(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】クロスフローを用いた浸漬膜の操作
(51)【国際特許分類】
B01D 65/08 20060101AFI20231019BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20231019BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20231019BHJP
【FI】
B01D65/08
B01D63/08
C02F3/12 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520520
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 CA2021051384
(87)【国際公開番号】W WO2022073106
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520513244
【氏名又は名称】フィブラキャスト リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ダイアナ ベネデック
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006HA44
4D006JA02A
4D006JA02B
4D006JA15A
4D006JA18A
4D006JA31Z
4D006JA56Z
4D006KA43
4D006KE02R
4D006KE30R
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
4D006PC67
4D028BC17
4D028BD17
4D028CA09
4D028CB02
(57)【要約】
【課題】クロスフローを用いた浸漬膜の操作。
【解決手段】浸漬膜ろ過システムを操作する方法であって、この方法は、膜表面を清浄にする又は膜表面の清浄化を助けるために、膜の表面を通過する液体流、例えば再循環流を提供するステップを含む。浸漬されるアウトサイドイン型の膜は、流出液から清浄な水を効果的にろ過しているため、流出液も脱水している。固形物の濃縮を避けるために、ほとんどの浸漬膜システムでは、一定量の流出液を膜の上流領域に戻して再循環させる必要がある。これは、一般に再循環流と呼ばれ、例えば、膜バイオリアクター(MBR)における返送活性汚泥(RAS)の流れに関連する。本明細書に記載のシステム及び方法では、再循環流を制御して、膜の表面を洗浄するのに十分なエネルギーを有するようにし、従って膜に液体を供給することと膜の表面を洗浄することとを組み合わせて使用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬膜システムを操作する方法であって、
浸漬膜ユニットを有する膜タンクを提供するステップであって、膜が約6.0mm以下の膜間の面間の間隔を有するステップと、
前記膜の表面を通過する液体流を提供するステップであって前記液体流が少なくとも約0.01m/秒のクロスフロー速度を有するステップと、
約0.03scfm未満又は約0scfmの流量で前記浸漬膜ユニットを曝気するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記液体流が再循環流である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再循環流の流量が、約1Q~約10Q、又は約2Q~約5Qである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体流の少なくとも一部が、前記膜ユニットの底部に向けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記液体流の少なくとも90%が、前記膜ユニットの底部に向けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体流を、前記膜ユニットを通して上方に向かわせることをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記膜間の間隔が、約5.0mm以下、約4.0mm以下、約3.0mm以下、約2.0mm以下、約1.5mm以下、又は約0.1mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記浸漬膜システムが、膜バイオリアクターの一部であり、前記液体流が返送活性汚泥流である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体流を、ダクトを通して流すことを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記膜が、波形の面を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記膜タンクが、幅より長い長さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
流入液を受け取るための入口及び出口を有する膜タンクと、
前記膜タンク内の膜ユニットであって、前記膜が約6.0mm以下の膜間の面間の間隔を有する膜ユニットと、
少なくとも約0.01m/秒のクロスフロー速度で前記膜の表面を通過する液体流を提供するポンプ
を有する浸漬膜システム。
【請求項13】
前記膜タンクの前記出口と前記入口を接続する再循環経路をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記再循環流の流量が約1Q~約10Q、又は約2Q~約5Qである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記膜の下に曝気装置をさらに含み、前記曝気装置は約0.03scfm未満又は0scfmの曝気流量を生成するように構成された、請求項12~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記膜タンクへの前記入口から前記膜ユニットに対応する少なくとも1つの開口部にまで延在する1つ又は複数のダクトを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つ又は複数のダクトが、前記膜ユニットの少なくとも一部の下で水平に延在する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記膜ユニットが、平坦なシート膜エレメントの1つ又は複数のカセットを膜ケース内に有しており、前記カセットを通る垂直方向の流路が作成されている、請求項12~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記膜ユニットが、その幅の2倍の長さである、請求項12~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記膜間の間隔が、約5.0mm以下、約4.0mm以下、約3.0mm以下、約2.0mm以下、約1.5mm以下、又は約0.1mm以下である、請求項12~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記膜が波形の面を有する、請求項12~20のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬膜ろ過装置及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の項は、それらの項で議論されているものが先行技術又は当業者の知識の一部であることを認めるものではない。
【0003】
浸漬膜は典型的には、平坦なシート、又は中空繊維の形状である。典型的な用途としては、表流水をろ過して飲料水を生成すること及び膜バイオリアクター(MBR)で廃水を処理することが挙げられる。これらの用途では、膜は、通常、精密ろ過又は限外ろ過の範囲の孔を有する。中空繊維モジュールのいくつかの例は、米国特許第5639373号明細書に記載されている。平坦シートモジュールのいくつかの例は、米国特許第6287467号明細書に記載されている。使用時、多くの膜を含むモジュールは、ろ過される液体の、開かれたタンクに浸漬される。透過液は、重力、サイフォン、又は膜の内面に接続された透過液ポンプによって引き出される。
【0004】
ほとんどの膜システムと同様に、浸漬膜は、膜の孔が汚染される傾向にある。さらに、高濃度の懸濁固形物を含む液体、例えば混合された液体、をろ過する場合、膜モジュールの一部に脱水された汚泥のポケットが形成される可能性がある。汚染は膜の細孔に局所的に発生する一方で、汚泥は、モジュール内の2つ以上の膜間にわたる、固形物のはるかに大きな蓄積であり、モジュールの一部への新たな供給液の流れを妨げる。汚泥(スラッジ)の面積は、例えば、少なくとも一方向において10cm超の幅であることがある。多くの場合、浸漬モジュールの下に気泡が供給されて、汚染や汚泥の抑制を助ける。ただし、特に膜バイオリアクターでプロセス条件が変化した場合は、依然として汚泥が発生する可能性がある。継続的な曝気にもかかわらず、大きな汚泥の面積は、物理的な汚泥除去のために膜モジュールがタンクから引き出されるまで、時間の経過とともに拡大する可能性がある。
【0005】
国際公開第WO2017/049408号「膜ろ過装置の操作方法」は、波状表面を有する浸漬平坦シート膜を記載している。それらの膜は、一緒に、モジュール、ブロック、及びカセットへと組み立てることができる。汚染又は汚泥を防止するための、曝気(エアレーション)を含む、膜を操作する様々な方法が記載されている。
【0006】
国際公開第WO2020/006628号、「狭小部での平坦シート浸漬膜及び微細気泡曝気」は、微細気泡を使用して、狭い間隔の膜の透過率を維持することを記載している。
【発明の概要】
【0007】
この概要は、本発明及び下記の詳細な説明を読み手に導入説明することを意図しているが、クレームされた発明を限定又は定義することを意図するものではない。
【0008】
膜システムでは、膜の外面から固形物が連続的に除去され、本質的に連続的なろ過が可能になるように、膜の外面が清浄化される必要がある。浸漬膜システムは典型的に、残骸や汚染物を除去するために膜表面を洗浄する主なメカニズムとして気泡を使用する。効果を得るには、モジュールの最下部付近に空気を注入する必要がある。ブロワは、曝気装置(エアレータ)の上部にある水の重量によって生成される水圧に逆らって、曝気装置を介して空気を押し出す必要があり、水圧は、水浸漬深さとともに増加する。膜の底に気泡を発生させるのに必要なエネルギーは大きく、ろ過システムの運用コストが増加する。
【0009】
膜は供給水から清浄な水を効果的に分離しているため、膜の外表面近くで生成される流出水も脱水している。過度な固形物の濃縮を避けるために、浸漬膜システムでは、一定量の液体が膜表面を横切って流れ、それにより流出液中の固形物のレベルを低く維持し、その粘度を下げる必要がある。膜バイオリアクター(MBR)では、多くの場合、膜モジュールを通して供給液を再循環させることによって、液体流が提供される。膜モジュールを通過する流量は、初期流入流量(Q)を超える量であってよい。表流水や三次ろ過などの一部の用途では、膜モジュールを通る液体流は、システムレベルで、再循環流、再利用流、又は供給流とも呼ばれる返送流(RF)の供給に関連している。活性汚泥プロセスを使用する場合、膜モジュールを通る液体流は、返送活性汚泥(RAS)の提供に関連している。しかし、市販の浸漬膜システムは、膜を清浄に保つための主要な手段として液体流を用いていない。代わりに、前述のように、市販の浸漬膜は、膜を清浄に保つための主要な手段として空気を用いる。
【0010】
本願発明者は、膜の表面を通過するクロスフローパターンにおいて適切な流量及び速度で液体流を供給することにより、膜表面を清浄に保つための主要又は唯一の手段として液体流を用いることを可能にすることを発見した。液体流は、膜バイオリアクターの返送活性汚泥(RAS)のように再循環流に関連付けることができ、又は水(すなわち表流水)及び三次流出液の処理における供給流、再利用流、又は返送流(RF)に関連付けることができる。まとめて、RAS、供給流、再利用流、及びRFを再循環流と呼ぶことができる。液体流の体積及び流量は、膜表面を清浄にするための、表面の十分なせん断を提供するように選択される。この液体流の流量と速度は、液体の粘度と液体中の懸濁固形物によって異なりうる。これらのパラメータは、膜表面を洗浄し、かつ清浄にするのに十分なせん断と乱流を作成するために必要なレイノルズ数に影響を与えうる。液体流量が十分な値にされ又は最適化されると、浸漬膜を洗浄するために通常使用される曝気のレベルを、下げることができ、又は特定の用途では省くことさえできる。十分な又は最適化された液体流を、(1)膜に液体を提供するために用いること、(2)膜表面を洗浄するために用いることは、膜表面を洗浄するための主要手段又は補助手段として曝気装置を使用する同様のシステムと比較して、より効率的かつ/又は費用対効果の高いろ過システムを提供することを可能にする。
【0011】
本明細書は、少なくとも約0.01m/sのクロスフロー速度で膜の表面を通過する液体流を提供する方法を記載している。随意に、膜の面間の間隔は約6.0mm以下である。随意に、この方法は、約0.03scfm未満又は0scfm(すなわち曝気無し)の流量で膜を曝気することを含む。随意に、液体流は膜の底部に向けられる。随意に、液体流は、膜を通過して上方に向けられる。
【0012】
また本明細書は、浸漬膜ユニットを有する浸漬膜システムも記載している。本システムは、上述の方法ステップでの使用に特に適していると考えられる。各膜ユニットは、ろ過膜を含む1つ若しくは複数のカセット又は他の構造を有することができる。随意に、膜の面間の間隔は、約6.0mm以下である。本システムは、液体流の経路、例えば再循環流の経路を含み、これは、少なくとも約0.01m/sのクロスフロー速度で膜の表面を通過する液体流を提供するように構成されている。随意に、本システムは、膜を約0.03scfm未満又は0scfmの流量で曝気するための曝気装置(エアレータ)を含む。代替的には、本システムは、曝気装置を含まない。いくつかの例では、本システムは膜バイオリアクターの一部である。随意に、液体流は、膜の底部に向けられる。随意に、液体流は、膜を通過して上方に向けられる。
【0013】
少なくともいくつかの場合において、本明細書に記載の方法及び膜システムは、曝気された、又はより高度に曝気された浸漬膜システムの操作コストを削減しうる。気泡によってもたらされる洗浄の代わりに、膜表面を通過して流れる液体の洗浄効果を用いることによって、清浄化が提供又は強化される。液体流は、単独で若しくは空気によって補われて、又は、いくつかの場合には空気と共に、いくつかの場合には空気無しで、膜の表面を清浄に保つための基本的なせん断メカニズムとして使用される。空気は、クロスフローパターンにおける適切な速度の液体流によって、全体的又は部分的に置き換えられ、それにより、膜表面でせん断を生み出すようになっている。理論に拘束されることを意図するものではないが、膜を清浄にするために十分な又は最適化された液体流を用いることによって、浸漬膜の全操作コストが削減されると考えられる。これはなぜならば、高流量液体ポンプを操作するのに必要なエネルギーは、曝気装置の上部にあるタンク内の液体の位置水頭に対して空気を押す必要があるブロワを操作する場合よりも少なくて済むためである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、膜バイオリアクターの概略図である。
【0015】
【
図2】
図2は、
図1の膜バイオリアクターの膜タンクの概略側面図であり、一方の側部が除去されてダクトを示している。
【0016】
【
図3】
図3は、
図2の膜タンクの概略端面図であり、タンクの前部が除去されている。
【0017】
【0018】
【
図5】
図5は、
図4に記載の膜シートを含む膜ユニットモジュールの正面図である。
【0019】
【0020】
【
図7】
図7は、
図5に示されるような膜シートの間隔及び配列を示す、
図6の膜ユニットの断面図である。
【0021】
【
図8】
図8は、供給液及び透過液の流れ方向を示す、切り開かれたモジュールの概略斜視図である。
【0022】
【
図9】
図9は、
図8のモジュールを3つ積み重ねたものの立面図である。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【
図15】
図15は、異なる再循環流の流量での曝気レベルを比較する透過率の調査からのグラフ及び表である。
【0029】
【
図16A】
図16Aは、様々な曝気レベル及び再循環流の流量を比較した透過率の調査からの表とグラフである。
【
図16B】
図16Bは、様々な曝気レベル及び再循環流の流量を比較した透過率の調査からの表とグラフである。
【
図16C】
図16Cは、様々な曝気レベル及び再循環流の流量を比較した透過率の調査からの表とグラフである。
【
図16D】
図16Dは、様々な曝気レベル及び再循環流の流量を比較した透過率の調査からの表とグラフである。
【0030】
【
図17A】様々な曝気の流量及び再循環流の流量を比較するせん断応力の調査からのグラフである。
【
図17B】様々な曝気の流量及び再循環流の流量を比較するせん断応力の調査からのグラフである。
【
図17C】様々な曝気の流量及び再循環流の流量を比較するせん断応力の調査からのグラフである。
【
図17D】様々な曝気の流量及び再循環流の流量を比較するせん断応力の調査からのグラフである。
【
図17E】様々な曝気の流量及び再循環流の流量を比較するせん断応力の調査からのグラフである。
【0031】
【
図18A】クロスフロー速度の調査からのグラフである。
【
図18B】クロスフロー速度の調査からのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書には、浸漬膜システムの操作方法が記載されている。この方法は、下記を含む:浸漬膜ユニットを有する膜タンクを提供すること、この膜は、約6.0mm以下の膜間の面間の間隔を有する:膜の表面を通過する液体流を提供すること、この液体流は、少なくとも0.01m/秒のクロスフロー速度を有する:及び、浸漬膜ユニットを約0.03scfm未満又は0scfmの流量で曝気すること。
【0033】
本明細書には、浸漬膜システムも記載されている。このシステムは、下記を含む:流入液を受け取るための入口と出口とを有する膜タンク:膜タンク内の膜ユニットにおける膜は、約6.0mm以下の膜間の面間の間隔を有する:及び、少なくとも0.01m/sのクロスフロー速度で膜の表面を通過する液体流を提供するポンプ。
【0034】
クロスフロー速度(CFV)は、膜表面に対して概ね正接である(タンジェンシャルな)液体流の線速度を指す。本明細書に記載の液体流CFVは、膜の望ましい清浄化を提供する十分な膜せん断力を生み出す任意の速度であってよく、単独で又は空気によって補助される。随意に、CFVは下記であってよい:少なくとも約0.01m/s、例えば約0.01m/s~約2.0m/sまで:約0.3m/s~約0.8m/sまで:約0.1m/s~約1.0m/sまで:約0.01m/s:約0.02m/s:約0.05m/s:約0.1m/s:約0.15m/s:約0.2m/s:約0.25m/s:約0.3m/s:約0.35m/s:約0.4m/s、約0.45m/s、約0.5m/s、約0.6m/s:約0.7m/s、約0.8m/s:、約0.9m/s:約1.0m/s:約1.1m/s:約1.2m/s:約1.3m/s:約1.4m/s:約1.5m/s:約1.6m/s:約1.7m/s:約1.8m/s:約1.9m/s:約2.0m/s:又は上記のうちの任意の速度から上記のうちの任意の他の速度まで。好ましくは、CFVは、約0.1m/sから約1.0m/s、又は約0.2m/s超である。随意に、CFVは、空気によって提供される寄与が減少又は省略された状態で提供される。本明細書に記載されているCFVによって生成される十分な膜せん断力は、下記の膜表面上の平均せん断応力であってよい:約0.2Pa~約5.0Pa、例えば、約0.5Pa~約3.0Paまで:約0.7Pa~約2.1Paまで:約0.5Pa:約0.6Pa:約0.7Pa:約0.8Pa:約0.9Pa:約1.0Pa:約1.1Pa:約1.2Pa:約1.3Pa:約1.4Pa:約1.5Pa:約1.6Pa:約1.7Pa:約1.8Pa:約1.9Pa:約2.0Pa:約2.1Pa:約2.2Pa:約2.3Pa:約2.4Pa:約2.5Pa:約2.6Pa:約2.7Pa:約2.8Pa:約2.9Pa:約3.0Pa:又は上記のうちの任意の圧力から上記のうちの任意の他の圧力まで。好ましくは、膜表面の平均せん断応力は、約0.5Paから約3.0Pa、又は約1.0Pa超である。
【0035】
本明細書に記載の液体流CFVは、(1)再循環流の流量:(2)膜ユニット内の膜間の断面積、及び/若しくは、膜タンクの壁と壁に隣接して配置された膜ユニットの前面、側面、及び背面との間の断面積、(3)曝気のレベル又は流量、(4)液体流の粘度及び/若しくは液体流中の懸濁固形物、(5)液体流の方向、(6)気泡のサイズ、又は(7)それらの任意の組み合わせに関係しうる。本願発明者は、空気によって提供されるCFVへの寄与が減少又は省略された状態で、本明細書に記載されているCFVで膜の表面を通過する液体流を提供することにより、膜の表面に、膜の望ましい清浄化を提供するせん断応力が生じることを発見した。空気によって提供される寄与が減少したCFVは、膜表面を通過する液体流のCFVの、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満を構成する曝気(例えばバブリング)を意味する。
【0036】
随意に、本明細書に記載の液体流CFVは、少なくとも、再循環流の流量を調整することによって提供され、又はこれのみによって提供される。MBRへの流入液又は廃水の流量は、慣用的にQと呼ばれる。膜ユニットを通して液体を再循環させることにより、液体流を提供することができる。MBRでは、膜ユニットを通過する混合液は、返送活性汚泥(RAS)の提供に関連している。膜ユニットとタンクは、二次浄化装置に取って代わる。いくつかの他の例では、膜タンクは、別のろ過システムの一部であってよく、例えば飲料水若しくは工業用プロセス水を生成することを目的とした、表流水若しくは地下水のろ過システム、又は別のプロセスによって既に処理された廃水を仕上げることを目的とした、三次ろ過システムなどの別のろ過システムの一部になり得る。表流水のろ過では、膜ユニットを通って流れる液体は供給流を指すことがある。三次ろ過では、膜ユニットを通って流れる液体は、二次流出液を指すことがある。表流水又は三次ろ過において、膜ユニットを通る流れは、システムレベルで、代替的には再循環流又は供給流とも呼ばれる、返送流(RF)の提供に関連している。再循環流の流量は下記のように調節されてよい:例えば、約1Q~約10Qまで、例えば、約2Q~約5Qまで:約1Q、約2Q:約3Q:約4Q:約5Q:約6Q:約7Q:約8Q:約9Q:約10Q:又は、上記のうちの任意の再循環流流量から上記のうちの他の任意の再循環流流量まで。好ましくは、再循環流の流量は約2Qから約5Qである。随意に、1つ又は複数の液体ポンプ、例えば高流量の液体のポンプを再循環流の経路に沿って設置してよく、かつ、例えば流入液の流量を調整することによって、かつ/又は流出液の速度を調整することによって、再循環流流量を調整するためにそのポンプを用いてよい。
【0037】
随意に、本明細書に記載の液体流CFVは、少なくとも膜間の断面積を調整することによって提供され、又はさらにはこれのみによって提供される。いくつかの例では、膜間の面間の間隔は、約6.0mm未満であってよく、例えば下記であってよい:約0.1mmから約6.0mm:約1.0mmから約4.0mmまで:約6.0mm:約5.0mm:約4.0mm:約3.0mm:約2.0mm:約1.5mm:約1.0mm:約0.5mm:約0.1mm:又は上記のうちの任意の間隔から上記のうちの他の任意の間隔まで。好ましくは、膜間の面間の間隔は、約1.0mmから約4.0mmである。随意に、本明細書に記載の液体流CFVは、少なくとも、膜タンクの壁と、壁に隣接する膜ユニットの前面、側面、及び背面との間の間隔を調整することによって提供され、又はさらにはこれのみによって提供される。膜タンクの壁と、壁に隣接する膜ユニットの前面、側面、及び背面との間の比較的短い距離は、例えばより目標が絞られた流れが望まれるときに好ましいことがある。膜ユニットを収容する膜タンクの形状は、望ましいCFVが達成される限り、任意の形状であってよい。膜タンクは、円形、楕円形、長方形、又は正方形の形状を有することができる。
【0038】
随意に、液体流は、本明細書に記載されている液体流CFVに対して、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満で寄与する割合で曝気され、例えば、曝気流量が、下記である:約0.03scfm未満又は0scfm:約0.0001scfm~約0.03scfmまで:約0.003scfm~約0.012scfmまで:約0.0001scfm:約0.0005scfm:約0.001scfm、約0.0015scfm:約0.002scfm:約0.0025scfm:約0.003scfm:約0.0035sscfm:約0.004scfm:約0.0045scfm:約0.005scfm:約0.01scfm:約0.012scfm:約0.015scfm:約0.02scfm:約0.025scfm:約0.03scfm:0scfm:又は上記のうちの任意の曝気流量から上記のうちの他の任意の曝気流量まで。好ましくは、曝気流量は、約0.003scfmから約0.012scfmまでである。随意に、液体流は、曝気されない。曝気流量は、膜ユニットの下に設置された1つ又は複数の曝気装置を通して押し出される空気の量を調節することによって、又は曝気装置を省略することによって制御され得る。曝気装置によって生成される気泡のサイズは、望ましいCFVが達成される限りにおいて、調整してよく、例えば、約5.0mmから約9.0mmの範囲の平均泡直径を有する粗大気泡を使用することができる。約5.0mm以下の平均泡直径を有する微細泡も使用できる。
【0039】
随意に、本明細書に記載されている液体流CFVは、少なくとも、液体流の方向を調整することによって提供され、又はさらにはこれのみによって提供される。随意に、液体流は、浸漬膜ユニットの底部に向けられる。随意に、混合液の流れを2つ以上の部分に分割することができる。場合によっては、2つ以上の部分のそれぞれの流量は、2つ以上の部分の平均流量の10%以内である。随意に、流入液は、浸漬膜ユニットを通してさらに上方に向けられる。膜ユニットを通って上向きに流れる流入水の流れは、隣接する膜を互いに引き離すことを助けることができ、膜ユニット内の脱水又は汚泥の保持を抑制することを助けることができ、かつ/又は膜ユニット全体に新たな流入液を分散させることを助けることができる。場合によっては、膜ユニットを通して貫流型又は垂直のプラグフロー方式が提供され得る。
【0040】
随意に、膜ユニットの下で水平に延在する1つ又は複数のダクトが、液体を膜ユニットに向ける。いくつかの例では、ダクトは、1つ又は複数の膜ユニットを含むタンクの長さに沿って延在する。ダクトは、1つ又は複数の隙間を有し、この隙間は、その上の膜ユニットの水平断面積の少なくとも80%である面積を有する。ダクトは随意にバッフルを有し、それにより、バッフルを通じて流れる液体が膜ユニットに入る前に隙間の全領域にわたって分散できるようにする。隙間及びバッフル開口部の位置及びサイズは、膜ユニットへの、全液体流、例えば流入混合液流の選択的な分割及び選択的な方向を提供するのを助ける。好ましくは、膜タンクに入る流入液の少なくとも90%、又は少なくとも95%が、ダクトを通って膜ユニットに送られる。いくつかの例では、本明細書に記載されている方法及びシステムはダクトを含まない。
【0041】
随意に、液体流の粘度及び/又は固形分は、例えば、液体流中の内容物の希釈を調整することによって調整することができる。
【0042】
図1~3は、浸漬膜システムを操作する本明細書に開示されたプロセスを使用するろ過システム100の例を示す。流出液102は、上流処理ユニット(図示せず)、例えば、一次処理ユニット、浄化装置、又はMBR内の回転ベルトフィルターから流出し、1つ又は複数のプロセスタンク104に流れる。MBRでは、1つの好気性プロセスタンク104が存在しうる、又は好気性、無酸素かつ/又は嫌気性の処理ゾーンを含む一連の2つ以上のプロセスタンク104が存在し得る。流出液102はプロセスタンク104で処理され、流入液106を生成する。MBRでは、プロセスタンク104内の微生物が流出液102を消化し、混合液106を生成する。流入液106は膜タンク108に移送される。図示の例では、流入液ポンプ110は、入口112を通して流入液106を膜タンク108に圧送する。他のいくつかの例では、膜タンク108は、別のろ過システムの一部、例えば、飲料水若しくは工業用プロセス水の生成を目的とした表流水若しくは地下水ろ過システムの一部、又は別のプロセスによってすでに処理された廃水の仕上げを目的とした3次ろ過システムの一部であってよい。
【0043】
膜タンク108は、1つ又は複数のダクト113及び1つ又は複数の膜ユニット114を含む。1つ又は複数のダクト113は、膜タンク108の入口112から膜ユニット114の底部まで延在する。ダクト113は、この例では混合液106である流入液106が膜タンク108内を流れて1つ又は複数の膜ユニット114に到達するプレナムを提供する。次に、流入液106は、膜ユニット114を通って上向きに流れ、膜ユニット120の外側の膜タンク108に流れ込む。透過液ポンプ116は、混合液106が膜ユニット114を通過する際に、混合液106から透過液118を引き出す。従って、混合液106は膜ユニット内で濃縮され、活性汚泥122として膜ユニットを離れる。活性汚泥122は、例えばポンプ又は重力によって膜タンク108から引き出され、かつ余剰活性汚泥(WAS)124又は返送(又は再循環)活性汚泥(RAS)126に分割される。
図1から
図3に示す例では、ろ過システム100への流出液の流量はQであり、再循環流の流量は約1Qから約10Qである。
【0044】
膜タンク108は、
図2の側面図及び
図3の端面図に示される。膜タンク108は、膜タンク108の幅の2倍以上、又は4倍以上の長さを有し得る。膜タンク108の壁と膜ユニット114の前面、側面、及び背面との間の間隔は、図示の例におけるものよりも狭くすることができる。
【0045】
図示の例では、ダクト113は、膜タンク108の底部によって部分的に形成される。側壁130は、膜タンク108の底部から膜ユニット114の底部にまで上方に延在する。ダクト113は、膜ユニット114の下でタンク108の長さに沿って延在する。ダクト113の下流側端部は、端壁132によって閉じられる。ダクト113の頂部はプレート134で形成される。プレート134は不連続であり、膜ユニット114の水平方向の寸法に概ね等しい長さ及び幅の隙間136を提供する。
【0046】
ダクト113は、随意に、バッフル138を有する。図示の例では、バッフル138は、プレート134から下方に延在しており、それにより、バッフル138を通って流れる液体が、膜ユニット114に入る前に隙間136の全領域にわたって分散することができるようになっている。隙間136は、その上の膜ユニット114の水平断面積の少なくとも80%である面積を有し得る。バッフル138はまた、1つ又は複数の膜ユニット114の底部の下で、少なくとも部分的に、随意に全体にわたって水平に延在する。図示の例では、バッフルは、膜タンク108の底部と概ね平行に水平に延在する。代替的には、バッフルに角度を付けて、乱流を低減することができる。バッフル138の水平方向の延在部は、開口部140を画定する。随意に、複数の開口部140は、互いに対して異なるサイズを有し、それによって膜ユニット114への全流入混合液流の選択的な分割を提供することを助ける。バッフル138は、膜ユニット114の底部の実質的に全て(すなわち、80%以上又は90%以上)又は全てにわたり水平方向に延在するが、ダクト113の頂部に対して下方に変位しており、より広い範囲の流入流量にわたって、膜ユニット114の間で流入液流の選択的な分布を生成する傾向がある。この理由は部分的には、理論による制限を意図するものではないが、開口部140が隙間136に対して面積が小さい(すなわち、50%以下)ため、又は開口部140が隙間136の上流で流入流に面しているためである可能性がある。
【0047】
図示の例では、第1の(上流側)バッフル138に関連する開口部140の高さは、第1のバッフル138とプレート134との間の垂直距離によって画定される。中間バッフル138に関連する開口部140の高さは、中間バッフル138と第1バッフル138との間の垂直方向距離によって画定される。最も下流側の膜ユニット114のためのバッフル138は、タンク108の床の一部及びダクト113の末端部132によって提供される。最も下流の膜ユニット114のための開口部140は、中間バッフル138とタンク108の底部との間に画定される。代替的には、膜ユニット114ごとに別個のダクト113を設けることができるが、これには追加の材料及び製造が必要であり、場合によって1又は複数のダクト113の全体的な損失水頭が増加すると予想される。図示の例では、開口部140と隙間136との間のダクト113の部分は、混合液がダクト113から膜ユニット114の底部に流れるための流路を提供する。
【0048】
膜ユニット114は、代替的にシュラウドとも呼ばれる膜ケースを随意に含み、これは膜自体を含み垂直方向に延在するコンジットを提供する構造である。膜ケースは、別個の構造であってもよいし、又は膜ユニット114の他の部分と一体的に形成されてもよい。図示の例では、膜タンク108は、ブロワから空気が供給されるときに泡を生成する曝気装置を含まない。いくつかの例では、膜タンク108は、本明細書に記載されている膜表面を通過する液体流CFVに対して、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満で、例えば約0.03scfm/ft2未満又は0scfm/ft2の流量で寄与する曝気装置を有してよい。曝気装置は、膜ケース内に設置するか、又は膜ユニット114の下に配置することができ、随意に、垂直方向に延在しておりダクト113を膜ユニット114に接続するコンジットを提供するシュラウド又は曝気装置ケース内に配列することができる。膜が膜ケース内にある場合、膜は、好ましくは、液体が膜ユニットを通って膜を通過して上向きに流れるための垂直経路を提供するように配列される。例えば、膜は、平坦なシート膜又は平坦なセラミック膜であってよい。
【0049】
いくつかの例では、ダクト113と混合液入口112との間の接続、及びダクト113と膜ユニット114の底部との間の接続は、概ね液密である。入口112及び膜ユニット114への接続を除いて、ダクト113は概ね密閉プレナムである。膜ケース及び曝気装置ケースを使用する場合、これらは通常は密閉管である。このようにして、膜タンク108への流入液は、膜ユニット114へと全体的に直接に提供される。膜タンク108内の予め濃縮された流入液と、ダクト113を通して膜ユニットに供給される流入液とは、実質的に混合しない。ただし、これらは大規模な土木工事であるため、完全な液密接続又は完全な密閉ダクト若しくは密閉膜ケースは期待できない。例えば、ダクト113の曲がった板金フランジと、膜タンク108のコンクリート製の壁若しくは床又はカセット50のフレームとの間の接続は、ある程度漏れる可能性があり、ダクト113自体は、完全に液密な接続で互いに接続されてはいない2つ以上の部品から製造され得る。しかしながら、開放膜タンク108及び浸漬膜ユニット114の使用は、完全に密封されたシステムに比べて、より経済的な大規模システムの構築を可能にする。
【0050】
従来は撹拌槽型リアクターとして操作される開放膜タンク108内にあるにもかかわらず、
図2及び3の例における膜ユニット114は、貫流クロスフローにむしろ近いフロー方式の下で操作することができる。好ましくは、膜タンク108に入る流入液の少なくとも90%、又は少なくとも95%が、ダクト113を通って膜ユニット114に向けられ、かつ膜ユニット114を通って上向きに流れる流入液の10%以下、又は5%以下が、入口112から膜タンク108への流入とは対照的に、ダクト113の外側の膜タンク108から流入する。随意に、ダクト113、ダクト113への接続及びダクト113からの接続は、十分に閉じられかつ緊密であり、それにより、膜ユニット114の底部における流入液の全懸濁固形物(TSS)濃度が、流入液のTSS濃度よりも5%以下、又は3%以下高くなるようになっている。これにより、膜タンク108の異なる部分にある膜ユニット114に到達する流入液の濃度も概ね均一化される。ダクト113は、また、膜タンク108の異なる部分にある膜ユニット114への流れを概ね均等な分配を提供することを助ける。膜ユニット114が膜ケースを含む例では、膜ユニット114を出る水の濃度もまた、概ね均一化される。例えば、
図1のようなMBR100では、膜ユニット114の頂部における水(濃縮物)の全懸濁固形物(TSS)濃度は、全体として膜タンク108の活性汚泥120のTSS濃度より5%以下低い。混合液106及び活性汚泥120の固形分が多いMBR100の場合、膜ユニット114間の固形分濃度の差を減らすことで、膜洗浄頻度を減らすことができ、膜ユニット114の平均流束を増加させることができる。
【0051】
図4~14は、カセット50又はその様々な部分の例を説明する。カセット50は、単独で、又は2つ以上のカセット50のセットで用いてよく、それによって膜ユニット114を提供する。
【0052】
図4は、エレメントとも呼ばれる膜シート10の例を示す。膜シート10は、成形されかつ互いに結合されて内部チャネル14を提供する2つの基板シート12でできている。基板シート12の外側は、多孔性分離層16でコーティングされている。分離層16は、基板シート12上に膜形成ドープを成型し、そして急冷槽で該ドープを硬化させることによってできていてよい。これにより、非溶媒誘起相分離(NIPS)法に従って、典型的に限外ろ過又は精密ろ過の範囲で、孔が生成される。2つの基材シート12の間の中央シート18は随意であるが、所望される場合には、より剛性の高い膜シート10を提供するために、追加されうる。他の例では、エレメントは、例えばKubota又はMicrodyn Nadirエレメントのように、フレーム又はスペーサー上に共に取り付けられた2枚の平坦シート膜でできてよい。他の例では、エレメントは板状のセラミックスでできてよい。
【0053】
図5は、膜モジュール20を示す。モジュール20は、1つ又は複数の膜シート10を有する。内部チャネル14に向けて開いている膜シート10の縁部(すなわち、
図5に示される縁部)は、ヘッダー22に埋め込まれる。代替的には、ヘッダー22はポッティングヘッド又は透過コレクターとも呼ばれる。使用中、ヘッダー22は概ね垂直に向けられ、内部チャネル14は概ね水平に向けられる。例えばポンプ又はサイフォンによってヘッダー22の透過液ポート24に吸引力が適用されると、透過液26が内部チャネル14内で生成され、ヘッダー22を通って流れる。随意に、膜シート10の一端又は両端から透過液を引き出すことができる。モジュール20は典型的に、2つ以上の平行な膜シート10を有する。隣接する膜シート10は、例えば幅約0.1mmから約6.0mmまでの、概ね等しい幅の垂直の隙間によって分離される。一例では、モジュール20は、幅約1900mm、高さ約800mm、厚さ約60mmであり、その厚さにわたって概ね等間隔に配置された16枚の膜シート10を含む。この例では、ヘッダー22及び外側の膜シート10が膜ケースを形成している。他の例では、モジュールは別個の膜ケースで囲まれ得る。
【0054】
図6は、
図5の膜モジュール20の一部を示す。膜バイオリアクター(MBR)又はろ過プラントで使用されるとき、ろ過される液体20(例えば、再循環流)は、モジュール20の下から提供され、モジュール20を通って(隣接する膜シート10の間の隙間21を通過して)上方に流れる。
【0055】
図7は、モジュール20内の一連の膜シート10を示す。膜シート10は窪み8を有する。膜シート10は、幅又は厚さCを有する。図示の例では、厚さCは、規則的な表面の特徴の端において測定され、これは膜の表面積の大部分を覆う。平滑な平坦シート膜は、シート10全体にわたって概ね一定である幅又は厚さCを有する。膜シート10はまた、中心間間隔Bを有する。
【0056】
膜シート10は面間の間隔Aを有する。別段の記載がない限り、その中の間隔、離間している膜シート、又は他の同様の記述への言及は、面間の間隔を指す。間隔Aは、中心間の間隔Bから幅Cを引いた値に等しい。
図7に示されるように、隣接するシート10は、窪み8が互いに垂直にずれて配列されてよく、例えば、シート10内の隣接する窪み8の間の垂直距離の半分だけずれて配列されてよい。膜シートは互いに密接に離間しており、例えば、:約6.0mm以下、約5.0mm以下、約4.0mm以下、約3.0mm以下、約2.0mm以下、例えば約1.5mm、の間隔Aを有する。
【0057】
図8は、切り開いたモジュール20の概略図を示しており、それによって、モジュール20を通る液体30の流れをさらに説明している。この例では、膜シート10は波状の形状を有しており、これは、液体30が上昇するにつれて、液体30に乱流を生じさせることができる。膜シート10は、液体30がそれらの間を移動するにつれて振動し得る。液体30の流れは、膜シート10のいくらかの直接的な洗浄を提供し得る。いくつかの例では、約0.03scfm未満又は0scfmの曝気流量で提供される泡(図示せず)は、膜シート10の間を移動し、膜シート10を振動させうる。泡はまた、液体流を援助することに加えて、膜シート10のいくらかの直接的な洗浄を提供しうる。
【0058】
図9は、3つのモジュール20の積層体32を示す。モジュール20は、互いの頂部に垂直に積み重ねられる。下部モジュールの透過液ポート24は、上部モジュールのヘッダー22内のソケット(見えない)に嵌合する。最も下側のモジュール20のソケットは、塞がれている。最も上側のモジュールの透過液ポート24は、透過液引き出しパイプに接続することができ、3つすべてのモジュール20から透過水を引き出すために用いることができる。積層体32は、2つ、4つ又は他の個数のモジュール20でできていてもよい。隣接するモジュールのヘッダー22が垂直方向に整列し、かつ連続しているため、供給液は、ヘッダー22によって邪魔されることなく、積層体32全体を垂直方向に流れることができる。
【0059】
図10は、フレーム42内に複数のモジュール20を含むブロック40を示す。モジュール20は、フレーム42内に隣り合って配置されている。モジュール20は、フレーム42の内外に垂直方向にスライドすることができる。フレーム42内では、モジュール20のヘッダー22は対応するスロットに篏合しており、該スロットは図示の例では、フレーム42に取り付けられた樹脂成形品44によって提供される。フレーム42は、好ましくはステンレス鋼でできているが、他の材料を使用することもできる。側板45は、モジュール20に平行なフレームの側面を覆う。ヘッダー22はそれぞれ、2つ以上のモジュール20を含み、隣接するヘッダー22は互いに接触するか、又は近接しており、例えば、互いに10mm未満離れているか、若しくは互いに5mm未満離れている。これにより、側板45及びヘッダー22は、ブロック40を通じて垂直に延在する流体経路を画定する一体的膜ケースを形成する。
【0060】
図11は、ブロック40の頂部の拡大図を示す。ブロック40の頂部にあるフランジ46及びブロック40の底部にある同様のフランジ(
図10には図示せず)を使用して、上部又は下部ブロック40を支持し、スタック内のブロック40を共に固定できるようにすることができる。モジュール20の透過液ポート24は、フランジ46の上に突出し、
図10に記載されているように、スタック内でのモジュール20の間の透過液の接続を可能にする。
【0061】
図12は、ブロック40の一部の水平方向断面の拡大図を示す。ヘッダー22は、ヘッダー22、膜シート10の縁部及び膜シート10間のポッティング樹脂27によって画定される透過チャンバー23を含む。透過液チャンバー23は、透過液ポート24及びソケットと流体連通している。フレーム42内にモジュール20を保持するために、図示のように、ボルト48がフレーム42を貫通し、ヘッダー22に接着され又は樹脂成形されたヘッダー22と一体成形されたナット25に、螺着する。
【0062】
図13は、互いに垂直に積み重ねられた3つのブロック40でできているカセット50を示している。随意に、作製されたカセット50は、1つ、2つ、4つ又は他の個数のブロック40を有する。上部ブロック40の透過液ポート24は、図示のように、随意に接続パイプ52を通じて透過液ヘッダーパイプ54に接続される。ブロック40のフレーム42は、支柱58によって互いに接続され、支柱58は、図示の例では、それらの端部にナットを備えたねじ付きロッドである。また支柱58によって、上部ブロック40をカセットフレーム56に取り付け、カセットフレーム56は、カセット50をタンク内に吊るすために用いることができる。図示の例では、空気供給パイプ60は、カセットの底部に空気を運び、最下部ブロック40の下の一連の曝気装置(見えない)に、約0.03scfm未満又は0scfmの曝気流量で供給される。他の例では、カセットは空気供給パイプ60及び曝気装置を含まない。垂直方向に隣接するブロック40の成形品44及び側板45は、流体がカセット50を通って流れるための連続的な垂直延在経路を形成する。これにより、カセット50全体が一体的膜ケースを有する。代替的には、別個の膜ケースを提供することができる。
【0063】
図14は、タンク70に組み込まれたカセット50を示す。カセット50は、カセットフレーム56に取り付けられたクレーン又はホイストによって、膜タンク70内に下降させたり、又は膜タンク70から持ち上げたりすることができる。カセットフレーム56は、膜タンク70の棚部に載置可能である。カセットフレーム56は、タンク70の壁、特に図示の例ではタンク70に取り付けられた棚部72に載置されている。代替的には、カセット50は、タンク70の底部に載置可能であり、又はカセット50は、タンク70の底部に載るフレーム又は他の構造に取り付けることができる。図示の例では、カセット50は84個のモジュール20を有する。体積充填密度は450~500m
2/m
3である。フットプリントでの充填密度は約850m
2/m
3である。一例では、各モジュール20は幅約7~約10cmである。モジュール20は、高さが1-5個のモジュール20の垂直スタックとしてカセット50内に配列可能である。カセット50内のモジュール20の各スタックは、スタック内の最も下のモジュール20の下に幅約3~6cmの曝気装置を1つ有する。
【0064】
タンク70は、随意に、図示のようにカセット50を密接に取り囲む。混合液(又は他の供給液)は、好ましくは、タンク70の一端からタンク70の底部にあるチャネル74に供給され、タンク70の反対側の端部の頂部にある堰(図示せず)から出る。この配列は、モジュール20を通る供給液の平均的な上向きの流れを提供する。2つ以上のカセット50をタンク70の長さに沿って間隔をあけて配置し、組み合わせて膜列を作ることができる。完全な膜システムには、1つ又は複数の列が含まれ得る。図示の例では、空気供給パイプ60は、カセットの底部に空気を運び、最下部ブロック40の下の一連の曝気装置(見えない)に、約0.03scfm未満又は0scfmの曝気流量で供給される。他の例では、カセットは空気供給パイプ60及び曝気装置を含まない。
【0065】
適切な膜シート、モジュール、ブロック及びカセットを説明する追加の情報は、2017年4月6日に公開されたFibracast Ltdによる米国特許出願公開第2017/0095773号の「膜ろ過装置の操作方法」、2013年4月25日に公開されたFibracast Ltdによる国際公開第WO2013/056373号の「成形シート膜エレメントをコーティングするためのコーティング装置及びプロセス」、並びに、2011年10月27日に公開されたFibracast Ltdによる国際公開第WO2011/130853号の「形成シート膜エレメント及びろ過システム」、2020 年1月9日に公開されたFibracast Ltdによる国際公開第WO2020/006628号の「狭小部での平坦なシートの浸漬膜及び微細気泡曝気」において見出すことができ、これらは本参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【実施例】
【0066】
実施例
【0067】
実施例1
【0068】
試行パイロットの実施例では、透過率に対する曝気及び再循環流の影響が試験された。本明細書で開示されるろ過システムは、膜タンク108内に膜ユニット114を含み、各膜ユニット114は、
図13に示されるカセット50の形態であり、カセット50は、1.5mmの膜シート間の面間の間隔を有する4つの膜モジュールからなる。ダクトは、タンクの長さに沿って延在し、膜ユニットの水平断面積の約80%を覆う隙間を有し、液体を、上向きにかつ膜ユニットを通して移動させた。膜タンクは、膜ユニットの下に設置された曝気装置も含んでいた。ろ過システムは以下の条件で操作された:(1)1Qの再循環流量、及び膜ユニットの下の0.003scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置、並びに(2)4Qの再循環流で、及び膜ユニットの下の0scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置、すなわち、気泡曝気装置は停止されていた。気泡無しで再循環流の流量を4Qに増加させると、Qの再循環流量と0.003scfm/ft
2の空気を用いた膜透過率の10%以内の膜透過率が得られた(
図15を参照)。
【0069】
実施例2
【0070】
実施例1で説明したように、本明細書で開示されたろ過システムを使用する別の試行パイロット実施例では、透過率に対する曝気及び再循環流量の影響が試験された。ろ過システムは以下の条件で操作された:(1)再循環流量を1Qから5Qに上げ、曝気無し、及び:(2)一貫した、又はほぼ一貫した再循環流の流量を伴う増加した曝気流量。再循環流の流量を増加させると、曝気なしで透過率が増加し、一定の又はほぼ一定の再循環流量を維持しながら曝気を増加させると、透過率が初期には増加し、その後透過率が減少した(
図16A~Dを参照)。
【0071】
実施例3
【0072】
試行モデルの実施例では、せん断応力に対する曝気及び再循環流の流量(再利用流とも呼ばれる)の影響がテストされた。本明細書で開示されるろ過システムは、膜タンク108内に膜ユニット114を含み、各膜ユニット114は、
図8に示されるように膜モジュール20の形態であった。膜モジュール20は、膜シート間の面間の間隔が1.5mmである6枚の膜シートを含んでいた。ダクトは、タンクの長さに沿って延在し、膜ユニットの水平断面積の約80%を覆う隙間を有し、液体を上向きに膜ユニットを通して移動させた。膜タンクは、膜ユニットの下に設置された曝気装置も含んでいた。ろ過システムは、以下の条件で操作された:1)3Qの再循環流の流量、及び膜ユニットの下の0scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置、すなわち、気泡曝気装置は停止されていた(
図17Aを参照);(2)3Qの再循環流量、及び膜ユニットの下の0.003scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置(
図17Bを参照);(3)4Qの再循環流の流量、及び膜ユニットの下の0scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置、すなわち、気泡曝気装置は停止されていた(
図17C参照);(4)6Qの再循環流の流量、及び膜ユニットの下の0scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置、すなわち、気泡曝気装置は停止されていた(
図17D参照);並びに(5)6Qの再循環流量、及び膜ユニットの下の0.003scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置(
図17E参照)。膜表面の平均速度及び平均せん断応力を記録した(表1及び
図17A~Eを参照)。
【0073】
膜表面における平均速度と平均せん断応力率は、以下に伴い増加した:(1)再循環流量の増加;及び(2)空気の寄与の増加。
図17B(3Q及び0.003scfm/ft
2)と図 17C(4Q及び空気無し)の比較は、平均速度及びせん断応力率に対する曝気の影響が、再循環流の流量の増加に伴い減少することを示している。
図17A及びBの差、並びに
図17D及びEの差を比較すると、再循環流量が高くなると空気の影響が減少し、曝気よりも再循環を用いた方が、膜シート間の液体の平均速度と平均せん断応力が高くなることが分かる。
【0074】
【0075】
表1:異なる再循環流量及び空気曝気流量でのクロスフロー及びせん断応力の比較
【0076】
実施例4
【0077】
別の試行モデルの実施例では、せん断応力に対する曝気と再循環流の流量の影響が試験された。本明細書に開示されるろ過システムは、膜タンク108内に膜ユニット114を含み、各膜ユニット114は、
図8に示されるように膜モジュール20の形態であった。膜モジュール20は、膜シート間の面間の間隔が1.5mmである6枚の膜シートを含んでいた。ダクトは、タンクの長さに沿って延在し、膜ユニットの水平断面積の約80%を覆う隙間を有し、液体を、上向きに膜ユニットを通して移動させた。膜タンクは、膜ユニットの下に設置された曝気装置も含んでいた。4Qの再循環流の流量で、膜ユニットの下の0scfm/ft
2の空気を提供する気泡曝気装置を用いて、すなわち気泡曝気装置を停止させた状態で、ろ過システムを操作した。膜シートを通過して流れる単一相(液体)の速度プロファイルを
図18Aに示し、隣接する膜シートの対の間の対応する速度の大きさを
図18Bに示す。
【0078】
本明細書における発明の詳細な説明及び実施例は、波形の平坦シートモジュールに基づいているが、平滑な平坦シートモジュールでも同様の結果が達成されることが期待される。また、特定の例における特定のプロセス条件又は物理的寸法は、いずれの方向にも約50%変動してよいと予想される。
【国際調査報告】