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特表2023-544998塩基性薬物の噴霧乾燥における加工助剤としての酢酸
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  • 特表-塩基性薬物の噴霧乾燥における加工助剤としての酢酸 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】塩基性薬物の噴霧乾燥における加工助剤としての酢酸
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20231019BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20231019BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20231019BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20231019BHJP
   F26B 3/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/38
A61K31/506
A61K31/5377
A23L33/10
A23L5/00 D
F26B3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520056
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2021076996
(87)【国際公開番号】W WO2022069661
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/086,691
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20200895.9
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20208785.4
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21150829.6
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21177685.1
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591192661
【氏名又は名称】ロンザ・ベンド・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・モルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィット・ヴォダーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ケープ
(72)【発明者】
【氏名】モリー・アダム
【テーマコード(参考)】
3L113
4B018
4B035
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB04
3L113AC47
3L113AC67
3L113BA01
3L113DA24
4B018LE03
4B018MD07
4B018ME14
4B018MF06
4B035LC06
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG04
4B035LG05
4B035LG06
4B035LG26
4B035LK12
4B035LP24
4B035LP59
4C076AA29
4C076BB01
4C076EE33A
4C076GG09
4C086AA10
4C086BC73
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA20
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、活性医薬成分(API)などの活性薬剤(AA)および分散ポリマー(DISPPOL)を含む、噴霧乾燥固体分散体(SDD)の調製方法を開示し、ここで噴霧乾燥は、C1-3アルカノールおよび酢酸、ならびに任意に水を含む溶媒中のAAおよびDISPPOLの溶液を用いて行われる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ブレンステッド塩基である活性薬剤(AA)の噴霧乾燥固体分散体(SDD)を調製するためのSPRAYDRY法であって:
a. 活性薬剤(AA)、分散ポリマー(DISPPOL)、酢酸、および溶媒(SOLV)を混ぜ合わせて、噴霧溶液(SPRAYSOL)を形成するステップであって、
i. SOLVは、C1-3アルカノールを含み、
SOLV中の前記C1-3アルカノールの量は少なくとも50重量%であり、前記重量%はSOLVの重量に基づき;
ii. 前記酢酸およびSOLVを混ぜ合わせてSPRAYSOLを形成する場合、AAは遊離塩基形態であり、遊離塩基形態では、4以上の塩基性pKaを有し、AAはSOLV中で40mg/mL以下の溶解度を有し;
iii. SPRAYSOLは、SOLVおよび酢酸中におけるAAの過飽和溶液ではない;噴霧溶液(SPRAYSOL)を形成するステップと;
b. SPRAYSOLを噴霧乾燥して、AAとDISPPOLとを含むSDDを形成するステップと;を備え、
SPRAYSOLは、1つの液相のみを有する、SPRAYDRY法。
【請求項2】
SOLVに対するAAの量は、酢酸の非存在下でSOLV中のAAの前記溶解度を上回る、請求項1に記載のSPRAYDRY法。
【請求項3】
SPRAYSOL中のAAの量は少なくとも0.5重量%であり、前記重量%はSPRAYSOLの重量に基づく、請求項1または請求項2に記載のSPRAYDRY法。
【請求項4】
酢酸の量は、AAのモル量に基づいて1から50eqである、請求項1から請求項3の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項5】
酢酸の量は0.05から50重量%であり、前記重量%はSOLVの重量に基づく、請求項1から請求項3の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項6】
SOLVは、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールである、請求項1から請求項5の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項7】
SOLVはさらに水を含む、請求項1から請求項6の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項8】
SOLV中のC1-3アルカノール:水の重量比は、99:1から60:40までであってよい、請求項7に記載のSPRAYDRY法。
【請求項9】
前記SDDは、1から99重量%のAAを含み、前記重量%は前記SDDの重量に基づく、請求項1から請求項8の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項10】
前記SDDは、1から99重量%のDISPPOLを含み、前記重量%は前記SDDの重量に基づく、請求項1から請求項9の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項11】
SDD中のAAとDISPPOLとの合計含有量は65から100重量%であり、前記重量%は前記SDDの重量に基づく、請求項1から請求項10の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項12】
AAは、生物学的に活性な化合物である、請求項1から請求項11の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項13】
AAは、薬物、薬品、医薬、治療薬、栄養補助食品、活性医薬成分である、請求項1から請求項12の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項14】
AAの塩基性pKaは5以上である、請求項1から請求項13の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項15】
DISPPOLは、1つ以上の分散ポリマーで構成される、請求項1から請求項14の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項16】
DISPPOLは、薬学的に許容される分散ポリマーである、請求項1から請求項15の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項17】
DISPPOLは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1から請求項16の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項18】
DISPPOLはHPMCASまたはPMMAMAAである、請求項1から請求項17の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項19】
前記SDDは残留酢酸を含み、SDD中の残留酢酸の含有量は5,000ppm以下であり、前記ppmはSDDの重量に基づく、請求項1から請求項18の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項20】
前記SDDは残留SOLVを含み、SDD中の残留SOLVの含有量は5,000ppm以下であり、前記ppmはSDDの重量に基づく、請求項1から請求項19の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項21】
SOLVはC1-3アルカノールで構成される、請求項1から請求項6および請求項9から請求項20の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項22】
SOLVはC1-3アルカノールと水とで構成される、請求項1から請求項21の1つ以上に記載のSPRAYDRY法。
【請求項23】
噴霧乾燥固体分散体(SDD)であって、
前記SDDは、請求項1から請求項22の1つ以上で定義されるSDDおよびSPRAYDRYを用いて、前記SPRAYDRY法で得られる、噴霧乾燥固体分散体(SDD)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性医薬成分(API)などの活性薬剤(AA)および分散ポリマー(DISPPOL)を含む、噴霧乾燥固体分散体(SDD)の調製方法を開示し、ここで、噴霧乾燥は、C1-3アルカノールおよび酢酸、ならびに任意に水を含む溶媒中のAAおよびDISPPOLの溶液を用いて行われる。
【背景技術】
【0002】
活性医薬成分(API)と分散ポリマー(DISPPOL)とを含む噴霧乾燥固体分散体(SDD)は、通常、分散ポリマーとAPIとをメタノールまたはアセトンなどの揮発性溶媒、あるいは混合溶媒に溶解し、続いて噴霧乾燥することによって製造される。噴霧乾燥溶媒中のAPIの溶解度が限られている場合、例えば1重量%未満の場合では、API懸濁液を大気圧での溶媒の沸点より低い温度か高い温度のどちらか一方まで加熱できるが、これは「高温噴霧乾燥プロセス」として公知のため、APIの溶解濃度が高くなる。場合によっては、温度が高くても、噴霧乾燥プロセスにとって経済的な適切なAPI濃度が得られなかったり、APIの化学的分解などのその他の問題が発生したり、熱交換器でのAPIの溶解が不完全になるリスクが生じたりすることがある。代替の好ましくない揮発性溶媒は、APIの溶解度を高めることができるが、これらの溶媒には、高コスト、毒性、機器適合性の悪さ、商業的入手可能性の低さ、高い廃棄コスト、十分に低レベルまで除去を行う課題、より高い粘度など、他の欠点があり、あまり望ましくない。
【0003】
WO2019/220282A1は、実施例1において、メタノール中のエルロチニブおよび分散ポリマー(PMMAMAまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートHグレード)の溶液を噴霧乾燥して噴霧乾燥分散体を提供することを開示している。噴霧溶液中の酸の存在については言及されていない。
【0004】
WO2007/060384A2は、実施例4においてサルブタモール硫酸塩の噴霧乾燥を開示している。実施例1に言及している実施例2および3とは異なり、実施例4は噴霧溶媒を開示していない。しかし、実施例1の噴霧溶媒が実施例4でも使用されたと仮定すると、噴霧溶媒には約550ml+33ml=583mlの水と30mlのEtOH、つまり95重量%の水とが含まれる。サルブタモール硫酸塩が噴霧乾燥に使用されたため、噴霧乾燥後に薬物の遊離塩基形態は得られず、再び硫酸塩が得られる。
また、実施例11はサルブタモール硫酸塩の噴霧乾燥を開示しているので、再び硫酸塩はその遊離塩基形態ではなくSDDに含まれる。1ml+約49ml=50mlの水と約21ml、すなわち約17gのEtOHとを含むが、水性エタノール(30%体積/体積)で100mlに希釈する場合、水性エタノール約70mlが必要であると推定される。そのため、水/油/水のエマルション中の水の個別の総含有量は、水とエタノールとの合計量に基づいて約75重量%の水であった。
【0005】
CN110037990Aは、アピキサバンの固体非晶質分散体を開示している。アピキサバンは2つのpKa値を有し、1つは、酸性サイトの半分が脱プロトン化した約13の酸性pKaであり、もう1つは、個別の塩基性サイトの半分がプロトン化した2未満の塩基性pKaである(出典:https://go.drugbank.com/drugs/DB06605)。THFと酢酸との組み合わせが溶媒として使用され、エタノールは、アピキサバンの溶解度を低くするためだけに言及されている。
【0006】
WO2015/138837A1は、イボシデニブの非晶質固体分散体を開示している。イボシデニブは、約1.81の塩基性pKaを有する(https://go.drugbank.com/drugs/DB14568)。噴霧乾燥の一実施例のみが開示されており、噴霧混合物には酸は含まれていなかった。
【0007】
US2007/0218012A1は、-0.69の塩基性pKaを有するVX-950、テラプレビル(https://go.drugbank.com/drugs/DB05521)、の固体分散体を調製するための噴霧溶媒として塩化メチレンおよびアセトンを実施例で開示している。
【0008】
WO2013/105894A1は、さまざまなプロテインキナーゼ阻害剤、PKIを用いた安定な非晶質ハイブリッドナノ粒子の調製を開示している。使用される溶媒は、DMSO、アセトン、およびトリフルオロエタノール(TFE)である。前記溶媒中のPKIとポリマーとの溶液は、XSpray社のRightSizeノズルを介してCO流と一緒にポンプで圧送される。その方法は、噴霧溶液の従来の噴霧乾燥とは異なる。
1-3アルカノールも酢酸も言及されていない。
【0009】
遊離塩基形態では弱有機塩基である活性薬剤(AA)と分散ポリマーとの噴霧乾燥固体分散体を調製する方法が必要であり、この方法では、C1-3アルカノールなどの容易に処理可能な噴霧乾燥溶媒にAPIを適度な温度、すなわち、大気圧の沸点を下回る温度で、十分な高濃度で溶解することを可能にし、SDDの経済的なスループットを可能にする。その方法により、遊離塩基はSDDとして得られるはずである。
【0010】
このような噴霧乾燥法において加工助剤として酢酸を使用できることがわかった。AAの溶解度が増加し、酢酸が存在しない場合よりも噴霧溶液中のAAの濃度を高くすることができる。AAの溶解度が増加すると、製造スループットが向上し、固体含有量の少ない噴霧溶液で達成できるものよりも優れた噴霧乾燥粒子特性が得られる可能性がある。酢酸を加工助剤としてだけでなく、唯一の溶媒として使用すると、粘度が高くなる傾向がある。
【0011】
本明細書で使用される略語および定義
AA 活性薬剤
API 活性医薬成分
ASD 非晶質固体分散体
ダサチニブ CAS 302962-49-8、塩基性pKa7.2
DISPPOL 分散ポリマー
eq 当量
ゲフィチニブ 結晶性ゲフィチニブ、CAS 184475-35-2、塩基性pKa=6.8
氷酢酸 水非含有(無水)酢酸、酢酸100%
HPMCAS ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートコハク酸、ヒプロメロースアセテートコハク酸、CAS 71138-97-1
pKa 有機ブレンステッド塩基の塩基性サイトのpKaは、これらの塩基性サイトの半分がプロトン化されるpHである。この塩基性pKaよりも低いpHでは、これらの塩基性サイトの半分超がプロトン化、つまりイオン化される。この塩基性サイトのpKaは、塩基性pKaとも呼ばれる。それとは対照的に、有機ブレンステッド酸の酸性サイトのpKaは、これらの酸性サイトの半分が脱プロトン化される、すなわちイオン化されるpHである。この酸性pKaよりも高いpHでは、これらの酸性サイトの半分超が脱プロトン化される。この酸性サイトのpKaは、酸性pKaとも呼ばれる。
pKa値はインターネットで入手でき、これらは、例えば、シミュレーションズ・プラス社(ナスダック:SLP)のADMET predictor(R)ソフトウェアによって計算することもできるし、または研究所で測定することもできる。
PVP-VA ビニルピロリドンー酢酸ビニル共重合体
SDD 噴霧乾燥固体分散体
SPRAYDRY 噴霧乾燥固体分散体(SDD)を調製するための方法
SPRAYSOL 噴霧溶液
wt% 重量%
【発明の概要】
【0012】
本発明の主題は、有機ブレンステッド塩基である活性薬剤(AA)の噴霧乾燥固体分散体(SDD)を調製するためのSPRAYDRY法であって:
a. 活性薬剤(AA)、分散ポリマー(DISPPOL)、酢酸、および溶媒(SOLV)、を混ぜ合わせて、噴霧溶液(SPRAYSOL)を形成するステップであって、
i. SOLVは、C1-3アルカノールを含み、
SOLV中のC1-3アルカノールの量は少なくとも50重量%であり、重量%はSOLVの重量に基づき;
ii. 酢酸およびSOLVを混ぜ合わせてSPRAYSOLを形成する場合、AAは遊離塩基形態であり、遊離塩基形態では、4以上の塩基性pKaを有し、AAはSOLV中で40mg/mL以下の溶解度を有し;
iii. SPRAYSOLは、SOLVおよび酢酸中のAAの過飽和溶液ではない;噴霧溶液(SPRAYSOL)を形成するステップと;
b. SPRAYSOLを噴霧乾燥して、AAとDISPPOLとを含むSDDを形成するステップと;を備え、
SPRAYSOLは、1つの液相のみを有する、SPRAYDRY法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1: 試料の非晶質性を示す実施例6から9のPXRDパターン
【発明を実施するための形態】
【0014】
SDDは、DISPPOL中のAAの噴霧乾燥固体分散体である。AAおよびDISPPOLは、SDD中で均一に混合されることが好ましい。
DISPPOL中のAAの固体分散体において、AAは、DISPPOL中に均一に、好ましくは分子的にも分散していてもよい。AAとDISPPOLとは、SDDで固溶体を形成する場合がある。
AAは、SDD中で非晶質または実質的に非晶質であってもよく、実質的には、AAの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも98重量%、特には少なくとも99重量%が非晶質であることを意味し、重量%は、SDD中のAAの総重量に基づく。したがって、SDDは非晶質SDDであってもよい。AAの非晶質性は、粉末X線回折(PXRD)によってSDDを分析した場合、X線パターンに鋭いブラッグ回折ピークが見られないことによって証明できる。X線回折計の可能なパラメータおよび設定は、Cu-Kalpha線源を備えた機器と、2θが3°から40°の修正平行ビーム形状の設定と、0.0°のステップサイズで2°/分の走査速度と、である。SDD中のAAの非晶質性に関する別の証拠は、単一のガラス転移温度(Tg)である可能性がある。単一のTgは、非晶質AAとポリマーとの均一な混合物の証拠でもある。さらなる試料調製を行わずにそのままの試料をTgの測定に使用することができ、その測定は、例えば、2.5℃/分の走査速度、±1.5℃/分の変調、および0℃から180℃の走査範囲の変調モードで行われる。AAの非晶質性は、純粋なDSISPPOLのTgと等しいか、ポリマーのTgとAAのTgとの間にあるTgを示す。SDDのTgは、AAのTgとDISPPOLのTgとの加重平均と同様であることが多い。SDDは非晶質であり、または実質的に、SDDはASDとも呼ばれ得る。
【0015】
SPRAYSOLは、SOLVおよび酢酸中のAAの安定した溶液である。
SPRAYSOLは、1つの液相のみを有する。これは、SPRAYSOLの液相が複数の液相を有さず、1つの液相のみを有することを意味する。したがって、例えば、2つまたは3つの別々の液相を有さず、液相が水/油または水/油/水のエマルションなどである場合に見られる。
【0016】
SOLVに対するAAの量は、酢酸の非存在下でのSOLV中のAAの溶解度を上回っている。
【0017】
SPRAYSOL中のAAの溶解可能な量は、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも3重量%であってもよく、重量%はSPRAYSOLの重量に基づく。
AAの溶解可能な量は、10重量%まで、好ましくは7.5重量%まで、より好ましくは5重量%までであってもよい。
SPRAYSOL中のAAの任意の下限と、任意の上限とを組み合わせることができる。
例えば、SPRAYSOL中のAAの溶解可能な量は、0.5重量%から10重量%、好ましくは1重量%から10重量%、より好ましくは3重量%から10重量%であってもよく、重量%はSPRAYSOLの重量に基づく。
【0018】
酢酸の量は、SOLVでAAを可溶化するのに十分な量である。
【0019】
酢酸の量は、AAのモル量に基づき、1から50eq、好ましくは1から40eq、より好ましくは1から30eq、さらにより好ましくは1から25eqであってもよい。
【0020】
酢酸の量は、50重量%まで、好ましくは40重量%まで、より好ましくは30重量%まで、さらにより好ましくは25重量%まで、特には15重量%まで、より特には10重量%まで、さらにより特には7.5重量%まで、とりわけ5重量%までであってもよく、重量%はSOLVの重量に基づく。
酢酸の量は、0.05から50重量%、好ましくは0.05から40重量%、より好ましくは0.05から30重量%、さらにより好ましくは0.05から25重量%、特には0.05から15重量%、より特には0.1から10重量%、さらにより特には0.1から7.5重量%、とりわけ0.1から5重量%であってもよく、重量%はSOLVの重量に基づく。
【0021】
SOLVのC1-3アルカノールは、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール、好ましくはメタノールまたはエタノール、より好ましくはメタノールであってもよい。
【0022】
SOLV中のC1-3アルカノールの量は、少なくとも60重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも67.5重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%であってもよく;重量%はSOLVの重量に基づく。
【0023】
別の実施形態では、SOLVはさらに水を含んでもよい。
SOLVが水を含む場合、SOLVは、40重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは32.5重量%以下、さらにより好ましくは30重量%以下、特には25重量%以下を含み、より特には20重量%以下の水を含むが、重量%はC1-3アルカノールと水との合計重量に基づく。
SOLVが水を含む場合、SOLV中のC1-3アルカノール:水の重量比は、99:1から60:40、好ましくは99:1から65:35、より好ましくは99:1から67.5:32.5、さらにより好ましくは99:1から70:30、特には99:1から75:25、より特には99:1から80:20であってもよい。
【0024】
一実施形態では、SOLVは、C1-3アルカノールおよび水からなる。
【0025】
一実施形態では、SOLVはC1-3アルカノールからなる。
【0026】
AAは、酢酸およびSOLVに混ぜ合わせて、または添加されてSPRAYSOLを形成する場合、遊離塩基形態になる。
AAは、その塩基性pKaに応じて、SPRAYSOL内に遊離塩基形態、プロトン化された形態、または両方の形態で存在する場合がある。
【0027】
SDDは、1から99重量%、好ましくは10から95重量%、より好ましくは10から80重量%、さらにより好ましくは20から60重量%のAAを含んでもよく、重量%は、SDDの重量に基づく。
【0028】
SDDは、1から99重量%、好ましくは20から90重量%、より好ましくは40から80重量%のDISPPOLを含んでもよく、重量%はSDDの重量に基づく。
【0029】
好ましくは、SDD中のAAおよびDISPPOLの合計含有量は、65から100重量%、より好ましくは67.5から100重量%、さらにより好ましくは80から100重量%、特には90から100重量%、より特には95から100重量%であってもよく;重量%はSDDの重量に基づく。
一実施形態では、SDDは、AAおよびDISPPOLからなる。
【0030】
SDD中のAA対DISPPOLの相対量は、50:1から1:50、好ましくは25:1から1:25、より好ましくは10:1から1:10(重量/重量)であってもよい。
【0031】
SPRAYSOL中のDISPPOLおよびAAの量は、SDD中のDISPPOLおよびAAが所定の量になるように選択される。
【0032】
DISPPOLは溶解状態でSPRAYSOLに存在し、DISPPOLおよびSOLVの量は別々に選択される。
例えば、SPRAYSOL中のDISPPOLの量は、0.5重量%から20重量%、好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは2.5重量%から15重量%、さらにより好ましくは5重量%から10重量%であってもよく、重量%はSPRAYSOLの重量に基づく。
【0033】
好ましくは、AAは、SOLV中で30mg/mL以下、より好ましくは20mg/mL以下、さらにより好ましくは10mg/mL以下の溶解度を有してもよい。
【0034】
AAは有機ブレンステッド塩基である。
AAは生物学的に活性な化合物であってもよい。生物学的に活性な化合物は、AAを必要とする患者に投与されることが望ましい場合がある。
AAは、薬物、薬品、医薬、治療薬、栄養補助食品、活性医薬成分(API)の場合がある。
AAは、一般に2000ダルトン以下の分子量を有する「小分子」であってもよい。
AAであるAPIは、ダサチニブまたはゲフィチニブであってもよい。
AAは1つ以上のAAであってもよく、SDDは1つ以上のAAを含んでもよい。
【0035】
SPRAYDRYでは、SOLVと酢酸との両方が蒸発する。AAはSDDにおいて遊離塩基形態で得られる。
【0036】
SPRAYDRYはAAを遊離塩基形態で回収して提供するため、本質的にすべてのAAが遊離塩基形態でSDDに存在する。これは、前記塩基性pKaが4以上であるAAの塩基性サイトが、SDDにおいて本質的に脱プロトン化された状態で存在することを意味する。
AAは5以上の塩基性pKaを有することが好ましい。
【0037】
DISPPOLは、1つ以上の分散ポリマー、好ましくは1、2、3または4、より好ましくは1、2または3、さらにより好ましくは1または2の分散ポリマーを含むことができる。
DISPPOLは、薬学的に許容される分散ポリマーであってもよい。
適切なDISPPOLには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP-VA)、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)(PMMAMAA)、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
適切なPMMAMAAポリマーには、ポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:1(例えばEudragit(R)L100)、およびポリ(メタクリル酸-co-メチルメタクリレート)1:2(例えばEudragit(R)S100))が含まれるが、これらに限定されない。Eudragit(R)は、ドイツ、エッセン45128の、エボニックインダストリーズAGのポリマー製品である。
ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)は、ポリ(メタクリル酸-co-エチルアクリレート)1:1であってもよい。
実施形態によっては、DISPPOLは、HPMCASまたはPMMAMAAである。
【0038】
SPRAYSOLは、大気圧でのSPRAYSOLの沸点までのSPRAYSOLの温度で噴霧乾燥機に供給されてもよく、好ましくは4℃から大気圧でのSPRAYSOLの沸点まで、好ましくは4℃から大気圧でのSPRAYSOLの沸点未満の温度まで、より好ましくは室温から60℃までの温度である。本発明の文脈において、用語「SPRAYSOLはSPRAYSOLの温度で噴霧乾燥機に供給されてもよい」は、「SPRAYSOLがSPRAYSOLの温度で噴霧乾燥される」ことを意味する。
【0039】
噴霧乾燥は、60℃から165℃の入口温度で行うことができる。
噴霧乾燥は、SOLVの沸点以下の出口温度で行うことができる。
噴霧乾燥は、噴霧乾燥に窒素などの一般的に使用される任意の不活性ガスで行うことができる。
噴霧乾燥は、AAを溶解または可溶化するためにCOを使用しないことが好ましい。COはSPRAYSOLに添加または混合しない方が好ましい。COは、噴霧乾燥機のノズル内でSPRAYSOLと混合しない方が好ましい。COが噴霧乾燥で使用される場合、噴霧乾燥プロセスにおける従来の不活性乾燥ガスとして従来の方法で使用され得る。
【0040】
SPRAYSOLは、溶解した界面活性剤SURFをさらに含むことができる。
SURFは、SPRAYSOLと混合することができる。
SURFは、例えば、脂肪酸およびアルキルスルホネート、ドキュセートナトリウム(例えば、ミズーリ州セントルイスのMallinckrodt Spec. Chern.,(マリンクロット社)から入手可能)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、デラウェア州ウィルミントンのICIアメリカズ社から入手可能なTween(R)、またはニュージャージー州パターソンのリポケム社から入手可能なリポソーブ(R)P-20、またはウィスコンシン州ジェーンズビルのアビテック社から入手可能なCapmul(R)POE-0)、タウロコール酸ナトリウムなどの天然界面活性剤、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、レシチン、他のリン脂質ならびにモノグリセリドおよびジグリセリド、ビタミンE TPGS、PEO-PPO-PEOトリブロック共重合体(例えば、プルロニクスの商品名で知られている)、またはPEO(PEOはPEG、ポリエチレングリコール(PEG)とも呼ばれる)でもよい。
【0041】
SURFの量は、10重量%まで可能であり、重量%はSDDの重量に基づく。
【0042】
SPRAYSOLは、慣習的な目的および当業者に知られている通常の量で使用できる、充填剤、崩壊剤、顔料、結合剤、潤滑剤、香味料などの薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。
【0043】
SDDは、好ましくは少量の残留酢酸を含んでもよく、SDD中の残留酢酸の含有量は、5,000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下であってもよく、ppmはSDDの重量に基づく。
また、噴霧後、SDD中の任意の残留酢酸含有量を所定の残留酢酸含有量まで下げることができ、これは、噴霧乾燥後に追加の乾燥ステップで行うことができる。
【0044】
SDDは残留SOLVを含んでもよく、SDD中の残留SOLVの含有量は5,000ppm以下、好ましくは3,000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらにより好ましくは100ppm以下であってもよく、ppmはSDDの重量に基づく。
また、噴霧後、SDD中の残留SOLVの任意の含有量を、SD中の残留SOLVの所定の含有量まで減少させることができる。
【0045】
SDD中の酢酸またはSOLVの任意の残留含有量は、噴霧乾燥後にSDDを2次乾燥に供することによって、所望の所定の最終含有量まで減少させることができる。2次乾燥は、トレイ乾燥機または固体を乾燥させるための当業者に知られている任意の攪拌乾燥機を使用して行うことができる。
【0046】
本発明のさらなる主題は、噴霧乾燥固体分散体(SDD)であり、SDDはSPRAYDRY法によって得ることができる。
本明細書で定義されるSDDおよびSPRAYDRY、ならびにそれらのすべての実施形態も含む。
【0047】
実施例
材料と略語
ダサチニブ 米国マサチューセッツ州ウォバーンのLC Laboratoriesの99%超の結晶性ダサチニブ遊離塩基
ゲフィチニブ ゲフィチニブ遊離塩基
GC ガスクロマトグラフィー
HPMCAS-MG Ashland製のAquaSolve、医薬品グレード
HPMC E3 米国デラウェア州ウィルミントンのデュポン・ド・ヌムール社製のMethocel E3、ヒドロキシプロピルメチルセルロース。
PMMAMAA エボニック社のEudragit L-100、医薬品グレード。
PVP-VA64 ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンのBASF社製のKollidon(コリドン)VA64
PXRD 粉末X線回折
RCF 相対遠心力
RH 相対湿度
TGA 熱重量分析
【0048】
実施例1:メタノール中のダサチニブの溶解度
ダサチニブ遊離塩基をメタノールから再結晶し、乾燥させた。結晶性ダサチニブをメタノールに過剰に添加して、25℃で飽和溶液を形成した。この溶液をTGAで分析したところ、3.1mg/mLのダサチニブが含まれていることがわかった。
【0049】
実施例2:酢酸を含むメタノールに溶解したダサチニブ濃度の増加
結晶性ダサチニブ200mgを25℃のメタノール10mLでスラリー化した。ダサチニブが完全に溶解するまで、このスラリーを氷酢酸で100マイクロリットル刻みで滴定した。合計500マイクロリットル(ダサチニブのモル量に基づく21.5eq)の氷酢酸を添加した後、混合物は透明になった。溶解したダサチニブの濃度は約19mg/mLで、実施例1で使用した酢酸を含まないメタノールよりも約6倍高かった。
【0050】
実施例3:25%ダサチニブ/HPMCAS-MG SDD
HPMCAS-MGポリマー7.51gを19℃で98.2gのメタノールに溶解した。結晶性ダサチニブ遊離塩基、2.50gを加えてスラリーを形成した。氷酢酸6.5g(ダサチニブのモル量に基づく21eq)を攪拌しながら加え、25℃の水浴に1時間入れて、そのスラリーを8.7重量%溶解固形物を含む溶液に変換した。この溶液を水浴から取り出し、30分間19℃まで冷却した後、噴霧乾燥した。
その溶液は、ダサチニブを固体形態で含んでおらず、代わりに完全に溶解した状態でダサチニブを含んでおり、液相は1つのみを有した。
特注の実験室規模の噴霧乾燥機を使用して溶液を噴霧乾燥した。蠕動ポンプを使用して、実験室規模の直径0.3mのステンレス鋼噴霧乾燥チャンバーに溶液を圧送した。溶液の流量は20g/分であり、霧化は、米国60187-7901イリノイ州グレンデール・ハイツのスプレーイングシステムス社製の1650液体および64エアキャップを備えた2流体ノズル1/4Jシリーズを介して行われた。シースガスを用いて、15psiの圧力で溶液を霧化した。加熱した窒素ガスを、温度115℃から120℃、流量500g/分で噴霧チャンバーに導入した。チャンバーから出るガスの出口温度は45℃から50℃だった。得られたSDDをサイクロンを使用して収集し、ガス流から固体粒子を分離した。
【0051】
残留酢酸は、トレイ乾燥機で60℃、30%RHで8時間乾燥させることにより除去した。残留酢酸はGCにより230ppmと測定された。残留メタノールは、GCにより100ppm未満であると測定された。PXRDは、均質な非晶質固体分散体を示す。
【0052】
実施例4:25%ダサチニブ/PMMAMAA SDD
Eudragit L-100(PMMAMAA)ポリマー7.50gを19℃で98.4gのメタノールに溶解した。結晶性ダサチニブ遊離塩基、2.51gを加えてスラリーを形成した。氷酢酸6.5g(ダサチニブのモル量に基づいて21eq)を攪拌しながら加え、25℃の水浴に30分間入れて、そのスラリーを8.7重量%の溶解固形物を含む溶液に変換した。この溶液を水浴から取り出し、19℃まで30分間冷却した後、噴霧乾燥した。
その溶液は、ダサチニブを固体形態で含んでおらず、完全に溶解した状態でダサチニブを含んでおり、液相は1つのみを有した。
特注の実験室規模の噴霧乾燥機を使用して溶液を噴霧乾燥した。蠕動ポンプを使用して、実験室規模の直径0.3mのステンレス鋼噴霧乾燥チャンバーに溶液を圧送した。溶液の流量は20g/分であり、霧化は、米国60187-7901イリノイ州グレンデール・ハイツのスプレーイングシステムス社製の1650液体および64エアキャップを備えた2流体ノズル1/4Jシリーズを介して行われた。シースガスを用いて、15psiの圧力で溶液を噴霧した。加熱した窒素ガスを、温度115℃から120℃、流量500g/分で噴霧チャンバーに導入した。チャンバーから出るガスの出口温度は45℃から50℃だった。得られたSDDをサイクロンを使用して収集し、ガス流から固体粒子を分離した。
【0053】
残留酢酸は、トレイ乾燥機で60℃、30%RHで24時間乾燥させることにより除去した。残留酢酸はGCにより5,000ppmと測定された。残留メタノールは、GCにより100ppm未満であると測定された。PXRDは、均質な非晶質固体分散体を示す。
【0054】
実施例5:ゲフィチニブの溶解度
結晶性ゲフィチニブをメタノールおよびメタノール:水の混合物に過剰に添加して、20℃で飽和溶液を形成した。24時間攪拌した後、1mLのアリコートを10,000RCFで3分間遠心分離した。次いで、上清をHPLCで分析し、ゲフィチニブ濃度を求めた。
酢酸を含む混合溶媒中のゲフィチニブの溶解度は、結晶性ゲフィチニブ300mgを、酢酸150マイクロリットルを含む溶媒(メタノール:水)5mLに20℃で懸濁することによって得られた(酢酸3.9eq)。100%メタノールを除いて、すべての溶液は60mg/mLで視覚的に可溶であった。酢酸を含む100%メタノールへの溶解度は、1mLのアリコートを1時間攪拌した後、10,000RCFで3分間遠心分離することにより未溶解の固形物を分離した後に測定した。次いで、上清をHPLCで分析し、ゲフィチニブ濃度を求めた。
【0055】
表1は、3.9eqの酢酸を使用した混合溶媒中のゲフィチニブ溶解度の向上を示し、向上は、表1に、
[酢酸を含む溶解度]/[酢酸を含まない溶解度]
の比である向上係数の形式で表される。
【表1】
【0056】
表2は、実施例6から9の噴霧溶液組成を示す
【表2】
【0057】
実施例6:25:75 ゲフィチニブ:HPMCAS-MG SDD(85:15 MeOH:水)
最初に9gのHPMCAS-MGを98gのメタノールと18.7gの水との混合物に22℃で溶解し、次に3gの結晶性ゲフィチニブを添加して薬物スラリーを形成した。このスラリーに、メタノール中に0.075g/mLの氷酢酸11mLを添加した。この混合物を少なくとも30分間攪拌して薬物を溶解し、それによって溶液SPRAYSOLVを形成した。
SPRAYSOLVはゲフィチニブを固体形態で含んでおらず、代わりに完全に溶解した状態でゲフィチニブを含んでおり、液相は1つのみを有した。
特注の噴霧乾燥機を使用して溶液を噴霧乾燥した。溶液は、蠕動ポンプを使用して、溶液流量15g/分で、実験室規模の直径0.3mのステンレス鋼噴霧乾燥チャンバーにポンプで圧送した。噴霧溶液は、1650液体および64エアキャップを備えた2流体1/4Jシリーズノズル(米国60187-7901イリノイ州グレンデール・ハイツのスプレーイングシステムス社)を使用して霧化された。室温のシースガス(15から20psi)を使用して溶液を霧化し、加熱した窒素ガス(入口115から125℃、出口45から50°C、500g/分)を使用して粒子を乾燥させた。得られたSDDをサイクロンを使用して収集し、ガス流から固体粒子を分離した。
試料は、40℃/15%RHおよび60℃/30%RHの2つの条件でトレイ乾燥機に置かれた。メタノールは両条件で1時間後に100ppm未満、酢酸は40℃/15%RHで8時間後および60℃/30%RHで1時間後に500ppm未満と、GCで測定された。PXRDは、噴霧乾燥された材料が非晶質であることを示した。
【0058】
実施例7:25:75 ゲフィチニブ:HPMCAS-MG SDD(70:30 MeOH:水)
最初に9gのHPMCAS-MGを83.1gのメタノールと39.1gの水との混合物に22℃で溶解し、次に3gの結晶性ゲフィチニブを添加して薬物スラリーを形成した。このスラリーに、メタノール中に0.075g/mLの氷酢酸11mLを添加した。この混合物を少なくとも30分間攪拌して薬物を溶解した。この混合物を少なくとも30分間攪拌して薬物を溶解し、それによって溶液SPRAYSOLVを形成した。
SPRAYSOLVはゲフィチニブを固体形態で含んでおらず、代わりに完全に溶解した状態でゲフィチニブを含んでおり、液相は1つのみを有した。
実施例6の手順を用いてこの溶液を噴霧乾燥した。
試料は、40℃/15%RHおよび60℃/30%RHの2つの条件でトレイ乾燥機に置かれた。メタノールは両条件で1時間後に100ppm未満、酢酸は40℃/15%RHで8時間後および60℃/30%RHで1時間後に500ppm未満と、GCで測定された。PXRDは、噴霧乾燥された材料が非晶質であることを示した。
【0059】
実施例8:25:75 ゲフィチニブ: HPMC E3 SDD
最初に9gのHPMC E3を51.1gのメタノールと25.3gの水との混合物に22℃で溶解し、HPMC E3が溶解した後に追加の42.3gのメタノールを加え、次に3gの結晶性ゲフィチニブを加えてスラリーを作成した。このスラリーに、メタノール中の0.075g/mLの氷酢酸10mLを添加した。この混合物を少なくとも30分間攪拌して薬物を溶解し、それによって溶液SPRAYSOLVを形成した。
SPRAYSOLVはゲフィチニブを固体形態で含んでおらず、代わりに完全に溶解した状態でゲフィチニブを含んでおり、液相は1つのみを有した。
実施例6の手順を用いてこの溶液を噴霧乾燥した。
試料は、40℃/15%RHおよび60℃/30%RHの2つの条件でトレイ乾燥機に置かれた。メタノールは両条件で1時間後に100ppm未満、酢酸は40℃/15%RHで24時間後および60℃/30%RHで2時間後に500ppm未満と、GCで測定された。PXRDは、噴霧乾燥された材料が非晶質であることを示した。
【0060】
実施例9:25:75 ゲフィチニブ:PVP-VA64 SDD
最初に9gのPVP-VA64を98gのメタノールと18.6gの水との混合物に22℃で溶解し、次に3gの結晶性ゲフィチニブを添加して薬物スラリーを形成した。このスラリーに、メタノール中に0.075g/mLの氷酢酸11mLを添加した。この混合物を少なくとも30分間攪拌して薬物を溶解し、それによって溶液SPRAYSOLVを形成した。
SPRAYSOLVはゲフィチニブを固体形態で含んでおらず、代わりに完全に溶解した状態でゲフィチニブを含んでおり、液相は1つのみを有した。
実施例6の手順を用いてこの溶液を噴霧乾燥した。
試料は、40℃/15%RHおよび60℃/30%RHの2つの条件でトレイ乾燥機に置かれた。メタノールは両条件で1時間後に100ppm未満、酢酸は40℃/15%RHで24時間後および60℃/30%RHで4時間後に500ppm未満と、GCで測定された。PXRDは、噴霧乾燥された材料が非晶質であることを示した。
【0061】
図1は、40℃/15%RHで24時間トレイを乾燥させた実施例6から9のPXRDパターンを示す。鋭い回折ピークがないことは、薬物が非晶質であることを示唆している。60℃/30%RHで乾燥させたSDDは、同様のPXRDパターンを示した。
図1
【国際調査報告】