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特表2023-544934人造黒鉛、その製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置
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  • 特表-人造黒鉛、その製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】人造黒鉛、その製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20231019BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231019BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20231019BHJP
【FI】
C01B32/205
H01M4/587
C01B32/21
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569629
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 CN2021117986
(87)【国際公開番号】W WO2023035266
(87)【国際公開日】2023-03-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】王 家政
(72)【発明者】
【氏名】陳 斌溢
(72)【発明者】
【氏名】李 暄
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 楚英
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC11A
4G146AC11B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AD23
4G146AD24
4G146BA27
4G146BB04
4G146BB05
4G146BB07
4G146BC04
4G146BC36B
4G146CB09
4G146DA04
4G146DA12
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA08
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA19
(57)【要約】
本出願の実施例は、人造黒鉛、二次電池、製造方法及び装置を提供する。本出願による人造黒鉛は、PD5t/PD0.5t≦1.35を満たし、ここで、PD5tは5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造黒鉛であって、前記人造黒鉛は、PD5t/PD0.5t≦1.35を満たし、ここで、PD5tは5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度である、人造黒鉛。
【請求項2】
前記人造黒鉛は、1.23≦PD5t/PD0.5t≦1.3を満たす、請求項1に記載の人造黒鉛。
【請求項3】
前記人造黒鉛は、PD5t≧1.8g/cmを満たし、例えば1.8g/cm≦PD5t≦1.95g/cmである、請求項1又は2に記載の人造黒鉛。
【請求項4】
前記人造黒鉛は、PD0.5t≧1.4g/cmを満たし、例えば1.4g/cm≦PD0.5t≦1.5g/cmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の人造黒鉛。
【請求項5】
前記人造黒鉛のメジアン径Dv50は、Dv50≧10μmを満たし、例えば14μm≦Dv50≦17μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の人造黒鉛。
【請求項6】
前記人造黒鉛の比表面積SSAは、SSA≦1.5g/mを満たし、例えば1.0g/m≦SSA≦1.4g/mである、請求項1~5のいずれか一項に記載の人造黒鉛。
【請求項7】
前記人造黒鉛のタップ密度は0.9g/cm以上であり、例えば、前記人造黒鉛のタップ密度は1.0g/cm~1.4g/cmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の人造黒鉛。
【請求項8】
前記人造黒鉛の黒鉛化度は90%以上であり、例えば94%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の人造黒鉛。
【請求項9】
前記人造黒鉛のグラム容量は340mAh/g以上であり、例えば345mAh/g~355mAh/gである、請求項1~8のいずれか一項に記載の人造黒鉛。
【請求項10】
人造黒鉛の製造方法であって、
生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤と、溶媒とを混合物として製造するステップ(1)と、
前記混合物を成形して中間体を得るステップ(2)と、
前記中間体から少なくとも一部の溶媒を除去してグリーン体を得るステップ(3)と、
前記グリーン体に対して黒鉛化処理を行って黒鉛素地を得るステップ(4)と、
黒鉛素地を粉体にして人造黒鉛を得るステップ(5)とを含み、
ここで、前記人造黒鉛は、PD5t/PD0.5t≦1.35を満たし、ここで、PD5tは5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度である、人造黒鉛の製造方法。
【請求項11】
生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤との総質量を100%とし、前記生コークス粒子の含有量は35wt%以上であり、任意選択的に35~55wt%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤との総質量を100%とし、前記接着剤の含有量は2wt%以上であり、任意選択的に3wt%~10wt%である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記生コークス粒子の揮発分含有量は≧6wt%以上であり、任意選択的に8wt%~12wt%である、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記グリーン体の見掛け密度は1.3g/cm以上であり、任意選択的に1.3g/cm~1.5g/cmである、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記グリーン体のかさ密度は0.85g/cm以下であり、任意選択的に0.45~0.85g/cmである、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記グリーン体は、
(1)前記グリーン体の少なくとも1つの方向での寸法が≧1cmであり、任意選択的に1cm~10cmであることと、
(2)前記グリーン体の少なくとも2つの互いに垂直な方向での寸法がいずれも≧1cmであり、任意選択的に1cm~10cmであることと、
(3)前記グリーン体の3つの互いに垂直な方向での寸法がいずれも≧1cmであり、任意選択的に1cm~10cmであることと、
(4)前記グリーン体の形状が柱状、球状、楕円体状、ブロック状のうちの1つ又は複数から選択されることと、のうちの1つ又は複数の特徴を有する、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、
-前記生コークス粒子のメジアン径Dv50が前記か焼コークス粒子のメジアン径Dv50よりも小さいことと、
-前記生コークス粒子のメジアン径Dv50が15μm以下であり、例えば8μm~14μmであることと、
-前記か焼コークス粒子のメジアン径Dv50が20μm以下であり、例えば15μm~17μmであることと、のうちの1つ又は複数の特徴を満たす、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記接着剤は1000℃以上で蒸発又は分解可能である、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記接着剤はポリマー接着剤であり、
任意選択的に、前記ポリマー接着剤は水溶性ポリマー接着剤、非水溶性ポリマー接着剤、又はそれらの組み合わせを含み、
任意選択的に、前記水溶性ポリマー接着剤はポリビニルアルコール、デンプン、セルロース、又はそれらの組み合わせから選択され、
任意選択的に、前記非水溶性ポリマー接着剤はゴム系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
二次電池であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の人造黒鉛を含むか、又は請求項10~19に記載の方法を用いて製造した人造黒鉛を含む、二次電池。
【請求項21】
電力消費装置であって、請求項20に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、黒鉛材料分野に関し、特に人造黒鉛、その製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、エネルギー密度が高く、汚染がなく、耐用年数が長いなどの突出した特徴を有するため、広く応用されている。
【0003】
しかしながら、二次電池のサイクル過程において、体積膨張が発生することにより、電池内部応力の増加を引き起こし、電池の耐用年数と安全性に影響を与えてしまう。例えば、新エネルギー自動車の急速な普及に伴い、動力型二次電池の耐用年数と安全性に対する市場の要求はますます高まっている。新エネルギー自動車の市場競争力を高めるためには、良好な電気的性能と安全性を兼ね備えた二次電池を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、二次電池のサイクル過程における体積膨張を低減できる人造黒鉛、その製造方法、それを含有する二次電池及び電力消費装置を提供する。
【0005】
いくつかの態様によれば、本出願は、人造黒鉛を提供する。この人造黒鉛は、PD5t/PD0.5t≦1.35を満たし、ここで、PD5tは5トンの圧力で測定された人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された人造黒鉛の圧密密度である。
【0006】
本出願は、PD5t/PD0.5tが黒鉛密度の圧力変化に対する感度を反映することを初めて発見し、ここで、PD5tは5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度である。人造黒鉛は、二次電池の負極材料として、リチウムの吸蔵放出の繰り返しに伴って受ける力が変化する。本出願は、PD5t/PD0.5tがリチウムの吸蔵放出を繰り返す過程における人造黒鉛の膨張変化を反映できることを発見した。人造黒鉛のPD5t/PD0.5tが≦1.35の時、そのサイクル過程における膨張力は小さく、さらに電池が低い満充電膨張率を示すことにより、電池は良好なサイクル性能を有する。人造黒鉛のPD5t/PD0.5tが≦1.35の時、材料の変形抵抗能力は高い。リチウムイオン電池のサイクル過程において、負極でのリチウム吸蔵放出の繰り返しにより、繰り返して力を受けて膨張・収縮することを引き起こすが、負極の変形抵抗能力が高くなると、そのサイクル過程における膨張がより低くなり、構造がより安定するため、サイクル性能はより良くなる。
【0007】
PD5t/PD0.5tは、材料が外力による変形に抵抗する能力を効果的に反映でき、PD5t/PD0.5t≦1.35の時、材料の変形抵抗能力が高い。電池のサイクル過程において、負極でのリチウム吸蔵放出の繰り返しにより、繰り返し力を受けて膨張し収縮することを引き起こすが、負極の変形抵抗能力が高くなると、そのサイクル過程における膨張がより小さくなり、構造がより安定するため、サイクル性能はより良くなる。
【0008】
任意の実施案において、人造黒鉛は、1.23≦PD5t/PD0.5t≦1.3を満たす。例えば、PD5t/PD0.5tの値は、1.20~1.25、1.25~1.30、1.30~1.35であってもよい。これらの案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、電池性能はさらに改善される。
【0009】
いくつかの実施案において、人造黒鉛は、PD5t≧1.8g/cmを満たし、例えば1.8g/cm≦PD5t≦1.95g/cmである。またいくつかの実施案において、PD5tの値は1.8~1.85g/cmであり、例えば1.85~1.90g/cmであり、例えば1.90~1.95g/cmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、電池のエネルギー密度性能はさらに改善される。
【0010】
いくつかの実施案において、人造黒鉛は、PD0.5t≧1.4g/cmを満たし、例えば1.4g/cm≦PD0.5t≦1.5g/cmである。またいくつかの実施案において、PD0.5tの値は1.4~1.45g/cmであり、例えば1.45~1.50g/cmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、電池のエネルギー密度性能はさらに改善される。
【0011】
いくつかの実施案において、人造黒鉛のメジアン径Dv50は、Dv50≧10μmを満たし、例えば19μm≦Dv50≦22μmである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛のメジアン径Dv50の値は10~13μmであり、例えば13~16μmであり、例えば16~19μmであり、例えば19~22μmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることは、粒度に対する合理的な制御が、負極材料の膨張が大きくなりすぎないようにするために有利であり、それにより電池の動的性能とサイクル性能のさらなる向上にとって有利である。
【0012】
いくつかの実施案において、人造黒鉛の比表面積SSAは、SSA≦1.5g/mを満たし、例えば1.0g/m≦SSA≦1.4g/mである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛の比表面積SSAの値は1.0~1.2g/mであり、例えば1.2~1.4g/mであり、例えば1.4~1.5g/mである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることは、電池負極がリチウム吸蔵を行う十分な活性面積を有することにより、電池の急速充電能力のさらなる向上にとって有利である。
【0013】
いくつかの実施案において、人造黒鉛のタップ密度は0.9g/cm以上であり、例えば、人造黒鉛のタップ密度は1.0g/cm~1.4g/cmである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛のタップ密度の値は0.9~1.1g/cmであり、例えば1.1~1.3g/cmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることは、負極板の圧密密度の向上にとって有利であり、それにより電池のエネルギー密度をさらに向上させる。
【0014】
いくつかの実施案において、人造黒鉛の黒鉛化度は90%以上であり、例えば92%以上であり、例えば94%以上であり、例えば96%以上であり、例えば98%以上であり、例えば90~100%である。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、二次電池の性能がさらに改善され、この案は、黒鉛グラム容量の向上と格子欠陥の消去にとって有利であるため、セルエネルギー密度と貯蔵性能の向上にとって有利である。
【0015】
いくつかの実施案において、人造黒鉛のグラム容量は340mAh/g以上であり、例えば345~355mAh/gである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛のグラム容量は340~345mAh/gであり、例えば345~350mAh/gであり、例えば350~355mAh/gである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、二次電池の容量性能はさらに改善される。
【0016】
いくつかの態様によれば、本出願は、人造黒鉛の製造方法を提供する。この方法は、
生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤と、溶媒とを混合するステップ(1)と、
前のステップにおける生成物を成形するステップ(2)と、
前のステップにおける生成物から少なくとも一部又は全部の溶媒を除去してグリーン体を得るステップ(3)と、
グリーン体(green compact)に対して人造黒鉛化処理を行って黒鉛素地を得るステップ(4)と、
黒鉛素地を粉体にして人造黒鉛を得るステップ(5)とを含み、
ここで、前記人造黒鉛は、PD5t/PD0.5t≦1.35を満たし、ここでPD5tは5トンの圧力で測定された人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された人造黒鉛の圧密密度である。
【0017】
いくつかの実施案において、ステップ(1)は、生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤とを機械的に撹拌して混合すると同時に、適量の溶媒を加え、撹拌して撹拌生成物を得ることを含む。撹拌生成物は、泥状又は接着粒子(例えばミリメートル、センチメートルスケールの接着粒子)である。
【0018】
いくつかの実施案において、ステップ(2)は、前のステップで得られた撹拌生成物を成形機器に入れて、押出又はプレスして成形し、予め設定された形状を有する湿潤素地を得ることを含む。
【0019】
いくつかの実施案において、ステップ(3)は、湿潤素地を乾燥させて溶媒を除去し、グリーン体を得ることを含む。
【0020】
いくつかの実施案において、ステップ(4)は、グリーン体を黒鉛化炉に入れて、2800℃以上で黒鉛化を行って、黒鉛素地を得ることを含む。
【0021】
いくつかの実施案において、ステップ(5)は、黒鉛素地に対して破砕及び/又は研磨、ふるいかけ(例えば200メッシュ以上、例えば200~400メッシュ)、脱磁を行い、人造黒鉛粉体を得ることを含む。
【0022】
いくつかの実施案において、黒鉛素地を粉体に破砕した後、ふるいかけと、脱磁と、それらの組み合わせのうちの1つ又は複数の操作をさらに行う。
【0023】
いくつかの実施案による人造黒鉛の製造方法において、生コークス粒子、か焼コークス粒子、接着剤の総質量を100%とし、生コークス粒子の含有量は35wt%以上であり、例えば35~55wt%である。この案によれば、生コークス粒子の量は十分な接着強度を生じるのに十分であり、グリーン体の黒鉛化過程における構造の完全性を保持することができる。また、この案に基づいて得られた人造黒鉛は粒子どうしが低い接着強度を有し、粉体に容易に解重合することができる。生コークス粒子の含有量がより低ければ、黒鉛の高温黒鉛化段階での接着効果が低くなり、強化効果が足りなくなり、この場合、PD5t/PD0.5tは大きい。
【0024】
いくつかの実施案による人造黒鉛の製造方法において、か焼コークス粒子の含有量は35wt%以上であり、例えば35~62wt%である。この案によれば、人造黒鉛の性能は改善される。
【0025】
いくつかの実施案による人造黒鉛の製造方法において、接着剤の含有量は3wt%以上であり、例えば3~10wt%である。この案によれば、接着剤の量は十分な接着強度を生じるのに十分であり、グリーン体の黒鉛化過程における構造の完全性を保持することができる。また、この案に基づいて得られた人造黒鉛においては、接着剤の残留炭素含有量が低く、人造黒鉛の性能は良好である。
【0026】
いくつかの実施案において、グリーン体の見掛け密度は1.3g/cm以上であり、例えば1.3g/cm~1.5g/cm、1.35g/cm~1.45g/cmである。この案によれば、グリーン体は黒鉛化の段階で十分な強度を有し、崩壊や粉末化の現象が発生することはない。なお、この案により得られた黒鉛素地は、粒子間の接着力が低く、粉体に解重合しやすく、得られた黒鉛粉体は良好な性能を有する。この黒鉛粉体を二次電池に用いることで、二次電池は良好なサイクルと貯蔵性能を示す。見掛け密度が高いことは、コークス粒子間の接着がより密であることを示し、それにより、黒鉛化過程における応力がより高くなることによって、PD5t/PD0.5tはより低くなり、セル性能はより良くなる。
【0027】
いくつかの実施案において、グリーン体のかさ密度は0.85g/cm以下であり、例えば0.45~0.85g/cmである。またいくつかの実施案において、グリーン体のかさ密度は0.45~0.55g/cmであり、例えば0.55~0.65g/cmであり、例えば0.65~0.75g/cmであり、例えば0.75~0.85g/cmである。この案によれば、人造黒鉛の黒鉛化度が高く、欠陥が少なく、この人造黒鉛に基づいて得られた二次電池はより良いサイクル性能と貯蔵寿命を有する。グリーン体のかさ密度の範囲が0.45~0.85g/cmである時、人造黒鉛の性能と生産効率をよく両立させることができる。かさ密度が大きすぎると、抵抗率が低くなり、ジュールの法則によると、黒鉛化炉の発熱量は低下する。それにより、黒鉛化温度はより低くなり、温度がより低いと、コークス粒子の強化効果は弱く、それによりPD5t/PD0.5tはより大きくなる。(強化効果は主に接着効果と温度に影響される)
【0028】
いくつかの実施案において、グリーン体の少なくとも1つの方向での寸法が≧1cmであり、例えば1~10cmであり、例えば1~3cmであり、例えば3~5cmであり、例えば5~7cmであり、例えば7~9cmである。
【0029】
いくつかの実施案において、グリーン体の少なくとも2つの互いに垂直な方向での寸法がいずれも≧1cmであり、例えば1~10cmであり、例えば1~3cmであり、例えば3~5cmであり、例えば5~7cmであり、例えば7~9cmである。
【0030】
いくつかの実施案において、グリーン体の3つの互いに垂直な方向での寸法がいずれも≧1cmであり、例えば1~10cmであり、例えば1~3cmであり、例えば3~5cmであり、例えば5~7cmであり、例えば7~9cmである。
【0031】
いくつかの実施案において、グリーン体の形状は柱状、球状、楕円体状、ブロック状のうちの1つ又は複数から選択される。
【0032】
いくつかの実施案において、生コークス粒子の揮発分含有量は≧6wt%であり、例えば含有量≧8wt%であり、例えば含有量8wt%~12wt%である。この案によれば、生コークス粒子は、1000℃以上で接着作用を有する揮発分を生成することによって、グリーン体の構造の完全性を保持することができる。生コークス粒子の揮発分がより低ければ、黒鉛の高温黒鉛化段階での接着効果が低くなり、強化効果がより低くなり、この場合、PD5t/PD0.5tは大きい。
【0033】
いくつかの実施案において、生コークス粒子のメジアン径Dv50は、か焼コークス粒子のメジアン径Dv50よりも小さい。この案によれば、生コークス粒子をか焼コークス粒子間の隙間により良く充填することができ、さらに接着作用をより良く果たし、黒鉛化過程においてブロック素地の構造的完全性をより良く維持することができる。生コークスのDv50がか焼コークスのDv50よりも低い場合、生コークスはより容易に前駆体に均一に分散することにより、より均一な接着効果を有し、より均一な圧縮応力を維持するのに有利であり、強化効果もより均一であり、それによってPD5t/PD0.5tはより低くなる。
【0034】
いくつかの実施案において、生コークス粒子のメジアン径Dv50は15μm以下であり、例えば8~14μmである。この案によれば、生コークス粒子は接着作用をより良く果たし、黒鉛化過程においてブロック素地の構造的完全性をより良く維持することができる。
【0035】
いくつかの実施案において、か焼コークス粒子のメジアン径Dv50は20μm以下であり、例えば15~17μmである。この案によれば、生コークス粒子は接着作用をより良く果たし、黒鉛化過程においてブロック素地の構造的完全性をより良く維持することができる。
【0036】
いくつかの実施案において、接着剤は1000℃以上で蒸発又は分解可能である。この案によれば、グリーン体における生コークス粒子は主に1000℃以上の高温段階で接着作用を起こすが、接着剤の成分は主に1000℃以下の低温段階で接着作用を起こし、グリーン体は黒鉛化の全ての温度段階にわたって効果的に接着され、ブロック素地の構造的完全性が保持される。接着剤の含有量が低ければ、コークス粒子間の接着作用が足りなく、圧縮応力を維持し難く、強化効果が足りなく、それによってPD5t/PD0.5tはより大きくなる。
【0037】
いくつかの実施案において、接着剤はポリマー接着剤である。
【0038】
いくつかの実施案において、ポリマー接着剤は水溶性ポリマー接着剤、非水溶性ポリマー接着剤、又はそれらの組み合わせを含む。
【0039】
いくつかの実施案において、水溶性ポリマー接着剤はポリビニルアルコール、デンプン、セルロース、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0040】
いくつかの実施案において、非水溶性ポリマー接着剤はゴム系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0041】
いくつかの態様によれば、本出願は、上記いずれか一項に記載の人造黒鉛を含むか、又は上記いずれか一項に記載の方法を採用して製造した人造黒鉛を含む二次電池を提供する。
【0042】
いくつかの態様によれば、本出願は、上記二次電池を含む電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、当然のことながら、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を支払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
図1】(a)と(b)は、それぞれ本出願の一実施例と一比較例の人造黒鉛の走査型電子顕微鏡による写真である。
図2】本出願の実施例による二次電池の概略図である。
図3】本出願の実施例による電池モジュールの概略図である。
図4】本出願の実施例による電池パックの概略図である。
図5図4の電池パックの分解図である。
図6】本出願の実施例による装置の概略図である。
【0044】
図面において、図面は、実際の縮尺通りに描かれてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では、図面と実施例を結び付けながら本出願の実施形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施例についての詳細な記述及び図面は、本出願の原理を例示的に説明するためのものであるが、本出願の範囲を限定するものではなく、即ち本出願は記述した実施例に限定されない。
【0046】
以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の負極活物質及びその製造方法、二次電池と電力消費装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同一の構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0047】
本出願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定範囲は、特定の範囲の境界を限定する1つの下限と1つの上限を選定することによって限定される。このように限定される範囲は、端値を含んでもよく含まなくてもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲が列挙された場合、60~110と80~120の範囲として理解されることも想定できることである。なお、列挙された最小範囲値が1と2で、かつ列挙された最大範囲値が3、4と5である場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5の範囲の全ては想定できるものである。本出願において、別段の記載がない限り、数値範囲「a~b」は、aないしbの間の全ての実数の組み合わせを表す省略表現であり、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間の全ての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」はこれら数値の組み合わせの省略表示にすぎない。また、あるパラメータ≧2の整数であると記述している場合、このパラメータは例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0048】
特に説明されていない限り、本出願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0049】
特に説明されていない限り、本出願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成してもよい。
【0050】
特に説明されていない限り、出願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0051】
特に説明されていない限り、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、列挙されていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、列挙された成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0052】
特に説明されていない限り、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という用語は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真(又は存在する)でありかつBが偽(又は存在しない)である条件と、Aが偽(又は存在しない)であるがBが真(又は存在する)である条件と、また、AとBが共に真(又は存在する)である条件のいずれもが「A又はB」を満たしている。
【0053】
本出願の記述において、特に説明されていない限り、「複数」は二つ以上を意味する。用語「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などで指示される方位又は位置関係は、本出願を容易に記述し、かつその記述を簡略化するためのものであり、示された装置又は要素が特定の方位を有し、特定の方位で構造と操作されなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本出願を制限するものとして理解すべきではない。なお、用語「第1」、「第2」、「第3」などは、説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示するものとして理解すべきではない。「垂直」は、厳密な意味での垂直ではなく、誤差の許容範囲内にあるものである。「平行」は、厳密な意味での平行ではなく、誤差の許容範囲内にあるものである。
【0054】
二次電池
【0055】
いくつかの実施例において、本出願は、二次電池を提供する。
【0056】
二次電池は一般的には、正極板と、負極板と、電解質とセパレータとを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極板と負極板との間で往復して吸蔵及び放出する。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する作用を奏するとともに、イオンを通過させることもできる。
【0057】
[負極板]
【0058】
負極板は、一般的には、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設けられた負極膜とを含む。
【0059】
例示的に、負極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、負極膜は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか1つ又は両面に積層して設けられている。
【0060】
負極集電体は、導電と集電の役割を果たすように、良好な導電性及び機械強度を有する材質を採用してよい。いくつかの実施例において、負極集電体は、銅箔を採用してもよい。
【0061】
負極膜は、負極活物質を含む。
【0062】
いくつかの実施例において、本出願は、人造黒鉛の負極活物質を提供する。前記人造黒鉛がPD5t/PD0.5t≦1.35を満たす時、材料の変形抵抗能力は強い。リチウムイオン電池のサイクル過程において、負極でのリチウム吸蔵放出の繰り返しにより、繰り返して力を受けて膨張と収縮を引き起こすが、負極の変形抵抗能力が高いと、そのサイクル過程における膨張がより小さくなり、構造がより安定するため、サイクル性能はより良くなる。
【0063】
本出願は、PD5t/PD0.5tが黒鉛密度の圧力変化に対する感度を反映できることを初めて発見した。ここで、PD5tは5トン(49000N)の圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トン(4900N)の圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度である。人造黒鉛は、二次電池の負極材料として、その受ける力が、リチウムの吸蔵放出を繰り返すにつれて変化する。本出願は、PD5t/PD0.5tでリチウムの吸蔵放出を繰り返す過程における人造黒鉛の膨張変化を反映できることを発見した。人造黒鉛のPD5t/PD0.5tが≦1.35の時、そのサイクル過程における膨張力が小さく、さらに電池が低い満充電膨張率を示し、任意選択的に、電池は、高いグラム容量、高い1サイクル目のサイクル効率、よいサイクル性能、長い貯蔵寿命のうちの1つ又は複数の利点をさらに示す。
【0064】
いくつかの実施案において、人造黒鉛は、1.23≦PD5t/PD0.5t≦1.3を満たす。例えば、PD5t/PD0.5tの値は、1.20~1.25、1.25~1.30、1.30~1.35であってもよい。人造黒鉛がこの条件を満たす時、電池のサイクル性能はさらに改善される。
【0065】
いくつかの実施案において、人造黒鉛は、PD5t≧1.8g/cmを満たし、例えば1.8g/cm≦PD5t≦1.95g/cm、1.8g/cm≦PD5t≦1.85g/cm、1.85g/cm≦PD5t≦1.90g/cm、1.90g/cm≦PD5t≦1.95g/cmであってもよい。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、電池のエネルギー密度性能はさらに改善される。
【0066】
いくつかの実施案において、人造黒鉛は、PD0.5t≧1.4g/cmを満たし、例えば1.4g/cm≦PD0.5t≦1.5g/cmである。またいくつかの実施案において、PD0.5tの値は1.4~1.45g/cmであり、例えば1.45~1.50g/cmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、二次電池のエネルギー密度はさらに改善される。
【0067】
人造黒鉛の特定の圧力における圧密密度は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、GB/T 24533-2019を参照し、電子圧力試験機(例えばUTM7305)を使用して以下のようにテストする。予め設定された質量Mのテスト待ち人造黒鉛粉末サンプルを、プレス専用モールド上(底面積S)に置き、異なる圧力(例えば、本出願では4900Nと49000Nを採用する)を設定し、圧力を30s保持し、圧力を除去し、10s待ち、機器上でこの圧力における粉末プレス後の厚さHを読み取り、計算してこの圧力における圧密密度を得ることができる。負極活物質のこの圧力における圧密密度=M/(H*S)である。
【0068】
いくつかの実施案において、人造黒鉛のメジアン径Dv50は、Dv50≧10μmを満たし、例えば19μm≦Dv50≦22μmである。例えば、19μm≦Dv50≦22μmである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛のメジアン径Dv50の値は10~13μmであり、例えば13~16μmであり、例えば16~19μmであり、例えば19~22μmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることは、粒度に対する合理的な制御が、負極材料の膨張が大きくなりすぎないようにするために有利であり、それにより電池の動的性能とサイクル性能のさらなる向上にとって有利である。
【0069】
Dv50は、前記人造黒鉛の累計体積分布百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、レーザー回折粒度分析法を採用して測定してもよい。規格GB/T 19077-2016を参照し、レーザー粒度分析器(例えばMalvern Master Size 3000)を使用して測定することができる。
【0070】
いくつかの実施案において、人造黒鉛の比表面積SSAは、SSA≦1.5g/mを満たし、例えば1.0g/m≦SSA≦1.4g/mである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛の比表面積SSAの値は1.0~1.2g/mであり、例えば1.2~1.4g/mであり、例えば1.4~1.5g/mである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることは、負極がリチウム吸蔵を行う十分な活性面積を有することにより、電池の急速充電能力のさらなる向上に有利である。
【0071】
人造黒鉛の比表面積SSAは、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、規格GB/T 19587-2017を参照し、窒素ガス吸着比表面積分析テスト方法を採用してテストし、かつBET(Brunauer Emmett Teller)法を用いて算出することができ、ここで、窒素ガス吸着比表面積分析テストは、米国Micromeritics社のTri-Star 3020型比表面積孔径分析測定器によって行うことができる。
【0072】
いくつかの実施案において、人造黒鉛のタップ密度は0.9g/cm以上であり、例えば、人造黒鉛のタップ密度は1.0g/cm~1.4g/cmである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛のタップ密度の値は0.9~1.1g/cmであり、例えば1.1~1.3g/cmである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることは、負極板の圧密密度の向上に有利であり、それにより電池のエネルギー密度をさらに向上させる。
【0073】
人造黒鉛のタップ密度は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、規格GB/T 5162-2006を参照し、粉体タップ密度測定器を使用して測定することができる。例えば、北京鋼鉄研究総院のFZS4-4B型タップ密度測定器を採用する。テストパラメータは、以下のとおりである。250±15回/分、振幅3±0.2mm、振動回数5000回、メスシリンダ25mL。
【0074】
いくつかの実施案において、人造黒鉛の黒鉛化度は90%以上であり、例えば92%以上であり、例えば94%以上であり、例えば96%以上であり、例えば98%以上であり、例えば90~100%である。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、二次電池の性能がさらに改善され、この案は、黒鉛グラム容量の向上と格子欠陥の消去に有利であるため、セルエネルギー密度と貯蔵性能の向上に有利である。
【0075】
人造黒鉛の黒鉛化度は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例えば、X線回折装置(例えば、Bruker D8 Discover)を使用することができ、テストは、JIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照し、d002のサイズを測定し、そして式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて黒鉛化度を算出することができ、ここで、d002は、ナノメートル(nm)で表される、黒鉛結晶構造における層間距離である。X線回折分析テストにおいて、陽極ターゲットとして銅ターゲットを採用し、CuKα線を放射源とすることができ、放射線波長λ=1.5418Åであり、走査2θ角度範囲は20°~80°であり、走査速度は4°/minであってもよい。
【0076】
いくつかの実施案において、人造黒鉛のグラム容量は340mAh/g以上であり、例えば345~355mAh/gである。またいくつかの実施案において、人造黒鉛のグラム容量は340~345mAh/gであり、例えば345~350mAh/gであり、例えば350~355mAh/gである。この案による人造黒鉛を二次電池に用いることで、二次電池の性能はさらに改善される。
【0077】
人造黒鉛のグラム容量は、本分野で公知の意味であり、本分野で既知の方法を採用してテストすることができる。例示的に、以下の方法にしたがってテストすることができる。製造した人造黒鉛と、導電剤Super Pと、接着剤(SBR)と、増粘剤(CMC)とを、96.2:0.8:1.8:1.2の質量比にしたがって適量の脱イオン水において十分に撹拌して混合させ、スラリーを作製する。作製したスラリーを銅箔の集電体上に塗布し、オーブンで乾燥させて使用に供する。金属リチウムシートを対極とし、ポリエチレン(PE)フィルムを採用してセパレータとし、炭酸エチレン(EC)と、炭酸メチルエチル(EMC)と、炭酸ジエチル(DEC)とを、体積比1:1:1で混合させ、そしてLiPF6を上記溶液に均一に溶解させて電解液を得る。ここで、LiPF6の濃度は1mol/Lであり、アルゴンガスで保護されるグローブボックスにおいて上記各部分をCR2430型コイン電池に組み立てる。得られたコイン電池を12時間静置した後、0.05Cの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分静置し、50μAの電流で再び0.005Vまで定電流放電し、そして0.1Cの電流で2Vまで定電流充電し、充電容量を記録する。充電容量と人造黒鉛質量との比の値は、即ちこの人造黒鉛のグラム容量である。
【0078】
いくつかの実施例において、本出願は、人造黒鉛の製造方法を提供する。この方法は、
生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤と、溶媒とを混合物に製造するステップ(1)と、
混合物を成形して中間体を得るステップ(2)と、
中間体から少なくとも一部又は全部の溶媒を除去してグリーン体(green compact)を得るステップ(3)と、
グリーン体に対して黒鉛化処理を行って黒鉛素地を得るステップ(4)と、
黒鉛素地を粉体にして人造黒鉛を得るステップ(5)とを含む。
【0079】
ここで、前記人造黒鉛は、PD5t/PD0.5t≦1.35を満たし、ここでPD5tは5トンの圧力で測定された人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された人造黒鉛の圧密密度である。
【0080】
いくつかの実施案において、ステップ(1)は、生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤とを機械的に撹拌して混合すると同時に、適量の溶媒を加え、撹拌して撹拌生成物を得ることを含む。撹拌生成物は、泥状又は接着粒子(例えばミリメートル、センチメートルスケールの接着粒子)である。
【0081】
用語「生コークス」は、本分野で公知の意味を有する。生コークスは、例えば、NBSHT 0527-2019石油コークス(生コークス)の規定に適合する。
【0082】
いくつかの実施案において、生コークス粒子の揮発分含有量≧6wt%であり、例えば含有量≧8wt%であり、例えば含有量8wt%~12wt%である。この案に基づき、生コークス粒子は、1000℃以上で接着作用を有する揮発分を生成することによって、グリーン体の構造の完全性を保持することができる。生コークス粒子の揮発分がより低ければ、黒鉛の高温黒鉛化段階での接着効果が低くなり、強化効果がより低くなり、この場合、PD5t/PD0.5tは大きい。
【0083】
生コークスの揮発分テストは、『SHT0026-1990-石油コークス揮発分測定法』を参照する。
【0084】
いくつかの実施案において、生コークス粒子と、か焼コークス粒子と、接着剤との総質量を100%とし、生コークス粒子の含有量は35wt%以上であり、例えば35wt%~55wt%であってもよい。この案に基づき、生コークス粒子の量は適宜な接着強度を生じるのに十分であり、グリーン体の黒鉛化過程における構造の完全性を保持できるとともに、この案に基づいて得られた人造黒鉛は粒子どうしが低い接着強度を有し、粉体に容易に解重合することができる。生コークス粒子の含有量がより低ければ、黒鉛の高温黒鉛化段階での接着効果が低くなり、強化効果が足りなくなり、この場合、PD5t/PD0.5tは大きい。
【0085】
いくつかの実施案において、生コークス粒子のメジアン径Dv50は、か焼コークス粒子のメジアン径Dv50よりも小さい。この案に基づき、生コークス粒子をか焼コークス粒子間の隙間により良く充填することができ、さらに接着作用をより良く果たし、黒鉛化過程においてブロック素地の構造的完全性をより良く維持することができる。生コークスのDv50はか焼コークスのDv50よりも低く、この場合、生コークスはより容易に前駆体に均一に分散することにより、より均一な接着効果を有し、より均一な圧縮応力を維持するのに有利であり、強化効果もより均一であり、それによってPD5t/PD0.5tはより低くなる。
【0086】
いくつかの実施案において、生コークス粒子のメジアン径Dv50は15μm以下であり、例えば8~14μmである。この案によれば、生コークス粒子は接着作用をより良く果たし、黒鉛化過程においてブロック素地の構造的完全性をより良く維持することができる。
【0087】
用語「か焼コークス」は、本分野で公知の意味を有する。か焼コークスは、例えば、YS T 625-2012予備焼成陽極用か焼石油コークスに適合する。
【0088】
いくつかの実施案において、か焼コークス粒子のメジアン径Dv50は20μm以下であり、例えば15~17μmである。この案によれば、生コークス粒子は接着作用をより良く果たし、黒鉛化過程においてブロック素地の構造的完全性をより良く維持することができる。
【0089】
いくつかの実施案において、か焼コークス粒子の含有量は35wt%以上であり、例えば35wt%~62wt%であってもよい。この案によれば、人造黒鉛の性能は改善される。
【0090】
いくつかの実施案において、接着剤は1000℃以上で蒸発又は分解可能である。この案によれば、グリーン体における生コークス粒子は主に1000℃以上の高温段階で接着作用を起こすが、接着剤の成分は主に1000℃以下の低温段階で接着作用を起こし、グリーン体は黒鉛化の全ての温度段階にわたって効果的に接着され、ブロック素地の構造的完全性が保持される。
【0091】
いくつかの実施案において、接着剤はポリマー接着剤である。前記ポリマー接着剤は水溶性ポリマー接着剤、非水溶性ポリマー接着剤、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0092】
いくつかの実施案において、水溶性ポリマー接着剤はポリビニルアルコール、デンプン、セルロース、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0093】
いくつかの実施案において、非水溶性ポリマー接着剤はゴム系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0094】
いくつかの実施案において、接着剤の含有量は2wt%以上であり、例えば3wt%~10wt%であってもよく、例えば、接着剤の含有量≦6%であり、例えば、接着剤の含有量は2%~4%である。この案によれば、接着剤の量は十分な接着強度を生じるのに十分であり、グリーン体の黒鉛化過程における構造の完全性を保持することができる。また、この案に基づいて得られた人造黒鉛は、接着剤の残留炭素含有量が少なく、人造黒鉛の性能は良好である。接着剤の炭化分解残留(残留炭素)は、ハードカーボンに属し、黒鉛化し難い。人造黒鉛の残留炭素量が多い時、人造黒鉛の比表面積は向上する。それにより、その容量と1サイクル目のクーロン効率を低下させ、さらに電池のエネルギー密度とサイクル性能を低下させる。接着剤の含有量が少なければ、コークス粒子間の接着作用が不足し、圧縮応力を維持し難く、強化効果が足りなく、それによってPD5t/PD0.5tはより大きくなる。
【0095】
いくつかの実施案において、ステップ(2)は、前のステップで得られた混合物を成形機器に入れて、押出又はプレスして成形し、予め設定された形状を有する中間体を得て、この中間体は湿潤素地と呼ばれてもよい。
【0096】
いくつかの実施案において、ステップ(3)は、湿潤素地を乾燥させて溶媒を除去し、グリーン体を得ることを含む。
【0097】
いくつかの実施案において、グリーン体の見掛け密度は1.3g/cm以上であり、例えば1.3g/cm~1.5g/cm,1.35g/cm~1.45g/cmである。この案に基づき、グリーン体は黒鉛化の段階で十分な強度を有し、崩壊や粉末化の現象が発生することはない。なお、この案により得られた黒鉛素地は粒子間の接着力が低く、粉体に解重合しやすく、得られた黒鉛粉体は良好な性能を有する。この黒鉛粉体を二次電池に用いることで、二次電池は良好なサイクルと貯蔵性能を示す。
【0098】
上記案において、見掛け密度は、グリーン体の安定性と内部応力に影響を与え、見掛け密度が1.3g/cm以上、例えば1.3g/cm~1.5g/cm、1.35g/cm~1.45g/cmである。黒鉛化過程において、黒鉛粒子は、応力の作用を受けて強化され、即ち変形抵抗能力が強くなり、したがって得られた人造黒鉛のPD5t/PD0.5tの値は≦1.35である。見掛け密度が高いことは、コークス粒子間の接着がより緊密であることを示し、それにより、黒鉛化過程における応力がより高くなることによって、PD5t/PD0.5tはより低くなり、セル性能はより良くなる。
【0099】
グリーン体の見掛け密度(apparent density)のテスト方法は、排水法である。一例としてのテスト方法は、以下を含む。ブロック状の接着式前駆体を1つ取って秤量し、その質量はmである。ビーカーに適量の水を加えて秤量し、その質量はmである。体積を無視できる細い銅ワイヤ(直径<0.05mm)で前駆体を縛って水に入れ、前駆体を水面のちょっと下に水没させ、かつ前駆体とビーカー底部とが接触しないようにし、上記ビーカーと、水と、水中に浮遊する前駆体とを秤量した総質量はmである。水の密度が約1g/cmであり、この場合、この前駆体の密度はm/(m-m)g/cmである。サンプルを10個取って測定して平均値をとり、これが即ちこのグリーン体の見掛け密度である。
【0100】
いくつかの実施案において、グリーン体のかさ密度は0.85g/cm以下であり、例えば0.45~0.85g/cmである。またいくつかの実施案において、グリーン体のかさ密度は0.45~0.55g/cmであり、例えば0.55~0.65g/cmであり、例えば0.65~0.75g/cmであり、例えば0.75~0.85g/cmである。この案によれば、人造黒鉛の黒鉛化度が高く、欠陥が少なく、この人造黒鉛に基づいて得られた二次電池はより良いサイクル性能と貯蔵寿命を有する。グリーン体のかさ密度の範囲が0.45~0.85g/cmである時、人造黒鉛の性能と生産効率をよく両立させることができる。かさ密度が大きすぎると、抵抗率が低くなり、ジュールの法則によると、黒鉛化炉の発熱量は低下する。それにより、黒鉛化温度はより低くなるが、その温度がより低いと、コークス粒子の強化効果が弱く、それによりPD5t/PD0.5tはより大きくなる。(強化効果は主に接着効果と温度に影響される)。
【0101】
グリーン体のかさ密度(packing density)のテストは、GB/T 14685-2011建設用小石・砕石、第7.13節かさ密度と空隙率(ゆるみかさ密度)を参照する。
【0102】
いくつかの実施案において、グリーン体の少なくとも1つの方向での寸法は≧1cmであり、例えば1~10cmであり、例えば1~3cmであり、例えば3~5cmであり、例えば5~7cmであり、例えば7~9cmである。
【0103】
いくつかの実施案において、グリーン体の少なくとも2つの互いに垂直な方向での寸法はいずれも≧1cmであり、例えば1~10cmであり、例えば1~3cmであり、例えば3~5cmであり、例えば5~7cmであり、例えば7~9cmである。
【0104】
いくつかの実施案において、グリーン体の3つの互いに垂直な方向での寸法はいずれも≧1cmであり、例えば1~10cmであり、例えば1~3cmであり、例えば3~5cmであり、例えば5~7cmであり、例えば7~9cmである。
【0105】
いくつかの実施案において、グリーン体の形状は柱状、球状、楕円体状、ブロック状のうちの1つ又は複数から選択される。柱状、球状、楕円体状、ブロック状は、略柱状、略球状、略楕円体状、略ブロック状として理解すべきである。
【0106】
いくつかの実施案において、ステップ(4)は、グリーン体を黒鉛化炉に入れて、2800℃以上で黒鉛化を行って、黒鉛素地を得ることを含む。
【0107】
いくつかの実施案において、ステップ(5)は、黒鉛素地に対して破砕及び/又は研磨、ふるいかけ(例えば200メッシュ以上、例えば200~400メッシュ)、脱磁を行い、人造黒鉛粉体を得ることを含む。
【0108】
いくつかの実施案において、黒鉛素地を粉体に破砕した後、ふるいかけと、脱磁と、それらの組み合わせのうちの1つ又は複数の操作をさらに行う。
【0109】
上記で製造した人造黒鉛を負極膜に用いることで、電池のサイクル性能を効果的に改善することができる。
【0110】
いくつかの実施例において、負極膜は、任意選択的に、二次電池の負極に応用できる他の負極活物質をさらに含む。他の負極活物質は、他の黒鉛材料(例えば、他の人造黒鉛、天然黒鉛)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略す)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン系材料、錫系材料のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0111】
いくつかの実施例において、負極膜は、接着剤をさらに含んでもよい。例示的に、接着剤は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸メチル(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0112】
いくつかの実施例において、負極膜は、任意選択的に、増粘剤をさらに含む。例示的に、増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0113】
いくつかの実施例において、負極膜は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。例示的に、負極膜に用いる導電剤は、黒鉛、伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0114】
[正極板]
【0115】
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極膜とを含む。例示的に、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、正極膜は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれか1つ又は両面に積層して設けられている。
【0116】
正極集電体は、良好な導電性及び機械強度を有する材質を採用してよい。いくつかの実施例において、正極集電体は、アルミニウム箔を採用してもよい。
【0117】
正極膜は、正極活物質を含む。本出願では、正極活物質の具体的な種類に対して具体的に制限せず、本分野で知られている、二次電池の正極に応用可能な活物質を採用してよく、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。
【0118】
いくつかの実施例において、二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物及びその改質材料から選択されてもよく、改質材料は、リチウム遷移金属酸化物をドーピング改質したもの及び/又は被覆改質したものであってもよい。例えば、リチウム遷移金属酸化物は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びオリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0119】
例示的に、正極活物質は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05、LiFePO(LFP)とLiMnPOのうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0120】
いくつかの実施例において、正極膜は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。接着剤の種類に対して具体的に制限せず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。例示的に、正極膜に用いる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0121】
いくつかの実施例において、正極膜は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。導電剤の種類に対して具体的に制限せず、当業者は実際の需要に応じて選択することができる。例示的に、正極膜に用いる導電剤は、黒鉛、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びカーボンナノファイバーのうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0122】
[電解質]
【0123】
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願では、電解質の種類に対して具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液液)のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0124】
いくつかの実施例において、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒を含む。
【0125】
いくつかの実施例において、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(リチウムヘキサフルオロアルセネート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド))、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロ(オキサラトホウ酸リチウム)、LiBOB(リチウムビス(オキサラト)ボレート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート)のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0126】
いくつかの実施例において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ぎ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1つ又は複数から選択されてもよい。
【0127】
いくつかの実施例において、前記電解液は、任意選択的に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、電池の何らかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0128】
[セパレータ]
【0129】
電解液を採用する二次電池、及び固体電解質を採用する一部の二次電池には、セパレータがさらに含まれている。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、隔離する作用を果たす。本出願では、セパレータの種類に対して特に制限せず、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。いくつかの実施例において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの1つ又は複数から選択されてもよい。セパレータは、単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよい。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよい。
【0130】
[外装]
【0131】
いくつかの実施例において、二次電池は、正極板と負極板と電解質をパッケージングするための外装を含んでもよい。一例として、正極板と、負極板と、セパレータとを積層又は巻回することによって積層構造のセル又は巻回構造のセルを形成することができ、セルは外装内にパッケージングされ、電解質は電解液を採用してもよく、電解液はセルに浸潤する。二次電池におけるセルの数は、1つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0132】
いくつかの実施例において、二次電池の外装は、軟質バッグ、例えば、バッグ式軟質バッグであってもよい。軟質バッグの材質はプラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBSなどのうちの1つ又は複数を含むことができる。二次電池の外装は、硬質ケース、例えば、アルミニウムケースなどであってもよい。
【0133】
[二次電池の製造方法]
【0134】
二次電池の製造方法には、本出願の人造黒鉛を採用して負極板を製造するステップが含まれている。
【0135】
いくつかの実施例において、本出願の第1の態様による人造黒鉛を採用して負極板を製造するステップは、以下を含んでもよい。本出願の第1の態様による人造黒鉛を含む負極活物質と、接着剤と、選択可能な増粘剤と導電剤とを、脱イオン水などの溶媒に分散させて、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥や冷間加圧などの工程を経て、負極板を得る。
【0136】
二次電池の製造方法には、正極板を製造するステップがさらに含まれてもよい。いくつかの実施例において、正極活物質と導電剤と接着剤とを溶媒(例えばN-メチルピロリドン、NMPと略称する)に分散させて均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥や冷間加圧などの工程を経て正極板を得ることができる。
【0137】
二次電池の製造方法は、負極板と正極板と電解質とを組み立てて二次電池を形成するステップをさらに含む。いくつかの実施例において、正極板と、セパレータと、負極板とを順次巻回又は積層し、セパレータを正極板と負極板との間に位置させることによって隔離作用を果たし、セルを得て、セルを外装に入れ、電解液を注入してシールし、本出願の二次電池を得る。
【0138】
本出願は、前記二次電池の形状に対して特に制限がなく、それは、円柱形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図2では、一例としての四角形構造の二次電池5が示されている。
【0139】
いくつかの実施例において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの適用及び容量に基づいて調節することができる。
【0140】
図3は、一例としての電池モジュール4である。図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0141】
任意選択的に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよい。
【0142】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの適用及び容量に基づいて調節することができる。
【0143】
図4及び図5は、一例としての電池パック1である。図4及び図5を参照すると、電池パック1には、電池ケースと、電池ケースに設けられた複数の電池モジュール4とが含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は下ケース3を覆うように設けられ、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式で電池ケースに配列することができる。
【0144】
電力消費装置
【0145】
いくつかの実施例において、本出願は、電力消費装置を提供する。前記電力消費装置は、本出願により提供される二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限定されない。
【0146】
前記電力消費装置として、その使用需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0147】
図6は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置は、二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度への需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0148】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0149】
好ましい実施例を結び付けながら本出願を説明したが、本出願の範囲から逸脱することなく、それに対して様々な改良を行ってもよいし、その中の部品を同等の物で置き換えてもよい。特に、構造的矛盾が存在しない限り、各実施例で言及した各技術的特徴を、任意の方式で組み合わせてもよい。本出願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の全ての技術案を含むものである。
【0150】
実施例
【0151】
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示であり、本出願を解釈することのみに用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0152】
一、人造黒鉛の製造
【0153】
実施例1~7
【0154】
実施例1~7は黒鉛化炉を使用して人造黒鉛を製造し、その製造方法は、以下のステップを含む。
【0155】
(1)グリーン体の製造
【0156】
表2に示す前駆体配合方法にしたがって前駆体組成物を混合し、水を加えて泥状になるまで撹拌し、そして泥状物を押し出し造粒して成形した後、水含有率が3%未満になるまで乾燥させ、グリーン体(green compact)を得る。個々のグリーン体の形状は円柱形であり、寸法はΦ15mm×4mmである。グリーン体の見掛け密度とかさ密度は表2に示すとおりである。
【0157】
(2)人造黒鉛化処理
【0158】
前のステップで製造されたグリーン体に対して黒鉛化処理を行う。黒鉛化処理を行うピーク温度は、2800℃に達する。本分野で既知の機器、例えば黒鉛化炉、さらに例えばアチソン黒鉛化炉を採用して黒鉛化を行う。
【0159】
(3)粉体化
【0160】
破砕機を使用して黒鉛素地を粉体に破砕し、粉体を325メッシュのふるいにかけ、ふるいを通過した粉体完成品を収集する。脱磁機を使用し、ふるいを通過した粉体完成品に対して脱磁を行い、粉体完成品におけるFe+Co+Ni+Cr+Zn元素の含有量を<0.1ppmにする。人造黒鉛(粉体)を得る。
【0161】
比較例1~9
【0162】
比較例1~2と実施例1との主な相違点は、グリーン体の見掛け密度及び/又はかさ密度が異なることであり、詳細は表2に示すとおりである。
【0163】
比較例3~9と実施例1との主な相違点は、前駆体の配合方法が異なることであり、詳細は表2に示すとおりである。
【0164】
三、分析と検出項目
【0165】
実施例と比較例で製造された人造黒鉛及び各ステップの中間生成物に対してテストを行う。主なテスト方法は、以下を含む。
【0166】
グリーン体の素地の完全性(V2/V1)のテスト方法は、以下を含む。グリーン体をランダムに20個取り、排水法を採用して20個のグリーン体の総体積V1をテストし、黒鉛化処理した後に、黒鉛素地を20個ランダムに取り、排水法を採用して20個の黒鉛素地の総体積V2をテストする。V2/V1の値によって、素地の完全性の程度を表す。V2/V1≧70%の場合、構造はよく保持され、30%<V2/V1<70%の場合、素地の完全性程度は普通であり、V2/V1≦30%の場合、素地の完全性程度は深刻に劣化している。
【0167】
人造黒鉛を二次電池の負極活物質とする性能をさらに評価するために、製造された上記人造黒鉛を使用して二次電池を組み立て、かつ電池の性能テストを行う。二次電池を組み立てる方法は、以下を含む。
【0168】
(1)正極板の製造
【0169】
LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523)と、導電剤(アセチレンブラック)と、接着剤(PVDF)とを質量比96:2:2にしたがって混合させ、溶媒NMPを加え、均一に混合して正極スラリーを得る。正極スラリーを正極集電体(アルミニウム箔)上に均一に塗布し、乾燥、冷間加圧、スリットを経て正極板を得る。
【0170】
(2)負極板の製造
【0171】
各実施例と比較例の人造黒鉛粉体と、導電剤アセチレンブラックと、増粘剤CMCと、接着剤SBRとを質量比96.4:1:1.2:1.4にしたがって混合させ、溶媒である脱イオン水を加え、均一に混合して負極スラリーを得る。負極スラリーを負極集電体(銅箔)上に均一に塗布し、乾燥、冷間加圧、スリットを経て負極板を得る。
【0172】
(3)電解液
【0173】
電解液の溶質はリチウム塩1mol/L LiPF6であり、溶媒は、炭酸エチレン(EC)と、炭酸メチルエチル(EMC)と、炭酸ジエチル(DEC)とを体積比1:1:1にしたがって混合して得られる混合物である。
【0174】
(4)セパレータ
【0175】
セパレータは、ポリエチレン膜である。
【0176】
(5)二次電池の製造
【0177】
上記正極板と、セパレータと、負極板とを順次積層し、セパレータを正負極板の間に位置させ、そして巻回してベアセルを得る。ベアセルを外装ケースに入れ、電解液を注入し、真空パッケージング、静置、化成などの工程を経て二次電池を得る。
【0178】
二次電池の性能パラメータテスト項目は、以下を含む。
【0179】
(1)サイクル性能テストは、以下を含む。二次電池の容量が開始容量の80%に減衰するまで、25℃で、二次電池に対して1C倍率での満充電、完全放電のサイクルテストを行い、サイクル周数を記録する。
【0180】
(2)膨張性能テストは、以下を含む。負極板をセルに巻回する前に負極板の厚さを測定してhとする。負極板をセルに巻回して二次電池に製造した後、二次電池に対して1Cの満充電を行い、そして電池を解体し、負極片を分離し、負極板の厚さを測定してhとする。この場合、二次電池負極片の満充電膨張率は、(h-h)/hである。
【0181】
(3)貯蔵寿命テストは、以下を含む。まず、以下のように二次電池に対して25℃での充放電容量テストを行う。25℃で2時間静置した後、二次電池に対して0.33Cの完全放電を行い、さらに0.33Cの満充電を行い、さらに0.33Cの完全放電を行い、2回目に完全放電した容量を二次電池の容量Cとする。そして、二次電池を60℃で静置して保存し、一定日数毎に取り出して25℃での容量テストを行い、N日貯蔵した容量Cを記録し、容量保持率をR=C/Cと定義し、Rが初めて0.8以下になる時、この時までの保存日数Nを記録して二次電池の貯蔵寿命とする。
【0182】
実施例と比較例の前駆体配合方法、グリーン体のパラメータ、黒鉛素地のパラメータは、表2に示すとおりである。
【0183】
実施例と比較例の人造黒鉛(粉体)のパラメータは、表3に示すとおりである。
【0184】
実施例と比較例における、陰極材料として人造黒鉛を使用して組み立てられた二次電池の性能は、表4に示すとおりである。

【0185】
表1~2の実験データを分析すると、以下の実験結論を得ることができる。
【0186】
(1)PD5t/PD0.5t値について
【0187】
実施例1~7の人造黒鉛のPD5t/PD0.5tが≦1.35であり、具体的には1.28~1.31の間にある。PD5t/PD0.5tは、黒鉛密度の圧力変化に対する感度を反映し、ここで、PD5tは5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度であり、PD0.5tは0.5トンの圧力で測定された前記人造黒鉛の圧密密度である。黒鉛材料は、二次電池の負極として、リチウム吸蔵放出を繰り返す過程において同様に力の変化があるため、PD5t/PD0.5tは、リチウム吸蔵放出を繰り返す過程における黒鉛の膨張の変化を反映することができる。PD5t/PD0.5t≦1.35の時、リチウムイオン負極材料は、サイクル過程における膨張力が小さく、サイクル性能の向上に有利である。電池テストの実験結果によると、実施例1~7の黒鉛材料を二次電池の負極活物質とした場合、二次電池は、高いグラム容量、高い1サイクル目のサイクル効率、よいサイクル性能、低い満充電膨張率、長い貯蔵寿命のうちの1つ又は複数の利点を示している。
【0188】
(2)グリーン体の見掛け密度について
【0189】
比較例1~2と実施例1~7との1つの重要な相違点は、グリーン体の見掛け密度が異なることである。見掛け密度は、グリーン体の安定性と内部応力に影響を与え、実施例1~7の見掛け密度が1.3g/cm以上、例えば1.3g/cm~1.5g/cm、1.35g/cm~1.45g/cmである。黒鉛化過程において、黒鉛粒子は、応力の作用を受けて強化され、即ち変形抵抗能力が強くなり、したがって得られた人造黒鉛のPD5t/PD0.5tの値は≦1.35である。なお、実験結果は、実施例1~7のグリーン体が、黒鉛化段階において構造が崩壊することなく安定しており、得られた黒鉛素地の完全性が98%以上であることを示している。それとともに、黒鉛化後の黒鉛粒子間の接着強度が低く、軽度の破砕で解重合を実現でき、黒鉛の表面に対して損傷がなく、又は損傷が非常に小さい。電池テストの実験結果によると、実施例1~7の黒鉛材料を二次電池の負極活物質とした場合、二次電池は、高いグラム容量、高い1サイクル目のサイクル効率、よいサイクル性能、低い満充電膨張率、長い貯蔵寿命のうちの1つ又は複数の利点を示している。
【0190】
比較例1のグリーン体の見掛け密度は1.3g/cm未満であり、黒鉛粒子が受ける応力は不足しており、強化効果が足りなく、変形抵抗能力が足りない(又は弱い)ため、得られた人造黒鉛のPD5t/PD0.5tの値は1.35を超える。その黒鉛化段階での強度が足りなく、グリーン体の構造が崩壊、粉末化しやすいため、黒鉛素地の完全性は低い。また、グリーン体の粉末化は、粉体の堆積を引き起こし、揮発ガスが排出し難く、爆発の危険がある。
【0191】
比較例2のグリーン体の見掛け密度は1.45g/cmを超え、その黒鉛化後の粒子間は緊密に接着され、粉体に解重合し難く、又は粉にするために強い力で破砕しなければならない。強い力での破砕は、黒鉛の表面に多くの回復できない加工欠陥をもたらすことがあり、それにより、黒鉛の比表面積は高くなりすぎる(3.05g/mに達する)ようになり、したがって、得られた人造黒鉛のPD5t/PD0.5tの値>1.35であり、さらに二次電池のサイクル性能と貯蔵性能が低下する。
【0192】
(3)前駆体の配合方法について
【0193】
比較例3~10と実施例1~7との主な相違点は、前駆体の配合方法が異なることである。前駆体の配合方法において、生コークス成分は、1000℃以上の高温段階での揮発分の揮発に有利であり、接着作用を果たし、接着剤成分は、主に1000℃以下でコークス粒子を接着する作用を果たす。
【0194】
実施例1~7の前駆体配合方法で得られたグリーン体を黒鉛化した後の素地の完全性が高く、解重合しやすく、得られた人造黒鉛粉体のPD5t/PD0.5tは≦1.35であり、1.23~1.3の間にある。
【0195】
比較例3において、グリーン体のかさ密度が大きすぎれば(1.00g/cm)、抵抗率が低くなり、ジュールの法則によると、黒鉛化炉の発熱量は低下する。それにより、黒鉛化温度はより低くなり、温度がより低いと、コークス粒子の強化効果は弱く、それによりPD5t/PD0.5tはより大きくなる(PD5t/PD0.5t1.39)。
【0196】
比較例7において、生コークスの質量分数は35%未満であり、1000℃以上の高温段階での揮発分が低く、接着強度が足りなく、ブロック体が崩壊しやすく、素地の完全性が良くない。生コークス粒子の含有量がより低ければ、黒鉛の高温黒鉛化段階での接着効果が低くなり、強化効果が足りなくなり、この場合、PD5t/PD0.5tは大きい。
【0197】
比較例8において、生コークスの質量分数は55%を超え、1000℃以上の高温段階での揮発分が多すぎ、粒子間の接着が強すぎ、黒鉛化後は解重合し難い。
【0198】
比較例9において、接着剤の質量分数は3%未満であり、1000℃以下の低温段階で加熱する時、接着強度が低く、構造が安定しておらず崩壊しやすく、素地の完全性が良くない。接着剤の含有量が低ければ、コークス粒子間の接着作用が足りなく、圧縮応力を維持し難く、強化効果が足りず、それによってPD5t/PD0.5tはより大きくなる。
【0199】
比較例10において、接着剤の質量分数は10%を超え、接着剤の残留炭素が多く、黒鉛材料の性能が低下する。
【0200】
比較例11において、生コークスの揮発分含有量は8%未満であり、グリーン体の構造的完全性がよく保持されていない。生コークス粒子の揮発分がより低ければ、黒鉛の高温黒鉛化段階での接着効果が低くなり、強化効果がより低くなり、この場合、PD5t/PD0.5tは大きい。
【0201】
図1の(a)と(b)は、それぞれ本出願の一実施例と一比較例の人造黒鉛の走査型電子顕微鏡による写真である。図1の(a)に示すように、本発明の実施例のサンプルに対して、原料粒子が黒鉛化過程において良好な接着効果を有するため、粒度はより大きく、粒子は不規則な幾何形状を呈し、表面欠陥が低い。図1の(b)に示すように、比較例のサンプルに対して、原料粒子の黒鉛化過程における接着効果が低いため、粒度はより小さく、粒子の形状は不規則である。
【0202】
以上の実験現象及び実験現象に基づいてまとめた規則は、いずれも本出願で初めて発見されたものであり、当業者が本出願の前に予想することができるものではない。実施例1~7で製造された人造黒鉛の技術的効果は、いずれも本願で初めて発見されたものであり、当業者が本出願の前に予想することができるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0182
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0182】
実施例と比較例の前駆体配合方法、グリーン体のパラメータ、黒鉛素地のパラメータは、表1に示すとおりである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0183
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0183】
実施例と比較例の人造黒鉛(粉体)のパラメータは、表2に示すとおりである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0184
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0184】
実施例と比較例における、陰極材料として人造黒鉛を使用して組み立てられた二次電池の性能は、表2に示すとおりである。
【国際調査報告】