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特表2023-545183イヌインターロイキン-31受容体アルファに対するイヌ化抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】イヌインターロイキン-31受容体アルファに対するイヌ化抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20231019BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231019BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231019BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231019BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231019BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C07K16/28
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P17/00
A61P37/08
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522849
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021078386
(87)【国際公開番号】W WO2022079139
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/092,294
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/092,296
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/127,184
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/235,257
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/235,258
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】モージー,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユアンチョン
(72)【発明者】
【氏名】サハ,アナスヤ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA30
4C076CC07
4C076CC18
4C076FF11
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、イヌIL-31受容体アルファに対する高い結合親和性を有し、イヌIL-31受容体アルファへのイヌIL-31の結合を遮断することができる、イヌIL-31受容体アルファに対するイヌ化ラット抗体を提供する。本発明は、イヌのアトピー性皮膚炎の治療のための抗体の使用をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌインターロイキン-31受容体アルファ(イヌIL-31RA)に結合する単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、6つの相補性決定領域(CDR)のセットを含み、そのうちの3つが、重鎖CDR:CDR heavy 1(HCDR1)、CDR heavy 2(HCDR2)およびCDR heavy 3(HCDR3)であり、そのうちの3つが、軽鎖CDR:CDR light 1(LCDR1)、CDR light 2(LCDR2)およびCDR light 3(LCDR3)であり、
6つのCDRの前記セットが、(i)、(ii)および(iii)からなるセットの群から選択され、セット(i)では、
HCDR1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号18のアミノ酸配列を含み、
セット(ii)では、
HCDR1が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号21のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号23のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号24のアミノ酸配列を含み、
セット(iii)では、
HCDR1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
HCDR1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体が、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102、配列番号103、ならびに配列番号102および配列番号103の両方からなる群から選択されるアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する、請求項2に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
HCDR1が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号21のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号23のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
HCDR1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体が、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する、請求項5に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体およびその抗原結合断片が、イヌIL-31RAに結合し、イヌインターロイキン-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
イヌ化抗体またはそのイヌ化抗原結合断片である、請求項7に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号79、配列番号80、配列番号81および配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号78のアミノ酸配列を含む改変イヌIgG-B(IgG-Bm)を含む重鎖を含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、配列番号90、配列番号91、配列番号92および配列番号93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号88および配列番号89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、
配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項11に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、配列番号97、配列番号98、配列番号99および配列番号100からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号95および配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、
配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項13に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
イヌインターロイキン-31受容体アルファ(イヌIL-31RA)に結合し、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105またはそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合するイヌ抗体もしくはイヌ化抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体が、イヌIL-31RAに結合し、イヌIL-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する、イヌ抗体もしくはイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片の前記重鎖をコードする単離された核酸。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片の前記軽鎖をコードする単離された核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項19】
請求項16に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項20】
請求項18もしくは19、または請求項18もしくは19の両方に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項8~15のいずれか一項に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項22】
アトピー性皮膚炎に関連する掻痒症の遮断を補助する方法であって、それを必要とする被験体に、請求項21に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2020年10月15日に出願された米国仮特許出願第63/092,294号、2020年10月15日に出願された米国仮特許出願第63/092,296号、2020年12月18日に出願された米国仮特許出願第63/127,184号、2021年8月20日に出願された米国仮特許出願第63/235,258号、2021年8月20日に出願された米国仮特許出願第63/235,257号の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2021年10月1日に作成された上記ASCIIコピーは、25071-WO-PCT_SL.txtという名称であり、サイズが103,453バイトである。
【0003】
本発明は、イヌIL-31受容体アルファに対する高い結合親和性を有し、イヌIL-31受容体アルファへのイヌIL-31の結合を遮断することができる、イヌIL-31受容体アルファに対する抗体に関する。本発明はまた、イヌのアトピー性皮膚炎の治療に対する本発明の抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫系は、宿主を感染性疾患および癌から保護するために協働して機能する、常在性細胞および再循環する特殊な細胞のネットワークを含む。免疫系がこの機能を果たす能力は、白血球によって分泌され、インターロイキンとまとめて呼ばれるタンパク質群の生物学的活性に大きく依存する。よく研究されているインターロイキンの中には、インターロイキン-31(IL-31)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-13(IL-13)およびインターロイキン-22(IL-22)として同定された4つの重要な分子がある。IL-4、IL-13、IL-22およびIL-31は、細胞外病原体(例えば、組織または管腔内に存在する寄生生物)に対する保護に必要な免疫応答の発生のための重要なサイトカインであるが、これらのサイトカインはまた、アトピー性皮膚炎を含む、ヒトおよび動物のアレルギー性疾患の病因に関与している。
【0005】
アトピー性皮膚炎(AD)は、再発性の掻痒性および慢性炎症性皮膚疾患であり、ヒトでは、免疫系調節不全および表皮バリア異常を特徴とする。アトピー性皮膚炎の病理学的属性および免疫学的属性は、広範囲な調査の対象となっている[Rahman et al.Inflammation&Allergy-drug target 10:486-496(2011)およびHarskamp et al.,Seminar in Cutaneous Medicine and Surgery 32:132-139(2013)に概説されている]。アトピー性皮膚炎はまた、伴侶動物、特にイヌでは一般的な病態であり、その有病率は、イヌ集団の約10~15%であると推定されている。イヌおよびネコのアトピー性皮膚炎の病因[Nuttall et al.,Veterinary Records 172(8):201-207(2013)に概説されている]は、ヒトのアトピー性皮膚炎の病因との顕著な類似性を示しており、これには、様々な免疫細胞による皮膚浸潤、ならびにIL-31、IL-4およびIL-13が優勢であることを含むCD4Th2極性化サイトカイン環境が含まれる。さらに、IL-22は、アトピー性皮膚炎に特徴的な表皮過形成をもたらす過剰な上皮増殖に関与している。
【0006】
例えば、イヌIL-31に対する抗体は、イヌのアトピー性皮膚炎に関連する掻痒症に対する効果を有することが示されている[米国特許第8,790,651号;米国特許第10,093,731号]。加えて、ヒトIL-31受容体アルファ(IL-31RA)に対する抗体が試験され、ヒトではアトピー性皮膚炎に関連する掻痒症に対する効果を有することが見出されている[Ruzicka,et al.,New England Journal of Medicine,376(9),826-835(2017)]。
【0007】
IL-4およびIL-13は、CD4Th2細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、マクロファージ、肥満細胞および好塩基球を含む多くの細胞型によって分泌され得る密接に関連したタンパク質である。IL-4およびIL-13は、多くの重複する機能を示し、T細胞依存性液性免疫応答の発生に重要である。IL-4は、2つの受容体、すなわち、I型およびII型のIL-4受容体に高い親和性で結合することが知られている。
ヒトIL-4受容体アルファ(IL-4 Rα)に対して生じるモノクローナル抗体が開発されており、これらの抗体の一部は、ヒトでは、アトピー性皮膚炎を治療するためのそれらの治療効果について広範囲に試験されている[例えば、米国特許第2015/0017176号を参照]。さらに近年では、イヌIL-4 Rαに対するイヌIL-4の結合を遮断する、イヌIL-4 Rαに対するイヌ化抗体も開示されている[参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2018/0346580号]。II型IL-4受容体はIL-4受容体α鎖およびIL-13受容体α1鎖からなるため、イヌIL-4およびイヌIL-13の両方がII型イヌIL-4受容体に結合するのを遮断することができ、それによって、アトピー性皮膚炎に関連する炎症を遮断するのに役立つ、イヌIL-4 Rαに対する抗体が得られている[米国特許第2018/0346580号]。
【0008】
IL-10関連T細胞由来誘導因子(IL-TIF)としても知られるインターロイキン-22(IL-22)は、IL-10サイトカインファミリーに属する。IL-22は、ヒトでは、抗CD3刺激時に正常T細胞によって産生される。また、リポ多糖注射時に様々な器官内でマウスIL-22発現が誘導され、IL-22が炎症応答に関与し得ることが示唆されている。IL-22は、IL-10R2(IL-10Rベータとしても知られている)とインターロイキン-22受容体(IL-22R)とのヘテロ二量体複合体からなる受容体複合体に特異的に結合し、それを介してシグナル伝達する[Lee et al.,Pharmacology Research&Perspectives,Pages 1-13(2018:e00434)を参照]。インターロイキン-22受容体は、インターロイキン-22R、アルファ1;IL-22RA1;IL-22R1;zcytor11;およびCRF2-9としても知られている[Xu et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.98(17)9511-9516(2001);Gelebart and Lai,Atlas of Genetics and Cytogenetics 14(12):1106-1110(2010)]。IL-22は、創傷治癒中に上皮細胞増殖を誘導し、その欠乏は、制御されない増殖を可能にし、腫瘍発生を増強し得る[Huber et al.,Nature 491:259-263(2012]。IL-22は、いくつかの肝細胞癌細胞株ではSTAT-1およびSTAT-3を活性化し、急性期タンパク質の産生をアップレギュレートすることが示されている。インターロイキン-22およびIL-22Rに対する抗体は、IL-22とIL-22Rとの相互作用を遮断し、それによって、上皮増殖をもたらす関連シグナル伝達経路を遮断することによって、抗増殖剤として作用する。
【0009】
アトピー性皮膚炎の治療を補助することが証明されている、および/またはそうすることが有望であることが示されている医薬品には、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤[例えば、米国特許第8,133,899号、米国特許第8,987,283号、国際公開第2018/108969号を参照]、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害剤[例えば、米国特許第8,759,366号を参照]、およびTH2細胞上に発現される化学誘引物質受容体相同分子に対するアンタゴニスト[例えば、米国特許第7,696,222号、米国特許第8,546,422号、米国特許第8,637,541号および米国特許第8,546,422号を参照]が含まれる。
【0010】
しかし、アトピー性皮膚炎の治療に対するいくらかの成功にもかかわらず、イヌのアトピー性皮膚炎の症状のうちの1つ以上に対処することができる代替療法および/またはさらに良好な療法を設計する必要性が依然として存在する。
【0011】
本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることの承認として解釈されないものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第8,790,651号
【特許文献2】米国特許第10,093,731号
【特許文献3】米国特許第2015/0017176号
【特許文献4】米国特許第2018/0346580号
【特許文献5】米国特許第8,133,899号
【特許文献6】米国特許第8,987,283号
【特許文献7】国際公開第2018/108969号
【特許文献8】米国特許第8,759,366号
【特許文献9】米国特許第7,696,222号
【特許文献10】米国特許第8,546,422号
【特許文献11】米国特許第8,637,541号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rahman et al.Inflammation&Allergy-drug target 10:486-496(2011)
【非特許文献2】Harskamp et al.,Seminar in Cutaneous Medicine and Surgery 32:132-139(2013)
【非特許文献3】Nuttall et al.,Veterinary Records 172(8):201-207(2013)
【非特許文献4】Ruzicka,et al.,New England Journal of Medicine,376(9),826-835(2017)
【非特許文献5】Lee et al.,Pharmacology Research&Perspectives,Pages 1-13(2018:e00434)
【非特許文献6】Xu et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.98(17)9511-9516(2001)
【非特許文献7】Gelebart and Lai,Atlas of Genetics and Cytogenetics 14(12):1106-1110(2010)
【非特許文献8】Huber et al.,Nature 491:259-263(2012)
【発明の概要】
【0014】
本発明は、イヌ由来のIL-31受容体アルファ(IL-31RA)に対する、イヌ化抗体を含む新しい哺乳動物抗体を提供する。ある特定の実施形態では、イヌIL-31受容体アルファ(cIL-31RA)に対する哺乳動物抗体は、単離された抗体である。好ましい実施形態では、哺乳動物抗体またはその抗原結合断片は、イヌIL-31RAに結合する。さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体または抗原結合断片は、イヌインターロイキン-31へのイヌIL-31RAの結合も遮断する。特定の実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに対するラット抗体である。さらに特定の実施形態では、哺乳動物抗体は、イヌIL-31RAに対するイヌ化ラット抗体である。
【0015】
したがって、本発明は、イヌIL-31RAに結合し、3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、CDR heavy 1(HCDR1)、CDR heavy 2(HCDR2)およびCDR heavy 3(HCDR3)のセットを含む重鎖と、3つの軽鎖CDR:CDR light 1(LCDR1)、CDR light 2(LCDR2)およびCDR light 3(LCDR3)のセットとを含む哺乳動物抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0016】
ある特定の実施形態では、哺乳動物抗体または抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103のアミノ酸によって構成されるエピトープに、または配列番号102および配列番号103の両方に結合する。関連する実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103、または配列番号102および配列番号103の両方のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0017】
他の実施形態では、哺乳動物抗体または抗原結合断片は、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む。
【0018】
さらに他の実施形態では、哺乳動物抗体または抗原結合断片は、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号29のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号30のアミノ酸配列を含むLCDR3とをさらに含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する。関連する実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0019】
具体的な実施形態では、イヌIL-31RAに対する哺乳動物抗体はラット抗体である。特定の実施形態では、イヌIL-31RAに対する哺乳動物抗体は、イヌ化ラット抗体である。ある特定の実施形態では、イヌ化抗体は、IgG-D cFcを含む重鎖を含むが、天然に存在するIgG-Dヒンジ領域は、配列番号79のアミノ酸配列を含むヒンジ領域によって置換されている。他の実施形態では、イヌ化抗体は、IgG-D cFcを含む重鎖を含むが、天然に存在するIgG-Dヒンジ領域は、配列番号80のアミノ酸配列を含むヒンジ領域によって置換されている。さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、IgG-D cFcを含む重鎖を含むが、天然に存在するIgG-Dヒンジ領域は、配列番号81のアミノ酸配列を含むヒンジ領域によって置換されている。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、IgG-D cFcを含む重鎖を含むが、天然に存在するIgG-Dヒンジ領域は、配列番号82のアミノ酸配列を含むヒンジ領域によって置換されている。
【0020】
ある特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号78のアミノ酸配列を含む改変イヌIgG-B(IgG-Bm)を含む重鎖を含む。代替的な実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含む非改変イヌIgG-Bを含む重鎖を含む。
【0021】
組成物のある特定の実施形態では、イヌIL-31RA(cIL-31RA)に対するイヌ化抗体は、配列番号88または配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号90、配列番号91、配列番号92または配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する。関連する実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。本発明は、これらのイヌ化抗体の抗原結合断片をさらに提供する。
【0022】
特定の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。
さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらになお好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0023】
組成物のある特定の実施形態では、cIL-31RAに対するイヌ化抗体は、配列番号94、配列番号95、配列番号96または配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号97、配列番号98または配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103のアミノ酸によって構成されるエピトープに、または配列番号102および配列番号103の両方に結合する。関連する実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103、または配列番号102および配列番号103の両方のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0024】
本発明は、これらのイヌ化抗体の抗原結合断片をさらに提供する。
【0025】
他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103のアミノ酸によって構成されるエピトープに、または配列番号102および配列番号103の両方に結合する。関連する実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103、または配列番号102および配列番号103の両方のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0026】
さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103のアミノ酸によって構成されるエピトープに、または配列番号102および配列番号103の両方に結合する。関連する実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103、または配列番号102および配列番号103の両方のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0027】
さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。さらに他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。なお他の実施形態では、イヌ化抗体は、配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。具体的な実施形態では、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102もしくは配列番号103、または配列番号102および配列番号103の両方のアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらに好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上に結合する。
【0028】
本発明は、これらのイヌ化抗体の全部の抗原結合断片をさらに提供する。
【0029】
本発明は、イヌインターロイキン-31受容体アルファ(イヌIL-31RA)に結合し、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101、もしくは配列番号102、もしくは配列番号103、もしくは配列番号104、もしくは配列番号105、またはそれらの任意の組合せのアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片(イヌ化抗体、イヌ抗体またはその抗原結合断片を含む)をさらに提供し、該抗体は、イヌIL-31RAに結合し、イヌIL-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する。
【0030】
ある特定の実施形態では、単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片(イヌ化抗体、イヌ抗体またはその抗原結合断片を含む)は、
【0031】
イヌIL-31RAに特異的を以って結合し、抗体は、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101、もしくは配列番号102、もしくは配列番号103、もしくは配列番号104、もしくは配列番号105、またはそれらの任意の組合せのアミノ酸配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基、好ましくは1~3つのアミノ酸残基、さらに好ましくは2~5つのアミノ酸残基、および/またはさらになお好ましくは3~8つのアミノ酸残基もしくはそれ以上のアミノ酸残基に結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、イヌIL-31RAに結合し、イヌIL-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する。
【0032】
本発明はまた、CDR、イヌ化抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖、および/またはイヌ化抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖をコードする、単離された核酸を含む核酸を提供する。
【0033】
したがって、本発明は、本発明の哺乳動物抗体またはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、CDR heavy 1(HCDR1)、CDR heavy 2(HCDR2)およびCDR heavy 3(HCDR3)のセットをコードする核酸をさらに提供する。好ましい実施形態では、核酸は、本発明のイヌ化抗体またはその抗原結合断片の3つの重鎖相補性決定領域(CDR)、CDR heavy 1(HCDR1)、CDR heavy 2(HCDR2)およびCDR heavy 3(HCDR3)のセットをコードする。
【0034】
この種のある特定の実施形態では、核酸は、配列番号13のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号14のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号15のアミノ酸配列を含むHCDR3とをコードする。この種の別の実施形態では、核酸は、配列番号19のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR3とをコードする。この種のさらに別の実施形態では、核酸は、配列番号25のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むHCDR3とをコードする。
【0035】
本発明はまた、本発明の哺乳動物抗体またはその抗原結合断片の3つの軽鎖相補性決定領域(CDR)、CDR light 1(LCDR1)、CDR light 2(LCDR2)およびCDR light 3(LCDR3)のセットをコードする核酸を提供する。この種のさらに具体的な実施形態では、核酸は、配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列を含むLCDR3とをコードする。この種の別の実施形態では、核酸は、配列番号22のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むLCDR3とをコードする。この種のさらに別の実施形態では、核酸は、配列番号28のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号29のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号30のアミノ酸配列を含むLCDR3とをコードする。
【0036】
本発明は、本発明の哺乳動物抗体またはその抗原結合断片の重鎖をコードする核酸をさらに提供する。本発明はまた、本発明の哺乳動物抗体またはその抗原結合断片の軽鎖をコードする核酸を提供する。さらに、本発明は、本発明の核酸のうちの1つ以上を含む発現ベクター、およびそのような発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0037】
本発明はまた、薬学的に許容される担体および/または希釈剤とともに、本発明のイヌ化抗体およびその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。本発明は、アトピー性皮膚炎を治療する方法であって、アトピー性皮膚炎を有するイヌに前述の組成物の1つを投与することを含む方法をさらに提供する。特定の実施形態では、本発明は、アトピー性皮膚炎に関連する掻痒症の遮断を補助する方法であって、それを必要とするイヌに、本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0038】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面の簡単な説明および詳細な説明を参照することによってさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】イヌIL-31に結合する能力について、イヌIL-31RAの細胞外ドメイン(ECD)を試験した。結果は、イヌIL-31RA ECDが、ビオチン化イヌIL-31に用量依存的に結合することを示している。
図2A】イヌIL-31RAに対する反応性について、イヌIL-31RAに対する選択したラットmAbを試験した。図2A:4G7(●)、20B8(■)、22B4(▲)、27A10(▼)およびラットIgG2a/カッパ(◆)対照。
図2B】イヌIL-31RAに対する反応性について、イヌIL-31RAに対する選択したラットmAbを試験した。図2B:38B6(●)、48B1(■)、49D3(▲)およびラットIgG2a/カッパ(◆)対照。
図2C】イヌIL-31RAに対する反応性について、イヌIL-31RAに対する選択したラットmAbを試験した。図2C:10A12(■)、44E2(▼)およびラットIgG2a/カッパ(◆)対照。
図2D】イヌIL-31RAに対する反応性について、イヌIL-31RAに対する選択したラットmAbを試験した。図2D:47F3(●)、51G4(■)およびラットIgG2a/カッパ(▼)対照。
図2E】イヌIL-31RAに対する反応性について、イヌIL-31RAに対する選択したラットmAbを試験した。結果は、選択したラットmAbが、イヌIL-31RAに用量依存的に結合することを示している。試験した14のラットモノクローナル抗体はいずれも、イヌIL-31RAに対する強い結合反応性を有する。図2E:7D7(●)、28F12(■)、53B3(▲)ならびにラットIgG2a/カッパ(X)対照およびラットIgG2b/カッパ(◆)対照。
図3】ELISAによって、イヌIL-31RAへのイヌIL-31の結合を遮断する能力について、選択したラットmAbを試験した。結果は、選択したmAbのいくつかが、イヌIL-31RAへのイヌIL-31の結合を用量依存的に遮断することができるが、他のものは遮断することができなかったことを示した。 図3は、抗体:4G7(●)、28F12(▲)、44E2(▼)、48B1(■)ならびにラットIgG2a/カッパ(△)対照およびラットIgG2b/カッパ(∇)対照を示す。
図4】IL-31誘導性STAT-3リン酸化について、IL-31受容体複合体を発現するBa/f3-OI細胞を試験した。結果は、STAT-3リン酸化がBa/f3-OI細胞(■)内でIL-31によって用量依存的に誘導されたことを示しており、(i)イヌIL-31受容体複合体が細胞表面上で首尾よく発現されること、(ii)IL-31受容体へのイヌIL-31の結合が内因性STAT3リン酸化を刺激し得ること、および(iii)次いで、その下流のシグナル伝達経路を開始させることを暗示している。対照としてBa/f3細胞(●)を使用した。
図5】Ba/f3-OI細胞内のIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害。 結果は、抗体4G7(●)および44E2(▲)によるIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示す。cIL-31を含む培地(X)または含まない培地(+)を対照として使用した。
図6A】ELISAによって評価した場合のラムダ(L)軽鎖またはカッパ(k)軽鎖のいずれかを含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体の結合を示す。図6Aは、ELISAによって評価した場合のラムダ(L)軽鎖を含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体(cA12)の結合を示す。キメララット/イヌ化:キメラ10A12[●]、イヌ化10A12VH1VL5[∇]、イヌ化10A12VH1VL6[■]、イヌ化10A12VH2VL5[▲]およびイヌ化10A12VH2VL6[▼]。
図6B】ELISAによって評価した場合のラムダ(L)軽鎖またはカッパ(k)軽鎖のいずれかを含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体の結合を示す。図6Bは、ELISAによって評価した場合のカッパ(k)軽鎖を含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体(28F12)の結合を示す。キメララット/イヌ化:キメラ28F12[●]、イヌ化28F12VH1VK3[■]、イヌ化28F12VH1VK4[▲]、イヌ化28F12VH2VK2[▼]、イヌ化28F12VH2VK3[∇]およびイヌ化28F12VH2VK4[△]。
図6C】ELISAによって評価した場合のラムダ(L)軽鎖またはカッパ(k)軽鎖のいずれかを含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体の結合を示す。図6Cは、ELISAによって評価した場合のカッパ(k)軽鎖を含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体(44E2)の結合を示す。キメララット/イヌ化:キメラ44E2[●]、イヌ化44E2VH2VK1[■]、イヌ化44E2VH2VK2[▲]、イヌ化44E2VH5VK1[▼]、イヌ化44E2VH5VK2[∇]およびイヌ化44E2VH4VK1[△]。結果は、イヌ化抗イヌIL-31RA抗体がイヌIL-31RAに結合することを示す。
図7A】cIL-31RA抗体によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示すグラフである。図7Aは、cIL-31RA抗体(c10A12)によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示す。キメララット/イヌ化:キメラ10A12[●]およびイヌ化10A12VH2VL6[■]。
図7B】cIL-31RA抗体によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示すグラフである。図7Bは、cIL-31RA抗体(c28F12)によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示す。キメララット/イヌ化:キメラ28F12[●]、イヌ化28F12VH2K2[■]およびイヌ化28F12VH2VK3[▲]。
図7C】cIL-31RA抗体によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示すグラフである。STAT-3リン酸化を阻害する能力について、イヌ化10A12、イヌ化c28F12およびイヌ化44E2と呼ばれる3つの異なるイヌ化モノクローナル抗イヌIL-31RA抗体を評価した。図7Cは、cIL-31RA抗体(c44E2)によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示す。キメララット/イヌ化:キメラc44E2[●]、イヌ化44E2VH2VK1[■]、イヌ化44E2VH2VK2[▲]およびイヌ化44E2VH5VK2[▼]。データは、3つの抗体がいずれも、IL-31の存在下でSTAT-3リン酸化の用量依存的阻害をもたらすことを示す。
図8A】それぞれ抗体10A12、28F12および44E2についてイヌIL-31RA上のエピトープを示す。図8Aは、それぞれ配列番号104および配列番号105のアミノ酸配列を示す。
図8B】それぞれ抗体10A12、28F12および44E2についてイヌIL-31RA上のエピトープを示す。図8Bは、配列番号101のアミノ酸配列を示す。
図8C】それぞれ抗体10A12、28F12および44E2についてイヌIL-31RA上のエピトープを示す。図8Cは、それぞれ配列番号102および配列番号103のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
アトピー性皮膚炎のためのさらに良好な治療法の必要性に応えて、本発明は、アトピー性皮膚炎に関連する皮膚炎症に対して顕著な効果を達成することができる製剤および方法を提供する。
【0041】
略語
本発明の詳細な説明および実施例を通して、以下の略語が使用される:
ADCC 抗体依存性細胞傷害
CDC 補体依存性細胞傷害
CDR Kabatナンバリングシステムを使用して定義される、免疫グロブリン可変領域内の相補性決定領域
EC50 50%の効果または結合をもたらす濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着測定法
FR 抗体フレームワーク領域:CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域
IC50 50%の阻害をもたらす濃度
IgG 免疫グロブリンG
Kabat Elvin A.Kabat[Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)]によって開発された免疫グロブリンのアライメントおよびナンバリングシステム
mAb モノクローナル抗体(同じくMabまたはMAb)
V領域 異なる抗体間で配列が可変である、IgG鎖のセグメント。
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VL 免疫グロブリンラムダ軽鎖可変領域
VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
【0042】
定義
本発明がさらに容易に理解され得るように、特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0043】
添付の特許請求の範囲を含む本明細書で使用される場合、単語の単数形、例えば、「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、それらの対応する複数の言及を含む。
【0044】
「投与」および「治療」は、動物、例えば、イヌ被験体、細胞、組織、器官または生体体液に適用される場合、外因性の医薬品、治療剤、診断剤または組成物と動物、例えば、イヌ被験体、細胞、組織、器官または生体体液との接触を指す。細胞の処理は、試薬と細胞との接触、および流体が細胞と接触している場合、試薬と流体との接触を包含する。
【0045】
「投与」および「処理」はまた、例えば、試薬、診断化合物、結合化合物または別の細胞による細胞のインビトロおよびエクスビボ処理を意味する。用語「被験体」は、任意の生物、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコまたはヒト)、最も好ましくはイヌを含む。
【0046】
「治療(treat)」または「治療すること(treating)」は、治療剤、例えば、本発明の抗体のいずれかを含有する組成物を、例えば、1つ以上の症状を有するか、またはその薬剤が治療活性を有する病態を有することが疑われるイヌ被験体または患者に内部的または外部的に投与することを意味する。典型的には、薬剤は、任意の臨床的に測定可能な程度だけそのような(1または複数の)症状の退縮を誘導するか、またはそのような(1または複数の)症状の進行を阻害することによってであろうとなかろうと、治療された被験体または集団の1つ以上の疾患/病態症状を緩和および/または改善するのに有効な量で投与される。任意の特定の疾患/病態症状を緩和するのに有効な治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、疾患/病態、患者(例えば、イヌ)の年齢および体重、ならびに被験体において所望の応答を誘発する医薬組成物の能力などの因子によって変動し得る。疾患/病態症状が緩和または改善されたかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために獣医または他の熟練した医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価することができる。本発明の実施形態(例えば、治療方法または製造品)は、あらゆる被験体の(1または複数の)標的疾患/病態症状を緩和するのに有効ではない可能性があるが、当技術分野で公知の任意の統計学的検定、例えば、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・ホイットニーによるU検定、クラスカル・ワリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タープストラ検定およびウィルコクソン検定によって決定されるように、統計学的に有意な数の被験体の(1または複数の)標的疾患/病態症状を緩和するはずである。
【0047】
ヒト、獣医学的(例えば、イヌ)被験体または研究被験体に適用される「治療」は、治療的処置、ならびに研究および診断の用途を指す。ヒト、獣医学的(例えば、イヌ)被験体もしくは研究被験体、または細胞、組織もしくは器官に適用される「治療」は、本発明の抗体と、例えば、イヌもしくは他の動物被験体、細胞、組織、生理学的区画または生理学的流体との接触を包含する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「イヌ」は、別段の指定がない限り、あらゆる家畜イヌ、カニス・ルプス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)またはカニス・ファミリアリス(Canis familiaris)を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「ネコ」は、ネコ科の任意のメンバーを指す。この科のメンバーには、野生、動物園および家畜のメンバー、例えば、飼いネコ、純血種および/または雑種の伴侶ネコ、キャットショー用ネコ、実験室用ネコ、クローン化ネコならびにヤマネコまたは野ネコが含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「イヌフレーム」は、本明細書でCDR残基として定義される超可変領域残基以外の、イヌ抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を指す。イヌ化抗体に関して、大部分の実施形態では、天然のイヌCDRのアミノ酸配列は、両鎖において対応する外来CDR(例えば、マウス抗体またはラット抗体由来のもの)によって置換される。イヌ抗体の重鎖および/または軽鎖は、例えば、下記に例示されるように、および/または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,106,607号に開示されるように、イヌ抗体内の外来CDRの立体配座を保存するために、および/またはFc機能を改変するために、いくつかの外来非CDR残基を含有していてもよい。
【0051】
「Fc」と略記される「断片結晶化可能領域」は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体と相互作用する、抗体のCH3-CH2部分に対応する。4つのイヌIgGの各々のイヌ断片結晶化可能領域(cFc)は、Tang et al.によって最初に記載された[Vet.Immunol.Immunopathol.80:259-270(2001);また、Bergeron et al.,Vet.Immunol.Immunopathol.157:31-41(2014)および米国特許第10,106,607号を参照]。
【0052】
本明細書で使用される場合、イヌFc(cFc)「IgG-Bm」は、IgG-Bの配列番号78のアミノ酸配列(下記参照)のように、かつc末端リジン(「K」)を有しない、2つのアミノ酸残基置換D31AおよびN63Aを含むイヌIgG-B Fcである。配列番号77の31位のアスパラギン酸残基(D)および配列番号77の63位のアスパラギン残基(N)はいずれも、IgG-Bmではアラニン残基(A)によって置換されている。これらの2つのアミノ酸残基置換は、天然に存在するイヌIgG-Bの抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)を顕著に減少させるのに役立つ[参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,106,607号を参照]。IgG-Bmに対するさらなるアミノ酸置換も想定され、これはIgG-B内で行われ得るものと並行し、二重特異性抗体におけるヘテロ二量体形成を促進するためのアミノ酸置換を含み得る。
【0053】
IgG-Bのアミノ酸配列、配列番号77は、以下の通りである:
【化1】
【0054】
IgG-Bmのアミノ酸配列、配列番号78を以下に示す。
【化2】
【0055】
本明細書で使用される場合、抗体のアミノ酸配列内の別のアミノ酸残基による「アミノ酸残基の置換(substitution of an amino acid residue)」は、例えば、別のアミノ酸残基によって「アミノ酸残基を置換すること(replacing an amino acid residue)」と等価であり、アミノ酸配列内の特定の位置にある特定のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基に置換されている(replaced)(または置換されている(substituted))ことを示す。そのような置換は、具体的に設計され得、すなわち、例えば、組換えDNA技術によって、アミノ酸配列内の特定の位置でアラニンをセリンによって意図的に置換することができる。あるいは、抗体の特定のアミノ酸残基または一連のアミノ酸残基は、例えば、細胞によって産生された抗体がその抗原上の所与の領域、例えば、エピトープもしくはその一部を含有するものに結合する能力に基づいて、および/または抗体が、置換されているCDRと同じカノニカル構造を保持する特定のCDRを含むために、さらに自然な選択プロセスを介して1つ以上のアミノ酸残基によって置換され得る。そのような置換(substitution)/置換(replacement)は、「変異体」CDRおよび/または変異体抗体をもたらし得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、所望の生物学的活性を示す抗体の任意の形態を指す。抗体は、単量体、二量体またはさらに大きな多量体であり得る。したがって、用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、限定するものではないが、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、イヌ化抗体、完全イヌ抗体、キメラ抗体およびラクダ化単一ドメイン抗体を具体的に包含する。「親抗体」は、意図する用途のための抗体の改変、例えば、イヌ治療用抗体として使用するための抗体のイヌ化の前に、免疫系を抗原に曝露することによって得られる抗体である。
【0057】
本明細書で使用される場合、例えば、その結合パートナー(リガンド)へのイヌ受容体を「遮断する」または「遮断している」またはその「結合を遮断している」、本発明の抗体は、標準的な結合アッセイ(例えば、BIACore(登録商標)、ELISAまたはフローサイトメトリー)で決定される場合、そのイヌリガンドへのイヌ受容体の結合を(部分的または完全に)遮断する抗体であり、逆もまた同様である。
【0058】
典型的には、本発明の抗体または抗原結合断片は、その活性がモルベースで表される場合、(親抗体と比較すると)そのイヌ抗原結合活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、本発明の抗体または抗原結合断片は、親抗体としてのイヌ抗原結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%もしくは100%またはそれ以上を保持する。本発明の抗体または抗原結合断片が、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的または非保存的アミノ酸置換を含み得る(抗体の「保存的変異体」または「機能保存変異体」と呼ばれる)ことも意図される。
【0059】
「単離された抗体」は、精製状態を指し、そのような文脈では、分子が、他の生物学的分子、例えば、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または他の材料、例えば、細胞残屑および増殖培地を実質的に含まないことを意味する。一般に、用語「単離された」は、本明細書に記載の結合化合物の実験的または治療的使用を実質的に妨げる量で存在しない限り、そのような材料が完全に存在しないこと、または水、緩衝液もしくは塩が存在しないことを指すことを意図しない。
【0060】
本明細書で使用される場合、抗体は、イヌIL-31RAのアミノ酸配列の一部を含むポリペプチドに結合するが、イヌIL-31RAの配列のその部分を欠く他のイヌタンパク質には結合しない場合、所与の抗原配列(この場合、イヌIL-31RAのアミノ酸配列の一部)を含むポリペプチドに特異的に結合すると言われる。例えば、イヌIL-31RAを含むポリペプチドに特異的に結合する抗体は、イヌIL-31RAのFLAG(登録商標)タグ付き形態に結合し得るが、他のFLAG(登録商標)タグ付きイヌタンパク質には結合しない。抗体、または抗体の抗原結合部位に由来する結合化合物は、そのイヌ抗原、またはその変異体もしくはムテインに対して、試験された任意の他のイヌ抗原に対する親和性の少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも20倍、さらになお好ましくは少なくとも100倍の親和性を有する場合、そのイヌ抗原、またはその変異体もしくはムテインに「特異性を以って」結合する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、第1の抗体由来の可変ドメインと、第2の抗体由来の定常ドメインとを有する抗体であり、第1の抗体と第2の抗体とは異なる種に由来する。[米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)]。典型的には、可変ドメインは、齧歯類などの実験動物由来の抗体(「親抗体」)から得られ、定常ドメイン配列は、動物被験体抗体、例えば、ヒトまたはイヌから得られ、その結果、得られたキメラ抗体は、親(例えば、齧歯類)抗体よりも、ヒトまたはイヌ被験体においてそれぞれ有害な免疫応答を誘発する可能性が低くなる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「イヌ化抗体」は、イヌ抗体および非イヌ(例えば、ラット)抗体の両方由来の配列を含有する抗体の形態を指す。一般に、イヌ化抗体は、少なくとも1つ以上、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、ここで、超可変ループの全部または実質的に全部は、非イヌ免疫グロブリン(例えば、以下に例示されるような6つのCDRを含む)のものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全部または実質的に全部(および典型的には残りのフレームの全部または実質的に全部)は、イヌ免疫グロブリン配列のものである。本明細書で例示されるように、イヌ化抗体は、イヌフレームまたは改変イヌフレームとともに、ラット抗イヌ抗原抗体由来の3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRの両方を含む。改変イヌフレームは、例えば、イヌ抗原へのその結合、および/またはイヌ抗原の天然結合パートナーへのそのイヌ抗原の結合を遮断する能力を増加させるために、イヌ化抗体の有効性をさらに最適化する、本明細書に例示される1つ以上のアミノ酸変化を含む。
【0063】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、インタクトな抗体は2つの結合部位を有する。二機能性抗体または二重特異性抗体を除いて、2つの結合部位は一般に同じである。典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、フレームワーク領域によってアライメントされ、特定のエピトープへの結合を可能にする。一般に、N末端からC末端に向かって、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方が、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1-75(1978);Kabat,et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);Chothia,et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)またはChothia,et al.,Nature 342:878-883(1989)]の定義に従う。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「超可変領域」は、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメイン内のLCDR1、LCDR2およびLCDR3ならびに重鎖可変ドメイン内のHCDR1、HCDR2およびHCDR3)由来のアミノ酸残基を含む。[抗体のCDR領域を配列によって定義するKabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい。また、抗体のCDR領域を構造によって定義するChothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)を参照されたい]。本明細書で使用される場合、用語「フレームワーク」残基または「FR」残基は、本明細書でCDR残基として定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。
【0065】
イヌIgGの4つの公知のIgG重鎖サブタイプが存在し、それらは、IgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-Dと呼ばれる。2つの公知の軽鎖サブタイプは、ラムダおよびカッパと呼ばれる。本発明の具体的な実施形態では、イヌIL-31RAに結合することに加えて、本発明のその抗原に対するイヌ抗体またはイヌ化抗体は、最適には以下の2つの属性を有する:
1.抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)などのエフェクター機能の欠如、ならびに
2.プロテインAクロマトグラフィーに基づくものなどの業界標準技術を使用して、大規模で容易に精製されること。
【0066】
天然に存在するイヌIgGアイソタイプはいずれも、両基準を満たさない。例えば、IgG-Bは、プロテインAを使用して精製することができるが、高レベルのADCC活性を有する。一方、IgG-Aは、プロテインAに弱く結合するが、ADCC活性も示す。
さらに、IgG-DはADCC活性を示さないが、IgG-CもIgG-DもプロテインAカラムを用いて精製することはできない。(IgG-Cは、かなりのADCC活性を有する)。本発明がこれらの問題に対処する1つの方法は、ADCCなどのエフェクター機能を欠き、業界標準のプロテインAクロマトグラフィーを使用して容易に精製され得る、本発明の抗原に特異的な本発明の改変イヌIgG-B抗体を提供することによる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「鎮痒剤」は、かゆみを阻害、軽減および/または予防する傾向がある化合物、高分子および/または製剤である。鎮痒剤は、かゆみ止め薬と口語的に呼ばれる。
【0068】
本明細書で使用される場合、「鎮痒抗体」は、特にアトピー性皮膚炎に関して、ヒト、イヌおよび/またはネコなどの哺乳動物を含む動物では、鎮痒剤として作用することができる抗体である。特定の実施形態では、鎮痒抗体は、IL-31またはその受容体IL-31RAなどのIL-31シグナル伝達経路の特定のタンパク質に結合する。その対応する抗原(例えば、IL-31またはIL-31RA)への鎮痒抗体の結合は、例えば、IL-31とIL-31RAとの結合を阻害し、この経路の良好なシグナル伝達を妨害および/または防止し、それによって、IL-31シグナル伝達経路によって普通なら引き起こされるかゆみを阻害、軽減および/または予防する。
【0069】
本明細書で使用される「相同性」は、2つのポリヌクレオチド配列間または2つのポリペプチド配列が最適にアライメントされた際のそれらの間の配列類似性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が同じ塩基またはアミノ酸残基によって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占められている場合、該分子はその位置で相同である。相同性のパーセントは、比較した位置の総数×100で割った、2つの配列が共有する相同位置の数である。例えば、配列が最適にアライメントされた際に、2つの配列内の位置10個のうちの6個が一致するかまたは相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般に、比較は、2つの配列が最大パーセントの相同性をもたらすようにアライメントされた際に行われる。配列同一性とは、2つの配列が最適にアライメントされた際に、2つのポリペプチドのアミノ酸が同等の位置で同じである程度を指す。本明細書で使用される場合、両配列のアミノ酸残基が同一である場合、1つのアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列に対して100%「同一」である。
【0070】
したがって、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基の50%が同一である場合、アミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列と50%「同一」である。配列比較は、所与のタンパク質、例えば、比較されるタンパク質、またはポリペプチドの一部に含まれるアミノ酸残基の連続したブロックに対して行われる。特定の実施形態では、普通なら2つのアミノ酸配列間の対応を変更する可能性がある選択された欠失または挿入が考慮に入れられる。配列類似性には、同一の残基、および同一でない生化学的に関連するアミノ酸が含まれる。同様の特性を共有し、交換可能であり得る生化学的に関連するアミノ酸。
【0071】
「保存的に改変された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく変化を頻繁に加えることができるような、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖立体配座および剛性など)を有する他のアミノ酸によるタンパク質内のアミノ酸の置換を指す。当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域内の単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識している[例えば、Watson et al.,Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.;1987)を参照]。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。例示的な保存的置換を直下の表Aに示す。
【0072】
【表1】
【0073】
本発明の抗体の機能保存的変異体も本発明によって企図される。本明細書で使用される「機能保存的変異体」は、所望の特性、例えば、抗原親和性および/または特異性を変化させることなく1つ以上のアミノ酸残基が変化された抗体または断片を指す。そのような変異体には、限定するものではないが、上記の表Aの保存的アミノ酸置換など、同様の特性を有するものによるアミノ酸の置換が含まれる。
【0074】
「単離された核酸分子」は、単離されたポリヌクレオチドが自然界で見出されるか、または自然界では連結されていないポリヌクレオチドに連結されている、ポリヌクレオチドの全部または一部に関連しない、ゲノム、mRNA、cDNAもしくは合成起源またはそれらの何らかの組合せのDNAまたはRNAを意味する。本開示の目的のために、特定のヌクレオチド配列「を含む核酸分子」は、インタクトな染色体を包含しないことを理解されたい。指定された核酸配列「を含む」単離された核酸分子は、指定された配列に加えて、最大10もしくはさらには最大20もしくはそれ以上の他のタンパク質もしくはその一部もしくは断片のコード配列を含み得るか、または列挙された核酸配列のコード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含み得るか、および/またはベクター配列を含み得る。
【0075】
本発明は、本発明の単離されたイヌ化抗体、病態の治療、例えば、イヌのアトピー性皮膚炎の治療における抗体の使用方法を提供する。イヌでは、A、B、CおよびDと呼ばれる4つのIgG重鎖が存在する。これらの重鎖は、IgG-A(またはIgGA)、IgG-B(またはIgGB)、IgG-C(またはIgGC)およびIgG-D(またはIgGD)と呼ばれる、イヌIgGの4つの異なるサブクラスを表す。2つの重鎖の各々は、1つの可変ドメイン(VH)と、CH-1、CH-2およびCH-3と呼ばれる3つの定常ドメインとからなる。CH-1ドメインは、「ヒンジ」あるいは「ヒンジ領域」と呼ばれるアミノ酸配列を介してCH-2ドメインに接続される。
【0076】
これらの4つの重鎖の核酸配列およびアミノ酸配列は、Tang et al.によって最初に同定された[Vet.Immunol.Immunopathol.80:259-270(2001)]。これらの重鎖のアミノ酸配列および核酸配列は、GenBankデータベースからも入手可能である。例えば、IgGA重鎖のアミノ酸配列はアクセッション番号AAL35301.1を有し、IgGBはアクセッション番号AAL35302.1を有し、IgGCはアクセッション番号AAL35303.1を有し、IgGDはアクセッション番号(AAL35304.1)を有する。イヌ抗体はまた、2種類の軽鎖、カッパおよびラムダを含有する。これらの軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列は、GenBankデータベースから入手することができる。例えば、カッパ軽鎖アミノ酸配列はアクセッション番号ABY 57289.1を有し、ラムダ軽鎖はアクセッション番号ABY 55569.1を有する。
【0077】
本発明では、4つのイヌIgG Fc断片の各々のアミノ酸配列は、Tang et al(前出)によって決定されたCH1ドメインおよびCH2ドメインの同定された境界に基づく。イヌIL-31RAに結合するイヌ化ラット抗イヌ抗体には、限定するものではないが、イヌIgG-A重鎖、イヌIgG-B重鎖、イヌIgG-C重鎖およびイヌIgG-D重鎖および/またはイヌカッパ軽鎖もしくはイヌラムダ軽鎖をラット抗イヌIL-31RA CDRとともに含む本発明の抗体が含まれる。したがって、本発明は、イヌIL-31RAに結合し、好ましくはまた、イヌIL-31に対するそのイヌIL-31RAの結合を遮断する単離されたイヌ化ラット抗イヌ抗体を含む、本発明のイヌ化ラット抗イヌ抗体を提供する。
【0078】
したがって、本発明は、イヌ化ラット抗体、および病態の治療、例えば、イヌのアトピー性皮膚炎の治療における本発明の抗体の使用方法をさらに提供する。
【0079】
本発明は、イヌ化抗体を作製するために対応する軽鎖と適合させることができる完全長イヌ重鎖をさらに提供する。したがって、本発明は、本発明のイヌ化ラット抗イヌ抗原抗体(単離されたイヌ化ラット抗イヌ抗体を含む)、および病態の治療、例えば、イヌのアトピー性皮膚炎の治療における本発明の抗体の使用方法をさらに提供する。
【0080】
本発明はまた、1つ以上のエフェクター機能を増大させるために、低下させるために、または排除するためにcFcが遺伝子改変されているイヌ断片結晶化可能領域(cFc領域)を含む本発明の抗体を提供する。本発明の一態様では、遺伝子改変cFcは、1つ以上のエフェクター機能を低下させるかまたは排除する。本発明の別の態様では、遺伝子改変cFcは、1つ以上のエフェクター機能を増大させる。ある特定の実施形態では、遺伝子改変cFc領域は、遺伝子改変イヌIgGB Fc領域である。別のそのような実施形態では、遺伝子改変cFc領域は、遺伝子改変イヌIgGC Fc領域である。特定の実施形態では、エフェクター機能は、増大されるか、低下されるか、または排除される抗体依存性細胞傷害(ADCC)である。別の実施形態では、エフェクター機能は、増大されるか、低下されるか、または排除される補体依存性細胞傷害(CDC)である。さらに別の実施形態では、cFc領域は、ADCCおよびCDCの両方を増大させるか、低下させるか、または排除するように遺伝子改変されている。
【0081】
エフェクター機能を欠く、イヌIgGの変異体を生成するために、多数の変異イヌIgGB重鎖が生成された。これらの変異体は、重鎖アミノ酸配列のFc部分に、以下の単一または組合せの置換、すなわち、P4A、D31A、N63A、G64P、T65A、A93GおよびP95Aのうちの1つ以上を含み得る。変異体重鎖(すなわち、そのようなアミノ酸置換を含有する)は、発現プラスミドにクローニングされ、軽鎖をコードする遺伝子を含有するプラスミドとともにHEK 293細胞にトランスフェクトされる。インタクトな抗体が、HEK 293細胞から発現および精製され、次いで、免疫エフェクター機能の媒介に関するそれらの可能性について評価するために、FcγRIおよびC1qへの結合について評価され得る。[参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,106,607号を参照。]
【0082】
本発明はまた、その天然のIgG-Dヒンジ領域の代わりに、以下からのヒンジ領域を含む改変イヌIgG-Dを提供する:
【化3】
【0083】
あるいは、IgG-Dヒンジ領域は、セリン残基をプロリン残基によって置換することによって、すなわち、
【化4】
によって遺伝子改変され得る(下線を引かれ、太字のプロリン残基(P)により、天然に存在するセリン残基を置換する)。そのような改変は、fabアーム交換を欠くイヌIgG-Dをもたらすことができる。改変イヌIgG-Dは、組換えDNA技術の標準的な方法を使用して構築され得る[例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1982)]。これらの変異体を構築するために、イヌIgG-Dのアミノ酸配列をコードする核酸は、改変IgG-Dをコードするように改変され得る。次いで、改変された核酸配列は、タンパク質発現のために発現プラスミドにクローニングされる。
【0084】
本明細書に記載のイヌ化ラット抗イヌ抗体の6つの相補性決定領域(CDR)は、ラット軽鎖LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むイヌ抗体カッパ(k)軽鎖またはイヌ抗体ラムダ(l)軽鎖と、ラット重鎖HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むイヌ抗体重鎖IgGとを含むことができる。
【0085】
核酸
本発明は、本発明の抗体をコードする核酸をさらに含む(例えば、以下の実施例を参照)。
BLASTアルゴリズムによって比較が行われる場合、本明細書で提供される変化しないCDRを除いて、イヌ化抗体のアミノ酸配列と少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、さらに好ましくは少なくとも約90%同一、最も好ましくは少なくとも約95%同一(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)であるアミノ酸配列を含む免疫グロブリンポリペプチドをコードする核酸も本発明に含まれ、ここで、アルゴリズムのパラメーターは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致を与えるように選択される。本発明は、BLASTアルゴリズムを用いて比較が行われる場合、参照アミノ酸配列のいずれかと少なくとも約70%類似する、好ましくは少なくとも約80%類似する、さらに好ましくは少なくとも約90%類似する、最も好ましくは少なくとも約95%類似する(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)アミノ酸配列を含む免疫グロブリンポリペプチドをコードする核酸をさらに提供し、ここで、アルゴリズムのパラメーターは、それぞれの参照配列の全長にわたってそれぞれの配列間の最大一致を与えるように選択される。
【0086】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列のパーセント同一性は、アライメントのデフォルトパラメーター、および同一性のためのデフォルトパラメーターとともに、C,MacVector(MacVector,Inc.Cary,NC 27519)、Vector NTI(Informax,Inc.MD)、Oxford Molecular Group PLC(1996)およびClustal Wアルゴリズムを使用して決定することができる。これらの市販のプログラムは、同じまたは類似のデフォルトパラメーターを使用して配列類似性を決定するために使用することもできる。あるいは、例えば、デフォルトパラメーターを使用するGCG(Genetics Computer Group,Program Manual for the GCG Package,Version 7,Madison,Wisconsin)のパイルアッププログラムを使用して、デフォルトのフィルター条件下でAdvanced Blast検索を使用することができる。
【0087】
以下の参考文献は、配列分析に使用されることが多いBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);Gish,W.,et al.,Nature Genet.3:266-272(1993);Madden,T.L.,et al.,Meth.Enzymol.266:131-141(1996);Altschul,S.F.,et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997);Zhang,J.,et al.,Genome Res.7:649-656(1997);Wootton,J.C.,et al.,Comput.Chem.17:149-163(1993);Hancock,J.M.et al.,Comput.Appl.Biosci.10:67-70(1994);ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.”in Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5,suppl.3.M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,(1978);Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.”in Atlas of Protein Sequence and Structure,vol.5,suppl.3.”(1978),M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358(1978),Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,J.Mol.Biol.219:555-565(1991);States,D.J.,et al.,Methods 3:66-70(1991);Henikoff,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919(1992);Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Evol.36:290-300(1993);ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268(1990);Karlin,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(1993);Dembo,A.,et al.,Ann.Prob.22:2022-2039(1994);およびAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.”in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),pp.1-14,Plenum,New York(1997).
【0088】
抗体タンパク質工学
限定ではなく例として、イヌ重鎖定常領域は、IgG-B、または改変cFc、例えば、本明細書で使用されるIgG-Bm[参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第10,106,607号を参照]に由来し得、イヌ軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダに由来し得る。
【0089】
抗体は、例えば、抗体の特性を改善するために、親(すなわち、ラット)モノクローナル抗体の可変ドメイン内のイヌフレームワークおよび/またはイヌフレーム残基に対する改変を含むように操作され得る。
【0090】
イヌ化抗イヌIL-31受容体アルファモノクローナル抗体の構築は、イヌIgGの重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を決定することによって行われ得る。イヌ重鎖およびイヌ軽鎖のDNAおよびタンパク質配列は、当技術分野で公知であり、NCBI遺伝子およびタンパク質データベースを検索することによって得ることができる。上記のように、イヌ抗体については、4つの公知のIgGサブタイプ、すなわち、IgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-D、ならびに2つのタイプの軽鎖、すなわち、カッパおよびラムダが存在する。
【0091】
イヌ化ラット抗イヌIL-31抗体は、当該分野で公知の方法によって組換え産生され得る。本明細書に開示される抗体または断片の発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞およびいくつかの他の細胞株が含まれる。哺乳動物宿主細胞には、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、イヌ細胞、サル細胞、ブタ細胞、ヤギ細胞、ウシ細胞、ウマ細胞およびハムスター細胞が含まれる。どの細胞株が高い発現レベルを有するかを決定することによって、特に好ましい細胞株が選択される。使用され得る他の細胞株には、昆虫細胞株、例えば、Sf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞がある。重鎖またはその抗原結合部分もしくは断片、軽鎖および/またはその抗原結合断片をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞内の抗体の発現、またはさらに好ましくは、宿主細胞が増殖している培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。
【0092】
抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して、培養培地から回収され得る。さらに、産生細胞株からの本発明の抗体(またはそれ由来の他の部分)の発現は、いくつかの公知の技術を使用して増強され得る。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的な手法である。GS系は、欧州特許第0216846号、欧州特許第0256055号および欧州特許第0323997号、ならびに欧州特許出願第89303964.4号に関連して全体的または部分的に説明されている。
【0093】
ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、重鎖定常領域、例えば、イヌ定常領域、例えば、IgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-Dイヌ重鎖定常領域またはその変異体を含む。ある特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、軽鎖定常領域、例えば、イヌ軽鎖定常領域、例えば、ラムダもしくはカッパイヌ軽鎖領域またはその変異体を含む。限定ではなく例として、イヌ重鎖定常領域はIgG-B由来であり得、イヌ軽鎖定常領域はカッパ由来であり得る。
【0094】
エピトープマッピング
抗体とその同族タンパク質抗原との相互作用は、抗体の特異的アミノ酸(パラトープ)と標的抗原の特異的アミノ酸(エピトープ)との結合を介して媒介される。エピトープは、免疫グロブリンによる特異的反応を引き起こす抗原決定基である。エピトープは、抗原の表面上のアミノ酸の群からなる。目的のタンパク質は、異なる抗体によって認識されるいくつかのエピトープを含有し得る。抗体によって認識されるエピトープは、線状エピトープまたは立体配座エピトープとして分類される。線状エピトープは、タンパク質内のアミノ酸の連続配列のストレッチによって形成されるが、立体配座エピトープは、一次アミノ酸配列では不連続である(例えば、遠く離れている)が、三次元タンパク質フォールディング時に一緒にされるアミノ酸から構成される。
【0095】
エピトープマッピングとは、それらの標的抗原上の抗体によって認識されるアミノ酸配列(すなわち、エピトープ)を同定するプロセスを指す。標的抗原上のモノクローナル抗体(mAb)によって認識されるエピトープの同定は、重要な用途を有する。例えば、それは、新しい治療薬、診断薬およびワクチンの開発を補助することができる。エピトープマッピングはまた、最適化された治療用mAbの選択を補助し、それらの作用機序の解明を助けることができる。IL-31受容体アルファ上のエピトープ情報により、固有のエピトープを解明し、ワクチンの保護効果または病原性効果を定義することもできる。エピトープ同定はまた、同定されたペプチドエピトープと担体タンパク質または他の免疫刺激剤との化学的または遺伝的カップリングに基づくサブユニットワクチンの開発をもたらし得る。
【0096】
エピトープマッピングは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用して行われ得、エピトープの疑われる性質(すなわち、線状対立体配座)に応じて、いくつかの方法がエピトープ同定に使用される。線状エピトープのマッピングの方が単純であり、比較的容易に行われる。この目的のために、線状エピトープマッピングのための商業サービスは、多くの場合、ペプチドスキャンを使用する。この場合、標的タンパク質の重複する一連の短いペプチド配列が化学合成され、目的の抗体に結合するそれらの能力について試験される。この戦略は、迅速であり、ハイスループットであり、行うのに比較的安価である。一方、不連続エピトープのマッピングは、比較的技術的に困難であり、モノクローナル抗体とその標的タンパク質とのX線共結晶構造解析、水素-重水素(H/D)交換、酵素消化と組み合わせた質量分析、および当業者に公知の他のいくつかの方法などのさらに特殊な技術を必要とする。
【0097】
エピトープ結合および交差遮断抗体
本発明の抗イヌIL-31RA抗体またはその抗原結合断片には、イヌIL-31RAでは、本明細書に開示される抗体の1つ、例えば、イヌ化抗体を含む、配列番号101のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する28F12抗体、および本明細書でイヌIL-31RA結合について説明される抗体もしくは断片を(部分的または完全に)交差遮断するか、または本明細書でイヌIL-31RA結合について説明される抗体もしくは断片によって(部分的または完全に)交差遮断される任意の抗体または抗原結合断片、ならびにその任意の変異体と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合断片が含まれる。
【0098】
交差遮断抗体および抗原結合断片は、標準的な結合アッセイ(例えば、以下に例示されるようなBIACore(登録商標)、ELISA、またはフローサイトメトリー)では、例えば、28F12抗体と交差競合するそれらの能力に基づいて同定され得る。例えば、組換えイヌIL-31RAタンパク質をプレートに固定化し、抗体の1つを蛍光標識し、非標識抗体が標識抗体の結合と競合する能力を評価する標準的なELISAアッセイを使用することができる。追加的または代替的に、BIAcore(登録商標)分析を使用して、抗体が交差競合する能力を評価することができる。イヌIL-31RAに対する28F12抗体の結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体が、イヌIL-31RAへの結合について28F12抗体と競合することができ、したがって、場合によっては、イヌIL-31RA上で、28F12抗体が結合するのと同じエピトープに結合し得ることを実証する。本発明の抗イヌIL-31RA抗体または断片のいずれかと同じエピトープに結合する抗体およびその断片も、本発明の一部を形成する。
【0099】
医薬組成物および投与
本発明の抗体を含む医薬組成物または無菌組成物を調製するために、これらの抗体を薬学的に許容される担体または賦形剤と混合することができる。[例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照]。
【0100】
治療剤および診断剤の製剤は、例えば、凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液の形態の許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製され得る[例えば、Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照]。一実施形態では、本発明の抗体は、酢酸ナトリウム溶液pH5~6中で適切な濃度に希釈され、NaClまたはスクロースが張性のために加えられる。安定性を高めるために、ポリソルベート20またはポリソルベート80などの追加の薬剤を加えてもよい。
【0101】
単独で、または別の薬剤と組み合わせて投与される抗体組成物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物に対する標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果との間の用量比は、治療指数(LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す抗体が望ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、イヌに使用するための投与量の範囲を考案するのに使用することができる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くない、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形と投与経路とに応じて、この範囲内で変動し得る。
【0102】
投与様式は変動し得る。好適な投与経路には、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、吹送、局所、皮膚、経皮または動脈内が含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、注射などの侵襲的経路によって投与され得る。本発明のさらなる実施形態では、本発明の抗体またはその医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内投与されるか、または吸入、エアロゾル送達によって投与される。非侵襲的経路(例えば、経口;例えば、丸剤、カプセルまたは錠剤)による投与も本発明の範囲内である。
【0103】
組成物は、当技術分野で公知の医療機器を用いて投与され得る。例えば、本発明の医薬組成物は、例えば、プレフィルドシリンジまたは自動注入装置を含む皮下注射針を用いた注射によって投与され得る。本明細書に開示される医薬組成物はまた、無針皮下注射装置、例えば、米国特許第6,620,135号、米国特許第6,096,002号、米国特許第5,399,163号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,064,413号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,790,824号または米国特許第4,596,556号に開示されている装置を用いて投与されてもよい。
【0104】
本明細書に開示される医薬組成物はまた、注入によって投与され得る。医薬組成物を投与する周知のインプラントおよびモジュール形態の例には、制御された速度で薬剤を分配するための植込み型微量注入ポンプを開示している米国特許第4,487,603号、正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号、連続薬物送達のための可変流量植込み型注入装置を開示している米国特許第4,447,224号、マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬物送達システムを開示している米国特許第4,439,196号が挙げられる。他の多くのそのようなインプラント、送達システムおよびモジュールは、当業者に周知である。
【0105】
あるいは、本発明の抗体を全身的様式ではなく局所的様式で、多くの場合、デポー製剤または持続放出製剤で投与してもよい。
【0106】
投与レジメンは、治療用抗体の血清または組織の代謝回転速度、症状のレベル、治療用抗体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近可能性を含むいくつかの要因に依存する。好ましくは、投与レジメンは、標的疾患/病態の改善をもたらすのに十分な治療用抗体を送達しながら、同時に望ましくない副作用を最小限に抑える。したがって、送達される生物製剤の量は、部分的に、特定の治療用抗体、および治療される病態の重症度に依存する。適切な用量の治療用抗体を選択する際の指針が利用可能である[例えば、Wawrzynczak Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK(1996);Kresina(ed.)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY(1991);Bach(ed.)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY(1993);Baert,et al.New Engl.J.Med.348:601-608(2003);Milgrom et al.New Engl.J.Med.341:1966-1973(1999);Slamon et al.New Engl.J.Med.344:783-792(2001);Beniaminovitz et al.New Engl.J.Med.342:613-619(2000);Ghosh et al.New Engl.J.Med.348:24-32(2003);Lipsky et al.New Engl.J.Med.343:1594-1602(2000)を参照]。
【0107】
適切な用量の決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当技術分野で知られているまたは疑われるパラメーターまたは因子を使用して、獣医によって行われる。一般に、用量は、最適用量よりも幾分少ない量で始まり、その後、任意の負の副作用に対して所望のまたは最適な効果が達成されるまで、少しずつ増加される。重要な診断尺度には、症状の診断尺度が含まれる。
【0108】
本明細書で提供される抗体は、連続注入によって、または例えば、連日、週に1~7回、毎週、隔週、毎月、隔月、四半期ごと、半年ごと、毎年などに投与される用量によって提供され得る。用量は、例えば、静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内提供され得るか、または吸入によって提供され得る。総毎週用量は、一般に少なくとも0.05μg/kg体重、さらに一般に少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上である[例えば、Yang,et al.New Engl.J.Med.349:427-434(2003);Herold,et al.New Engl.J.Med.346:1692-1698(2002);Liu,et al.J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451-456(1999);Portielji,et al.Cancer Immunol.Immunother.52:133-144(2003)を参照]。イヌの血清中の本発明の抗体の所定の標的濃度、例えば、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mlまたはそれ以上を達成するための用量も提供され得る。他の実施形態では、本発明の抗体は、10、20、50、80、100、200、500、1000または2500mg/被験体で、毎週、隔週、「4週間ごと」、毎月、隔月または四半期ごとに皮下または静脈内投与される。
【0109】
本明細書で使用される場合、「阻害する(inhibit)」または「治療する(treat)」または「治療(treatment)」は、障害に関連する症状の発症の延期、および/またはそのような障害の症状の重症度の低下を含む。該用語は、既存の制御されないまたは望ましくない症状を改善すること、追加の症状を予防すること、およびそのような症状の根本的な原因を改善または予防することをさらに含む。したがって、該用語は、障害、病態および/もしくは症状を有するか、またはそのような障害、疾患もしくは症状を発症する可能性を有する脊椎動物被験体(例えば、イヌ)に有益な結果が与えられたことを意味する。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」、「治療有効用量」および「有効量」は、単独で、または追加の治療剤と組み合わせて細胞、組織または被験体、例えば、イヌに投与した場合に、疾患もしくは病態の1つ以上の症状、またはそのような疾患もしくは病態の進行の測定可能な改善を引き起こすのに有効な、本発明の抗体の量を指す。治療有効用量は、症状の少なくとも部分的な改善、例えば、関連する医学的病態の治療、治癒、予防もしくは改善、またはそのような病態の治療、治癒、予防もしくは改善の速度の増加をもたらすのに十分な抗体の量をさらに指す。治療有効用量は、組合せに適用される場合、組み合わせて投与されるか、連続的に投与されるか、または同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の組合せ量を指す。有効量の治療薬は、診断手段またはパラメーターの少なくとも10%、通常少なくとも20%、好ましくは少なくとも約30%、さらに好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%の改善をもたらす。有効量はまた、主観的尺度が病態の重症度を評価するために使用される場合に、主観的尺度の改善をもたらすことができる。
【0111】
[実施例]
[実施例1]
IL-31受容体アルファ
ヌクレオチド配列
配列番号1のヌクレオチド配列は、HISタグに融合したイヌIL-31受容体アルファ(cIL-31RA)の細胞外ドメインをコードする。イヌIL-31RA ECD HISタグ付きタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。ヌクレオチド配列を化学合成によって調製し、次いで、HEK-293細胞またはCHO細胞のいずれかの真核細胞内の対応するタンパク質の産生に適した発現プラスミドにクローニングした。
【化5】
【0112】
[実施例2]
IL-31受容体アルファECDの発現および精製
製造業者の推奨に従ってMaxCyte機器を介したエレクトロポレーションを使用して、配列番号1のヌクレオチド配列を含むプラスミドをHEK-293細胞またはCHO細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの数日後、トランスフェクト細胞および非トランスフェクト対照の上清を回収し、遠心して細胞残屑を除去した。製造業者の推奨に従って、トランスフェクト細胞から清澄化された回収された流体をニッケルカラムに通すことによって、HISタグを有するIL-31RAを細胞培養液から精製した。280nmの紫外光の吸光度を測定することによって、精製したタンパク質を定量した。
【化6】
【0113】
[実施例3]
ビオチン化イヌIL-31へのイヌIL-31RAの結合
プロトコル
1.リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で1μg/mLに希釈することによって、IL-31RAタンパク質によって(1または複数の)免疫プレートをコーティングする。100μL/ウェルを加える。(1または複数の)プレートを2~7°で一晩インキュベートする。
2.275μL/ウェルのリン酸緩衝生理食塩水+TWEEN(登録商標)20(PBST)を用いてプレートを3回洗浄する。
3.穏やかに振盪しながら(120±20RPM)、36±2℃で30~45分間かけて、200μL/ウェルのブロッキング緩衝液[PBST中1%脱脂粉乳(NFDM)]を用いてプレートをブロッキングする。
4.275μL/ウェルのPBSTを用いてプレートを3回洗浄する。
5.希釈プレート上でビオチン化IL-31(10μg/mL)をPBST中1%NFDMで3倍希釈し、100μL/ウェルを(1または複数の)免疫プレートに移す。穏やかに振盪しながら(120±20RPM)、36±2℃で30~45分間インキュベートする。
6.275μL/ウェルのPBSTを用いてプレートを3回洗浄する。
7.西洋ワサビペルオキシダーゼ-ストレプトアビジン(HRP-ストレプトアビジン)をPBST中1%NFDMで1:1000の最終希釈に希釈する。
8.100μL/ウェルのHRP-ストレプトアビジンを(1または複数の)免疫プレートに加え、穏やかに振盪しながら(120±20RPM)36±2℃で30~45分間インキュベートする。
9.275μL/ウェルのPBSTを用いてプレートを3回洗浄する。
10.使用直前に、等量の予熱されたTMP 2成分基質を組み合わせる。
11.100μL/ウェルの調製した3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMP)基質を(1または複数の)免疫プレートに加え、穏やかに振盪しながら(120±20RPM)36±2℃で10~15分間暗所でインキュベートする。
12.100μL/ウェルの1M H3PO4を加えることによって、反応を停止させる。
13.マイクロプレートリーダーを使用して、波長450nm、参照波長540nmでプレートを読み取る。
【0114】
[実施例4]
イヌIL-31受容体アルファに対するモノクローナル抗体
3~4週間にわたってイヌIL-31RA ECDを用いてLewisラット2匹を複数回免疫することによって(毎回10μgまたは25μgの抗原/ラットを使用)、イヌIL-31RAに対するモノクローナル抗体(mAb)を産生させた。免疫後、血清を各ラットから回収し、ELISAによってイヌIL-31RAに対して試験した。最も高いIL-31RA ECD反応性を有する、ラットのリンパ節細胞を骨髄腫SP2/0細胞株と融合させて、ハイブリドーマを作製した。融合の約10日後、以下に記載されるプロトコルを使用して、IL-31RA ECDタンパク質をコーティングしたプレート上で、ELISAによって、増殖中のハイブリドーマから得られた上清をスクリーニングした。以下の図2A図2Eに例示されるように、このELISAでは、IL-31RAへの潜在的な結合を示す約260個のクローンを選択し、ラットIgG2a/カッパを陰性対照として使用した。クローンの大部分はOD450>1を有した。
【0115】
ELISAの手順:
1.IL-31RA(PBS緩衝液中1μg/mL)、25μL/ウェルによって、96ウェルハーフエリアプレートをコーティングする。
2.プレートを4℃で一晩インキュベートする。
3.PBST(PBS+0.05%Tween(登録商標)20)を用いてプレートを3回洗浄する
4.ブロッキング緩衝液(5%ウシ胎児血清(FBS)を含むPBS)]、25ul/ウェルを用いて、プレートを室温で30分間ブロッキングする。
5.25ul/ウェルのハイブリドーマ上清を96ウェルプレートに移し、室温で60分間インキュベートする。
6.PBSTを用いてプレートを3回洗浄する。
7.25ul/ウェルの抗ラットHRP、ブロッキング緩衝液中1:4000希釈液をプレートに加え、室温で60分間インキュベートする。
8.PBSTによってプレートを5回洗浄する。
9.2~3分間の比色反応のために、TMB系試薬をプレートに加える。
10.0.16M硫酸を用いて反応を停止させる。
11.プレートリーダーによってプレートを読み取る。
IL-31に結合するイヌIL-31RAに対して惹起された14個のラット抗体を選択した。ラット抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を以下に示す。以下の実施例5では、イヌIL-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する能力について、これらの抗体をさらに試験した。
【化7】
【0116】
[実施例5]
抗IL-31受容体アルファ抗体の遮断活性
下記のブロッキングELISAでは、抗イヌIL-31RAハイブリドーマ上清がIL-31RAへのIL-31の結合を遮断する能力を評価した。
【0117】
プロトコル
1.IL-31RA(PBS緩衝液中1μg/mL)、25μL/ウェルによって、96ウェルハーフエリアプレートをコーティングする。
2.プレートを4℃で一晩インキュベートする。
3.PBST(PBS+0.05%Tween(登録商標)20)によってプレートを3回洗浄する
4.ブロッキング緩衝液(5%FBSを含むPBS)、25ul/ウェルを用いて、プレートを室温で30分間ブロッキングする。
5.25ul/ウェルのハイブリドーマ上清を96ウェルプレートに移し、室温で60分間インキュベートする。
6.PBSTを用いてプレートを3回洗浄する。
7.25μL/ウェルのビオチン化IL31(ブロッキング緩衝液中0.5μg/mL)を移し、室温で60分間インキュベートする。
8.PBSTを用いてプレートを3回洗浄する。
9.25μl/ウェルのストレプトアビジン-HRP、ブロッキング緩衝液中1:5000希釈液をプレートに加え、室温で60分間インキュベートする。
10.PBSTを用いてプレートを5回洗浄する。
11.2~3分間の比色反応のために、TMB系試薬をプレートに加える。
12.0.16M硫酸を用いて反応を停止させる。
13.プレートリーダーによってプレートを読み取る。
【0118】
結果:
IL-31RAへの結合を示した約260個のクローンのうち、20個~25個のクローンのみが、イヌIL-31RAへのイヌIL-31結合の潜在的な遮断も示した。これらのうち、IL-31RAに結合し、かつIL-31RAへのIL-31の結合を遮断する3つのラット抗イヌIL-31RA抗体(44E2、4G7および28F12)の特定の群が同定された。ラットIgG2aおよびラットIgG2bを陰性対照として使用した図3を参照されたい。これらの3つの抗体は、それらのそれぞれのCDRのアミノ酸配列に、ある程度の適度な相同性を示すように思われる。これらのアミノ酸配列も以下の表3に示す。
【化8】
【0119】
イヌIL-31RAに結合し、かつイヌIL-31RAへのイヌIL-31の結合を遮断する6つのラット抗イヌIL-31RA抗体の第2の群が、顕著なアミノ酸配列類似性を有するCDRのセットを含むものとして同定された。これらのアミノ酸配列も以下の表3に示す。
【化9】
【0120】
[実施例6]
イヌ化抗体
イヌ化抗イヌIL-31受容体アルファmAbを産生するために様々な組合せで混合され得るイヌ化重鎖およびイヌ化軽鎖を産生する全体的なプロセスは、以下のスキームを伴う:
i)所望の抗IL-31受容体アルファmAbのCDRを含むVHドメインおよびVLドメインのDNA配列を同定する
ii)所望の抗IL-31RA mAbのH鎖CDRおよびL鎖CDRを同定する
iii)イヌIgGのH鎖およびL鎖に適した配列を同定する
iv)上記の配列のイヌIgGのH鎖およびL鎖の内因性CDRをコードするDNA配列を同定する。
v)内因性イヌH鎖CDRおよび内因性イヌL鎖CDRをコードするDNA配列を、所望の抗IL-31RA CDRをコードするDNA配列によって置換する。さらに、いくつかのイヌフレームワーク残基を所望の抗IL-31受容体アルファmAbフレームワーク領域から選択された残基によって置換していてもよい。
vi)工程(v)からのDNAを合成し、それを好適な発現プラスミドにクローニングし、所望のイヌ化H鎖およびイヌ化L鎖を含有するプラスミドをHEK 293細胞にトランスフェクトする。
vii)発現したイヌ化抗体をHEK 293上清から精製する。
viii)イヌIL-31受容体アルファ鎖への結合について精製イヌ化抗体を試験する。
【0121】
上記で概説した工程の適用により、以下に示すイヌ化H鎖配列およびイヌ化L鎖配列のセットがもたらされ得る。対応する配列番号を以下の表5に列挙する。
【0122】
図6A図6Cは、ELISAによって評価した場合のラムダ(L)軽鎖またはカッパ(K)軽鎖のいずれかを含有するイヌ化抗イヌIL-31RA抗体の結合を示す。結果は、イヌ化抗イヌIL-31RA抗体がイヌIL-31RAに結合することを示す。
【0123】
図7A図7Cは、以下の実施例6に記載されるアッセイを使用する、cIL-31RA抗体によるcIL-31媒介性STAT-3リン酸化の阻害を示すプロットである。STAT-3リン酸化を阻害する能力について、c10A12、c28F12およびc44E2と呼ばれる3つの異なるイヌ化モノクローナル抗イヌIL-31RA抗体を評価した。データは、3つの抗体がいずれも、IL-31の存在下でSTAT-3リン酸化の用量依存的阻害をもたらすことを示す。
【化10】
【0124】
[実施例7]
STAT-3アッセイ
Stat-3は、IL-31に対するヘテロ二量体受容体を含む細胞内で、IL-31によって活性化されることが知られている。イヌIL-31によるSTAT-3の活性化を評価するアッセイを開発するために、IL-31RAおよびOSMRをそれぞれコードするヌクレオチド配列を化学合成によって調製し、次いで、発現ベクターpcDNA3.1にクローニングした。IL-31RAおよびOSMRのヌクレオチド配列をそれぞれ含有するベクターをBa/f3細胞に同時トランスフェクトし、「Ba/f3-OI」として示されるトランスフェクト細胞を抗生物質選択下でプールとして増殖させた。イヌIL-31がSTAT-3活性化を誘導する能力を以下のように試験した。
【0125】
材料:
細胞株:Ba/f3-OI安定プール細胞
マウスIL-3またはイヌIL-31(cIL-31)を含む増殖培地
RPMI 1640 435ml(ThermoFisher、12633-020) FBS 50mL(SAFCカタログ番号12003c-500mL)
2-メルカプトエタノール(50mM)0.5mL(Gibco 31350-010)
100X Pen Strep 5mL(Gibco 15140-122 Lot1734040)
200mM L-Glu 10ml(Gibco 25030-081 Lot1677185)
500ng/mL Geneticin G418(GibcoまたはSigma製) 5ng/mL mIL-3または100ng/mL cIL-31
飢餓培地:mIL-3およびcIL-31を含まない増殖培地
p-STAT3(Tyr705)Assay Kit:PerkinElmer、ALSU-PST3-A-HV
【0126】
手順
細胞培養
1.Ba/f3-OI細胞のバイアルを解凍し、125rpmの37℃ CO2シェーカー内で、mIL-3を含む増殖培地中で細胞を増殖させる。
2.細胞ベースのアッセイを設定する前に、細胞を2~3継代して≧90%の生存率を有する細胞を得る。
3.アッセイを設定するために、細胞を回収し、1×10生存細胞/mLまで飢餓培地に再懸濁する。
4.細胞を96ウェルプレート、50μL/ウェル(約5×10細胞/ウェル)に分注する。
5.希釈プレート内の飢餓培地でcIL-31を3倍希釈し、次いで、連続希釈したcIL-31アリコートの各々の50μLを細胞プレートに移す。
6.細胞プレートを125rpmで1~2時間にわたり、37℃ COシェーカー内で15~30分間インキュベートする。
製造業者の指示によるAlphaLISAアッセイ:
7.細胞を遠心し、上清を吸引し、50~100μL/ウェルの1×溶解緩衝液を加える。1000rpmで振盪しながら、室温で10分間インキュベートする。
8.30μLの細胞溶解物を1/2面積プレートに取り出すか、またはその後の試験のために-80℃で凍結保存する。
9.SureFire Assay:15μL/ウェルのアクセプターミックスを細胞溶解物に加える。プレートを密封し、1000rpmで2分間撹拌し、次いで、室温で1~2時間インキュベートする。
10.15μL/ウェルのドナーミックスを細胞溶解物に加える。密封し、1000rpmで2分間撹拌し、次いで、室温で1~2時間インキュベートする(プレートを4℃で一晩保存することができる。室温で1時間インキュベートした後、翌日プレートを読み取る)
11.プレートを520~620nmでAlphaプレートリーダーを用いて読み取る。
【0127】
結果:
図4に示すように、イヌIL-31は、用量依存的様式でBa/f3-OI細胞内でSTAT-3の活性化を刺激する。
【0128】
[実施例8]
抗イヌIL-31RA抗体の生物学的活性
抗イヌIL-31RA mAbがBa/f3-OI細胞内でSTAT-3の活性化を阻害する能力を以下のように評価する:
1.Ba/f3-OI細胞のバイアルを解凍し、125rpmの37℃ CO2シェーカー内で、mIL-3を含む増殖培地中でBa/f3-OI細胞を増殖させる。
2.細胞ベースのアッセイを設定する前に、細胞を2~3継代して≧90%の生存率を有する細胞を得る。
3.アッセイを設定するために、細胞を回収し、1×10生存細胞/mLまで飢餓培地に再懸濁する。
4.細胞を96ウェルプレート、50μL/ウェル(約5×10細胞/ウェル)に分注する。
5.96ウェルプレート上の一列の飢餓培地中で、200μg/mLの濃度から始めて抗体を3倍希釈する。次いで、各ウェルに5~10μLのcIL-31を加えて、100ng/mLの最終濃度にする。
6.50μLの希釈抗体およびcIL-31混合物を細胞プレートの各ウェルに移し、穏やかに混合する。
7.細胞プレートを125rpmで1~2時間にわたり、37℃ COシェーカー内でインキュベートする。
製造業者の指示によるAlphaLISAアッセイ:(実施例7を参照)
【0129】
結果:
図5に例示されるように、抗体4G7および44E2はともに、イヌIL-31がBa/f3-OI細胞内でSTAT-3の活性化を刺激する能力を阻害する。
【0130】
[実施例9]
質量分析を使用するイヌIL-31受容体アルファエピトープのマッピング
化学的架橋および質量分析検出に基づく方法を使用して、抗イヌIL-31受容体アルファmAbによって認識されるエピトープを同定した[999 Broadway,Suite 305,Saugus,MA 01906-4510にあるCovalX Instrument Incorporated]。イヌIL-31受容体アルファ鎖のエピトープマッピングへのこの技術の適用により、表6に列挙したmAbによって認識されるエピトープが同定された。本明細書に開示される3つの抗体によるイヌIL-31受容体アルファのエピトープマッピングから得られた結果は、mAbが、イヌIL-31受容体アルファの細胞外ドメイン内に存在する特異的ペプチドエピトープを認識することを示している(以下の表6を参照)。
【0131】
注目すべきことに、試験した3つのモノクローナル抗体(mAb)の各々について同定されたエピトープは、著しく異なっていた。以下の表6に示すように、データは、28F12抗体が配列番号101のアミノ酸配列を含む単一エピトープに結合し、該抗体がアミノ酸配列配列番号2の215および225位でアルギニン(R)残基と、ならびに233位でリジン(K)残基と結合することを示す。データは、44E2抗体が、2つの異なるエピトープ、すなわち、配列番号102のアミノ酸配列を含む第1のもの(ここで、該抗体は、アミノ酸配列配列番号2の408位でトレオニン(T)残基と結合する)、ならびに配列番号103のアミノ酸配列を含む第2のエピトープであって、2つの別個の部分を有し、そのうちの1つでは、該抗体が、アミノ酸配列配列番号2の464および472位でセリン(S)残基と、および471位でチロシン(Y)残基と結合し、他方の部分では、該抗体が、アミノ酸配列配列番号2の487位でトレオニン(T)残基と結合する第2のエピトープに結合することをさらに示す。データは、10A12抗体が、2つの異なるエピトープ、すなわち、配列番号104のアミノ酸配列を含む第1のもの(ここで、該抗体は、アミノ酸配列配列番号2の31、34および42位でチロシン(Y)残基と、ならびに39位でトレオニン(T)残基と結合する)、および配列番号105のアミノ酸配列を含む第2のエピトープ(ここで、該抗体は、アミノ酸配列配列番号2の89位でリジン(K)残基と、90位でセリン(S)残基と、93位でトレオニン(T)残基と、および94位でチロシン(Y)残基と結合する)に結合することをさらに示す。
【0132】
配列表
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
【表6】
【0138】
【表7】
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
【配列表】
2023545183000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌインターロイキン-31受容体アルファ(イヌIL-31RA)に結合する単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片であって、
前記抗体が、6つの相補性決定領域(CDR)のセットを含み、そのうちの3つが、重鎖CDR:CDR heavy 1(HCDR1)、CDR heavy 2(HCDR2)およびCDR heavy 3(HCDR3)であり、そのうちの3つが、軽鎖CDR:CDR light 1(LCDR1)、CDR light 2(LCDR2)およびCDR light 3(LCDR3)であり、
6つのCDRの前記セットが、(i)、(ii)および(iii)からなるセットの群から選択され、セット(i)では、
セット(i)では、
HCDR1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号30のアミノ酸配列を含み、
セット(ii)では、
HCDR1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号18のアミノ酸配列を含み、
セット(iii)では、
HCDR1が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号21のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号23のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
HCDR1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体が、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101のアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する、請求項2に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
HCDR1が、配列番号13のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号16のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体が、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号102、配列番号103、ならびに配列番号102および配列番号103の両方からなる群から選択されるアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合する、請求項4に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
HCDR1が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、
HCDR2が、配列番号20のアミノ酸配列を含み、
HCDR3が、配列番号21のアミノ酸配列を含み、
LCDR1が、配列番号22のアミノ酸配列を含み、
LDR2が、配列番号23のアミノ酸配列を含み、
LCDR3が、配列番号24のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体およびその抗原結合断片が、イヌIL-31RAに結合し、イヌインターロイキン-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
イヌ化抗体またはそのイヌ化抗原結合断片である、請求項7に記載の単離された哺乳動物抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
配列番号79、配列番号80、配列番号81および配列番号82からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号78のアミノ酸配列を含む改変イヌIgG-B(IgG-Bm)を含む重鎖を含む、請求項9に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、配列番号90、配列番号91、配列番号92および配列番号93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号88および配列番号89からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、
配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項11に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、配列番号97、配列番号98、配列番号99および配列番号100からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号95および配列番号96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記イヌ化IL-31RA抗体が、
配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号96のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号97のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号98のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖、または
配列番号99のアミノ酸配列を含む軽鎖、および配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項13に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項15】
イヌインターロイキン-31受容体アルファ(イヌIL-31RA)に結合し、イヌIL-31RAに結合した場合、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105またはそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列によって構成されるエピトープに結合するイヌ抗体もしくはイヌ化抗体またはその抗原結合断片であって、
前記抗体が、イヌIL-31RAに結合し、イヌIL-31へのイヌIL-31RAの結合を遮断する、イヌ抗体もしくはイヌ化抗体またはその抗原結合断片。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか一項に記載のイヌ化抗体の鎖をコードする単離された核酸であって、
前記イヌ化抗体の鎖が、イヌ化抗体またはその抗原結合断片の重鎖、イヌ化抗体またはその抗原結合断片の軽鎖、または、イヌ化抗体またはその抗原結合断片の重鎖およびイヌ化抗体またはその抗原結合断片の軽鎖の両方からなる群より選択される、核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
請求項8~15のいずれか一項に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項20】
アトピー性皮膚炎に関連する掻痒症の遮断を補助する方法であって、それを必要とする被験体に、請求項19に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含み、前記被験体が非ヒト動物である方法。
【国際調査報告】