(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】耐高温バインダ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G02B5/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519612
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2020119443
(87)【国際公開番号】W WO2022067685
(87)【国際公開日】2022-04-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519362767
【氏名又は名称】マテリオン プレシジョン オプティクス (シャンハイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ウェンボ
(72)【発明者】
【氏名】リャン アンシェン
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA05
2H148AA26
(57)【要約】
シリカゾルゲルを用いた無機バインダ、及び無機バインダの製造方法が開示される。蛍光体ホイールを含む光変換システムにおいて無機バインダを使用するための技術及びシステムが開示される。無機バインダを用いた蛍光体ホイールは、高温に耐えることができ、高光透過率を有し、高引張剪断強度を有し、柔軟なコーティングプロセスによって適用することができ、低硬化温度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機バインダであって、
シリカゾルゲルと水とを含むシリカゾルゲル溶液と、
シランカップリング剤と、
アルコール可溶性溶媒と、
充填剤と、
を備える、無機バインダ。
【請求項2】
前記シリカゾルゲルは、ナノ酸性であり、約4~5のPH値を有する、請求項1に記載の無機バインダ。
【請求項3】
前記シランカップリング剤は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケートのうちの1つ以上からなる、請求項1又は2に記載の無機バインダ。
【請求項4】
前記アルコール可溶性溶媒は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールのうちの1つ以上からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機バインダ。
【請求項5】
前記充填剤は、水酸基変性シリコーン樹脂、水酸基変性ポリマー樹脂、マイクロ・ナノフッ化カルシウム、マイクロ・ナノフッ化マグネシウム、マイクロ・ナノ石英、マイクロ・ナノ低融点ガラス粉、フュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、シラン鎖延長剤、水酸基変性シリコーンオイル、テトラエチルオルソシリケート、水溶性ポリマー樹脂のうちの1つ以上からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の無機バインダ。
【請求項6】
前記シリカゾルゲル液、シランカップリング剤、アルコール可溶性溶媒、及び充填剤は、PH値が約4.5である、請求項1~5のいずれか1項に記載の無機バインダ。
【請求項7】
無機バインダの製造方法であって、
容器にアルコール可溶性溶媒とシランカップリング剤とを添加し、前記アルコール可溶性溶媒とシランカップリング剤とを混合し、第1の溶液を形成し、
前記第1の溶液にシリカゾルゲルを添加し、前記シリカゾルゲルと前記第1の溶液とを混合し、第2の溶液を形成し、
前記第2の溶液に充填剤を添加し、前記充填剤と前記第2の溶液との間の化学反応が完了するまで前記充填剤と前記第2の溶液とを混合し、第3の溶液を形成し、
前記第3の溶液から余分な水分を除去する、無機バインダの製造方法。
【請求項8】
前記アルコール可溶性溶媒と、前記シランカップリング剤とを、4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃で、約2分~30分間混合する、請求項7に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項9】
前記シリカゾルゲルと前記第1の溶液とを4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃で約1時間~約3時間混合する、請求項7又は8に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項10】
前記充填剤と前記第2の溶液とを4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃で約2時間~約48時間混合する、請求項7~9のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項11】
前記シリカゾルゲルは、ナノ酸性であり、約4~5のPH値を有する、請求項7~10のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項12】
前記シランカップリング剤は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメチルシリケート、及びテトラエチルシリケートのうちの1つ以上からなる、請求項7~11のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項13】
前記アルコール可溶性溶媒は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールのうちの1つ以上からなる、請求項7~13のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項14】
前記充填剤は、水酸基変性シリコーン樹脂、水酸基変性ポリマー樹脂、マイクロ・ナノフッ化カルシウム、マイクロ・ナノフッ化マグネシウム、マイクロ・ナノ石英、マイクロ・ナノ低融点ガラス粉、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、シラン鎖延長剤、水酸基変性シリコーンオイル、テトラエチルオルソシリケート、水溶性ポリマー樹脂のうちの1つ以上からなる、請求項7~14のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項15】
前記第3の溶液から水を除去する前に、前記第3の溶液のPHを試験し、値を4.5に調整する、請求項7~11のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無機バインダに関する。無機バインダは、このようなシステムにおいて用いられる蛍光体ホイールなどの光電変換装置での使用に適した特定の特性を有する。本開示の無機バインダは250℃までの温度で強化された結合強度を維持する。
【背景技術】
【0002】
有機接着剤(例えば、エポキシ、ポリウレタン、シリコーン)は、接着のために広く使用されている。例えば、蛍光体インシリコーン製品では、蛍光体粉末をシリコーンバインダ又は接着剤に混合し、所望のパターンで調合又は印刷される。シリコーンは、高透明性、高接着強度、低屈折率、適切な粘性のため、金属やガラスなどの接着によく使用される。しかしながら、シリコーンのバインダ/接着剤は熱安定性に劣る。200℃を超える温度では、シリコーン接着剤は劣化し、黄色く変色し始め、次第に燃え始める。高輝度(例えば、レーザー出力200W)の用途では、蛍光体ホイールの使用温度は一般的に200℃以上となることが予想されるため、シリコーン接着剤の使用は好ましくない。
【0003】
したがって、より高い温度耐性(例えば、250℃まで)に加えて、有機バインダの同じ望ましい特性(すなわち、高透明性、高接着強度、低屈折率、及び適切な粘性)を示す無機バインダを提供することが望ましい。このような無機バインダは、光トンネル、投影ディスプレイシステム、及びこのようなシステムで使用される蛍光体ホイールなどの光電変換装置などの様々な用途で有利に採用され得る。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、詳細な説明において以下にさらに説明される概念の一部を簡略化した形で紹介するために提供される。この概要は、請求される主題の重要な要素又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求される主題の範囲を限定するために使用されることを意図しない。
【0005】
光変換装置(例えば、蛍光体ホイール)の高反射率コーティングに使用することができる、又は2つの要素を接合するために使用される接着剤として使用することができる無機バインダが開示される。無機バインダは、高出力照明システムでの使用に特に適している特定の特性を有する。例えば、特定の実施形態において、無機バインダは、高温(例えば、250℃まで)に耐えることができ、高光透過率(例えば、少なくとも92%)を有し、高引張剪断強度(例えば、250℃で少なくとも100psi)を有し、柔軟なコーティングプロセス(例えば、調合、シルク印刷、スプレー)により適用されることができ、低硬化温度(例えば、200℃未満)を有する。
【0006】
1つの例示的な実施形態において、無機バインダが提供され、無機バインダは、シリカゾルゲル溶液を含み、シリカゾルゲル溶液は、シリカゾルゲル及び水、シランカップリング剤、アルコール溶解性溶媒、充填剤を含む。
【0007】
別の例示的な実施形態では、無機バインダの製造方法が提供され、製造方法は、容器にアルコール溶解性溶媒及びシランカップリング剤を添加し、アルコール溶解性溶媒及びシランカップリング剤を混合して第1の溶液(例えば、均一又は不均一)を形成し、シリカゾルゲルを第1の溶液に添加し、シリカゾルゲルと第1の溶液とを混合し、第2の溶液を形成し、充填剤を第2の溶液に添加し、充填剤と第2の溶液との間の化学反応が完了するまで充填剤と第2の溶液とを混合し、第3の溶液を形成し、第3の溶液から水を除去する。
【0008】
前述及び関連する目的を達成するために、以下の説明及び添付の図面は、特定の例示的な側面及び実施形態を示す。これらは、1つ以上の態様が採用され得る様々な方法のうちのほんの一部を示すものである。本開示の他の側面、利点、及び新規な特徴は、添付の図面と併せて考慮される場合、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0009】
請求される主題は、特定の部品及び部品の配置において物理的形態をとることができ、その好ましい実施形態は、明細書に詳細に説明され、本明細書の一部を構成する添付図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、無機バインダの例示的な実施形態の製造方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本明細書に記載のバインダのうちの1つを利用し得る光電変換装置の例示的な実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、本明細書に記載のバインダのうちの1つを利用し得る
図2の光電変換装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、請求される主題を図面を参照して説明する。ここで、同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を参照するために一般的に使用される。以下の説明では、説明のために、請求される主題の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、請求される主題は、これらの特定の詳細がなくても実施され得ることは明らかである。他の例では、請求される主題の説明を容易にするために、構造及び装置はブロック図の形態で示される。
【0012】
図面を参照すると、同様の参照符号は、いくつかの図を通して同一又は対応する部分を指定する。しかしながら、異なる図に同様の要素が含まれることは、所定の実施形態が必ずしもそのような要素を含むこと、又は請求される主題のすべての実施形態がそのような要素を含むことを意味しない。例及び図は、例示に過ぎず、特許請求の範囲及び精神によって判断される請求される主題を限定することを意味しない。
【0013】
光変換用途で利用されるバインダ/接着剤の材料は、光変換の効率及び品質に直接影響する。そのような材料は高温にさらされることがあり、光変換装置の寿命がバインダの熱安定性に直接影響される。したがって、高い熱安定性を示し、同時に高接着強度や高透明性などの他の有利な特性を示す材料が光変換用途に望まれている。
【0014】
シリコーン、エポキシ、ポリウレタンなどの有機バインダは、その高透明性と接着強度とから光変換装置によく使用されている。しかしながら、これらの材料は熱安定性が低く、その結果、200℃を超える温度に導入されると、材料が劣化し、黄色くなり始め、徐々に燃えてしまう。高輝度(例えば、約200Wのレーザ出力)を有する用途では、光変換デバイスの動作温度は200℃を超える温度に達する可能性があり、有機バインダは長期的な解決には好ましくない。
【0015】
本開示の例示的な実施形態では、高温(例えば、250℃以上)に耐えることができ、高光透過率特性(例えば、少なくとも92%)を有し、高引張剪断強度(例えば、250℃で少なくとも100psi)を有する無機バインダを提供する。この態様において、いくつかの実施形態では、バインダは、柔軟なコーティングプロセス(例えば、調合、シルク印刷、スプレー、スパッタリング)によって適用することができ、低硬化温度(例えば、200℃未満)を有していてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、例示的な無機バインダは、酸性ナノコロイドシリカ、(例えば、4~5のPH値を有するナノシリカゾルゲル)を含むことができる。シリカゾルゲルは、水中に分散したSiO2ナノ粒子を用いて形成される無臭、無毒のコロイドであり、その分子式はmSiO2.nH2Oであり、この実施形態では、4~5のわずかに酸性のPH値からなる。
【0017】
例えば、シリカゾルゲルは200℃未満の温度で硬化可能な無機材料であるため、耐高温性の問題を解決するためにはシリカゾルゲルが適していると考えられる。しかしながら、シリカゾルゲルは、アルミニウム、蛍光体、ガラス、セラミックスなどの対象材料との接合強度が低いため、バインダとして直接使用するには適さない場合がある。さらに、シリカゾルゲルは、溶媒の蒸発により、容易にクラックや変形などの好ましくない物性を示すことがある。さらに、シリカゾルゲルの弾力性は、有機シリコーン接着剤と比較して劣る。
【0018】
一態様では、本明細書に記載されているように、シリカゾルゲルは、シランカップリング剤及び/又は他の充填剤を添加することにより、結合安定性及び物理的特性を改善することができる。しかしながら、シリカゾルゲルにシランカップリング剤及び/又は他の充填剤を添加すると、得られる製品は不安定な粘度を有することがあり、これはシランカップリング剤の連続的な化学反応によって引き起こされると考えられる。したがって、このゾルゲルバインダの粘度は、時間の経過とともに上昇し、及び/又は、ゾルゲルバインダは室温で迅速に硬化し、短時間でシリカになることができる。例えば、シランカップリング剤は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、又はこれらの組み合わせからなることができる。
【0019】
この態様において、望ましいシリカゾルゲルベースのバインダは、PH値の調整及び制御、並びに適切な材料選択を通じて開発することができる。例えば、MTMS[トリメトキシメチルシラン(MTMS)は、キャピラリー液体クロマトグラフィー用の種々の骨格サイズを有するモノリスシリカカラム(例えば、イオン液体がシリカ由来のネットワーク内に閉じ込められるイオノゲル)の合成に望ましい前駆体となる]などのシランカップリング剤は、結合力を改善するためにシリカゾルゲルに添加することができる。この例では、MTMSを添加することにより、得られたゾルゲルベースのバインダは、透過率及びフィルム形成性に関しても良好な性能を示すようになる。製造時に、MSTSと充填剤とによって引き起こされる不安定な粘度を緩和するために、PH値を4~5に調整することができ、その結果、化学反応が室温でゆっくりと行われることを意味するPH値の調整によって4℃で3~6ヶ月の貯蔵寿命を持つゾルゲル接着剤が得られる。
【0020】
しかしながら、この態様では、シランカップリング剤からなるシリカゾルゲルバインダは、脆く、割れやすくなる可能性がある。いくつかの実施形態では、得られるフィルムの粘着性を向上させるために、1つ以上の充填剤をゾルゲルベースのバインダに添加することができる。例えば、充填剤は、マイクロ/ナノフッ化カルシウム、マイクロ/ナノフッ化マグネシウム、マイクロ/ナノ石英、マイクロ/ナノ低融点ガラス粉末、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、ヒドロキシ変性ポリマー樹脂、ヒドロキシ変性シリコーン樹脂、シラン鎖延長剤、ヒドロキシ変性シリコーンオイル、TEOS、及び水溶性ポリマー樹脂を含むが、それだけに限らない1以上の種類からなることができる。さらに、低粘度、すなわち溶媒の揮発性の潜在的な問題は、ロータリーエバポレーターの使用及び/又は高沸点溶媒の添加によって緩和され得る。
【0021】
この態様において、例えば、ゾルゲルベースのバインダの結果生成物は、約250℃の温度で改善された性能を有することができる。さらに、ゾルゲルベースのバインダの粘度は、より安定的であり、高光透過率、改善されたフィルム形成特性、及び改善された貯蔵寿命を有することができる。
【0022】
一態様では、本明細書に記載されているように、ゾルゲルベースバインダ内のカップリング剤の均一な被覆を促進するために、溶媒をゾルゲルベースバインダに添加することができる。得られたゾルゲルベースバインダは、改善された接着強度を有することができる。溶媒は、アルコール可溶性溶媒のような、適切なものであれば何でもよい。いくつかの実施形態では、アルコール可溶性溶媒は、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はそれらの組合せである。
【0023】
図1を参照すると、無機バインダは、10で示される一連のステップで製造することができる。一実施形態では、20で示すように、0グラム~1000グラムの割合の溶媒と0.5グラム~1000グラムの割合のカップリング剤とを容器内で混合することができる。混合は、約4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃の温度で、約2分~30分間行われることがある。いくつかの実施形態において、溶液は、少なくとも溶液が溶媒とカップリング剤との均質な混合物になるまで混合され得る。しかしながら、他の実施形態では、溶液が均質であるか否かにかかわらず、溶液の所望の結果に対して所望の時間の間、溶液を単に混合することができる。時間及び温度は、溶媒及びカップリング剤の量及び種類に基づいて調整され得ることを理解されたい。例えば、溶媒は、水、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低沸点(例えば、<150℃)溶媒及びエチレングリコール、プロピレングリコールなどの高沸点(例えば、>150℃)溶媒の1つ以上を含んでよい。さらに、一例として、カップリング剤は、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、トリメトキシシランの基、トリエトキシシランの基のうちの1つ以上を含むことができる。
【0024】
さらに、この例のバインダ製造方法では、22で示すように、PH値が4~5の酸性ナノシリカゾルゲル、例えば湯田化学のHS-25、又はLUDOX(登録商標)のHASコロイダルシリカを約100gの割合で、溶媒及びカップリング剤の溶液に加えることができる。シリカゾルゲルは、約4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃の温度で、約1時間~約3時間、溶媒及びカップリング剤の溶液と混合することができる。時間及び温度は、溶媒、カップリング剤、及びシリカゾルゲルの量及び種類に基づいて調整することができることを理解されたい。
【0025】
さらに、24で示すように、混合溶媒、カップリング剤、及びシリカゾルゲル溶液に充填剤を添加することができる。例として、充填剤は、マイクロ/ナノフッ化カルシウム、マイクロ/ナノフッ化マグネシウム、マイクロ/ナノ石英、マイクロ/ナノ低融点ガラス粉末、ヒュームドシリカ(例えば、火炎中で生成され、非晶質シリカの微小液滴が枝状に融合し、凝集して大きな粒子になる)、ケイ酸ナトリウム、ヒドロキシ変性ポリマー樹脂、ヒドロキシ変性シリコーン樹脂、シラン鎖延長剤、ヒドロキシ変性シリコーンオイル、TEOS[Tetraethyl orthosilicate、正式名称tetraethoxysilane、式Si(OC2H5)4、水に分解する無色液体である]及び水溶性のポリマー樹脂のうちの1つ以上を含む。0グラム~500グラムの割合の充填剤を加えた後、溶媒、カップリング剤、シリカゾルゲル、及び充填剤の溶液を、約4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃の温度で約2時間~約48時間、少なくとも充填剤が溶液と実質的に完全に反応して無機バインダの前駆体を形成するまで混合してもよい。時間及び温度は、溶媒、カップリング剤、シリカゾルゲル、及び充填剤の量及び種類、並びに得られる前駆体の所望の状態及び/又は一貫性に基づいて調整することができることを理解されたい。
【0026】
28に示すように、この実施形態では、前駆体溶液は、PH値について任意の適切な手段で試験することができ、必要に応じて、例えば、溶液に酸又は塩基を加えることによって、4~5のPH値を満たすように調整することができる。酸は、PHが7未満の溶液であり、塩基はPHが7以上の溶液である。一例では、PH値が約4.5より大きい場合、溶液のPH値が約4.5になるまで、水酸化ナトリウム(NaOH)のような塩基を添加することがある。溶液のPH値が約4.5未満である場合、溶液のPH値が約4.5になるまで、塩酸(HCI)のような酸を添加することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、無機バインダ222中の添加された溶媒の少なくとも一部の除去を容易にするために、回転蒸発装置を使用することができる。一例として、回転蒸発装置は、蒸発によって溶液から溶媒を除去する。いくつかの実施形態において、回転蒸発装置は、無機バインダから低沸点(例えば、150℃未満)を有する溶媒を除去するために使用され得る。溶媒の除去は、例えば、バインダの適切な適用を可能にし、バインダ標的材料の沈降を緩和し、適用されたバインダの安定性を提供するような、所望の粘度を有する無機バインダをもたらすことができる。
【0028】
図2及び
図3を参照すると、励起光123を発光光124に変換するために無機バインダを利用する光変換装置200が提供される。励起光123は、入力光、すなわち、レーザーを用いた照明光源などから発生する光である。励起光123は、光源から伝送され、光変換装置200に向けられ、励起光123の波長を、発光光124の波長に変換し、発光光124を励起光123の発生源に向けて反射させることにより、発光光124に変換する。発光光124は、励起光123と波長が異なるため、発光光123は励起光124と異なる色を有する。
【0029】
例えば、光源として、約440nm~約460nmの波長を有する青色光レーザーを用いることができる。青色光が励起光123として光変換装置200に照射されると、得られる発光光は、赤色(約780nm~約622nmの波長を有する光)、緑色(約577nm~492nmの波長を有する光)、又は黄色(約597nm~約577nmの波長を有する光)であり得る。
【0030】
励起光123が光変換装置200に当たると、光変換装置200の温度は上昇する。通常の動作条件下では、励起光123の約50%~60%が熱に変換され、残りは発光光124に変換される。励起光123が高レベルの輝度を有する用途(例えば、200Wのレーザ出力)では、光変換装置200は、200℃を超える温度に達することがある。このような温度では、熱安定性の低い光変換素子は劣化が始まり、黄色く変色し、次第に燃え始める。これは、発光光124の強さ、色品質、及び光変換装置200の寿命に影響を与える。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、高い熱安定性を有する光変換装置200が提供される。光変換装置200は、基板210、反射層220、及び蛍光体層230の3つの層を含む。反射層220は、基板210、及び蛍光体層230の間に位置する。励起光123が照射されると、蛍光体層230の蛍光体が励起され、発光光124を発生する。そして、発光光124は、反射層220から反射される。
【0032】
いくつかの実施形態では、光変換装置200の基板210は、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金、又は高熱伝導率を有する他の金属など、高熱伝導率を有する金属である。また、基板210は、ガラス、サファイア、又はダイヤモンドで作られてもよい。基板210は対向する表面を有し、そのような表面の少なくとも1つは、反射層220に結合され得る表面を有する。
【0033】
反射層220は、基板210の表面上に直接分散、スプレー、又はシルク印刷される。いくつかの実施形態では、反射層220は、屈折粒子221、溶媒、及び無機バインダ222で作られる。屈折粒子221は、約0.1μm~約150μmのサイズを有してよく、酸化チタン(TiO2)など、適切なものから作られてもよい。溶液は、プロピレングリコールなどの適切なものから作られてもよい。いくつかの実施形態では、屈折粒子221、溶媒、及び無機バインダ222の比率は、5:1:2である。反射層220は、対向する表面を有し、一方は基板210に結合し、一方は蛍光体層230に結合し得る。
【0034】
他の実施形態では、反射層220は、一連のステップで基板210上に直接スプレーされる。所望の量の屈折粒子221、溶液、及び無機バインダ222を最初に混合して混合物を形成する。次に、この混合物を第1の層で基板上にスプレーし、60℃の温度で約30分間静止させる。次に、第1の層は、約150℃の温度で約20分間硬化される。次に、混合物を第1の層上にスプレーすることにより、第2の層を適用する。第2の層は、最初に約60℃の温度で約30分間、次に約150℃の温度で約20分間、最後に約180℃の温度で約1時間、ステップ硬化される。
【0035】
蛍光体層230は、反射層220の表面上に直接分散、又はシルク印刷される。いくつかの実施形態では、蛍光体層は、蛍光体粉末、溶媒、分散剤、及び無機バインダで作られている。蛍光体粉末は、約10μm~約30μmの粒子サイズを有する蛍光体で作られてもよく、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、ケイ酸塩、及び窒化物のような、適切なもので作られてもよい。溶媒は、適当なもの、例えば、プロピレングリコールで作られてもよい。分散剤は、ヒュームドシリカなど、適切なものであれば何でもよい。いくつかの実施形態では、蛍光体粉末、溶媒、分散剤、及び無機バインダの比率は、10:1:0.3:3である。
【0036】
他の実施形態では、蛍光体層230は、一連のステップで反射層220上に直接シルク印刷される。所望の量の蛍光体粉末、分散剤、増粘剤、及び無機バインダをまず混合して混合物を形成する。次に、この混合物を反射層220上にシルク印刷する。混合物は、最初に約150℃の温度で約20分間、最後に約180℃の温度で約1時間、ステップ硬化される。
【0037】
本明細書で引用した、公開公報、特許出願、及び特許を含むすべての文献は、本明細書の他の箇所で行われた特定の文書の別途の組み込みにかかわらず、それぞれの文献が参照により組み込まれることが個別にかつ明確に示され、その全体がここに記載されているかのように(法律で許される最大範囲において)その全体及び同じ程度で参照により組み込まれる。
【0038】
特に断らない限り、本明細書で提供されるすべての正確な値は、対応する近似値の代表である(例えば、特定の要因又は測定に関して提供されるすべての正確な例示的な値は、必要に応じて「約」で修飾される対応する近似測定値も提供するとみなすことができる)。提供されたすべての値の範囲は、範囲の端点、及び端点間の値を含むことが意図されている。
【0039】
本明細書における特許文書の引用及び組み込みは、便宜上行われるものであり、かかる特許文書の有効性、特許性、及び/又は実行可能性に関するいかなる見解も反映するものではない。
【0040】
本明細書に記載された発明概念は、適用される法律によって許可される、本明細書に添付された請求項及び/又は側面に記載された主題のすべての変更及び同等物を含む。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機バインダであって、
シリカゾルゲルと水とを含むシリカゾルゲル溶液と、
シランカップリング剤と、
アルコール可溶性溶媒と、
充填剤と、
を備える、無機バインダ。
【請求項2】
前記シリカゾルゲルは、ナノ酸性であり、約4~5のPH値を有する、請求項1に記載の無機バインダ。
【請求項3】
前記シランカップリング剤は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケートのうちの1つ以上からなる、請求項1又は2に記載の無機バインダ。
【請求項4】
前記アルコール可溶性溶媒は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールのうちの1つ以上からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機バインダ。
【請求項5】
前記充填剤は、水酸基変性シリコーン樹脂、水酸基変性ポリマー樹脂、マイクロ・ナノフッ化カルシウム、マイクロ・ナノフッ化マグネシウム、マイクロ・ナノ石英、マイクロ・ナノ低融点ガラス粉、フュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、シラン鎖延長剤、水酸基変性シリコーンオイル、テトラエチルオルソシリケート、水溶性ポリマー樹脂のうちの1つ以上からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の無機バインダ。
【請求項6】
前記シリカゾルゲル液、シランカップリング剤、アルコール可溶性溶媒、及び充填剤は、PH値が約4.5である、請求項1~5のいずれか1項に記載の無機バインダ。
【請求項7】
無機バインダの製造方法であって、
容器にアルコール可溶性溶媒とシランカップリング剤とを添加し、前記アルコール可溶性溶媒とシランカップリング剤とを混合し、第1の溶液を形成し、
前記第1の溶液にシリカゾルゲルを添加し、前記シリカゾルゲルと前記第1の溶液とを混合し、第2の溶液を形成し、
前記第2の溶液に充填剤を添加し、前記充填剤と前記第2の溶液との間の化学反応が完了するまで前記充填剤と前記第2の溶液とを混合し、第3の溶液を形成し、
前記第3の溶液から余分な水分を除去する、無機バインダの製造方法。
【請求項8】
前記アルコール可溶性溶媒と、前記シランカップリング剤とを、4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃で、約2分~30分間混合する、請求項7に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項9】
前記シリカゾルゲルと前記第1の溶液とを4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃で約1時間~約3時間混合する、請求項7又は8に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項10】
前記充填剤と前記第2の溶液とを4℃~約20℃、好ましくは10℃~約20℃で約2時間~約48時間混合する、請求項7~9のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項11】
前記シリカゾルゲルは、ナノ酸性であり、約4~5のPH値を有する、請求項7~10のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項12】
前記シランカップリング剤は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメチルシリケート、及びテトラエチルシリケートのうちの1つ以上からなる、請求項7~11のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項13】
前記アルコール可溶性溶媒は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールのうちの1つ以上からなる、請求項7~
12のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項14】
前記充填剤は、水酸基変性シリコーン樹脂、水酸基変性ポリマー樹脂、マイクロ・ナノフッ化カルシウム、マイクロ・ナノフッ化マグネシウム、マイクロ・ナノ石英、マイクロ・ナノ低融点ガラス粉、ヒュームドシリカ、ケイ酸ナトリウム、シラン鎖延長剤、水酸基変性シリコーンオイル、テトラエチルオルソシリケート、水溶性ポリマー樹脂のうちの1つ以上からなる、請求項7~
13のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【請求項15】
前記第3の溶液から水を除去する前に、前記第3の溶液のPHを試験し、値を4.5に調整する、請求項7~11のいずれか1項に記載の無機バインダの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図2及び
図3を参照すると、励起光123を発光光124に変換するために無機バインダを利用する光変換装置200が提供される。励起光123は、入力光、すなわち、レーザーを用いた照明光源などから発生する光である。励起光123は、光源から伝送され、光変換装置200に向けられ、励起光123の波長を、発光光124の波長に変換し、発光光124を励起光123の発生源に向けて反射させることにより、発光光124に変換する。発光光124は、励起光123と波長が異なるため、発光光
124は励起光
123と異なる色を有する。
【国際調査報告】