(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】発光コンポーネント及び発光デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231019BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/66
C09K11/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546670
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021077056
(87)【国際公開番号】W WO2022073859
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514211884
【氏名又は名称】アファンタマ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ノルマン アルベルト リューヒンガー
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA05
2H148AA07
2H148AA18
4H001CA02
4H001XA01
4H001XA06
4H001XA07
4H001XA16
4H001XA35
4H001XA82
4H001XB11
4H001XB72
(57)【要約】
青色光(aa)を放出させるための第1のLED光源(11)と、赤色光(bb)を放出させるための第2のLED光源(12)と、固体ポリマー組成物及び緑色ルミネッセント結晶(1)を含むルミネッセント層(100)とを含む発光コンポーネント。固体ポリマー組成物はポリマー(2)を含む。緑色ルミネッセント結晶(1)はペロブスカイト結晶である。第1の光源(11)及び第2の光源(12)は、ルミネッセント層(100)に向けられている。第1の光源(11)により放出された光を吸収することによって、ルミネッセント結晶(20)は、緑色光スペクトル内の波長の光(cc)を放出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む発光コンポーネント:
- 青色光(aa)を放出させるための第1のLED光源(11)、
- 赤色光(bb)を放出させるための第2のLED光源(12)、及び
- 以下を含むルミネッセント層(100):
- 固体ポリマー組成物、及び
- 緑色ルミネッセント結晶(1)、
ここで、
前記固体ポリマー組成物は、ポリマー(2)を含み、
前記緑色ルミネッセント結晶(1)は、式(I)により表される化合物から選択されたペロブスカイト結晶である:
[M
1A
1]
aM
2
bX
c (I)
(上式中、
A
1は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
M
1は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
M
2は、M
1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M
1又はA
1のいずれか、あるいは、M
1及びA
1が存在する。)
- ここで、前記第1の光源(11)により放出された光と、前記第2の光源(12)により放出された光は、前記ルミネッセント層を通過し、
前記第1の光源(11)により放出された光の吸収によって、前記ルミネッセント結晶(20)は、緑色光スペクトル内の波長の光(cc)を放出し、
- 前記ルミネッセント層(100)は、10%<h
1<80%、特に10%<h
1<70%、非常に特に10%<h
1<60%のヘイズh
1を有する、
発光コンポーネント。
【請求項2】
前記緑色ルミネッセント結晶(1)が、式(I’):
FAPbBr
3 (I’)
のペロブスカイト結晶である、請求項1に記載の発光コンポーネント。
【請求項3】
前記ルミネッセント層(100)中のM
2の濃度が、100~1000ppm、特に300~1000ppm、非常に特に500~1000ppmである、請求項1又は2に記載の発光コンポーネント。
【請求項4】
前記ルミネッセント層(100)が、5~200mg/m
2、特に10~100mg/m
2、非常に特に20~80mg/m
2であるM
2含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項5】
前記ルミネッセント層(100)が、20%<h
1<80%、特に20%<h
1<70%、非常に特に30%<h
1<60%のヘイズh
1を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項6】
前記ルミネッセント層(100)が、前記第1の光源(11)から離間して配置されており、及び/又は、前記第2の光源(12)から離間して配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項7】
前記ポリマー(2)は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zにより特徴づけられ、ここで、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である、請求項1~6のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項8】
前記ポリマー(2)が、アクリレートから、特に、環状脂肪族アクリレートから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項9】
前記固体ポリマー組成物は、T
g≦120℃、特にT
g≦100℃、特にT
g≦80℃、特にT
g≦70℃のガラス転移温度T
gを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項10】
前記固体ポリマー組成物が、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選択された、好ましくはTiO
2、ZrO
2、Al
2O
3及びオルガノポリシロキサンからなる群から選択された散乱粒子を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項11】
前記ルミネッセント層(100)は、自立フィルム又は自立フィルムの一部を形成している、請求項1~10のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項12】
前記ルミネッセント層(100)は、2つのバリア層(101)の間に挟まれていて、サンドイッチ構造を形成しており、
特に、前記サンドイッチ構造は、自立フィルム又は自立性フィルムの一部を形成している、
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光コンポーネント。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の発光コンポーネントを含む発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)。
【請求項14】
前記発光コンポーネントが、
- 光源のアレイ、及び
- 前記ルミネッセント層(100)、
を含み、
前記光源のアレイが、1つよりも多くの第1の光源(11)と、1つよりも多くの第2の光源とを含み、
特に、前記光源のアレイが、前記第1の光源(11)と前記第2の光源(12)の複数の対を含み、
特に、前記光源のアレイ及び/又は前記ルミネッセント層(100)が実質的に前記液晶ディスプレイの全領域にわたって延在する、
請求項13に記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記光源のアレイと前記ルミネッセント層(100)との間に拡散板又は拡散フィルム(101)が配置されている、請求項13又は14に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、発光コンポーネントに関し、第2の態様において、発光コンポーネントを含む発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の液晶ディスプレイ(LCD)又はディスプレイコンポーネントは、量子ドットに基づくコンポーネントを含む。特に、かかるLCDのバックライトコンポーネントは、赤色、青色及び緑色の光からなるRGBバックライトを含むことがある。今日、かかるバックライトコンポーネントのバックライト色を生成させるために、典型的には、量子ドット粒子が使用されている。
【0003】
かかるコンポーネントの製造は様々な課題に直面している。1つの課題は、コンポーネント中へのナノ結晶の埋め込みである。量子ドットの異なる化学的性質のために、量子ドットを含む様々な埋め込まれた材料間で、あるいは同一材料中に埋め込まれた量子ドット間でさえも、不適合性(incompatibilities)が生じるおそれがある。かかる不適合性は、ディスプレイコンポーネント中の材料の劣化を招き、そのため、かかるディスプレイの寿命が影響を受けるおそれがある。
【0004】
米国特許出願公開第2017/186922 A1号は、約440nm~約480nmの間の波長にピーク発光を有する光源と、光源上に配置された光変換層とを含む電子デバイスを開示している。この光変換層は、赤色光を放出する第1の量子ドットと、緑色光を放出する第2の量子ドットとを含む。第1の量子ドット及び第2の量子ドットの少なくとも一方は、ペロブスカイト結晶構造を有し、化学式1:AB’X3+αで表される化合物を含む。ここで、AはIA族金属、NR4
+又はそれらの組み合わせであり、B’はIVA族金属であり、Xはハロゲン、BF4
-又はそれらの組み合わせであり、αは0~3である。
【0005】
国際公開第2017/195062 A1号は、可視光を生成させること及び/又は可視光を使用して通信することなどのためにハロゲン化物ペロブスカイト及び/又は蛍光体を含む材料を含むデバイス及びシステムを開示している。
【0006】
国際公開第2018/146561 A1号は、光変換ルミネッセント複合材料に関する組成物及び方法を開示している。
【0007】
国際公開第2017/108568 A1号は、第1の固体ポリマー組成物を含む第1のフィルムと、第2の固体ポリマー組成物を含む第2のフィルムとを含むルミネッセントコンポーネントを開示している。第1の固体ポリマー組成物は第1のルミネッセント結晶を含む。第2の固体ポリマー組成物は第2のルミネッセント結晶を含む。第1のルミネッセント結晶は、3nm~3000nmのサイズを有するものであり、赤色光を、より短波長の光による励起に応じて放出する。第2のルミネッセント結晶は、3nm~3000nmのサイズを有するものであり、緑色光を、より短波長の光による励起に応じて放出する。
【0008】
国際公開第2020/130592 A1号は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト発光デバイス及びその製造方法に関する。この発明による金属ハロゲン化物ペロブスカイト発光デバイスは、プロトン移動反応によって得られる多次元結晶構造を有するペロブスカイトフィルムを発光層として使用することにより、自己組織化シェルによってイオン移動が抑制され、表面欠陥が除かれて、フォトルミネッセンス強度、発光効率及び寿命が改善される。また、正孔注入層として使用したPEDOT:PSS導電性ポリマーに、その酸性度を調整するとともに界面の仕事関数を向上させるためにフッ素系材料及び塩基性材料を注入することによって、及び、化学的に安定なグラフェンバリア層により酸の影響を受けやすい電極を保護することによって、高効率な発光デバイスを製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、発光コンポーネント、特にLCDディスプレイの発光コンポーネントにおいて、量子ドット材料の不適合性を防止するように製造された発光コンポーネントを提供することである。
【0010】
本発明を以下で詳細に説明する。本明細書で提供/開示されるような様々な実施形態、選好性及び範囲は、任意に組み合わされてもよい。さらに、特定の実施形態によっては、選択された定義、実施形態又は範囲が適用されない場合がある。
【0011】
特に断らない限り、本明細書では以下の定義が適用されるものとする。
本発明の文脈で使用される語句「a」、「an」、「the」及び類似の用語は、本明細書で特に断らない限り、あるいは、文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると理解されるべきである。さらに、用語「含む」又は「含有する」(containing)は、「含む」(comprising)、「実質的に・・・からなる」(essentially consisting of)及び「からなる」(consisting of)の全てを包含する。百分率は、本開示で特に断らない限り、又は、文脈と明らかに矛盾しない限り、質量%として示されている。「独立に」は、1つの置換基/イオンが、名称を挙げた置換基/イオンのうちの1つから選択できること、あるいは、上記のものの1つより多くのものの組み合わせであることができることを意味する。
【0012】
用語「ルミネッセント結晶」(LC)は、当該技術分野で知られており、半導体材料製の2~100nmの結晶に関する。この用語は、典型的には2~100nmの範囲内のナノ結晶、及び、典型的には2~10nmの範囲内の量子ドットを包含する。好ましくは、ルミネッセント結晶は、ほぼ等方的(例えば球状又は立方体など)である。すべての3つの直交する寸法のアスペクト比(最長方向:最短方向)が1~2である場合に、粒子はほぼ等方的であるとみなされる。したがって、LCの集まりは、好ましくは、50~100%(n/n)、好ましくは66~100%(n/n)、かなり好ましくは75~100%(n/n)の等方的ナノ結晶を含む。
【0013】
LCは、その用語が示すように、ルミネッセンス(発光)を示す。本発明の文脈において、用語「ルミネッセント結晶」は、単結晶と多結晶性粒子の両方を包含する。後者の場合、1つの粒子は、結晶性又はアモルファス相境界により接続された幾つかの結晶ドメイン(グレイン(grains))から構成されていてもよい。ルミネッセント結晶は、直接バンドギャップ(典型的には1.1~3.8eV、より典型的には1.4~3.5eV、よりいっそう典型的には1.7~3.2eVの範囲内)を示す半導体材料である。このバンドギャップ以上の電磁放射線を照射することによって、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて電子正孔(electron hole)が価電子帯に残る。形成された励起子(電子-電子正孔対)は、次に、LCバンドギャップ値を中心とした最大強度で、フォトルミネッセンスの形で放射再結合し、少なくとも1%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。外部の電子及び電子正孔源と接触すると、LCはエレクトロルミネッセンスを示すことができる。
【0014】
用語「量子ドット」(QD)は知られており、特に、半導体ナノ結晶に関連し、半導体ナノ結晶は典型的には2~10nmの直径を有する。この範囲では、QDの物理的半径は、バルク励起ボーア半径(bulk excitation Bohr radius)よりも小さく、量子閉じ込め効果が優勢になる。その結果、QDの電子状態は、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、それゆえ、バンドギャップは、QDの組成及び物理的サイズの関数であり、すなわち吸収/発光の色はQDのサイズと関連している。QDのサンプルの光学的品質は、それらの均質性と直接関連する(より単分散性のQDであるほど、より小さいFWHM(半値全幅)の発光を示す)。QDがボーア半径より大きなサイズに達すると、量子閉じ込め効果が妨げられ、励起子再結合のための無輻射経路が支配的になるので、サンプルはもはや発光性でないことがある。従って、QDはナノ結晶の特定のサブグループであり、特にそのサイズによって定義される。
【0015】
用語「ペロブスカイト結晶」は知られており、特に、ペロブスカイト構造の結晶性化合物を包含する。かかるペロブスカイト構造はそれ自体知られており、一般式M1M2X3の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶結晶として記述される。ここで、M1は配位数12(立方八面体(cuboctaeder))のカチオンであり、M2は配位数6(八面体(octaeder))のカチオンであり、Xは、格子の立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶位置のアニオンである。これらの構造において、選ばれたカチオン又はアニオンは、他のイオンにより置き換えられていてもよく(確率的又は正規に最大30原子数%まで)、それによって、まだその元の結晶構造を維持している、ドープされたペロブスカイト又は非化学量論的ペロブスカイトがもたらされることがある。かかるルミネッセントペロブスカイト結晶の製造は、例えば国際公開第2018/028869号から知られている。
【0016】
用語「ポリマー」は知られており、反復単位(「モノマー」)を含む有機及び無機合成物質を包含する。用語「ポリマー」は、ホモポリマーとコポリマーを包含する。さらに、架橋ポリマー及び非架橋ポリマーも包含される。文脈に応じて、用語「ポリマー」は、そのモノマー及びオリゴマーを包含する。例として、ポリマーは、アクリレートポリマー、カーボネートポリマー、スルホンポリマー、エポキシポリマー、ビニルポリマー、ウレタンポリマー、イミドポリマー、エステルポリマー、フランポリマー、メラミンポリマー、スチレンポリマー、ノルボルネンポリマー、シリコーンポリマー、シラザンポリマー、及び環式オレフィンコポリマーを包含する。ポリマーは、当該技術分野における従前のとおり、例えば重合開始剤、安定剤、充填剤、溶媒などの他の材料を含んでもよい。
【0017】
ポリマーは、例えば、極性、ガラス転移温度Tg、ヤング率及び光透過率などの物理的パラメータによってさらに特徴付けることができる。
【0018】
透過率:典型的には、本発明の文脈において使用されるポリマーは、可視光に対して光透過性である。すなわち、本発明の文脈において使用されるポリマーは、ルミネッセント結晶により光が放出されることが可能であり、また、ルミネッセント結晶を励起させるために使用される光源の可能な光が透過するように不透明でない。光透過率は、白色光干渉分析法又は紫外-可視(UV-Vis)分光分析法により決定することができる。
【0019】
ガラス転移温度:(Tg)は、ポリマーの分野で確立したパラメータであり、ガラス転移温度は、アモルファス又は半結晶質ポリマーがガラス(硬い)状態から、より柔軟な、コンプライアントな、又はゴム状の状態に変化する温度を指す。高いTgを有するポリマーは、「硬質(hard)」と見なされるのに対し、低いTgを有するポリマーは「軟質(soft)」と見なされる。分子レベルでは、Tgは不連続な熱力学的転移でなく、その前後にわたってポリマー鎖の可動性が著しく増加する温度範囲である。しかしながら、慣例では、DSC測定の熱流曲線の2つのフラットな領域に対する接線で囲まれた温度範囲の中点として定義される単一の温度として報告される。Tgは、DSCを使用して、DIN EN ISO 11357-2又はASTM E1356に従って決定することができる。ポリマーがバルク材料の形態で存在する場合、この方法は特に適する。あるいは、ISO 14577-1又はASTM E2546-15に従って、ミクロ又はナノインデンテーションにより温度依存ミクロ又はナノ硬度を測定することによって、Tgを決定することもできる。この方法は、ここに開示されるとおりの発光コンポーネント及び照明デバイスに適する。好適な分析装置は、MHT(Anton Paar)、Hysitron TI Premier(Bruker)又はNano Indenter G200(Keysight Technologies)として入手可能である。温度制御ミクロ及びナノインデンテーションにより得られたデータをTgに変換することができる。典型的には、塑性変形仕事もしくはヤング率又は硬さは温度の関数として測定され、Tgはこれらのパラメータが著しく変化する温度である。
【0020】
ヤング率(Young’modulusもしくはYoung modulus)又は弾性率は、固体材料の剛性を評価する機械的特性である。ヤング率又は弾性率は、一軸変形の線形弾性状態で材料の応力(単位面積当たりの力)と歪(比例変形)との間の関係を規定する。
【0021】
本発明によれば、上記の課題は、本発明の第1の態様、すなわち、青色光を放出するための第1の光源と、赤色光を放出するための第2の光源と、ルミネッセント層とを含む発光コンポーネントによって解決される。ルミネッセント層は、固体ポリマー組成物と、緑色ルミネッセント結晶とを含む。固体ポリマー組成物は、ポリマーを含む。緑色ルミネッセント結晶は、式(I)の化合物から選ばれる:
[M1A1]aM2
bXc (I)
ここで、
A1は、1又は2種以上の有機カチオン、特にホルムアミジニウム(FA)を表し、
M1は、1又は2種以上のアルカリ金属、特にCsを表し、
M2は、M1以外の1又は2種以上の金属、特にPbを表し、
Xは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物及び硫化物からなる群から選ばれた1又は2種以上のアニオン、特にBrを表し、
aは1~4を表し、
bは1~2を表し、
cは3~9を表し、
M1又はA1のいずれか、あるいは、M1及びA1が存在する。
【0022】
第1の光源により放出された青色光と、第2の光源により放出された赤色光は、ルミネッセント層を通過する。第1の光源により放出された青色光が吸収されると、ルミネッセント結晶は緑色光スペクトル内の波長の光を放出する。
【0023】
特に、第2層のルミネッセント結晶は、第1の光源の励起波長よりも長波長の光を放出する。
【0024】
特に、式(I)は、青色光の吸収によって、500nm~550nmの緑色光スペクトル内の波長、特に527nmを中心とした波長の光を放出するペロブスカイトルミネッセント結晶を表す。
【0025】
本発明のさらに有利な一実施形態において、緑色ルミネッセント結晶は、式(I’):
FAPbBr3 (I’)
のペロブスカイト結晶である。
【0026】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、ルミネッセント層(100)中のM2の濃度は、100~1000ppm、有利には300~1000ppm、非常に有利には500~1000ppmである。
【0027】
本発明の更なる有利な一実施形態において、ルミネッセント層(100)は、5~200mg/m2、有利には10~100mg/m2、非常に有利には20~80mg/m2のM2含有量を有する。
【0028】
さらに、ルミネッセント層は、10%<h1<80%、特に10%<h1<70%、非常に特に10%<h1<60%のヘイズh1を有する。
【0029】
本発明の更なる有利な一実施形態において、ルミネッセント層は、h1>10%、特にh1>20%、特にh1>30%、及びh1<80%、特にh1<70%、非常に特にh1<60%のヘイズh1を有する。
【0030】
本発明の更なる有利な実施形態において、ルミネッセント層は、20%≦h1≦80%、好ましくは20%≦h1≦70%、最も好ましくは30%≦h1≦60%のヘイズh1を有する。
【0031】
本発明の文脈におけるヘイズとは、透過ヘイズ(transmission haze)を意味する。透過ヘイズは、通常、透明物質(本発明におけるルミネッセント層)を通過する際に、法線入射方向から2.5°を超える角度で広角散乱(ASTM D1003で測定;例えば、Byk Gardnerヘイズメーターによる)を受けた光の量である。
【0032】
ルミネッセント層の低いヘイズは、ルミネッセント層中のルミネッセントペロブスカイト結晶が、より安定、特に青色光源に曝された場合により安定であるという技術的効果を有する。この安定性は、ルミネッセント層において、低いヘイズのために青色光の多重散乱が低減される結果である。
【0033】
さらに、低いヘイズのさらなる技術的効果は、低いヘイズは、第2の層の「光変換係数(light conversion factor)」(LCF)として求められる、より高いディスプレイ輝度をもたらすという事実である。ルミネッセント層の光変換係数は、ルミネッセント層から垂直方向に放出された緑色光強度と、ルミネッセント層から垂直な方向に減衰(例えば、吸収、反射又は散乱により)した青色光強度との間の比を指す。
【0034】
本発明のさらに有利な一実施形態において、ルミネッセント層は、第1及び/又は第2の光源から離間して配置される。この文脈で「離間して(remotely)」とは、特に、ルミネッセント層が、第1及び/又は第2の光源と接触しないように、又は実質的に接触しないように、ルミネッセント層が配置されていることを意味する。「離間して」とは、さらに、ルミネッセント層が、第1及び/又は第2の光源と距離を置いて、第1及び/又は第2の光源と平行に配置されていることを意味することがある。
【0035】
「離間して」とは、さらに、第1及び/又は第2の光源に対してエアギャップ(air gap)を有するルミネッセント層の配置を意味することがある。このギャップは、真空のギャップ、あるいは、他の気体で満たされたギャップであってもよい。第1及び/又は第2の光源とルミネッセント層との間には、接触点又は支持構造体が存在していてもよい。
【0036】
本発明の有利な一実施形態において、第1の光源及び第2の光源は、ルミネッセント層に対して同じ距離で隣り合って配置される。したがって、第1及び第2の光源の放出光は、同一又は同様の強度で、及び/又は、同じ角度で、ルミネッセント層に当たる。
【0037】
特に、第1及び第2の光源が両方ともルミネッセント層の裏側に配置され、第1の光源から放出された光及び/又は第2の光源から放出された光がルミネッセント層に当たるように、第1及び第2の光源が配置される。第1の光源からの青色光は、ルミネッセント層のルミネッセント結晶により部分的に吸収され、一部がルミネッセント層を透過する。第2の光源から放出された赤色光は、ルミネッセント結晶により吸収されずにルミネッセント層を実質的に透過する。したがって、ルミネッセント層の表側で、青色光、赤色光、緑色光が放出される。
【0038】
前述のように、ルミネッセント層は、固体ポリマー組成物と緑色ルミネッセント結晶とを含む。有利には、ルミネッセント結晶は、固体ポリマー組成物中に埋め込まれる。
【0039】
1.本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物はポリマーを含み、ポリマー(2)は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zにより特徴づけられ、ここで、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である。
【0040】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、ポリマーはアクリレートを含む。有利には、ポリマーは、環状脂肪族アクリレートからなる群から選ばれた反復単位を含むか、又は環状脂肪族アクリレートからなる群から選ばれた反復単位からなる。
【0041】
別の有利な一実施形態において、ポリマーは架橋されており、多官能性アクリレートを含む。
【0042】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、Tg≦120℃(有利には、Tg≦100℃、非常に有利にはTg≦80℃、非常に好ましくはTg≦70℃)のガラス転移温度Tgを有する。各Tgは、2回目の加熱サイクルの間に、-90℃から開始して最高250℃まで、20K/分の加熱速度を適用し、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って測定される。パージガスは、20ml/minで窒素(5.0)であった。DSCシステムDSC 204 F1 Phoenix(Netzsch)を使用した。Tgは2回目の加熱サイクルで決定した(1回目の-90℃から250℃までの加熱では、ガラス転移のほかに重なり効果(overlaying effects)を示した)。
【0043】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選ばれた散乱粒子、好ましくはTiO2、ZrO2、Al2O3及びオルガノポリシロキサンからなる群から選ばれた散乱粒子を含む。
【0044】
さらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、シート状ポリマーとして構成される。このシート状ポリマーは、典型的には0.001~10mm、最も典型的には0.01~0.5mmのフィルム厚を有するポリマーフィルムの形状を有することができる。このシート状ポリマーは、連続的かつ平坦であるか、又は、例えば微細構造(例えばプリズム形状)を有する不連続的であるかのいずれかであることができる。
【0045】
本発明の更なる有利な一実施形態において、ルミネッセント層は、自立フィルム又は自立フィルムの一部を形成する。
【0046】
本発明の更なる有利な一実施形態において、ルミネッセント層は、2つのバリア層の間に挟まれ、サンドイッチ構造を形成する。有利には、サンドイッチ構造自体が、自立フィルム又は自立フィルムの一部を形成する。
【0047】
特に、かかるサンドイッチ配置は、水平方向にバリア層と、ルミネッセント層と、もう1つのバリア層とを有する配置を指す。このサンドイッチ構造の2つのバリア層は、同じバリア層材料で製造されたものであることができ、又は、異なるバリア層材料で製造されたものであることができる。
【0048】
バリア層の技術的効果は、ルミネッセント層中に含まれるルミネッセント結晶の安定性、特に酸素又は湿気に対する安定性を向上させることである。
【0049】
特に、かかるバリア層は当該技術分野で知られており、典型的には、低い水蒸気透過率(WVTR)及び/又は低い酸素透過率(OTR)を有する材料/材料の組み合わせを含む。かかる材料を選択することによって、水蒸気及び/又は酸素に曝されたことに応じたコンポーネント内のルミネッセント結晶の劣化が、低減されるか、あるいは回避される。バリア層又はフィルムは、好ましくは、温度40℃/相対湿度(r.h.)90%及び大気圧におけるWVTRが、<10(g)/(m2・day)、より好ましくは1(g)/(m2・day)未満、最も好ましくは0.1(g)/(m2・day)未満である。
【0050】
有利な一実施形態において、バリアフィルムは、酸素に対して透過性であることができる。別の有利な一実施形態において、温度23℃/相対湿度90%及び大気圧におけるOTR(酸素透過率)が、<10(mL)/(m2・day)、より好ましくは<1(mL)/(m2・day)、最も好ましくは<0.1(mL)/(m2・day)である。
【0051】
一実施形態において、バリアフィルムは、光に対して透過性であり、すなわち、可視光に対する透過率は、>80%、好ましくは>85%、最も好ましくは>90%である。
【0052】
好適なバリアフィルムは、単一層の形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは、当該技術分野で知られており、ガラス、セラミック、金属酸化物、及びポリマーを含む。バリアフィルム用の好適なポリマーは、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、環状オレフィンコポリマー(COC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン(PP)からなる群から選ぶことができ、好適な無機材料は、金属酸化物、SiOx、SixNy、AlOxからなる群から選ぶことができる。最も好ましくは、ポリマー湿気バリア材料は、PVdC及びCOCからなる群から選ばれた材料を含む。
【0053】
非常に有利には、ポリマー酸素バリア材料は、EVOHポリマーから選ばれた材料を含む。
【0054】
好適なバリアフィルムは、多層の形態で存在することができる。かかるバリアフィルムは当該技術分野で知られており、一般的に、基材、例えば10~200μmの範囲内の厚さを有するPETなどと、SiOx及びAlOxからなる群からの材料を含む薄い無機層、もしくはポリマーマトリックス中に埋め込まれた液晶に基づく有機層、又は所望のバリア特性を有するポリマーを有する有機層を含む。かかる有機層用の可能なポリマーは、例えばPVdC、COC、EVOHを含む。
【0055】
一実施形態において、青色発光光源及び赤色発光光源は、LEDである。
【0056】
さらなる一実施形態において、青色発光光源及び赤色発光光源は、個別の発光ダイオード(LED)である。
【0057】
さらなる一実施形態において、青色発光光源及び赤色発光光源は、エレクトロルミネッセント光源、例えば、発光ダイオード(LED)である。
【0058】
さらなる一実施形態において、青色発光光源は、窒化ガリウムを含むLEDチップであり、赤色発光光源は、ガリウムインジウムリン化物を含むLEDチップである。
【0059】
本発明の第2の態様は、第1の態様による発光コンポーネントを含む発光デバイス、特に液晶ディスプレイ(LCD)に言及する。
【0060】
発光デバイスの有利な一実施形態は、光源のアレイ及びルミネッセント層を含む。光源のアレイは、1つよりも多くの第1の光源と1つよりも多くの第2の光源を含む。有利には、光源のアレイは、第1の光源と第2の光源の複数の対を含む。「複数の対」という用語は、アレイ状に反復的に配置された第1の光源及び第2の光源の配置を意味する。
【0061】
特に、光源のアレイ及び/又はルミネッセント層は、本質的に液晶ディスプレイの全領域にわたって延在する。
【0062】
第1の光源と第2の光源の対は、特に、第1の光源と第2の光源の対がルミネッセント層に向けて光を放出するように、1つのルミネッセント層の裏側に配置される。
【0063】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、発光デバイスは、光源のアレイとルミネッセント層との間に配置された拡散板又は拡散フィルムを備える。
【0064】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、導光板及び拡散フィルムが、光源のアレイとルミネッセント層との間に配置される。有利には、光源から放出された光は、導光板によって拡散フィルムに放出された光に対して90°の角度で導光板に入射し、最終的にルミネッセント層中のルミネッセント結晶を励起する。
【0065】
有利には、光源から放出された光は、導光板によって拡散シートに放出された光に対して0°の角度で拡散板又はフィルムに入射し、最終的にルミネッセント層中のルミネッセント結晶を励起する。
【0066】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、アレイの1つ以上の光源はそれぞれ、f≧150Hz、好ましくはf≧300Hz、非常に好ましくはf≧600Hzの周波数fでオンとオフを切り替えるよう適合されている。
【0067】
他の有利な実施形態は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0068】
本発明は、以下の詳細な説明により、より良く理解され、上記以外の目的も明らかとなるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1aは、第1の光源と第2の光源の発光スペクトルを示す図である。
図1bは、
図1aの発光スペクトルに対応する第1及び第2の光源の概略図である。
【
図2】
図2aは、発光コンポーネントの一実施形態の発光スペクトルを示す図である。
図2bは、
図2bの発光スペクトルに対応する発光コンポーネントの概略図である。
【
図3】
図3は、発光コンポーネントのさらなる一実施形態の概略図である。
【
図4】
図4は、発光デバイスの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明の実施形態や、実施例や、本発明の実施形態、態様及び利点を示す又は導く実験は、以下の詳細な説明からより良く理解されるであろう。かかる説明は、添付の図面を参照する。
【0071】
図1aは、青色光aaを放出させるための第1の光源11と、赤色光bbを放出させるための第2の光源12の発光スペクトルを示す。
【0072】
予想どおり、この発光スペクトルは、青色光aaについては440nm付近にピークを示し、赤色光bbについては630nm付近にピークを示す。
【0073】
図1bは、青色光aaを放出させるための第1の光源11と、赤色光bbを放出させるための第2の光源12とについての概略図を示す。
【0074】
図2aは、本発明の第1の実施形態に従う発光コンポーネントの発光スペクトルを示す。
【0075】
図2bは、本発明の一実施形態に従う発光コンポーネントの概略図を示す。この発光コンポーネントは、青色光aaを放出させるための第1の光源11と、赤色光bbを放出させるための第2の光源12とを含む。さらに、発光コンポーネントは、固体ポリマー組成物と緑色ルミネッセント結晶1を含むルミネッセント層100を含む。この固体ポリマー組成物はポリマー2を含む。緑色ルミネッセント結晶は、式(I)の化合物から選択されるペロブスカイト結晶である。
【0076】
第1の光源11及び第2の光源12により放出された光は、ルミネッセント層を通過する。第1の光源11により放出された光の吸収によって、ルミネッセント結晶20は、緑色光スペクトル内の波長の光ccを放出する。ルミネッセント層100は、10%<h1<100%のヘイズh1を有する。
【0077】
有利には、緑色ルミネッセント結晶1は、式(I’)のペロブスカイト結晶である。
【0078】
さらに有利には、ルミネッセント層100中のM2の濃度は、100~1000ppm、特に300~1000ppm、非常に特に500~1000ppmであることができる。
【0079】
さらに有利には、ルミネッセント層100は、5~200mg/m2、特に10~100mg/m2、非常に特に20~80mg/m2のM2濃度を有することができる。
【0080】
さらに有利には、ルミネッセント層100は、h1<80%、特にh1<70%、非常に特にh1<60%のヘイズh1を有することができる。
【0081】
本発明のさらに有利な一実施形態において、ルミネッセント層は、20%≦h1≦80%、好ましくは20%≦h1≦70%、最も好ましくは30%≦h1≦60%のヘイズh1を有する。
【0082】
さらに有利には、ルミネッセント層100は、第1の光源11から、及び/又は、第2の光源12から離間して配置することができる。
【0083】
さらに有利には、固体ポリマー組成物は、炭素に対する(酸素+窒素)の和のモル比zにより特徴づけられ、ここで、z≦0.9、z≦0.75、特にz≦0.4、特にz≦0.3、特にz≦0.25である。
【0084】
さらに有利には、固体ポリマー組成物は、アクリレートを含んでいてもよく、非常に特に、ポリマー2は、環状脂肪族アクリレートを含む。
【0085】
さらに有利には、固体ポリマー組成物は、Tg≦120℃、特にTg≦100℃、特にTg≦80℃、特にTg≦70℃のガラス転移温度Tgを有することができる。
【0086】
本発明のさらなる有利な一実施形態において、固体ポリマー組成物は、金属酸化物粒子及びポリマー粒子からなる群から選択された散乱粒子、好ましくは、TiO2、ZrO2、Al2O3及びオルガノポリシロキサンからなる群から選択された散乱粒子を含むことができる。
【0087】
さらなる有利な一実施形態において、ルミネッセント層100は、自立フィルム又は自立フィルムの一部を形成することができる。
【0088】
図3は、発光コンポーネントのさらなる一実施形態を示す。
図2bに示されているコンポーネントに加えて、
図3の発光コンポーネントはバリア層101を含み、ルミネッセント層100はバリア層101の間に挟まれている。特に、このようなサンドイッチ構造は、自立層又は自立層の一部を形成していてもよい。
【0089】
図4は、本発明の第2の態様に従う発光デバイスの一実施形態の概略図を示す。
図2b及び
図3に示すような発光コンポーネントは、発光デバイスに統合される。発光デバイスは、光源のアレイ及びルミネッセント層100を含む。光源のアレイは、1つよりも多くの第1の光源11と、1つよりも多くの第2の光源12とを含む。
【0090】
有利には、光源のアレイは、
図4の実施形態に示すように互いに隣接して配置された第1の光源11と第2の光源12の複数の対を含む。
【0091】
有利には、光源のアレイ及び/又はルミネッセント層100は、実質的に液晶ディスプレイの全領域にわたって延在する。
【0092】
さらなる有利な一実施形態において、発光デバイスは、光源のアレイとルミネッセント層100との間に配置された拡散板又は拡散フィルム101を含んでいてもよい。
【実施例】
【0093】
実験セクション
実施例1:本開示に記載のコンポーネントを用いた液晶ディスプレイ用のバックライトユニットの作製。
図1bは、
図1aに示す発光スペクトルが測定されたアレイのコンポーネントの概略図である。
図2bのコンポーネントは、青色光aaを放出させるための第1の光源11と、赤色光bbを放出させるための第2の光源12とを含む。
【0094】
このコンポーネントの発光スペクトルは、スぺクトルの可視青色及び赤色範囲にピークを示す。
【0095】
データを求めるために、窒化ガリウムに基づく60個の個別の青色LEDとアルミニウムガリウムインジウムリン化物に基づく60個の個別の赤色LEDの2Dアレイを使用した。
【0096】
実施例2:実施例1からのアレイを採用し、さらに、光源のアレイの上に拡散板を配置した。拡散板は、LEDの発生した光を均一に分配する役割を果たす。緑色離間ペロブスカイトQDフィルム(自立フィルム)を上に置いた(固定せずに置いただけ;接着剤などは無し)。次に、この緑色ペロブスカイトフィルムの上に、2枚の交差するプリズムフィルム(交差BEF)と1枚の輝度向上フィルム(DBEF)を配置した(図には示されていない)。完成したバックライト構造体の発光スペクトルを分光計(Konica Minolta CS-2000)により測定すると、
図2aに示すように、青、赤及び緑色の発光ピークを示した。
【0097】
実施例3:低ヘイズh1及び低Tgを有する、自立フィルムとしての緑色離間ペロブスカイトQDフィルムの作製:
組成がホルムアミジニウム鉛三臭化物(FAPbBr3)である緑色ペロブスカイトQDを以下のようにトルエン中で合成した:ホルムアミジニウム鉛三臭化物(FAPbBr3)は、PbBr2とFABrを粉砕して合成した。すなわち、16mmolのPbBr2(5.87g,98% ABCR,カールスルーエ(ドイツ))及び16mmolのFABr(2.00g,Greatcell Solar Materi-als,クイーンビーアン(オーストラリア))をイットリウム安定化ジルコニアビーズ(直径5mm)を使用して6時間ミリングし、純粋な立方晶FAPbBr3を得た(XRDにより確認)。オレンジ色のFAPbBr3粉末をオレイルアミン(80-90、Acros Organics、ヘール(ベルギー))(FAPbBr3:オレイルアミン質量比=100:15)とトルエン(>99.5%、puriss、Sigma Aldrich)に加えた。FAPbBr3の最終濃度は1質量%であった。次に、周囲条件(特に言及しない限り、すべての実験の周囲条件は、以下のとおり:35℃、1気圧、空気中)で、直径サイズ200μmのイットリウム安定化ジルコニアビーズを使用するボールミリングによって、この混合物を1時間分散させて、緑色ルミネッセンスを示すインクを得た。
【0098】
フィルム形成:
0.1gの上記緑色インクを、1質量%の光開始剤ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TCI Europe,オランダ)及び2質量%のポリマー散乱粒子(オルガノポリシロキサン,ShinEtsu,KMP-590)を含むUV硬化性モノマー/架橋剤混合物(0.7gのFA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)とスピードミキサーで混合し、トルエンを室温で真空(<0.01mbar)により蒸発させた。得られた混合物は、誘導結合発光分光法(ICP-OES)により測定した場合に500ppmのPbを含んでおり、次に、この混合物を、100ミクロンのバリアフィルム(供給元:I-components(韓国);製品:TBF-1007)上に50ミクロンの層厚でコートし、次に、同じタイプの第2のバリアフィルムを積層した。その後、積層体を60秒間紫外線硬化させた(水銀灯及び石英フィルターを備えたUVAcube100,Hoenle,ドイツ)。得られた緑色ペロブスカイトQDフィルムの初期性能は、青色LED光源(発光波長450nm)上に、QDフィルムの上に2枚の交差するプリズムシート(X-BEF)と1枚の輝度向上フィルム(DBEF)を備えた状態で、526nmの発光波長、22nmのFWHM、及び、y=0.15のY方向の色座標(「y値」,CIE1931)を示した(Konica Minolta CS-2000により光学的特性を測定)。得られたQDフィルムのヘイズは50%であり、透過率は85%であった(Byk Gardnerヘイズメーターにより測定)。光変換係数(LCF;LCF=緑色発光強度(積分発光ピーク)÷青色発光強度(積分発光ピーク);コニカミノルタCS-2000を使用して、QDフィルムからの緑色及び青色の垂直発光で測定)。
【0099】
UV硬化した樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、窒素雰囲気(20ml/分)中で、-90℃の開始温度及び250℃の終了温度と20K/分の加熱速度で、DIN EN ISO 11357-2:2014-07に従って、DSCにより決定した。パージガスは、20ml/分で窒素(5.0)であった。DSCシステムDSC 204 F1 Phoenix(Netzsch)を使用した。Tgは、2回目の加熱サイクルで決定した(-90℃から250℃までの1回目の加熱は、ガラス転移のほかに重なり効果を示した)。DSC測定では、バリアフィルムを剥がすことによって、QDフィルムからUV硬化した樹脂組成物を除去した。UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは75℃であった。
【0100】
50℃のQDフィルム温度で、高青色強度のライトボックス(供給元:Hoenle;モデル:LED CUBE 100 IC)にQDフィルムを入れ、QDフィルム上の青色光束220mW/cm2として、青色LED光照射下で1,000時間かけてQDフィルムの安定性を試験した。初期性能の測定(上述)と同じ手順で、1,000時間の光束試験後のQDフィルムの光学パラメータの変化を測定した。光学パラメータの変化は、以下のとおりである:
・y値の変化:0.15から0.119へ(-0.031)。
・LCFの変化:50%から40%へ(-10%)。
・緑色発光波長の変化:526nmから525nmへ(-1nm)。
・緑色FWHMの変化:0nm。
【0101】
実施例3に対する比較例1:高ヘイズかつ低Tgの緑色離間ペロブスカイトQDフィルムの作製。
手順は、以下のパラメータを変更した以外は、低ヘイズのQDフィルムについての上記の手順と同じであった:
・UV硬化性アクリレート混合物全体のPb量は200ppmである。
・QDフィルムのヘイズを増加させるために、UV硬化性アクリレート混合物に12質量%の散乱粒子KMP-590を混合した。
【0102】
得られた緑色ペロブスカイトQDフィルムは、525nmの発光波長、22nmのFWHM、及び0.149のy値(実験3における低ヘイズQDフィルムとほぼ同じ)を示した。このQDフィルムのLCFは43%であった。QDフィルムのヘイズは98%であり、透過率は81%であった。UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは77℃であった。実験3よりLCFが低いことがわかる。ヘイズがより高いほどLCFがより低くなり、ヘイズがより低いほどLCFはより高くなる。したがって、より低いヘイズのQDフィルムは、より高いLCF、ひいてはより高いディスプレイ効率(特定の同等の白色点色座標で)を得るのに有利である。
【0103】
1,000時間の光束試験後のQDフィルムの光学パラメータの変化は、以下のとおりであった:
・y値の変化:0.149から0.058へ(-0.091)。
・LCFの変化:43%から14%へ(-29%)。
・緑色発光波長の変化:525nmから521nmへ(-4nm)。
・緑色FWHMの変化:0nm。
【0104】
これらの結果から、より高いヘイズのQDフィルムが、実施例3と比較して、高青色光束下で、より低いQDフィルム安定性をもたらすこと(具体的には、y値、LCF及び発光波長が全てより安定性が低いこと)が判る。したがって、ディスプレイデバイスの動作寿命の間、安定した色座標及び安定した白色点が得られるように、高青色光束下で改善されたQDフィルム安定性をもたらす低ヘイズのQDフィルムを得ることが有利である。
【0105】
【0106】
本発明のルミネッセントコンポーネントは、比較例1のコンポーネント(h2=98%)よりも低いヘイズ(h1=50%)により特徴付けられる。このデータから、本発明の例が、概して、より安定なy値(フィルムのより高い安定性)、より安定なLCF値、及びLCFの値の大幅な増加を示したことが判る。
【0107】
実施例3に対する比較例2:低ヘイズ及び高Tgを有する緑色離間ペロブスカイトQDフィルムの作製。
手順は、アクリレートモノマー混合物(0.7gのFA-513AS,Hitachi Chemical,日本/0.3gのMiramer M240,Miwon,韓国)を以下のアクリレートモノマー混合物に置き換えたことを除き、実施例3の手順と同じであった。
・0.7gのFA-DCPA,Hitachi Chemical,日本/0.3gのFA-320M,Hitachi Chemical,日本)。
【0108】
得られた緑色ペロブスカイトQDフィルムは、526nmの発光波長、22nmのFWHM、及び0.153のy値を示した(実験3における低ヘイズQDフィルムとほぼ同じ)。このQDフィルムのLCFは49%であった。このQDフィルムのヘイズは51%であり、透過率は85%であった。UV硬化した樹脂組成物の測定されたTgは144℃であった。
【0109】
1,000時間の光束試験後のQDフィルムの光学パラメータの変化は、以下のとおりであった:
・y値の変化:0.153から0.068へ(-0.085)。
・LCFの変化:49%から21%へ(-28%)。
・緑色発光波長の変化:526nmから525nmへ(-1nm)
・緑色FWHMの変化:0nm。
【0110】
これらの結果から、QDフィルム(自立フィルム)の固体ポリマーのTgが高いと、高青色光束下で、低いQDフィルム安定性をもたらすことが判る。したがって、ディスプレイデバイスの動作寿命の間、安定した色座標及び安定した白色点が得られるように、高青色光束下で改善されたQDフィルム安定性をもたらす低TgのQDフィルムを得ることが有利である。
【0111】
【0112】
本発明のルミネッセントコンポーネントは、比較例2のコンポーネント(Tg=144℃)よりも低いTg(Tg=75℃)により特徴付けられる。このデータから、本発明の例が、より安定したy値、はるかに安定なLCF値(フィルムのより高い安定性)を示すことが判る。
【国際調査報告】