(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-25
(54)【発明の名称】電動工具用の衝撃振動耐性バッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20231018BHJP
H01M 50/247 20210101ALI20231018BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20231018BHJP
H01M 50/267 20210101ALI20231018BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20231018BHJP
B25F 5/00 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/247
H01M50/293
H01M50/267
H01M50/271 B
B25F5/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522491
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 SE2021051197
(87)【国際公開番号】W WO2022131993
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511268591
【氏名又は名称】ハスクバーナ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドルク、フィリップ
【テーマコード(参考)】
3C064
5H040
【Fターム(参考)】
3C064AA03
3C064AA05
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA03
3C064BB10
3C064CA55
3C064CA60
3C064CA61
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
5H040AA14
5H040AS19
5H040AY04
5H040AY10
5H040CC01
5H040CC20
5H040GG03
(57)【要約】
電動工具(100)用のバッテリ(400)であって、バッテリは、第1ゲーブル(320)および第2ゲーブル(310)によって終端された中央ハウジング(310)であって、前記第1ゲーブル(320)は、前記第2ゲーブル(330)に対向して配置されるとともに、前記バッテリの挿入方向(D)に向き、前記ゲーブル(320、330)は、対応するゲーブルリム(325、335)に沿って前記中央ハウジング(310)と結合することで、前記ゲーブル(320、330)および前記中央ハウジング(310)によって区切られた体積(V)を画定する、中央ハウジング(310)を備え、バッテリは、挿入方向(D)を横断する伸長方向に延在する複数の縦長バッテリセルを備えるバッテリセルパック(410)をさらに備え、バッテリセルパック(410)は、3つ以上の弾性部材により体積(V)内に懸架されることで配置され、弾性部材は、ゲーブル部リム(325、335)のうちの1つの上の支持位置に向かって、バッテリセルパックの質量中心から斜めに離れかつ伸長方向を横断する方向に延在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具(100)用のバッテリ(110、300、400、700)であって、前記バッテリは、
第1ゲーブル(320)および第2ゲーブル(330)によって終端された中央ハウジング(310)であって、前記第1ゲーブル(320)は、前記第2ゲーブル(330)に対向して配置されるとともに、前記バッテリの挿入方向(D)に向き、前記ゲーブル(320、330)は、対応するゲーブルリム(325、335)に沿って前記中央ハウジング(310)と結合することで、前記ゲーブル(320、330)および前記中央ハウジング(310)によって区切られた体積(V)を画定する、中央ハウジング(310)を備え、
前記バッテリは、前記挿入方向(D)を横断する伸長方向(E)に延在する複数の縦長バッテリセル(510)を備えるバッテリセルパック(410、500、710)をさらに備え、
前記バッテリセルパック(410、500、710)は、3つ以上の弾性部材(410a-410h、730)により前記体積(V)内に懸架されることで配置され、
各弾性部材(410a-410h)は、前記ゲーブル部リム(325、335)のうちの1つの上の支持位置(720)に向かって、前記バッテリセルパック(410、500、700)の質量中心(M)から斜めに離れかつ前記伸長方向(E)を横断する方向(D1-D4)に延在する、バッテリ。
【請求項2】
前記縦長バッテリセル(510)は、第1支持平面構造(520)と第2支持平面構造(530)との間に延在し、前記弾性部材(410a-410h)は、前記支持平面構造(520、530)に対して取り付けられる、請求項1に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項3】
前記平面構造(520、530)は、対応する平面内に延在し、前記弾性部材(410a-410h)は、前記平面間に延在する、請求項2に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項4】
前記弾性部材(410a-410h、730)のうちの1つ以上は、前記バッテリセルパックから前記支持位置(720)に向かって延在する対応するアーム(420)上に支持される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項5】
前記体積(V)は、前記バッテリセルパック(500、700)の全ての側面に流体接続して延在する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項6】
前記弾性部材(410、410a-410h、730)は、前記ゲーブル部リム(325、335)上に非固定的に支持される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項7】
前記ゲーブルリム(325、335)は、長方形または角丸長方形の形状であり、前記中央ハウジング(310)は、8つの角部を有するとともに、各角部は対応する弾性部材(410、410a-410h、730)に係合されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項8】
前記弾性部材(410、410a-410h、730)のうちの1つ以上は、前記バッテリセルパック(410、500、710)上の対応するトラニオンに対して枢動可能に取り付けられる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項9】
前記弾性部材(410、410a-410h、730)のうちの1つ以上は、長方形基部および三角形部分により形成され、前記長方形基部は、前記ゲーブル部リム(325、335)に面する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項10】
前記弾性部材(410、410a-410h、730)のうちの1つ以上は、1つまたは複数の空洞(910)を備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項11】
前記弾性部材(410、410a-410h、730)のうちの1つ以上は、DIN ISO 7619-1によるデュロメータタイプAで測定された、60から100の間、好ましくは70から90の間のショアデュロメータ値またはショア硬度を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項12】
2500gから5500gの間、好ましくは3000gまたは5100gのいずれかの重量を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項13】
前記第1ゲーブル(320)および前記第2ゲーブル(330)は、取り外し可能な締結部材(340)によって前記中央ハウジング(310)に取り付けられている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項14】
電動工具(100)における貫通バッテリコンパートメント(200)に挿入されるよう適合されている、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のバッテリ(110、300、400、700)。
【請求項15】
複数のバッテリ種類(610、620)を備えるモジュール式バッテリシステム(600)であって、各バッテリ種類は、
第1ゲーブル(320)および第2ゲーブル(330)によって終端された中央ハウジング(310)を備え、前記第1ゲーブル(320)は、前記第2ゲーブル(330)に対向して配置されるとともに、挿入方向(D)に向き、前記ゲーブル(320、330)は、対応するゲーブルリム(325、335)に沿って前記中央ハウジング(310)と結合することで、前記ゲーブル(320、330)および前記中央ハウジング(310)によって区切られた体積(V)を画定し、各ゲーブルは対応する第1および第2ゲーブル体積を画定し、
各バッテリ種類は、3つ以上の弾性部材(410a-410h、730)により前記体積(V)内に懸架されることで配置されたバッテリセルパック(410、500、710)をさらに備え、
前記弾性部材(410a-410h)は、前記ゲーブル部リム(325、335)のうちの1つの上の支持位置(720)に向かって前記バッテリセルパック(410、500、700)の質量中心(M)から斜めに離れる方向(D1-D4)に延在し、
前記中央ハウジング(310)は、前記複数のバッテリ種類のうちの各バッテリ種類に対して同一であり、前記第1および/または第2ゲーブル体積は、前記複数のバッテリ種類のうちの第1バッテリ種類と第2バッテリ種類との間で異なる、モジュール式バッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動工具およびハイブリッド電動工具用のバッテリに関する。バッテリは、コンクリート及び石を切断する切断工具、コアドリル、およびのこぎり等の手持ち式建設機械と共に使用するのに適している。バッテリはまた、チェーンソー、芝刈り機、ヘッジトリマ等の芝生および緑地手入れ製品と共に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
バッテリ技術の進歩により、電源からケーブルを通じてまたは燃焼機関によって電力が供給される電動工具と同レベルで動作するバッテリ駆動の電動工具が可能になった。例えば、バッテリ駆動の切断工具、チェーンソー、および芝生及び地面の手入れ用の各種の製品は、従来は電源又は燃焼機関へのケーブルが必要だったが、現在では、充電式バッテリによって電力が供給される電気モータによって駆動することが可能である。また、充電式バッテリと燃焼エネルギーとの組み合わせを利用することで、手元の作業を効率的に行うハイブリッド電動工具も提案されている。
【0003】
上述したような用途は、通常、電動工具、したがってバッテリも強い振動および機械的衝撃に晒される過酷な動作条件に関連付けられる。バッテリセルは、過度なレベルの振動および機械的衝撃に対して敏感なので、バッテリがこれらの過酷な動作条件下で機能するのに必要な衝撃耐性のレベルを達成するためには保護されなければならない。
【0004】
バッテリ技術の進歩はあるものの、強い振動および機械的衝撃に耐えることが可能な電動およびハイブリッド電動工具用に改良されたバッテリが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、電動工具およびハイブリッド電動工具用の改良されたバッテリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の目的は、少なくとも部分的に、電動工具用のバッテリによって達成される。バッテリは、第1ゲーブルおよび第2ゲーブルによって終端された中央ハウジングを備える。第1ゲーブルは、第2ゲーブルに対向して配置されるとともに、バッテリの挿入方向に向いている。ゲーブルは、対応するゲーブルリムに沿って中央ハウジングと結合することで、ゲーブルおよび中央ハウジングによって区切られた体積を画定する。バッテリは、挿入方向を横断する伸長方向に延在する複数の縦長バッテリセルを備えるバッテリセルパックをさらに備える。バッテリセルパックは、3つ以上の弾性部材により体積内に懸架されることで配置され、各弾性部材は、ゲーブル部リムのうちの1つの上の支持位置に向かって、バッテリセルパックの質量中心から斜めに離れかつ伸長方向を横断する方向に延在する。
【0007】
したがって、バッテリセルパックは、弾性部材によって振動および機械的衝撃の両方から、特に、良好な衝撃耐性にとって重要であるバッテリセルの伸長方向に対して横方向に向かう力から十分に保護される。機械的衝撃を受けるのは通常ゲーブルであるため、弾性部材が中央ハウジングではなくゲーブルによって支持されることがさらに効果的である。
【0008】
バッテリセルパックを懸架するよう配置された開示の弾性部材によって、例えば中央ハウジングおよびゲーブルにおけるより大きな公差が許容されるので効果的である。
開示されたバッテリの外郭は、その1つまたは複数の部品が損傷した場合に、その全体を容易に交換することができる。したがって、バッテリセルを含むより高価な内部は、外部バッテリ構造が何らかの機械的損傷を受けた場合に容易な方法で再使用することができる。
【0009】
態様によれば、縦長バッテリセルは、第1支持平面構造と第2支持平面構造との間に延在し、弾性部材は、支持平面構造に取り付けられる。
これらの支持平面構造は、衝撃力を弾性部材に効率的に分散させる。したがって、衝撃力はバッテリによってより効率的に吸収されることが可能である。
【0010】
態様によれば、弾性部材のうちの1つ以上は、バッテリセルパックから支持位置に向かって延在する対応するアーム上に支持される。このアームの形状は、異なるゲーブル形状に合うよう適合されてよい、これは、同一の弾性部材を異なるバッテリ種類で再使用することができるので効果的である。
【0011】
態様によれば、体積は、バッテリセルパックの全ての側面に流体接続して延在する。これにより、バッテリ内部を通過する冷却風の流れの冷却効率が向上する。
態様によれば、弾性部材はゲーブル部リム上に非固定的に支持される。これにより、バッテリの分解が容易となることで、バッテリの効率的なリサイクルが可能になる。非固定的に支持された弾性部材を有することにより、バッテリパックの容易な整備、検査、および総合的なバッテリパックメンテナンスもまた可能になる。
【0012】
態様によれば、弾性部材のうちの1つ以上は、バッテリセルパック上の対応するトラニオン対して枢動可能に取り付けられる。これにより、弾性部材がゲーブル上の支持面の異なる角度に適合することが可能になる、これは、弾性部材が異なるゲーブル形状に容易に適合することを可能にするので効果的である。
【0013】
態様によれば、弾性部材は、1つまたは複数の空洞を備える。空洞により、弾性部材の衝撃吸収能力が向上する。空洞の数およびサイズは、弾性部材の硬度、したがって弾性部材の衝撃吸収能力にも適合するよう調整されてよい。
【0014】
態様によれば、第1ゲーブルおよび第2ゲーブルは、取り外し可能な締結部材によって中央ハウジングに取り付けられる。取り外し可能な締結部材によって、バッテリの容易な分解が可能になる。バッテリパックは、中央ハウジングから容易に取り出して、検査および/または整備した後に、中央ハウジング内に戻すことができる。
【0015】
開示の目的は、複数のバッテリ種類を備えるモジュール式バッテリシステムによっても達成される。各バッテリ種類は、第1ゲーブルおよび第2ゲーブルによって終端された中央ハウジングを備える。第1ゲーブルは、第2ゲーブルに対向して配置されるとともに、挿入方向に向いている。ゲーブルは、対応するゲーブルリムに沿って中央ハウジングと結合することで、ゲーブルおよび中央ハウジングによって区切られた体積を画定する。各ゲーブルは対応する第1および第2ゲーブル体積を画定する。各バッテリ種類は、3つ以上の弾性部材により体積内に懸架されることで配置されたバッテリセルパックをさらに備え、弾性部材は、ゲーブル部リムのうちの1つの上の支持位置に向かってバッテリセルパックの質量中心から斜めに離れる方向に延在する。中央ハウジングは、複数のバッテリ種類における各バッテリ種類に対して同一であり、第1および/または第2ゲーブル体積は、複数のバッテリ種類における第1バッテリ種類と第2バッテリ種類との間で異なる。
【0016】
モジュール式バッテリシステム内の全種類のバッテリに対して同一の中央ハウジングを有するとともに、異なるゲーブル部分を有する。機械的取り付け構成および電気コネクタの両方が、全ての種類に対して同一である中央ハウジング上に配置されるので、バッテリのエネルギー容量を、電動工具またはバッテリ充電器に対するインターフェースのいずれも変更することなく、電動工具および手元の作業に適合させることができる。本明細書で説明する衝撃吸収構成の性質により、同一の衝撃吸収部材を、モジュール式バッテリシステムに含まれる異なるバッテリ種類の各々に再利用することができる。
【0017】
異なるバッテリ種類に対して、異なる衝撃吸収システム、すなわち、異なるサイズおよび振動吸収能力の弾性部材を取り付けてもよい。したがって、ゲーブルが同一種類であっても、異なるバッテリセルパックが、ゲーブルおよび中央ハウジングによって区切られた体積内に収容されてよい。
【0018】
弾性部材はまた、所与の用途に適合されてよい、すなわち、コンピュータシミュレーションまたは室内実験によって、モジュール式バッテリシステム内の所与の種類のバッテリ上の弾性部材を、特定の電動工具または作業タスクによって生成される振動に適合させてよい。
【0019】
一般に、請求項で使用される全ての用語は、本明細書で別途明確に定義されていない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「要素、装置、部品、手段、工程等」へのすべての言及は、別段で明記されていない限り、要素、装置、部品、手段、工程等の1つ以上の例を指すものとして非限定的に解釈される。本発明のさらなる特徴および効果は、添付の特許請求の範囲および以下の説明を検討すると明らかになるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせることで、本発明の範囲から逸脱することなく、以下に記載される以外の実施形態を作成し得ると理解できる。
【0020】
本開示は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】モジュール式バッテリシステムに含まれるバッテリ種類を示す図。
【
図7A】懸架されたバッテリセルパックを概略的に示す図。
【
図7B】懸架されたバッテリセルパックを概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の特定の態様を示す添付の図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化され得るので、本明細書に記載の実施形態および態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ充分であるので、本発明の範囲が当業者に完全に伝わるように例として記載される。詳細な説明において、同一の符号は同一の要素を指す。
【0023】
本発明は、本明細書に記載されおよび図面に示されている実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者は、添付の特許請求の範囲内で多くの変更および修正を行うことが可能であることを認識するであろう。
【0024】
図1は、手持ち式電動工具100を示す。
図1の電動工具100は電動切断工具であるが、本明細書に開示される技術および装置は、チェーンソーおよびコアドリル等の他の種類の電動作業工具にも適用することができる。本明細書に開示される技術および装置はまた、芝刈り機、送風機、ヘッジトリマ、草刈り機等のガーデニングおよび造園機器に対しても使用することができる。
【0025】
電動工具100は、工具に電力を供給するバッテリ110を備える。この特定のバッテリは、
図2により詳細に示される貫通バッテリコンパートメント200に挿入されることで配置される。バッテリは、バッテリの電気コネクタが電動工具の対応する電気コネクタ210に電気的に接続される結合位置まで、挿入方向Dにバッテリコンパートメントに挿入される。本明細書で説明するバッテリは、
図2に示すバッテリコンパートメント200のような貫通バッテリコンパートメントに挿入するのに特に適しており、バッテリゲーブル部分は、
図1のように電動工具100の両側でバッテリコンパートメントの外側に延在する。しかしながら、本明細書に開示されるバッテリはまた、電動工具本体等の外部レールのような、電動工具の外部に取り付けられた取付手段によって、電動工具に外部から取り付けられてもよいことが理解される。
【0026】
図3および
図4は、例えば電動工具100と共に使用するのに適した例示的なバッテリ300、400を示す。バッテリは、第1ゲーブル320および第2ゲーブル330によって終端された中央ハウジング310を備える。第1ゲーブル320は、第2ゲーブル330に対向して配置されるとともに、バッテリの挿入方向Dに向いている。ゲーブル320、330は、対応するゲーブルリム325、335に沿って中央ハウジング310と結合することで、ゲーブル320、330および中央ハウジング310によって区切られた体積Vを画定する。該体積はバッテリセルパックを囲む。
【0027】
ゲーブル部分は、螺合部材等の取り外し可能な締結部材340、すなわちねじまたはボルトによって中央ハウジング310に取り付けられることが好ましい。これにより、バッテリの組み立てが簡単になり、また、バッテリ部品のリサイクルにおいて容易な分解が可能になる。取り外し可能な締結部材により、バッテリパックの検査および総合的なバッテリメンテナンスもまた簡単になる。
【0028】
ゲーブルリム325、335は、長方形または
図3の例のように角丸長方形の形状を有してよい。この場合、中央ハウジング310は8つの角部を有するとともに、各角部は対応する弾性部材410a-410hに係合されている。しかしながら、本明細書に開示される技術と共に他の幾何学形状が使用されてもよい。例えば、多角形の断面形状は、いくつかの種類の用途、またはより管状の設計において効果的であり得る。
【0029】
バッテリは、
図5により詳細に示されるバッテリセルパック410をさらに備える。バッテリセルパック410は、挿入方向Dを横断する伸長方向Eに延在する複数の縦長バッテリセル510を備える。バッテリセルパック410、500は、3つ以上の弾性部材410a-410h、730により体積V内に懸架されることで配置される。
図7Aを参照すると、弾性部材410a-410hは、ゲーブル部リム325、335のうちの1つの上の支持位置720に向かって、バッテリセルパック410、500、700の質量中心Mから斜めに離れかつ伸長方向Eを横断する方向D1-D4に延在する。
【0030】
図7Bに概略的に示されるように、このようにして体積V内にバッテリセルパックを懸架することによって、バッテリセルパック710は、そのような有害な力を吸収するよう構成された弾性部材730によって振動および機械的衝撃の両方から保護される。バッテリセルは、伸長方向に対して横方向に向かう衝撃に対してより敏感である。この理由により、弾性部材は、伸長方向に対して横方向の最大の力を吸収するよう配置される。また、バッテリが、
図2に示されるバッテリコンパートメント200のような貫通バッテリコンパートメントに挿入される場合であれば、バッテリは、延在方向Eにおける衝撃からは既に合理的に良好に保護されている。
【0031】
図2に関連し検討したように、ゲーブルが貫通バッテリコンパートメント200から延在するので、弾性部材はゲーブル320、330によって支持されることでさらに効果的である。この場合、電動工具本体は中央ハウジングに対する保護を提供する一方、ゲーブルは電動工具から延在するとともに、主に機械的衝撃からの追加的な保護を必要とする。
【0032】
ゲーブル上の支持位置の例は、
図10に関連して以下により詳細に説明される。異なる種類の支持位置が設計され得ることが理解される。
図5の縦長バッテリセル510は、第1支持平面構造520と第2支持平面構造530との間に延在し、弾性部材410a-410hは、支持平面構造520、530に対して取り付けられる。したがって、少なくとも部分的に、力が支持平面構造520、530を介してバッテリセルにわたって分散されるので、弾性部材は、支持平面構造を体積Vの内側に安定して懸架する。いくつかの態様によれば、平面構造520、530は、対応する平面内に延在し、弾性部材410a-410hは、該平面間に延在する。バッテリセル510の伸長方向に対して横方向に向かう機械的衝撃は、支持平面構造によって弾性部材に効率的に分散されることで、機械的衝撃力が効率的に吸収されることにつながる。
【0033】
弾性部材410a-410h、730のうちの1つ以上は、バッテリセルパックから支持位置720に向かって延在する対応するアーム420上に支持されてよい。このアーム420の長さおよび形状は、異なるゲーブル形状に合うよう適合されてよい、すなわち、より長くまたはより短くされてよいとともに、ゲーブルの支持位置に向かって異なる角度で方向付けられてよい。したがって、同一の衝撃吸収構成および同一の種類の弾性要素を、異なる種類のゲーブル部分と共に使用するよう適合させることができる。これは、バッテリがモジュール式バッテリシステムの一部を形成する場合に特に効果的である。
【0034】
このようなモジュール式バッテリシステムの一例を
図6に示す。このモジュール式バッテリシステム600は、複数のバッテリ種類610、620を備える。
図6には2つの種類のみが示されているが、モジュール式バッテリシステム600は、任意の数のバッテリ種類を備えてよいことが理解される。各バッテリ種類は、第1ゲーブル320および第2ゲーブル330によって終端された中央ハウジング310を備え、第1ゲーブル320は、第2ゲーブル330に対向して配置されるとともに、挿入方向Dに向いている。上述したように、ゲーブル320、330は、対応するゲーブルリム325、335に沿って中央ハウジング310と結合することで、ゲーブル320、330および中央ハウジング310によって区切られた体積Vを画定する。各ゲーブルは対応する第1および第2ゲーブル体積を画定する。バッテリは、3つ以上の弾性部材410a-410h、730により体積V内に懸架されることで配置されたバッテリセルパック410、500、710をさらに備える。これらの弾性部材410a-410hは、
図7Aおよび
図7Bに概略的に示すように、ゲーブル部リム325、335のうちの1つの上の支持位置720に向かってバッテリセルパック410、500、700の質量中心Mから斜めに離れる方向D1-D4に延在する。
【0035】
特に、中央ハウジング310は、複数のバッテリ種類における各バッテリ種類に対して同一であり、第1および/または第2ゲーブル体積は、複数のバッテリ種類における第1バッテリ種類と第2バッテリ種類との間で異なる。
【0036】
本明細書で検討されるバッテリは、2500gから5500gの間、好ましくは3000g(第1種類610の場合)または5100g(第2種類620の場合)のいずれかの重量を有してよい。
【0037】
モジュール式バッテリシステム内の全種類のバッテリに対して同一の中央ハウジングを有するとともに、異なるゲーブル部分を有する。機械的取り付け構成および電気コネクタの両方が、全ての種類に対して同一である中央ハウジング上に配置されるので、バッテリのエネルギー容量を、電動工具またはバッテリ充電器に対するインターフェースのいずれも変更することなく、電動工具および手元の作業に適合させることができる。さらに、本明細書で検討される衝撃吸収構成は、異なるゲーブル形状に適合可能であるので効果的である。これは、弾性部材が枢動可能であり、所与の種類のゲーブルに適合させることができるアーム420上に支持されるので、支持角度の差にかかわらず、弾性部材を第1種類のバッテリのゲーブル上および第2種類のバッテリのゲーブルによって支持することが可能であることを意味する。
【0038】
上述したように、モジュール式バッテリシステム600は、各々が対応するエネルギー貯蔵容量を有する任意の数のバッテリ種類を備えてよい。
モジュール式バッテリシステムに備えられた異なるバッテリ種類はまた、異なる使用事例ならびに異なる種類の振動および機械的衝撃に適合されてもよい。弾性部材は、例えば、特定の振動数特性または強度を有する特定の種類の振動を軽減するよう特に調整されてもよい。弾性部材は、例えば、その大きさ、弾性部材に使用される材料、空洞の大きさ等を変更することによって、異なる使用事例に適合されてもよい。したがって、あるバッテリ種類は、強い機械的衝撃に耐えることができるように設計されてもよい一方、モジュール式バッテリシステム内の別のバッテリ種類は、特定の種類の電動工具の使用から生じる所与の振動数範囲の振動を吸収するよう設計されてもよい。
【0039】
バッテリセルパックの冷却を改善するために、体積Vは、バッテリセルパック500、700の全ての側面に流体接続して延在するよう構成されてよい。これは、冷却空気の流れが、第1開口を通じて体積Vに入り、バッテリセルから熱を運び去り、次いで、第2開口を通じて体積Vから出ることができることを意味する。本明細書に開示される衝撃吸収構成は、冷却風が多かれ少なかれ妨げられずにバッテリセルパックを通過することを可能にすることによって、バッテリセルの効率的な冷却を促進することが理解される。より従来的な形態の衝撃吸収装置は、バッテリセルから熱を運び去るために冷却空気の流れがバッテリを通過するのを妨げるより多くの内部的な閉塞をしばしば伴う。
【0040】
例えば、冷却空気の流れは、
図4に示される格子状開口401を通じてバッテリ内に導かれ、格子状開口402を通じてバッテリから出ることができる。
効果的には、弾性部材410、410a-410h、730は、ゲーブル部リム325、335上に選択的に非固定的に支持される。これは、弾性部材が、スナップロック機構、接着剤等の取付部材によってゲーブル部リムに固定的に取り付けられていないことを意味する。具体的には、バッテリセルパックを、中央ハウジングに挿入するとともに、ゲーブルによって所定の位置に係止することが可能であり、その後、単にゲーブルを中央ハウジングから取り外すことによって、バッテリセルパックを容易な方法で再び中央ハウジングから取り外すことが可能である。これにより、整備およびメンテナンス中にバッテリパックへの容易なアクセスもまた可能になる。
【0041】
特に
図8を参照すると、弾性部材410、410a-410h、730のうちの1つ以上は、選択的に、バッテリセルパック410、500、710上の対応するトラニオンに対して枢動可能に取り付けられる。これは、トラニオンが中央ハウジング内に挿入され、弾性部材を支持するゲーブルによって所定位置に係止された場合に、弾性部材がトラニオンを中心に枢動し得ることを意味する。これにより、バッテリの組み立てが簡単になる。2つの対向する弾性部材は、
図8の破線によって示される単一の弾性部材になるよう結合されてもよい。これによって、より大きな衝撃吸収能力を有し得るより大きな弾性部材を形成する。
【0042】
弾性部材410は、ここではV字型の適合凹部に受承されてもよいことに留意されたい。これらの適合凹部は、弾性部材を所定位置に保持するとともに、弾性部材による大きな枢動運動を抑制する。
【0043】
図9を参照すると、弾性部材410、410a-410h、730は、長方形基部および三角形部分により形成され、長方形基部はゲーブル部リム325、335に面してよい。弾性部材の衝撃吸収能力を向上するために、弾性部材410、410a-410h、730は、1つまたは複数の空洞910を備えてよい。弾性部材410、410a-410h、730は、DIN ISO 7619-1によるデュロメータタイプAで測定された、60から100の間、好ましくは70から90の間のショアデュロメータ値またはショア硬度を有する、すなわち、弾性部材は、好ましくは、比較的硬質だが過度には弾性ではない。
【0044】
弾性部材は、アーム420上のトラニオンに取り付けるための非円形断面を有する貫通孔920(六角形断面を有する孔が
図9に示されている)を備えてよい。これにより、トラニオンに対する摩擦が生じるとともに、バッテリ部品の組み立てが簡単になる。
【0045】
図10は、ゲーブルの詳細を示す図である。弾性部材は、ゲーブルに形成された表面430上に支持される。この表面は支持位置720を構成する。表面は、
図7Aに示す各方向D1からD4を横断する方向に角度が付けられている。
【0046】
表面430は、選択的に、弾性部材が表面上で動き過ぎるのを抑制するために、表面周囲に延在する隆起部440によって区切られている。
【国際調査報告】