレンジを拡張する方法のフローチャートを示している。この方法はステップ500から始まる。ステップ500では、請求項1に記載の無線周波数(RF)受信機システムが提供される。
【0035】
次に、ステップ510において、RF受信機システム内の少なくとも1つのRFコイルの少なくとも1つの接続ポートでアナログMR情報信号が受信される。
【0036】
その後、ステップ520において、RF受信機システム内で、アナログMR情報信号のデジタルMR情報信号へのアナログ/デジタル変換が実行される。
【0037】
ステップ530において、ADCサンプリング周波数FADCのデジタルMR情報信号が、第1のデジタルダウンコンバータDDC1によって中間サンプリング周波数FAGCに変換される。
【0038】
ステップ540において、デジタルMR情報信号の大きさが自動利得制御AGC回路で追跡される。
【0039】
その後、ステップ550において、デジタルMR情報信号の大きさに関してDAC利得GDACが調整される。
【0040】
本発明の実施形態では、デジタルMR情報信号は、RF搬送周波数とデジタルミキサMIXを提供するために、数値制御オシレータNCOによってベースバンドサンプリング周波数FBasebandで周波数シフトされる。更に、本発明の実行例では、中間サンプリング周波数FAGCの信号を、第2のDDC(DDC2)によってベースバンドサンプリング周波数FBasebandで変換できる。
【0041】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的と見なされるべきであって、限定的と見なされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行可能である。特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。更に、明確さのために、図面内のすべての要素に参照符号が提供されているわけではない。
【符号の説明】
【0042】
無線周波数(RF)受信機システム 1
接続ポート 2
低雑音増幅器 LNA
ループフィルタ LF
量子化器ユニット QUANT
デジタル/アナログコンバータ DAC
シグマデルタ変調器 SDM
アナログ/デジタルコンバータ ADC
ADCクロック FADC
中間サンプリング周波数 FAGC
ベースバンドサンプリング周波数 FBaseband
自動利得制御 AGC
デジタルダウンコンバータ DDC
数値制御オシレータ NCO
第1のデジタルダウンコンバータ DDC1
第2のデジタルダウンコンバータ DDC2
低状態 L
高状態 H
DAC利得 GDAC
DAC利得のデジタル表現 GADJ
キャリブレーション回路 CAL
低デジタルダウンコンバータ LDDC
高デジタルダウンコンバータ HDDC
低閾値 TL
高閾値 TH
サメータ SUM
ミキサ MIX
【国際調査報告】