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特表2023-545077適応性ゼロ追跡を備えるDC‐DCコンバータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】適応性ゼロ追跡を備えるDC‐DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521462
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 US2021053881
(87)【国際公開番号】W WO2022076635
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/088,773
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/490,764
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン シーサラマン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン レオンハルト ベッカー フェレイラ
(72)【発明者】
【氏名】プニート サレーン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ディートリッヒ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE07
5H730FD01
5H730FF01
5H730FF05
5H730FG07
(57)【要約】
DC‐DCコンバータが、出力端子と、基準電圧源(303)と、誤差増幅器(302)と、補償回路とを含む。誤差増幅器(302)は、出力端子及び基準電圧源(303)に結合される。誤差増幅器(302)は、出力端子における電圧と基準電圧源(303)によって提供される基準電圧との間の差を表す誤差信号を生成するように構成される。補償回路は誤差増幅器に結合される。補償回路は、抵抗器(308)と、コンデンサ(306)と、スイッチ制御回路(301)とを含む。抵抗器(308)は、誤差増幅器(302)に結合される。コンデンサ(306)は抵抗器に結合される。スイッチ制御回路(301)は、DC‐DCコンバータのスイッチング周波数に基づいて、コンデンサ(306)への抵抗器(308)の接続を変調するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC‐DCコンバータであって、
出力を含む誤差増幅器と、
補償回路と、
を含み、前記補償回路が、
第1の抵抗器であって、前記誤差増幅器の前記出力に結合される第1の端子と、第2の端子とを含む、前記第1の抵抗器と、
第1のスイッチであって、前記第1の抵抗器の前記第2の端子に結合される第1の端子と、第2の端子とを含む、前記第1のスイッチと、
第2の抵抗器であって、前記誤差増幅器の前記出力に結合される第1の端子と、第2の端子とを含む、前記第2の抵抗器と、
第2のスイッチであって、前記第2の抵抗器の前記第2の端子に結合される第1の端子と、前記第1のスイッチの前記第2の端子に結合される第2の端子とを含む、前記第2のスイッチと、
コンデンサであって、前記第1のスイッチの前記第2の端子に結合される第1の端子と、接地に結合される第2の端子とを含む、前記コンデンサと、
を含む、DC‐DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記補償回路がバッファ増幅器を含み、
前記バッファ増幅器が、前記コンデンサの前記第1の端子に結合される入力と、前記第1のスイッチの前記第1の端子に結合される出力とを含む、
DC‐DCコンバータ。
【請求項3】
請求項2に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記補償回路が第3のスイッチを含み、
前記第3のスイッチが、前記バッファ増幅器の前記出力に結合される第1の端子と、前記第1のスイッチの前記第1の端子に結合される第2の端子とを含む、
DC‐DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記第1のスイッチが制御端子を含み、
前記第2のスイッチが制御端子を含み、
前記補償回路がスイッチ制御回路を含み、前記スイッチ制御回路が、
前記第1のスイッチの前記制御端子に結合される第1の位相出力と、
前記第2のスイッチの前記制御端子に結合される第2の位相出力とを含む、
DC‐DCコンバータ。
【請求項5】
請求項4に記載のDC‐DCコンバータであって、前記スイッチ制御回路が、
入力端子と、
論理ゲートであって、
前記入力端子に結合される第1の入力と、
第2の入力と、
出力と、
を含む、前記論理ゲートと、
遅延回路であって、
前記入力端子に結合される入力と、
前記論理ゲートの前記第2の入力に結合される出力と、
を含む、前記遅延回路と、
第1のインバータであって、
前記論理ゲートの前記出力に結合される入力と、
前記第1の位相出力に結合される出力と、
を含む、前記第1のインバータと、
第2のインバータであって、
前記第1のインバータの前記出力に結合される入力と、
前記第2の位相出力に結合される出力と、
を含む、前記第2のインバータと、
を含む、DC‐DCコンバータ。
【請求項6】
請求項5に記載のDC‐DCコンバータであって、前記遅延回路が、
第3の抵抗器であって、
前記論理ゲートの前記第1の入力に結合される第1の端子と、
第2の端子と、
を含む、前記第3の抵抗器と、
シュミットトリガであって、
前記第3の抵抗器の前記第2の端子に結合される入力と、
前記論理ゲートの前記第2の入力に結合される出力と、
を含む、前記シュミットトリガと、
第3のコンデンサであって、
前記第3の抵抗器の前記第2の端子に結合される第1の端子と、
接地に結合される第2の端子と、
を含む、前記第3のコンデンサと、
を含む、DC‐DCコンバータ。
【請求項7】
請求項6に記載のDC‐DCコンバータであって、前記遅延回路が、
第3のスイッチであって、
前記第3の抵抗器の前記第2の端子に結合される第1の端子と、
接地に結合される第2の端子と、
制御端子と
を含む、前記第3のスイッチと、
第3のインバータであって、
前記第3の抵抗器の前記第1の端子に結合される入力と、
前記第3のスイッチの前記制御端子に結合される出力と、
を含む、前記第3のインバータと、
を含む、DC‐DCコンバータ。
【請求項8】
DC‐DCコンバータであって、
出力端子と、
基準電圧源と、
誤差増幅器であって、前記出力端子及び前記基準電圧源に結合され、前記出力端子における電圧と前記基準電圧源によって提供される基準電圧との間の差を表す誤差信号を生成するように構成される、前記誤差増幅器と、
前記誤差増幅器に結合される補償回路と、
を含み、
前記補償回路が、
前記誤差増幅器に結合される抵抗器と、
前記抵抗器に結合されるコンデンサと、
前記DC‐DCコンバータのスイッチング周波数に基づいて、前記抵抗器の前記コンデンサへの接続を変調するように構成されるスイッチ制御回路と、
を含む、DC‐DCコンバータ。
【請求項9】
請求項8に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記補償回路が、前記抵抗器を前記コンデンサに結合するように構成されるスイッチを含み、
前記スイッチが、前記抵抗器の前記コンデンサへの前記接続を変調するために前記スイッチ制御回路に結合される、DC‐DCコンバータ。
【請求項10】
請求項9に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記抵抗器が第1の抵抗器であり、
前記スイッチが第1のスイッチであり、
前記補償回路が、
前記誤差増幅器に結合される第2の抵抗器と、
前記第2の抵抗器を前記コンデンサに結合するように構成される第2のスイッチと、
を含み、
前記第2のスイッチが、前記第2の抵抗器の前記コンデンサへの前記接続を変調するように前記スイッチ制御回路に結合される、
DC‐DCコンバータ。
【請求項11】
請求項10に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記スイッチ制御回路が、前記第1の抵抗と前記第2の抵抗とを前記コンデンサに相補的に結合するように構成され、
前記第1の抵抗の前記コンデンサへの接続の時間が、前記DC‐DCコンバータの前記スイッチング周波数の増大に伴って増大する、
DC‐DCコンバータ。
【請求項12】
請求項10に記載のDC‐DCコンバータであって、前記第2の抵抗器の抵抗値が前記第1の抵抗器の抵抗値よりも大きい、DC‐DCコンバータ。
【請求項13】
請求項10に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記スイッチ制御回路が、
前記第1のスイッチを変調するための第1のスイッチ制御信号を生成し、
前記第2のスイッチを変調するための第2のスイッチ制御信号を生成する、
ように構成され、
前記第2のスイッチ制御信号が、前記第1のスイッチ制御信号を反転したものである、DC‐DCコンバータ。
【請求項14】
請求項13に記載のDC‐DCコンバータであって、
前記補償回路が静電容量乗算器回路を含み、
前記静電容量乗算器回路が、
バッファ増幅器であって、前記コンデンサの端子に結合される入力と、出力とを含む、前記バッファ増幅器と、
第3のスイッチであって、前記バッファ増幅器の前記出力と前記第1のスイッチとの間に結合される前記第3のスイッチと、
を含み、
前記第2のスイッチ制御信号が前記第3のスイッチを変調する、
DC‐DCコンバータ。
【請求項15】
反転昇降圧コンバータであって、
出力端子と、
ハイサイドトランジスタと、
ローサイドトランジスタと、
コントローラであって、前記出力端子と、前記ハイサイドトランジスタと、前記ローサイドトランジスタとに接続される、前記コントローラと、
を含み、
前記コントローラが、
基準電圧源と、
前記出力端子及び前記基準電圧源に結合される誤差増幅器であって、前記出力端子における電圧と前記基準電圧源によって提供される基準電圧との間の差を表す誤差信号を生成するように構成される、前記誤差増幅器と、
前記誤差増幅器に結合される補償回路と、
を含み、前記補償回路が、
前記誤差増幅器に結合される第1の抵抗器と、
前記第1の抵抗器に結合されるコンデンサと、
前記第1の抵抗器を前記コンデンサに結合するように構成される第1のスイッチと、
前記誤差増幅器に結合される第2の抵抗器と、
前記第2の抵抗器を前記コンデンサに結合するように構成される第2のスイッチと、
前記ハイサイドトランジスタ及び前記ローサイドトランジスタのスイッチング周波数に基づいて、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチを変調するように構成されるスイッチ制御回路と、
を含む、
反転昇降圧コンバータ。
【請求項16】
請求項15に記載の反転昇降圧コンバータであって、前記スイッチ制御回路が、
前記スイッチング周波数が増大するにつれて、前記第1の抵抗器の前記コンデンサへの接続の時間を増加させ、
前記スイッチング周波数が減少するにつれて、前記第2の抵抗器の前記コンデンサへの接続の時間を増加させる、
ように構成される、
反転昇降圧コンバータ。
【請求項17】
請求項15に記載の反転昇降圧コンバータであって、前記第2の抵抗器の抵抗値が前記第1の抵抗器の抵抗値よりも大きい、反転昇降圧コンバータ。
【請求項18】
請求項15に記載の反転昇降圧コンバータであって、
前記補償回路が静電容量乗算器回路を含み、
前記静電容量乗算器回路がバッファ増幅器を含み、
前記バッファ増幅器が、前記第1のスイッチの第1の端子に結合される入力と、前記第1のスイッチの第2の端子に結合される出力とを含む、
反転昇降圧コンバータ。
【請求項19】
請求項15に記載の反転昇降圧コンバータであって、
前記スイッチ制御回路が、
前記第1のスイッチを変調するための第1のスイッチ制御信号を生成し、
前記第2のスイッチを変調するための第2のスイッチ制御信号を生成する、
ように構成され、
前記第2のスイッチ制御信号が第1のスイッチ制御信号を反転したものである、
反転昇降圧コンバータ。
【請求項20】
請求項19に記載の反転昇降圧コンバータであって、
前記静電容量乗算器回路が、前記バッファ増幅器の前記出力と前記第1のスイッチの前記第2の端子との間に結合される第3のスイッチを含み、
前記第2のスイッチ制御信号が第3のスイッチを変調する、
反転昇降圧コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
スイッチモード電源は、入力直流(DC)供給電圧を、入力直流供給電圧よりも高いか又は低い一つ又は複数の直流出力電圧に変換する電子回路である。入力電圧よりも低い出力電圧を生成するスイッチモード電源は、バックコンバータ又は降圧コンバータと呼ばれる。入力電圧よりも高い出力電圧を生成するスイッチモード電源は、ブーストコンバータ又は昇圧コンバータと呼ばれる。スイッチモード電源の安定性は、電源の制御ループに導入される利得及び位相シフトによって損なわれる可能性がある。そういった利得及び位相シフトを相殺するために、スイッチモード電源において補償が適用され得る。
【発明の概要】
【0002】
一例において、DC‐DCコンバータが、誤差増幅器と補償回路とを含む。誤差増幅器は出力を含む。補償回路は、第1の抵抗器と、第1のスイッチと、第2の抵抗器と、第2のスイッチと、コンデンサとを含む。第1の抵抗器は、第1の端子及び第2の端子を含む。第1の端子は、誤差増幅器の出力に結合される。第1のスイッチは、第1の端子及び第2の端子を含む。第1のスイッチの第1の端子は、第1の抵抗器の第2の端子に結合される。第2の抵抗器は、第1の端子及び第2の端子を含む。第2の抵抗器の第1の端子は、誤差増幅器の出力に結合される。第2のスイッチは、第1の端子及び第2の端子を含む。第2のスイッチの第1の端子は、第2の抵抗器の第2の端子に結合される。第2のスイッチの第2の端子は、第1のスイッチの第2の端子に結合される。コンデンサは、第1の端子及び第2の端子を含む。コンデンサの第1の端子は、第1スイッチの第2の端子に結合される。コンデンサの第2の端子は接地に結合される。
【0003】
別の例において、DC‐DCコンバータが、出力端子と、基準電圧源と、誤差増幅器と、補償回路とを含む。誤差増幅器は、出力端子及び基準電圧源に結合される。誤差増幅器は、出力端子における電圧と基準電圧源によって提供される基準電圧との間の差を表す誤差信号を生成するように構成される。補償回路は誤差増幅器に結合される。補償回路は、抵抗器と、コンデンサと、スイッチ制御回路とを含む。抵抗器は誤差増幅器に結合される。コンデンサは抵抗器に結合される。スイッチ制御回路は、DC‐DCコンバータのスイッチング周波数に基づいて、コンデンサへの抵抗器の接続を変調するように構成される。
【0004】
更なる例において、反転昇降圧コンバータが、出力端子と、ハイサイドトランジスタと、ローサイドトランジスタと、コントローラとを含む。コントローラは、出力端子と、ハイサイドトランジスタと、ローサイドトランジスタとに結合される。コントローラは、基準電圧源と、誤差増幅器と、補償回路とを含む。誤差増幅器は、出力端子及び基準電圧源に結合される。誤差増幅器は、出力端子における電圧と基準電圧源によって提供される基準電圧との間の差を表す誤差信号を生成するように構成される。補償回路は、誤差増幅器に結合される。補償回路は、第1の抵抗器と、コンデンサと、第1のスイッチと、第2の抵抗器と、第2のスイッチと、スイッチ制御回路とを含む。第1の抵抗器は誤差増幅器に結合される。コンデンサは第1の抵抗器に結合される。第1のスイッチは、第1の抵抗器をコンデンサに結合するように構成される。第2の抵抗器は誤差増幅器に結合される。第2のスイッチは、第2の抵抗器をコンデンサに結合するように構成される。スイッチ制御回路は、ハイサイドトランジスタ及びローサイドトランジスタのスイッチング周波数に基づいて、第1のスイッチ及び第2のスイッチを変調するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】パルス周波数モード(PFM)動作におけるパルスグループ化を示すDC‐DCコンバータにおける信号のグラフである。
【0006】
図2】スイッチング周波数に基づく補償ゼロ追跡を含む例示のDC‐DCコンバータのためのブロック図である。
【0007】
図3】スイッチング周波数に基づく補償ゼロ追跡を含む例示の補償回路のための概略図である。
【0008】
図4図3の補償回路の一例のためのボード線図である。
【0009】
図5図3の補償回路の一例を含むDC‐DCコンバータにおける信号のグラフである。
【0010】
図6】負荷が低減する図3の補償回路に適用されるデューティーサイクルの変化を示すグラフである。
【0011】
図7】スイッチング周波数に基づく補償ゼロ追跡を含む例示の補償回路の概略図である。
【0012】
図8図7の補償回路の一例のためのボード線図である。
【0013】
図9図7の補償回路の一例を含むDC‐DCコンバータにおける信号のグラフである。
【0014】
図10A図9のグラフに示される拡大信号のグラフである。
図10B図9のグラフに示される拡大信号のグラフである。
図10C図9のグラフに示される拡大信号のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
補償回路は、DC‐DCコンバータ及び他のフィードバックループ制御回路における制御ループを安定化するために用いられる。用いられる補償回路のタイプ(例えば、タイプ1、タイプ2、又はタイプ3)は、制御されている回路の様々なパラメータ(例えば、出力フィルタ構成要素のタイプ及び寸法、スイッチング周波数、帯域幅など)に基づいて選択される。タイプ2補償は、DC‐DCコンバータにおいて広く用いられている。例えば、タイプ2補償は、回路出力コンデンサ及びその等価直列抵抗によって引き起こされるゼロの周波数が制御ループの閉ループ帯域幅よりも小さい応用例において用いられ得る。
【0016】
軽負荷条件で電圧制御発振器(VCO)ベースのパルス周波数モード(PFM)を用いるDC‐DCコンバータは、スイッチング周波数の極に起因する位相マージン劣化を被る。パルススキップモード(PSM)動作を実装するパルス幅変調(PWM)ベースのDC‐DCコンバータは同様の位相マージン劣化を示す。位相マージン劣化が逆位相マージンをもたらすと、パルスグループ化の形態が不安定となる。
【0017】
図1は、パルス周波数モード(PFM)動作におけるパルスグループ化を示す、DC‐DCコンバータにおける信号を示す。この例では、DC‐DCコンバータは、タイプ2補償を有する反転昇降圧コンバータである。DC‐DCコンバータに適用される負荷は経時的に減少する。DC‐DCコンバータのスイッチング周波数は、負荷が減少するにつれて減少するので、スイッチングにおいてパルスグループ化又はバーストが生じる(領域102参照)。いくつかのDC‐DCコンバータは、DC‐DCコンバータのスイッチング周波数を制限するためにダミー負荷を用いることによってこの挙動を回避しようと試み、これにより、コンバータの帯域幅が制限され、軽負荷での効率が低下する。
【0018】
本明細書に記載されるDC‐DCコンバータは、コンバータスイッチング周波数を用いてタイプ2補償回路のゼロを追跡して、DC‐DCコンバータのスイッチング周波数範囲全体にわたって位相マージンを維持する。位相マージンを維持することによって、DC‐DCコンバータは軽負荷でのパルスグループ化を回避する。
【0019】
図2は、スイッチング周波数に基づく補償ゼロ追跡を含む、例示のDC‐DCコンバータ200のためのブロック図である。DC‐DCコンバータ200は、ハイサイドトランジスタ202と、ローサイドトランジスタ204と、インダクタ206と、出力コンデンサ208と、分圧器210と、コントローラ212とを含む。DC‐DCコンバータ200は、反転昇降圧コンバータとして構成される。DC‐DCコンバータ200のいくつかの例は、バックコンバータ、ブーストコンバータ、昇降圧コンバータ、又は他のタイプのDC‐DCコンバータとして構成され得る。
【0020】
コントローラ212は、ハイサイドトランジスタ202及びローサイドトランジスタ204のスイッチングを制御して、選択された出力電圧(VOUT)を出力218に提供する。分圧器210は、出力電圧フィードバック216をコントローラ212に提供するためにコントローラ212に結合される。コントローラ212は、分圧器210から受け取った出力電圧フィードバック216に基づいて、ハイサイドトランジスタ202及びローサイドトランジスタ204のスイッチングを制御する。コントローラ212は、VOUT生成の制御を安定化させるための補償回路214を含む。補償回路214は、DC‐DCコンバータ200のスイッチング周波数範囲全体にわたって位相マージンを維持するために、コンバータスイッチング周波数を用いて補償回路214のゼロを追跡する。
【0021】
図3は、スイッチング周波数に基づく補償ゼロ追跡を含む例示の補償回路300の概略レベル図である。補償回路300は、補償回路214の一例である。補償回路300は、誤差増幅器を含む302、コンデンサ304と、コンデンサ306と、抵抗器308と、抵抗器310と、スイッチ312と、スイッチ314と、スイッチ制御回路301とを含む。誤差増幅器302は、出力電圧フィードバック216を受け取るために分圧器210に結合される入力と、電圧基準回路303に結合される入力とを含む。誤差増幅器302は、出力電圧フィードバック216と電圧基準回路303から受け取った基準電圧との間の差を表す誤差信号を生成する。
【0022】
コンデンサ304は、誤差増幅器302の出力に結合される。抵抗器308は、誤差増幅器302の出力に結合される第1の端子と、スイッチ312の第1の端子に結合される第2の端子とを含む。スイッチ312の第2の端子が、コンデンサ306の第1の端子に結合される。コンデンサ306の第2の端子が接地に結合される。抵抗器310は、誤差増幅器302の出力に結合される第1の端子と、スイッチ314の第1の端子に結合される第2の端子とを含む。スイッチ314の第2の端子が、コンデンサ306の第1の端子に結合される。スイッチ312及びスイッチ314は、補償回路300のいくつかの実装において電界効果トランジスタ(FET)を用いて実装され得る。抵抗器310の抵抗は抵抗器308の抵抗よりも大きく(例えば、10倍大きく)し得る。
【0023】
スイッチ制御回路301は、スイッチ312及びスイッチ314のスイッチングを制御して、誤差増幅器302の出力をコンデンサ306に結合する抵抗を変化させ、抵抗に対応するゼロの位置を変化させる。スイッチ制御回路301は、スイッチ312の制御端子に結合される位相出力301Bと、スイッチ314の制御端子に結合される位相出力301Cとを含む。スイッチ制御回路301によって生成される信号Φ1(スイッチ制御信号)が、スイッチ312のスイッチングを制御し、スイッチ制御回路301によって生成される信号Φ2(スイッチ制御信号)が、スイッチ314のスイッチングを制御する。信号Φ1及びΦ2は相補的であり得る。したがって、信号Φ2は、信号Φ1に対して反転され得る(信号Φ1を反転したものであり得る)。したがって、スイッチ312はスイッチ314が開であるときに閉であり、スイッチ312はスイッチ314が閉であるときに開であり、スイッチ制御回路301は抵抗器308及び310をコンデンサ306に相補的に結合する。
【0024】
スイッチ制御回路301は入力端子301Aを含み、入力端子301Aは、ハイサイドトランジスタ202の制御端子又はローサイドトランジスタ204の制御端子に接続される。スイッチ制御回路301は、論理ゲート328と、インバータ330と、インバータ332と、遅延回路305とを含む。論理ゲート328の第1の入力が、入力端子301Aに結合され、論理ゲート328の第2の入力が、遅延回路305の出力に結合される。論理ゲート328は、入力端子301Aにおける信号と、遅延回路305によって出力された遅延信号とを合成して、スイッチ312及びスイッチ314を制御するための制御信号を生成する。論理ゲート328の出力はインバータ330の入力に結合され、インバータ330の出力(位相出力301B)が、インバータ332の入力に結合される。インバータ332の出力は、位相出力301Cに結合される。
【0025】
遅延回路305は、インバータ316と、スイッチ318と、抵抗器320と、コンデンサ322と、シュミットトリガ326とを含む。抵抗器320の第1の端子が、入力端子301Aと及びインバータ316の入力とに結合される。抵抗器320の第2の端子が、シュミットトリガ326の入力と、スイッチ318の第1の端子と、コンデンサ322の第1の端子とに結合される。インバータ316の出力は、スイッチ318の制御端子に結合される。スイッチ318の第2の端子及びコンデンサ322の第2の端子が、接地に結合される。スイッチ318は入力端子301Aの信号が低であるとき、コンデンサ322を放電する。スイッチ318は、遅延回路305のいくつかの実装においてFETを用いて実装され得る。スイッチ制御回路301によって生成される信号Φ1、Φ2のデューティーサイクルは、入力端子301Aに入力されるスイッチング制御信号の周波数と共に変化する。誤差増幅器302の出力とコンデンサ306との間の抵抗は、信号Φ1、Φ2のデューティーサイクルと共に変化する。抵抗は、スイッチング周波数が増大するにつれて減少し、スイッチング周波数が減少するにつれて増大する。
【0026】
図4は、補償回路300の一例のボード線図である。曲線402及び404は信号2が常にオンであるときの大きさ及び位相(より低いスイッチング周波数)を表し、より低い周波数領域(例えば、2~100キロヘルツ)における位相ブーストを示す。曲線406及び408は、信号Φ1が常にオン(より高いスイッチング周波数)であるときの大きさ及び位相を表し、より高い周波数領域(20キロヘルツ~1メガヘルツ)における位相ブーストを示す。信号Φ1及びΦ2のデューティーサイクルをスイッチング周波数を用いて変調することによって、補償回路300に印加される実効抵抗は、実効位相曲線が曲線404と408との間にあるように変化する。
【0027】
図5は、補償回路300を含むDC‐DCコンバータ200の一実装における信号のグラフである。図5において、DC‐DCコンバータ200に適用される負荷は、経時的に線形に減少する。図5には、インダクタ206における出力電位、電流、誤差増幅器302の出力が示されている。負荷の低減は、DC‐DCコンバータ200のスイッチング周波数を低下させる。DC‐DCコンバータ200のスイッチング周波数が低下すると、補償回路300は、図1に示すパルスグループ化を回避するために補償抵抗を変化させる。
【0028】
図6は、負荷が減少する場合に補償回路300に適用されるデューティーサイクルの変化を示す図である。負荷が減少するにつれて、DC‐DCコンバータ200のインダクタ電流及びスイッチング周波数も減少し、信号Φ2のデューティーサイクルは滑らかに増大する(間隔602)。出力電圧に望ましくない摂動は存在しない。
【0029】
図7は、スイッチング周波数に基づく補償ゼロ追跡を含む、例示の補償回路700の概略図である。補償回路700は、補償回路300と同様であり、静電容量乗算回路が付加されている。補償回路700は、補償回路300に関して説明したように、誤差増幅器302と、コンデンサ306と、抵抗308と、抵抗310と、スイッチ312と、スイッチ314と、スイッチ制御回路301(図示せず)とを含む。
【0030】
補償回路700は、増幅器702及びスイッチ704をさらに含む。増幅器702はバッファ増幅器(例えば、ユニティゲインバッファ)である。増幅器702の端子が、コンデンサ306の第1の端子に結合される。増幅器702の出力は、増幅器702の第2の入力と、スイッチ704の第1の端子とに結合される。スイッチ704の第2の端子が、スイッチ312の第1の端子に結合される。スイッチ704の制御端子が、スイッチ312の制御端子に結合される。スイッチ314とスイッチ704が閉であるとき、増幅器702を用いて静電容量乗算回路が形成される。スイッチ704はFETを用いて実装され得る。
【0031】
図8は、補償回路700の一例のボード線図である。曲線802及び804は、信号Φ2が常にオン(より低いスイッチング周波数)であるときの大きさ及び位相を表し、より低い周波数領域(例えば、20キロヘルツ~1メガヘルツ)における位相ブーストを示す。曲線806及び808は、信号Φ1が常にオン(より高いスイッチング周波数)であるときの大きさ及び位相を表し、より高い周波数領域(20キロヘルツ~1メガヘルツ)における位相ブーストを示す。信号Φ1及びΦ2のデューティーサイクルをスイッチング周波数を用いて変調することによって、補償回路の実効容量が制御され、位相ブースト810の領域がスイッチング周波数を用いて拡張される。位相ブースト810の領域における利得は、比較的一定のままである。
【0032】
図9は、補償回路700の一例を含むDC‐DCコンバータにおける信号のグラフである。図9において、負荷電流は、約100マイクロアンペア(時間A)から約4ミリアンペア(時間C)まで経時的に増大する。負荷の変化は出力電圧にほとんど影響を与えず、インダクタ電流及び出力電圧は、パルスグループ化が存在しないことを示す。
【0033】
図10A図10Cは、図9のグラフからの拡大信号のグラフである。図10Aは、時間A(約100マイクロアンペアの負荷電流)における図9のグラフの信号についてクローズアップしている。DC‐DCコンバータのスイッチング周波数は約2キロヘルツである。信号Φ2は、遅延を伴う各スイッチング動作の後に活性化される。スイッチング周波数が低いため、信号Φ2はハイであり、補償回路700の静電容量乗算器は、位相ブーストを提供するためにほとんどの時間、活性である。
【0034】
図10Bは、時間B(約1.8mAの負荷電流)における図9のグラフの信号についてクローズアップしている。DC‐DCコンバータのスイッチング周波数は約33キロヘルツである。信号Φ2は、遅延を伴う各スイッチング動作の後に活性化される。信号Φ2はハイであり、補償回路700の静電容量乗算器は、約半分の時間、活性である。
【0035】
図10Cは、時間C(約4mAの負荷電流)における図9のグラフの信号についてクローズアップしている。DC‐DCコンバータのスイッチング周波数は約77キロヘルツである。信号Φ2は活性化されず(信号Φ1は常に活性化され)、補償回路700の静電容量乗算器はオフである。スイッチング周波数がより高いため、より低い周波数範囲における位相ブーストは必要とされない。
【0036】
本記載において「結合する」という用語は、本記載と一貫する機能的関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を網羅し得る。例えば、デバイスAがデバイスBを制御して或る動作を行なうための信号を生成する場合、(a)第1の例において、デバイスAはデバイスBに直接結合され、又は(b)第2の例において、介在構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能的関係を実質的に変更しない場合に、デバイスAは介在構成要素Cを介してデバイスBに間接的に結合され、したがって、デバイスBはデバイスAによって生成された制御信号を介してデバイスAによって制御される。
【0037】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】