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特表2023-544898まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御
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  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図1
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図2A
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図2B
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図3
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図4
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図5
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図6A
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図6B
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図7
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図8
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図9
  • 特表-まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】まぶた縁の圧力を使用するコンタクトレンズ位置及び回転制御
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522459
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2021059402
(87)【国際公開番号】W WO2022079630
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】17/069,232
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン・ロス
(72)【発明者】
【氏名】トナー・アダム
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】デイビス・ブレット
(72)【発明者】
【氏名】ショー・アリラ
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2H006BC06
(57)【要約】
例示的な眼科用レンズが本明細書で説明されている。光学部は、前面と、前面に対向する後面と、を含む。光学部はまた、光学部の前面上に提供され、着用者の上まぶたに係合するように構成された凹部を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用レンズであって、
前面と、
前記前面に対向する後面と、
前記前面上に提供された第1の凹部であって、前記眼科用レンズの着用者の上まぶたと相互作用するように構成された位置において半径方向に変位されている、第1の凹部と、を備える、眼科用レンズ。
【請求項2】
前記凹部が、前記眼科用レンズの回転安定性及び/又は位置制御を提供するように構成されている、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項3】
前記眼科用レンズの着用者の下まぶたワイパーと相互作用するように構成された第2の凹部を更に備える、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項4】
光学部の中心点と前記第1の凹部との間の半径方向距離が、約4ミリメートル(mm)~約4.5mmである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記第1の凹部が、前記光学部の前記前面上に薄化ゾーンを形成する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記第1の凹部が、前記眼科用レンズの前記中心点により近い第2の傾斜面よりも前記眼科用レンズの前記中心点からより遠い第1の傾斜面によって画定されている、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
前記第1の傾斜面が、前記第2の傾斜面よりも急な傾斜を有する、請求項6に記載の眼科用レンズ。
【請求項8】
前記第2の傾斜面が、前記第1の傾斜面よりも急な傾斜を有する、請求項6に記載の眼科用レンズ。
【請求項9】
前記第1の傾斜面の長さが、前記第2の傾斜面の長さよりも長い、請求項6に記載の眼科用レンズ。
【請求項10】
前記第2の傾斜面の長さが、前記第1の傾斜面の前記長さよりも長い、請求項6に記載の眼科用レンズ。
【請求項11】
前記第1の凹部が、約0.8ミリメートル(mm)~約1.2mmの幅を有する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項12】
前記第1の凹部が、約5ミリメートル(mm)~約6mmの長さを有する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項13】
前記光学部の前記前面上に提供された隆起部を更に備え、前記隆起部が、前記凹部に近接して配置されている、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項14】
前記隆起部が、前記凹部に対して半径方向外側に配置されている、請求項13に記載の眼科用レンズ。
【請求項15】
前記光学部の前記中心点と前記隆起部との間の半径方向距離が、約4.5ミリメートル(mm)~約5mmである、請求項14に記載の眼科用レンズ。
【請求項16】
前記隆起部が、前記凹部に対して半径方向内側に配置されている、請求項13に記載の眼科用レンズ。
【請求項17】
前記眼科用レンズが、電気活性レンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項18】
前記眼科用レンズが、トーリックレンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項19】
前記眼科用レンズが、球面レンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項20】
前記眼科用レンズが、多焦点レンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項21】
前記眼科用レンズが、非球面レンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項22】
前記眼科用レンズが、美容的着色レンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーリックコンタクトレンズを含む着用可能レンズなどの回転安定性を必要とする眼科用デバイスのための安定化ゾーンに関し、より詳細には、位置安定性及び/又は回転安定性を必要とし、様々な傾斜面を有する1つ又は2つ以上の凹状安定化ゾーンを組み込んだコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近視(Myopia)又は近眼(nearsightedness)は、眼の視力障害又は屈折障害であり、網膜に到達する前に像からの光線が一点に集束する。近視は、概して、眼球(eyeball)若しくは眼球(globe)が長すぎるため、又は角膜の曲率が急すぎるために生じる。マイナスの度数付き球面レンズを利用して、近視を矯正することができる。遠視(Hyperopia)又は遠眼(farsightedness)は、眼の視覚障害又は屈折障害であり、網膜に到達した後か、又は網膜の後方で像からの光線が一点に集束する。遠視は、概して、眼球(eyeball)若しくは眼球(globe)が短すぎるか、又は角膜の曲率が平坦すぎるために生じる。プラスの度数付き球面レンズを利用して、遠視を矯正することができる。更に、近視及び遠視という用語は、回転対称であり、それゆえ、全ての方向に同じ度数を有する球面度数付きレンズによって矯正され得る、屈折異常を指す。乱視は、眼の視覚障害又は屈折障害であり、屈折異常が回転対称ではないために個人の視力がぼやけている。乱視は、円柱レンズを組み込むことによって矯正され得る。単純近視又は遠視の人は、通常、球面度数付き視力矯正のみを必要とするが、乱視の人は、通常、球面矯正と円柱矯正の組み合わせを必要とする。
【0003】
トーリックレンズは、相互に垂直な2つの配向で、2つの異なる度数を有する光学素子である。本質的には、トーリックレンズは、単一のレンズに内蔵された、近視又は遠視を矯正するための1つの球面度数と、乱視を矯正するための1つの円柱度数と、を有する。これらの度数は、目に対して好ましく維持される異なる角度の曲率によって与えられる。トーリックレンズを、眼鏡、眼内レンズ、及びコンタクトレンズにおいて利用することができる。眼鏡及び眼内レンズに使用されるトーリックレンズは、眼に対して固定位置に保持されることにより、常に一貫した視力矯正を提供する。しかしながら、トーリックコンタクトレンズは、眼上で回転する傾向があるので、準最適な視力矯正を一時的に提供する場合がある。したがって、トーリックコンタクトレンズは、着用者が瞬きするか、又はきょろきょろするときに、コンタクトレンズを眼の上で比較的安定的に保つ機構も含む。
【0004】
追加的に、視覚ゾーンの非回転対称の補正特性、波面補正特性、又は分散を、円柱レンズ、二焦点レンズ、多焦点レンズなどのコンタクトレンズの1つ又は2つ以上の表面に与えることによって、特定の視覚欠陥の矯正を達成することができることが知られている。印刷パターン、マーキングなどのようなある特定の美容的特徴部が、着用者の眼に対して特定の配向で置かれるように要求されることも知られている。このようなコンタクトレンズの使用は、眼上にあるときに効果的であるように、一対のコンタクトレンズの各々が特定の配向で維持されなければならない場合に問題となる。コンタクトレンズが最初に眼上に置かれるときに、要求された配向で置かれる場合があるか、又は自らを自動的に位置決めするか、若しくは自動位置決めし、次いで、その位置を経時的に維持する場合がある。しかしながら、いったんコンタクトレンズが位置決めされると、瞬き中、まぶた並びにまぶた及び涙液膜の移動によって、力がコンタクトレンズ上に及ぶため、眼上で回転する場合がある。
【0005】
コンタクトレンズの眼上での配向の維持は、典型的には、コンタクトレンズの機械的特性を変えることによって達成される。例えば、コンタクトレンズの前面を後面に対して偏心させること、コンタクトレンズの下部の周辺部を厚くすること、コンタクトレンズの表面に隆起を形成すること、及びコンタクトレンズエッジを切り詰めることを含むプリズム安定化は、いずれも利用されている方法である。
【0006】
更に、厚いゾーン及び薄いゾーン、又は場合によっては、コンタクトレンズの周辺部の厚さが増加若しくは低減するエリアを使用することによって、コンタクトレンズを安定化させる、静的安定化が使用されてきた。典型的には、厚いゾーン及び薄いゾーンは、垂直軸及び/又は水平軸を中心に対称性を有するコンタクトレンズの周辺部に位置する。例えば、2つの厚いゾーンの各々が、視覚ゾーンの両側に位置決めされてもよく、コンタクトレンズの0~180度軸に沿って中心に置かれてもよい。別の例では、プリズム安定化の重み効果と同様の重み効果を提供し、上まぶたの力を利用して、コンタクトレンズを安定化させるために、上部から下部へ厚さが増加する領域も組み込んでいる、コンタクトレンズの下部に位置決めされた単一の厚いゾーンが設計されてもよい。
【0007】
現在、静的安定化ゾーンの課題は、コンタクトレンズの安定性と快適性とのトレードオフ、及び厚さの増加に関連する物理的制約である。静的安定化ゾーンにより、安定化ゾーンの傾斜がコンタクトレンズ内で固定される。安定化ゾーンの表面傾斜を増加させるといった、回転速度を改善するために設計を変更することにより、コンタクトレンズの厚さが増大し、快適性に悪影響を与える場合がある。追加的に、コンタクトレンズの設計は、2つの事項、すなわち、挿入時に適切な配向に回転することと、装用期間を通してその配向を維持することと、を達成しなければならない。隆起安定化ゾーン設計では、これらの2つのモード間の性能のトレードオフが必要とされる。
【0008】
特定の平行移動多焦点レンズ設計は、下まぶた縁との相互作用がレンズの平行移動能力に影響を及ぼすことを認識して、下まぶた接触表面及びまぶた下支持構造を両方とも下まぶたに組み込んでいる。平行移動多焦点設計は、一般に、回転安定性にあまり関係しない。しかしながら、下まぶた接触表面及びまぶた下支持構造の両方の使用は、トーリックレンズ、センサ位置決め要求を伴う電気活性レンズ、又は回転安定性が重要である他のコンタクトレンズ用途に所望されるレベルの回転安定性を付与しない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、改善された位置及び回転制御を有するコンタクトレンズが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の眼科用レンズは、簡単に上述したような先行技術に関連する欠点を克服する。
【0011】
一実装形態では、眼科用レンズは、前面と、前面に対向する後面と、を含む。レンズは、光学部の前面上に提供された凹部を含む。凹部は、レンズの中心点から半径方向に変位される。
【0012】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、レンズの回転安定性及び/又は位置制御を提供するように構成されている。
【0013】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、対象者のまぶたワイパーと相互作用するように構成されている。
【0014】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、対象者の上まぶたワイパーと相互作用するように構成されている。
【0015】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、対象者の下まぶたワイパーと相互作用するように構成されている。
【0016】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、レンズの中心点と凹部との間の半径方向距離は、約4ミリメートル(mm)~約4.5mmである。
【0017】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、レンズの前面上に薄化ゾーンを形成する。
【0018】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、レンズの中心点により近い第2の傾斜面よりもレンズの中心点からより遠い第1の傾斜面を画定する。
【0019】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、第1の傾斜面は、第2の傾斜面よりも急な傾斜を有する。
【0020】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、第2の傾斜面は、第1の傾斜面よりも急な傾斜を有する。
【0021】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、第1の傾斜面の長さは、第2の傾斜面の長さよりも長い。
【0022】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、第2の傾斜面の長さは、第1の傾斜面の長さよりも長い。
【0023】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、レンズの前面上に提供された複数の凹部を更に含む。凹部の各々は、レンズの中心点から半径方向に変位される。例えば、第1の凹部は、任意選択的に、対象者の上まぶたワイパーと相互作用するように構成されており、第2の凹部は、任意選択的に、対象者の下まぶたワイパーと相互作用するように構成されている。
【0024】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、約0.8ミリメートル(mm)~約1.2mmの幅を有する。
【0025】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部は、約5ミリメートル(mm)~約6mmの長さを有する。
【0026】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、レンズの前面上に提供された隆起部を更に含み、隆起部は、凹部に近接して配置される。
【0027】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、隆起部は、凹部に対して半径方向外側に配置される。いくつかの実装形態では、隆起部は、凹部に対して半径方向内側に配置される。
【0028】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、レンズの中心点と隆起部との間の半径方向距離は、約4.5ミリメートル(mm)~約5mmである。
【0029】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、電気活性又は「スマート」レンズである。
【0030】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、トーリックレンズである。
【0031】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、球面レンズである。
【0032】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、多焦点レンズである。
【0033】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、非球面レンズである。
【0034】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、美容的着色レンズである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の前述及び他の特徴と利点は、添付の図面に示されるように、本発明の好ましい実装形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。
図1】凹部を有する眼科用レンズの実装形態の側面図を示す。
図2A】本明細書で説明される実装形態による、まぶたワイパーと相互作用する眼科用レンズの側面図を示す。図2A上まぶたワイパーが凹部と相互作用する眼科用レンズを示す。図2B上まぶたワイパーが凹部及び隆起部と相互作用する眼科用レンズを示す。
図2B】本明細書で説明される実装形態による、まぶたワイパーと相互作用する眼科用レンズの側面図を示す。図2A上まぶたワイパーが凹部と相互作用する眼科用レンズを示す。図2B上まぶたワイパーが凹部及び隆起部と相互作用する眼科用レンズを示す。
図3】本明細書で説明される実装形態による対称凹部を有する眼科用レンズについてのサグ(mm)対中心点からの距離(mm)のグラフを示す。
図4】本明細書で説明される実装形態による非対称凹部を有する眼科用レンズについてのサグ(mm)対中心点からの距離(mm)のグラフを示す。
図5】本明細書で説明する様々な実装形態による眼科用レンズの斜視図を示す。
図6A】コンタクトレンズと相互作用するまぶたワイパーを示す。図6A主注視中のコンタクトレンズの位置を示す。図6B下方注視中の瞳孔に対するコンタクトレンズの予想される上方への移動を示す。
図6B】コンタクトレンズと相互作用するまぶたワイパーを示す。図6A主注視中のコンタクトレンズの位置を示す。図6B下方注視中の瞳孔に対するコンタクトレンズの予想される上方への移動を示す。
図7】異なる量の下方注視についての瞳孔に対する上まぶたワイパー及び下まぶたワイパーの移動を示す。
図8】複数の凹部を有する眼科用レンズの実装形態の側面図を示す。
図9】本明細書で説明する実装形態による例示的な度数付きコンタクトレンズの図表示である。
図10】例示的なコンピューティングデバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
眼の移動及び瞬きにかかわらず、最適な視力のための所望の位置を保持及び/又は維持するように構成された、少なくとも1つの凹部をコンタクトレンズ表面に有するコンタクトレンズを設計することが有利であろう。
【0037】
対象者の眼に対する回転を最小限に抑えることは、コンタクトレンズの性能にとって有益である。例えば、トーリックレンズにおいて、レンズが乱視を治療するように設計されている場合、回転を最小限に抑えることにより、レンズの機能を大幅に改善することができる。回転は、通常、厚くされた又は隆起した安定化ゾーンの使用を通して最小限に抑えられる。厚くなった安定化ゾーンを有するトーリックコンタクトレンズは、典型的には、まぶたが各瞬き中に厚いゾーンと相互作用するため、安定化されていない(球面)コンタクトレンズよりも快適さが低い。眼科用レンズのいくつかの実装形態では、トーリックコンタクトレンズの向きは、代わりに、少なくとも上まぶたとレンズの前面の凹部との相互作用によって維持される。
【0038】
複雑な光学設計(多焦点又は非球面)を有するいくつかのコンタクトレンズは、偏心に敏感であり、したがって、これらのタイプのコンタクトレンズは、凹部内に比較的薄い領域を含むことから利益を得ることができる。上まぶたは、凹部と相互作用することによって、レンズが瞳孔に対して一貫した位置を維持するのを助ける。図6A図6B、及び図7に示すように、瞳孔に対する上まぶた縁の位置は、主注視から下方注視まで比較的一貫したままである。いくつかの他のコンタクトレンズタイプ(平行移動二焦点レンズなど)は、凹部のこの包含から利益を享受してもよい。いくつかの実施形態では、下まぶたが下視中に瞳孔により近いので、下まぶた圧を使用して、レンズが、垂直注視(図6A、6B、及び図7に示す)の変動中に瞳孔に対してより大きな移動を達成するのを助けることができる。したがって、コンタクトレンズ表面の窪み及び/又は隆起が下まぶたによって保持される場合、レンズは瞳孔に対して上方に移動する。下まぶたは、コンタクトレンズの垂直位置を維持するための支持体として作用することができ、下方注視の間に支持を提供しながら、直線視の間に滑り落ちるのを防止することができる。
【0039】
用語集
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。ポリマーの定義は、Richard G.Jones、Jaroslav Kahovec、Robert Stepto、Edward S.Wilks、Michael Hess、Tatsuki Kitayama、及びW.Val Metanomskiによって編集されたCompendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008に開示される定義に一致する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、修飾されている数字の+/-5%の範囲を指す。例えば、「約10」という語句は、9.5及び10.5の両方を含むであろう。
【0041】
別途指示のない限り、例えば、「2~10(from 2 to 10)」、又は「2~10(between 2 and 10)」におけるような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0042】
用語「(メタ)」は、任意選択的なメチル置換を指す。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート基及びアクリル基の両方を示す。どこに化学構造が与えられていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組み合わせで組み合わせてもよいことが理解すべきである。したがって、ある構造が置換基R及びR**を含有しており、これらがそれぞれ3つの可能性のある基のリストを含んでいる場合、9とおりの組み合わせが開示されるということになる。特性の組み合わせについても同じことが当てはまる。一般式[***における「n」などの下付き文字が、ポリマーの化学式における繰り返し単位の数を表示するために使用されるとき、式は、高分子の数平均分子量を表すと解釈すべきである。
【0043】
「高分子」は、1500よりも大きい分子量を有する有機化合物であり、反応性又は非反応性であってもよい。
【0044】
「ポリマー」は、鎖状又は網目状に連結された繰り返し化学単位の高分子であり、反応性混合物に含まれるモノマー及びマクロマー由来の繰り返し単位からなる。
【0045】
「ホモポリマー」は、1つのモノマー又はマクロマーから作られるポリマーであり、「コポリマー」は、2つ以上のモノマー、マクロマー又はこれらの組み合わせから作られるポリマーである。「ターポリマー」は、3つのモノマー、マクロマー又はこれらの組み合わせから作られるポリマーである。「ブロックコポリマー」は、組成的に異なるブロック又はセグメントからなる。ジブロックコポリマーは、2つのブロックを有する。トリブロックコポリマーは、3つのブロックを有する。「櫛形又はグラフトコポリマー」は、少なくとも1つのマクロマーから作られる。
【0046】
「繰り返し単位」又は「繰り返し化学単位」は、モノマー及びマクロマーの重合の結果生じるポリマーにおける原子の最小繰り返し群である。
【0047】
「生物医学用デバイス」という用語は、哺乳類の組織又は体液の中又は上のいずれか、好ましくは、ヒトの組織又は体液の中又は上のいずれかにおいて用いられるように設計されている、任意の物品を指す。これらのデバイスの例としては、傷用包帯、シーラント、組織補填材、薬物送達システム、コーティング、癒着防止障壁、カテーテル、インプラント、ステント、縫合糸、並びに眼内レンズ及びコンタクトレンズなどの眼科用デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。生物医学デバイスは、シリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルから作製されるコンタクトレンズを含むコンタクトレンズなどの、眼科用デバイスであり得る。
【0048】
「個体」という用語は、ヒト及び脊椎動物を含む。
【0049】
「眼の表面」という用語は、角膜、結膜、涙腺、副涙腺、鼻涙管、及びマイボーム腺の表面及び腺上皮、並びにそれらの先端及び基部マトリクス、涙点、並びに神経支配による上皮の連続性と内分泌系及び免疫系との両方によって機能的システムとして連結されているまぶたを含む隣接した又は関連する構造を含む。
【0050】
「眼科用デバイス」という用語は、眼又は眼の表面を含む眼の任意の一部の中又は上に存在する任意のデバイスを指す。これらのデバイスは、光学補正、美容増進、視力強化、治療効果(例えば、包帯として)、若しくは医薬成分及び栄養補助成分などの活性成分の送達、又は前述の任意の組み合わせを提供することができる。眼科用デバイスの例には、レンズ、並びに、涙点プラグなどに限定されずに含む、光学挿入物及び眼内挿入物が挙げられるが、これらに限定されない。「レンズ」には、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、眼内レンズ及びオーバーレイレンズが挙げられる。眼科用デバイスは、コンタクトレンズを含み得る。
【0051】
「コンタクトレンズ」という用語は、人の眼の角膜上に置かれ得る構造、眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくは監視、又は紫外線遮断及び可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの組み合わせを含む、矯正的、美容的、治療的な利益を提供し得る。コンタクトレンズは、当該技術分野で公知の任意の適切な材料からなることができ、軟質レンズ、硬質レンズ、又は、弾性率、含水量、光吸収特性若しくはこれらの組み合わせなどの少なくとも2つの異なる特性を含むハイブリッドレンズであり得る。
【0052】
本発明の生物医学用デバイス、眼科用デバイス、及びレンズは、シリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルで構成され得る。シリコーンヒドロゲルは、通常、硬化済みデバイスにおいて互いに共有結合した、シリコーン成分並びに/又は疎水性モノマー及び親水性モノマーを含む。
【0053】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、少なくとも1つのシリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは全般的に、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を機能させて酸素を眼に送る。
【0054】
「ポリマーネットワーク」が、膨潤することができるが溶媒に溶解できない架橋高分子であるのは、ポリマーネットワークが本質的に1個の巨大分子であるからである。「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」は、平衡状態で水を含むポリマーネットワークを指す。ヒドロゲルは、一般に、少なくとも約10重量%の水を含有する。
【0055】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ基、シロキサン基又はカルボシロキサン基も有さないモノマーからなるポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyethyl methacrylate、「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(N-vinyl pyrrolidone、「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(dimethylacrylamide、「DMA」)、又は酢酸ビニルなどの親水性モノマーを主として含有するモノマー混合物から調製される。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。市販のヒドロゲル配合物としては、エタフィルコン(etafilcon)、ポリマコン(polymacon)、ビフィルコン(vifilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、及びオマフィルコン(omafilcon)が、それらの変形の全てを含めて挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つ親水性成分との少なくとも1つのシリコーン含有成分の共重合によって得られたヒドロゲルを指す。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。シリコーン含有成分及び親水性成分のそれぞれは、モノマー、マクロマー又はこれらの組み合わせであってもよい。シリコーン含有成分は、少なくとも1つのシロキサン基又はカルボシロキサン基を含む。.市販のシリコーンヒドロゲルの例としては、バラフィルコン(balafilcon)、アクアフィルコン(acquafilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、ファルコンII(falcon II)、アスモフィルコンA(asmofilcon A)、サムフィルコン(samfilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、ステンフィクロン(stenficlon)、ソモフィルコン(somofilcon)、並びに米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、及び国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/048847号で調製されているものとしてのシリコーンヒドロゲルが挙げられる。このパラグラフで記載される他の特許同様、これらの特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
「シリコーン含有成分」は、少なくとも1つのシリコーン-酸素結合をシロキサン[-Si-O-Si]基又はカルボシロキサン基の形態で含有する、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加物、又はポリマーを指す。シリコーン含有成分の例には、シリコーンマクロマー、プレポリマー及びモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。シリコーンマクロマーの例には、ペンダント親水基を有するポリジメチルシロキサンメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,962,548号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,760,100号、同第5,849,811号、同第5,962,548号、同第5,965,631号、同第5,998,498号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第5,070,215号、同第8662,663号、同第7,994,356号、同第8,772,422号、同第8,772,367号、欧州特許第080539号及び国際公開第2014/123959号に見出され得る。
【0058】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」は、共に混合されている成分の混合物(反応性及び非反応性の両方)を指し、重合条件にさらされると、本発明のシリコーンヒドロゲルを形成する。反応性混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、希釈剤などの反応性成分と、湿潤剤、離型剤、染料、UV吸収剤などの光吸収化合物、色素、染料及びフォトクロミック化合物など、これらのうちのいずれも反応性又は非反応性であってよいが、医薬化合物及び栄養補助化合物などの活性成分、並びに任意の希釈剤と同様に、結果として得られる生物医学デバイス内に保持されることができる、追加の成分と、を含む。製造される生物医学デバイス及びその使用方法に基づいて、多様な添加物を加えてもよいことが理解されよう。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除く、反応混合物中の全成分の重量%で示される。希釈剤を使用するとき、成分の濃度は、反応混合物及び希釈剤中の全成分の量を基準とする重量%として示される。
【0059】
「モノマー」は、非繰り返しの官能基を有する分子であり、連鎖成長重合、特に、フリーラジカル重合を受けることができる。いくつかのモノマーは、架橋剤として作用することができる二官能性不純物を有する。「マクロマー」は、繰り返し構造と、連鎖成長重合を受けることができる少なくとも1つの反応性基と、を有する、線状又は分枝状ポリマーである。モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(mPDMS)及びモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/mol)(OH-mPDMS)は、マクロマーと呼称される。
【0060】
「反応性成分」は、共有結合、水素結合又は相互貫入ネットワークの形成によって、結果得られるシリコーンヒドロゲルのポリマーネットワークの構造の一部となる、反応性混合物中の成分である。ポリマーの構造の一部にならない希釈剤及び加工助剤は、反応性成分ではない。一般的に、マクロマーの化学構造は、標的高分子の化学構造とは異なり、すなわち、マクロマーのペンダント基の繰り返し単位は、標的高分子又はその主鎖の繰り返し単位とは異なる。
【0061】
「重合性」とは、化合物が、フリーラジカル重合など、連鎖成長重合を受けることができる少なくとも1つの反応性基を含むことを意味する。反応性基の例には、以下に列挙された一価反応性基が挙げられる。「非重合性」は、化合物がそのような重合性官能基を含まないことを意味する。
【0062】
「一価反応性基」は、フリーラジカル重合及び/又はカチオン性重合などの連鎖成長重合を受けることができる基である。フリーラジカル反応性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、及び他のビニル基が挙げられる。一実装形態では、フリーラジカル反応性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド及びスチリル官能基、又は(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類及び前述の任意の混合物を含む。前述の例としては、置換又は非置換C1~6アルキル(メタ)アクリレート、C1~6アルキル(メタ)アクリルアミド、C2~12アルケニル、C2~12アルケニルフェニル、C2~12アルケニルナフチル、C2~6アルケニルフェニルC1~6アルキルが挙げられ、当該C1~6アルキル上の好適な置換基としては、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、ハロゲン及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
リビングフリーラジカル重合及びイオン重合などの他の重合経路もまた、採用することができる。素子形成モノマーは、ヒドロゲルコポリマーを形成してもよい。ヒドロゲルについて、反応性混合物は、一般的には、少なくとも1種の親水性モノマーを含むこととなる。親水性成分は、25℃にて10重量%の濃度で脱イオン水と混合されたときに、透明な単相を生じる成分である。
【0064】
「相互貫入ポリマー」又は「IPN」は、分子レベルで少なくとも部分的に交絡しているが、相互に共有結合しておらず、化学結合が破壊されなければ分離させることができない、2つ以上のポリマーネットワークを含むポリマーである。
【0065】
「半相互貫入ポリマーネットワーク」又は「半IPN」は、直鎖又は分岐鎖のうちの少なくともいくつかによるネットワークのうちの少なくとも1つの分子レベルでの貫入を特徴とする、1つ又は2つ以上のポリマーネットワーク及び1つ又は2つ以上の直鎖又は分岐鎖ポリマーを含む、ポリマーである。「架橋剤」は、分子上の2つ以上の位置でフリーラジカル重合を受けることができ、これにより分岐点及びポリマーネットワークを形成する、二官能性成分又は多官能性成分である。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレートなどである。
【0066】
「光学ゾーン」又は「光学部ゾーン」という用語は、光が物体から着用者の網膜に入る前に通過するレンズの領域を指す。
【0067】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」という用語は、少なくとも1つのシリコーンヒドロゲルを含むコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは全般的に、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を機能させて酸素を眼に送る。
【0068】
「リアルタイム」とは、瞬間的ではなく、むしろ、商業的に重要な着用者の集団の許容可能な主観的耐性を超えることなく、データが受信され、処理され、作用され得る期間を指す。
【0069】
「調整可能」とは、デバイスが、その動作パラメータのうちの1つ又は2つ以上を修正又は変更させる能力を指す。「動的に」調整可能なデバイスは、生理学的状態又は条件の変更に応答するなどして、リアルタイム又はほぼリアルタイムでそのような動作パラメータの変更をもたらすことが可能である。
【0070】
いくつかの実装形態では、電子システムを含む電気活性眼科用レンズ又は「スマート」コンタクトレンズが説明される。電子システムは、可変焦点レンズ、又は実行され得る任意の数の多数の機能を実装するように構成される任意の他のデバイス若しくは複数のデバイスを作動させてもよい。可変焦点レンズは、液晶技術、電気活性ポリマー技術、可変流体技術、及び液体メニスカス技術を含むがこれらに限定されない、着用者の調節要求に応答して、レンズの焦点距離を変化させることが可能な任意の数の好適な技術を用いて実装されてもよい。他の実装形態では、電気活性コンタクトレンズ又は他の眼科用デバイスは、可変光学部構成要素の代わりに、又はそれに加えて、バイオメトリック監視、着用者アラート、薬剤の分配、拡張現実、仮想現実などの他の機能を行うように構成されている、1つ又は2つ以上の他の電気活性構成要素を含んでもよい。電子システムは、1つ又は2つ以上のバッテリ又は他の電源、電力管理回路、1つ又は2つ以上のセンサ、クロック生成回路、好適な制御アルゴリズムを実装する制御回路、及びレンズドライバ回路を含んでもよい。これらの構成要素の複合体は、レンズの必要な又は所望の機能性に応じて様々に変動し得る。
【0071】
上記のように、いくつかの構成要素を備えるコンタクトレンズなどの眼科用デバイスが本明細書で説明される。デバイスの適切な組み合わせによって、潜在的に無制限の機能性をもたらすことができるが、コンタクトレンズを構成する光学グレードの一片のポリマー上に余分な構成要素を組み込むことに伴う、多数の困難が存在する。一般に、非平面の表面上に平面のデバイスを搭載し、相互接続することに関連する課題を含む多数の理由から、このような構成要素をレンズ上に直接製造するのは困難である。一定の縮尺及び形状で製造することも困難である。レンズ上又はレンズ内に置かれる構成要素は、構成要素を眼上の液体環境から保護しながら、小さな領域、場合によっては、わずか1.5平方センチメートルの、より詳細には17平方ミリメートルの透明ポリマー上に小型化及び統合される必要がある場合がある。また、追加の構成要素の厚さが加わるため、コンタクトレンズを着用者にとって快適かつ安全なものにすることも困難なことがある。
【0072】
本明細書で上述したサイズに関する要件に加えて、コンタクトレンズに組み込まれる電子デバイスは、本質的に水性の環境で堅牢かつ安全に使用できるものでなければならない。涙は約7.4のpHを有し、約98.2%が水分であり、1.8%が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び塩化物などの電解質を含む固形分である。これは、電子部品を導入するにはいささか過酷な環境である。また、コンタクトレンズは、少なくとも4時間、好ましくは8時間以上にわたって着用されるように一般的に設計されている。
【0073】
電子構成要素はエネルギーを必要とする。このエネルギーは、内蔵式電池を含む、任意の数の電源から供給されてもよい。電池及び他の潜在的エネルギー源は、これらのサイズでは可能性が限定されるため、例えば、レンズドライバを含む全ての電子構成要素は、所定の期間(貯蔵寿命)にわたってアイドル状態に置かれた後でも所定の期間着用することができるよう、消費電力ができるだけ小さくなるように設計されることが好ましい。最後に、電子コンタクトレンズの全ての構成要素は、生体適合性であって安全なものでなければならない。したがって、コンタクトレンズに組み込まれる全ての電子機器は、上記の設計パラメータ、すなわち、サイズ、水溶液中での生存性、電力消費及び安全性の全てを満たさなければならない。
【0074】
電気活性眼科用レンズの制御は、手持ち式の遠隔ユニットなど、無線でレンズと通信する手動操作式の外部デバイスを通して達成されてもよい。あるいは、電動眼用レンズの制御は、着用者からの直接のフィードバック又は制御信号を介して遂行されてもよい。例えば、レンズに内蔵されたセンサは、瞬き及び/又は瞬きパターンを検出してもよい。瞬きのパターン又はシーケンスに基づいて、電動式眼科レンズは、近くの物体又は遠くの物体のいずれかに焦点を合わせるために、例えば、その屈折力など、状態を変化させてもよい。
【0075】
これらの用途における電子機器は多くの場合、電源を必要とする。したがって、一次電池、再充電式電池及び/又はコンデンサなどの自蔵式の電力貯蔵デバイスを組み込むことが望ましい場合がある。それに代わって、電子機器は、自蔵式の電力貯蔵デバイスから給電されるのではなく、遠くから誘導的に給電されてもよく、したがって充電の必要はない。電池を再充電するための、ある許容される方法は、誘導結合によるものであり、この誘導結合により、外部コイルが、ある充電回路に結合されるか、接続されるか、あるいは他の方式で結び付けられたコイルに磁気的に結合され、その充電回路は、デバイスに埋め込まれた電池を再充電するように適合されている。
【0076】
電気機器及び通信機能をコンタクトレンズに埋め込むことは、構成要素の寸法が、特に最大長さ及び幅だけでなく厚さが限られること、電池又は超コンデンサにおけるエネルギー貯蔵能力が限られること、小型の電池では電池の内部抵抗がより高く、また小型のコンデンサでは電荷貯蔵が限られるがために、ピーク電流消費量が限られること、エネルギー貯蔵が限られるがために、平均電力消費量が限られること、並びに、小型で特に薄い構成要素の頑健性及び製造性が限られることを含め、多数の領域にわたる共通した問題を呈する。通信デバイスに関して言えば、具体的な問題には、アンテナ効率が限られることが含まれ、これは、寸法又は面積、ループアンテナの場合には巻数、及びアンテナ効率に直接、関連する。それに加えて、これらの用途に関して規制機関によって割り当てられる周波数帯の組も限られており、その選択は、所与の構造の効率、最大許容送信機出力、干渉可能性、及び通信リンクの他の側面に影響を及ぼす。身体上の伝搬及び吸収の更なる特徴は、電磁エネルギーの吸収に対する採択された安全限界と共に、周波数に依存する。様々な政府機関が、それらに関する指針又は規制を発することも、発しないこともある。身体上のアンテナ効率は、大部分が電場又は「Eフィールド」のアンテナの場合は低下する。同様に、電池又は類似のデバイスの無接点充電について言えば、アンテナの寸法は、達成可能な最大インダクタンスと、デバイスに伝送され得る最大電圧又は電流とに関連する。
【0077】
電池、電池セル又はセルは、電池を含む活性物質に含有される化学エネルギーが、電気化学的酸化還元反応によって電気エネルギーに直接変換されるデバイスである。電池セル又はセルは、3つの主要な構成要素、すなわち、アノード(負極)、カソード(正極)及び電解質(イオン伝導体)を含む。これらの電池、電池セル、又はセルは、1回の放電サイクルのみを目的とし最適化された再充電不可能な一次電池、又は酸化還元反応の逆転によって再充電可能な二次電池として広く分類されてもよい。一次電池は、良好な貯蔵寿命、低い放電率から中程度の放電率での高いエネルギー密度、メンテナンスの少なさ、及び使いやすさを含む、いくつかの利点を提供する。二次電池はまた、再充電されるその能力に加えて、高出力密度、高放電率、平坦な放電曲線、及び良好な低温性能を含むいくつかの利点を提供する。二次電池は、典型的には、一次電池よりも電荷保持が悪い。しかしながら、この欠点は、二次電池が再充電可能であるという事実によって相殺される。説明を容易にするために、電池という用語は、本明細書では、所望の出力電圧及び能力に応じて並列又は直列に接続された1つの電気化学セル又は複数の電気化学セルを備えるデバイスを意味するために利用されるものとする。
【0078】
ハードコンタクトレンズ及びソフトソフトコンタクトレンズを含め、様々な眼科用コンタクトレンズが調製されてもよい。好ましくは、眼科用デバイスは、従来の又はシリコーンヒドロゲル配合物から作製され得るソフトコンタクトレンズである。このような配合物は、親水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実装形態において、眼科用デバイスは、同心コンタクトレンズであり得る。同心コンタクトレンズは、主要材料の屈折率とは異なる屈折率を有する材料が、レンズの幾何学的中心を略同心リング状に取り囲むことを特徴とする。代替的に、レンズの一部分は、レンズの幾何学的中心に対して略同心パターンでより短い焦点距離に研削され得る。同心コンタクトレンズは、常に角膜の中心に置かれるように意図されている。遠方視力は、1~約4mmの直径を有することができるレンズの中心部分を通して得られる。近見視力は、レンズの周辺同心部分を通して得られる。
【0080】
他の実装形態において、眼科用デバイスは、非同心又はセグメント化コンタクトレンズとすることができる。非同心又はセグメント化コンタクトレンズは、一般に、レンズの二焦点セグメントと称される、より短い焦点距離を提供するために異なる屈折率を有するか、又は研磨されている近見視要素が、レンズの遠方視部分を含む幾何学的中心から離れたレンズの下方セクタ又は部分に位置することを一般に特徴とする。ほとんどのセグメント化されたコンタクトレンズは、遠方視モードと近見視モードとの間でシフトするとき、平行移動する、すなわち、眼の瞳孔に対して垂直に移動するように意図されている。このようなレンズは、遠距離及び近距離の両方でより大きな割合で焦点の合った像を提供するという利点を有するが、レンズが、制御された平行移動のために、並びに使用中に平行移動及び向きを維持するために設計されなければならないという欠点を有する。
【0081】
乱視を矯正するように意図されているトーリックレンズのような、眼上で所定の向きを必要とするセグメント化二焦点レンズ及び他のコンタクトレンズは、正しい向きを保証するために一般に2つの基本的な技術を利用してきた。レンズには、レンズの下部分の質量を増加させ、レンズの向きを合わせるための重み付け効果を作成するために、ベースダウンプリズムが提供されてもよい。レンズにはまた、まぶた力と強膜成形との組み合わせが、レンズが角膜上で回転することを効果的に防止するように、下エッジ及び/又は上エッジに沿って水平切り詰め又は面取りが提供されてもよい。
【0082】
図1図5は、眼科用レンズ100の様々な実装形態を説明する。一実装形態では、眼科用レンズ100は光学部102を含む。レンズは、前面104と、前面104に対向する後面106と、を含む。本明細書で使用される場合、後面106は、個人によって着用されたときに角膜と接触する。いくつかの実装形態では、レンズは、後面104が角膜などの球形又は半球形の物体に対してぴったりとくっついて置かれることができるように成形される。任意選択的に、いくつかの実装形態では、光学部102は、剛性又は可撓性インサートであってもよい。例えば、光学部102は、従来の配合物又はシリコーンヒドロゲル配合物から作製され得る。追加的に、光学部102は、着用者の眼光学特性、輝度、屈折、年齢、及び輻輳開散運動瞳孔応答のうちの1つ又は2つ以上に基づく光学設計を用いて形成され得る。
【0083】
レンズ100はまた、前面104上に提供された凹部108を含む。凹部は、レンズ100の中心点109から半径方向に変位される。図3及び図4に関して以下により詳細に議論するように、レンズ100の中心点と凹部108との間の半径方向距離は、約4.5mm~約5mm(例えば、4.50mm、4.51mm、4.52mm...4.98mm、4.99mm、5.0mm)及びこれらの間の任意の値又は範囲であってもよく、その結果、キャビティが、コンタクトレンズの着用者の上まぶたの縁と係合する。いくつかの実装形態では、凹部108は滑らかであり、前面104内に配設された窪みとして成形される。凹部108は、前面104上に薄化ゾーン108aを形成する。凹部108は、任意選択的に、最深点において30~50マイクロメートル(μm)(例えば、30.0μm、30.01μm、30.02μm...49.98μm、49.99μm、50.0μm)及びこれらの間の任意の値又は範囲の前面104までの垂直な深さを有することができる。本明細書で説明するように、凹部108は、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cを画定することができる。薄化ゾーン108aは、図1に示すように、第1の傾斜面108bと第2の傾斜面108cとの間に配置される。言い換えれば、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cは、レンズ100の材料が隣接する領域よりも薄い薄化ゾーン108aを形成するように内側に湾曲するか、又は凹む。図1に示すように、第1の傾斜面108bは、レンズ100の中心点からより遠く(すなわち、レンズ100の周辺領域により近くに)配置され、第2の傾斜面108cは、レンズ100の中心点により近く(すなわち、レンズ100の中心領域により近くに)配置される。
【0084】
いくつかの実装形態では、凹部108は、約0.8ミリメートル(mm)~約1.2mm(例えば、0.80mm、0.81mm、0.82mm...1.18mm、1.19mm、1.20mm)及びそれらの間の任意の値又は範囲の幅を有する。他の実装形態では、凹部108は、約5mm~約6mm(例えば、5.0mm、5.01mm、5.02mm...5.98mm、5.99mm、6.0mm)及びそれらの間の任意の値又は範囲の長さ(例えば、図5に示す長さ502)を有する。
【0085】
本明細書で説明するように、凹部108の位置、サイズ、及び/又はこれらの組み合わせは、眼科用レンズ100が着用者の視力を妨害することなく上まぶたと相互作用することを可能にする。いくつかの実装形態では、凹部108は、レンズ100の回転安定性及び/又は位置制御を提供するように構成されている。したがって、凹部108は、対象者のまぶたワイパー201と相互作用するように構成されている。対象者のまぶたワイパー201は、眼が凹部108に対して圧力を印加し、それを所望の回転位置に保持する際に、眼に対するコンタクトレンズの位置を固定することができる。上まぶた及び下まぶたの各々は、眼科用レンズと相互作用することができるそれぞれのまぶたワイパー201を有する。まぶたが開く際に、まぶたワイパー201は、凹部108内に押し込まれ、第1の傾斜面108bと相互作用することによって眼科用レンズ100を瞳孔から離れる方向に引っ張る。まぶたが閉じる際に、まぶたワイパー201は、凹部108内に押し込まれ、第2の傾斜面108cと相互作用することによって眼科用レンズ100を瞳孔に向かう方向に押す。
【0086】
いくつかの実装形態では、凹部108は対称である。この構成では、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cのそれぞれの幅はほぼ同じである。対称凹部は、上方注視及び下方注視の間の下まぶたワイパー201とのほぼ等しい相互作用が望ましい、平行移動眼科用レンズ設計で使用され得る。例示的な対称凹部のサグ対レンズ中心(例えば、図1の中心点109)からの距離を示すグラフが図3に示されている。対称凹部を有する眼科用デバイスのプロットは、302でラベル付けされている。これは、凹部のない眼科用デバイスのプロット304に関連して示されている。図3において、第1の傾斜面の幅は0.4mmであり、第2の傾斜面の幅も0.4mmである。各傾斜面の幅の値(すなわち、凹部108の幅が0.8mmとなる各0.4mm)は、一例として提供されているにすぎず、幅は他の値を有することができると理解されたい。上述したように、凹部108の幅(例えば、図1に示す幅114)は、約0.8mm~1.2mmとすることができる。再び図1図5を参照すると、いくつかの実装形態では、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cのそれぞれの傾斜はほぼ同じである。他の実装形態では、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cのそれぞれの傾斜は異なる。第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cの傾斜は、曲率半径によって制御され得る。例えば、図3では、第1の傾斜面は、より平坦な傾斜(例えば、半径9.6mm)を有し、第2の傾斜面は、より急な傾斜(例えば、半径7.9mm)を有する。各傾斜面のそれぞれの傾斜の値は一例として提供されているにすぎず、傾斜は他の値を有することができることを理解されたい。
【0087】
再び図1図5を参照すると、いくつかの実装形態では、凹部108は非対称である。この構成では、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cのそれぞれの幅が異なる。追加的に、いくつかの実装形態では、第1の傾斜面108bの長さは、第2の傾斜面108cの長さよりも長い。他の実装形態では、第2の傾斜面108cの長さは、第1の傾斜面108bの長さよりも長い。傾斜面長さの差は、まぶたワイパー201が相互作用するための表面積の変化量を提供する。したがって、圧力が、任意の所望の構成でレンズ100上に分散され得る。非対称凹部は、以下に説明するように、多かれ少なかれワイパー201相互作用が所望される眼科用レンズ設計で使用され得る。例えば、いくつかの実装形態では、凹部が、上まぶたワイパーと相互作用するように提供され得、第1の傾斜面108bは、第2の傾斜面108cと比較してより小さい幅及びより急な傾斜(より大きい幅及びより緩やかな傾斜)を有することができる。結果として、第1の傾斜面108bとのより大きな上まぶたワイパー201の相互作用が存在し、それは、主注視において上まぶたによって上向き保持力を及ぼす。追加的に、第2の傾斜面108cのより緩やかな傾斜は、まぶたを閉じている間及び/又は上方注視中の上まぶたワイパー201との相互作用を最小限に抑えるように設計されている。一方、他の実装形態では、凹部が、下まぶたワイパーと相互作用するように提供され得、第2の傾斜面108cは、第1の傾斜面108bと比較してより小さい幅及びより急な傾斜(より大きい幅及びより緩やかな傾斜)を有することができる。結果として、第2の傾斜面108cとのより大きな下まぶたワイパー201の相互作用が存在し、それは、主注視中に下まぶたによって上向き保持力を及ぼす。追加的に、第1の傾斜面108bのより緩やかな傾斜は、下方注視中の下まぶたワイパー201との相互作用を最小限にするように設計されている。例示的な非対称凹部のサグ対レンズ中心(例えば、図1に示される中心点109)からの距離を示すグラフが、図4に示されている。対称凹部を有する眼科用デバイスのプロットは、402でラベル付けされている。これは、凹部のない眼科用デバイスのプロット404に関連して示されている。図4において、第1の傾斜面の幅は0.4mmであり、第2の傾斜面の幅も0.8mmである。各傾斜面の幅の値(すなわち、凹部108の幅が1.2mmとなる0.4mmと0.8mm)は、一例として提供されているにすぎず、幅は他の値を有することができると理解されたい。追加的に、第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cの傾斜は、曲率半径によって制御され得る。例えば、図4では、第1の傾斜面は、より平坦な傾斜(例えば、半径9.6mm)を有し、第2の傾斜面は、より急な傾斜(例えば、半径8.25mm)を有する。各傾斜面のそれぞれの傾斜の値は一例として提供されているにすぎず、傾斜は他の値を有することができることを理解されたい。
【0088】
代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部108は、対象者の上まぶたワイパー201と相互作用するように構成されている。第1の傾斜面108b及び第2の傾斜面108cは、それらがまぶたの上まぶたワイパー201と相互作用するように構成され得る。代替的又は追加的に、いくつかの実装形態では、凹部108は、対象者の下まぶたワイパー201と相互作用するように構成されている。第1の傾斜表面108b及び第2の傾斜表面108cは、それらがまぶたの下まぶたワイパー201と相互作用するように構成され得る。
【0089】
任意選択的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズ100は、図2Bに示すような隆起部202を更に含むことができる。隆起部202は、レンズ100の前面104上に提供され得、隆起部202は、凹部108に近接して配置される。換言すれば、隆起部202は、まぶたワイパーとの付加的相互作用を作成するために、凹部108に加えて提供され得る。隆起部202は、まぶたワイパーと眼科用レンズ100との間の追加の接触点を提供する。レンズ上の上まぶたワイパーによって追加の力を提供するように実装される場合に、隆起部202は、凹部108に対して半径方向外側に配置される。いくつかの実装形態では、レンズ(例えば、図1のレンズ100)の中心点(例えば、図1の中心点109)と隆起部202との間の半径方向距離は、約4.5mm~約5mm(例えば、4.50mm、4.51mm、4.52mm...4.98mm、4.99mm、5.0mm)及びそれらの間の任意の値又は範囲である。隆起部202は、レンズの前面(例えば、図1の前面104)上に配設されて、上述のようにまぶたワイパー201が凹部108と相互作用する方法と同様に、まぶたワイパー201と相互作用することができる。まぶたが開かれる際に、まぶたワイパー201は、眼科用レンズの中心に最も近い側である第2の側202b上の隆起部202を押圧する。したがって、まぶたワイパー201は、第2の側202bと相互作用することによって眼科用レンズ100に力を及ぼす。いくつかの実装形態(図示せず)では、隆起部202は、凹部108に対して半径方向内向きに配置されて、下まぶたワイパー201によってレンズ100に追加の力を提供する。
【0090】
図6Aは、上まぶた及び下まぶたに対する前方注視のような主注視中の瞳孔602及びまぶたワイパー201を伴うコンタクトレンズ600の向きを示す。図6Bは、下方注視中の瞳孔602及びまぶたワイパー201を伴うコンタクトレンズ600の向きを示す。図6A及び図6Bでは、凹部108は、下まぶたと相互作用するようにコンタクトレンズ600上に提供されている。下方注視中、下まぶたは、凹部108と相互作用し、瞳孔602に対するコンタクトレンズ600の位置を安定化させる。例えば、図6Bに示されるように、コンタクトレンズ600の向きは、下方注視中、下まぶたに対して主に同じところに留まる。したがって、コンタクトレンズ600は、瞳孔602に対して位置をシフトする。
【0091】
図7は、異なる角度(例えば、20度及び40度)の下方注視の場合の瞳孔602に対するまぶたワイパー201の移動を示す。上まぶたワイパー201の場所は、異なる角度の下方注視を通して、瞳孔602に対して比較的一貫したままである。したがって、上まぶたは、コンタクトレンズ上の凹部と相互作用して、瞳孔602に対するコンタクトレンズの位置を安定化させるために使用され得る。下まぶた縁の場所は、下方注視中、瞳孔602により近くなり、これは、それが、コンタクトレンズ上の凹部と相互作用して、瞳孔602に対するコンタクトレンズのシフトを作成するために使用され得ることを意味する。.図6A及び図6Bに示すように、コンタクトレンズ上に提供された凹部により、コンタクトレンズの位置を安定化させることができる。
【0092】
図8は、光学部802を有する眼科用レンズ800の実装形態を示す。いくつかの実装形態では、眼科用レンズ800は、レンズ800の前面806上に提供された複数の(上まぶたワイパーと相互作用する)凹部804a、(下まぶたワイパーと相互作用する)804bを含む。本開示は、レンズ800及び凹部804a、804bの各々が、図1図5に関して上述した光学部及び凹部と同様の特徴を有し得ることを企図する。各凹部804a、804bは、レンズ800の中心点808から半径方向に変位される。複数の凹部804a、804bは、上まぶた及び下まぶたと同時に相互作用するように構成され得る。この構成は、対象者が複数の接触点を使用して眼科用レンズ800の位置を固定することを可能にする。いくつかの実装形態では、第1の凹部804aは、対象者の上まぶたワイパーと相互作用するように構成されており、第2の凹部804bは、対象者の下まぶたワイパーと相互作用するように構成されている。いくつかの実装形態では、レンズ800の中心と凹部804a、804bの各々との間の半径方向距離は、約4.5mm~約5mmであり、第1の凹部804a及び第2の凹部804bは、眼科用レンズ800の中心から反対方向に離れて配設される。
【0093】
本明細書で説明されるように、本開示は、眼科用レンズがスマートレンズ、例えば、後述されるような電源及び制御回路を有する眼科用デバイスであり得ることを企図する。このような眼科用デバイスは、図1図5に関して上述したような1つ又は2つ以上の凹部を含むことができる。凹部は、眼科用デバイスに対する位置及び/又は回転制御を提供する。これは、例えば、デバイスの移動を防止又は最小限に抑え、電子回路が着用者の視力に干渉しないようにするために、スマートレンズにとって特に有利であり得る。
【0094】
ここで、図9を参照すると、本明細書で説明される実装形態による、1つ又は2つ以上の電源(例えば、電池又はマイクロ電池)及び制御回路を有する例示的な眼科用デバイスが示されている。特に、図9は、任意の好適な眼科用材料から作製されたレンズ本体部分902を含むコンタクトレンズ900を示す。任意選択的に、いくつかの実装形態では、レンズ本体部分902は、軟質プラスチック部分であり得る。例えば、レンズ本体部分902は、従来の配合物又はシリコーンヒドロゲル配合物から作製され得る。追加的に、レンズ本体902は、着用者の眼光学特性、輝度、屈折、年齢、及び輻輳開散運動瞳孔応答のうちの1つ又は2つ以上に基づく光学設計を用いて形成され得る。いくつかの実装形態では、レンズ本体部分902には、任意選択的に、レンズの中心に対して1つ又2つ以上の直径に位置決めされ、かつ改善されたスルーフォーカス視力性能を提供するように最適化された幅を有する光屈折力度数を有する多焦点又は二焦点設計などの光学度数を各々が有する1つ又は2つ以上の光学ゾーンが形成され得る。代替的又は追加的に、レンズ本体部分902は、ゾーン多焦点面、二焦点面、又は連続多焦点面などの多焦点面のうちの1つ又はそれらの組み合わせで任意選択的に形成され得る。
【0095】
図9に示すように、レンズ本体部分902は、電子インサート904などのコンタクトレンズ900の構成要素の残りの部分を取り囲む。電子インサート904は、光学部906、回路908、複数の電源910、相互接続構造912、及び/又はセンサ914のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。本明細書で説明される電気構成要素は、例えば、薄化シリコーンウェハなどの任意の好適な基板上に配設され得る。追加的に、本明細書で説明される電子構成要素は、薄膜技術及び/又は透明材料を利用して製作され得る。これらの技術が利用される場合、本明細書で説明される電子構成要素は、任意選択的に、光学部と適合性がある限り、任意の好適な場所に置かれ得る。図9の例示的な実装形態に示すように、電子インサート904は環状形状を有し、電子構成要素は電子インサート904の周りに半径方向に配置されている。特定の電子構成要素はまた、環状基板により良く適合するように環状形状を呈してもよい。例えば、図9に示す電源910は、環状形状を有する。単一の電源を提供するのとは対照的に、複数の電源910を提供することには利点がある。例えば、特に眼科用デバイスなどのマイクロスケール用途のために、単一パッケージ内に所望の電圧で必要な容量の電源(例えば、電池)を製造することは困難である。したがって、この問題に対処するために複数の電源910を使用することができる。複数の電源910を使用する場合、電源910は、直列又は並列に接続することができる。
【0096】
図9では、電子インサート904は、着用者の視力に干渉しないようにコンタクトレンズ100の非光学ゾーンに位置している。例えば、電子構成要素(例えば、回路908、電源910、相互接続構造912、センサ914)は、図9のレンズ900に対して半径方向外側に(例えば、電子インサート904の周辺領域に)配設される。しかしながら、特に、透明導電性酸化物又は薄膜トランジスタなどの透明又はほぼ透明な電子機器が用いられる場合、又は構成要素が視力に過度に影響を与えない程度に小型化される場合には、光学ゾーンを含むコンタクトレンズ900の他の領域に電子機器が配設され得ると理解されたい。当技術分野で知られているように、屈折率整合技術を用いて、コンタクトレンズ900の光学ゾーンに存在する構成要素の可視性を更に低減してもよい。本発明の範囲内の更に他の実装形態では、電子構成要素は、垂直に積み重ねられたダイ(図示せず)上に電子構成要素を配置すること、又は熱成形プロセスなどによって三次元構造を有する電気基板を形成することなどによって、電子構成要素の密度を最大にするように他の方法で配置されてもよい。プロセッサ及びレンズドライバなど、本明細書で説明される電子構成要素及び回路は、本発明の範囲内で、単一の集積回路(integrated circuit、IC)上に組み合わせられてもよく、又は別個のICに分離されてもよいことにも留意されたい。
【0097】
レンズ900(本明細書では「機能化レンズ」と称されることもある)は、本明細書で説明される電子機器によって作動又は制御され、例えば、作動に応じて近く又は遠くに焦点を合わせることができる。換言すれば、光学部906は、可変焦点光学部であり得る。回路908は、プロセッサ、メモリ、レンズドライバ、ウェイク回路、及び/又は制御回路を含むがこれらに限定されない、本明細書で説明される構成要素のいずれかを含んでもよく、回路908は、電子インサート904の回路基板上に搭載されてもよい。本明細書で説明された回路908は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実装されてもよいと留意することが重要である。それに加えて、本明細書で利用される回路基板は、柔軟なポリイミド基板上の銅トレースにニッケル/金の表面仕上げを施したものを含む、任意の好適な基板を含んでもよい。回路108は、相互接続構造912を介して、電池又は電池セルなどの電源910に接続される。追加の電子構成要素もまた、相互接続構造912を介して接続されてもよい。1つ又は2つ以上の相互接続トレースを含み得る相互接続構造912は、電子構成要素を電気的に接続するための任意の好適な材料から作製され得ると理解されたい。
【0098】
様々な実装形態において、眼科用レンズ凹部(例えば、図1図5の凹部108)は、眼科用レンズを固定し、特定のタイプのレンズの使用を最適化するために、異なるレンズ構成で使用され得る。例えば、いくつかの実装形態では、眼科用レンズはスマートレンズ(図9に示す)であり、凹部は、レンズを対象者のまぶたに対して固定位置に固定するように構成されて、スマートレンズ内の電子要素がそれを使用する対象者の視覚を妨げないことを確実にする。いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、トーリックレンズ又は任意の他の非球面レンズである。上述したように、乱視矯正のためのトーリックレンズは、回転が最小化されたときに最適な性能を達成する。これにより、対象者は、レンズを通して見るときにレンズの意図された部分に焦点を合わせることが可能となる。これは、レンズ表面を通して一貫した拡大効果を促進する。追加的に、いくつかの実装形態では、眼科用レンズは多焦点レンズである。トーリックレンズと同様に、多焦点レンズは、回転が制限されているときに最もよく最適化される。多焦点レンズは、対象者がレンズの異なる部分を覗き込んで異なる拡大効果を達成するように設計されている。眼科用レンズは、まぶたワイパーを用いて定位置に保持されることが可能であり、対象者がそれを通して見るための安定した視認レンズを作成する。いくつかの実装形態では、眼科用レンズは球面レンズである。球面レンズが対象者の眼に対して意図された場所に留まることは有益であり、その結果、対象者は、眼科用レンズを覗き込むときに一貫した倍率焦点を有することができる。一貫した位置決めはまた、不快感を制限し、レンズが、完全にまぶたの下などの望ましくない位置に摺動することを防止するのに役立つ。いくつかの実装形態では、眼科用レンズは、美容的着色レンズである。美容的着色レンズは、ユーザが凹部に係合して、美容的着色レンズが意図された外観及び位置を維持することを確実にすることができるように構成され得る。したがって、眼科用レンズは、美容的着色レンズの特定の着色部分が対象者の視力を妨げないように係合され得る。
【0099】
様々な図に関して本明細書で説明する論理演算は、(1)コンピューティングデバイス(例えば、図10に記載されているコンピューティングデバイス)上で実行されているコンピュータ実装行為又はプログラムモジュール(すなわち、ソフトウェア)のシーケンス、(2)コンピューティングデバイス内の相互接続された機械論理回路若しくは回路モジュール(すなわち、ハードウェア)として、及び/又は(3)コンピューティングデバイスのソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、として実行されてもよいことが理解されよう。したがって、本明細書で説明する論理演算は、ハードウェアとソフトウェアのどの特定の組み合わせにも限定されない。実装は、コンピューティングデバイスの性能及び他の要件に依存する選択の問題である。したがって、本明細書で説明する論理演算は、動作、構造上のデバイス、行為、又はモジュールとして様々に言及されている。これらの動作、構造上のデバイス、行為、及びモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、特定目的デジタル論理、及びこれらの任意の組み合わせで実装されてもよい。また、図示され、本出願で説明するよりも多い又は少ない動作が実行され得ることも理解されたい。これらの動作はまた、本出願で説明するものとは異なる順序で実行されてもよい。
【0100】
図10を参照すると、本明細書で説明する方法が実行され得る例示的なコンピューティングデバイス1000が示される。例示的なコンピューティングデバイス1000は、本明細書で説明する方法が実装され得る好適なコンピューティング環境の一例にすぎないことを理解されたい。任意選択的に、コンピューティングデバイス1000は、マイクロプロセッサベースのシステム、ミニコンピュータ、埋め込みシステム、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)、及び/又は上記のシステム若しくはデバイスのいずれかを複数含む分散コンピューティング環境若しくはネットワークコンピューティング環境を含む周知のコンピューティングシステムとすることができる。分散コンピューティング環境は、通信ネットワーク又は他のデータ伝送媒体に接続されたリモートコンピューティングデバイスが、様々なタスクを実行することを可能にする。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュール、アプリケーション、及び他のデータは、ローカル及び/又はリモートコンピュータ記憶媒体上に記憶されてもよい。
【0101】
その最も基本的な構成では、コンピューティングデバイス1000は、典型的には、少なくとも1つの処理ユニット1006及びシステムメモリ1004を含む。コンピューティングデバイスの正確な構成及びタイプに応じて、システムメモリ1004は、揮発性(ランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)など)、不揮発性(読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、フラッシュメモリなど)、又はその2つの何らかの組み合わせであってもよい。この最も基本的な構成は、破線1002によって図10に示される。処理ユニット1006は、コンピューティングデバイス1000の動作に必要な演算及び論理演算を実行する標準プログラマブルプロセッサであってもよい。コンピューティングデバイス1000はまた、コンピューティングデバイス1000の様々な構成要素間で情報を通信するためのバス又は他の通信機構を含んでもよい。
【0102】
コンピューティングデバイス1000は、追加の特徴/機能性を有してもよい。例えば、コンピューティングデバイス1000は、リムーバブルストレージ1008及び非リムーバブルストレージ1010などの追加のストレージを含んでもよい。コンピューティングデバイス1000はまた、デバイスが他のデバイスと通信することを可能にするネットワーク接続1016を含んでもよい。コンピューティングデバイス1000はまた、赤外線、光、超音波、Bluetooth、Zigbee、又は他の有線若しくは無線通信プロトコル及び対応する受信機などの入力デバイス1014を有してもよい。出力デバイス1012は、同じ又は類似の有線又は無線通信プロトコル及び対応する送信機の形態をとってもよく、送信機及び受信機は、別個のデバイス又は単一の送受信機デバイスであってもよい。レンズはまた、意図的な所定のシーケンス(例えば、瞬きシーケンス又は極端な眼の位置シーケンス)であってもよいジェスチャ又は視線特性、又は視線特性、瞳孔直径、眼の輻輳開散運動、眼速度、眼球移動パターンなどの意図的でない自然な指標を通して、着用者がコマンドを入力することを可能にする、眼科用デバイスに特有の他の入力デバイスが装備されてもよく、それらは、個別に又は組み合わせて、着用者の調節要求としても知られる、焦点を変化させるなどの特定の機能を行うことを望むことを示すために、眼科用デバイスに対して着用者の希望を示してもよい。意図的又は自然入力技術のいずれか又は両方に有用な入力デバイスは、加速度計、光センサ、ジャイロスコープ、及び/又は着用者の解剖学的構造(例えば、眼又は瞳孔)の位置又は運動を検出することが可能な他のデバイスを含んでもよい。手持ち式FOBデバイス又はモバイルデバイス(例えば、スマートフォン)などの他の手動入力デバイスは、眼科用デバイスに無線で接続するように構成されてもよく、焦点距離の変化などのレンズの機能の効果を生じるように、レンズとの間で無線信号を送信及び受信するように構成されてもよい。追加のデバイスは、コンピューティングデバイス1000の構成要素間のデータの通信を容易にするために、バスに接続されてもよい。
【0103】
処理ユニット1006は、有形のコンピュータ読取可能媒体でコード化されたプログラムコードを実行するように構成されてもよい。有形のコンピュータ読取可能媒体は、コンピューティングデバイス1000(すなわち、機械)を特定の様式で動作させるデータを提供することができる任意の媒体を指す。様々なコンピュータ読取可能媒体を利用して、実行のために処理ユニット1006に命令を提供してもよい。例示的な有形のコンピュータ記憶媒体としては、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法又は技術で実装されている揮発性媒体、不揮発性媒体、リムーバブル媒体、及び非リムーバブル媒体が挙げられるが、これらに限定されない。システムメモリ1004、リムーバブルストレージ1008、及び非リムーバブルストレージ1010は、全て、有形のコンピュータ記憶媒体の例である。例示的な有形のコンピュータ可読記録媒体は、集積回路(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ又は特定用途向けIC)、ソリッドステートデバイス、RAM、ROM、電気的消去可能プログラム読み出し専用メモリ(electrically erasable program read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、他の記憶デバイスを含むが、これらに限定されない。
【0104】
一つの例示的な実装形態では、処理ユニット1006は、システムメモリ1004に記憶されたプログラムコードを実行してもよい。例えば、バスがシステムメモリ1004にデータを搬送し、処理ユニット1006がシステムメモリ1004から命令を受信して実行してもよい。システムメモリ1004によって受信されたデータは、任意選択的に、処理ユニット1006による実行の前又は後に、リムーバブルストレージ1008又は非リムーバブルストレージ1010に記憶されてもよい。
【0105】
本出願に記載の様々な技術は、ハードウェア若しくはソフトウェアに関連して、又は適切な場合には、これら両方の組み合わせに関連して実装されてもよいことが理解されよう。そのため、本開示の技術的内容の方法及び装置、又はそれらのある特定の態様又は部分は、有形の機械読取可能記憶媒体に具現化されたプログラムコード(すなわち、命令)の形態をとってもよく、プログラムコードがコンピューティングデバイスなどの機械によってロードされ実行されるときに、機械が本開示の技術的内容を実施するための装置となる。プログラマブルコンピュータ上でプログラムコードを実行する場合、コンピューティングデバイスは、プロセッサ、プロセッサによって読み取り可能な記憶媒体(揮発性及び不揮発性メモリ、並びに/又は記憶素子を含む)、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスを含むことができる。1つ又は2つ以上のプログラムは、例えば、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)、再使用可能な制御などを使用することによって、本出願の技術的内容に関連して記載されているプロセスを実行又は利用することができる。そのようなプログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高レベル手続き又はオブジェクト指向プログラミング言語で実行することができる。しかし、プログラムは、所望に応じて、アセンブリ言語、機械語、及び/又はハードウェア記述言語などで実装され得る。いずれにせよ、言語は、コンパイルされた言語又は解釈された言語であってもよく、ハードウェア実装と組み合わせることができる。
【0106】
ハードコンタクトレンズ及びソフトソフトコンタクトレンズを含めて、様々な眼科用コンタクトレンズが調製されてもよい。好ましくは、眼科用デバイスは、従来の又はシリコーンヒドロゲル配合物から作製され得るソフトコンタクトレンズである。このような配合物は、親水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分を含んでもよい。
【0107】
図示及び説明した実装形態は、最も実用的で好適な実装と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明し示した特定の構成に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得る全ての修正と一貫するように構成されているべきである。
【0108】
〔実施の態様〕
(1) 眼科用レンズであって、
前面と、
前記前面に対向する後面と、
前記前面上に提供された第1の凹部であって、前記眼科用レンズの着用者の上まぶたと相互作用するように構成された位置において半径方向に変位されている、第1の凹部と、を備える、眼科用レンズ。
(2) 前記凹部が、前記眼科用レンズの回転安定性及び/又は位置制御を提供するように構成されている、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(3) 前記眼科用レンズの着用者の下まぶたワイパーと相互作用するように構成された第2の凹部を更に備える、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(4) 光学部の中心点と前記第1の凹部との間の半径方向距離が、約4ミリメートル(mm)~約4.5mmである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(5) 前記第1の凹部が、前記光学部の前記前面上に薄化ゾーンを形成する、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
【0109】
(6) 前記第1の凹部が、前記眼科用レンズの前記中心点により近い第2の傾斜面よりも前記眼科用レンズの前記中心点からより遠い第1の傾斜面によって画定されている、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(7) 前記第1の傾斜面が、前記第2の傾斜面よりも急な傾斜を有する、実施態様6に記載の眼科用レンズ。
(8) 前記第2の傾斜面が、前記第1の傾斜面よりも急な傾斜を有する、実施態様6に記載の眼科用レンズ。
(9) 前記第1の傾斜面の長さが、前記第2の傾斜面の長さよりも長い、実施態様6に記載の眼科用レンズ。
(10) 前記第2の傾斜面の長さが、前記第1の傾斜面の前記長さよりも長い、実施態様6に記載の眼科用レンズ。
【0110】
(11) 前記第1の凹部が、約0.8ミリメートル(mm)~約1.2mmの幅を有する、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(12) 前記第1の凹部が、約5ミリメートル(mm)~約6mmの長さを有する、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(13) 前記光学部の前記前面上に提供された隆起部を更に備え、前記隆起部が、前記凹部に近接して配置されている、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(14) 前記隆起部が、前記凹部に対して半径方向外側に配置されている、実施態様13に記載の眼科用レンズ。
(15) 前記光学部の前記中心点と前記隆起部との間の半径方向距離が、約4.5ミリメートル(mm)~約5mmである、実施態様14に記載の眼科用レンズ。
【0111】
(16) 前記隆起部が、前記凹部に対して半径方向内側に配置されている、実施態様13に記載の眼科用レンズ。
(17) 前記眼科用レンズが、電気活性レンズである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(18) 前記眼科用レンズが、トーリックレンズである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(19) 前記眼科用レンズが、球面レンズである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(20) 前記眼科用レンズが、多焦点レンズである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
【0112】
(21) 前記眼科用レンズが、非球面レンズである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
(22) 前記眼科用レンズが、美容的着色レンズである、実施態様1に記載の眼科用レンズ。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】