(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】誘導加熱に適合したフェライト系磁性材料を含む触媒組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20231019BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231019BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231019BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20231019BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20231019BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B01J29/76 A
B01J37/08 ZAB
B01J35/10 301J
B01J35/02 H
B01J35/02 G
B01J23/89 A
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521731
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021053453
(87)【国際公開番号】W WO2022076335
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コードル,マシュー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ロス,スタンリー,エー.
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169ZA46B
(57)【要約】
本開示は、触媒材料及び磁性フェライト化合物を含む触媒組成物を提供する。磁性フェライト化合物は、例えば、触媒組成物内に組み込む前に加熱することによって前処理することができる。磁性フェライト化合物は、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンを含む1つ以上の追加の金属と、を含むことができる。本開示はまた、触媒組成物を加熱するためのシステム及び方法を含み、これは、電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体を使用する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒組成物であって、
触媒材料と、
少なくとも1つの磁性成分と、を含み、
前記磁性成分は、少なくとも1つの磁性フェライト化合物を含む、触媒組成物。
【請求項2】
前記磁性フェライト化合物が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンのうちの1つ以上と、を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記磁性フェライト化合物が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、及びイットリウムのうちの1つ以上と、を含む、請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記磁性フェライト化合物が、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項5】
ニッケル/亜鉛のモル比が、約1/99~約99/1の範囲である、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項6】
ニッケル/亜鉛のモル比が、約25/75~約75/25の範囲である、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項7】
ニッケル/亜鉛のモル比が、約50/50である、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記磁性フェライト化合物が、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含む、請求項4に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記磁性フェライト化合物が、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項10】
コバルト/亜鉛のモル比が、約1/99~約99/1の範囲である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項11】
コバルト/亜鉛のモル比が、約25/75~約75/25の範囲である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項12】
コバルト/亜鉛のモル比が、約50/50である、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項13】
前記磁性フェライト化合物が、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含む、請求項9に記載の触媒組成物。
【請求項14】
前記磁性フェライト化合物が、鉄及びイットリウムを含む、請求項3に記載の触媒組成物。
【請求項15】
前記磁性フェライト化合物が、Y
3Fe
5O
12を含む、請求項14に記載の触媒組成物。
【請求項16】
前記磁性フェライト化合物が、約400℃~約1200℃の範囲の温度で約1時間以上加熱することによって調製される、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記磁性フェライト化合物が、約600℃~約900℃の範囲の温度で約1時間以上加熱することによって調製される、請求項1~15のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記磁性フェライト化合物が、約100m
2/g未満のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記磁性フェライト化合物が、ナノ粒子の形態である、請求項1~18のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項20】
前記触媒組成物の温度が、交流磁界への曝露によって上昇する、請求項1~19のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項21】
前記触媒材料が、一酸化炭素の酸化、炭化水素の酸化、NOxの酸化、アンモニアの酸化、NOxの選択的接触還元、及びNOxの貯蔵/還元のうちの1つ以上のための触媒材料を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項22】
前記触媒材料が、多孔質支持体に含浸又はイオン交換された1つ以上の触媒金属を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の触媒組成物。
【請求項23】
前記多孔質支持体が、耐火性金属酸化物又はモレキュラーシーブである、請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項24】
前記1つ以上の触媒金属が、卑金属、白金族金属、卑金属又は白金族金属の酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項22又は23に記載の触媒組成物。
【請求項25】
内燃エンジンからの排気ガス排出物の処理のための触媒物品であって、
請求項1~24のいずれか一項に記載の触媒組成物が堆積されたフロースルー基材又はウォールフローフィルタを含む、触媒物品。
【請求項26】
前記物品が、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒スートフィルタ(CSF)、リーンNOx捕捉(LNT)、選択的接触還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用に適合する、請求項25に記載の触媒物品。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の触媒物品と、
電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、前記生成された交流磁界が前記触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置される、導体と、を備える、排出物制御システム。
【請求項28】
前記導体が、前記触媒物品の少なくとも一部を取り囲む導線のコイルである、請求項27に記載の排出物制御システム。
【請求項29】
交流電流を供給するために前記導体に電気的に接続された電力源を更に備える、請求項27又は28に記載の排出物制御システム。
【請求項30】
前記触媒物品に入るガスの温度を測定するように配置された温度センサと、前記温度センサと通信するコントローラと、を更に備え、前記コントローラは、前記触媒物品の加熱が望まれる場合、前記コントローラが電流で前記導体に電圧を加えることができるように、前記導体によって受け取られた前記電流を制御するように適合する、請求項27~29のいずれか一項に記載の排出物制御システム。
【請求項31】
内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理する方法であって、請求項27~30のいずれか一項に記載の排出物制御システムに前記排気ガス排出物を通過させることを含む、方法。
【請求項32】
触媒組成物を有する触媒床を含む固定床反応器設計のための触媒であって、前記触媒組成物が
触媒材料と、
少なくとも1つの磁性成分と、を含み、
前記磁性成分は、少なくとも1つの磁性フェライト化合物を含む、触媒。
【請求項33】
請求項32に記載の触媒と、
電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、前記生成された交流磁界が前記触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置される、導体と、を備える、固定床触媒システム。
【請求項34】
フェライト化合物を約600℃以上の温度で約1時間以上加熱して磁性フェライト化合物を得ることと、
前記磁性フェライト化合物を触媒材料と組み合わせることと、を含む、触媒材料を製造するための方法。
【請求項35】
フェライト化合物を加熱して、前記フェライト化合物のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を約100m
2/g未満に減少させて加熱されたフェライト化合物を得ることと、
前記加熱された磁性フェライト化合物を触媒材料と組み合わせることと、を含む、触媒材料を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2020年10月8日出願の米国仮出願第63/089,247号に対する優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、例えば、触媒基材をコーティングするために使用することができる触媒組成物、エンジン流出物の処理に使用するための物品、そのような触媒基材及び物品の調製方法及び使用方法、並びにそのような触媒組成物及び物品を使用するシステムに関する。
【0003】
ディーゼルエンジンからの排出物には、窒素酸化物(NOx)、未燃焼の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び粒子状物質(PM)が含まれる。NOxは、とりわけ一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO2)を含む、様々な化学種の窒素酸化物を説明するために使用される用語である。排気のHC含量は、エンジンタイプ及び動作パラメータに応じて異なり得るが、典型的には、メタン、エテン、エチン、プロペンなどの様々な短鎖炭化水素及び長鎖ベースの炭化水素が含まれる。排気微粒子状物質の2つの主要な成分は、可溶性有機画分(SOF)及びスート画分である。SOFは、スートの上に層状に凝縮し、未燃焼のディーゼル燃料及び潤滑油に由来し得る。SOFは、排気ガスの温度に応じて、蒸気又はエアロゾル(すなわち、液体凝縮物の細かい液滴)としてディーゼル排気中に存在し得る。スートは、主に炭素の粒子で構成され得る。
【0004】
内燃エンジンの排気を処理するために使用される触媒は、エンジンの排気が、効率的な触媒変換が起こるには十分に高い温度ではない可能性があるため、エンジン動作の初期コールドスタート期間などの比較的低温の動作期間中には効果が低下し得る。これは、好適な動作温度に達するまでに数分かかる可能性があるSCR触媒などの下流の触媒成分、特に高熱質量フィルタの後に配置されたものに特に当てはまり得る。
【0005】
始動状態の間、触媒物品を加熱するために車載電力を使用することが提案されている。様々な方法には、例えば、発熱体の抵抗加熱によるガスの予熱(例えば、Gonzeらの米国特許第8,479,496号、Barrientos Betancourtらの同第10,690,031号、Shimasakiらの同第6,112,519号、及びGonzeらの同第8,156,737号を参照)、触媒基材の直接抵抗加熱(例えば、Achenbachらの米国特許出願公開第2011/0072805号及び米国特許第10,677,127号を参照)、及びセラミック基材内の導電性要素の抵抗加熱(例えば、Stiglmairらの米国特許第10,731,534号、Noroらの同第10,681,779号、Moriらの同第9,845,714号、Yoshiokaらの同第8,784,741号、及びKinoshitaらの同第8,329,110号を参照)が含まれる。あるアプローチでは、熱は、電気ヒーター、例えば、触媒基材の外側に巻き付けられた電線、加熱されたグリッド、又は加熱要素として機能する金属基材自体によって生成される。このようなシステムの商業化を成功させるには、必要な比較的高いエネルギー消費及び最初に触媒基材を加熱する必要があるため比較的低い加熱効率など、いくつかの課題が存在する。更に、一部の電熱設計は金属基材を使用する場合があり、多くのシステムで触媒担体として使用されるより広く採用されているセラミック基材と互換性がない場合がある。初期のコールドスタート期間中の効率の低下に対処するために、様々なエンジン管理戦略も提案されている(例えば、Hostらの米国特許第10,138,781号、Joshiらの同第10,082,047号、Remesの同第9,506,426号、McQuillenらの同第10,273,906号、Petersらの同第6,657,315号、Zhangの同第8,955,473号、及びGluglaらの同第9,382,857号を参照)。
【0006】
最近、触媒体の誘導加熱が検討されている(例えば、Crawford及びDouglasらの米国特許第9,488,085号、同第10,132,221号、及び同第10,352,214号を参照)。現在の技術は、セラミック基材に埋め込まれた金属製の導電性要素を使用しており、導体内の渦電流の誘導によって加熱される。触媒の非接触誘導加熱には、いくつかの利点があり得る。触媒本体への直接電気接続は必要でない可能性がある。それらは、触媒ウォッシュコート用のセラミック支持体を組み込んでもよい。しかし、現在の技術は、製造の複雑さ(例えば、セラミック/金属界面の融合)及び熱分布の不均一性に悩まされている。更に、触媒物品の加熱は、最初に埋め込まれた金属要素を加熱し、熱を触媒の残りの部分に拡散させることによって、間接的に行われる。
【0007】
ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンからのガス状汚染物質のテール管排出物を削減することが、当該技術分野において引き続き必要とされている。更に、エンジンのコールドスタート中又は他の低温作動点中に発生するブレークスルー排出物を削減する必要がある。
【0008】
本開示は、誘導加熱することができる磁性成分(例えば、フェライト含有成分)を含む触媒組成物を提供する。そのような触媒組成物は、例えば、エンジン排気ガスの処理のためのモノリシックフロースルー基材の製造(例えば、ディーゼル及びガソリン動力車という観点から)、並びに固定床反応器設計(例えば、化学触媒作用という観点から)のために使用され得る。開示された成分及び方法は、交流磁界に曝露されたときに触媒材料の加熱を可能にすることができ、非接触加熱を可能にし、熱が本明細書に開示するような磁性成分(例えば、フェライト含有成分)を介して触媒材料の近傍で直接生成される非接触加熱を可能にする。
【0009】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、触媒材料と、磁性フェライト化合物と、を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、フェライト化合物を約400℃~約1200℃の温度で約1時間以上加熱することによって調製される。
【0010】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、触媒材料と、磁性フェライト化合物と、を含み、磁性フェライト化合物は、フェライト化合物のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積が約100m2/g未満の値に減少するようにフェライト化合物を加熱することによって調製される。
【0011】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、混合フェライト化合物を約600℃~約900℃の温度で約1時間以上加熱することによって調製される。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、混合フェライト化合物を約750℃以上の温度で加熱することによって調製される。いくつかの実施形態では、フレッシュな混合フェライト化合物は、ナノ粒子の形態である。いくつかの実施形態では、触媒組成物の温度は、交流磁界に曝露されると上昇する。
【0012】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンのうちの1つ以上と、を含む。例えば、磁性フェライト化合物は、鉄、亜鉛、及びコバルト及びニッケルのうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、イットリウムを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、そのような混合フェライト磁性化合物内の様々な金属成分の比率は、広く変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、コバルト/亜鉛のモル比は、約50/50である。いくつかの実施形態では、コバルト/亜鉛のモル比は、約1/99~約99/1である。いくつかの実施形態では、コバルト/亜鉛のモル比は、約25/75~約75/25である。1つの特定の実施形態では、磁性フェライト化合物は、Co0.5Zn0.5Fe2O4.を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む。また、そのような混合磁性フェライト化合物の成分の比率は、広く変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、ニッケル/亜鉛のモル比は約50/50である。いくつかの実施形態では、ニッケル/亜鉛のモル比は、約1/99~約99/1である。いくつかの実施形態では、ニッケル/亜鉛のモル比は、約25/75~約75/25までである。1つの特定の実施形態では、磁性フェライト化合物は、Ni0.5Zn0.5Fe2O4を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、触媒材料は、一酸化炭素の酸化、炭化水素の酸化、NOxの酸化、アンモニアの酸化、NOxの選択的接触還元、及びNOxの貯蔵/還元のうちの1つ以上のための触媒材料を含む。いくつかの実施形態では、触媒材料は、多孔質支持体に含浸又はイオン交換された1つ以上の触媒金属を含む。いくつかの実施形態では、多孔質支持体は、例えば、耐火性金属酸化物又はモレキュラーシーブであり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の触媒金属は、例えば、卑金属、白金族金属、卑金属又は白金族金属の酸化物、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理するための触媒物品は、フロースルー基材又はウォールフローフィルタの形態の基材であって、本明細書で提供される触媒組成物がその上に堆積されている、基材を含む。いくつかの実施形態では、触媒物品は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒スートフィルタ(CSF)、リーンNOx捕捉(LNT)、選択的接触還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用に適合する。
【0017】
いくつかの実施形態では、排出物制御システムは、本明細書で提供される触媒物品と、交流電流(AC)を受け取り、これに応答して交流磁界を生成するための導体であって、生成された交流磁界が触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置されている、導体と、を含む。いくつかの実施形態では、導体は、触媒物品の少なくとも一部を取り囲む導線の形態である。いくつかの実施形態では、交流電流を供給するために導体に電気的に接続された電力源を更に備える排出物制御システムが提供される。いくつかの実施形態では、排出物制御システムは、触媒物品に入るガスの温度を測定するように配置された温度センサと、温度センサと通信するコントローラと、を更に備え、コントローラは、触媒物品の誘導加熱が望まれる場合、コントローラが電流で導体に電圧を加えることができるように、導体によって受け取られる電流の制御に適合している。いくつかの実施形態では、内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理する方法は、排気ガス排出物を、本明細書で提供される排出物制御システムに通過させることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、固定床反応器設計用の触媒は、本明細書で提供される触媒組成物を含有する触媒床を含む。いくつかの実施形態では、固定床触媒システムは、そのような触媒と、電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、生成された交流磁界が触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置されている、導体と、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、触媒材料を製造するための方法を対象とする。いくつかの実施形態では、触媒材料を製造するための方法は、混合フェライト化合物を約600℃以上の温度で約1時間以上加熱して混合磁性フェライト化合物を得ることと、混合磁性フェライト化合物を触媒材料と組み合わせることと、を含む。いくつかの実施形態では、混合磁性フェライト化合物は、粒子の形態である。いくつかの実施形態では、混合磁性フェライト化合物は、ナノ粒子の形態である。いくつかの実施形態では、触媒材料を製造するための方法は、混合フェライト化合物を、フェライト化合物のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を、約100m2/g未満の面積に減少させるのに十分な時間及び温度で加熱することと、加熱されたフェライト化合物を触媒材料と組み合わせることと、を含む。そのような方法は、有利には、いくつかの実施形態では、誘導加熱可能な触媒材料を製造するための方法であり得る。
【0020】
本開示は、限定なしで、以下の追加の実施形態を含む。
【0021】
実施形態1:触媒材料と、少なくとも1つの磁性成分と、を含み、磁性成分は、少なくとも1つの磁性フェライト化合物を含む、触媒組成物。
【0022】
実施形態2:磁性フェライト化合物が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンのうちの1つ以上と、を含む、先行する実施形態の触媒組成物。
【0023】
実施形態3:磁性フェライト化合物が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、及びイットリウムのうちの1つ以上と、を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0024】
実施形態4:磁性フェライト化合物が、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0025】
実施形態5:ニッケル/亜鉛のモル比が、約1/99~約99/1である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0026】
実施形態6:ニッケル/亜鉛のモル比が、約25/75~約75/25である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0027】
実施形態7:ニッケル/亜鉛のモル比が、約50/50である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0028】
実施形態8:磁性フェライト化合物がNi0.5Zn0.5Fe2O4を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0029】
実施形態9:磁性フェライト化合物が、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0030】
実施形態10:コバルト/亜鉛のモル比が、約1/99~約99/1である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0031】
実施形態11:コバルト/亜鉛のモル比が、約25/75~約75/25である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0032】
実施形態12:コバルト/亜鉛のモル比が、約50/50である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0033】
実施形態13:磁性フェライト化合物が、Co0.5Zn0.5Fe2O4を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0034】
実施形態14:磁性フェライト化合物が、鉄及びイットリウムを含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0035】
実施形態15:磁性フェライト化合物が、Y3Fe5O12を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0036】
実施形態16:磁性フェライト化合物が、約400℃~約1200℃の温度で約1時間以上加熱することによって調製される、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0037】
実施形態17:磁性フェライト化合物が、約600℃~約900℃の温度で約1時間以上加熱することによって調製される、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0038】
実施形態18:磁性フェライト化合物が、約100m2/g未満のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を有する、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0039】
実施形態19:磁性フェライト化合物が、ナノ粒子の形態である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0040】
実施形態20:触媒組成物の温度が、交流磁界への曝露によって上昇する、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0041】
実施形態21:触媒材料が、一酸化炭素の酸化、炭化水素の酸化、NOxの酸化、アンモニアの酸化、NOxの選択的接触還元、及びNOxの貯蔵/還元のうちの1つ以上のための触媒材料を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0042】
実施形態22:触媒材料が、多孔質支持体に含浸又はイオン交換された1つ以上の触媒金属を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0043】
実施形態23:多孔質支持体が、耐火性金属酸化物又はモレキュラーシーブである、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0044】
実施形態24:1つ以上の触媒金属が、卑金属、白金族金属、卑金属又は白金族金属の酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0045】
実施形態25:先行する実施形態のいずれかの触媒組成物がその上に堆積されている、フロースルー基材又はウォールフローフィルタの形態の基材を含む、内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理するための触媒物品。
【0046】
実施形態26:ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒スートフィルタ(CSF)、リーンNOx捕捉(LNT)、選択的接触還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用に適合した、先行する実施形態の触媒物品。
【0047】
実施形態27:任意の先行する実施形態の触媒物品と、電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、生成された交流磁界が触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置されている、導体と、を備える、排出物制御システム。
【0048】
実施形態28:導体が、触媒物品の少なくとも一部を取り囲む導線のコイルの形態である、先行する実施形態の排出物制御システム。
【0049】
実施形態29::交流電流を供給するために導体に電気的に接続された電力源を更に備える、任意の先行する実施形態の排出物制御システム。
【0050】
実施形態30:触媒物品に入るガスの温度を測定するように配置された温度センサと、温度センサと通信するコントローラと、を更に備え、コントローラは、触媒物品の加熱が望まれる場合、コントローラが電流で導体に電圧を加えることができるように、導体によって受け取られる電流の制御のために適合している、任意の先行する実施形態の排出物制御システム。
【0051】
実施形態31:内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理する方法であって、任意の先行する実施形態の排出物制御システムに排気ガス排出物を通過させることを含む、方法。
【0052】
実施形態32:触媒組成物を有する触媒床を含む固定床反応器設計用の触媒であって、触媒組成物が、触媒材料と、少なくとも1つの磁性成分と、を含み、磁性成分が少なくとも1つの磁性フェライト化合物を含む、触媒。
【0053】
実施形態33:先行する実施形態の触媒と、電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、生成された交流磁界が触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置されている、導体と、を備える、固定床触媒システム。
【0054】
実施形態34:フェライト化合物を約600℃以上の温度で約1時間以上加熱して磁性フェライト化合物を得ることと、加熱されたフェライト化合物を触媒材料と組み合わせることと、を含む、触媒材料を製造するための方法。
【0055】
実施形態35:フェライト化合物を、フェライト化合物のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を、約100m2/g未満の面積に減少させるのに十分な時間及び温度で加熱して加熱されたフェライト化合物を与えることと、加熱されたフェライト化合物を触媒材料と組み合わせることと、を含む、触媒材料を製造するための方法。
【0056】
実施形態36:触媒材料と、複数の処理された混合フェライト磁性粒子と、を含み、処理された混合フェライト磁性粒子は、フレッシュな混合フェライト磁性粒子を約750℃以上の温度で約1時間以上加熱することによって調製される、触媒組成物。
【0057】
実施形態37:処理された混合フェライト磁性粒子が、フレッシュな混合フェライト磁性粒子を約900℃以上の温度で約1時間以上加熱することによって調製される、先行する実施形態の触媒組成物。
【0058】
実施形態38:触媒材料と、複数の処理された混合フェライト磁性粒子と、を含み、処理された混合フェライト磁性粒子が、フレッシュな混合フェライト磁性粒子のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積が10倍以上増加して約20m2/g未満の値となるように、フレッシュな混合フェライト磁性粒子を加熱することによって調製される、触媒組成物。
【0059】
実施形態39:フレッシュな混合フェライト磁性粒子が、ナノ粉末の形態である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0060】
実施形態40:触媒組成物が、誘導加熱可能である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0061】
実施形態41:処理された混合フェライト磁性粒子が、鉄と、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンのうちの1つ以上と、を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0062】
実施形態42:処理された混合フェライト磁性粒子が、鉄と、亜鉛と、コバルト、ニッケル、及びイットリウムのうちの1つ以上と、を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0063】
実施形態43:処理された混合フェライト磁性粒子が、鉄、コバルト、及び亜鉛を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0064】
実施形態44:コバルト及び亜鉛が、約1:1の重量比である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0065】
実施形態45:コバルト及び亜鉛が、1:1未満の重量比である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0066】
実施形態46:コバルト及び亜鉛が、1:1を超える重量比である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0067】
実施形態47:処理された混合フェライト磁性粒子が、鉄、ニッケル、及び亜鉛を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0068】
実施形態48:ニッケル及び亜鉛が、約1:1の重量比である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0069】
実施形態49:ニッケル及び亜鉛が、1:1未満の重量比である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0070】
実施形態50:ニッケル及び亜鉛が、1:1を超える重量比である、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0071】
実施形態51:処理された混合フェライト磁性粒子が、Ni0.5Zn0.5Fe2O4を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0072】
実施形態52:処理された混合フェライト磁性粒子が、Co0.5Zn0.5Fe2O4を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0073】
実施形態53:触媒材料が、一酸化炭素の酸化、炭化水素の酸化、NOxの酸化、アンモニアの酸化、NOxの選択的接触還元、及びNOxの貯蔵/還元のうちの1つ以上のための触媒材料を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0074】
実施形態54:触媒材料が、多孔質支持体に含浸又はイオン交換された1つ以上の触媒金属を含む、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0075】
実施形態55:多孔質支持体が、耐火性金属酸化物又はモレキュラーシーブである、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0076】
実施形態56:1つ以上の触媒金属が、卑金属、白金族金属、卑金属又は白金族金属の酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される、任意の先行する実施形態の触媒組成物。
【0077】
実施形態57:先行する実施形態のいずれかの触媒組成物がその上に堆積されている、フロースルー基材又はウォールフローフィルタの形態の基材を含む、内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理するための触媒物品。
【0078】
実施形態58:ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒スートフィルタ(CSF)、リーンNOx捕捉(LNT)、選択的接触還元(SCR)触媒、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)としての使用に適合した、先行する実施形態の触媒物品。
【0079】
実施形態59:任意の先行する実施形態の触媒物品と、電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、生成された交流電磁界が触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置されている、導体と、を備える、排出物制御システム。
【0080】
実施形態60:導体が、触媒物品の少なくとも一部を取り囲む導線のコイルである、先行する実施形態の排出物制御システム。
【0081】
実施形態61:交流電流を供給するために導体に電気的に接続された電力源を更に備える、任意の先行する実施形態の排出物制御システム。
【0082】
実施形態62:触媒物品に入るガスの温度を測定するように配置された温度センサと、温度センサと通信するコントローラと、を更に備え、コントローラは、触媒材料の誘導加熱が望まれる場合、コントローラが電流で導体に電圧を加えることができるように、導体によって受け取られる電流の制御のために適合している、任意の先行する実施形態の排出物制御システム。
【0083】
実施形態63:任意の先行する実施形態の触媒組成物を有する触媒床を含む、固定床反応器設計用の触媒。
【0084】
実施形態64:先行する実施形態の触媒と、電流を受け取り、それに応答して交流磁界を生成するための導体であって、生成された交流電磁界が触媒組成物の少なくとも一部に印加されるように配置されている、導体と、を備える、固定床触媒システム。
【0085】
実施形態65:内燃エンジンからの排気ガス排出物を処理する方法であって、任意の先行する実施形態の排出物制御システムに排気ガス排出物を通過させることを含む、方法。
【0086】
実施形態66:触媒材料を製造するための方法であって、フレッシュな混合フェライト磁性粒子を約750℃以上の温度で約1時間以上加熱して予備焼成混合フェライト磁性粒子を与えることと、複数の予備焼成混合フェライト磁性粒子を触媒材料と組み合わせることと、を含む、方法。
【0087】
実施形態67:フレッシュな混合フェライト磁性粒子を、フレッシュな混合フェライト磁性粒子のBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を10倍増加させるのに十分な時間及び温度で加熱して予備焼成混合フェライト磁性粒子を与えることと、複数の予備焼成混合フェライト磁性粒子を触媒材料と組み合わせることと、を含む、触媒材料を製造するための方法。
【0088】
実施形態68:方法が、誘導加熱可能な触媒材料を製造するための方法である、任意の先行する実施形態の方法。
【0089】
本開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下に簡潔に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を閲読することで明らかになるであろう。本開示は、上記の実施形態のうちの2つ、3つ、4つ、又はそれを超える任意の組み合わせ、並びに本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、又はそれを超える特徴又は要素の組み合わせを、そのような特徴又は要素が本明細書の具体的な実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かにかかわらず、含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、本開示のいずれかの分けることが可能な特徴又は要素が、その様々な態様及び実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本開示の他の態様及び利点は、以下で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
本開示の実施形態についての理解を提供するために、必ずしも縮尺どおりに描かれてはいない添付図面が参照され、図内の参照番号は、本開示の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、例示的に過ぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0091】
【
図1A】入口端部6及び出口端部8、並びにチャネル10を有するハニカム型触媒2の斜視図であり、その上に配置された触媒組成物を有する基材担体を含むことができ、触媒組成物は、本開示によるものであり、磁性フェライト化合物を含む。
【
図1B】
図1Aに対して拡大され、かつ
図1Aの2の担体の端面に平行な平面に沿って切り取られた2の部分断面図であり、
図1Aに示される複数のガス流路10の拡大図を示し、壁12及びウォッシュコート層14及び16を有する。
【
図2】
図1Aについて拡大された断面の破断図であり、
図1Aのハニカム型基材担体は、ウォールフローフィルタ基材モノリスを表している。
【
図3】本開示の触媒が利用される排出処理システム32の実施形態の概略図である。
【
図4】本開示の触媒2が利用される一構成の概略図であり、導体66、コントローラ74、電源70、及び温度センサ72を示す。
【
図5】本開示の2つ以上の触媒が利用される排出処理システム51の実施形態の概略図であり、関連する導体、コントローラ、電源、及び温度センサを示す。
【
図6】充填されたサンプル、誘導コイル及び冷却空気ジェットの配置、並びに分析及び制御用熱電対プローブの位置を示す実験セットアップの写真である。
【
図7】実施例1の各種フェライト化合物を空気中750℃で5時間焼成後、交流磁界に曝露したときの温度変化(丸)と加熱速度(棒)を示すグラフである。
【
図8】600℃、750℃、900℃で交流磁界に曝露する際の焼成前及び焼成後、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Y
3Fe
5O
12について、粉末床への熱出力損失を示すグラフである。
【
図9】焼成前及び静止空気中750℃で5時間焼成後のNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4粉末のX線回折パターンである。
【
図10】焼成前及び静止空気中750℃で5時間焼成後のNiFe
2O
4粉末のX線回折パターンである。
【
図11】Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Y
3Fe
5O
12、及びFe
3O
4の交流磁界への曝露中の時間の関数としての粉末床温度を示すグラフである。
【
図12】1.8gの粉末サンプル中のNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(バランス=Al
2O
3)の質量分率の関数としての熱出力損失(W)のプロットである(実線は環境への熱の放散がないと仮定した場合の理論上の熱損失である)。
【
図13A】銅交換ゼオライト及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(SCR-IHC)又はAl
2O
3(SCRのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、SCR触媒の動作に関連する供給条件下での温度の関数としてのNO
x変換を示すグラフ、並びにNO
x変換のT
50を示す挿入図である。
【
図13B】銅交換ゼオライト及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(SCR-IHC)又はAl
2O
3(SCRのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、交流磁界への曝露中の粉末床温度を時間の関数として示すグラフである。
【
図14A】Pt/Al
2O
3+銅交換ゼオライト及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(AMOx-IHC)又はAl
2O
3(AMOxのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、AMOx触媒の動作に関連する供給条件下で、温度の関数としてNH
3変換を示すグラフ、並びにNH
3変換のT
50を示す挿入図である。
【
図14B】Pt/Al
2O
3+銅交換ゼオライト及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(AMOx-IHC)又はAl
2O
3(AMOxのみ)のいずれかを含有するモデル粉末について、交流磁界への曝露中の時間の関数としての粉末床温度を示すグラフである。
【
図15A】CeZr酸化物上のRh/Al
2O
3+Pd及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(TWC-IHC)又はAl
2O
3(TWCのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、TWC触媒の動作に関連する振動フィード条件下での、温度の関数としての平均CO変換を示すグラフ、並びにCO変換のT
50示す挿入図である。
【
図15B】CeZr酸化物上のRh/Al
2O
3+Pd及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(TWC-IHC)又はAl
2O
3(TWCのみ)のいずれかを含有するモデル粉末について、TWC触媒の動作に関連する振動供給条件下での、温度の関数としての平均NOx変換を示すグラフである。
【
図16】CeZr酸化物上のRh/Al
2O
3+Pd及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(TWC-IHC)又はAl
2O
3(TWCのみ)のいずれかを含有するモデル粉末について、交流磁界への曝露中の粉末床温度を時間の関数として示すグラフである。
【
図17A】Al
2O
3上のPt+Pd及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(DOC-IHC)又はAl
2O
3(DOCのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、DOC触媒の操作に関連する供給条件下で、温度の関数としてCO変換を示すグラフ、並びにCO変換のT
50を示す挿入図である。
【
図17B】Al
2O
3上のPt+Pd及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(DOC-IHC)又はAl
2O
3(DOCのみ)のいずれかを含有するモデル粉末について、交流磁界への曝露中の粉末床温度を時間の関数として示すグラフである。
【
図18A】酸化アルミニウム+バリウム+Mg+Zr上にRh/CeO
2+Pt/Pd及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(LNT-IHC)又はAl
2O
3(LNTのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、LNT触媒の作動に関連する振動供給条件の下で、温度の関数として貯蔵されたNO
xを示すグラフである。
【
図18B】酸化アルミニウム上にRh/CeO
2+Pt/Pd+バリウム+Mg+Zr及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(LNT-IHC)又はAl
2O
3(LNTのみ)のいずれかを含むモデル粉末について、交流磁界への曝露中の粉末床温度を時間の関数として示すグラフである。
【
図19A】銅交換ゼオライト(SCRのみ)又は銅交換ゼオライト及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(SCR-IHC)を含有するモデル触媒配合物でコーティングされたセラミックモノリスについて、SCR触媒の動作に関連する供給条件下で、温度の関数としてNO
x変換を示すグラフ、並びに温度の関数としてのNH
3変換を示す挿入図である。
【
図19B】銅交換ゼオライト(SCRのみ)又は銅交換ゼオライト及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(SCR-IHC)を含むモデル触媒配合物でコーティングされたセラミックモノリスについて、交流磁界への曝露中の床温度を時間の関数として示すグラフである。
【
図20A】交流磁界印加前(左)及び交流磁界印加中(右)のSCR-IHCモノリスの赤外線画像を示す。
【
図20B】交流磁界印加前(左)及び交流磁界印加中(右)の金属箔モノリスの赤外線画像を示す。
【
図21】コーティングされたモノリスの触媒活性及び磁気誘導加熱を評価するために使用される例示的な装置を示す。
【
図22A】外部コイルへの電流をオフ又はオンにした例示的なSCRのみのモノリスのライトオフプロファイルを示す。
【
図22B】外部コイルへの電流がオフ又はオンにした例示的なSCR-IHCモノリスのライトオフプロファイルを示す。
【
図23】ベースライン温度の変化点における触媒内部温度の上昇(T
power on-T
power off)を示す。
【0092】
本開示は、以下に更に提供される。本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対して様々な変形及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある修正及び変更を含み得ることが意図される。本発明は、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な手法で実施又は実施することができる。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示物を含む。
【0093】
全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、又は±0.05%変わり得ることを意味し得る。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。
【0094】
本明細書で使用される場合、「卑金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド、遷移後金属、遷移金属(Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、及びAuを除く)、B、Si、Ge、Sb、及びそれらの組み合わせを指す。
【0095】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、特定の有益な特性を示す。いくつかの実施形態では、触媒物品は、基材と、その上のウォッシュコート層の形態の1つ以上の触媒組成物と、を含み、1つ以上の触媒組成物のうちの少なくとも1つは、開示された磁性フェライト化合物を含む。いくつかの実施形態では、触媒組成物内の磁性フェライト化合物の含有は、交流磁界の印加を介して誘導加熱可能な材料を提供して、エンジンのコールドスタート時など、触媒システムが短時間で触媒活性を促す作動温度に到達する必要がある場合に特に有利である。いくつかの実施形態では、触媒材料がより迅速に所望の温度に達することを可能にすることによって、低温での触媒の動作に通常関連する望ましくないガス状汚染物質の漏出を最小限に抑えることができる。いくつかの実施形態では、磁性フェライト含有触媒組成物が配置される基材は、典型的には、触媒組成物が塗布及び付着される複数の壁表面を提供し、それによって触媒組成物の担体として作用する。いくつかの実施形態では、基材は、自動車用触媒を調製するために通常使用されるタイプのものであってよく、典型的には、金属又はセラミックのハニカム構造を含むであろう。
【0096】
触媒組成物
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される触媒組成物は、1つ以上の磁性フェライト化合物を含み、これについては以下で更に詳細に説明することになる。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、例えば、ガソリン又はディーゼルエンジンの排出物制御システムで一般的に使用される任意の触媒活性材料、及び/又は固定床反応器内の化学触媒作用で一般的に使用される任意の触媒活性材料を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、開示された磁性フェライト化合物を組み込むことができる様々な触媒組成物が知られており、本開示の文脈で使用することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、フェライト化合物は、一般に、酸化鉄(III)を1つ以上の追加の金属元素と組み合わせて含むセラミック材料であると理解される。いくつかの実施形態では、フェライトは、2+又は3+電荷の対イオンを有する欠陥スピネル構造として説明することができる。いくつかの実施形態では、フェライト化合物は磁気特性を有し、そのようなフェライトのいくつかは、例えば電子及び電気デバイスでの使用が知られている。
【0098】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、一般に、1つ以上の他の金属と組み合わせて、特定の実施形態では、2つ以上の他の金属と組み合わせて、鉄を含むことができる。そのような他の金属は、いくつかの実施形態では、遷移金属を含む。いくつかの実施形態では、そのような他の金属は、主族金属を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の金属は変えることができ、例えば、亜鉛、コバルト、ニッケル、イットリウム、マンガン、銅、バリウム、ストロンチウム、スカンジウム、及びランタンから選択することができる。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、鉄及び亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、鉄、亜鉛、及び本明細書で上で参照したものなどの更なる金属を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、鉄、亜鉛、並びにコバルト及びニッケルのうちの1つ以上を含み、例えば、鉄、亜鉛、及びコバルト;又は鉄、亜鉛、及びニッケルを含む、磁性フェライト化合物である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は鉄及びイットリウムを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される磁性フェライト化合物の金属成分のモル比は変動し得る。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物内の鉄のモル含有量は、磁性フェライト化合物内に提供される任意の他の個々の金属のモル含有量よりも高い。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物内の鉄のモル含有量は、磁性フェライト化合物内の他の全ての金属を合わせたモル含有量よりも高い。
【0100】
他の2つの金属(鉄に加えて)が磁性フェライト化合物内に組み込まれるいくつかの実施形態では、他の2つの金属は、互いに対して様々なモル比で提供され得る。いくつかの実施形態では、2つの金属のモル比は、約1/99~約99/1である。いくつかの実施形態では、2つの金属は、約25/75~約75/25までのモル比である。いくつかの実施形態では、他の2つの金属は、おおよそ50/50の比率である。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物には、ニッケル-亜鉛-鉄酸化物(例えば、Ni0.5Zn0.5Fe2O4を含む)及びコバルト-亜鉛-鉄酸化物(例えば、Co0.5Zn0.5Fe2O4を含む)が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、様々な粒径の粒子を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、約100nm超の平均直径の粒子を含む粉末を含む。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、ナノ粉末を含むと記載することができる。いくつかの実施形態では、ナノ粉末は、平均粒径が約100nm以下(例えば、直径約1nm~約100nm)のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粉末は、例えば、超微粒子、ナノ粒子、又はナノクラスターの凝集体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の触媒組成物中の磁性フェライト化合物は、約20nm、約30nm、約40nm、約50nm、約60nm、約70nm、約80nm、約90nm、又は約100nmなど、約20nmから約100nmの範囲の平均粒径を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子は実質的に同様の粒径である。すなわち、本明細書で提供される組成物中の粒子は実質的に単分散である。しかしながら、粒子は、単分散又は実質的に単分散であることに限定されず、粒子の所与のサンプルは、様々な実施形態では分散度が変化する粒子を含み得る。粒子の形状は、いくつかの実施形態では一般に球状である。しかしながら、粒子は、球状又は実質的に球状であることに限定されず、様々な実施形態では、細長い構造、シート状構造、及び他の形状を含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、高温(例えば、エンジンの作動中に排気ガス処理システム内で触媒組成物が曝露される可能性がある温度)に曝露された後、磁気特性の高い安定性及び保持を示すように選択される。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、触媒組成物の促進エージングに使用される温度に曝露された後、高い安定性及び磁気特性の保持を示すように選択される。例えば、ヘビーデューティーディーゼル(HDD)排気ガス処理システムにおける触媒組成物は、通常、約650℃以上の温度に曝露され、ライトデューティーディーゼル(LDD)排気ガス処理システムにおける触媒組成物は、通常、約750℃以上の温度に曝露される。
【0103】
全ての磁性フェライト化合物が、そのような高温に曝露された後に磁気特性を示すわけではないことがわかった(したがって、隣接する材料、例えばそれらが組み込まれた触媒組成物の誘導加熱に適切に使用できない)。低温(例えば、T<600℃)だけに曝露された後に好適な磁気特性を示す特定の磁性フェライト化合物でさえ、高温(例えば、T≧600℃)に曝露された後に必ずしも磁気特性を示すとは限らないことがわかった。いくつかの実施形態では、驚くべきことに、低温のみに曝露した後には実質的な磁気特性を示さなかった特定の磁性フェライト化合物は、高温に曝露すると磁気特性を示すことがわかった。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、高温(例えば、約600℃以上又は750℃以上の温度)に曝露した後、交流磁界に曝露すると好適な磁気特性を示す(例えば、触媒組成物に組み込まれた場合、触媒組成物を加熱するのに十分な熱損失)。
【0104】
いくつかの実施形態では、安定性及び磁気特性は、磁性フェライト化合物を触媒の誘導加熱に好適なものにし、触媒組成物内にあり、交流磁界に曝露されたときに触媒組成物を加熱する。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、隣接する材料(例えば、それらが組み込まれる触媒組成物)の誘導加熱を提供し、焼成によって提供される。いくつかの実施形態では、焼成は、フェライト化合物を加熱することを含む。フェライト化合物が加熱される温度は変動してよく、例えば、いくつかの実施形態では、粒子は、約600℃以上の温度、約750℃以上の温度、約800℃以上の温度まで加熱され、約850℃以上の温度、又は約900℃以上の温度へ加熱される。このような粒子を高温で保持する時間は特に限定されない。いくつかの実施形態では、粒子は、高温で約5分以上、約10分以上、約20分以上、約30分以上、約45分以上、又は約1時間以上保持することができる。
【0105】
理論に拘束されるものではないが、焼成は、フェライト化合物の微結晶サイズ及び/又は一次粒子サイズの増加を引き起こし得る。より大きなサイズの微結晶又は粒子は、個々の磁気モーメントが整列している可能性があるが、それらが整列していない可能性がある複数の磁区を含む可能性がある。外部磁界への曝露時に、磁気モーメントは外部場と整列し、磁区間の境界の移動を引き起こす可能性がある。これらの区境界の移動に対する抵抗は、磁気ヒステリシス及び磁性材料の誘導加熱につながる可能性がある。焼成又は他の手段によるより大きな磁性粒子の生成は、より多くの区境界、及び誘導加熱により効果的な材料につながる可能性があり、これは、少なくとも部分的には、本明細書のいくつかの実施形態で記載されている焼成加熱後の特定の磁性フェライト化合物の誘導加熱能力の向上を説明する可能性がある。いくつかの実施形態では、好適な焼成は、焼成前後のフェライト化合物のBET表面積の減少を測定することによって評価される。
【0106】
「BET表面積」は、N2吸着により表面積を求めるBrunauer、Emmett、Tellerの方法を指すその通常の意味を有する。特に明記しない限り、本明細書における磁性フェライト化合物(又は他の触媒組成物成分)の表面積への全ての言及は、BET表面積を意味する。
【0107】
いくつかの実施形態では、フェライト化合物のBET表面積が約100m2/g未満に減少したときに、本明細書に記載の誘導磁気加熱特性を提供するための好適な焼成が提供される。いくつかの実施形態では、所望の誘導加熱特性を提供するために監視及び決定することができるBET表面積減少は、例えば、初期材料の一次粒子サイズ及び/又は微結晶サイズに基づいて、変化し得る(すなわち、一次粒子サイズ及び/又は初期材料の微結晶サイズが大きいほど、BET表面積の小さな減少で十分な場合がある)。
【0108】
本明細書で概説される焼成方法は、いくつかの実施形態では、好適な誘導加熱特性を提供する磁性フェライト化合物を提供するために使用され得るが、そのような粒子を提供するためのこの方法は、限定を意図するものではないことに留意されたい。好適な磁性フェライト化合物を提供するための他の方法が、本明細書に包含される。いくつかの実施形態では、所望の特徴を示す磁性フェライト化合物(例えば、適度に大きな一次粒子サイズ、適度に大きな微結晶など)を提供することができ、そのような粒子は、所望の誘導加熱特性を得るために焼成処理を必要とせずに直接使用することができる。
【0109】
本明細書に記載の磁性フェライト化合物は、例えば当該技術分野で知られているように、触媒組成物内に組み込まれる。所与の触媒組成物内に組み込まれる磁性フェライト化合物(例えば焼成磁性フェライト化合物)の量は、少なくとも、触媒組成物が交流磁界に曝露されたときに触媒組成物の少なくとも一部を加熱するのに十分な量である。そのような加熱能力を提供するために所与の触媒組成物内に組み込むことができる混合フェライト粒子の例示的な量は、特定の実施形態では、約5重量%~約90重量%の範囲であり得る。
【0110】
磁性フェライト化合物を配合できる触媒組成物の種類は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、有利に加熱され得る任意の触媒組成物は、開示された磁性フェライト化合物を含むことから利点を得ることができる。上記のように、そのような触媒組成物は、いくつかの実施形態では、例えば、エンジン排気ガス処理システム内の触媒物品上のウォッシュコートの形態で、排気ガスの処理に好適な組成物であることができる(以下でより詳細に説明するように)。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、一酸化炭素の酸化、炭化水素の酸化、窒素酸化物(NOx)の酸化、アンモニアの酸化、及びNOxの選択的接触還元、並びにNOx貯蔵/還元のうちの1つ以上に適合することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、触媒組成物は、多孔質支持体に含浸又はイオン交換された1つ以上の触媒金属を含み、代表的な支持体には耐火性金属酸化物及びモレキュラーシーブが含まれる。いくつかの実施形態では、触媒金属は、卑金属、白金族金属、卑金属又は白金族金属の酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、本開示で使用される触媒材料は、機能及びタイプ、並びに上記の構成材料に基づいて記載され得る。例えば、触媒材料は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒スートフィルタ(CSF)、リーンNOx捕捉(LNT)、選択的接触還元(SCR)触媒、フィルタ上のSCR触媒(SCRoF)、アンモニア酸化(AMOx)触媒、又は三元触媒(TWC)であり得る。追加の例には、揮発性有機炭化水素(VOC)酸化触媒又は室温炭化水素酸化触媒としての使用に適合した触媒活性粒子が含まれる。
【0112】
いくつかの実施形態では、DOC又はCSF触媒は、アルミナなどの金属酸化物支持体に含浸された1つ以上のPGM成分を含み、任意選択的にセリア又はセリア/ジルコニアなどの酸素貯蔵成分(OSC)を更に含み、炭化水素及び一酸化炭素の両方の酸化を提供する。
【0113】
いくつかの実施形態では、LNT触媒は、支持体に含浸させた1つ以上のPGM成分と、NOx捕捉成分(例えば、セリア及び/又はアルカリ土類金属酸化物)と、を含む。いくつかの実施形態では、LNT触媒は、リーン条件下でNOxを吸着し、リッチ条件下で貯蔵されたNOxを窒素に還元することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、SCR触媒は、適切な量の酸素の存在下での還元剤による窒素酸化物の触媒還元に適合する。還元剤は、例えば、炭化水素、水素、及び/又はアンモニアであり得る。いくつかの実施形態では、SCR触媒は、銅又は鉄などのプロモーター金属でイオン交換されたモレキュラーシーブ(例えば、ゼオライト)を含み、例示的なSCR触媒は、FeBEAゼオライト、FeCHA及びCuCHAゼオライトを含む。いくつかの実施形態では、例示的なSCR触媒は、TiO2、WO3、CeO2、又はAl2O3を含む耐火性金属酸化物上に担持されたバナジウムを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、「TWC」は、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物が実質的に同時に変換される三元変換の機能を指している。いくつかの実施形態では、TWC触媒は、パラジウム及び/又はロジウムなどの1つ以上の白金族金属、及び任意選択的に白金、並びに酸素貯蔵成分を含む。いくつかの実施形態では、リッチ条件下で、TWC触媒は典型的にアンモニアを生成する。
【0116】
いくつかの実施形態では、AMOx触媒は、アンモニアを変換するのに好適な1つ以上の金属を含有する触媒であり、一般にアルミナ又はチタニアなどの担体材料上に担持されるアンモニア酸化触媒を指す。いくつかの実施形態では、例示的なAMOx触媒は、担持された白金族金属(例えば、アルミナに含浸された白金)とともに銅ゼオライトを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、そのような触媒組成物を作製する方法は、多くの場合、PGM又は卑金属溶液による多孔質支持体の含浸及び/又は金属前駆体溶液によるモレキュラーシーブのイオン交換プロセスを伴う。いくつかの実施形態では、触媒組成物を調製するために使用することができる触媒組成物を作製する方法は、例えば、参照によりその全体が組み込まれているBullらの米国特許第9,138,732号及びTrukhanらの米国特許第8,715,618号に記載されているように、当該技術分野で一般的に知られている。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、本明細書で上述した種類の磁性フェライト化合物を含むように、本開示に従って改変することができる。いくつかの実施形態では、触媒組成物の触媒活性成分は、磁性フェライト化合物と実質的に均一に混合されて、誘導加熱可能な触媒組成物を提供する。
【0118】
基材
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒組成物(例えば、本明細書に記載される磁性フェライト化合物を含むDOC、LNT、AMOx、SCR、又はTWC触媒組成物を含むがこれらに限定されない触媒組成物)が基材上に配置されて触媒物品を形成する。いくつかの実施形態では、触媒物品は、排気ガス処理システムの一部(例えば、本明細書に開示される磁性フェライト化合物を含む物品を含むがこれに限定されない触媒物品)として使用される。いくつかの実施形態では、基材は、円柱と同様の長さ及び直径及び体積を有する三次元である。いくつかの実施形態では、形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。いくつかの実施形態では、長さは、入口端及び出口端によって画定された軸方向の長さである。
【0119】
いくつかの実施形態では、開示される触媒組成物のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用される任意の材料から構成されてよく、いくつかの実施形態では、金属又はセラミックのハニカム構造を含み得る。いくつかの実施形態では、基材は、ウォッシュコート組成物が適用及び接着される、複数の壁表面を提供し、それによって、触媒組成物のための基材として作用し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、セラミック基材は、あらゆる好適な耐火材料、例えば、コージライト、コージライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、珪線石、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、葉長石、α-アルミナ、アルミノケイ酸塩などから作製されてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、基材はまた、1つ以上の金属又は金属合金を含む金属であってもよい。いくつかの実施形態では、金属基材は、チャネル壁に開口部又は「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。いくつかの実施形態では、金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、又はモノリス形態などの様々な形状で用いられ得る。いくつかの実施形態では、金属基材の特定の例には、耐熱性の卑金属合金、特に、鉄が実質的な又は主要な成分である合金が含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、及びアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、各場合に基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、及び0~約20重量%のニッケルを含み得る。いくつかの実施形態では、金属基材の例には、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するものと、ブレード、及びモノリス全体にわたる半径方向のガス搬送を可能にする、チャネル間のガス搬送を向上させるための穴も有するものと、が含まれる。
【0122】
いくつかの実施形態では、通流する流体流に対して通路が開放するように、基材の入口面又は出口面から貫通して延在する微細な平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの、本明細書に開示された触媒物品のためのあらゆる好適な基材が用いられてよい。いくつかの実施形態では、別の適切な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各流路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきの流路が、反対側の端面(「ウォールフローフィルタ」)において遮断されている。いくつかの実施形態では、フロースルー基材及びウォールフロー基材は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願公開第2016/070090号にも開示されている。
【0123】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。
【0124】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、通路が流体流に対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上又は壁の中において、触媒コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状及びサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミック又は金属であり得る。
【0125】
フロースルー基材は、例えば、約50in
3~約1200in
3の体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsi又は最大で900cpsi、例えば、約200~400cpsiのセル密度(入口開口)と、約50~約200ミクロン又は約400ミクロンの壁厚と、を有する。
図1A及び1Bは、本明細書に記載されているような触媒組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を例示する。
図1Aを参照すると、例示的な基材2は、円筒形状及び円筒外表面4、上流端面6、及び端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、内部に形成された複数の微細で平行なガス流路10を有する。
図1Bに見られるように、流路10は、壁12によって形成され、上流端面6から下流端面8まで担体2を通って延在し、通路10は、流体、例えば、ガス流が担体2を、そのガス流路10を介して長手方向に流れることを許容するように閉塞されていない。
図1Bでより容易に見られるように、壁12は、ガス流路10が実質的に規則的な多角形形状を有するように寸法決めされ、構成されている。示されるように、触媒組成物は、必要に応じて、複数の別個の層として適用され得る。図示される実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に接着された別個のボトム層14、及びボトム層14上にコーティングされた第2の別個のトップ層16の両方で構成される。本開示は、1つ以上(例えば、2、3、又は4つ以上)の触媒組成物層を備えるように実施されてよく、
図1Bに図示されている2層の実施形態に限定されない。
【0126】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材は、基材の縦軸方向に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有し得る、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断され、交互の通路が、反対端面において遮断される。いくつかの実施形態では、このようなモノリシックウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(又は「セル」)を含んでもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般的には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。いくつかの実施形態では、セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形の断面を有することができる。いくつかの実施形態では、ウォールフローフィルタ基材は、上述のようにセラミック又は金属である。
【0127】
例示的なモノリシックウォールフローフィルタ基材セクションの断面図が
図2に示されており、これは、交互に塞がれた通路及び開いた通路を有する複数の通路(セル)52を含む。図に見られるように、例示的な基材2は、複数の通路52を有する。これらの通路は、フィルタ基材の内壁53によって管状に囲まれている。基材は、入口端部54及び出口端部56を有する。通路は、入口端部で入口栓58によって、出口端部で出口栓60によって交互に塞がれて、入口54及び出口56で対照の市松模様を形成する。ガス流62は、塞がされていないチャネル入口64を通って入り、出口栓60によって止められ、(多孔質である)チャネル壁53を通って出口側66に拡散する。ガスは、入口プラグ58を理由に、壁の入口側に戻って通ることができない。特定の実施形態で使用される多孔質ウォールフローフィルタは、当該要素の壁がその上に、又はその中に1つ以上の触媒材料を有するという点で触媒作用を受ける。触媒材料は、要素壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側及び出口側の両方に存在してもよく、又は壁自体が、触媒材料の全て若しくは一部で満たされていてもよい。いくつかの実施形態では、本発明は、壁内又は要素の入口壁及び/若しくは出口壁上にある触媒材料の1つ以上の層の使用を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm3、約100in3、約200in3、約300in3、約400in3、約500in3、約600in3、約700in3、約800in3、約900in3、又は約1000in3~約1500in3、約2000in3、約2500in3、約3000in3、約3500in3、約4000in3、約4500in3、又は約5000in3の体積を有し得る。いくつかの実施形態では、ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、又は約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0129】
いくつかの実施形態では、ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約40%又は少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約10ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、又は≧70%の多孔度を有するであろう。いくつかの実施形態では、例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒性コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%、又は約70%から、約75%までの壁多孔度及び約10ミクロン又は約20ミクロンから、約30ミクロン又は約40ミクロンまでの平均細孔径を有するであろう。「壁多孔度」及び「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(又は細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径及び細孔径分布は、例えば、Hgポロシメトリー測定によって決定され得る。
【0130】
基材コーティングプロセス
いくつかの実施形態では、触媒組成物を水(乾燥形態の場合)と混合して、触媒基材をコーティングする目的でスラリーを形成することができる。いくつかの実施形態では、上記の触媒粒子及び磁性フェライト化合物(例えば、焼成された形態)に加えて、スラリーは、他の無機結合剤、会合性増粘剤、及び/又は界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性界面活性剤を含む)を任意選択的に含んでもよい。追加の順序は様々である場合がある。いくつかの実施形態では、全ての成分を単に一緒に組み合わせてスラリーを形成し、いくつかの実施形態では、特定の成分を組み合わせてから残りの成分をそれと組み合わせる。例えば、いくつかの実施形態では、触媒組成物を実質的に調製することができ、続いて磁性フェライト化合物がそれに添加される。いくつかの実施形態では、磁性フェライト化合物は、触媒組成物の他の全ての成分と混合されるように最初に添加される。いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、例えば、約3~約5の酸性pHに調整することができる。存在する場合、アルミナ結合剤は、典型的には、約0.02g/in3~約0.5g/in3の量で使用される。
【0131】
スラリーは、いくつかの実施形態では、粉砕されて、粒子の混合及び均質な材料の形成を増強することができる。いくつかの実施形態では、粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固体含有量は、例えば、約20重量%~約40重量%などの約30重量%~約60重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約50ミクロン(例えば、約10~約20ミクロン)のD90粒径によって特徴付けられる。D90は、粒子の約90%がより細かい粒径を有する粒径として定義される。
【0132】
いくつかの実施形態では、次いで、当該技術分野で既知のウォッシュコート技術を使用して、スラリーを触媒基材上にコーティングする。本明細書で使用されるとき、「ウォッシュコート」という用語は、基材、例えば、処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性である、ハニカムフロースルーモノリス基材又はフィルタ基材に適用される材料の薄くて付着性のあるコーティングの技術における通常の意味を有する。本明細書で使用される場合及びHeck,Ronald及びFarrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材又は下にあるウォッシュコート層の表面上に配置された材料の組成的に異なる層を含む。いくつかの実施形態では、基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、各ウォッシュコート層は、固有の化学的触媒機能を有することができる。いくつかの実施形態では、ウォッシュコート層のうちの1つ以上は、本明細書で提供される磁性フェライト化合物を含む(各層は、同じ又は異なる磁性フェライト化合物を含むことができ、異なる量のそのような同じ又は異なる磁性フェライト化合物を含むことができる)。
【0133】
いくつかの実施形態では、基材は、スラリーに1回以上浸漬されるか、又はそうでなければスラリーでコーティングされる。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、約2分間から約3時間、静的空気中、又は空気の流れ若しくはジェットの下で、高温(例えば、100℃~150℃)で乾燥され、その後、加熱、例えば、400℃~600℃、約10分~約3時間により焼成される。いくつかの実施形態では、乾燥及び焼成後、最終的なウォッシュコートコーティング層は、本質的に溶媒を含まないと考えられる。
【0134】
いくつかの実施形態では、焼成の後に、触媒充填量は、基材のコーティングされた重量及びコーティングされていない重量の差を計算することによって決定することができる。当業者に明らかとなるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることにより修正することができる。いくつかの実施形態では、コーティング/乾燥/焼成プロセスを、必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填量レベル又は厚さに構築することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、例えば、いくつかの実施形態では、触媒組成物は、単層として、又は多層で適用することができる。いくつかの実施形態では、充填量レベルを高めるために同じ触媒材料を繰り返しウォッシュコーティングすることによって生じる触媒層は、典型的には、触媒の単層とみなされる。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、多層で適用され、各層は、異なる組成を有する。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、ゾーンコーティングされてよく、これは、以下で説明するように、単一の基材が、ガス流出物流路に沿った異なる領域において異なる触媒組成物でコーティングされ得ることを意味する。
【0136】
排出処理システム
いくつかの実施形態では、排出処理システムは、本明細書に記載の触媒物品を組み込む(触媒組成物は磁性フェライト化合物を含む)。いくつかの実施形態では、触媒物品は、ガソリン又はディーゼルの排気ガス排出物を処理するための1つ以上の追加の成分を含む統合排出物処理システムで使用される。したがって、「排気流」、「エンジン排気流」、「排気ガス流」などの用語は、エンジン流出物、並びに本明細書に記載の1つ以上の他の触媒システム成分の上流又は下流の流出物を指す。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される誘導加熱に好適な触媒組成物を含む触媒物品は、他の構成要素に対して排出処理システム内の様々な位置に配置される。いくつかの実施形態では、開示された触媒物品は、エンジンに直接結合される。いくつかの実施形態では、エンジンと触媒物品との間の距離を非常に短くすることができ、いわゆる「密結合」触媒配置が得られる。いくつかの実施形態では、エンジンから触媒までの距離をより長くすることができ、その結果、「床下」構成が得られる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される触媒物品は、代わりに、エンジンと触媒物品との間に1つ以上の他の構成要素が存在するように配置することができる。いくつかの実施形態では、例えば、1つ以上の他の触媒物品が、開示された触媒物品の上流に存在することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の他の触媒物品が、開示された触媒物品の下流に存在することができる。
【0138】
1つの例示的な排出物処理システムが、排出処理システム32の概略図を図示する
図3に例示される。示されるように、ガス状汚染物質及び粒子状物質を含む排気ガス流は、エンジン34から排気管36を介してディーゼル酸化触媒(DOC)38に運ばれる。DOC38では、未燃焼のガス状かつ不揮発性の炭化水素(すなわち、SOF)及び一酸化炭素の大部分が燃焼されて、二酸化炭素及び水を形成する。加えて、NO
x成分のある割合のNOは、DOC中でNO
2に酸化され得る。排気流は、次に、排気管40を介して、排気ガス流内に存在する粒子状物質を捕捉する、触媒化スートフィルタ(CSF)42に運ばれる。CSF42は、任意選択的に、受動的又は能動的なスート再生のために触媒化される。粒子状物質の除去後、CSF42を介して、排気ガス流は排気管44を介して下流の選択的触媒還元(SCR)構成要素16に運ばれ、NO
xの更なる処理及び/又は変換が行われる。いくつかの実施形態では、上記の触媒成分のいずれか若しくは全て、又は他の任意選択の触媒成分は、磁性フェライト化合物を含む、本明細書に記載の触媒組成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示はそれに限定されない。本明細書に開示される原理は、一連の異なる種類の触媒に関連し、幅広い触媒及び関連する排出処理システムとの関連で使用することができる。
【0139】
図4は、例示的な触媒物品50の図を提供し、矢印52及び52’は、エンジン流出物の進行方向を示す(52は、触媒に入るガスを示し、52’は、触媒によって排出/処理されるガスを示す)。示されるように、例示的な触媒物品50は、排気管缶54内に封入された触媒2を含む。図示の実施形態では、触媒2は、本明細書に記載の磁性フェライト化合物を含む触媒組成物を含む。ワイヤコイル66は、磁性フェライト化合物(したがって、近接/接触により、それが組み込まれる触媒組成物も)の誘導加熱に適合した交流磁界68を提供するために、触媒2を取り囲み、このワイヤコイルは、電源70に接続されている。図示の実施形態は、コイル構造を限定することを意図していないことに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、コイルは単一のコイルを含まず、むしろ2つ以上の個々のコイルを含む。いくつかの実施形態では、基材は、前(上流)端が1つのコイルで囲まれ、後(下流)端が別のコイルで囲まれ、任意選択的にその間にギャップを有する。いくつかの実施形態では、コイルは、触媒2の一部のみを取り囲む。
【0140】
描かれたコイル66は、磁界がガス流と平行になるように、触媒の周りを軸方向に巻いていることにも留意されたい。しかしながら、開示されたシステムは、これに限定されない。いくつかの実施形態では、コイル66(又は上記参照の複数のコイル)は、それによって生成される磁界がガス流を横切るように、触媒上に横方向に配置することができる。
【0141】
ワイヤコイル66は、コイルに交流電流を供給することができる電源70に電気的に接続され、出力電力は、典型的には約5~50kWの範囲で、約1~約1000kHz(例えば、約10kHz~約500kHz)の周波数である。いくつかの実施形態では、場の強さは、本明細書に記載の触媒組成物内の磁性フェライト化合物が磁化され得る程度を決定し得る。図示された実施形態は、本開示の一例に過ぎない。いくつかの実施形態では、コイル66は、触媒54又はシステムの他の触媒構成要素を取り囲むなどの他の場所に配置される。また、この図に示されている技術は、様々なタイプの排出触媒に適用することができ、本明細書で参照される触媒の種類(例えば、SCR、DOC、SCRoF、AMOx、及び他の触媒)を含むがこれらに限定されない特定の種類の触媒に限定されない。
【0142】
システム50は、触媒2に入るエンジン流出物のガスの温度を測定するように配置された任意選択の温度センサ72を更に含む。電源70並びに温度センサ72及び74の両方が、電源70を制御し、センサから温度信号を受信するように構成されたコントローラ76及び78に動作可能に接続される。理解されるように、コントローラ76及び78は、触媒2の誘導加熱が望まれるときはいつでも、電気コイル66に通電するようコントローラが電源に命令を与えることを可能にするように適合したハードウェア及び関連するソフトウェアを備えることができる。コントローラは、例えば、温度センサ72及び/又は74に関連する特定の温度設定点に基づいて、エンジンの点火に基づいた特定の時間(例えば、エンジン点火後の設定時間の間、磁性フェライト化合物を誘導加熱するように適合した制御システム)又は特定の事前設定された時間間隔で、誘導加熱の時間を選択することができる。
【0143】
図5は、システム50と同様のシステムであるが、2つ以上の誘導加熱可能な触媒物品を使用するシステム51を示す(各々が同じ又は異なる磁性フェライト化合物を含み、同じ又は異なる量を含むことができる)。電気コイル66及び66’は、触媒組成物内の磁性フェライト化合物の誘導加熱に適合した交流磁界68及び68’を提供するために、触媒2及び2’を取り囲む。システムは、任意選択の温度センサ72、72’、74、及び74’を含み、これらは、関連する電源70及び70’を制御し、対応するセンサからの温度信号を受け取るように構成されたコントローラ76、76’、78、及び78’にそれぞれ動作可能に接続される。いくつかの実施形態では、74及び72’の代わりに単一の温度コントローラがあり、いくつかの実施形態では、その温度センサを電源70及び70’の両方に取り付けて制御するように構成することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の磁性フェライト化合物は、その上の触媒コーティング(又は複数のコーティング)の誘導加熱が触媒組成物を触媒活性のための最適温度範囲に維持するのに有用である任意の触媒物品の触媒組成物に添加される。いくつかの実施形態では、所望の温度範囲は、触媒の種類及び機能に応じて変化する。いくつかの実施形態では、温度は、約100℃~450℃、約150℃~350℃の範囲である。いくつかの実施形態では、SCR触媒は、有用なSCR活性を促進するために少なくとも約150℃に加熱される。いくつかの実施形態では、有用なCO酸化のために、DOC触媒を少なくとも約120℃に加熱される。いくつかの実施形態では、LNTは、有用なNOx貯蔵のために少なくとも約150℃まで加熱され、有用な再生/NOx還元のために少なくとも約250℃まで加熱される。
【実施例】
【0145】
本発明は、本開示を例示するために示されかつ本発明を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によって更に詳しく例示される。別段の定めがない限り、全ての部分及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外される。
【0146】
実施例1:交流磁界の存在下での金属酸化物の加熱。
表1に、一連の金属酸化物材料を示す。いくつかは、十分に記録により十分立証された磁気特性を持つフェライト及び関連する欠陥スピネル構造である。酸化アルミニウムは、常磁性、強磁性、反強磁性、及びフェリ磁性の特性を欠く不活性制御材料としてリストに含まれていた。
【表1】
【0147】
各粉末のサンプルを空気中750℃で焼成した。サンプラーバイアルに詰められ、柔軟なセラミックテープで包まれ、内径25mmのガラス管に挿入されたサンプル粉末を含むスクリーニング装置を使用して、焼成粉末を磁気誘導加熱効率について評価した。ガラス管は誘導コイルに取り付けられた。AC電源は、誘導コイルに50~60kHzの交流電流を供給した。1本の温度プローブワイヤを粉末床に挿入し、2本目の温度プローブワイヤをセラミックテープ絶縁体に挿入した。
図6は、誘導加熱の測定に用いた装置の写真を示す。交流電流がコイルに供給されている間、2つのプローブからの温度読み取り値が記録された。冷却空気の噴射により、誘導コイル自体の抵抗加熱が最小限に抑えられた。粉末床の温度が100℃に達するまでの時間と、その時点の取り付け用断熱材の温度の読み取り値を記録した。120秒後にT=100℃に達しなかった場合は、120秒での温度を記録した。平均加熱速度は、(T
final-T
initial)/t(℃/s)として定義された。
【0148】
750℃で焼成した後の誘導加熱試験の結果を
図7に示す。白丸は、最終粉末床温度と断熱ラップで測定された温度との温度差ΔT
fを示す。値が大きいほど、誘導コイル内で生成される振動磁界に対する応答が大きい材料を示す。NiFe
2O
4、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Y
3Fe
5O
12、MnFe
2O
4、及びNi
0.5Co
0.5Fe
2O
4は、試験終了時にΔT
f>45℃を示す。触媒の誘導加熱における適用のために、材料を急速に加熱することも重要である。
図7の黒いバーは、試験中の各材料の平均温度上昇率を示している。評価したサンプルの中で、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4及びCo
0.5Zn
0.5Fe
2O
4は、空気中750℃で焼成した後、他の材料よりもかなり高い誘導加熱応答を示した。NiFe
2O
4、CoFe
2O
4、及びZnFe
2O
4は、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4及びNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4化合物と比較して非常に低い加熱速度を示した。鉄(II、III)酸化物Fe
3O
4は、フレッシュな状態で高い誘導加熱応答を示したが、750℃での焼成後、交流磁界に対する熱応答はなかった。これは、この酸化物の高温での非磁性ヘマタイトへのよく知られた変換と一致する。純粋な酸化マンガン(Mn
3O
4、Mn
2O
3、MnO
2)のいずれも、交流磁界に対して測定可能な熱応答を示さなかった。予想どおり、反磁性酸化物Al
2O
3の誘導加熱応答はなかった(これは、熱電対ワイヤ自体の誘導加熱がないことも確認している)。
【0149】
実施例2:焼成温度による磁気誘導挙動の進化
図8は、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、及びY
3Fe
5O
12の磁気ヒステリシス加熱による誘導電力損失を示しており、電力損失=C
p×(ΔT/Δt)である。係数(ΔT/Δt)は実施例1に記載したように測定され、C
pは、金属酸化物材料の比熱である。一般的な傾向として、焼成温度が600℃から750℃に900℃に上昇するにつれて電力損失が増加する。これは、Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4、及びY
3Fe
5O
12の誘導加熱特性が焼成プロセスによって活性化されることを意味する。これは、一般に、表1の他の材料には当てはまらない。表1に挙げた金属酸化物のうち、
図8に示した3つのみが、600℃、750℃、900℃で焼成した後、磁気誘導加熱における活性の増加を示した。これらの材料は、典型的な排出触媒の標準エージング条件と一致する温度で処理した後、誘導加熱特性を示すため、特に興味深いものである。
【0150】
図9は、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4粉末のそのままの状態及び空気中で750℃で5時間焼成した後のX線回折パターンを示す。焼成粉末は、材料の長距離結晶秩序が大きいことを示す、より狭い回折ピークを示す。プロットで観察される唯一の構造相は、スピネル型ニッケル亜鉛フェライト酸化物である。回折ピークは、エージングした粉末と比較してフレッシュな材料で大幅に広がり、微結晶サイズがエージング後にかなり増加したことを示す。他の酸化物生成物への分解を示唆する追加の回折ピークは現れていない。
【0151】
図10は、純ニッケルフェライトNiFe
2O
4のX線回折データを示す。このパターンは、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4とほぼ同じ回折ピークを示しており、これら2つの化合物が互いに親近構造であることを確認している。しかしながら、フレッシュな状態のNiFe
2O
4のディフラクトグラムは、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4に比べてより狭いピークを示しており、そのままのNiFe
2O
4の微結晶サイズがより大きいことを示す。NiFe
2O
4のディフラクトグラムは、750℃でエージングした後、ピーク幅のわずかな減少のみを示すが、エージングした粉末には、おそらく分解反応に由来する少量のヘマタイトが含まれているように見える。
【数1】
【0152】
Ni0.5Zn0.5Fe2O4は、エージング後のFe2O3の形成の証拠を示さなかったので(理論によって限定されることを意図するものではないが)、AIIサイトにNi2+とともにZn2+イオンが存在すると、NiZnFe2O3に比べて分解に対してスピネル構造を安定化させることが示唆されている。
【0153】
更に、Ni0.5Zn0.5Fe2O4のBET表面積は、そのままの状態の106m2/gから、750℃で5時間焼成すると11m2/gに減少した。名目上球状の粒子の集合を仮定すると、粒子半径rとBET表面積ABETとの関係は、次のようになる。
r=3/ρABET
ここで、ρは材料の密度である。750℃での焼成後、BETは約10倍減少したため、平均微結晶半径も約10倍増加した。したがって、誘導加熱活性の増加は、微結晶サイズの増加に関連していると考えられる。理論によって制限されることを意図するものではないが、これらのデータは、磁気ヒステリシス損失による加熱につながる、これらの材料の磁気再配向に対する動的障壁の主な原因として、磁区境界の移動の妨げを示す。これらの境界の形成は、おそらく、複数の磁区を含むより大きな微結晶によって促進される。
【0154】
実施例3:フェライト材料の組成
Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4及びNiFe
2O
4のXPSデータを表2に示す。一般的なスピネル型の化学量論A
xFe
3-xO
4を仮定すると、表2は、ニッケル含有フェライト材料が公称スピネル組成に比べて鉄がわずかに少ない(x>1)ことを示す。XPS測定で発生した光電子は、わずか20A程度の深さから逃げることを認識しておく必要がある。したがって、この非化学量論的組成は表面現象である可能性がある。更に、ニッケル含有フェライトサンプルは、酸化物が少なく、スピネル酸化物格子に空孔又は欠陥が形成されていることを示す。酸化物化学量論の減少は、高温処理後により顕著であり、結晶欠陥の数が増加したことを示唆している。このような結晶欠陥は、微結晶内の磁区境界を安定化又は「固定」することが知られている。欠陥サイトの数及びこの区の固定の強さは、材料の磁化を再配向する速度論に影響を与えるであろう。理論に拘束されることを意図するものではないが、欠陥サイトの数が増えると、磁気再配向が遅くなり、磁気ヒステリシス曲線の下の領域が増加し、磁気サイクル中の熱損失が大きくなることが示唆されている。比較のために、マンガン含有フェライト材料の金属及び酸化物の化学量論を表3に示す。これらの材料は、公称スピネル組成と一致して、4に非常に近い酸化物化学量論を示す。これは、これらの材料が酸化物格子の欠陥が少ないことを示す。理論によって制限されることを意図するものではないが、マンガン含有フェライト材料の低い磁気加熱速度は、格子欠陥の数が少ないことに部分的に起因することが示唆されている。
【表2】
【表3】
【0155】
実施例4:様々なフェライト材料の最大動作温度
どの磁性材料でも、材料のキュリー温度によって制限される誘導加熱の最大動作温度があることになる。この温度を超えると、材料の内部磁気モーメントは無相関になり、材料は単純な常磁性体として動作するであろう。
図11は、実施例1に記載された誘導コイル装置において60kHzの交流磁界に曝露されている間の120秒にわたる5つの粉末の温度対時間のプロファイルを示す。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4粉末は、試験の最初の40秒間で25℃から250℃まで上昇し、その後温度は261℃で安定し、それ以上上昇しない。Co
0.5Zn
0.5Fe
2O
4も最初は急速に加熱されるが、この材料のキュリー温度が低いため、157℃の最終温度にしか達さない。Y
3Fe
5O
12酸化物材料は、209℃近くの最高使用温度に達するが、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4又はCo
0.5Zn
0.5Fe
2O
4ほど急速には加熱されない。フレッシュな状態では、磁性酸化鉄粉末は、Y
3Fe
5O
12と同様の加熱プロファイルを示す。しかし、600℃で穏やかに焼成すると、不活性なヘマタイトへの変換のため、加熱効率が失われる。
【0156】
実施例5:磁気希釈の効果
均一なコイル内に配置された強磁性又はフェリ磁性材料の場合、コア内の材料への電力損失は次の式で与えられる。
Pコア=K1BafnV
又は単位体積ベースで、
Pコア/V=K1Bafn
式中、fは動作AC周波数、Bはコア材料の内部磁化、K1は材料に関連する経験的パラメータである。電力損失は、コアの温度変化に次のように関連している。
dT/dt=Pコア/Vcpρ
式中、Cpは、コアの比熱、ρは密度である。これら2つの式を組み合わせると、次のようになり、
dT/dt=K1Bafn/Cpρ
これは、材料の温度変化率を主要な材料及びプロセスパラメータに関連付ける。固定のAC周波数fから始める。磁性材料の熱容量及び密度は既知であるか、確実に推定できると仮定する。更に、材料因子K1は、所与の磁性材料に対して固定されている。これらの制限の下では、コイルの温度の変化率は主に磁化Bに依存し、磁化Bはコアに組み込まれた磁性材料の量に依存する。したがって、温度上昇率とコア内の磁性材料の量との関係は、誘導加熱触媒ウォッシュコートの設計を知らせる重要なデータである。
【0157】
表4に示すように、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4(750℃で焼成)及びAl
2O
3を様々な比率で含む一連の粉末混合物を調製することにより、サンプルへの誘導熱損失に対する磁気希釈の影響を評価した。得られた粉末混合物を乳鉢及び乳棒で一緒に粉砕し、完全に均質化した。各粉末の誘導熱損失は、実施例1に記載された装置を使用して60kHzのAC周波数で測定された。値は、粉末組成の関数としての熱容量の変化に対して補正される。
図12の結果は、熱損失が25重量%と100重量%のNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4との間で名目上線形であることを示している。実験的な電力損失(サンプルの温度変化から推定された)と、全ての粒子が同等に加熱されると仮定した場合の予測される電力損失との間にはオフセットがある。このオフセットは、周囲への熱の損失によって発生する。これは、実験装置が厳密に断熱されていないという事実の結果である。線形領域の勾配は、適用されたプロセス条件下で、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4の単位質量当たりの熱出力損失が約6.7W/gであると推定する。
【表4】
【0158】
実施例6:磁性フェライト化合物とSCR触媒技術との互換性
選択的接触還元のためのモデル触媒粉末配合物を以下のように調製した。106gの銅交換斜方沸石ゼオライトを脱イオン水中に懸濁させた。次いで、5.1gの酸化ジルコニウムを添加し、懸濁液を30分間均質化した。得られた懸濁液を2等分した。51gのNi0.5Zn0.5Fe2O4(750℃で焼成)が、これまでSCR-IHCと呼ばれていた一部に添加された。51gの酸化アルミニウム粉末が、これまでSCRのみと呼ばれていた他の部分に添加された。得られた2つの懸濁液を、このステップで磁気撹拌装置を使用しないように注意しながら、撹拌下で乾燥させた。2つの粉末を空気中450℃で1時間焼成した。焼成粉末ペレットを粉砕し、ふるいにかけ、直径250~500μmの画分にした。次に、各ふるいにかけた粉末の一部を、10%蒸気/空気中、800℃で5時間エージングさせた。残りはフレッシュな粉末材料として保持した。
【0159】
120mgのフレッシュな粉末又はエージングした粉末の各々を、コランダムで1.0cm
3に希釈し、円筒形の反応器床に詰めた。床は、定常状態の供給条件下:NO=500ppm、NH
3=500ppm、H
2O=5.0%、O
2=10%、残部N
2、SV=80,000/時での選択的接触還元について評価された。各粉末について、200~575℃で度数評価を実行し、データを2回目の評価から収集した。
図13Aは、NO
x変換プロファイルを示す。データは、SCR-IHC粉末が800℃での水熱エージング後でも250℃未満のライトオフでNO
x変換を示すことを示した。挿入図は、各サンプルのT
50値を示す。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含有する粉末は、酸化アルミニウムで希釈された対応する粉末よりも高いT
50を示すが、それでも商業的なSCR触媒技術によって示される範囲内にある。
【0160】
1.2gの各粉末を1mLのガラスサンプラーバイアルに詰め、実施例1に記載したように誘導加熱について評価した。
図13Bは、誘導加熱試験の結果を示す。酸化アルミニウムで希釈されたフレッシュな粉末及びエージングされた粉末は、コイル内の交流磁界に曝露された場合に温度の上昇を示さない。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4で希釈された粉末は、交流磁界に曝露されている間に温度上昇を示す。この場合、エージングされた粉末はフレッシュな粉末よりも速い加熱応答を示す。これは、ゼオライト含有粉末で特に顕著である吸着水の除去による可能性があり、加熱効果の評価においてある程度の非再現性につながる。実施例6からの結論は、触媒粉末SCR-IHCが、SCRによるNO
x変換活性及び誘導加熱活性の両方を示すということである。
【0161】
実施例7:磁性フェライト化合物とAMOx触媒技術との互換性
選択的アンモニア酸化のためのモデル触媒粉末配合物を以下のように調製した。20gの酸化アルミニウム粉末に0.58重量%の充填量で白金を含浸させた。含浸粉末は、89gの銅交換斜方沸石ゼオライトとともにDI水中に懸濁された。懸濁液を粉砕して均質化し、次に2等分にした。51gのNi0.5Zn0.5Fe2O4(750℃で焼成)を、これまでAMOx-IHCと呼んでいた一部分に添加した。51gの酸化アルミニウム粉末が、これまでAMOxのみと呼ばれていた他の部分に添加された。得られた2つの懸濁液を、このステップで磁気撹拌装置を使用しないように注意しながら、撹拌下で乾燥させた。2つの粉末を空気中450℃で1時間焼成した。焼成粉末ペレットを粉砕し、ふるいにかけ、直径250~500μmの画分にした。次に、各ふるいにかけた粉末の一部を、10%蒸気/空気中、800℃で5時間エージングさせた。残りはフレッシュな粉末材料として保持した。
【0162】
33mgのフレッシュな粉末又はエージングした粉末の各々を、コランダムで1.0cm
3に希釈し、円筒形の反応器床に詰めた。床は、定常状態の供給条件下:NH
3=200ppm、H
2O=6.5%、O
2=10%、CO
2=7.0%、残部N
2、SV=100,000/時での選択的アンモニア酸化について評価された。NH
3変換プロフィールを
図14Aに示す。データは、エージング後にNH
3酸化活性がいくらか向上する典型的な挙動を示しており、これはAMOxのみの粉末とAMOx-IHC粉末で観察される。NH
3ライトオフ温度に対するNi
0.5Zn
0.5Fe
2O
4の効果は、挿入図のNH
3変換のT
50値によって示されるように小さい。
【0163】
1.2gの各粉末を1mLのガラスサンプラーバイアルに詰め、実施例1に記載したように誘導加熱について評価した。
図14Bは、誘導加熱試験の結果を示す。酸化アルミニウムで希釈されたフレッシュな粉末及びエージングされた粉末は、コイル内の交流磁界に曝露された場合に温度の上昇を示さない。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4で希釈された粉末は、交流磁界に曝露されている間に温度上昇を示す。エージングした粉末は、フレッシュな粉末よりも遅い加熱応答を示すが、これはサンプルの水分含有量の違いに起因する。これは、ゼオライト含有粉末で特に顕著であり、加熱効果の評価においてある程度の非再現性につながる。実施例7からの重要な結論は、触媒粉末AMOx-IHCがNH
3酸化活性と誘導加熱活性の両方を示すということである。
【0164】
実施例8:磁性フェライト化合物とTWC触媒技術との互換性
三元触媒活性のためのモデル触媒粉末配合物を以下のように調製した。32gのセリア/ジルコニア混合酸化物粉末に1.7重量%の充填量までパラジウムを含浸させ、穏やかな撹拌下で120℃で乾燥させた。64gの酸化アルミニウム粉末に0.16%の充填量でロジウムを含浸させ、穏やかな撹拌下で120℃で乾燥させた。含浸粉末を脱イオン水に懸濁し、粉砕して均質化した。この懸濁液に酢酸バリウム2.7g及び酢酸ストロンチウム半水和物3.4gを加え、撹拌しながら硝酸でpHを4.0に調整した。得られた懸濁液を2等分した。51gのNi0.5Zn0.5Fe2O4(750℃で焼成)を、これまでTWC-IHCと呼んでいた一部に添加した。51gの酸化アルミニウム粉末が、これまでTWCのみと呼ばれていた他の部分に添加された。得られた2つの懸濁液を、このステップで磁気撹拌装置を使用しないように注意しながら、撹拌下で乾燥させた。2つの粉末を空気中450℃で1時間焼成した。焼成粉末ペレットを粉砕し、ふるいにかけ、直径250~500μmの画分にした。次に、各ふるいにかけた粉末の一部を、10%蒸気/空気中、800℃で5時間エージングさせた。残りはフレッシュな粉末材料として保持した。
【0165】
340mgのフレッシュな粉末又はエージングした粉末の各々を、コランダムで1.0cm
3に希釈し、円筒形の反応器床に詰めた。床は、振動するリーン/リッチ供給条件下で、CO及びNOの変換率について評価された。リーン条件(1秒):CO=0.7%、H
2=0.22%、プロピレン/プロパン=2250ppmC
1、NO=1500ppm、O
2=1.8%、CO
2=14%、H
2O=10%、バランス=N
2。リッチ条件(1秒):CO=2.33%、H
2=0.77%、プロピレン/プロパン=2250ppmC
1、NO=1500ppm、O
2=0.7%、CO
2=14%、H
2O=10%、バランス=N
2。SV=70,000/時間。各温度での平均CO変換プロファイル(15回のリーン-リッチサイクルにわたって得られた)を
図15Aに示し、平均NO変換率(15回のリーン-リッチサイクルにわたって得られた)を
図15Bに示す。グラフは、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4の含有が、フレッシュな状態でのCO及びNO変換にわずかな影響のみを与え、800℃でのエージング後に有意な影響がないことを示す。
【0166】
1.2gの各粉末を1mLのガラスサンプラーバイアルに詰め、実施例1に記載したように誘導加熱について評価した。
図16は、誘導加熱試験の結果を示す。酸化アルミニウムで希釈されたフレッシュな粉末及びエージングされた粉末は、コイル内の交流磁界に曝露された場合に温度の上昇を示さない。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4で希釈されたTWC触媒粉末は、交流磁界に曝露されている間に温度上昇を示す。フレッシュな粉末及びエージングした粉末は、同等の加熱応答を示す。実施例8からの重要な結論は、触媒粉末TWC-IHCが、CO及びNO
x変換酸化活性及び誘導加熱活性の両方を示すということである。
【0167】
実施例9:磁性フェライト化合物とDOC触媒技術との互換性
DOC触媒活性のためのモデル触媒粉末配合物を以下のように調製した。100gの酸化アルミニウム粉末に、1.1重量%のPt及び0.36重量%のPdの充填量まで白金及びパラジウムで含浸させた。含浸粉末をDI水と合わせて、固形分30重量%を有する懸濁液を得た。硝酸を用いて懸濁液のpHを4.5に調整し、次いで10分間粉砕して均質化した。得られた懸濁液を2等分した。51gのNi0.5Zn0.5Fe2O4(750℃で焼成)を、これまでDOC-IHCと呼んでいた一部に添加した。51gの酸化アルミニウム粉末が、これまでDOCのみと呼ばれていた他の部分に添加された。得られた2つの懸濁液を、このステップで磁気撹拌装置を使用しないように注意しながら、撹拌下で乾燥させた。2つの粉末を空気中450℃で1時間焼成した。焼成粉末ペレットを粉砕し、ふるいにかけ、直径250μm~500μmの画分にした。次に、各ふるいにかけた粉末の一部を、10%蒸気/空気中、800℃で5時間エージングさせた。残りはフレッシュな粉末材料として保持した。
【0168】
100mgのフレッシュな粉末又はエージングした粉末の各々を、コランダムで1.0cm
3に希釈し、円筒形の反応器床に詰めた。床は、定常状態の供給条件下:NO=100ppm、CO=800ppm、プロピレン=100ppmC
1、デカン=200ppmC
1、トルエン=100ppmC
1、O
2=10%、CO
2=10%、H
2O=10%、バランス=N
2でのCOの変換率について評価された。SV=45,000/時間。各温度におけるCO変換プロファイルを
図17Aに示す。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含むDOC粉末配合物は、800℃でエージングした後、T
50≦180℃を示す。
【0169】
1.2gのフレッシュな粉末及びエージングした粉末を各々1mLのガラス製サンプラーバイアルに詰め、実施例1で説明したように誘導加熱について評価した。
図17Bは、誘導加熱試験の結果を示す。酸化アルミニウムで希釈されたフレッシュな粉末及びエージングした粉末は、コイル内の交流磁界に曝露された場合に温度の上昇を示さない。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4で希釈されたDOC触媒粉末は、交流磁界に曝露されている間に温度上昇を示す。エージングした粉末は、フレッシュな粉末と比較して、加熱応答のわずかな減少のみを示す。実施例9からの結論は、触媒粉末DOC-IHCがCO酸化活性及び誘導加熱活性を示すということである。
【0170】
実施例10:磁性フェライト化合物とLNT触媒技術との互換性
LNT触媒活性のためのモデル触媒粉末配合物を以下のように調製した。58gの酸化セリウムに0.084重量%Rhのレベルまでロジウムを含浸させた。含浸粉末を120℃で乾燥し、450℃で1時間焼成した。これとは別に、酸化アルミニウム25gに白金及びパラジウムを3.8重量%Pt及び0.45重量%Pdのレベルまで含浸させた。次いで、含浸粉末を脱イオン水と混合して、固形分30重量%を有する懸濁液を作製した。20gの酢酸バリウム、25gの酢酸マグネシウム、及び0.80gの酸化ジルコニウムを撹拌しながら懸濁液に加えて均質化した。粒径D90=10ミクロンになるまで懸濁液を粉砕した。焼成粉末を1.8gの分散性アルミナとともに懸濁液に添加した。得られた懸濁液を2等分した。51gのNi0.5Zn0.5Fe2O4(750℃で焼成)を、これまでLNT-IHCと呼んでいた一部に加えた。51gの酸化アルミニウム粉末が、これまでLNTのみと呼ばれていた他の部分に添加された。得られた2つの懸濁液を、このステップで磁気撹拌装置を使用しないように注意しながら、撹拌下で乾燥させた。2つの粉末を空気中450℃で1時間焼成した。焼成粉末ペレットを粉砕し、ふるいにかけ、直径250μm~500μmの画分にした。次に、各ふるいにかけた粉末の一部を、10%蒸気/空気中、800℃で5時間エージングさせた。残りはフレッシュな粉末材料として保持した。
【0171】
200mgのフレッシュな粉末又はエージングした粉末の各々を、コランダムで1.0cm
3に希釈し、円筒形の反応器床に詰めた。床は、振動するリーン/リッチ供給条件下で、NO
xの変換率について評価された。リーン条件(600秒):CO=1500ppm、NO=180ppm、O
2=10%、CO
2=6%、H
2O=6%、バランス=N
2。リッチ条件(30秒):CO/H
2=3/1、NO=180ppm、O
2=0.9%、CO
2=6.0%、H
2O=6.0%、バランス=N
2、ラムダ=0.95(CO/H
2含有量の調整によって設定)。SV=70,000/時間。NO
x排出プロファイルは、3つの連続したリーン-リッチサイクルの過程で時間の関数として記録され、リーン段階で蓄積されたNO
xの量は、最終サイクル間各時点での積分によって計算された。
図18Aのチャートは、NO
x排出量=54ppm(例えば入口NO
xレベルの30%)の点で捕捉されたNO
xの量を示す。800℃でのエージングは捕捉されるNO
xの量に大きな影響を与えるが、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4の含有は250℃を除いてNO
xの捕捉にわずかな影響のみを与える。
【0172】
1.2gのフレッシュなLNT粉末及びエージングしたLNT粉末を各々1mLのガラス製サンプラーバイアルに詰め、実施例1で説明したように誘導加熱について評価した。
図18Bは、誘導加熱試験の結果を示す。酸化アルミニウムで希釈されたフレッシュな粉末及びエージングされた粉末は、コイル内の交流磁界に曝露された場合に温度の上昇を示さない。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4で希釈されたLNT触媒粉末は、交流磁界に曝露されている間に温度上昇を示す。エージングした粉末は、フレッシュな粉末と比較して、加熱応答のわずかな減少のみを示す。実施例10からの結論は、触媒粉末LNT-IHCが、LNT操作に関連する条件下でNO
x捕捉活性及び誘導加熱の活性を示すということである。
【0173】
実施例11:磁性フェライト化合物を含有するコーティング触媒モノリスの評価
以下のように、選択的接触還元のための配合物を調製し、セラミックモノリス上にコーティングした。190gの銅交換斜方沸石ゼオライト及び10gの酸化ジルコニウムを脱イオン水中に懸濁させて、固形分37重量%を有する懸濁液を得た。pHを5.5に調整した。懸濁液を湿式粉砕して、粒径D90=9.4ミクロンを得た。セラミックモノリス(コーディエライト、チャネル密度400/in3、壁厚4ミル、チャネル断面12×12、長さ3インチ)をスラリーに完全に浸漬し、抽出した。余分なスラリーをエアジェットで除去し、ウェットピースを加熱エアジェットで150℃で乾燥させた。乾燥片を550℃で焼成し、2.0g/in3のウォッシュコートを装填した部品を得た。5つの複製ピースが作製された。これらの部分は、SCRのみの部品として識別された。このセットの一部を管状炉で800℃、16時間、10%H2O/空気からなるフロー流れ(3L/分フロー)でエージングした。部品の残りはフレッシュな部品として保持された。
【0174】
別に、173gのNi0.5Zn0.5Fe2O4粉末(750℃で焼成)、20gの分散性酸化アルミニウム、及び10gの酸化ジルコニウムを脱イオン水に懸濁した。pHを6.3に調整し、懸濁液を湿式粉砕して粒径D90を11.4ミクロンにした。このスラリーを上記のスラリーと1:2の比率(固体ベース)で合わせ、高剪断ミキサーによって均質化した。セラミックモノリス(コーディエライト、チャネル密度400/in3、壁厚4ミル、チャネル断面12×12、長さ3インチ)を新しいスラリーに完全に浸漬し、抽出した。余分なスラリーをエアジェットで除去し、ウェットピースを加熱エアジェットで150℃で乾燥させた。乾燥片を550℃で焼成すると、3.0g/in3乾燥増量の部品が得られた。5つの複製ピースが作成された。これらの部品は、SCR-IHC部品として識別された。このセットの一部を管状炉で800℃、16時間、10%H2O/空気からなるフロー流れ(3L/分フロー)でエージングした。部品の残りの部分はフレッシュな部品として保持された。
【0175】
フレッシュな部品及びエージングした部品を、モデルガス反応器で、定常状態の供給条件下:NO=500ppm、NH
3=500ppm、H
2O=5.0%、O
2=10%、バランスN
2、SV=80,000/時間で選択的接触還元活性について評価した。NO
x変換プロファイルを
図19Aに示す。このデータは、SCR-IHC部品が800℃の水熱エージング後でも250℃未満のライトオフでNO
x変換を示すことを示す。挿入図は、NH
3変換プロファイルを示す。これは、NO
xライトオフと同時のNH
3ライトオフを示す。
【0176】
同じセラミックモノリスを、実施例1に記載された誘導コイル装置に取り付けた。ワイヤ熱電対を、セラミック部品の中央のチャネルに挿入した。交流電流がコイルに印加され、熱電対の温度の読み取り値が時間の関数として記録された。
図19Bは、誘導加熱試験の結果を示す。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含まないSCR触媒でコーティングされたフレッシュな又はエージングしたモノリスサンプルは、コイル内の交流磁界に曝露されても温度上昇を示さない。Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含有するウォッシュコートでコーティングされたモノリスは、交流磁界への曝露中に温度上昇を示す。フレッシュなSCR-IHC部品及びエージングしたSCR-IHC部品は、同等の加熱活性を示す。これらのデータは、SCR触媒活性と誘導加熱活性の両方を示すコーティングされたモノリスを構築できることを示す。
【0177】
実施例12:磁性フェライト化合物でコーティングされたモノリスにおける熱の分布
磁気加熱中にコーティングされたモノリス内で発生する熱の分布は、
図20Aに示されるようにIR温度測定画像を使用して評価された。
図20Aの画像は、実施例11で調製したSCR-IHCウォッシュコート配合物を示しており、セラミック基材上にコーティングされ、次いで誘導コイルに取り付けられている。左の画像はAC電流が誘導コイルに印加される前の温度プロファイルを示し、右の画像はAC電流の印加が開始されてから10秒後の温度プロファイルを示す。温度の読み取り値は、画像内の十字線の位置でIRカメラによって記録された。画像は、SCR-IHC部品が部品の断面全体で均一に加熱され、温度プロファイルの勾配が最小限であることを示す。この挙動は、誘導コイルに金属基材を取り付けることによって生成された
図20Bとは対照的である。右の画像は、誘導コイルにAC電流を流してから10秒後のIR画像を示す。この画像は、非常に不均一な温度分布を示す。金属部品の外側の縁は非常に強く加熱され、部品の中央は誘導プロセスによってまったく加熱されない。この効果は、導電性金属部品が、電気抵抗によって熱を発生する部品内の交流渦電流の発生によって加熱されるという事実の結果であり得る。電気的な「表皮効果」により、交流電流が導電体の外側表面に沿ってのみ伝播する可能性があるため、導電体の外側表面のみが誘導によって加熱される。時間が経つと外縁からの伝導により部品の中心が加熱されるが、熱は外縁のみに印加される。これらの画像は、Ni
0.5Zn
0.5Fe
2O
4を含む修正ウォッシュコートが、導電性部品での渦電流の生成に基づく代替誘導加熱戦略と比較して、加熱の均一性においてかなりの利点があることを示す。
【0178】
本明細書に開示される開示は、特定の実施形態及びその用途の手段によって説明されているが、特許請求の範囲に記載の開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの修正及び変更を行うことができる。更に、本開示の様々な態様は、それらが本明細書で具体的に説明されたもの以外の他の用途で使用することができる。
【0179】
実施例13:石英管を管状炉内に配置し、約18インチのガラス管が炉の出口を越えて延在するようにした。モノリス触媒サンプルは、炉出口の約8インチ下流の管に取り付けられた。モノリスのチャネルに2つの熱電対を挿入して、サンプルの中間床温度と出口温度を測定した。サンプルがコイルの内側に位置するように、厚手の絶縁された柔軟な編組ワイヤが、サンプルが取り付けられたガラス管の外側に巻き付けられた。このワイヤは、約50~60kZの周波数AC電流をコイルに供給するAC電源に接続された。コイルを冷却し、システムの抵抗加熱を防ぐために、2つのエアジェットがコイルに向けられた。ガス供給流(500ppmNO、500ppmNH
3、5%CO
2、5%H
2O、10%O
2、バランス=N
2、流量=10L/分)を、流れを炉に通し、次にサンプルに入れることによって、目標ベースラインまで予熱した。サンプルからの流出物をFTIRに通し、そこでNO及びNH
3の濃度を測定した。
図21に装置の概略図を示す。各炉の設定値で、出口のNO及びNH
3濃度をFTIRで測定し、温度の読み取り値を記録した。温度と濃度の読み取りは、コイルに電力を供給せず、コイルに電力を供給して繰り返した。
【0180】
実施例11に記載のエージングしたSCRのみ及びSCR-IHCコーティングされたモノリスサンプルを、上記の装置を使用して更に評価するために選択した。
図22Aは、SCRのみの配合物ではT
50=200℃であり、コイルの電源をオン又はオフにした場合の測定値間に差がないことを示す。対照的に、
図22Bは、SCR-IHC配合物のNO変換プロファイルが、コイルへのAC電力がスイッチオンされたとき、電源がオフにされたベースラインプロファイルに対してより低い温度にシフトしたことを示している。AC電源を投入すると、T
50値が15℃低くシフトした。AC電源への応答はほぼ瞬間的であった。電源をオンにするとすぐに変換が増加し、電源をオフにするとすぐにベースラインレベルまで低下した。対流の増加は、コイルの電源を入れたときの入口ガス温度に対する触媒内部温度の上昇によるものである。
【0181】
図23は、コイルへのAC電源をオン又はオフに切り替えて、中間床の熱電対によって測定された温度差を示す。SCRのみの配合物は、AC電場の印加に応答して温度の上昇を示さなかった。SCR-IHC配合物は、AC電源がコイルに印加されたとき、より高い中間床温度を示した。ベースライン温度が高くなるにつれて、温度上昇の大きさは小さくなり、磁性材料のキュリー温度に近づいた。これらのデータは、磁気ヒステリシスを使用して触媒床温度を上昇させることにより、動作条件下での触媒変換率を高めることができることを示す。触媒活性と磁気ヒステリシス加熱は、排出触媒に関連する水熱条件でエージングした後も維持される。
【国際調査報告】