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特表2023-545086基材をコーティングするための、容易にリサイクル可能な着色粉末組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】基材をコーティングするための、容易にリサイクル可能な着色粉末組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 177/00 20060101AFI20231019BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20231019BHJP
   C08G 69/10 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C09D177/00
C09D5/03
C08G69/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521643
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 FR2021051760
(87)【国際公開番号】W WO2022074350
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】2010336
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-イヴ・ロゼ
(72)【発明者】
【氏名】ピアリック・ロジェ-ダルベール
【テーマコード(参考)】
4J001
4J038
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001EA14
4J001EA16
4J001EE04E
4J001EE08D
4J001EE74D
4J001FA03
4J001GA12
4J001GA15
4J001GB12
4J001GB16
4J001GD06
4J001HA02
4J001JA17
4J001JB02
4J001JC02
4J038DH001
4J038DH011
4J038HA026
4J038KA08
4J038MA14
4J038PA02
4J038PC02
(57)【要約】
本発明は、主に、基材をコーティングするための、ポリアミドに基づく着色粉末組成物を目的としており、この組成物は、(a)40質量%~99質量%の少なくとも1つのポリアミド;(b)1質量%~30質量%の少なくとも1つの含量;及び(c)0質量%~30質量%の少なくとも1つの添加剤を含み、前記のポリアミドは、ISO 307規格に準拠して、m-クレゾール中の0.5質量%溶液について20℃においてウベローデ管を使用して、25℃ではなく20℃の測定温度で測定して、0.7(g/100g)-1より大きな固有粘度を有し;かつ組成物が、ISO 9276 パート1~6に準拠して測定して、10~200μm、好ましくは30~50μmの体積中位粒径Dv50を有する。本発明はさらに、前記の組成物の製造方法、金属基材をコーティングするためのその使用、及び、前記のポリアミドに基づく着色粉末組成物を用いて得られたコーティングで被覆された金属基材を含む物品(目的物)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングするための、ポリアミドに基づく着色粉末組成物であって、
(a)40質量%~99質量%の少なくとも1つのポリアミド、
(b)1質量%~30質量%の少なくとも1つの顔料、及び
(c)0質量%~30質量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
前記顔料及び前記の任意成分である添加剤は、溶融した状態のポリアミドに添加されており;前記ポリアミドは、ISO 307規格に準拠して、m-クレゾール中の0.5質量%溶液について20℃においてウベローデ管を使用して、25℃ではなく20℃の測定温度で測定して、0.7(g/100g)-1より大きな固有粘度を有し;かつ
組成物が、ISO 9276 パート1~6に準拠して測定して、30~200μm、好ましくは30~50μmの体積中位粒径Dv50を有する、組成物。
【請求項2】
前記ポリアミドが、PA9、PA10、PA11、PA12、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、及びPA1012から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリアミドがPA11(ポリアミド11)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記顔料が、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化コバルト、チタン酸ニッケル、二硫化モリブデン、アルミニウムフレーク、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、及び有機顔料、例えば、フタロシアニン及びアントラキノン誘導体から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
50質量%~95質量%の少なくとも1つのポリアミドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
クレーター防止剤、延展剤、還元剤、酸化防止剤、強化充填剤、UV安定剤、流動化剤、及び腐食防止剤から選択される少なくとも1つの添加剤を1質量%~30質量%含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリアミドが、ISO 307規格に準拠し、m-クレゾール中の0.5質量%溶液について20℃においてウベローデ管を使用して、25℃ではなく20℃の測定温度で測定して、1.0(g/100g)-1より小さな固有粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の着色粉末組成物の製造方法であって、以下の工程:
(i)1つ又は複数の顔料及び任意選択により場合によって添加剤を、溶融状態にあるポリアミドと混合する工程であって、ポリアミドが0.6(g/100g)-1より低い固有粘度を有する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を押出して押出物を得る工程;
(iii)工程(ii)において得られた押出物を粉砕して、粉末組成物を得る工程;及び
(iv)組成物中のポリアミドが0.8(g/100g)-1より大きな固有粘度を有するようになるまで、工程(iii)において得られた粉末組成物の固相重縮合を行う工程、
を含む製造方法。
【請求項9】
工程(i)で使用されるポリアミドが、0.4(g/100g) -1より低い固有粘度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)を一軸スクリュー押出機又は二軸スクリュー押出機中で実施する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
工程(iv)を乾燥機中で実施する、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基材、特に金属基材をコーティングするための、請求項1~7のいずれか一項に記載の着色粉末組成物の使用。
【請求項13】
コーティングを、静電スプレー又はホットパウダーコーティングによって行う、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の着色粉末組成物を用いて得られるコーティングでコーティングされた金属基材を含む物品。
【請求項15】
配管、付属品、ポンプ又はバルブ、スプライン付きシャフト、引き戸レール、又はバネ、特にトラックのダンパー又は自動車シートタイプのもの、あるいは、食器洗い機のバスケット又はスプリングである、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、容易にリサイクル可能な、基材をコーティングするための着色粉末組成物に関する。また、本特許出願は、このような組成物の製造方法、基材、特に金属基材をコーティングするためのこの組成物の使用、及びコーティング剤でコーティングされた入手可能な物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
基材、特に金属基材のためのコーティング剤を製造するためにポリマー粉末を使用することが知られている。これらの粉末は、樹脂、1つ又は複数の顔料、及び特定の添加剤、例えば、可塑剤、安定剤、又は流動制御剤に基づいて配合される。
【0003】
粉状組成物は、例えば、流動性粉末の形態で、静電スプレー又は粉体の流動床中への基材の浸漬によって、基材に適用(apply)され、したがって、溶媒又は結合剤(バインダー)を必要としない。粉末の製造に使用されるポリマーは、一般に熱硬化性樹脂であるが、熱可塑性ポリマーを使用することもできる。
【0004】
高い耐薬品性及び耐熱性によって、ポリアミドは、要求の厳しい用途、例えば、食器洗い機のバスケットのコーティングのために選択されるポリマーである。
【0005】
基材をコーティングするための粉末状組成物は、様々な方法によって製造することができる。
【0006】
1つ又は複数の顔料及び場合によって任意の添加剤をポリマー粉末と乾式混合することができる。しかし、これらの粉末は容易にリサイクルできない。その理由は、オーバースプレーともいわれる、スプレー中に基材に到達できなかった粉末の画分(これはリサイクルのために回収することが有利である)は、一般に、最初に使用された粉末と同じ組成を有しておらず、したがって、リサイクルされたオーバースプレーから得られるコーティングは、外観及び特性に関して、最初の粉末に相当するものではないからである。
【0007】
国際公開第2012/034507号(A1)は、顔料及び場合により任意の添加剤を予備混合し、次にポリマーと溶融混合するプロセスを記載している。次に、その溶融混合物を冷却し、ペレット化し、粉砕して粉末を得る。このプロセスは、さまざまなポリマーに対して満足のいく結果をもたらす。しかし、粉体塗料を製造するために適したポリアミドグレードは延性が高すぎて、周囲温度において粉砕するのに適していない。それらは、極低温粉砕によって低温において粉砕することができるが、費用がかかり、歩留まりが低くなる。結果として得られる粉末はあまり丸くなく、したがって使用することがより困難になる可能性があり、特に、増大した摩擦によって、不規則な帯電した粒子の雲(cloud)を形成する。
【0008】
また、例えば米国特許第5,932,687号明細書により、溶媒、例えばエタノール中での熱溶解、及び冷却による粉末形態での沈殿によって、ポリアミド粉末を製造することも知られている。このプロセスは大量の溶媒を必要とし、多孔性の粒子を生成する可能性がある。
【0009】
さらに、溶液に顔料を添加することによって顔料を組み込むことは、限られた量についてのみ可能であり、それらの固有の核形成効果のために困難を引き起こすおそれがある。
【0010】
米国特許第3,476,711号明細書は、低粘度のポリアミドを粉砕し、次にそれを不活性ガス中で加熱して、その粘度を所望の値まで上昇させることを提案している。しかし、この特許文献は、顔料及び添加剤をポリアミド粉末中に組み込むことの問題については何も述べていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/034507号
【特許文献2】米国特許第5,932,687号明細書
【特許文献3】米国特許第3,476,711号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
[本発明のまとめ]
したがって、本発明の目的は、リサイクル後であっても変化しない、外観、特に色及び光沢に関する外観、並びに特性、特に機械的特性を有し、同時に安価である、ポリアミドに基づく基材をコーティングするための、ポリアミドに基づく着色粉末組成物(着色された粉末状組成物)を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、実際に、ポリアミドに基づく容易にリサイクル可能な着色粉末組成物(着色された粉末組成物)が、溶融状態にある低粘度のポリアミド中に顔料(1又は複数)を組み込み、その混合物を次に粉砕し、粉末化し、その後、ポリアミドの目標粘度を達成するための熱処理工程を行うことによって得ることができるという発見にある。
【0014】
得られた粉末状組成物は、各粒子中で1つ又は複数の顔料及び添加剤の均一な分布を示す。したがって、リサイクル後を含めて、外観、特に色、及び普遍的な性能特性の安定性を確保することができる。
【0015】
したがって、第1の側面によれば、本発明の1つの主題は、基材をコーティングするための、ポリアミドに基づく着色粉末組成物(着色された粉末組成物)であって、組成物は、
(a)40質量%~99質量%の少なくとも1つのポリアミド、
(b)1質量%~30質量%の少なくとも1つの顔料、及び
(c)0質量%~30質量%の少なくとも1つの添加剤
を含み、
ポリアミドは、ISO 307規格に準拠して、m-クレゾール中の0.5質量%溶液について20℃においてウベローデ管を使用して、25℃ではなく20℃の測定温度で測定して、0.7(g/100g)-1より大きな固有粘度を有し、かつ
組成物が、ISO 9276 パート1~6に準拠して測定して、30~200μm、好ましくは30~50μmの体積中位粒径Dv50を有する。
【0016】
一実施形態によれば、ポリアミドは、PA9、PA10、PA11、PA12、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、及びPA1012から選択される。一実施形態によれば、ポリアミドはポリアミド11である。
【0017】
一実施形態によれば、顔料は、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化コバルト、チタン酸ニッケル、二硫化モリブデン、アルミニウムフレーク、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、及び有機顔料、例えば、フタロシアニン及びアントラキノン誘導体から選択される。
【0018】
一実施形態によれば、組成物は、50質量%~95質量%の少なくとも1つのポリアミドを含む。
【0019】
一実施形態によれば、組成物は、クレーター防止剤、延展剤(spreading agent)、還元剤、酸化防止剤、強化充填剤、UV安定剤、流動化剤、及び腐食防止剤から選択される少なくとも1つの添加剤を1質量%~30質量%含む。
【0020】
一実施形態によれば、ポリアミドは、ISO 307規格に準拠し、m-クレゾール中の0.5質量%溶液について20℃においてウベローデ管を使用して、25℃ではなく20℃の測定温度で測定して、1.0(g/100g)-1より小さな固有粘度を有する。
【0021】
第2の側面によれば、本発明の別の主題は、この種の着色粉末組成物の製造方法であって、その製造方法は以下の工程を含む:
(i)1つ又は複数の顔料及び場合によって任意の添加剤を、溶融状態にあるポリアミドと混合する工程であって、ポリアミドが0.6(g/100g)-1より低い固有粘度を有する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を押出して押出物を得る工程;
(iii)工程(ii)で得られた押出物を粉砕して、粉末組成物を得る工程;及び
(iv)組成物中のポリアミドが0.8(g/100g)-1より大きな固有粘度を有するまで、工程(iii)で得られた粉末状組成物の固相重縮合を行う工程。
【0022】
一実施形態によれば、工程(i)で使用されるポリアミドは、0.4(g/100g) -1より低い固有粘度を有する。
【0023】
一実施形態によれば、工程(ii)は、一軸スクリュー押出機又は二軸スクリュー押出機中で実施される。
【0024】
一実施形態によれば、工程(iv)は乾燥機中で実施される。
【0025】
第3の側面によれば、本発明の別の主題は、基材、特に金属基材をコーティングするためのそのような組成物の使用である。
【0026】
一実施形態によれば、コーティングは、静電スプレー又はホットパウダーコーティングによって行われる。
【0027】
最後に、第4の側面によれば、本発明の別の主題は、この種の着色粉末組成物を用いて得られるコーティングでコーティングされた金属基材を含む物品(物体)である。
【0028】
一実施形態によれば、この物品は、配管、付属品、ポンプ又はバルブ、スプライン付きシャフト、引き戸レール、又はバネ、特にトラックのダンパー又は自動車シートタイプのもの、したがって、特に自動車構造に使用される部品、あるいは、食器洗い機のバスケット又はスプリングである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
用語の定義
【0030】
「固有粘度」という用語は、ウベローデ管中での測定によって決定される、溶液中のポリマーの粘度をいう。測定は、m-クレゾール中0.5%(m/m)の濃度において、75mgのサンプルに対して実施される。固有粘度は、(g/100g)-1単位で表され、次の式に従って計算される:固有粘度=ln(ts/to)×1/C、ここでC=m/p×100(式中、tsは溶液の流動時間(フロータイム)、toは溶媒の流動時間(フロータイム)、mはその粘度を測定するサンプルの質量、及びpは溶媒の質量である)。この測定はISO 307規格に準拠して行われるが、測定温度は25℃ではなく20℃である。ポリマー+顔料及びm-クレゾールに不溶の充填剤を含む組成物の粘度は、溶液が0.5%(m/m)のポリマー濃度を有するようにサンプル量を増やすことによって決定される。
【0031】
「融点」という用語は、NF EN ISO 11357-3に準拠して、20℃/分の加熱速度を用いて、示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、少なくとも部分的に結晶性のポリマーが粘稠な液体状態になる温度を意味すると理解される。
【0032】
「ガラス転移温度」という用語は、NF EN ISO 11357-2に準拠して、20℃/分の加熱速度を用いて、示差走査熱量測定(DSC)によって測定して、少なくとも部分的に非晶質のポリマーが、ゴム状態からガラス状態(あるいはその逆)になる温度を意味すると理解される。
【0033】
「ポリアミド」という用語は、ラクタム(1又は複数)の、アミノカルボン酸(1又は複数)の、又はジカルボン酸(1又は複数)とジアミン(1又は複数)との重縮合生成物、かつ、一般的には、アミド官能基によって相互に結合された単位から形成される任意のポリマーを意味すると理解される。
【0034】
本特許出願の意味において、「モノマー」という用語は、「繰り返し単位」の意味と解釈されるべきである。これは、ポリアミド(PA)の繰り返し単位が二酸(diacid)とジアミンのみからなる組み合わせからなる場合が特別だからである。モノマーに対応するのは、ジアミンと二酸の組み合わせ、すなわちジアミン-二酸のペア(等モル量の)であると考えられる。このことは、個々に二酸又はジアミンは構造単位にすぎず、それ自体単独では重合するのに十分ではないという事実によって説明される。
【0035】
本特許出願において、「ポリアミドに基づいている」または「ポリアミドに基づく」という表現は、「1つ又は複数のポリアミドに基づいている」ことを意味すると理解されるべきである。これは、他の成分についても同様である(例えば、「顔料」という用語は、「1つ又は複数の顔料」を意味すると理解されるべきである)。
【0036】
さらに、「体積平均径」または「Dv」という用語は、ISO 9276規格 パート1~6: 「粒子径分析の結果の表示」(Representation of results of particle size analysis)に準拠して測定される、粉末状物質の体積平均径を指す。さまざまな直径が区別されている。より具体的には、Dv50は、体積中位径を意味し、これは50番目の体積パーセンタイル(percentile)に対応し、Dv10及びDv90はそれぞれ粒子の10体積%又は90体積%がそれより下回る体積平均径を意味する。体積平均径は、特にレーザー粒度分布計、例えば、レーザー粒度分布径(Malvern Systeme Insitec)を使用して測定できる。次に付随するソフトウェア(RT sizer)を使用して、粉末の体積分布を得て、それからDv10、Dv50、及びDv90を導き出すことができる。
【0037】
反対の指示がない限り、本明細書において言及される量に関するパーセント割合(百分率)の全てが、質量によるパーセント割合(百分率)であることが理解される。
【0038】
A.着色粉末組成物(着色された粉末組成物)
【0039】
第1の側面において、本発明は、ポリアミドに基づき、かつ基材上にコーティングを形成することを意図した、着色粉末組成物(着色された粉末組成物)に関する。
【0040】
この粉末組成物にとって対象となる1つ又は複数のポリアミドは、原理的には、市販され、入手可能な多数のポリアミドの中から選択することができる。
【0041】
しかしながら、好ましくは、関与するポリアミドは半結晶性ポリアミド、特に線状脂肪族ポリアミドであり、さらに特に、9個以上、好ましくは10個以上の炭素原子を含むモノマーから得られるポリアミドである。
【0042】
アミノ酸モノマーには、6~18の炭素原子を有するα,Ω-アミノカルボン酸、例えば、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸が包含される。9~18の炭素原子を有するα,Ω-アミノカルボン酸、例えば、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸が好ましい。
【0043】
「ジアミン二酸」モノマーは、ジカルボン酸とジアミンの縮合から得られる。
【0044】
ジカルボン酸の例には、6~36個、特に8~18個、さらに特に10~12個の炭素原子を有する酸が含まれる。これらの二酸(diacid)は、脂肪族、脂環式、又は芳香族二酸であり得る。それらには、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸(HOOC-(CH10-COOH)、テトラデカン二酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が含まれる。脂肪族二酸、より特に直鎖脂肪族二酸、例えば、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
【0045】
ジアミンの例には、2~36個、好ましくは4~18個の炭素原子を有するジアミンが含まれる。それらは、芳香族、脂肪族、又は脂環式であり得る。例えば、1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、及び1,12-ドデカメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンが含まれる。
【0046】
ジアミン-二酸の例には、特に、1,6-ヘキサメチレンジアミン又は1,10-デカメチレンジアミンと、セバシン酸又はドデカン二酸の縮合によって得られるものが含まれる。
【0047】
XYの数字表記において、Xは通常、ジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0048】
1つの特定の実施形態によれば、ポリアミドは、PA9、PA10、PA11、PA12、PA610、PA612、PA614、PA618、PA1010、及びPA1012から選択される。
【0049】
本発明による組成物中のポリアミドは、好ましくは300℃以下の融点を有する。ポリアミドは、好ましくは、250℃以下、より特に200℃以下、より特に190℃以下の融点を有する。
【0050】
本発明による着色された粉末組成物中のポリアミドは、0.7(g/100g)-1以上の固有粘度を有する。さらに、組成物中のポリアミドの粘度は、有利には1.2(g/100g)-1以下である。その固有粘度は、好ましくは1.1(g/100g)-1以下、より好ましくは1.0(g/100g)-1以下、特に0.9(g/100g)-1以下、より好ましくは0.8(g/100g)-1以下である。粘度が1.2(g/100g)-1を超えると組成物を適用することが困難になる。0.8~1.0(g/100g)-1の粘度を有するポリアミドは、特に有利な特性をもつコーティングを与える。
【0051】
本発明による着色粉末組成物の体積中位径Dv50は、30~200μm、より特に30~100μm、特に30~50μm、より好ましくは32~38μmである。着色粉末組成物のDv50は、30~50μm、又は50~80μm、又は80~100μm、又は100~130μm、又は130~150μm、又は150~180μm、又は180~200μmであってよい。
【0052】
1つ又は複数のポリアミドは、好ましくは、粉末組成物の全質量に対して、40~99%、より好ましくは50~95%、さらにより好ましくは60~90%の量、例えば、40~45%、又は45~50%、又は50~55%、又は55~60%、又は60~65%、又は65~70%、又は70~75%、又は75~80%、又は80~85%、又は85~90%、又は90~95%、あるいは95~99%で存在する。
【0053】
本発明による着色粉末組成物はまた、1つ以上の顔料又は染料を含む。これらの顔料又は染料は、一般に粉末の形態である。
【0054】
顔料は、原理的には、従来使用されている顔料から自由に選択することができる。顔料は特に、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化コバルト、チタン酸ニッケル、二硫化モリブデン、アルミニウムフレーク、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛などの無機顔料、並びにフタロシアニン及びアントラキノン誘導体などの有機顔料から選択することができる。
【0055】
染料はまた、当業者に知られている任意のタイプのものであってよい。より特に、アゾ染料、アントラキノイド染料、インジゴ由来の染料、トリアリールメタン染料、クロリン染料、及びポリメチン染料が含まれる。
【0056】
顔料及び染料は、好ましくは、粉末組成物の全質量に対して、1~30%、より好ましくは2~10%、さらにより好ましくは3~5%、例えば、0~5%、又は5~10%、又は10~15%、又は15~20%、又は20~25%、又は25~30%の質量で存在する。
【0057】
本発明による着色粉末組成物は、適切な場合、クレーター防止剤又は延展剤(spreading agent)、還元剤、抗酸化剤、強化充填剤、UV安定剤、流動化剤、及び腐食防止剤、又はこれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の添加剤をさらに含んでもよい。これらの添加剤は、粉末の形態であることが有利である。
【0058】
強化充填剤(強化フィラー)は、ポリアミドベースの粉末を調製するのに適した任意のタイプのものであり得る。しかしながら、充填剤(フィラー)は、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ドロマイト、炭酸マグネシウム、石英、窒化ホウ素、カオリン、ウォラストナイト、二酸化チタン、ガラスビーズ、マイカ、カーボンブラック;石英、マイカと緑泥石の混合物;長石、及び分散されたナノメートルの充填剤、例えばカーボンナノチューブ、並びにシリカからなる群から選択されることが好ましい。充填剤はまた、ファイバー、特にガラスファイバー及びカーボンファイバーを含んでもよい。特に好ましいやり方では、充填剤は炭酸カルシウムである。
【0059】
クレーター防止剤及び/又は延展剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、クレーター防止剤及び/又は延展剤は、ポリアクリレート誘導体からなる群から選択される。
【0060】
UV安定剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、UV安定剤は、レゾルシノール誘導体、ベンゾトリアゾール類、フェニルトリアジン類、及びサリチレート類からなる群から選択される。
【0061】
酸化防止剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、酸化防止剤は、ヨウ化カリウムと組み合わせたヨウ化銅、フェノール誘導体、及びヒンダードアミンからなる群から選択される。
【0062】
流動化剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、流動化剤は、アルミナ及びシリカからなる群から選択される。
【0063】
腐食防止剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、腐食防止剤は、リンケイ酸塩及びホウケイ酸塩からなる群から選択される。
【0064】
組成物は、好ましくは、つや消し剤を10質量%未満含むか、又は実質的に含まない。
【0065】
これらの添加剤は、好ましくは、粉末組成物の全質量に対して、0~50%、より好ましくは0~30%、さらにより好ましくは0~5%、例えば、0~5%、又は5~10%、又は10~15%、又は15~20%、又は20~25%、又は25~30%、又は30~35%、又は35~40%、又は40~45%、又は45~50%の質量による量で存在する。
【0066】
一実施形態によれば、本発明による着色粉末組成物は、1つ又は複数のポリアミド、1つ又は複数の顔料、及び任意選択によって場合により上記の1つ又は複数の添加剤から本質的になるか又はそれらのみからなる。
【0067】
顔料及び/又は添加剤は、有利には、溶融状態のポリアミドのなかに混合される。このような混合は、例えば、配合(コンパウンディング)、特に押出機中で配合することによって行うことができる。このようにして添加された顔料及び/又は添加剤は、ポリアミドに覆われた形態である。
【0068】
B.粉末組成物の製造方法
【0069】
本発明はさらに、ポリアミドに基づく着色粉末組成物の製造方法に関し、その方法は以下の工程を含む:
(i)1つ又は複数の顔料及び任意選択により場合よって添加剤を、溶融状態のポリアミドと混合する工程であって、ポリアミドが0.6(g/100g)-1未満の固有粘度を有する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を押出して押出物を得る工程;
(iii)工程(ii)で得られた押出物を粉砕して粉末組成物を得る工程;及び
(iv)ポリアミドが0.8(g/100g)-1より大きな固有粘度を有するようになるまで、工程(iii)で得られた粉末組成物を固相重縮合する工程。
【0070】
工程(i)で使用される0.6(g/100g)-1未満の固有粘度を有するポリアミドは、水及び適切な場合には適切な触媒の存在下での、上述した1つ又は複数のモノマーの重縮合によって得ることができる。
【0071】
上記の1つ又は複数のモノマーは、アミノ酸、例えば、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸、及び/又はそれらの混合物、好ましくは11-アミノウンデカン酸、あるいはそれらの混合物の1つから選択され得る。
【0072】
それらはまた、ジアミンモノマー及び二酸モノマーの混合物、好ましくは、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタ-キシリレンジアミン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンなどのジアミンモノマーと、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びテトラデカン二酸、あるいはそれらの混合物の1つなどの二酸モノマーとの混合物を含んでいてもよい。
【0073】
一実施形態によれば、水は、混合物の全質量に対して10質量%~40質量%、好ましくは20質量%~30質量%の量で添加される。水は、供給工程中及び/又は重縮合工程中に混合物に添加することができる。
【0074】
触媒は、特に、リン酸及び/又は亜リン酸などの、リンに基づく酸であり得る。
【0075】
ポリアミド合成反応はそれ自体知られており、特にNylon Plastics Handbook, Ed. Melvin I. Kohan, Hanser Publishers 1995, 17~27頁に記載されている。
【0076】
本方法の工程(i)で使用されるポリアミドの固有粘度は、0.6(g/100g)-1未満であり、好ましくは0.25~0.55、好ましくは0.3~0.4(g/100g)-1の範囲内である。
【0077】
工程(i)は有利には、せん断を伴うミキサー、例えば、一軸又は二軸スクリュー押出機中で実施される。
【0078】
1つ又は複数の顔料及びまた任意選択により場合によって添加剤は、ポリアミドと一緒に、又はポリアミドの後にミキサー中に導入することができる。着色粉末組成物が複数の顔料を含む場合、均質化を助けるためにそれらをマスターバッチの形態で添加することができる。マスターバッチは、特に、組成物に使用されるポリアミド中で作ることができる。
【0079】
押出工程(ii)は、ペレットを製造するためのペレット化ダイを通して実施され得る。ペレットの体積中位径Dv50は、有利には、1~10、より特に2~4mmの範囲内である。あるいは、押出は、そこで混合物が固化する冷却されたロールミルへのダイを通して、又はカレンダーを使用して行うことができる。次に、固化した混合物を粉砕機に搬送して、フレークを生成することができる。これらのフレークの平均径は、通常5×5×1mmである。
【0080】
工程(iii)は、有利には、機械的粉砕機中で、かつ周囲温度において、特に衝撃ミル、例えば、ハンマーミル、ナイフミル、ディスクミル、又はエアジェットミル中で実施される。粉砕を補助するもの、例えば、シリカ、好ましくはヒュームドシリカを、粉砕前にポリアミドに添加してもよい。
【0081】
この工程は、有利には、一体型セレクターを備えた粉砕機中で実施することができる。 その場合、組成物の所望の粒径は、粉砕速度を調整することによって直接制御することができ、粉砕速度は、好ましくは、粉砕機中に組み込まれたセレクターによって調節される。
【0082】
一般的に言えば、工程(iii)に続いて、得られた粉末組成物を選択してその粒径を調節する工程(iiia)を行うことが有用であり得る。選択は、例えばスクリーニング及び/又は分級することによって行うことができる。
【0083】
内部セレクターを備えた粉砕機を使用することが特に有利である。粉末組成物の粒径は、粉砕速度及びまた粉砕機に組み込まれたセレクターの速度を調節することによって制御することができる。
【0084】
工程(iii)から得られる粉末組成物は、有利には、適切な場合、30~200μm、好ましくは30~50μm、より特に32~38μmの体積中位径Dv50を有する。 着色粉末組成物のDv50は、30~50μm、又は50~80μm、80~100μm、又は100~130μm、又は130~150μm、又は150~180μm、又は180~200μmでありうる。
【0085】
固相重縮合工程(iv)は、ガラス転移温度より高いが、ポリアミドの融点より低い温度において実施することができる。反応は、有利には、例えば、不活性雰囲気中、窒素下又は真空下で実施される。予期される固有粘度を達成するために必要な反応時間は、選択した温度によって異なる。それは、単純な決まりきった試験によって確立することができる。この工程は、乾燥機中で有利に実施することができる。
【0086】
本発明によれば、ポリアミドに基づく着色粉末組成物中のポリアミドは、0.7(g/100g)-1より高い固有粘度を有する。さらに、有利には、固有粘度は、1.2(g/100g)-1未満である。その固有粘度は、好ましくは1.1(g/100g)-1以下、より好ましくは1.0(g/100g)-1以下、特に0.9(g/100g)-1以下、より好ましくは0.8(g/100g)-1以下である。
【0087】
C.基材をコーティングするための使用
【0088】
本発明によるポリアミドに基づく着色粉末組成物は、基材、特に金属基材をコーティングするために特に有用である。
【0089】
別の側面によれば、本発明は、したがって、基材をコーティングするための、上述したポリアミドに基づく着色粉末組成物の使用に関する。
【0090】
「金属基材」という用語は、1つ又は複数の金属を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらのみからなる基材を指す。金属基板はどのようなタイプであってもよい。金属基材は、好ましくは、普通鋼又は亜鉛メッキ鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金でできた部材であり得る。
【0091】
コーティングの前に、金属基材は、当業者に周知の1つ又は複数の表面処理、例えば、大まかな脱脂、アルカリ脱脂、ブラッシング、ショットブラスト、又はサンドブラスト、高度な脱脂、ホットリンス、リン酸脱脂、鉄/亜鉛/トリカチオンリン酸塩処理、クロメート処理、コールドリンス、及びクロムリンスを受けることができる。したがって、着色粉末組成物は、処理された又は未処理の金属基材をコーティングするために使用することができる。
【0092】
有利には、コーティングされることが意図されている基材は、平滑又はショットブラストし脱脂された鋼(スチール)、リン酸処理脱脂鋼、リン酸鉄又はリン酸亜鉛処理鋼、センジミア亜鉛メッキ鋼、電気亜鉛メッキ鋼、浴亜鉛メッキ鋼、電気泳動処理鋼、クロメート鋼、陽極酸化鋼、コランダムサンドブラスト鋼、脱脂アルミニウム、滑らか又はショットブラストアルミニウム、クロムメッキアルミニウム、鋳鉄、及びその他の金属合金から作られる。
【0093】
基材は、全体的にまたは部分的にコーティングすることができる。
【0094】
好ましくは、基材上に形成されるコーティングは、100~550μm、より好ましくは100~300μmの厚さを有するフィルム(膜)である。実施形態では、フィルムは、100~150μm、又は150~200μm、又は200~250μm、又は250~300μm、又は300~350μm、又は350~400μm、又は400~450μm、又は450~500μm、又は500~550μmの厚さを有する。
【0095】
基材上のコーティングは、好ましくは、0.7(g/100g)-1以上の固有粘度を有する。コーティングの固有粘度は、それを形成するために使用される粉末組成物の固有粘度とは異なりうる。コーティングの固有粘度は、より特に、コーティングが形成される条件下での重縮合の再開によって、より大きくなり得る。
【0096】
特定の実施形態では、基材上のコーティングは、0.8以上、0.85以上、又は0.9以上、又は0.95以上、又は1.05以上、又は1以上、又は1.1以上、又は1.15以上、又は1.2以上、又は1.25以上、又は1.3以上の固有粘度を有する。 上記のテキストにおいて、固有粘度は(g/100g)-1で表される。
【0097】
本発明の別の主題は基材をコーティングする方法であり、その方法は以下の工程を含む:
- 基材を、上述したポリアミドに基づく着色粉末組成物と接触させる工程;及び
- 熱の影響下で粉末組成物を融解させる工程。
【0098】
着色粉末組成物は、当業者に周知の多数の技術に従って、基材に適用させる又は基材と接触させることができる。コーティングは、好ましくは、静電スプレー又はホットパウダーコーティングによって実施される。
【0099】
あるいは、コーティングは、静電噴霧(静電スプレー)によって実施されてもよい。
【0100】
基材を、ポリアミドに基づく着色粉末組成物と接触させる工程は、その場合、以下の工程を含み得る:
- 粉末組成物を帯電させる工程;
- 帯電した粉状組成物を基材上に噴霧(スプレー)する工程;及び
- 粉末組成物で覆われたターゲット基材を、ポリアミドの融点より高い温度へと加熱する工程。
【0101】
静電スプレーによるコーティングには、静電的に帯電した粉末粒子を基板上に堆積させる、特に周囲温度において堆積させることが含まれる。粉末組成物は、噴霧装置のノズルを通過する際に静電的に帯電しうる。このように荷電された組成物は、その後、ゼロ電位に接続されたコーティングされるべき基板上へ噴霧することができる。コーティングされた基材を、次に、組成物を溶融させてフィルムを与えることができる温度においてオーブン中に置くことができる。
【0102】
粉体噴霧(パウダースプレー)装置は任意のタイプであってよく、例えば、コロナ効果及び/又は摩擦帯電によって粉体を帯電させる静電ガンであってよい。好ましくは、ノズルは、負又は正の極性の、約10~約100kVの間の高電位にされる。
【0103】
好ましくは、噴霧装置内の粉末流量は、10~200g/分、より好ましくは50~120g/分である。粉体の静電印加温度は15~25℃が好ましい。基材のオーブン滞留時間は3~15分が好ましい。粉末で被覆された基材の加熱温度は、ポリアミドの融点より少なくとも30℃高く、好ましくは30~60℃高くてよい。次に、基材を例えば周囲温度まで冷却してよい。
【0104】
別の実施形態によれば、基材のコーティングはホットパウダーコーティングによって行われる。その場合、基材を着色粉末組成物と接触させる工程は、以下の工程を含む:
- 基材を、ポリアミドの融点より高い温度に加熱する工程;
- 着色粉末組成物を基材上に噴霧する工程。
【0105】
基板の加熱温度は、流動床中での浸漬によるコーティングに関して上述した通りであることができる。次に、基材を例えば周囲温度まで冷却することができる。噴霧(スプレー)された粉末は、帯電されていても帯電されていなくてもよい。
【0106】
D.得ることができるコーティングされた物体
【0107】
別の側面によれば、本発明は、上述した粉末状組成物を溶融することによって得られるコーティングで被覆された基材を含む物品に関する。実際に、コーティングは、腐食や摩耗に対する有効な保護を物品に与える。
【0108】
この物品は、次のことを意図していることが好ましい:
- 流体を運ぶ、特に、配管、付属品、ポンプ、又はバルブの形態で流体を運ぶため;
- 自動車用、特に、スプラインシャフト、スライド・ドア・レール、又はバネの形態の自動車用、特にトラックのダンパー又は自動車のシートのタイプ用;
- ワイヤー製品用、特に食器洗い機のバスケット又は食器洗い機のスプリングの形態のワイヤー製品用。
【0109】
以下の記載及び図面に照らして、本発明のより良い理解が得られるであろう。図面は以下のことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1図1は、フィルムを製造するために使用される、例1~4の粉末をリサイクルするプロセスを示す図である。
図2図2は、Malvern Insitecレーザー粒度計を使用して測定した、例1による粉末の体積粒径分布(粒径の関数としての体積分率)の片対数図である(実線:未使用粉末; -○-:1回リサイクルした粉末; -□-:2回リサイクルした粉末; -◇-: 3回リサイクルした粉末)。
図3図3は、Malvern Insitecレーザー粒度計を使用して測定した、例2による粉末の体積粒径分布(粒径の関数としての体積分率)の片対数図である(実線:未使用粉末; -○-:1回リサイクルした粉末; -□-:2回リサイクルした粉末; -◇-: 3回リサイクルした粉末);
図4図4は、Malvern insitecレーザー粒度計を使用して測定した、例3による粉末の体積粒径分布(粒径の関数としての体積分率)の片対数図である(実線:未使用粉末; -○-:1回リサイクルした粉末; -□-:2回リサイクルした粉末; -◇-: 3回リサイクルした粉末);
図5図5は、Malvern insitecレーザー粒度計を使用して測定した、例4による粉末の体積粒径分布(粒径の関数としての体積分率)の片対数図を表す(実線:未使用粉末; -○-:1回リサイクルした粉末; -□-:2回リサイクルした粉末; -◇-: 3回リサイクルした粉末)。
【実施例
【0111】
例1
ポリアミドに基づく着色粉末組成物を、以下のプロセスに従って製造した。
【0112】
初めに、水0.5kg、次亜リン酸5g、及びリン酸9.8gの存在下で、11-アミノウンデカン酸1.2kgから、低粘度のポリアミド11(以下「プレポリマー」という)を合成した。その混合物を撹拌しながら190℃の温度へと2時間で加熱し、そのときに、温度が160℃に達するか、又は圧力が8.5バールを超える。合成中に、11-アミノウンデカン酸とともに最初に仕込んだ水を、一定の圧力(p=10バール)における蒸発によって除去する。430gの量の水を取り出した後、溶融したプレポリマーを、二軸スクリュー押出機を使用して押し出す。次に、その混合物を、固化させるために、冷水を循環させた2本スチール・ロールによって冷却して、冷やし、フレークへと粉砕する。
【0113】
0.35の粘度を有する得られたプレポリマーを、適切な容器内で、酸化防止剤及び延展剤(spreading agent)、並びに二酸化チタンに基づく白色顔料を下の表1に示す比率で含む添加剤の配合物と混合する。
【0114】
この混合物を二軸押出機へと導入し、溶融し且つよく混合し、次に押し出す。その混合物を、次に、混合物を、固化させるために、冷水を循環させた2本スチール・ロールによって冷却し、冷やし、次にフレークへと粉砕する。
【0115】
フレークの形態で回収された顔料及び添加剤を添加されたプレポリマーは、次に、内部セレクターを備えたハンマーミル中で粉砕し、ISO 9276-パート1~6に準拠して測定して、35μmの体積中位径Dv50を有する粉末を得る。
【0116】
粉砕された粉末は、次に、ポリアミドの粘度を0.93(g/100g)-1へ増大させるために、真空下、140~152℃において乾燥機内で固相重縮合を受ける。
【0117】
【表1】
【0118】
例2(例1に対する比較例)
比較のために、ポリアミドに基づく着色粉末組成物を下のプロセスに従って製造した。
【0119】
例1に示したプロセスによって得られた、フレークの形態のプレポリマーを、次に、内部セレクターを備えたハンマーミル中で粉砕して、ISO 9276-パート1~6に準拠して測定して、35μmの体積中位径Dv50を有する粉末を得る。
【0120】
粉砕したプレポリマーに、次に、ポリアミドの粘度を0.93(g/100g)-1 へ増大させるために、真空下、140~152℃において固相重縮合を行う。
【0121】
最後に、粉末のポリアミド11を、ヘンシェル・ラピッド・ミキサー中で1800回転/分で120秒間、周囲温度(15~50℃)において、上の表1に示した比率で添加剤配合物及び二酸化チタンに基づく白色顔料と混合する。
【0122】
例3
ポリアミドに基づく着色粉末組成物を、以下のプロセスに従って製造した。
【0123】
初めに、水0.5kg及び次亜リン酸9.5gの存在下で、11-アミノウンデカン酸1.2kgから、低粘度のポリアミド11(以下「プレポリマー」という)を合成した。その混合物を撹拌しながら190℃の温度へと2時間で加熱し、そのときに、温度が160℃に達するか、又は圧力が8.5バールを超える。合成中に、11-アミノウンデカン酸とともに最初に仕込んだ水を、一定の圧力(p=10バール)における蒸発によって除去する。430gの量の水を取り出した後、溶融したプレポリマーを、二軸スクリュー押出機を使用して押し出す。次に、その混合物を、固化させるために、冷水を循環させた2本スチール・ロールによって冷却して、冷やし、フレークへと粉砕する。
【0124】
得られたプレポリマーを適切な容器中で、上の表1に示す比率で、添加剤の配合物、二酸化チタンに基づく白色顔料、コバルト塩に基づく青色顔料、及びカーボンブラックタイプの黒色顔料と混合する。
【0125】
この混合物を二軸スクリュー押出機中へ導入し、溶融して且つよく混合し、次に押し出す。次に、その混合物を、固化させるために冷水を循環させた2本スチール・ロールによって冷却して、冷やし、次にフレークへと粉砕する。
【0126】
フレークの形態で回収された顔料及び添加剤を添加されたプレポリマーを、次に、内部セレクターを備えたハンマーミル中で粉砕して、ISO 9276-パート1~6に準拠して測定して、35μmの体積中位径Dv50を有する粉末を得る。
【0127】
粉砕された粉末を、次に、ポリアミドの粘度を0.93(g/100g)-1へ増大させるために、真空下、140~152℃において乾燥機内で固相重縮合を行う。
【0128】
例4(例3に対する比較例)
比較のために、ポリアミドに基づく着色粉末組成物を、下のプロセスに従って製造した。
【0129】
例1に示した方法によって得られたフレーク形態のプレポリマーを、内部セレクターを備えたハンマーミル中で粉砕して、ISO 9276規格-パート1~6に準拠して測定して35μmの体積中位径Dv50を有する粉末を得る。
【0130】
粉砕されたプレポリマーを、次に、ポリアミドの粘度を0.93(g/100g)-1へ増大させるために、真空下、140~152℃において固相重縮合を行う。
【0131】
最後に、粉末状のポリアミド11を、ヘンシェル・ラピッド・ミキサー中、1800回転/分で、周囲温度(15~50℃)において120秒間、添加剤の配合物、二酸化チタンに基づく白色顔料、コバルト塩に基づく青色顔料 及びカーボンブラックタイプの黒色顔料と、上の表1に示した割合で混合する。
【0132】
コーティングの生成
リサイクル手順にわたっての着色粉末組成物の性能特性を比較するために、上の例において調製した未使用粉末を使用して、最初のフィルム(バージンフィルム)を製造し、その後、過剰な粉末を連続して3回回収し、 図1に詳細を記した手順に従って、リサイクルフィルムを製造した。
【0133】
最初に、未使用の粉末及びリサイクルされた粉末を、レーザー粒度計(Malvern Systeme Insitec)及びそれに付随するソフトウェア(RT sizer)を使用し、ISO 9276規格-パート1~6に準拠して測定した体積粒径(図2~5を参照されたい)並びにDv10、Dv50、及びDv90の測定によって特性解析を行った。それらの粉末について得られた粒径分布は、図2図5に示されている。それらの曲線上にプロットされたDv10、Dv50、及びDv90の値は、下の表2に突き合わせてある。
【0134】
これらの結果に基づいて、リサイクルの過程にわたって粉末の粒子サイズが徐々に変化することが観察される。これは、スプレーブース内の空気の抜き出しが、粉末の微粒子の一部を同伴するからである。また、例2の粉末のDv90は例1の粉末よりも大幅に増大し、かつ、例4の粉末のDv90は例3の粉末よりも大幅に増大していることも分かる。
【0135】
粒子径の曲線(図2図5)は、例1及び3の粉末の最大直径が約200μmにおいて本質的に安定したままである一方、最大直径が、例2及び4の粉末については3回目のリサイクルで300μmより大きな値まで増大し、これは粒子の凝集を示している。その重量によって、大きなサイズの粒子は、オーブンを横切る前に金属ベースから分離する傾向がより大きく、このことが、例2及び4の粉末を適用することをより困難にする。さらに、これらの粒子は合体するのにより長くかかり、したがって、フィルム形成に影響を及ぼす。
【0136】
【表2】
【0137】
フィルムは、静電ガン (正電荷コロナ,+35~+45kV,10~30μA) を使用し、コーティングフィルムが剥離することを容易にする非粘着処理(シリコーンコーティング)を施した厚さ3mmのスチールの金属板に粉末を適用することによって製造した。このように粉体塗装された金属板を、次に熱処理(オーブン220℃で10分間)して、粉体を溶融させて、フィルムを得た。次に、フィルムを基材から剥がして、外観及び機械特性に関して特性分析を行った。
【0138】
フィルムは、ISO 18314規格に準拠して、それらの色座標L、a、b、及び色相差dEによって、Malvern社のInsitec分光光度計でフィルム色に関して特性分析をした。さらに、それらの60°光沢を、ISO 2813規格に準拠して、Byk micro-Tri-Gloss光沢計を使用して決定した。最後に、フィルムの外観を視覚的に検査して、それを次のように分類した: (+)=規則的で光沢のある外観;(-)=不規則でサテンのような外観、いくつかのクレーター;(--)=不規則でサテンのような外観、多くのクレーター。
【0139】
これらの測定及び評価の結果は、下の表3にまとめてある。
【0140】
リサイクルの前であっても、例1の粉末から得られるフィルムの外観は、例2のものよりもはるかに規則的かつ光沢があることに留意されたい。同じことが例3の粉末から得られるフィルムにも当てはまり、それは例2のものよりもさらに規則的かつ光沢がある。リサイクルの後、例1の粉末から得られたフィルム及び例3の粉末から得られたフィルムは、それらがリサイクルされた回数に関係なく高くかつ実質的に変化しない光沢レベルを示す。対照的に、例2で得られた粉末から得られたフィルム及び例4から得られた粉末から得られたフィルムは、リサイクルを繰り返すうちに光沢が低下し、このことは、表面粗さが大きくなりかつフィルム形成が不十分になることによって明示されている。この観察結果は、理想的にあまり合体しない大きなサイズの粒子の存在に関連している可能性がある。同様に、例1及び3の粉末とは対照的に、例2及び4の粉末については、リサイクルを繰り返すあいだにクレーターの数が増えることが観察されている。
【0141】
フィルムは、静電ガン (正電荷コロナ、+35~+45kV、10~30μA) を使用して、その後の塗膜剥離を容易にする非粘着処理 (シリコーンコーティング) を施した厚さ3mmのスチール製の金属板に粉末を適用することによって製造した。このように粉体塗装された金属板を次に熱処理(220℃のオーブンで10分間)して、粉体を溶融させ、フィルムを得た。そのフィルムを次に基材から剥がし、外観及び機械的特性に関して特性分析を行う。
【0142】
これらの測定及び評価の結果は、下の表3にまとめてある。
【0143】
さらに、リサイクルを繰り返すあいだに、例1及び3の粉末を用いて得られたフィルムと比較して、それぞれ例2及び4の粉末を用いて得られたフィルムのほうが色相dEの変化が大きいことに留意されたい。この観察は、顔料がカプセル化されている例1及び3の粉末について色相の良好な保持がもたらされていると考えられる。
【0144】
最後に、得られたフィルムの機械的特性を、ISO 527-3規格に準拠してInstron社のZwick BZ1 ダイナモメーターを使用して、破断伸びによって評価した。結果の比較を助けるために、評価したコーティングの破断伸びAtestと例1の粉末から得られたコーティングの破断伸びArefとの比から得られる相対破断伸びArelの計算を行った。
【0145】
【数1】
【0146】
これらの測定の結果は、下の表4にまとめてある。
【0147】
リサイクルを繰り返す過程で、例1及び3の粉末を用いて得られたフィルムは、例2及び4の粉末から得られたものと比較して、より高く且つより安定した破断伸びを有することに留意されたい。2種類のフィルムのあいだの当初の破断伸びの違いは、したがって、リサイクルを繰り返すと増大する。より良い破断伸びは、粉末中での添加剤及び顔料の改善された分散を反映していると考えられる。したがって、例1及び3の粉末は、より均質且つより柔軟なフィルムをもたらす。
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
実施した試験は、ポリアミド中に顔料が封入された粉末をリサイクルすることが可能であることを明確に示している。その理由は、顔料及び添加剤が単に乾式混合された粉末とは対照的に、このリサイクルされた粉末を使用して、非常に堅実な光学的及び機械的特性を有するフィルムを得ることができるからである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】