(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】核燃料棒および製造方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20231019BHJP
G21C 3/10 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G21C3/06 200
G21C3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522343
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2021078038
(87)【国際公開番号】W WO2022078951
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593128105
【氏名又は名称】フラマトム
【氏名又は名称原語表記】FRAMATOME
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ビショフ,ジェレミ
(72)【発明者】
【氏名】ドュトー,ドミニク
(57)【要約】
核燃料棒は、被覆(4)内に格納された核燃料を含み、被覆(4)は、管(6)と2つのプラグ(8)を含み、管(6)は、中心軸(A)に沿って延在しかつ2つの端部を有し、各プラグ(8)は、管の端部を封止することによって管(6)の対応する端部に取付けられている。管(6)は、管(6)の一方の端部から他方の端部まで管(16)の全長にわたり延在している管コーティング(16)によってカバーされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆(4)内に格納された核燃料を含む核燃料棒において、被覆(4)が、管(6)と2つのプラグ(8)を含み、管(6)が、中心軸(A)に沿って延在しかつ2つの端部を有し、各プラグ(8)が、その端部を封止することによって管(6)の対応する端部に取付けられており、管(6)が、管コーティング(16)によってカバーされており、ここで管コーティング(16)が、管(6)の一方の端部から他方の端部まで管(16)の全長にわたり延在している、核燃料棒。
【請求項2】
プラグ(8)のうちの1つまたは各プラグ(8)が、プラグコーティング(24)によって少なくとも部分的にカバーされている、請求項1に記載の核燃料棒。
【請求項3】
管コーティング(16)およびプラグコーティング(24)が、同じ材料でできている、請求項2に記載の核燃料棒。
【請求項4】
プラグコーティング(24)が具備された各プラグ(8)のプラグコーティング(24)および管コーティング(16)が、管(6)とプラグ(8)の間の界面で隣接している、請求項2または3に記載の核燃料棒。
【請求項5】
各プラグ(8)が、コーティングされているか否かに関わらず、管(6)とプラグ(8)の間の界面の形状に影響を及ぼすことなくおよび/または詳細には材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって、管(6)とプラグ(8)の間の界面を再加工することなく、管(6)上に溶接される、請求項1から4のいずれか一つに記載の核燃料棒。
【請求項6】
管(6)が、ジルコニウム系材料製である、請求項1から5のいずれか一つに記載の核燃料棒。
【請求項7】
各プラグ(8)が、ジルコニウム系材料製である、請求項1から6のいずれか一つに記載の核燃料棒。
【請求項8】
管コーティング(16)が、クロム系材料製である、請求項1から7のいずれか一つに記載の核燃料棒。
【請求項9】
各プラグが、管材料、管コーティング材料、プラグ材料、および該当する場合にはプラグをカバーするプラグコーティング材料の間で、管とプラグ間の接合部において共晶が存在することなく、管上に取付けられている、請求項1から8のいずれか一つに記載の核燃料棒。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の核燃料棒のための製造方法において、各プラグ(8)が、該当する場合には、プラグコーティング(24)でコーティングされている、管(6)およびプラグ(8)の生産と、管(6)の対応する端部への、プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗溶接による溶接とを含む方法。
【請求項11】
各プラグ(8)が、電気抵抗突合わせ溶接によって管(6)上に溶接されている、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗溶接が、10kA~20kAの電流で実施される、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗による溶接が、200daN~400daN、好ましくは250daN~350daNの押圧力下で、管(6)の対応する端部に対してプラグ(8)を適用することによって実施される、請求項10から12のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項14】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗溶接が、10ms~30msの持続時間にわたり電流を印加することによって実施される、請求項10から13のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項15】
管(6)と管(6)上に溶接された各プラグ(8)との間の界面を、材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって再加工することなく実施される、請求項10から14のいずれか一つに記載の製造方法。
【請求項16】
各プラグ(8)が、管(6)の材料、管コーティング(16)の材料、プラグ(8)の材料、および該当する場合にはプラグ(8)をカバーするプラグコーティング(24)の材料の間で、管(6)とプラグ(8)の間の接合部において共晶を形成することなく、管(6)上に溶接される、請求項10から16のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料棒の分野、詳細には軽水炉用の核燃料棒の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉内で使用される核燃料集合体は概して、核燃料棒の束を含み、各核燃料棒は核燃料を格納する被覆を含み、その被覆は、その2つの端部の各々でプラグによって閉鎖されている被覆管で構成されている。
【0003】
各プラグは、例えば、管を密閉するために、管の対応する端部に溶接されている。各プラグを管に取付けるためには、例えばTIG溶接(タングステン電極を用いた不活性雰囲気下でのアーク溶接)、レーザ溶接または電子ビーム溶接といった様々な溶接技術を使用することができる。
【0004】
管およびプラグは概して、金属製である。これらは例えば、ジルコニウムまたはジルコニウム合金、例えばZircaloy(ジルカロイ)タイプのジルコニウム合金製である。
【0005】
原子炉の運転中に被覆が置かれる極めて攻撃的な環境から被覆を保護する目的で、管に外部保護コーティング、例えばクロムまたはクロム合金製の保護コーティングを具備することが可能である。
【0006】
管上の保護コーティングの存在は、管とプラグの間で行なわれる溶接に対して悪い影響を及ぼす可能性がある。結果として得られる溶接は、脆弱化しかつ/または腐食に対して敏感になると考えられる。
【0007】
このようなリスクを制限するため、保護コーティングは、プラグが溶接される管の端部部分をコーティングすることなく、管の長さの大部分にわたって被着させられる。したがって、保護コーティングが、管と各プラグの間で行なわれる溶接を汚染することはない。
【0008】
しかしながら、保護コーティングでカバーされていない管の部分は、事故条件下での高温酸化を含めて、激しい摩耗または腐食に対してより敏感になり得ることから、管および棒の脆弱性領域を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、耐性を有しながら、詳細には高温における腐食および酸化に対する耐性を有しながら製造が容易である核燃料棒を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、被覆内に格納された核燃料を含む核燃料棒において、被覆は、管と2つのプラグを含み、管は、中心軸に沿って延在しかつ2つの端部を有し、各プラグは、前記端部を封止することによって管の対応する端部に取付けられており、管は、管コーティングによってカバーされており、ここで管コーティングは、管の一方の端部から他方の端部まで管の全長にわたり延在している、核燃料棒を提案している。
【0011】
特定の実施形態によると、核燃料棒要素は、個別に取り上げるかまたは技術的に可能な全ての組合せの形で取上げた以下の任意の特徴のうちの単数または複数のものを含む:
- プラグのうちの1つまたは各プラグは、プラグコーティングによって少なくとも部分的にカバーされている;
- プラグコーティングが具備されている各プラグのプラグコーティングと管コーティングは明確に異なるものである;
- 管コーティングおよびプラグコーティングは、同じ材料でできている;
- プラグコーティングを伴う各プラグのプラグコーティングおよび管コーティングは、管とプラグの間の界面で隣接している;
- ここで各プラグは、コーティングされているか否かに関わらず、管とプラグの間の界面の形状に影響を及ぼすことなくおよび/または詳細には材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって、管とプラグの間の界面を再加工することなく、管上に溶接される;
- 管は、ジルコニウム系材料製である;
- 各プラグは、ジルコニウム系材料製である;
- 管コーティングは、クロム系材料製である;
- 各プラグは、管材料、管コーティング材料、プラグ材料、および該当する場合にはプラグをカバーするプラグコーティング材料の間で、管とプラグ間の接合部において共晶が存在することなく、管上に取付けられている。
【0012】
本発明はさらに、上記で定義した核燃料棒のための製造方法において、管およびプラグを生産するステップであって、各プラグが、該当する場合には、プラグコーティングでコーティングされているステップと、管の対応する端部に、プラグのうちの少なくとも1つまたは各プラグを電気抵抗溶接によって溶接するステップと、を含む方法に関する。
【0013】
特定の実施形態によると、製造方法には、個別に取上げるかまたは技術的に可能な全ての組合せの形で取上げた以下の任意の特徴のうちの単数または複数のものを含む:
- 各プラグは、電気抵抗突合わせ溶接によって管に溶接されている;
- プラグのうちの少なくとも1つまたは各プラグの電気抵抗溶接は、10kA~20kAの電流で実施される;
- プラグのうちの少なくとも1つまたは各プラグの電気抵抗溶接は、200daN~400daN、好ましくは250daN~350daNの押圧力下で、管の対応する端部に対してプラグを適用することによって実施される;
- プラグのうちの少なくとも1つまたは各プラグの電気抵抗溶接は、10ms~30msの持続時間にわたり電流を印加することによって実施される;
- 該製造方法は、管と管に溶接された各プラグとの間の界面を、材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって再加工することなく実施される;
- 各プラグは、管材料、管コーティング材料、プラグ材料、および該当する場合にはプラグをカバーするプラグコーティング材料の間で、管とプラグの間の接合部における共晶の形成なく管上に溶接される。
【0014】
本発明および本発明の利点については、単に非限定的な例としてのみ示された以下の説明を、添付図面を参照しながら読了した時点でより良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1に示されているもののような核燃料棒についての製造方法を例示する断面図である。
【
図3】
図1に示されているもののような核燃料棒についての製造方法を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、例えば軽水炉、詳細には加圧水型原子炉(PWR)または沸騰水型原子炉(BWR)、「VVER」原子炉、「RBMK」原子炉、または重水炉、例えば「CANDU」原子炉における使用を意図されている核燃料棒2を示す。
【0017】
核燃料棒2は、中心軸Aに沿って延びた棒の形状を有する。
【0018】
核燃料棒2は、核燃料を格納する被覆4を含む。
【0019】
被覆4は、管6および2つのプラグ8を含み、各プラグ8は、管6の対応する端部に溶接されてこの端部を封止する。管6は、核燃料棒2の中心軸Aに沿って延在する。管6は、好ましくは、中心軸Aを中心にした円形の横断面を有する。
【0020】
核燃料は、例えば、管6の内部で軸方向に積重ねられたペレットスタック10の形態である。ペレットスタック10は、「核分裂性カラム」とも呼ばれる。
【0021】
核燃料棒2は、オプションとして、ペレットスタック10をもう一方のプラグ8に向かって押すために、管6の内部においてペレットスタック10とプラグ8のうちの一方との間で配設されたばね12を含む。ばね12は、ペレットスタック10とプラグ8の間で圧縮される。
【0022】
ペレットスタック10とプラグ8の間には空間またはプレナム14が存在し、それに対しばね12が押圧する。プレナム14は、原子炉の運転中核燃料から放出されたガスの貯蔵のために使用され得る。ばね12は、プレナム14の内部に位置設定される。
【0023】
管6の一端部へのプラグ8の溶接を例示する
図2および3の中で示されているように、管6には管コーティング16が具備されている。
【0024】
管6は、管6の内部に向かって配向された内側表面6Bと、管6の外部に向かって配向された外側表面6Aとを有する。
【0025】
管コーティング16は、管6の外側表面6Aをカバーして、管を外部環境から保護している。運転中、管コーティング16は、環境と接触した状態にある。
【0026】
管6は、例えばジルコニウム系材料製である。
【0027】
この文脈で、ジルコニウム系材料とは、純粋ジルコニウムまたはジルコニウム系合金でできた材料を意味する。純粋なジルコニウム材料は、少なくとも99重量%のジルコニウムを含む材料である。
【0028】
ジルコニウム系合金は、少なくとも95重量%のジルコニウムを含む合金である。
【0029】
一実施例において、管6のジルコニウム系材料は、0.8~1.8重量%のニオブ、0.2~0.6重量%のスズそして0.02~0.4重量%の鉄を含み、残余がジルコニウムと不可避的な不純物で構成された組成を有する四元ジルコニウム合金である。
【0030】
管6は、例えば0.4mm~1mmの厚みを有する。管6の厚みは、管6の内側表面6Bと外側表面6Aの間の距離である。
【0031】
管コーティング16は薄く、例えば管6の厚みよりも断然薄い厚みを有する。
【0032】
管コーティング16は例えば、5μm~25μmの厚み、特に10μm~20μmの厚みを有する。管コーティング16の厚みは、管6の外側表面6Aに直交して、すなわち管6の中心軸Aに対して半径方向に測定される。
【0033】
管コーティング16は、クロム系材料製である。
【0034】
この文脈で、クロム系材料とは、純粋クロム材料またはクロム系合金を意味する。
【0035】
純粋クロム材料は、少なくとも99重量%のクロムを含む材料である。クロム系合金は、少なくとも85重量%のクロムを含む合金である。
【0036】
一実施形態において、クロム系材料は、二元クロムアルミニウム合金、二元クロム窒素合金、および二元クロムチタン合金の中から選択されたクロム系合金である。
【0037】
管コーティング16は、クロム系材料でできた単一層またはクロム系材料、好ましくは同じクロム系材料でできた複数のオーバレイ層を含む。
【0038】
複数のオーバレイ層の管コーティング16の構造は、例えば、特に被着が複数のパスで実施される場合に、管6上への管コーティング16の被着のために使用される被着プロセスの結果としてもたらされるものである。
【0039】
管コーティング16は、管6の一方の端部から他方の端部まで、管6の全長にわたって延在する。
【0040】
好ましい実施形態において、管コーティング16は連続している。この管コーティングは、管6の外側表面6Aを完全にカバーする。
【0041】
各プラグ8は、管6の対応する端部にプラグ8を取付けるために管6内に挿入される挿入部分18と、プラグ8がひとたび管6の対応する端部に取付けられた時点で管6の外部に残っている露出部分20とを含む。
【0042】
各プラグ8は、プラグ8が管6の端部に配設される場合、管6の端部を圧迫する環状表面22を有する。環状表面22は、中心軸Aを中心としている。環状表面22は、挿入部分18と露出部分20の間の接合部に位置設定される。
図2に示されているように、環状表面22は例えば、挿入部分18から露出部分20に向かって広くなる円錐台状である。
【0043】
各プラグ8は、例えばジルコニウム系材料製である。
【0044】
一実施例において、プラグ8のジルコニウム系材料は、0.8~1.8重量%のニオブ、0.2~0.6重量%のスズそして0.02~0.4重量%の鉄を含み、残余がジルコニウムと不可避的な不純物で構成された組成を有する四元ジルコニウム合金である。
【0045】
一実施例において、管6および各プラグ8は、同じ材料製である。
【0046】
オプションとして、核燃料棒2の各プラグ8にはプラグコーティング24が具備される。プラグコーティング24は、プラグ8の露出部分20上に延在する。
【0047】
好ましい実施形態において、プラグコーティング24は、連続している。このプラグコーティングは、例えば露出部分20を完全にカバーする。
【0048】
プラグコーティング24は、好ましくは環状表面22の外側縁部まで延在する。
【0049】
プラグコーティング24は、例えばクロム系材料製である。
【0050】
一実施例において、プラグコーティング24のクロム系材料は、二元クロムアルミニウム合金、二元クロム窒素合金、および二元クロムチタン合金の中から選択されたクロム系合金である。
【0051】
プラグコーティング24が具備された各プラグ8のプラグコーティング24は、管コーティング16とは明確に異なるものである。
【0052】
一実施例において、各プラグ8のプラグコーティング24と管コーティング16は、同じ材料製である。
【0053】
プラグ8にプラグコーティング24が具備される場合、このプラグコーティング24は、プラグ8が管6の端部に配設されるとき、管コーティング16とプラグコーティング24が隣接しているような形で具備される。
【0054】
より詳細には、プラグコーティング24は、プラグ8が管6の端部に配設される場合、管コーティング16と隣接しているように、露出部分20上に延在する。
【0055】
挿入部分18、および該当する場合には環状表面22は、プラグコーティング24を全く有していない。プラグコーティング24は、挿入部分18、および該当する場合には環状表面22をカバーしない。
【0056】
好ましくは、各プラグ8は、管6の材料、管コーティング16の材料、プラグ8の材料、および該当する場合にはプラグ8をカバーするプラグコーティング24の材料の間で、管6とプラグ8の間の接合部において共晶が存在することなく、管6上に取付けられていて、詳細には溶接されている。
【0057】
詳細には、管6および/またはプラグ8が、ジルコニウム系材料製でありかつ管コーティング16および/または考えられるプラグコーティング24が、クロム系材料製である場合、核燃料棒2は、管6とプラグ8の間の接合部にいかなるクロム-ジルコニウム共晶(Cr-Zr)も有さない。
【0058】
管6とプラグ8の間の接合部における共晶、特にクロム-ジルコニウム共晶(Cr-Zr)の存在は、特に高温(典型的には350℃超)において、核燃料棒2を脆弱化し酸化に対するその耐性を低減させる可能性があると思われる。
【0059】
図2および3に示されているように、核燃料棒2の製造方法には、その管コーティング16でコーティングされた管6、および該当する場合にはプラグコーティング24でコーティングされたプラグ8を具備するステップ(
図2)、その後管6の一端部にプラグ8を取付けるステップが含まれ、この取付けステップは、電気抵抗溶接または「抵抗突合わせ溶接」によって実施される(
図3)。
【0060】
抵抗溶接により管6上にプラグ8を取付けるために、プラグ8は、管6の端部に位置付けされ、管6にプラグ8を溶接するために管6とプラグ8の間に電流が印加される。電流が流れている間、管6とプラグ8はジュール効果によって加熱され、こうして、接触状態にあるそれらの表面は、溶接力および加熱の複合効果の下で共に溶接される。
【0061】
この事例においてより詳細には、プラグ8は、管6の端部に配設されており、こうして、環状表面22が、管6の端部を軸方向に圧迫するようになっており、その後電流が印加される(
図3参照)。
【0062】
電気抵抗溶接は、材料を添加することなく実施される。
【0063】
好ましくは、取付けは、「抵抗突合わせ溶接」の名前でも知られている電気抵抗突合わせ溶接によって実施される。
【0064】
電気抵抗溶接により管6に各プラグ8を取付けるためには、プラグ8は、管6の端部に位置付けされ、プラグ8と管6は規定の押圧力(
図3中の矢印F)で互いに対し押しつけられ、押圧力を維持しながら管6とプラグ8の間に電流が印加されて、管6にプラグ8を溶接する。
【0065】
この事例においてより詳細には、プラグ8は、環状表面22が規定の押圧力下で管6の端部を軸方向に圧迫するような形で、管6の端部に配設され、この規定の押圧力は電流の印加中維持される(
図3参照)。
【0066】
図3に示されているように、電気抵抗溶接は、例えば、把持用部材28を含む溶接機26を用いて実施され、その部材は、一方がプラグ8を把持するために提供され、そして他方が前記プラグ8を取付けた管6の端部の近くで管6を把持するために提供され、ここで把持用部材28は、好ましくは規定の押圧力下で管6とプラグ8を互いに圧迫し合うために提供されており、溶接機26は、把持用部材28を介して管6とプラグ8の間に電流を印加するための電源30を含んでいる。
【0067】
電気抵抗溶接は、直流電流、交流電流またはパルス電流を印加することによって行なわれる。好ましくは、抵抗溶接は、交流電流を印加することによって実施される。直流電流またはパルス電流(例えばコンデンサからの放電により得られる)の使用も企図され得る。
【0068】
好ましくは、各プラグ8の電気抵抗溶接は、10kA~20kAの値で電流を印加することによって実施される。
【0069】
好ましくは、各プラグ8の電気抵抗溶接は、200daN~400daN、好ましくは250daN~350daNの押圧力下で実施される。
【0070】
好ましくは、各プラグ8の電気抵抗溶接は、10ms~30msの持続時間にわたり電流を印加することによって実施される。
【0071】
好ましくは、各プラグ8の電気抵抗溶接は、管6とプラグ8のそれらの界面における温度が1300℃~1600℃となるような形で実施される。
【0072】
有利には、電気抵抗による溶接は、溶接の終りで管6とプラグ8が、寸法の特徴が制御下にありチェックされている溶接ビードを有するような形で実施される。
【0073】
換言すると、溶接の終りで、管6およびプラグ8は、燃料集合体の構造的要素と適合する形状を有する。
【0074】
このような状況は、例えば印加される電流のタイプ(直流電流、交流電流またはパルス電流)、電流のアンペア数、電流の印加持続時間および管6とプラグ8を互いに圧迫し合うために使用されかつ、該当する場合には電流の印加中維持される押圧力、ならびに把持用部材28の性質および幾何形状を制御することによって達成される。
【0075】
詳細には組合せの形で取り上げた前述の通りの値範囲は、所望の温度範囲の維持、ひいては電気抵抗溶接の達成を可能にする。
【0076】
溶接線に沿った溶接ビードの寸法を制御することによって、詳細には材料の除去に関与する機械的または化学的プロセス、例えばバリ取りおよび研磨などによって、溶接線を再加工する作業を実施する必要性が回避され、管コーティング16、および該当する場合にはプラグコーティング24を保存することが可能となる。
【0077】
したがって、管6の一方の端部から他方の端部まで管6の全長にわたり管コーティング16が具備された管6を有する棒を得ることが可能である。該当する場合、各プラグ8にプラグコーティング8が具備されている場合、被覆4全体(すなわち管6と各プラグ8)がこうしてコーティングされ、外部環境から効率良く保護される。
【0078】
詳細には、プラグコーティング24が具備された各プラグ8のプラグコーティング24および管コーティング16は、管6とプラグ8の間の界面で隣接している。
【0079】
管コーティング16とプラグコーティング24が連続している実施例において、溶接の後、プラグコーティング24と管コーティング16は共に、管6とプラグ8上において、詳細には管6とプラグ8の間の界面で連続的に延在する、連続的コーティングを形成する。
【0080】
管コーティング16が連続しており各プラグ8に連続的プラグコーティング24が具備されている場合、管コーティング16とプラグコーティング24は、管6と各プラグ8の間の界面でコーティング連続性を伴って、管6の全長にわたりかつプラグ8上に延在する、被覆4を連続的にカバーする被覆コーティングを形成する。
【0081】
プラグコーティング24を具備した各プラグ8は、管6とプラグ8の間の界面の形状に影響を及ぼすことなく、および/または、詳細には、材料の除去に関与する機械的または化学的プロセスにより管6とプラグ8の間の界面を再加工することなく、管6上に溶接される。
【0082】
その上、該製造方法は、管6の材料、管コーティング16の材料、プラグ8の材料、および該当する場合にはプラグ8をカバーするプラグコーティング24の材料の間で、管6とプラグ8の間の接合部において共晶を形成することなく、管6に各プラグ8を取付けるために使用可能である。
【0083】
詳細には、管6および/またはプラグ8がジルコニウム系材料製でありかつ管コーティング16および/または考えられるプラグコーティング24がクロム系材料製である場合、核燃料棒2は、管6とプラグ8の間の接続部にいかなるクロム-ジルコニウム共晶(Cr-Zr)も有さない。好ましくは、核燃料棒2を形成するために前述の通りに管6上に2つのプラグ8が取付けられる。
【0084】
プラグ8の取付け、ここではペレット10の形態の核燃料の挿入、および該当する場合にはばね12の挿入は、逐次的に実施される。
【0085】
例えば、プラグ8の一方が管6上に取付けられ、その後核燃料、および該当する場合にはばね12が、管6内に挿入され、次に他方のプラグ8が管6に取付けられる。
【0086】
好ましくは、最初に取付けられるプラグ8は、ばね12とは反対側に位置するプラグ8である。その後、核燃料そして次にばね12が管6内に挿入され、その後他方のプラグ8が管6に取付けられる。
【0087】
オプションとして、追加の要素が管6内に挿入される。管6内に挿入できる追加の要素は、ばね12が位置設定されている端部とは反対側の管6の端部に位置するプラグ8とペレットカラム10との間に位置設定されるように意図された管状シムである。詳細には、シムは、ばね12とは反対側の棒の端部に第2のプレナムを形成することを可能にする。
【0088】
運転中、核燃料集合体内に挿入された核燃料棒2は、原子炉の炉心の内部で実質的に垂直に配向されている。
【0089】
上部プラグ8と呼ばれるプラグ8の一方は、頂部に位置設定されるように意図されており、プラグ8中の下部プラグ8と呼ばれる他方のプラグは、底部に位置設定されるように意図されている。
【0090】
上部プラグ8は、ばね12に隣接するプラグである。管状シムが具備されている場合、シムは下部プラグ8に隣接している。
【0091】
図1を見れば分かるように、プラグ8のうちの一方または各々は、有利には、例えば核燃料棒を核燃料集合体から引き抜くためにこの核燃料棒を掴持することができるように意図された把持用部材32を含む。
図1において、プラグ8の各々はこのような把持用部材32を有している。
【0092】
したがって、好ましくは、該製造方法は、第1に管6の一方の端部に下部プラグ8を取付けるステップ、その後管6の内部に核燃料およびばね12を挿入するステップ、次に管の他方の端部上に上部プラグ8を取付けるステップを含む。
【0093】
該製造方法の間、管6には、各プラグ8を管6上に取付ける前に管コーティング16が具備され、そしてプラグコーティング24を具備した各プラグ8には、それを管6上に取付ける前にプラグコーティング24が具備される。
【0094】
各プラグ8はその後、管6に溶接されるものの、管6と、プラグコーティング24でコーティングされた各プラグ8との連続的コーティングを得ることが可能であり、管コーティング16とプラグコーティング24は隣接している。
【0095】
該製造方法は、例えばピルガリングプロセスによる管6の生産ステップを含む。
【0096】
該製造方法は、管6上への管コーティング16の被着ステップ、および該当する場合には、そのようなコーティング8が具備される各プラグ8上でのプラグコーティング24の被着ステップを含む。
【0097】
管コーティング16および/または各プラグコーティング24の被着は、例えば物理蒸着、詳細には陰極スパッタリング、さらに一層詳細にはマグネトロンスパッタリングによる物理蒸着によって実施される。このようにして、耐性のある管コーティング16が得られる。
【0098】
管コーティング16および/または各プラグコーティング24のマグネトロンスパッタリングによる物理蒸着は、例えば、直流(DC)マグネトロンスパッタリング、パルス直流(またはDCパルス)マグネトロンスパッタリング、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMSまたはHPPMS)、マグネトロンスパッタリングバイポーラ(MSB)、デュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、アンバランスドマグネトロンスパッタリング(UBM)といった技術のうちの1つまたはそれらの技術のうちの少なくとも2つの組合せにしたがって実施可能である。
【0099】
核燃料棒2は、上述の実施形態に限定されない。
【0100】
図1~3に示された実施形態において、各プラグ8には、プラグ8の露出部分20をカバーするプラグコーティング24が具備されている。
【0101】
一変形形態においては、2つのプラグ8のいずれにもプラグコーティング24が具備されていないか、または2つのプラグ8のうちの一方にだけプラグコーティング24が具備されている。後者の場合、下部プラグ8または上部プラグ8のいずれかが関係する。下部プラグ8と上部プラグ8は、正確に同じ熱応力、化学的応力および中性子応力を受けるわけではなく、したがって、2つのプラグ8のうちの一方のみをコーティングすることが有利であると考えられる。
【0102】
プラグ8のうちの少なくとも一方が、いかなるコーティングも有していない(つまり「コーティングされていない」)場合、各々のコーティングされていないプラグ8は、管6とプラグ8の間の界面の形状に影響を及ぼすことなく、および/または詳細には材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって管6とプラグ8の間の界面を再加工することなく、管6に取付けられ、および詳細には管6上に溶接される。
【0103】
図1~3の実施形態において、核燃料は、核分裂性物質を格納するペレットスタック10の形態で具備されている。
【0104】
一変形形態において、核燃料は、別の形態、例えば粉末の形態で提供される。
【符号の説明】
【0105】
2 核燃料棒
4 被覆
6 管
6A 外側表面
6B 内側表面
8 プラグ
10 ペレットスタック
12 ばね
14 プレナム
16 管コーティング
18 挿入部分
20 露出部分
22 環状表面
24 プラグコーティング
26 溶接機
28 把持用部材
30 電源
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆(4)内に格納された核燃料を含む核燃料棒において、被覆(4)が、管(6)と2つのプラグ(8)を含み、管(6)が、中心軸(A)に沿って延在しかつ2つの端部を有し、各プラグ(8)が、その端部を封止することによって管(6)の対応する端部に取付けられており、管(6)が、管コーティング(16)によってカバーされており、ここで管コーティング(16)が、管(6)の一方の端部から他方の端部まで管(16)の全長にわたり延在している、核燃料棒。
【請求項2】
プラグ(8)のうちの1つまたは各プラグ(8)が、プラグコーティング(24)によって少なくとも部分的にカバーされている、請求項1に記載の核燃料棒。
【請求項3】
管コーティング(16)およびプラグコーティング(24)が、同じ材料でできている、請求項2に記載の核燃料棒。
【請求項4】
プラグコーティング(24)が具備された各プラグ(8)のプラグコーティング(24)および管コーティング(16)が、管(6)とプラグ(8)の間の界面で隣接している、請求項2または3に記載の核燃料棒。
【請求項5】
各プラグ(8)が、コーティングされているか否かに関わらず、管(6)とプラグ(8)の間の界面の形状に影響を及ぼすことなくおよび/または詳細には材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって、管(6)とプラグ(8)の間の界面を再加工することなく、管(6)上に溶接される、請求項
1に記載の核燃料棒。
【請求項6】
管(6)が、ジルコニウム系材料製である、請求項
1に記載の核燃料棒。
【請求項7】
各プラグ(8)が、ジルコニウム系材料製である、請求項
1に記載の核燃料棒。
【請求項8】
管コーティング(16)が、クロム系材料製である、請求項
1に記載の核燃料棒。
【請求項9】
各プラグが、管材料、管コーティング材料、プラグ材料、および該当する場合にはプラグをカバーするプラグコーティング材料の間で、管とプラグ間の接合部において共晶が存在することなく、管上に取付けられている、請求項
1に記載の核燃料棒。
【請求項10】
請求項
1に記載の核燃料棒のための製造方法において、各プラグ(8)が、該当する場合には、プラグコーティング(24)でコーティングされている、管(6)およびプラグ(8)の生産と、管(6)の対応する端部への、プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗溶接による溶接とを含む方法。
【請求項11】
各プラグ(8)が、電気抵抗突合わせ溶接によって管(6)上に溶接されている、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗溶接が、10kA~20kAの電流で実施される、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項13】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗による溶接が、200daN~400da
Nの押圧力下で、管(6)の対応する端部に対してプラグ(8)を適用することによって実施される、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項14】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗による溶接が、250daN~350daNの押圧力下で、管(6)の対応する端部に対してプラグ(8)を適用することによって実施される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項15】
プラグ(8)のうちの少なくとも1つまたは各プラグ(8)の電気抵抗溶接が、10ms~30msの持続時間にわたり電流を印加することによって実施される、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項16】
管(6)と管(6)上に溶接された各プラグ(8)との間の界面を、材料除去に関与する機械的または化学的プロセスによって再加工することなく実施される、請求項
10に記載の製造方法。
【請求項17】
各プラグ(8)が、管(6)の材料、管コーティング(16)の材料、プラグ(8)の材料、および該当する場合にはプラグ(8)をカバーするプラグコーティング(24)の材料の間で、管(6)とプラグ(8)の間の接合部において共晶を形成することなく、管(6)上に溶接される、請求項
10に記載の製造方法。
【国際調査報告】