(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】生体接着材及び生体接着材で組織を接着するための低侵襲方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20231018BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20231018BHJP
【FI】
A61B17/00 400
A61M25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522418
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 US2021054170
(87)【国際公開番号】W WO2022081429
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591177277
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスチテュート オブ テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(71)【出願人】
【識別番号】511281899
【氏名又は名称】マヨ ファウンデーション フォー メディカル エデュケーション アンド リサーチ
【氏名又は名称原語表記】MAYO FOUNDATION FOR MEDICAL EDUCATION AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウー,サラ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユック,ヒョヌ
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,スアンヘ
(72)【発明者】
【氏名】ナブディク,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160CC03
4C160CC40
4C160MM33
4C160NN01
4C267AA06
4C267CC08
(57)【要約】
生体組織及び血管を低侵襲方式で接着するための生体接着材及び方法であって、生体接着材は、低侵襲処置を使用する送達に適合した折り畳まれた生体接着スリーブ構造又は注入可能な生体接着材形態である、生体接着材及び方法。折り畳まれた生体接着スリーブは、標的組織部位への挿入のために様々な低侵襲装置の遠位部分に配設され、その後、低侵襲装置の作動を通して標的組織部位に配置及び接着される。注入可能な生体接着材は、注射器内に配設され、カテーテルを介して標的部位に送達され、その後、低侵襲装置の作動によって標的組織に接着される。標的組織部位への正確な配置及び接着は、生体接着材の配置又は作動を補助する追加の装置を使用することなく、低侵襲装置の作動のみで問題なく達成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブであって、
底面及び上面を有する乾燥生体接着層並びに前記乾燥生体接着層の前記上面に配設された非接着層を含む多層生体接着材を含み;
前記多層生体接着材は、多層生体接着パッチ、テープ、フィルム、ストリップ又はシートの構造であり、
前記多層生体接着材は、内部通路及び外側表面を含む中空スリーブ形状に折り畳まれ、前記内部通路は、前記非接着層の部分から形成された内側表面によって画定され、
前記外側表面が、接着面である、折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項2】
低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブであって、
低侵襲装置の外部遠位端部分に取り付けるように適合された非接着スリーブ層と;
前記非接着スリーブ層上に配設された底面及び上面を有する少なくとも乾燥生体接着層を含む1つ又は複数の接着部分であって、前記標的組織表面に接触し、及び前記低侵襲装置の作動時に前記標的組織表面に対する圧力を受けるように配置される1つ又は複数の接着部分と
を含む、折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項3】
前記乾燥生体接着層は、前記標的組織表面と接触する前記乾燥生体接着層の表面の配置により、前記乾燥生体接着層が、前記標的組織表面上に存在する液体を吸収し、膨潤して、前記乾燥生体接着層と前記標的組織表面との間に一時的な架橋を形成し、及び前記乾燥生体接着層と前記標的組織表面との間に共有結合架橋を形成するような液体含有量を有する、請求項1又は2に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項4】
前記乾燥生体接着層の前記底面に配設された疎水性被覆層をさらに含む、請求項1又は2に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項5】
前記疎水性被覆層は、1つ又は複数の油を含む、請求項4に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項6】
前記乾燥生体接着層の前記上面に配設された裏打ち層をさらに含み、前記裏打ち層は、前記乾燥生体接着層と前記非接着スリーブ層との間に配設される、請求項2に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項7】
前記非接着層は、生体適合性ポリマー又はポリマーブレンドを含む、請求項1に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項8】
前記裏打ち層は、生体適合性ポリマー又はポリマーブレンドを含む、請求項6に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマー又はポリマーブレンドは、1つ又は複数の両性イオンポリマーの相互貫入ネットワークで官能化されたポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリ塩化ビニル、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)及びそれらの組み合わせから選択される、請求項7又は8に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項10】
前記乾燥生体接着層は、(i)1つ又は複数の親水性ポリマー;(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤を含む、請求項3に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項11】
前記乾燥生体接着層の前記底面は、マイクロテクスチャ加工される、請求項1又は2に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項12】
前記マイクロテクスチャ加工された表面は、複数の表面に埋め込まれた微粒子、エンボス加工微細パターン、成形マイクロテクスチャ、パターン化マイクロテクスチャ、表面エッチングテクスチャ、紡糸マイクロ若しくはナノファイバー又はそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項13】
前記折り畳まれた構造は、三角形の形状の内部通路を有する三角スリーブの折り紙ベースの設計である、請求項1に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項14】
前記三角スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するようなサイズ及び形状である、請求項13に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項15】
前記低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及び前記三角スリーブは、膨張していないバルーンを収容するようなサイズ及び形状である、請求項14に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項16】
前記折り畳まれた構造は、複数のウィングを有するプリーツ付きの円筒状スリーブの折り紙ベースの設計である、請求項1に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項17】
前記プリーツ付きの円筒状スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するようなサイズ及び形状である、請求項16に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項18】
前記低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及び前記プリーツ付きの円筒状スリーブは、膨張していないバルーンを収容するようなサイズ及び形状である、請求項17に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項19】
前記生体接着材上に配設された1つ又は複数の安定化要素をさらに含み、前記1つ又は複数の安定化要素は、低侵襲装置に取り付けるように構成される、請求項1に記載の折り畳まれた生体接着スリーブ。
【請求項20】
低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを形成する方法であって、
底面及び上面を有する乾燥生体接着層を形成すること;
前記乾燥生体接着層の前記上面に非接着層を配設し、及び取り付けて、パッチ、テープ、フィルム、ストリップ又はシートの形態の多層接着材を形成すること;
前記多層接着材を、内部通路及び外側表面を有する中空スリーブを含む折り畳まれた折り紙ベースの構造に折り畳むこと
を含み、前記内部通路は、前記非接着層の部分から形成された内側表面によって画定され、前記外側表面が、接着面である、方法。
【請求項21】
前記中空スリーブは、三角形の形状の内部通路を有する三角スリーブの形態である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記三角スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及び前記三角スリーブは、膨張していないバルーンを収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記中空スリーブは、複数のウィングを有するプリーツ付きの円筒状スリーブを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記プリーツ付きの円筒状スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及び前記プリーツ付きの円筒状スリーブは、膨張していないバルーンを収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを形成する方法であって、
折り畳み、及び低侵襲装置の遠位部分に取り付けるように構成された形状の非接着層を形成すること;
1つ又は複数の接着部分を前記非接着層上に配設することであって、前記1つ又は複数の接着部分は、前記標的組織表面に接触し、及び前記低侵襲装置の作動時に前記標的組織表面に対する圧力を受けるように配置され、前記1つ又は複数の接着部分は、前記非接着スリーブ層上に配設された底面及び上面を有する少なくとも乾燥生体接着層を含む、配設すること;及び
前記非接着層を、折り畳まれた生体接着スリーブ構造に折り畳むこと
を含む方法。
【請求項28】
前記低侵襲装置は、2つの対向するジョーを有する内視鏡関節線形ステープラであり、前記スリーブは、前記ステープラの前記2つの対向するジョーの上に取り付けるように構成され、前記1つ又は複数の接着部分は、前記2つの対向するジョーの内側表面上に配置される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記接着部分は、矩形の多層接着部分である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
低侵襲技術を使用して生体接着材を組織表面に接着する方法であって、前記組織表面は、中空器官又は血管の内側表面であり、前記方法は、
請求項1に記載の折り畳まれた生体接着スリーブを提供すること;
バルーンカテーテル装置であって、その遠位端部に膨張していないバルーンを有するバルーンカテーテル装置を提供すること;
前記折り畳まれた生体接着スリーブを、前記膨張していないバルーンの上に配設することであって、前記内部通路は、前記膨張していないバルーンを少なくとも部分的に収容し、前記折り畳まれた生体接着スリーブの前記内側表面は、前記膨張していないバルーンと接触する、配設すること;
前記低侵襲技術を使用して、標的組織表面部位における前記中空器官又は血管に前記バルーンカテーテル装置を挿入すること;
前記外側接着面が前記中空器官又は血管の前記内側表面に接触するように、前記バルーンを膨張させ、及び前記折り畳まれた生体接着スリーブが広がることを可能にすること;及び
体液の存在下での前記乾燥生体接着層の水和と、前記膨張したバルーンによって加えられる半径方向の圧力との組み合わせが、前記折り畳まれた構造を解放し、前記生体接着材を前記中空器官又は血管の前記内側表面に適合させ、及び前記生体接着材の前記中空器官又は血管の前記内側表面への接着を引き起こすことを可能にすること
を含む、方法。
【請求項31】
低侵襲技術を使用して標的組織表面に接着層を接着する方法であって、
請求項2に記載の折り畳まれた生体接着スリーブを提供すること;
2つの対向するジョーを有する関節線形ステープラを提供すること;
前記折り畳まれた生体接着スリーブを前記2つの対向するジョーの上に配設することであって、前記1つ又は複数の接着部分は、前記2つの対向するジョーの内側表面上に配設され、前記2つの対向するジョーは、それらの間に空間を有する開放位置にある、配設すること;
前記低侵襲技術を使用して前記関節線形ステープラを標的組織表面部位に挿入することであって、前記標的組織表面は、前記2つの対向するジョー間に配設される、挿入すること;
前記標的組織表面上の前記2つの対向するジョーを閉じることにより、前記関節線形ステープラを作動させることであって、前記1つ又は複数の接着部分は、前記標的組織表面に接触する、作動させること;及び
体液の存在下での前記乾燥生体接着層の水和と、前記2つの対向するジョーによって加えられる圧力との組み合わせが前記1つ又は複数の接着部分の前記標的組織表面への接着を引き起こすことを可能にすること
を含む方法。
【請求項32】
低侵襲技術を使用して接着層を標的組織表面に接着する方法であって、
(i)疎水性マトリックス、及び(ii)前記疎水性マトリックス内に分散された複数の生体接着性微粒子を含む注入可能な生体接着材を提供することであって、前記生体接着性微粒子は、1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー、1つ又は複数のアミンカップリング基及び1つ又は複数の架橋剤を含む、提供すること;
前記注入可能な生体接着材を注射器内に配設すること;
前記低侵襲技術を使用してカテーテルを前記標的組織表面に挿入すること;
前記注射器の遠位端部を前記カテーテル内に挿入すること;
前記注射器を作動させて、前記注入可能な生体接着材を、前記遠位端部を通して、前記カテーテルを通して及び前記標的組織表面上に配置すること;
低侵襲装置を使用して、前記配置された生体接着材に圧力を加えて、前記生体接着材の前記標的組織表面への接着を引き起こすこと
を含む方法。
【請求項33】
前記低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、前記低侵襲装置を使用して圧力を加える前記ステップは、前記バルーンを少なくとも部分的に膨張させ、及び前記少なくとも部分的に膨張したバルーンを使用して圧力を加えることを含む、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月13日に出願された「BIOADHESIVE MATERIALS AND MINIMALLY INVASIVE METHODS FOR ADHERING TISSUES WITH BIOADHESIVE MATERIALS」という名称の米国仮特許出願第63/091,105号に対する優先権の利益を主張する。この先行出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援声明
本発明は、National Science Foundationによって与えられた助成金番号EFMA-1935291の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、概して、生体組織及び血管を低侵襲方式で接着するための生体接着材及び方法に関する。より具体的には、本発明は、低侵襲手術器具又は診断器具を使用して生体接着材を送達及び接着する方法であって、生体接着材は、低侵襲手術器具又は診断器具と一体化され、及び低侵襲手術器具又は診断器具によって直接配置されるように構成される、方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
低侵襲手術で組織を封止又は接合する方法は、典型的には、縫合糸、ステープル、クリップ又はレーザー溶接を利用するが、それぞれに様々な制限を呈する。これらの方法は、それぞれ機械的又は熱的な組織の損傷を引き起こす可能性があり、縫合及びレーザー溶接は、外科医が線に沿った個々の点を縫合又は溶接する必要がある非常に面倒な操作である(N. Annabi et al., Elastic sealants for surgical applications. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 95, 27-39 (2015);G. M. Taboada et al., Overcoming the translational barriers of tissue adhesives. Nature Reviews Materials, 1-20 (2020);Bass, L.S., & Treat, M.R. Laser tissue welding: A comprehensive review of current and future. Lasers in Surgery and Medicine, 17 (4), 315-349 (1995))。ステープラには、誤発射及び/又は変形のリスクがあり、結果としてステープルラインの漏れや、患者への他の悪影響が生じ得る。さらに、特定の医療環境下では、組織が脆弱すぎて縫合糸及び/又はステープルを所定の位置に保持できず、結果として組織が破壊され、縫合糸又はステープルラインが分離し得る。例えば、これらの点ごとの組織封止様式による脆弱な肺組織の引き裂きによって引き起こされる実質の裂傷は、罹患率及び長期入院に実質的に影響を与え得る(Mueller M.R.et al., The anticipation and management of air leaks and residual spaces post lung resection. J Thorac Dis. 6 (3), 271-284 (2014))。
【0005】
縫合糸及びステープルに加えて、ステントグラフトは、壁の穿孔を覆うために気管、食道及び消化管の各部などの管腔構造に配置される。しかしながら、封止性能が不十分であること及び配置位置から非常に移動しやすいことから、臨床的有効性が制限されており、医療及び手術における緊急事態を招く可能性がある(N. D’souza et al., Migrated esophageal stent posing a challenge for ventilation. Saudi Journal of Anaesthesia 11, 215 (2017);J. Amour et al., Emergency treatment of tracheobronchial stent migration. Anesthesiology: The Journal of the American Society of Anesthesiologists 101, 1230-1232 (2004);O. Karatepe et al., Esophageal stent migration can lead to intestinal obstruction. North American Journal of Medical Sciences 1, 63 (2009))。これは、気道及び消化管に配置されたステントグラフトの特に一般的な有害転帰であり、多くの場合に脆弱な封止による失敗につながり、ステントグラフトの再配置又はステントグラフトの回収を伴う追加の処置が必要になる。
【0006】
小さいポートを介して操作可能な内視鏡的関節ステープラは、アンビルとステープラカートリッジとの間に目的の組織部位をクランプし、平行線のステープルを発射し、ブレードを作動させて2つのステープルライン間の組織を切断することにより、組織の一部を切断及び封止するように設計される。しかしながら、論じたように、手術用ステープラは、装置故障率がかなり高く、組織を封止するモードは、組織損傷及びその後の縫合線不良のリスクに関連している。
【0007】
現在、PERI-STRIPS(登録商標)、GORE SEAMGUARD(登録商標)、Evicel(商標)及びTisseel(商標)を含めて、ステープルラインを強化するために補強材料又はスプレーを適用することにより、手術用ステープルの漏れ及び分離を軽減しようとするいくつかの製品が存在する。臨床結果の系統的レビューでは、このようなステープルラインの補強は、腹腔鏡下スリーブ胃切除術後の出血を減少させることがわかっているが、術後の漏洩率は、低下しなかった(Knapps J.et al., A systematic review of staple-line reinforcement in laparoscopic sleeve gastrectomy. JSLS, 17 (3), 390-399 (2013);Wang, Z. et al., The Efficacy of Staple Line Reinforcement during Laparoscopic Sleeve Gastrectomy: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. International Journal of Surgery 25, 145-52 (2016))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、手術用縫合糸/ステープルラインの補強又は代替品のいずれかとして、低侵襲的に行うことができる迅速で強固な組織の封止を達成する改善された方法、接着剤及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを提供し、この生体接着スリーブは、底面及び上面を有する乾燥生体接着層並びに乾燥生体接着層の上面に配設された非接着層を含む多層生体接着材を含む。多層生体接着材は、多層生体接着パッチ、テープ、フィルム、ストリップ又はシートの構造であり、多層生体接着材は、内部通路及び外側表面を含む中空スリーブ形状に折り畳まれ、内部通路は、非接着層の部分から形成された内側表面によって画定され、外側表面が、接着面である。
【0010】
別の態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを提供し、この生体接着スリーブは、低侵襲装置の外部遠位端部分に取り付けるように適合された非接着スリーブ層と、この非接着スリーブ層上に配設された底面及び上面を有する少なくとも乾燥生体接着層を含む1つ又は複数の接着部分とを含む。1つ又は複数の接着部分は、標的組織表面に接触し、及び低侵襲装置の作動時に標的組織表面に対する圧力を受けるように配置される。
【0011】
これらの態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。乾燥生体接着層は、乾燥生体接着層の表面を標的組織表面と接触させて配置することにより、乾燥生体接着層が、標的組織表面上に存在する液体を吸収し、膨潤して、乾燥生体接着層と標的組織表面との間に一時的な架橋を形成し、及び乾燥生体接着層と標的組織表面との間に共有結合架橋を形成するような液体含有量を有する。折り畳まれた生体接着材は、乾燥生体接着層の底面に配設された疎水性被覆層をさらに含む。疎水性被覆層は、1つ又は複数の疎水性流体を含む。折り畳まれた生体接着材は、乾燥生体接着層の上面に配設された裏打ち層をさらに含み、この裏打ち層は、乾燥生体接着層と非接着スリーブ層との間に配設される。非接着層及び/又は裏打ち層は、生体適合性ポリマー又はポリマーブレンドを含む。生体適合性ポリマー又はポリマーブレンドは、1つ又は複数の両性イオンポリマーの相互貫入ネットワークで官能化されたポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリ塩化ビニル、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)及びそれらの組み合わせから選択される。乾燥生体接着層は、(i)1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー;(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤を含む。乾燥生体接着層の底面は、マイクロテクスチャ加工される。マイクロテクスチャ加工された表面は、複数の表面に埋め込まれた微粒子、3Dプリント微細パターン、エンボス加工微細パターン、成形マイクロテクスチャ、パターン化マイクロテクスチャ、表面エッチングテクスチャ、紡糸マイクロ若しくはナノファイバー又はそれらの組み合わせを含む。折り畳まれた構造は、三角形の形状の内部通路を有する三角スリーブの折り紙ベースの設計である。三角スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するようなサイズ及び形状である。低侵襲装置は、バルーンカテーテルである。三角スリーブは、膨張していないバルーンを収容するようなサイズ及び形状である。折り畳まれた構造は、複数のウィングを有するプリーツ付きの円筒状スリーブの折り紙ベースの設計である。プリーツ付きの円筒状スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するようなサイズ及び形状である。低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及びプリーツ付きの円筒状スリーブは、膨張していないバルーンを収容するようなサイズ及び形状である。折り畳まれた生体接着スリーブは、生体接着材上に配設された1つ又は複数の安定化要素をさらに含み、この1つ又は複数の安定化要素は、低侵襲装置に取り付けるように構成される。
【0012】
別の態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための生体接着材を提供し、この生体接着材は、注入可能な生体接着材を形成するために、疎水性マトリックス及びこの疎水性マトリックス内に分散された複数の生体接着性微粒子を含む。
【0013】
これらの態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。注入可能な生体接着材は、低侵襲技術を使用してカテーテルを通して送達するために注射器内に配設可能である。乾燥生体接着性微粒子は、(i)1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー;(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤を含む。疎水性マトリックスは、環境中の流体から生体接着性微粒子を保護する、分散した生体接着性微粒子の周囲の保護マトリックスの形態である。接着材は、この接着材を表面に直接配設し、及びこの接着材に圧力を加えることにより、(a)疎水性マトリックスが表面上の流体をはじき、(b)生体接着性粒子が圧迫されて接着層を形成し、(c)生体接着性粒子が一時的な架橋を形成し、続いて表面との共有結合架橋を形成するように構成される。1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマーは、乾燥状態で水を吸収する親水性ポリマー又はコポリマーから選択される。疎水性マトリックスは、シリコーン油、鉱物油、精油、パーフルオロポリエーテル油、ラノリン油及びそれらの組み合わせから選択される。接着材は、生体適合性がある。生体接着性微粒子は、約10μm~約200μmの範囲の粒径を有する。生体接着性微粒子と疎水性マトリックスとの比率は、約1:3~約1:0.5である。
【0014】
別の態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを形成する方法を提供し、この方法は、底面及び上面を有する乾燥生体接着層を形成すること;乾燥生体接着層の上面に非接着層を配設し、取り付けて、パッチ、テープ、フィルム、ストリップ又はシートの形態の多層接着材を形成すること;多層接着材を、内部通路及び外側表面を有する中空スリーブを含む折り畳まれた折り紙ベースの構造に折り畳むことを含み、内部通路は、非接着層の部分から形成された内側表面によって画定され、外側表面が、接着表面である。
【0015】
これらの態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。中空スリーブは、三角形の内部通路を有する三角スリーブの形態である。三角スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる。低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及び三角スリーブは、膨張していないバルーンを収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる。中空スリーブは、複数のウィングを有するプリーツ付きの円筒状スリーブを含む。プリーツ付きの円筒状スリーブは、低侵襲装置の遠位部分を収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる。低侵襲装置は、バルーンカテーテルであり、及びプリーツ付きの円筒状スリーブは、膨張していないバルーンを収容するためのサイズ及び形状に折り畳まれる。
【0016】
別の態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを形成する方法を提供し、この方法は、折り畳まれて低侵襲装置の遠位部分に取り付けるように構成された形状の非接着層を形成すること;1つ又は複数の接着部分を非接着層上に配設することであって、1つ又は複数の接着部分は、標的組織表面に接触し、低侵襲装置の作動時に標的組織表面に対する圧力を受けるように配置され、1つ又は複数の接着部分は、非接着スリーブ層上に配設された底面及び上面を有する少なくとも乾燥生体接着層を含む、配設すること;及び非接着層を、折り畳まれた生体接着スリーブ構造に折り畳むことを含む。
【0017】
これらの態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。低侵襲装置は、2つの対向するジョーを有する内視鏡関節線形ステープラであり、スリーブは、ステープラの2つの対向するジョーの上に取り付けるように構成され、1つ又は複数の接着部分は、2つの対向するジョーの内側表面上に配置される。接着部分は、矩形の多層接着部分である。
【0018】
別の態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して生体接着材を組織表面に接着する方法を提供し、組織表面は、中空器官又は血管の内側表面であり、この方法は、(a)底面及び上面を有する乾燥生体接着層並びに乾燥生体接着層の上面に配設された非接着層を含む多層生体接着材を含む、折り畳まれた生体接着スリーブを提供することであって、多層生体接着材は、多層生体接着パッチ、テープ、フィルム、ストリップ又はシートの構造であり、多層生体接着材は、内部通路及び外側表面を含む中空スリーブ形状に折り畳まれ、内部通路は、非接着層の部分から形成された内側表面によって画定され、外側表面が、接着面である、提供すること;(b)バルーンカテーテル装置であって、その遠位端部に膨張していないバルーンを有するバルーンカテーテル装置を提供すること;(c)折り畳まれた生体接着スリーブを、膨張していないバルーンの上に配設することであって、内部通路は、膨張していないバルーンを少なくとも部分的に収容し、折り畳まれた生体接着スリーブの内側表面は、膨張していないバルーンと接触する、配設すること;(d)低侵襲技術を使用して、標的組織表面部位における中空器官又は血管にバルーンカテーテル装置を挿入すること;(e)外側接着面が中空器官又は血管の内側表面に接触するように、バルーンを膨張させ、及び折り畳まれた生体接着スリーブが広がることを可能にすること;及び(f)体液の存在下での乾燥生体接着層の水和と、膨張したバルーンによって加えられる半径方向の圧力との組み合わせが、折り畳まれた構造を解放し、生体接着材を中空器官又は血管の内側表面に適合させ、及び生体接着材の中空器官又は血管の内側表面への接着を引き起こすこと可能にすることを含む。
【0019】
別の態様によると、本発明は、低侵襲技術を使用して標的組織表面に接着層を接着する方法を提供し、この方法は、(a)低侵襲技術を使用して標的組織表面に導入するための折り畳まれた生体接着スリーブを提供することであって、この生体接着スリーブは、低侵襲装置の外部遠位端部分に取り付けるように適合された非接着スリーブ層と、この非接着スリーブ層上に配設された底面及び上面を有する少なくとも乾燥生体接着層を含む1つ又は複数の接着部分とを含み、1つ又は複数の接着部分は、標的組織表面に接触し、及び低侵襲装置の作動時に標的組織表面に対する圧力を受けるように配置される、提供すること;(b)2つの対向するジョーを有する関節線形ステープラを提供すること;(c)折り畳まれた生体接着スリーブを2つの対向するジョーの上に配設することであって、1つ又は複数の接着部分は、2つの対向するジョーの内側表面上に配設され、2つの対向するジョーは、それらの間に空間を有する開放位置にある、配設すること;(d)低侵襲技術を使用して関節線形ステープラを標的組織表面部位に挿入することであって、標的組織表面は、2つの対向するジョー間に配設される、挿入すること;(e)標的組織表面上の2つの対向するジョーを閉じることにより、関節線形ステープラを作動させることであって、1つ又は複数の接着部分は、標的組織表面に接触する、作動させること;及び(f)体液の存在下での乾燥生体接着層の水和と、2つの対向するジョーによって加えられる圧力との組み合わせが1つ又は複数の接着部分の標的組織表面への接着を引き起こすことを可能にすることを含む。
【0020】
別の態様によると、本発明は、1つ又は複数の流体で覆われた1つ又は複数の組織表面を接着する方法を提供し、この方法は、(a)1つ又は複数の流体で覆われた組織表面に接着材を直接適用することであって、接着材は、疎水性マトリックス内に分散された複数の生体接着性微粒子を含み、生体接着性微粒子は、(i)1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー;(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤を含む、適用すること;(b)接着材に約1kPa~50kPaの圧力を加えること;(c)疎水性マトリックスが1つ又は複数の流体を組織表面からはじき、及び除去することを可能にすること;(d)生体接着性微粒子中の物理的結合形成基を分子間結合によって一時的に架橋させること;及び(e)生体接着性微粒子中のアミンカップリング基が組織表面と共有結合架橋を形成することを可能にすることを含む。
【0021】
これらの態様による実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。圧力は、約5秒~約30秒間加えられる。接着材は、注入可能な接着材であり、及び接着材は、注射器を使用して適用される。生体接着性微粒子は、約10μm~約200μmの粒径を有する。接着材は、約1:3~約1:0.5の、生体接着性微粒子と疎水性マトリックスとの比率を含む。(a)1つ又は複数の流体で覆われた組織表面に直接接着材を適用した後、及び(b)圧力を加える前に、この方法は、接着材に裏打ち材料を適用することをさらに含み、(b)圧力を加えることは、裏打ち材料を介して接着材に圧力を加えることを含む。裏打ち材料は、湿潤面に付着しない生体適合性材料から形成される。裏打ち材料は、酸化セルロース、シリコーンエラストマー、ポリウレタン、ハイドロゲル、湿潤組織に付着しない他の生体適合性材料及びそれらの組み合わせから形成される。
【0022】
本発明の他のシステム、方法及び特徴は、以下の図面及び詳細な説明を検討することにより、当業者に明らかであるか又は明らかになるであろう。そのような追加のシステム、方法及び特徴は、すべてこの説明に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることを意図される。
【0023】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を明確に例示することに重点が置かれている。図面は、本発明の実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】本発明の生体接着材の実施形態を例示し、本発明の一実施形態による低侵襲器具と一体化するための生体接着材の折り紙ベースの設計の写真を例示し、塑性変形可能な乾燥ガラス状態の例示的な生体接着材は、目的の折り紙構造に折り畳まれる前及び後で描かれており、水和すると、ゴム状態に移行し、柔軟で適合性のあるヒドロゲルになる。
【
図1B】本発明の生体接着材の実施形態を例示し、本発明の一実施形態による低侵襲器具と一体化するための生体接着材の折り紙ベースの設計の写真を例示し、塑性変形可能な乾燥ガラス状態の例示的な生体接着材は、目的の折り紙構造に折り畳まれる前及び後で描かれており、水和すると、ゴム状態に移行し、柔軟で適合性のあるヒドロゲルになる。
【
図1C】本発明の生体接着材の実施形態を例示し、標的組織への注入可能な生体接着材のカテーテルベースの送達を例示し、注入可能な生体接着材は、疎水性流体内に分散された乾燥生体接着性微粒子を含む。
【
図2】本発明の実施形態によるバルーンカテーテルを用いた生体接着材の配置機構の写真を示し、食道バルーンカテーテルの外側表面に配設するための、対象の折り紙構造に設けられた折り畳まれた生体接着パッチが描かれ、続いてバルーンの膨張圧力の増加により、折り畳まれた生体接着パッチが径方向に拡張して広がる。
【
図3A】バルーンカテーテルとの一体化及びバルーンカテーテルによる配置のための折り畳まれた生体接着材の設計を概略的に例示し、三角スリーブの生体接着材の折り紙ベースの設計を例示する。
【
図3B】バルーンカテーテルとの一体化及びバルーンカテーテルによる配置のための折り畳まれた生体接着材の設計を概略的に例示し、「ウィング」を有するプリーツ付きの円筒状スリーブの折り紙ベースの設計を例示し、折り目、エッジ及びウィングの数は、様々であり得る。
【
図4A】本発明の実施形態によるバルーンカテーテルによる生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、バルーンカテーテルを使用した生体接着材の一体化及び送達を全体的に例示する。
【
図4B】本発明の実施形態によるバルーンカテーテルによる生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、フォーリーカテーテルを介して送達及び適用される、本発明の一実施形態による折り畳まれた生体接着パッチによるブタの気管欠損部(5mmの穴)の気密封止の巨視的かつ内視鏡による写真を示す。
【
図4C】本発明の実施形態によるバルーンカテーテルによる生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、食道カテーテルを介して送達及び適用される、本発明の一実施形態による折り畳まれた生体接着パッチによるブタの食道欠損部(5mmの穴)の液密封止の巨視的かつ内視鏡による写真を示す。
【
図4D】本発明の実施形態によるバルーンカテーテルによる生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、フォーリーカテーテルを介して送達及び適用される、本発明の一実施形態による折り畳まれた生体接着パッチによるブタの大動脈欠損部(5mmの穴)の液密封止の巨視的かつ内視鏡による写真を示す。
【
図5】本発明の一実施形態によるステープラカテーテルベースの生体接着パッチ配置機構を概略的に例示し、関節線形ステープラ構造が描かれ、ステープラのジョーのクランピングは、1つ又は複数のステープラのジョーに折り畳まれたスリーブ構造に配設された1つ又は複数の接着パッチに圧迫圧力を加える。
【
図6】本発明の一実施形態による手術用ステープラとの一体化のための折り紙ベースの設計を概略的に例示し、手術用ステープラのアンビル及びステープラカートリッジの上に取り付けるように構成された折り畳まれたスリーブ設計は、ステープラの作動による配置のために適切に配置された矩形の生体接着層(破線で示される)を含む。
【
図7A】本発明の一実施形態による、手術用ステープラによる折り畳まれた生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、線形ステープラを使用した生体接着パッチの一体化及び送達を示す。
【
図7B】本発明の一実施形態による、手術用ステープラによる折り畳まれた生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、関節線形ステープラを介して送達及び適用された生体接着パッチによるブタの腸欠損部(5mmの穴)の液密封止の顕微鏡写真を示す。
【
図7C】本発明の一実施形態による、手術用ステープラによる折り畳まれた生体接着材の低侵襲送達及び適用の生体外での実証を概略的に例示し、関節線形ステープラを介して送達及び適用された生体接着パッチによって封止されたブタの腸欠損部(5mmの穴)の内視鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
以下の定義は、本明細書に開示される実施形態の特徴に適用される用語を解釈するのに有用であり、本開示内の要素を定義することのみを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、本発明の生体接着層を説明するときの「乾燥」という用語は、使用中の材料の平衡含水率を下回る材料を指す。従って、本発明の乾燥生体接着層は、それが接着する湿潤組織又は他の湿潤面若しくは接液面(例えば、生理食塩水によって湿潤)と接触して配置される場合、生体接着層は、湿潤面又は接液面からの水、生理食塩水、水分及び生理的体液、例えば血漿、間質液、リンパ液、脳脊髄液及び胃腸液を吸収する。一般的に、乾燥生体接着層は、乾燥接着材の総重量に基づいて約50重量%未満の液体成分を有する。
【0027】
本明細書で使用される場合、乾燥生体接着層が、水、生理食塩水、水分及び生理的体液、例えば血漿、間質液、リンパ液、脳脊髄液及び胃腸液に接触して配置された湿潤面からこれらを吸収するメカニズムを説明するときの「吸収する」という用語は、生体接着層の表面を通過してその中に入る、湿潤面の液体の原子又は分子を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、本発明の生体接着材を説明するときの「パッチ」、「テープ」、「フィルム」、「ストリップ」及び「シート」という用語は、厚さと比較して比較的大きい面積を有する構造を指す。このような構造は、柔軟性を提供する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「折り畳まれた生体接着材(bioadhesive)」、「折り畳まれた生体接着材(bioadhesive material)」、「折り畳まれた生体接着パッチ」、「折り畳まれた生体接着テープ」、「折り畳まれた生体接着フィルム」、「折り畳まれた生体接着ストリップ」及び「折り畳まれた生体接着シート」並びに「折り畳まれた生体接着スリーブ」という用語は、(例えば、折り紙若しくは切り紙ベース技術又は他の適切な技術を使用して)特別に折り畳まれ、及び/又は切断され、特定の低侵襲手術器具又は低侵襲診断器具と一体化するように構成された本発明の生体接着材を指す。従って、例えば、折り畳まれた生体接着パッチは、最初は、例えば折り畳むことで所望の形状に操作されるほぼ平らな構造(「平らな構造」は、1つ又は複数の表面上にマイクロテクスチャを含み得る)である生体接着パッチであり得、この所望の形状は、低侵襲装置への一体化のために維持される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「注入可能な生体接着材」という用語は、一般的に、注射器及びカテーテルなどの器具に収容され、これらを介して配置できる生体接着材を指す。特に、注入可能な生体接着材は、約1mm~10mmの出口直径を有する従来の注射器内に配設することができ、プランジャーの作動時に注射器を通して押し出すことができ、約1mm(3Fr)~11mm(34Fr)の内径を有する従来の低侵襲カニューレ/カテーテルを通過させて排出することもできるような材料を指す。そのような注入可能な生体接着材は、一般的に、約1~1,000cStの範囲の粘度を有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、乾燥生体接着性微粒子を説明するために使用されるときの「微粒子」という用語は、平均直径が約200μm以下、例えば約5μm~約200μmの範囲の任意の値を有する材料の微粒子形態を指す。例えば、微粒子という用語は、平均直径が約180μm以下、約160μm以下、約140μm以下、約120μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約60μm以下、約40μm以下、約20μm以下及び約10μm以下の材料の微粒子形態を指し得る。しかしながら、約5μm~約200μmの範囲の任意の粒径は、接着材の最終的な用途及び接着材の所望のレオロジー特性などの他の因子に応じて適切に選択することができる。例示的な実施形態によると、適切な微粒子は、約10μmのサイズを有する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「湿潤組織」という用語は、水、生理食塩水、水分及び生理的体液、例えば血漿、間質液、リンパ液、脳脊髄液及び胃腸液を含む水性媒体を含むか又はそれらで覆われている(完全に覆われているか又は任意の範囲まで部分的に覆われている)生体組織を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、生体接着層と1つ又は複数の湿潤面との間の瞬間的な一時的架橋を説明するために使用されるときの「瞬間的」という用語は、生体接着層が1つ又は複数の湿潤面と接触した瞬間から0秒超及び約1分以内、より好ましくは約50秒以下、より好ましくは約40秒以下、より好ましくは約30秒以下、より好ましくは約20秒以下、より好ましくは約15秒以下、より好ましくは約10秒以下、より好ましくは約9秒以下、より好ましくは約8秒以下、より好ましくは約7秒以下、より好ましくは約6秒以下、より好ましくは約5秒以下の経過時間を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、生体接着層と1つ又は複数の湿潤面との間の瞬間的な一時的架橋を説明するために使用されるときの「一時的」という用語は、瞬間的な一時的架橋が形成された時間と、瞬間的な一時的架橋が形成されてから24時間後などの十分に長い時間との間の時間範囲を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、生体接着層と1つ又は複数の湿潤面との間の迅速な共有結合架橋を説明するために使用されるときの「迅速な」又は「即座の」は、接着層が1つ又は複数の湿潤面と接触した瞬間から0秒超及び5分以下、より好ましくは約4.5分以下、より好ましくは約4分以下、より好ましくは約3.5分以下、より好ましく約3分以下、より好ましくは約2.5分以下、より好ましくは約2分以下、より好ましくは約1.5分以下、より好ましくは約1分以下の経過時間を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、生体接着層の吸収を説明するために使用されるときの「膨潤」及び1つ又は複数の湿潤面と接触したときの膨潤は、一般的に、乾燥生体接着層のサイズから吸収後の接着層のサイズへの増加を指す。乾燥生体接着材は、一般的に、特定の低侵襲手術器具又は低侵襲診断器具との一体化のために(例えば、折り紙又は切り紙ベースの技術又は他の適切な技術を使用して)折り畳まれ、及び/又は切断された構造で提供されるパッチ、テープ、シート又はフィルムの形態で提供され、生体接着層は、液体の取り込みにより厚くなり、液体の取り込みにより折り畳まれた構造が広がる。
【0037】
本明細書で使用される場合、接着材を説明するために使用されるときの「生分解性」は、動物内の内因性酵素及び/又は水による、生きた動物内での移植接着材の部分的又は全体的な分解及び/又はその後の除去を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、室温で生体接着材を説明するために使用されるときの「ガラス状態」は、生体接着材内の分子の回転運動及び並進運動が減少し、生体接着材が、粘性及びゴム状ではなく、比較的硬く、脆く、塑性変形しやすいという物理的特性を示す、温度及び水分量に依存する状態をいう。
【0039】
本発明は、一般的に、生体接着材及び低侵襲技術を使用して生体接着材を配置及び接着する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、一般的に、(i)膨張するバルーンカテーテルを使用して、膨張するバルーンに配設された生体接着材を配置することにより、中空構造(限定されるものではないが、気道、腸、尿生殖器、心臓を含む)及び血管(限定されるものではないが、動脈構造及び静脈構造を含む)を封止するための生体接着材及び方法、並びに(ii)低侵襲内視鏡(例えば、胸腔鏡又は腹腔鏡)器具(限定されるものではないが、鉗子、把持器及び内視鏡ステープラを含む)を使用して、内視鏡器具に配設された生体接着材を組織(限定されるものではないが、気道、腸、尿生殖器、心臓を含む)及び血管(限定されるものではないが、動脈及び静脈構造を含む)の外部から配置することによって線形封止を形成するための生体接着材及び方法を提供する。
【0040】
本発明の実施形態によると、折り紙ベース(即ち折り畳みに基づく)及び切り紙ベース(即ち切断に基づく)製造技術に適し、標的組織表面への接着のために配置されるまで所望の折り畳み構造及び/又は切断構造を保持できる生体接着材が提供される。生体接着材は、様々な体組織表面に接着するように製造される。一般的に、生体接着材(即ち折り畳まれていない生体接着材)は、その長さ及び幅に比べて比較的薄い構造を有し、従って接着層が配置されると直ちに組織表面に適合する能力が高められる。従って、動く、伸びる、曲がる、ねじれる、屈曲するなどの表面に接着すると、生体接着材も同様にその表面と共に移動する。
【0041】
一態様によると、本発明は、疎水性マトリックス22、特に疎水性油マトリックスと乾燥生体接着性微粒子20との組み合わせを含む生体接着材を提供する。本発明の実施形態によると、生体接着材は、その中に乾燥生体接着性微粒子20が分散した疎水性マトリックス22を含む注入可能な材料の形態である(例えば、
図1Cを参照されたい)。乾燥生体接着性微粒子20は、疎水性マトリックス22が保護マトリックスとして作用するように疎水性マトリックス22内に均一に分散されている(
図1Cを参照されたい)。使用前に、好ましくは、激しく振とう攪拌するなどして、生体接着材が確実に、疎水性マトリックス22内に分散した乾燥生体接着性微粒子20の均質な混合物であるようにする。そのような注入可能な生体接着材の調製は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、同時係属中の米国特許出願公開第17/110,841号に記載されている。
【0042】
このような注入可能な形態では、疎水性材料は、例えば、シリコーン油、鉱物油、精油、植物油及びそれらの組み合わせなどの油を含み得る。本発明の注入可能な生体接着材は、狭い構造、好ましくは低侵襲処置で使用される構造を通して流れるように設計される。例えば、注射器内に配設される場合、生体接着材は、低侵襲処置で標的組織に送達するために、注射器からカテーテルのような低侵襲器具を通して注入することができる(例えば、
図1Cを参照されたい)。
【0043】
本発明の実施形態によると、注入可能な生体接着材が、流体で覆われた組織表面(例えば、血液で覆われた皮膚組織)に適用され、穏やかな圧力が加えられると、疎水性マトリックス22は、乾燥生体接着性微粒子20を体液から保護し、体液をはじいて組織表面をきれいにする。これにより、乾燥生体接着性微粒子20が互いに接触し、湿潤組織表面に接触することが可能になる。続いて、乾燥生体接着性微粒子20は、互いに架橋し、湿潤組織表面と架橋して強固な接着を迅速に形成する。従って、本発明の生体接着材は、流体(例えば、水、生理食塩水、水分、間質液並びに血液、唾液、胃腸液、粘液及び分泌液などの体液)によって覆われた組織の瞬間的な強固な接着を達成するための流体抵抗を提供する。
【0044】
例示的な実施形態では、注入可能な生体接着材は、カテーテルに接続された注射器を介して標的組織部位に送達される。カテーテルは、バルーンの膨張を使用して生体接着材に圧力を加え、標的組織への生体接着材の接着をもたらし得るようにバルーンカテーテルの形態で提供され得る。
【0045】
一態様によると、乾燥生体接着性微粒子20は、本明細書に記載の(i)1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー、(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤の組み合わせを含む乾燥生体接着材から形成される。
【0046】
好ましい実施形態によると、乾燥生体接着性微粒子20は、(1)1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー、(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤及び脱イオン水の組み合わせから作製される生体接着材を最初に作製することによって調製される。次いで、調製したままの生体接着材を脱水し、脱水した生体接着材を極低温粉砕して、所望の平均粒径の乾燥生体接着性微粒子20を形成する。例えば、乾燥生体接着材を最初に小片に切断し、次に乾燥生体接着材片を、ステンレス鋼のボールを含むステンレス鋼の容器に加え、次に乾燥生体接着材を、極低温ボールミルを使用して極低温条件下で粉砕して、乾燥生体接着性微粒子20を生成することができる。次に、このように形成された乾燥生体接着性微粒子20を所望の疎水性マトリックス22と所望の比率で混合して、注入可能な生体接着材を調製し、これを、注射器及びカテーテル(例えば、直径が2.5mmの注射器、直径が1.2mmのノズル)を通して標的部位に注入することができる。
【0047】
本発明の実施形態によると、乾燥生体接着性微粒子20の平均サイズは、極低温粉砕条件(例えば、粉砕時間を2分に固定し、粉砕周波数を10Hzから30Hz(特に10Hz、15Hz、20Hz、25Hz及び30Hz)に変更すること)によって制御することができ、粉砕周波数が高いほど、乾燥生体接着性微粒子の平均サイズが小さくなる(10Hzで約200μm、30Hzで約10μm)。従って、生体接着性微粒子20の所望の平均サイズを達成することができる。
【0048】
本発明の実施形態によると、注入可能な生体接着材のレオロジー特性(即ち流動挙動、粘度、せん断降伏応力)は、1つ又は複数の特性、特に乾燥生体接着性微粒子20と疎水性マトリックス22との間の混合比を制御することによって調整可能である。従って、比率を調整することにより、注入可能な生体接着材は、粘性流体から安定したチキソトロピー性のあるペーストの範囲にすることができる。例示的な実施形態によると、乾燥生体接着性微粒子20と疎水性マトリックス22との間の質量比は、例えば、約1:3、約1:2、約1:1及び約1:0.5から選択することができる。例示的な実施形態によると、生体接着性微粒子と疎水性マトリックスとの間の比率は、約1:3~約1:0.5の範囲である。
【0049】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面に例示する。可能な限り同じ参照番号が同じ又は同様の部品を指すように、同じ参照番号を図面及び説明に使用する。
【0050】
図1に示すように、本発明は、折り紙ベース(即ち折り畳みに基づく)及び切り紙ベースの(即ち切断に基づく)製造技術に適した生体接着パッチ1を本質的に含み、この生体接着パッチ1は、折り畳まれた生体接着パッチ10を提供し、従って体内で作動される低侵襲器具に一体化させて、この低侵襲器具を使用して配置することができる。生体接着材は、室温でガラス状態である「乾燥」生体接着材であり、塑性変形により折り畳まれた形状を維持し、様々な低侵襲手術器具での配置のために適合された様々な折り紙及び/又は切り紙ベースの形状に切断し、及び折り畳むことができる。様々な実施形態によると、超音波又はX線撮影による生体接着材の配置及び配置の視覚化を可能にするために、生体接着パッチ1/折り畳まれた生体接着パッチ10は、その中に埋め込まれ、及び/又はその1つ又は複数の表面に貼り付けられた1つ又は複数の放射線不透過性マーカー(図示せず)を含み得る。
【0051】
本発明の実施形態によると、折り畳まれた生体接着パッチ1は、湿潤組織表面への適用を可能にする、低侵襲処置中に遭遇するような湿潤環境でも必要に応じて接着を達成するように製造及び構成される。生体接着パッチ1(折り畳まれていない構造又は他の方法で操作された構造)は、一般に、上面2及び底面3を有し、底面3は、標的組織への接着のために特に適合される。いくつかの実施形態では、生体接着パッチ1は、片面接着性を有するように構成され、従って、上面2は、非接着面として提供することができ、底面3は、接着面として提供されることになる。必要に応じて、例えば、下の接着層を露出させるように除去可能な非接着面層(図示せず)を上面2に設けるか、又は上面2を接着面として設けることにより、両面接着性を提供することもできる。
【0052】
一実施形態によると、例えば
図1Bに示すように、生体接着パッチ1(
図1Bでは折り畳まれていない構造で示されている)は、非接着上面2を得るためにその上に非接着層5が配設された接着層4を含む多層構造を有する。これらの実施形態では、非接着上面2は、所与の用途で使用される低侵襲手術器具と接触する表面を形成することができる。次いで、反対側の接着材底面3は、一般的に、低侵襲手術器具の標的位置への挿入及びこの器具の標的組織表面への移動により、生体接着パッチ1の接着材底面が標的組織表面と接触するように、少なくとも部分的に露出した状態で配設されることになる。いくつかの実施形態では、多層構造には、これら2つの層のみが含まれる。他の実施形態では、被覆層6が非接着層5の反対側に配設され、従って非接着層5と被覆層6との間に接着層4が挟まれる。例示的な実施形態では、被覆層6は、標的表面と接触して配置されると疎水性相互作用を提供し、それにより流体(例えば、血液、粘液、唾液、胃液及び/又は間質液などの体液)をはじき、接着層4と標的表面との間の接着を促進するように製造及び構成される。
【0053】
非接着層5は、生体接着パッチ1が接着される環境において、接着層4の下にある表面が組織及び表面に接着することを防止する物理的バリアを提供する任意の材料から製造することができる。非接着層を形成するそのような材料は、接着パッチが生体組織上又はその近傍で使用される場合、生体適合性である。いくつかの実施形態では、非接着層5は、炎症及び凝固の結果としての癒着の形成のリスクを軽減するように適合される。従って、非接着層5は、限定されるものではないが、コラーゲン膜、ポリマー又はヒドロゲルフィルム及びスプレー可能な溶液を含む適切な防汚材料で製造することができる。いくつかの実施形態によると、非接着層5は、両性イオンポリマー(例えば、ポリ(ホスホベタイン)、ポリ(カルボキシベタイン)、ポリ(スルホベタイン))の相互貫入ネットワークで官能化された両性イオンヒドロゲル又は生体適合性ポリマー若しくはポリマーブレンド(例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン又は他のシリコーンエラストマー、ポリ塩化ビニル、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、ゼラチン、キトサン、アルギン酸塩、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸))から形成される。
【0054】
本発明の実施形態によると、接着層4は、湿潤面に瞬間的に強力に接着する乾燥架橋メカニズムを提供するように製造された乾燥接着層の形態で提供される。そのような接着材組成物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、同時係属中の米国特許出願公開第16/846,293号に記載されている。特に、接着層4は、(i)乾燥状態で水を吸収する1つ又は複数の親水性ポリマー又はコポリマー(例えば、限定されるものではないが、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、酸化アルギン酸塩、セルロース、酸化セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸塩、コラーゲン、アルギン酸、ペクチン及びそれらの組み合わせを含む、乾燥状態で水を吸収する任意の従来の親水性ポリマー又はコポリマー;特に、その負に帯電した基が吸湿性を付与する、ポリ(アクリル酸)、カゼイン、アルブミン及びアルギン酸などの1つ又は複数の負に帯電した基を含む親水性ポリマー又はコポリマー)、(ii)1つ又は複数のアミンカップリング基(例えば、限定されるものではないが、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、アルデヒド、イミドエステル、エポキシド、イソシアネート、カテコール及びそれらの組み合わせを含む従来のアミンカップリング基)、及び(iii)1つ又は複数の架橋剤(例えば、限定されるものではないが、ゼラチンメタクリレート、ヒアルロン酸メタクリレート、酸化メタクリルアルギン酸塩、ポリカプロラクトンジアクリレート、N,N’-ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート及びそれらの組み合わせを含む従来の架橋剤)の組み合わせから形成される。
【0055】
例示的な実施形態では、生体接着パッチ1は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(PAA-NHSエステル)及びキトサンでグラフト化されたポリ(アクリル酸)からなる接着層4と、この接着層4の一方の面に配設される両性イオン相互貫入ポリウレタンの非接着層5とから製造される。
【0056】
本発明の実施形態によると、被覆層6は、標的表面と接触して置かれたときに疎水性相互作用を提供するように製造及び構成されるため、適切な疎水性流体から形成することができる。例示的な流体には、限定されるものではないが、シリコーン油、鉱油、精油、植物油及びそれらの組み合わせなどの油が含まれる。
【0057】
従って、本発明によるそのような多層折り畳み生体接着パッチ1の適用時、折り畳まれた生体接着パッチ1の被覆層6側は、少なくともその一部が露出して、標的組織表面と接触して置かれるように配設されることになる。
【0058】
本発明の一態様では、管状構造(例えば、食道、気管、気管支、血管)における組織欠損部の管腔内封止を達成する方法及びシステムが
図2~
図4に示されている。特に、従来のバルーンカテーテル装置は、膨張していないバルーン部分を取り囲むバルーンカテーテル装置上に配設されることになる折り畳まれた生体接着スリーブ10(例えば、
図3A~Bを参照されたい)を形成するために、任意の様々な管状スリーブ構造に折り畳まれた生体接着パッチ1と共に使用されることになる。一実施形態では、
図3Aに例示するように、生体接着パッチ1は、折り紙ベースの設計の三角形の折り畳まれた生体接着スリーブ10に折り畳まれ、この折り畳まれた生体接着スリーブ10は、任意の様々な従来のバルーンカテーテル装置の膨張していないバルーンの外側表面の周りに配設するためのサイズ及び構造にすることができる。別の実施形態によると、
図3Bに例示するように、生体接着パッチ1は、折り紙ベースの設計のウィング8を備えたプリーツ付きの円筒状生体接着スリーブ10に折り畳まれ、この設計は、任意の様々な従来のバルーンカテーテル装置の膨張していないバルーンの外側表面の周りに配設するためのサイズ及び構造にすることができる。エッジ7(露出部分を形成する折り目間の部分、
図3A)及びウィング8(円筒状スリーブの外側の露出部分を形成する折り目/プリーツ間の部分、
図3B)の数は、様々であり得る。三角形及び円筒状の折り畳まれた生体接着スリーブ10の構造が示されているが、他の幾何学的形状(例えば、正方形、八角形など)も本発明に包含されることに留意されたい。
【0059】
特定の幾何学的構造に関係なく、折り畳まれた生体接着スリーブ10の形態の生体接着パッチ1は、この生体接着パッチ1の非接着側の折り畳まれた部分(例えば、非接着層5の折り畳み部分)によって画定される、後にバルーンを収容する内部通路9及び折り畳まれた接着スリーブ10の接着面(例えば、表面接着層4又は存在する場合には被覆層6)の露出した折り畳み部分(即ちエッジ7又はウィング8)によって画定される外側接着表面を備える。
図3A~Bに示す実施形態では、折り畳まれた折り紙ベースの設計は、折り畳まれた生体接着スリーブ10が、膨張していないバルーン部分が内部通路9内に収容された状態で、任意の従来のバルーンカテーテル装置上に配設できるように構成される。いくつかの実施形態では、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、膨張していないバルーンを内部通路9内に手で単純に滑らせるか又は配置することにより、バルーンカテーテルに取り付けられる。他の実施形態では、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、低侵襲処置のためにバルーンカテーテルが挿入されるカニューレ(図示せず)の内側に折り畳まれた生体接着スリーブ10を最初に配設することにより、バルーンカテーテルに取り付けられる。この実施形態では、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、内部通路9が、装置の膨張していないバルーン部分が挿入されるカニューレ内に通路を形成するように管状カニューレ内に収容されることになり、折り畳まれた生体接着スリーブ10の外側表面がカニューレの内側表面に近接又は接触して配設される。従って、装置の膨張していないバルーン部分がカニューレに挿入されると、膨張していないバルーンは、折り畳まれた生体接着スリーブ10の内部通路9に滑り込み、膨張していないバルーンの外側表面は、折り畳まれた生体接着スリーブ10の内側の非接着面と接触する。所与の場合に使用されるバルーンカテーテルの寸法に基づく折り畳まれた生体接着スリーブ10の摩擦力及びその寸法の適切な設計により、折り畳まれた生体接着スリーブ10を、膨張していないバルーンの周りの所定の位置に保持することができる。例えば、現在入手可能なバルーンカテーテルは、膨張していないときに直径が約2mm~約6mm(6フレンチ~18フレンチ)であるバルーンを取り込む。従って、様々な折り畳まれた生体接着スリーブ10を設計することができ、それぞれは、これらの標準的なバルーンカテーテルの設計の上に適切に取り付けるための様々な内部通路9の直径を有する。さらに、使用中、バルーンが膨張し、折り畳まれた生体接着スリーブ10が標的組織表面及び体液(又は注入された生理食塩水又は他の流体)と接触すると、折り畳まれた生体接着スリーブ10が(本明細書でより詳細に説明されるように)広がる。従って、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、バルーンの膨張時に広がって、膨張したバルーンに適応して生体接着材の引き裂きを防止するようにさらに構成される。バルーンの膨張直径は、特定の患者の解剖学的構造及びバルーンカテーテルが使用される位置に依存することになる。一般に、以下の膨張したバルーンの直径の範囲は、折り畳まれたバルーンスリーブ10の折り畳まれていない構造を設計するのに適するであろう:気管送達の場合には約10~25mm、食道送達の場合には約10~20mm、上行大動脈送達の場合には約20~35mm。従って、折り畳まれたバルーンスリーブ10は、少なくともこれらの膨張したバルーン直径、好ましくは生体接着材の引き裂きのリスクを回避する範囲のより大きい直径に適応する折り畳まれていない構造を有する。
【0060】
いくつかの実施形態によると、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、膨張していないバルーン上の折り畳まれた生体接着スリーブ10の配設時にバルーンカテーテルに取り付けられるか又は一体化される1つ又は複数の安定化要素(図示せず、例えば接着材、タブ若しくはひも状要素、補強部材又は他の適切な安定化機構)をさらに含み得る。このような安定化要素は、バルーンカテーテルを操作して標的部位に配置する際、折り畳まれた生体接着スリーブ10の移動、集群又は回転を制限するように構成される。例えば、補強部材をバルーンカテーテル及び折り畳まれた生体接着スリーブ10に取り付けて、折り畳まれた生体接着スリーブ10をバルーン部分の所定の位置に保持することができ、補強部材は、配置時に折り畳まれた生体接着スリーブ10から(例えば、バルーン膨張時に分解、破壊又は移動することによって)分離される。
【0061】
本発明によると、
図2及び
図4A~Dに示すように、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、バルーンが膨張するにつれて生体接着スリーブ10が広がる(例えば、プリーツ付きウィングが広がり得るか、又は三角スリーブの場合、折り畳まれた構造が解けて拡張することになる)ように製造及び構成される(例えば、
図4A~Dを参照されたく;
図3A~3Bを逆の順序で参照されたい)。バルーンが膨張して、折り畳まれた生体接着スリーブ10が広がると、生体接着材の外側の接着面は、生体接着スリーブ10が挿入されている中空器官又は血管の壁に接触する。バルーンの膨張圧力が増加し続けると、バルーンによって生体接着材及び中空器官又は血管の組織壁に加えられる半径方向の圧力が生体接着材の接着をもたらし、迅速及び強固な管腔内封止が得られる。水和(体液及び湿潤組織表面の存在下)及び湿潤組織表面への生体接着材の接着時、生体接着材がゴム状態に移行し(
図1)、その折り畳まれた状態の塑性変形から解放され、組織表面に適合する。
【0062】
例示的な実施形態によると、本発明の折り畳まれた生体接着スリーブ10を使用して、ブタの気管、食道及び大動脈をそれぞれ封止するための低侵襲送達装置及び技術を使用する生体外での実証が
図4B~Dに例示されている。この実証は、様々な追加の器官及び手術部位にも適用できることに留意されたい。具体的には、
図4B~Dでは、異なる標的器官及び血管の直径に適合した異なるバルーンカテーテルを使用して、折り畳まれた生体接着スリーブ10の構造で生体接着材を標的器官及び血管に管腔内送達して接着する本材料及び方法の能力を実証した。特に、フォーリーカテーテルを本発明の折り畳まれた生体接着スリーブ10と共に使用して、5mmの円形の貫壁欠損部を有する裂傷したブタの気管の気密封止を達成し、封止後に肺の正常な膨張を可能にすることが実証された(
図4B)。同様に、ブタの食道(
図4C)及び大動脈(
図4D)における5mmの円形の貫壁欠損部の迅速な液密封止及び止血管腔内封止は、バルーンカテーテルベースの折り畳まれた生体接着スリーブ10の配置によって達成された。管腔内に送達される折り畳まれた生体接着スリーブ10によって達成されるこれらの封止は、300mmHgを超える超生理学的圧力に容易に耐えることが実証された。
【0063】
本発明の実施形態によると、バルーンカテーテルベースの送達に適合した折り畳まれた生体接着スリーブ10のサイズ及び形状は、特定の臨床適応に従ってさらにカスタマイズすることができ、従ってこれらの実証で例示された周囲封止に加えて、局所的な欠損部の被覆を提供する。
【0064】
別の実施形態によると、本発明の生体接着材及び適用方法は、低侵襲処置に適合した関節線形ステープラを使用して、組織に線形組織封止を形成するように構成される。特に、折り畳まれた生体接着スリーブ10は、線形ステープラの関節ヘッド部分(即ち2つの対向するジョー及び対向するジョー間のヒンジ状コネクタを含む細長い管状部分から延びる部分)の周りを包むか又は包囲するように構成される。この実施形態では、折り畳まれた生体接着スリーブ10の1つ又は複数の部分は、ジョーの作動による配置及び接着のためにその上に配設された1つ又は複数の接着部分17を含む。
【0065】
好ましい実施形態によると、
図6に示すように、折り畳まれる前の生体接着スリーブ1は、それぞれがステープラの対向する関節ジョーの周りを包むような(好ましくはそれを取り囲むような)サイズ及び形状の2つの矩形部分14の形状で提供され、2つの矩形部分14は、関節ヘッドの遠位部分に沿って延びるようなサイズ及び形状の2つの延長部15によって相互接続され、2つの延長部15は、中心開口部16で1つになり、この中心開口部16は、そこを通るステープラのヒンジ状コネクタ及び細長い管状部分に合うように適合される。
図6に示すように、折り畳まれた接着スリーブ10が関節線形ステープラと一体化されると、各接着部分17がジョーの対向する内側表面上に配設され、接着部分17が標的組織表面との接触のために露出されるように、2つの接着部分17をそれぞれの対向する矩形部分14に配置することができる(例えば、
図5を参照されたい)。
【0066】
使用中、ジョーが開放位置にある関節線形ステープラは、低侵襲処置を使用して標的組織部位(即ち組織の欠損部)まで移動される。標的組織に到達すると、ステープラのジョーは、その作動(即ちジョーが押し合う)により、折り畳まれた生体接着スリーブ10の接着部分17が標的組織表面に接触するように標的組織部位の周りに(即ち標的組織/欠損部がステープラのジョー間に配設される状態で)配設され、接着部分17を標的組織表面に対してさらに圧迫する。接着部分17の標的組織表面に対するこの接触及び圧迫により、接着が始まり、その後、欠損部が封止される。
【0067】
本発明の実施形態によると、関節線形ステープラを使用して接着材を配置することに加えて、関節線形ステープラは、ステープラカートリッジを収容することができ、従って、ジョーの作動は、ステープルカートリッジの発射も含み得る。この場合、ステープラのジョーの作動により、生体接着材で補強されたステープルラインが形成されることになる。代わりに、これらのステップは、ステープルを挿入せずに行うことができ、ステープルのない線形封止が得られる。
【0068】
例示的な実施形態では、PAA-NHS及びキトサンベースの乾燥生体接着層4は、両性イオン相互貫入ポリウレタンの非接着層5で裏打ちされ、多層生体接着材を形成する。この多層生体接着材は、内視鏡関節線形ステープラのジョーの寸法に適合する接着部分17を形成するために矩形のストリップに切断される。矩形のストリップが好ましいが、正方形、楕円形、円形などの他の幾何学的形状を代わりに使用することもできる。接着部分17の非接着層5は、ステープラのジョーの上に取り付けるように設計される折り畳まれた生体接着スリーブ10上に位置し(
図6)、従って低侵襲技術を使用して、関節ステープラを挿入して標的組織部位まで移動させるとき、接着部分17が正確に所定の位置に保持される。ステープラが標的組織部位に到達し、標的組織部位/欠損部に対して適切に配置されると、ステープラが作動され、接着部分17が標的組織部位/欠損部に/その周囲に圧迫される。組織表面に対して圧迫され、組織表面に接着されると、接着部分17は、折り畳まれた生体接着スリーブ10から解放され、標的組織に気密封止及び液密封止が形成される。特に、接着部分17と組織表面との間の接着形成は、接着部分17と折り畳まれた生体接着スリーブ10との間の接着よりも遥かに強力である。結果として、接着部分17は、優先的に組織に接着し、折り畳まれた生体接着スリーブ10から剥がれる。いくつかの実施形態では、接着部分17を折り畳まれた生体接着スリーブ10に固定するための追加の固定機構(図示せず)が提供される。埋め込み中、この追加の固定機構は、除去される(例えば、接着部分17を折り畳まれた生体接着スリーブ10に結合するための追加の固定機構として使用される水溶性接着剤の場合、水和時にこの接着剤が溶解し、接着部分17は、折り畳まれた生体接着スリーブ10から解放される)。
【0069】
矩形の接着部分17の場合、線形封止が標的組織上に形成される。本発明の一実施形態によると、
図6に示すように、対向する矩形の接着部分17は、対向する各ジョーに配設され、従って線形封止が標的組織の両側に形成される。片側のみの接着が必要な場合(例えば、組織の片側の小さい穿孔を覆う場合)、配置方法を相応に調整することができ、単一の接着部分17を関節ステープラの一方のジョーに配設して患部に配置することができる。
【0070】
関節ステープラと、折り畳まれた生体接着スリーブ10を介して関節ステープラのジョーのそれぞれに配設された対向する接着部分17とを使用して、
図7A~Bに例示するように、生体外でのブタの腸のセグメントにおける例示的な5mmの円形貫壁欠損部の液密封止が実証された。低侵襲手術環境でこの方法をさらにシミュレートするために、5mmの円形貫壁欠損部を有する別のブタの腸の封止を内視鏡視覚化で行って、折り畳まれた生体接着スリーブ10(
図7C)を介して関節ステープラのジョーのそれぞれに配設された、対向する接着部分17を備えた関節ステープラの送達及び適用プロセスを案内した。実証されているように、5mmの円形貫壁欠損部の液密封止が達成された。
【0071】
本発明の生体接着材、装置及び方法は、本発明の実施形態の理解を促進することを意図した以下の実施例を参照してさらに例示されるが、それらは、本発明の限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0072】
材料及び方法
様々な実施例において、特に明記しない限り、以下の材料及び方法を使用した。
【0073】
生体接着パッチの調製
生体接着材前駆体溶液を調製するために、30w/w%アクリル酸、2w/w%キトサン(HMC+Chitoscience Chitosan 95/500、95%脱アセチル化)、1w/w%アクリル酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、0.2w/w%α-ケトグルタル酸及び0.05w/w%ポリ(エチレングリコールメタクリレート)(PEGDMA;Mn=550)を脱イオン水に溶解した。前駆体溶液をスペーサー付きのガラス型(特に明記しない限り厚さ210μm)に注ぎ、UVチャンバー(284nm、10W出力)で30分間硬化させた。マイクロテクスチャ加工された表面を形成するために、乾燥生体接着層の微粒子を30Hzで2分間の極低温粉砕(CryoMill, Retsch)することによって調製し、次に細孔径が100μmの篩を使用して、調製した生体接着層に適用した。生体接着ペーストを形成するために、形成された乾燥生体接着層を分解して生体接着性微粒子を得、次にこれを本明細書に記載の疎水性流体に懸濁した。
【0074】
両性イオン裏打ち層を調製するために、エタノール/水混合物(95:5v/v)に溶解した10w/w%親水性PU(HydroMed(商標)D3, Advansource Biomaterials)及び0.1w/w%ベンゾフェノンを、200rpmでスピンコーティングした。スピンコーティングしたフィルムを空気流下で一晩乾燥させ、次に35w/w%[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(DMAPS)及び5w/w%α-ケトグルタル酸を含む水溶液中に10分間浸漬し、続いてUVチャンバー(284nm、10W出力)で1時間硬化させた。得られたフィルムを多量の脱イオン水中で3日間十分に洗浄して未反応の試薬を除去し、次に空気流下で十分に乾燥させた。
【0075】
両性イオン裏打ち層を生体接着層と組み合わせるために、エタノール/水混合物(95:5v/v)中の5w/w%親水性PU溶液の薄層を生体接着層の平らな表面に400rpmでスピンコーティングした。次に、両性イオン裏打ち層を導入し、この集合体全体を完全に乾燥させた。疎水性液体被覆層を導入するために、シリコーン油(粘度100cSt)を生体接着層のマイクロテクスチャ加工された表面に接触させた。
【0076】
生体外での実証
すべての生体外での実験は、マサチューセッツ工科大学の動物実験委員会によって審査及び承認された。
【0077】
気管欠損部を封止するために、生検パンチを使用してブタの気管壁に直径5mmの穴を開けた。気管の上部をチューブに接続し、チューブから空気を送り込んで肺葉を膨らませた。生体接着パッチを、本明細書に記載の折り紙ベースの設計及び製造プロセスによって折り畳み、フォーリーカテーテル(ReliaMed)に導入した。折り畳まれた生体接着パッチを運ぶフォーリーカテーテルを、損傷した気管の近位管腔を介して挿入した。パッチ送達システムを気管欠損部に対して適切に配置したら、バルーンを膨らませて、折り畳まれた生体接着パッチと気管壁を5秒間押圧して、欠損部を封止した。気管欠損部の封止後、気管に空気を送り込んで気管の気密封止をチェックし、肺葉の膨張能力を回復させた。
【0078】
食道欠損部を封止するために、生検パンチを使用してブタの食道壁に直径5mmの穴を開けた。食道から水を注入し、チューブ及び蠕動ポンプ(Thermo Fischer)を使用して100mmHgの圧力を発生させて、欠損部からの漏れを視覚化した。本明細書に記載の折り紙ベースの設計及び製造プロセスによって生体接着パッチを折り畳み、食道カテーテル(Boston Scientific)に導入した。折り畳まれた生体接着パッチを運ぶ食道カテーテルを、損傷した食道の近位内腔に挿入した。カテーテルが欠損部の所望の配置位置に移動したら、バルーンを膨らませて、折り畳まれた生体接着パッチ及び食道壁に約77.5kPaの圧力を5秒間加えて欠損部を封止した。食道欠損部の封止後、水を食道に送り込んで液密封止を確認した。
【0079】
大動脈の欠損部を封止するために、生検パンチを使用してブタ大動脈壁に直径5mmの穴を開けた。ブタの血液を大動脈に灌流し、チューブ及び蠕動ポンプ(Thermo Fischer)を使用して120mmHgの圧力を発生させて、欠損部からの漏れを可視化した。生体接着パッチを、本明細書に記載の折り紙ベースの設計及び製造プロセスによって折り畳み、フォーリーカテーテル(ReliaMed)に導入した。折り畳まれた生体接着パッチを備えたフォーリーカテーテルを、損傷した大動脈の内腔に挿入した。カテーテルを欠損部位の所望の配置位置に移動したら、バルーンを膨らませて、折り畳まれた生体接着パッチ及び大動脈壁を5秒間押圧して欠損部を封止した。大動脈欠損部の封止後、ブタの血液を大動脈に送り込んで大動脈の液密封止を確認した。
【0080】
腸の欠損部を封止するために、生検パンチを使用してブタの小腸壁に5mmの穴を開けた。2つの対向する接着部分を有するデュアルスリーブ(即ち折り畳まれた生体接着スリーブ)を、本明細書に記載の折り紙及び切り紙ベースの設計及び製造プロセスに従って調製し、ステープラの対向するジョーにおける関節線形ステープラ(Ethicon)に導入した。折り畳まれた生体接着スリーブが配設された関節線形ステープラを欠損部位まで案内し、作動させて5秒間圧迫した。修復した腸をポンプに接続し、水で膨らませて、120mmHgの圧力下で腸の液密封止を確認した。
【0081】
低侵襲手術環境をシミュレートするために、内視鏡装置のためのアクセスポートを備えた暗室を使用して前述の実験を繰り返し、防水内視鏡カメラ(DEPSTECH)を可視化のために使用した。
【国際調査報告】