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特表2023-544936酸素の存在下で重合体を架橋するための少なくとも1つの有機過酸化物及び少なくとも1つの硫黄含有化合物を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】酸素の存在下で重合体を架橋するための少なくとも1つの有機過酸化物及び少なくとも1つの硫黄含有化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231019BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 5/5398 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231019BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20231019BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/14
C08K5/5398
C08K3/013
C08K3/34
C08K3/04
C08K3/26
C08K5/01
C08K5/13
C08K5/34
C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571209
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021077944
(87)【国際公開番号】W WO2022074237
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2010360
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デフランシッシ, アルフレード
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA03
4H017AB07
4H017AC01
4H017AC17
4H017AD01
4J002AC011
4J002AC021
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC111
4J002AE052
4J002BB031
4J002BB061
4J002BB151
4J002BB181
4J002BB241
4J002BD141
4J002BD151
4J002BD161
4J002BN151
4J002BP011
4J002CP031
4J002CP081
4J002CP121
4J002DA038
4J002DE238
4J002DJ008
4J002DJ018
4J002DJ038
4J002DM008
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK056
4J002EK066
4J002EK086
4J002EU059
4J002EU089
4J002EU189
4J002EW167
4J002FD012
4J002FD018
4J002FD049
4J002FD079
4J002FD146
4J002FD147
4J002GG01
4J002GJ02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの有機過酸化物と、ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、任意選択で、遊離形態の硫黄とを含む組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの有機過酸化物と、
b)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
c)任意選択で、遊離形態の硫黄と、
d)少なくとも1つの充填剤と、
を含み、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が、10よりも大きい、組成物。
【請求項2】
有機過酸化物が、1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、及びt-ブチルクミルペルオキシド、並びにそれらの混合物、好ましくは1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ジアルキルジチオホスフェート塩が、以下の式(VI):
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、
・線状又は分枝状のC~C30アルキルラジカル、特に線状又は分枝状のC~C14アルキルラジカル、
・4~30個の炭素原子、特に4~10個の炭素原子を含む環状アルキル基、
を表し、
・M2+は、好ましくは亜鉛、カルシウム及び銅からなる群から選択される二価金属であり、より好ましくはM2+は亜鉛であり、
好ましくは、R、R、R及びRは同一であり、線状C~Cアルキルラジカルを表す。)
を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記充填剤が、水洗浄粘土、例えばバージェス粘土、ブラックカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、カオリン、液体飽和炭化水素、及びそれらの組合せから選択され、より好ましくは、ブラックカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、及びそれらの組合せからなる群の中から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのエラストマーをさらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記エラストマーが飽和型であり、不飽和のないシリコンゴム(Q)、メチル-ポリシロキサン(MQ)、フェニル-メチル-ポリシロキサン(PMQ)、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩素化ポリ(エチレン)(CM又はCPE)、ポリ(エチレン-プロピレン)(EPM)、フルオロエラストマー(FKM、FFKM)、及びそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エラストマーが不飽和型であり、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フルオロシリコーン(FVMQ)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、部分水素化アクリロニトリルブタジエン(HNBR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ネオプレンゴム(CR)、ポリクロロプロペン、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの硫黄含有化合物が、3.3phr未満の量で存在することを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記遊離形態の硫黄が、0~0.5phr、好ましくは0~0.4phr、より好ましくは0~0.3phr、又は0~0.2phr、さらにより好ましくは0~0.1phrの範囲の量で存在することを特徴とする、請求項5から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、[セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)]、及びそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される少なくとも1つのHALS化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの抗酸化剤、好ましくはフェノール系抗酸化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
物品、好ましくはエラストマー物品を製造する方法であって、酸素の全面的又は部分的存在下で組成物を硬化させる工程を含み、前記組成物が、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、好ましくはジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択で、遊離形態の硫黄と、
を含み、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満である、方法。
【請求項13】
請求項5から11のいずれかに記載の組成物を硬化形態で含む物品であって、好ましくは完全に又は実質的に非粘着性である物品。
【請求項14】
請求項12に記載の方法に従って製造された物品。
【請求項15】
シール、ホース、及びガスケットからなる群から選択されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の物品。
【請求項16】
請求項1から4のいずれかに記載の組成物の使用であって、請求項5から7のいずれかに記載の少なくとも1つのエラストマーを含む組成物の機械的特性、特に引張特性及び圧縮ひずみを改善するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの有機過酸化物と、ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物とを含む組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、物品の製造方法であって、組成物であり、少なくとも1つのエラストマー、少なくとも1つの有機過酸化物、ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物を含む組成物を、酸素の全面的又は部分的存在下で硬化させることを含む、物品の製造方法に関する。
【0003】
本発明はまた、前述の方法から得られる物品、好ましくはシール、ホース又はガスケットからなる群の中から選択される物品に関する。
【背景技術】
【0004】
有機過酸化物で架橋された重合体及び共重合体は、特に硫黄硬化によって架橋された重合体に比べ、優れた特性を有することが公知である。これらの特性としては、高い耐熱老化性、低い圧縮ひずみ率、金属汚染の減少、及び色安定性が向上した着色製品の容易な製造などが挙げられる。これらの有益な特性を考慮すると、過酸化物硬化は実用上非常に重要である。過酸化物硬化の難点となり得るのは、硬化中に材料の表面から空気を排除する必要があることであり、もし空気が排除されないと、酸素による硬化阻害のために粘着性表面が生じかねない。換言すれば、大気酸素の存在下におけるエラストマーの過酸化物硬化は、生成された材料表面を実質的に粘着にすることにより、その表面を変化させる。
【0005】
特に、有機過酸化物によって架橋中のエラストマーに酸素が接すると、エラストマー表面の架橋反応が阻害されるか、全く起こらない可能性がある。こうして、エラストマー表面は硬化されないままである。したがって、過酸化物によるゴム物品の硬化は、蒸気管、溶融塩浴、蒸気オートクレーブや、空気を排出した密閉金型内で通常行われ、これらはすべて、架橋プロセス中に大気酸素を排除しつつエラストマーに熱を加えるように設計されている。
【0006】
しかしながら、これらの商業的プロセスから空気を排除することは、特に架橋反応が起こる媒体からの空気や酸素の完全な排出を確保するためには、かなりの時間を要する上にコストが嵩む。
【0007】
これに対して、エラストマーの硫黄加硫は、高温の大気酸素が問題とならない低コストの熱風炉又は熱風管を使用して行うことができる。硫黄硬化剤は一般に有機過酸化物よりも低コストであるが、硫黄硬化に適したエラストマーの種類は、不飽和型エラストマー、例えば、ポリ(エチレンプロピレンジエン)、ポリ(ブタジエン)、天然ゴム、合成ポリ(イソプレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン)ゴム、ポリ(ブタジエン-アクリロニトリル)ゴムなどに限定される。
【0008】
多くの場合、製造業者は、既存の熱風炉を使用して、硫黄硬化から過酸化物硬化への切替えを望んではいるものの、こういった状況下での従来の過酸化物系による硬化は、酸素による表面硬化阻害のため実行可能ではないであろう。そこで、フリーラジカル架橋中に表面硬化が酸素によって阻害されるのを防止するための様々な方法が提案されてきた。これらの方法は概して、種々の要因により、成功例がほとんどなく、あるいは成功に結び付いていない。
【0009】
従って、これらの欠点を改善するために、特に酸素の全面的又は部分的存在下で過酸化物硬化されたエラストマー物品の表面粘着性を大幅に低下させるために、少なくとも1つの硫黄含有化合物を含む有機過酸化物配合物が最近導入された。上述の配合物に使用される硫黄含有化合物は、有機スルフィド化合物とすることができ、それはモノスルフィド、ジスルフィド、トリスルフィド又はより高級なポリスルフィドであってもよい。特に、硫黄含有化合物は、ポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)、ポリ(t-ブチルフェノールジスルフィド)、4,4-ジチオジモルホリン、ベンゾチアジルジスルフィド、N,N’-カプロラクタムジスルフィド、及びそれらの組合せからなる群から選択することができ、好ましくは、Vultac(登録商標)5の名称で販売されているポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)に該当する。
【0010】
しかるに、上述の過酸化物配合物が非粘着性表面又は実質的に非粘着性の表面を提供し得る場合であっても、酸素の全面的又は部分的存在下、特に熱風の存在下でエラストマー組成物を硬化するとき、生成されたエラストマー物品の機械的特性が同時に損なわれることが観察されている。
【0011】
実際、上述の過酸化物配合物の導入がすなわち、向上した耐熱老化性、例えば、引張破断強度等の引張特性や、圧縮ひずみ率を妨げる可能性がある。特に、生成されたエラストマー物品の引張破断強度が、別々に低下し得る場合がある一方、圧縮ひずみ率が上昇する可能性があると指摘されている。したがって、得られた硬化エラストマーは、熱及び圧力下で永久ひずみを示すことがあるため、高温耐性ではない。
【0012】
それが意味するのは、前述の硫黄含有化合物を混合した過酸化物配合物は、非粘着性表面を提供できない一方、過酸化物硬化で得られる所望の機械的特性の一部を大幅に劣化させる可能性さえあるため、所望の機械的特性を提供できないことである。
【0013】
したがって、市販のエラストマー及び/又はエラストマー組成物を、大気酸素の全面的又は部分的存在下で、機械的特性、好ましくは熱老化後の機械的特性を損なうことなく硬化できる組成物を提供することが依然として真に必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
特に、本発明の目的の1つは、非粘着性表面又は実質的に非粘着性表面と、特に熱老化後の向上した機械的特性とを同時に有する物品をもたらすことのできる組成物を提供することである。
【0015】
より具体的には、本発明の別の目的は、非粘着性表面、又は実質的に非粘着性表面、並びに改善された引張破断強度及びより望ましい圧縮ひずみを有する物品を得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、すなわち、特に熱老化後に、非粘着性表面又は実質的に非粘着性表面及び向上した機械的特性を同時に有する物品を得るために、少なくとも1つの有機過酸化物と、ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物とを含む組成物を以下に述べる濃度で導入することにより、少なくとも1つのエラストマーを硬化することができる、という発明者による予想外の発見に起因する。
【0017】
したがって、本発明は、
a)少なくとも1つの有機過酸化物と、
b)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
c)任意選択の遊離形態の硫黄と、
d)少なくとも1つの充填剤と、
を含む組成物であって、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、さらにより好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が、10よりも大きい、組成物に関する。
【0018】
本発明の組成物により、硬化エラストマーの機械的特性を同時に変化させることなく、時間及び追加費用を有機過酸化物硬化に比べ削減することのできる、大気酸素の全面的又は部分的な存在下で(例えば、熱風炉もしくは熱風トンネル、又は蒸気オートクレーブを使用して)不飽和型又は飽和型エラストマーの硬化が可能となる。
【0019】
さらに、本発明の組成物は、すなわち、非粘着性表面又は実質的に非粘着性表面を有し、熱老化後の機械的特性が、ポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)、ポリ(t-ブチルフェノールジスルフィド)、4,4-ジチオジモルホリン、ベンゾチアジルジスルフィド、N,N’-カプロラクタムジスルフィド、及びそれらの混合物からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物を含有する有機過酸化物配合物で硬化された物品よりも、良好である物品の製造をもたらす。
【0020】
特に、本発明の組成物により、向上した引張特性及び圧縮ひずみ、具体的には高い引張破断強度及び低い圧縮ひずみ率を同時に示す物品を得ることができる。
【0021】
本発明によれば、硫黄硬化エラストマーに熱及び圧力が加えられると、硫黄結合が通常切れて再形成され、エラストマーの変形の原因となる。この変形を監視するための1つの試験は、圧縮ひずみ率(%)試験と呼ばれる。架橋エラストマー試験片が熱及び圧力下で示す永久ひずみがより大きいほど、圧縮ひずみ率の値はより高くなる。したがって、エラストマーの永久ひずみが小さいか又はないに等しい、より低い圧縮ひずみ率の値が、多くのエラストマー、特にホース、ガスケット及びシーリング用途のエラストマーには望ましい。
【0022】
従って、前述の組成物により、ホース、ガスケット及びシーリング用途に好適な向上した機械的特性を有する製品、特にエラストマー製品が有利に生み出される。
【0023】
それが意味するのは、本発明の組成物により、ホース、ガスケット及びシーリング用途などの様々な用途に適した非粘着性表面、又は実質的に非粘着性表面及び高温耐性エラストマー製品が生産されることである。
【0024】
さらに、本発明の組成物により、有機過酸化物のみに基づく配合物、又は有機過酸化物と、ポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)、ポリ(t-ブチルフェノールジスルフィド)、4,4-ジチオジモルホリン、べンゾチアジルジスルフィド、N,N’-カプロラクタムジスルフィド、及びそれらの混合物からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物との混合物を含有する配合物よりも短時間で、エラストマーを硬化することができる。
【0025】
換言すれば、本発明の組成物により、酸素の全面的又は部分的存在下、すなわち開放系で過酸化物硬化される物品、好ましくはエラストマー物品の表面粘着性を大幅に低下することができ、硬化時間の短縮、引張破断強度の向上及び圧縮ひずみ率の低下を提供することができる。
【0026】
本発明の別の主題は、a)少なくとも1つのエラストマーと、b)少なくとも1つの有機過酸化物と、c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、d)任意選択の遊離形態の硫黄とを含む組成物を、酸素の全面的又は部分的存在下で硬化させることを含む物品の製造方法であって、前記組成物において、前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が0.3よりも大きく、遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15よりも小さく、好ましくは0.1よりも小さい、方法に関する。
【0027】
言い換えれば、前述の方法は、酸素の部分的又は全面的存在下で組成物を硬化させることを含み、本質的にそれからなり、又はそれからなり、前記組成物は、少なくとも1つのエラストマーと、少なくとも1つの有機過酸化物と、ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、任意選択の遊離形態の硫黄とを含み、前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比は0.3より大きく、遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比は0.15より小さい。
【0028】
本発明の方法は、空気を排除する商業プロセスよりも実施するのが安上がりであり、比較的短い時間で達成できる。
【0029】
本発明の別の態様は、硬化形態にある少なくとも上述の組成物を含む物品、好ましくはエラストマー物品であって、好ましくは完全に又は実質的に非粘着性である物品に関する。
【0030】
好ましくは、そのような物品は、シール、ホース又はガスケットからなる群の中から選択することができる。物品は、当該技術分野で公知の方法を使用して押出成形又は金型成形することができる。これらの物品は、大気酸素の蒸気パージ時間を短縮又は排除することができる、熱風、マイクロ波/UHF、赤外線加熱及び/又は蒸気オートクレーブ内で硬化することができる一方、改善された熱老化特性を有する完全に硬化した表面を提供する。本発明はまた、上述の方法から得られる物品、好ましくはエラストマー物品に関する。
【0031】
さらに、本発明は、少なくとも1つのエラストマーを含む組成物の機械的特性、特に引張特性及び圧縮ひずみを改善するための、本発明による組成物の使用に関する。
【0032】
強化された引張特性は、好ましくは引張強度及び/又は破断伸び率である。
【0033】
本発明の他の主題及び特徴、態様及び利点は、以下の説明及び実施例を読み進むにつれ、一層より明確になるであろう。
【0034】
本明細書の以下の本文では、別途指示がない限り、値の範囲には、その範囲の限界値が含まれ、特に「~の間」及び「...~...の範囲」という表現にはその限界値が含まれる。
【0035】
また、本明細書で用いる「少なくとも1つ」という文言は、「1以上」という文言と同義である。
【0036】
組成物
本明細書において意図されるとき、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」又は「含有する(containing)」の意味を有し、これは、対象が1個又は複数の要素を「含む(comprises)」場合、言及されたもの以外の他の要素も対象に含まれ得ることを意味する。対照的に、対象が1個又は複数の要素「からなる(consist of)」と言われる場合、対象は列挙された要素に限定され、言及された要素以外の要素を含むことはできない。
【0037】
本発明によれば、「重合体」という用語は、単独重合体及び共重合体を包含し、「共重合体」という用語は、重合形態の少なくとも2種の異なる単量体から構成される重合体を指す。例えば、本開示による共重合体は、2種の異なる単量体を含む重合体であってもよく、ターポリマーは、3種以上の異なる単量体を含む重合体である。
【0038】
先に詳述したように、本発明による組成物は、
a)少なくとも1つの有機過酸化物と、
b)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
c)任意選択の遊離形態の硫黄と、
d)少なくとも1つの充填剤と
を含み、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が、10よりも大きい。
【0039】
前述の組成物に用いられる有機過酸化物は、好ましくは室温で固体である。
【0040】
本発明によれば、「室温」という文言は、15℃~30℃、好ましくは20℃~30℃の温度範囲を表す。
【0041】
有機過酸化物は、ジアルキルペルオキシド、ヘミペルケタール過酸化物(例えば、Luperox(登録商標)V10)、ジペルオキシケタール、モノペルオキシカーボネート、環状ケトンペルオキシド、ジアシルペルオキシド、オルガノスルホニルペルオキシド、ペルオキシエステル及び固体の室温安定性ペルオキシジカーボネートからなる群の中から選択することができる。
【0042】
好ましくは、有機過酸化物は、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、環状ケトンペルオキシド、モノペルオキシカーボネート、ペルオキシエステル、ジアシルペルオキシド及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはジアルキルペルオキシドである。
【0043】
これら有機過酸化物群すべての過酸化物名及び物性は、Jose Sanchez及びTerry N.Myersの「Organic Peroxides」;Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、第18巻、(1996)に見出すことができ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
例示的なジアルキルペルオキシド開始剤としては、以下のものが挙げられる:
ジ-t-ブチルペルオキシド;
t-ブチルクミルペルオキシド;
2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;
2,5-ジ(クミルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3;
4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノール;
4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノール;
4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノール;
4-メチル-4-(t-ブチルペルオキシ)-2-ペンタノン;
4-メチル-4-(t-アミルペルオキシ)-2-ペンタノン;
4-メチル-4-(クミルペルオキシ)-2-ペンタノン;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキシン-3;
2,5-ジメチル-2-t-ブチルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5-ジメチル-2-クミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5-ジメチル-2-t-アミルペルオキシ-5-ヒドロペルオキシヘキサン;
m/p-α,α-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン;
m-α,α-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン;
p-α,α-ジ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン;
1,3,5-トリス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5-トリス(t-アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5-トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ-t-アミルペルオキシド;
ジクミルペルオキシド;
t-ブチルペルオキシ-メタ-イソプロペニル-クミルペルオキシド;
t-アミルクミルペルオキシド;
t-ブチル-イソプロペニルクミルペルオキシド;
2,4,6-トリ(ブチルペルオキシ)-s-トリアジン;
1,3,5-トリ[1-(t-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン;
1,3,5-トリ-[(t-ブチルペルオキシ)-イソプロピル]ベンゼン;
1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノール;
1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノール;及びそれらの混合物。
【0045】
単独で又は本発明によって企図される他のフリーラジカル開始剤と併用され得る他のジアルキルペルオキシドは、式(I)により表される群から選択されるものである:
式中、R及びRは、独立してメタ位又はパラ位にあってもよく、同じであっても異なっていてもよく、水素又は1~6個の炭素原子の線状若しくは分岐状アルキルから選択される。ジクミルペルオキシド及びイソプロピルクミルクミルペルオキシドが例示的である。
【0046】
他のジアルキルペルオキシドとしては、以下のものが挙げられる:
3-クミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート;
3-t-ブチルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート;
3-t-アミルペルオキシ-1,3-ジメチルブチルメタクリレート;
トリ(1,3-ジメチル-3-t-ブチルペルオキシブチルオキシ)ビニルシラン;
1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル}1-メチルエチル]カルバメート;
1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブチルN-[1-{3(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート;
1,3-ジメチル-3-(クミルペルオキシ)ブチルN-[1-{3-(1-メチルエテニル)-フェニル}-1-メチルエチル]カルバメート。
【0047】
単独で又は本発明によって企図される他のフリーラジカル開始剤と併用され得る他のジアルキルペルオキシドは、以下の式(II)によって表されるチオキサントン群を含むジアルキルペルオキシドである:
式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、Rは、C1-6アルキル基又はフェニル基を表し、Rは、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基又は塩素原子を表し、nは0~2の整数である。
【0048】
ジペルオキシケタール開始剤の群において、好ましい開始剤には以下のものが挙げられる:
1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;
1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;
4,4-ジ(t-アミルペルオキシ)吉草酸-n-ブチル;
3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)酪酸-エチル;
2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン;
3,6,6,9,9-ペンタメチル-3-エトキシカルボニルメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナン;
4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)吉草酸-n-ブチル;
3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)酪酸-エチル;及びそれらの混合物。
【0049】
例示的な固体の室温安定性ペルオキシジカーボネートとしては、ジ(2-フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチル-シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、ジベンジルペルオキシジカーボネート、及びジ(イソボルニル)ペルオキシジカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の少なくとも1つの実施形態に従って使用され得る他の過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネート、及びOO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシ-スクシネートが挙げられる。
【0050】
例示的な環状ケトンペルオキシドは、一般式(III)、(IV)及び/又は(V)を有する化合物である。
式中、R~R10は、独立して、水素、C1~C20アルキル、C3~C20シクロアルキル、C6~C20アリール、C7~C20アラルキル及びC7~C20アルカリールからなる群から選択され、これらの基は、線状又は分岐状アルキル特性を含んでいてもよく、R~R10のそれぞれは、ヒドロキシ、C1~C20アルコキシ、線状又は分岐状C1~C20アルキル、C6~C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、窒化物及びアミドから選択される1つ以上の基で置換されていてもよく、例えば、架橋反応に使用される過酸化物混合物の全活性酸素含有量の少なくとも20%は、式(III)、(IV)及び/又は(V)を有する化合物に由来する。
【0051】
適切な環状ケトンペルオキシドのいくつかの例としては、
3,6,9,トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(又はメチルエチルケトンペルオキシド環状三量体)、メチルエチルケトンペルオキシド環状ダイマー、及び3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキサシクロノナンが挙げられる。
ペルオキシエステルの例示的な例としては、以下のものが挙げられる:
2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン;
過安息香酸t-ブチル;
t-ブチルペルオキシアセテート;
t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;
過安息香酸t-アミル;
t-アミルペルオキシアセテート;
ペルオキシイソ酪酸-t-ブチル;
3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート;
OO-t-アミル-O-水素-モノペルオキシスクシネート;
OO-t-ブチル-O-水素-モノペルオキシスクシネート;
ジ-t-ブチルジペルオキシフタレート;
t-ブチルペルオキシ(3,3,5-トリメチルヘキサノエート);
1,4-ビス(t-ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン;
t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート;
t-ブチル-ペルオキシ-(シス-3-カルボキシ)プロピオネート;
3-メチル-3-t-ブチルペルオキシ酪酸-アリル。
例示的なモノペルオキシカーボネートとしては、以下のものが挙げられる:
OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート;
OO-t-アミル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート;
OO-t-ヘキシル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート;
OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;
OO-t-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;
OO-t-ヘキシル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;
1,1,1-トリス[2-(t-ブチルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1-トリス[2-(t-アミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1-トリス[2-(クミルペルオキシ-カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン。
【0052】
例示的なジアシルペルオキシドとしては、以下のものが挙げられる:
ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(3-メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジデカノイルペルオキシド;ジラウロイルペルオキシド;
2,4-ジブロモ-ベンゾイルペルオキシド;
コハク酸過酸化物、
ジベンゾイルペルオキシド;
ジ(2,4-ジクロロ-ベンゾイル)ペルオキシド;及びそれらの混合物。
【0053】
PCT国際出願公開第9703961号パンフレット(1997年2月6日)に記載されている種類のイミド過酸化物も、使用に適していると考えられ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
好ましい過酸化物としては、以下のもののうちの1種以上が挙げられる:2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;t-ブチルクミルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;t-ブチルペルオキシ-イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;3,6,9,トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン;m/p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジ-t-ブチルペルオキシド;ジ-t-アミルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)吉草酸-n-ブチル;3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)酪酸-エチル;OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート;ポリエーテルポリ-t-ブチルペルオキシカーボネート;t-ブチルペルオキシベンゾエート;t-ブチルペルオキシアセテート;t-ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイルペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;及びジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。
【0055】
より好ましい過酸化物としては、以下のもののうちの1種以上が挙げられる:1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;t-ブチルペルオキシベンゾエート;t-ブチル-2-エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;t-ブチルクミルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;t-ブチルペルオキシ-イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;3,6,9,トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン;m/p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジ-t-ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)吉草酸-n-ブチル;3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)酪酸-エチル;OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート;ポリエーテルポリ-t-ブチルペルオキシカーボネート;t-ブチルペルオキシベンゾエート;ジベンゾイルペルオキシド;ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;及びジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。
【0056】
さらにより好ましい過酸化物としては、以下のもののうちの1種以上が挙げられる:1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;t-ブチルペルオキシベンゾエート;t-ブチル-2-エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;t-ブチルクミルペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3;t-ブチルペルオキシ-イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン;m/p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;m-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン;ジ-t-ブチルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)吉草酸-n-ブチル;3,3-ジ(t-ブチルペルオキシ)酪酸-エチル;OO-t-ブチル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート;OO-t-ブチル-O-イソプロピルモノペルオキシカーボネート;t-ブチルペルオキシベンゾエート;ジベンゾイルペルオキシド;及びジ(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド。
【0057】
最も好ましい過酸化物としては、以下のもののうちの1種以上が挙げられる:1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3、3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチル-2-エチルヘキシルモノペルオキシカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルペルオキシド、及びt-ブチルクミルペルオキシド、並びにそれらの混合物、好ましくは1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン。
【0058】
有機過酸化物は、好ましくはジアルキルペルオキシドからなる群から選択される。
【0059】
特に、有機過酸化物は、m/p-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(又は1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン)であり、具体的には商品名Luperox(登録商標)Fで販売されている。
【0060】
本発明による組成物は、ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、好ましくはジアルキルジチオホスフェート塩からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物をさらに含む。
【0061】
好ましくは、ジアルキルジチオホスフェート塩は、ジアルキルジチオホスフェート亜鉛塩、ジアルキルジチオホスフェートカルシウム塩及びジアルキルジチオホスフェート銅塩からなる群から選択され、より好ましくはジアルキルジチオホスフェート亜鉛である。
【0062】
ジアルキルジチオホスフェート塩は、好ましくは以下の式(VI)を有することができる。
(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、
・線状若しくは分岐状C-C30アルキルラジカル、特に線状若しくは分岐状C-C14アルキルラジカル、又は
・4~30個の炭素原子、特に4~10個の炭素原子を含む環状アルキル基を表し、
・M2+は、二価金属であり、好ましくは亜鉛、カルシウム及び銅からなる群から選択され、より好ましくはM2+は亜鉛である。)
【0063】
好ましくは、R、R、R及びRは、同一又は異なって、線状又は分岐状C-C30アルキルラジカル、特に線状又は分岐状C-C14アルキルラジカルを表す。
【0064】
より好ましくは、R、R、R及びRは、同一であり、線状又は分岐状C-C30アルキルラジカル、特に線状又は分岐状C-C14アルキルラジカルを表す。
【0065】
さらにより好ましくは、R、R、R及びRは、同一であり、線状C-C14アルキルラジカル、特に線状C-Cアルキルラジカルを表す。
【0066】
2+が亜鉛である場合、ジアルキルジチオホスフェート塩は、以下の式(VII)を有する。
式中、R、R、R及びRは、上述の通りである。
【0067】
ジアルキルジチオリン酸塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛は、単量体、ダイマー、トリマー又は重合体の形態であり得る。
【0068】
好ましくは、硫黄含有化合物は、ホスホロジチオ酸、OのO-ジ-C1-14-アルキルエステルの亜鉛塩、ホスホロジチオ酸のO,O-ビス(2-エチルヘキシル及びイソ-Bu及びイソ-Pr)混合エステルの亜鉛塩、並びにホスホロジチオ酸のO,O-ビス(2-エチルヘキシル及びイソ-Bu)混合エステルの亜鉛塩からなる群から選択され、より好ましくはホスホロジチオ酸のO,O-ジ-C1-14-アルキルエステルの亜鉛塩である。
【0069】
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比は、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、さらにより好ましくは0.8より大きい。
【0070】
好ましくは、前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比は、200未満、好ましくは50未満、さらにより好ましくは20未満である。
【0071】
好ましくは、前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比は、0.1~200の間、好ましくは0.3~20の間、好ましくは0.5~20の間、さらにより好ましくは0.8~20の間、より具体的には1~20の間に含まれる。
【0072】
好ましくは、前記少なくとも1つの有機過酸化物と少なくとも1つの硫黄含有化合物に含まれる硫黄の重量比は、1.5より大きく、好ましくは2.5より大きく、さらにより好ましくは4より大きい。
【0073】
好ましくは、前記少なくとも1つの有機過酸化物と少なくとも1つの硫黄含有化合物に含まれる硫黄の重量比は、1000未満、好ましくは250未満、さらにより好ましくは100未満である。
【0074】
組成物は、遊離形態の硫黄をさらに含んでもよい。
【0075】
本発明によれば、「遊離形態の硫黄」という文言は、硫黄がその元素形態で、すなわち遊離原子として組成物中に存在することを意味する。
【0076】
換言すれば、遊離形態の硫黄とは、他の原子に、特に共有結合を介して結合していない遊離原子としての硫黄を指す。
【0077】
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比は、0.15未満、好ましくは0.1未満である。
【0078】
組成物は、少なくとも1つの充填剤をさらに含む。
【0079】
本発明によれば、「充填剤」という用語は、すなわち、不活性な有機もしくは無機材料又はそれらの組合せを指す。
【0080】
充填剤は、水洗浄粘土、例えばバージェス粘土、ブラックカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、カオリン、液体飽和炭化水素、及びそれらの組合せからなる群の中から選択することができる。
【0081】
好ましくは、充填剤は、ブラックカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、液体飽和炭化水素及びそれらの組合せ、より好ましくはブラックカーボン及び液体飽和炭化水素からなる群の中から選択される。
【0082】
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比は、10より大きく、好ましくは12より大きく、より好ましくは15より大きい。
【0083】
本発明によれば、「10より大きい」という文言は、10の値が除外されることを意味する。
【0084】
本発明による組成物は、少なくとも1つのエラストマーをさらに含むことができる。
【0085】
換言すれば、本発明の主題は、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択の遊離形態の硫黄と、
e)少なくとも1つの充填剤と、
を含むエラストマー組成物であって、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が0.3よりも大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が、10よりも大きい、エラストマー組成物であり得る。
【0086】
本発明によれば、エラストマーは、すなわち、酸素の全面的又は部分的存在下で硬化可能である。
【0087】
エラストマーは、飽和型又は不飽和型であり得る。
【0088】
好ましくは、エラストマーは飽和型であり、不飽和のないシリコンゴム(Q)、メチル-ポリシロキサン(MQ)、フェニル-メチル-ポリシロキサン(PMQ)、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩素化ポリ(エチレン)(CM又はCPE)、ポリ(エチレン-プロピレン)(EPM)、フルオロエラストマー(FKM、FFKM)(例えば、Viton(登録商標)及びDyneon(登録商標))、並びにそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0089】
好ましくは、エラストマーは不飽和型であり、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、ビニルシリコーンゴム(VMQ)、フルオロシリコーン(FVMQ)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、部分水素化アクリロニトリルブタジエン(HNBR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ネオプレンゴム(CR)、ポリクロロプロペン、ブロモブチルゴム(BIIR)、クロロブチルゴム、及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0090】
好ましくは、不飽和型エラストマーは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)である。
【0091】
市販の予め混合されたエラストマーを本発明に従って使用してもよいことに留意されたい。これらのエラストマーは、添加剤、例えば、カーボンブラックフィラー、プロセスオイル、剥離剤、抗酸化剤及び/又は熱安定剤を含有してもよい。特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエラストマーは、これらの添加剤の1種以上を含むエラストマーマスターバッチの一部である。例えば、エラストマーマスターバッチは、少なくとも1つのエラストマーと、1種以上の添加剤であって、カーボンブラック、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのプロセスオイル(例えば、Primol(登録商標)352などの液体飽和炭化水素)、少なくとも1つの抗酸化剤(例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、Stanguard(登録商標)TMQ Powderとも呼ばれるCAS番号26780-96-1)、少なくとも1つの剥離剤、少なくとも1つの熱安定剤、及びそれらの組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤と、を含み得るか、本質的にそれらからなり得るか、又はそれらからなり得る。
【0092】
好ましくは、有機過酸化物は、本発明の組成物中に、0.1phr~300phr(ゴム100部当たりの部数)、好ましくは0.1phr~20phr、好ましくは0.2~10phr、好ましくは0.2phr~5phr、好ましくは0.2phr~2phr、好ましくは0.2phr~1phr、より好ましくは0.2phr~0.6phrの量で存在する。
【0093】
硫黄含有化合物は、本発明の組成物中に、好ましくは、3.3phr(ゴム100部当たりの部数)未満の濃度で存在し、3.3phrの値は除外される。
【0094】
好ましくは、硫黄含有化合物は、本発明の組成物中に、0.1~3.2phr、好ましくは0.1~3phr、好ましくは0.1~2.5phr、好ましくは0.5~2.5phr、より好ましくは1~2.5phrの範囲の濃度で存在する。
【0095】
好ましくは、有機過酸化物は、組成物中に0.2~0.6phrの量で存在し、硫黄含有化合物は、組成物中に0.5~2.5phrの量で存在する。
【0096】
硫黄含有化合物由来の硫黄は、好ましくは、0.6phr(ゴム100部当たりの部数)未満の濃度で組成物中に存在し、0.6phrの値は除外される。
【0097】
好ましくは、硫黄含有化合物由来の硫黄は、本発明の組成物中に、0.02~0.6phr、好ましくは0.02~0.5phr、好ましくは0.1~0.5phr、より好ましくは0.2~0.5phrの範囲の濃度で存在する。
【0098】
組成物は、0~0.5phr、好ましくは0~0.4phr、より好ましくは0~0.3phr、より好ましくは0~0.2phr、さらにより好ましくは0~0.1phrの範囲の量の遊離形態の硫黄をさらに含んでもよい。
【0099】
換言すれば、組成物は、0~0.5phrの量で存在し得る遊離形態の硫黄を任意選択で含む。
【0100】
さらに換言すれば、組成物が遊離形態の硫黄を含む場合、遊離形態の硫黄の濃度は0.5phr以下、好ましくは0.4phr未満、より好ましくは0.3phr未満、さらにより好ましくは0.1phr未満である。
【0101】
一実施形態によれば、本発明は、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択の遊離形態の硫黄と、
e)少なくとも1つの充填剤と、
を含むエラストマー組成物であって、
有機過酸化物が、0.1phrと20phrの間に含まれる濃度で存在し、
硫黄含有化合物が、3.3phr未満の濃度で存在し、
遊離形態の硫黄が、0~0.5phrの量で存在し、
充填剤が、少なくとも10phrの量で存在する、エラストマー組成物に関する。
【0102】
本発明による組成物は、少なくとも1つのHALS(ヒンダードアミン光安定剤)化合物をさらに含んでもよい。
【0103】
HALS化合物は、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]](特に、Chimassorb(登録商標)944という名称で販売されているもの)、[セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)](特に、Tinuvin(登録商標)770という名称で販売されているもの)、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0104】
本発明による組成物は、少なくとも1つの抗酸化剤、好ましくはフェノール系抗酸化剤をさらに含んでもよい。
【0105】
フェノール系抗酸化剤は、好ましくは、2,6-ジオクタ-デシル-p-クレゾール、2,6-ジ-ターシャリ-ブチル-4-メチルフェノール;2,4,6-トリ(α-メチルベンジル)フェノール;2,4-ジ-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール;2,6-ジ-イソプロピル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-ターシャリーアミル-4-メチルフェノール;2,4,6-トリ-ターシャリーアミルフェノール;2,6-ジ-ターシャリーアミル-4-ターシャリーブチルフェノール;2,4,6-トリ-ターシャリーブチルフェノール;2,4,6-トリ-イソプロピルフェノール;2,6-ジ-ドデシル-p-クレゾール;2,6-ビス(1-メチルヘプタデシル)-p-クレゾール;6-ドデシル-2-(1メチルヘプタデシル)-p-クレゾール;2-ターシャリーブチル-6-(1メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0106】
さらに、フェノール系抗酸化剤として、分子内に2個を超えるフェノール基を有する複合ヒンダードフェノール類を有効に利用することができる。
【0107】
したがって、フェノール系抗酸化剤は、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(エチルコーポレーション社から「イオノックス330」として市販されている);テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tertブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン(Geigy Chemical Co.社から「イルガノックス1010」として市販されている);3-メチル-6-tertブチルフェノールとクロトンアルデヒドとの3:1(モル基準)縮合物(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ社から「トパノールCA」として市販されている)からなる群の中から選択することもできる。
【0108】
本発明による組成物は、少なくとも1つのフェノール系抗酸化剤として、好ましくは、2,6-ジオクタ-デシル-p-クレゾールを含む。
【0109】
組成物は、好ましくは、ビス-、トリ-もしくはそれ以上のポリマレイミド、又はビス-、トリ-もしくはそれ以上のポリシトラコンイミド、好ましくはHVA-2(N,N’-m-フェニレンジマレイミド)などを含まない。
【0110】
組成物は、メタクリル酸アリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロイルプロパントリメタクリレート(SR-350)、トリメチロイルプロパントリアクリレート(SR-351)、ジアクリレート亜鉛及びジメタクリレート亜鉛からなる群から好ましくは選択される少なくとも1つの助剤をさらに含むことができる。
【0111】
組成物は、プロセスオイル(例えば、脂肪族プロセスオイル)、加工助剤、顔料、染料、粘着付与剤、ワックス、補強助剤、UV安定剤、発泡剤、スコーチ防止剤、活性剤、オゾン劣化防止剤及び共助剤(例えば、サートマー社によって市販されているもの)からなる群から選択される任意選択の添加剤を含むことができる。配合物の成分及びそれらのそれぞれの量は、配合物が酸素の全面的又は部分的存在下で(例えば、熱風炉もしくは熱風トンネル、又は蒸気オートクレーブを使用して)前記組成物を硬化させることができるように選択される。
【0112】
スコーチ防止剤は、有機ヒドロペルオキシド、ビニルモノマー、亜硝酸塩、芳香族アミン、フェノール化合物、メルカプトチアゾール化合物、ニトロキシド、硫化物、ヒドロキノン及びジアルキルジチオカルバメート化合物からなる群から選択することができる。
【0113】
本発明による組成物は、
a)ジアルキルペルオキシドからなる群から選択される少なくとも1つの有機過酸化物と、
b)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物、特に式(VI)、好ましくは式(VI)(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、線状若しくは分岐状C-C30アルキルラジカル、特に線状若しくは分岐状C-C10アルキルラジカル、より具体的には線状C-C10アルキルラジカル、さらにより具体的には線状C-Cアルキルラジカルを表す)に該当するジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
c)好ましくは、ブラックカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、液体飽和炭化水素及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの充填剤、より好ましくは、ブラックカーボン及び液体飽和炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つの充填剤と、
d)任意選択の遊離形態の硫黄と、
を好ましくは含み、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、さらにより好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が、10よりも大きい。
【0114】
好ましくは、エラストマーは不飽和型であり、特にエラストマーはエチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)に該当する。
【0115】
本発明による組成物は、好ましくは以下を含み:
a)少なくとも1つの不飽和型エラストマー、
b)ジアルキルペルオキシドからなる群から選択される少なくとも1つの有機過酸化物、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物、特に式(VI)、好ましくは式(VI)(式中、R、R、R及びRは、同一又は異なって、線状又は分岐状C-C30アルキルラジカル、特に線状又は分岐状C-C10アルキルラジカル、より具体的には線状C-C10アルキルラジカル、さらにより具体的には線状C-Cアルキルラジカルを表す)に該当するジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物、
d)少なくとも1つの充填剤、
e)遊離形態の硫黄が、0~0.5phrの範囲の量で存在し、
少なくとも1つの硫黄含有化合物が、前記組成物中に3.3phr未満の量で存在し、有機過酸化物は、0.1phr~20phrの間に含まれる濃度で存在し、
充填剤が、少なくとも10phrの量で存在する。
ここで、組成物は、酸素の全面的又は部分的存在下で硬化可能である。
【0116】
好ましくは、硫黄含有化合物は、本発明の組成物中に、0.1~3.2phr、又は0.1~3phr、又は0.1~2.5phr、1~2.5phrの範囲の濃度で存在する。
【0117】
好ましくは、不飽和型エラストマーは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)である。
【0118】
方法
本発明はまた、物品、好ましくはエラストマー物品を製造する方法であって、酸素の全面的又は部分的存在下で組成物を硬化させる工程を含み、前記組成物が、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択の遊離形態の硫黄と、
を含み、
前記組成物において、前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.8より大きく、
前記組成物において、遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満である、方法に関する。
【0119】
好ましくは、この方法は、前述の組成物を硬化させる工程を含む。
【0120】
好ましくは、本方法で硬化された組成物は、少なくとも1つの充填剤をさらに含み、前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物との重量比は、10より大きい。
【0121】
本明細書で使用される場合、「硬化」という用語は、強化又は硬化重合体を形成するための重合体の架橋を指す。硬化工程は、任意の従来の方法、例えば、熱風、蒸気、又は熱成型などで実施してもよい。
【0122】
この方法は、本明細書に記載の組成物を押出加工して未硬化プリフォーム物品を形成することと、未硬化プリフォーム物品を硬化させることとを含んでもよい。前記組成物を空気の存在下で押出加工して、未硬化プリフォームを形成してもよい。
【0123】
少なくとも1つの実施形態において、プリフォームは、蒸気オートクレーブを使用して硬化される。
【0124】
好ましくは、押出形材は、押出機から直接空気の存在下にあるマイクロ波ゾーン内において加熱され、次いで、より長い加熱空気トンネルを通過してエラストマー形材の硬化を完了する。
【0125】
少なくとも1つの他の実施形態では、プリフォームはマイクロ波を使用せずに硬化される。
【0126】
物品を製造するための方法は、熱風トンネル、又は任意の他の公知の装置で実行されてもよい。
【0127】
好ましくは、物品を製造するための方法は、連続的に構成され得る。連続的な製造は、より小さい部品をつなぎ合わせる必要のあるシールとは対照的に、連続的なシールなどの連続的な物品の製造を斟酌してもよい。
【0128】
本発明の別の態様は、シール、ホース又はガスケットからなる群から選択される、物品、好ましくはエラストマー物品を製造するための上述の方法に関する。
【0129】
本発明の別の態様は、ホースの製造方法に関する。この方法は、一定の長さのホースを硬化させずに、上述の組成物から一定の長さのホースを押出加工することを含んでもよい。一定の長さの未硬化ホースを収集後に、未硬化ホースを蒸気に曝露する等によって硬化させてもよい。
【0130】
この方法は、前述の通りの、少なくとも1つのエラストマー、有機過酸化物、及び硫黄含有化合物、並びに任意選択の硫黄、そして最終的に前記充填剤を、別々に又は一緒に任意の順序で混合して、前述の通りの組成物を提供することをさらに含んでもよい。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、硬化工程の前、後及び/又は最中に、前述の組成物に、1種以上の従来の添加剤、例えば、好ましくはフェノール系抗酸化剤のような抗酸化剤、脂肪族プロセスオイル、加工助剤、顔料、染料、粘着付与剤、ワックス、補強助剤、UV安定化剤、発泡剤、スコーチ防止剤、活性剤、オゾン劣化防止剤又は共助剤も添加してもよい。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、物品、好ましくはエラストマー物品を製造する方法は、酸素の全面的又は部分的存在下で組成物を硬化させることを含み、前記組成物が、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択の遊離形態の硫黄と、
e)存在する場合に少なくとも10phrの量である任意選択の少なくとも1つの充填剤と、
を含み、
有機過酸化物が、0.1phr~20phrの間に含まれる濃度で存在し、
硫黄含有化合物が、本発明の組成物中に3.3phr未満の濃度で存在し、
遊離形態の硫黄が、0~0.5phrの量で存在する。
【0133】
物品
本発明の別の主題は、硬化形態で前述の組成物を含む物品であって、好ましくは完全に又は実質的に非粘着性の物品に関する。
【0134】
好ましくは、物品は、7~9.9又は10の間、好ましくは8~9.9又は10の間、より好ましくは9~9.9又は10の間の表面粘着性を有する。
【0135】
完全に非粘着性である物品は、10の表面粘着性を有し、最も望ましい。
【0136】
表面粘着性を測定するための方法が本明細書で提供され、ティッシュペーパー試験と呼ばれる。
【0137】
物品は、好ましくは非コーティング型である(すなわち、液体コーティングではない)。
【0138】
本発明の別の態様によれば、物品は前述の方法に従って製造される。
【0139】
この方法は、高分子量固体重合体を溶媒に溶解し、次いで溶媒を除去して固体エラストマー構造を形成し、次いでこれを(例えば、織物を含浸させる手段を提供するために)別個の工程で熱風硬化させることを含んでもよい。この商業的使用の一例は、自動車用エアバッグの製造である。
【0140】
さらなる例としては、現場硬化型固体エラストマーの自動車及びトラックのヘッドガスケットが挙げられ、この場合、溶媒及び高分子量重合体の液体溶液、又は重合体の混合物が硬化剤と共に金属表面に塗布される。溶媒を除去して、金属部品上に複合構造の固体高分子量重合体を残す。次いで、金属部品上のこの固体ゴムガスケットを加熱して重合体を架橋させることができる。いずれの場合も、溶媒は、固体重合体又はエラストマーから実質的に又は好ましくは完全に除去する必要がある。固体エラストマーから溶媒が除去されたら、架橋反応を開始するために熱を加えて部品を硬化させることができる。これは、硬化プロセスが溶媒除去と同時に起こる塗料、コーティング及びワニスとは対照的である。
【0141】
物品は、好ましくは、シール、ホース又はガスケットからなる群から選択される。
【0142】
物品は、好ましくは前述の方法に従って製造される。
【0143】
使用
本発明はまた、
a)少なくとも1つの有機過酸化物と、
b)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
c)任意選択の遊離形態の硫黄と、
d)少なくとも1つの充填剤と、
を含む組成物の使用であって
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が0.15未満、好ましくは0.1未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が10より大きく、
少なくとも1つのエラストマーを含む組成物の機械的特性、特に引張特性及び圧縮ひずみを改善するための、使用に関する。
【0144】
好ましくは、組成物は前述の通りである。
【0145】
強化された引張特性は、好ましくは引張強度及び/又は破断伸び率である。
【0146】
好ましくは、エラストマーは不飽和型である。
【0147】
好ましくは、エラストマーは、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)に該当する。
【0148】
本発明の別の主題は、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択の遊離形態の硫黄と、
e)少なくとも1つの充填剤と、
を含む組成物の使用であって、
前記少なくとも1つの有機過酸化物と前記少なくとも1つの硫黄含有化合物の重量比が、0.3より大きく、好ましくは0.5より大きく、より好ましくは0.8より大きく、
遊離形態の硫黄と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が、0.15未満、好ましくは0.1未満であり、
前記少なくとも1つの充填剤と前記少なくとも1つの有機過酸化物の重量比が10より大きく、
物品、好ましくはエラストマー物品、さらにより好ましくはシール、ホース又はガスケットからなる群から選択される物品の製造のための、使用である。
【0149】
一実施形態によれば、本発明の主題はまた、
a)少なくとも1つのエラストマーと、
b)少なくとも1つの有機過酸化物と、
c)ジアルキルホスホロジチオ酸及びその塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛からなる群の中から選択される少なくとも1つの硫黄含有化合物と、
d)任意選択で、遊離形態の硫黄と、
e)少なくとも1つの充填剤と、
を含む組成物の使用であって、
有機過酸化物が、0.1phr~20phrの間に含まれる濃度で存在し、
硫黄含有化合物が、本発明の組成物中に3.3phr未満の濃度で存在し、
遊離形態の硫黄が、0から0.5phrの量で存在し、
充填剤が少なくとも10phrの量で存在し、
物品、好ましくはエラストマー物品、さらにより好ましくはシール、ホース又はガスケットからなる群から選択される物品の製造のための、使用に基づく。
【0150】
以下の実施例は、本発明の例示として与えられる。
【0151】
実施例
RPAレオメータ試験に使用される略語
ML(dN-m)は、RPAレオメータ試験における最小トルク(単位はデシニュートンメートル)であり、試験温度でのエラストマー組成物の粘度に関係する。
【0152】
MH(dN-m)は、RPAレオメータ試験における最大トルク(単位はデシニュートンメートル)であり、得られる架橋の最大量に関係する。
【0153】
MH-ML(dN-m)は、相対的架橋度(単位はデシニュートンメートル)である
【0154】
Ts1(分)は、最小トルクから1dN-m増加するのに要する時間(単位は分)であり、
【0155】
Ts2(分)は、最小トルクから2dN-m増加するのに要する時間(単位は分)であり、
【0156】
Tc50(分)は、最小トルクからMH-ML(dN-m)硬化状態の50%に達する時間(単位は分)である。
【0157】
Tc90(分)は、最小トルクからMH-ML(dN-m)硬化状態の90%に達する時間(単位は分)である。
【0158】
実施例で使用される略語
Luperox(登録商標)Fは、アルケマ社から入手可能な1,3(4)-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼンである。
【0159】
Vultac(登録商標)5は、t-アミルフェノールジスルフィド重合体、ポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)とも呼ばれるアリールポリスルフィド重合体/オリゴマーであり、アルケマ社から入手可能である。
【0160】
MBTSは、メルカプトベンゾチアゾールジスルフィドとも呼ばれるベンゾチアジルジスルフィドであり、R.T.Vanderbilt社製のAltax(登録商標)とも呼ばれる。
【0161】
ZDDPは、ホスホロジチオ酸のO,O-ジ-C1-14-アルキルエステルの亜鉛塩である。
【0162】
ZDTPは、ホスホロジチオ酸のO,O-ビス(2-エチルヘキシル及びイソ-Bu及びイソ-Pr)混合エステルの亜鉛塩である。
【0163】
ZBOPは、ホスホロジチオ酸のO,O-ビス(2-エチルヘキシル及びイソ-Bu)混合エステルの亜鉛塩である。
【0164】
試験及び手順
ゴムの混合及びゴムシート作製の手順
ゴムの混合及び熱風硬化用ゴムシートの作製には、以下の手順を用いた。室温の油又は加熱された油で作動する能力を備えたジャケット付きの50ml容量のボウルを有するブラベンダー・プラスチコーダー(登録商標)を使用した。ミキサーには取り外し可能なシグマ型ブレードを装備した。予め混合されたエラストマーにより提供される比重を用いて、ゴムの小さな条片を20~25rpmの混合速度でボウルに徐々に添加した。ブラベンダー・プラスチコーダー(登録商標)のボウルに添加されたゴムの全量は、体積48mlのゴムを提供するのに必要な重量に相当し、その結果、ミキサーは約50mlの体積容量を有するので、過酸化物硬化剤をゴムに添加するのに十分な体積があった。
【0165】
この48mlのゴムから、2枚の小さなゴムの条片(約4グラム又は5ml以下に相当)を予備として保管した。残りのゴムすべてをボウルに徐々に添加した。すべてのゴムをミキサーに添加し、ゴムがボウル内を流動するようになったら、ミキサーのrpmを15rpmに下げて、この実験用に最小表示3桁の精密天秤上で小さなディキシー(登録商標)カップに予め秤量しておいた過酸化物配合物を混合ゴムに徐々に添加した。残りの過酸化物をすべて確実に混合ゴムに含めるために、予備の2枚の小さなゴムの条片を使用して、ミキサーのV字形の金属部分から粉末を拭き取った。ゴムの条片に付着したこの粉末と、残りの2枚のゴムの条片をミキサーに導入した。
【0166】
次いで、rpmを元の25rpmに上げて3分間置いた。この時間経過後、ミキサー速度を10rpmに下げ、ボルトを外してミキサーヘッドを取り外した。ブレードがもはや回転しなくなってから、ブレードの周りのゴムを安全に除去し、マイラー(登録商標)ポリエステルのシート上に置いた。混合室の内側中空部分内のミキサーブレードのヘッドの位置に少量のゴムがあり、これは最後に除去した。ミキサーヘッドをボルトで再度組み付け、ミキサーモータを再び20rpmで始動させた。混合室内に捕捉され最後に除去されたゴムを最初に回転ブレードに添加した後に、ブレードから除去したゴムを添加した。こうすることで、エラストマーのより均一な混合がもたらされた。次いで、rpmを25rpmに上げ、3分間保持した。この後、ミキサー速度を10rpmに設定し、ボルトを外してミキサーヘッドを取り外した。一旦取り外すと、ミキサーブレードの動きは停止し、再び安全にミキサーのボウル及びブレードからすべてのゴムを除去した。
【0167】
次いで、温かいゴムを隙間のないボールに成形し、2枚のマイラー(登録商標)ポリエステルシートの間に入れた。このサンドイッチを加温油圧駆動のCarver社製プレス機内に載置した。このプレス機は使用するエラストマー及び過酸化物硬化剤に応じて室温~60℃に設定することができる。ゴムのボールを2枚の厚手のマイラー(登録商標)ポリエステルシートの間で平らに加圧成型した。ニトリル手袋を着用し、プレス機を開けて、平らにされたゴムを含むマイラー(登録商標)ポリエステルシートサンドイッチを取り出した。一番上のシートを除去し、ゴムを円筒形に巻いて管にした。これを再び挟んで、もう一度平らにした。シートを元の巻取り方向に対して90度でもう一度巻いて、再度平らにした。これを3回繰り返し、厚さが約1/8インチになるように注意して平らにした。このサンドイッチを実験台の上に置き、金属シートで覆ってゴムを放冷させた。次いで、これを取り出し、密封したポリエチレン袋に保存した。これらのシートをハサミ又は鋭利な金属円形パンチを使用して切り出して、レオメータ硬化評価用の未硬化ゴムの小さな平坦な円形シート、及び後述する「ティッシュペーパー試験」を使用する熱風炉試験用の正方形の平坦なシートを作製した。
【0168】
ティッシュペーパー試験
以下の手順を用いて、熱風炉中で硬化後のゴムシートの表面粘着を試験した。この手順は、熱風炉内で硬化されたゴムシートの表面粘着性に対する「ティッシュペーパー試験」とも呼ばれる。
【0169】
未硬化ゴムの平坦なシートを厚さ1/8インチ、幅2インチ及び長さ3インチの寸法で作製し、205℃に設定した予熱熱風炉内に15分間慎重に吊り下げた。シートを金属ラックから金属クランプによって炉内に吊り下げて、シートの全側面を熱風に曝露した。15分の硬化後、ゴムシートを速やかに取り出し、アルミニウム箔で覆われた厚紙片の上に置いた。これを直ちにクリネックス(登録商標)ティッシュペーパーで覆い、直ちにゴム表面全体にかなりしっかりとした圧力を手で加えた後、1800グラムの重りを5分間印加した。ゴムを室温に冷却した後、柔らかいティッシュペーパーを慎重に除去し、ゴム表面に付着している可能性のあるティシュペーパー繊維がないかゴム表面を調べた。非常に多くのティシュペーパー繊維が付着している場合、これは表面硬化が不十分であること、又は表面粘着性が高いことを示している。
【0170】
本明細書で使用される場合、表面粘着数=(ペーパー繊維のない表面の%÷10)である。表面粘着数は、10~0の範囲であり得る。ティシュペーパー繊維を含まない完全に非粘着性の硬化ゴム表面の評点は10である。ティシュペーパー繊維で完全に覆われた非常に硬化が不十分なゴム表面は、0と評価される。表面の90%にティシュペーパー繊維が付着していない場合、評点は9であり、表面の70%にティシュペーパー繊維が付着していない場合、評点は7である、など。
【0171】
レオメータ手順
以下の手順を用いて、ダイレオメータを作動させ、RPA(ゴム加工性解析装置)による評価を行った。アルファテクノロジーズ社製MDRレオメータについては、試験方法ASTM D5289-12「ゴム特性の標準試験方法-ローターレス硬化測定装置を用いた加硫」を使用した。試験方法ASTM D6204は、硬化剤系に適した硬化温度、例えば以下の例では185℃で、0.5度又は1.0度の弧度及び100cpmの周波数の振動で使用した。
【0172】
レオメータ評価を行う場合、(最終化合物の密度に応じて)約5~6グラムのエラストマーを使用して、レオメータの上側ダイ及び下側ダイを完全に充填した。上記の手順で形成した加圧成形シートから未硬化ゴムを切り出した。ゴムから直径約1.25インチの小さな円板を切り取り、2枚のDartek(登録商標)シートの間に入れた。次いで、このサンドイッチを、ASTM D5289に準拠して試験するためにレオメータ内に載置した。
【0173】
硬化後の動的試験のためのASTM D6601に準拠して、3度の弧度で歪を印加する装置の応力緩和機能を用いるRPAによる試験を応用して、架橋エラストマーがガスケット又はシールとして機能する能力を測定した。この目的は、標準NF ISO815に準拠した圧縮率試験と非常に類似していた。損失弾性率又はS’(dN-m)を時間に対して数分間追跡する。弾性率の損失係数は、圧縮ひずみ率の性能を反映する。硬化ゴム試料の圧縮率が最低値であると、185℃以上の試験温度において1分間の損失弾性率又はS’(dN-m)が最も低いことになる。
【0174】
圧縮ひずみ率手順
圧縮ひずみの評価には、以下の手順を用いた。圧縮ひずみ率の標準化された試験方法はNF ISO 815及び/又はASTM D395であり、これらは常温及び高温適用試験に適している。具体的には、実施例1では、NF ISO 815を使用し、試験用試料を最初に190℃で硬化させ、Tc90+8分の硬化時間を使用して高さ6.3±0.3mm及び直径13±0.5mmの円筒を形成し、次いで試験片をNF ISO 815装置内に載置して150℃で24時間かけて25%圧縮した。この時間の後、試料を取り出し、常温で木板上に30分間置いた後、高さの変化を測定した。
【0175】
引張試験手順
引張試験には以下の手順を用いた。引張特性は、NF ISO 37基準及び/又はASTM D412に準拠して測定した。まず、厚さ1.5mmのシートを空気圧プレス内において加圧下で硬化させた。硬化の条件は、190℃でMDR又はRPAレオメータで試験した場合の化合物の90%硬化時間であるTc90(分)の結果から決定した。硬化温度は190℃であり、硬化時間はTc90+8分であった。次いで、NF ISO 37及び/又はASTM D412によって指定された適切なダイを使用して、1.5mmの硬化シートからダンベルを切り出した。最後に、インストロン(登録商標)5565引張試験機を使用してダンベルに対して引張試験を行った。200mm/分の速度を使用した。
【実施例
【0176】
表1のEDPMマスターバッチエラストマー配合物及び表2の硫黄加硫「対照」配合物を調製した。表3は、EPDMマスターバッチ配合物中の様々な硬化系を試験した7回の試料実行の概要を提供する。
【0177】
試料番号1は、表2に記載の硫黄加硫「対照」配合物を使用した。全硬化剤を13.25phr用いた場合、エラストマーを205℃の熱風炉中で15分間硬化させた後、表面粘着性は観察されなかった(10段階で10の評点)。ただし、観察された圧縮ひずみ率は93%とかなり不良であった。100%の圧縮ひずみ率は、熱及び応力下での全体的かつ完全な変形を表すので、93%という値は、シール用途にとってほぼ完全な破損であり、このような樹脂が硫黄加硫に供される場合、熱老化特性が不良であることを示している。
【0178】
試料番号2は、EPDMマスターバッチ中の硬化系として、従来の有機過酸化物Luperox(登録商標)Fを3.2phr使用した。この標準的な過酸化物で硬化したEPDMマスターバッチは、かなりの表面粘着性を示し、205℃及び15分の熱風炉硬化プロセス後の評価は、可能な10段階で2.8という非常に低いものであったが、圧縮ひずみ率の値は24%と優れていた。さらに、試料番号2は、試料番号1よりも低い破断伸び率(%)及び引張破断強さを示している。
【0179】
試料番号3は、有機スルフィド化合物、特にポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)とベンゾチアジルジスルフィドとの混合物を含有する有機過酸化物配合物を使用した。試料番号3は、試料番号2よりも良好な表面粘着性を示し、それは10段階で9.3に評価されているが、引張破断強度は低く、圧縮ひずみ率は高く、その値は上昇している。その結果、試料番号3は、劣った機械特性を示している。
【0180】
試料番号4はまた、試料番号3よりも高い濃度の有機過酸化物と、有機スルフィド化合物の同じ混合物、すなわちベンゾチアジルジスルフィド及びポリ(t-アミルフェノールジスルフィド)とを含有する有機過酸化物配合物を使用した。結果が実証しているのは、試料番号4も、試料番号2よりも良好な表面粘着性を示し、その値は10段階で9.8に評価され、引張破断強度及び破断伸び率(%)がわずかに良好であることである。ただし、試料番号4の引張特性よりも試料番号1の引張特性のほうが依然として優れている。
【0181】
試料番号5は、本発明による配合物であり、有機過酸化物Luperox(登録商標)F、硫黄当量で0.179phrのジアルキルジチオリン酸亜鉛型ZDDPを含有し、遊離硫黄を含有しない。この試料は、低い表面粘着性を示し、それは試料番号3で測定されたものよりもほんのわずかに低い、また試料番号1及び3で測定されたものよりも低い圧縮ひずみ率を示している。さらに、その引張特性は、試料番号2の引張特性を上回り、より良好な破断伸び率と共により高い引張破断強度を示している。これは、試料番号5が試料番号1~4よりも全体的に良好な一連の機械的特性を示すことを意味する。その上、試料番号5で使用された配合物の硬化時間は、試料番号1~4よりも短い。
【0182】
試料番号6もまた、本発明による配合物であり、有機過酸化物Luperox(登録商標)F、硫黄当量で0.179phrのジアルキルジチオリン酸亜鉛型ZDTPを含有し、遊離硫黄を含まない。この試料は、低い表面粘着性を示し、それは試料番号3で測定されたものよりもほんのわずかに低い、また試料番号1~3で測定されたものよりも低い圧縮ひずみ率を示している。さらに、引張特性は、試料番号1及び2の引張特性を上回り、より良好な破断伸び率と共により高い引張破断強度を示している。
【0183】
試料番号7もまた、本発明による配合物であり、有機過酸化物Luperox(登録商標)F、硫黄当量で0.179phrのジアルキルジチオリン酸亜鉛型ZBOPを含有し、遊離硫黄を含有しない。この試料は、低い表面粘着性を示し、それは試料番号3で測定されたものよりもほんのわずかに低い、また試料番号1~3で測定されたものよりも低い圧縮ひずみ率を示している。特に、圧縮ひずみ率は、試料番号2の圧縮ひずみ率よりも顕著である。さらに、引張特性は、試料番号1及び2の引張特性を上回り、より良好な破断伸び率と共により高い引張破断強度を示している。したがって、この結果は、本発明の配合物が、試料番号1及び2を得るために使用される配合物よりも良好な物理的特性、特に機械的特性をもたらすという事実を具体化している。さらに、硬化時間も短縮されている。
【国際調査報告】