(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】睡眠ポリグラフィー検査記録を定義済の睡眠段階に分類するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20231019BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20231019BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/374
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520061
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2021076608
(87)【国際公開番号】W WO2022069452
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】102020125743.0
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520363878
【氏名又は名称】ユニバーシタッツメディズィン デア ヨハネス グーテンベルク-ユニバーシタット マインツ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ムットゥラーマン,ムットゥラーマン
(72)【発明者】
【氏名】グーヴェリス,ハラランポス
(72)【発明者】
【氏名】ボエクステガース,フィリップ ジャルコ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS03
4C127AA03
4C127GG01
4C127GG03
4C127GG11
4C127GG15
(57)【要約】
本方法は睡眠ポリグラフィー検査記録を定義済の睡眠段階に分類するための方法に関し、本方法は、本質的に、
-人間の睡眠を異なる睡眠段階があるグリッドに分類するステップと、
-データの形式で既定期間にわたって生体機能に関する複数の情報を収集するステップであって、複数の情報を収集するステップは、人の睡眠中、既定期間にわたって、脳の電気的活動データを測定及び記録することのうちの少なくとも1つを含む、収集するステップと、
-収集データを時間依存データブロックに細分割するステップと、
-既定数のデータブロックをデータブロックから選択するステップであって、前記データブロックは脳の電気的活動に関するデータを含む、選択するステップと、
-交差周波数結合法を使用して、選択されたデータブロックのそれぞれで脳の電気的活動データを自動的に評価するステップと、
-評価されたデータブロックを睡眠段階に自動的に割り当てるステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠ポリグラフィー検査記録を定義済の睡眠段階に分類するための方法であって、
-人間の睡眠を異なる睡眠段階があるグリッドに分類するステップと、
-データの形式で既定期間にわたって生体機能に関する複数の情報を収集するステップであって、前記複数の情報を収集するステップは、人の睡眠中、既定期間にわたって、脳の電気的活動データを測定及び記録することのうちの少なくとも1つを含む、収集するステップと、
-収集データを時間依存データブロックに細分割するステップと、
-既定数のデータブロックを前記データブロックから選択するステップであって、前記データブロックは脳の電気的活動に関するデータを含む、選択するステップと、
-交差周波数結合法を使用して、選択されたデータブロックのそれぞれで前記脳の電気的活動データを自動的に評価するステップと、
-評価されたデータブロックを睡眠段階に自動的に割り当てるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
交差周波数結合法によって、選択されたデータブロックのそれぞれで前記脳の電気的活動データを自動的に評価するステップは、特性値によって定義された睡眠段階への割り当てを可能にする前記特性値を判定することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脳の電気的活動の測定及びドキュメンテーションは、測定センサーを用いた脳波記録法によって行われる、好ましくは、頭蓋面の皮膚上に位置付けられる前記脳波記録法の前記測定センサーを用いて行われることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記脳波記録法のC3/C4データを収集することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記交差周波数結合法は、脳波記録法のシータ波及びガンマ波またはデルタ波及びアルファ波に適用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記交差周波数結合法は位相振幅結合を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記選択されたデータブロックは、サポートベクターマシンで分類を作成するために、トレーニングデータブロックとして前記サポートベクターマシンに伝送されることと、トレーニングデータブロックとして選択されなかった前記データブロックの少なくとも一部は前記サポートベクターマシンに伝送され、既知の睡眠段階に自動的に分類されることと、を特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サポートベクターマシンは非線形基底カーネル関数を使用するアルゴリズムを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
収集されたデータは所定の時間間隔に分割され、具体的には、前記時間間隔は、15秒~5分の範囲内、好ましくは30秒であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
加えて、心臓活動、鼻呼吸及び/または口呼吸の気流、胸部及び腹腔の呼吸運動、呼吸音、具体的には、いびき音、眼球運動パターン、下顎領域及び下腿の電気的筋活動の生体機能に関するデータを記録し、前記データは、好ましくは、心電図記録法、マイクロフォン、エアフローメーター、筋電図検査用電極の測定方法または測定デバイスによって収集されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
追加データは、前記睡眠段階に応じて評価されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体機能の前記データは睡眠検査室で収集され、好ましくは第2の夜の間に、前記生体機能の前記データを収集することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記生体機能の前記データは家庭環境で収集されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
-人間の睡眠を異なる睡眠段階があるグリッドに分類するステップと、
-睡眠段階の特性値を提供するステップであって、前記特性値は、交差周波数結合法を使用して、脳波記録法のEEG信号から決定される、提供するステップと、
-データの形式で既定期間にわたって生体機能に関する複数の情報を収集するステップであって、前記複数の情報を収集するステップは、人の睡眠中、既定期間にわたって、脳波記録法による頭蓋面の皮膚上の脳の電気的活動データを測定及び記録することのうちの少なくとも1つを含む、収集するステップと、
-収集データを時間依存データブロックに細分割するステップと、
-既定数のデータブロックを収集されたデータブロックから選択するステップであって、前記データブロックは、前記脳波記録法からのEEG信号の形式の前記脳の電気的活動データを含む、選択するステップと、
-交差周波数結合法を使用して前記EEG信号を自動的に評価し、前記特性値を判定することと、
-前記特性値に基づいて、前記評価されたデータブロックを睡眠段階に自動的に割り当てるステップと、
を含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠ポリグラフィー検査記録に基づいて、睡眠段階を分類するための方法に関する。より具体的には、本発明は、心肺睡眠ポリグラフィー検査記録を定義済の睡眠段階に分類またはカテゴリー化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠障害に悩まされる多くの人々がいる。睡眠障害の一部はかなり異なる性質があり、ひいては、様々な異なる原因がある可能性がある。
【0003】
睡眠ポリグラフィー検査記録は、睡眠障害の原因に対する手掛かりを提供できることがよく知られている。睡眠ポリグラフィー検査では、睡眠プロセス中に患者から様々な身体機能データを記録する。具体的には、睡眠障害の原因は、睡眠中の脳の特定領域の脳波、心臓活動、及び呼吸の強さならびに呼吸頻度の経過から識別できる。したがって、睡眠ポリグラフィー検査中、脳の異なる場所における脳波は、例えば、米国睡眠医学会(AASM)の規格に従って、またはRechtschaffen及びKalesに従って、脳波記録法(EEG)によって記録され、心臓活動は心電図記録法(ECG)によって記録される。加えて、胸部及び腹腔の呼吸運動、鼻または口を通る呼吸流量等の呼吸パラメータ、及び必要に応じていびき音は、マイクロフォンを用いて記録される、または下顎及び下腿の電気的筋活動は筋電図検査法(EMG)によって測定される。
【0004】
通常、専門設備を備えた睡眠検査室で睡眠ポリグラフィー検査を行う。
【0005】
睡眠は、睡眠ポリグラフィー検査規格に基づいて、異なる5つの段階、すなわち段階N1、段階N2、段階N3(非レム睡眠の一部)、レム段階、及び覚醒段階に分割され、前記覚醒段階は人が覚醒状態であるときの睡眠中のエポックまたは周期に対応する。身体機能に関する身体活動の各々のデータはこれらの段階の全体にわたって異なる。これは、例えば、脳波記録法(EEG)によって記録される脳波が個々の段階で異なる事実が注目に値する。特に、脳波の周波数及び強さの両方は異なる。
【0006】
健康な人について、睡眠段階は大体が規則的パターンで進行する。睡眠障害を患う患者について、このパターンは健康な人のパターンと異なり得る。加えて、睡眠中の睡眠段階分類の絶対値または割合によって、様々な生体機能は健康な人の生体機能から逸脱し得る。
【0007】
睡眠障害の原因を見つけるために、したがって、患者の個々の睡眠段階を認識し、生体機能を特定の睡眠段階に割り当てることは役立つ。睡眠障害の原因は、時系列の睡眠段階で見られる差に基づいて及び健康な人と比較して様々な睡眠段階の個々の生体機能の差に基づいて識別できる、またはさらに詳細に絞り込みできる。
【0008】
通常、睡眠ポリグラフィー検査記録は、人の通常の睡眠時間である7~8時間続く。睡眠中の病理学的現象は数秒しか続かない可能性があるので、データは非常に短い間隔で、つまり準連続的に記録される。
【0009】
データ量が多いため、そのような睡眠ポリグラフィー検査記録の評価にはかなり時間がかかることは言うまでもない。睡眠は30秒単位、いわゆるエポックに分割され、各エポックは睡眠段階に割り当てられるが、ただ一晩の全ての睡眠ポリグラフィー検査記録の睡眠段階を分類するために、専門家は約1~2時間を必要とする。さらに、分類の良し悪しは専門家の経験によって左右される。
【0010】
睡眠ポリグラフィー検査記録を自動的に分類する試みが行われている。しかしながら、高精度で、睡眠ポリグラフィー検査記録を異なる睡眠段階に自動的に分類する満足できる方法がまだ発見されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、睡眠ポリグラフィー検査記録の睡眠段階を分類するための方法を提供することであり、本方法は、可能な限り全自動であり、高精度で、睡眠ポリグラフィー検査記録を異なる睡眠段階に確実に分類する。
【0012】
本発明に従って、この目的は、以下のステップを含む請求項1に記載の睡眠ポリグラフィー検査記録を分類するための方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
最初に、人間の睡眠を異なる睡眠段階があるグリッドに分類する。
【0014】
次に、データの形式で既定期間にわたって生体機能に関する複数の情報を収集し、複数の情報を収集することは、人の睡眠中、既定期間にわたって、脳の電気的活動データを測定及び記憶することのうちの少なくとも1つを含む。収集データは時間依存データブロックに細分割される。これは、手動で、すなわち人が、または好ましくはコンピュータ等によって自動的に行われ得る。続いて、手動で、しかし好ましくは自動的に、既定数のデータブロックが収集されたデータブロックから選択され、前記データブロックは情報を含み、具体的には、脳の電気的活動に関するデータを含む。次のステップでは、交差周波数結合法を使用することによって、選択されたデータブロックのそれぞれで脳の電気的活動データを自動的に評価する。最後に、評価されたデータブロックは睡眠段階に割り当てられる。
【0015】
説明される方法を用いて、自動的に、特に全自動で、睡眠ポリグラフィー検査記録において睡眠段階を分類することが可能である。これまでに知られている半自動法における分類の精度にも大きな違いはあるが、これまで、非常に高い精度で睡眠段階を分類することは、半自動法でのみ可能であると考えられていた。全く驚くべきことに、説明される方法は、これまで非常に優れた半自動法でのみ達成されていた分類の精度を実現することが判明した。他の多くのこれまでに知られている半自動法と比較して、説明される全自動法の結果はさらに優れている。
【0016】
手順を全自動で行うことができる場合でも、個々のステップをさらに手動で行うことができる。決定的要因として、睡眠段階への選択されたデータブロックの割り当てが自動的に行われることがある。
【0017】
選択された各データブロックの脳の電気的活動データを交差周波数結合法によって自動的に評価するステップが、特性値の決定を含むことは、特に有利であることが判明した。前記特性値は、特性値によって定義される睡眠段階への割り当てを可能にする。睡眠段階に対する特性値の決定は、睡眠中の人(患者)の生体機能の記録の前に、又はそれとは無関係に、既に行われ得る。
【0018】
本発明は、脳波記録法によって測定された脳波が、データのブロックに表された睡眠段階に関する結論を導くのに特に適切である研究結果に基づいている。具体的には、脳波図のC3/C4データを判定することは比較的に容易である。それらのデータは、世界中で臨床診療において実証されている睡眠ポリグラフィー検査に関連して収集されたデータに属し、そのデータは、全ての有効な規格(例えば、RechtsschaffenならびにKalesに従った規格、及びAASM-米国睡眠医学会に従った規格)に従って記録され、人の頭上のおけるその対称配置に起因して、さらに、相互間の測定結果比較を可能にする。したがって、説明される方法の好ましい実施形態に従って、脳の電気的活動データの測定及びドキュメンテーションは、測定センサーを用いた脳波記録法によって行われ、それによって、好ましくは、頭蓋面の皮膚上に位置付けられる脳波記録法の測定センサーを用いて行われることが提供される。上記に示したように、脳波記録法のC3/C4データを収集することは特に利点がある。
【0019】
さらに、本発明は、脳波図によって収集されたデータがいくつかの振動信号の重ね合わせから生じる認識に基づいている。したがって、脳波図は、互いに相互作用する異なる周波数成分をキャプチャしたものである。電力周波数の標準的な分析は、例えば、高速フーリエ変換(FFT)または様々な時間の変換(例えば、ヒルベルト変換)に基づいて、時間あたりの定義済の周波数の範囲内の振幅の調節を表す。しかしながら、それらは、相互に対して異なる周波数または周波数成分の関係を識別できない。交差周波数結合法を使用して、結合周波数を合成することが可能である。ここで、位相振幅結合を含む交差周波数結合法は、位相振幅結合は特に有用であることを証明している。
【0020】
したがって、位相振幅結合を含む交差周波数結合法は好ましい。
【0021】
脳波図で異なるタイプの波が重ねられることが知られている。アルファ波、ベータ波、ガンマ波、デルタ波、及びシータ波は既知の方式で区別され、それらの波は、特に、それらの周波数範囲が異なる。異なる波の振幅または発生は、個々の人の活動によって決まる。詳細には、アルファ波は、8~13Hzの範囲内にあり、目が閉じた状態で活動していない覚醒状態中に発生することが想定される。14~30Hzの周波数があるベータ波は精神活動中に現れる。ガンマ波は、非常に高い精神活動で31~100Hzの周波数範囲で現れる。デルタ波は1~3Hzの周波数範囲内にあり、無意識の睡眠または深い夢を見ない睡眠を示す。4~7Hzの周波数があるシータ波は、眠気または深い睡眠の段階で現れる。
【0022】
驚くことに、説明される方法によって行われた分類は、シータ波及びガンマ波またはデルタ波及びアルファ波に適用されるとき、特に高精度をもたらすことが発見されている。
【0023】
交差周波数結合法を使用して、サポートベクターマシンが高度な確実性で比較可能データを正しく分類することを可能にする。本方法の好ましいさらなる進行に従って、選択されたデータブロックは、サポートベクターマシンで分類を作成するために、トレーニングデータブロックとしてサポートベクターマシンに伝送され、トレーニングデータブロックとして選択されなかったデータブロックの少なくとも一部はサポートベクターマシンに伝送され、既知の睡眠段階に自動的に分類される。
【0024】
短い期間で既存の多くのデータブロックを正確に評価するために、サポートベクターマシンが非線形基底カーネル関数を使用するアルゴリズムを含むことで有利である。
【0025】
睡眠ポリグラフィー検査記録の評価に関して、記録データが所定の時間間隔に分割されることが有利になり、具体的には、時間間隔は15秒~5分の範囲であり、具体的には、脳波信号に関して、好ましくは30秒(いわゆる、30秒のエポック)である。
【0026】
本方法の好ましい実施形態では、加えて、心臓活動、鼻呼吸及び/または口呼吸の気流、胸部及び腹腔の呼吸運動、呼吸音、具体的には、いびき音、眼球運動パターン、下顎エリア及び下腿の電気的筋活動の生体機能に関するデータを記録し、データは、好ましくは、心電図記録法、マイクロフォン、エアフローメーター、筋電図検査用電極の測定方法または測定デバイスによって収集される。これは、人の健康状態に関する追加情報を提供する。
【0027】
説明される方法によって、この生体機能のデータを特定の睡眠段階に割り当てることが可能である。したがって、比較的容易な表現は、異常ひいては健康問題に関してなされ得る。
【0028】
本方法の第1の実施形態では、生体機能に関するデータは睡眠検査室で収集され得、好ましくは第2の夜の間に、睡眠検査室で生体機能に関するデータを収集する。
【0029】
代替として、生体機能に関するデータは家庭環境で収集できる。
【0030】
添付図を参照して、好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】周波数結合法と併せて脳波記録(EEG)データに基づいて、睡眠ポリグラフィー検査記録を定義済の睡眠段階に分類するための半自動法の順序の概略図を示す。
【
図2】シータ波及びガンマ波を使用して、個々の睡眠段階の分類の精度の概略図を示す。
【
図3】デルタ波及びアルファ波を使用して、個々の睡眠段階の分類の精度の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、周波数結合法と併せて脳波記録(EEG)データに基づいて、睡眠ポリグラフィー検査記録を定義済の睡眠段階に分類するための半自動法の順序の概略図を示す。
【0033】
図1に示される方法の第1のステップでは、人の睡眠は異なる睡眠段階に分割される。通常、睡眠は、既知の5つの段階、すなわち、段階N1、段階N2、段階N3、レム段階、及び覚醒段階に分割される。
【0034】
これらの既知の段階のそれぞれは、少なくとも1つのデータタイプに基づいて識別できる。この特定の場合、脳波記録法によって記録された脳波に基づいて、個々の段階を自動的に識別及び分類することが意図される。
【0035】
次のステップは、睡眠検査室でよく知られた睡眠ポリグラフィー検査記録の形式で人の睡眠中に生体機能に関する様々な情報を収集する。一般的に、睡眠ポリグラフィー検査記録は7~8時間続く。
【0036】
収集データは30秒の期間で時間依存データブロックに分割される。これは、すなわち人によって手動で、またはコンピュータ等によって自動的に行うことができる。
【0037】
前記データブロックから、トレーニングを受けた人または専門家は、限られた数のトレーニングデータブロックを選択して、これらの選択されたトレーニングデータブロックのそれぞれを睡眠段階に割り当てるが、ここで、人または専門家は、トレーニングブロックに含まれるデータがそれぞれ定義されたの睡眠段階に一意に割り当てできるようにトレーニングデータブロックを選択する。理想的には、人または専門家は、各睡眠段階に対して同じ数のトレーニングデータブロックを選択する。睡眠段階ごとに4つのトレーニングデータブロックを選択すれば十分であることが示されている。しかしながら、説明される方法の範囲内であれば、より多くのまたはより少ないトレーニングデータブロックを選択できることは言うまでもない。
【0038】
睡眠ポリグラフィー検査記録ひいてはデータブロックは、特に、脳波記録法によって記録された脳波を含む。脳波は脳内の異なる場所で記録された。睡眠ポリグラフィー検査記録を睡眠段階に分類するさらなる手順のために、脳波記録法によって患者の頭上の位置C3及びC4に記録されたデータを使用する(
図1のイラスト1参照)。位置C3,C4は脳波記録法で一般にC3,C4と称される位置である。
【0039】
データ準備手順を使用して、脳波記録法のC3/C4の位置で取得された各トレーニングデータブロックのデータを分析する。
【0040】
脳波の周波数及び振幅が異なる睡眠段階中に変化することが知られている。各睡眠段階は、異なる既知の周波数グループの存在、各々、強さまたは振幅によって特徴付けられる。したがって、脳の1つの位置で脳波図によって表示されたデータは、脳波の形式で脳によって発せられた異なる信号の重ね合わせを表す。例えば、高速フーリエ変換の形式の収集データの単純な周波数分析は、重畳信号に起因して睡眠段階に明確に割り当てできる周波数列を提供しない。
【0041】
この理由から、交差周波数結合を使用して、脳波記録法のC3/C4の位置で取得されたデータを処理する(
図1のイラスト2参照)。驚くことに、位相振幅結合を用いる交差周波数結合法は、特に、睡眠段階を脳波図のデータに割り当てるのに適切であることが発見されている。
【0042】
脳波記録法の過程で収集されたデータから、2つの周波数グループはC3/C4の位置で識別され、2つの周波数グループの過程及び強さは、位相振幅結合によって正確に説明できる。位相振幅結合によって、高周波数信号の振幅と低周波数信号の位相との依存関係を表す。位相振幅結合によって処理された周波数グループの特徴過程は睡眠段階に明確に割り当てできる。
【0043】
交差周波数結合によって、特に位相振幅結合によって取得されたデータブロックのデータは、当業者によって判定された睡眠段階と相関性があり、ひいては、トレーニングオブジェクトを形成する。
【0044】
選択されたデータブロックから取得されたトレーニングオブジェクトは、サポートベクターマシンに伝送され、サポートベクターマシンで分類が作成される(
図1のイラスト3参照)。
【0045】
サポートベクターマシン内に含まれるアルゴリズムは各データ要素をn次元空間の点として示し、ここで、nは特徴の数を表す。このアルゴリズムは、すべての点に対して最適な共通の分離平面、この場合ではすべてのデータ点に対して可能な限り最大の距離を持つ直線、を見つけるために、異なる分離直線間の最適な平均値を計算する必要がある。分類は、いわゆる最適超平面を決定することで実行される。次のステップとして、アルゴリズムは、前記最適超平面との距離が最小のデータ点、いわゆるサポートベクターが位置する超平面を探す。この距離には「マージン」という名前が付けられている。ここで、最適な分離超平面は、はっきりと分離された分類グループを取得するためにマージンを最大にする。したがって、サポートベクターマシンは、トレーニングデータブロックを規定の睡眠段階に分割する。
【0046】
次に、トレーニングデータブロックとして選択されなかった残りのデータブロックをサポートベクターマシンに伝送し、既知の睡眠段階へのこれらのデータブロックの自動分類は、脳波記録法のC3/C4データに基づいて行われる。
【0047】
試験段階では、説明される方法は、データブロックを睡眠段階に正しく割り当て、ひいては、93%よりも大きいヒット率を実現することが可能であった(
図1のイラスト4参照)。
【0048】
サポートベクターマシンアルゴリズムの非線形基底カーネル関数を使用することによって、トレーニングデータブロックとして選択されないデータブロックの特に正確な分類を実現する。
【0049】
全自動分類が比較的不十分な結果をもたらし、具体的には、半自動分類よりもかなり低い精度をもたらすことが事前に想定されていたが、全自動法を使用して、睡眠段階分類で驚くほど高精度が実現されている。全自動法では、交差周波数結合法は、EEG信号に適用され、具体的には、EEG信号の特定の波動、すなわちC3及びC4のEEG信号の特定の波動に適用されたものである。
【0050】
この全自動法では、
図1に示される方法のように、第1のステップは、人の睡眠を異なる睡眠段階に分割することになる。通常、睡眠は、既知の5つの段階、すなわち段階N1、段階N2、段階N3、レム段階、及び覚醒段階に分割される。
【0051】
次のステップは、睡眠検査室でよく知られた睡眠ポリグラフィー検査記録の形式で人の睡眠中に生体機能に関する様々な情報を収集し、脳波に関する情報は、生体機能に関する情報の中にあるものである。
【0052】
脳波は、頭蓋面の皮膚上に脳の異なる位置で記録できる。しかしながら、睡眠ポリグラフィー検査記録を睡眠段階に分類するさらなる手順のために、好ましくは、人(患者)の頭の皮膚上の位置C3及びC4で脳波記録法によって記録されたデータを使用する。これらの2つの位置C3及びC4におけるデータから、次に、さらなる処理または評価を行うために、デルタ波、アルファ波、ガンマ波、及びシータ波を使用する。
【0053】
収集データは30秒の期間で時間依存データブロックに分割される。これは、手動で、すなわち人によって行われ得る、または好ましくはコンピュータ等によって自動的に行われ得る。
【0054】
睡眠段階を分類するために、データブロックはトレーニングデータブロックとして選択され、これらのトレーニングデータブロックのシータ波及びガンマ波またはデルタ波及びアルファ波は、交差周波数結合法を使用して処理される。具体的には、交差周波数結合法の対応する位相振幅結合が適用される。処理されたトレーニングデータブロックは、対応する睡眠段階に自動的に割り当てられる。
【0055】
交差周波数結合によって処理された選択トレーニングデータブロックは、
図1に関連して説明されるように、サポートベクターマシンで分類を作成するために、サポートベクターマシンに伝送される。
【0056】
その後、まだ処理されていない残りのデータブロックをサポートベクターマシンに伝送し、これらのデータブロックは、シータ波及びガンマ波またはデルタ波及びアルファ波に基づいて、既知の睡眠段階に自動的に分類される。
【0057】
本方法を用いて、交差周波数結合法を使用して全ての収集データブロックを評価及び処理でき、次に、これらの処理されたデータブロックをサポートベクターマシンに伝送することを理解されたい。
【0058】
説明される方法の範囲内で、本方法を開始する前に、特性値を個々の睡眠段階に割り当てることは有用であり、特性値は、各々、交差周波数結合法によって適切な処理を受けているシータ波ならびにガンマ波及びデルタ波ならびにアルファ波から取得される。データブロックのシータ波及びガンマ波またはデルタ波及びアルファ波から、次に、睡眠段階の特性値に対応する値も交差周波数結合法によって決定できる。このように取得された値を用いて、対応する分類、すなわち睡眠段階へのデータブロックの割り当ては比較的容易に実行できる。
【0059】
図2及び
図3は、位相振幅結合を含む交差周波数結合法を用いる全自動法で、各々、シータ波ならびにガンマ波(
図2)及びデルタ波ならびにアルファ波(
図3)を使用して、個々の睡眠段階を分類する精度の概略図を示す。
【0060】
この全自動手順を用いて、80%よりも大きい全ての睡眠段階の分類の精度は実現し得、個々の段階の精度に関して90%よりも大きくなる。
【国際調査報告】