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特表2023-544970細胞への核酸の送達のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】細胞への核酸の送達のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20231019BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231019BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231019BHJP
   C12N 15/15 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231019BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20231019BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
A61K47/68
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C07K16/18
C12N15/63 Z
C12N15/09 110
C12N15/62 Z
C12N15/113 Z
C12N15/15
C12N5/10
A61P35/00
A61K48/00
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K31/7088
A61K31/713
A61K39/395 N
C12N5/0789
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514041
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021048552
(87)【国際公開番号】W WO2022047424
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/072,810
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503469393
【氏名又は名称】イエール ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】523069049
【氏名又は名称】ジェンナオ バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キジャーノ エリアス
(72)【発明者】
【氏名】グレーザー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ターナー ブルース シー.
(72)【発明者】
【氏名】ターチック オードリー
(72)【発明者】
【氏名】サルツマン ダブリュ. マーク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076BB11
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
核酸カーゴを細胞中に送達するための組成物及びその使用の方法を提供する。組成物は、典型的には、(a)3E10モノクローナル抗体又はその抗原結合、細胞浸透性断片;一価、二価、もしくは多価の単鎖可変断片(scFv);又はダイアボディ;又はヒト化形態もしくはそのバリアント、及び、(b)例えば、ポリペプチドをコードする核酸、機能的核酸、機能的核酸をコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む、核酸カーゴ、を含む。エレメント(a)及び(b)は、典型的には、非共有結合的に連結されて複合体を形成する。
【選択図】図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要のある対象においてがんを治療するための方法であって、前記対象に、
(i)パターン認識受容体(PRR)を刺激することが可能なポリヌクレオチドリガンドと、
(ii)3E10抗体もしくはそのバリアント、又はその抗原結合断片と
の間に形成される複合体を含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記PRRが、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、5’三リン酸及び二本鎖RNAを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、核酸配列
5’-pppGGAGCAAAAG CAGGGUGACA AAGACAUAAU GGAUCCAAAC ACUGUGUCAA GCUUUCAGGU AGAUUGCUUU CUUUGGCAUG UCCGCAAAC-3’(配列番号94)
を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(I:C)を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(dA:dT)を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
前記PRRが、Toll様受容体(TLR)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記TLRが、TLR3、TLR7、TLR8、又はTLR9である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記がんが、血管がん、多発性骨髄腫、腺がん、肉腫、骨がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、鼻咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、及び子宮がんからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
その必要のある対象においてがんを治療するための組成物であって、
(i)パターン認識受容体(PRR)を刺激することが可能なポリヌクレオチドリガンドと、
(ii)3E10抗体もしくはそのバリアント、又はその抗原結合断片と
の間に形成される複合体を含む、組成物。
【請求項11】
前記PRRが、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、5’三リン酸及び二本鎖RNAを含む、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、核酸配列
5’-pppGGAGCAAAAG CAGGGUGACA AAGACAUAAU GGAUCCAAAC ACUGUGUCAA GCUUUCAGGU AGAUUGCUUU CUUUGGCAUG UCCGCAAAC- 3’(配列番号94)
を含む、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(I:C)を含む、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(dA:dT)を含む、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項16】
前記PRRが、Toll様受容体(TLR)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記TLRが、TLR3、TLR7、TLR8、又はTLR9である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記がんが、血管がん、多発性骨髄腫、腺がん、肉腫、骨がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、鼻咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、及び子宮がんからなる群から選択される、請求項10~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
以下:
(a)3E10モノクローナル抗体、その細胞浸透性断片;一価、二価、もしくは多価の単鎖可変断片(scFv);又はダイアボディ;又はそのヒト化形態もしくはバリアント、及び
(b)ポリペプチドをコードする核酸、機能的核酸、機能的核酸をコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む、核酸カーゴ
を含む、又はそれからなる、組成物。
【請求項20】
(a)が、以下:
(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDR;
(ii)配列番号24~30、44、又は45のいずれかから選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、又は43のいずれかから選択される第一、第二、及び第三の重鎖CDR;
(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;
(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは
(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
(a)が、ATCCアクセッション番号PTA2439のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体3E10と、同じ又は異なるエピトープ特異性を備える、請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
(a)が、モノクローナル抗体3E10のパラトープを有する組換え抗体である、請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
以下:
(a)以下を含む結合タンパク質:
(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDR;
(ii)配列番号24~30、44、又は45から選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、又は43から選択される第一、第二、及び第三の重鎖CDR;
(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;
(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは
(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに
(b)ポリペプチドをコードする核酸、機能的核酸、機能的核酸をコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む、核酸カーゴ
を含む、組成物。
【請求項24】
(a)が、二重特異性である、請求項19~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
(a)が、関心対象の細胞型を標的指向する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
(a)及び(b)が、非共有結合的に連結されている、請求項19~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
(a)及び(b)が、複合体の状態にある、請求項19~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
(b)が、DNA、RNA、PNAもしくは他の修飾核酸、又は核酸類似体、あるいはそれらの組み合わせを含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
(b)が、mRNAを含む、請求項19~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
(b)が、ベクターを含む、請求項19~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記ベクターが、発現制御配列に作動可能に連結された関心対象のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ベクターが、プラスミドである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
(b)が、Casエンドヌクレアーゼ、gRNA、又はそれらの組み合わせをコードする核酸を含む、請求項19~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
(b)が、キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする核酸を含む、請求項19~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
(b)が、機能的核酸を含む、請求項19~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
(b)が、機能的核酸をコードする核酸を含む、請求項19~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記機能的核酸が、アンチセンス分子、siRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、RNAi、又は外部ガイド配列である、請求項35又は36に記載の組成物。
【請求項38】
(b)が、複数の単一核酸分子を含む、請求項19~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
(b)が、複数の2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の異なる核酸分子を含む、請求項19~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
(b)が、長さが約1~25,000核酸塩基の核酸分子を含む、又はそれからなる、請求項19~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
(b)が、一本鎖核酸、二本鎖核酸、又はそれらの組み合わせを含む、又はそれからなる、請求項19~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
担体DNAをさらに含む、請求項19~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記担体DNAが、非コードDNAである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
(b)が、RNAで構成される、請求項42又は43に記載の組成物。
【請求項45】
請求項19~44のいずれか一項に記載の組成物と、医薬的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項46】
(a)と(b)との複合体をカプセル化しているポリマーナノ粒子をさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
標的指向部分、細胞浸透性ペプチド、又はそれらの組み合わせが、前記ナノ粒子に、直接的又は間接的に会合、連結、コンジュゲート、又はそうでなければ付着されている、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
核酸カーゴを細胞に送達する方法であって、前記細胞を、有効量の請求項19~47のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項49】
前記接触が、エクスビボで行われる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が、造血幹細胞又はT細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞を、その必要のある対象に投与することをさらに含む、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、疾患又は障害の一つ又は複数の症状を治療するために有効量で前記対象に投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記接触が、その必要のある対象への投与後にインビボで行われる、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が、疾患又は障害を有する、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記疾患又は障害が、遺伝的障害、がん、又は感染症もしくは感染性疾患である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
(b)が、前記対象における前記疾患又は障害の一つ又は複数の症状を低減させるために、有効量で前記対象の細胞中に送達される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
細胞との接触の前に、(a)と(b)との複合体を形成するのに有効な時間にわたり、かつ適切な温度で、(a)及び(b)をインキュベート及び/又は混合することを含む、請求項19~47のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法。
【請求項58】
(a)及び(b)を、約1分~約30分、約10分~約20分、又は約15分にわたり、場合により室温で又は摂氏37度で、インキュベート及び/又は混合することを含む、請求項19~47のいずれか一項に記載の組成物を作製する方法。
【請求項59】
3E10モノクローナル抗体、その細胞浸透性断片;一価、二価、もしくは多価の単鎖可変断片(scFv);又はダイアボディ;又は配列番号92もしくは93の核酸結合ポケットを含むヒト化形態もしくはそのバリアント、又は核酸に結合する同じもしくは改善された能力を有するそのバリアントを含む、請求項19~58のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項60】
重鎖アミノ酸配列又はそのCDRのD31もしくはN31に対応する前記アミノ酸残基が、Rで置換されている、請求項19~59のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項61】
重鎖アミノ酸配列又はそのCDRのD31もしくはN31に対応する前記アミノ酸残基が、Lで置換されている、請求項19~60のいずれか一項に記載の組成物又は方法。
【請求項62】
以下:
(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDRのバリアント;
(ii)配列番号24~30、44、又は45から選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、又は43から選択される前記第二及び第三の重鎖CDRとの組み合わせでの、前記第一の重鎖CDRのバリアント;
(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;
(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは
(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖
を含み、
D31又はN31に対応する前記アミノ酸残基が、R又はLで置換されている、
結合タンパク質。
【請求項63】
配列番号92もしくは93の前記核酸結合ポケット、又は核酸に結合する同じもしくは改善された能力を有するそのバリアントを含む、請求項63に記載の結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月31日に出願された米国仮特許出願第63/072,810号に対する優先権を主張するものであり、その内容は、参照により、それらの全体において、全ての目的のために本明細書により組み入れられる。
【0002】
連邦政府が後援する研究に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所により授与されたCA197574下での政府支援により作製された。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
配列表への参照
2021年8月31日に作製され、154,848バイトのサイズを有する「127689-5004-WO02_ST25」と名付けられたテキストファイルとして提出された配列表は、37 C.F.R.§ 1.52(e)(5)に従い、参照により本明細書により組み入れられる。
【0004】
発明の分野
本発明は、概して、限定されないがインビトロ、エクスビボ、及びインビボ遺伝子治療及び遺伝子編集を含む、適用のための核酸の細胞内送達の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
遺伝子治療は、遺伝子置換及び、遺伝的又は後天性疾患(例えばがんなど)のためのノックダウンから、ワクチン接種までに及ぶ、幅広い適用を含む。ウイルスベクター及び合成リポソームは、今日、多くの適用のために選択される媒体として出現してきたが、両方とも、生産の複雑さ、限定されたパッケージング能力、及び好ましくない免疫学的特色を含む、限界及びリスクを有し、それによって、遺伝子治療適用が制限され、予防遺伝子治療についての潜在能が妨げられる(Seow and Wood,Mol Ther.17(5):767-777(2009)(非特許文献1)。
【0006】
細胞及び組織におけるヌクレオチドのインビボでの取り込み及び分布が観察されている(Huang,et al.,FEBS Lett.,558(1-3):69-73(2004)(非特許文献2))。さらに、例えば、Nyceらは、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)が、吸入される場合、内因性界面活性剤(肺細胞により産生される脂質)に結合し、追加の担体脂質を必要とせずに肺細胞により取り込まれることが示されているが(Nyce,et al.,Nature,385:721-725(1997)(非特許文献3))、小さな核酸は、T24膀胱がん組織培養細胞中に取り込まれ(Ma,et al.,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,8:415-426(1998)(非特許文献4))、特にインビボ適用のために、改善された核酸トランスフェクション技術についての必要性が残っている。AAV9は、2003年に発見され、依然としてヒトにおいて典型的に使用されるウイルスベクターである(Robbins,“Gene therapy pioneer says the field is behind-and that delivery technology is embarrassing,”Stat,November,2019(非特許文献5))。
【0007】
このように、本発明の目的は、細胞中への核酸の改善された送達のための組成物及びその使用の方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Seow and Wood,Mol Ther.17(5):767-777(2009)
【非特許文献2】Huang,et al.,FEBS Lett.,558(1-3):69-73(2004)
【非特許文献3】Nyce,et al.,Nature,385:721-725(1997)
【非特許文献4】Ma,et al.,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,8:415-426(1998)
【非特許文献5】Robbins,“Gene therapy pioneer says the field is behind-and that delivery technology is embarrassing,”Stat,November,2019
【発明の概要】
【0009】
核酸カーゴを細胞中に送達するための組成物及びその使用の方法を提供する。組成物は、典型的には、(a)3E10モノクローナル抗体又はその細胞浸透性断片;一価、二価、もしくは多価の単鎖可変断片(scFv);又はそのダイアボディ;又はヒト化形態もしくはそのバリアント、及び、(b)例えば、ポリペプチドをコードする核酸、機能的核酸、機能的核酸をコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む、核酸カーゴ、を含む。エレメント(a)及び(b)は、典型的には、非共有結合的に連結されて複合体を形成する。DNAに加えて、3E10はRNA、PNA、及び他の核酸に結合すると考えられる。
【0010】
例示的な3E10抗体ならびにそれらの断片及び融合タンパク質は、(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDR;(ii)配列番号24~30、44、及び45から選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、及び43から選択される第一、第二、及び第三の重鎖CDR;(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖を有するものを含む。
【0011】
一部の実施形態では、抗体ならびにそれらの断片及び融合タンパク質は、3E10重鎖アミノ酸配列のD31もしくはN31に対応するアミノ酸残基を有するCDR1重鎖バリアント、又はアルギニン(R)もしくはリジン(L)で置換されたそのCDRである。
【0012】
一部の実施形態では、抗体ならびにそれらの断片及び融合タンパク質は、配列番号92もしくは93の核酸結合ポケット、又は核酸、例えばDNA、RNA、もしくはそれらの組み合わせなどに結合する、同じもしくは改善された能力を有するそのバリアントを含む。
【0013】
また、提供するのは、3E10重鎖アミノ酸配列のD31もしくはN31に対応するアミノ酸残基を有するCDR1重鎖バリアント、又はアルギニン(R)もしくはリジン(L)で置換されたそのCDR1を含む結合タンパク質自体、ならびに配列番号92もしくは93の核酸結合ポケットを有する結合タンパク質自体、又は核酸、例えばDNA、RNA、もしくはそれらの組み合わせなどに結合する、同じもしくは改善された能力を有するそれらのバリアントである。
【0014】
一部の実施形態では、抗体又は断片又は融合タンパク質は、二重特異性であることができ、例えば、関心対象の細胞型、組織、又は器官を標的指向する結合配列を含むことができる。
【0015】
核酸カーゴは、DNA、RNA、限定されないが、PNAを含む修飾核酸、又はそれらの組み合わせで構成され得る。核酸カーゴは、典型的には、機能的カーゴ、例えば機能的核酸(例えば阻害性RNA)、mRNA、又はベクター、例えば発現ベクターなどである。核酸カーゴは、ベクターを含め、発現制御配列に作動可能に連結された関心対象のポリペプチドをコードする核酸配列を含み得る。ベクターは、例えば、プラスミドであってもよい。典型的には、カーゴは、例えば、ランダムに剪断された又は断片ゲノムDNAではない。
【0016】
一部の実施形態では、カーゴは、Casエンドヌクレアーゼ、gRNA、又はそれらの組み合わせをコードする核酸を含む、又はそれからなる。一部の実施形態では、カーゴは、キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする核酸を含む又はそれからなる。一部の実施形態では、カーゴは、機能的核酸、例えばアンチセンス分子、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、アプタマー、リボザイム、RNAi、もしくは外部ガイド配列、又はそれらをコードする核酸構築物などである。
【0017】
カーゴは、複数の単一核酸分子、又は複数の2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくはそれ以上の異なる核酸分子を含んでもよい、又はそれらから成ってもよい。一部の実施形態では、カーゴの核酸分子は、約1~約25,000核酸塩基長の核酸分子を含む、又はそれから成る。カーゴは、一本鎖核酸、二本鎖核酸、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
複合体と、医薬的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。一部の実施形態では、複合体は、ポリマーナノ粒子中にカプセル化される。標的指向部分、細胞浸透性ペプチド、又はそれらの組み合わせを、ナノ粒子に直接的又は間接的に結合、連結、コンジュゲート、又はそうでなければ付着させることができる。
【0019】
単独又はナノ粒子中にカプセル化された有効量の複合体と細胞を接触させることにより、細胞中に核酸カーゴを送達する方法も提供する。接触は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで行い得る。一部の実施形態では、有効量のエクスビボ処理細胞は、例えば、疾患又は障害の一つ又は複数の症状を治療するために有効量で、その必要のある対象に投与される。
【0020】
一部の実施形態では、接触は、その必要のある対象への投与後にインビボで行われる。対象は、疾患又は障害、例えば遺伝的障害又はがんなどを有し得る。組成物は、例えば、注射又は注入により、対象における疾患又は障害の一つ又は複数の症状を低減させるための有効量で、対象に投与することができる。
【0021】
組成物及び方法の適用も提供し、限定されないが遺伝子治療及びCAR T細胞製造/形成/治療を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A図1A~1Cは、対照(1A)、ならびに単独時(1B)の、及び3E10と1時間にわたり混合した場合(1C)のPNAの取込みを示す散布プロットである。図1Dは、図1A~1C中のデータを定量化する棒グラフである。
図1B】同上。
図1C】同上。
図1D】同上。
図2A図2A~2Cは、対照(2A)、ならびに単独時(2B)の、及び3E10と24時間にわたり混合した場合(2C)のPNAの取込みを示す散布プロットである。図2Dは、図2A~2C中のデータを定量化する棒グラフである。
図2B】同上。
図2C】同上。
図2D】同上。
図3A図3A~3Cは、対照(3A)、ならびに単独時(3B)の、及び3E10と24時間にわたり混合した場合(3C)のsiRNAの取込みを示す散布プロットである。図3Dは、図3A~3C中のデータ定量化する棒グラフである。
図3B】同上。
図3C】同上。
図3D】同上。
図4A図4A~4Hは、対照(4A)、ならびに単独時(4B)の、及び様々な濃度で3E10と24時間にわたり混合した場合(4C-4H)のmRNAの取込みを示す散布プロットである。図4Iは、図4A~4H中のデータ定量化する棒グラフである。
図4B】同上。
図4C】同上。
図4D】同上。
図4E】同上。
図4F】同上。
図4G】同上。
図4H】同上。
図4I】同上。
図5A図5A~5Hは、対照(5A)、ならびに単独時(5B)の、及び様々な濃度で3E10と1時間にわたり混合した場合(5C-5H)のmRNAの取込みを示す散布プロットである。図5Iは、図5A~5H中のデータ定量化する棒グラフである。
図5B】同上。
図5C】同上。
図5D】同上。
図5E】同上。
図5F】同上。
図5G】同上。
図5H】同上。
図5I】同上。
図6図6は、3E10との混合の72時間後及び細胞との24時間のインキュベーション後のGFPレポータープラスミドDNAの細胞発現を示す一連の画像である。
図7図7Aは、マウスにおける全身性の注射前に、室温で15分間にわたり、3E10(0.25、0.5、及び1mg)の増加用量と混合された蛍光標識siRNAの腫瘍中での蓄積を示す棒グラフである。図7Bは、マウスにおける全身性の注射前に、室温で15分間にわたり、1mgの3E10又は0.1mgのD31Nバリアント3E10と混合された蛍光標識siRNAの腫瘍中での蓄積を示す棒グラフである。全ての腫瘍を、注射の24時間後に分析した。
図8図8は、マウス筋(IM)への経時的な(IM注射後の日数)mRNAの3E10媒介性送達(生体発光(光子/秒))を示す折れ線グラフである。
図9-1】図9A及び9Bは、IV注入の24時間後にIVIS(Perkin Elmer)により撮像された、対照(図9A)及びIV注入3E10-D31Nの筋肉への分布(図9B)を示す画像である。図9Cは、IVIS画像において蛍光を定量化する棒グラフである。
図9-2】同上。
図10図10は、マウス(Perkin Elmer)中への、VivoTag680で標識された3E10-D31Nの100μg又は200μgの静脈内注射の24時間後の、組織への3E10-D31Nの用量依存的生体分布のIVIS画像における蛍光を定量化する棒グラフである。
図11-1】図11A及び11Bは、注入の24時間後にIVIS(Perkin Elmer)により撮像された、対照(図11A)及び同系結腸腫瘍(CT26)へのIV注入3E10-D31Nの分布(図11B)を示す画像である。図11Cは、IVIS画像における蛍光を定量化する棒グラフである。
図11-2】同上。
図12図12A、12B、及び12Cは、IVIS(Perkin Elmer)により注入の24時間後に撮像された、対照(図12A)、及びIV注入されたネイキッド一本鎖DNA(ssDNA)(図12B)及び3E10-D31N+ssDNA(図12C)同系結腸腫瘍(CT26)の分布を示す画像である。図12Dは、IVIS画像における蛍光を定量化する棒グラフである。
図13図13は、RIG-Iの3E10媒介性送達及び刺激を示す棒グラフである。
図14A図14Aは、3E10の分子モデリング、その推定核酸結合ポケット(NAB1)、及びその中のアミノ酸変異により誘導される予測構造変化の例証である。
図14B図14Bは、点状のドットにより強調されたNAB1アミノ酸残基を有する3E10-scFvの分子モデリング(Pymol)の例証である。
図14C図14Cは、図14A及び14B中に示される分子モデリングにより同定される推定核酸結合ポケットの、3E10-scFv構築物のアミノ酸配列上へのマッピングを例証する。
図15図15A及び15Bは、黒色腫細胞の生存率における野生型(12A)又はD31N 3E10(12B)+ポリ(I:C)の影響を示す棒グラフである。
図16A図16A、16B、及び図16Cは、実施例15において記載されるように、PBS(対照)、3p-hpRNA単独、増加量の3E10-D31N(GMAB)単独、及び増加するモル比で調製された3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(3E10:3p-hpRNA)への曝露後のTHP-1単球における1型IFN応答の3日間の時間経過を集合的に示すヒストグラムを例証する。
図16B】同上。
図16C】同上。
図17図17A及び17Bは、実施例16において記載されるように、PBS(対照)、3p-hpRNA単独、3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体への曝露後のヒト脳腫瘍細胞の生存率を示すヒストグラムを例証する。
図18図18A及び18Bは、実施例17において記載されるように、PBS(対照)、3p-hpRNA単独、3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体への曝露後のヒト脳腫瘍細胞の細胞壊死を示すヒストグラムを例証する。
図19-1】図19A、19B、19C、及び19Dは、実施例18において記載されるように、PBS(対照)、3p-hpRNA単独、3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体への曝露後のヒト(19A及び19B)及びマウス(19C及び19D)結腸直腸がん細胞の細胞壊死を示すヒストグラムを例証する。
図19-2】同上。
図20図20は、実施例19において記載されるように、PBS(対照)、3p-hpRNA単独、3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体への曝露後のヒト乳がん細胞の細胞壊死を示すヒストグラムを例証する。
図21図21は、実施例20において記載されるように、PBS(対照)、3E10-D31N(GMAB)単独、3p-hpRNA単独、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体、又は抗CTLA-4抗体へのB16黒色腫細胞の曝露後のIL-10濃度を示すヒストグラムを例証する。
図22図22は、実施例20において記載されるように、PBS(対照)、3E10-D31N(GMAB)単独、3p-hpRNA単独、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体、又は抗CTLA-4へのB16黒色腫細胞の曝露後のIL-6濃度を示すヒストグラムを例証する。
図23A図23A及び23Bは、実施例21において記載されるように、PBS(左パネル)又は3E10-D31N/3p-hpRNA複合体の静脈内投与後の、同所性膵臓腫瘍を有するマウスにおける、がん性組織中でのルシフェラーゼレポーターの生物発光(図23A)及び標識された3E10-D31Nの蛍光(図23B)のインビボ画像を示す。
図23B】同上。
図24A図24A及び24Bは、実施例21において記載されるように、PBS(左パネル)、3E10-D31N単独(中央パネル)、又は3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(右パネル)の静脈内投与後の切除された同所性膵臓腫瘍における、がん性組織中でのルシフェラーゼレポーターの生物発光(図24A)及び標識された3E10-D31Nの蛍光(図24B)を示す。
図24B】同上。
図24C図24Cは、実施例21において記載されるように、PBS(左パネル)又は3E10-D31N/3p-hpRNA複合体の静脈内投与後の、同所性膵臓腫瘍を有する代表的なマウスからの切除器官中での標識された3E10-D31Nの蛍光を例証する。
図24D図24Dは、実施例21において記載されるように、PBS(対照;各群における左プロット)、3E10-D31N(GMAB)単独(各群における中央プロット)、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(各群における右プロット)で処置されたコホート中のマウスからの切断器官における標識された3E10-D31Nの平均放射効率(蛍光)のヒストグラムを示す。
図24E図24Eは、実施例21において記載されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体で処置されたコホート中の全マウスの切除器官におけるがん性組織中でのルシフェラーゼレポーターの生物発光(左列)及び標識された3E10-D31Nの蛍光(右列)を示す。
図25-1】図25A、25B、25C、25D、25E、25F、25G、25H、25I、25J、25K、25L、25M、及び25Nは、実施例22に記述されるように、PBS(対照)、3E10-D31N(GMAB)単独、3p-hpRNA単独、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体、又は抗CTLA-4へのマウス黒色腫モデルの曝露後のサイトカイン濃度及びTIL腫瘍浸潤を集合的に示す。
図25-2】同上。
図25-3】同上。
図25-4】同上。
図25-5】同上。
図26図26は、実施例23において記載されるように、3p-hpRNAの3E10-D31N媒介性送達により誘発されるI型IFN応答を例証する。
図27図27は、実施例24において記載されるように、3p-hpRNAの3E10-D31N媒介性送達により起こされる細胞死を例証する。
図28-1】図28A、28B、28C、28D、28E、28F、28G、28H、28I、28J、及び28Kは、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体の静脈内投与によって、黒色腫のマウスモデルにおける腫瘍成長が抑制されることを集合的に示す。図28Aは、実施例25において記載されるように、腫瘍移植後9、11、13、及び15日での、PBS(対照;●)、3E10-D31N(GMAB;■)単独、3p-hpRNA単独(▲)、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(▼)、又は抗CTLA-4抗体(◆)の全身投与後のマウスモデルにおける平均黒色腫腫瘍体積を例証する。腫瘍移植後9、11、13、及び15日での、PBS(対照;28B及び28C)、3E10-D31N(GMAB;28D及び28E)単独、3p-hpRNA単独(28F及び28G)、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(28H及び28I)、又は抗CTLA-4抗体(28J及び28K)の全身投与後の、コホート当たり5匹のマウスの各々についての腫瘍体積(mm)、及び移植後23日目のコホート中の代表的な腫瘍の画像をまた、示している。
図28-2】同上。
図28-3】同上。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
I.定義
本明細書中で使用される場合、用語「単鎖Fv」又は「scFv」は、リンカーにより結合された単一ポリペプチド鎖中に軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)を含む単鎖可変断片を意味し、それによって、抗原結合のための所望の構造を形成することができる(即ち、単一ポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに会合してFvを形成する)。VL領域及びVH領域は、親抗体から由来してもよく、又は化学的もしくは組換え的に合成されてもよい。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「可変領域」は、イムノグロブリンのそのようなドメインを、抗体(例えば抗体Fcドメインなど)により広く共有されるドメインと区別することを意図する。可変領域は、その残基が抗原結合に関与する「超可変領域」を含む。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(即ち、典型的には、軽鎖可変ドメイン中のおよその残基24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)で、ならびに重鎖可変ドメイン中のおよそ残基27~35(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))ならびに/あるいは「超可変ループ」からのそれらの残基(即ち、軽鎖可変ドメイン中の残基 26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3);Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917)を含む。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書中で定義される超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、標的抗原に結合する天然抗体又は合成抗体を指す。この用語は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含む。インタクトなイムノグロブリン分子に加えて、用語「抗体」において含まれるのは、それらのイムノグロブリン分子の結合タンパク質、断片、及びポリマー、ならびに標的抗原に結合するヒト又はヒト化バージョンのイムノグロブリン分子である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞浸透性抗体」は、それに基づくイムノグロブリンタンパク質、断片、そのバリアント、又は融合タンパク質を指し、生きた哺乳動物細胞の細胞質及び/又は核中に輸送される。「細胞浸透性抗DNA抗体」は、DNA(例、一本鎖及び/又は二本鎖DNA)に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、担体又はコンジュゲートの助けなく、細胞の細胞質中に輸送される。他の実施形態では、抗体は、細胞浸透性部分、例えば細胞浸透性ペプチドなどとコンジュゲートされる。一部の実施形態では、細胞浸透性抗体は、担体又はコンジュゲートとともに又はそれなしに、核中に輸送される。
【0028】
インタクトなイムノグロブリン分子に加えて、また、用語「抗体」において含まれるのは、イムノグロブリン分子の断片、結合タンパク質、及びポリマー、イムノグロブリンの1を上回る種、クラス、又はサブクラス、例えばヒト又はヒト化抗体などからの配列を含むキメラ抗体、及びDNAに特異的に結合するイムノグロブリンの最小限のイディオタイプを含む組換えタンパク質である。抗体は、本明細書中に記載されるインビトロアッセイを使用して、又は類似の方法により、それらの所望の活性についてテストすることができ、その後に、それらのインビボ治療活性を、公知の臨床テスト方法に従ってテストする。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「バリアント」は、参照ポリペプチド又はポリヌクレオチドとは異なるものの、必須特性を保持する、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。ポリペプチドの典型的なバリアントは、別の参照ポリペプチドとは、アミノ酸配列において異なる。一般的に、差は限定されており、参照ポリペプチド及びバリアントの配列は、全体的に密接に類似し、多くの領域において同一である。バリアント及び参照ポリペプチドは、一つ又は複数の修飾(例、置換、付加、及び/又は欠失)によりアミノ酸配列において異なっていてもよい。置換又は挿入されたアミノ酸残基は、遺伝コードによりコードされるアミノ酸残基であってもよく、又はなくてもよい。ポリペプチドのバリアントは、天然型、例えば対立遺伝子バリアントなどであってもよく、又は天然型でないことが公知であるバリアントであってもよい。
【0030】
修飾及び変化が、本開示のポリペプチドの構造中で作製されてもよく、依然としてポリペプチドと類似の特徴を有する分子を得ることができる(例、保存的アミノ酸置換)。例えば、特定のアミノ酸が、認識できる活性喪失なしに、配列中の他のアミノ酸について置換することができる。そのポリペプチドの生物学的機能的活性を定義するのは、ポリペプチドの相互作用的な能力及び性質であるため、特定のアミノ酸配列置換をポリペプチド配列中に作製し、それにもかかわらず同様の特性を有するポリペプチドを得ることができる。
【0031】
そのような変化を作製する際に、アミノ酸の親水指数を考慮することができる。ポリペプチド上に相互作用的な生物学的機能を付与する際でのヒドロパチーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般的に理解される。特定のアミノ酸を、類似のヒドロパチー指数又はスコアを有する他のアミノ酸に置換し、依然として類似の生物学的活性を有するポリペプチドをもたらすことができることが公知である。各アミノ酸は、その疎水性及び荷電特徴に基づいて、ヒドロパチー指数が割り当てられている。これらの指数は:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。
【0032】
アミノ酸の相対的ヒドロパシー特徴によって、結果として得られるポリペプチドの二次構造が決定され、これは次に、他の分子、例えば酵素、基質、受容体、抗体、抗原、及び補因子などとのポリペプチドの相互作用を定義すると考えられる。アミノ酸は、類似のヒドロパチー指数を有する別のアミノ酸により置換されてもよく、依然として機能的に等価なポリペプチドを得ることができることが当技術分野において公知である。そのような変化では、ヒドロパチー指数が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらにより特に好ましい。
【0033】
類似のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて作製することができ、特に、それにより作られる生物学的な機能的な等価のポリペプチド又はペプチドが、免疫学的な実施形態における使用のために意図される。以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(-0.5±1);スレオニン(-0.4);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸を、類似の親水性値を有する別のものに置換し、依然として生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なポリペプチドを得ることができることが理解される。そのような変化では、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらにより特に好ましい。
【0034】
上に概説したように、アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換基、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズ、及び同様のものの相対的類似性に基づいている。前述の様々な特徴を考慮に入れた例示的な置換は、当業者には周知であり、(元の残基:例示的な置換)を含む:(Ala:Gly、Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln、His)、(Asp:Glu、Cys、Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn、Gln)、(Ile:Leu、Val)、(Leu:Ile、Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu、Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Tip:Tyr)、(Tyr:Trp、Phe)、及び(Val:Ile、Leu)。本開示の実施形態は、このように、上に示すポリペプチドの機能的又は生物学的な等価物を企図する。特に、ポリペプチドの実施形態は、関心対象のポリペプチドに対して約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性を有するバリアントを含むことができる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「パーセント(%)配列同一性」は、配列を整列させ、必要な場合にギャップを導入し、最大パーセントの配列同一性を達成した後、参照核酸配列中のヌクレオチド又はアミノ酸と同一である候補配列中のヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージとして定義する。パーセント配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用して、当技術分野におけるスキル内にある様々な方法で達成することができる。アライメントを測定するための適したパラメータは、比較されている配列の全長にわたり最大アライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含み、公知の方法により決定することができる。
【0036】
本明細書中の目的のために、所与の核酸配列Dへの、それとの、又はそれに対する所与のヌクレオチド又はアミノ酸配列Cの配列同一性%(所与の配列Dへの、それとの、又はそれに対する特定の配列同一性%を有する、又はそれを含む所与の配列Cとして別の方法で言い表すことができる)は、以下のように算出する:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは、そのプログラムのC及びDのアライメントにおける配列アライメントプログラムにより同一のマッチとしてスコアされたヌクレオチド又はアミノ酸の数であり、Zは、Dにおけるヌクレオチド又はアミノ酸の総数である。配列Cの長さが配列Dの長さと等しくない場合、CからDの配列同一性%は、DからCの配列同一性%と等しくないことが理解されよう。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「特異的に結合する」は、抗体の、その同族抗原(例えば、DNA)への結合を指す一方で、他の抗原には有意に結合しない。そのような条件下での標的への抗体の特異的な結合には、標的に対するその特異性について選択される抗体が要求される。様々なイムノアッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択してもよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を選択するためにルーチン的に使用される。特異的な免疫反応性を決定するために使用することができるイムノアッセイのフォーマット及び条件の記載については、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New York,を参照のこと。好ましくは、抗体は、その第二の分子と、約10mol-1(例、10mol-1、10mol-1、10mol-1、10mol-1、1010mol-1、1011mol-1、及び1012mol-1又はそれ以上)よりも大きな親和性定数(Ka)で抗原に「特異的に結合する」。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」又は「MAb」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、即ち、集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さなサブセット中に存在し得る可能な天然変異を除いて、同一である。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」は、投与の標的である任意の個人を意味する。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。このように、対象はヒトであり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を表示しない。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」は、使用される組成物の量が、疾患又は障害の一つ又は複数の原因又は症状を寛解させるのに十分な量であることを意味する。そのような寛解は、必ずしも除去ではなく、低下又は改変を必要とするだけである。正確な投与量は、様々な要因、例えば対象依存的な変数(例、年齢、免疫系の健常など)、治療されている疾患又は障害など、ならびに投与の経路及び投与されている薬剤の薬物動態に従って変動するであろう。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「医薬的に許容可能な」は、生物学的に又は他の方法で望ましくないことはない材料を指し、即ち、材料は、任意の望ましくない生物学的効果を起こす、又はそれが含まれる医薬組成物の他の成分のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、対象に投与され得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「担体」又は「賦形剤」は、一つ又は複数の活性成分が組み合わされる、製剤中の有機又は無機成分、天然又は合成不活性成分を指す。担体又は賦形剤は、当業者に周知であろうように、有効成分の任意の分解を最小限にし、対象における任意の有害な副作用を最小限にするために、自然と選択されるであろう。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「治療する」は、疾患、病理学的状態、又は障害を治癒、寛解、安定化、又は予防する意図を有する患者の医療管理を指す。この用語は、能動的治療、すなわち、疾患、病理学的状態、又は障害の改善に特に向けられた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、又は障害の原因の除去に向けられた治療を含む。また、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病理学的状態、又は障害の治癒よりむしろ、症状の軽減のために計画された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、又は障害の発生を最小限にする、又は部分的に、もしくは完全に阻害することに向けられた治療;及び支持的治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、又は障害の改善に対して向けられた別の特定の治療を補足するために用いられる治療を含む。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「標的指向部分」は、粒子又は分子を、選択された細胞又は組織型上の受容体部位に向けることができる、付着分子としての役割を果たすことができる、あるいは別の分子を結合又は付着する役割を果たすことができる、物質である。本明細書中で使用される場合、「直接的」は、分子を、選択された細胞又は組織型に優先的に付着させることを指す。これは、以下で考察するように、細胞材料、分子、又は薬物を方向付けるために使用することができる。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「阻害する」又は「低下させる」は、活性、応答、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これは、限定されないが、活性、応答、状態、又は疾患の完全な消失を含むことができる。これはまた、例えば、天然レベル又は対照レベルと比較して、活性、応答、状態、又は疾患における10%低下を含んでもよい。このように、低下は、天然レベル又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の低下とすることができる。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「融合タンパク質」は、一つのポリペプチドのアミノ末端と別のポリペプチドのカルボキシル末端との間に形成されるペプチド結合を通じて、二つ以上のポリペプチドの結合により形成されるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、構成ポリペプチドの化学的カップリングにより形成されることができる、又は単一連続融合タンパク質をコードする核酸配列からの単一ポリペプチドとして発現されることができる。単鎖融合タンパク質は、単一の連続ポリペプチド骨格を有する融合タンパク質である。融合タンパク質は、分子生物学における従来技術を使用して調製され、インフレームの二つの遺伝子を単一の核酸配列中に結合させて、次に融合タンパク質が産生される条件下で適した宿主細胞中で核酸を発現させることができる。
【0047】
本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で他に示されない限り、その範囲内にある各々の別々の値を個別に参照する簡易的な方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各々の別々の値は、本明細書中に個別に列挙されたかのように本明細書中に組み入れられる。
【0048】
用語「約」の使用は、およそ+/-10%の範囲中で、記載値の上又は下のいずれかの値を記載することを意図しており;他の実施形態では、値は、およそ+/-5%の範囲で、記載値の上又は下のいずれかの範囲であり得る;他の実施形態では、値は、およそ+/-2%の範囲で、記載値の上又は下のいずれかの範囲であり得る;他の実施形態では、値は、およそ+/-1%の範囲で、記載値の上又は下のいずれかの範囲であり得る。前述の範囲は、文脈により明らかにされることが意図されており、さらなる限定を意味しない。
【0049】
本明細書中に記載される全ての方法は、他に示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序において実施することができる。本明細書中に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例、「例えば、など」)の使用は、単に実施形態をより良く照らすことを意図するものであり、他に請求されない限り、実施形態の範囲に限定を課さない。本明細書中の言語は、本発明の実施に必須であるとして任意の請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0050】
II.組成物
3E10抗体は、細胞膜を横切って、細胞細胞質及び核中に核酸を送達するのに役立つことが発見されている。このように、3E10を使用して核酸構築物の送達を増強するための組成物及び方法が提供される。典型的には、有効量の3E10抗体を、その細胞中への送達が望まれる核酸と接触させる。典型的には、接触は、3E10及び核酸カーゴが複合体を形成するために十分な量について行われる。複合体は、核酸カーゴが細胞中に送達されるのに十分な時間にわたり細胞と接触させる。カーゴは、細胞が抗体の非存在において核酸カーゴと接触した場合よりも、より大きな量、より大きな質(例、よりインタクト、機能的など)、又はより速い速度、又はそれらの組み合わせで蓄積し得る。抗体は送達手段としての役割を果たすため、送達系は典型的には非ウイルス性である。
【0051】
A.3E10抗体
本明細書中で一般的に「3E10」又は「3E10抗体」として言及されるが、抗原結合断片、バリアント、ならびに融合タンパク質、例えばscFv、ジ-scFv、tr-scFv、及び他の単鎖可変断片など、ならびに本明細書中に開示される他の細胞浸透性分子、核酸輸送分子を含む断片及び結合タンパク質が、この語句により包含され、本明細書中に開示される組成物及び方法における使用のために明示的に提供されることが理解されるであろう。このように、抗体及び他の結合タンパク質はまた、本明細書中では細胞浸透性として言及される。
【0052】
好ましい実施形態では、3E10抗体は、担体又はコンジュゲートの助けなく、細胞の細胞質及び/又は核中に輸送される。例えば、細胞傷害性の影響なしに哺乳動物細胞の核にインビボで輸送されるモノクローナル抗体3E10及びその活性断片は、Richard Weisbartへの米国特許第4,812,397号及び第7,189,396号において開示されている。
【0053】
一部の実施形態では、抗体は、Rad51に結合及び/又はそれを阻害してもよい。例えば、Turchick,et al.,Nucleic Acids Res.,45(20):11782-11799(2017)、WO2020/047344、及びWO2020/047353を参照のこと。それら各々は、その全体において参照により本明細書中に具体的に組み入れられる。
【0054】
組成物及び方法において使用することができる抗体は、任意のクラスの全イムノグロブリン(即ち、インタクト抗体)、その断片、及び抗体の抗原結合可変ドメインを少なくとも含む合成タンパク質を含む。可変ドメインは、抗体間で配列において異なり、その特定の抗原に対する各々の特定の抗体の結合及び特異性において使用される。しかし、変動性は通常、抗体の可変ドメインを通して均等に分布しない。それは、典型的には、軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方における相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と呼ばれる三つのセグメント中に集中する。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々が、四つのFR領域を含み、ベータシート構造の一部を接続する、及び一部の場合では、それを形成するループを形成する、三つのCDRにより接続されるベータシート構成を主に採用している。各鎖中のCDRは、FR領域により、他方の鎖からのCDRと近接して一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。従って、抗体は、典型的には、DNA結合を維持する及び/又はDNA修復に干渉するために必要なCDRを少なくとも含む。
【0055】
3E10抗体は、典型的には、3E10と同じ又は異なるエピトープに結合するモノクローナル抗体3E10、又はそのバリアント、誘導体、断片、融合、もしくはヒト化形態である。
【0056】
モノクローナル抗体3E10を産生するハイブリドーマ細胞株のブダペスト条約の条件に従った寄託は、2000年9月6日に受領され、American Type Culture Collection(ATCC)、10801 University Blvd.,Manassas,VA 20110-2209,USAにより承認され、特許寄託番号PTA-2439が与えられた。
【0057】
このように、抗体は、ATCC番号PTA2439ハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体3E10と、同じ又は異なるエピトープ特異性を有してもよい。抗体は、モノクローナル抗体3E10のパラトープを有することができる。抗体は、3E10の単鎖可変断片、又はバリアント、例えば、その保存的バリアントであり得る。例えば、抗体は、3E10(3E10 Fv)の単鎖可変断片、又はそのバリアントであり得る。
【0058】
1.3E10配列
モノクローナル抗体3E10のアミノ酸配列は、当技術分野において公知である。例えば、3E10重鎖及び軽鎖の配列が以下に提供され、ここで、単一の下線は、Kabatシステムに従って特定されたCDR領域を示し、配列番号12~14において、斜体は可変領域を示し、二重下線はシグナルペプチドを示す。IMGTシステムに従ったCDRも提供される。
【0059】
a.3E10重鎖
一部の実施形態では、3E10の重鎖可変領域は、以下である:
(配列番号1;Zack,et al.,Immunology and Cell Biology,72:513-520(1994);GenBank:L16981.1-マウスIg再構成L鎖遺伝子,部分cds;及びGenBank:AAA65679.1-イムノグロブリン軽鎖,部分[ハツカネズミ(Mus musculus)])。
【0060】
一部の実施形態では、3E10重鎖は、
(3E10 WT重鎖;配列番号12)として表現される。
【0061】
野生型配列中に変異を組み入れる3E10抗体のバリアントも当技術分野において公知であり、例えば、Zack,et al.,J.Immunol.,157(5):2082-8(1996)において開示されている。例えば、3E10の重鎖可変領域のアミノ酸位置31は、抗体及びその断片が核へ浸透し、DNAに結合する能力(配列番号1、配列番号2、及び配列番号13において太字)において影響力があると決定されている。CDR1中のD31N変異体(配列番号2及び13において太字)は、核へ浸透し、元の抗体よりもずっと大きな効率でDNAに結合する(Zack,et al.,Immunology and Cell Biology,72:513-520(1994)、Weisbart,et al.,J.Autoimmun.,11,539-546(1998);Weisbart,Int.J.Oncol.,25,1867-1873(2004))。一部の実施形態では、抗体はD31N置換を有する。
【0062】
一部の実施形態では、3E10の重鎖可変領域の好ましいバリアントのアミノ酸配列は、以下である:
(配列番号2)。
【0063】
一部の実施形態では、3E10重鎖は、
(3E10 D31Nバリアント重鎖;配列番号13)として表現される。
【0064】
一部の実施形態では、配列番号1又は2のC末端セリンは、存在しないか、又は、例えば、3E10重鎖可変領域中で、アラニンで置換されている。
【0065】
Kabatにより特定される相補性決定領域(CDR)を、上に下線で示し、
CDR H1.1(元の配列):DYGMH(配列番号15);
CDR H1.2(D31N変異あり):NYGMH(配列番号16);
CDR H2.1:YISSGSTIYADTVKG(配列番号17);
CDR H3.1:RGLLDY(配列番号18)を含む。
【0066】
Kabat CDR H2.1のバリアントは、
YISSGSSTIYYADSVKG(配列番号19)及び
YISSSSSTIYYADSVKG(配列番号42)を含む。
【0067】
加えて、又はあるいは、重鎖相補性決定領域(CDR)は、IMGTシステムに従って定義することができる。IMGTシステムにより特定される相補性決定領域(CDR)は、
CDR H1.3(元の配列):GFTFSDYG(配列番号20);
CDR H1.4(D31N変異あり):GFTFSNYG(配列番号21);
CDR H2.2:ISSGSSTI(配列番号22)及び
バリアントISSSSSTI(配列番号43);
CDR H3.2:ARRGLLDY(配列番号23)を含む。
【0068】
b.3E10軽鎖
一部の実施形態では、3E10の軽鎖可変領域は、以下である:
(配列番号7)。
【0069】
3E10の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列はまた、以下であり得る:
(配列番号8)。
【0070】
一部の実施形態では、3E10軽鎖は、
(3E10 WT軽鎖;配列番号14)として表現される。
【0071】
他の3E10軽鎖配列は、当技術分野において公知である。例えば、Zack,et al.,J.Immunol.,15;154(4):1987-94(1995);GenBank:L16981.1-マウスIg再構成L鎖遺伝子、部分cds、GenBank:AAA65681.1-イムノグロブリン軽鎖、部分[ハツカネズミ])。
【0072】
Kabatにより特定された相補性決定領域(CDR)を下線で示し、
CDR L1.1:RASKSVSTSYSYMH(配列番号24);
CDR L2.1:YASYLES(配列番号25);
CDR L3.1:QHSREFPWT(配列番号26)を含む。
【0073】
Kabat CDR L1.1のバリアントは、
RASKSVSTSSYSYLA(配列番号27)及び
RASKTVSTSSYSYMH(配列番号44)を含む。
【0074】
Kabat CDR L2.1のバリアントは、YASYLQS(配列番号28)である。
【0075】
加えて、又はあるいは、重鎖相補性決定領域(CDR)は、IMGTシステムに従って定義することができる。IMGTシステムにより特定される相補性決定領域(CDR)は、
CDR L1.2 KSVSTSSYSY(配列番号29)及び
バリアントKTVSTSSYSY(配列番号45)、
CDR L2.2;YAS(配列番号30);
CDR L3.2:QHSREFPWT(配列番号26)を含む。
【0076】
一部の実施形態では、配列番号7又は8の配列のC末端は、3E10軽鎖可変領域においてアルギニンをさらに含む。
【0077】
2.ヒト化3E10
一部の実施形態では、抗体はヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入される一つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」残基として言及され、それらは、典型的には、「インポート」可変ドメインから取られる。抗体ヒト化技術は、一般的に、抗体分子の一つ又は複数のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための組換えDNA技術の使用を含む。
【0078】
例示的な3E10ヒト化配列は、WO2015/106290、WO2016/033324、WO2019/018426、及びWO/2019/018428において考察されており、以下に提供される。
【0079】
a.ヒト化3E10重鎖可変領域
一部の実施形態では、ヒト化3E10重鎖可変ドメインは、
EVQLVQSGGGLIQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVSYISSGSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(hVH1、配列番号3)、又は
EVQLVESGGGLIQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVSYISSGSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMTSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTLTVSS(hVH2、配列番号4)、又は
EVQLQESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWIRQAPGKGLEWVSYISSGSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRSEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTLVTVSS(hVH3、配列番号5)、又は
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCSASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEYVSYISSGSSTIYYADTVKGRFTISRDNSKNTLYLQMSSLRAEDTAVYYCVKRGLLLDYWGQGTLVTVSS(hVH4、配列番号6)、又は
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(バリアント2、6、及び10、配列番号46)、又は
EVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPEKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(バリアント3、7、及び11、配列番号47)、又は
EVQLVESGGGDVKPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPEKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(バリアント4、8、及び12、配列番号48)、又は
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVSYISSGSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(バリアント13、16、及び19、配列番号50)、又は
EVQLVESGGGVVQPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPEKGLEWVSYISSGSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(バリアント14及び17、配列番号51)、又は
EVQLVESGGGDVKPGGSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPEKGLEWVSYISSGSSTIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARRGLLLDYWGQGTTVTVSS(バリアント15及び18、配列番号52)を含む。
【0080】
b.ヒト化3E10軽鎖可変領域
一部の実施形態では、ヒト化3E10軽鎖可変ドメインは、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSSYSYLAWYQQKPEKAPKLLIKYASYLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSREFPWTFGAGTKLELK(hVL1、配列番号9)、又は
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASKSVSTSSYSYMHWYQQKPEKAPKLLIKYASYLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDVATYYCQHSREFPWTFGAGTKLELK(hVL2、配列番号10)、又は
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASKSVSTSSYSYMHWYQQKPGQPPKLLIYYASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEANDTANYYCQHSREFPWTFGQGTKVEIK(hVL3、配列番号11)
DIQMTQSPSSLSASLGDRATITCRASKSVSTSSYSYMHWYQQKPGQPPKLLIKYASYLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYCQHSREFPWTFGGGTKVEIK(バリアント2、3、及び4、配列番号53)
DIQMTQSPSSLSASLGDRATITCRASKSVSTSSYSYMHWYQQKPGQAPKLLIKYASYLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSREFPWTFGQGTKVEIK(バリアント6、7、及び8、配列番号54)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSSYSYMHWYQQKPGKAPKLLIKYASYLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSREFPWTFGQGTKVEIK(バリアント10、11、及び12、配列番号55)
DIQMTQSPSSLSASLGDRATITCRASKTVSTSSYSYMHWYQQKPGQPPKLLIKYASYLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDAATYYCQHSREFPWTFGGGTKVEIK(バリアント13、14、及び15、配列番号56)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKTVSTSSYSYMHWYQQKPGKAPKLLIKYASYLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSREFPWTFGQGTKVEIK(バリアント16、17、及び18、配列番号57)
DIQMTQSPSSLSASLGDRATITCRASKTVSTSSYSYMHWYQQKPGQAPKLLIKYASYLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSREFPWTFGQGTKVEIK(バリアント19、配列番号58)を含む。
【0081】
c.細胞浸透性及び核局在化
開示される組成物及び方法では、典型的には、細胞、及び、場合により、核へ浸透する能力を維持する抗体を利用する。
【0082】
自己抗体による細胞内部移行の機構は多様である。一部は、静電相互作用又はFcR媒介性エンドサイトーシスを通じて細胞中に取り込まれる一方で、他は、細胞表面ミオシン又はカルレティキュリンとの会合に基づく機構を利用し、その後にエンドサイトーシスが続く(Ying-Chyi et al.,Eur J Immunol 38,3178-3190(2008),Yanase et al.,J Clin Invest 100,25-31(1997))。3E10は、Fc非依存的な機構(細胞へ浸透する、Fcを欠く3E10断片の能力により証明されるように)において細胞へ浸透するが、ヌクレオシドトランスENT2の存在を含む(Weisbart et al.,Sci Rep 5:12022.doi:10.1038/srep12022.(2015)、Zack et al.,J Immunol 157,2082-2088(1996)、Hansen et al.,J Biol 282, 20790-20793(2007))。このように、一部の実施形態では、本開示の組成物及び方法において利用される抗体は、Fc非依存的な機構において細胞へ浸透するが、ヌクレオシドトランスポーターENT2の存在を含むものである。
【0083】
DNAに結合するその能力と干渉する3E10中の変異は、抗体を核浸透不可能にし得る。このように、典型的には、抗体の開示されるバリアント及びヒト化形態は、核酸、特にDNAに結合する能力を維持する。また、3E10 scFvは、ENT2依存的な様式において、生体細胞及び核へと浸透することが可能であることが以前に示されており、ENT2欠損細胞において取り込み効率が損なわれている(Hansen,et al.,J.Biol.Chem.282,20790-20793(2007))。このように、一部の実施形態では、抗体の開示されるバリアント及びヒト化形態は、ENT依存的な、好ましくはENT2依存的な様式において、細胞核中に浸透する能力を維持する。
【0084】
WO2019/152806及びWO2019/152808において考察されているように、一部のヒト化3E10バリアントが、元のマウス3E10(D31N)ジ-scFvよりも効率的に細胞核へ浸透することが見出されている一方で、他は、核へ浸透する能力を失っていることが見出された。特に、バリアント10及び13は、マウス抗体と比較し、非常に十分に核へ浸透した。
【0085】
ヒト化3E10 VL中の潜在的な二分核局在化シグナル(NLS)が特定されており、以下の配列の一部又は全てを含み得る:
【0086】
例示的なコンセンサスNLSは、
(ここで、(X)=任意の残基であるが、優先的に塩基性残基(R又はK)である(配列番号91))又は配列番号53と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99パーセント配列同一性を有するそのバリアントであり得る、又は含むことができる。
【0087】
このように、一部の実施形態では、特に核インポートが重要である場合、開示される抗体は、細胞の核中に移動することができる配列番号88~91のいずれか一つの配列、又はその断片及びバリアント(例、配列番号88~91のいずれか一つと70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%のアミノ酸配列同一性)を含み得る。
【0088】
NLSの存在は、3E10が、核インポート経路を介して核膜を通過し得ることを示す。一部の実施形態では、NLSは、インポート経路の一つ又は複数のメンバーと相互作用することによりインポートを改善する。このように、一部の実施形態では、NLSは、インポーチンβ、インポーチンβ/インポーチンαヘテロ二量体、又はそれらの組み合わせに結合することができる。
【0089】
3.核酸結合
開示される組成物及び方法は、典型的には、核酸、例えばDNA、RNA、又はそれらの組み合わせなどに結合する能力を維持する抗体を利用する。
【0090】
以下の実施例は、3E10及び追加の3E10バリアントの分子モデリングを例証する。3E10の分子モデリング(Pymol)によって、推定核酸結合ポケット(NAB1)が明らかになった(例、図14A及び14Bを参照のこと)。下線付きの以下の配列とともに例証した。
【0091】
WT重鎖scFv配列
(配列番号92)
【0092】
軽鎖scFv配列
(配列番号93)
【0093】
一部の実施形態では、開示される抗体は、下線付きNAB1配列の一部又は全てを含む。一部の実施形態では、抗体は、核酸を結合する能力の変化を有するバリアント配列を含む。一部の実施形態では、NAB1中の変異(例、置換、挿入、及び/又は欠失)によって、核酸、例えばDNA、RNA、又はそれらの組み合わせなどの中への抗体の結合が改善する。一部の実施形態では、変異は保存的置換である。一部の実施形態では、変異によって、NAB1ポケットのカチオン電荷が増加する。
【0094】
本明細書中で考察及び例示されるように、CDR1の残基31のアスパラギン酸の、アスパラギンへの変異によって、この残基のカチオン電荷が増加し、インビボで核酸結合及び送達が増強された(3E10-D31N)。
【0095】
追加の例示的なバリアントは、CDR1の残基31のアスパラギン酸の、アルギニンへの変異(3E10-D31R)、そのモデリングは、カチオン電荷の伸長を示し、又はリジンへの変異(3E10-D31K)、そのモデリングは、電荷方向の変化を示す、を含む。このように、一部の実施形態では、3E10結合タンパク質は、D31R又はD31K置換を含む。
【0096】
3E10 D31又はN31に対応する残基を有する本明細書中に開示される配列の全てが、その中にD31R又はD31K又はN31R又はN31K置換を有して明示的に開示される。
【0097】
3E10の分子モデリング(Pymol)によって、推定核酸結合ポケット(NAB1)が明らかになった(図14A~14B)。CDR1の残基31のアスパラギン酸の、アスパラギンへの変異によって、この残基のカチオン電荷が増加し、インビボで核酸結合及び送達が増強された(3E10-D31N)。
【0098】
CDR1の残基31のアスパラギン酸の、アルギニンへの変異(3E10-D31R)によって、カチオン電荷がさらに拡大した一方で、リジンへの変異(3E10-D31K)によって、電荷方向が変化した(図14A)。
【0099】
分子モデリングから予測されるNAB1アミノ酸は、上の重鎖配列及び軽鎖配列において下線が引かれている。図14Bは、点状ドットで例証されたNAB1アミノ酸残基を有する3E10-scFvの分子モデリング(Pymol)を示す例証である。
【0100】
4.断片、バリアント、及び融合タンパク質
抗DNA抗体は、3E10又はそのヒト化形態の可変重鎖及び/又は軽鎖(例、配列番号1~11又は46~58のいずれか、あるいは配列番号12~14のいずれかの重鎖及び/又は軽鎖)のアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%同一である可変重鎖及び/又は可変軽鎖のアミノ酸配列を含む抗体断片又は融合タンパク質で構成されることができる。
【0101】
抗DNA抗体は、3E10、又はそのバリアントもしくはヒト化形態のCDR(例、配列番号1~11又は46~58、あるいは配列番号12~14、あるいは配列番号15~30又は42~45のいずれかのCDR)のアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、又は100%同一である一つ又は複数のCDRを含む抗体断片又は融合タンパク質で構成されることができる。二つのアミノ酸配列の同一性パーセントの決定は、BLASTタンパク質比較により決定することができる。一部の実施形態では、抗体は、上に記載する好ましい可変ドメインのCDRの一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、又は六つ全てを含む。
【0102】
好ましくは、抗体は、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3の各々の一つとの組み合わせでの、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3の各々の一つを含む。
【0103】
3E10についての軽鎖可変配列の予測された相補性決定領域(CDR)が、上に提供される。また、GenBank:AAA65681.1-イムノグロブリン軽鎖、部分[ハツカネズミ]及びGenBank:L34051.1-マウスIg再構成カッパ鎖mRNA V領域を参照のこと。3E10についての重鎖可変配列の予測された相補性決定領域(CDR)が、上に提供される。また、例えば、Zack,et al.,Immunology and CellBiology,72:513-520(1994)、GenBankアクセッション番号AAA65679.1 Zach,et al.,J.Immunol.154(4),1987-1994(1995)及びGenBank:L16982.1-マウスIg再構成H鎖遺伝子、部分的cds.を参照のこと。
【0104】
このように、一部の実施形態では、細胞浸透性抗体は、配列番号1もしくは2のCDR、又は重鎖及び軽鎖可変領域全体、又は配列番号12もしくは13の重鎖領域;又は配列番号7もしくは8との組み合わせでの、そのヒト化形態、又は配列番号14の軽鎖領域;又はそれらのヒト化形態を含む。一部の実施形態では、細胞浸透性抗体は、配列番号3、4、5、もしくは6のCDR、又は重鎖及び軽鎖可変領域全体を、配列番号9、10、もしくは11との組み合わせで含む。一部の実施形態では、細胞浸透性抗体は、配列番号46~48又は50~52のいずれか一つのCDR、又は重鎖及び軽鎖可変領域全体を、配列番号53~58のいずれか一つとの組み合わせで含む。
【0105】
3E10 D31又はN31に対応する残基を有する本明細書中に開示される配列の全てが、その中にD31R又はD31K又はN31R又はN31K置換を有して明示的に開示される。このように、一部の実施形態では、3E10結合タンパク質は、3E10重鎖の残基31に対応するアミノ酸残基が、アルギニン(R)又はリジン(K)で置換されている、前述の又は以下の配列のいずれかのバリアントである。
【0106】
また、含まれるのは、生物活性を有する抗体の断片である。断片は、他の配列に付着しているか否かにかかわらず、断片の活性が、非修飾抗体又は抗体断片と比較して、有意に変化又は損なわれていないという条件で、特定の領域又は特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、又は他の選択された修飾を含む。
【0107】
技術はまた、本開示の抗原性タンパク質に特異的な一本鎖抗体の産生のために適応させることができる。一本鎖抗体の産生のための方法は、当業者に周知である。単鎖抗体は、短いペプチドリンカーを使用して重鎖及び軽鎖の可変ドメインを一緒に融合することにより作製され、それにより、単一分子上の抗原結合部位を再構成することができる。一つの可変ドメインのC末端が、15~25アミノ酸のペプチド又はリンカーを介して、他の可変ドメインのN末端に繋ぎ留められている一本鎖抗体可変断片(scFv)が、結合の抗原結合又は特異性を有意に破壊することなく開発されている。リンカーは、重鎖及び軽鎖が、それらの適当な立体構造的な方向で一緒に結合することを可能にするように選ばれる。
【0108】
抗DNA抗体は、それらの治療能力を改善するように修飾することができる。例えば、一部の実施形態では、細胞浸透性抗DNA抗体は、標的細胞の細胞質及び/又は核中の第二の治療標的に対して特異的な別の抗体にコンジュゲートされる。例えば、細胞浸透性抗DNA抗体は、3E10 Fv、及び第二の治療標的に特異的に結合するモノクローナル抗体の単鎖可変断片を含む融合タンパク質であり得る。他の実施形態では、細胞浸透性抗DNA抗体は、3E10からの第一の重鎖及び第一の軽鎖、ならびに第二の治療標的に特異的に結合するモノクローナル抗体からの第二の重鎖及び第二の軽鎖を有する二重特異性抗体である。
【0109】
3E10からの第一の重鎖及び第一の軽鎖ならびに第二の標的に特異的に結合するモノクローナル抗体からの第二の重鎖及び第二の軽鎖を有する二特異性抗体及び他の結合タンパク質が、Weisbart,et al.,Mol.Cancer Ther.,11(10):2169-73(2012)、及びWeisbart,et al.,Int.J.Oncology、25:1113-8(2004)、及び米国特許出願第2013/0266570号において記載されており、それらは、それらの全体において参照により具体的に組み入れられる。一部の実施形態では、第二の標的は、標的細胞型、組織、器官などについて特異的である。このように、第二の重鎖及び第二の軽鎖は、標的細胞型、組織、器官に対して、複合体を標的指向させる標的指向部分としての役割を果たすことができる。一部の実施形態では、第二の重鎖及び第二の軽鎖は、造血幹細胞、CD34細胞、T細胞、又は任意の別の好ましい細胞型を、例えば、好ましい細胞型上に発現される受容体又はリガンドを標的とすることにより標的指向する。一部の実施形態では、第二の重鎖及び第二の軽鎖は、胸腺、脾臓、又はがん細胞を標的とする。
【0110】
一部の実施形態では、特に、T細胞をインビボで標的とするための、例えば、CAR T細胞のインビボ産生のためのもの、免疫細胞又はT細胞マーカー、例えばCD3,CD7、もしくはCD8などを標的とすることができる。例えば、抗CD8抗体及び抗CD3 Fab断片の両方を使用して、インビボでT細胞を標的とした(Pfeiffer,et al.,EMBO Mol Med.,10(11)(2018).pii:e9158.doi:10.15252/emmm.201809158.、Smith,et al.,Nat Nanotechnol.,12(8):813-820(2017).doi:10.1038/nnano.2017.57)。このように、一部の実施形態では、3E10抗体又は抗原結合断片又は融合タンパク質は、二重特異性抗体であり、その部分はCD3、CD7、CD8、もしくは別の免疫細胞(例、T細胞)マーカー、又は特定の組織、例えば胸腺、脾臓、もしくは肝臓などについてのマーカーに特異的に結合することができる。
【0111】
二価単鎖可変断片(ジ-scFv)は、二つのscFvを連結することにより操作することができる。これは、二つのVH領域及び二つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を産生することにより行うことができ、タンデムscFvをもたらす。ScFvはまた、二つの可変領域を一緒に折り畳むには短すぎる(約五つのアミノ酸)リンカーペプチドを用いて設計することができ、scFvを二量体化させる。この型は、ダイアボディとして公知である。ダイアボディは、対応するscFvよりも最大40倍低い解離定数を有することが示されており、それらが、それらの標的に対してずっとより高い親和性を有することを意味する。さらにより短いリンカー(一つ又は二つのアミノ酸)は、三量体(トリアボディ又はトリボディ)の形成に導く。テトラボディも産生されている。それらは、ダイアボディよりも、それらの標的に対するさらにより高い親和性を示す。一部の実施形態では、抗DNA抗体は、3E10の二つ以上の連結された一本鎖可変断片(例、3E10 ジ-scFv、3E10トリ-scFv)、又はその保存的バリアントを含んでもよい。一部の実施形態では、抗DNA抗体はダイアボディ又はトリアボディ(例、3E10ダイアボディ、3E10トリアボディ)である。3E10の単一の及び二つ以上の連結単鎖可変断片についての配列が、WO2017/218825及びWO2016/033321において提供されている。
【0112】
抗体の機能は、抗体又はその断片を、治療用薬剤とコンジュゲートさせることにより、増強され得る。抗体又は断片と治療用薬剤とのそのようなコンジュゲーションは、イムノコンジュゲートを作製することにより又は融合タンパク質を作製することにより、又は抗体もしくは断片を、抗体もしくは抗体断片及び治療用薬剤を含む核酸、例えばDNAもしくはRNA(例、siRNA)などに連結することにより達成することができる。
【0113】
組換え融合タンパク質は、融合遺伝子の遺伝子操作を通じて作られるタンパク質である。これは、典型的には、第一のタンパク質をコードするcDNA配列から終止コドンを除去し、次にライゲーション又はオーバーラップ伸長PCRを通じて、第二のタンパク質のcDNA配列をインフレームで付加することを含む。DNA配列を次に、単一タンパク質として細胞により発現させる。タンパク質は、両方の元のタンパク質の完全配列を、又はいずれかの一部分だけを含むように操作することができる。二つの実体がタンパク質である場合、しばしば、リンカー(又は「スペーサー」)ペプチドも加えられるが、それによって、タンパク質が独立して折り畳まれ、予想通りに挙動する可能性が高い。
【0114】
一部の実施形態では、細胞浸透性抗体は、その半減期を変化させるように修飾される。一部の実施形態では、抗体が循環中に又は処置の部位により長い時間にわたり存在するように、抗体の半減期を増加させることが望ましい。例えば、循環中で又は長期間にわたり処置される場所において抗体の力価を維持することが望ましいであろう。他の実施形態では、抗DNA抗体の半減期を、潜在的な副作用を低下させるために減少させる。抗体断片、例えば3E10Fvなどは、フルサイズの抗体よりも短い半減期を有し得る。半減期を変化させる他の方法が公知であり、記載する方法において使用することができる。例えば、抗体は、例えば、Xtend(商標)抗体半減期延長技術(Xencor、カリフォルニア州モンロビア)を使用して、半減期を延ばすFcバリアントを用いて操作することができる。
【0115】
a.リンカー
本明細書中で使用される用語「リンカー」は、限定されないが、ペプチドリンカーを含む。ペプチドリンカーは、可変領域によるエピトープの結合に干渉しないことを条件として、任意のサイズであり得る。一部の実施形態では、リンカーは、一つ又は複数のグリシン及び/又はセリンアミノ酸残基を含む。一つの可変ドメインのC末端が、典型的には、15~25アミノ酸ペプチド又はリンカーを介して、他の可変ドメインのN末端に繋ぎ止められる、一価単鎖抗体可変断片(scFv)。リンカーは、重鎖及び軽鎖が、それらの適当な立体構造的な方向で一緒に結合することを可能にするように選ばれる。ダイアボディ、トリアボディなどにおけるリンカーは、典型的には、上で考察するように、一価scFvのリンカーよりも短いリンカーを含む。二価、三価、及び他の多価scFvは、典型的には、三つ以上のリンカーを含む。リンカーは、長さ及び/又はアミノ酸組成において同じであり得る、又は異なることができる。従って、リンカーの数、リンカーの組成物、及びリンカーの長さは、当技術分野において公知であるscFvの所望の価に基づいて決定することができる。リンカーは、二価、三価、及び他の多価scFvの形成を可能にする、又は形成を駆動することができる。
【0116】
例えば、リンカーは、4~8のアミノ酸を含むことができる。特定の実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GQSSRSS(配列番号31)を含む。別の実施形態では、リンカーは15~20のアミノ酸、例えば、18のアミノ酸を含む。特定の実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GQSSRSSSGGGSSGGGGS(配列番号32)を含む。他の可動性リンカーは、限定されないが、アミノ酸配列
Gly-Ser、
Gly-Ser-Gly-Ser(配列番号33)、
Ala-Ser、
Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号34)、
(Gly-Ser)(配列番号35)、及び
(Gly-Ser)(配列番号36)、ならびに
(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)(配列番号37)を含む。
【0117】
他の例示的なリンカーは、例えば、
RADAAPGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号59)及び
ASTKGPSVFPLAPLESSGS(配列番号60)
を含む。
【0118】
b.例示的な抗DNA scFv配列
例示的なマウス3E10 scFv配列は、モノ、ジ、及びトリscFvを含み、WO2016/033321、WO2017/218825、WO2019/018426、及びWO/2019/018428において開示されており、以下に提供される。本開示の組成物及び方法における使用のための細胞浸透性抗体は、例示的なscFv、ならびにその断片及びバリアントを含む。
【0119】
scFv 3E10(D31N)についてのアミノ酸配列は、以下である:
(配列番号38)。
【0120】
配列番号38への参照を伴う、scFvタンパク質ドメインのアノテーション
・AGIH配列によって、溶解性が増加する(配列番号38のアミノ酸1~4)
・Vk可変領域(配列番号38のアミノ酸5~115)
・軽鎖CH1の初期(6aa)(配列番号38のアミノ酸116~121)
・(GGGGS)(配列番号37)リンカー(配列番号38のアミノ酸122~136)
・VH可変領域(配列番号38のアミノ酸137~252)
・Mycタグ(アミノ酸253~268配列番号38)
・His 6タグ(配列番号38のアミノ酸269~274)
【0121】
3E10 ジ-scFv(D31N)のアミノ酸配列
ジ-scFv 3E10(D31N)は、2X(3E10の重鎖及び軽鎖可変領域)を含むジ単鎖可変断片であり、ここで、重鎖の位置31のアスパラギン酸は、アスパラギンに変異されている。ジ-scFv 3E10(D31N)のアミノ酸配列は、以下である:
(配列番号39)。
【0122】
配列番号39への参照を伴う、ジ-scFvタンパク質ドメインのアノテーション
・AGIH配列によって、溶解性が増加する(配列番号39のアミノ酸1~4)
・Vk可変領域(配列番号39のアミノ酸5~115)
・軽鎖CH1の初期(6aa)(配列番号39のアミノ酸116~121)
・(GGGGS)(配列番号37)リンカー(配列番号39のアミノ酸122~136)
・VH可変領域(配列番号39のアミノ酸137~252)
・ヒトIgG CH1の初期13アミノ酸(配列番号39のアミノ酸253~265)からなるFv断片間のリンカー
・Swivel配列(配列番号39のアミノ酸266~271)
・Vk可変領域(配列番号39のアミノ酸272~382)
・軽鎖CH1の初期(6aa)(配列番号39のアミノ酸383~388)
・(GGGGS)(配列番号37)リンカー(配列番号39のアミノ酸389~403)
・VH可変領域(配列番号39のアミノ酸404~519)
・Mycタグ(配列番号39のアミノ酸520~535)
・His 6タグ(配列番号39のアミノ酸536~541)
【0123】
トリ-scFvについてのアミノ酸配列
トリscFv 3E10(D31N)は、3X(310Eの重鎖及び軽鎖可変領域)を含むトリ単鎖可変断片であり、ここで、重鎖の位置31のアスパラギン酸は、アスパラギンに変異されている。トリscFv 3E10(D31N)のアミノ酸配列は、以下である:
(配列番号40)。
【0124】
配列番号40への参照を伴う、トリ-scFvタンパク質ドメインのアノテーション
・AGIH配列によって、溶解性が増加する(配列番号40のアミノ酸1~4)
・Vk可変領域(配列番号40のアミノ酸5~115)
・軽鎖CH1の初期(6aa)(配列番号40のアミノ酸116~121)
・(GGGGS)(配列番号37)リンカー(配列番号40のアミノ酸122~136)
・VH可変領域(配列番号40のアミノ酸137~252)
・ヒトIgG CH1の初期13アミノ酸(配列番号40のアミノ酸253~265)からなるFv断片間のリンカー
・Swivel配列(配列番号40のアミノ酸266~271)
・Vk可変領域(配列番号40のアミノ酸272~382)
・軽鎖CH1の初期(6aa)(配列番号40のアミノ酸383~388)
・(GGGGS)(配列番号37)リンカー(配列番号40のアミノ酸389~403)
・VH可変領域(配列番号40のアミノ酸404~519)
・ヒトIgG C1の初期13アミノ酸(配列番号40のアミノ酸520~532)からなるFv断片間のリンカー
・Swivel配列(配列番号40のアミノ酸533~538)
・Vk可変領域(配列番号40のアミノ酸539~649)
・軽鎖CH1の初期(6aa)(配列番号40のアミノ酸650~655)
・(GGGGS)(配列番号37)リンカー(配列番号40のアミノ酸656~670)
・VH可変領域(配列番号40のアミノ酸671~786)
・Mycタグ(配列番号40のアミノ酸787~802)
・His 6タグ(配列番号40のアミノ酸803~808)
【0125】
WO2016/033321及びNoble,et al.,Cancer Research,75(11):2285-2291(2015)は、ジ-scFv及びトリ-scFvが、それらの一価の同等物と比較して、いくらか改善され、追加の活性を有することを示している。例示的な融合タンパク質の各々の異なるドメインに対応する部分配列がまた、上に提供されている。当業者は、例示的な融合タンパク質、又はそのドメインを利用して、上でより詳細に考察されている融合タンパク質を構築することができることを理解するであろう。例えば、一部の実施形態では、ジ-scFvが、Vk可変領域(例、配列番号39のアミノ酸5~115、又はその機能的バリアントもしくは断片)を含む第一のscFvを含み、VH可変ドメイン(例、配列番号39のアミノ酸137~252、又はその機能的バリアントもしくは断片)に連結され、Vk可変領域(例、配列番号39のアミノ酸272~382、又はその機能的バリアントもしくは断片)を含む第二のscFvに連結され、VH可変ドメイン(例、配列番号39のアミノ酸404~519、又はその機能的バリアントもしくは断片)に連結されている。一部の実施形態では、トリ-scFvは、Vk可変領域(例、配列番号40のアミノ酸539~649、又はその機能的バリアントもしくは断片)を含む第三のscFvドメインに連結されたジ-scFvを含み、VH可変ドメイン(例、配列番号40のアミノ酸671~786、又はその機能的バリアントもしくは断片)に連結されている。
【0126】
Vk可変領域は、例えば、リンカー(例、(GGGGS)(配列番号37))により、単独で、又は軽鎖CH1の(6aa)(配列番号39のアミノ酸116~121)との組み合わせで、VH可変ドメインに連結することができる。他の適切なリンカーが、上で考察されており、当技術分野において公知である。scFvは、リンカー(例、配列番号39のヒトIgG CH1の初期13アミノ酸(253~265))により、単独で、又はswivel配列(例、配列番号39のアミノ酸266~271)との組み合わせで、連結することができる。他の適切なリンカーが、上で考察されており、当技術分野において公知である。
【0127】
従って、ジ-scFvは、配列番号39のアミノ酸5~519を含むことができる。トリ-scFvは、配列番号40のアミノ酸5~786を含むことができる。一部の実施形態では、融合タンパク質は、追加のドメインを含む。例えば、一部の実施形態では、融合タンパク質は、溶解性を増強する配列(例、配列番号39のアミノ酸1~4)を含む。従って、一部の実施形態では、ジ-scFvは、配列番号39のアミノ酸1~519を含むことができる。トリ-scFvは、配列番号40のアミノ酸1~786を含むことができる。一部の実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質の精製、単離、捕捉、同定、分離などを増強する一つ又は複数のドメインを含む。例示的なドメインは、例えば、Mycタグ(例、配列番号39のアミノ酸520~535)及び/又はHisタグ(例、配列番号39のアミノ酸536~541)を含む。従って、一部の実施形態では、ジ-scFvは、配列番号39のアミノ酸配列を含むことができる。トリ-scFvは、配列番号40のアミノ酸配列を含むことができる。他の置換可能ドメイン及び追加のドメインが、上でより詳細に考察されている。
【0128】
例示的な3E10ヒト化Fv配列が、WO2016/033324において考察されている:
(配列番号41)。
【0129】
例示的な3E10ヒト化ジ-scFv配列が、WO2019/018426及びWO/2019/018428において考察されており、以下を含む:
【0130】
c.追加の配列
抗DNA抗原結合タンパク質、抗体、断片、及び融合タンパク質の構築において使用され得る追加の配列は、以下を含むが、それらに限定しない:
【0131】
B.カーゴ
本明細書中で提供される方法において使用されるように、3E10は、典型的には、核酸カーゴとの複合体の状態で、細胞と接触させる。抗体又は結合タンパク質と核酸カーゴとの間での相互作用は、非共有結合的である。
【0132】
核酸カーゴは、一本鎖又は二本鎖であり得る。核酸カーゴは、DNA、RNA、核酸類似体、又はそれらの組み合わせであり得る、又はそれらを含むことができる。以下でより詳細に考察するように、核酸類似体は、塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格で修飾することができる。そのような修飾によって、例えば、核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、又は溶解性を改善させることができる。
【0133】
核酸カーゴは、典型的には、一度、細胞中に送達されると、生物学的に活性である薬剤である、又はそれをコードする意味において機能的である。例示的なカーゴが以下でより詳細に考察されているが、例えば、発現構築物及びベクター、阻害性核酸、例えばsiRNAなど、又は例えば発現構築物及びベクターを含む阻害性核酸をコードする核酸を含む、関心対象のポリペプチドをコードするmRNA又はDNAを含む。
【0134】
開示される組成物は、複数の単一の核酸カーゴ分子を含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、複数(例、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上)の異なる核酸分子を含む。
【0135】
一部の実施形態では、カーゴ分子は、0.001、0.01、1、10’s、100’s、1,000’s、10,000’s、及び/又は100,000’sのキロベースの長さである。
【0136】
一部の実施形態では、例えば、カーゴは、0.001kb~100kb、又は0.001kbkb~50kb、又は0.001kbkb~25kb、又は0.001kb~12.5kb、又は0.001kb~10kb、又は0.001kb~8kb、もしくは0.001kb~5kb、又は0.001kb~2.5kb、又は0.001kb~1kb、又は0.01kb~100kb、又は0.01kbkb~50kb、又は0.01kbkb~25kb、又は0.01kb~12.5kb、又は0.01kb~10kb、又は0.01kb~8kb、もしくは0.01kb~5kb、又は0.01kb~2.5kb、又は0.01kb~1kb、又は0.1kb~100kb、又は0.1kbkb~50kb、又は0.1kbkb~25kb、又は0.1kb~12.5kb、又は0.1kb~10kb、又は0.1kb~8kb、もしくは0.1kb~5kb、又は0.1kb~2.5kb、又は0.1kb~1kb、又は1kb~100kb、又は1kbkb~50kb、又は1kbkb~25kb、又は1kb~12.5kb、又は1kb~10kb、又は1kb~8kb、もしくは1kb~5kb、又は1kb~2.5kb(両端を含む)であり得る。
【0137】
一部の実施形態では、例えば、カーゴは、0.2kb~10kb、又は0.2kb~5kb、又は0.2kb~2.5kb、又は0.2kb~1kb、又は0.2kb~0.5kb、又は0.2kb~0.25kb、又は0.5kb~10kb、又は0.5kb~5kb、又は1kb~5kb、又は1kb~3kb、又は2kb~10kb、又は3kb~5kbであり得る。
【0138】
特定の適用のために、核酸カーゴは、例えば、前述の範囲(端の値を含む)の一つのうちに入る、一つ又は複数の個別の長さであってもよいことが認識されるであろうが、各々についての特定の値が明示的に開示されている。例えば、サイズは、一ヌクレオチド又は核酸塩基ほど小さくてもよい。例示的な適用では、カーゴは、STINGアゴニストであるcGAMPのような環状ジヌクレオチドである。他の実施形態では、カーゴは短いオリゴマーである。例えば、8merという短いオリゴマーを、アンチセンス又はスプライススイッチングのために使用することができる。わずかに長いもの(例、18~20mer)を遺伝子編集のために使用することができる。
【0139】
1.カーゴの形態
核酸カーゴは核酸であり、単離核酸組成物であり得る。本明細書中で使用される場合、「単離核酸」は、哺乳動物ゲノム中で、通常、核酸の片側又は両側に隣接する核酸を含む、哺乳動物ゲノム中に存在している他の核酸分子から分離された核酸を指す。核酸に関して本明細書中で使用される用語「単離」はまた、任意の非天然核酸配列との組み合わせを含む。なぜなら、そのような非天然配列は自然において見出されず、天然ゲノム中では直ちに連続配列を有さないためである。
【0140】
単離核酸は、例えば、DNA分子であり得るが、天然ゲノム中のそのDNA分子に直ぐに隣接する、通常見出される核酸配列の一つが除去される又は存在しないという条件である。このように、単離核酸は、限定されないが、他の配列とは独立した別個の分子として存在するDNA分子(例、化学的に合成された核酸、又はPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されるcDNAもしくはゲノムDNA断片)、ならびにベクター、自律的に複製するプラスミド、ウイルス(例、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、もしくはヘルペスウイルス)中に、又は原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み込まれた組換えDNAを含む。また、単離核酸は、操作された核酸、例えばハイブリッド又は融合核酸の一部である組換えDNA分子などを含むことができる。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー、又はゲノムDNA制限消化物を含むゲルスライス内の数百から数百万の他の核酸の間に存在する核酸は、単離核酸と考えるべきではない。
【0141】
ポリペプチドをコードする核酸配列は、ゲノム配列を含む。また、開示されるのは、エクソンが欠失しているmRNA/cDNA配列である。ポリペプチド、例えば、上で同定されるアミノ酸配列ならびにそれらの断片及びバリアントを含むそのようなポリペプチドをコードする他の核酸配列がまた、開示されている。ポリペプチドをコードする核酸は、選ばれた発現宿主中での発現のために最適化されてもよい。コドンは、同じアミノ酸をコードする代替的なコドンで置換されて、核酸配列が誘導される生物と発現宿主との間でのコドン使用における違いを説明し得る。この様式では、核酸は、発現宿主の好ましいコドンを使用して合成されてもよい。
【0142】
核酸は、センス又はアンチセンス方向であり得る、又は例えば、ポリペプチドをコードする参照配列に相補的であり得る。
【0143】
a.ベクター
カーゴは、ベクター、例えば、ポリペプチド及び/又は機能的核酸をコードするベクターであり得る。核酸、例えば上に記載するものなどは、細胞中での発現のためにベクター中に挿入することができる。本明細書中で使用される場合、「ベクター」は、レプリコン、例えばプラスミド、ファージ、ウイルス、又はコスミドなどであり、その中に別のDNAセグメントを挿入し、挿入されたセグメントの複製をもたらすようにすることができる。ベクターは、発現ベクターであり得る。「発現ベクター」は、一つ又は複数の発現制御配列を含むベクターであり、ならびに「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写及び/又は翻訳を制御及び調節するDNA配列である。
【0144】
ベクター中の核酸は、一つ又は複数の発現制御配列に動作可能に連結することができる。例えば、制御配列を遺伝子構築物中に組み入れることができ、発現制御配列によって、関心対象のコード配列の発現が効果的に制御される。発現制御配列の例は、プロモーター、エンハンサー、及び転写終結領域を含む。プロモーターは、DNA分子の領域で構成される発現制御配列であり、典型的には、転写が開始する点の上流100ヌクレオチド以内(一般的に、RNAポリメラーゼIIについての開始部位の近く)である。プロモーターの制御下でコード配列をもたらすためには、ポリペプチドの翻訳開始フレームの翻訳開始部位を、プロモーターの下流の1ヌクレオチド~約50ヌクレオチドに位置付けることが必要である。エンハンサーは、時間、位置、及びレベルに関して発現特異性を提供する。プロモーターとは異なり、エンハンサーは、転写部位から様々な距離に位置する場合に機能することができる。エンハンサーはまた、転写開始部位から下流に位置することができる。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写することができ、それは次に、コード配列によりコードされるタンパク質中に翻訳されることができる場合に、細胞中の発現制御配列に「動作可能に連結」される及び「制御下」である。
【0145】
適切な発現ベクターは、限定されないが、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、及びアデノ関連ウイルスから由来するプラスミド、コスミド、及びウイルスベクターを含む。多数のベクター及び発現系が、Novagen(ウィスコンシン州マディソン)、Clontech(カリフォルニア州パロアルト)、Stratagene(カリフォルニア州ラホヤ)、及びInvitrogen Life Technologies(カリフォルニア州カールスバッド)などの企業から商業的に入手可能である。
【0146】
一部の実施形態では、カーゴは細胞中に送達され、染色体外に留まっている。一部の実施形態では、カーゴは宿主細胞中に導入され、宿主細胞ゲノム中に組み込まれる。以下でより詳細に考察するように、組成物は遺伝子治療の方法において使用することができる。遺伝子治療の方法は、細胞の遺伝子型を変えるポリヌクレオチドの細胞中への導入を含むことができる。ポリヌクレオチドの導入は、遺伝子組換えを介して内因性遺伝子を修正、置換、又は別の方法で変えることができる。方法は、欠損遺伝子、異種遺伝子、又は小核酸分子、例えばオリゴヌクレオチドなどの置換コピー全体の導入を含むことができる。例えば、修正遺伝子は、宿主のゲノム内の非特異的位置中に導入することができる。
【0147】
一部の実施形態では、カーゴはベクターである。遺伝子配列ならびに適した転写及び翻訳制御エレメントを含む発現ベクターを構築する方法は、当技術分野において周知である。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えを含む。発現ベクターは、一般的に、調節配列ならびに、例えば、関心対象のポリヌクレオチドであり得る、挿入されたコード配列の翻訳及び/又は転写のための必要なエレメントを含む。コード配列は、プロモーター及び/又はエンハンサーに動作可能に連結されて、所望の遺伝子産物の発現の制御を助けることができる。バイオテクノロジーにおいて使用されるプロモーターは、意図される遺伝子発現の制御の型に従って異なる型である。それらは、一般的に、構成的プロモーター、組織特異的又は発生段階特異的プロモーター、誘導性プロモーター、及び合成プロモーターに分けることができる。
【0148】
例えば、一部の実施形態では、関心対象のポリヌクレオチドは、当技術分野において公知のプロモーター又は他の調節エレメントに動作可能に連結される。このように、カーゴは、ベクター、例えば発現ベクターなどであり得る。原核生物系又は真核生物系における発現のためのポリヌクレオチドの操作は、組換え発現における当業者に一般的に公知の技術により実施してもよい。発現ベクターは、典型的には、一つ又は複数のプロモーターの制御下にある開示される組成物の一つを含む。プロモーターの「制御下」のコード配列をもたらすために、リーディングフレームの翻訳開始部位の5’末端を、選ばれたプロモーターの下流の(即ち、3’の)約1~50ヌクレオチドに位置付ける。「上流」プロモーターは、挿入されたDNAの転写を刺激し、コードされた組換えタンパク質又は機能的核酸の発現を促進する。これは、本明細書で使用される文脈における「組換え発現」の意味である。
【0149】
多くの標準技術が、多様な宿主発現系においてタンパク質又はペプチド又は機能的核酸の発現を達成するために、適した核酸及び転写/翻訳制御配列を含む発現ベクターを構築するために利用可能である。
【0150】
哺乳動物細胞における使用のための発現ベクターは、通常、複製の起点(必要に応じて)、発現される遺伝子の前に位置するプロモーターを、任意の必要なリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列とともに含む。複製の起点は、外因性起源を含むようなベクターの構築により提供され得るが、例えばSV40もしくは他のウイルス(例、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)供給源から由来し得る、又は宿主細胞染色体複製機構により提供され得る。ベクターが宿主細胞染色体中に組み込まれる場合、後者はしばしば十分である。
【0151】
プロモーターは、哺乳動物細胞(例、メタロチオネインプロモーター)のゲノムから又は哺乳動物ウイルス(例、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)から由来し得る。さらに、そのような制御配列が宿主細胞系と適合性があることを条件として、所望の遺伝子配列に通常関連付けられるプロモーター配列又は制御配列を利用することも可能である、また望ましいであろう。
【0152】
多数のウイルスベースの発現系を利用してもよく、例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びシミアンウイルス40(SV40)から由来する。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターが有用である。なぜなら、両方が、SV40ウイルスの複製起点も含む断片としてウイルスから簡単に得られるためである。より小さな又はより大きなSV40断片も使用され得るが、HindIII部位から、ウイルスの複製起点に位置するBglI部位に向かって延びるおよそ250bpの配列が含まれるということを条件とする。
【0153】
アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合では、コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーター及び三要素リーダー配列に連結されてもよい。このキメラ遺伝子は次に、インビトロ又はインビボ組換えによりアデノウイルスゲノム中に挿入され得る。ウイルスゲノムの非本質的な領域(例、領域E1又はE3)中の挿入は、感染宿主において、生存可能であり、タンパク質を発現することが可能である組換えウイルスをもたらす。
【0154】
特定の開始シグナルがまた、本開示の組成物の効率的な翻訳のために要求され得る。これらのシグナルは、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。外因性翻訳制御シグナルは、ATG開始コドンを含み、追加的に提供される必要があり得る。当業者は、この必要性を決定し、必要なシグナルを提供することが容易に可能であろう。開始コドンは、インサート全体の翻訳を確実にするために、所望のコード配列の読み枠を伴うインフレーム(又はインフェーズ)でなければならないことが周知である。これらの外因性翻訳制御シグナル及び開始コドンは、天然及び合成の両方の多様な起源であり得る。発現の効率は、適した転写エンハンサーエレメント又は転写ターミネーターの含有により増強され得る。
【0155】
真核細胞発現では、典型的には、元のクローニングされたセグメント内に含まれていなかった場合、適したポリアデニル化部位を転写ユニット中に組み入れることも望まれるであろう。典型的には、ポリA付加部位は、転写終結前の位置に、タンパク質の終結部位の「下流」の約30~2000ヌクレオチドに配置される。
【0156】
組換えタンパク質の長期の高収率産生のためには、安定した発現が好ましい。例えば、タンパク質をコードする構築物を安定的に発現する細胞株を操作してもよい。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するよりむしろ、宿主細胞を、適した発現制御エレメント(例、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)、及び選択マーカーにより制御されるベクターで形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作された細胞は、濃縮培地中で1~2日間にわたり成長させ、次に選択培地に切り替えてもよい。組換えプラスミド中の選択マーカーによって、選択に対する耐性が付与され、細胞が、プラスミドをそれらの染色体中に安定的に組み込み、成長して病巣を形成し、それを次にクローニングして、細胞株中に増殖させることができる。
【0157】
b.mRNA
カーゴはmRNAであり得る。
【0158】
安定性及び/又は翻訳効率を促進する能力を有する化学構造物も使用され得る。例えば、RNAは5’及び3’UTRを有することができる。3’UTRの長さは、例えば、100ヌクレオチドを超えることができる。一部の実施形態では、3’UTR配列は、100~5000のヌクレオチドである。一部の実施形態では、5’UTRは、ゼロ~3000のヌクレオチド長である。コード領域に加えられる5’及び3’UTR配列の長さは、限定されないが、UTRの異なる領域にアニーリングするPCR用のプライマーの設計を含む、異なる方法により変更することができる。このアプローチを使用して、当業者は、転写RNAの送達後に最適な翻訳効率を達成するために要求される5’及び3’UTR長を改変することができる。
【0159】
5’及び3’UTRは、関心対象の遺伝子についての天然の内因性5’及び3’UTRであり得る。あるいは、関心対象の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列は、UTR配列をフォワードプライマー及びリバースプライマー中に組み入れることにより、又はテンプレートの任意の他の改変により加えることができる。関心対象の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を改変するのに有用であり得る。例えば、3’UTR配列中のAU-リッチエレメントは、mRNAの安定性を減少させることができることが公知である。従って、3’UTRを、当技術分野において周知であるUTRの特性に基づいて、転写RNAの安定性を増加させるように選択又は設計することができる。
【0160】
一部の実施形態では、5’UTRは、内因性遺伝子のKozak配列を含む。あるいは、上に記載するように、関心対象の遺伝子に対して内因性ではない5’UTRが、PCRにより加えられる場合、コンセンサスKozak配列は、5’UTR配列を加えることにより再設計することができる。Kozak配列は、一部のRNA転写物の翻訳の効率を増加させることができるが、効率的な翻訳を可能にするために全てのRNAについて要求されているとは思われない。多くのmRNAについてのKozak配列の要件は、当技術分野において公知である。他の実施形態では、5’UTRは、そのRNAゲノムが細胞中で安定しているRNAウイルスから由来し得る。他の実施形態では、様々なヌクレオチド類似体を3’又は5’UTRにおいて使用し、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害することができる。
【0161】
一部の実施形態では、mRNAは、5’末端にキャップ、3’ポリ(A)テール、又はそれらの組み合わせを有し、それらによって、細胞中でのリボソーム結合、翻訳の開始、及び安定性mRNAが決定される。
【0162】
5’キャップは、RNA分子に安定性を提供する。5’キャップは、例えば、mG(5’)ppp(5’)G、mG(5’)ppp(5’)A、G(5’)ppp(5’)G、又はG(5’)ppp(5’)Aキャップ類似体であってもよく、それらは全て商業的に入手可能である。5’キャップはまた、アンチリバースキャップ類似体(ARCA)(Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001))又は任意の他の適切な類似体であり得る。5’キャップは、当技術分野において公知の技術を使用して組み入れることができる(Cougot,et al.,Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001);Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001);Elango,et al.,Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005))。
【0163】
RNAはまた、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列を含むことができる。IRES配列は、mRNAへのキャップ非依存的リボソーム結合を開始させ、翻訳の開始を促進させる、任意のウイルス配列、染色体配列、又は人工的に設計された配列であり得る。
【0164】
一般的に、ポリ(A)テールの長さは、転写RNAの安定性と正に相関する。一実施形態では、ポリ(A)テールは、100~5000のアデノシンである。
【0165】
ポリAセグメントは、ポリTテール、例えば100TTテール(例、50~5000Tのサイズ)などを含むリバースプライマーを使用することによるPCRの間に、又は、限定されないが、DNAライゲーションもしくはインビトロ組換えを含む、任意の他の方法によるPCR後に産生することができる。ポリ(A)テールはまた、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低下させる。RNAのポリ(A)テールは、ポリ(A)ポリメラーゼ、例えばE.coli ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などの使用によるインビトロ転写後に、加えて又はあるいは伸長することができる。
【0166】
加えて、3’末端への異なる化学基の付着によって、mRNAの安定性を増加させることができる。そのような付着は、修飾/人工ヌクレオチド、アプタマー、及び他の化合物を含むことができる。例えば、ATP類似体は、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)テール中に組み入れることができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに増加させることができる。適切なATP類似体は、限定されないが、コルジオシピン及び8-アザアデノシンを含む。
【0167】
2.カーゴの配列
a.関心対象のポリペプチド
カーゴは、一つ又は複数のタンパク質をコードすることができる。カーゴは、モノシストロニック又はポリシストロニックであり得るポリヌクレオチドであり得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは多遺伝子性である。ポリヌクレオチドは、例えば、mRNA又は発現構築物、例えばベクターなどであり得る。
【0168】
カーゴは、関心対象の一つ又は複数のポリペプチドをコードすることができる。ポリペプチドは、任意のポリペプチドであり得る。例えば、ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、生物に治療的もしくは予防的な効果を提供する、又は生物において疾患もしくは障害を診断するために使用することができるポリペプチドであり得る。例えば、がん、自己免疫障害、寄生虫、ウイルス、細菌、真菌、又は他の感染症の治療のために、発現されるポリヌクレオチドは、免疫系の細胞についてのリガンドもしくは受容体として機能する、又は生物の免疫系を刺激もしくは阻害するように機能することができるポリペプチドをコードし得る。
【0169】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、生物において欠損しているポリヌクレオチドを補充又は置換する。
【0170】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ジストロフィン、ユートロフィン、又はそれらの組み合わせをコードする。そのような組成物は、対象を、ジストロフィー、特に筋ジストロフィー、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーから治療するための有効量で投与してもよい。
【0171】
別の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗原、例えば、ワクチン製剤及び関連する方法において利用することができる抗原をコードする。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス抗原、例えば、SARS-CoV-2抗原をコードする。このように、SARS-CoV-2ウイルス及びウイルス感染、ならびに、COVID19を含むそれに関連する疾患に対する保護、及びその治療のための組成物及びその使用の方法が、提供される。
【0172】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、選択マーカー、例えば、真核細胞において有効である選択マーカー、例えば薬剤耐性選択マーカーなどを含む。この選択マーカー遺伝子は、選択培養培地中で成長された形質転換宿主細胞の生存又は成長のために必要な因子をコードすることができる。典型的な選択遺伝子は、抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、カナマイシン、ゲンタマイシン、ゼオシン、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質をコードし、栄養要求性欠損症を補完する、又は培地から差し引かれた重要な栄養素を供給する。
【0173】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはレポーター遺伝子を含む。レポーター遺伝子は、典型的には、宿主細胞中に存在しない、又は発現されていない遺伝子である。レポーター遺伝子は、典型的には、ある表現型の変化又は酵素特性を提供するタンパク質をコードする。そのような遺伝子の例は、Weising et al.Ann.Rev.Genetics、22、421(1988)において提供されている。好ましいレポーター遺伝子は、グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子及びGFP遺伝子を含む。
【0174】
b.機能的核酸
カーゴは、機能的核酸であり得る、又はそれをコードすることができる。機能的核酸は、特定の機能、例えば標的分子への結合又は特定の反応の触媒などを有する核酸分子である。以下でより詳細に考察するように、機能的核酸分子は、以下の非限定的なカテゴリー中に分けることができる:アンチセンス分子、siRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、RNAi、及び外部ガイド配列、ならびに環状ジヌクレオチド。機能的核酸分子は、標的分子が有している特異的活性のエフェクター、阻害剤、修飾因子、及び刺激因子として作用することができる、又は機能的核酸分子は、任意の他の分子とは独立したデノボ活性を持つことができる。
【0175】
機能的核酸分子は、任意の高分子、例えばDNA、RNA、ポリペプチド、又は糖鎖などと相互作用することができる。このように、機能的核酸は、標的ポリペプチドのmRNAもしくはゲノムDNAと相互作用することができる、又はそれらは、ポリペプチド自体と相互作用することができる。しばしば、機能的核酸は、標的分子と機能的核酸分子との間での配列相同性に基づいて、他の核酸と相互作用するように設計される。他の状況では、機能的核酸分子と標的分子との間での特異的認識は、機能的核酸分子と標的分子との間での配列相同性に基づいておらず、しかし、むしろ、特異的認識が起こることを可能にする三次構造の形成に基づいている。
【0176】
従って、組成物は、遺伝子、又はその遺伝子産物の発現を低下させるように設計された一つ又は複数の機能的核酸を含むことができる。例えば、機能的核酸又はポリペプチドは、mRNAの発現もしくは翻訳を標的とする、かつ低下もしくは阻害するように;又はタンパク質の発現を低下もしくは阻害する、活性を低下させる、もしくは分解を増加させるように設計することができる。一部の実施形態では、組成物は、機能的核酸のインビボ発現のために適切なベクターを含む。
【0177】
i.アンチセンス
機能的核酸は、アンチセンス分子であり得る、又はそれをコードすることができる。アンチセンス分子は、カノニカル塩基対又は非カノニカル塩基対のいずれかを通じて標的核酸分子と相互作用するように設計される。アンチセンス分子と標的分子との相互作用は、例えば、RNAse H媒介性RNA-DNAハイブリッド分解を通じて標的分子の破壊を促進するように設計される。あるいは、アンチセンス分子は、標的分子上で通常起こるプロセシング機能、例えば転写又は複製などを中断させるように設計される。アンチセンス分子は、標的分子の配列に基づいて設計することができる。標的分子の最もアクセス可能な領域を見出すことによるアンチセンス効率の最適化のための多数の方法がある。例示的な方法は、インビトロ選択実験、ならびにDMS及びDEPCを使用したDNA修飾試験を含む。アンチセンス分子は、10-6、10-8、10-10、もしくは10-12より低い又はそれと等しい解離定数(K)で標的分子に結合することが好ましい。
【0178】
ii.RNA干渉
一部の実施形態では、機能的核酸は、RNA干渉を通じて遺伝子サイレンシングを誘導する。遺伝子発現はまた、RNA干渉(RNAi)を通じて高度に特異的な様式において効果的にサイレンシングすることができる。このサイレンシングは、本来は、二本鎖RNA(dsRNA)の付加で観察された(Fire,et al.(1998)Nature,391:806-11;Napoli,et al.(1990)Plant Cell 2:279-89;Hannon,(2002)Nature,418:244-51)。一度、dsRNAが細胞に入ると、それは、RNase III様酵素Dicerにより、3’末端に2つのヌクレオチドオーバーハングを含む21~23ヌクレオチド長の二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)に切断される(Elbashir,et al.(2001)Genes Dev.,15:188-200;Bernstein,et al.(2001)Nature,409:363-6;Hammond,et al.(2000)Nature,404:293-6)。ATP依存的な工程では、siRNAは、RNAi誘導性サイレンシング複合体(RISC)として一般に公知であるマルチサブユニットタンパク質複合体中に組み込まれ、これはsiRNAを標的RNA配列に導く(Nykanen,et al.(2001)Cell,107:309-21)。ある点で、siRNA二本鎖は巻き戻され、アンチセンス鎖はRISCに結合したままで、エンド及びエキソヌクレアーゼの組み合わせによる相補的mRNA配列の分解に向けるように見える(Martinez,et al.(2002)Cell,110:563-74を参照のこと)。しかし、iRNAもしくはsiRNAの効果又はそれらの使用は、任意の種類の機構に限定されない。
【0179】
短い干渉RNA(siRNA)は、配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングを誘導し、それにより遺伝子発現を減少又はさらに阻害することができる二本鎖RNAである。一例では、siRNAは、siRNAと標的RNAとの両方の間での配列同一性の領域内の、相同RNA分子、例えばmRNAなどの特異的分解を誘発させる。例えば、WO 02/44321は、3’オーバーハング末端と塩基対形成される場合に標的mRNAの配列特異的な分解が可能であるsiRNAを開示しており、これらのsiRNAを作製する方法について参照により本明細書中に組み入れられる。
【0180】
配列特異的遺伝子サイレンシングは、酵素ダイサーにより産生されるsiRNAを模倣する合成の短い二本鎖RNAを使用して、哺乳動物細胞において達成することができる(Elbashir,et al.(2001)Nature、411:494 498)(Ui-Tei、et al.(2000)FEBS Lett 479:79-82)。siRNAは、化学的に又はインビトロで合成されることができる、あるいは細胞内でsiRNA中にプロセシングされる短い二本鎖ヘアピン様RNA(shRNA)の結果であり得る。合成siRNAは、一般的に、アルゴリズム及び従来のDNA/RNAシンセサイザーを使用して設計される。供給業者は、Ambion(テキサス州オースチン)、ChemGenes(マサチューセッツ州アシュランド)、Dharmacon(フロリダ州ラファイエット)、Glen Research(バージニア州スターリング)、MWB Biotech(ドイツ、エーバースベルク)、Proligo(コロラド州ボルダー)、及びQiagen(オランダ、ベント)を含む。siRNAはまた、キット、例えばAmbionのSILENCR(登録商標)siRNA Construction Kitなどを使用して、インビトロで合成することができる。
【0181】
ベクターからのsiRNAの産生は、短いヘアピンRNAse(shRNA)の転写を通じてより一般に行われる。shRNAを有するベクターの産生のためのキットが利用可能であり、例えば、ImgenexのGENESUPPRESSOR(商標)Construction Kits、ならびにInvitrogenのBLOCK-IT(商標)誘導性RNAiプラスミド及びレンチウイルスベクターなどである。
【0182】
一部の実施形態では、機能的核酸はsiRNA、shRNA、miRNAである。一部の実施形態では、組成物は、機能的核酸を発現するベクターを含む。
【0183】
iii.アプタマー
機能的核酸は、アプタマーであり得る、又はそれをコードすることができる。アプタマーは、好ましくは、特定の方法において標的分子と相互作用する分子である。典型的には、アプタマーは、定義された二次構造及び三次構造、例えばステムループ又はG四重鎖などの中に折り畳まれる、15~50塩基の長さに及ぶ小さな核酸である。アプタマーは、小分子、例えばATP及びテオフィリンなど、ならびに大分子、例えば逆転写酵素及びトロンビンなどに結合することができる。アプタマーは、標的分子の10-12M未満のKで非常に強固に結合することができる。アプタマーは、10-6、10-8、10-10、又は10-12未満のKで標的分子に結合することが好ましい。アプタマーは、非常に高程度の特異性で、標的分子と結合することができる。例えば、標的分子と、この分子上の単一の位置だけで異なる別の分子との間での結合親和性において10,000倍より大きな差を有するアプタマーが単離されている。アプタマーは、バックグラウンド結合分子とのKよりも少なくとも10倍、100倍、1000倍、10,000倍、又は100,000倍低い、標的分子とのKを有することが好ましい。分子、例えばポリペプチドなどについて比較を行う場合には、バックグラウンド分子が異なるポリペプチドであることが好ましい。
【0184】
iv.リボザイム
機能的核酸は、リボザイムであり得る、又はそれをコードすることができる。リボザイムは、分子内又は分子間のいずれかで化学反応を触媒することが可能である核酸分子である。リボザイムは分子間反応を触媒することが好ましい。天然系において見出されるリボザイム、例えばハンマーヘッドリボザイムなどに基づく、ヌクレアーゼ又は核酸ポリメラーゼ型の反応を触媒する多数の異なる型のリボザイムがある。また、天然系においては見出されないが、デノボで特定の反応を触媒するように操作された多数のリボザイムがある。好ましいリボザイムは、RNA又はDNA基質を切断し、より好ましくは、RNA基質を切断する。リボザイムは、典型的には、標的基質の認識及び結合を通じて、その後の切断により核酸基質を切断する。この認識は、しばしば、大半が、カノニカル又は非カノニカル塩基対の相互作用に基づいている。この特性によって、リボザイムは、核酸の標的特異的切断のための特に良い候補となる。なぜなら、標的基質の認識は、標的基質配列に基づくためである。
【0185】
v.外部ガイド配列
機能的核酸は、外部ガイド配列であり得る、又はそれをコードすることができる。外部ガイド配列(EGS)は、複合体を形成する標的核酸分子に結合する分子であり、それは、標的分子を次に切断するRNase Pにより認識される。EGSは、選ばれたRNA分子を特異的に標的指向するように設計することができる。RNAse Pは、細胞内のトランスファーRNA(tRNA)のプロセッシングにおいて助けとなる。細菌RNAse Pを動員して、標的RNA:EGS複合体に天然tRNA基質を模倣させるEGSを使用することにより、実質的に任意のRNA配列を切断することができる。同様に、RNAの真核生物EGS/RNAse P指向性切断を利用して、真核細胞内の所望の標的を切断することができる。様々な異なる標的分子の切断を促進するためにEGS分子を作製及び使用する方法の代表的な例は、当技術分野において公知である。
【0186】
機能的核酸、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、EGS、リボザイム、及びアプタマーなどのインビボ発現用のベクターを作製及び使用する方法は、当技術分野において公知である。
【0187】
vi.環状ジヌクレオチド
機能的核酸は、環状ジヌクレオチドであり得る、又はそれをコードすることができる。環状ジヌクレオチドは、STINGアダプタータンパク質に直接結合し、IFN-βの産生をもたらす(Zhang,et al.,Mol Cell.,51(2):226-35(2013).doi:10.1016/j.molcel.2013.05.022.)。いくつかのカノニカル及び非カノニカルなジヌクレオチドが当技術分野において公知であり、限定されないが、2’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-ジ-AMP、c-ジ-GMP、cAIMP(CL592)、cAIMP二フッ化物(CL614)、cAIM(PS)2二フッ化物(Rp/Sp)(CL656)、2’2’-cGAMP、2’3’-cGAM(PS)2(Rp/Sp)、3’3’-cGAMPフッ素化、c-ジ-AMPフッ素化、2’3’-c-ジ-AMP、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp)、2’3’-c-ジ-AM(PS)2(Rp,Rp),c-ジ-GMPフッ素化、2’3’-c-ジ-GMP、c-ジ-IMP、DMXAAを含む。
【0188】
vii.免疫刺激性オリゴヌクレオチド
一部の実施形態では、機能的核酸は、オリゴヌクレオチドリガンドであり得る、又はそれをコードすることができる。例は、限定されないが、パターン認識受容体(PRR)リガンドを含む。
【0189】
PRRの例は、先天的免疫応答の開始において役割を果たすシグナル伝達分子のToll様ファミリーを含み、また、後期のより抗原特異的な適応免疫応答に影響する。従って、オリゴヌクレオチドは、Toll様ファミリーシグナル伝達分子、例えばToll様受容体9(TLR9)などについてのリガンドとしての役割を果たすことができる。
【0190】
例えば、非メチル化CpG部位は、ヒトにおいて形質細胞様樹状細胞及びB細胞上のTLR9により検出されることができる(Zaida,et al.,Infection and Immunity,76(5):2123-2129,(2008))。従って、オリゴヌクレオチドの配列は、一つ又は複数の非メチル化シトシン-グアニン(CG又はCpG、互換的に使用される)ジヌクレオチドモチーフを含むことができる。「p」は、DNAのホスホジエステル骨格を指すが、一部の実施形態では、CGを含むオリゴヌクレオチドは、修飾された骨格、例えば、ホスホロチオエート(PS)骨格を有することができる。
【0191】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、連続的に配置される、又は介在ヌクレオチドにより分離されるかのいずれかで配置される、1を上回るCGジヌクレオチドを含むことができる。CpGモチーフは、オリゴヌクレオチド配列の内部にあり得る。多数のヌクレオチド配列は、CGジヌクレオチドの数及び位置、ならびにCG二量体に隣接する正確な塩基配列における変化によって、TLR9を刺激する。
【0192】
典型的には、CG ODNは、それらの配列、二次構造、及びヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対する効果に基づいて分類される。五つのクラスは、クラスA(D型)、クラスB(K型)、クラスC、クラスP、及びクラスSである(Vollmer、J & Krieg、AM、Advanced drug delivery reviews 61(3):195-204(2009)、参照により本明細書中に組み込まれる)。CG ODNは、I型インターフェロン(例、IFNα)の産生を刺激し、樹状細胞(DC)の成熟を誘発することができる。一部のクラスのODNはまた、間接サイトカインシグナル伝達を通じたナチュラルキラー(NK)細胞の強力なアクチベーターである。一部のクラスは、ヒトB細胞及び単球成熟の強力な刺激因子である(Weiner,GL,PNAS USA 94(20):10833-7(1997);Dalpke,AH,Immunology 106(1):102-12(2002);Hartmann,G,J of Immun.164(3):1617-2(2000)、これらの各々が、参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0193】
他のPRR Toll様受容体は、TLR3、及びTLR7を含み、それは、それぞれ二本鎖RNA、一本鎖RNA、及び短い二本鎖RNA、ならびに、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体、すなわち、RIG-I及び黒色腫分化関連遺伝子5(MDA5)を認識し得るが、それらは、サイトゾル中のRNA感知受容体として最も良く公知である。
【0194】
RIG-I(レチノイン酸誘導性タンパク質1、また、Ddx58として公知である)及びMDA-5(黒色腫分化関連遺伝子5、また、Ifih1又はヘリカードとして公知である)は、RIG-I様受容体(RLR)ファミリーに属し、宿主の抗ウイルス応答のために決定的である細胞質RNAヘリカーゼである。
【0195】
RIG-I及びMDA-5は、RNAウイルスについての複製中間体である二本鎖RNA(dsRNA)を感知し、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質MAVS(また、IPS-1、VISA、又はCardifとして公知である)を通じてシグナル伝達し、I型インターフェロン(IFNα及びIFNβ)の産生に導く。
【0196】
RIG-Iは、自己RNAからの区別を促進させる二つの必須の特色である、キャップなしの5’-二/三リン酸末端及び短い平滑末端の二本鎖部分を示すウイルスRNAを検出する。MDA-5生理学的リガンドの特色は、まだ完全には特徴付けられていない。しかし、RIG-I及びMDA-5は、dsRNAの長さについて異なる依存性を示すことが認められている:RIG-Iは、短いdsRNAに選択的に結合する一方で、MDA-5は、長いdsRNAに選択的に結合する。これと一致して、RIG-I及びMDA-5は、合成dsRNA類似体であるPoly(I:C)に、異なる長さの偏好性を伴って結合する。
【0197】
一部の状況下で、RIG-Iはまた、dsDNAを間接的に感知することができる。ウイルスdsDNAは、RNAポリメラーゼIIIにより5’-三リン酸部分を有するdsRNA中に転写されることができる。ポリ(dA:dT)は、B形態DNAの合成類似体であり、このように、別のRIG-Iリガンドを構成する。
【0198】
例示的なRIG-Iリガンドは、限定されないが、RIG-Iの特異的アゴニストである5’ppp-dsRNA;RIG-Iの特異的アゴニストである3p-hpRNA;ポリ(I:C)のサイズに依存してRIG-I及び/又はMDA-5により認識されるポリ(I:C)/LyoVec複合体;RIG-Iにより間接的に認識されるポリ(dA:dT)/LyoVec複合体を含む。
【0199】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9、もしくはRIG-I様受容体、又はそれらの組み合わせについての機能的リガンドを含む。
【0200】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドの例、及びそれらを作製する方法は、当技術分野において公知であり、商業的に入手可能である。例えば、参照により本明細書中に組み入れられる、Bodera,P.Recent Pat Inflamm Allergy Drug Discov.5(1):87-93(2011)を参照のこと。
【0201】
3.カーゴの組成
開示されている核酸カーゴは、典型的には、複素環塩基(核酸塩基)、複素環塩基に付着された糖部分、及び糖部分のヒドロキシル官能基をエステル化するリン酸部分を含むDNA又はRNAヌクレオチドであり得る、又はそれを含むことができる。主要な天然ヌクレオチドは、複素環塩基としてのウラシル、チミン、シトシン、アデニン、及びグアニン、ならびにホスホジエステル結合により連結されたリボース又はデオキシリボース糖を含む。
【0202】
一部の実施形態では、カーゴは、DNA又はRNAの対応物と比べて、標的受容体についての安定性、半減期、又は特異性もしくは親和性を改善するために化学的に修飾されたヌクレオチド類似体を含む、又はそれらからなる。化学修飾は、核酸塩基、糖部分、ヌクレオチド連結、又はそれらの組み合わせの化学修飾を含む。本明細書中で使用される場合、「修飾ヌクレオチド」又は「化学修飾ヌクレオチド」によって、複素環塩基、糖部分、又はリン酸部分の成分の一つ又は複数の化学修飾を有するヌクレオチドが定義される。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチドの電荷は、同じ核酸塩基配列のDNA又はRNAと比較して低下される。例えば、オリゴヌクレオチドは、低負電荷、非電荷、又は正電荷を有することができる。
【0203】
典型的には、ヌクレオシド類似体は、標準ポリヌクレオチド塩基とのワトソン-クリック塩基対合により水素結合が可能な塩基を支持し、ここで、類似体骨格は、標準ポリヌクレオチド(例、一本鎖RNA又は一本鎖DNA)中でのオリゴヌクレオチド類似体分子と塩基との間での配列特異的な様式においてそのような水素結合を可能にする様式で塩基を提示する。一部の実施形態では、類似体は、実質的に非荷電のリン含有骨格を有する。
【0204】
a.複素環塩基
主な天然ヌクレオチドは、複素環塩基としてのウラシル、チミン、シトシン、アデニン、及びグアニンを含む。カーゴは、それらの核酸塩基成分への化学修飾を含むことができる。複素環塩基又は複素環塩基類似体の化学修飾は、標的配列と結合する際の結合親和性又は安定性を増加させるのに有効であり得る。化学的に修飾された複素環塩基は、限定されないが、イノシン、5-(1-プロピニル)ウラシル(pU)、5-(1-プロピニル)シトシン(pC)、5-メチルシトシン、8-オキソ-アデニン、シュードシトシン、シュードイソシトシン、5及び2-アミノ-5-(2’-デオキシ-.ベータ.-D-リボフラノシル)ピリジン(2アミノピリジン)、ならびに様々なピロロ及びピラゾロピリミジン誘導体を含む。
【0205】
b.糖修飾
カーゴはまた、修飾糖部分又は糖部分類似体を有するヌクレオチドを含むことができる。糖部分修飾は、限定されないが、2’-O-アミノエトキシ、2’-O-アモニオエチル(2’-OAE)、2’-O-メトキシ、2’-O-メチル、2-グアニドエチル(2’-OGE)、2’-O,4’-C-メチレン(LNA)、2’-O-(メトキシエチル)(2’-OME)、及び2’-O-(N-(メチル)アセトアミド)(2’-OMA)を含む。2’-O-アミノエチル糖部分の置換が特に好ましい。なぜなら、それらは、中性pHでプロトン化され、このように、TFOと標的二本鎖との間での電荷反発を抑制するためである。この修飾によって、リボース又はデキシリボースのC3’-エンド立体構造が安定化され、また、二本鎖のプリン鎖中のi-1リン酸との架橋が形成される。
【0206】
一部の実施形態では、核酸はモルフォリノオリゴヌクレオチドである。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、典型的には、プリン又はピリミジン塩基対合部分を含む二つのさらなるモルフォリノ単量体で構成され、塩基特異的水素結合により、ポリヌクレオチド中の塩基に効果的に結合し、それらは、リン含有連結により一緒に連結されており、1~3個の原子の長さであり、一つの単量体のモルフォリノ窒素を、隣接する単量体の5’環外炭素に結合させる。プリン又はピリミジン塩基対部分は、典型的には、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、又はチミンである。モルフォリノオリゴマーの合成、構造、及び結合特性は、米国特許第5,698,685号、第5,217,866号、第5,142,047号、第5,034,506号、第5,166,315号、第5,521,063号、及び第5,506,337号において詳述されている。
【0207】
モルフォリノベースのサブユニットの重要な特性は、典型的には、以下を含む:安定した非荷電骨格連結によりオリゴマー形態で連結される能力;ヌクレオチド塩基(例、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシル、又はイノシン)を支持する能力であって、形成されたポリマーは、標的RNAを含む相補的塩基の標的核酸と高いTで、10~14塩基という短いオリゴマーとでさえハイブリダイズすることができる;哺乳動物細胞中に能動的に輸送されるオリゴマーの能力;及びRNAse分解に抵抗するオリゴマー:RNAヘテロ二本鎖の能力。
【0208】
一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、上に記載するように、非荷電連結により結合された、塩基対部分を持つモルフォリノベースのサブユニットを用いる。
【0209】
c.ヌクレオチド間連結
オリゴヌクレオチドは、二つのヌクレオシド部分間の化学連結を指すヌクレオチド間結合により接続される。DNA又はRNAオリゴヌクレオチドのリン酸骨格への修飾によって、結合親和性又は安定性オリゴヌクレオチドが増加し得る、あるいはオリゴヌクレオチドヌクレアーゼ消化の感受性が低下し得る。限定されないが、ジエチル-エチレンジアミド(DEED)又はジメチル-アミノプロピルアミン(DMAP)を含むカチオン修飾は、オリゴヌクレオチドと標的との間での静電反発の減少に起因して、特に有用であり得る。リン酸骨格の修飾はまた、ホスホジエステル連結における非架橋酸素の一つについての硫黄原子の置換を含んでもよい。この置換によって、ホスホジエステル連結の代わりにホスホロチオエートヌクレオシド間連結が作製される。ホスホロチオエートヌクレオシド間連結を含むオリゴヌクレオチドが、インビボでより安定であることが示されている。
【0210】
低下した電荷を有する修飾ヌクレオチドの例は、修飾ヌクレオチド間連結、例えばアキラルな非荷電サブユニット間連結を有するリン酸類似体(例、Sterchak,E.P.et al.,Organic.Chem.、52:4202、(1987))、及びアキラルなサブユニット間連結を有する非荷電モルフォリノベースのポリマー(例、米国特許第5,034,506号)を含み、上で考察されているとおりである。一部のヌクレオチド間連結類似体は、モルホリデート、アセタール、及びポリアミド連結複素環を含む。
【0211】
別の実施形態では、カーゴはロックド核酸で構成される。ロックド核酸(LNA)は修飾RNAヌクレオチドである(例えば、Braasch,et al.,Chem.Biol.,8(1):1-7(2001)を参照のこと)。LNAは、DNAとのハイブリッドを形成し、DNA/DNAハイブリッドよりも安定であり、ペプチド核酸(PNA)/DNAハイブリッドの特性と類似した特性である。従って、LNAは、PNA分子とちょうど同じように使用することができる。LNA結合効率は、一部の実施形態では、正電荷をそれに加えることにより増加させることができる。商業的な核酸シンセサイザー及び標準的なホスホラミダイト化学を使用して、LNAを作製する。
【0212】
一部の実施形態では、カーゴは、ペプチド核酸で構成される。ペプチド核酸(PNA)は合成DNA模倣物であり、ここで、オリゴヌクレオチドのリン酸骨格は、N-(2-アミノエチル)-グリシン単位を反復することによりその全体において置換され、ホスホジエステル結合は、典型的には、ペプチド結合により置換される。様々な複素環塩基が、メチレンカルボニル結合により骨格に連結される。PNAは、従来のDNAオリゴヌクレオチドと類似している複素環塩基の間隔を維持するが、アキラルで、中性荷電分子である。ペプチド核酸は、ペプチド核酸単量体で構成される。
【0213】
他の骨格修飾は、ペプチド及びアミノ酸の変形及び修飾を含む。このように、オリゴヌクレオチド、例えばPNAなどの骨格成分は、ペプチド連結であり得る、又は、あるいは、それらは非ペプチドペプチド連結であり得る。例は、アセチルキャップ、アミノスペーサー、例えば8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(本明細書中ではO-リンカーとして言及される)、アミノ酸、例えばリジンなどが、正電荷がPNA中で望まれる場合などに特に有用である。PNAの化学アセンブリについての方法は周知である。例えば、米国特許第5,539,082号、第5,527,675号、第5,623,049号、第5,714,331号、第5,736,336号、第5,773,571号、及び第5,786,571号を参照のこと。
【0214】
カーゴは、場合により、末端のいずれか又は両方に一つ又は複数の末端残基又は修飾を含み、その標的についてのオリゴヌクレオチドの安定性及び/又は親和性を増加させる。一般的に使用される正荷電部分は、アミノ酸リジン及びアルギニンを含むが、他の正荷電部分も有用であり得る。カーゴはさらに、プロピルアミン基を使用し、末端キャップを施すように修飾して分解を防止してもよい。3’又は5’キャッピングオリゴヌクレオチドについての手順は、当技術分野において周知である。
【0215】
一部の実施形態では、核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。
【0216】
C.医薬組成物
組成物は、医薬的に許容可能な担体との組み合わせで、治療的に使用することができる。
【0217】
3E10抗体と複合体化された核酸カーゴを含む組成物は、好ましくは、適切な医薬担体との組み合わせで、治療的な使用のために用いられる。そのような組成物は、有効量の組成物と、医薬的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。
【0218】
組成物は、適切な医薬担体中での、局所的、局在的、又は全身的な投与のための製剤中であってもよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Edition by E.W.Martin(Mark Publishing Company,1975)によって、典型的な保因者及び調製方法が開示されている。複合体はまた、細胞に標的指向するために、生分解性又は非生分解性ポリマー又はタンパク質又はリポソームで形成される適切な生体適合性粒子中にカプセル化されてもよい。そのような系は、当業者に周知である。一部の実施形態では、複合体は、ナノ粒子中にカプセル化される。
【0219】
注射用の製剤は、単位投与形態において、例えば、アンプル中で、又は多用量容器中で提供され得るが、場合により、防腐剤が加えられる。組成物は、特定の実施形態において、対象の血液と等張性であり得る、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及びエマルションなどの形態を取り得る。非水性溶媒の例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブオイルなど、ゴマ油、ココナッツオイル、ラッカセイ油、ピーナッツオイル、鉱油、注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルなど、又は合成モノもしくはジグリセリドを含む固定油を含む。水性担体は、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液を含み、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、1,3-ブタンジオール、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定油を含む。静脈内賦形剤は、液体及び栄養素の補充剤、ならびに電解質補充剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくものなど)を含む。材料は、溶液、エマルション、又は懸濁液中であり得る(例えば、粒子、リポソーム、又は細胞中に組み入れられる)。典型的には、適量の医薬的に許容可能な塩が製剤中で使用され、製剤を等張性にする。トレハロースを、典型的には1~5%の量で医薬組成物に加えてもよい。溶液のpHは、好ましくは約5~約8であり、より好ましくは約7~約7.5である。
【0220】
医薬組成物は、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、及び表面活性剤を含み得る。担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.において見出すことができる。当業者であれば、過度の実験に頼ることなく、組成物を調製及び製剤化するための様々なパラメータを容易に決定することができる。
【0221】
組成物は、単独で又は他の適切な成分との組み合わせで、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤(即ち、それらは「噴霧」)中に作製することができる。エアロゾル製剤は、加圧された許容可能な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素、及び空気などの中に配置することができる。吸入による投与のために、化合物は、適切な噴霧剤の使用により、加圧パック又はネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0222】
一部の実施形態では、製剤成分、例えば塩、担体、緩衝剤、乳化剤、希釈剤、賦形剤、キレート剤、防腐剤、可溶化剤、又は安定剤などの、医薬的に許容可能な担体を含む。
【0223】
核酸は、細胞取込みを改善するために、C32官能基を有するコレステロールならびにラウリン酸及びリトコール酸誘導体のような親油基とコンジュゲートされてもよい。例えば、コレステロールは、インビトロ(Lorenz,et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,14(19):4975-4977(2004))及びインビボ(Soutschek,et al.,Nature,432(7014):173-178(2004))でsiRNAの取り込み及び血清安定性を増強することが実証されている。また、血流中の異なるリポタンパク質、例えばLDLなどへの、ステロイドコンジュゲートオリゴヌクレオチドの結合は、完全性を保護し、生体分布を促進することが示されている(Rump,et al.,Biochem.Pharmacol.,59(11):1407-1416(2000))。細胞取込みを増加させるために、上に記載される核酸に付着又はコンジュゲートさせることができる他の基は、アクリジン誘導体;架橋剤、例えばソラレン誘導体、アジドフェナシル、プロフラビン、及びアジドプロフラビン;人工エンドヌクレアーゼ;金属複合体、例えばEDTA-Fe(II)及びポルフィリン-Fe(II)など;アルキル化部分;ヌクレアーゼ、例えばアルカリホスファターゼなど;末端トランスフェラーゼ;アブザイム;コレステロール部分;親油性担体;ペプチドコンジュゲート;長鎖アルコール;リン酸エステル;放射性マーカー;非放射性マーカー;炭水化物;ならびにポリリシン又は他のポリアミンを含む。Levy,et al.の米国特許第6,919,208号にも、増強送達のための方法が記載されている。これらの医薬製剤は、それ自体が公知である様式において、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、ゲル化、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥過程により製造されてもよい。
【0224】
さらなる担体は、持続放出調製物、例えば複合体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどを含み、そのマトリックスは、成型粒子、例えば、フィルム、リポソーム、又は微粒子の形態である。移植は、移植可能な薬物送達系、例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、ポリマーリザーバー、コレステロール基質、ポリマー系、例えば、基質浸食系及び/又は拡散系ならびに非ポリマー系を挿入することを含む。吸入は、単独で、又は吸収されることができる担体に付着された吸入器中で、エアロゾルを用いて組成物を投与することを含む。全身投与については、組成物をリポソーム中にカプセル化することが好まれ得る。
【0225】
組成物は、侵襲的装置、例えば血管又は尿カテーテルなどを使用して、及び介入装置、例えば薬物送達能力を有し、拡張デバイス又はステントグラフトとして構成されたステントなどを使用して、薬剤及び/又はヌクレオチド送達系の組織特異的取込みを可能にする様式で送達されてもよい。
【0226】
製剤は、拡散により、又はポリマー基質の分解により、生体侵食性インプラントを使用して送達されてもよい。特定の実施形態では、製剤の投与は、特定の期間、例えば、時間、日、週、月、又は年にわたって、組成物への連続的な曝露をもたらすように設計されてもよい。これは、例えば、製剤の反復投与により、又は組成物が反復投与なしに長期間にわたって送達される持続又は制御放出送達系により達成され得る。
【0227】
適切な他の送達系は、時間放出、遅延放出、持続放出、又は制御放出の送達系を含む。そのような系によって、多くの場合において、反復投与が回避され、対象及び医師への利便性が増加し得る。多くの型の放出送達系が利用可能であり、当業者に公知である。それらは、例えば、ポリマーベースの系、例えばポリ乳酸及び/又はポリグリコール酸、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、コポリオキサレート、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチリン酸、及び/又はこれらの組み合わせなどを含む。核酸を含む、前述のポリマーのマイクロカプセルが、例えば、米国特許第5,075,109号において記載されている。他の例は、ステロール、例えばコレステロール、コレステロールエステル、及び脂肪酸など又は中性脂肪、例えばモノ、ジ、及びトリグリセリドなどを含む脂質ベース;ヒドロゲル放出系;リポソームベースの系;リン脂質ベースの系;シラスティック系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を使用した圧縮錠剤;又は部分的に融合されたインプラントを含む。製剤は、例えば、マイクロスフェア、ヒドロゲル、ポリマーリザーバー、コレステロールマトリックス、又はポリマー系であり得る。一部の実施形態では、この系によって、例えば、複合体を含む製剤の拡散又は侵食/分解速度の制御を通じて、組成物の持続又は制御放出が可能になり得る。
【0228】
複合体は、核酸カーゴ及び抗体を含み、その組成物は、肺又は粘膜投与のために製剤化することができる。投与は、肺、鼻腔、経口(舌下、口腔)、膣、又は直腸粘膜への組成物の送達を含むことができる。本明細書中で使用される用語「エアロゾル」は、それが噴霧剤を使用して製造されるか否かにかかわらず、溶液又は懸濁液中であり得る粒子の霧状ミストの任意の調製物を指す。エアロゾルは、標準的な技術、例えば超音波処理又は高圧処理などを使用して産生することができる。
【0229】
上気道を介した投与については、製剤は、溶液、例えば、水もしくは等張生理食塩水、緩衝もしくは非緩衝の中に、又は懸濁液として、鼻腔内投与のために、液滴として又はスプレーとして製剤化することができる。好ましくは、そのような溶液又は懸濁液は、鼻腔分泌物と比べて等張性であり、ほぼ同じpH、例えば、約pH4.0~約pH7.4、又はpH6.0~pH7.0を範囲である。緩衝液は、生理学的に適合性があり、単に例として、リン酸緩衝液を含むべきである。
【0230】
複合体は、粒子送達媒体を使用して標的細胞に送達することができる。ナノ粒子は、一般的に、500nm~0.5nm未満の範囲中の、好ましくは50~500nmである直径を有し、より好ましくは50~300nmである直径を有する粒子を指す。ポリマー粒子の細胞内部移行は、それらのサイズに高度に依存的であり、ナノ粒子状のポリマー粒子が、微粒子状のポリマー粒子よりもずっと高い効率で細胞により内部移行される。例えば、Desaiらは、直径100nmである約2.5倍多いナノ粒子が、直径1μMを有する微粒子と比較して、培養Caco-2細胞により取り込まれることを実証している(Desai,et al.,Pharm.Res.、14:1568-73(1997))。ナノ粒子はまた、インビボで組織中により深く拡散するより大きな能力を有する。
【0231】
一部の実施形態では、送達媒体はデンドリマーである。
【0232】
好ましい生分解性ポリマーの例は、加水分解により分解する合成ポリマー、例えばポリ(ヒドロキシ酸)など、例えば乳酸及びグリコール酸のポリマー及びコポリマーなど、他の分解性ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(ブチン酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、及びポリ(アミン-コ-エステル)ポリマー、例えば、Zhou,et al.,Nature Materials,11:82-90(2012)、ならびにWO2013/082529、米国公開出願第2014/0342003号、及びPCT/US2015/061375において記載されているものなどを含む。
【0233】
一部の実施形態では、特に、T細胞をインビボで標的とするための、例えば、CAR T細胞のインビボ産生のためのもの、免疫細胞又はT細胞マーカー、例えばCD3,CD7、もしくはCD8など、あるいは標的組織、例えば肝臓などのマーカーを標的とすることができる。例えば、抗CD8抗体及び抗CD3 Fab断片の両方を使用して、インビボでT細胞を標的とした(Pfeiffer,et al.,EMBO Mol Med.,10(11)(2018).pii:e9158.doi:10.15252/emmm.201809158.、Smith,et al.,Nat Nanotechnol.,12(8):813-820(2017).doi:10.1038/nnano.2017.57)。このように、一部の実施形態では、粒子又は他の送達賦形剤は、CD3、CD7、CD8、もしくは別の免疫細胞(例、T細胞)マーカー、又は特定の組織、例えば胸腺、脾臓、もしくは肝臓などについてのマーカーに対して特異的な標的指向部分を含む。結合部分は、例えば、抗体又はその抗原結合断片であり得る。
【0234】
標的指向部分は、ナノ粒子又は他の送達賦形剤に、直接的又は間接的に会合、連結、コンジュゲート、又はそうでなければ付着させることができる。標的指向分子は、標的細胞の表面上の受容体又は他の分子に結合するタンパク質、ペプチド、核酸分子、糖類又は多糖類であり得る。移植片への結合の特異性及び結合力の程度は、標的指向分子の選択を通して調節することができる。
【0235】
部分の例は、例えば、特定の細胞に対する分子、例えば、造血幹細胞、CD34細胞、T細胞、又は任意の他の好ましい細胞型に対する抗体、ならびに好ましい細胞型上に発現される受容体及びリガンドの送達を提供する標的指向部分を含む。好ましくは、この部分は、造血幹細胞を標的指向する。細胞外基質(「ECM」)を標的とする分子の例は、グリコサミノグリカン(GAG)及びコラーゲンを含む。一実施形態では、ポリマー粒子の外表面は、選択された細胞又は組織と相互作用する粒子の能力を増強するために改変されてもよい。標的指向分子にコンジュゲートされたアダプターエレメントが粒子中に挿入される、上に記載される方法が好ましい。しかし、別の実施形態では、カルボキシ末端を有するポリマーマイクロ又はナノ粒子の外表面は、遊離アミン末端を有する標的指向分子に連結されてもよい。
【0236】
ポリマーマイクロ及びナノ粒子に付着された他の有用なリガンドは、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む。PAMPは、細胞又は組織の表面上のToll様受容体(TLR)を標的とする、又は細胞もしくは組織の内部的にシグナル伝達し、それにより取込みを潜在的に増加させる。粒子表面にコンジュゲート又は共カプセル化されたPAMPは、非メチル化CpG DNA(細菌性)、二本鎖RNA(ウイルス性)、リポ多糖類(細菌性)、ペプチドグリカン(細菌性)、リポアラビノマンニン(細菌性)、ジモサン(酵母)、マイコプラズマリポタンパク質、例えばMALP-2(細菌性)など、フラゲリン(細菌性)ポリ(イノシン-シチジル)酸(細菌性)、リポテイコ酸(細菌性)又はイミダゾキノリン(合成)を含み得る。
【0237】
別の実施形態では、粒子の外表面は、マンノースアミンを使用して処理されてもよく、それにより粒子の外表面をマンノシル化する。この処理によって、抗原提示細胞表面上のマンノース受容体で、粒子が標的細胞又は組織に結合され得る。あるいは、Fc部分(標的化Fc受容体)、熱ショックタンパク質部分(HSP受容体)、ホスファチジルセリン(スカベンジャー受容体)、及びリポ多糖(LPS)を含むイムノグロブリン分子との表面コンジュゲートは、細胞又は組織上の追加の受容体標的である。
【0238】
マイクロ粒子及びナノ粒子に共有結合的に付着させて、ムチン及び粘膜細胞層に特異的な標的にすることができるレクチン。
【0239】
標的指向部分の選択は、ナノ粒子組成物の投与の方法、及び標的とされる細胞又は組織に依存する。標的指向分子は、一般的に、細胞又は組織に対する粒子の結合親和性を増加させ得る、あるいは器官中の特定の組織又は組織中の特定の細胞型に対してナノ粒子を標的指向させ得る。一部の実施形態では、標的指向部分は、胸腺細胞、脾臓細胞、又はがん細胞を標的とする
【0240】
純粋又は部分的に精製された形態のムチンの天然成分のいずれかの、粒子への共有結合的な付着によって、ビーズ-腸界面の表面張力が減少し、ムチン層中でのビーズの溶解性が増加する。余分なペンダントカルボン酸側基、例えば、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸を含むポリアミノ酸の付着によって、生物学的接着性が増加する。15,000~50,000kDaの分子量範囲中でポリアミノ酸を使用することによって、粒子の表面に付着された120~425アミノ酸残基の鎖がもたらされる。ポリアミノ鎖は、ムチン鎖中での鎖の絡み合いにより、ならびに増加したカルボキシル電荷の増加により、生体付着を増加させる。
【0241】
III.使用方法
核酸構築物の送達を増強するために3E10を使用する方法が提供される。典型的には、有効量の3E10抗体を、最初に核酸カーゴと接触させて、細胞中へのその送達が望まれる。例えば、核酸カーゴ及び抗体を、核酸カーゴ及び抗体が複合体を形成するのに十分な時間にわたり溶液中で混合することができる。次に、混合物を細胞と接触させる。他の実施形態では、カーゴ及び抗体は、細胞を含む、又はそうでなければ浸す溶液に加えられて、複合体が細胞の存在において形成される。複合体は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで細胞と接触させることができる。このように、一部の実施形態では、複合体の溶液は、培養中の細胞に加えられる、又は処置される動物中に注射される。
【0242】
抗体は、核酸を細胞核中に送達して、次に、ドナーDNAによる遺伝子編集を促進することができるRAD51経路の機能を改変するのに役立つと考えられる。アプローチは、核酸カーゴの設計に対して配列制限を有さない。処置は、例えば、その必要のある対象に対する、単純なIV投与による抗体と核酸カーゴの混合物の投与であり得る。
【0243】
組成物及び方法は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の、RNA、DNA、PNA、もしくは他の修飾核酸、又はそれらの組み合わせで形成される異なる核酸構築物を含むことができる。
【0244】
組成物の有効量又は治療有効量は、疾患又は障害の一つ又は複数の症状を治療、阻害、又は緩和する、あるいは、そうでなければ、望ましい薬理学的及び/又は生理学的効果を提供する、例えば、疾患又は障害の根底にある病態生理学的機構の一つ又は複数を低下、阻害、又は逆転させるのに十分な投与量であり得る。
【0245】
有効量はまた、抗体の非存在におけるカーゴの投与と比べて、核酸カーゴの送達の速度、量、及び/又は質を増加させるのに有効な量であり得る。組成物の製剤は、投与様式に適するように作製される。医薬的に許容可能な担体は、部分的に、投与される特定の組成物により、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法により決定される。したがって、複合体を含む医薬組成物の多様な適切な製剤がある。正確な投与量は、対象依存的な変数(例、年齢、免疫系の健康、臨床症状など)などの多様な因子に従って変動するであろう。
【0246】
組成物は、1日1回、2回、又は3回;1週間に1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、1ヶ月間に1回、2回、3回、4回、5回、6回、又は8回、投与することができる、又はそうでなければ標的細胞と接触させることができる。例えば、一部の実施形態では、組成物は、2日もしくは3日毎に、又は平均で約2~約4回、約1週間投与される。このように、一部の実施形態では、組成物は、二つ以上の別々の処置を含む投与レジメンの一部として投与される。
【0247】
投与量レジメンは、投与量が二つ以上の投与の間で同じある維持レジメン、投与量が二つ以上の投与の間で増加する漸増レジメン、投与量が二つ以上の投与の間で減少する漸減レジメン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0248】
一部の実施形態では、第一の用量は低用量であり得る。用量漸増は、満足な生化学的又は臨床的応答に達するまで継続することができる。臨床的応答は、治療されている疾患もしくは障害、及び/又は所望の転帰に依存する。一部の実施形態では、投与量は、好ましくは、また、望ましくない毒性又は許容可能なその多量を誘導することなく、治療効果が特定されるまで増加させてもよい。次に、投与量を、維持用量まで維持又は着実に低下させることができる。方法は、治療の用量レベル、用量頻度、又は期間を標準化、最適化、又はカスタマイズするために使用することができる。
【0249】
一般的に、投与前に、特にインビボ投与のために、抗体及び核酸を室温で一定期間にわたり混合する。一部の実施形態では、複合体形成の時間は、例えば、1分~30分、又は10分~20の範囲であり(両端を含み)、好ましい複合体形成時間は約15分である。抗体用量は、0.0001mgから1mgまでの範囲(両端を含む)であり得るが、好ましい用量は約0.1mgである。核酸用量は、0.001μg~100μgの範囲(両端を含む)であり得るが、好ましい用量は10μgである。以下のインビボデータ(例、図6B)を、0.1mg 3E10、10μgのmRNAを使用して産生し、15分間にわたり複合体化した。
【0250】
以下の実施例は、DNAカーゴが、複数の組織により普遍的に送達されて、腫瘍に制限されないことを示し得る一方で、RNA送達は、腫瘍組織についてより選択的であり得る。このように、一部の実施形態では、RNAカーゴ(例、単独で)は、がん細胞又は他の腫瘍組織に選択的に送達されてもよい。一部の実施形態では、RNAカーゴのより広い分布が望ましい場合、RNAをDNA(例、担体DNA)と混合させて、非がん/腫瘍組織への送達を促進してもよい。担体DNAは、例えば、サーモン精子からのプラスミドDNA又は低分子量であり得る。一部の実施形態では、担体DNAは、非コードDNAである。担体DNAは、一本鎖もしくは二本鎖、又はそれらの組み合わせであり得る。一部の実施形態では、担体DNAは、1~10、1~100、1~1,000、又は1~10,000ヌクレオチド長、又はその任意の部分範囲もしくは整数、又はそれらの組み合わせを有する核酸で構成される。典型的には、担体DNAは、抗体にコンジュゲートされていない、又はそうでなければ共有結合的に付着されていない。典型的には、担体DNAは、カーゴ核酸(例、RNA)及び抗体と共インキュベートされ、それとの複合体として共送達される。一部の実施形態では、担体DNAは、非コードDNAである。
【0251】
A.インビトロ及びエクスビボ方法
インビトロ及びエクスビボ方法では、細胞を、典型的には、培養中に組成物と接触させる。エクスビボ方法については、細胞は対象から単離され、エクスビボで組成物と接触させて、カーゴ核酸を含む細胞を産生してもよい。好ましい実施形態では、細胞は、治療される対象から、又は同質遺伝子型宿主から単離される。標的細胞は、組成物と接触させる前に対象から取り出すことができる。
【0252】
B.インビボ方法
一部の実施形態では、細胞への核酸カーゴのインビボ送達は、対象における疾患又は障害の遺伝子編集及び/又は治療のために使用される。組成物は、典型的には、抗体-核酸カーゴを含み、インビボ治療のための対象に直接投与することができる。
【0253】
一般的に、抗体、オリゴヌクレオチド、及び関連分子を含む化合物を投与する方法は、当技術分野において周知である。特に、核酸治療薬のために既に使用されている投与経路は、現在使用されている製剤と共に、上に記載するドナーオリゴヌクレオチドのための好ましい投与経路及び製剤を提供する。好ましくは、組成物は動物中に注射又は注入される。
【0254】
組成物は、限定されないが、静脈内、腹腔内、羊膜内、筋肉内、皮下、又は局所(舌下、直腸、鼻腔内、肺、直腸粘膜、及び膣)、及び経口(舌下、バッカル)を含む多数の経路により投与することができる。
【0255】
一部の実施形態では、組成物は、肺送達、例えば鼻腔内投与又は経口吸入などのために製剤化される。製剤の投与は、複合体がそれらの標的に達することを可能にする、任意の許容可能な方法により達成され得る。投与は、治療されている状態に依存して、局在化され得る(即ち、特定の領域、生理学的システム、組織、器官、又は細胞型に)又は全身的であり得る。インビボ送達のための組成物及び方法がまた、WO2017/143042において考察されている。
【0256】
方法はまた、有効量の抗体-核酸複合体組成物を、胚もしくは胎児、又はその妊娠している母親にインビボで投与することを含むことができる。一部の方法では、組成物は、静脈もしくは動脈、例えば、卵黄静脈もしくは臍帯静脈などの中に、又は胚もしくは胎児の羊膜嚢中に組成物を注射及び/又は注入することにより子宮内に送達される。例えば、Ricciardi,et al.,Nat Commun.2018 Jun 26;9(1):2481.doi:10.1038/s41467-018-04894-2、及びWO2018/187493を参照のこと。
【0257】
C.適用
関心対象のポリペプチド又は機能的核酸をコードする核酸カーゴ、例えば、mRNA、機能的核酸、DNA発現構築物、ベクターなどは、細胞中でのポリペプチドの発現又はその阻害のために、3E10抗体を使用して細胞中に送達することができる。組成物及び方法は、広範な異なる適用にわたって使用することができる。非限定的な例は、CRISPR及びgRNA発現ベクター+/-編集DNA、大型DNA(プラスミド及び発現ベクター)の送達、遺伝子置換及び遺伝子治療、例えば、インビボ又はエクスビボでCAR-T細胞を生成し、インビボ又はエクスビボでのCAR-T細胞産生を単純化するためのDNA及び/又はRNAの送達、siRNAの送達、mRNAの送達などを含む。遺伝子治療/遺伝子編集及び免疫調節、特にキメラ抗原受容体T細胞産生に関する例示的な適用を以下で考察する。
【0258】
1.遺伝子治療及び編集
一部の実施形態では、組成物は遺伝子編集のために使用される。例えば、本方法は、例えば、点変異により起こされる遺伝的欠損、障害、及び疾患をただすために、単一遺伝子中の変異により起こされる遺伝的欠損、障害、及び疾患を治療するために特に有用であり得る。標的遺伝子が、遺伝的障害の原因である変異を含む場合、次に当方法は、標的遺伝子のDNA配列を正常に回復させ得る変異原性修復のために使用することができる。標的配列は、遺伝子のコードDNA配列内又はイントロン内であり得る。標的配列はまた、プロモーター配列又はエンハンサー配列を含む、標的遺伝子の発現を調節するDNA配列内にあり得る。
【0259】
本明細書中の方法では、複合体と接触させられた細胞は、対象に投与されてもよい。対象は、疾患又は障害、例えば血友病、筋ジストロフィー、グロビン症(globinopathies)、嚢胞性線維症、色素性乾皮症、又はリソソーム蓄積症などを有し得る。そのような実施形態では、遺伝子改変、遺伝子置換、遺伝子付加、又はそれらの組み合わせが、対象における疾患又は障害の一つ又は複数の症状を低減するための有効量で行われ得る。
【0260】
一部の実施形態では、DNAカーゴは、ヌクレアーゼをコードする核酸、ドナーオリゴヌクレオチドもしくはドナーオリゴヌクレオチドをコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む。
【0261】
a.遺伝子編集ヌクレアーゼ
核酸カーゴは、標的細胞のゲノム中で一本鎖又は二本鎖切断を誘導するエレメント又はエレメントをコードする、ならびに場合により、しかし、他のエレメント、例えばドナーオリゴヌクレオチドなど、及び/又は、特にCRISPR/Casの場合では、系の他のエレメント、例えばgRNAなどとの組み合わせが好ましいものを含む。組成物は、例えば、標的遺伝子の発現を低下させる、又はそうでなければ改変するために使用することができる。
【0262】
i.鎖切断誘導エレメント
CRISPR/Cas
一部の実施形態では、核酸カーゴは、CRISPR/Cas媒介性ゲノム編集組成物の一つ又は複数のエレメント、CRISPR/Cas媒介性ゲノム編集組成物の一つ又は複数のエレメントをコードする核酸、あるいはそれらの組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、CRISPR/Cas媒介性ゲノム編集組成物は、哺乳動物対象においてCRISPR/Cas媒介性ゲノム編集を行うために必要であるCRISPR系のエレメントを指す。以下でより詳細に考察されるように、CRISPR/Cas媒介性ゲノム編集組成物は、典型的には、crRNA、tracrRNA(又はガイドRNA又は単一ガイドRNAとして言及されるそのキメラ)、及びCas酵素、例えばCas9などをコードする一つ又は複数の核酸を含む。CRISPR/Cas媒介性ゲノム編集組成物は、場合により、標的部位(例、Cas9により誘導された一本鎖又は二本鎖切断の部位)で、又はそれに隣接して標的細胞のゲノム中に組換えることができるドナーポリヌクレオチドを含むことができる。
【0263】
CRISPR/Cas系は、真核生物における使用のための遺伝子編集(特定遺伝子のサイレンシング、増強、又は変化)としての使用のために適応されている(例えば、Cong,Science,15:339(6121):819-823(2013)及びJinek,et al.,Science,337(6096):816-21(2012)を参照のこと)。cas遺伝子及び特異的に設計されたCRISPRを含む、要求されるエレメントで細胞をトランスフェクトすることにより、生物のゲノムは、任意の所望の位置で切断及び改変することができる。CRISPR/Cas系を使用したゲノム編集における使用のための組成物を調製する方法が、WO2013/176772及びWO2014/018423において詳細に記載されており、それらは、それらの全体において、参照により本明細書中に具体的に組み入れられる。
【0264】
本明細書中で開示される送達方法は、CRISPR/Cas系上の多数の変形を用いた使用のために適切である。
【0265】
一般的に、「CRISPR系」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現又は活性の方向付けにおいて含まれる転写物及び他のエレメントを集合的に指し、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例、tracrRNA又は活性な部分的tracrRNA)、tracrメイト配列(内因性CRISPR系の状況において「直接リピート」及びtracrRNAプロセシングされた部分的な直接リピートを包含する)、ガイド配列(また、内因性CRISPR系の状況において「スペーサー」として言及される)、又はCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物を含む。ガイド配列(例、直接リピートスペーサー指向リピート)に作動可能に連結された一つ又は複数のtracrメイト配列はまた、ヌクレアーゼによるプロセッシング前のプレcrRNA(プレCRISPR RNA)又はプロセッシング後のcrRNAとして言及することができる。
【0266】
以下でより詳細に考察されるように、一部の実施形態では、tracrRNA及びcrRNAは連結され、キメラcrRNA-tracrRNAハイブリッドを形成し、ここで成熟crRNAは、合成ステムループを介して部分tracrRNAに融合され、天然crRNA:tracrRNA二本鎖を模倣するが、Cong,Science,15:339(6121):819-823(2013)及びJinek,et al.,Science,337(6096):816-21(2012)において記載されるとおりである。単一の融合crRNA-tracrRNA構築物はまた、本明細書中で、ガイドRNA又はgRNA(又は単一ガイドRNA(sgRNA))として言及される。sgRNA内では、crRNA部分は「標的配列」として特定することができ、tracrRNAはしばしば「足場」として言及される。
【0267】
一部の実施形態では、CRISPR系の一つ又は複数のエレメントは、I型、II型、又はIII型のCRISPR系から由来する。一部の実施形態では、CRISPR系の一つ又は複数のエレメントは、内因性CRISPR系を含む特定の生物、例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)などから由来する。
【0268】
一般的に、CRISPR系は、標的配列の部位でのCRISPR複合体の形成を促進するエレメント(また、内因性CRISPR系の状況において、プロトスペーサーとして言及される)により特徴付けられる。CRISPR複合体の形成の状況において、「標的配列」は、ガイド配列が相補性を有するように設計されている配列を指し、ここで標的配列とガイド配列との間でのハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の形成が促進される。標的配列は、任意のポリヌクレオチド、例えばDNA又はRNAポリヌクレオチドなどであり得る。一部の実施形態では、標的配列は、細胞の核又は細胞質中にある。
【0269】
標的核酸において、各プロトスペーサーは、その認識が個々のCRISPR系に特異的であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と関連付けられる。ストレプトコッカス・ピオゲネスCRISPR/Cas系では、PAMはヌクレオチド配列NGGである。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR/Cas系では、PAMは、ヌクレオチド配列がNNAGAAWである。tracrRNA二本鎖によって、crRNAのスペーサー領域とプロトスペーサーDNAとの間でのヘテロ二本鎖形成を介して、プロトスペーサー及び必要なPAMからなるDNA標的に対してCasが向けられる。
【0270】
典型的には、内因性CRISPR系の状況において、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズされて、一つ又は複数のCasタンパク質と複合体化されたガイド配列を含む)の形成によって、標的配列中又はその近傍(例、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、又はそれ以上の塩基対内)で一方又は両方の鎖の切断がもたらされる。tracr配列の全て又は一部がまた、ガイド配列に作動可能に連結されたtracrメイト配列の全て又は一部へのハイブリダイゼーションなどにより、CRISPR複合体の一部を形成し得る。
【0271】
一度、望ましいDNA標的配列が同定されると、適切な標的部位を実行者が決定するために役立つ多くのリソースがある。例えば、多数の公開リソースが、ヒトエクソンの40%超を標的とする、約190,000の潜在的なsgRNAのバイオインフォマティクスで生成されたリストを含み、標的部位を選択する、及びその部位でのニック又は二本鎖切断に影響を及ぼすように関連sgRNAを設計する際に実行者を助けるために利用可能である。また、crispr.u-psud.fr/を参照のこと。科学者が、広範囲の種においてCRISPR標的部位を見出し、適したcrRNA配列を生成するのに役立つように設計されたツール。
【0272】
一部の実施形態では、CRISPR系の一つ又は複数のエレメントの発現を駆動する一つ又は複数のベクターが、標的細胞中に導入されて、CRISPR系のエレメントの発現によって、一つ又は複数の標的部位でのCRISPR複合体の形成が方向付けられる。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に連結されたガイド配列、及びtracr配列は、各々が、別個のベクター上の別々の調節エレメントに動作可能に連結され得る。あるいは、同じ又は異なる調節エレメントから発現されるエレメントの二つ以上を、単一のベクター中で組み合わせてもよく、一つ又は複数の追加のベクターが、第一のベクター中に含まれないCRISPR系の任意の成分を提供する。単一のベクター中で組み合わされるCRISPR系エレメントは、任意の適切な方向において配置してもよく、第二のエレメントに関して(その上流の)5’又は(その下流の)3’に位置付けられた一つのエレメントなどである。一つのエレメントのコード配列は、第二のエレメントのコード配列の同じ又は反対の鎖上に位置し、同じ又は反対の方向において方向付けることができる。一部の実施形態では、単一のプロモーターは、CRISPR酵素をコードする転写物ならびにガイド配列、tracrメイト配列(場合により、ガイド配列に動作可能に連結される)、及び一つ又は複数のイントロン配列内に埋め込まれたtracr配列(例、各々が異なるイントロン中、二つ以上が少なくとも一つのイントロン中、又は全てが単一のイントロン中)の一つ又は複数の発現を駆動する。一部の実施形態では、CRISPR酵素、ガイド配列、tracrメイト配列、及びtracr配列は、同じプロモーターに動作可能に連結され、及びそれから発現される。
【0273】
一部の実施形態では、ベクターは、一つ又は複数の挿入部位、例えば制限エンドヌクレアーゼ認識配列(また、「クローン部位」として言及される)などを含む。一部の実施形態では、一つ又は複数の挿入部位(例、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の挿入部位)が、一つ又は複数のベクターの一つ又は複数の配列エレメントの上流及び/又は下流に位置する。一部の実施形態では、ベクターは、tracrメイト配列の上流の、及び、場合により、tracrメイト配列に作動可能に連結された調節エレメントの下流の挿入部位を含み、挿入部位中へのガイド配列の挿入後及び発現時に、ガイド配列によって、真核細胞中の標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的な結合が方向付けられる。一部の実施形態では、ベクターは二つ以上の挿入部位を含み、各挿入部位は、各部位でのガイド配列の挿入を可能にするように、二つのtracrメイト配列間に位置する。そのような配置では、二つ以上のガイド配列は、単一のガイド配列の二つ以上のコピー、二つ以上の異なるガイド配列、又はこれらの組み合わせを含むことができる。複数の異なるガイド配列を使用する場合、単一発現構築物を使用して、細胞内の複数の異なる、対応する標的配列に対してCRISPR活性を標的指向させてもよい。例えば、単一ベクターは、約又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20を超えるガイド配列を含むことができる。一部の実施形態では、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを上回る、そのようなガイド配列含有ベクターが提供され、場合により、細胞に送達されてもよい。
【0274】
一部の実施形態では、ベクターは、CRISPR酵素、例えばCasタンパク質などをコードする酵素コード配列に動作可能に連結された調節エレメントを含む。Casタンパク質の非限定的な例は、Casl、CaslB、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(また、Csnl及びCsxl2としても公知)、CaslO、Csyl、Csy2、Csy3、Csel、Cse2、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3、Csxl7、Csxl4、CsxlO、Csxl6、CsaX、Csx3、Csxl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、又はそれらの改変バージョンを含む。一部の実施形態では、非改変CRISPR酵素は、DNA切断活性、例えばCas9などを有する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の位置での、例えば標的配列内及び/又は標的配列の相補体内などの、一つ又は両方の鎖の切断を方向付ける。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の第一の又は最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500、又はそれ以上の塩基対内の一つ又は両方の鎖の切断を方向付ける。
【0275】
一部の実施形態では、ベクターは、対応する野生型酵素に関して変異されたCRISPR酵素をコードし、変異されたCRISPR酵素は、標的配列を含む標的ポリヌクレオチドの一つ又は両方の鎖を切断する能力を欠く。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)からのCas9のRuvC I触媒ドメイン中でのアスパラギン酸-アラニン置換(D10A)によって、両方の鎖を切断するヌクレアーゼからニッカーゼ(単一鎖を切断する)へとCas9が変換される。Cas9をニッカーゼにする変異の他の例は、限定されないが、H840A、N854A、及びN863Aを含む。さらなる例として、Cas9(RuvC I、RuvC II、及びRuvC III)の二つ以上の触媒ドメインを変異させて、全てのDNA切断活性を実質的に欠く変異Cas9を産生することができる。一部の実施形態では、D10A変異は、H840A、N854A、又はN863A変異の一つ又は複数と組み合わされて、全てのDNA切断活性を実質的に欠くCas9酵素を産生する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、変異酵素のDNA切断活性が、その非変異形態に関して約25%、10%、5%>、1%>、0.1%>、0.01%又はそれ以下である場合、全てのDNA切断活性を実質的に欠くと考えられる。
【0276】
一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、特定の細胞、例えば真核細胞などにおける発現のために最適化されたコドンである。真核細胞は、特定の生物、例えば、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、又は非ヒト霊長類を含む哺乳動物などの、又はそれらから由来するものであり得る。一般的に、コドン最適化は、関心対象の宿主細胞における増強発現のために、天然配列の少なくとも一つのコドン(例、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、又はそれを上回るコドン)を、天然アミノ酸配列を維持しながら、その宿主細胞の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンで置換することにより、核酸配列を改変する過程を指す。様々な種が、特定のアミノ酸の特定のコドンについて特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用における差)は、しばしば、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関し、それは次に、とりわけ、翻訳されているコドンの特性及び特定の転写RNA(tRNA)分子の利用可能性に依存的であると考えられる。
【0277】
細胞中の選択されたtRNAの優勢は、一般的に、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子を、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために調整することができる。コドン使用表は、例えば、「Codon Usage Database」で容易に利用可能であり、これらの表は、様々な方法で適合することができる。Nakamura,Y.,et al.,Nucl.Acids Res.、28:292(2000)を参照のこと。特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するためのコンピュータアルゴリズム、例えば、Gene Forge(Aptagen;ペンシルベニア州ジェイコブス)がまた、利用可能である。一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする配列中の一つ又は複数のコドン(例、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、又はそれ以上、あるいは全てのコドン)は、特定のアミノ酸について最も頻繁に使用されるコドンに対応する。
【0278】
一部の実施形態では、ベクターは、一つ又は複数の核局在化配列(NLS)を含むCRISPR酵素をコードする。1を上回るNLSが存在する場合、各々は、他のNLSとは独立して選択されてもよく、単一のNLSは、1を上回るコピー中で、及び/又は一つ又は複数のコピー中に存在する一つ又は複数の他のNLSとの組み合わせで存在してもよい。一部の実施形態では、NLSの最も近いアミノ酸が、N又はC末端からのポリペプチド鎖に沿った約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50、又はそれ以上のアミノ酸である場合、NLSはN又はC末端の近くと考えられる。
【0279】
一般的に、一つ又は複数のNLSは、真核細胞の核中で検出可能な量でCRISPR酵素の蓄積を駆動するのに十分な強度である。一般的に、核局在化活性の強度は、CRISPR酵素中のNLSの数、使用される特定のNLS、又はこれらの因子の組み合わせから由来し得る。
【0280】
核中での蓄積の検出は、任意の適切な技術により実施され得る。例えば、検出可能なマーカーは、CRISPR酵素に融合してもよく、細胞内の位置が、例えば、核の位置を検出するための手段(例、核について特異的な染色、例えばDAPIなど)との組み合わせなどで可視化され得る。細胞核はまた、細胞から単離されてもよく、その内容物は次に、タンパク質を検出するための任意の適切な過程、例えば免疫組織化学、ウェスタンブロット、又は酵素活性アッセイなどにより分析されてもよい。核中での蓄積はまた、間接的に、例えばCRISPR酵素又は複合体に曝露されていない、あるいは一つ又は複数のNLSを欠くCRISPR酵素に曝露されている対照と比較して、CRISPR複合体形成の効果(例、標的配列でのDNA切断又は変異についてのアッセイ、あるいはCRISPR複合体形成及び/又はCRISPR酵素活性により影響される、改変された遺伝子発現活性についてのアッセイ)などにより決定されてもよい。
【0281】
一部の実施形態では、CRISPR系のエレメントの一つ又は複数が、誘導性プロモーターの制御下にあり、それは、誘導性Cas、例えばCas9などを含むことができる。
【0282】
Cong,Science,15:339(6121):819-823(2013)では、哺乳動物の染色体の標的切断を達成できる、Cas9、tracrRNA、プレcrRNA(又はCas9及びsgRNA)の異種発現が報告された。従って、本明細書中で開示される方法において利用されるCRISPR系、及び、このように、カーゴ核酸は、CRISPR/Cas系キメラRNA(chiRNA)ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された第一の調節エレメントを含み得る、CRISPR系の一つ又は複数のベクターコードエレメントを含むことができるベクター系であり、ここで、ポリヌクレオチド配列が、(a)真核細胞において標的配列にハイブリダイズすることが可能なガイド配列、(b)tracrメイト配列、ならびに(c)tracr配列;及びCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に動作可能に連結された第二の調節エレメント、を含み、場合により、少なくとも一つ又は複数の核局在化配列を含むことができる。エレメント(a)、(b)、及び(c)を、5’から3方向に配置することができ、ここで、成分I及びIIは、系の同じ又は異なるベクター上に位置し、ここで、転写される場合、tracrメイト配列がtracr配列にハイブリダイズし、ガイド配列が、標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を方向付け、ここで、CRISPR複合体は、(1)標的配列にハイブリダイズされるガイド配列、及び(2)tracr配列にハイブリダイズされるtracrメイト配列と複合体化されたCRISPR酵素、を含むことができ、ここで、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、さらに、異種機能的ドメインをコードする。一部の実施形態では、ベクターの一つ又は複数はまた、適切なCas酵素、例えば、Cas9をコードする。異なる遺伝子エレメントは、同じ又は異なるプロモーターの制御下であり得る。
【0283】
詳細は、異なる操作されたCRISPR系において変えることができる一方で、全体的な方法論は類似している。CRISPR技術を使用してDNA配列(多くの利用可能なオンラインツールの一つを使用して特定される)を標的指向することに関心を持つ実行者は、標的配列を含む短いDNA断片を、ガイドRNA発現プラスミド中に挿入することができる。sgRNA発現プラスミドは、標的配列(約20ヌクレオチド)、tracrRNA配列の形態(足場)、ならびに真核細胞における適したプロセシングのための適切なプロモーター及び必要なエレメントを含む。そのようなベクターは商業的に入手可能である(例えば、Addgeneを参照のこと)。多くの系では、アニーリングして二本鎖DNAを形成して、次にsgRNA発現プラスミド中にクローニングされる、カスタムの相補的オリゴに頼る。トランスフェクトされた細胞中での同じプラスミド又は別々のプラスミドからのsgRNA及び適したCas酵素の共発現は、所望の標的部位での一本鎖又は二本鎖の切断(Cas酵素の活性に依存する)をもたらす。
【0284】
ii.ジンクフィンガーヌクレアーゼ
一部の実施形態では、標的細胞のゲノム中で一本鎖又は二本鎖切断を誘導するエレメントは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をコードする核酸構築物又は構築物である。このように、核酸カーゴは、ZFNをコードすることができる。
【0285】
ZFNは、典型的には、切断ドメインに連結されたジンクフィンガータンパク質から由来するDNA結合ドメインを含む融合タンパク質である。最も一般的な切断ドメインは、IIS型酵素Foklである。Fok1は、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド、他方のその認識部位から13ヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号及び第5,487,994号;ならびにLi et al.Proc.,Natl.Acad.Sci.USA 89(1992):4275-4279;Li et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2764-2768(1993);Kim et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.91:883-887(1994a);Kim et al.J.Biol.Chem.269:31,978-31,982(1994b)を参照のこと。これらの酵素(又はその酵素的に機能的な断片)の一つ又は複数を、切断ドメインの供給源として使用することができる。
【0286】
DNA結合ドメインは、原理的には、関心対象の任意のゲノム位置を標的指向するように設計することができ、CysHisジンクフィンガーのタンデムアレイであることができ、その各々は、一般的に、標的DNA配列において3~4のヌクレオチドを認識する。CysHisドメインは、以下の一般的な構造を有する:Phe(時折、Tyr)-Cys-(2~4アミノ酸)-Cys-(3アミノ酸)-Phe(時折、Tyr)-(5アミノ酸)-Leu-(2アミノ酸)-His-(3アミノ酸)-His。複数のフィンガー(数は変動する:3~6のフィンガーが、公開された試験において単量体当たり使用されている)を連結することにより、ZFN対は、ゲノム配列18~36ヌクレオチド長に結合するように設計することができる。
【0287】
操作方法は、限定されないが、合理的な設計及び様々な種類の経験的選択方法を含む。合理的な設計は、例えば、三つ組(又は四つ組)ヌクレオチド配列及び個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、それにおいて、各三つ組又は四つ組ヌクレオチド配列は、特定の三つ組又は四つ組配列に結合するジンクフィンガーの一つ又は複数のアミノ酸配列に関連付けられる。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;第6,534,261号;第6,610,512号;第6,746,838号;第6,866,997号;第7,067,617号;米国公開出願第2002/0165356号;第2004/0197892号;第2007/0154989号;第2007/0213269号;ならびに国際特許出願公開WO98/53059及びWO2003/016496を参照のこと。
【0288】
iii.転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ
一部の実施形態では、標的細胞のゲノム中で一本鎖又は二本鎖の切断を誘導するエレメントは、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)をコードする核酸構築物又は構築物である。このように、核酸カーゴは、TALENをコードすることができる。
【0289】
TALENは、ZFNの構造と類似した全体的な構造を有するが、DNA結合ドメインが、植物病原性細菌からの転写因子であるTALエフェクタータンパク質に由来するという主な違いがある。TALENのDNA結合ドメインは、アミノ酸リピートのタンデムアレイであり、各々が約34残基の長さである。リピートは互いに非常に類似している;典型的には、それらは、二つの位置(リピート可変二残基、又はRVDと呼ばれるアミノ酸12及び13)で主に異なる。各RVDによって、四つの可能なヌクレオチドの一つへの優先的結合が特定され、各TALENリピートが、単一塩基対に結合するが、NN RVDは、グアニンに加えてアデニンに結合することを意味する。TALエフェクターDNA結合は、ジンクフィンガータンパク質のそれよりも機械的にそれほど十分には理解されていないが、それらの、一見より単純なコードが、操作されたヌクレアーゼ設計のために非常に有益であることが証明され得る。TALENはまた、二量体として開裂し、比較的長い標的配列(これまで報告される最も短いものは、単量体当たり13のヌクレオチドを結合する)を有し、結合部位間のスペーサーの長さについてZFNほどストリンジェントではない要件を有するように見える。単量体及び二量体TALENは、10超、14超、20超、又は24超のリピートを含むことができる。
【0290】
特定の核酸に結合するようにTALを操作する方法が、Cermak,et al,Nucl.Acids Res.1-11(2011)、米国公開出願第2011/0145940号において記載されており、それによって、TALエフェクター及びそれらを使用してDNAを改変する方法が開示されている。Miller et al.Nature Biotechnol 29:143(2011)は、TAL切断バリアントを、Foklヌクレアーゼの触媒ドメインに連結することにより、部位特異的ヌクレアーゼ構造のためのTALENが作製されることが報告された。結果として得られたTALENは、不死化ヒト細胞において遺伝子改変を誘導することが示された。TALE結合ドメインについての一般的な設計原理が、例えば、WO2011/072246において見出すことができる。
【0291】
b.ドナーポリヌクレオチド
本明細書中に記載されるゲノム編集系のヌクレアーゼ活性は、標的DNAを切断して、標的DNA中の一本鎖又は二本鎖の切断を起こす。二本鎖切断は、二つの方法のいずれかにおいて細胞により修復されることができる:非相同末端結合、及び相同性指向性修復。非相同末端結合(NHEJ)では、二本鎖切断は、切断端の互いの直接的ライゲーションにより修復される。そのようなものとして、新たな核酸材料は部位中に挿入されないが、一部の核酸材料は失われ、欠失がもたらされ得る。相同性指向性修復(HDR)では、切断された標的DNA配列に対する相同性を有するドナーポリヌクレオチドを、切断された標的DNA配列の修復のための鋳型として使用し、ドナーポリヌクレオチドから標的DNAへの遺伝情報の伝達をもたらす。そのようなものとして、新たな核酸材料を部位中に挿入/コピーすることができる。
【0292】
従って、一部の実施形態では、核酸カーゴは、ドナーポリヌクレオチドである、又はそれを含む。NHEJ及び/又は相同性指向性修復に起因する標的DNAの改変を使用して、遺伝子修正、遺伝子置換、遺伝子タグ付け、導入遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、遺伝子破壊、遺伝子変異などを誘導することができる。
【0293】
したがって、ゲノム編集組成物によるDNAの切断を使用して、標的DNA配列を切断し、外因的に提供されるドナーポリヌクレオチドの非存在において細胞が配列を修復させることを可能にすることにより、標的DNA配列から核酸物質を欠失させることができる。あるいは、ゲノム編集組成物が、標的DNA配列との相同性を有する、少なくともセグメントを含むドナーポリヌクレオチド配列を含む場合、本方法を使用して、標的DNA配列に核酸物質を加える、即ち、挿入又は置換する(例、タンパク質、siRNA、miRNAなどをコードする核酸を「ノックイン」する)、タグ(例、6xHis、蛍光タンパク質(例、緑色蛍光タンパク質;黄色蛍光タンパク質など)、ヘマグルチニン(HA)、FLAGなど)を加える、遺伝子に調節配列(例、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、内部リボソームエントリー配列(IRES)、2Aペプチド、開始コドン、停止コドン、スプライスシグナル、局在化シグナルなど)を加える、核酸配列を改変する(例、変異を導入する)、及び同様のことができる。そのようなものとして、組成物は、部位特異的、即ち、「標的指向された」方法、例えば、遺伝子治療において使用される遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、遺伝子編集、遺伝子タグ付けなどにおいて、DNAを修飾するために使用することができる。
【0294】
ポリヌクレオチド配列を標的DNA配列中に挿入することが望ましい適用では、挿入されるドナー配列を含むポリヌクレオチドがまた、細胞に提供される。「ドナー配列」又は「ドナーポリヌクレオチド」又は「ドナーオリゴヌクレオチド」により、切断部位に挿入されるべき核酸配列を意味する。ドナーポリヌクレオチドは、典型的には、切断部位でゲノム配列と十分な相同性、例えば、切断部位に隣接するヌクレオチド配列と70%、80%、85%、90%、95%、又は100%相同性を、例えば、切断部位の約50又はそれ以下の塩基内に、例えば、約30塩基内に、約15塩基内に、約10塩基内に、約5塩基内に、あるいは切断部位と直ぐ隣接して含み、それと、それが相同性を持つゲノム配列との間での相同性指向修復をサポートする。ドナー配列は、典型的には、それが置換するゲノム配列と同一ではない。むしろ、ドナー配列は、十分な相同性が、相同性指向性修復を支持するために存在している限り、ゲノム配列に関して少なくとも一つ又は複数の単一塩基の変化、挿入、欠失、逆転、又は再構成を含み得る。一部の実施形態では、ドナー配列は、相同性の二つの領域により隣接された非相同配列を含み、標的DNA領域と二つの隣接配列との間での相同性指向性修復は、標的領域での非相同配列の挿入をもたらす。
【0295】
2.免疫調節
a.CAR T細胞
開示される組成物及び方法は、免疫受容体、特にキメラ免疫受容体(CIR)、例えばキメラ抗原受容体(CAR)などを発現するリンパ球を調製する状況において特に有用である。人工免疫受容体(本明細書中では、キメラT細胞受容体、キメラ免疫受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、及びキメラ免疫受容体(CIR)としても公知である)は、操作された受容体であり、それによって、選択された特異性が細胞上に移植される。考察されている方法に従って改変された細胞は、以下でより詳細に考察されているように、がん、感染症、炎症、及び自己免疫疾患の治療のための多様な免疫治療において利用することができる。
【0296】
特に好ましい実施形態では、キメラ抗原受容体カーゴをコードするmRNA又はDNAは、免疫細胞、例えばリンパ球などに送達される。
【0297】
カーゴは、インビボ、エクスビボ、又はインビトロで免疫細胞に送達されることができる。好ましい実施形態では、カーゴはmRNAであり、それは、低下コスト、製造の簡単さ、低下した副作用(例、サイトカインストーム、神経毒性、移植片対宿主疾患など)の一つ又は複数を可能にし得る。特定の実施形態では、免疫細胞(例、T細胞)は、CAR T細胞治療を必要とする対象から収集し、本明細書中に開示される組成物及び方法は、一つ又は複数のCAR T細胞構築物をコードするmRNAを、収集された細胞中に送達するために使用され、細胞は対象に戻される。一部の実施形態では、この過程は、細胞を最初に採取してから、対象にそれらを戻すまで、1週間又はそれ以下、例えば、1、2、3、4、5、6、又は7日かかる。特定の実施形態では、細胞を最初に採取してから、対象に戻すまでの過程は、1又は2日中、又は1日未満、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、もしくは23時間のいずれかの中で行われる。
【0298】
キメラ抗原受容体の設計及び開発のための戦略が、Dotti,et al.,Immunol Rev.2014 January;257(1):.doi:10.1111/imr.12131(35 pages)、それは、参照によりその全体において本明細書中に具体的に組み入れられ、ならびにDotti,Molecular Therapy,22(5):899-890(2014)、Karlsson,et al.,Cancer Gene Therapy,20:386-93(2013)、Charo,et al.,Cancer Res.,65(5):2001-8(2005)、Jensen,et al.,Immunol Rev.,257(1):127-144(2014)、Eaton,et al.,Gene Therapy,9:527-35(2002)、Barrett,et al.,Annu Rev Med.,65:333-347(2014)、Cartellieri,et al.,Journal of Biomedicine and Biotechnology,Volume 2010,Article ID 956304,13 pages doi:10.1155/2010/956304;ならびに米国公開出願第2015/0017120号、第2015/0283178号、第2015/0290244号、第2014/0050709号、及び第2013/0071414号において概説されている。
【0299】
CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を、T細胞の溶解能及び自己再生と組み合わせており、従来のT細胞を上回るいくつかの利点を有する(Ramos and Dotti,Expert Opin Biol Ther.,11:855-873(2011)、Curran,et al.,J Gene Med.,14:405-415(2012)、Maher,ISRN Oncol.2012:278093(2012))。CAR-T細胞は、主要組織適合複合体(MHC)に非依存的に、がん細胞を認識して殺す。このように、標的細胞認識は、腫瘍がMHC制限T細胞認識を回避する機構の一部、例えば、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子の下方調節及び欠損した抗原プロセシングにより影響されない。
【0300】
キメラ免疫受容体は、1980年代に最初に開発され、当初はモノクローナル抗体の可変(抗原結合)領域ならびにT細胞受容体(TCR)α及びβ鎖の定常領域を含んだ(Kuwana,et al.,Biochem Biophys Res Commun.,149:960-968(1987))。1993年に、この設計は、外部ドメイン、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖の両方の抗原結合領域からの単鎖可変断片(scFv)、膜貫通ドメイン、ならびにCD3-ζから由来するシグナル伝達ドメインを有するエンドドメインを含むように改変された。後に、CARは、一般的に、共刺激シグナル伝達エンドドメインを有する、類似の構造設計に従っている。したがって、本明細書中の方法において利用されるCAR構築物は、抗原結合ドメイン又は外部ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、エンドドメイン、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0301】
一部の実施形態では、外部ドメインはscFvである。scFvの親和性によって、CAR機能が予測される(Hudecek,et al.,Clin Cancer Res.,19(12):3153-64(2013)、Chmielewski,et al.,J Immunol.,173:7647-7653(2004))。抗原結合及びその後の活性化はまた、CAR中に可動性リンカー配列を加えることにより改変することができ、それによって、二つの異なる抗原を認識できる二つの別個のscFvの発現が可能になる(Grada,et al.,Mol Ther Nucleic Acids,2:e105(2013))(タンデムCAR(TanCAR)として言及される)。タンデムCARSは、低レベルの各抗原を個々に発現するがんを殺す際にさらに効果的であり、また、単一抗原喪失バリアントに起因する腫瘍免疫逸脱のリスクが低下し得る。他の外部ドメインは、IL13Rα2(Kahlon,et al.,Cancer Res.,64:9160-9166(2004)、Brown,et al.,Clin Cancer Res.,18(8):2199-209(2012)、Kong,et al.,Clin Cancer Res.,18:5949-5960(2012))、NKG2D-リガンド及びCD70受容体、ペプチドリガンド(例、T1Eペプチドリガンド)、及び、いわゆる「ユニバーサル外部ドメイン」(例、ビオチン化モノクローナル抗体と接触した標的を認識するように設計されたアビジン外部ドメイン、又はFITC標識モノクローナル抗体と接触した標的を認識するように設計されたFITC特異的scFv(Zhang,et al.,Blood,106:1544-1551(2005)、Barber,et al.,Exp Hematol.,36:1318-1328(2008)、Shaffer,et al.,Blood,117:4304-4314(2011)、Davies,et al.,Mol Med.,18:565-576(2012)、Urbanska,et al.,Cancer Res.,72:1844-1852(2012)、Tamada,et al.,Clin Cancer Res.,18:6436-6445(2012))を含む。
【0302】
一部の実施形態では、CARはヒンジ領域を含む。外部ドメインがCAR特異性のために重要である一方で、外部ドメインを膜貫通ドメイン(ヒンジ領域)に接続する配列はまた、CARの長さ及び可動性において差を産生することにより、CAR-T細胞機能に影響することができる。ヒンジは、例えば、イムノグロブリン、例えばIgG1などから由来するCH2CH3ヒンジ、又はその断片を含むことができる。例えば、Hudecekら(Hudecek,et al.,Clin Cancer Res.,19(12):3153-64(2013))は、第3世代ROR1特異的CARを発現するT細胞のエフェクター機能に対するCH2-CH3ヒンジ [229アミノ酸(AA)]、CH3ヒンジ(119AA)、及び短いヒンジ(12AA)の影響を比較し、「短いヒンジ」CARを発現するT細胞が、優れた抗腫瘍活性を有することを見出した一方で、他の研究者は、CH2-CH3ヒンジが、第1世代CD30特異的 CARがエピトープ認識を損なうことを見出した(Hombach,et al.,Gene Ther.,7:1067-1075(2000))。
【0303】
ヒンジ(又はヒンジドメインがない場合には外部ドメイン)とシグナル伝達エンドドメインとの間には、典型的には、膜貫通ドメインがあり、最も典型的にはCD3-分子、CD4分子、CD8分子、又はCD28分子から由来する。ヒンジと同様に、膜貫通ドメインも、CAR-T細胞エフェクター機能に影響することができる。
【0304】
抗原認識時に、CARエンドドメインは活性化及び共刺激シグナルをT細胞に伝達する。T細胞活性化は、TCR複合体の細胞質CD3-ζドメインへの細胞質ドメイン中に存在する免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化に頼る(Irving,et al.,Cell,64:891-901(1991))。CARエンドドメインの大部分が、CD3-ζから由来する活性化ドメインを含むが、他は、ITAM含有ドメイン、例えばIgE-γドメインについてのFc受容体などを含むことができる(Haynes,et al.,J Immunol.,166:182-187(2001))。
【0305】
CARを発現する細胞の標的特異性は、抗体/外部ドメインにより認識される抗原により決定される。開示される組成物及び方法は、任意の抗原を標的指向する構築物、及び構築物を発現する細胞を作製するために使用することができる。免疫療法、特にがん免疫療法の状況において、多数の抗原、及びそれらを標的指向するための適切な外部ドメインが周知である。天然TCRとは異なり、scFvベースのCARの大部分が、細胞のMHCによりプロセシング及び提示される内部抗原よりむしろ、細胞表面上に発現される標的抗原を認識するが、CARは、炭水化物及び糖脂質を含む、タンパク質エピトープ以外の構造を認識することができるという、古典的なTCRを上回る優れた利点を有し(Dotti,et al.,Immunol Rev.2014 January ;257(1):.doi:10.1111/imr.12131(35 pages))、このように、潜在的な標的抗原のプールが増加する。好ましい標的は、がん細胞又はそれらの周囲の間質上だけに発現される抗原(Cheever,et al.,Clin Cancer Res.,15:5323-5337(2009))、例えば、神経膠腫細胞に特異的であるEGFR(EGFRvIII)のスプライスバリアントなどを含む(Sampson,et al.,Semin Immunol.,20(5):267-75(2008))。しかし、ヒト抗原はこの要件を満たし、標的抗原の大部分は、正常細胞(例、GD2、CAIX、HER2)上で低レベルで、及び/又は系統が制限された様式(例、CD19、CD20)で、発現される。
【0306】
好ましい標的、及びそれらを標的指向するCARは、当技術分野において公知である(例、Dotti,et al.,Immunol Rev.2014 January ;257(1):.doi:10.1111/imr.12131(35 pages))を参照のこと。例えば、血液学的悪性腫瘍についてのCAR標的は、限定されないが、CD 19(例、B細胞)(Savoldo,et al.,J Clin Invest.,121:1822-1826(2011)、Cooper,et al.,Blood,105:1622-1631(2005);Jensen,et al.,Biol Blood Marrow Transplant(2010)、Kochenderfer,et al.,Blood,119:2709-2720(2012)、Brentjens,et al.,Molecular Therapy,17:S157(2009)、Brentjens,et al.,Nat Med.,9:279-286(2003)、Brentjens,et al.,Blood,118:4817-4828(2011)、Porter,et al.,N Engl J Med.,365:725-733(2011)、Kalos,et al.,Sci Transl Med.,3:95ra73(2011)、Brentjens,et al.,Sci Transl Med.,5:177ra38(2013)、Grupp,et al.,N Engl J Med(2013));CD20(例、B細胞)(Jensen,et al.,Biol Blood Marrow Transplant(2010)、Till,et al.,Blood,112:2261-2271(2008)、Wang,et al.,Hum Gene Ther.,18:712-725(2007)、Wang,et al.,Mol Ther.,9:577-586(2004)、Jensen,et al.,Biol Blood Marrow Transplant,4:75-83(1998));CD22(例、B細胞)(Haso,et al.,Blood,121:1165-1174(2013));CD30(例、B細胞)(Di Stasi,et al.,Blood,113:6392-6402(2009)、Savoldo,et al.,Blood,110:2620-2630(2007)、Hombach,et al.,Cancer Res.,58:1116-1119(1998));CD33(例、骨髄)(Finney,et al.,J Immunol.,161:2791-2797(1998));CD70(例、B細胞/T細胞)(Shaffer,et al.,Blood,117:4304-4314(2011));CD123(例、骨髄)(Tettamanti,et al.,Br J Haematol.,161:389-401(2013));Kappa(例、B細胞)(Vera,et al.,Blood,108:3890-3897(2006));Lewis Y(例、骨髄)(Peinert,et al.,Gene Ther.,17:678-686(2010)、Ritchie,et al.,Mol Ther.(2013));NKG2D ligands(例、骨髄)(Barber,et al.,Exp Hematol.,36:1318-1328(2008)、Lehner,et al.,PLoS One.,7:e31210(2012)、Song,et al.,Hum Gene Ther.,24:295-305(2013)、Spear,et al.,J Immunol.188:6389-6398(2012));ROR1(例、B細胞)(Hudecek,et al.,Clin Cancer Res.(2013))を含む。
【0307】
固形腫瘍についてのCAR標的は、限定されないが、B7H3(例、肉腫、神経膠腫)(Cheung,et al.,Hybrid Hybridomics,22:209-218(2003));CAIX(例、腎臓)(Lamers,et al.,J Clin Oncol.,24:e20-e22.(2006))、Weijtens,et al.,Int J Cancer,77:181-187(1998));CD44 v6/v7(例、子宮頸部)(Hekele,et al.,Int J Cancer,68:232-238(1996))、Dall,et al.,Cancer Immunol Immunother,54:51-60(2005);CD171(例、神経芽細胞腫)(Park,et al.,Mol Ther.,15:825-833(2007));CEA(例、結腸)(Nolan,et al.,Clin Cancer Res.,5:3928-3941(1999));EGFRvIII(例、神経膠腫)(Bullain,et al.,J Neurooncol.(2009)、Morgan,et al.,Hum Gene Ther.,23:1043-1053(2012));EGP2(例、がん腫)(Meier,et al.,Magn Reson Med.,65:756-763(2011)、Ren-Heidenreich,et al.,Cancer Immunol Immunother.,51:417-423(2002));EGP40(例、結腸)(Daly,et al.,Cancer Gene Ther.,7:284-291(2000);EphA2(例、神経膠腫、肺)(Chow,et al.,Mol Ther.,21:629-637(2013));ErbB2(HER2)(例、乳房、肺、前立腺、神経膠腫)(Zhao,et al.,J Immunol.,183:5563-5574(2009)、Morgan,et al.,Mol Ther.,18:843-851(2010)、Pinthus,et al.,114:1774-1781(2004)、Teng,et al.,Hum Gene Ther.,15:699-708(2004)、Stancovski,et al.,J Immunol.,151:6577-6582(1993)、Ahmed,et al.,Mol Ther.,17:1779-1787(2009)、Ahmed,et al.,Clin Cancer Res.,16:474-485(2010)、Moritz,et al.,Proc Natl Acad Sci U.S.A.,91:4318-4322(1994));ErbB受容体ファミリー(例、乳房、肺、前立腺、神経膠腫)(Davies,et al.,Mol Med.,18:565-576(2012));ErbB3/4(例、乳房、卵巣)(Muniappan,et al.,Cancer Gene Ther.,7:128-134(2000)、Altenschmidt,et al.,Clin Cancer Res.,2:1001-1008(1996));HLA-A1/MAGE1(例、黒色腫)(Willemsen,et al.,Gene Ther.,8:1601-1608(2001)、Willemsen,et al.,J Immunol.,174:7853-7858(2005));HLA-A2/NY-ESO-1(例、肉腫、黒色腫)(Schuberth,et al.,Gene Ther.,20:386-395(2013));FR-α(例、卵巣)(Hwu,et al.,J Exp Med.,178:361-366(1993)、Kershaw,et al.,Nat Biotechnol.,20:1221-1227(2002)、Kershaw,et al.,Clin Cancer Res.,12:6106-6115(2006)、Hwu,et al.,Cancer Res.,55:3369-3373(1995));FAP(例、がん関連線維芽細胞)(Kakarla,et al.,Mol Ther.(2013));FAR(例、横紋筋肉腫)(Gattenlohner,et al.,Cancer Res.,66:24-28(2006));GD2(例、神経芽腫、肉腫、黒色腫)(Pule,et al.,Nat Med.,14:1264-1270(2008),Louis,et al.,Blood,118:6050-6056(2011)、Rossig,et al.,Int J Cancer.,94:228-236(2001));GD3(例、黒色腫、肺がん)(Yun,et al.,Neoplasia.,2:449-459(2000));HMW-MAA(例、黒色腫)(Burns,et al.,Cancer Res.,70:3027-3033(2010));IL11Rα(例、骨肉腫)(Huang,et al.,Cancer Res.,72:271-281(2012));IL13Rα2(例、神経膠腫)(Kahlon,et al.,Cancer Res.,64:9160-9166(2004)、Brown,et al.,Clin Cancer Res.(2012)、Kong,et al.,Clin Cancer Res.,18:5949-5960(2012)、Yaghoubi,et al.,Nat Clin Pract Oncol.,6:53-58(2009));Lewis Y(例、乳房/卵巣/膵臓)(Peinert,et al.,Gene Ther.,17:678-686(2010)、Westwood,et al.,Proc Natl Acad Sci U.S.A.,102:19051-19056(2005)、Mezzanzanica,et al.,Cancer Gene Ther.,5:401-407(1998));メソテリン(例、中皮腫、乳房、膵臓)(Lanitis,et al.,Mol Ther.,20:633-643(2012)、Moon,et al.,Clin Cancer Res.,17:4719-4730(2011));Mue1(例、卵巣、乳房、前立腺)(Wilkie,et al.,J Immunol.,180:4901-4909(2008));NCAM(例、神経芽細胞腫、結腸直腸)(Gilham,et al.,J Immunother.,25:139-151(2002));NKG2Dリガンド(例、卵巣、肉腫)(Barber,et al.,Exp Hematol.,36:1318-1328(2008)、Lehner,et al.,PLoS One,7:e31210(2012)、Song,et al.,Gene Ther.,24:295-305(2013)、Spear,et al.,J Immunol.,188:6389-6398(2012));PSCA(例、前立腺、膵臓)(Morgenroth,et al.,Prostate,67:1121-1131(2007)、Katari,et al.,HPB,13:643-650(2011));PSMA(例、前立腺)(Maher,et al.,Nat Biotechnol.,20:70-75(2002)、Gong,et al.,Neoplasia.,1:123-127(1999));TAG72(例、結腸)(Hombach,et al.,Gastroenterology,113:1163-1170(1997)、McGuinness,et al.,Hum Gene Ther.,10:165-173(1999));VEGFR-2(例、腫瘍血管系)(J Clin Invest.,120:3953-3968(2010)、Niederman,et al.,Proc Natl Acad Sci U.S.A.,99:7009-7014(2002))を含む。
【0308】
b.代謝安定性
一部の実施形態では、細胞の(例、CAR細胞の)代謝安定性は、インビボで限定するまさに増殖因子を作製する能力を備えることにより改善される。一部の実施形態では、抗アポトーシス因子、例えばBCL-XLなどをコードする核酸カーゴは、細胞に一過性に送達される。B細胞リンパ腫-エクストララージ(Bcl-XL、又はBCL2様1アイソフォーム1)は、ミトコンドリア中の膜貫通タンパク質である。それは、タンパク質のBcl-2ファミリーのメンバーであり、カスパーゼ活性化に導き得る、ミトコンドリア内容物、例えばシトクロムcなどの放出を防止することにより、固有のアポトーシス経路において生存促進タンパク質として作用する。BCL-XLをコードするアミノ酸配列及び核酸配列の両方が、当技術分野において公知であり、例えば、UniProtKB-Q07817(B2CL1_HUMAN)、アイソフォーム Bcl-X(L)(識別子:Q07817-1)(アミノ酸配列);ENA|U72398|U72398.1 ヒト Bcl-x ベータ(bcl-x)遺伝子、完全cd(ゲノム核酸配列);ENA|Z23115|Z23115.1 H.サピエンスbcl-XL mRNA(mRNA/cDNA核酸配列)を含む。
【0309】
一部の実施形態では、核酸カーゴは、増殖誘導因子、例えばIL-2などをコードする。IL-2をコードするアミノ酸及び核酸配列の両方が、当技術分野において公知であり、例えば、UniProtKB - P60568(IL2_HUMAN)(アミノ酸配列);ENA|X00695|X00695.1ヒトインターロイキン2(IL-2)遺伝子及び5’隣接領域(遺伝子核酸配列);ならびにENA|V00564|V00564.1インターロイキン2(IL-2)をコードするヒトmRNA(mRNA/cDNA核酸配列)を含む。
【0310】
しかし、分泌IL-2の産生はまた、リンパ腫及びTreg細胞の増殖を刺激し、メモリーT細胞の形成を損なわせる望ましくない副作用を有し得る(Zhang,et al.,NatureMedicine ,11:1238-1243(2005))。また、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)で処置された患者におけるIL-2の使用は、増加した毒性に導いた(Heemskerk,et al.,Human Gene Therapy,19:496-510(2008))。この可能性を回避するために、IL-2に加えて又はその代わりに、核酸カーゴは、キメラγc サイトカイン受容体(C-CR)、例えば、外因性サイトカイン非依存的、細胞内在的なSTAT5サイトカインシグナルを与えるIL-7Ra/CD127に繋留されたインターロイキン7(IL-7)で構成されるものなどをコードすることができる(Hunter,et al.,Molecular Immunology,56:1-11(2013))。この設計は、IL-2Rb/CD122細胞質鎖をIL-7Ra/CD127の細胞質鎖と交換して、Shc活性を増強することができるという点でモジュラーである。構築物は、ヒトCD8+ T細胞(Hunter,et al.,Molecular Immunology,56:1-11(2013))において野生型ILIL-2シグナル伝達を模倣し、従って、望ましくない副作用なしに、ILIL-2 mRNAと同様に作用するはずである。
【0311】
加えてかつあるいは、他の抗アポトーシス分子及びサイトカインを使用して、天然状態での細胞生存率を維持することができる。例示的な因子は、限定されないが、以下を含む:
骨髄細胞白血病1(MCL-1)(例、UniProtKB - Q07820(MCL1_HUMAN)(アミノ酸配列);ENA|AF147742|AF147742.1ホモ・サピエンス骨髄細胞分化タンパク質(MCL1)遺伝子、プロモーター及び完全cds(ゲノム核酸配列);ENA|AF118124|AF118124.1ホモ・サピエンス骨髄細胞白血病配列1(MCL1)mRNA、完全cds(mRNA/cDNA核酸配列))、それは抗アポトーシス因子である;
IL-7(例、UniProtKB - P13232(IL7_HUMAN)(アミノ酸配列);ENA|EF064721|EF064721.1ホモ・サピエンスインターロイキン7(IL7)遺伝子、完全cds(ゲノム核酸配列);ENA|J04156|J04156.1ヒトインターロイキン7(IL-7)mRNA、完全cds(mRNA/cDNA核酸配列)、それはT細胞の生存及び発生のために重要であり、ならびに
IL-15(例、UniProtKB-P40933(IL15_HUMAN)(アミノ酸配列);ENA|X91233|X91233.1ホモ・サピエンスIL15 遺伝子(ゲノム核酸配列);ENA|U14407|U14407.1ヒトインターロイキン 15(IL15)mRNA、完全cds(mRNA/cDNA 核酸配列))、それはT及びNK細胞の生存を促進する(Opferman,et al.,Nature,426:671-676(2003);Meazza,et al.,Journal of Biomedicine & Biotechnology,861920,doi:10.1155/2011/861920(2011);Michaud,et al.,Journal of Immunotherapy,33:382-390(2010))。これらのサイトカインmRNAは、独立して、あるいはBCL-XL、IL-2、及び/又はC-CR mRNAとの組み合わせで使用することができる。したがって、一部の実施形態では、MCL-1、IL-7、IL-15、又はそれらの組み合わせをコードするmRNAが細胞に送達される。
【0312】
c.阻害性CAR(iCAR)
一部の実施形態では、T細胞治療は、一部のがんの治療のための長期有効性及び治癒能力を実証しているCAR細胞に送達されるが、それらの使用は、ドナーリンパ球注入後の移植片対宿主病を想起させる非がん性組織への損傷により限定される。開示されている組成物及び方法のいずれでも、非特異的免疫抑制(例、免疫応答を抑えるための、T細胞に対して細胞分裂阻害効果又は細胞傷害効果を発揮する高用量コルチコステロイド治療)、不可逆的T細胞除去(例、いわゆる自殺遺伝子操作戦略)、又はそれらの組み合わせとの組み合わせで使用することができる。しかし、一部の好ましい実施形態では、オフターゲット効果は、阻害性キメラ抗原受容体(iCAR)をコードする構築物をCAR細胞中に導入することにより低下する。腫瘍組織及びオフターゲット組織の両方について特異性を有するT細胞は、オフターゲット組織を保護するためにT細胞中に導入された抗原特異的iCARを使用することによってのみ腫瘍に制限することができる(Fedorov,et al.,Science TranslationalMedicine,5:215ra172(2013))。iCARは、活性化受容体(例、CAR)の同時会合にもかかわらず、T細胞応答性を限定するために、強力な急性阻害性シグナル伝達ドメインと組み合わせた表面抗原認識ドメインを含むことができる。好ましい実施形態では、iCARは、抗原認識時にT細胞機能を特異的に阻害する膜貫通領域を介して、免疫阻害性受容体(例、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4(CD244)、BTLA(CD272)、KIR、TIM-3、TGFベータ受容体ドミナントネガティブ類似体など)のシグナル伝達ドメインに融合された阻害性抗原について特異的な一本鎖可変断片(scFv)を含む。一度、CAR細胞が、阻害性抗原を発現しない細胞(例、がん細胞)と遭遇すると、iCAR導入T細胞は、CAR標的抗原に対してCAR誘導性応答を開始することができる。CTLA-4又はPD-1のいずれかの阻害性シグナル伝達ドメインを有するPSMAについて特異的なscFvを使用したDNA iCARについては、(Fedorov,et al.,Science TranslationalMedicine,5:215ra172(2013))において記載されている。
【0313】
設計上の考慮事項は、PD-1がCTLA-4よりも強い阻害剤であること、CTLA-4が、Y165G変異体が使用されない限り細胞質局在化を示すこと、及びiCAR発現レベルが重要であることという観察を含む。
【0314】
iCARは、細胞型に特異的な表面分子に対して設計することができる。一部の実施形態では、iCARは、特定の組織又は細胞型に対するT細胞、NK細胞、又は他の免疫細胞の反応性を防止するよう設計される。
【0315】
d.内因性阻害性シグナル伝達の低下
一部の実施形態では、細胞を、細胞を再プログラムして一つ又は複数の抗原の発現を防止する核酸カーゴと接触させる。例えば、一部の実施形態では、核酸カーゴは、mRNAコード抗原、例えばCTLA-4又はPD-1などの発現を防止する干渉RNAである、又はそれをコードする。この方法は、ユニバーサルドナー細胞を調製するために使用することができる。同種抗原の発現を改変するために使用されるRNAは、単独で、又は標的細胞の脱分化をもたらすRNAとの組み合わせで使用してもよい。
【0316】
上のセクションによって、例えば、人工iCAR中のCTLA-4又はPD-1からの阻害性シグナル伝達ドメインを利用して、オンターゲット/オフ腫瘍細胞傷害性を制限した組成物及び方法が提供されるが、追加的又は代替的な全体的なCAR細胞オン腫瘍エフェクター効率を、CAR細胞中での内因性阻害性シグナル伝達の発現を低下させることにより増加させることができ、CAR細胞が、敵対的な腫瘍微小環境の阻害性シグナルに対して耐性となる。
【0317】
CTLA-4及びPD-1は、活性化及び機能における異なる段階でT細胞を阻害する。CTLA-4は、自己抗原に対するT細胞応答を調節する。なぜなら、ノックアウトマウスが、特異的な抗原曝露なしに、高度に活性な組織浸潤性T細胞に起因する器官損傷を自発的に生ずるためである(Tivol,et al.,Immunity,3:541-547(1995);Waterhouse,et al.,Science,270:985-988(1995))。興味深いことに、Treg細胞におけるCTLA-4の条件付きノックアウトは、それがTreg内で正常に機能することを示すグローバルノックアウトを再現する(Wing,et al.,Science,322:271-275(2008))。対照的に、PD-L1ノックアウトマウスは自己免疫傾向にあるが、正常な器官の大規模な炎症細胞浸潤を自発的には発生せず、その主要な生理学的機能が、進行中の組織炎症のネガティブフィードバック制御を誘導性様式で媒介することであることを示している(Dong,et al.,Immunity,20:327-336(2004))。実際に、「適応耐性(adaptive resistance)」仮説に従って、大半の腫瘍が、IFNγ;CART細胞を含むエフェクターT細胞により放出された重要なサイトカインに応答してPD-L1を上方制御する(Greenwald,et al.,Annu Rev Immunol,23:515-548(2005);Carreno,et al.,Annu Rev Immunol,20:29-53(2002);Chen,et al.,The Journal of Clinical Investigation,125:3384-3391(2015);Keir,et al.,Annu Rev Immunol,26:677-704(2008);Pentcheva-Hoang,et al.,Immunological Reviews,229:67-87(2009))。PD-L1は次に、阻害性シグナルをT細胞に送達して、それらの増殖、ならびにサイトカイン及びパーフォリン産生を減少させる(Butte,et al.,Immunity,27:111-122(2007);Chen,et al.,Immunology,4:336-347(2004);Park,et al.,Blood,116:1291-1298(2010);Wherry,et al.,Nat Immunol,12:492-499(2011);Zou,et al.,Immunology,8:467-477(2008))。また、がん細胞上のB7-H1を通じたT細胞からの逆シグナル伝達は、Fas-Lシグナル伝達に対抗する抗アポトーシス効果を誘導する(Azuma,et al.,Blood,111:3635-3643(2008))。Azuma,et al.,Blood,111:3635-3643(2008)。
【0318】
がん細胞によるB7-H1の上方制御ならびにその発現とがん進行及び不良な臨床転帰との関連の観点から(Flies,et al.,Journal of Immunotherapy,30:251-260(2007);Nishimura,et al.,Immunity,11:141-151(1999);Wang,et al.,Curr Top Microbiol Immunol,344:245-267(2011))、PD-1及びCTLA-4経路に拮抗する抗体は、固形腫瘍、特に黒色腫において劇的な有効性を示しており、この二つの組み合わせは、さらに多くの活性を示す。抗CTLA-4抗体であるイピリムマブによって、腫瘍中への増加したT細胞浸潤及び増加した腫瘍内CD8+:Treg比率を伴って主にTreg細胞の阻害を通じて、転移性黒色腫における全生存が改善される(Hamid,et al.,J Transl Med,9:204(2011);Ribas,et al.,Clinical Cancer Research:An Official Journal of the American Association for Cancer Research,15:6267-6276(2009);Twyman-Saint,et al.,Nature,520:373-377(2015))。抗PD-1抗体であるニボルマブは、転移性黒色腫において30~40%の全奏功率を示し(Robert,et al.,The New England Journal of Medicine,372:320-330(2015);Topalian,et al.,J Clin Oncol,32:1020-1030(2014))、転移性腎がん、非小細胞肺がん、及び再発性ホジキンリンパ腫を含む、他の固形腫瘍についての初期相の臨床治験において類似の知見を有する(Ansell,et al.,The New England Journal of Medicine,372:311-319(2015);Brahmer,et al.,J Clin Oncol,28:3167-3175(2010);Topalian,et al.,The New England Journal of Medicine,366:2443-2454(2012))。マウス黒色腫モデルにおける抗CTLA-4抗体に対する耐性は、PD-L181の上方調節に起因するため、イピリムマブ及びニボルマブの両方の組み合せによって、マウスモデル及びヒト患者の両方においてさらなる有効性が実証される(Larkin,et al.,The New England Journal of Medicine,373:23-34(2015);Spranger,et al.,J Immunother Cancer,2,3,doi:10.1186/2051-1426-2-3(2014);Yu,et al.,Clinical Cancer Research:An Official Journal of the American Association for Cancer Research,16:6019-6028(2010))。チェックポイント阻害経路の重要性を考えると、PD-1/CTLA-4阻害はブレーキをリリースする一方で、キメラ抗原受容体は、ガスペダルを押すと考えられる。重要なことに、一過性送達は、これらの細胞が将来の自己免疫性疾患に導かないように、ブレーキを一過性にリリースするためだけに利用することができる。
【0319】
i.CRISPRi
阻害性シグナル、例えばPD-1及びCTLA-4などの永続的なゲノム改変及び不活性化を回避するために、dCAS9 CRISPRi系(Larson,et al.,Nat Protoc,8:2180-2196(2013))を利用することができる。阻害性シグナル伝達タンパク質(例、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4(CD244)、BTLA(CD272)、KIR、TIM-3、TGFベータ受容体ドミナントネガティブ類似体など)に対する酵素的に不活性なdCAS9-KRAB抑制ドメイン、融合タンパク質、及びsgRNAをコードする核酸を、CAR細胞中に共送達することができる。一つ又は複数のsgRNAを利用することができる。sgRNAは、近位プロモーター領域及びコード領域(非鋳型鎖)を標的指向するように設計することができる。代替的アプローチでは、電気穿孔して発現するためのより小さなRNAである単一成分Cpf1 CRISPR系を利用する(Zetsche,et al.,Cell,doi:10.1016/j.cell.2015.09.038(2015))。前述のRNA成分のいずれも、DNA発現構築物、例えばベクター、例えば、プラスミドなどによりコードされることができる。このように、RNA、DNA、又はそれらの組み合わせのいずれかが、核酸カーゴとしての役割を果たすことができる。
【0320】
イピリムマブを用いたCTLA-4の広範な阻害によって、自己免疫性後遺症がもたらされるが、これらの副作用は、CAR細胞の喪失及びmRNA送達の一過性の性質を制限することにより減少されると考えられる。阻害性機能は時間内に回復する。
【0321】
ii.阻害性RNA
細胞に送達されることができる核酸カーゴは、阻害性シグナル伝達分子mRNAの発現もしくは翻訳を標的指向し、低下もしくは阻害するように;又は阻害性シグナル伝達分子タンパク質の発現を低下もしくは阻害する、その活性を低下させる、又はその分解を増加させるように設計される機能的核酸もしくはポリペプチドである、又はそれをコードすることができる。適切な技術は、限定されないが、アンチセンス分子、siRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、RNAiなどを含む。一部の実施形態では、mRNAは、阻害性シグナル伝達を低下させるアンタゴニストポリペプチドをコードする。
【0322】
一部の実施形態では、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4(CD244)、BTLA(CD272)、KIR、TIM-3、TGFベータ受容体ドミナントネガティブ類似体などの発現を低下又はサイレンシングするのに適切な機能的RNAである、又はそれをコードするカーゴを、単独で又は組み合わせにおいて、細胞に送達することができる。
【0323】
一部の実施形態では、カーゴは、免疫阻害性経路において生物学的利用能を低下させる、あるいはCTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4(CD244)、BTLA(CD272)、KIR、TIM-3、TGFベータ受容体ドミナントネガティブ類似体、又は別のタンパク質のアンタゴニスト又は他のネガティブ調節因子もしくは阻害剤としての役割を果たすポリペプチドをコードするRNA又はDNAである。タンパク質は、パラクリン、エンドクリン、又はオートクリンであり得る。それは、細胞内で細胞を調節することができる。それが分泌されて、発現細胞及び/又は他の(例、隣接する)細胞を調節することができる。それは、発現細胞及び/又は他の細胞を調節する膜貫通タンパク質であり得る。タンパク質は、融合タンパク質、例えば、Ig融合タンパク質であり得る。
【0324】
e.アポトーシス促進因子
アポトーシス経路を活性化及び再活性化するための組成物及び方法がまた、提供される。一部の実施形態では、核酸は、内因性アポトーシス経路を活性化、再活性化、又はそうでなければ増強もしくは増加させる因子又は薬剤である、又はそれをコードする。好ましくは、因子は、がん(例、腫瘍)細胞において内因性アポトーシス経路を活性化、再活性化、又はそうでなければ増強し、より好ましくはがん細胞に特異的である、又はそれを標的指向する。
【0325】
一部の実施形態では、細胞は、抗アポトーシス因子又は増殖促進因子、例えば上で考察されている、又はそうでなければ当技術分野において公知のものなどの送達後、未処理細胞よりも誘導されたアポトーシスに対してより耐性である又はそれほど感受性ではない。アポトーシス促進因子は、例えば、処理されたT細胞と比べて、未処理細胞においてアポトーシスを誘導又は増加させることができ、好ましくは、がん細胞について選択的である。このレジメンによって、がん細胞に対する、一つの細胞及び一つの分子という二面攻撃がもたらされる。
【0326】
内因性アポトーシス経路は、BCL-2ファミリーメンバーを標的指向することにより、活性化、再活性化、又は別の方法で増強することができる。BCL-2ファミリーメンバーは、機能ドメイン及びBcl-2ホモロジー(BH)ドメインに基づいて、三つのサブグループ中に分類される:マルチドメイン抗アポトーシスタンパク質(例、BCL-2又はBCL-XL)、マルチドメインアポトーシス促進性タンパク質(例、BAX及びBAK)、及びBH3-onlyアポトーシス促進性タンパク質(例、BIM)。BH3-onlyサブグループのメンバー、例えばBIMなどは、細胞全体に位置する死のセンチネルとして機能し、細胞傷害の多様な生理学的及び病理学的シグナルを、ミトコンドリアに位置するコアアポトーシス機構に伝達するように用意される(Danial,et al.,Cell,116:205-219(2004))。
【0327】
一部の実施形態では、アポトーシス促進因子は、アポトーシス促進BH3-ミメティックである。様々なアポトーシス促進性BH3-ミメティックは、BIMの天然アポトーシス促進活性をシミュレートすることができ、アポトーシス経路の複数の点を操作する能力を与えることができる。例えば、BIM SAHB(Stabilized Alpha Helix of BCL-2 domains)、ABT-737、及びABT-199は、アポトーシス促進性BH3-onlyヘリカルドメインと、抗アポトーシスタンパク質のBH1、BH2、及びBH3ドメインの合流により形成される疎水性溝との間での相互作用の構造試験により設計されたアポトーシス促進性BH3ミメティクスである(Oltersdorf,et al.,Nature,435:677-681(2005))。
【0328】
D.標的細胞
一部の実施形態では、一つ又は複数の特定の細胞型又は組織は、開示される複合体の標的である。標的細胞は、インビトロ、エクスビボ、又は対象(即ち、インビボ)中であるができる。本明細書中で考察する適用は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで行うことができる。エクスビボ適用については、細胞を収集又は単離し、培養中で処理することができる。エクスビボ処理細胞は、その必要のある対象に治療有効量で投与することができる。インビボ適用のために、カーゴは、例えば、組成物の循環、局所送達などに基づいて、受動的に標的細胞に送達されることができ、又は、例えば、追加の細胞、組織、器官特異的な標的指向部分を用いて、能動的に標的指向され得る。このように、一部の実施形態では、カーゴは、標的細胞に送達されて他の細胞を排除する。一部の実施形態では、カーゴは、標的細胞及び非標的細胞に送達される。
【0329】
標的細胞は、所望の処置及び治療、ならびに核酸カーゴの意図される効果に基づいて、実行者により選択されることができる。例えば、核酸カーゴが、細胞死を誘導することが意図される場合、標的細胞はがん細胞であり得る;核酸カーゴが、ゲノム改変を誘導することが意図される場合、標的細胞は幹細胞であり得る;核酸カーゴが、キメラ抗原受容体をコードする場合、標的細胞は免疫細胞であり得る。
【0330】
3E10 scFvは、ENT2依存的な様式において細胞核中に浸透することが可能であり、ENT2欠損細胞において核取り込みの効率が大きく損なわれることが以前に示されている(Hansen et al.,J Biol Chem 282,20790-20793(2007))。ENT2(SLC29A2)は、プリン及びピリミジンヌクレオシド及び核酸塩基の輸送において関与するナトリウム非依存的トランスポーターであり、ENT1よりもニトロベンジルメルカプトプリンリボシド(NBMCR)に感受性ではない。
【0331】
一部の実施形態では、標的細胞は、それらの血漿メンバー、それらの核膜、又は両方の上でENT2を発現する。ENT2の発現は比較的偏在性であるが、組織及び細胞型の間で存在量において変動する。脳、心臓、胎盤、胸腺、膵臓、前立腺、及び腎臓において確認されている(Griffiths,et al.,Biochem J,1997.328(Pt 3):p.739-43、Crawford,et al.,J Biol Chem,1998.273(9):p.5288-93)。他のトランスポーターと比べて、ENT2は、骨格筋において最も高いmRNA発現の一つを有する(Baldwin,et al.,Pflugers Arch,2004.447(5):p.735-43、Govindarajan,et al.,Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol,2007.293(5):p.R1809-22)。このように、一部の実施形態では、標的細胞は、脳、心臓、胎盤、胸腺、膵臓、前立腺、腎臓、又は骨格筋である。骨格筋によるENT2の高発現に起因して、開示されている組成物及び方法は、これらの細胞に核酸カーゴを送達するのに特に有効であり得る、ならびに/あるいは、より高いレベルのカーゴが、より低いレベルのENT2を発現する他の細胞と比較して、これらの細胞に送達され得る。
【0332】
追加的な、非限定的な、例示的な標的細胞を以下で考察する。
【0333】
1.前駆細胞及び幹細胞
細胞は、造血前駆細胞又は幹細胞であり得る。一部の実施形態では、特に遺伝子編集及び遺伝子治療に関するものは、標的細胞はCD34造血幹細胞である。造血幹細胞(HSC)、例えばCD34+細胞などは、赤血球を含む全ての血液細胞型を生じさせる多能性幹細胞である。
【0334】
幹細胞は、当業者により単離され、濃縮されることができる。CD34及び他の細胞のそのような単離及び濃縮のための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,965,204号;第4,714,680号;第5,061,620号;第5,643,741号;第5,677,136号;第5,716,827号;第5,750,397号及び第5,759,793号において開示されている。造血前駆細胞及び幹細胞が濃縮された組成物との関連において本明細書中で使用される場合、「濃縮された」は、細胞の天然供給源において見出されるものよりも高い、望ましいエレメント(例、造血前駆細胞及び幹細胞)の割合を示す。細胞の組成物は、細胞の天然供給源にわたり、少なくとも1桁の大きさ、好ましくは2又は3桁、より好ましくは10、100、200、又は1000桁の大きさで濃縮されてもよい。
【0335】
ヒトでは、CD34細胞は、ドナーに、造血成長因子、例えば顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、幹細胞因子(SCF)などを、骨髄腔から末梢循環中への造血幹細胞の移動を起こすのに十分な量で注射することによりもたらされるサイトカイン動員後に、脊髄血液、骨髄から、又は血液から回収することができる。最初は、骨髄細胞は、任意の適切な骨髄の供給源、例えば、脛骨、大腿骨、脊椎、及び他の骨空洞などから得られ得る。骨髄の単離のために、適した溶液を使用して骨を洗い流すことができ、その溶液は、一般的に約5~25mMの低濃度の許容可能な緩衝液との併用において、胎児仔ウシ血清又は他の自然因子で便利に補充された平衡塩類溶液であり得る。便利な緩衝液は、Hepes、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液などを含む。
【0336】
細胞は、ポジティブ及びネガティブ選択技術により選択されることができる。細胞は、当業者に公知の方法を使用して、造血前駆細胞又は幹細胞表面抗原、例えば、CD34に結合する、商業的に入手可能な抗体を使用して選択することができる。例えば、抗体を磁気ビーズにコンジュゲートさせてもよく、及び免疫原性手順を、所望の細胞型を回収するために利用してもよい。他の技術は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)の使用を含む。CD34抗原は、非白血病個体の造血系内の前駆細胞上に存在し、モノクローナル抗体My-10により認識される細胞の集団上に発現され(即ち、CD34抗原を発現する)、骨髄移植のための幹細胞を単離するために使用することができる。HB-8483としてAmerican Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)に寄託されたMy-10は、抗HPCA1として商業的に入手可能である。加えて、ヒト骨髄からの分化細胞及び「専用」細胞のネガティブ選択を利用して、実質的に任意の所望の細胞マーカーに対して選択することができる。例えば、前駆細胞又は幹細胞、最も好ましくはCD34細胞は、CD3-、CD7-CD8、CD10-、CD14、CD15-、CD19、CD20、CD33、クラスIIHLA及びThy-1のいずれかであるとして特徴付けることができる。
【0337】
一度、前駆細胞又は幹細胞が単離されると、それらは任意の適切な培地中での成長により増殖させてもよい。例えば、前駆細胞又は幹細胞は、間質細胞からの条件培地、例えば因子の分泌に関連付けられる骨髄又は肝臓から得ることができるものなどの中で、あるいは幹細胞の増殖を支持する細胞表面因子を含む培地中で成長させることができる。間質細胞は、望ましくない細胞の除去のために、適したモノクローナル抗体を用いて造血細胞から遊離させてもよい。
【0338】
単離細胞を、抗体及び核酸カーゴ複合体とエクスビボで接触させる。カーゴが送達された細胞は、改変細胞として言及することができる。複合体の溶液は、単に培養中の細胞に加えてもよい。S期中に細胞を同期化することが望ましいであろう。培養細胞を、例えば、ダブルチミジンブロックにより同期化するための方法は、当技術分野において公知である(Zielke,et al.,Methods Cell Biol.,8:107-121(1974))。
【0339】
改変細胞は、対象への投与の前に培養物中で維持又は増殖することができる。培養条件は、一般的に、細胞型に依存して当技術分野において公知である。特にCD34の維持のための条件は、十分に試験されており、いくつかの適切な方法が利用可能である。エクスビボ多能性造血細胞増殖に対する一般的なアプローチは、精製された前駆細胞又は幹細胞を、初期作用性サイトカイン、例えばインターロイキン-3などの存在において培養することである。また、エクスビボで造血前駆細胞を維持するための栄養培地中でのトロンボポエチン(TPO)、幹細胞因子(SCF)、及びflt3リガンド(Flt-3L;即ち、flt3 遺伝子産物のリガンド)の組み合わせの包含が、原始(即ち、比較的未分化)のヒト造血前駆細胞をインビトロで増殖させるために有用であったこと、及びそれらの細胞が、SCID-huマウスにおいて生着が可能であったことが示されている(Luens et al.,1998,Blood 91:1206-1215)。他の公知の方法では、細胞は、マウスプロラクチン様タンパク質E(mPLP-E)又はマウスプロラクチン様タンパク質F(mPIP-F;集合的にmPLP-E/IF)(米国特許第6,261,841号)を含む栄養培地中で、エクスビボで(例、分、時間、又は3、6、9、13日以上にわたり)維持することができる。他の適切な細胞培養方法及び増殖方法も使用することができることが理解されるであろう。細胞はまた、米国特許第5,945,337号において記載されるように、無血清培地中で成長させることができる。
【0340】
別の実施形態では、改変造血幹細胞は、当技術分野において周知の方法を使用した対象への投与の前に、インターロイキン及び成長因子の特定の組み合わせを使用して、エクスビボでCD4細胞培養中に分化される。細胞は、単離された造血幹細胞の元の集団と比較して、エクスビボで多数、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、さらにより好ましくは少なくとも20倍に増殖され得る。
【0341】
別の実施形態では、細胞は、脱分化した体細胞であり得る。体細胞を再プログラムして、造血前駆細胞となるように誘導することができる多能性幹細胞様細胞にすることができる。造血前駆細胞を次に、CD34細胞に関して上に記載する組成物で処理することができる。再プログラムされることができる代表的な体細胞は、限定されないが、線維芽細胞、脂肪細胞、及び筋細胞を含む。誘導された幹細胞様細胞からの造血前駆細胞は、マウスにおいて成功裏に発生されてきた(Hanna,J.et al.Science、318:1920-1923(2007))。
【0342】
誘導された幹細胞様細胞から造血前駆細胞を産生するために、体細胞を宿主から収集する。好ましい実施形態では、体細胞は、自己線維芽細胞である。細胞を培養し、Oct4,Sox2,Klf4、及びc-Myc転写因子をコードするベクターで形質導入する。形質導入細胞を培養し、限定されないが、AP、SSEA1、及びNanogを含む胚性幹細胞(ES)形態及びES細胞マーカーについてスクリーニングされる。形質導入ES細胞を培養し、誘導された幹細胞様細胞を産生するように誘導する。細胞は次に、CD41及びc-kitマーカー(初期造血前駆マーカー)ならびに骨髄及び赤血球分化についてのマーカーについてスクリーニングする。
【0343】
例えば、誘導された造血前駆細胞を含む、改変された造血幹細胞又は改変細胞が次に、対象に導入される。細胞の送達は、様々な方法を使用して影響され得るが、最も好ましくは、注入による静脈内投与、ならびに骨膜、骨髄、及び/又は皮下部位中への直接デポ注射を含む。
【0344】
改変細胞を受ける対象は、細胞の生着を増強するための骨髄条件付けのために処置してもよい。レシピエントは、細胞の投与前に放射線又は化学療法処置を使用して、生着を増強するように処置してもよい。投与時、細胞は、一般的に、生着するための期間を要求する。造血幹細胞又は前駆細胞の有意な生着を達成するには、典型的には、数週間から数ヶ月かかる。
【0345】
改変された造血幹細胞の生着の高いパーセンテージは、有意な予防的又は治療効果を達成するために必要ではないことがある。生着細胞は、生着後に経時的に増殖し、改変細胞のパーセンテージを増加させると考えられている。一部の例では、少数の又は小さなパーセンテージの改変造血幹細胞のみの生着が、予防的又は治療的効果を提供するために要求され得ると考えられる。
【0346】
好ましい実施形態では、対象に投与される細胞は、自己由来であり、例えば、対象から誘導される、又はシンジェニックである。
【0347】
2.胚
一部の実施形態では、組成物及び方法は、インビトロで胚性細胞にカーゴを送達するために使用することができる。方法は、典型的には、インビトロで胚を有効量の抗体-カーゴDNAと接触させて、胚中へのカーゴ形質導入を改善することを含む。胚は、単一細胞接合体であり得るが、受精前及び中のオス及びメスの配偶子の処理、ならびに2、4、8、又は16細胞を有し、接合体だけでなく、しかし、また、桑実胚及び胚盤胞を含む胚がまた提供される。一部の実施形態では、胚は、インビトロ受精の間に又はその後の培養0~6日目に組成物と接触させる。
【0348】
接触は、組成物を、胚を浸す液体培地に加えることであり得る。例えば、組成物は、胚培養培地中に直接分注することができ、その時すぐに、それらは胚により取り込まれる。
【0349】
3.免疫細胞
一部の実施形態では、標的細胞は、一つ又は複数の型の免疫細胞である。例えば、異なる型の細胞を、免疫調節及びCARベースの治療のために利用することができる、又はそうでなければ標的とすることができる。好ましい標的化/操作T細胞は、腫瘍及び養子療法の目標に依存して変動し得る。エフェクターT細胞が典型的には好ましい。なぜなら、それらは、高レベルのエフェクターサイトカインを分泌し、インビトロで腫瘍標的の有効なキラーであったためである(Barrett,et al.,Annu Rev Med.,65:333-347(2014))。頑強なCAR媒介性細胞傷害性を大きく損なわれた二つの相補的リンパ球集団は、CD3-CD56+NK細胞及びCD3+CD8+T細胞である。CD4+ヘルパーT細胞とのCD8+T細胞の使用によって、抑制性T-reg細胞の増加した存在及び減弱CD8+T細胞の細胞傷害に導かれる。再プログラムされたCD8+ T細胞は、それらが、リンパ節中での活性化を必要することなく腫瘍細胞に直接作用するように、事前に活性化されるため、CD4+ T細胞のサポートは必須ではない。
【0350】
加えて、ナイーブT細胞(Rosenberg,et al.Adv.Cancer Res.,25:323-388(1977))、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)(Berger,et al.J.Clin.Invest.,118:294-305(2008))、Th17細胞(Paulos,et al.,Sci.Transl.Med.,2:55-78(2010))、及びTステムメモリー細胞(Gattinoni,et al.,Nat.Med.,17:1290-1297(2012))の注入が、特定の適用において、例えば、それらの高い複製能力に起因して、全て特定の利点を有し得るというエビデンスがある。腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)はまた、それらの抗原特異性に起因する特定の利点を有し、本明細書中で開示される送達戦略において使用され得る。
【0351】
時折、CAR細胞、CAR免疫、細胞、及びCART細胞(又はCAR T細胞)として言及されるが、本明細書中に開示されるCAR及び他の送達戦略はまた、他の細胞型、特に異なる種類の免疫細胞、本明細書中で考察される(例、リンパ球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、B細胞、抗原提示細胞、マクロファージなど)及び他の場所で記載されている(例、Barrett,et al.,Annu Rev Med.,65:333-347(2014)を参照のこと)もの含む、において行うことができる。
【0352】
4.がん細胞及び腫瘍
一部の実施形態では、標的細胞はがん細胞である。そのような実施形態では、腫瘍治療を含む、がんの状況において有用であり得る治療の方法が提供される。以下の実施例は、DNAカーゴが、複数の組織により普遍的に送達されて、腫瘍に制限されないことを示し得る一方で、RNA送達は、腫瘍組織についてより選択的であり得る。このように、一部の実施形態では、がん細胞が標的細胞である場合、カーゴはRNA(例、RNA単独)で構成され得る。
【0353】
がん細胞に送達され得るカーゴは、限定されないが、一つ又は複数のアポトーシス促進因子、免疫原性因子、又は腫瘍抑制因子の発現のための構築物;遺伝子編集組成物、オンコジーンを標的とする阻害性核酸;ならびに本明細書中で及び他の場所で考察されている他の戦略を含む。一部の実施形態では、カーゴは、アポトーシス促進因子、又は細胞に対する免疫応答を増加させる免疫原性因子をコードするmRNAである。他の実施形態では、カーゴは、がん遺伝子又は他のがんを起こす転写物の発現を低下させるsiRNAである。
【0354】
成熟動物では、バランスは、通常、大半の器官及び組織において、細胞再生と細胞死との間で維持される。身体中の様々な型の成熟細胞は、所定の寿命を有する;これらの細胞は死ぬにつれて、新たな細胞が、様々な型の幹細胞の増殖及び分化により生成される。正常な状況下では、新たな細胞の産生は、任意の特定の型の細胞の数は一定のままであるようによく調節されている。時折、しかし、正常な成長制御機構にもはや応答性ではない細胞が生じる。これらの細胞は、かなりのサイズまで増殖し、腫瘍又は新生物を産生することができる細胞のクローンを生じさせる。不確定な成長が可能ではなく、健常な周囲組織に広範囲に浸潤しない腫瘍は、良性である。成長し続け、進行的に浸潤性になる腫瘍は悪性である。用語「がん」は、具体的には悪性腫瘍を指す。制御不能な成長に加えて、悪性腫瘍は転移を示す。この過程では、がん性細胞の小さなクラスターが腫瘍から外れて、血液又はリンパ管に侵入し、他の組織に運ばれ、そこでそれらは増殖し続ける。この方法では、一つの部位の原発腫瘍が、別の部位で二次腫瘍を生じさせることができる。
【0355】
本明細書中に記載される組成物及び方法は、対象における腫瘍の成長を遅延もしくは阻害し、腫瘍の成長もしくはサイズを低下させ、腫瘍の転移を阻害もしくは低下させ、及び/又は腫瘍の発生もしくは成長に関連付けられる症状を阻害もしくは低下させることにより、良性又は悪性腫瘍を有する対象を治療するために有用であり得る。
【0356】
治療され得る悪性腫瘍は、腫瘍が誘導される組織の胚性起源に従って本明細書中に分類される。がん腫は、内胚葉組織又は外胚葉組織、例えば皮膚又は内部器官及び腺の上皮層などから生じる腫瘍である。開示される組成物は、がんを治療する際に特に有効である。肉腫は、それほど頻繁に生じないが、中胚葉結合組織、例えば骨、脂肪、及び軟骨などから由来する。白血病及びリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は単一細胞として増殖するのに対し、リンパ腫は腫瘍塊として成長する傾向がある。悪性腫瘍は、がんを確立させるために、身体の多数の器官又は組織に現れ得る。
【0357】
提供されている組成物及び方法を用いて治療することができるがんの型は、限定されないが、骨、膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚、胃、及び子宮のがん、例えば血管がんなど、例えば多発性骨髄腫、腺がん、及び肉腫などを含む。一部の実施形態では、開示される組成物は、複数のがん型を同時に治療するために使用される。組成物はまた、複数の位置で転移又は腫瘍を治療するため使用することができる。
【0358】
開示される組成物及び方法は、以下の番号の付いた項を通してさらに理解することができる。
【0359】
1.以下:
(a)3E10モノクローナル抗体、その細胞浸透性断片;一価、二価、もしくは多価の単鎖可変断片(scFv);又はダイアボディ;又はそのヒト化形態もしくはバリアント、及び
(b)ポリペプチドをコードする核酸、機能的核酸、機能的核酸をコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む、核酸カーゴ
を含む、又はそれからなる、組成物。
2.(a)が、以下:
(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDR;
(ii)配列番号24~30、44、又は45のいずれかから選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、又は43のいずれかから選択される第一、第二、及び第三の重鎖CDR;
(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;
(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは
(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、第1項の組成物。
3.(a)が、ATCCアクセッション番号PTA2439のハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体3E10と、同じ又は異なるエピトープ特異性を備える、第1項又は第2項の組成物。
4.(a)が、モノクローナル抗体3E10のパラトープを有する組換え抗体である、第1~3項のいずれかの組成物。
5.以下:
(a)以下を含む結合タンパク質:
(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDR;
(ii)配列番号24~30、44、又は45から選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、又は43から選択される第一、第二、及び第三の重鎖CDR;
(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;
(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは
(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに
(b)ポリペプチドをコードする核酸、機能的核酸、機能的核酸をコードする核酸、又はそれらの組み合わせを含む、核酸カーゴ
を含む、組成物。
6.(a)が、二重特異性である、第1~5項のいずれかの組成物。
7.(a)が、関心対象の細胞型を標的指向する、第6項の組成物。
8.(a)及び(b)が、非共有結合的に連結されている、第1~7項のいずれかの組成物。
9.(a)及び(b)が、複合体の状態にある、第1~8項のいずれかの組成物。
10.(b)が、DNA、RNA、PNA、もしくは他の修飾核酸、又は核酸類似体、あるいはそれらの組み合わせを含む、第1~9項のいずれかの組成物。
11.(b)が、mRNAを含む、第1~10項のいずれかの組成物。
12.(b)が、ベクターを含む、第1~11項のいずれかの組成物。
13.前記ベクターが、発現制御配列に作動可能に連結された関心対象のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、第12項の組成物。
14.前記ベクターが、プラスミドである、第13項の組成物。
15.(b)が、Casエンドヌクレアーゼ、gRNA、又はそれらの組み合わせをコードする核酸を含む、第1~14項のいずれかの組成物。
16.(b)が、キメラ抗原受容体ポリペプチドをコードする核酸を含む、第1~15項のいずれかの組成物。
17.(b)が、機能的核酸を含む、第1~16項のいずれかの組成物。
18.(b)が、機能的核酸をコードする核酸を含む、第1~17項のいずれかの組成物。
19.機能的核酸が、アンチセンス分子、siRNA、miRNA、アプタマー、リボザイム、RNAi、又は外部ガイド配列である、第17項又は第18項の組成物。
20.(b)が、複数の単一核酸分子を含む、第1~19項のいずれかの組成物。
21.(b)が、複数の2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の異なる核酸分子を含む、第1~19項のいずれかの組成物。
22.(b)が、長さが約1~25,000核酸塩基の核酸分子を含む、又はそれからなる、第1~21項のいずれかの組成物。
23.(b)が、一本鎖核酸、二本鎖核酸、又はそれらの組み合わせを含む、又はそれからなる、第1~22項のいずれかの組成物。
24.担体DNAをさらに含む、第1~23項のいずれかの組成物。
25.前記担体DNAが、非コードDNAである、第24項の組成物。
26.(b)が、RNAで構成される、第24項又は第25項の組成物。
27.第1~26項のいずれかの組成物と、医薬的に許容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
28.(a)と(b)との複合体をカプセル化しているポリマーナノ粒子をさらに含む、第27項の組成物。
29.標的指向部分、細胞浸透性ペプチド、又はそれらの組み合わせが、前記ナノ粒子に、直接的又は間接的に会合、連結、コンジュゲート、又はそうでなければ付着されている、第28項の組成物。
30.核酸カーゴを細胞に送達する方法であって、前記細胞を、有効量の第1~29項のいずれかの組成物と接触させることを含む、方法。
31.前記接触が、エクスビボで行われる、第30項の方法。
32.前記細胞が、造血幹細胞、又はT細胞である、第31項の方法。
33.前記細胞を、その必要のある対象に投与することをさらに含む、第30~32項のいずれかの方法。
34.前記細胞が、疾患又は障害の一つ又は複数の症状を治療するために有効量で前記対象に投与される、第33項の方法。
35.前記接触が、その必要のある対象への投与後にインビボで行われる、第30項の方法。
36.前記対象が、疾患又は障害を有する、第33~35項のいずれかの方法。
37.前記疾患又は障害が、遺伝的障害、がん、又は感染症もしくは感染性疾患である、第36項の方法。
38.(b)が、前記対象における前記疾患又は障害の一つ又は複数の症状を低減させるために、有効量で前記対象の細胞中に送達される、第36項又は第37項の方法。
39.細胞との接触の前に、(a)と(b)との複合体を形成するのに有効な時間にわたり、かつ適切な温度で、(a)及び(b)をインキュベート及び/又は混合することを含む、第1~29項のいずれかの組成物を作製する方法。
40.(a)及び(b)を、約1分~約30分、約10分~約20分、又は約15分にわたり、場合により室温で又は37度で、インキュベート及び/又は混合することを含む、第1~29項のいずれかの組成物を作製する方法。
41.3E10モノクローナル抗体、その細胞浸透性断片;一価、二価、もしくは多価の単鎖可変断片(scFv);又はダイアボディ;又は配列番号92もしくは93の核酸結合ポケットを含むヒト化形態もしくはそのバリアント、又は核酸に結合する同じもしくは改善された能力を有するそのバリアントを含む、第1~40項のいずれかの組成物又は方法。
42.重鎖アミノ酸配列又はそのCDRのD31もしくはN31に対応する前記アミノ酸残基が、Rで置換されている、第1~41項のいずれかの組成物又は方法。
43.重鎖アミノ酸配列又はそのCDRのD31もしくはN31に対応する前記アミノ酸残基が、Lで置換されている、第1~42項のいずれかの組成物又は方法。
44.以下:
(i)配列番号7~11、14、又は53~58のいずれか一つのCDRとの組み合わせでの、配列番号1~6、12、13、46~48、又は50~52のいずれか一つのCDRのバリアント;
(ii)配列番号24~30、44、又は45から選択される第一、第二、及び第三の軽鎖CDRとの組み合わせでの、配列番号15~23、42、又は43から選択される前記第二及び第三の重鎖CDRとの組み合わせでの、前記第一の重鎖CDRのバリアント;
(iii)(i)又は(ii)のヒト化形態;
(iv)配列番号7又は8と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号1又は2のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖;
(v)ヒト化形態又は(iv);あるいは
(vi)配列番号9~11又は53~58と少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む軽鎖との組み合わせでの、配列番号3~6、46~48、又は50~52のいずれか一つと少なくとも85%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む重鎖
を含み、
D31又はN31に対応する前記アミノ酸残基が、R又はLで置換されている、
結合タンパク質。
45.配列番号92もしくは93の前記核酸結合ポケット、又は核酸に結合する同じもしくは改善された能力を有するそのバリアントを含む、第44項の結合タンパク質。
46.その必要のある対象においてがんを治療するための方法であって、前記対象に、
(i)パターン認識受容体(PRR)を刺激することが可能なポリヌクレオチドリガンドと、(ii)3E10抗体もしくはそのバリアント、又はその抗原結合断片と
の間に形成される複合体を含む組成物の治療有効量を投与することを含む、方法。
47.前記PRRが、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)である、第46項の方法。
48.前記ポリヌクレオチドリガンドが、5’三リン酸及び二本鎖RNAを含む、第46項又は第47項の方法。
49.前記ポリヌクレオチドリガンドが、核酸配列
5’-pppGGAGCAAAAG CAGGGUGACA AAGACAUAAU GGAUCCAAAC ACUGUGUCAA GCUUUCAGGU AGAUUGCUUU CUUUGGCAUG UCCGCAAAC- 3’(配列番号94)
を含む、第47項又は第48項の方法。
50.前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(I:C)を含む、第47項又は第48項の方法。
51.前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(dA:dT)を含む、第47項又は第48項の方法。
52.前記がんが、血管がん、多発性骨髄腫、腺がん、肉腫、骨がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、鼻咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、及び子宮がんからなる群から選択される、第46~51項のいずれかの方法。
53.その必要のある対象においてがんを治療するための組成物であって、
(i)パターン認識受容体(PRR)を刺激することが可能なポリヌクレオチドリガンドと、
(ii)3E10抗体もしくはそのバリアント、又はその抗原結合断片と
の間に形成される複合体を含む、組成物。
54.前記PRRが、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)である、第53項の組成物。
55.前記ポリヌクレオチドリガンドが、5’三リン酸及び二本鎖RNAを含む、第53項又は第54項の組成物。
56.ポリヌクレオチドリガンドが、核酸配列
5’-pppGGAGCAAAAG CAGGGUGACA AAGACAUAAU GGAUCCAAAC ACUGUGUCAA GCUUUCAGGU AGAUUGCUUU CUUUGGCAUG UCCGCAAAC- 3’(配列番号94)
を含む、第54項又は第55項の組成物。
57.前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(I:C)を含む、第54項又は第55項の組成物。
58.前記ポリヌクレオチドリガンドが、ポリ(dA:dT)を含む、第54項又は第55項の組成物。
59.前記がんが、血管がん、多発性骨髄腫、腺がん、肉腫、骨がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、食道がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、鼻咽頭がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、及び子宮がんからなる群から選択される、第53~58項のいずれかの組成物。
60.前記PRRが、Toll様受容体(TLR)である、上の項のいずれかの方法又は組成物。
61.前記TLRが、TLR3、TLR7、TLR8、又はTLR9である、第60項の方法又は組成物。
【実施例
【0360】
以下の実験に関して、標準3E10配列を、D31Nバリアント(例、実施例4)であることが注記される場合を除いて使用した。標準3E10及びD31Nバリアントの両方を全長抗体として使用した。
【0361】
実施例1:3E10は、1時間後にPNAの細胞取込みを増加させる
材料及び方法
PNA単独(1nmole)(MW=9984.39;長さ29ヌクレオチド)、又は3E10と複合体化されたPNA(0.75mg)を、室温で5分間にわたり混合した。200,000個のK562細胞を次に、無血清培地中の3E10、又はPNA単独の懸濁液に加えた。追加の無血清培地を加え、最終体積500ulにした。37℃で1時間にわたる細胞とのインキュベーション後、細胞を遠心分離し、フローサイトメトリーによる分析の前にPBSで三回洗浄した。PNAを、蛍光染料テトラメチルローダミン(TAMRA)への付着により標識した。
【0362】
結果
結果を、フローサイトメトリードットプロットにおいて例証する(図1A-1C)。取り込み%を定量化した(図1D)。
【0363】
結果は、3E10と混合した場合での、増加したPNAの取り込みを示す。
【0364】
実施例2:3E10によって、24時間後にPNAの細胞取込みが増加する
材料及び方法
PNA単独(1nmole)(MW=9984.39;長さ29ヌクレオチド)、又は3E10と複合体化されたPNA(0.75mg)を、室温で5分間にわたり混合した。200,000個のK562細胞を次に、無血清培地中の3E10、又はPNA単独の懸濁液に加えた。追加の無血清培地を、最終体積500ulに加えた。37℃で24時間にわたる細胞とのインキュベーション後、細胞を遠心分離し、フローサイトメトリーによる分析の前にPBSで三回洗浄した。
【0365】
20,000個のU2OS細胞を8ウェルチャンバースライド中に播種し、24時間にわたり接着させた。細胞を、その後、PNA単独(1nmole)、又は3E10と複合体化されたPNA(10uM)で処理した。37℃で24時間にわたるインキュベーション後、PNA又は、3E10と混合したPNAを、固定及び核染色の前にPBSで洗浄した。PNA取り込みを、その後、フローサイトメトリーにより定量化し、蛍光顕微鏡を使用して撮像した。PNAを、蛍光染料テトラメチルローダミン(TAMRA)への付着により標識した。
【0366】
結果
結果を、フローサイトメトリードットプロットにおいて例証する(図2A~2C)。取込み%を定量化した(図2D)。
【0367】
結果は、3E10と混合した場合での、増加したPNAの取り込みを示す。
【0368】
蛍光顕微鏡によって、核DNA(青色のDAPI)及びPNA(赤色のTamra)の共局在が示され、別個のピンク色相の産生により明らかであった。
【0369】
実施例3:3E10によって、24時間後にsiRNAの細胞取込みが増加する
材料及び方法
標識されたsiRNA(フルオレセインアミド、FAMへの付着を介して)(1nmole)、又は3E10と複合体化されたsiRNA(0.75mg)を、室温で5分間にわたり混合した。200,000個のK562細胞を次に、無血清培地中の3E10、又はsiRNA単独の懸濁液に加えた。追加の無血清培地を、最終体積500ulに加えた。37℃で24時間にわたる細胞とのインキュベーション後、細胞を遠心分離し、フローサイトメトリーによる分析の前にPBSで三回洗浄した。
【0370】
結果
結果を、フローサイトメトリードットプロット中に例証する(図3A~3C)。取込み%を定量化した(図3D)。
【0371】
結果は、3E10と混合した場合での、増加したsiRNAの細胞取込みを示す。
【0372】
実施例4:3E10によって、24時間後にmRNAの細胞取込みが増加する
材料及び方法
標識mRNA(シアニン5、Cy5への付着による)(2ug)単独、又は3E10と複合体化された標識mRNA(2.5、5、及び10uM)を、室温で5分間にわたり混合した。3E10+mRNA、又はmRNA単独の懸濁液を、無血清培地中で200,000個のK562細胞に加えた。追加の無血清培地を加え、最終体積500ulにした。37℃で24時間にわたる細胞とのインキュベーション後、細胞を遠心分離し、フローサイトメトリーによる分析の前にPBSで三回洗浄した。
【0373】
結果
結果を、フローサイトメトリードットプロット中に例証する(図4A~4H)。取り込み%を定量化した(図4I)。
【0374】
結果は、3E10と混合した場合での、増加したmRNAの取り込みを示す。3E10のD31NバリアントによるmRNAの送達によって、最も高いレベルのmRNA細胞取り込みがもたらされたことに注意すること。
【0375】
蛍光顕微鏡によって、緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターをコードする同じCy5標識mRNAの翻訳後に、U2OS細胞中で機能的なGFP発現が示された。
【0376】
実施例5:3E10によって、1時間後にmRNAの細胞取込みが増加する
材料及び方法
標識mRNA(Cy5)(2ug)又は3E10のD31Nバリアントと複合体化された標識mRNA(0.1~10uM)を、室温で5分間にわたり混合した。3E10+mRNA、又はmRNA単独の懸濁液を、無血清培地中で200,000個のK562細胞に加えた。追加の無血清培地を加え、最終体積500ulにした。37℃で1時間にわたる細胞とのインキュベーション後、細胞を遠心分離し、フローサイトメトリーによる分析の前にPBSで三回洗浄した。
【0377】
結果
結果を、フローサイトメトリードットプロット中に例証する(図5A~5H)。取り込み%を定量化した(図5I)。
【0378】
実施例6:3E10によって、プラスミドDNAの細胞取込みが増加する
材料及び方法
GFPレポータープラスミドDNA(250ug)を、室温で5分間にわたり3E10(10uM)と複合体化させた。3E10+プラスミドDNA、又はプラスミドDNA単独の懸濁液を、無血清培地中の200,000個のK562細胞に加えた。追加の無血清培地を加え、最終体積500ulにした。37℃での24時間にわたる細胞とのインキュベーション後、細胞を遠心分離し、PBSで三回洗浄した。初期処理後の72時間に、細胞を撮像し、GFP発現について分析した。
【0379】
結果
結果は、3E10がプラスミドDNAと組み合わされた場合に、緑色蛍光により測定されるように、GFPプラスミドが細胞により頑強に取り込まれたことを示し、GFP構築物の取り込み及び機能的発現を示している。取り込み又は緑色蛍光は、プラスミドDNA単独を使用した場合には見られなかった。(図6)。
【0380】
実施例7:3E10はインビボでmRNA送達を媒介する
材料及び方法
GFPをコードする10ugのmRNAを、0.1mgの3E10と15分間にわたり室温で混合した。3E10と複合体化されたmRNAを、測定値100mmのEMT6側腹部腫瘍を持つBALB/cマウスに全身性に注射した。処置後の20時間に、腫瘍を収集し、IVISイメージングを使用してmRNA発現(GFP)について分析した。
【0381】
結果
mRNAの3E10媒介性送達によって、自由に注射されたmRNAと比較して、腫瘍における有意により高いレベルのGFP発現がもたらされたが、それによって、腫瘍におけるいかなるGFP発現ももたらされなかった。肝臓、脾臓、心臓、及び腎臓を含む、いずれかの処置で検証された正常組織のいずれにおいても、GFPの検出可能な発現はなかった。結果は、機能的な翻訳及び発現を伴う、腫瘍中へのmRNAの頑強な送達を示す。
【0382】
実施例8:3E10は、インビボでのsiRNA送達を媒介する
材料及び方法
40ugの蛍光標識されたsiRNAを、増加用量の3E10(0.25、0.5、及び1mg)と室温で15分間にわたり混合した。3E10と複合体化されたsiRNAを、測定値100mmのEMT6側腹部腫瘍を持つBALB/cマウスに全身性に注射した。処置後の20時間に、腫瘍を収集し、IVISイメージングを使用してsiRNA送達について分析した。
【0383】
40ugの蛍光標識されたsiRNAを、1mgの3E10又は0.1mgの3E10のD31Nバリアントと室温で15分間にわたり混合した。3E10と複合体化されたsiRNAを、測定値100mmのEMT6側腹部腫瘍を持つBALB/cマウスに全身性に注射した。処置後の20時間に、腫瘍を収集し、IVISイメージングを使用してsiRNA送達について分析した。
【0384】
結果
図7A中に示されるように、増加用量の3E10によって、腫瘍におけるより高いsiRNAの蓄積がもたらされる。
【0385】
図7B中に示されるように、十倍低い用量のD31N 3E10によって、3E10と同様のレベルのsiRNA送達がもたらされた。
【0386】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に引用される刊行物及びそれらが引用される資料は、参照により具体的に組み入れられる。
【0387】
実施例9:担体DNAは、非腫瘍組織へmRNAを増強させる
材料及び方法
2ugの蛍光標識されたmRNAを、20ugの3E10-D31Nと、担体DNA(5ug)とともに又はそれなしに、室温で15分間にわたり混合した。3E10と複合体化されたmRNAを、E15.5で胎児に注射した。処置後の24~48時間に、胎児を収集し、IVISイメージングを使用してmRNA送達について分析した。
【0388】
結果
担体DNAがない場合は、mRNAと複合体化された3E10-D31Nは、24時間で胎児から迅速に無くなった。担体DNAの添加によって、しかし、48時間で、胎児の複数の組織中で検出可能なmRNAシグナルがもたらされた。
【0389】
上の実施例は、DNAカーゴ送達が、複数の組織に対してより一般的であり、腫瘍に制限されないであろう一方で、RNA送達が、腫瘍組織についてより選択的であり得ることを示し得る。
【0390】
実施例10:mRNA及び担体DNAと複合体化された3E10(D31N)によって、持続レベルのタンパク質発現がもたらされる
材料及び方法
10ugのルシフェラーゼmRNA及び10ugの単鎖担体DNA(60nt)を、100ugの3E10(WT)又は3E10(D31N)と室温で15分間にわたり混合した。3E10と複合体化されたmRNAを、各マウスの右四頭筋中に筋肉内(IM)に注射した。ルシフェラーゼ発現を6日間にわたりモニタリングした。
【0391】
結果
図8中に見られるように、mRNA及び担体DNAと複合体化された3E10(D31N)の投与によって、持続レベルのルシフェラーゼ発現がもたらされた一方で、mRNA及び担体DNAと複合体化された3E10(WT)によって、バックグラウンドを超える任意の認識できるシグナルは産生されなかった。
【0392】
実施例11:インビボでのIV注射された3E10の分布
IV注射された3E10の筋肉への分布を調べた。200μgの3E10、WT、又はD31Nをマウスに静脈内注射し、VivoTag680(Perkin Elmer)で標識した。注射の四時間後に、筋肉を収集し、IVIS(Perkin Elmer)により撮像した(図9A及び9B)。IVIS画像の定量化によって、3E10-D31Nが、3E10-WTと比較された場合に、より高い筋肉への分布を達成することが実証される(図9C)。
【0393】
組織への3E10-D31Nの用量依存的生体分布を調べた。マウスを、VivoTag680(Perkin Elmer)で標識された100μg又は200μgの3E10-D31Nで静脈内注射した。注射後の24時間に、組織を収集し、IVIS(Perkin Elmer)により撮像した。組織分布の定量化によって、肝臓を含む複数の組織中での相応の増加なしに、筋蓄積における用量依存的な二倍増加が実証された(図10)。
【0394】
腫瘍への3E10の分布。側腹部同系結腸腫瘍(CT26)を持つマウスを、VivoTag680(Perkin Elmer)で標識された200μgの3E10、WT、又はD31Nで静脈内注射した。注射後の24時間に、腫瘍を収集し、IVIS(Perkin Elmer)により撮像した(図11A~11B)。腫瘍分布の定量化によって、3E10-WTと比較して、3E10-D31Nが腫瘍中でより高い蓄積を有することが実証された(図11C)。
【0395】
3E10に非共有結合的に会合したssDNAの分布を調べた。側腹部同系結腸腫瘍(CT26)を持つマウスに、40ugの標識されたssDNA(IR680)と混合した、200ugの3E10、WT、又はD31Nを静脈内注射した。注射後の24時後に、腫瘍を収集し、IVIS(Perkin Elmer)により撮像した(図12A~12C)。組織分布の定量化によって、3E10-D31NによるssDNAの送達が、3E10-WTと比較して、より高い腫瘍蓄積をもたらすことが実証された(図12D)。
【0396】
実施例12:RIG-Iリガンドの3E10媒介性送達、及びRIG-I活性の刺激
材料及び方法
RIG-Iレポーター細胞(HEK-Lucia RIG-I、Invivogen)を、ウェル当たり50,000個細胞で播種し、RIG-Iリガンド(1ug)又は3E10-D31Nに複合体化されたリガンド(20ug)で処理した。このアッセイでは、インターフェロンの誘導がある場合に活性化されるルシフェラーゼレポーターを有する細胞株を使用する。
【0397】
結果
全ての場合において、RIG-Iリガンド単独では、IFNγ分泌は刺激されなかった。3E10-D31Nを用いたRIG-リガンドの送達によって、しかし、対照を上回るIFNγ分泌が刺激され、最も高い分泌が、低分子量及び高分子量(LMW及びHMW)の両方で、ポリ(I:C)について観察された。
【0398】
実施例13:3E10及びその操作バリアントの分子モデリング
WT重鎖scFv配列
(配列番号92)
【0399】
軽鎖scFv配列
(配列番号93)
【0400】
3E10の分子モデリング(Pymol)によって、推定核酸結合ポケット(NAB1)が明らかになった(図14A~14B)。CDR1の残基31のアスパラギン酸の、アスパラギンへの変異によって、この残基のカチオン電荷が増加し、インビボで核酸結合及び送達が増強された(3E10-D31N)。
【0401】
CDR1の残基31のアスパラギン酸の、アルギニンへの変異(3E10-D31R)によって、カチオン電荷がさらに拡大した一方で、リジンへの変異(3E10-D31K)によって、電荷方向が変化した(図14A)。
【0402】
分子モデリングから予測されるNAB1アミノ酸は、上の重鎖配列及び軽鎖配列において下線が引かれている。図14Bは、点状ドットで例証されたNAB1アミノ酸残基を有する3E10-scFvの分子モデリング(Pymol)を示す例証である。
【0403】
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し得る、又はルーチン実験のみを使用して確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0404】
実施例14:3E10-D31N+ポリ(I:C)は、黒色腫細胞死を媒介する
マウス黒色腫細胞(B16)を、緩衝液対照、ポリ(I:C)、3E10(WT又はD31N)、あるいは3E10(WT又はD31N)と複合体化されたポリ(I:C)で処理した。処理後の24時間に、細胞生存率をCellTiter-Gloにより測定した。全ての場合において、ポリ(I:C)を3E10(WT又はD31N)と複合体化することによって、対照と比べて、細胞生存率が低下した(図15A~15B)。
【0405】
実施例15:RIG-Iリガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、THP-1単球においてI型IFN応答が誘導される
急性単球性白血病から由来する単球細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、免疫療法に特徴的なI型IFN応答が効果的に誘導されるか否かを調べた。簡単には、THP-1単球をウェル中に播種し、20% FBS及び1% P/Sが添加されたDMEM中、20,000個細胞/ウェルでインキュベートした。細胞を次に、図16中に示されるように、PBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独(1ug/ウェル)、増加量の3E10-D31N(GMAB)単独、及び増加するモル比で調製された3E10-D31N/3p-hpRNA(1ug 3p-hpRNA/ウェル)複合体(3E10:3p-hpRNA)で10分間にわたり処理した。サンプル培地を、示した時点でサンプリングし、ルシフェラーゼ活性(I型IFNについてのレポーター)について測定した。IFN応答を、図16A(1日目)、図16B(2日目)、及び図16C(3日目)において示されるように、三日間連続してモニターした。
【0406】
図16中に示されるように、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独でのTHP-1単球の曝露によって、三日間にわたって、1型IFN応答における小さな(約2倍)増加がもたらされ、ネイキッドポリヌクレオチドアゴニストの不良な細胞内部移行と一致する。3E10-D31N単独でのTHP-1単球の曝露によって、用量非依存的な様式において、1型IFN応答における約5倍の増加がもたらされた。対照的に、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体でのTHP-1単球の曝露によって、2日目に15倍~25倍に、3日目に10倍~20倍に、1型IFN応答が増加した。これらの結果は、ポリヌクレオチドを細胞中に輸送する3E10-D31Nの能力と一致している。この応答が3日目まで維持されたことは、3p-hpRNA RIG-Iアゴニストが3E10-D31Nから経時的に放出されたことを示唆する。図16中に示されるように、3E10-D31Nでのより高いモル比、例えば、3:1、4:1、及び5:1で形成された3p-hpRNA複合体の使用によって、1型IFN応答のより大きな刺激がもたらされた。
【0407】
実施例16:3E10-D31NとRIG-Iアゴニストとの間に形成された複合体への曝露によって、細胞生存率の喪失により決定されるように、ヒト脳腫瘍細胞において細胞死が起こる
ヒト脳腫瘍細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、細胞死が誘導されるか否かを調べた。簡単には、ヒト脳腫瘍から由来する二つの細胞株、U87(原発性神経膠芽腫)及びU251(多形神経膠芽腫)が、ウェル中に播種され、次にPBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独(25ug/ウェル)、3E10-D31N(GMAB)単独、及び4:1 のモル比で調製された3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(3E10:3p-hpRNA)で処理した。
【0408】
細胞壊死を、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を使用した処理後に、製造説明書に従って測定した(URL promega.com/resources/protocols/technical-bulletins/0/celltiter-glo-luminescent-cell-viability-assay-protocol/で、オンラインで利用可能な技術告示を参照のこと)。図17中に示されるように、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独での処理によって、細胞生存率がわずかに低下した一方で、PBS又は3E10-D31N単独での処理によって、細胞生存率における検出可能な減少はもたらされなかった。対照的に、3E10-D31N3p-hpRNA複合体での処理によって、両方の脳腫瘍細胞株における細胞生存率の有意な減少がもたらされ(それぞれ約15%及び20%)、RIG-Iアゴニストの3E10-D31N媒介性送達を、脳腫瘍を治療するために使用することができることを示唆している。
【0409】
実施例17:3E10-D31NとRIG-Iアゴニストとの間で形成された複合体への曝露によって、細胞膜の完全性の喪失により決定されるように、ヒト脳腫瘍細胞において細胞死が起こる
ヒト脳腫瘍細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、細胞死が誘導されるか否かをさらに調べた。簡単には、ヒト脳腫瘍に由来する二つの細胞株、U87(原発性神経膠芽腫)及びU251(多形神経膠芽腫)が、ウェル中に播種され、次にPBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独(1ug/ウェル)、3E10-D31N(GMAB)単独、及び5:1 のモル比で調製された3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(3E10:3p-hpRNA)で処理した。
【0410】
細胞壊死は、CellTox(商標)Green Cytotoxicity Assay(Promega)を使用した処理後に、製造説明書に従って測定した(URL promega.com/-/media/files/resources/protocols/technical-manuals/101/celltox-green-cytotoxicity-assay-protocol.pdfでオンラインで入手可能な技術告示を参照のこと)。図18中に示されるように、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独での処理によって、U251細胞の小さなパーセンテージ(約7%)において細胞死が誘導されたが、U87細胞中では誘導されなかった。同様に、PBS又は3E10-D31N単独での処理によって、細胞死はもたらされなかった。対照的に、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体での処理によって、両方の脳腫瘍細胞株において有意な細胞死がもたらされ(それぞれ約10%及び17%)、RIG-Iアゴニストの3E10-D31N媒介性送達を、脳腫瘍を治療するために使用することができることをさらに示唆している。
【0411】
実施例18:3E10-D31NとRIG-Iアゴニストとの間に形成された複合体への曝露によって、細胞膜の完全性の喪失により決定されるように、結腸直腸腫瘍細胞において細胞死が起こる
結腸直腸がん細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、細胞死が誘導されるか否かをさらに調べた。簡単には、ヒト結腸直腸がんに由来する二つの細胞株、DLD1(Dukes C型結腸直腸腺がん)及びDLD1 BRCA KO(BRCA1の両対立遺伝子ノックアウトを有するDukes C型結腸直腸腺がん)、ならびにマウス結腸直腸がんに由来する二つの細胞株、MC38(結腸腺がん)及びCT26(結腸腺がん)が、ウェル中に播種され、次にPBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独(1ug/ウェル)、3E10-D31N(GMAB)単独、及び5:1 のモル比で調製された3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(3E10:3p-hpRNA)で処理した。
【0412】
細胞壊死は、CellTox(商標)Green Cytotoxicity Assay(Promega)を使用した処理後に、製造説明書に従って測定した(URL promega.com/-/media/files/resources/protocols/technical-manuals/101/celltox-green-cytotoxicity-assay-protocol.pdfでオンラインで入手可能な技術告示を参照のこと)。図19中に示されるように、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独での処理によって、ヒト細胞株の小さなパーセンテージ(約3%)において細胞死が誘導されたが、マウス細胞株では誘導されなかった。同様に、PBS単独での処理によって、細胞死はもたらされなかった。3E10-D31N単独での処理によって、マウス細胞株の中等度のパーセンテージ(それぞれ約7%及び10%)において細胞死が誘導されたが、ヒト細胞株では誘導されなかった。対照的に、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体での処理によって、ヒト(図19A及び19B中で約15%)及びマウス(図19C及び19D中でそれぞれ約15%及び25%)結腸直腸がん細胞株の両方において有意な細胞死がもたらされ、RIG-Iアゴニストの3E10-D31N媒介性送達を、結腸直腸がんを治療するために使用することができることを示唆する。
【0413】
実施例19:3E10-D31NとRIG-Iアゴニストとの間に形成された複合体への曝露によって、細胞膜の完全性の喪失により決定される、ヒト乳がん細胞における細胞死が起こる
ヒト乳がん細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、細胞死が誘導されるか否かをさらに調べた。簡単には、ヒト乳腺三重陰性乳がん(TNBC)腺がんに由来する細胞株(MDA-MB-231)をウェル中に播種し、次にPBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独、3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体で処理した。
【0414】
細胞壊死は、CellTox(商標)Green Cytotoxicity Assay(Promega)を使用した処理後に、製造説明書に従って測定した(URL promega.com/-/media/files/resources/protocols/technical-manuals/101/celltox-green-cytotoxicity-assay-protocol.pdfでオンラインで入手可能な技術告示を参照のこと)。図20中に示されるように、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独での処理によって、乳がん細胞の小さなパーセンテージ(約2%)において細胞死が誘導された。3E10-D31N単独での処理によって、乳がん細胞の中等度のパーセンテージ(約10%)において細胞死が誘導された。対照的に、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体での処理は、乳がん細胞において有意な細胞死をもたらし(約25%)、RIG-Iアゴニストの3E10-D31N媒介性送達を、乳がんを治療するために使用することができることを示唆する。
【0415】
実施例20:RIG-Iリガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、黒色腫細胞中での炎症促進性IL-10産生における増加及び腫瘍促進性IL-6における減少が誘導される
黒色腫細胞の3E10-D31N/3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト誘導性細胞死の機構を、そのような細胞中で産生される炎症性サイトカインにおける変化を決定することによりさらに調べた。簡単には、黒色腫のマウスモデルであるB16細胞を、PBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独、3E10-D31N(GMAB)単独、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体、又は抗CTLA-4抗体で処置したマウス中に注射した。
【0416】
炎症促進性IL-10及び腫瘍促進性IL-6のレベルを次に決定した。RIG-I誘導細胞死についての既知の作用機構を考慮すると、細胞死が、細胞へのRIG-Iアゴニストの送達の結果として生じて、アゴニストが送達後に放出された場合に、IL-10産生が増加して、IL-6産生が減少すると予想された。簡単には、処置後、腫瘍中のIL-10及びIL-6レベルをELISAにより決定した。図21中に示されるように、3p-hpRNA単独(ns=有意ではない)ではなく、3E10-D31N単独(*p<0.05)での処置によって、PBS処置と比べて、IL-10産生における小さな増加が誘導された。しかし、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体での処置によって、他の全てのコホートと比べて、有意に増加したIL-10産生がもたらされた(****p<0.00005)。これらの結果は、細胞死のRIG-I誘導性機構と一致する。IL-10産生における増加は、抗CLTA-4抗体での処理後に観察されず、抗体により媒介される細胞死についての異なる作用機構と一致する。
【0417】
同様に、図22中に例証されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体での処置によって、PBS対照での処置(*p<0.05)及び3p-hpRNA処置単独(**p<0.005)と比べて、有意に減少したIL-6産生がもたらされた一方で、3E10-D31N又は3p-hpRNA単独での処置によって、IL-6産生における有意な減少はもたらされなかった(ns=有意ではない)。これらの結果は、再び、細胞死のRIG-I誘導性機構と一致している。IL-6産生における減少がまた、抗CTLA-4抗体での処置後に観察され、細胞死の誘導と一致していた。
【0418】
実施例21:静脈内投与後のインビボでの同所性膵臓腫瘍への3E10-D31Nの局在化
膵臓腫瘍は、インビボでの治療のために標的とすることは困難である。3E10-D31Nがインビボで、膵臓がんを標的指向し、治療用ポリヌクレオチドを送達することが可能か否かを調べるために、同所性膵臓腫瘍を持つマウスに、PBS(対照)、蛍光標識された3E10-D31N(GMAB)単独、又は3p-hpRNAと複合体化された、蛍光標識された3E10-D31N(GMAB/3p-hpRNA)を静脈内投与した(コホート当たり5匹のマウス)。同所性膵臓腫瘍を、インビボでルシフェラーゼ発現により可視化した(図23A;代表的なマウス)。図23B中に示されるように、蛍光標識された3E10-D31Nは、図23A中のレポータールシフェラーゼ発現と同じ場所での高密度の蛍光により示されるように、インビボで腫瘍に局在化された3p-hpRNAと複合体化した。
【0419】
3E10-D31Nが、がん性組織中への3p-hpRNAの送達を媒介できたか否かをさらに調べるために、同所性膵臓腫瘍を各マウスから切除し、ルシフェラーゼ発現(腫瘍組織を確認する)及び蛍光(3E10を可視化する)について撮像した。図24Aは、腫瘍組織が各マウスから切除されたことを示す。図24B中に示されるように、蛍光標識された3E10-D31N単独(中央列)及び3p-hpRNAと複合体化された3E10-D31N(右列)が投与されたマウスからの切除腫瘍は、がん性組織中に内部移行した。予想通り、PBSを投与されたマウスからの腫瘍は、蛍光を示さなかった。
【0420】
静脈内投与後の3E10-D31Nの生体分布をさらに調べるために、各マウスの肝臓、肺、脾臓、腎臓、及び心臓を、屠殺後に解剖し、ルシフェラーゼ発現(がん性組織を示す)及び蛍光(3E10の可視化)について撮像した。3E10-D31N単独(左列)及び3p-hpRNAと複合体化された3E10-D31N(右列)が投与された代表的なマウスからの各器官の蛍光画像の例を、図24C中に示す(上から下:腫瘍、肝臓、肺、脾臓、腎臓、及び心臓)。マウスの各コホートにわたって各組織についての測定された平均放射効率(蛍光)を図24D中に例証する。見ることができるように、3E10はインビボで腫瘍を特異的に標的指向する。肝臓中の蛍光は、薬物代謝の結果である(*p<0.05;**p<0.005;***p<0.0005;****p<0.00005)。ルシフェラーゼ(上列)及び蛍光(下列)画像、3p-hpRNAと複合体化された3E10-D31Nを投与された各マウスからの器官を図24E中に示す。これらの結果によって、3E10-D31Nが、インビボで組織特異的様式において、治療用ポリヌクレオチドを局在化させて、膵臓がんに送達することが可能であることが実証される。
【0421】
実施例22:RIG-Iリガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、黒色腫細胞におけるRIG-I媒介性細胞死と一致するサイトカイン発現が誘導される
黒色腫細胞の3E10-D31N/3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト誘導性細胞死の機構を、そのような細胞中で産生される炎症性サイトカインにおける変化を決定することによりさらに調べた。簡単には、黒色腫のマウスモデルであるB16細胞をマウス中に注射し、黒色腫腫瘍を生成した。投与後7日目及び11日目に、マウスを、PBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独、3E10-D31N(GMAB)単独、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(3E10:3p-hpRNA)、又は抗CTLA-4抗体で処置した。12日目に、腫瘍をマウスから切除し、図25中に示されるように、フローサイトメトリーによるナチュラルキラー(NK)細胞及び腫瘍浸潤白血球(TIL)の浸潤、ならびに様々なサイトカインのレベルについて分析した。
【0422】
図25L中に示されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体及び抗CTLA-4抗体で処置されたマウスからの腫瘍における生細胞のパーセンテージは、PBSで処置された陰性対照マウスからの腫瘍における生細胞のパーセンテージよりも有意に高く、より大きな数のTILの存在を示している。この結果と一致して、CD45+細胞又はNK細胞であった生細胞の割合は、PBSで処置された陰性対照マウスからの腫瘍よりも、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体及び抗CTLA-4抗体で処置されたマウスからの腫瘍において有意に高かった。さらに、腫瘍中でのIL-12p70(図25A)、TNFα(図25B)、IL-10(図25C)、IFNγ(図25D)、IL-2(図25E)、IL-4(図25F)、IL-5(図25G)、IFNα(図25H)、IFNβ(図25I)、IL-6(図25J)、及びKC/GRO(図25K)のレベルがまた決定された。図25中にまとめて示されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体で処置されたマウスだけが、CD45+ TILによる腫瘍浸潤を促進し、IL-12,IL-10、及びTNFα産生を誘導した。
【0423】
実施例23:RIG-Iリガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、THP-1単球においてI型IFN応答が誘導される
急性単球性白血病に由来する単球細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、免疫療法に特徴的なI型IFN応答が効果的に誘導されるか否かを調べた。簡単には、THP-1単球をウェル中に播種し、20% FBS及び1% P/Sが添加されたDMEM中に20,000個細胞/ウェルでインキュベートした。細胞を次に、PBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独(1ug/ウェル)、増加量の3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA(1ug 3p-hpRNA/ウェル)複合体で10分間にわたり処理した。サンプル培地を、示した時点でサンプリングし、ルシフェラーゼ活性(I型IFNについてのレポーター)について測定した。細胞株は、IFN経路が誘導された場合に発現されるルシフェラーゼレポーターを含む。図26中に示されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体を用いた細胞の処理によって、E10-D31N単独での処理よりも有意に大きなI型IFN応答が誘発された。PBS及び3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独での処理によって、I型IFN応答はもたらされなかった。
【0424】
実施例24:3E10-D31NとRIG-Iアゴニストとの間に形成された複合体への曝露によって、結腸直腸腫瘍細胞における細胞死が起こされる
結腸直腸がん細胞中へのRIG-I刺激リガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、細胞死が誘導されるか否かをさらに調べた。簡単には、C57Bl/6マウスと同系であるMC38マウス結腸がん細胞株からの細胞を、ウェル中に播種し、次にPBS(対照)、3p-hpRNA RIG-Iアゴニスト単独、3E10-D31N(GMAB)単独、及び3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(3E10:3p-hpRNA)で処理した。細胞死を次に測定した。図27中に示されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体を用いた処理によって、有意な細胞死がもたらされた一方で、全ての他の処理によって、細胞死は誘導されなかった。
【0425】
実施例25:RIG-Iリガンドの3E10-D31N媒介性送達によって、黒色腫のマウスモデルにおける腫瘍成長が抑制される
3E10-D31N/3p-hpRNA RIG-Iアゴニストの複合体が、インビボで黒色腫腫瘍の成長を抑制するか否かを調べた。簡単には、黒色腫のマウスモデルであるB16細胞をマウス中に注射し、黒色腫腫瘍を生成した。注射後9、11、13、及び15日目に、マウスをPBS(対照;●)、3E10-D31N(GMAB;■)単独、3p-hpRNA単独(▲)、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(▼)、又は抗CTLA-4抗体(◆)で処置した。経時的に測定された場合でのマウスの各々における腫瘍体積。図28A中に示されるように、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体及び抗CTLA-4抗体を用いた処置は、PBS、3E10-D31N単独、及び3p-hpRNA単独を用いた処置(*p<0.0.05;**p<0.005)と比べて、腫瘍成長を有意に抑制した。3E10-D31N/3p-hpRNA複合体を用いた処置と抗CTLA-4抗体を用いた処置との間に(ns=有意ではない)、又は3E10-D31N単独もしくは3p-hpRNA単独を用いた処置と陰性対照を用いた処置との間に(ns=有意ではない)有意差は見られなかった。
【0426】
図28B~28Gは、腫瘍移植後9、11、13、及び15日目のPBS(対照;28B及び28C)、3E10-D31N(GMAB;28D及び28E)単独、3p-hpRNA単独(28F及び28G)、3E10-D31N/3p-hpRNA複合体(28H及び28I)、又は抗CTLA-4抗体(28J及び28K)の全身投与後の、移植後23日目の各コホートにおける個々の各マウスの腫瘍体積(mm)及び代表的な腫瘍の画像を例証する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図25-1】
図25-2】
図25-3】
図25-4】
図25-5】
図26
図27
図28-1】
図28-2】
図28-3】
【配列表】
2023544970000001.app
【国際調査報告】