(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】機能性核酸分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20231019BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231019BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231019BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231019BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231019BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/113 ZNA
A61K48/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P43/00 105
A61K31/7088
A61K31/711
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023521584
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 GB2021052607
(87)【国際公開番号】W WO2022074396
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520292291
【氏名又は名称】トランシネ セラピューティクス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520097353
【氏名又は名称】スクオラ インターナジオナレ スペリオレ ディ ステュディ アバンザティ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ グスティンシチ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンカ ピエラッティーニ
(72)【発明者】
【氏名】カルロッタ ボン
(72)【発明者】
【氏名】ローラ グラッソ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ワトソン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA56
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA33
4C084ZB21
4C086EA16
4C086MA55
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZB21
(57)【要約】
本発明は、OPA1発現の上方制御に使用するための機能性核酸分子に関する。該機能性核酸分子は、典型的には、OPA1 mRNA配列に逆相補的な少なくとも1つの標的結合配列及びSINE B2エレメント又は内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含む少なくとも1つの調節配列を含む。該機能性核酸を使用する治療法も記載されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性核酸分子であって、
-OPA1 mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及び
-SINE B2エレメント若しくはSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片又は内部リボソーム進入部位(IRES)配列又はIRES由来配列を含むRNAを含む少なくとも1つの調節配列
を含む、前記機能性核酸分子。
【請求項2】
前記少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも75%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1記載の機能性核酸分子。
【請求項3】
前記少なくとも1つの調節配列が、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項2記載の機能性核酸分子。
【請求項4】
前記少なくとも1つの標的結合配列が、全てのOPA1アイソフォームに共通するOPA1 mRNA配列の一部に逆相補的な配列を含む、請求項1~3のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項5】
前記少なくとも1つの標的結合配列が、少なくとも10ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-OPA1 mRNA配列の5'非翻訳領域(5'UTR)の0~50ヌクレオチド及びコード配列(CDS)の0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
-OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~80ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項6】
前記少なくとも1つの標的結合配列が、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-OPA1 mRNA配列の5'UTRの0~40ヌクレオチド及びCDSの0~32ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
-OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~70ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの0~4ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む、請求項5記載の機能性核酸分子。
【請求項7】
前記少なくとも1つの標的結合配列と前記少なくとも1つの調節配列との間に少なくとも1つのリンカー配列をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項8】
前記分子が環状である、請求項1~7のいずれか一項記載の機能性核酸分子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子をコードするDNA分子。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子、又は請求項9記載のDNA分子を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子、請求項9記載のDNA分子又は請求項10記載の発現ベクターを含む組成物。
【請求項12】
細胞内でのOPA1のタンパク質合成効率を高める方法であって、請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子、請求項9記載のDNA分子、請求項10記載の発現ベクター又は請求項11記載の組成物を前記細胞に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記機能性核酸分子がネイキッドRNAとして投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞がOPA1ハプロ不全である、請求項12又は請求項13記載の方法。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子、請求項9記載のDNA分子、請求項10記載の発現ベクター、又は請求項11記載の組成物。
【請求項16】
ミトコンドリア欠損関連疾患の治療に使用するための、請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子、請求項9記載のDNA分子、請求項10記載の発現ベクター、又は請求項11記載の組成物。
【請求項17】
ミトコンドリア欠損関連疾患を治療する方法であって、請求項1~8のいずれか一項記載の治療有効量の機能性核酸分子、請求項9記載のDNA分子、請求項10記載の発現ベクター、又は請求項11記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項18】
前記治療有効量が網膜、脳又は心臓に投与される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
ミトコンドリア欠損関連疾患の治療用医薬の製造に使用するための、請求項1~8のいずれか一項記載の機能性核酸分子、請求項9記載のDNA分子、請求項10記載の発現ベクター、又は請求項11記載の組成物の治療有効量。
【請求項20】
前記ミトコンドリア欠損関連疾患がADOAである、請求項16記載の使用のための機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター若しくは組成物、請求項17若しくは請求項18記載の方法、又は請求項19記載の治療有効量。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、OPA1発現の上方制御に使用するための機能性核酸分子に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)は、最も一般的な遺伝性視神経障害であり、症例の75%においてOPA1遺伝子のヘテロ変異によって引き起こされる。ADOAは早期発症の常染色体優性ハプロ不全障害であり、有病率は1:12000~1:50000出生の範囲であり、視神経萎縮と失明につながる網膜神経節細胞の変性を特徴としている。ヒトOPA1は、広範に発現するダイナミン関連GTPaseタンパク質であり、ミトコンドリアの恒常性において重要な機能を担い、ミトコンドリア内膜(IMM)に局在し、脳、網膜及び心臓で最も高い発現レベルに達する。
【0003】
ADOA患者に見られるようなOPA1の発現不足と過剰発現の両方が有害な結果をもたらし、OPA1レベルのこれらの両方の変化がアポトーシスの増加につながることをデータが示している(Chenらの文献(2009) Cardiovasc Res. 84(1):91-9)。インビボでは、データは複雑である。OPA1過剰発現が軽度であるトランスジェニックマウスは健康で、繁殖力に富んでいるように見え、さらに、肝臓及び脳などの特定組織への傷害に対して保護を示すのに対し、SV129マウス系統における長期の過剰発現は、自然発生癌の発生率を増加させ、寿命を縮めることが観察された(Varanitaらの文献 (2015) Cell Metab. 21(6):834-44)。OPA1の高発現、及び融合を促進する他のミトコンドリアタンパク質は、癌細胞の増殖、生存及び浸潤と関連する。OPA1は肺腺癌細胞で高発現しており、シスプラチン耐性及び予後不良と関連付けられる(Fangらの文献 (2012) Hum. Pathol. 43(1):105-14)。
【0004】
SINEUPとして知られている新しいクラスの長鎖非コードRNA(lncRNA)が、それらの標的の翻訳を選択的に増強できることが以前に説明された。SINEUP活性は、2つのドメイン:特異性を付与する重複領域、又は結合ドメイン(BD)と、標的mRNA翻訳を増強する埋め込み型逆位SINE B2エレメント、又はエフェクタードメイン(ED)の組み合わせに依存する。WO 2012/133947及びWO 2019/150346は、SINEUPを含む機能性核酸分子を開示している。トランスで作用する機能性核酸分子を提供するための内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含むエフェクタードメインを使用する別のクラスのlncRNAがWO 2019/058304で説明されている。
【0005】
本発明の目的は、特にADOAの治療に使用するための、OPA1翻訳を標的とする最初の遺伝子特異的技術を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
第1の態様によれば、機能性核酸分子であって、
-OPA1 mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列;及び
-SINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片又は内部リボソーム進入部位(IRES)配列又はIRES由来配列を含むRNAを含む少なくとも1つの調節配列
を含む、前記機能性核酸分子が提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義される機能性核酸分子をコードするDNA分子が提供される。本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義される機能性核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子又は発現ベクターを含む組成物が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、細胞内でのOPA1のタンパク質合成効率を高める方法であって、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物を該細胞に投与することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、ADOAなどのミトコンドリア欠損に関連付けられる疾患を治療する方法であって、本明細書で定義される治療有効量の機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様によれば、ADOAなどのミトコンドリア欠損に関連付けられる疾患の治療のための薬剤の製造に使用するための治療有効量の機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1: SINEUP機能ドメイン及びヒトOPA1遺伝子の模式図と、本発明による機能性核酸の標的結合ドメインの例。
【
図2】
図2: HEK 293T細胞に、BDを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1変異体でトランスフェクトした。(A)全細胞溶解液を抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。代表的な1つの実験を示す。グラフは、トランスフェクト細胞におけるOPA1 mRNA及びミニSINEUP RNA発現のリアルタイムPCR分析を示す。カラムは、n≧3の独立した実験の平均±S.E.M.を表す。(B) OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化。各試料について、それぞれ長い(左)アイソフォームと短い(右)アイソフォームを表す2つの別々のカラムとして値を報告する。カラムは、n≧4の独立した実験の平均±S.E.M.を表す; ns, p>0.05; *p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001; ****p<0.0001(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。
【
図3】
図3:マウスNeruo2A細胞に、BDを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1変異体でトランスフェクトした。(A)全細胞溶解液を抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。代表的な1つの実験を示す。グラフは、トランスフェクト細胞におけるOPA1 mRNA及びミニSINEUP RNA発現のリアルタイムPCR分析を示す。カラムは、n≧3の独立した実験の平均±S.E.M.を表す。(B) OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化。各試料について、それぞれ長い(左)アイソフォームと短い(右)アイソフォームを表す2つの別々のカラムとして値を報告する。カラムは、n≧3の独立した実験の平均±S.E.M.を表す; ns, p>0.05; *p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001; ****p<0.0001(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。
【
図4】
図4: マウスのアストロサイト細胞に、BDを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1変異体でトランスフェクトした。(A)全細胞溶解液を抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。代表的な1つの実験を示す。グラフは、トランスフェクト細胞におけるOPA1 mRNA及びミニSINEUP RNA発現のリアルタイムPCR分析を示す。カラムは、n≧3の独立した実験の平均±S.E.M.を表す。(B) OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化。各試料について、それぞれ長い(左)アイソフォームと短い(右)アイソフォームを表す2つの別々のカラムとして値を報告する。カラムは、n≧3の独立した実験の平均±S.E.M.を表す; ns, p>0.05; *p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001; ****p<0.0001 (一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。
【
図5】
図5: HEK293T細胞に、BDを欠くミニSINEUP(ΔBD)、ミニSINEUP-OPA1(-14/+4-M1-AUG)及びマイクロSINEUP-OPA1(-14/+4-M1-AUG)変異体でトランスフェクトした。(A) 全細胞溶解液を抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。代表的な1つの実験を示す。グラフは、トランスフェクト細胞におけるOPA1 mRNA及びミニSINEUP RNA発現のリアルタイムPCR分析を示す。カラムは、n≧3の独立した実験の平均±S.E.M.を表す。(B) OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化。各試料について、それぞれ長い(左)アイソフォームと短い(右)アイソフォームを表す2つの別々のカラムとして値を報告する。カラムは、n=4の独立した実験の平均±S.E.M.を表す; ns, p>0.05; *p<0.05; **p<0.01; ***p<0.001; ****p<0.0001 (一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。
【
図6】
図6: HEK 293T細胞に、結合ドメインを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びナノ2SINEUP-OPA1(-14/+4-M1-AUG)でトランスフェクトした。(A) 全細胞溶解液を抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。代表的な1つの実験を示す。(B) OPA1 mRNA(左パネル)及びナノ2SINEUP RNA発現(右パネル)のリアルタイムPCR分析。NT=トランスフェクトせず。
【
図7】
図7: インビトロでのOPA1-nanoluc発光を示す2つの異なるベクター骨格におけるミニSINEUP。
【
図8】
図8: OPA1タンパク質及びmRNAレベルに対する合成ナノ2SINEUPの結果。(A) 全細胞溶解液を抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングにより分析した。(B) OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化。OPA1 mRNA(C)及びナノ2SINEUP RNA(D)のリアルタイムPCR分析。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(詳細な説明)
本発明の目的は、生理的レベルを損なうことなくOPA1タンパク質の発現を増加させ、高度に遺伝子特異的に全てのアイソフォームについてOPA1発現を標的とし、副作用を制限する機能性核酸分子を提供することである。
【0014】
本発明者らは、ヒト、マウス及び患者由来の細胞株において全てのOPA1タンパク質アイソフォームの内因性レベルを増加させるために、SINEUP技術を利用して、OPA1を発現させ、標的化した。インビトロスクリーニングにより、OPA1特異的SINEUPは、ヒトとマウスの両方のOPA1タンパク質を選択的に増加できることが示された。重要なことに、SINEUPs-OPA1は、ADOA患者由来の線維芽細胞で発現させると、OPA1タンパク質レベルを2倍の範囲で増加させ、OPA1発現を生理的レベル以上に増加させることに関連付けられる負の副作用をもたらすことなく機能的救助に十分な活性を示した。さらに、SINEUPs-OPA1は、ミトコンドリアネットワークの形態を救うために重要なOPA1タンパク質の長/短型の比率を崩さなかった。
【0015】
定義
「機能性核酸分子」とは、一般に、該核酸分子が目的の標的mRNA、この特定の場合にはOPA1 mRNAの翻訳を増強することができることを意図する。
【0016】
「OPA1 mRNA配列」とは、対応するOPA1遺伝子のmRNAに含まれる少なくとも10ヌクレオチドの任意の長さのmRNA配列を意図する。OPA1転写物の選択的スプライシングにより、8つの異なるアイソフォームが生成される。それらは5’UTRを共有し、広範に発現している。生じたOPA1タンパク質も切断を受け、長い(l) OPA1型と短い(s) OPA1型の両方を生成する。OPA1遺伝子配列は、当技術分野で公知であり、例えば、遺伝子ID: 4976又はEnsembl ID: ENSG00000198836を参照されたい。
【0017】
OPA1遺伝子は、OPA1ミトコンドリアダイナミン様GTPase(ミトコンドリアのダイナミン様120KDaタンパク質としても知られる)をコードしており、本明細書では「OPA1タンパク質」と呼ばれる。OPA1タンパク質配列は、当技術分野において公知であり、例えば、UniProt ID: O60313を参照されたい。
【0018】
用語「SINE」(短鎖散在反復配列(Short Interspersed Nuclear Element))は、非LTR(末端反復配列)レトロトランスポゾンと呼ばれることがあり、(a)逆転写活性もエンドヌクレアーゼ活性なども有していないタンパク質をコードし、(b)完全又は不完全なコピー配列が生物のゲノム中に豊富に存在する散在反復配列である。
【0019】
用語「SINE B2エレメント」は、具体的な例も提供されているWO 2012/133947で定義されている(PCT公報の69ページから始まる表を参照されたい)。この用語は、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して正方向と逆方向の両方のSINE B2エレメントを包含することを意図する。SINE B2エレメントは、例えば、公開されているRepeatMaskのようなプログラムを使用して識別され得る(Bedellらの文献、Bioinformatics. 2000 Nov; 16(11):1040-1. MaskerAid:RepeatMaskerに対する性能向上(a performance enhancement to RepeatMasker))。配列は、RepeatMaskerプログラムにおけるデフォルトのカットオフである、225超のSmith-Waterman(SW)スコアで、SINE B2のコンセンサス配列に対してRepbaseデータベースのヒットを戻すことによって、SINE B2エレメントとして認識され得る。一般に、SINE B2エレメントは、20bp以上で400bp以下である。好ましくは、SINE B2はtRNAに由来する。
【0020】
用語「SINE B2エレメントの機能的に活性のある断片」とは、タンパク質翻訳増強能を保持するSINE B2エレメントの配列の一部を意図する。この用語はまた、野生型配列に対して1以上のヌクレオチドが変異しているが、タンパク質翻訳増強能を保持している配列も含む。この用語は、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して正方向と逆方向の両方のSINE B2エレメントを包含することを意図する。
【0021】
用語「内部リボソーム進入部位(IRES)配列」及び「内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列」はWO 2019/058304で定義されている。IRES配列は、40Sリボソームサブユニットを導き、タンパク質をコードするmRNAのサブセットのキャップ非依存的翻訳を促進する。IRES配列は、一般に、ストレス応答遺伝子をコードする細胞mRNAの5'非翻訳領域に見出されるため、シスでそれらの翻訳を刺激する。用語「IRES由来配列」とは、その機能活性、すなわち翻訳増強活性を保持するために、IRES配列と相同性を有する核酸の配列を意図すると理解される。特に、IRES由来配列は、遺伝子工学又は化学修飾によって、例えば、機能を保持するIRES配列の特異的配列を単離するか、又はIRES配列内の1以上のヌクレオチドを変異/欠失/導入するか、又はIRES配列内の1以上のヌクレオチドを構造的に修飾されたヌクレオチド若しくは類似体と置換することによって天然のIRES配列から取得することができる。より特には、当業者なら、IRES由来配列が、2シストロン性コンストラクト内の第2のシストロンの翻訳を促進することができるヌクレオチド配列であることを知っている。典型的には、二重ルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ)をコードするプラスミドが実験的試験に使用される。主要データベース、すなわち、二重レポーター又は2シストロン性アッセイを用いて、実験で検証されたヌクレオチド配列のIRESとしての注釈のためのIRESiteが存在する(http://iresite.org/IRESite_web.php)。IRESite内では、目的のクエリ配列と実験で検証された注釈付きIRES配列の全体との間の配列ベース及び構造ベースの類似性についてデータベース内を検索するためにウェブベースツールが利用可能である。プログラムの出力は、2シストロン性コンストラクトを用いる検証実験においてIRESとして機能することができるヌクレオチド配列の確率スコアである。さらなる配列ベース及び構造ベースのウェブベース閲覧ツールが、任意の所与のヌクレオチド配列のIRES活性の可能性を数値予測値で示唆するために利用可能である(http://rna.informatik.uni-freiburg.de/;http://regrna.mbc.nctu.edu.tw/index1.php)。
【0022】
用語「ミニSINEUP」とは、結合ドメイン(すなわち、標的mRNAに相補的な配列)、任意にスペーサー配列、及びエフェクタードメインとしての任意のSINE若しくはSINE由来配列又はIRES若しくはIRES由来配列を含む(又はからなる)核酸分子を意図する(Zucchelliらの文献, Front Cell Neurosci., 9: 174, 2015)。
【0023】
用語「マイクロSINEUP」とは、結合ドメイン(すなわち、標的mRNAに相補的な配列)、任意にスペーサー配列、及びSINE若しくはSINE由来配列又はIRES由来配列の機能的に活性のある断片を含む(又はからなる)核酸分子を意図する。例えば、機能的に活性のある断片は、AS Uchl1内の167bpのSINE B2エレメントのヌクレオチド44~120に対応する77bpの配列であり得る。
【0024】
ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、その全長にわたって100%の配列同一性を共有する場合、他のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列と同じ又は「同一」であると言われる。配列中の残基は、左から右、すなわちポリペプチドのN末端からC末端;ポリヌクレオチドの5'から3'末端にかけて番号付けされる。
【0025】
2つの密接に関連するポリヌクレオチド配列を比較する目的で、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「%配列同一性」は、ヌクレオチド配列の標準設定(BLASTN)を使用するNCBI BLASTを使用して計算され得る。2つの密接に関連するポリペプチド配列を比較する目的で、第1のポリペプチド配列と第2のポリペプチド配列との間の「%配列同一性」は、ポリペプチド配列の標準設定(BLASTP)を使用してNCBI BLASTを使用して計算され得る。配列間の「差異」は、第1の配列と比較して、第2の配列の位置における1つのヌクレオチドの挿入、欠失又は置換を指す。2つの配列は、このような差異を1つ、2つ又はそれ以上含有することができる。第1の配列と特に同一(100%配列同一性)である第2の配列における挿入、欠失又は置換は、%配列同一性を低下させる。
【0026】
機能性核酸分子
本発明の機能性核酸分子は、OPA1 mRNA配列に逆相補的な配列を含む少なくとも1つの標的結合配列と、SINE B2エレメント若しくはSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片又は内部リボソーム進入部位(IRES)配列又はIRES由来配列を含むRNAを含む少なくとも1つの調節配列とを含む。
【0027】
(調節配列)
調節配列は、タンパク質翻訳増強能を有する。タンパク質翻訳能の向上は、本発明による機能性核酸分子がシステム内に存在しない場合に比べて能力が向上することを示す。一実施態様では、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも2倍増加する。さらなる実施態様では、標的mRNAによってコードされるタンパク質の発現は、1.5~3倍、例えば、1.6~2.2倍増加する。これらの範囲内でタンパク質発現を増加させることは、生理的レベルを超えるOPA1発現の増加と関連付けられる負の副作用をもたらすことなく、ADOAなどのミトコンドリア欠損関連疾患の治療を可能にすることが想定される。
【0028】
一実施態様では、調節配列は、標的結合配列の3'に位置する。調節配列は、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して、正方向又は逆方向で存在し得る。「正」への言及は、調節配列が機能性核酸分子と同じ5'-3’方向で埋め込まれる(挿入される)状況を指す。代わりに、「逆」とは、調節配列が機能性核酸分子に対して3'-5'方向である状況を指す。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含む。一実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~69からなる群から選択される配列と少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなる。
【0030】
一実施態様では、調節配列は、SINE B2エレメント又はSINE B2エレメントの機能的に活性のある断片を含む。SINE B2エレメントは、好ましくは、機能性核酸分子の5'-3'方向に対して逆方向にある、すなわち逆位SINE B2エレメントである。定義の節で述べたように、逆位SINE B2エレメントは、WO 2012/133947に開示及び例示されている。
【0031】
一実施態様では、少なくとも1つの調節配列は、配列番号1~51からなる群から選択される配列と少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、より好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0032】
配列番号1(AS Uchl1における逆位SINE B2エレメントの167ヌクレオチド変異体)及び配列番号2(ヌクレオチド44~120を含むAS Uchl1における逆位SINE B2エレメントの77ヌクレオチド変異体)、及びこれらの配列に対してパーセンテージ同一性を有する配列が特に好ましい。
【0033】
他の逆位SINE B2エレメント及び逆位SINE B2エレメントの機能的に活性のある断片は、配列番号3~51である。これらの配列のタンパク質翻訳増強能を示す実験データは、本特許出願には明示的に示されていないが、同じ出願人の名で以前の特許出願に開示されている。したがって、配列番号3~51は、本発明による分子内の調節配列としても使用することができる。
【0034】
配列番号3~6、8~11、18、及び43~51は、AS Uchl1由来の逆位SINE B2転位性エレメントの機能的に活性のある断片である。機能性断片の使用は、標的配列及び/又は発現エレメントにより広いスペースを提供するので、調節配列のサイズを低下させ、発現ベクター(例えば、サイズ制限され得るウイルスベクター)において使用される場合に都合がよい。
【0035】
配列番号7は、AS Uchl1由来の全長183ヌクレオチドの逆位SINE B2転位性エレメントである。配列番号12~17、19、20、及び39~42は、AS Uchl1由来の逆位SINE B2転位性エレメントの機能的に活性のある変異断片である。
【0036】
配列番号21~25、及び28~38は、異なるSINE B2転位性エレメントである。配列番号26及び27は、複数の逆位SINE B2転位性エレメントが挿入された配列である。
【0037】
あるいは、調節配列は、IRES配列又はIRES由来配列を含む。したがって、一実施態様では、調節配列は、IRES配列又はIRES由来配列を含む。前記配列は、標的mRNA配列の翻訳を増強する。
【0038】
48~576ヌクレオチド範囲の配列を有するいくつかのIRES、例えば、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV)IRES(例えば、配列番号52及び53)、ヒトポリオウイルスIRES(例えば、配列番号54及び55)、ヒト脳心筋炎(EMCV)ウイルス(例えば、配列番号56及び57)、ヒトコオロギ麻痺(CrPV)ウイルス(例えば、配列番号58及び59)、ヒトApaf-1(例えば、配列番号60及び61)、ヒトELG-1(例えば、配列番号62及び63)、ヒトc-MYC(例えば、配列番号64~67)、及びヒトジストロフィン(DMD)(例えば、配列番号68及び69)は、試験が成功してきた。
【0039】
このような配列は、WO 2019/058304で開示、定義及び例示されている。好ましくは、このような配列は、配列番号52~69のいずれかと少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、より好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0040】
標的決定配列
ヒトOPA1は、遺伝子座3q28にコードされ、ミトコンドリア内膜(IMM)に局在するダイナミン関連GTPaseタンパク質であり、広範に発現しており、脳、網膜及び心臓で最も高い発現レベルに達する。この遺伝子は30個のエクソンで構成され、タンパク質自体は、選択的mRNAスプライシングとプロセシングに応じて、8つの異なるアイソフォームに翻訳される。IMMでは、ミトコンドリア標的化配列(MTS)が最初の切断部位で切断されると、長い膜貫通型が生じる。アイソフォーム4、6、7及び8はまた、エクソン5bにコードされる第2の切断部位を含み、さらにプロセシングされて、該タンパク質の短い形態になる。OPA1は、ミトコンドリア恒常性において主要な機能を有する。ミトフシンMFN1及びMFN2と共に、呼吸効率の向上と関連付けられるプロセスであるミトコンドリアの融合を促進し、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の維持に寄与する。OPA1タンパク質重合はまた、クリステの形態形成を保持し、呼吸超複合体の活性を促進する。それは、シトクロムCの区画化に必要であるため、アポトーシスプロセスの制御において主要な役割を担い、その放出が制御されないと細胞死につながる。8つのOPA1アイソフォームはいずれも、その3つの必須機能(エネルギー、構造及びmtDNAの維持)を支持することができるが、長いアイソフォームと短いアイソフォームのバランスは、ミトコンドリアネットワークを完全に元に戻すための決定的な要件であるように思われる。したがって、ミトコンドリアネットワークの形態を完全に救うには、少なくとも2つのアイソフォームの長い形態と短い形態のバランスが必要である。本明細書に提示されるデータは、OPA1-SINEUPが、全てのOPA1転写物を同時に標的とし、正しい生理学的比率に戻し、通常の生理学的方法でl/s形態にプロセシングするための特有のツールであることを示している。これは、単一の特定の転写物/アイソフォームの発現に有利であり、OPA1アイソフォームの生理的比率及びl/s OPA1タンパク質の比率を壊す可能性のある代替治療法とは異なる。
【0041】
WO 2012/133947では、標的結合配列は、標的mRNAと逆相補的な配列と約60%の類似性を有するだけでよいことが既に示されている。実際、標的結合配列は、実に多数のミスマッチを示し、活性を保持することができる。
【0042】
一実施態様では、標的結合配列は、全てのOPA1アイソフォームに共通するOPA1 mRNA配列の一部と逆相補的な配列を含む。全てのOPA1アイソフォームの相互レベルを維持することにより、機能性核酸分子は、生理学的恒常性を元に戻すための最良の分子発現パターンを誘導することができる。これは、1つのアイソフォームのみが異所的に発現し、アイソフォームの不均衡をもたらし得る場合に、より従来型の遺伝子治療法では不可能である。
【0043】
標的結合配列は、OPA1 mRNA転写物に結合するのに十分な長さの配列を含む。したがって、標的結合配列は、少なくとも約10ヌクレオチド長、少なくとも約14ヌクレオチド長など、少なくとも約15ヌクレオチド長など、少なくとも約16ヌクレオチド長など、少なくとも約17ヌクレオチド長など、少なくとも約18ヌクレオチド長などであり得る。さらに、標的結合配列は、約250未満のヌクレオチド長、好ましくは約200未満のヌクレオチド長、約150未満のヌクレオチド長、約140未満のヌクレオチド長、約130未満のヌクレオチド長、約120未満のヌクレオチド長、約110未満のヌクレオチド長、約100未満のヌクレオチド長、約90未満のヌクレオチド長、約80未満のヌクレオチド長、約70未満のヌクレオチド長、約60未満のヌクレオチド長又は約50未満のヌクレオチド長であり得る。一実施態様では、標的結合配列は、約4~約50ヌクレオチド長、約18~約44ヌクレオチド長などである。
【0044】
標的結合配列は、OPA1 mRNA配列の5'非翻訳領域(5'UTR)にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、5'UTRの0~50ヌクレオチド、例えば、0~41、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、又は0~6ヌクレオチドと逆相補的である。あるいは、又は組み合わせて、標的結合配列は、OPA1 mRNA配列のコード配列(CDS)にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、CDSの0~40ヌクレオチド、例えば、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4又は0ヌクレオチドと逆相補的である。
【0045】
標的結合配列は、OPA1 mRNA配列のCDS内の開始コドンなどのAUG部位(開始コドン)の上流の領域にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、AUG部位の0~80ヌクレオチド、例えば、0~70、0~60、0~50、0~40、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、又は0~9ヌクレオチドと逆相補的である。あるいは、又は組み合わせて、標的結合配列は、前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列にハイブリダイズするように設計され得る。一実施態様では、該配列は、前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列の0~40ヌクレオチド、例えば、0~39、0~38、0~37、0~36、0~35、0~34、0~33、0~32、0~31、0~30、0~29、0~28、0~27、0~26、0~25、0~24、0~23、0~22、0~21、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15、0~14、0~13、0~12、0~11、0~10、0~9、0~8、0~7、0~6、0~5、0~4又は0ヌクレオチドと逆相補的である。
【0046】
好ましくは、標的結合配列は、少なくとも10ヌクレオチド長であり、3'から5'に
1) OPA1 mRNA配列の5'UTRの0~50ヌクレオチド及びCDSの0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列;又は
2) OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~80ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列の0~40ヌクレオチドと逆相補的な配列
を含む。
【0047】
ケース1)では、コード配列はmRNAの最初のAUG部位(M1)から始まる。ケース2)では、好ましいAUG部位は、エクソン3内のメチオニン125(M125)などの内部開始コドンに対応するものである。5'UTR及びCDS中の領域に逆相補的な配列を参照する文脈において、これは好ましくはAUG部位の周囲に固定される、すなわち5'UTR中の領域は標的mRNAのAUG部位のすぐ上流である。例えば、「M1の-40/+4」である標的結合配列への言及は、AUG部位の上流の5'UTR内の40ヌクレオチド(-40)及びAUG部位の下流のCDS内の4ヌクレオチド(+4)に逆相補的な標的結合配列を指す。
【0048】
従来の番号付けに従って、5'UTR配列のヌクレオチドは、標的mRNA上のAUG部位に近づくにつれて負の数を減らす(例えば-3、-2、-1)ことによって順次番号付けされる。CDS配列のヌクレオチドは、AUG部位のAに+1の番号が付けられるように、AUG部位から正の数を増やす(例えば+1、+2、+3)ことによって順次番号付けされる。したがって、5'UTRとCDSをブリッジする領域には、-3、-2、-1、+1、+2、+3の番号が付けられ、AUG部位のAには+1の番号が付けられる。
【0049】
より好ましくは、少なくとも1つの標的結合配列は、少なくとも14ヌクレオチド長であり、3'から5'に
-OPA1 mRNA配列の5'UTRの0~40(好ましくは0~21、より好ましくは0~14)ヌクレオチド及びCDSの0~32(好ましくは0~4、より好ましくは0)ヌクレオチドに逆相補的な配列;又は
-OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の0~70(好ましくは0~40)ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの0~4(好ましくは0)ヌクレオチドに逆相補的な配列
を含む。
【0050】
特定の実施態様では、標的結合配列は18ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号82のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-14/+4)を含み得る。
【0051】
さらなる特定の実施態様では、標的結合配列は15ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの6ヌクレオチド及びCDSの9ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号83のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-6/+9)を含み得る。
【0052】
別の特定の実施態様では、標的結合配列は12ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの41ヌクレオチド及びCDSの30ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号84のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-41/+30)を含み得る。
【0053】
別の特定の実施態様では、標的結合配列は12ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの41ヌクレオチド及びCDSの30ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号93のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-41/-30)を含み得る。
【0054】
さらなる実施態様では、標的結合配列は14ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRのヌクレオチド97から84の間の領域と逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号85のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-97/-87)を含み得る。
【0055】
さらなる実施態様では、標的結合配列は18ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの18ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号86のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-18/-1)を含み得る。
【0056】
別の実施態様では、標的結合配列は22ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの18ヌクレオチド及びCDSの4ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号87のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-18/+4)を含み得る。
【0057】
さらなる実施態様では、標的結合配列は14ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNA配列の5'UTRの14ヌクレオチド及びCDSの0ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号88のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM1の-14/-1)を含み得る。
【0058】
1つの特定の実施態様では、標的結合配列は17ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の9ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの8ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号89のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM125の-9/+8)を含み得る。
【0059】
別の実施態様では、標的結合配列は18ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の18ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの0ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号90のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM125の-18/-1)を含み得る。
【0060】
さらなる実施態様では、標的結合配列は22ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の18ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの4ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号91のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM125の-18/+4)を含み得る。
【0061】
さらなる実施態様では、標的結合配列は14ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の14ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの0ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号92のDNA配列によってコードされる配列(すなわちM125の-14/-1)を含み得る。
【0062】
さらなる実施態様では、標的結合配列は44ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の40ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの4ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号94のDNA配列によってコードされる配列(M1の-40/+4)を含み得る。
【0063】
さらなる実施態様では、標的結合配列は44ヌクレオチド長であり、3'から5'に、OPA1 mRNAのAUG部位(開始コドン)の上流の領域の40ヌクレオチド及び前記AUG部位の下流のOPA1 mRNA配列のCDSの4ヌクレオチドと逆相補的な配列を含む。例えば、標的結合配列は、配列番号95のDNA配列によってコードされる配列(M2の-40/+4)を含み得る。
【0064】
そのため、いくつかの実施態様では、標的結合配列は、配列番号82~95、好ましくは配列番号82~84又は89のいずれかと少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、さらにより好ましくは100%の配列同一性を有するDNA配列によってコードされる配列を含む。さらなる実施態様では、標的結合配列は、配列番号82~95、好ましくは配列番号82~84又は89のいずれかと少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、さらにより好ましくは100%の配列同一性を有するDNA配列によってコードされる配列からなる。
【0065】
一実施態様では、機能性核酸分子は、配列番号70~79、好ましくは配列番号70~74、78~79のいずれかと少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、さらにより好ましくは100%の配列同一性を有する配列を含む。さらなる実施態様では、機能性核酸分子は、配列番号70~79、好ましくは配列番号70~74、78~79のいずれかと少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約91%の配列同一性、少なくとも約92%の配列同一性、少なくとも約93%の配列同一性、少なくとも約94%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、少なくとも約99%の配列同一性、さらにより好ましくは100%の配列同一性を有する配列からなる。
【0066】
より具体的には、配列番号70~74、78~79は、ヒトOPA1アイソフォームに対する機能性核酸分子に関し、配列番号75~77はマウスOPA1アイソフォームに対する機能性核酸分子に関する。さらに、配列番号70~77は、AS Uchl1内の「ミニ」逆位SINE B2エレメント(167ヌクレオチド)を含み、配列番号78は、AS Uchl1内の「マイクロ」逆位SINE B2エレメント(すなわち、AS Uchl1由来の逆位SINE B2転位性エレメントのヌクレオチド44~120)を含み、配列番号79は、AS Uchl1内の「ナノ」逆位SINE B2エレメント(すなわち、AS Uchl1由来の逆位SINE B2転位性エレメントのヌクレオチド64~92)を含む。ミニSINEUP配列間の差異は、本明細書に記載の標的化結合配列及び/又はスペーサー/リンカー配列によるものである。
【0067】
本明細書の開示から、かつ例えば、マウス及びアカゲザル(rhesus macaque)(アカゲザル(Macaca mulatta))のOPA1アイソフォームに対するヒトOPA1アイソフォームの配列同一性から理解されるように、本明細書に提示される標的結合配列は、他の種との交差反応性を有し得る。例えば、ヒトOPA1 mRNAは、アカゲザルOPA1 mRNAと全長にわたって96.19%の配列同一性、及びマウスOPA1 mRNAと78.36%の配列同一性を有する。そのため、一実施態様では、配列番号82~95のDNA配列によってコードされる配列のいずれかを含むか又はそれからなる標的結合配列は、マウスOPA1及び/又はアカゲザルOPA1、好ましくはアカゲザルOPA1に結合する。
【0068】
一実施態様では、本明細書に提供される機能性核酸分子は、化学修飾される。用語「修飾」又は「化学修飾」は、最も一般的な天然リボヌクレオチド:アデノシン、グアノシン、シチジン、若しくはウリジンリボヌクレオチド内又はそれら上での構造変化を指す。化学修飾は、核酸塩基内若しくはそれ上での変化(すなわち、化学的塩基修飾)、又は糖内若しくはそれ上での変化(すなわち、化学的糖修飾)であり得る。化学修飾は、共転写で(例えば、合成中に1以上のヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって)、又は転写後に(例えば、酵素の作用によって)導入され得る。
【0069】
例えば、The RNA Instituteによって提供されるRNA修飾データベース(The RNA Modification Database)(https://mods.rna.albany.edu/mods/)に記載されているような化学修飾は、当技術分野で知られている。例えば、2'-O-メチル(2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン及び2'-O-メチルシュードウリジンなど)、1-メチルアデノシン、2-メチルアデノシン、1-メチルグアノシン、7-メチルグアノシン、2-チオシチジン、5-メチルシチジン、5-ホルミルシチジン、シュードウリジン、ジヒドロウリジンなどを含む、天然のトランスファーRNA(tRNA)への化学修飾などの多くの修飾が自然に起こる。
【0070】
構造的特徴
機能性核酸分子は、同じ配列が2回以上繰り返され得る2以上の調節配列、又は異なる調節配列(すなわち、異なるSINE B2エレメント/SINE B2エレメントの機能的に活性のある断片/IRES配列/IRES由来配列)を含み得る。
【0071】
少なくとも1つの標的結合配列及び少なくとも1つの調節配列は、好ましくは、少なくとも1つのスペーサー/リンカー配列によって連結される。配列番号80又は81は、使用され得るスペーサー/リンカー配列の非限定的な例である。これらの配列の断片も企図される。
【0072】
本発明の機能性核酸分子は、好ましくは、環状分子である。この立体構造は、細胞内での分解がより困難で(エキソヌクレアーゼは環状分子を分解することができない)、したがって、より長時間活性が維持されるはるかに安定した分子をもたらす。
【0073】
さらに、機能性核酸分子は、任意に非コード3'テール配列を含んでよく、これは例えば、適切なプラスミドに分子をクローニングするのに有用な制限部位を含む。
【0074】
一実施態様では、機能性核酸分子は、3'-ポリアデニル化(ポリA)テールを含む。「3'-ポリAテール」は、転写物の3'末端に付加されるアデニンヌクレオチドの長鎖を指し、これはRNA分子に安定性を与え、翻訳を促進することができる。
【0075】
一実施態様では、機能性核酸分子は5'-キャップを含む。「5'-キャップ」は、転写物の5'末端にある改変ヌクレオチドを指し、これは特にエキソヌクレアーゼによる分解から分子に安定性を提供し、翻訳を促進することができる。
【0076】
なお、機能性核酸分子は、標的遺伝子のmRNA量に影響を与えることなく、目的の標的遺伝子の翻訳を増強することができることに留意すべきである。したがって、それらは、細胞内の遺伝子機能を検証するため、及び組換えタンパク質生成のパイプラインを実装するための分子ツールとして良好に使用することができる。
【0077】
DNA分子及びベクター
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に開示される機能性核酸分子のいずれかをコードするDNA分子が提供される。本発明のさらなる態様によれば、前記DNA分子を含む発現ベクターが提供される。
【0078】
例示的な発現ベクターは、当技術分野において公知であり、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス又はレンチウイルスベクター)、ファージベクター、コスミドベクターなどを含み得る。発現ベクターの選択は、使用する宿主細胞の種類及び使用目的に依存し得る。特に、以下のプラスミドは、機能性核酸分子の効率的な発現に使用されている。
【0079】
哺乳動物発現プラスミド:
プラスミド名: pCDNA3.1(-)
発現: CMVプロモーター
BGHポリ(A)ターミネーター
プラスミド名: pDUAL-eGFPΔ(peGFP-C2から改変)
発現: H1プロモーター
BGHポリ(A)ターミネーター
ウイルスベクター:
ベクター名: pAAV
ウイルス: アデノ随伴ウイルス
発現: CAGプロモーター/CMVエンハンサー
SV40後期ポリ(A)ターミネーター
ベクター名: rcLV-TetOne-Puro
ウイルス:レンチウイルス(第3世代)
発現: LTR-TREt(Tre-Tight)プロモーター(ドキシサイクリン誘導性発現)
BGHポリ(A)ターミネーター
ベクター名: pLPCX-link
ウイルス:レトロウイルス(第3世代)
発現: CMV
任意のプロモーターをベクター中で使用してよく、上記のものと同様に機能することに留意すべきである。
【0080】
組成物及び医療用途
本発明はまた、本明細書に記載の機能性核酸分子、DNA分子及び発現ベクターを含む組成物に関する。該組成物は、ウイルスベクター(AAV、レンチウイルスなど)及び非ウイルスベクター(ナノ粒子、脂質粒子など)による前記機能性核酸分子の送達を可能にする成分を含み得る。
【0081】
本発明の機能性核酸分子はまた、ネイキッド、すなわちパッケージングされていないRNAとして投与され得る。あるいは、該機能性核酸分子は、組成物、例えば適切な担体を含む組成物の一部として投与され得る。特定の実施態様では、担体は、1以上の機能性核酸分子での標的細胞のトランスフェクションを容易にする能力に基づいて選択される。
【0082】
本発明のさらなる態様によれば、医薬として使用するための、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物が提供される。
【0083】
本発明の機能性核酸分子は、細胞内のOPA1タンパク質のレベルを増加させるのに使用されることが理解されよう。OPA1は、ミトコンドリア恒常性において主な機能を有し、したがって、本発明のさらなる態様によれば、ミトコンドリア欠損関連疾患の治療に使用するための機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物が提供される。
【0084】
上記の機能性核酸分子、DNA分子及び/又は組成物は、好ましくは常染色体優性視神経萎縮症(ADOA)を治療するための、特にミトコンドリア欠損関連疾患の回復を促進するための医薬として使用される。変異OPA1を発現する網膜神経節細胞(RGC)及びRGC特異的OPA1欠損マウスは、ADOA病因におけるオートファジーで役割を担うことが示されている(Zaninelloらの文献 (2020) Nat. Comm. 11(1): 4029)。
【0085】
したがって、さらなる実施態様では、ミトコンドリア欠損関連疾患はADOAである。ADOAは最も一般的な遺伝性視神経障害であり、症例の75%でOPA1遺伝子のヘテロ変異によって引き起こされる。この疾患の主な症状は、網膜神経節細胞(RGC)の両側変性と、関連付けられる可能性のある筋肉及び神経変性症状を伴う視神経萎縮である。筋肉の欠陥及び神経感覚性難聴も示すADOAプラス、並びに白内障にもつながるADOACなどの様々な形態のADOAが報告されている。さらに、同じ変異を有する患者の間で疾患の重症度の家族内及び家族間の変動が報告されている。
【0086】
本発明のさらなる態様によれば、ADOAなどのミトコンドリア欠損関連疾患を治療するための薬剤を製造するための本明細書で定義される機能性核酸分子(又はDNA分子、発現ベクター又は組成物)の使用が提供される。
【0087】
本発明の別の態様によれば、ADOAなどのミトコンドリア欠損関連疾患の治療用の薬剤製造に使用するための、本明細書で定義される治療有効量の機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター、又は組成物が提供される。
【0088】
一般に、OPA1は、ミトコンドリア融合、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の維持、生体エネルギー、及びクリステの完全性を制御する主な因子の1つである。これらの細胞プロセスは、OPA1内因性発現の増加によって潜在的に救済され得るいくつかの疾患の標的である。加えて、OPA1は、ミトコンドリア融合とは無関係に、クリステリモデリングとシトクロムc放出を介してアポトーシスも制御する(Frezzaらの文献 (2006) Cell 126(1):177-89)。
【0089】
ADOAに加えて、いくつかの報告で、OPA1タンパク質発現の軽度の増加がさらなる疾患に対して治療的であり得ることが提案されている。例えば、Civilettoらの文献 (2015) Cell Metab. 21(6): 845-854は、中程度のOPA1過剰発現が、Ndufs4又はCox15遺伝子に欠陥を有する2つのミトコンドリア疾患マウスモデルの表現型を改善することを示した。ヒトでは、NDUFS4の変異は、重度の複合体I (CI)欠損症による早期発症の致死的なリー症候群と関連付けられているが、COX15の変異は、重度の孤立性心筋症、脳症、又は心脳筋症の子供で報告されている。別の例として、Varanitaらの文献 (2015) Cell Metabolismは、Opa1tgマウス(OPA1を約1.5倍過剰発現するモデル-Cogliatiらの文献 (2013) Cell 155(1): 160-171も参照されたい)は、筋萎縮、心筋梗塞から保護され、Fas誘発性肝障害の影響を受けにくく、ミトコンドリアはクリステリモデリング及びシトクロムC放出に対して耐性がある。対照的に、OPA1の大過剰発現は毒性であることが示されており(Cipolatらの文献 (2004) PNAS 101(45): 15927-15932)、したがって、本明細書で提供される方法は、正常な生理的レベルまで発現を増加させることのみが重要であるため、OPA1欠損症と関連付けられる疾患の治療に特に適している。これにより、生理的レベルを超えるOPA1発現の大幅な増加と関連付けられ得る望ましくない副作用が回避されることが想定される。
【0090】
ミトコンドリア欠損関連疾患は、当技術分野で周知であり、例えばGormanらの文献 (2016) Nat. Rev. Disease Primers, 2, 16080に記載されている。それらは、変異した/機能不全のミトコンドリアタンパク質をもたらす核DNAの変異又はミトコンドリアDNAの変異による酸化的リン酸化の欠陥によって特徴付けられ得る。
【0091】
ミトコンドリアの欠陥は、神経疾患及び発症と関連付けられている。したがって、一実施態様では、ミトコンドリア欠損関連疾患は神経疾患である。Caglayanらの文献 (2020) iScience 23: 101154では、OPA1ハプロ不全を有する遺伝子改変ヒト胚性幹細胞及び患者由来の人工多能性幹細胞が、異常な核DNAのメチル化をもたらし、神経前駆細胞(NPC)の転写回路を著しく変更したことが説明された。特に、OPA1+/-NPCは、GABA作動性介在神経細胞に発達できなかった。正常なOPA1発現に対する変化は、アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病にも関連している(Wangらの文献 (2009) J. Neurosci. 29(28): 9090-9103; Costaらの文献 (2010) EMBO Mol. Med. 2(12): 490-503; Santosらの文献(2015) Mol. Neurobiol. 52(1): 573-86; Ramonetらの文献 (2013) Cell Death Diff. 20(1): 77-85; Iannielliらの文献 (2018) Cell Rep. 22(8): 2066-2079;及びIannielliらの文献 (2019) Cell Rep. 29(13): 4646-4656)。一実施態様では、神経疾患は、アルツハイマー病、ハンチントン病及びパーキンソン病から選択される。
【0092】
一実施態様では、ミトコンドリア欠損関連疾患はプリオン病である。例えば、Wuらの文献 (2019) Cell Death Dis. 10(10): 710では、プリオン病モデルでOPA1の下方制御がインビトロ及びインビボで観察され、これはミトコンドリア構造の損傷と機能不全、mtDNAの喪失、及び神経細胞のアポトーシスに付随して生じることが説明されている。これらの症状は、OPA1発現を増加させることによって軽減された。
【0093】
(方法)
本発明のさらなる態様によれば、細胞内でのOPA1 mRNAのタンパク質翻訳を増強するための方法であって、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物を該細胞に投与することを含む方法が提供される。好ましくは、細胞は、ヒト又はマウス細胞などの哺乳動物細胞である。
【0094】
本発明のさらなる態様によれば、細胞内でのOPA1タンパク質のタンパク質合成効率を高める方法であって、本明細書に記載の機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物を該細胞に投与することを含む方法が提供される。
【0095】
本明細書に記載の方法は、本明細書で定義される機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物を細胞にトランスフェクトすることを含み得る。機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物は、当技術分野で公知の方法、例えば、マイクロインジェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウムの使用、ベクターによる自己感染又はウイルスの形質導入を含む方法を用いて標的細胞に投与され得る。
【0096】
一実施態様では、細胞は、OPA1ハプロ不全であり、すなわち、ヘテロ接合の組み合わせにおける変異体対立遺伝子の存在は、単一の野生型遺伝子によって生成される生成物の量が完全又は正常な機能に十分ではないという結果をもたらす。一般に、ハプロ不全は、正常な表現型が両方の対立遺伝子のタンパク質生成物を必要とし、遺伝子機能が50%以下に低下すると異常な表現型になる場合に生じる状態である。
【0097】
本発明の方法は、細胞内のOPA1タンパク質のレベルを増加させ、したがって、例えば、OPA1欠損(すなわち、OPA1タンパク質レベルの低下及び/又はOPA1遺伝子の機能喪失変異)と関連付けられる疾患の治療法で使用される。本発明の方法は、所定の正常タンパク質レベルの定量的な減少によって引き起こされる疾患に特に使用される。本発明の方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで実施することができる。
【0098】
本発明のさらなる態様によれば、ADOAなどのミトコンドリア欠損関連疾患を治療する方法であって、本明細書で定義される治療有効量の機能性核酸分子、DNA分子、発現ベクター又は組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0099】
二重層のIMMが比較的不浸透性のバリアであるため、ADOAなどの疾患における遺伝子治療は困難である。特異的ミトコンドリア標的化配列を含むタンパク質が発現するように操作する同質の異なる手法が現在研究されているが、本明細書に記載のOPA1機能性核酸分子は、そのような設計の必要性を軽減し、細胞質においてそれらの効果を引き出し、内因性標的の翻訳を増強する。
【0100】
一実施態様では、治療有効量は、網膜、脳、又は心臓、特に網膜に投与される。
【0101】
本明細書に記載の実施態様は、本発明の全ての態様に適用されてもよく、すなわち、機能性核酸分子について記載される実施態様は、請求される方法などに等しく適用され得ることが理解されよう。
【0102】
これから、本発明を以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0103】
(実施例)
(実施例1)
合成ミニSINEUPをヒトOPA1 mRNAを標的化するように設計した。
図1Aは、SINEUP機能ドメインの模式図を示す。重複は、SINEUP特異性を提供し、センスタンパク質をコードするmRNA(標的mRNA)に対してアンチセンス方向にある結合ドメイン(BD、灰色)である。AS Uchl1の逆位SINE B2(invB2)エレメントはエフェクタードメイン(ED)であり、タンパク質合成の増強を付与する。センス及びアンチセンスRNA分子の5'から3'方向が示されている。標的mRNAの構造エレメントが示されている:5'非翻訳領域(5'UTR、白)、コード配列(CDS、黒)及び3'非翻訳領域(3'UTR、白)。模式図は縮尺どおりに描かれていない。(B)開始M1-AUG及び第2のインフレームのM125-AUGを標的とする合成ミニSINEUP-OPA1のヒトOPA1遺伝子(5'-UTR、白)とBD(灰色)の設計の模式図。番号付けはメチオニンに対する位置を指す(すなわち、-40/+4、M1-AUGの上流の40ヌクレオチドから下流の4ヌクレオチド)。全てのBDは、全てのヒトOPA1転写物に含まれる領域内に設計されている。模式図は縮尺どおりに描かれていない。(C)開始M1-AUG及びM125-AUGを標的とする合成ミニSINEUP-OPA1のマウスOPA1遺伝子(5'-UTR、白色)及びBD(灰色)の設計の模式図。番号付けはメチオニンに対する位置を指す(すなわち、-40/+4、M1-AUGの上流の40ヌクレオチドから下流の4ヌクレオチド)。全てのBDは、全てのマウスOPA1転写物に含まれる領域内に設計されている。模式図は縮尺どおりに描かれていない。
【0104】
(実施例2)
この実施例は、合成ミニSINEUPがインビトロでヒト細胞内の内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることを示している。HEK 293T細胞をATCC(カタログ番号CRL-11268)から取得し、pCS2+linkプラスミドにコードされるBDを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1変異体でトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に収集した。ΔBDを陰性対照とした。
【0105】
全細胞溶解液を、抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。まず、OPA1バンド(L型及びS型)の強度を相対β-アクチンバンドに対して正規化した。次に、倍数変化の値を、対照細胞(ΔBD)に対して正規化して計算した。結果を
図2Aに示す。ミニSINEUP-OPA1トランスフェクト細胞は、内因性OPA1タンパク質のレベルの増加を示す。標的とミニSINEUP mRNAの両方の発現の試料間での変動は統計的に有意ではない(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。OPA1転写物を、ヒトGAPDH(hGAPDH)発現を内部対照として用いて定量化した。ΔBD試料のOPA1/hGAPDH比を、全ての転写物のレベルが正規化されたベースライン値として設定した。OPA1 mRNAレベルが変化していないことが示され、それによって転写後レベルでのOPA1タンパク質合成の増加が確認される。ミニSINEUP転写物を、内部対照としてhGAPDH発現を用いて定量化した。試料のΔBD/hGAPDH比を、全ての転写物レベルが正規化されたベースライン値として設定した。
【0106】
図2Bは、OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化を示す。全てのミニSINEUPは、内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることが示されている。
【0107】
(実施例3)
この実施例は、合成ミニSINEUPがインビトロでマウスNeuro2A細胞株における内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることを示している。Neuro2A(N2A)細胞をATCC(カタログ番号CCL-131)から取得し、pCS2+linkプラスミドにコードされたBDを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1変異体でトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に収集した。ΔBDを陰性対照とした。
【0108】
前述のように、全細胞溶解液を、抗OPA1抗体(BD Bioscience, カタログ番号612606)及び抗β-アクチン抗体(Sigma, カタログ番号A2066)を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。OPA1バンド(L型及びS型)の強度を相対β-アクチンバンドに対して正規化し、次に、倍数変化の値を、対照細胞(ΔBD)に対して正規化して計算した。結果を
図3Aに示す。ミニSINEUP-OPA1トランスフェクト細胞は、内因性OPA1タンパク質のレベルの増加を示す。標的とミニSINEUP mRNAの両方の発現の試料間での変動は統計的に有意ではない(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。OPA1転写物を、マウスGAPDH (mGAPDH)発現を内部対照として用いて定量化した。ΔBD試料のOPA1/mGAPDH比を、全ての転写物のレベルが正規化されたベースライン値として設定した。OPA1 mRNAレベルが変化していないことが示され、それによって転写後レベルでのOPA1タンパク質合成の増加が確認される。ミニSINEUP転写物を、内部対照としてmGAPDH発現を用いて定量化した。試料のΔBD/mGAPDH比を、全ての転写物レベルが正規化されたベースライン値として設定した。
【0109】
図3Bは、OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化を示す。全てのミニSINEUPは、内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることが示されている。
【0110】
(実施例4)
この実施例は、合成ミニSINEUPがインビトロでマウスアストロサイト細胞株の内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることを示している。アストロサイト細胞をATCC(CRL-254)から取得し、pCS2+linkプラスミドにコードされたBDを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1変異体でトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に収集した。ΔBDを陰性対照とした。
【0111】
前述のように、全細胞溶解液を、抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。OPA1バンド(L型及びS型)の強度を相対β-アクチンバンドに対して正規化し、倍数変化の値を、対照細胞(ΔBD)に対して正規化して計算した。結果を
図4Aに示す。ミニSINEUP-OPA1トランスフェクト細胞は、内因性OPA1タンパク質のレベルの増加を示す。標的とミニSINEUP mRNA発現の両方の試料間での変動は統計的に有意ではない(一元配置分散分析とそれに続くDunnettの事後検定)。OPA1転写物を、mGAPDH発現を内部対照として用いて定量化した。ΔBD試料のOPA1/mGAPDH比を、全ての転写物のレベルが正規化されたベースライン値として設定した。OPA1 mRNAレベルが変化していないことが示され、それによって転写後レベルでのOPA1タンパク質合成の増加が確認される。ミニSINEUP転写物を、内部対照としてmGAPDH発現を用いて定量化した。試料のΔBD/mGAPDH比を、全ての転写物レベルが正規化されたベースライン値として設定した。
【0112】
図4Bは、OPA1タンパク質レベルの平均倍数変化を示す。全てのミニSINEUPが内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることが示されている。
【0113】
(実施例5)
この実施例では、エフェクタードメイン(すなわち調節配列)の最適化について説明する。マイクロSINEUPは、インビトロでHEK 293T細胞における内因性OPA1タンパク質レベルを増加させる。HEK 293T細胞を、対照ベクター(ΔBD)、ミニSINEUP-OPA1(14/+4-M1-AUG)及びマイクロSINEUP-OPA1(14/+4-M1-AUG)変異体でトランスフェクトした。細胞をトランスフェクションの48時間後に収集した。対照ベクター(ΔBD)及びミニSINEUP-OPA1(14/+4-M1-AUG)をそれぞれ陰性対照及び陽性対照とした。マイクロSINEUP-OPA1は、AS Uchl1由来のinvSINEB2エレメントのヌクレオチド44~120によって構成される切断型EDを示す。
【0114】
全細胞溶解液を、抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。前述のように、OPA1バンド強度を相対β-アクチンに対して正規化し、倍数変化の値を、陰性対照細胞(ΔBD)に対して正規化して計算した。結果を
図5に示す。マイクロSINEUP-OPA1トランスフェクト細胞は、陰性対照細胞と比較して内因性OPA1タンパク質のレベルの増加を示す。
【0115】
(実施例6)
この実施例は、合成ナノ2SINEUPがインビトロでヒト細胞における内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることを示す。HEK 293T細胞を、結合ドメインを欠くミニSINEUP(ΔBD)及びナノ2SINEUP-OPA1(-14/+4-M1-AUG)でトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後に収集した。ナノ2SINEUP-OPA1は、AS Uchl1由来のinvSINEB2エレメントのヌクレオチド64~92で構成される切断型EDを示す。
【0116】
全細胞溶解液を、抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。ナノ2SINEUPでのトランスフェクション後に、OPA1タンパク質レベルの明らかな増加が実証されるが、BDを欠く対照SINEUPでは実証されない(
図6A)。トランスフェクト細胞におけるOPA1 mRNA及びナノ2SINEUP RNA発現のリアルタイムPCR分析は、内因性OPA1 mRNAが非トランスフェクト(NT)対照細胞と比較して有意に増加しないことを示し、転写後にOPA1タンパク質レベルの増加が生じることが確認される(
図6B、左パネル)。リアルタイムPCR分析は、HEK 293T細胞におけるOPA1-ナノ2SINEUPの発現と存在も明確に実証する(
図6B、右パネル)。
【0117】
(実施例7)
この実施例は、2つの異なるベクター骨格中のミニSINEUPが、インビトロで過剰発現したOPA1-nanoluc発光を増加させることを示す。マウスNeuro2A細胞を、ナノルシフェラーゼタグ付きヒトOPA1を含む発現プラスミドと、結合ドメインを欠くミニSINEUP(ΔBD)又はミニSINEUP-OPA1(メチオニン1を包含する-14/+4結合ドメインを有する)のいずれかで同時トランスフェクトした。2つの異なるプラスミド骨格のpCS2+及びpDUALを使用した。48時間後に、細胞をルシフェラーゼアッセイに供し、それぞれの処理条件に存在する発光量を定量化した。両方のプラスミドベクター骨格について、ミニSINEUP-OPA1を包含するものは、標的mRNAに対する結合ドメインを欠く陰性対照よりも約2.5~3倍の発光増加を示した(
図7)。pCS2+ミニSINEUP-OPA1は、対照に対して3.2倍の増加を示し、pDUALは対照に対して2.6倍増加した(n=4の独立した生物学的実験、各々3つの技術的反復)。
【0118】
(実施例8)
この実施例は、合成ナノ2SINEUPが、プラスミドベクター(pCS2+)でトランスフェクトして、内因的に転写させた場合と、修飾リボヌクレオチドを保有するネイキッドRNAとしてトランスフェクトした場合の両方で、インビトロでヒト細胞において内因性OPA1タンパク質レベルを増加させることを示す。ネイキッドRNA分子を、2’-O-メチルアデノシン(2’-O-MeA)を用いて修飾した。
【0119】
HEK 293Tを、結合ドメインを欠くミニSINEUP(ΔBD)、ナノ2SINEUP-OPA1(-14/+4-M1-AUG)、結合ドメインを欠き2’-O-MeA修飾RNAのナノ2SINEUP、及び2’-O-MeA修飾RNAのナノ2SINEUP-OPA1(-14/+4-M1-AUG)でトランスフェクトした。細胞をトランスフェクションの48時間後に収集した。ナノ2SINEUP-OPA1は、AS Uchl1由来のinvSINEB2エレメントのヌクレオチド64~92で構成される切断型EDを示す。
【0120】
全細胞溶解液を、抗OPA1抗体及び抗β-アクチン抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した(
図8A)。ナノ2SINEUP(プラスミドとネイキッドRNA形態の両方の)でのトランスフェクション後に、OPA1タンパク質レベルの明らかな増加が実証されるが、BDを欠く対照SINEUPでは実証されない(
図8A及び8B)。トランスフェクト細胞におけるOPA1 mRNA及びナノ2SINEUP RNA発現のリアルタイムPCR分析は、内因性OPA1 mRNAが対照細胞と比較して有意に増加しないことを示し、転写後にOPA1タンパク質レベルの増加が生じることが確認される(
図8C)。リアルタイムPCR分析は、HEK 293T細胞におけるOPA1-ナノ2SINEUPの発現と存在も明確に実証する(
図8D、右パネル)。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】