(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】親水性活性分子を送達するためのマイクロセルシステム
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20231019BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231019BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231019BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231019BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231019BHJP
B82Y 5/00 20110101ALI20231019BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/38
A61K45/00
B82Y5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521737
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021055141
(87)【国際公開番号】W WO2022093547
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516101190
【氏名又は名称】イー インク カリフォルニア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リウ, レイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA95
4C076BB31
4C076EE03
4C076EE05
4C076EE10
4C076EE12
4C076EE24
4C084AA17
4C084MA63
4C084NA13
(57)【要約】
親水性活性分子送達システムであって、それによって、活性分子が要求に応じて放出され得、および/または種々の異なる活性分子が同一のシステムから送達され得、および/または異なる濃度の活性分子が同一のシステムから送達され得る親水性活性分子送達システム。システムは、相互に対して相容性がない親水性活性分子を送達/放出するために使用され得る。活性分子送達システムは、複数のマイクロセルを含み、マイクロセルは親水性活性分子を含む媒体を充填される。マイクロセルは、開口部を含み、開口部は、疎水性シール層によって跨架される。シール層は、多孔性拡散層をオーバーコーティングされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロセルの層を含む活性分子送達システムであって、前記マイクロセルの層は、
第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤を充填された複数の第1のタイプのマイクロセルと、
第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤を充填された複数の第2のタイプのマイクロセルであって、前記第1および第2の活性分子は、異なる、複数の第2のタイプのマイクロセルと、
いかなる活性分子を含む水性製剤も含有しない複数の第3のタイプのマイクロセルと
を備え、
前記複数の第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルの各マイクロセルは、壁および開口部を含み、
前記複数の第1および第2のタイプのマイクロセルの各マイクロセルは、前記開口部に跨架する疎水性シール層を含み、
前記第1のタイプのマイクロセルのうちの少なくとも1つのマイクロセルは、前記マイクロセルの層内にいかなる前記第2のタイプのマイクロセルの隣接するマイクロセルも有しない、
活性分子送達システム。
【請求項2】
前記第1のタイプのマイクロセルの各々は、前記マイクロセルの層内にいかなる隣接する第2のタイプのマイクロセルも有しない、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項3】
前記複数の第3のタイプのマイクロセルは、前記開口部に跨架するシール層を含まない、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項4】
前記複数の第1および第2のタイプのマイクロセルの各々は、前記疎水性シール層に隣接する接着層をさらに備える、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項5】
前記第1のタイプのマイクロセルのうちの少なくとも1つは、前記第3のタイプのマイクロセルのうちの3つまたはそれより多くによって、前記第2のタイプのマイクロセルから分離されている、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項6】
前記複数の第1のタイプのマイクロセルは、前記疎水性シール層と前記接着層との間に第1の多孔性拡散層をさらに備え、前記複数の第2のタイプのマイクロセルは、前記疎水性シール層と前記接着層との間に第2の多孔性拡散層をさらに備える、請求項4に記載の活性分子送達システム。
【請求項7】
前記多孔性拡散層は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、非結晶性ナイロン、配向ポリエステル、テレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレンを含む、請求項6に記載の活性分子送達システム。
【請求項8】
前記多孔性拡散層は、10nm~100μmの平均細孔サイズを有する、請求項6に記載の活性分子送達システム。
【請求項9】
前記第1の親水性活性分子は、医薬化合物または芳香化合物である、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項10】
前記第1の親水性活性分子は、核酸またはアミノ酸を含む、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項11】
前記第1、第2、および第3の複数のマイクロセルの各々は、100nLを上回る体積を有する、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項12】
前記活性分子送達システムをカプセル化するカプセル化カバーをさらに備える、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項13】
前記接着層と接触するバッキング層をさらに備える、請求項4に記載の活性分子送達システム。
【請求項14】
前記第1の水性製剤は、加えて、増粘剤を含む、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項15】
前記第1の多孔性拡散層は、前記第2の多孔性拡散層の平均細孔サイズより大きい平均細孔サイズを有する、請求項6に記載の活性分子送達システム。
【請求項16】
前記第1の親水性活性分子は、酵素であり、前記第2の活性分子は、前記酵素を活性化することができる基質である、請求項1に記載の活性分子送達システム。
【請求項17】
マイクロセルの層を含む活性分子送達システムであって、前記マイクロセルの層は、
第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤を充填された複数の第1のタイプのマイクロセルと、
いかなる活性分子も含まない第3の水性製剤を充填された複数の第3のタイプのマイクロセルと
を備え、
前記第1および第3のタイプの各マイクロセルは、壁および開口部を含み、
前記第1および第3のタイプの各マイクロセルは、前記開口部に跨架する疎水性シール層を含み、
前記活性分子送達システムは、前記第1のタイプのマイクロセルの1つまたはそれより多くの区分を備え、前記第1のタイプのマイクロセルの各区分は、排他的に、前記第1のタイプのマイクロセルのマイクロセルのみを備え、前記第1のタイプのマイクロセルの前記区分の任意の他のマイクロセルに隣接する前記第1のタイプのマイクロセルの全ての前記マイクロセルは、同一の区分に属するものであり、
前記第1のタイプのマイクロセルの少なくとも1つの区分の前記周縁は、前記第3のタイプのマイクロセルによって囲繞されている、
活性分子送達システム。
【請求項18】
前記活性分子送達システムは、第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤を充填された複数の第2のタイプのマイクロセルをさらに備え、
前記第2のタイプの各マイクロセルは、壁および開口部を含み、
前記第2のタイプの各マイクロセルは、前記開口部に跨架する疎水性シール層を含み、
前記活性分子送達システムは、前記第2のタイプのマイクロセルの1つまたはそれより多くの区分を備え、前記第2のタイプのマイクロセルの各区分は、排他的に、前記第2のタイプのマイクロセルのマイクロセルのみを備え、前記第2のタイプのマイクロセルの前記区分の任意の他のマイクロセルに隣接する前記第2のタイプのマイクロセルの全ての前記マイクロセルは、同一の区分に属するものであり、
前記第2のタイプのマイクロセルの少なくとも1つの区分の前記周縁は、前記第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルによって囲繞され、
前記第1のタイプのマイクロセルの各々は、前記マイクロセルの層内にいかなる隣接する第2のタイプのマイクロセルも有しない、
請求項17に記載の活性分子送達システム。
【請求項19】
前記複数の第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルの各々は、前記親水性シール層に隣接する多孔性拡散層をさらに備える、請求項18に記載の活性分子送達システム。
【請求項20】
前記複数の第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルの各々は、接着層をさらに備え、前記多孔性拡散層は、前記シール層と前記接着層との間に配置されている、請求項19に記載の活性分子送達システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、2020年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/107,150号の優先権を主張する。本明細書に参照される任意の特許、公開された出願、または他の公開された著作物の内容全体は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(背景)
ビタミン、抗生物質(例えば、ペニシリン)、およびある化合物の塩類等の親水性活性分子が、多くの場合、経皮システムを用いる送達のために、母材(matrix)またはゲル中で安定化される。母材およびゲルは、多量の非活性材料(例えば、セルロース、シクロデキストリン、ポリエチレンオキシド)を要求し、母材の中に捕捉され、そこから放出され得る親水性活性分子の量は、限定され得る。加えて、活性分子は、貯蔵中に母材中で結晶化し、送達システムの貯蔵寿命を限定し得る。これらの限界のため、「標準的な」量の母材またはゲルを用いて送達され得る親水性活性分子の量は、患者全てのために十分ではない場合がある。その結果、「高」用量が、要求される場合、医師は、患者に、複数の母材含有経皮パッチを設置するように指示する、または患者に、1日の間に数回ゲルを適用するように指示する。これらの活性分子の濃度のさらなる変動性、ならびに放出プロファイルのより精密な制御を可能にする、システムが、望ましい。さらに、活性分子の組み合わせの送達の場合、異なる活性分子が、相互と相容性がなく、それらのうちの一方または両方がある期間を上回る時間にわたって他方の存在下にある場合に劣化し得ることが、可能性として考えられる。そのような相容性がない活性分子を送達することができるシステムが、望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(概要)
本発明は、親水性活性分子が、簡易な水性製剤内で調製され、次いで、所望の場所に送達され得る活性分子送達システムを提供することによって、これらのニーズに対処する。さらに、本発明のシステムは、同一の送達システムからの、異なるタイプ、および/または濃度、および/または体積の親水性活性分子の送達を可能にする。
【0004】
一局面では、本発明は、マイクロセルの層を含む活性分子送達システムであり、マイクロセルの層は、第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤を充填された複数の第1のタイプのマイクロセルと、第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤を充填された複数の第2のタイプのマイクロセルであって、第1および第2の活性分子は、異なる、複数の第2のタイプのマイクロセルと、いかなる親水性活性分子を含む製剤も含有しない複数の第3のタイプのマイクロセルとを備える。複数の第3のタイプのマイクロセルは、水性製剤を含有しなくてもよい。一実施形態では、第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルの各マイクロセルは、壁および開口部を含む。マイクロセルは、ハニカム構造等の正方形、円形、または多角形であり得る。第1および第2のタイプのマイクロセルの各マイクロセルは、開口部に跨架する疎水性シール層を含む。第1のタイプのマイクロセルのうちの少なくとも1つのマイクロセルは、マイクロセルの層内にいかなる第2のタイプのマイクロセルの隣接するマイクロセルも有しない。疎水性シール層は、ポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、またはポリシロキサン等の種々の材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、疎水性シール層は、多孔性拡散層によって跨架される。多孔性拡散層は、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、非結晶性ナイロン、配向ポリエステル、テレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレン等の種々の材料から構成され得る。典型的には、各マイクロセルは、100nLを上回る体積を有する。いくつかの実施形態では、多孔性拡散層は、0.1nm~100nmの平均細孔サイズを有する。親水性活性分子は、医薬化合物、芳香化合物(例えば、香水)、核酸(例えば、DNA、RNA)、またはアミノ酸(例えば、タンパク質、例えば、ワクチン、抗体、もしくは酵素)を含む、水溶性または部分的に水溶性である任意の活性分子であり得る。活性分子送達システムは、第1の親水性活性分子の第1の濃度の第1の水性製剤を充填された第1のタイプのマイクロセルのマイクロセルと、第1の親水性活性分子の第2の濃度の第1の水性製剤を充填された第1のタイプのマイクロセルの他のマイクロセルとを含み得、第1および第2の濃度は、異なる。別の実施形態では、システムは、第1の親水性活性分子の第1の水性製剤の第1の体積を含む第1のタイプのマイクロセルのマイクロセルと、第1の親水性活性分子の第1の水性製剤の第2の体積を含む第1のタイプのマイクロセルの他のマイクロセルとを含み得、第1および第2の体積は、異なる。
【0005】
一実施形態では、第1のタイプのマイクロセルの各々は、マイクロセルの層内にいかなる隣接する第2のタイプのマイクロセルも有しない。別の実施形態では、複数の第3のタイプのマイクロセルは、開口部に跨架するシール層を含まない。第1および第2のタイプのマイクロセルの各々は、疎水性シール層に隣接する接着層をさらに備える。接着層は、生体適合性であり得る。別の実施形態では、複数の第1のタイプのマイクロセルは、疎水性シール層と接着層との間に第1の多孔性拡散層をさらに備え、複数の第2のタイプのマイクロセルは、疎水性シール層と接着層との間に第2の多孔性拡散層をさらに備える。第1の多孔性拡散層は、第2の多孔性拡散層の平均細孔サイズより大きい平均細孔サイズを有し得る。
【0006】
別の局面では、本発明は、マイクロセルの層を含む活性分子送達システムであり、マイクロセルの層は、第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤を充填された複数の第1のタイプのマイクロセルと、いかなる活性分子も含有しない第3の水性製剤を充填された複数の第3のタイプのマイクロセルとを備える。第1および第3のタイプの各マイクロセルは、壁および開口部を含み、第1および第3のタイプの各マイクロセルは、開口部に跨架する疎水性シール層を含む。活性分子送達システムは、第1のタイプのマイクロセルの1つまたはそれより多くの区分を備え、第1のタイプのマイクロセルの各区分は、排他的に、第1のタイプのマイクロセルのマイクロセルのみを備え、第1のタイプのマイクロセルの区分の任意の他のマイクロセルに隣接する第1のタイプのマイクロセルの全てのマイクロセルは、同一の区分に属するものであり、第1のタイプのマイクロセルの少なくとも1つの区分の周縁は、第3のタイプのマイクロセルによって囲繞されている。活性分子送達システムは、第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤を充填された複数の第2のタイプのマイクロセルをさらに備え得、第1および第2の親水性活性分子は、異なる。第2のタイプのマイクロセルの各マイクロセルは、壁および開口部を含む。第2のタイプの各マイクロセルは、開口部に跨架する疎水性シール層を含む。活性分子送達システムは、第2のタイプのマイクロセルの1つまたはそれより多くの区分を備え得、第2のタイプのマイクロセルの各区分は、排他的に、第2のタイプのマイクロセルのマイクロセルのみを備え、第2のタイプのマイクロセルの区分の任意の他のマイクロセルに隣接する第2のタイプのマイクロセルの全てのマイクロセルは、同一の区分に属するものであり、第2のタイプのマイクロセルの少なくとも1つの区分の周縁は、第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルによって囲繞されている。第1のタイプのマイクロセルの各々は、マイクロセルの層内にいかなる隣接する第2のタイプのマイクロセルも有しない。複数の第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルは、親水性シール層に隣接する多孔性拡散層をさらに備え得る。いくつかの実施形態では、第1および第2の水性製剤は、増粘剤、着色剤、アジュバント、ビタミン、塩、または緩衝剤等の付加的な成分を含む。水性製剤は、電荷制御剤、界面活性剤、および防腐剤も含み得る。
【0007】
活性分子送達システムは、活性分子の経皮送達、または任意の他の場所内の活性分子の送達のために使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、複数の第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルを含む親水性活性分子送達システムの実施例を図示している。第1および第2のタイプのマイクロセルは、親水性活性分子を含む水性製剤を含有する。第1および第2のタイプのマイクロセルのマイクロセルは、疎水性シール層でシールされ、システムは、加えて、接着層を含む。
【0009】
【
図2A】
図2Aは、第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルを含む活性分子送達システムの実施例を図示している。第1および第2のタイプのマイクロセルは、疎水性シール層を含む。第1のタイプのマイクロセルは、第1の活性分子を含み、第2のタイプのマイクロセルは、第2の活性分子を含む。
【0010】
【
図2B】
図2Bは、上部から目視された、第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルを有する活性分子送達システムの実施例を図示している。
【0011】
【
図2C】
図2Cは、複数の第1のタイプのマイクロセルと、複数の第3のタイプのマイクロセルによって分離されている複数の第2のタイプのマイクロセルとを含む活性分子送達システムの実施例を図示しており、第1および第2のタイプのマイクロセルは、疎水性シール層と、多孔性拡散層とを備える。
図2Cの実施例では、第1のタイプのマイクロセルおよび第2のタイプのマイクロセルは、多孔性拡散層内に異なる多孔性を含み、したがって、異なる送達プロファイルを有する。異なる送達プロファイルは、異なるタイプのマイクロセル内に(a)異なる平均細孔サイズ、および/または(b)異なる多孔性拡散層の厚さを有することによって達成され得る。さらに、異なるポリマーが、異なるタイプのマイクロセルの多孔性拡散層を作製するために使用され得る。
【0012】
【
図3】
図3は、上部から目視された、複数の第1および第3のタイプのマイクロセルを有する活性分子送達システムの実施例を図示している。
【0013】
【
図4】
図4は、ロールツーロールプロセスを使用して本発明のマイクロセルを作製するための方法を示している。
【0014】
【
図5-1】
図5Aおよび
図5Bは、熱硬化性前駆体でコーティングされた導体膜のフォトマスクを通したフォトリソグラフィ露光を使用した、活性分子送達システムのためのマイクロセルの生産を詳述する。
【0015】
【
図5-2】
図5Cおよび
図5Dは、活性分子送達システムのためのマイクロセルがフォトリソグラフィを使用して加工される、代替実施形態を詳述する。
図5Cおよび
図5Dでは、上部露光ならびに底部露光の組み合わせが、使用され、不透過性のベース導体膜を通して、1つの横方向の壁が上部フォトマスク露光によって硬化させられ、別の横方向壁が底部露光によって硬化させられることを可能にする。
【0016】
【
図6】
図6A~6Dは、活性分子送達システム内で使用されるべきマイクロセルのアレイに充填かつシールするステップを図示している。
【0017】
【
図7】
図7は、青色の食品着色剤で着色された水性製剤を充填されたマイクロセルのある層の顕微鏡画像である。セルは、ポリイソブチレンを含む疎水性シール層でシールされている。
【0018】
【
図8】
図8は、ポリイソブチレンシール層、およびアクリル/メタクリル酸共重合体(Evonik(Essen, DE)製EUDRAGIT(登録商標))から形成される多孔性拡散層の顕微鏡画像を示している。
【0019】
【
図9】
図9は、フレンツ細胞を使用した、本発明の活性分子送達システムの経皮送達プロファイルの決定のための実験設定を図示している。
【0020】
【
図10】
図10は、本発明の活性分子送達システムの実際の実施例の活性分子送達プロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(説明)
本発明は、親水性活性分子送達システムを提供し、それによって、活性分子が、要求に応じて放出され得、および/または、種々の異なる活性分子が、同一のシステムから送達され得、および/または、異なる濃度の活性分子が、同一のシステムから送達され得る。本発明は、患者に親水性医薬品を経皮的に送達するために非常に好適である。しかしながら、本発明は、概して、表面上または空間内に親水性活性分子を送達するために使用され得る。例えば、本発明は、酵素または抗体等の水性緩衝環境中に保たれる必要がある、より大きい分子を送達するために使用されることができる。活性分子送達システムは、複数のマイクロセルを含み、マイクロセルは親水性活性分子を含む媒体を充填される。マイクロセルは、開口部を含み、開口部は、疎水性シール層によって跨架される。シール層は、多孔性拡散層をオーバーコーティングされ得る。
【0022】
医薬化合物の経皮送達等のさらなる従来の用途に加えて、活性分子送達システムは、農産用栄養剤を送達するための基礎となり得る。例えば、マイクロセルアレイは、水耕栽培システムと併用され得る大きいシートに加工されることができる、またはマイクロセルアレイは、ヒドロゲルフィルム農法の中に統合されることができる。例えば、Mebiol,Inc.(Kanagawa,Japan)を参照されたい。活性分子送達システムは、スマートパッケージの構造的な壁の中に組み込まれることもできる。そのような送達システムは、新鮮な野菜を含有するパッケージの中への抗酸化剤の長時間放出を行うことを可能にする。本「スマート」パッケージングは、ある食品の貯蔵寿命を劇的に改善し、これは、パッケージが開放されるまで、鮮度を維持するために必要な量の抗酸化剤のみを要求する。したがって、同一のパッケージングが、地域で、国を横断して、または全世界に流通される食品に関して使用されることができる。活性分子送達システムは、芳香族材料(芳香剤)、表面上の抗菌化合物等のフィルムを介した多くの他の使途においても、活性分子を送達し得る。
【0023】
用語「活性分子」は、調剤、化粧品、芳香族化合物、抗菌剤、酸化防止剤、および他の有益剤を含む。それは、有益剤の有益を改善または活性化する分子も含む。
【0024】
用語「第1のタイプのマイクロセルの区分」は、第1のタイプのマイクロセルのマイクロセルを排他的に含むマイクロセルのセットを意味し、第1のタイプのマイクロセルの区分の任意の他のマイクロセルに隣接する第1のタイプのマイクロセルの全てのマイクロセルは、同一の区分に属するものである。類似的に、「第2のタイプのマイクロセルの区分」、「第3のタイプのマイクロセルの区分」等が、定義される。すなわち、区分は、あるエリアを占有するAタイプのマイクロセルのマイクロセルのセットであり、そのエリア内のマイクロセルは全て、同一の(A)タイプのマイクロセルであり、区分の一部ではないAタイプである区分のマイクロセルのいずれかに隣接するマイクロセルは、存在しない。
【0025】
用語「隣接するマイクロセル」は、壁を共有する活性分子送達システムのマイクロセルを指す。すなわち、隣接するマイクロセルは、相互に隣り合うマイクロセルである。
【0026】
用語「多孔性拡散層」は、平均0.1nm~100μmの細孔を有する任意のフィルムを含む。
【0027】
マイクロセル(または複数のマイクロセル)に関連して、用語「充填された」は、製剤がマイクロセル(または複数のマイクロセル)内に存在することを意味する。それは、マイクロセルの体積全体が製剤によって占有されることを必ずしも意味しない。換言すると、マイクロセル(または複数のマイクロセル)に関連して、用語「充填された」は、部分的に充填されたマイクロセル(または複数のマイクロセル)、および、完全に「充填された」マイクロセル(または複数のマイクロセル)の概念を含む。類似的に、マイクロセル(または複数のマイクロセル)に充填することは、製剤がマイクロセル(または複数のマイクロセル)の中に添加されることを意味する。それは、十分な量の製剤がその全体積を占有するようにマイクロセルの中に添加されることを必ずしも意味しない。
【0028】
本発明は、ある期間にわたる、活性分子の組み合わせの簡易かつ低コストの送達のためのシステムも提供する。そのような送達システムは、例えば、アレルギー反応を受けている人物のための緊急送達システムとして使用され得る。システムは、エピネフリンおよび抗ヒスタミン剤を含み得る。デバイスが、適用され、次いで、活性分子が皮膚を通して急速に通過させられるようにトリガされ得る。システムは、特に、遠足の間等に生命を脅かすアレルゲンに暴露され得る小さな子供のためのバックアップシステムとして有効であり得る。親は、例えば、蜂刺傷の事象において、デバイスを起動するための命令に伴って、送達システムを子供に貼着することができる。デバイスは比較的単純であるため、適切な送達プロトコルの順守は、例えば、エピペンより大きい。
【0029】
一実施形態では、活性分子送達システムは、第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルを備え、複数の第1のタイプのマイクロセルは、第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤を充填され、複数の第2のタイプのマイクロセルは、第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤を充填され、複数の第3のタイプのマイクロセルは、いかなる活性分子を含む製剤も含有せず、第1のタイプのマイクロセルの各々は、マイクロセルの層内にいかなる隣接する第2のタイプのマイクロセルも有しない。
【0030】
親水性活性分子送達システムの概要が、
図1に示される。システムは、複数の第1のタイプのマイクロセル11Aと、複数の第2のタイプのマイクロセル11Bと、複数の第3のタイプのマイクロセル11Cとを含む。第1および第2のタイプの各マイクロセルは、親水性活性分子を含む水性媒体(内相とも呼ばれる)を含む。第1および第2のタイプの各マイクロセルは、壁14と、疎水性シール層15でシールされている開口部とを含む。疎水性シール層は、例えば、ポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、またはポリシロキサンから構成され得る。送達システムは、加えて、例えば、ポリイソブチレン、アクリル、ポリ(エチレン)グリコール、またはシリコーンを含み得る接着層16を含む。第1のタイプ11Aのマイクロセルおよび第2のタイプ11Bのマイクロセルは、活性分子製剤を含有しない第3のタイプ11Cのマイクロセルによって分離されている。
図1に示されるように、第3のタイプ11Cのマイクロセルの開口部は、シール層を備えない。シール組成物の材料は、マイクロセル11Cの開口部と反対のマイクロセルの側上に堆積させられている。第1および第2のタイプのマイクロセルの場合には、シール組成物は、親水性活性分子を含む水性製剤を充填されたマイクロセル上に適用される。したがって、シール組成物は、
図1に示されるように、各々の個々のマイクロセルの開口部上に(または共通のシールフィルムとして、その上方に)形成される。第3のタイプのマイクロセルの空のマイクロセルの場合には、適用されるシール組成物は、開口部側と反対のマイクロセルの側上に堆積させられる。マイクロセル11Aおよび11Bの活性分子は、活性分子送達システムから、シール層15と、接着層16とを通して送達される。活性分子の放出方向17が、矢印によって、
図1に示される。
【0031】
図2Aに示されるように、第1のマイクロセル11aは、第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤12aを含み得る一方、第2のマイクロセル11bは、第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤12bを含む一方、第3のマイクロセル11cは、マイクロセル11aと11bとの間に位置し、いかなる活性分子製剤も含まない。各マイクロセルは、下記により詳細に説明される、ポリマー母材から形成されるアレイの一部である。活性分子送達システムは、典型的には、バッキング障壁13を含み、分子の侵入および物理的な相互作用に対する構造的支持および保護を提供する。マイクロセルは、少なくとも1μmの高さである壁14によって画定されるが、それらは、マイクロセルの所望される深度に応じて、はるかにより高くあり得る。マイクロセルは、正方形、ハニカム、円形等であるように配列され得る。マイクロセル11aおよび11bは、多孔性シール層15を備える。多くの場合、マイクロセルは、加えて、活性分子に対しても多孔性である、接着層16を含む。接着層16は、活性分子送達システムを表面に隣接して保つことを補助する。上記に解説されるように、第3のタイプ11cのマイクロセルのシール組成物は、開口部の側面と反対の表面において堆積させられる。
【0032】
図2Bは、上方から目視された、
図2Aのようなマイクロセルの類似するシステムを図示している。複数の第1のタイプのマイクロセルは、活性分子製剤を含有しない複数の第3タイプのマイクロセルによって、複数の第2のタイプのマイクロセルから分離されている。
【0033】
送達システムは、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、非結晶性ナイロン、配向ポリエステル、テレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、またはポリスチレン等の種々の天然もしくは非天然ポリマーから構成され得る多孔性拡散層も含み得る。インクジェットまたは他の流体システムを用いたピコリットル注入法を使用して、個々のマイクロセルは、種々の異なる活性分子が活性分子送達システム中に含まれることを可能にするように充填されることができる。
【0034】
図2Cは、拡散層の多孔性が異なるマイクロセルに関して変動させられる親水性活性分子送達システムの別の実施形態を示している。これは、例えば、(下記に説明される)シールプロセス中、インクジェットを使用して、異なるポリマー材料と、微量注入法とを使用することによって遂行されることができる。そのようなシステムは、単一の送達システムがある期間にわたって種々の濃度の同一または異なる活性分子を投与することを可能にする。例えば、本発明のシステムは、3つのマイクロセル37、38、39を含み得る。マイクロセル38は、いかなる活性分子製剤も含有しないが、マイクロセル37および39は、2つの異なる濃度の葉酸を含有する。しかしながら、投与時間は、拡散層の多孔性によって制御される。例えば、投与直後は、最も濃縮された投与量が、最も多孔性である拡散層34を介してマイクロセル37を介して送達され、その後、第2の拡散層35を介したマイクロセル39から送達される最も濃縮されていない投与量が、続き得る。上記に説明されたように、シール組成物および多孔性拡散層34aを形成する組成物は、第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルであるマイクロセル34a内の開口側の反対側上に堆積させられる。
図2Cは、第1および第2のタイプのマイクロセル37および39のシール層15がマイクロセルの開口部の表面の下方に、すなわちマイクロセルの内側に位置する活性分子送達システムの実施例を示している。シール層に隣接する多孔性拡散層34、35も、マイクロセルの開口部の表面の下方、すなわち、マイクロセルの内側に位置し得る。しかしながら、本発明の異なる活性分子送達システムでは、シール層および多孔性拡散層は、共通のフィルムとしてマイクロセルの開口部の表面の上方、すなわち、マイクロセルの外側にあり得る。別の実施例では、活性分子送達システムは、第1および第2のタイプのマイクロセルを備え得、シール層は、マイクロセルの内側にあり、多孔性拡散層は、マイクロセルの外側にある。さらに、接着層16が、随意に存在する。
【0035】
第1のタイプのマイクロセルは、第1のタイプのマイクロセルの1つの区分内に存在し得る。第2のタイプのマイクロセルも、第2のタイプのマイクロセルの1つの区分として、システム内に存在し得る。第1のタイプのマイクロセルの区分は、第3のタイプのマイクロセルの区分によって、第2のタイプのマイクロセルの区分から分離され得る。本発明の他の実施形態では、第1のタイプのマイクロセルは、2つ、3つ、またはそれより多くの区分として、システム内に発生し、第2のタイプのマイクロセルも、2つ、3つ、またはそれより多くの区分としてシステム内に発生し、第1のタイプのマイクロセルの各々は、いかなる第2のタイプのマイクロセルの隣接するマイクロセルも有しない。第1のタイプのマイクロセルの各々は、第2のタイプのマイクロセルの任意のマイクロセルによって、および第3のタイプのマイクロセルの少なくとも1つのマイクロセルによって分離され得る。代替として、第1のタイプのマイクロセルの各々は、第2のタイプのマイクロセルの任意のマイクロセルによって、および第3のタイプのマイクロセルの少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多くのマイクロセルによって分離され得る。
【0036】
当然ながら、活性分子の種々の組み合わせも、可能性として考えられ、種々のマイクロセルが、親水性医薬品、親水性栄養補助食品、親水性補助薬、親水性ビタミン、またはワクチンを含む場合がある。さらに、マイクロセルの配列は、分散されない場合がある。むしろ、マイクロセルは、クラスターを充填され得、これは、充填およびシールをより容易にする。他の実施形態では、より小さいマイクロセルアレイが、同一の媒体、すなわち、同一の濃度の同一の活性分子を有するものを充填され得、次いで、より小さいアレイは、より大きいアレイにまとめられ、本発明の送達システムを作製し得る。他の実施形態では、異なる多孔性が、マイクロセルのための異なる内容物と併用されることができる。例えば、1つのマイクロセルが、酵素溶液を含み、酵素が通過するために十分に大きい細孔を有する多孔性拡散層を要求し得る一方、隣接するマイクロセルが、酵素を活性化させるための基質を含むが、基質の送達を調整するためにはるかにより小さい細孔を伴う、多孔性拡散層を要求し得る。
【0037】
別の実施形態では、活性分子送達システムは、第1のタイプのマイクロセルと、第3のタイプのマイクロセルとを備える。第1のタイプのマイクロセルは、第1の親水性活性分子を含む第1の水性製剤を充填される。第3のタイプのマイクロセルは、活性分子を含有しない第3の水性製剤を充填される。活性分子送達システムは、第1のタイプのマイクロセルの2つ、3つ、またはそれより多くの区分と、第3のタイプのマイクロセルの2つ、3つ、またはそれより多くの区分とを含有し得る。第1のタイプのマイクロセルの区分のうちの少なくとも1つは、第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルによって囲繞されている。そのようなシステムの実施例が、
図3に図示され、これは、第1のタイプのマイクロセルの2つの区分を有する活性分子送達システムを示し、その両方ともが、第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルによって囲繞されている。
図3は、第3のタイプのマイクロセルの1つの区分を有するシステムを示している。活性分子送達システムは、経皮送達のための活性分子の制御される用量を提供するために有用である。例えば、第1のタイプのマイクロセル内に存在する活性分子が刺激物である場合、活性分子を含有しない第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルによる第1のタイプのマイクロセルの分離は、刺激を軽減する。
【0038】
第3のタイプのマイクロセルが活性分子を有しない製剤を含むこの実施形態の活性分子送達システムは、第1および第3のタイプのマイクロセルに加えて、第2の親水性活性分子を含む第2の水性製剤を充填された第2のタイプのマイクロセルを備え得る。活性分子送達システムは、第2のタイプのマイクロセルの2つ、3つ、またはそれより多くの区分と、第3のタイプのマイクロセルの1つ、2つ、3つ、またはそれより多くの区分とを含有し得る。第1のタイプのマイクロセルの区分の少なくとも1つは、第3のタイプのマイクロセルのマイクロセルによって囲繞される。第1のタイプのマイクロセルの各々は、活性分子送達システムのマイクロセルの層内にいかなる隣接する第2のタイプのマイクロセルも有しない。
【0039】
この実施形態では、第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルは、開口部と、開口部に跨架する疎水性シール層とを備える。第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルは、それぞれ、シール層に隣接する第1、第2、および第3の多孔性拡散層も備え得る。第1、第2、および第3のタイプのマイクロセルは、シール層に隣接する、または第1、第2、および第3の多孔性拡散層に隣接する接着層も備え得る。シール層は、各マイクロセルの内側に形成され得、または各マイクロセル開口部に隣接するマイクロセルの外側に形成され得る。両方の場合において、シール層は、マイクロセルタイプ毎に異なるように設計され得る。同一のことが、多孔性拡散層に関しても当てはまる。換言すると、シール層および/または多孔性拡散層の多孔性は、マイクロセルのタイプ毎に異なり得る。これは、システムから送達される各活性分子の量の付加的な制御を提供する。多孔性を制御するための一手法は、平均多孔性サイズによるものである。多孔性を制御するための別の手法は、層(シール層、多孔性拡散層、および接着層)の各々の厚さによるものである。同一システム内で、異なるタイプのマイクロセルのこれらの層の構成のために異なる材料を使用することも、可能性として考えられる。
【0040】
本発明の活性分子送達システムは、相互と相容性がない活性分子の組み合わせの送達を可能にする。例えば、第1の活性分子が、第2の活性分子と相容性がなく、それらのうちの一方または両方が、他方の存在下において劣化し、第1のタイプのマイクロセルが、第2のタイプのマイクロセルに隣接する場合、2つの活性分子は、多孔性接着層および/または多孔性拡散層を通して拡散する場合、マイクロセルを退出した後、かつ、それらが活性分子送達システムの外側に送達される前に相互に接触し得る。1つまたはそれより多くの第3のタイプのマイクロセルによる第2のタイプのマイクロセルからの第1のタイプのマイクロセルの適切な分離は、潜在的劣化問題を軽減する。
【0041】
マイクロセルの各々は、壁および開口部を含む。マイクロセルは、ハニカム構造等の正方形、円形、または多角形であり得る。第1および第2のタイプのマイクロセル毎に、開口部は、疎水性シール層に跨架される。疎水性シール層は、ポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、またはポリシロキサン等の種々の材料から構成され得る。
【0042】
第1および第2の製剤は、水性である。第1および第2の水性製剤は、親水性活性分子を含み得る。それらは、水を含む水性担体も含み得る。それらは、水混和性共溶媒および/または界面活性剤をさらに含み得る。水混和性溶媒の非限定的な実施例は、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、2,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、およびその混合物である。
【0043】
マイクロセルを構成するための技法。マイクロセルは、米国特許第6,933,098号に開示されているようなバッチ式プロセスまたは連続的ロールツーロールプロセスのいずれか一方で形成され得る。後者は、活性分子送達および電気泳動ディスプレイを含む種々の用途における使用のためのコンパートメントの生産のための、連続的、低コスト、高処理能力の製造技術を提供する。本発明との併用に好適であるマイクロセルアレイは、
図4に図示されているように、マイクロエンボスを用いて作成されることができる。雄金型20が、
図4に示されるように、ウェブ24の上方か、またはウェブ24の下方(図示せず)のいずれか一方に設置され得るが、しかしながら、代替の配列も、可能性として考えられる。米国特許第7,715,088号(参照によって全体が本明細書に援用される)を参照されたい。伝導性基質が、デバイスのための基材となるポリマー基質上に導体膜21を形成することによって、構成され得る。熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはその前駆体を含む組成物22が、次いで、導体膜上にコーティングされる。熱可塑性または熱硬化性前駆体層が、ローラ、プレート、もしくはベルトの形態の雄金型によって、熱可塑性または熱硬化性前駆体層のガラス遷移温度より高温でエンボス処理される。
【0044】
マイクロセルの調製のための熱可塑性または熱硬化性前駆体は、多官能アクリレートもしくはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシド、およびそのオリゴマーまたはポリマー、ならびに同等物であり得る。多官能性エポキシドおよび多官能アクリレートの組み合わせは、望ましい物理的機械的性質を達成するためにも非常に有用である。ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレート等の可撓性を付与する架橋性オリゴマーが、エンボス処理されたマイクロセルの撓曲抵抗を改善するために追加され得る。組成物は、ポリマーと、オリゴマーと、モノマーと、添加剤と、またはオリゴマーと、モノマーと、添加剤とのみを含有し得る。本クラスの材料に関するガラス遷移温度(すなわち、Tg)は、通常、約-70℃~約150℃、好ましくは、約-20℃~約50℃の範囲に及ぶ。マイクロエンボスプロセスは、典型的には、Tgより高温で実行される。それに対して金型が圧接される加熱された雄金型または加熱された筐体基質が、マイクロエンボスの温度および圧力を制御するために使用され得る。
【0045】
図4に示されるように、前駆体層が硬化させられ、マイクロセルのアレイ23を露見させている最中またはその後、金型が、取り外される。前駆体層の硬化は、冷却、溶媒蒸発、放射線による架橋結合、加熱、または加湿によって遂行され得る。熱硬化性前駆体の硬化がUV照射によって遂行される場合、UVは、2つの図に示されるように、ウェブの底部または上部から透過性の導体膜上に放射され得る。代替として、UVランプが、金型の内側に設置され得る。この場合、金型は、UV光が、事前にパターン化された雄金型を通して熱硬化性前駆体層上に放射することを可能にするように透過性でなければならない。雄金型は、後にエッチングまたは電気鍍着のいずれか一方が続く、ダイヤモンド旋削プロセスもしくはフォトレジストプロセス等の任意の適切な方法によって調製され得る。雄金型のためのマスタテンプレートが、電気鍍着等の任意の適切な方法によって製造され得る。電気鍍着を用いて、ガラス基部が、クロムインコネル等のシード金属の薄層(典型的には、3,000Å)でスパッタリング処理される。金型は、次いで、フォトレジスト層でコーティングされ、UVに露光される。マスクが、UVとフォトレジスト層との間に設置される。フォトレジストの露光エリアが、硬化させられる。非露光エリアが、次いで、適切な溶媒を用いてそれらを洗浄することによって除去される。残りの硬化フォトレジストが、乾燥され、再び、シード金属の薄層でスパッタリング処理される。マスタテンプレートは、次いで、電鋳できる状態になる。電鋳のために使用される典型的材料は、ニッケルコバルトである。代替として、マスタテンプレートは、電鋳または無電解ニッケル析出によって、ニッケルから作製されることができる。金型の床は、典型的には、約50~400ミクロンである。マスタテンプレートは、「Replication techniques for micro-optics」SPIE Proc. Vol. 3099, pp. 76-82 (1997)に説明されるような、電子ビーム描画、乾式エッチング、化学エッチング、レーザ描画、またはレーザ干渉を含む他のマイクロエンジニアリング技法を使用して作製されることもできる。代替として、金型は、プラスチック、セラミック、または金属を使用して、光機械加工によって作製されることができる。
【0046】
UV硬化性樹脂組成物を適用することに先立って、金型は、離型プロセスを補助するための離型剤を用いて処置され得る。UV硬化性樹脂は、分与されることに先立って、脱気され得、随意に、溶媒を含有し得る。溶媒は、存在する場合、容易に蒸発する。UV硬化性樹脂は、コーティング、浸漬、傾注、または同等物等の任意の適切な手段によって分与される。ディスペンサは、移動式または固定式であり得る。導体膜が、UV硬化性樹脂上に置かれる。必要である場合、圧力が、樹脂とプラスチックとの間の適切な接合を確実にするように、かつマイクロセルの床の厚さを制御するように印加され得る。圧力は、ラミネートローラ、真空成型、プレス加工デバイス、または任意の他の同様の手段を使用して印加され得る。雄金型が、金属であり、不透過性である場合、プラスチック基質は、典型的には、樹脂を硬化させるために使用される化学線に対して透過性である。逆に、雄金型が、透過性であり得る場合、プラスチック基質は、化学線に対して不透過性であり得る。成型された特徴の移送シート上への良好な転写を得るために、導体膜は、金型表面に対する良好な離型性質を有するべきUV硬化性樹脂への良好な粘着力を有する必要がある。
【0047】
フォトリソグラフィ。マイクロセルは、フォトリソグラフィを使用しても生産されることもできる。マイクロセルアレイを加工するためのフォトリソグラフィプロセスが、
図5Aおよび
図5Bに図示されている。
図5Aおよび
図5Bに示されるように、マイクロセルアレイ40が、公知の方法によって導体電極フィルム42上にコーティングされた放射線硬化性材料41aを、マスク46を通してUV光(または代替として、他の形態の放射線、電子ビーム、ならびに同等物)に露光し、マスク46を通して投影された画像に対応する壁41bを形成することによって、調製され得る。ベース導体膜42が、好ましくは、塑性材料を含み得る支持基質ベースウェブ43上に搭載される。
【0048】
図5Aのフォトマスク46では、暗色の正方形部44が、不透過性エリアを表し、暗色の正方形部の間の空間が、マスク46の透過性エリア45を表す。UVは、透過性エリア45を通して放射線硬化性材料41a上に照射する。露光が、好ましくは、直接、放射線硬化性材料41a上に実施される、すなわち、UVは、基質43またはベース導体42を通過しない(上部露光)。本理由のために、基質43または導体42のいずれも、UVもしくは他の採用される放射線波長に対して透過性である必要はない。
【0049】
図5Bに示されるように、露光エリア41bが、硬化し、非露光エリア(マスク46の不透過性エリア44によって保護される)が、次いで、適切な溶媒または現像液によって除去され、マイクロセル47を形成する。溶媒または現像液は、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、イソプロパノール、もしくは同等物等の放射線硬化性材料を分解またはその粘性を低減させるために一般的に使用されるものから選択される。マイクロセルの調製は、導体膜/基質支持ウェブの真下にフォトマスクを設置することによって同様に遂行され得、この場合、UV光は、フォトマスクを通して底部から放射し、基質は、放射線に対して透過性である必要がある。
【0050】
画像様露光。画像様露光による、本発明のマイクロセルアレイの調製のためのさらに別の代替方法が、
図5Cおよび
図5Dに図示されている。不透過性の導体ラインが使用されるとき、導体ラインは、底部からの露光のためのフォトマスクとして使用されることができる。耐久性マイクロセル壁が、導体ラインに対して垂直である不透過性ラインを有する第2のフォトマスクを通した、上部からの付加的な露光によって形成される。
図5Cは、本発明のマイクロセルアレイ50を生産するための、上部および底部露光原理の両方の使用を図示している。ベース導体膜52は、不透過性であり、線状にパターン化されている。ベース導体52および基質53上にコーティングされた放射線硬化性材料51aが、第1のフォトマスクとしての役割を果たす導体の線状パターン52を通して、底部から露光される。第2の露光が、導体ライン52に対して垂直である線状パターンを有する第2のフォトマスク56を通して、「上」面から実施される。ライン54の間の空間55は、UV光に対して実質的に透過性である。本プロセスでは、壁材料51bが、底部から上に、1つの横配向に硬化させられ、かつ上部から下に、垂直方向に硬化させられ、継合し、一体型のマイクロセル57を形成する。
図5Dに示されるように、非露光エリアが、次いで、上記に説明されたように、溶媒または現像液によって除去され、マイクロセル57を露見させる。
図5Cおよび
図5Dに説明されている技法は、したがって、異なる壁が、
図2Cに図示されている実施形態に関して必要に応じて、異なる多孔性を伴うように構成されることを可能にする。
【0051】
マイクロセルは、マイクロセルとの良好な親和性を有し、かつ電気泳動媒体と相互作用しない、熱可塑性エラストマから構成され得る。有用である熱可塑性エラストマの実施例は、ABAおよび(AB)n型のジブロック、トリブロック、ならびにマルチブロック共重合体である(式中、Aは、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレン、またはノルボルネンであり、Bは、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルシロキサン、もしくはプロピレンスルフィドであり、AおよびBは、化学式において同一であることはできない。数nは、≧1であり、好ましくは1~10である)。特に有用であるものは、SB(ポリ(スチレン-b-ブタジエン))、SBS(ポリ(スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン))、SIS(ポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン))、SEBS(ポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン))ポリ(スチレン-b-ジメチルシロキサン-b-スチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-プロピレンスルフィド-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-ジメチルシロキサン-b-α-メチルスチレン)等の、スチレンまたはox-メチルスチレンのジブロックもしくはトリブロック共重合体である。Kraton D and G series(Kraton Polymer(Houston,Tex.)製)等の商業的に利用可能なスチレンブロック共重合体は、特に、有用である。ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-5-メチレン-2-ノルボルネン)等の結晶性ゴムまたはVistalon 6505(Exxon Mobil(Houston,Tex..)製)等のEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)ゴム、およびそれらのグラフト共重合体も、非常に有用であることが見出されている。
【0052】
熱可塑性エラストマは、マイクロセル中のディスプレイ流体と非混和性であり、かつディスプレイ流体のものを下回る比重を示す、溶媒または溶媒混合物の中に溶解され得る。低表面張力溶媒は、マイクロセル壁および電気泳動流体に優るそれらのより良好な濡れ性のため、オーバーコーティング組成物として好ましい。35ダイン/cmより低い表面張力を有する溶媒または溶媒混合物が、好ましい。30ダイン/cmより低い表面張力が、より好ましい。好適な溶媒は、アルカン(好ましくは、ヘプタン、オクタン、またはExxon Chemical Company製Isopar溶媒、ノナン、デカン等のC6-12シクロアルカン、およびそれらの異性体)、シクロアルカン(好ましくは、シクロヘキサンならびにデカリン等のC6-12シクロアルカンおよび同等物)、アルキルベンゼン(好ましくは、トルエン、キシレン等のモノ-もしくはジ-C1-6アルキルベンゼンならびに同等物)、アルキルエステル(好ましくは、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のC2-5アルキルエステルおよび同等物)ならびにC3-5アルキルアルコール(イソプロパノールおよび同等物ならびにそれらの異性体等)を含む。アルキルベンゼンと、アルカンとの混合物は、特に、有用である。
【0053】
ポリマー添加剤に加えて、ポリマー混合物は、湿潤剤(界面活性剤)も含み得る。湿潤剤(3M Company製FC界面活性剤、DuPont製Zonylフッ素系界面活性剤、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロ置換長鎖アルコール、ペルフルオロ置換長鎖カルボン酸、およびそれらの誘導体、ならびにOsi(Greenwich,Conn.)製Silwetシリコーン界面活性剤等)も、マイクロセルへのシーラントの粘着力を改善し、より柔軟なコーティングプロセスを提供するために、組成物中に含まれ得る。架橋剤(例えば、4,4’-ジアジドジフェニルメタンおよび2,6-ジ(4’-アジドベンザール)-4-メチルシクロヘキサノン等のビスアジド)、加硫剤(例えば、2-ベンゾチアゾリルジスルフィドならびにテトラメチルチウラムジスルフィド)、多官能性モノマーまたはオリゴマー(例えば、ヘキサンジオール、ジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート)、熱開始剤(例えば、過酸化ジラウロイル、過酸化ベンゾイル)、および光開始剤(例えば、Ciba-Geigy製イソプロピルチオキサントン(ITX)、Irgacure 651、ならびにIrgacure 369)を含む他の材料も、オーバーコーティングプロセス中もしくはその後の架橋結合または重合反応によって、シール層の物理的機械的性質を改善するために非常に有用である。
【0054】
マイクロセルは、生産された後、適切な活性分子の混合物を充填される。マイクロセルアレイ60は、上記に説明されたような方法のうちの任意のものによって調製され得る。
図6A-6Dの断面図に示されるように、マイクロセル壁61が、基材63から上向きに延在し、開放したセルを形成する。マイクロセルは、混合物を不動態化させ、かつマイクロセル材料が活性分子65を含有する混合物と相互作用しないように保つためのプライマ層62を含み得る。充填するステップに先立って、マイクロセルアレイ60は、使用に先立って活性分子が損なわれないことを確実にするために、清掃かつ殺菌され得る。
【0055】
マイクロセルは、次いで、活性分子65を含む混合物64を充填される。
図6Bに示されるように、異なるマイクロセルが、異なる活性分子を含み得る。マイクロセル60は、好ましくは、越流および活性分子との意図しない混合を防止するために、部分的に充填される。疎水性活性分子を送達するためのシステムでは、混合物は、生体適合性油またはある他の生体適合性疎水性キャリアをベースとしたものであり得る。例えば、混合物は、植物油、果実湯、または堅果油から成り得る。他の実施形態では、シリコーン油が、使用され得る。親水性活性分子を送達するためのシステムでは、混合物は、水またはリン酸緩衝液等の別の水性媒体をベースとしたものであり得る。混合物は、液体である必要はないが、しかしながら、ヒドロゲルおよび他の基質が、活性分子65を送達するために好適であり得る。
【0056】
マイクロセルは、種々の技法を使用して充填され得る。多数の隣接したマイクロセルが同じ混合物を充填されることになる、いくつかの実施形態では、マイクロセルをマイクロセル壁61の深度までを充填するために、ブレードコーティングが、使用され得る。異なる混合物が種々の近傍のマイクロセルの中に充填されることになる、他の実施形態では、マイクロセルに充填するために、インクジェットタイプの微量注入法が、使用されることができる。さらに他の実施形態では、マイクロセルのアレイを正しい混合物を充填するために、マイクロニードルアレイが、使用され得る。充填は、一段階プロセスまたは多段階プロセスで行われ得る。例えば、セル全てが、ある量の溶媒で部分的に充填され得る。部分的に充填されたマイクロセルは、次いで、送達されるべき1つまたはそれより多くの活性分子を含む第2の混合物を充填される。
【0057】
図6Cに示されるように、充填の後、マイクロセルは、多孔性拡散層になるポリマー66を適用することによってシールされる。いくつかの実施形態では、シールプロセスは、熱、乾燥した高温の空気、または紫外線への暴露を伴い得る。大部分の実施形態では、ポリマー66は、混合物64と親和性であるが、混合物64の溶媒によって溶解されない。ポリマー66は、生体適合性でもあり、マイクロセル壁61の側面または上部に接着されるように選択される。多孔性拡散層のための好適な生体適合性接着剤は、「Method for Sealing Microcell Containers with Phenethylamine Mixtures」と題された2016年10月30日に出願された米国特許出願第15/336,841号(参照によって全体が本明細書に援用される)に説明されるもの等のフェネチルアミン混合物である。故に、最終マイクロセル構造は、大部分は、漏出に対して不浸透性であり、かつ多孔性拡散層の層間剥離なく撓曲に耐えることができる。
【0058】
代替実施形態では、種々の個々のマイクロセルが、反復的フォトリソグラフィを使用することによって、所望される混合物を充填され得る。本プロセスは、典型的には、空のマイクロセルのアレイをポジ型フォトレジストの層でコーティングするステップと、ポジ型フォトレジストを画像様露光することによって、ある数のマイクロセルを選択的に開放させるステップとを含み、後に、フォトレジストを現像するステップと、開放されたマイクロセルに所望される混合物を充填するステップと、充填されたマイクロセルをシールプロセスによってシールするステップとが、続く。これらのステップが、繰り返され、他の混合物を充填された、シールされたマイクロセルを作成し得る。本手技は、所望の比率または濃度の混合物を有するマイクロセルの大きいシートの形成を可能にする。
【0059】
マイクロセル60が充填された後、シールされたアレイは、また、活性分子に対して多孔性である仕上層68で、好ましくは、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または熱、湿気、もしくは放射線硬化性接着剤であり得る接着層で仕上層68を事前コーティングすることによって、積層され得る。ラミネート接着剤は、上部導体膜が放射線に対して透過性である場合、それを通したUV等の放射線によって後硬化させられ得る。いくつかの実施形態では、生体適合性接着剤67が、次いで、アセンブリに積層される。生体適合性接着剤67は、本デバイスをユーザ上に移動可能な状態に保ちながら、活性分子が通過することを可能にする。好適な生体適合性接着剤は、3M(Minneapolis,MN)から入手可能である。
【0060】
送達システムは、いったん構成されると、物理的衝撃に対する保護を提供するために、カプセル化カバーで被覆され得る。カプセル化カバーは、活性分子送達システムが、例えば、患者の背中に添着された状態であることを確実にするために、接着剤も含み得る。カプセル化カバーは、子供向けの審美的着色または楽しい設計も含み得る。
【0061】
実施例-水溶液を充填されたマイクロセルアセンブリ
マイクロセルと、疎水性シール層と、多孔性拡散層とを含む親水性分子送達システムを構成した。上記に説明されたように、ポリエチレンテレフタラート(PET)をマイクロエンボス加工することによって、マイクロセル層を調製した。次に、脱イオン水中に、水溶液の重量比あたり5.0重量パーセントのニコチンと、5重量パーセントのエチレンビニルアルコール共重合体(Kuraray製RS1717)とを含む水溶液を調製した。可視化を向上させるために、青色食品着色剤を溶液に添加した。ピペットを使用して着色された溶液をマイクロセルに充填し、ゴムべらを用いて、残りの溶液を除去した。充填されたマイクロセルに、溶液の重量比あたり10重量パーセントのキシレン中のポリイソブチレン(PIB)溶液をオーバーコーティングした。シール層中のPIBは、850,000ダルトンの平均分子量を有していた。疎水性シール層を作成するために、8ミル(0.21032mm)の湿式コーティング厚の溶液を適用し、続いて、乾燥した。充填およびシールされたマイクロセル層の顕微鏡図が、
図7に示される。
【0062】
シール層を硬化した後、シール層の上に多孔性拡散層を形成した。溶液の重量比あたり30重量パーセントのEudragit E100(MEK中)から多孔性拡散層を作製した。Eudragit E100は、Evonic GmbH(Essen,Germany)から入手可能である、メタクリル酸ジメチルアミノエチルと、ブチルメタクリレートと、メチルメタクリレートとを含む市販の共重合体である。多孔性拡散層を作成しするために、10ミル(0.254mm)の湿式コーティング厚の溶液を適用し、乾燥した。
図8に示されるように、Eudragitは、PIBとともに、マイクロセルの内側に、明確に画定される水体積を伴う均一な障壁を生み出す。本明細書に示されていないが、接着層が、多孔性拡散層に直接適用され、活性分子送達システムの長期の設置を促進し得る。
【0063】
実施例2
【0064】
以下の差異を伴って、実施例1の手順を繰り返した。溶液の重量比あたり20重量パーセントのEudragit E100(MEK中)から多孔性拡散層を形成した。多孔性拡散層を作成するために、8ミルの湿式コーティング厚の溶液を適用し、乾燥した。実施例1の活性分子送達システムの多孔性拡散層は、実施例2の活性分子送達システムの多孔性拡散層より厚い厚さを有する。加えて、実施例1の活性分子送達システムの細孔サイズは、実施例2の活性分子送達システムの多孔性拡散層の平均細孔サイズより小さい平均細孔サイズを有する。
【0065】
実施例3
【0066】
以下の差異を伴って、実施例1の手順を繰り返した。溶液の重量比あたり5重量パーセントのキシレン中のポリイソブチレン(PIB)溶液を使用して疎水性シール層を形成した。実施例3のシール層内のPIBは、4,200,000ダルトンの平均分子量を有していた。疎水性シール層を作成するために、8ミルの湿式コーティング圧の溶液を適用し、乾燥した。実施例1の活性分子送達システムのシール層は、実施例3の活性分子送達システムのシール層より長い放出経路を有する。
【0067】
実施例4
【0068】
実施例2の活性分子送達システムの多孔性拡散層上に、ヌードマウスの皮膚サンプルを設置した。次いで、フランツ細胞の受容体コンパートメントの上部開口部に接触して、活性分子送達システムを設置した。すなわち、実施例2の活性分子送達システムの多孔性拡散層と、フランツ細胞の受容体の上部開口部との間にヌードマウスの皮膚サンプルを設置した。この実験設定は、
図9に示される。実施例2の活性分子送達システム(90)は、バッキング障壁93と、実施例1の水性活性分子製剤を含むマイクロセル94と、シール層95と、多孔性拡散層96と、ヌードマウスの皮膚サンプル97とを備える。フランツ細胞900は、空のドナーチャンバ901と、圧縮器903を具備する受容体チャンバ902とを備える。受容体チャンバ902は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS):エタノールを60:40の比において含有していた。シール層95と、多孔性拡散層96と、ヌードマウスの皮膚サンプル97とを通して、受容体チャンバ902の中に、活性分子送達システム90のマイクロセル94からの活性分子を拡散した。1、2、4、6、8、10、12、および24時間後に受容体溶液のサンプルを抜き取り、ニコチンの量を分析的に決定した。
図10のグラフは、μg/cm
2の単位における、受容体チャンバ902に到達したニコチンの累積量の結果を提供する。
図10に示されるように、本発明の活性分子送達システムからの活性分子の制御経皮送達が、存在する。
【0069】
したがって、本発明は、複数のマイクロセルを含む親水性活性分子送達システムを提供する。マイクロセルは、異なる親水性活性分子、または異なる濃度の親水性活性分子を含み得る。本開示は、限定するものではなく、説明されてはいないが、当業者に自明である本発明への他の修正も、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】