IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラスケム エス.エー.の特許一覧

特表2023-544969フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生
<>
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図1
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図2
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図3
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図4
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図5
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図6
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図7
  • 特表-フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】フランジメタノールの嫌気的発酵産生とフランジカルボン酸の酵素的産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/53 20060101AFI20231019BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20231019BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20231019BHJP
   C12P 7/06 20060101ALI20231019BHJP
   C12P 7/44 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N1/19 ZNA
C12N15/31
C12N15/55
C12N15/54
C12P7/18
C12P7/06
C12P7/44
C12N9/02
C12N9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513937
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 BR2021050374
(87)【国際公開番号】W WO2022047559
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】63/073,271
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】319007767
【氏名又は名称】ブラスケム エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】エストラーダ グヴェア イウリ
(72)【発明者】
【氏名】ブランビラ コスタ アナ カリーナ
(72)【発明者】
【氏名】シモンイス マルコス ロジェリオ
(72)【発明者】
【氏名】ケイロス ヴェロニカ レイテ
(72)【発明者】
【氏名】シウバ ロマン デュマレスク アリーニ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC01
4B064AC03
4B064AD01
4B064CA06
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064CD09
4B064DA16
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA77X
4B065AA79X
4B065AA79Y
4B065AA80X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BB15
4B065CA05
4B065CA06
4B065CA11
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、1つまたは複数の炭素源から2,4-フランジメタノールを嫌気的に産生するための組換え微生物および方法を提供する。該微生物および方法は、2,4-フランジメタノールをエタノールと共産生するための、ならびに2,4-フランジメタノールをエタノールならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールと共産生するための、レドックスバランスのとれた、ATPプラスの経路を提供する。該方法は、2,4-フランジメタノールへの炭素源の変換を触媒するポリペプチドをコードする内因性および/または外因性核酸分子を発現しかつ2,4-フランジメタノール経路を追加の代謝経路と連結させている、組換え微生物を提供する。本開示はさらに、2,4-フランジカルボン酸の酵素的産生を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源から2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)およびエタノールを産生することができるエタノール産生酵母である組換え微生物であって、
該組換え微生物が、以下:
(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの外因性核酸分子;
(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
を発現し、かつ
該組換え微生物が、該微生物においてグリセロール産生経路における酵素の欠失またはダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を有しており、かつここで、2,4-FDMEの産生が、副産物としてのグリセロールに完全にまたは部分的に取って代わっている、
組換え微生物。
【請求項2】
4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドが、NADHを消費するデヒドロゲナーゼであり、該デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択され、好ましくは、該変異型アルコールデヒドロゲナーゼが、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含み、より好ましくは、該変異型アルコールデヒドロゲナーゼが、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
グリセロール産生経路における酵素が、GPD1、GPD2、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼ、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項4】
外部から添加されたホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項5】
ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒するポリペプチドが、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、該NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼがEC番号1.2.1.2に分類される、請求項4に記載の組換え微生物。
【請求項6】
(i)D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに
(ii)6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
をさらに含み、かつ任意で、
NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
をさらに含む、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項7】
D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒するポリペプチドが、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびグルコノラクトナーゼである、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項8】
6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒するポリペプチドが、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼである、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項9】
NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒するポリペプチドが、トランスヒドロゲナーゼである、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項10】
フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファート(biphosphate)に変換する経路における酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つの欠失、またはフルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む、請求項6に記載の組換え微生物。
【請求項11】
フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素が、ホスホフルクトキナーゼである、請求項10に記載の組換え微生物。
【請求項12】
サッカロミセス属(Saccharomyces)の種、サッカロミセス・セレビシエ、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、イサチェンキア属(Issatchenkia)の種、イサチェンキア・オリエンタリス(Issatchenkia orientalis)、ハンセヌラ属(Hansenula)の種、デバリオミセス属(Debaryomyces)の種、ロドツラ属(Rhodotula)の種、パキソレン属(Pachysolen)の種、クリプトコッカス属(Cryptococcus)の種、トリコスポロン属(Trichosporon)の種、ミキソザイマ属(Myxozyma)の種、カンジダ属(Candida)の種、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)の種、ピキア属(Pichia)の種、ピキア・クドリアブゼビ(Pichia kudriavzevii)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)の種、トルラスポラ属(Torulaspora)の種、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)の種、ヤロウイア属(Yarrowia)の種、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シェファーソミセス属(Scheffersomyces)の種、またはシェファーソミセス・スチピチス(Scheffersomyces stipitis)から選択される、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項13】
請求項1に記載の組換えエタノール産生酵母に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む、2,4-FDMEを産生する方法。
【請求項14】
発酵性炭素源が、ヘキソース、ペントース、グリセロール、CO2、スクロース、またはこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の2,4-FDMEを産生する方法。
【請求項15】
発酵性炭素源が、補助基質としてホルマートをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
2,4-FDMEおよびエタノールが、嫌気的または微好気的条件下で共産生される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
(i)請求項1に記載の組換えエタノール産生酵母に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階;ならびに(ii)2,4-FDMEを2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)に変換する段階を含む、2,4-FDCAを産生する方法。
【請求項18】
段階(ii)が、1つまたは複数のオキシダーゼまたは酸化酵素を用いて、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
段階(ii)が、容器内にて、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な量の酸素の存在下で、同じエタノール産生酵母または別の微生物によって2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換することを含み、該微生物が、2,4-FDCAへの2,4-FDMEの酸化に必要とされる酸化酵素の必要量を発現する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換することが、実質的に微生物を含まない容器内にて、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換するのに十分な量の酸素の存在下で実施される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月1日に出願された"ANAEROBIC FERMENTATIVE PRODUCTION OF FURANDIMETHANOL AND ENZYMATIC PRODUCTION OF FURANDICARBOXYLIC ACID"と題する米国仮出願第63/073,271号の優先権を主張するものであり、その開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
2,5-フランジカルボン酸(2,5-FDCA)は、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(PET)の合成において、テレフタル酸の代替となる可能性があるため、多くの注目を集めている(Sousa, Andreia F., et al. "Biobased polyesters and other polymers from 2,5-furandicarboxylic acid: a tribute to furan excellency." Polymer chemistry 6.33 (2015): 5961-5983(非特許文献1))。PETにおいてテレフタル酸をそのフラン類似体である2,5-FDCAに置き換えると、2,5-フランジカルボン酸のエステル(2,5-PEF)が生成される可能性があり、このポリマーはPETと比較していくつかの利点を有する。一面では、2,5-PEFは、その対応物と比較したとき、より優れた熱的特性、バリア特性、機械的特性を備えている(PEP Report 294(非特許文献2))。さらに、エチレングリコールは再生可能な資源から産生できることが知られているため、2,5-PEFは、半再生可能なPETとは対照的に、100%再生可能であり得る。
【0003】
テレフタル酸と比較した2,5-FDCAの前述の全ての利点にもかかわらず、2,5-FDCA産生のコストは、モノマーの使用量を拡大する上でまだ限られているのが現状である。既存の技術は、テレフタル酸と比較して、コスト競争力がない。これについて考えられる理由の一つは、いくつかの連続した工業的工程が必要であることに関連している。2,5-FDCA産生のコスト削減に役立つ可能性がある一つの課題は、糖から目的の分子への直接的な発酵経路を見いだすことであるが、そのような経路はこれまで報告されていない。
【0004】
2,4-FDCAは、2,5-FDCAの異性体であるが、よく研究されている2,5-FDCAと比較して、ユニークな性質を保持している。2,4-FDCAをジオールと触媒的に重合させると、有益な特性を備えた、2,4-FDCAから構成されたポリマーが生成される。ある研究において、Thiyagarajanと共同研究者ら(2014)は、2,4-FDCA、3,4-FDCA、2,5-FDCAおよびテレフタル酸から作られたポリエステルを比較し、2,4-FDCAおよび3,4-FDCAポリエステルが産業上利用可能な方法によって十分な分子量で産生され得ると結論付けた(Thiyagarajan, Shanmugam, et al. "Biobased furandicarboxylic acids (FDCAs): effects of isomeric substitution on polyester synthesis and properties." Green Chemistry 16.4 (2014): 1957-1966(非特許文献3))。別の研究において、Thiyagarajanと研究仲間は、2,4-FDCAと2,5-FDCAの構造解析から、2,4-FDCAは2,5-FDCAよりもテレフタル酸に似た線状の特性を持つことが明らかになったと結論付けた。こうした特性は、2,4-FDCAを合成ポリエステル用のモノマーとして興味深いものにしている(Thiyagarajan et al. “Concurrent formation of furan-2,5- and furan-2,4-dicarboxylic acid: unexpected aspects of the Henkel reaction” RSC Advances 3 (2013): 15678-15686(非特許文献4))。さらに、これらの材料は、2,5-FDCAポリエステルとは異なる特性を有している(Bourdet et al. "Molecular Mobility in Amorphous Biobased Poly (ethylene 2,5-furandicarboxylate) and Poly (ethylene 2,4-furandicarboxylate)." Macromolecules 51.5 (2018): 1937-1945(非特許文献5))。
【0005】
いくつかの場合には、2,4-FDCAポリマーは、2,5-FDCAポリマーよりも優れた性質を持つことが報告されている。Cuiと共同研究者ら(2016)は、中央の環と結合している2個のカルボキシル基間の結合角(bond-angle)が、LCD TV、ノートパソコン、その他のディスプレイ要素で利用されているような、ネマチック液晶分子(nematic liquid crystal molecule)の安定性に影響を与える主要な要因であると報告している(Cui, Min-Shu, et al. "Production of 4-hydroxymethylfurfural from derivatives of biomass-derived glycerol for chemicals and polymers." ACS Sustainable Chemistry & Engineering 4.3 (2016): 1707-1714(非特許文献6))。最初に発見された液晶であるテレフタル酸ジエステル分子は、2個のカルボキシル基間の結合角が180°である。比較すると、2,5-フランジカルボン酸は、2個のカルボキシル基間の結合角が137°である。重要なことには、2,4-フランジカルボン酸は、2個のカルボキシル基間の結合角が160°であり、そのため、それはネマチック液晶分子の合成により適している。
【0006】
2,4-FDCAポリマーのこうした潜在的な用途にもかかわらず、Cuiと共同研究者ら(2016)が述べたように、このモノマーをかかる用途へと拡大するには、2,4-FDCAの産生コストが現在のボトルネックとなっている。2,4-FDCAなどの2,4-置換フランの以前の合成は、多数の合成工程を必要としたため、2,4-FDCA誘導ポリマーは、現在利用可能な方法と産業技術では法外なコストがかかってしまう。
【0007】
もう一つの有益なフランベースの工業製品は、2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)である。2,4-FDMEと2,4-FDCAの両方を、より効率的で費用対効果の高い方法で産生することが求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sousa, Andreia F., et al. "Biobased polyesters and other polymers from 2,5-furandicarboxylic acid: a tribute to furan excellency." Polymer chemistry 6.33 (2015): 5961-5983
【非特許文献2】PEP Report 294
【非特許文献3】Thiyagarajan, Shanmugam, et al. "Biobased furandicarboxylic acids (FDCAs): effects of isomeric substitution on polyester synthesis and properties." Green Chemistry 16.4 (2014): 1957-1966
【非特許文献4】Thiyagarajan et al. “Concurrent formation of furan-2,5- and furan-2,4-dicarboxylic acid: unexpected aspects of the Henkel reaction” RSC Advances 3 (2013): 15678-15686
【非特許文献5】Bourdet et al. "Molecular Mobility in Amorphous Biobased Poly (ethylene 2,5-furandicarboxylate) and Poly (ethylene 2,4-furandicarboxylate)." Macromolecules 51.5 (2018): 1937-1945
【非特許文献6】Cui, Min-Shu, et al. "Production of 4-hydroxymethylfurfural from derivatives of biomass-derived glycerol for chemicals and polymers." ACS Sustainable Chemistry & Engineering 4.3 (2016): 1707-1714
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示は、組換え微生物、例えばエタノール産生酵母において2,4-FDMEを産生するための直接的および嫌気的発酵経路を提供する。この経路は、有利なことに、レドックス補因子のバランスを有し、かつFDME産生を電子供与経路およびATPプラスの経路と連結することでプラスのATPをもたらし、それによって、嫌気的2,4-FDME産生のためのより効率的で費用対効果の高い経路が提供される。さらに、本開示は、本開示に従って産生された2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するための酵素的プロセスを提供し、それによって、2,4-FDCA産生のためのより効率的で費用対効果の高い経路が提供される。
【0010】
本開示は、エタノール産生酵母などの組換え微生物を提供し、該組換え微生物は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファート(4-hydroxymethylfurfural phosphate)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(d)グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を含む。
【0011】
本開示は、炭素源から2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)およびエタノールを産生することができるエタノール産生酵母である組換え微生物を提供し、該組換え微生物は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;を発現し、かつ該組換え微生物は、該微生物においてグリセロール産生経路における酵素の欠失またはダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を有しており、かつここで、2,4-FDMEの産生が、副産物としてのグリセロールに完全にまたは部分的に取って代わっている。
【0012】
いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、NADHを消費するデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1に分類される。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択される。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む。
【0013】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路における酵素は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.8またはEC番号1.1.5.3に分類される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が、該微生物から欠失されるか、または該微生物においてダウンレギュレートされる。
【0014】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路における酵素は、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼは、EC番号3.1.3.21に分類される。
【0015】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路における酵素は、GPD1、GPD2、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼ、またはそれらの組み合わせである。
【0016】
いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物においてダウンレギュレートされる。
【0017】
いくつかの態様では、該微生物はエタノールを産生する。
【0018】
いくつかの態様では、該微生物は、外部から添加されたホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む。
【0019】
いくつかの態様では、ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒するポリペプチドは、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.2.1.2に分類される。いくつかの態様では、該微生物は、外部から提供されたホルマートをNADHおよびCO2に変換する。
【0020】
いくつかの態様では、該微生物は、(i)D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(ii)6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含み、任意で、NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む。
【0021】
いくつかの態様では、NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒するポリペプチドは、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼは、EC番号EC 1.6.1に分類される。いくつかの態様では、該トランスヒドロゲナーゼは、EC番号1.6.1.1に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Si特異的)、EC番号1.6.1.2に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Re/Si特異的)、EC番号1.6.1.3に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ、および/またはEC番号1.6.1.4に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(フェレドキシン)から選択される。
【0022】
いくつかの態様では、組換え微生物は、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファート(biphosphate)に変換する経路における酵素の少なくとも1つの欠失をさらに含む。いくつかの態様では、組換え微生物は、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む。いくつかの態様では、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素は、ホスホフルクトキナーゼである。
【0023】
本開示は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(d)ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む、組換え微生物を提供する。
【0024】
いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、該デヒドロゲナーゼはEC番号1.1.1に分類される。いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、NADHを消費するデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択される。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む。
【0025】
いくつかの態様では、ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒するポリペプチドは、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.2.1.2に分類される。いくつかの態様では、該微生物は、外部から提供されたホルマートをNADHおよびCO2に変換する。
【0026】
いくつかの態様では、組換え微生物は、グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失をさらに含む。いくつかの態様では、組換え微生物は、グリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む。
【0027】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路における酵素は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.8またはEC番号1.1.5.3に分類される。
【0028】
いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が、該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が、該微生物においてダウンレギュレートされる。
【0029】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路における酵素は、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼは、EC番号3.1.3.21に分類される。
【0030】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路における酵素は、GPD1、GPD2、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼ、またはこれらの組み合わせである。
【0031】
いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物においてダウンレギュレートされる。
【0032】
いくつかの態様では、該微生物はエタノールを産生する。
【0033】
本開示は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)ホスホエノールピルバート(PEP)からのオキサロアセタートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(e)(1)オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生、および/または(2)オキサロアセタートからのアスパルタートの産生、アスパルタートからのβ-アラニンの産生、およびβ-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生、および/または(3)マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生、および/または(4)オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは(f)(1)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、および/または(2)マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、および/または(3)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは(g)(1)アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生、および/または(2)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生、およびHMG-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(h)アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む、組換え微生物を提供する。
【0034】
いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、NADHを消費するデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1に分類される。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択される。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む。
【0035】
いくつかの態様では、オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するポリペプチドは、オキサロ酢酸1-デカルボキシラーゼ(MSA形成性)である。
【0036】
いくつかの態様では、オキサロアセタートからのアスパルタートの産生を触媒するポリペプチドは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである。いくつかの態様では、アスパルタートからのβ-アラニンの産生を触媒するポリペプチドは、アスパラギン酸デカルボキシラーゼである。いくつかの態様では、β-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するポリペプチドは、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼおよび/またはβ-アラニントランスアミナーゼである。
【0037】
いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼである。
【0038】
いくつかの態様では、オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロニル-CoAシンテターゼである。
【0039】
いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼである。
【0040】
いくつかの態様では、アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、チオラーゼおよび/またはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼである。
【0041】
いくつかの態様では、マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロニル-CoAデカルボキシラーゼである。
【0042】
いくつかの態様では、マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、アセトアセチル-CoAシンターゼである。
【0043】
いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒するポリペプチドは、アセトアセチル-CoAチオエステラーゼおよび/またはアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼである。
【0044】
いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼである。
【0045】
いくつかの態様では、HMG-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒するポリペプチドは、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼである。
【0046】
いくつかの態様では、アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドは、アセト酢酸デカルボキシラーゼである。
【0047】
いくつかの態様では、組換え微生物は、アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む。
【0048】
いくつかの態様では、アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒するポリペプチドは、アルコールデヒドロゲナーゼである。
【0049】
いくつかの態様では、該微生物はエタノールを産生する。
【0050】
本開示は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(e)6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む、組換え微生物を提供する。
【0051】
いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、NADHを消費するデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1に分類される。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択される。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む。
【0052】
いくつかの態様では、D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒するポリペプチドは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびグルコノラクトナーゼである。
【0053】
いくつかの態様では、6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒するポリペプチドは、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼである。
【0054】
いくつかの態様では、該微生物は、NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む。
【0055】
いくつかの態様では、NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒するポリペプチドは、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼは、EC番号EC 1.6.1に分類される。いくつかの態様では、該トランスヒドロゲナーゼは、EC番号1.6.1.1に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Si特異的)、EC番号1.6.1.2に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Re/Si特異的)、EC番号1.6.1.3に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ、および/またはEC番号1.6.1.4に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(フェレドキシン)から選択される。
【0056】
いくつかの態様では、組換え微生物は、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素の少なくとも1つの欠失をさらに含む。いくつかの態様では、組換え微生物は、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む。いくつかの態様では、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素は、ホスホフルクトキナーゼである。
【0057】
いくつかの態様では、該微生物はエタノールを産生する。
【0058】
いくつかの態様では、該微生物は細菌、真菌、または酵母から選択される。いくつかの態様では、該微生物は酵母である。いくつかの態様では、該微生物はサッカロミセス・セレビシエである。いくつかの態様では、該微生物は、サッカロミセス属(Saccharomyces)の種、サッカロミセス・セレビシエ、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、イサチェンキア属(Issatchenkia)の種、イサチェンキア・オリエンタリス(Issatchenkia orientalis)、ハンセヌラ属(Hansenula)の種、デバリオミセス属(Debaryomyces)の種、ロドツラ属(Rhodotula)の種、パキソレン属(Pachysolen)の種、クリプトコッカス属(Cryptococcus)の種、トリコスポロン属(Trichosporon)の種、ミキソザイマ属(Myxozyma)の種、カンジダ属(Candida)の種、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)の種、ピキア属(Pichia)の種、ピキア・クドリアブゼビ(Pichia kudriavzevii)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)の種、トルラスポラ属(Torulaspora)の種、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)の種、ヤロウイア属(Yarrowia)の種、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シェファーソミセス属(Scheffersomyces)の種、またはシェファーソミセス・スチピチス(Scheffersomyces stipitis)から選択される。
【0059】
本開示は、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生(co-producing)する方法を提供し、該方法は、本明細書に開示される組換え微生物、例えば本明細書に開示される組換えエタノール産生酵母に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む。いくつかの態様では、発酵性炭素源は、ヘキソース、ペントース、グリセロール、CO2、スクロース、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、発酵性炭素源は、補助基質(co-substrate)としてホルマートをさらに含む。いくつかの態様では、該方法はアセトンをさらに産生する。いくつかの態様では、該方法の微生物は、イソプロパノールをさらに産生する。いくつかの態様では、該条件は嫌気的条件を含む。いくつかの態様では、2,4-FDMEおよびエタノールは、嫌気的または微好気的条件下で共産生される。
【0060】
本開示は、2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)を産生する方法を提供し、該方法は、(i)本明細書に開示される組換え微生物、例えば本明細書に開示される組換えエタノール産生酵母に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階;ならびに(ii)2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、変換段階(ii)は、1つまたは複数のオキシダーゼまたは酸化酵素を用いて、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換することを含む。いくつかの態様では、変換段階(ii)は、容器内にて、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な量の酸素の存在下で、同じエタノール産生酵母または別の微生物によって2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換することを含み、ここで、該微生物は、2,4-FDCAへの2,4-FDMEの酸化に必要とされる酸化酵素の必要量を発現する。いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換することは、実質的に微生物を含まない容器内にて、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換するのに十分な量の酸素の存在下で実施される。
【0061】
本開示は、2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)を産生する方法を提供し、該方法は、オキシダーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、および/もしくはデヒドロゲナーゼの組み合わせを含む、1つまたは複数のオキシダーゼ、1つまたは複数のラッカーゼ、1つまたは複数のリパーゼ、および/または1つまたは複数のデヒドロゲナーゼを用いて、2,4-FDMEを直接的に、または5-(ヒドロキシメチル)-3-フルアルデヒド、4-(ヒドロキシメチル)フルフラール、5-(ヒドロキシメチル)フラン-3-カルボン酸、2,4-フランジカルボアルデヒド、4-(ヒドロキシメチル)-2-フランカルボン酸、5-ホルミル-3-フロ酸、もしくは4-ホルミル-2-フロ酸から選択される1つまたは複数の中間体の産生を介して、2,4-FDCAに酵素的に変換する段階を含む。いくつかの態様では、オキシダーゼは、EC番号1.1.3.-に分類される。いくつかの態様では、オキシダーゼは、EC番号1.1.3.47、EC番号1.1.3.7、EC番号1.1.3.9、および/またはEC番号1.1.3.22(すなわち、EC番号1.17.3.2)に分類される。いくつかの態様では、ラッカーゼは、EC番号1.10.3.-に分類される。いくつかの態様では、リパーゼは、EC番号3.1.1.-に分類される。いくつかの態様では、デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.-に分類される。いくつかの態様では、デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.1に分類される。いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階は、微生物を実質的に含まない容器内で行われる。いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階は、微生物によって行われる。いくつかの態様では、該方法は、H2O2を、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、および/またはペルオキシゲナーゼにより酸素および水に変換する段階をさらに含む。いくつかの態様では、カタラーゼまたはペルオキシダーゼは、EC番号1.11.1.-に分類され、かつ/またはペルオキシゲナーゼは、EC番号1.11.2.-に分類される。いくつかの態様では、2,4-FDCAの産生に使用するための2,4-FDMEは、本明細書に開示される組換え微生物によって産生される。いくつかの態様では、2,4-FDCAの産生に使用するための2,4-FDMEは、本明細書に開示される方法によって産生される。
【0062】
本開示は、本明細書に開示される方法によって産生された2,4-FDCAからポリマーを製造する方法を提供し、該方法では、2,4-FDCAとジオールは、非生物学的プロセスで触媒的に重合される。いくつかの態様では、ジオールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、または1,6-ヘキサンジオールから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】2,4-FDMEおよびエタノールの産生のために本開示の組換え微生物によって利用される生合成経路の概略図である。
図2】2,4-FDMEおよびエタノールの産生のために本開示の組換え微生物によって利用される生合成経路の概略図である。
図3】2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールの産生のために本開示の組換え微生物によって利用される生合成経路の概略図である。
図4】2,4-FDMEから2,4-FDCAへの酵素的酸化における中間体の概略図である。
図5図5Aは、構築物1を示すスキームである。図5Bは、構築物2を示すスキームである。図5Cは、構築物3を示すスキームである。図5Dは、構築物5を示すスキームである。
図6】嫌気的条件下で117時間発酵させた場合のエタノールとグリセロールの平均産生量を示すグラフである。エタノール濃度は右のx軸で表され、グリセロール濃度は左のx軸で表される。
図7】発現プロトコル後の可溶性相(1)中の、不溶性相(2)中の、精製前の可溶性相(3)中の、精製プロトコル後のバッファーB(4)中の、フロースルー(5)中の、およびPD10カラム通過後のリン酸カリウムバッファー(6)中の、2,4-FDMEオキシダーゼHfmH1の代表的なSDS-PAGE画像である。
図8】24時間インキュベーション後の2,4-FDMEオキシダーゼHfmH1による2,4-FDMEからの2,4-FDCA産生(下のパネル)、HmfH1なしの陰性対照(中央のパネル)、2,4-FDMEなしの陰性対照(上のパネル)を示す代表的なUVスペクトルである。HPLC-DADを用いてクロマトグラフィー分離を行い、2,4-FDCAを245nmで検出した。
【発明を実施するための形態】
【0064】
詳細な説明
本開示は、組換え微生物における2,4-FDMEへの直接的および嫌気的発酵経路を提供する。炭素原料からの2,4-FDMEの直接かつ嫌気的発酵により、産業規模で商業上利用可能な新規化学物質、溶媒、およびポリマーの製造が可能になる。本明細書に開示される嫌気的経路を利用することにより、好気的経路と比較して、より効率的で費用対効果の高い2,4-FDME産生を達成することが可能である。
【0065】
炭素原料からの2,4-FDMEの発酵産生は、グリセルアルデヒド-3-ホスファート(G3P)の、(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートへの変換、(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートの、4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)への変換、およびデヒドロゲナーゼによる、4-HMFの、2,4-FDMEへの変換を含む経路によって達成することができる。前述の経路は、式1に従って正味ATPマイナス(2,4-FDME 1分子あたりATP 2分子のマイナス)およびNADHマイナスである。
式1: 1 グルコース + 1 NADH+ → 1 2,4-FDME - 2 ATP + 1 NAD+
【0066】
レドックス補因子のバランスおよびプラスのATP生成量は、実行可能な嫌気的発酵プロセスにとって重要な要件である。したがって、異なる代謝経路間でレドックス補因子のバランスを提供できない微生物、および/またはプラスのATP生成量を欠いている微生物は、一般的に、嫌気的発酵条件下で生育する能力が低いか、または全くないことを示している。
【0067】
一例として、グリセロールは、嫌気的発酵では、そのレドックスのアンバランスのため、酵母エタノール発酵の必須最終産物であることが十分に説明されている。炭水化物上での嫌気的生育の間、グリセロールの産生は、電子シンク(electron sink)として機能して細胞バイオマスの形成を相殺するため、結果的に全体的なレドックス中性が保たれる(すなわち、バイオマスの形成時にNAD+がNADHに還元され、グリセロール産生によってNADHがNAD+に酸化される)。このことは、質量保存の理論的考察からは絶対に必要であるが、実際には、グリセロールを産生できない(つまり、グリセロール産生を電子シンクとして使用できない)菌株は、エタノール産生に産業上使用される嫌気的条件下で生育できない(または極めて不十分にしか生育できない)ことが影響している。嫌気的条件下では、グリセロールは通常、総糖消費量の4~10%を占めている。
【0068】
本開示は、炭素源から2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)およびエタノールを産生できる組換えエタノール産生酵母を提供し、この場合、低価値化学物質であるグリセロールの産生は、部分的にまたは全部、2,4-FDMEによって置き換えられる。したがって、本開示は、2,4-FDMEと、エタノールなどの高価値化学物質との嫌気的産生のために、レドックス補因子のバランスがとれかつプラスのATPを生成する連結経路を提供する。かくして、本開示は、2,4-FDME経路が、(レドックスバランスのため)電子供与経路と、ATP余剰のためグリセロールヌル酵母(glycerol-null yeast)でのカノニカル(canonical)エタノール産生経路(式2)とに連結されて、2,4-FDMEおよび高価値化学物質の嫌気的高収率産生を可能にする、経路および微生物を提供する。
式2: 1 グルコース → 2 ピルバート → 2 エタノール + 2 CO2 + 2 ATP
【0069】
本開示はまた、発酵により産生された2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する方法を提供する。
【0070】
定義
以下の定義および略語は、本開示の解釈のために使用されるものとする。
【0071】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの酵素(an enzyme)」への言及は、複数のそのような酵素を含み、「その微生物(the microorganism)」への言及は、1つまたは複数の微生物への言及を含む、などである。
【0072】
本明細書で使用する用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、またはそれらの他の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図している。要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されていない他の要素、あるいはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に本来備わっている他の要素を含み得る。さらに、それとは反対の明示的な記載がない限り、「または」は、包括的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。
【0073】
数値を修飾するために本明細書で使用する用語「約」および「およそ」は、その明確な値を取り囲む至近範囲を示す。「X」を値とした場合、「約X」または「およそX」は0.9Xから1.1Xまでの値を示し、いくつかの態様では0.95Xから1.05Xまでの値を示す。「約X」または「およそX」への言及は、具体的には、少なくともX、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、および1.05Xの値を示す。したがって、「約X」および「およそX」は、例えば「0.98X」の、クレーム限定への明細書記載のサポートを教示および提供することが意図される。
【0074】
本明細書で使用する用語「微生物(microbial)」、「微生物(microbial organism)」、「微生物(microorganism)」は、古細菌、細菌または真核生物(後者は、酵母および糸状菌、原生動物、藻類、またはより高等の原生生物(Protista)を含む)のドメイン内に含まれる微視的細胞として存在する任意の生物を含む。したがって、この用語は、微視的サイズを有する原核または真核の細胞または生物を包含することを意図しており、酵母、真菌などの真核微生物だけでなく、あらゆる種の細菌、古細菌、および真正細菌が含まれる。また、化学物質の産生のために培養することができる任意の種の細胞培養物も含まれる。
【0075】
本明細書に記載するように、いくつかの態様では、組換え微生物は真核微生物である。いくつかの態様では、真核微生物は酵母である。いくつかの態様では、酵母は、ヤロウイア属、カンジダ属、サッカロミセス属、ピキア属、ハンセヌラ属、クルイベロミセス属、イサチェンキア属、ジゴサッカロミセス属、デバリオミセス属、シゾサッカロミセス属、パキソレン属、クリプトコッカス属、トリコスポロン属、トルラスポラ属、ロドトルラ属(Rhodotorula)、シェファーソミセス属、およびミキソザイマ属からなる群より選択される属のメンバーである。
【0076】
「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、内因性酵素を発現もしくは過剰発現するように遺伝子改変された微生物、組込み型構築物で、例えばベクターに含まれるものなどの、異種酵素を発現するように遺伝子改変された微生物、または内因性遺伝子の発現の変化を有する微生物を指す。「変化」とは、遺伝子の発現、または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットをコードするRNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル、または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットの活性が、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされ、結果として、その発現、レベル、または活性が、変化のない場合に観察されるものよりも高くなるか、または低くなることを意味する。用語「組換え微生物」および「組換え宿主細胞」は、特定の組換え微生物だけでなく、そのような微生物の子孫または将来の子孫をも指すことが理解される。
【0077】
遺伝子配列に関する「発現」という用語は、遺伝子の転写と、必要に応じて、得られたmRNA転写物のタンパク質への翻訳を指す。したがって、文脈から明らかなように、タンパク質の発現は、オープンリーディングフレーム配列の転写と翻訳によってもたらされる。宿主細胞における目的産物の発現レベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量、または選択された配列によってコードされる目的産物の量のいずれかに基づいて、決定することができる。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、qRT-PCRまたはノーザンハイブリダイゼーションによって定量化され得る(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)を参照)。選択された配列によってコードされるタンパク質は、様々な方法によって、例えば、ELISA、タンパク質の生物学的活性のアッセイ、またはタンパク質を認識して結合する抗体を用いた、ウェスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイなどの、その活性とは無関係なアッセイを利用することによって、定量化され得る。Sambrook et al., 1989, 前掲を参照されたい。
【0078】
遺伝子の発現または酵素活性のレベルを「低下させる」または「減少させる」という用語は、遺伝子の発現または酵素活性の部分的もしくは完全な抑制を指す。この発現または活性の抑制は、遺伝子発現の阻害、遺伝子発現に必要なプロモーター領域の全部もしくは一部の欠失、遺伝子のコード領域の欠失、または野生型プロモーターのより弱い天然もしくは合成プロモーターによる置換のいずれかであり得る。例えば、遺伝子を完全に欠失させてもよいし、本開示による菌株の同定、分離、精製を容易にする選択マーカー遺伝子で置換してもよい。あるいは、新しい代謝経路を優先するために、内因性遺伝子をノックアウトまたは欠失させてもよい。さらに別の態様では、弱いプロモーターを用いるか、または特定の変異を導入することによって、遺伝子の発現を低下または減少させてもよい。
【0079】
本明細書で使用する用語「天然に存在しない」は、本開示の微生物または酵素活性に関連して使用する場合、微生物または酵素が、言及された種の野生型株などの、その種の天然に存在する菌株には通常見られない少なくとも1つの遺伝子変化を有することを意味することが意図される。遺伝子変化には、例えば、代謝系のポリペプチドをコードする発現可能な核酸を導入する改変、その他の核酸付加、核酸欠失、および/または微生物の遺伝物質のその他の機能破壊が含まれる。そのような改変には、例えば、言及された種の異種ポリペプチド、相同ポリペプチド、または異種と相同の両ポリペプチドの、コード領域およびその機能性断片が含まれる。さらなる改変には、例えば、その改変が遺伝子またはオペロンの発現を変化させる非コード調節領域が含まれる。
【0080】
様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などに関連して本明細書で使用する「外因性」という用語は、自然界で所定の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞において通常または天然に見出されないおよび/または産生されない分子を指す。
【0081】
一方、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などに関連して本明細書で使用する「内因性」または「天然」という用語は、自然界で所定の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞において通常または天然に見出せるおよび/または産生される分子を指す。
【0082】
改変された宿主細胞に関連して本明細書で使用する「異種」という用語は、以下の(a)~(c)の少なくとも1つが当てはまる、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などを指す:(a)該分子(複数可)が宿主細胞にとって外来性(「外因性」)である(すなわち、宿主細胞において天然に見出されない);(b)該分子(複数可)が所定の宿主微生物または宿主細胞において天然に見出せる(例えば、「内因性」である)が、細胞内の不自然な場所にまたは不自然な量で産生される;および/または(c)該分子(複数可)がヌクレオチドまたはアミノ酸配列の点で内因性ヌクレオチドまたはアミノ酸配列と異なり、結果的に、内因的に見出せる内因性ヌクレオチドまたはアミノ酸とヌクレオチドまたはアミノ酸配列の点で異なる該分子が、細胞内で不自然な量(例えば、天然に見出せるよりも多い量)で産生される。
【0083】
第1のファミリーまたは種の元の酵素もしくは遺伝子に関連して本明細書で使用される用語「ホモログ」は、第1のファミリーまたは種の元の酵素もしくは遺伝子に対応する第2のファミリーまたは種の酵素もしくは遺伝子であることが、機能、構造、またはゲノムの解析によって確認された、第2のファミリーまたは種の明確に異なる酵素もしくは遺伝子を指す。ホモログは、ほとんどの場合、機能、構造、またはゲノム上の類似性を持っている。酵素または遺伝子のホモログを、遺伝子プローブおよびPCRを用いて容易にクローニングする技術は、公知である。クローニングされた配列がホモログであることは、機能アッセイおよび/または遺伝子のゲノムマッピングによって確認することができる。
【0084】
ある遺伝子によってコードされるアミノ酸配列が第2の遺伝子のそれと類似するアミノ酸配列を有する場合、そのタンパク質は第2のタンパク質に対して「相同性」を有する、または「相同」である。あるいは、あるタンパク質と第2のタンパク質が「類似の」アミノ酸配列を有する場合、そのタンパク質は第2のタンパク質に対して相同性を有する。したがって、「相同タンパク質」という用語は、2つのタンパク質が類似のアミノ酸配列を持つことを意味することを意図している。特定の例では、2つのタンパク質間の相同性は、進化によって関連付けられた、その共通の祖先を示している。「相同配列」または「ホモログ」という用語は、機能的に関連していると考えられる、確信される、または知られている。機能的関係は、(a)配列同一性の程度、および/または(b)同じもしくは類似の生物学的機能、などであるが、これらに限定されない、いくつかの方法のいずれか1つで示すことができる。好ましくは、(a)と(b)の両方が示される。配列同一性の程度は様々であってよいが、一態様では、少なくとも50%(当技術分野で公知の標準的な配列アラインメントプログラムを使用)、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。相同性は、当技術分野で容易に入手できるソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel et al., eds., 1987) Supplement 30, section 7.718, Table 7.71に記載されるものを用いて、決定することができる。アラインメントプログラムには、MacVector(Oxford Molecular Ltd, Oxford, 英国)およびALIGN Plus(Scientific and Educational Software社, Pennsylvania)がある。他の非限定的なアラインメントプログラムには、Sequencher(Gene Codes社, Ann Arbor, Michigan)、AlignX、およびVector NTI(Invitrogen社, Carlsbad, CA)が含まれる。類似の生物学的機能には、以下が含まれるが、これらに限定されない:同じもしくは類似の酵素反応を触媒する;基質または補因子に対して同じもしくは類似の選択性を有する;同じもしくは類似の安定性を有する;様々な発酵条件(温度、pHなど)に対して同じもしくは類似の耐性を有する;および/または様々な代謝基質、産物、副産物、中間体などに対して同じもしくは類似の耐性を有する。生物学的機能の類似性の程度は様々であってよいが、一態様では、所定の生物学的機能を決定するために当業者に知られている1つまたは複数のアッセイに従って、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。
【0085】
用語「バリアント」は、本明細書に記載される任意のポリペプチドまたは酵素を指す。バリアントはまた、多量体の1つまたは複数の構成成分、個々の構成成分を含む多量体、多様な個々の構成成分を含む多量体(例えば、参照分子の多量体)、化学的分解産物、および生物学的分解産物を包含する。特定の非限定的な態様では、酵素は、参照酵素をコードするポリペプチド配列の任意の部分の変化(複数可)によって、参照酵素に対して「バリアント」であり得る。参照酵素のバリアントは、参照酵素の調製物の酵素活性を測定するために用いられる標準アッセイにおいて、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%またはそれ以上の酵素活性を有する可能性がある。いくつかの態様では、バリアントはまた、本開示の全長酵素、つまりプロセシングされていない酵素に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを指すこともできる。いくつかの態様では、バリアントはまた、本開示の成熟酵素、つまりプロセシングされた酵素に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを指すこともできる。
【0086】
本明細書で使用する用語「産生力(yield potential)」は、生合成経路からの産物の収量を指す。一態様では、産生力は、出発化合物の重量あたりの最終産物の重量パーセントとして表すことができる。
【0087】
本明細書で使用する「熱力学的最大収率(thermodynamic maximum yield)」という用語は、グルコースなどの所定の原料の発酵から得られた産物の最大収率を指し、原料と比較した産物のエネルギー値に基づいている。通常の発酵では、光、水素ガス、メタン、電気などの追加のエネルギー源を使用しないと、産物は原料よりも多くのエネルギーを含むことができない。熱力学的最大収率とは、原料からの全てのエネルギーと質量が産物に変換されるときの産物収率を意味する。この収率は計算で求めることができ、特定の経路に依存しない。産物へ向かう特定の経路が熱力学的最大収率よりも低い収率を有する場合、その経路は質量を失い、より効率的な産物に向かう経路に改善または置換できる可能性が最も高い。
【0088】
用語「レドックスバランス」とは、所与の一連の反応におけるレドックス補因子の全体量を指す。レドックス補因子が不足すると、レドックスバランスがマイナスになり、補因子の需要を満たすために原料を燃やす必要があるため、そのような経路の収率は現実的でなくなる。レドックス補因子が余剰にあると、レドックスバランスはプラスであるとされ、そのような経路の収率は最大収率よりも低くなる(Dugar et al. "Relative potential of biosynthetic pathways for biofuels and bio-based products" Nature biotechnology 29.12 (2011): 1074)。さらに、その経路が消費した量と同量のレドックス補因子を産生する場合、レドックスバランスはゼロとなり、その経路を「レドックスバランスがとれた」と呼ぶことができる。代謝経路を設計し、かつレドックス補因子のバランスがとれるように、またはバランスがとれる状態に近づけるように生物を工学的に操作すると、通常、バランスの悪い経路と比較して、目的化合物のより効率的で高収率の産生が得られる。レドックス反応は、同時に発生する2つの半反応(half-reaction)として一緒に起こり、一方は酸化反応であり、他方は還元反応である。レドックス過程では、還元体が酸化体に電子を移動させる。したがって、この反応では、還元体または還元剤が電子を失って酸化され、酸化体または酸化剤が電子を獲得して還元される。一態様では、レドックス反応は生物学的系において起こる。レドックス状態という用語は、微生物細胞などの生物学的系における天然または非天然の代謝経路のNAD+/NADHおよびNADP+/NADPHのバランスを説明するためによく使用される。レドックス状態は、いくつかのセットの代謝産物(例えば、ラクタートとピルバート、β-ヒドロキシブチラート、およびアセトアセタート)のバランスに反映され、それらの相互変換はこれらの比率に依存している。一態様では、水素または電子の外部供給源は、水素をNAD(P)Hに変換できるヒドロゲナーゼ酵素の使用と組み合わせても組み合わせなくても、マイナスのレドックスバランスを有する代謝経路において、すなわち、NAD(P)Hなどのレドックス補因子が不足している場合に、産物の収率を高めるのに有益であり得る。
【0089】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはそのアナログであるヌクレオチドの任意の長さの重合形態を指す。ポリヌクレオチドは任意の3次元構造を持つことができ、既知または未知の任意の機能を果たすことができる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(座位)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、短い干渉RNA(siRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、単離された任意の配列のDNA、単離された任意の配列のRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログなどの、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーに集合させる前または後に付与し得る。ヌクレオチドの配列には、非ヌクレオチド成分が介在していてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後、標識成分とのコンジュゲーションなどにより、さらに修飾することができる。
【0090】
「相補性」とは、ある核酸が従来のワトソン・クリック型または他の非従来型によって他の核酸配列と水素結合を形成する能力を指す。パーセント相補性は、ある核酸分子中の残基が第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン・クリック塩基対)を形成できる割合を示す(例えば、10個のうちの5、6、7、8、9、10個は、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%、100%相補的である)。「完全に相補的」とは、ある核酸配列の全ての連続した残基が、第2の核酸配列の同数の連続した残基と水素結合することを意味する。本明細書で使用する「実質的に相補的」とは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド、またはそれ以上の領域にわたって少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%である相補性の程度を指し、あるいはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。配列同一性は、例えばパーセント相補性を評価する目的のために、以下のアルゴリズムを含むがこれらに限定されない、任意の適切なアラインメントアルゴリズムによって測定することができる:Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlで入手できるEMBOSS Needleアライナー(aligner)を参照;任意でデフォルトに設定)、BLASTアルゴリズム(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで入手できるBLASTアラインメントツールを参照;任意でデフォルトに設定)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/nucleotide.htmlで入手できるEMBOSS Waterアライナーを参照;任意でデフォルトに設定)。最適なアラインメントは、デフォルトパラメータを含めて、選択されたアルゴリズムの適切なパラメータを用いて評価することができる。
【0091】
「生物学的に純粋な培養物」または「実質的に純粋な培養物」という用語は、本明細書に記載の細菌種の培養物が、他の細菌種を、該培養物の複製を妨害するまたは通常の細菌学的技術によって検出されるのに十分な量で含まないことを意味する。
【0092】
本明細書で使用する「制御配列」は、オペレーター、プロモーター、サイレンサー、またはターミネーターを指す。
【0093】
本明細書で使用する「導入された」は、現代のバイオテクノロジーの手段による導入を指し、自然界で起こる導入を指すのではない。
【0094】
本明細書で使用する「構成的プロモーター」は、ほとんどの条件下でかつ/またはほとんどの発育段階において活性であるプロモーターを指す。バイオテクノロジーに使用される発現ベクター中で構成的プロモーターを用いることには、いくつかの利点がある:例えば、トランスジェニック細胞または生物の選択に用いられるタンパク質の高レベルの産生;容易な検出と定量を可能にするレポータータンパク質または評価可能なマーカーの高レベルの発現;調節転写システムの一部である転写因子の高レベルの産生;生物において普遍的活性を必要とする化合物の産生;あらゆる発育段階で必要とされる化合物の産生など。
【0095】
本明細書で使用する「非構成的プロモーター」は、特定の条件下、特定の種類の細胞内で、かつ/または特定の発育段階において活性であるプロモーターを指す。例えば、誘導性プロモーターおよび発育制御下のプロモーターは、非構成的プロモーターである。
【0096】
本明細書で使用する「誘導性」または「抑制性」プロモーターは、化学的要因または環境要因の制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターによる転写に影響を与える可能性のある環境条件の例には、嫌気性条件、特定の化学物質、光の存在、酸性または塩基性条件などが含まれる。
【0097】
本明細書で使用する「機能的に連結された」という用語は、一方の機能が他方によって調節されるように、単一の核酸断片上にそれらの核酸配列が結合されていることを意味する。例えば、あるプロモーターがそのコード配列の発現を調節することができる場合(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合)、そのプロモーターはコード配列と機能的に連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンスの方向で調節配列と機能的に連結され得る。別の例では、本開示の相補的RNA領域は、標的mRNAに対して5'で、または標的mRNAに対して3'で、または標的mRNA内で、直接的または間接的に、機能的に連結され得るか、あるいは第1の相補的領域が標的mRNAに対して5'であり、その相補体が3'である。
【0098】
本明細書で使用する「触媒的に重合される」という用語は、本開示のモノマーが非生物学的状況または非インビボ状況において重合される重合プロセスを指す。
【0099】
本明細書で使用する用語「シグナル配列」は、細胞部位または細胞外環境に向けてペプチドおよびポリペプチドを移送するアミノ酸配列を指す。シグナル配列は通常、ポリペプチドのN末端部分にあり、一般的には酵素により除去される。シグナル配列を持つポリペプチドは、全長および/またはプロセシングされていないと呼ばれる。シグナル配列を除いたポリペプチドは、成熟しているおよび/またはプロセシングされていると呼ばれる。
【0100】
本明細書で使用する「微生物組成物」は、本開示の1つまたは複数の微生物を含む組成物を指す。
【0101】
本明細書で使用する「担体」、「許容される担体」、「商業的に許容される担体」、または「産業上許容される担体」は、微生物を投与、保存または移送することができ、微生物に有害な影響を与えない希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0102】
本明細書で使用する用語「生産性」は、1時間あたりに産生される2,4-FDMEまたは2,4-FDCAなどのバイオ産物の総量を指す。
【0103】
本明細書で使用する「嫌気的」は、培養または生育条件に関連して使用する場合、酸素の量が液体培地中の溶存酸素の飽和状態の約0%未満であることを意味することが意図される。この用語はまた、約0%未満の酸素の雰囲気に維持された、液体または固体培地の密閉チャンバーを含むことを意図している。嫌気的条件には、微生物が最終電子受容体として使用するには発酵培地中の酸素濃度が低すぎる条件も含まれる。嫌気的条件は、酸素が最終電子受容体として微生物にもはや利用できなくなるまで、窒素などの不活性ガスを発酵培地に噴霧することで達成され得る。あるいは、嫌気的条件は、酸素が最終電子受容体として微生物に利用できなくなるまで、微生物が発酵の有効酸素を消費することによって達成され得る。
【0104】
本明細書で使用する用語「好気的」は、培養または生育条件に関連して使用する場合、酸素の量が液体培地中の溶存酸素の飽和状態の約10%を超えることを意味することが意図される。この用語はまた、約10%~約21%の酸素(海水面の大気中に見られる)の雰囲気に維持された、液体または固体培地の密閉チャンバーを含むことを意図している。
【0105】
本明細書で使用する用語「微好気的」は、培養または生育条件に関連して使用する場合、酸素の量が嫌気的条件と好気的条件の間の準飽和量で存在することを意味することが意図される;ここでは、好気性微生物が酸欠死を起こさずに維持され得る。用語「微好気的」は、培養または生育条件に関連して使用する場合、酸素の量が液体培地中の溶存酸素の飽和状態の0%~10%の間であることを意味することが意図される。この用語はまた、好気的条件を達成することなく酸素が供給されるのとほぼ同じ速度で利用される酸素の流れの中に維持された、液体または固体培地の密閉チャンバーを含むことを意図している。
【0106】
組換え微生物
いくつかの態様では、本開示は、酵母の嫌気的代謝において優勢なレドックスシンク(redox sink)としてのグリセロール形成を2,4-FDME産生に置き換えることによって、2,4-FDMEおよびエタノールを嫌気的に共産生することができる、組換え酵母を提供する。いくつかの態様では、本開示は、2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールを嫌気的に共産生することができる組換え微生物を提供する。
【0107】
いくつかの態様では、この組換え微生物は、炭素源をグリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)に変換する。G3Pは、一般的な天然の中間代謝産物である。いくつかの態様では、G3Pは、解糖経路を経てグルコースから、またはキシロースから(例えば、ペントースリン酸経路から)、またはグリセロールから産生され得る。いくつかの態様では、2,4-FDMEを嫌気的に産生することができる組換え微生物は、単糖(例:ヘキソース、ペントース)またはグリセロールを含む炭素源を利用する。いくつかの態様では、組換え微生物は、ホルマートなどの一炭素化合物であるさらなる炭素源を利用する。いくつかの態様では、組換え微生物は、酵素を触媒とするいくつかの連続的段階を経て、G3Pを2,4-FDMEに嫌気的に変換する能力を備えている。
【0108】
いくつかの態様では、本開示の組換え微生物は真菌である。
【0109】
いくつかの態様では、組換え微生物は真核微生物である。いくつかの態様では、真核微生物は酵母である。いくつかの態様では、酵母は、ヤロウイア属、カンジダ属、サッカロミセス属、ピキア属、ハンセヌラ属、クルイベロミセス属、イサチェンキア属、ジゴサッカロミセス属、デバリオミセス属、シゾサッカロミセス属、パキソレン属、クリプトコッカス属、トリコスポロン属、トルラスポラ属、ロドトルラ属、シェファーソミセス属、およびミキソザイマ属からなる群より選択される属のメンバーである。いくつかの態様では、酵母は、サッカロミセス属の種、サッカロミセス・セレビシエ、カンジダ・クルセイ、イサチェンキア属の種、イサチェンキア・オリエンタリス、ハンセヌラ属の種、デバリオミセス属の種、ロドツラ属の種、パキソレン属の種、クリプトコッカス属の種、トリコスポロン属の種、ミキソザイマ属の種、カンジダ属の種、クルイベロミセス属の種、ピキア属の種、ピキア・クドリアブゼビ、シゾサッカロミセス属の種、トルラスポラ属の種、ジゴサッカロミセス属の種、ヤロウイア属の種、ヤロウイア・リポリティカ、シェファーソミセス属の種、またはシェファーソミセス・スチピチスから選択される。
【0110】
4-HMF
いくつかの態様では、本開示は、(1)1つまたは複数の炭素源をグリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)に変換し、(2)G3Pを(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファート(4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートともいう)に変換し、かつ(3)(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換するための、組換え微生物および関連方法を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の炭素源は、グリセロール、単糖、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0111】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、炭素源をグリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)に変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む。いくつかの態様では、グリセロールは、少なくとも1つの内因性または外因性グリセロールキナーゼによってグリセロール-3-ホスファートに変換される。いくつかの態様では、グリセロール-3-ホスファートは、少なくとも1つの内因性または外因性グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼによってジヒドロキシアセトンホスファート(DHAP)に変換される。いくつかの態様では、グリセロールは、少なくとも1つの内因性または外因性グリセロールデヒドロゲナーゼによってジヒドロキシアセトンに変換される。いくつかの態様では、ジヒドロキシアセトンは、少なくとも1つの内因性または外因性ジヒドロキシアセトンキナーゼによってジヒドロキシアセトンホスファート(DHAP)に変換される。いくつかの態様では、DHAPは、少なくとも1つの内因性または外因性トリオースリン酸イソメラーゼによってG3Pに変換される。本明細書で企図される例示的な、しかし非限定的な、グリセロール同化経路については、Zhang et al.(2010. Applied and Environmental Microbiology, 76.8:2397-2401)を参照されたい。
【0112】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、G3Pから(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートへの変換を触媒する(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートシンターゼをコードする、少なくとも1つの内因性または外因性核酸分子を含む。いくつかの態様では、(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートシンターゼは、EC番号4.2.3.153に分類される。いくつかの態様では、EC 4.2.3.153の(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートシンターゼは、遺伝子mfnBに由来し得る。いくつかの態様では、mfnBは、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)に由来し得る。いくつかの態様では、EC 4.2.3.153は、mfnBのホモログに由来し得る。
【0113】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートから(4-HMF)への変換を触媒するホスファターゼまたはキナーゼをコードする、少なくとも1つの内因性または外因性核酸分子を含む。いくつかの態様では、ホスファターゼは、EC番号3.1.3に分類される。いくつかの態様では、ホスファターゼEC番号3.1.3は、アルカリホスファターゼ(EC番号3.1.3.1)、酸性ホスファターゼ(EC番号3.1.3.2)、フルクトース-ビスホスファターゼ(EC番号3.1.3.11)、糖ホスファターゼ(EC番号3.1.3.23)、または糖末端ホスファターゼ(EC番号3.1.3.58)から選択される。いくつかの態様では、キナーゼは、EC番号2.7.1に分類される。いくつかの態様では、キナーゼEC番号2.7.1は、フルクトキナーゼ(EC番号2.7.1.4)、リボキナーゼ(EC番号2.7.1.15)、リブロキナーゼ(EC番号2.7.1.16)、キシルロキナーゼ(EC番号2.7.1.17)、またはD-リブロキナーゼ(EC番号2.7.1.47)から選択される。
【0114】
したがって、いくつかの態様では、組換え微生物は、炭素源をグリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)に変換することができるポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;G3Pから(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートへの変換を触媒する(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートシンターゼをコードする少なくとも1つの内因性または外因性核酸分子;および(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートから4-HMFへの変換を触媒するホスファターゼまたはキナーゼをコードする少なくとも1つの内因性または外因性核酸分子を含む。炭素源をG3Pに、G3Pを(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートに、および(5-ホルミルフラン-3-イル)メチルホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換するのに適した追加の酵素は、米国特許出願公開第2020/0277639号に開示されている。
【0115】
2,4-FDME
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の炭素源を2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)に変換するための組換え微生物および関連方法を含む。
【0116】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、本明細書に開示されるような酵素を触媒とするいくつかの連続的段階を経て、G3Pを2,4-FDMEに変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む。いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、4-HMFを2,4-FDMEに変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む。いくつかの態様では、4-HMFを2,4-FDMEに変換することができるポリペプチドは、デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドは、NADHを消費するデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、該デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1に分類される。いくつかの態様では、デヒドロゲナーゼEC番号1.1.1は、アルコールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.1)、アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)(EC番号1.1.1.2)、D-キシロースレダクターゼ(EC番号1.1.1.307)、アリールアルコールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.90)、アリールアルコールデヒドロゲナーゼ(EC番号1.1.1.91)、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択される。
【0117】
いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、Uniprot番号P00330として入手できるAdh1配列に基づいて、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6(例えば、1、2、3、4、5、または6)個の非保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、変異型アルコールデヒドロゲナーゼは、変異S110P、L117S、Y295C、またはこれらの組み合わせを含む。Laadan, Yeast, 25(3):191-198 (2008)を参照されたい。
【0118】
グリセロール産生の改変を伴う2,4-FDME産生
グリセロールは、サッカロミセス・セレビシエや他のエタノール産生酵母による嫌気的発酵でエタノールを産生する際の主な副産物であり、価値の低い化学物質である。グリセロール産生への糖の転用は、エタノールの産生量とプロセスの経済性にマイナスの影響を及ぼす。S.セレビシエの嫌気的エタノール産生培養では、生合成反応から生じた過剰のNADHが、式3および式4に従って、糖基質の一部をグリセロールに還元することによって再酸化される。
式3: 1 グルコース → 2 DHAP
式4: 1 DHAP + NADH → グリセロール + NAD+
【0119】
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の炭素源を2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)およびエタノールに嫌気的に変換するための組換え微生物および関連方法を含む。
【0120】
いくつかの態様では、本明細書に開示される2,4-FDME経路は、エタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結されて、ATP余剰をもたらす。いくつかの態様では、本明細書に開示される連結経路は、2,4-FDME産生の好気的経路よりも効率的で費用対効果の高い2,4-FDMEの嫌気的産生を提供する。さらに、2,4-FDME産生とエタノール産生とを連結させることで、経済的に価値のある化学物質と共に2,4-FDMEを有利に産生することが可能である。
【0121】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるNADHを消費する2,4-FDME経路は、グリセロール産生経路における酵素の欠失および/またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる遺伝子改変と結び付いている。いくつかの態様では、該経路をエタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結させることで、ATP余剰がもたらされる。
【0122】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、(1)本明細書に開示される酵素を触媒とするいくつかの連続的段階を経て、炭素源を2,4-FDMEに変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子と、(2)グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変とを含む。
【0123】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路の酵素は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.8またはEC番号1.1.5.3に分類される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子が該微生物から欠失されて、GPD2遺伝子が該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子が該微生物においてダウンレギュレートされて、GPD2遺伝子が該微生物から欠失される。
【0124】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路の酵素は、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼは、EC番号3.1.3.21に分類される。
【0125】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路の酵素は、GPD1、GPD2、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼ、またはこれらの組み合わせである。
【0126】
いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物から欠失されるか、または該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの1つが該微生物から欠失されて、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの他の2つが該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの1つが該微生物においてダウンレギュレートされて、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの他の2つが該微生物から欠失される。
【0127】
本開示のいくつかの態様は図1に示され、図1は、炭素原料(例:グルコース)から2,4-FDMEおよびエタノールへの嫌気的生合成変換を概略的に示しており、ここでは、酵母NAD依存性グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼのGPD1およびGPD2アイソフォームが欠失されている。
【0128】
本開示はまた、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法にも向けられる。いくつかの態様では、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法は、本明細書に記載の組換え微生物に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む。いくつかの態様では、炭素源は、ヘキソース、ペントース、グリセロール、および/またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、その条件は嫌気的条件である。いくつかの態様では、該方法は、組換え微生物を、炭素源を提供する供給原料を含む培地中、酸素の非存在下で2,4-FDMEが産生されるまで培養する段階を含む。
【0129】
いくつかの態様では、組換え微生物において2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階;および(c)4-HMFを2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)に変換する段階を含み、ここで、該微生物は、グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を含む。いくつかの態様では、該方法は、メチルホスファートシンターゼを用いて、グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ホスファターゼまたはキナーゼを用いて、4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、デヒドロゲナーゼを用いて、4-HMFを2,4-FDMEに変換する段階を含む。
【0130】
本開示は、2,4-FDMEを産生することができる組換え微生物を作製する方法を含み、該方法は、以下:(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(d)グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を、組換え微生物に導入し、かつ/または該組換え微生物において過剰発現させる段階を含む。
【0131】
2,4-FDME産生とホルマート酸化との連結
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の炭素源を2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)およびエタノールに嫌気的に変換するための組換え微生物および関連方法を含む。いくつかの態様では、炭素源はホルマートをさらに含む。
【0132】
いくつかの態様では、本明細書に開示される2,4-FDME経路は、エタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結されて、ATP余剰をもたらす。いくつかの態様では、本明細書に開示される連結経路は、2,4-FDME産生の好気的経路よりも効率的で費用対効果の高い2,4-FDMEの嫌気的産生を提供する。さらに、2,4-FDME産生とエタノール産生とを連結させることで、経済的に価値のある化学物質と共に2,4-FDMEを有利に産生することができる。
【0133】
いくつかの態様では、ホルマートは、炭素原料中で補助基質として利用される。いくつかの態様では、サッカロミセス・セレビシエでの内因性NAD依存性ギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)は、式5に従ってNADHへの電子の供与を伴って、ホルマートの、二酸化炭素への酸化を触媒する。
式5: ホルマート + NAD+ → CO2 + NADH + H+
【0134】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるNADH/NADPHを消費する2,4-FDME経路は、CO2へのホルマート酸化と連結される。いくつかの態様では、該経路をエタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結させることで、ATP余剰がもたらされる。
【0135】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、(1)本明細書に記載されるような酵素を触媒とするいくつかの連続的段階を経て、炭素源を2,4-FDMEに変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(2)ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む。
【0136】
いくつかの態様では、ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒するポリペプチドは、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼである。NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.2.1.2に分類される。いくつかの態様では、該微生物は、外部から提供されたホルマートをNADHおよびCO2に変換する。いくつかの態様では、ホルマートは発酵培地中に供給される。
【0137】
いくつかの態様では、該組換え微生物は、グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を含む。
【0138】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路の該酵素は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.8またはEC番号1.1.5.3に分類される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子が該微生物から欠失されて、GPD2遺伝子が該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子が該微生物においてダウンレギュレートされて、GPD2遺伝子が該微生物から欠失される。
【0139】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路の酵素は、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼである。いくつかの態様では、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼは、EC番号3.1.3.21に分類される。
【0140】
いくつかの態様では、グリセロール産生経路の酵素は、GPD1、GPD2、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼ、またはこれらの組み合わせである。
【0141】
いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物から欠失されるか、または該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物から欠失される。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの1つが該微生物から欠失されて、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの他の2つが該微生物においてダウンレギュレートされる。いくつかの態様では、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの1つが該微生物においてダウンレギュレートされて、GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子のうちの他の2つが該微生物から欠失される。
【0142】
本開示のいくつかの態様は図2に示され、図2は、炭素原料(例:グルコース)からの2,4-FDMEおよびエタノールへの嫌気的生合成変換を概略的に示しており、ここでは、ホルマートが原料中に補助炭素源(co-carbon source)として提供される。
【0143】
本開示は、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法にも向けられる。いくつかの態様では、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法は、本明細書に記載の組換え微生物に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む。いくつかの態様では、炭素源は、ヘキソース、ペントース、グリセロール、および/またはこれらの組み合わせを含み、さらに、ホルマートなどの一炭素化合物である炭素源を含む。いくつかの態様では、その条件は嫌気的条件である。いくつかの態様では、該方法は、組換え微生物を、炭素源を提供する供給原料を含む培地中、酸素の非存在下で2,4-FDMEが産生されるまで培養する段階を含む。
【0144】
いくつかの態様では、組換え微生物において2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階;(c)4-HMFを2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)に変換する段階;ならびに(d)ホルマートをNADHおよびCO2に変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、メチルホスファートシンターゼを用いて、グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ホスファターゼまたはキナーゼを用いて、4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、デヒドロゲナーゼを用いて、4-HMFを2,4-FDMEに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼを用いて、ホルマートをNADHおよびCO2に変換する段階を含む。いくつかの態様では、該微生物は、グリセロール産生経路の酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路の酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変を含む。
【0145】
本開示は、2,4-FDMEを産生することができる組換え微生物を作製する方法を含み、該方法は、以下:(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(d)ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を、組換え微生物に導入し、かつ/または該組換え微生物において過剰発現させる段階を含む。
【0146】
2,4-FDME産生とMSAベースのアセトン/2-プロパノール経路との連結
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の炭素源を2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールに嫌気的に変換するための組換え微生物および関連方法を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の炭素源は、グリセロール、単糖、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0147】
いくつかの態様では、本明細書に開示される2,4-FDME経路は、レドックスバランスをもたらすために電子消費経路と連結され、ATP余剰をもたらすためにエタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結される。いくつかの態様では、本明細書に開示される連結経路は、2,4-FDME産生の好気的経路よりも効率的で費用対効果の高い2,4-FDMEの嫌気的産生を提供する。さらに、2,4-FDME産生とエタノール産生とを連結させることで、経済的に価値のある化学物質と共に2,4-FDMEを有利に産生することができる。
【0148】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるNADH/NADPH消費2,4-FDME経路は、MSA中間体を経るアセトンおよび/または2-プロパノールへのNADH/NADPH生成経路と連結される。いくつかの態様では、該経路をエタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結させることで、ATP余剰がもたらされる。
【0149】
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の炭素源を2,4-FDMEに変換するための、ならびにホスホエノールピルバートを、マロン酸セミアルデヒドを経て、アセトンおよび/またはイソプロパノールに変換するための、組換え微生物および関連方法を含む。
【0150】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、以下を含む:(1)本明細書に記載されるような酵素を触媒とするいくつかの連続的段階を経て、炭素源を2,4-FDMEに変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(2)ホスホエノールピルバート(PEP)からのオキサロアセタートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(3)(a)オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生;および/または(b)オキサロアセタートからのアスパルタートの産生、アスパルタートからのβ-アラニンの産生、およびβ-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生;および/または(c)マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生;および/または(d)オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生、を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは(4)(a)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生;および/または(b)マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生;および/または(c)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは(5)(a)アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生;および/または(b)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生、およびHMG-CoAからのアセトアセタートの産生、を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(6)アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子。
【0151】
いくつかの態様では、ホスホエノールピルバート(PEP)からのオキサロアセタートの産生を触媒するポリペプチドは、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)および/またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(pepck)である。いくつかの局面では、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼおよび/またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫から選択される。いくつかの局面では、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼおよび/またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼは、大腸菌(E. coli)由来である。
【0152】
いくつかの態様では、オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するポリペプチドは、オキサロアセタートの直接脱炭酸を触媒するオキサロ酢酸デカルボキシラーゼを含む。いくつかの態様では、組換え微生物は、EC番号4.1.1.72、EC番号4.1.1.7、またはEC番号4.1.1.71の酵素を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数のオキサロ酢酸デカルボキシラーゼを含む。いくつかの態様では、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼは、α-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ、または2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼから選択される。いくつかの態様では、α-ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(kdca)は、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来である。いくつかの態様では、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ(Mdlc)は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来である。いくつかの態様では、2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼ(Oxdc)は、オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)由来である。いくつかの態様では、2-オキソグルタル酸デカルボキシラーゼ(oxdc)は、ミドリムシ(Euglena gracilis)由来である。いくつかの局面では、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼは、前述の酵素の遺伝子改変バリアントである。オキサロアセタートからマロン酸セミアルデヒドへの直接変換を触媒するのに適した遺伝子改変酵素バリアントの例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0021978号、米国特許第8,809,027号、国際出願公開番号WO 2018/213349、および米国特許出願第16/719,833号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0153】
いくつかの態様では、オキサロアセタートからのアスパルタートの産生を触媒するポリペプチドは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aat2)である。いくつかの態様では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼは、S.セレビシエ由来である。
【0154】
いくつかの態様では、アスパルタートからのβ-アラニンの産生を触媒するポリペプチドは、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ(pand)である。いくつかの態様では、アスパラギン酸デカルボキシラーゼは、コクヌストモドキ(Tribolium castaneum)由来である。いくつかの態様では、アスパラギン酸デカルボキシラーゼは、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)由来である。
【0155】
いくつかの態様では、β-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するポリペプチドは、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(baat)および/またはβ-アラニントランスアミナーゼ(pyd4)である。いくつかの態様では、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼは、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)由来である。いくつかの態様では、β-アラニントランスアミナーゼは、ラカンセア・クルイヴェリ(Lachancea kluyveri)由来である。
【0156】
いくつかの態様では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼ、および/またはβ-アラニントランスアミナーゼは、真菌、酵母、細菌、昆虫、動物、植物、または鞭毛虫から選択される。
【0157】
いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼである。いくつかの態様では、マロニル-CoAレダクターゼ(mcr)は、クロロフレクサス・アウランチアクス(Chloroflexus aurantiacus)由来である。いくつかの態様では、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(kivD)は、ラクトコッカス・ラクチス由来である。いくつかの態様では、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(kdcA)は、ラクトコッカス・ラクチス由来である。いくつかの態様では、2-ケト酸デカルボキシラーゼ(ARO10)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。
【0158】
いくつかの態様では、オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロニル-CoAシンテターゼである。いくつかの態様では、マロニル-CoAシンテターゼは、EC番号6.2.1.-に分類される。いくつかの態様では、マロニル-CoAシンテターゼ(matB)は、リゾビウム・トリフォリ(Rhizobium trifolii)由来である。いくつかの態様では、マロニル-CoAシンテターゼ(AAE13)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来である。
【0159】
いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼは、EC番号1.2.1.18またはEC番号1.2.1.27に分類される。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(bauC)は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来である。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Ald6)は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来である。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(iolA)は、リステリア・モノサイトゲネス(Lysteria monocytogenes)由来である。いくつかの態様では、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(dddC)は、ハロモナス属(Halomonas)の種HTNK1由来である。
【0160】
いくつかの態様では、アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、チオラーゼおよび/またはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼである。いくつかの態様では、チオラーゼまたはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼは、EC番号2.3.1.16またはEC番号2.3.1.9に分類される。いくつかの態様では、チオラーゼは、β-ケトチオラーゼである。いくつかの態様では、β-ケトチオラーゼ(phaA)は、アシネトバクター属(Acinetobacter)の種RA384由来である。いくつかの態様では、β-ケトチオラーゼ(BktB)は、カプリアビダス・ネカトール(Cupriviadus necator)由来である。いくつかの態様では、β-ケトチオラーゼ(BktC)は、カプリアビダス・ネカトール由来である。いくつかの態様では、β-ケトチオラーゼ(BktB)は、カプリアビダス・タイワネンシス(Cupriavidus taiwanensis)由来である。いくつかの態様では、β-ケトチオラーゼ(POT1)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。いくつかの態様では、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(phaA)は、カプリアビダス・ネカトール由来である。いくつかの態様では、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(thlA)は、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)由来である。いくつかの態様では、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(thlB)は、クロストリジウム・アセトブチリクム由来である。いくつかの態様では、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(phaA)は、ズーグレア・ラミゲラ(Zoogloea ramigera)由来である。いくつかの態様では、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(atoB)は、大腸菌(Escherichia coli)由来である。いくつかの態様では、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(ERG10)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。
【0161】
いくつかの態様では、マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、マロニル-CoAデカルボキシラーゼである。いくつかの態様では、マロニル-CoAデカルボキシラーゼは、EC番号4.1.1.9に分類される。いくつかの態様では、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ(MatA)は、リゾビウム・トリフォリ由来である。いくつかの態様では、マロニル-CoAデカルボキシラーゼ(MLYCD)は、ヒト(Homo sapiens)由来である。
【0162】
いくつかの態様では、マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、アセトアセチル-CoAシンターゼである。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAシンターゼは、EC番号2.3.1.194に分類される。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAシンターゼは、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の種由来のnphT7である。
【0163】
いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒するポリペプチドは、アセトアセチル-CoAチオエステラーゼおよび/またはアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ、および/またはアセトアセチル-CoAシンターゼである。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAチオエステラーゼおよび/またはアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ、および/またはアセトアセチル-CoAシンターゼは、EC番号2.8.3.8、EC番号2.8.3.9、EC番号2.3.3.10、EC番号4.1.3.4、またはEC番号2.3.1.194に分類される。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼは、大腸菌由来のatoA/atoDである。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼは、パラバークホルデリア・ウナメ(Paraburkholderia unamae)由来のC7401_123119である。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼは、大腸菌由来のYdiFである。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼは、クロストリジウム・アセトブチリクム由来のctfA/ctfBである。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼは、クロストリジウム・サッカロブチリクム(Clostridium saccharobutylicum)由来のctfA/ctfBである。いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ/シンターゼは、大腸菌由来のctfA/ctfBである。
【0164】
いくつかの態様では、アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するポリペプチドは、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼである。いくつかの態様では、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼは、EC番号2.3.3.10に分類される。いくつかの態様では、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼは、サッカロミセス・セレビシエ由来のERG13である。いくつかの態様では、HMG-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒するポリペプチドは、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼである。いくつかの態様では、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼは、EC番号4.1.3.4に分類される。いくつかの態様では、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼは、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のyngGである。
【0165】
いくつかの態様では、アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドは、アセト酢酸デカルボキシラーゼである。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼは、EC番号4.1.1.4に分類される。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼ(adc)は、クロストリジウム・アセトブチリクム由来である。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼ(adc)は、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニクム(Clostridium saccharoperbutylacetonicum)由来である。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼ(adc)は、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinkii)由来である。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼ(adc)は、クロストリジウム・パスツラヌム(Clostridium pasteuranum)由来である。いくつかの態様では、アセト酢酸デカルボキシラーゼ(adc)は、シュードモナス・プチダ由来である。
【0166】
いくつかの態様では、組換え微生物は、アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む。いくつかの態様では、アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒するポリペプチドは、アルコールデヒドロゲナーゼである。いくつかの局面では、アルコールデヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.2またはEC番号1.2.1.87に分類される。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(alrA)は、アシネトバクター属(Acinetobacter)の種由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(bdhI)は、クロストリジウム・アセトブチリクム由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(bdhII)は、クロストリジウム・アセトブチリクム由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(adhA)は、クロストリジウム・グルタミクム(Clostridium glutamicum)由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(yqhD)は、大腸菌由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(adhP)は、大腸菌由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(PduQ)は、プロピオニバクテリウム・フロイデンライシイ(Propionibacterium freudenreichii)由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH2)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH4)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH6)は、サッカロミセス・セレビシエ由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(PduQ)は、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼ(Adh)は、スルフォロブス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)由来である。いくつかの態様では、アルコールデヒドロゲナーゼは、2-プロパノールデヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、2-プロパノールデヒドロゲナーゼは、デヴォシア・リボプラビナ(Devosia riboplavina)由来のPRDHである。いくつかの態様では、2-プロパノールデヒドロゲナーゼは、スポロトリクム・プルベルレンツム(Sporotrichum pulverulentum)由来のPRDHである。
【0167】
本開示のいくつかの態様は、図3に示されており、図3は、炭素原料(例:グルコース)からの2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールへの嫌気的生合成変換を概略的に示している。
【0168】
本開示は、2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールを共産生する方法にも向けられる。いくつかの態様では、2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールを共産生する方法は、本明細書に記載の組換え微生物に、発酵性炭素源を、2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む。いくつかの態様では、炭素源は、ヘキソース、ペントース、グリセロール、および/またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、その条件は嫌気的条件である。いくつかの態様では、該方法は、組換え微生物を、炭素源を提供する供給原料を含む培地中、酸素の非存在下で2,4-FDMEが産生されるまで培養する段階を含む。
【0169】
いくつかの態様では、組換え微生物において2,4-FDME、エタノール、ならびにアセトンおよび/またはイソプロパノールを共産生する方法は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階;(c)4-HMFを2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)に変換する段階;(d)PEPをオキサロアセタートに変換する段階;(e)(i)オキサロアセタートをマロン酸セミアルデヒドに、および/または(ii)オキサロアセタートをアスパルタートに、アスパルタートをβ-アラニンに、およびβ-アラニンをマロン酸セミアルデヒドに、および/または(iii)マロン酸セミアルデヒドをマロニル-CoAに、および/または(iv)オキサロアセタートをマロニル-CoAに、変換する段階;(f)(i)マロン酸セミアルデヒドをアセチル-CoAに、アセチル-CoAをアセトアセチル-CoAに、および/または(ii)マロニル-CoAをアセチル-CoAに、アセチル-CoAをアセトアセチル-CoAに、および/または(iii)マロニル-CoAをアセトアセチル-CoAに、変換する段階;(g)(i)アセトアセチル-CoAをアセトアセタートに、および/または(ii)アセトアセチル-CoAをHMG-CoAに、HMG-CoAをアセトアセタートに、変換する段階;ならびに(h)アセトアセタートをアセトンに変換する段階を含む。
【0170】
いくつかの態様では、該方法は、メチルホスファートシンターゼを用いて、グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ホスファターゼまたはキナーゼを用いて、4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、デヒドロゲナーゼを用いて、4-HMFを2,4-FDMEに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼおよび/またはホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼを用いて、PEPをオキサロアセタートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、オキサロ酢酸1-デカルボキシラーゼ(MSA形成性)を用いて、オキサロアセタートをマロン酸セミアルデヒドに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを用いて、オキサロアセタートをアスパルタートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、アスパラギン酸デカルボキシラーゼを用いて、アスパルタートをβ-アラニンに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼおよび/またはβ-アラニントランスアミナーゼを用いて、β-アラニンをマロン酸セミアルデヒドに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼを用いて、マロン酸セミアルデヒドをマロニル-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、マロニル-CoAシンテターゼを用いて、オキサロアセタートをマロニル-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いて、マロン酸セミアルデヒドをアセチル-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、チオラーゼおよび/またはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼを用いて、アセチル-CoAをアセトアセチル-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、マロニル-CoAデカルボキシラーゼを用いて、マロニル-CoAをアセチル-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、アセトアセチル-CoAシンターゼを用いて、マロニル-CoAをアセトアセチル-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、アセトアセチル-CoAチオエステラーゼおよび/またはアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼを用いて、アセトアセチル-CoAをアセトアセタートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼを用いて、アセトアセチル-CoAをHMG-CoAに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼを用いて、HMG-CoAをアセトアセタートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、アセト酢酸デカルボキシラーゼを用いて、アセトアセタートをアセトンに変換する段階を含む。
【0171】
いくつかの態様では、該方法は、アセトンをイソプロパノールに変換する段階をさらに含む。いくつかの態様では、該方法は、アルコールデヒドロゲナーゼを用いて、アセトンをイソプロパノールに変換する段階をさらに含む。
【0172】
本開示は、2,4-FDMEを産生することができる組換え微生物を作製する方法を含み、該方法は、以下:(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)ホスホエノールピルバート(PEP)からのオキサロアセタートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(e)(1)オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生、および/または(2)オキサロアセタートからのアスパルタートの産生、アスパルタートからのβ-アラニンの産生、およびβ-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生、および/または(3)マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生、および/または(4)オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生、を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは(f)(1)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生;および/または(2)マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、および/または(3)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは(g)(1)アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生、および/または(2)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生、およびHMG-CoAからのアセトアセタートの産生、を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(h)アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を、組換え微生物に導入し、かつ/または該組換え微生物において過剰発現させる段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を該組換え微生物に導入し、かつ/または該組換え微生物において過剰発現させる段階をさらに含む。
【0173】
ペントースリン酸経路の過剰発現と連結させた2,4-FDME産生
いくつかの態様では、本開示は、1つまたは複数の炭素源を2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)およびエタノールに嫌気的に変換するための組換え微生物および関連方法を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の炭素源は、グリセロール、単糖、またはこれらの組み合わせから選択される。
【0174】
いくつかの態様では、本明細書に開示される2,4-FDME経路は、レドックスバランスを提供するために電子消費経路と連結され、ATP余剰をもたらすためにエタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結される。いくつかの態様では、本明細書に開示される連結経路は、2,4-FDME産生の好気的経路よりも効率的で費用対効果の高い2,4-FDMEの嫌気的産生をもたらす。さらに、2,4-FDME産生とエタノール産生とを連結させることで、経済的に価値のある化学物質と共に2,4-FDMEを有利に産生することが可能である。
【0175】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるNADH/NADPH消費2,4-FDME経路は、酸化的ペントースリン酸経路と連結され、酸化的ペントースリン酸経路が過剰発現されると、NADPHの産生が増加する。いくつかの態様では、該経路をエタノール産生経路(例えば、酵母でのカノニカルエタノール産生経路)と連結させることで、ATP余剰がもたらされる。
【0176】
いくつかの態様では、本明細書に開示される態様のいずれか1つの組換え微生物は、(1)本明細書に開示されるような酵素を触媒とするいくつかの連続的段階を経て、炭素源を2,4-FDMEに変換することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(2)D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(3)6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2およびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を含む。
【0177】
いくつかの態様では、D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒するポリペプチドは、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびグルコノラクトナーゼである。いくつかの態様では、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)は、EC番号1.1.1.49に分類される。
【0178】
いくつかの態様では、6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2およびNADPHの産生を触媒するポリペプチドは、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.44に分類される。いくつかの態様では、解糖に代わる酸化的ペントースリン酸経路に向かうフラックスの増加により、[NADPH]/[NADP+]比が増加する。
【0179】
いくつかの態様では、該組換え微生物は、NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む。いくつかの態様では、NAD(+)のNADPH推進型還元を触媒するポリペプチドは、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼである。いくつかの態様では、NAD(P)+トランスヒドロゲナーゼは、EC番号EC 1.6.1に分類される。いくつかの態様では、該トランスヒドロゲナーゼは、EC番号1.6.1.1に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Si特異的)、EC番号1.6.1.2に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(Re/Si特異的)、EC番号1.6.1.3に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ、および/またはEC番号1.6.1.4に分類されるNAD(P)+トランスヒドロゲナーゼ(フェレドキシン)から選択される。
【0180】
いくつかの態様では、該組換え微生物は、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはフルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む。いくつかの態様では、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路の酵素は、ホスホフルクトキナーゼである。
【0181】
いくつかの態様では、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、ZWF1)の過剰発現およびホスホフルクトキナーゼ(例えば、アイソザイムPFK1およびPFK2)の変異は、[NADPH]/[NADP+]比を相乗的に増加させる。
【0182】
本開示は、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法にも向けられる。いくつかの態様では、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法は、本明細書に記載の組換え微生物に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む。いくつかの態様では、炭素源は、ヘキソース、ペントース、グリセロール、および/またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、その条件は嫌気的条件である。いくつかの態様では、該方法は、組換え微生物を、炭素源を提供する供給原料を含む培地中、酸素の非存在下で2,4-FDMEが産生されるまで培養する段階を含む。
【0183】
いくつかの態様では、組換え微生物において2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法は、(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階;(c)4-HMFを2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)に変換する段階;(d)D-グルコース-6-ホスファートを6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHに変換する段階;ならびに(e)6-ホスホ-D-グルコナートをD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、メチルホスファートシンターゼを用いて、グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)を4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、ホスファターゼまたはキナーゼを用いて、4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートを4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)に変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、デヒドロゲナーゼを用いて、4-HMFを2,4-FDMEに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびグルコノラクトナーゼを用いて、D-グルコース-6-ホスファートを6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼを用いて、6-ホスホ-D-グルコナートをD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHに変換する段階を含む。いくつかの態様では、該組換え微生物は、フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはフルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む。
【0184】
本開示は、2,4-FDMEを産生することができる組換え微生物を作製する方法を含み、該方法は、以下:(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;(d)D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに(e)6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子を、組換え微生物に導入し、かつ/または組換え微生物において過剰発現させる段階を含む。
【0185】
培養および原料
本開示の方法で使用される微生物の培養は、本開示の微生物を用いた培養および基質の発酵のための当技術分野で知られたいくつものプロセスを用いて実施することができる。
【0186】
発酵は、任意の適切なバイオリアクター、例えば、連続撹拌槽バイオリアクター、バブルカラムバイオリアクター、エアリフトバイオリアクター、流動床バイオリアクター、充填床バイオリアクター、フォトバイオリアクター、固定化細胞リアクター、トリクルベッドリアクター、移動床バイオフィルムリアクター、バブルカラム、ガスリフト発酵槽、中空糸膜バイオリアクターなどの膜リアクターで実施することができる。いくつかの局面では、バイオリアクターは、微生物が培養される第1の生育リアクターと、その生育リアクターからの発酵ブロスが供給されて、発酵産物の大部分が産生される第2の発酵リアクターとを含む。いくつかの局面では、バイオリアクターは、微生物の培養と、提供された基質および/または原料などの炭素源からの発酵産物の産生を同時に達成する。
【0187】
発酵中は、例えば、培養培地に窒素を噴霧することで、嫌気的状態を維持することができる。発酵に適した温度(例えば、約30℃)は、当技術分野で知られた任意の方法を用いて維持し得る。生理学的pH(例えば、約6.5)に近いpHは、例えば、水酸化ナトリウムの自動添加によって維持し得る。バイオリアクターは、発酵が完了に達するまで、例えば約50rpmで、撹拌することができる。
【0188】
いくつかの態様では、本開示の方法は、2,4-FDMEおよび/または2,4-FDCAモノマーを回収し、収集し、かつ/または単離する段階をさらに含む。回収/収集/単離は、蒸留、固液分離、結晶化、沈殿、膜ベースの分離、ガスストリッピング、溶媒抽出、拡張床吸着(expanded bed adsorption)など、当技術分野で知られた方法によって行うことができる。
【0189】
いくつかの態様では、原料は炭素源を含む。いくつかの態様では、炭素源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素から選択することができる。いくつかの態様では、炭素源は糖である。いくつかの態様では、糖は単糖類である。いくつかの態様では、糖は多糖類である。いくつかの態様では、糖はグルコースまたはそのオリゴマーである。いくつかの態様では、グルコースのオリゴマーは、フルクトース、スクロース、デンプン、セロビオース、マルトース、ラクトース、およびセルロースから選択される。いくつかの態様では、糖は五炭糖である。いくつかの態様では、糖は六炭糖である。いくつかの態様では、原料は、1つまたは複数の五炭糖ならびに/あるいは1つまたは複数の六炭糖を含む。いくつかの態様では、原料は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、原料は、キシロースおよび/またはグルコースのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、原料は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。
【0190】
いくつかの態様では、該微生物は、1つまたは複数の五炭糖(ペントース)ならびに/あるいは1つまたは複数の六炭糖(ヘキソース)を利用する。いくつかの態様では、該微生物は、キシロースおよび/またはグルコースのうちの1つまたは複数を利用する。いくつかの態様では、該微生物は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を利用する。いくつかの態様では、該微生物は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を利用する。
【0191】
いくつかの態様では、ヘキソースは、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、D-タガトース、D-ソルボース、D-フルクトース、D-プシコース、および当技術分野で知られた他のヘキソースから選択することができる。いくつかの態様では、ペントースは、D-キシロース、D-リボース、D-アラビノース、D-リキソース、D-キシルロース、D-リブロース、および当技術分野で知られた他のペントースから選択することができる。いくつかの態様では、ヘキソースおよびペントースは、本明細書に開示されるヘキソースおよびペントースのいずれかの左旋性または右旋性のエナンチオマーから選択され得る。
【0192】
いくつかの態様では、原料は、本明細書に開示される炭素源のいずれかを含み、かつホルマートなどの一炭素化合物をさらに含む。
【0193】
2,4-FDCAの産生
本開示は、2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)を産生する方法を提供する。いくつかの態様では、該方法は、(i)本明細書に開示される組換えエタノール産生酵母に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEを産生するのに十分な条件下で接触させる段階;および(ii)2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換する段階を含む。
【0194】
さらに、本開示は、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する方法を提供する。いくつかの態様では、該方法は、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件下で、2,4-FDMEを1つまたは複数の酵素と接触させる段階を含む。
【0195】
いくつかの態様では、2,4-FDMEは、本明細書に開示される組換え微生物によって産生される。いくつかの態様では、2,4-FDMEは、本明細書に開示される発酵法に従って産生される。いくつかの態様では、2,4-FDMEは発酵プロセスから実質的に精製されておらず、かつ/あるいは副産物および/または固形物が発酵プロセスから除去されていない。
【0196】
いくつかの態様では、2,4-FDMEは、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件下で、酵素的酸化を用いて2,4-FDCAに変換される。いくつかの態様では、該方法は、1つまたは複数のオキシダーゼ、1つまたは複数のラッカーゼ、1つまたは複数のリパーゼ、および/あるいは1つまたは複数のデヒドロゲナーゼ(オキシダーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、および/またはデヒドロゲナーゼの組み合わせを含む)を用いて、直接または1つもしくは複数の中間体の産生を経て、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階を含む。いくつかの態様では、中間体は、5-(ヒドロキシメチル)-3-フルアルデヒド、4-(ヒドロキシメチル)フルフラール、5-(ヒドロキシメチル)フラン-3-カルボン酸、2,4-フランジカルボアルデヒド、4-(ヒドロキシメチル)-2-フランカルボン酸、5-ホルミル-3-フロ酸、または4-ホルミル-2-フロ酸から選択される。
【0197】
本開示のいくつかの態様は、図4に示されており、図4は、2,4-FDMEから2,4-FDCAへの酸化における中間体を概略的に示している。いくつかの態様では、2,4-FDMEは、5-(ヒドロキシメチル)-3-フルアルデヒドおよび/または4-(ヒドロキシメチル)フルフラールに変換される。いくつかの態様では、5-(ヒドロキシメチル)-3-フルアルデヒドは、5-(ヒドロキシメチル)フラン-3-カルボン酸および/または2,4-フランジカルボアルデヒドに変換される。いくつかの態様では、4-(ヒドロキシメチル)フルフラールは、2,4-フランジカルボアルデヒドおよび/または4-(ヒドロキシメチル)-2-フランカルボン酸に変換される。いくつかの態様では、5-(ヒドロキシメチル)フラン-3-カルボン酸は、5-ホルミル-3-フロ酸に変換される。いくつかの態様では、2,4-フランジカルボアルデヒドは、5-ホルミル-3-フロ酸に変換される。いくつかの態様では、4-(ヒドロキシメチル)-2-フランカルボン酸は、4-ホルミル-2-フロ酸に変換される。いくつかの態様では、5-ホルミル-3-フロ酸は、2,4-FDCAに変換される。いくつかの態様では、4-ホルミル-2-フロ酸は、2,4-FDCAに変換される。
【0198】
いくつかの態様では、該方法は、2,4-FDMEを、ただ1つのオキシダーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、またはデヒドロゲナーゼと接触させる段階を含む。いくつかの態様では、該方法は、2,4-FDMEを、2つ以上のオキシダーゼ、および/または2つ以上のラッカーゼ、および/または2つ以上のリパーゼ、および/または2つ以上のデヒドロゲナーゼ、ならびに/あるいは、1つもしくは複数のオキシダーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、および/またはデヒドロゲナーゼの組み合わせと接触させる段階を含む。
【0199】
いくつかの態様では、オキシダーゼは、EC番号1.1.3.-に分類されるオキシドレダクターゼである。いくつかの態様では、オキシダーゼは、EC番号1.1.3.15、EC番号1.1.3.47、EC番号1.1.3.7、EC番号1.1.3.9、および/またはEC番号1.1.3.22(すなわち、EC番号1.17.3.2)に分類される。いくつかの態様では、オキシダーゼは、フラボプロテインオキシダーゼである。いくつかの態様では、オキシダーゼは、メチロボラス属(Methylovorus)の種由来のHMFオキシダーゼ(HMFO)である。いくつかの態様では、オキシダーゼは、単官能アルコールオキシダーゼである。いくつかの態様では、オキシダーゼは、SEQ ID NO: 8、9、10、または11に記載のアミノ酸配列を含むアリールアルコールオキシダーゼ(EC番号1.1.3.7)である。いくつかの態様では、オキシダーゼは、単官能アルデヒドオキシダーゼである。いくつかの態様では、オキシダーゼは、二官能アルコール/アルデヒドオキシダーゼである。いくつかの態様では、アルデヒド中間体は、その水和形態(gem-ジオール形)に変換され、次いで酵素によって酸化される。
【0200】
いくつかの態様では、オキシダーゼは、GMC(グルコース-メタノール-コリン)オキシドレダクターゼである。いくつかの態様では、オキシダーゼは、銅含有オキシダーゼである。いくつかの態様では、オキシダーゼは、SEQ ID NO: 13に記載のアミノ酸配列を含むガラクトースオキシダーゼ(EC番号1.1.3.9)、またはSEQ ID NO: 12に記載のアミノ酸配列を含むグリオキサールオキシダーゼ(EC番号1.1.3.15)である。
【0201】
いくつかの態様では、ラッカーゼは、EC番号1.10.3.-に分類される。
【0202】
いくつかの態様では、リパーゼは、EC番号3.1.1.-に分類される。
【0203】
いくつかの態様では、デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.-に分類される。いくつかの態様では、デヒドロゲナーゼは、EC番号1.1.1.1に分類される。
【0204】
いくつかの態様では、オキシダーゼは、5-ヒドロキシメチルフルフラールオキシダーゼである。
【0205】
いくつかの態様では、オキシダーゼは、4-HMFオキシダーゼである。
【0206】
いくつかの態様では、HMFオキシダーゼは、表1に記載される酵素に由来し得る。いくつかの態様では、HMFオキシダーゼは、表1に記載される酵素と相同であるか、または類似している。いくつかの態様では、4-HMFオキシダーゼ酵素は、表1に記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、HMFオキシダーゼ酵素は、その触媒効率を向上させるために進化または遺伝子操作される(例えば、Martin et al. Biotechnology for Biofuels. (2018) 11, Article number: 56を参照)。
【0207】
いくつかの態様では、4-HMFオキシダーゼは、HmfH6およびHmfH7から選択される。いくつかの態様では、4-HMFオキシダーゼは、SEQ ID NO: 6またはSEQ ID NO: 7を含むアミノ酸配列を含む。
【0208】
一態様では、オキシダーゼは、EC番号1.1.3に分類される。一態様では、オキシダーゼEC番号1.1.3は、5-(ヒドロキシメチルフルフラール)オキシダーゼ(EC番号1.1.3.47)である。いくつかの態様では、HMFオキシダーゼは、遺伝子hmfHに由来し得る。いくつかの態様では、HMFオキシダーゼは、メチロボラス属の種MP688またはカプリアビダス・バシレンシス(Cupriavidus basilensis)に由来し得る(例えば、Dijkman and Fraaije (2014) Applied Environmental Microbiology, 80.3:1082-1090およびKoopman et al. (2010) PNAS, 107(11):4919-4924を参照)。一態様では、HMFオキシダーゼEC番号1.1.3は、アリールアルコールオキシダーゼ(EC番号1.1.3.7)である(例えば、Carro et al., FEBS Journal (2014) 282:3218-3229を参照)。一態様では、ペルオキシゲナーゼは、EC番号1.11.2に分類される。一態様では、ペルオキシゲナーゼEC番号1.11.2は、非特異的ペルオキシゲナーゼ(EC番号1.11.2.1)である(例えば、Carro et al., FEBS Journal (2014) 282:3218-3229を参照)。
【0209】
(表1)4-HMFオキシダーゼ酵素
【0210】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、約15℃~約25℃、約25℃~約35℃、約35℃~約45℃、約45℃~約55℃、約55℃~約65℃、約65℃~約75℃、約75℃~約85℃、約85℃~約95℃、約95℃~約105℃、約105℃~約115℃、約115℃~約125℃、約125℃~約135℃、約135℃~約145℃、約145℃~約155℃、約155℃~約165℃、約165℃~約175℃、約175℃~約185℃、約185℃~約195℃、および/または約195℃~約205℃の反応温度を含む。
【0211】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、約3.5~約4、約4~約4.5、約4.5~約5、約5~約5.5、約5.5~約6、約6~約6.5、約6.5~約7、約7~約7.5、約7.5~約8、約8~約8.5、および/または約8.5~約9の反応pHを含む。
【0212】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、約101.3kPa、約90kPa~約110kPa、約110kPa~約130kPa、約130kPa~約150kPa、および/または約150kPa~約250kPaの反応圧力を含む。
【0213】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、無細胞(cell-free)酵素的酸化を含む。いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、全細胞(whole-cell)酵素的酸化を含む。いくつかの態様では、酵素は、分離酵素、全ブロス酵素、および/または固定化酵素である。
【0214】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、適切なレベルの酸素を含む。いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換するのに十分な条件は、1時間あたり約5~150mmol/リットル(mmol/L-h)のO2、例えば、約20mmol/L-h~約60mmol/L-h、約5mmol/L-h~約10mmol/L-h、約10mmol/L-h~約20mmol/L-h、約20mmol/L-h~約30mmol/L-h、約30mmol/L-h~約40mmol/L-h、約40mmol/L-h~約50mmol/L-h、約50mmol/L-h~約60mmol/L-h、約60mmol/L-h~約70mmol/L-h、約70mmol/L-h~約80mmol/L-h、約80mmol/L-h~約90mmol/L-h、約90mmol/L-h~約100mmol/L-h、約100mmol/L-h~約110mmol/L-h、約110mmol/L-h~約120mmol/L-h、約120mmol/L-h~約130mmol/L-h、約130mmol/L-h~約140mmol/L-h、および/または約140mmol/L-h~約150mmol/L-hの酸素レベルを含む。
【0215】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階は、実質的に微生物を含まない容器内で行われる。いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階は、微生物によって行われる。いくつかの態様では、該方法は、撹拌槽リアクター、充填床リアクター、または外部再循環ループを備えたタンクで実施される。
【0216】
いくつかの態様では、2,4-FDMEを2,4-FDCAに変換する方法は、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、および/またはペルオキシゲナーゼを用いて、H2O2を酸素および水に変換する段階をさらに含む。いくつかの態様では、カタラーゼもしくはペルオキシダーゼは、EC番号1.11.1.-に分類され、かつ/またはペルオキシゲナーゼは、EC番号1.11.2.-に分類される。
【0217】
いくつかの態様では、産生された2,4-FDCAは、酸沈殿、溶媒抽出、および/または冷却結晶化によって、実質的に純粋な形態で変換プロセスから回収される。いくつかの態様では、産生された2,4-FDCAは、酸沈殿、溶媒抽出、および/または冷却結晶化によって、酸または塩の形態で変換プロセスから回収される。
【実施例
【0218】
実施例1: グリセロールヌル酵母株における2,4-FDME経路の発現
この実施例では、グリセロールヌル酵母株および2,4-FDME経路を発現するグリセロールヌル酵母株の構築を実証する。これらの菌株は、宿主株としてFY23(ハプロイド(半数体)で、サッカロミセス・セレビシエS288Cと同質遺伝子)を用いて構築され、その詳細情報が表2に示される。両方の菌株の段階的な作製を表す菌株も表2に示される。
【0219】
1d株は、構築物1(図5A)を用いた相同組換えにより、FY23株からGPD1遺伝子を欠失させることで取得した。構築物1をGenScript社で合成し、市販のpUC57ベクターのEcoRIおよびSphI制限部位にクローニングした。MssI制限酵素を用いてpUC57ベクターから線状構築物1を取得し、酵母の形質転換に使用した。
【0220】
1d2d株は、構築物2(図5B)を用いた相同組換えにより、1d株からGPD2遺伝子を欠失させることで取得した。構築物2をGenScript社で合成し、市販のpUC57ベクターのEcoRIおよびSphI制限部位にクローニングした。MssI制限酵素を用いてpUC57ベクターから線状構築物2を取得し、酵母の形質転換に使用した。GPD1とGPD2の両遺伝子を欠失させると、糖からのグリセロールの量が著しく減少し、1d2d株はグリセロールヌル(欠損)株とみなされる。グリセロール産生経路は細胞がNADHを酸化できるようにするため、グリセロールヌル株1d2dは嫌気的条件下では生育することができない(Bjoerkqvist, S., et al. "Physiological response to anaerobicity of glycerol-3-phosphate dehydrogenase mutants of Saccharomyces cerevisiae", Applied and Environmental Microbiology 63.1 (1997): 128-32)。
【0221】
1is株は、構築物3(図5C)を用いた相同組換えにより、FY23株のGPD1遺伝子を、MfnB1遺伝子を含む転写単位に置き換えることで取得した。構築物3をGenScript社で合成し、市販のpUC57ベクターのEcoRIおよびSphI制限部位にクローニングした。MssI制限酵素を用いてpUC57ベクターから線状構築物3を取得し、酵母の形質転換に使用した。
【0222】
1is3株は、構築物5(図5D)を用いた相同組換えにより、1is株のGPD2遺伝子を、MfnB1およびADH1mut遺伝子を含む転写単位に置き換えることで取得した。構築物5をGenScript社で合成し、市販のpUC57ベクターのEcoRIおよびSphI制限部位にクローニングした。酵母の形質転換に先立って、MssI制限酵素を用いてpUC57ベクターから線状構築物5を放出させた。GPD1とGPD2の両遺伝子を置き換えると、糖からのグリセロールの量が著しく減少し、1is3株はグリセロールヌル株とみなされる。
【0223】
S.セレビシエへの全てのDNA媒介形質転換は、Gietz and Woods (2002)に記載される酢酸リチウム法を用いて実施し、全ての場合に、ゲノムDNAのPCR増幅と配列決定によって構築物の組み込みを確認した(Gietz, R. D.; Woods, R. A. "Transformation of yeast by lithium acetate/single-stranded carrier DNA/polyethylene glycol method", Methods in Enzymology 350 (2002): 87-96)。
【0224】
(表2)本研究で使用したサッカロミセス・セレビシエの株とそれらの関連遺伝子型
【0225】
実施例2: 2,4-FDMEオキシダーゼの発現と精製
酵素的アッセイに用いる該酵素の発現および精製は、以下の条件下で実施した:表3に記載の2,4-FDMEオキシダーゼをコードする遺伝子をGenScript社で合成し、発現ベクターpET28aにNdeIおよびBamHI制限部位でクローニングした。この発現ベクターで大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、その形質転換体を酵素発現に使用するまで15%グリセロール中で保存した。
【0226】
保存した形質転換体を30mLのカナマイシン含有TBブロスに接種し、37℃で16時間撹拌して種培養物を調製した。種培養物を0.2の初期OD(600nm)で300mLのカナマイシン含有TBブロスに加え、次いでこの培養物を37℃で撹拌しながらOD(600nm)が0.8に達するまでインキュベートし、その時点で1mM IPTGを添加して、37℃で4時間撹拌しながら発現を誘導した。
【0227】
発現後、細胞を5000rpmで20分間遠心し、ペレット細胞を低温溶解バッファー(20mMリン酸ナトリウムバッファー、500mM NaCl、20mMイミダゾール、1mM PMSF、およびβ-メルカプトエタノール、pH7)に懸濁してから超音波破砕を行った。この細胞溶解物を4℃、6500rpmで20分間遠心し、ろ過後にアフィニティクロマトグラフィーで精製した。使用したカラムは、hisタグタンパク質精製用のHisTrap HP 5mL(GE Healthcare社)であった。精製したタンパク質を、結合バッファーA(20mMリン酸ナトリウムバッファー、20mMイミダゾール、500mM NaCl、1mM PMSF、およびβ-メルカプトエタノール、pH7)でカラムに結合させて洗浄し、溶出バッファーB(20mMリン酸ナトリウムバッファー、500mMイミダゾール、500mM NaCl、1mM PMSF、およびβ-メルカプトエタノール、pH7)の勾配で溶出させた。その後、PD-10カラムを用いて、バッファーを100mMリン酸カリウムバッファーpH7に変えた。候補の発現と精製を12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により解析した(図7)。
【0228】
(表3)2,4-FDMEオキシダーゼ酵素
【0229】
実施例3: 2,4-FDMEおよびエタノールの嫌気的共産生
2,4-FDMEおよびエタノールの嫌気的条件下での共産生を実証するために、上記の実施例1に記載されるFY23株、1d2d株および1is3株を使用した。
【0230】
各株の単一コロニーを、2%w/wのグルコースを加えたYP(酵母抽出物ペプトン)培地に30℃、210rpmで接種することにより、前培養物を調製した。18時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離により採取し、合成発酵培地で洗浄した。
【0231】
無菌サンプリングと窒素注入用のポートを備えた250mLスクリューキャップフラスコ内で嫌気的発酵を行った。ノープレン(norprene)チューブを用いて、接種とサンプリングの後に高純度窒素(<0.5ppm酸素)を注入することによって、酸素透過を軽減した。合成発酵培地は、(NH4)2SO4 5.0g/L、CaCl2 0.1g/L、NaCl 0.1g/L、MgSO4 0.5g/L、KH2PO4 1.0g/L、ビオチン2.0μg/L、パントテン酸カルシウム400μg/L、葉酸2.0μg/L、イノシトール2.0mg/L、ニコチン酸400μg/L、p-アミノ安息香酸200μg/L、ピリドキシンHCl 400μg/L、リボフラビン200μg/L、チアミンHCl 400μg/L、ホウ酸500μg/L、硫酸銅40μg/L、ヨウ化カリウム100μg/L、塩化第二鉄200μg/L、硫酸マンガン400μg/L、モリブデン酸ナトリウム200μg/L、および硫酸亜鉛400μg/Lを含んでいた。1.62g/Lの酵母合成ドロップアウト培地サプリメント-ロイシンなし(Yeast Synthetic Drop-out Medium Supplements - without leucine;パーツ番号Y1376)および76mg/LのL-ロイシンとしてアミノ酸を添加した。嫌気的成長因子としてエルゴステロール(0.01g/L)およびTween 80(0.42g/L)を補充した。
【0232】
100mLの培養培地と1%の接種比率を含む発酵システムを30℃、210rpmで117時間インキュベートした。グリセロールおよびエタノールなどの主な発酵代謝物は、Bio-Rad Aminex HPX-87Hカラム(50℃、H2SO4 5mM、1mL/minで定組成(isocratic)勾配モード)を用いたHPLC-IR(Thermo Ultimate 3000)で定量した。2,4-FDMEは、Waters XBrigde C18カラム(30℃、25mM酢酸ナトリウムバッファー:メタノール(93:7)、1.4mL/min、λ225nm)を用いたHPLC-DAD(Thermo Ultimate 3000)で確認した。
【0233】
図6の結果は、2,4-FDME経路を発現する1is3株が、炭素源を使い果たし、陽性対照株であるFY23と同程度の力価でエタノールを産生できることを実証した。さらに、1is3株はグリセロール産生が著しく減少し、陰性対照株である1d2dで定量されたグリセロールの限界産生に類似していた。
【0234】
重要なことは、表4に示されるように、陽性対照株(FY23)と陰性対照株(1d2d)ではどちらも、2,4-FDMEが検出されなかったことである。一方、1is3株では2,4-FDMEの産生が確認され、この菌株は上記の嫌気的条件下でエタノールと2,4-FDMEを産生できることが示された。
【0235】
したがって、この実施例は、2,4-FDME経路を発現するグリセロールヌル酵母株が、アッセイされた嫌気的条件下で2,4-FDMEおよびエタノールを共産生することに成功できたことを実証した。
【0236】
(表4)嫌気的条件下で117時間発酵させた発酵性サンプルで報告された2,4-FDMEの平均ピーク面積
λ225nmでピークが検出されない場合は、「n.d.」と表示した。
【0237】
実施例4: HMFHオキシダーゼによる2,4-FDMEからの2,4-FDCAの産生
表3に記載の酵素候補による2,4-FDMEからの2,4-FDCAの産生は、約400μgの精製済み2,4-FDMEオキシダーゼ候補を、100mMリン酸カリウムバッファーpH7中の10mM 2,4-FDMEを含む1mL溶液とインキュベートすることによって、インビトロで実証された。2,4-FDMEサンプルは、Olib Organic Libraries(Campinas-SP, ブラジル)から購入した。オキシダーゼまたは2,4-FDMEを含まない反応容器を陰性対照として使用した。反応物を30℃で24時間インキュベートし、最終サンプルをHPLC-DADで分析した。全ての反応を3つ組(triplicate)で行った。
【0238】
2,4-FDMEと中間体2,4-HMFの定量分析は、XBridge C18(Waters社)を備えたHPLC-DAD(Thermo Ultimate 3000)を用いて実施した。カラムを30℃に保持した。移動相は、25mM酢酸ナトリウム:メタノール(93:7 v/v)pH6.0溶液を、流量1.4mL/minおよび定組成勾配モードで使用した。2,4-FDMEを225nmで検出し、2,4-HMFを256nmで検出した。2,4-FDMEおよび2,4-HMF標準サンプルは、Olib Organic Libraries(Campinas-SP, ブラジル)から購入した。
【0239】
2,4-FDCAの定量分析は、Aminex HPX-87H(Bio-Rad社)を備えたHPLC-DAD(Thermo Ultimate 3000)を用いて実施した。カラムを50℃に保持した。移動相は、5mM H2SO4溶液を流量0.75mL/minおよび定組成勾配モードで使用した。該分子を245nmで検出した。2,4-FDCA標準サンプルは、Uorsy社(Kyiv, ウクライナ)から購入した。
【0240】
表5および図8に示されるように、2,4-FDMEから2,4-FDCAへの変換は、2,4-FDMEオキシダーゼHmfH1によって実証することに成功した。
【0241】
(表5)24時間インキュベーション後のHmfH1オキシダーゼによる2,4-FDMEからの2,4-FDCAの産生
【0242】
番号付き態様
態様1
(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに
(d)グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変
を含む、組換え微生物。
態様2
4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドが、デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、デヒドロゲナーゼがEC番号1.1.1に分類される、態様1の組換え微生物。
態様3
デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択され、好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含み、より好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む、態様2の組換え微生物。
態様4
グリセロール産生経路における酵素が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.8またはEC番号1.1.5.3に分類される、態様1~3のいずれか1つの組換え微生物。
態様5
GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が、前記微生物から欠失されているか、または前記微生物においてダウンレギュレートされている、態様4の組換え微生物。
態様6
グリセロール産生経路における酵素が、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼであり、好ましくは、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼが、EC番号3.1.3.21に分類される、態様1~3のいずれか1つの組換え微生物。
態様7
GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、前記微生物から欠失されているか、または前記微生物においてダウンレギュレートされている、態様1~3のいずれか1つの組換え微生物。
態様8
エタノールを産生する、態様1~7のいずれか1つの組換え微生物。
態様9
(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに
(d)ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
を含む、組換え微生物。
態様10
4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドが、デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、デヒドロゲナーゼがEC番号1.1.1に分類される、態様9の組換え微生物。
態様11
デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択され、好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含み、より好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む、態様10の組換え微生物。
態様12
ホルマートからのNADHおよびCO2の産生を触媒するポリペプチドが、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、NAD+依存性ギ酸デヒドロゲナーゼがEC番号1.2.1.2に分類される、態様9~11のいずれか1つの組換え微生物。
態様13
外部から提供されたホルマートをNADHおよびCO2に変換する、態様9~12のいずれか1つの組換え微生物。
態様14
グリセロール産生経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはグリセロール産生経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む、態様9~13のいずれか1つの組換え微生物。
態様15
グリセロール産生経路における酵素が、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.8またはEC番号1.1.5.3に分類される、態様14の組換え微生物。
態様16
GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、またはその両方が、前記微生物から欠失されているか、または前記微生物においてダウンレギュレートされている、態様15の組換え微生物。
態様17
グリセロール産生経路における酵素が、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼであり、好ましくは、グリセロール-3-リン酸ホスファターゼが、EC番号3.1.3.21に分類される、態様14の組換え微生物。
態様18
GPD1遺伝子、GPD2遺伝子、およびグリセロール-3-リン酸ホスファターゼをコードする遺伝子が、前記微生物から欠失されているか、または前記微生物においてダウンレギュレートされている、態様9~14のいずれか1つの組換え微生物。
態様19
エタノールを産生する、態様9~18のいずれか1つの組換え微生物。
態様20
(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(d)ホスホエノールピルバート(PEP)からのオキサロアセタートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(e)(1)オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生、および/または
(2)オキサロアセタートからのアスパルタートの産生、アスパルタートからのβ-アラニンの産生、およびβ-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生、および/または
(3)マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生、および/または
(4)オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生
を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは
(f)(1)マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、および/または
(2)マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生、およびアセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生、および/または
(3)マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生
を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに/あるいは
(g)(1)アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生、および/または
(2)アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生、およびHMG-CoAからのアセトアセタートの産生
を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに
(h)アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
を含む、組換え微生物。
態様21
4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドが、デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、デヒドロゲナーゼがEC番号1.1.1に分類される、態様20の組換え微生物。
態様22
デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択され、好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが、残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含み、より好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが、変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む、態様21の組換え微生物。
態様23
オキサロアセタートからのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するポリペプチドが、オキサロ酢酸1-デカルボキシラーゼ(MSA形成性)である、態様20~22のいずれか1つの組換え微生物。
態様24
オキサロアセタートからのアスパルタートの産生を触媒するポリペプチドが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである、態様20~23のいずれか1つの組換え微生物。
態様25
アスパルタートからのβ-アラニンの産生を触媒するポリペプチドが、アスパラギン酸デカルボキシラーゼである、態様20~24のいずれか1つの組換え微生物。
態様26
β-アラニンからのマロン酸セミアルデヒドの産生を触媒するポリペプチドが、β-アラニンピルビン酸アミノトランスフェラーゼおよび/またはβ-アラニントランスアミナーゼである、態様20~25のいずれか1つの組換え微生物。
態様27
マロン酸セミアルデヒドからのマロニル-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、マロニル-CoAレダクターゼおよび/または2-ケト酸デカルボキシラーゼである、態様20~26のいずれか1つの組換え微生物。
態様28
オキサロアセタートからのマロニル-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、マロニル-CoAシンテターゼである、態様20~27のいずれか1つの組換え微生物。
態様29
マロン酸セミアルデヒドからのアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、マロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼである、態様20~28のいずれか1つの組換え微生物。
態様30
アセチル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、チオラーゼおよび/またはアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼである、態様20~29のいずれか1つの組換え微生物。
態様31
マロニル-CoAからのアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、マロニル-CoAデカルボキシラーゼである、態様20~30のいずれか1つの組換え微生物。
態様32
マロニル-CoAからのアセトアセチル-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、アセトアセチル-CoAシンターゼである、態様20~31のいずれか1つの組換え微生物。
態様33
アセトアセチル-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒するポリペプチドが、アセトアセチル-CoAチオエステラーゼおよび/またはアセトアセチル-CoAトランスフェラーゼである、態様20~32のいずれか1つの組換え微生物。
態様34
アセトアセチル-CoAからのHMG-CoAの産生を触媒するポリペプチドが、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼである、態様20~33のいずれか1つの組換え微生物。
態様35
HMG-CoAからのアセトアセタートの産生を触媒するポリペプチドが、ヒドロキシメチルグルタリル-CoAリアーゼである、態様20~34のいずれか1つの組換え微生物。
態様36
アセトアセタートからのアセトンの産生を触媒するポリペプチドが、アセト酢酸デカルボキシラーゼである、態様20~35のいずれか1つの組換え微生物。
態様37
アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子をさらに含む、態様20~36のいずれか1つの組換え微生物。
態様38
アセトンからのイソプロパノールの産生を触媒するポリペプチドが、アルコールデヒドロゲナーゼである、態様37の組換え微生物。
態様39
エタノールを産生する、態様20~38のいずれか1つの組換え微生物。
態様40
(a)グリセルアルデヒド3-ホスファート(G3P)からの4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートの産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(b)4-ヒドロキシメチルフルフラールホスファートからの4-ヒドロキシメチルフルフラール(4-HMF)の産生を触媒するポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(c)4-HMFからの2,4-フランジメタノール(2,4-FDME)の産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;
(d)D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子;ならびに
(e)6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒する1つまたは複数のポリペプチドをコードする、少なくとも1つの内因性および/または外因性核酸分子
を含む、組換え微生物。
態様41
4-HMFからの2,4-FDMEの産生を触媒するポリペプチドが、デヒドロゲナーゼであり、好ましくは、デヒドロゲナーゼがEC番号1.1.1に分類される、態様40の組換え微生物。
態様42
デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.1に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.2に分類されるアルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+)、EC番号1.1.1.307に分類されるD-キシロースレダクターゼ、EC番号1.1.1.90に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、EC番号1.1.1.91に分類されるアリールアルコールデヒドロゲナーゼ、および/またはサッカロミセス・セレビシエ由来の変異型アルコールデヒドロゲナーゼ1から選択され、好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが残基59、110、117、148、152、または295の1つまたは複数における1~6個の非保存的アミノ酸置換を含み、より好ましくは、変異型アルコールデヒドロゲナーゼが変異S110P、L117S、および/またはY295Cを含む、態様41の組換え微生物。
態様43
D-グルコース-6-ホスファートからの6-ホスホ-D-グルコナートおよびNADPHの産生を触媒するポリペプチドが、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびグルコノラクトナーゼである、態様40~42のいずれか1つの組換え微生物。
態様44
6-ホスホ-D-グルコナートからのD-リブロース-5-ホスファート、CO2、およびNADPHの産生を触媒するポリペプチドが、6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼである、態様40~43のいずれか1つの組換え微生物。
態様45
フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素の少なくとも1つの欠失、またはフルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素のダウンレギュレーションにつながる少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含む、態様40~44のいずれか1つの組換え微生物。
態様46
フルクトース-6-ホスファートおよびATPをフルクトース-1,6-ビホスファートに変換する経路における酵素が、ホスホフルクトキナーゼである、態様45の組換え微生物。
態様47
エタノールを産生する、態様40~46のいずれか1つの組換え微生物。
態様48
細菌、真菌、または酵母から選択され、好ましくは、酵母であり、より好ましくは、サッカロミセス・セレビシエである、前記態様のいずれか1つの組換え微生物。
態様49
前記態様のいずれか1つの組換え微生物に、発酵性炭素源を、2,4-FDMEおよびエタノールを産生するのに十分な条件下で接触させる段階を含む、2,4-FDMEおよびエタノールを共産生する方法であって、任意で、発酵性炭素源がホルマートを含む、方法。
態様50
前記組換え微生物がアセトンをさらに産生する、態様49の方法。
態様51
前記組換え微生物がイソプロパノールをさらに産生する、態様49または50の方法。
態様52
前記条件が嫌気的条件を含む、態様49~51のいずれか1つの方法。
態様53
2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)を産生する方法であって、オキシダーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、および/もしくはデヒドロゲナーゼの組み合わせを含む、1つまたは複数のオキシダーゼ、1つまたは複数のラッカーゼ、1つまたは複数のリパーゼ、および/または1つまたは複数のデヒドロゲナーゼを用いて、2,4-FDMEを直接的に、または5-(ヒドロキシメチル)-3-フルアルデヒド、4-(ヒドロキシメチル)フルフラール、5-(ヒドロキシメチル)フラン-3-カルボン酸、2,4-フランジカルボアルデヒド、4-(ヒドロキシメチル)-2-フランカルボン酸、5-ホルミル-3-フロ酸、もしくは4-ホルミル-2-フロ酸から選択される1つまたは複数の中間体の産生を介して、2,4-FDCAに酵素的に変換する段階を含む、方法。
態様54
オキシダーゼがEC番号1.1.3.-に分類され、好ましくは、オキシダーゼがEC番号1.1.3.47、EC番号1.1.3.7、EC番号1.1.3.9、および/またはEC番号1.1.3.22に分類される、態様53の方法。
態様55
ラッカーゼがEC番号1.10.3.-に分類される、態様53または54の方法。
態様56
リパーゼがEC番号3.1.1.-に分類される、態様53~55のいずれか1つの方法。
態様57
デヒドロゲナーゼが、EC番号1.1.1.-に分類され、好ましくは、デヒドロゲナーゼがEC番号1.1.1.1に分類される、態様53~56のいずれか1つの方法。
態様58
2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階が、微生物を実質的に含まない容器内で行われる、態様53~57のいずれか1つの方法。
態様59
2,4-FDMEを2,4-FDCAに酵素的に変換する段階が、微生物によって行われる、態様53~57のいずれか1つの方法。
態様60
H2O2を、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、および/またはペルオキシゲナーゼにより酸素および水に変換する段階をさらに含み、カタラーゼまたはペルオキシダーゼがEC番号1.11.1.-に分類され、かつ/またはペルオキシゲナーゼがEC番号1.11.2.-に分類される、態様53~59のいずれか1つの方法。
態様61
2,4-FDMEが、態様1~48のいずれか1つの組換え微生物によって産生される、態様53~60のいずれか1つの方法。
態様62
2,4-FDMEが、態様49~52のいずれか1つの方法によって産生される、態様53~60のいずれか1つの方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023544969000001.app
【国際調査報告】