(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】低粘度高熱伝導球状アルミナの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/027 20220101AFI20231019BHJP
【FI】
C01F7/027
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576336
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2022114075
(87)【国際公開番号】W WO2023040599
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111076258.6
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519365506
【氏名又は名称】江蘇聯瑞新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】李 暁冬
(72)【発明者】
【氏名】姜 兵
(72)【発明者】
【氏名】趙 歓
(72)【発明者】
【氏名】劉 雪
(72)【発明者】
【氏名】胡 世成
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB02
4G076BA38
4G076BD02
4G076CA03
4G076CA40
4G076DA20
4G076FA02
(57)【要約】
【課題】
本発明は低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法を開示する。本発明が提供する製造方法は、角状α-アルミナ粉末を原料とし、まず、溶融球状化により球状αーアルミナ粉末を得て、次に得られた球状α-アルミナ粉末を高温で焼成して、低粘度高熱伝導球状α-アルミナを得ることである。本発明は、焼成温度と時間をコントロールすることにより、アルミナの熱伝導率を向上させながら、球状化率やα相を変化させず、アルミナをフィラーとした熱伝導フィルムなどの製品の粘度に影響を与えない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法であって、
角状α-アルミナ粉末を2100~2400℃で溶融球状化して、球状α-アルミナを得るステップ1と、
前記球状α-アルミナ粉末を1000~1200℃で1~6時間焼成して、低粘度高熱伝導球状α-アルミナを得るステップ2と、を含むことを特徴とする低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法。
【請求項2】
ステップ1における前記角状α-アルミナ粉末の平均粒子径は、45μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ1における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒子径は、45~120μmであることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ1における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒子径が45μm、70μm、90μm又は120μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ1における前記角状α-アルミナ粉末は純度99.8%以上のα-Al
2O
3粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ1における前記溶融球状化の温度が2200~2300℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ2における前記焼成の温度は1000~1100℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ2における前記焼成はトンネルキルンで行うことを特徴とする請求項1又は7に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が45μmである場合、焼成温度は1000℃であり、焼成時間は6時間であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が70μm或は90μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は2時間であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項11】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が120μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は1時間であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項12】
ステップ1における前記溶融球状化の温度が2200℃又は2300℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項13】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が45μmである場合、焼成温度は1000℃であり、焼成時間は6時間であることを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項14】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が70μm又は90μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は2時間であることを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項15】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が120μmである場合、焼成温度が1100℃であり、焼成時間は1時間であることを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項16】
ステップ1における前記溶融球状化の温度が2200℃又は2300℃であることを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月14日に中国特許庁に出願された、出願番号が202111076258.6であり、発明名称が「低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は引用によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱伝導フィラーの調製技術分野に属し、具体的に、低粘度高熱伝導球状α-アルミナの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
科学技術の急速な発展に伴い、ノートパソコンなどの電化製品は薄く且つ高性能化になりがちであり、近年の新エネルギー自動車の活発な開発を含め、付設の電源製品にも多くの新しい変化があり;電池の最も基本的な使用から電化製品の充電まで、これらの電源製品には電源内部の発熱である特性があり;電子機器の高出力化に伴い、放熱能力に対する要求も高まり、一般的に使用されている熱伝導フィラーの熱伝導率に対する要求もますます高くなっている。
【0004】
球状アルミナは最も多く使用されている熱伝導フィラーとして、コストパフォーマンスが高い。中国特許出願CN113184886Aは、高熱伝導球状アルミナの調製方法及び製品を開示し、重量比で添加剤を一般的な球状アルミナの中に加え、均一に混合して一次製品が得られ、次に、一次製品を高温炉に入れて、1250~1600℃の温度条件下で8~22時間焼成した後、冷却して、中間生成製品が得られ、最後に中間生成製品を粉砕機に投入して粉砕分散し、α相含有量が100%の高熱伝導球状アルミナ製品を調製して得られた。当該方法では、添加剤が加えられ、不要な不純物が導入されやすい。また、焼成工程は球状アルミナのα相含有量を増やすことができるが、焼成温度が高すぎて時間が長すぎるため、調製された球状アルミナの粘度の増加につながり、下流の製品の性能に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法を提供することを目的とする。本発明が提供する製造方法では、溶融球状化した球状α-アルミナ粉末を高温で焼成し、焼成温度と時間をコントロールすることにより、アルミナの熱伝導率を向上させながら、球状化率やα相を変化させず、フィラーにアルミナを使用した熱伝導フィルムなどの製品の粘度にも影響を与えない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を実現する技術的解決策は、
低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1:角状α-アルミナ粉末を2100~2400℃で溶融球状化して、球状α-アルミナ粉末を得る;
ステップ2:前記球状α-アルミナ粉末を1000~1200℃で1~6時間焼成して、低粘度高熱伝導球状α-アルミナを得る。
【0007】
好ましくは、ステップ1における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒子径は、45μm以上であり、さらに好ましくは45~120μmである。
【0008】
好ましくは、ステップ1における前記角状α-アルミナ粉末は純度99.8%以上のα-Al2O3粉末である。
【0009】
好ましくは、ステップ1における前記球状化の温度は2200~2300℃である。
【0010】
好ましくは、ステップ2における前記焼成の温度は1000~1100℃である。
【0011】
好ましくは、ステップ2における前記焼成はトンネルキルンで行う。
【0012】
好ましくは、ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が45μmである場合、焼成温度は1000℃であり、焼成時間は6時間である。
【0013】
好ましくは、ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が70μm或は90μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は2時間である。
【0014】
好ましくは、ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が120μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は1時間である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、溶融球状化により得られる球状α-アルミナを焼成原料として用い、熱伝導球状α-アルミナを調製し、球状化率は93%以上に保つ。発明者は、焼成温度と焼成時間を厳密に制御することにより、平均粒子サイズが45μm以上である球状アルミナの熱伝導率を大幅に向上でき、熱伝導率を5~10%向上させ、同時に、球状アルミナをフィラーとして作られた熱伝導性フィルムなどの下流製品のアプリケーション分野での焼成温度が高すぎることでもたらした粘度が上昇し、製品の性能に影響を与える問題が回避される。本発明により得られる球状α-アルミナは、流動性が高く、充填率が高く、熱伝導率が高く、粘度が低いため、断熱材や電子材料などの分野で広く適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明をさらに説明するために、特定の実施形態を参照して本発明を以下にさらに詳細に説明するが、それらは本発明の保護範囲を限定するものと解釈されるものではない。
【0017】
実施例1
市販の角状α-アルミナを原料として高温球状化炉に投入し、温度を2100℃~2400℃に制御して溶融球状化させ、平均粒径45μmに篩分けて試験サンプル1-1を得る;
前記試験サンプル1-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1000℃に制御して6時間加熱処理し、試験サンプル1-2を得る;
前記試験サンプル1-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1050℃に制御して6時間加熱処理し、試験サンプル1-3を得る;
前記試験サンプル1-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1100℃に制御して6時間加熱処理し、試験サンプル1-4を得る;
前記試験サンプル1-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1150℃に制御して6時間加熱処理し、試験サンプル1-5を得る;
前記試験サンプル1-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1200℃に制御して6時間加熱処理し、試験サンプル1-6を得る;
前記試験サンプル1-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1300℃に制御して6時間加熱処理し、試験サンプル1-7を得る。
【0018】
熱伝導率計と回転粘度計により、特定のシステムで得られた試験サンプル1-1~試験サンプル1-7を測定し、得られたデータを表1に示す。
【0019】
実施例2
市販の角状α-アルミナを原料として高温球状化炉に投入し、温度を2100℃~2400℃に制御して溶融球状化させ、平均粒径70μmに篩分けて試験サンプル2-1を得る;
前記試験サンプル2-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1000℃に制御して2時間加熱処理し、試験サンプル2-2を得る;
前記試験サンプル2-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1050℃に制御して2時間加熱処理し、試験サンプル2-3を得る;
前記試験サンプル2-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1100℃に制御して2時間加熱処理し、試験サンプル2-4を得る;
前記試験サンプル2-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1150℃に制御して2時間加熱処理し、試験サンプル2-5を得る;
前記試験サンプル2-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1200℃に制御して2時間加熱処理し、試験サンプル2-6を得る;
前記試験サンプル2-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1300℃に制御して2時間加熱処理し、試験サンプル2-7を得る。
【0020】
熱伝導率計と回転粘度計により、特定のシステムで得られた試験サンプル2-1~試験サンプル2-7を測定し、得られたデータを表1に示す。
【0021】
実施例3
市販の角状α-アルミナを原料として高温球状化炉に投入し、温度を2100℃~2400℃に制御して溶融球状化し、平均粒径90μmに篩分けて試験サンプル3-1を得る;前記試験サンプル3-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1000℃に制御して2時間加熱加工し、試験サンプル3-2を得る;前記試験サンプル3-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1050℃に制御して2時間加熱加工し、試験サンプル3-3を得る;前記試験サンプル3-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1100℃に制御して2時間加熱加工し、試験サンプル3-4を得る;前記試験サンプル3-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1150℃に制御して2時間加熱加工し、試験サンプル3-5を得る;前記試験サンプル3-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1200℃に制御して2時間加熱加工し、試験サンプル3-6を得る;前記試験サンプル3-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1300℃に制御して2時間加熱加工し、試験サンプル3-7を得る。熱伝導率計と回転粘度計により、特定のシステムで得られた試験サンプル3-1~試験サンプル3-7を測定し、得られたデータを表1に示す。
【0022】
実施例4
市販の角状α-アルミナを原料として高温球状化炉に投入し、温度を2100℃~2400℃に制御して溶融球状化し、平均粒径120μmに篩分けて試験サンプル4-1を得る;前記試験サンプル4-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1000℃に制御して1時間加熱加工し、試験サンプル4-2を得る;前記試験サンプル4-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1050℃に制御して1時間加熱加工し、試験サンプル4-3を得る;前記試験サンプル4-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1100℃に制御して1時間加熱加工し、試験サンプル4-4を得る;前記試験サンプル4-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1150℃に制御して1時間加熱加工し、試験サンプル4-5を得る;前記試験サンプル4-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1200℃に制御して1時間加熱加工し、試験サンプル4-6を得る;前記試験サンプル4-1を再びトンネルキルンに入れ、火炎温度を1300℃に制御して1時間加熱加工し、試験サンプル4-7を得る。熱伝導率計と回転粘度計により、特定のシステムで得られた試験サンプル4-1~試験サンプル4-7を測定し、得られたデータを表1に示す。
【0023】
各実施例で調製したサンプルを熱伝導フィラーとして使用し、熱伝導ガスケットを調製した。熱伝導率計で熱伝導ガスケットの熱伝導率をテストし、回転粘度計で回転粘度をテストし、GB/T2794-2013「接着剤粘度の測定単筒回転粘度計法」による結果を表1に示した。
【0024】
【0025】
上記のデータから、試験サンプル1-2、2-4、3-4、及び4-4は、熱伝導率が高く、回転粘度が低く、総合的性能が最も優れていることが分かる。
【0026】
上記は、本発明の代表的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されず、当業者であれば、本発明によって開示された技術的範囲内で変更又は置換を容易に考えることができるはずであり、本発明の保護範囲に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に基づくべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法であって、
角状α-アルミナ粉末を2100~2400℃で溶融球状化して、球状α-アルミナを得るステップ1と、
前記球状α-アルミナ粉末を1000~1200℃で1~6時間焼成して、低粘度高熱伝導球状α-アルミナを得るステップ2と、を含むことを特徴とする低粘度高熱伝導球状α-アルミナの製造方法。
【請求項2】
ステップ1における前記
球状α-アルミナ粉末の平均粒子径は、45μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
ステップ1における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒子径は、45~120μmであることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
ステップ1における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒子径が45μm、70μm、90μm又は120μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の調製方法。
【請求項5】
ステップ1における前記溶融球状化の温度が2200~2300℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ2における前記焼成の温度は1000~1100℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が45μmである場合、焼成温度は1000℃であり、焼成時間は6時間であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が70μm或は90μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は2時間であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
ステップ2における前記球状α-アルミナ粉末の平均粒径が120μmである場合、焼成温度は1100℃であり、焼成時間は1時間であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップ1における前記溶融球状化の温度が2200℃又は2300℃であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【国際調査報告】