(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】標的化神経変調のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20231019BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20231019BHJP
A61N 2/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A61N1/36
A61B5/055 380
A61B5/055 382
A61N2/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521854
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 US2021054633
(87)【国際公開番号】W WO2022081611
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ノーラン アール.
(72)【発明者】
【氏名】マロン-カッツ, アディ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C096
4C106
【Fターム(参考)】
4C053JJ21
4C053JJ34
4C053JJ40
4C096AA20
4C096AC01
4C096AD14
4C096BA42
4C096DC25
4C096DC28
4C096DC35
4C106EE01
(57)【要約】
本発明の実施形態による、ニューロナビゲーションのためのシステムおよび方法が、例証される。本明細書に説明されるような標的化システムおよび方法は、精神条件の治療のための個人化刺激標的を発生させることができる。多くの実施形態では、個人化刺激標的の直接刺激は、刺激モダリティを介して到達することがより困難である脳構造に間接的に影響を及ぼす。種々の実施形態では、精神条件は、大鬱病性障害である。いくつかの実施形態では、精神条件は、希死念慮である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的化神経変調システムであって、
プロセッサと、
標的化アプリケーションを含有するメモリであって、前記標的化アプリケーションは、
患者脳データを取得することであって、前記患者脳データは、患者の脳の構造的磁気共鳴撮像(sMRI)走査と、少なくとも1つの機能的磁気共鳴撮像(fMRI)走査とを備える、ことと、
前記sMRI走査および前記少なくとも1つのfMRI走査を使用して、前記患者の脳に基準着目領域(ROI)および少なくとも1つの探索ROIをマッピングすることであって、
前記基準ROIは、脳刺激療法を介して間接的に影響を受けるべき領域を記述し、
前記少なくとも1つの探索ROIは、前記脳刺激療法によって直接標的化されるべき少なくとも1つの領域を記述する、ことと、
ROIパーセル化の個別化マップを導出することであって、前記ROIパーセル化の個別化マップは、前記基準ROIを複数の基準パーセルとして記述し、前記少なくとも1つの探索ROIを複数の候補パーセルとして記述する、ことと、
前記複数の候補パーセルと前記複数の基準パーセルとの間の関係を抽出することと、
前記抽出された関係に基づいて、前記複数の候補パーセルにおける候補パーセルに関する標的スコアを計算することと、
前記標的スコアに基づいて、前記複数の候補パーセルからある標的パーセルを選択することと、
前記標的パーセルを提供することと
を行うように前記プロセッサに指示する、メモリと
を備える、標的化神経変調システム。
【請求項2】
前記標的化アプリケーションはさらに、前記患者の精神条件を治療するために、前記標的パーセルに前記脳刺激療法を提供するように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項3】
前記精神条件は、大鬱病性障害である、請求項2に記載の標的化神経変調システム。
【請求項4】
前記脳刺激療法は、経頭蓋磁気刺激、経頭蓋直流刺激、および埋込可能電気刺激装置を介して送達される電気刺激から成る群から選択される、請求項2に記載の標的化神経変調システム。
【請求項5】
前記標的化アプリケーションはさらに、予期される全脳ネットワーク接続性から逸脱するfMRI走査を破棄するように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項6】
前記ROIパーセル化の個別化マップを導出するために、前記標的化アプリケーションはさらに、
前記基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをランダムにサブサンプリングすることと、
前記ボクセルのサブサンプルをクラスタリングすることと、
クラスタリング割当を記録することと、
それらの場所に基づいて、前記クラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化することと
を行うように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項7】
前記ROIパーセル化の個別化マップを導出するために、前記標的化アプリケーションはさらに、
前記基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第1のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングすることと、
前記ボクセルの第1のサブサンプルをクラスタリングすることと、
第1のクラスタリング割当を記録することと、
前記基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第2のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングすることと、
前記ボクセルの第2のサブサンプルをクラスタリングすることと、
第2のクラスタリング割当を記録することと、
コンセンサスクラスタリングを使用して、前記第1のクラスタリング割当および第2のクラスタリング割当をマージすることと、
それらの場所に基づいて、前記マージされたクラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化することと
を行うように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項8】
前記ROIパーセル化の個別化マップを導出するために、前記標的化アプリケーションはさらに、空間的に互いに素なクラスタを分割するように前記プロセッサに指示する、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項9】
前記標的スコアは、パーセルサイズ、パーセル深度、パーセル形状、パーセル均質性、前記基準ROIに対する機能的接続性強度、およびネットワーク接続性スコアから成る群からの少なくとも1つの因子に基づいて計算される、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項10】
前記ネットワーク接続性スコアは、前記患者の脳のデフォルトモードネットワークと背側注意ネットワークとの間の反相関を反映する、請求項9に記載の標的化神経変調システム。
【請求項11】
前記標的パーセルは、クラウドコンピューティングプラットフォームからニューロナビゲーションシステムに伝送される、請求項1に記載の標的化神経変調システム。
【請求項12】
標的化神経変調方法であって、
患者脳データを取得することであって、前記患者脳データは、患者の脳の構造的磁気共鳴撮像(sMRI)走査と、少なくとも1つの機能的磁気共鳴撮像(fMRI)走査とを備える、ことと、
前記sMRI走査および前記少なくとも1つのfMRI走査を使用して、前記患者の脳に基準着目領域(ROI)および少なくとも1つの探索ROIをマッピングすることであって、
前記基準ROIは、脳刺激療法を介して間接的に影響を受けるべき領域を記述し、
前記少なくとも1つの探索ROIは、前記脳刺激療法によって直接標的化されるべき少なくとも1つの領域を記述する、ことと、
ROIパーセル化の個別化マップを導出することであって、前記ROIパーセル化の個別化マップは、前記基準ROIを複数の基準パーセルとして記述し、前記少なくとも1つの探索ROIを複数の候補パーセルとして記述する、ことと、
前記複数の候補パーセルと前記複数の基準パーセルとの間の関係を抽出することと、
前記抽出された関係に基づいて、前記複数の候補パーセルにおける候補パーセルに関する標的スコアを計算することと、
前記標的スコアに基づいて、前記複数の候補パーセルからある標的パーセルを選択することと、
前記標的パーセルを提供することと
を含む、標的化神経変調方法。
【請求項13】
前記患者の精神条件を治療するために、前記標的パーセルに前記脳刺激療法を提供することをさらに含む、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項14】
前記精神条件は、大鬱病性障害である、請求項13に記載の標的化神経変調方法。
【請求項15】
前記脳刺激療法は、経頭蓋磁気刺激、経頭蓋直流刺激、および埋込可能電気刺激装置を介して送達される電気刺激から成る群から選択される、請求項13に記載の標的化神経変調方法。
【請求項16】
予期される全脳ネットワーク接続性から逸脱するfMRI走査を破棄することをさらに含む、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項17】
前記ROIパーセル化の個別化マップを導出することは、
前記基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをランダムにサブサンプリングすることと、
前記ボクセルのサブサンプルをクラスタリングすることと、
クラスタリング割当を記録することと、
それらの場所に基づいて、前記クラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化することと
を含む、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項18】
前記ROIパーセル化の個別化マップを導出することは、
前記基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第1のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングすることと、
前記ボクセルの第1のサブサンプルをクラスタリングすることと、
第1のクラスタリング割当を記録することと、
前記基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第2のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングすることと、
前記ボクセルの第2のサブサンプルをクラスタリングすることと、
第2のクラスタリング割当を記録することと、
コンセンサスクラスタリングを使用して、前記第1のクラスタリング割当および第2のクラスタリング割当をマージすることと、
それらの場所に基づいて、前記マージされたクラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化することと
を含む、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項19】
前記ROIパーセル化の個別化マップを導出することは、空間的に互いに素なクラスタを分割することを含む、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項20】
前記標的スコアは、パーセルサイズ、パーセル深度、パーセル形状、パーセル均質性、前記基準ROIに対する機能的接続性強度、およびネットワーク接続性スコアから成る群からの少なくとも1つの因子に基づいて計算される、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項21】
前記ネットワーク接続性スコアは、前記患者の脳のデフォルトモードネットワークと背側注意ネットワークとの間の反相関を反映する、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【請求項22】
前記標的パーセルは、クラウドコンピューティングプラットフォームからニューロナビゲーションシステムに伝送される、請求項12に記載の標的化神経変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、35 U.S.C. § 119(e)(米国特許法第119条(e))下、その開示が、あらゆる目的のために参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、「Systems and Methods for Neuronavigation」と題され、2020年10月12日に出願された、米国仮特許出願第63/090,680号の利益および優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、神経変調療法に関し、(より具体的には)個人化刺激標的を発生させることに関する。
【背景技術】
【0003】
脳刺激療法は、(限定ではないが)経頭蓋磁気刺激(TMS)および深部脳刺激(DBS)等のいくつかの方法で送達されることができる。脳刺激療法は、多くの場合、患者の条件を治療するために、患者の脳の特定の領域に、またはそれに向かって送達される。
【0004】
放射線撮像は、内臓の非侵襲性走査を可能にする。一般的な脳撮像技法は、磁気共鳴撮像(MRI)機械と、血流と関連付けられる変化を測定することによって脳活動を測定することが可能である、機能的MRI(fMRI)と称される、MRIの変形との使用を伴う。MRIは、fMRIと対照的に、多くの場合、これが脳の解剖学的構造のみを検査し、脳活動を検査しないため、「構造的」と称される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による、標的化神経変調のためのシステムおよび方法が、例証される。一実施形態は、プロセッサと、標的化アプリケーションを含有する、メモリであって、標的化アプリケーションは、患者脳データを取得し、患者脳データは、患者の脳の構造的磁気共鳴撮像(sMRI)走査と、少なくとも1つの機能的磁気共鳴撮像(fMRI)走査とを備え、sMRI走査および少なくとも1つのfMRI走査を使用して、患者の脳に基準着目領域(ROI)および少なくとも1つの探索ROIをマッピングし、基準ROIは、脳刺激療法を介して間接的に影響を受けるべき領域を記述し、少なくとも1つの探索ROIは、脳刺激療法によって直接標的化されるべき少なくとも1つの領域を記述し、ROIパーセル化の個別化マップを導出し、ROIパーセル化の個別化マップは、基準ROIを複数の基準パーセルとして記述し、少なくとも1つの探索ROIを複数の候補パーセルとして記述し、複数の候補パーセルと複数の基準パーセルとの間の関係を抽出し、抽出された関係に基づいて、複数の候補パーセルにおける候補パーセルに関する標的スコアを計算し、標的スコアに基づいて、複数の候補パーセルからある標的パーセルを選択し、標的パーセルを提供するようにプロセッサに指示する、メモリとを含む、標的化神経変調システムを含む。
【0006】
別の実施形態では、標的化アプリケーションはさらに、患者の精神条件を治療するために、標的パーセルに脳刺激療法を提供するようにプロセッサに指示する。
【0007】
さらなる実施形態では、精神条件は、大鬱病性障害である。
【0008】
なおもさらなる実施形態では、精神条件は、希死念慮である。
【0009】
なおもさらなる実施形態では、脳刺激療法は、経頭蓋磁気刺激、経頭蓋直流刺激、および埋込可能電気刺激装置を介して送達される電気刺激から成る群から選択される。
【0010】
また別の実施形態では、標的化アプリケーションはさらに、予期される全脳ネットワーク接続性から逸脱するfMRI走査を破棄するようにプロセッサに指示する。
【0011】
またさらなる実施形態では、ROIパーセル化の個別化マップを導出するために、標的化アプリケーションはさらに、基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをランダムにサブサンプリングし、ボクセルのサブサンプルをクラスタリングし、クラスタリング割当を記録し、それらの場所に基づいて、クラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化するようにプロセッサに指示する。
【0012】
別の付加的実施形態では、ROIパーセル化の個別化マップを導出するために、標的化アプリケーションはさらに、基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第1のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングし、ボクセルの第1のサブサンプルをクラスタリングし、第1のクラスタリング割当を記録し、基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第2のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングし、ボクセルの第2のサブサンプルをクラスタリングし、第2のクラスタリング割当を記録し、コンセンサスクラスタリングを使用して、第1のクラスタリング割当および第2のクラスタリング割当をマージし、それらの場所に基づいて、マージされたクラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化するようにプロセッサに指示する。
【0013】
さらなる付加的実施形態では、ROIパーセル化の個別化マップを導出するために、標的化アプリケーションはさらに、空間的に互いに素なクラスタを分割するようにプロセッサに指示する。
【0014】
再び、別の実施形態では、標的スコアは、パーセルサイズ、パーセル深度、パーセル形状、パーセル均質性、基準ROIに対する機能的接続性強度、およびネットワーク接続性スコアから成る群からの少なくとも1つの因子に基づいて計算される。
【0015】
再び、さらなる実施形態では、ネットワーク接続性スコアは、患者の脳のデフォルトモードネットワークと背側注意ネットワークとの間の反相関を反映する。
【0016】
なおもまた別の実施形態では、標的化神経変調の方法は、患者脳データを取得することであって、患者脳データは、患者の脳の構造的磁気共鳴撮像(sMRI)走査と、少なくとも1つの機能的磁気共鳴撮像(fMRI)走査とを含む、ことと、sMRI走査および少なくとも1つのfMRI走査を使用して、患者の脳に基準着目領域(ROI)および少なくとも1つの探索ROIをマッピングすることであって、基準ROIは、脳刺激療法を介して間接的に影響を受けるべき領域を記述し、少なくとも1つの探索ROIは、脳刺激療法によって直接標的化されるべき少なくとも1つの領域を記述する、ことと、ROIパーセル化の個別化マップを導出することであって、ROIパーセル化の個別化マップは、基準ROIを複数の基準パーセルとして記述し、少なくとも1つの探索ROIを複数の候補パーセルとして記述する、ことと、複数の候補パーセルと複数の基準パーセルとの間の関係を抽出することと、抽出された関係に基づいて、複数の候補パーセルにおける候補パーセルに関する標的スコアを計算することと、標的スコアに基づいて、複数の候補パーセルからある標的パーセルを選択することと、標的パーセルを提供することとを含む。多くの実施形態では、患者脳データを取得することは、標的識別システムに以前にアップロードまたは伝送された患者脳データにアクセスし、遠隔機関、コンピュータシステム、またはデータベースから患者脳データを要求することによって、または患者脳データの入手を引き起こすようにMRIまたは他の撮像ハードウェア等のハードウェアにアクセスすることによって、遂行されてもよい。
【0017】
なおもまたさらなる実施形態では、本方法はさらに、患者の精神条件を治療するために、標的パーセルに脳刺激療法を提供することを含む。
【0018】
なおも別の付加的実施形態では、精神条件は、大鬱病性障害である。
【0019】
なおもさらなる付加的実施形態では、精神条件は、希死念慮である。
【0020】
再び、なおも別の実施形態では、脳刺激療法は、経頭蓋磁気刺激、経頭蓋直流刺激、および埋込可能電気刺激装置を介して送達される電気刺激から成る群から選択される。
【0021】
再び、なおもさらなる実施形態では、本方法はさらに、予期される全脳ネットワーク接続性から逸脱するfMRI走査を破棄することを含む。
【0022】
また別の付加的実施形態では、ROIパーセル化の個別化マップを導出することは、基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをランダムにサブサンプリングすることと、ボクセルのサブサンプルをクラスタリングすることと、クラスタリング割当を記録することと、それらの場所に基づいて、クラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化することとを含む。
【0023】
またさらなる付加的実施形態では、ROIパーセル化の個別化マップを導出することは、基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第1のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングすることと、ボクセルの第1のサブサンプルをクラスタリングすることと、第1のクラスタリング割当を記録することと、基準および少なくとも1つの探索ROI内のボクセルをボクセルの第2のサブサンプルとしてランダムにサブサンプリングすることと、ボクセルの第2のサブサンプルをクラスタリングすることと、第2のクラスタリング割当を記録することと、コンセンサスクラスタリングを使用して、第1のクラスタリング割当および第2のクラスタリング割当をマージすることと、それらの場所に基づいて、マージされたクラスタリング割当におけるクラスタを候補パーセルまたは基準パーセルとして標識化することとを含む。
【0024】
再び、また別の実施形態では、ROIパーセル化の個別化マップを導出することは、空間的に互いに素なクラスタを分割することを含む。
【0025】
再び、またさらなる実施形態では、標的スコアは、パーセルサイズ、パーセル深度、パーセル形状、パーセル均質性、基準ROIに対する機能的接続性強度、およびネットワーク接続性スコアから成る群からの少なくとも1つの因子に基づいて計算される。
【0026】
再び、別の付加的実施形態では、ネットワーク接続性スコアは、患者の脳のデフォルトモードネットワークと背側注意ネットワークとの間の反相関を反映する。
【0027】
再び、さらなる付加的実施形態では、大鬱病性障害を治療するためのシステムは、経頭蓋磁気刺激デバイスと、ニューロナビゲーションデバイスと、プロセッサと、標的化アプリケーションを含有する、メモリであって、標的化アプリケーションは、患者脳データを取得し、患者脳データは、患者の脳の構造的磁気共鳴撮像(sMRI)走査と、少なくとも1つの機能的磁気共鳴撮像(fMRI)走査とを備え、sMRI走査および少なくとも1つのfMRI走査を使用して、患者の脳に基準着目領域(ROI)および少なくとも1つの探索ROIをマッピングし、基準ROIは、経頭蓋磁気刺激デバイスを介して間接的に影響を受けるべき領域を記述し、少なくとも1つの探索ROIは、脳刺激療法によって直接標的化されるべき少なくとも1つの領域を記述し、ROIパーセル化の個別化マップを導出し、ROIパーセル化の個別化マップは、基準ROIを複数の基準パーセルとして記述し、少なくとも1つの探索ROIを複数の候補パーセルとして記述し、複数の候補パーセルと複数の基準パーセルとの間の関係を抽出し、抽出された関係に基づいて、複数の候補パーセルにおける候補パーセルに関する標的スコアを計算し、標的スコアに基づいて、複数の候補パーセルからある標的パーセルを選択し、大鬱病性障害を治療するために、経頭蓋磁気刺激デバイスおよび/またはニューロナビゲーションデバイスを使用して、標的パーセルに経頭蓋磁気刺激を適用するようにプロセッサに指示する、メモリとを含む。
【0028】
再び、また別の付加的実施形態では、標的パーセルは、クラウドコンピューティングプラットフォームからニューロナビゲーションシステムに伝送される。
【0029】
なおもまた別の付加的実施形態では、大鬱病性障害を治療する方法は、患者脳データを取得することであって、患者脳データは、患者の脳の構造的磁気共鳴撮像(sMRI)走査と、少なくとも1つの機能的磁気共鳴撮像(fMRI)走査とを備える、ことと、sMRI走査および少なくとも1つのfMRI走査を使用して、患者の脳に基準着目領域(ROI)および少なくとも1つの探索ROIをマッピングすることであって、基準ROIは、脳刺激療法を介して間接的に影響を受けるべき領域を記述し、少なくとも1つの探索ROIは、脳刺激療法によって直接標的化されるべき少なくとも1つの領域を記述する、ことと、ROIパーセル化の個別化マップを導出することであって、ROIパーセル化の個別化マップは、基準ROIを複数の基準パーセルとして記述し、少なくとも1つの探索ROIを複数の候補パーセルとして記述する、ことと、複数の候補パーセルと複数の基準パーセルとの間の関係を抽出することと、抽出された関係に基づいて、複数の候補パーセルにおける候補パーセルに関する標的スコアを計算することと、標的スコアに基づいて、複数の候補パーセルからある標的パーセルを選択することと、経頭蓋磁気刺激デバイスおよび/またはニューロナビゲーションデバイスを使用して、標的パーセルに経頭蓋磁気刺激を印加することによって、大鬱病性障害を治療することとを含む。
【0030】
なおもまた再び別の付加的実施形態では、経頭蓋磁気刺激は、加速されたシータバースト刺激である。
【0031】
付加的実施形態および特徴が、部分的に、続く説明に記載され、部分的に、本明細書の検討に応じて、当業者に明白となるであろう、または本発明の実践によって学習され得る。本発明の性質および利点のさらなる理解が、本明細書の残りの部分と、本開示の一部を形成する、図面とを参照することによって実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
説明および請求項は、本発明の例示的実施形態として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない、以下の図およびデータグラフを参照してより完全に理解される。
【0033】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による、標的化神経変調システムを図示する。
【0034】
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による、標的発生器を図示する。
【0035】
【
図3】
図3は、本発明のある実施形態による、個別化標的を発生させるための標的化プロセスを図示する、フローチャートである。
【0036】
【
図4】
図4は、本発明のある実施形態による、予期されるネットワーク接続性を評価するための標的化プロセスを図示する、フローチャートである。
【0037】
【
図5】
図5は、本発明のある実施形態による、個別化ROIパーセル化を導出するための標的化プロセスを図示する、フローチャートである。
【0038】
【
図6】
図6は、本発明のある実施形態による、空間的に互いに素なクラスタを分割するための標的化プロセスを図示する、フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
精神健康条件および他の神経学的問題は、患者および社会全体の両方にとって深い重要性を伴う有意な医療分野である。例えば、鬱病および希死念慮は、慢性的な公衆衛生問題を表す。しかしながら、これらの条件のための治療は、従来、医薬品を用いて、およびいくつかの治療抵抗性の症例では、外科手術および/または電気痙攣療法(ECT)を使用して対処されている。これらの方法は、精神および身体の両方に有意な副作用を及ぼし得る。対照的に、経頭蓋磁気刺激(TMS)と呼ばれる療法の形態が、副作用が殆ど報告されない、実行可能な非侵襲性治療選択肢として現れている。
【0040】
TMSは、標的領域における神経細胞を脱分極または過分極させるために、脳の特定の領域に磁場を印加することを伴う。概して、標的領域は、患者の条件とのその関係に基づいて、医療専門家によって選択される。例えば、背外側前頭前野(DLPFC)は、大鬱病性障害に関与することが公知である。しかしながら、個人におけるDLPFCの厳密な場所は、手動で識別することが困難であり得る。これが識別されることができるときであっても、実際には、その特有な脳に基づいて、個々の患者に関して最も効果的な標的であろう、DLPFCの特定の部分領域が、存在し得る。さらに、患者にとってより良好な刺激標的を提供するであろう、脳内の他の領域さえも、存在し得る。全ての脳は、少なくともわずかに異なるため、個人に関する刺激標的を発生させる個人化された方法が、より良好な療法転帰を提供することができる。
【0041】
多くのTMSデバイスの付加的限定は、それらが患者の脳内に電流を誘発し得る深度である。多くの場合、TMSデバイスは、深部脳構造を標的化することができない。しかしながら、識別されている、脳全体を通した多数の大規模ネットワークが、存在する。例えば、デフォルトモードネットワーク(DMN)は、覚醒時の休息等の多数のタスクに関与すると考えられるネットワークである。さらなる実施例として、背側注意ネットワーク(DAN)は、視空間的注意の自発的定位において重要であると考えられ、同様に、腹側注意ネットワーク(VAN)は、顕著な刺激に向かって注意を再定位する。脳の異なる領域の間の接続性は、TMSおよび他の脳刺激療法において、それによって、より深い脳構造に強く接続されるより多くの表面の脳構造が、より深い脳領域における変化をもたらすように刺激され得る機会を提供することができる。さらに、接続されたネットワークの刺激は、ネットワーク内にある、または別様にそれに接続される、構造に対して有意な影響を及ぼし得る。特に、(限定ではないが)DMN、DAN、およびVAN等のいくつかのネットワークは、大鬱病性障害および希死念慮に対する特定の実験的に決定された関係を有する。治療されるべき特定の精神条件に対する関係を伴うネットワークは、付加的優先順位を与えられることができる。
【0042】
脳の複雑な性質を前提として、(TMSのような)神経変調療法を適用するとき、刺激が送達される場所は、治療の転帰に対して有意な影響を及ぼし得る。本明細書に議論されるような標的化は、精神健康条件を治療するために、刺激に関する患者の脳内の標的構造を識別するプロセスを指す。現在の標的化方法は、実行可能な標的をもたらすことができるが、多くの従来の方法は、有意な欠点を有する。例えば、標的化は、多くの場合、患者からの1つの走査を使用して行われ、経時的に複数の走査を組み込むことができない。fMRIの走査雑音および限定された試験-再試験信頼性に起因して、単一の走査に基づいて標的を導出することは、雑音によって影響を受ける可能性がより高く、損なわれたレベルの標的信頼性につながる。信頼性限定は、特に、クラスタリング手順が雑音および信号損失に非常に敏感である場合、標的検出のためにボクセルクラスタリングを採用する方法に関してさらにより顕著であり得る。さらに、本目的のために使用されるクラスタリング手順は、ボクセルの間の空間関係を必ずしも考慮せず、これは、非実践的な結果につながり得る。ここで図面に目を向けると、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、これらの限定に対処し、より効果的な治療のために、より効果的な個別化刺激標的を生成する、より堅牢な標的化フレームワークを提供することを追求する。多くの実施形態では、本明細書に説明されるシステムおよび方法を使用して生成される標的は、続けて、(限定ではないが)TMS、経頭蓋直流刺激(tDCS)等の神経変調療法における標的として、1つまたはそれを上回る刺激電極のための埋込場所として、および/または本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるような任意の数の異なる神経変調モダリティのための標的として使用される。本発明の実施形態による、標的化システムが、下記に議論される。
【0043】
(標的化神経変調システム)
標的化神経変調システムは、患者の脳の走査を取得し、および/またはそれにアクセスし、脳刺激療法のための1つまたはそれを上回る個別化標的を識別することが可能である。多くの実施形態では、標的化システムは、(限定ではないが)TMSデバイスまたはニューロナビゲーションデバイス等の他の医療デバイスに統合されてもよい。種々の実施形態では、標的化システムは、個別化標的を発生させるだけではなく、また、ニューロナビゲーションデバイスを含み、またはそれと統合され、標的を正しく刺激するためにTMSコイルが設置されるべきである場所を識別することができる。多くの実施形態では、標的化神経変調システムはさらに、(限定ではないが)TMSデバイス、tDCSデバイス、埋込可能神経刺激装置、および/または本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるような任意の他の神経刺激デバイス等の神経変調デバイスを介して、発生された標的に神経変調を適用することができる。
【0044】
ここで
図1に目を向けると、本発明のある実施形態による、標的化神経変調システムが、図示される。標的化神経変調システム100は、標的発生器110を含む。標的化発生器は、(限定ではないが)デスクトップコンピュータ、ラップトップ、サーバコンピュータおよび/またはクラスタ、スマートフォン、タブレットPC、および/または本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるような論理命令を実行することが可能な任意の他のコンピューティングプラットフォーム等の任意の数の異なるコンピューティングプラットフォームを使用して実装されることができる。多くの実施形態では、標的発生器は、個人の脳内の個人化および/または部分的個人化標的を決定する。
【0045】
標的化神経変調システム100はさらに、fMRI機械120と、TMSデバイス130とを含む。多くの実施形態では、fMRI機械は、患者の構造的および機能的MRI画像の両方を取得することが可能である。TMSデバイス130は、脳刺激療法を標的発生器110によって選択された標的に送達することができる。しかしながら、容易に理解され得るように、代替撮像モダリティ(例えば、コンピュータトモグラフィ、陽電子放出トモグラフィ、脳波検査等)および代替脳刺激デバイス(例えば、埋込可能刺激装置)が、本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるように使用されることができる、すなわち、代替として、標的化システム100は、その独自の撮像機器を含まない場合があり、神経変調システム100とは明確に異なる、1つまたはそれを上回る撮像システムから撮像または他の脳データを受信してもよい。
【0046】
多くの実施形態では、標的化神経変調システム100は、標的発生器110によって選択された標的へのTMSデバイス130による脳刺激療法の送達を誘導する、ニューロナビゲーションデバイスを含む。本ニューロナビゲーションデバイスは、標的化発生器110に統合される、または標的化システム110とは別個であってもよい(図示せず)。多数の実施形態では、ニューロナビゲーションデバイスは、例えば、刺激コイルおよびヘッドの回転および平行移動位置を決定し、正しく刺激コイルを位置付けるようにユーザを誘導するための画像を表示することによって、または加えて、正しく刺激コイルを位置付けるために、ロボットアーム等の機械的アクチュエータを使用することによって、脳刺激療法を標的化システムによって発生された1つまたはそれを上回る標的に送達することを支援する。容易に理解され得るように、ニューロナビゲーションデバイスの具体的機能は、適用されている神経変調のタイプに応じて、変動されることができる。
【0047】
多くの実施形態では、fMRI、TMSデバイス、標的化システム、および/またはニューロナビゲーションデバイスは、ネットワーク140を介して接続される。ネットワークは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。実際、任意の数の異なるネットワークが、コンポーネントを接続するために組み合わせられることができる。しかしながら、本システムの全てのコンポーネントがネットワークを介して通信することは、要件ではない。標的発生器は、他のコンポーネントの間の動作接続を伴わずに機能することが可能である。実際、容易に理解され得るように、具体的標的化神経変調システムが、
図1に図示されるが、任意の数の異なるシステムアーキテクチャが、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、使用されることができる。例えば、多くの実施形態では、標的化神経変調システムは、異なる刺激モダリティを提供する、異なる神経変調デバイスを含むことができる。
【0048】
標的化システムが、患者脳データを提供されると、それらは、個別化標的を発生させることが可能である。ここで
図2に目を向けると、本発明のある実施形態による、標的発生器アーキテクチャが、図示される。標的発生器200は、プロセッサ210を含む。しかしながら、多くの実施形態では、1つを上回るプロセッサが、使用されることができる。種々の実施形態では、プロセッサは、(限定ではないが)中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるような任意の他の回路等の任意の論理処理回路網から作製されることができる。
【0049】
標的発生器200はさらに、入力/出力(I/O)インターフェース220を含む。I/Oインターフェースは、(限定ではないが)ディスプレイ、TMSデバイス、fMRI機械、他の治療デバイスおよび/または撮像デバイス、および/または本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるような任意の他のコンピュータコンポーネント等の接続されたコンポーネントの間でデータを転送することが可能である。標的発生器はさらに、メモリ230を含む。メモリは、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実装されることができる。容易に理解され得るように、任意の機械可読記憶媒体が、本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるように使用されることができる。
【0050】
メモリ230は、標的化アプリケーション232を含有する。標的化アプリケーションは、種々の標的発生プロセスを実行するようにプロセッサに指示することが可能である。メモリ230はまた、患者脳データ234を記憶することが可能である。患者脳データは、限定ではないが、構造的MRIおよび機能的MRI走査等の患者の脳走査を記述する。多数の実施形態では、メモリ230はさらに、標準的脳モデルに関する予期される一般化された接続性ネットワークを記述する、規範的接続性データ236を含有することができる。
【0051】
特定の標的発生器アーキテクチャおよび標的発生器が、上記の本発明の実施形態に従って議論されるが、任意の数の異なるアーキテクチャおよびハードウェア設計が、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、使用されることができる。例えば、多くの実施形態では、異なる刺激モダリティが、使用されることができる。種々の実施形態では、経頭蓋直流刺激が、使用される。多数の実施形態では、埋込可能電気神経刺激装置が、脳組織を直接刺激するために使用される。個別化刺激標的を発生させるための標的発生プロセスが、下記にさらに詳細に議論される。
【0052】
(個別化刺激標的の発生)
いくつかの脳刺激方法は、個別化された精密標的化を伴わずに、ある程度の効能を伴って機能するであろう。しかしながら、刺激を脳の特定の領域に提供し、個人に関する治療の影響を最大限にすることを試みることは、非常に有益である。個人化標的を発生させることを試みる種々の既存の方法論は、脳内の既存のネットワーク接続性を完全に考慮すること、および/または脳内の領域を単純にクラスタリングすることができない。本明細書に説明される標的識別プロセスは、その個人的な脳ネットワーク接続性に基づいて、個人に関するより高い正確度の刺激標的を提供することができる。
【0053】
ここで
図3に目を向けると、本発明のある実施形態による、患者に関する個別化刺激標的を発生させるための標的識別プロセスのフローチャートが、図示される。プロセス300は、患者脳データを取得すること(310)を含む。上記に留意されるように、患者脳データは、構造的および/または機能的脳走査を含むことができる。多くの実施形態では、患者脳データは、構造的MRIおよび機能的MRI走査の両方を含む。種々の実施形態では、複数の構造的および/または機能的MRI走査が、異なる時間に捕捉されている場合がある、患者脳データ内に含まれる。MRI走査は、品質に関してチェックされることができる。種々の実施形態では、走査品質は、一般的に使用されるfMRI品質制御(QC)ツールを使用して、および/または予期される規範的接続性構造に対して全脳接続性構造を合致させることによって、検査される。予期される規範的接続性構造を使用して品質制御を実施するための標的識別プロセスが、
図4を参照して下記の節にさらに詳細に議論される。
【0054】
プロセス300はさらに、患者の脳上に探索および基準着目領域(ROI)をマッピングすること(320)を含む。ROIは、ユーザによって判断されるような脳内の着目される任意の脳構造、部分構造、または構造の群であり得る。基準ROIは、脳刺激療法が間接的に影響を及ぼすはずである領域を記述する、ROIである。対照的に、探索ROIは、個別化脳刺激標的が存在し得る領域を記述する。このように、探索ROI内の個別化脳刺激標的に刺激を印加することは、基準ROIに対して影響を及ぼす。ROIは、特定のROIのサイズに応じて、1つまたはそれを上回るボクセルから構成されることができる。いくつかの実施形態では、ROIは、重複してもよい。多数の実施形態では、脳地図が、患者の脳の構造的走査上にROIをマッピングするために使用される。種々の実施形態では、標的ROIは、マスクを脳構造に適用することによって示され、そこで、マスクは、所望の標的ROIをフラグ付けする。種々の実施形態では、マスクは、異なる所望の標的ROIに関する異なる加重メトリックを有することができる。ROIはまた、機能的走査上にマッピングされることができる。種々の実施形態では、構造的走査が、他の機能的走査を整合させるためのテンプレートとして使用されることができる。種々の実施形態では、複数のfMRI走査が、機能的接続性データを統合することによって組み合わせられ、「組み合わせられたfMRI」をもたらすことができる。このように、類似する、または同じプロトコルを用いて撮影された患者の複数のfMRIが、個人のネットワーク接続性のより完全な実態をもたらすためにマージされることができる。
【0055】
fMRI信号(すなわち、経時的な特定のボクセルまたはボクセルのセットに関する活動レベル)が、ROIから抽出される(330)。不良な信号品質を伴うボクセルが、除外(335)および/または破棄されることができる。多数の実施形態では、不良な品質の信号は、種々の走査装置限定、走査パラメータ、および/または走査プロセスの間の移動に起因して引き起こされ得る。種々の実施形態では、不良な品質の信号は、ボクセルレベル信号対雑音比(SNR)を計算することによって検出される。考慮から低品質信号を除去することによって、標的化正確度は、大幅に増加することができる。ROIパーセル化の個別化マップが、抽出されたfMRI信号から導出される(340)。ROIパーセル化の個別化マップは、複数のパーセル(または隣接するボクセルの群)を記述する。候補パーセルが、探索ROIから導出され、脳刺激療法に関して候補標的を成す。基準パーセルが、基準ROIから導出され、刺激によって影響を受けるであろう基準ROIの面積を成す。本発明の実施形態による、ROIパーセル化を導出するための方法が、
図5に関して下記にさらに詳細に議論される。
【0056】
潜在的候補パーセルと基準パーセルとの間の関係が、抽出され(350)、潜在的候補パーセルに関する標的スコアが、発生される(360)。多くの実施形態では、2つのパーセル(候補および基準)の間の機能的接続性が、測定され、標的スコアは、機能的接続の強度に基づく。基準ROI(例えば、基準ROI内の任意のパーセル)へのより強い機能的接続性を有し、したがって、基準の機能により強く影響を及ぼす標的が、より高い標的スコアを与えられることができる。多くの実施形態では、(限定ではないが)パーセル深度、パーセルおよび/または周辺脳構造の他の機能、パーセルのサイズ、形状、および均質性、既知の/予期されるシステム/ネットワークレベル接続性プロファイルへの適合を含む、他の因子が、スコアに寄与し、および多数の他の因子が、本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であると見なされることができる。例えば、より大きい標的は、基準への強い機能的接続性を有していない場合があるが、はるかに大きく、したがって、具体的脳刺激デバイスを用いて標的化することがより容易である。
【0057】
付加的実施例として、標的化するべき脳領域に関するネットワークレベルの予期値を組み込む、ネットワーク接続性スコアが、含まれることができる。文献において、当分野が、特定の脳構造またはネットワーク(すなわち、構造のセット)が特定の条件に関与すると考える場合、その脳構造/ネットワークと強く相互作用するパーセルは、潜在的標的としてより重く加重され得る。上記に記述されるように、DLPFCは、臨床的鬱病および希死念慮に強く関連すると考えられ、したがって、その領域と強く相互作用する標的は、現在の予期値に基づいて、より望ましくあり得る。
【0058】
実施例として、多数の実施形態では、パーセル毎に、DANおよびDMNへの機能的接続性の間の差異が、計算されることができる。DANとDMNとの間の反相関が、ネットワーク接続性スコアとして使用されることができ、より高い程度の反相関は、より強い候補パーセルを示唆する。種々の実施形態では、VANおよびDMNへの機能的接続性の間の差異が、計算され、ネットワーク接続性スコアとして使用される。いくつかの実施形態では、異なるネットワークに関するネットワーク接続性スコアの加重平均が、全体的ネットワーク接続性スコアとして使用されることができ、加重は、問題となっている条件に対する特定のネットワークの関連性に基づく。種々の実施形態では、機能的接続性は、ボクセル毎に計算され、全体的パーセルスコアを得るために平均化される。
【0059】
個別化標的パーセルが、次いで、標的スコアに基づいて、候補パーセルの群から選択される(370)。多くの実施形態では、最も高いスコアの候補パーセルが、選択される。多くの実施形態では、標的パーセルに関する中心が、TMSコイル整合をより精密に決定するために抽出される(380)。多くの実施形態では、中心は、標的候補を構成する各ボクセルの位置を平均化することによって計算される。
【0060】
個別化標的を発生させるための特定の方法が、
図3に図示されるが、容易に理解され得るように、任意の数の異なる修正が、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、行われることができる。例えば、本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるようなネットワークスコアを発生させるために、全ての品質制御ステップが、行われる必要があるわけではない、または全てのパラメータが、考慮されるわけではない。さらに、異なる加重が、標的スコアを計算する際のそれらの相対的重要性に関して、異なるパラメータに与えられてもよい。上記のプロセスの種々のステップの付加的説明が、下記に見出される。
【0061】
(ネットワーク接続性品質制御)
患者脳データは、1つまたはそれを上回るfMRI走査を含むことができるが、しかしながら、データが高品質である(例えば、高SNRを有する)ことが直ちに保証されることは、殆どない。測定雑音および頭の移動は、fMRI信頼性限定の既知の原因であり、したがって、データ前処理の間の一般的な実践として推定され、部分的に対処される。しかしながら、ある場合には、不良な走査品質および/または前処理エラーが、見逃され、これは、誤った脳の機能的接続性構造に基づいて標的を導出することにつながり得る。誤ったデータに基づいて臨床判断を行うことを防止するために、付加的手段が、望ましい。
【0062】
人間の脳のシステムレベル編成における全体的保全の可能性の高い許容可能な仮定の下で、予期される規範的接続性に対して測定された全脳接続性を合致させることは、不良な走査からのエラーを低減させ、ある場合には、さらなる手動精査のために、非典型的な脳の存在の注意を医療専門家に提供することができる。多くの実施形態では、識別された不良な走査は、破棄される。ここで
図4に目を向けると、本発明のある実施形態による、予期されるネットワーク接続性を測定するための標的識別プロセスが、図示される。
【0063】
プロセス400は、各ボクセルを所定のネットワークに割り当てること(410)を含む。(限定ではないが)視覚ネットワーク(VIS)、感覚運動ネットワーク(SMN)、背側注意ネットワーク(DAN)、腹側注意ネットワーク(VAN)、辺縁系ネットワーク、前頭頭頂制御ネットワーク(FPCN)、およびデフォルトモードネットワーク(DMN)等の多くの大規模脳ネットワークが、公知であり、母集団の大量のサンプルに基づいてマッピングされている。これらのネットワークは、各ボクセルが、少なくとも1つのネットワークに割り当てられるように、患者のMRI上にオーバーレイされることができる。ボクセル対毎に、機能的接続性スコア(FC)が、計算されることができ(420)、FCは、fMRI(組み合わせられたfMRIを含む)におけるボクセルの間の接続性の強度を表す。同一のネットワークに割り当てられるボクセルを関連させるFC値の全ては、平均化され(430)、「FC内」値をもたらす。
【0064】
「FC間」値が、異なるネットワークからのボクセルを関連させる全てのFC値を平均化する(440)ことによって取得される。FC間値は、FC内値から減算され(450)、ボクセルに関するネットワーク適合を取得する。個々のボクセルは、脳機能および構造における予期される個々の差異に起因して、それらのネットワーク関連付けにおいて変動し得るが、ボクセルを横断する平均ネットワーク適合(ネットワーク品質制御(QC)メトリックと呼ばれる)は、正のままであることが予期される(FC内>FC間)。ネットワークQCメトリックが、有意に正ではない(FC間>=FC内を意味する)場合、これは、走査、前処理手順、または患者の脳内で生じる有意に非典型的な構造的問題のいずれかの問題が存在し得るというインジケータである。ネットワークQCメトリックの統計的有意性は、ボクセルの空間位置を考慮しながらデータをランダムに並べ替え、ネットワークQC推定プロセスを繰り返すことによって取得されることができる。このように、取り込みfMRIは、品質のために一掃されることができる。fMRI走査が、不良な全体的ネットワーク適合を有するものとしてフラグ付けされる場合、これは、データの医療専門家による詳細な検査を可能にし、誤った情報から標的を導出することを防止することができる。
【0065】
脳ネットワーク接続性に基づくQC制御に関する特定の方法が、
図4において本発明のある実施形態に従って図示されるが、ネットワーク接続性は、本発明の実施形態の具体的用途の要件に適切であるようないくつかの異なるアルゴリズムのうちのいずれかを使用して、制御として使用されることができる。高品質データを確実にすることは、発生される標的の正確度を増加させることができる。脳を個別化ROIにパーセル化する方法の議論が、下記にさらに議論される。
【0066】
(ROIパーセル化)
人間の脳の全体的構造は、個人を横断して比較的に保全されるが、各人物が、環境および遺伝の両方の任意の数の因子に基づいて、特有な脳機能性および回路網を有することが周知である。したがって、単に標準化されたモデルに基づいて脳を分割することは、不正確または不十分な結果をもたらし得る。以前から、脳をROIにパーセル化する試みが、行われているが、使用される特定の方法論は、多くの場合、効果的な様式でボクセルを堅牢にクラスタリングすることができていない。ここで
図5に目を向けると、本発明のある実施形態による、ROIパーセル化の個別化マップを導出するための標的識別プロセスが、議論される。
【0067】
プロセス500は、全てのボクセルのあるパーセンテージをランダムにサブサンプリングすること(510)を含む。多くの実施形態では、パーセンテージは、80%を上回る任意の数であるが、しかしながら、利用可能なデータおよび算出の量に応じて、本数は、80%を下回り得る。サブサンプリングされたボクセル内のfMRI信号は、次いで、信号類似性に基づいて、クラスタリングされる(520)。(限定ではないが)凝集型(階層)クラスタリング、接続性カーネルを介したクラスタ識別(CLICK)クラスタリング、k平均法クラスタリング、および/またはスペクトルクラスタリングを含む、任意の数の異なるクラスタリングプロセスが、使用されることができる。いくつかの実施形態では、空間情報を組み込むクラスタリング方法(例えば、空間的に制約されたスペクトルクラスタリング)が、使用されることができる。
【0068】
クラスタリング割当が、記録され(530)、新しいランダムサブサンプリング(510)が、取得される。プロセスは、正確度を増加させるために複数回繰り返されることができる。多くの実施形態では、本プロセスは、十分なデータを確実にするために、100回またはそれを上回って繰り返されるが、より少ないものが、十分であり得る。サブサンプルクラスタリング解が、次いで、マージされる(540)。多くの実施形態では、それらは、コンセンサスクラスタリングアプローチを使用してマージされる。任意の結果として生じる空間的に互いに素なクラスタが、次いで、サブクラスタに分割されることができる(550)。クラスタ(および任意のサブクラスタ)は、次いで、基準および探索ROI内のそれらの場所に基づいて、基準または探索のいずれかのパーセルとして標識化される(560)。
【0069】
繰り返しサブサンプリングおよびクラスタリングすることによって、神経信号における雑音が、考慮されることができ、個人の真の脳接続性のより正確な実態が、現れることができる。さらに、複数のfMRI走査が、本プロセスを通して実行されることができ、結果として生じるクラスタは、コンセンサスクラスタリングを使用して、統合されることができる。このように、異なる日に撮影されたものを含む、複数のfMRIが、標的化のために使用される全体的データセットに寄与することができる。種々の実施形態では、空間的に互いに素なクラスタは、空間的に制約されたクラスタリングプロセスを使用することによって回避されることができる。しかしながら、本発明の実施形態の具体的用途の要件に応じて、空間的に互いに素なクラスタをもたらし得る、空間的に制約されないクラスタリングプロセスを選択することが、望ましくあり得る。本発明のある実施形態による、空間的に互いに素なクラスタを分割するための標的識別プロセスが、
図6に図示される。
【0070】
プロセス600は、空間的に互いに素なクラスタにおける各ボクセルの空間位置を記録すること(610)を含む。2つおきのボクセルの間の物理的距離を示す、距離行列が、発生され(620)、これは、次いで、グラフ表現に変換される(630)。グラフにおける長いエッジ(所定の閾値を超えるエッジ)が、プルーニングされ(640)、部分的に接続されたグラフをもたらし、これは、次いで、そのようなものが出現する場合、接続されたサブグラフ(成分)に分割される。各接続された成分におけるボクセルのセットは、次いで、別個のクラスタとして定義されることができる(650)。
【0071】
このように、互いに素なクラスタは、分割され、刺激のための潜在的な候補パーセルとして別個に使用されることができる。多くの実施形態では、これらの互いに素なクラスタは、互いに素なクラスタの「中心」が、互いに素なクラスタの任意の部分の外側にあり、実行可能な標的場所の近傍のどこにもない場合があることが問題となる。
【0072】
プロセス300、400、500、および/または600、およびそれらの変形例は、標的識別システムによって、標的パーセルを提供するために実施されてもよく、これは、次いで、アーカイブ化される、後の使用のために記憶される、ニューロナビゲーションデバイスに伝送される、さらなる分析において使用される、または複合標的パーセルをもたらすために1つまたはそれを上回る他の標的パーセルと(例えば、結合または交差によって)組み合わせられてもよい。標的識別システムは、ニューロナビゲーションデバイスと明確に異なる、それと別個である、および/またはそれと統合される、または部分的に統合されてもよい。標的識別システムは、クラウドコンピューティングプラットフォーム上で、治療の現場にローカルなコンピューティングプラットフォーム上で、ニューロナビゲーションデバイスに組み込まれる、またはその一部のコンピューティングプラットフォーム上で、またはそのようなプラットフォームの任意の組み合わせ上で実装されてもよい。
【0073】
ROIパーセル化の具体的方法が、上記に議論されるが、(限定ではないが)異なる具体的クラスタリングプロセスを使用する、および/または異なる閾値およびパラメータを利用するもの等の多くの異なる方法が、本発明の多くの異なる実施形態に従って実装されることができる。したがって、本発明が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、具体的に説明されるもの以外の方法で実践され得ることを理解されたい。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点で、制限的ではなく、例証的と見なされるべきである。故に、本発明の範囲は、例証される実施形態によってではなく、添付される請求項およびそれらの均等物によって決定されるべきである。
【国際調査報告】