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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(54)【発明の名称】透過率値の動的制御
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G02C7/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523156
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021078518
(87)【国際公開番号】W WO2022079200
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20306224.5
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・フェルミジエ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ジルベール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・グロー
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・プルー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ロプタン
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BE01
(57)【要約】
本開示は、可変透過率眼用レンズの光透過率を制御するための方法、制御ユニット、眼鏡、コンピュータプログラム、及びコンピュータ可読記憶媒体に関し、この方法は、*光センサから装着者の環境の測定された照度を受け取ること(S1)と、*所定の時間間隔中に測定された照度の変化を計算すること(S2)と、*計算された照度の変化を第1の閾値と比較すること(S3)と、*計算された照度の変化が第1の閾値よりも大きい場合、可変透過率眼用レンズの透過率を、現在の透過率値に対応する初期透過率値から第1の目標透過率値まで、透過率が第1の目標透過率値をオーバーシュートする第1のフェーズと、透過率が第1の目標透過率値に戻る第2のフェーズとを含む第1の変動プロファイルに従って、変化させるように構成された第1のコマンドを実施すること(S4)と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変透過率眼用レンズ(100)の光透過率を制御するために制御ユニット(300)によって実施される方法であって、
周囲光センサ(200)から、装着者の環境の照度に関連する測定パラメータの値を受け取ること(S1)と、
所定の時間間隔中に前記測定パラメータの値からの照度の変化を計算すること(S2)と、
計算された前記照度の変化を第1の閾値と比較すること(S3)と、
計算された前記照度の変化が前記第1の閾値よりも大きい場合、前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率を、現在の透過率値に対応する初期透過率値から第1の目標透過率値まで、前記透過率が前記第1の目標透過率値をオーバーシュートする第1のフェーズと、前記透過率が前記第1の目標透過率値に戻る第2のフェーズとを含む第1の変動プロファイルに従って、変化させるように構成された第1のコマンドを実施すること(S4)と、を含む方法。
【請求項2】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、単調変動プロファイル(20)に従って前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための第2のコマンドを実施すること(S52)を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率値を前記初期透過率値に維持すること(S53)を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、
計算された前記照度の変化を第2の閾値と比較すること(S51)と、
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第2の閾値の絶対値より大きい場合、単調変動プロファイル(20)に従って前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率を前記初期透過率値から第2の目標透過率値に変化させるための第2のコマンドを実施すること(S52)と、
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第2の閾値の絶対値以下である場合、前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率値を前記初期透過率値に維持すること(S53)と、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコマンドが、標準関数とオーバーシュート関数との和に従って経時的に前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための命令を含み、
前記標準関数は、前記初期透過率値から前記第1の目標透過率値までの透過率の単調変動を定義し、
前記オーバーシュート関数は、透過率オーバーシュート値、オーバーシュートフェーズ(11)の持続時間、及び減衰フェーズ(12)の持続時間を定義する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のコマンドが、前記標準関数に従って経時的に前記可変透過率眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための命令を含む、請求項2又は4に更に従属する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
計算された前記照度の変化ΔEの符号が正か負かに応じて、異なるオーバーシュート関数が使用される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の目標透過率値Tf1が照度の関数として決定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
透過率オーバーシュート値が、計算された前記照度の変化と前記第1の閾値との間の差の関数として決定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のコマンドを実施(S4)した後、前記可変透過率眼用レンズの透過率関数が一時的な値を有し、
受け取った前記測定パラメータの値に基づいて、更なる時間間隔中の更なる照度の変化を計算すること(S41)と、
計算された前記更なる照度の変化を前記第1の閾値と比較すること(S42)と、
計算された前記更なる照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値よりも大きい場合、前記第1のコマンドの結果として生じる前記透過率の変動を中断し(S43)、前記可変透過率眼用レンズの透過率を前記一時的な透過率値から第3の目標透過率値に変化させるための第3のコマンドを実施すること(S44)と、
計算された前記更なる照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、前記第1のコマンドの結果として生じる透過率の変動を続行すること(S45)と、
を更に含む請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の閾値が前記装着者の生理学的パラメータに基づく、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された制御ユニット。
【請求項13】
装着者が装着するための眼鏡であって、
少なくとも1つの可変透過率眼用レンズ(100)と、
環境の照度に関連するパラメータの値を測定するように構成された周囲光センサ(200)と、
前記可変透過率眼用レンズ(100)及び前記周囲光センサ(200)に結合された制御ユニット(300)であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された制御ユニットと、を備える眼鏡。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施する一連の命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶している非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変透過率眼用レンズの光透過率を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者に知られているように、可変透過率眼用レンズは、視力性能を維持しながらまぶしさの不快感を限定することを可能にする。
【0003】
可変透過率眼用レンズは、例えば、装着者の光環境の変動を検出するとレンズの光透過率を変更するように制御されるエレクトロクロミクスの層又は液晶の層を含み得る。通常、環境(E、例えばルクス)が明るくなればなるほど、レンズの色を濃くする、つまり、逆にレンズの光透過率は低くなる必要がある。
【0004】
可変透過レンズは、通常、環境の照度の変化が検出されたときに透過率を適応させるように制御され、照度の変化の検出後に測定された照度の関数として透過率セットが決定される。
【0005】
実際には、光環境は、数ルクスディケード(かなり暗い内部)から数千ルクスディケード(明るい外部)まで変動することができ、夜間視力に対応する条件は言うまでもない。つまり、極端な場合には1000前後の比率で、通常は100を超える比率が、装着者が経験する光環境の変動を特徴付けるということである。
【0006】
エレクトロクロミックレンズを考慮すると、その透過率は、クラス3のアイウェアでは90%~10%、クラス4のアイウェアでは90%~4%の間で変化することができる。したがって、対応する減衰係数は、それぞれ、9(90/10)及び22.5(90/4)である。
【0007】
したがって、装着者の照明環境の変動を十分に減衰させて、これらの変動中に装着者が知覚する光のレベルを実質的に一定に保つことは不可能である。この結果、透過率可変レンズの透過率が変化する間、装着者に不快感を与える可能性がある。
【0008】
上記に鑑みて、従来技術の不便さの少なくとも一部を軽減することが必要である。
【0009】
特に、周囲光が急激に変化する場合に装着者の快適さを向上させる、可変透過率眼用レンズを制御する方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本開示は、可変透過率眼用レンズの光透過率を制御する方法を記載し、本方法は、制御ユニットによって実施され、且つ、
*周囲光センサから、装着者の環境の照度に関連する測定されたパラメータの値を受け取ることと、
*所定の時間間隔中に測定されたパラメータの値からの照度の変化を計算することと、
*計算された照度の変化を第1の閾値と比較することと、
*計算された照度の変化が第1の閾値よりも大きい場合、可変透過率眼用レンズの透過率を、現在の透過率値に対応する初期透過率値から第1の目標透過率値まで、透過率が第1の目標透過率値をオーバーシュートする第1のフェーズと、透過率が第1の目標透過率値に戻る第2のフェーズとを含む第1の変動プロファイルに従って、変化させるように構成された第1のコマンドを実施することと、
を含む。
【0011】
周囲光センサとは、可視光、IR(赤外)光、又はUV(紫外)光などの光に敏感で、前記光の量を測定できる任意のセンサであると理解される。
【0012】
「装着者の環境の照度に関連するパラメータ」とは、周囲光センサが感知する波長範囲の光のレベルであると理解される。
【0013】
装着者の環境の照度は、例えば所与の光源に関連する発光スペクトルのモデル、例えば、太陽の発光スペクトルのモデルを使用することによって、前記パラメータの測定値から導出又は計算することができる。
【0014】
第1の閾値は、例えば、
‐ 絶対閾値、言い換えれば、照度の値の経時変動を絶対値と比較することができるもの、又は
‐ 相対閾値、言い換えれば、照度の値の経時変動を初期照度の値で割り、得られた比を絶対値と比較することができるもの、又は
‐ 初期照度の関数の結果である可変閾値、言い換えれば、可変閾値は、周囲光が最初に薄暗いか明るいかにかかわらず、異なる値を有することができるもの、
と理解できる。
【0015】
眼用レンズの初期透過率値は、計算された照度の変化が第1の閾値と比較される最初の時点における透過率値であると考えられる。
【0016】
オーバーシュートとは、目標を超えることを意味すると考えられるため、透過率が第1の目標透過率値まで増加する場合、透過率が第1の目標透過率値を超えることは、第1の目標透過率値よりも高い透過率値に到達することを意味する。
【0017】
逆に、透過率が第1の目標透過率値まで減少する場合、透過率が第1の目標透過率値を超えることは、第1の目標透過率値よりも低い透過率値に到達することを意味する。
【0018】
第1のコマンドを実施すること及び第2のコマンドを実施することは、眼用レンズの透過率を変化させる対応するコマンド信号を印加することに対応すると考えられる。例えば、眼用レンズは、2つのコマンド電極の間に配置されたエレクトロクロミクスの層及び液晶の層のうちの1つを含んでもよい。第1のコマンド又は第2のコマンドを実施することは、コマンド電極にコマンド信号を印加することを含み得る。
【0019】
オーバーシュートの連続とリターンの連続を提供することにより、第1のコマンドに応じた透過率の変動は、
装着者に目下のまぶしさのリスクを素早く回避させることによって、明るさの激しい変動を緩和することと、
光への眼の適合を追跡し、コントラストを改善しながら、光度の将来の激しい変動に備えるために、透過率のダイナミクスをいくらか回復することと、
を可能にする。
【0020】
計算された照度の変化と第1の閾値との比較に基づいて第1のコマンドを条件付きで実施することにより、照度の変動が特に速い場合にまぶしさの目下のリスクを防止するために、専用の変動プロファイルを用いて眼用レンズの透過率をコマンド指示することができる。
【0021】
いくつかの例では、この方法は、計算された照度の変化の絶対値が第1の閾値の絶対値以下である場合、単調変動プロファイルに従って可変透過率眼用レンズの透過率を変化させるための第2のコマンドを実施することを更に含む。
【0022】
これにより、眼用レンズの透過率を照度の変化にスムーズに適合させるために、照度の変動が十分に遅い限り、例えば古典的な変動プロファイルを提供することができる。
【0023】
いくつかの例では、この方法は、計算された照度の変化の絶対値が第1の閾値の絶対値以下である場合、可変透過率眼用レンズの透過率値を初期透過率値に維持することを更に含む。
【0024】
これにより、照度の変動速度が第1の閾値を超えない限り、常に同じ透過率値を提供することができ、望ましくない透過率の変動で装着者を混乱させることを避けることができる。これは、周囲照度が通常は一定の低い値にとどまっているが、主要な光源を短時間横切るとすぐに高い値に上昇することがある、特定のアクティビティに役立つ。
【0025】
いくつかの例では、方法は、計算された照度の変化を第1の閾値と比較すること、測定されたパラメータの現在の値をパラメータ閾値と比較すること、次いで、
‐ 測定されたパラメータの現在の値がパラメータの閾値よりも大きく、計算された照度の変化が第1の閾値よりも大きい場合、第1のコマンドを実施すること、を更に含む。
【0026】
更に、方法は、測定されたパラメータの現在の値がパラメータ閾値よりも小さい場合、初期透過率値に等しい透過率を維持するように構成されたコマンドを実施することを含み得る。
【0027】
これは、夜間の運転など、照度の絶対値は低いままであるが、検出された照度の変動の相対値が高い可能性がある場合に特に役立つ。装着者が邪魔されてはならない状況では、透過率の変化を誘発するコマンドは無効にするか、実施しないようにして、透過率が時間の経過とともに一定に保たれるようにする必要がある。
【0028】
より一般的には、第1のコマンドを実施するかしないかは、
‐ 環境の照度に関連するパラメータの現在の値を対応する閾値と比較すること、又は、
‐ 時間間隔にわたる前記パラメータの変動を別の対応する閾値と比較すること、又は、
‐ パラメータの現在の値とその経時変動の両方の組み合わせを含む関数の結果を、対応する閾値と比較すること、
に基づくことができる。
【0029】
このような関数により、例えば、照度が低い状況では、透過率を所定の一定値に維持し、照度が高い状況では、経時的な照度の相対的な変動に基づいて選択された特定のコマンドに従って透過率が時間とともに変化するように制御することができる。
【0030】
いくつかの例では、方法は、計算された照度の変化の絶対値が第1の閾値の絶対値以下である場合、
*計算された照度の変化を第2の閾値と比較すること、次いで、
*計算された照度の変化の絶対値が第2の閾値の絶対値より大きい場合、単調変動プロファイルに従って可変透過率眼用レンズの透過率を初期透過率値から第2の目標透過率値に変化させるための第2のコマンドを実施すること、及び、
*計算された照度の変化の絶対値が第2の閾値の絶対値以下である場合、可変透過率眼用レンズの透過率値を初期透過率値に維持すること、
を更に含む。
【0031】
眼用レンズは次に、照度の変動が激しい(第1の閾値を超える)か、通常(第2の閾値を超える)か、又は無視できるかに応じて、3つの異なるモードのうちの1つに従って制御される。
【0032】
いくつかの例では、第1のコマンドは、標準関数とオーバーシュート関数の和に従って、可変透過率眼用レンズの透過率を経時的に変化させるための命令を含み、
*標準関数は、初期透過率値から第1の目標透過率値までの透過率の単調変動を定義し、
*オーバーシュート関数は、透過率オーバーシュート値、オーバーシュートフェーズの持続時間、及び減衰フェーズの持続時間を定義する。
【0033】
いくつかの例では、第2のコマンドは、標準関数に従って経時的に可変透過率眼用レンズの透過率を変化させる命令を含む。
【0034】
例えば、標準関数は透過率のすべての変動に適用されるデフォルト関数であり得、一方でオーバーシュート関数は、照度の変動が激しい特定の場合にのみ、第1のコマンド信号を実施した結果として、標準関数に加えて適用され得る。
【0035】
いくつかの例では、計算された照度の変化の符号が正か負かに応じて、異なるオーバーシュート関数が使用される。
【0036】
これにより、装着者に改善された快適さを提供することができる。例えば、オーバーシュート関数の選択は、それぞれ、透過光の増加及び減少への適応に関する装着者の生理学的パラメータに適応させることができる。
【0037】
いくつかの例では、第1の目標透過率値は、照度の関数として決定される。
【0038】
例えば、第1の目標透過率値は、第1のコマンドの実施をトリガした照度の変動の関数として決定され得る。
【0039】
更に、第1の目標透過率値は、第1のコマンドの実施をトリガした後に得られる照度の更なる変動の関数として更新され得る。
【0040】
これにより、照度の連続値の変化を補償するために到達すべき透過率値を決定することができる。
【0041】
いくつかの例では、透過率オーバーシュート値は、計算された照度の変化と第1の閾値との間の差の関数として決定される。
【0042】
第1の目標透過率値をオーバーシュートすることにより、応答時間が最小化される。計算された照度の変化が第1の閾値よりも大幅に高い場合、反応時間を更に減少させることが好ましい場合がある。これは、透過率オーバーシュート値を更に大きく設定することで達成できる。
【0043】
いくつかの例では、方法は、第1のコマンドを実施した後、可変透過率眼用レンズの透過率関数が一時的な値を有し、
*受け取った測定値に基づいて、更なる時間間隔中の更なる照度の変化を計算することと、
*計算された更なる照度の変化を第1の閾値と比較することと、
*計算された更なる照度の変化の絶対値が第1の閾値の絶対値よりも大きい場合、第1のコマンドの結果として生じる透過率変動を中断し、可変透過率眼用レンズの透過率を一時的な透過率値から第3の目標透過率値に変化させるための第3のコマンドを実施することと、
*計算された更なる照度の変化の絶対値が第1の閾値の絶対値以下である場合、第1のコマンドの結果として生じる透過率変動を続行することと、
を更に含む。
【0044】
これにより、現在の照度が初期値により近づいて戻ったことを検出したときに透過率変動を中断できるため、まぶしさを防止するために迅速な応答時間を必要としない。
【0045】
いくつかの例では、第2の目標透過率値は初期透過率値に対応する。
【0046】
これにより、進行中に第1のコマンド及び関連する透過率変動をキャンセルできる。
【0047】
いくつかの例では、第1の閾値は、装着者の生理学的パラメータに基づく。
【0048】
これにより、各特定の装着者に合わせてカスタマイズされた閾値を超える検出光量の変化を検出すると、透過率を迅速に変化させることができる。したがって、各特定の装着者の快適さが最適化される。
【0049】
本開示は、上記の方法を実施するように構成された制御ユニットを更に説明する。
【0050】
本開示は、装着者が装着することを意図した眼鏡を更に説明し、眼鏡は、
‐ 少なくとも1つの可変透過率眼用レンズと、
‐ 環境の照度に関連するパラメータの値を測定するように構成された周囲光センサと、
‐ 可変透過率眼用レンズ及び周囲光センサに結合された上記の制御ユニットと、
を備える。
【0051】
本開示は更に、プロセッサによって実行されると、上記の方法を実施する一連の命令を含む、コンピュータプログラム製品について説明する。
【0052】
本開示は、上記のコンピュータプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を更に説明する。
【0053】
本明細書で提供される説明及びその利点をより詳細に理解するために、添付の図面及び詳細な説明に関連してここで以下の簡単な説明を参照し、同様の参照番号は、同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】例示的な眼鏡デバイスを示す。
図2図1のデバイスを制御するために提案された方法を実行する例示的なソフトウェアの一般的なフローチャートを示す。
図3】それぞれ例示的な第1のコマンド及び例示的な第2のコマンドに従った、可変透過率眼用レンズの透過率関数の2つの変動プロファイルの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ここで、例示的な眼鏡デバイスを示す図1を参照する。
【0056】
眼鏡デバイスは、
‐ 眼鏡フレームに取り付けられた一対の可変透過率眼用レンズ(100)と、
‐ レンズ(100)に向かって入射している可視光又は照度のレベルを感知するように構成された光センサ(200)と、
‐ 光センサ及びレンズに結合された制御ユニット(300)と、
を備える。
【0057】
眼鏡デバイスは、レンズ(100)に、光センサ(200)に、及び制御ユニット(300)に対して電力を供給するための1つ又は複数の電源(400)を備え得る。
【0058】
各レンズ(100)は、電気コマンド信号によって直接的又は間接的に制御可能な透過率関数を有する。
【0059】
例えば、各レンズ(100)は、可視光透過率特性が電気的に切り替え可能なエレクトロクロミック材料を、例えば2つのコマンド電極間に配置された層として、含んでもよい。例えば、各レンズ(100)は、電流の通過によって温度が制御されて導電体に関連付けられた、可視光透過特性が熱的に切り替え可能なサーモクロミック材料を含み得る。より一般的には、各レンズ(100)は、エレクトロクロミック、サーモクロミック、フォトクロミック、懸濁粒子、マイクロブラインド又は、ポリマー分散液晶技術などの、任意のスマートグラス技術又はそれらの組み合わせに基づくことができる。
【0060】
光センサは、デバイスによって検出された可視光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電デバイスである。その例には、フォトレジスタ、フォトダイオード、フォトトランジスタが含まれる。光センサ(200)は、鼻梁上、レンズマウント上、ヒンジ上、アーム上などの、眼鏡フレーム上に取り付けることができる。眼鏡デバイスは、1つ又は複数の追加の光センサ(200)を備えることができる。例えば、眼鏡デバイスは、眼鏡レンズ(100)の各々に向かう入射光を別々に感知するために各々が対応する眼用レンズの近くに取り付けられた、一対の同一の光センサ(200)を備え得る。例えば、眼鏡デバイスは、入射可視光のスペクトルに応じて眼用レンズに対して異なる制御関数を適用するために、例えば青色光と赤色光を別々に認識するために、それぞれが異なる可視光波長に対して知覚できる複数の光センサ(200)を備え得る。
【0061】
制御ユニット(300)は、1つ又は複数のメモリと、レンズ(100)及び光センサ(200)との1つ又は複数のインタフェースとに動作可能に結合された、1つ又は複数のプロセッサを備える。制御ユニット、レンズ、及び光センサの間の通信は、有線又は無線であってもよい。
【0062】
眼鏡デバイスが装着者により装着されている初期時点tにおいて、レンズ(100)は、それぞれ初期透過率値Tを有する。初期透過率値Tは、初期時点における環境の照度に従って事前設定され得る。例えば、明るい環境では、入射光を暗くし、装着者をまぶしさから保護するために、初期透過率値Tを20%以下などの低い値に事前設定することができる。例えば、暗い環境では、入射光を通過させ、装着者の快適さを高めるために、初期透過率値Tを80%以上などの高い値に事前設定することができる。
【0063】
ここで、メモリ上に記憶され、且つ制御ユニット(300)のプロセッサによって実行されて、レンズ(100)の透過率を駆動するための方法を実行することができるソフトウェアのアルゴリズムを示す図2を参照する。
【0064】
制御ユニット(300)は、光センサ(200)から、装着者の環境の照度の経時的な連続測定値を取得(REC E)する(S1)。測定値は、例えば毎秒などの一定の時間間隔dtで収集することができる。
【0065】
本開示の文脈において、照度の測定値は、光センサ(200)が感知し得る所定の波長領域における入射光エネルギーの総量を示す。所定の波長領域は、光センサ(200)に固有であり、可視光波長領域の少なくとも一部に対応する。
【0066】
得られた各測定値は、測定時の装着者の環境の照度を示すタイムスタンプ付き測定値として、制御ユニットによって記憶され得る。
【0067】
得られた測定値に基づいて、制御ユニット(300)は、初期時点tの初期照度Eと現在の時点tcurの現在の照度Ecurとの間の照度の変化ΔE=Ecur-Eを計算(CPTΔE)する(S2)。初期時点tと現在の時点tcurとの間の時間間隔は、異常から照度の有意な変動をフィルタリングするための積分時間を含み得る。
【0068】
照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|は、変化の振幅を示す。
【0069】
照度の変化ΔEの符号は、初期時点tと現在の時点tcurとの間で照度が増加したか(符号が正の場合)、減少したか(符号が負の場合)を示す。
【0070】
制御ユニット(300)は、計算された照度の変化を第1の閾値ΔElim1と比較(CMP ΔE/ΔElim1)する(S3)。
【0071】
第1の閾値ΔElim1は、それを超えると照度の変化が急激又は激しいと見なされる限界に対応する事前設定された非ヌル値である。
【0072】
第1の閾値ΔElim1は、例えば絶対値として、又は計算された値として、例えば初期照度の相対値として事前設定することができる。
【0073】
第1の閾値ΔElim1は、例えば、まぶしさに対する感度、まぶしさの後の平均コントラスト回復時間、瞳孔サイズ及び運動などの、装着者の生理学的パラメータに基づいて事前設定され得る。
【0074】
第1の閾値ΔElim1は、おそらく人工知能、機械学習、深層学習、教師あり学習などに基づいて、装着者との対話を通じて調整されてもよい。
【0075】
一例では、照度の変化ΔEが正か負かによって、第1の閾値が異なる。例えば、第1の閾値の正の値ΔElim1+と負の値ΔElim1-は、それぞれ予め決定され得る。次に、第1の閾値ΔElim1は、符号が照度の変化ΔEの符号と一致する所定の値として選択されてもよい。
【0076】
比較の結果に基づいて、処理回路(300)は、検出された照度の変化が激しいと見なされるか否かにかかわらず、異なる変動プロファイルに従ってレンズの透過率を制御する。
【0077】
より正確には、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が、第1の閾値ΔElim1の絶対値|ΔElim1|より大きい場合、制御ユニット(300)は、眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための第1のコマンドを実施(GEN CMD1)する(S4)。
【0078】
第1のコマンドは、連続した2つのフェーズ、すなわち、透過率が第1の目標透過率値をオーバーシュートするオーバーシュートフェーズと、透過率が第1の目標透過率値に向かって戻る減衰フェーズとを含む変動プロファイルに従って、眼用レンズ(100)の透過率を初期透過率値Tから第1の目標透過率値Tf1まで制御することを可能にする。
【0079】
逆に、第1のコマンドは、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が第1の閾値ΔElim1の絶対値|ΔElim1|以下である場合、実施されない。
【0080】
要約すると、照度の変化を検出すると、前記照度の変化を第1の閾値と比較して、変化が激しいかどうかを検出する。
【0081】
次に、照度の変化が激しい場合、第1のコマンドが実施されて眼用レンズの透過率を変化させる。
【0082】
それ以外の場合、第1のコマンドは実施されない。
【0083】
照度の変化がより滑らかである場合の可能な更なる一連のアクションは、後に記載される。したがって、この場合、次の比較結果、つまり、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が第1の閾値ΔElim1の絶対値|ΔElim1|以下である、と見なされる。
【0084】
制御ユニット(300)は、計算された照度の変化を第2の閾値ΔElim2と比較(CMP ΔE/ΔElim2)すること(S51)を続行する。
【0085】
第2の閾値ΔElim2は、第1の閾値ΔElim1よりも低い予め設定された非ヌル値である。
【0086】
第1の閾値ΔElim1と同様に、第2の閾値ΔElim2は、予め設定された絶対値又は相対値であってもよく、また計算された照度の変化の符号に応じて異なっていてもよい。
【0087】
第2の閾値ΔElim2の値は、装着者の知覚閾値などの装着者の生理学的パラメータに関連し得る。
【0088】
例えば、第2の閾値は、それを超えると検出された照度の変化が装着者によって知覚可能であり、眼用レンズの透過率を適合させることによる補償を必要とする、限界に対応することができる。
【0089】
比較の結果に基づいて、処理回路(300)は、第2のコマンドを実施し、レンズの透過率を変化させることができる。
【0090】
より正確には、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が、第2の閾値ΔElim2の絶対値|ΔElim2|より大きい場合、制御ユニット(300)は、眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための第2のコマンドを実施(GEN CMD2)する(S52)。
【0091】
第2のコマンドは、眼用レンズ(100)の透過率を、まったくオーバーシュートフェーズを含まない変動プロファイルに従って、初期透過率値Tから第2の目標透過率値Tf2まで制御することを可能にする。
【0092】
逆に、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が第2の閾値ΔElim2の絶対値|ΔElim2|以下である場合、コマンドは実施されない。
【0093】
要約すると、
‐ 照度の変化が激しい場合、第1のコマンドが眼用レンズの透過率を変化させるために実施され、第1のコマンドは、オーバーシュートフェーズ中に第1の目標透過率値をオーバーシュートし、次に減衰フェーズ中に第1の目標透過率値に向かって戻ることを含み、
‐ 照度の変化が激しくなく知覚できる場合、第2のコマンドが眼用レンズの透過率を変化させるために実施され、第2のコマンドは、前記値をオーバーシュートすることなく第2の目標透過率値に達することを含み、
‐ 照度の変化が知覚できない場合、コマンドは実行されず、眼用レンズの透過率の値は初期透過率値Tに等しいままである。
【0094】
ここで、E=f(t)とラベル付けされた実線として例示的な照度を時間の関数として示す図3を参照する。
【0095】
この例では、光強度のレベルが時間間隔中に初期光強度値から第1の光強度値まで変化することが分かる。前記値は、例えば、2つの連続した測定に対応することができる。
【0096】
簡単にするために、照明Eは、考慮される期間中に2つの安定状態を有すると考えられる。
【0097】
この例では、第1の光強度の値が初期の光強度の値よりも大幅に大きく、その結果、時間間隔中に激しい光強度の増加が生じ、第1の閾値ΔElim1の絶対値より大きいΔEの正の値になる。その結果、第1のコマンドが制御ユニット(300)によって実施される。
【0098】
そのような第1のコマンドの実施の結果である第1の変動プロファイルによる時間の関数としての例示的な透過率の概略図は、τ=fEE’t(E,E’,t)とラベル付けされた実線として図3に表される。
【0099】
第1の変動プロファイルによれば、眼用レンズ(100)の透過率値は、初期透過率値Tから第1の目標透過率値Tf1まで変化する。第1の目標透過率値Tf1は、例えば測定された照度の関数として、例えば第1の光強度値の関数として決定されてもよい。
【0100】
第1の変動プロファイルは、連続する2つのフェーズを含む。
【0101】
第1フェーズは、初期透過率値Tから第1の目標透過率値Tf1を超える透過率オーバーシュート値TOSまでのオーバーシュートフェーズ(11)である。
【0102】
この例では、照度の変化が正であるため、第1の目標透過率値Tf1は初期透過率値Tよりも小さくなり、透過率オーバーシュート値TOSは第1の目標透過率値より小さい。
【0103】
図示されていない別の例では、照度の変化は負であり、その結果、第1の目標透過率値Tf1が初期透過率値Tよりも大きくなる。この他の例では、透過率オーバーシュート値TOSは、第1の目標透過率値よりも大きい。
【0104】
どちらの場合も、オーバーシュートフェーズ中の透過率の変動は、第1の目標透過率値を達成する場合と同じ符号を持ち、振幅が大きくなる。正式にはTOS-T/Tf1-T>1である。
【0105】
透過率オーバーシュート値(TOS)は、第1の目標透過率値Tf1からの固定オフセットとして決定され得る。或いは、そのようなオフセットは、計算された照度の変化ΔEと第1の閾値ΔElim1との間の差の関数として決定されてもよい。
【0106】
透過率オーバーシュート値TOSに到達することは、変動プロファイルの変曲点に到達することに対応し、第2のフェーズの開始を示す。
【0107】
第2のフェーズは、透過率オーバーシュート値TOSから第1の目標透過率値Tf1までの減衰フェーズ(12)である。前述のことから、減衰フェーズ(12)中の透過率の変動は、オーバーシュートフェーズ(11)中の変動とは反対の符号を有している。
【0108】
減衰フェーズの持続時間は、オーバーシュートフェーズの持続時間よりも1桁又は2桁長くなる場合がある。例えば、オーバーシュートフェーズが数秒続く場合、その後の減衰フェーズは数分続くことがある。
【0109】
このオーバーシュートフェーズと減衰フェーズの連続により、
‐ 装着者に目下のまぶしさのリスクを素早く回避させることによって、明るさの激しい変動を緩和することと、
‐ 光への眼の適応を追跡し、コントラストを改善しながら、光度の将来の激しい変動に備えるために、透過率のダイナミクスをいくらか回復することと、
が可能になる。
【0110】
いくつかの実施形態では、第1の変動プロファイルは、標準関数の和とオーバーシュート関数の和として表すことができ、
*標準関数は、初期透過率値Tから第1の目標透過率値Tf1までの透過率の単調変動を定義し、
*オーバーシュート関数は、透過率オーバーシュート値TOS、オーバーシュートフェーズ(11)の持続時間、及び減衰フェーズ(12)の持続時間を定義する。
【0111】
正式には、これはτ=fEE’t(E,E’,t)=fEt(E,t)+h(E,E’,t)に相当し、h(E,E’,t)は、オーバーシュート期間とそれに続く減衰期間の2つの部分に分割されたブースト関数である。
【0112】
h(E,E’,t)は、(時間、強度、形状などで)装着者及びその特定の生理学的パラメータのいくつか(すなわち、まぶしさに対する感度、まぶしさの後の平均コントラスト回復時間、瞳孔サイズ及び運動など)に依存する可能性があり、AI、機械学習、深層学習、教師あり学習などを使用した装着者との対話を通じて調整され得る。
【0113】
h(E,E’,t)は、光強度の変動の符号に応じて異なる可能性があるため、暗化と退色に対して異なるオーバーシュート管理が実施される。
【0114】
オーバーシュート期間に関して、h(E,E’,t)は、時間の経過に伴う光強度の1次導関数E’がゼロになる傾向がある場合、ゼロになる傾向があり得る。つまり、光強度の変動の速度が抑えられると、オーバーシュートの振幅が最小になる。
【0115】
オーバーシュート期間の持続時間は、減衰期間が特定の時間間隔の満了時に発生するように予め決定することができる。
【0116】
オーバーシュート期間の持続時間は、特定の規則、例えば、運転状況におけるクラス4眼鏡に固有の管理規則に基づいて、及び/又は照度の変化ΔEの振幅に従って、及び/又は照度の変化ΔEを検出する前の眼用レンズ(100)の透過率の以前の値に従って、及び/又は眼用レンズ(100)の最大のあり得る退色又は暗化の速度などのアイウェアの物理的制限に従って、事前に決定することができる。
【0117】
減衰期間に関して、h(E,E’,t)は無限の時間でゼロになる傾向があり得、これは、眼用レンズの透過率が第1の目標透過率値Tf1に向かって進むことを意味する。減衰フェーズの形状は、線形型、指数型、逆正接型などであり得る。
【0118】
時間の関数としての代替の例示的な照度が、E1’=f(t)とラベル付けされた破線として図3に示されている。
【0119】
この例では、より滑らかな光強度の増加が時間間隔中に検出され、その結果、正の値のΔE1’になる。これは、第2の閾値ΔElim2の絶対値より大きいが、第1の閾値ΔElim1の絶対値より小さい。その結果、第2のコマンドが制御ユニット(300)によって実施される。
【0120】
そのような第2のコマンドの実施の結果である第2の変動プロファイルによる時間の関数としての例示的な透過率は、図3において、τ=fEt(E,t)とラベル付けされた不連続線として表される。
【0121】
第2の変動プロファイルによれば、眼用レンズ(100)の透過率値は、初期透過率値Tから第2の目標透過率値Tf2まで、前記第2の目標透過率値Tf2をオーバーシュートすることなく変化する。
【0122】
例えば、第2の変動プロファイルは、初期透過率値Tから第2の目標透過率値(Tf2)までの単調変動を定義する標準関数による、単一の単調フェーズ(20)からなり得る。
【0123】
このような変動プロファイルにより、目下のまぶしさのリスクがないため、透過率の激しい変動はまったくなしに、光に対する目の順応に従うことができる。
【0124】
したがって、第1のコマンド及び第2のコマンドの選択的な実施のおかげで、周囲光強度の現在の変動速度に適合する透過率の変動を常に装着者に提供することが可能である。
【0125】
例示的な実施形態では、第1のコマンドの実施を中断することが可能であり得る。そのような中断を引き起こすことは、周囲光強度の更なる進行の検出に関連する所定の基準に基づくことができる。
【0126】
一例では、光センサ(200)は、経時的に周囲光強度の測定を繰り返し実行し、測定値を処理回路(300)に送信する。この例では、初期値から第1のより大きい値への周囲光強度の増加が検出されたと更に考えられる。更に、処理回路(300)は、検出された増加が第1の閾値を超えていると判断したと考えられる。その結果、第1のコマンドの実施がトリガされた。
【0127】
この例では、現在の時点で次のことが考えられる。
‐ 第1のコマンドの実施が進行中であり、
‐ 眼用レンズ(100)の透過率は一時的な値を有し、
‐ 光センサ(200)による周囲光強度の更なる測定値が、処理回路(300)によって取得され、第2の値を示している。
【0128】
第2の値に基づいて、初期値からの照度の変化が激しいことを確認するか、逆に、第1の値が単に短い一時的な状態を反映していること、及び初期値から第2の値への照度の変化が実際には激しくはないことを示すことができる。
【0129】
そうするために、処理回路は、光強度の初期値と第2の値との間の差ΔEを計算(CPTΔE)する(S41)ように更に構成されてもよい。
【0130】
処理回路は、計算された差ΔEを第1の閾値ΔElim1と比較(CMP ΔE/ΔElim1)する(S42)ように更に構成され得る。
【0131】
比較の結果は、初期値と第2の値の間の光強度の変化が激しいかどうかを示す。
【0132】
次いで、比較の結果に基づいて、処理回路(300)は、第1のコマンドの実施を続行するか、又は第1のコマンドの実施を中断することができる。
【0133】
より正確には、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が第1の閾値ΔElim1の絶対値|ΔElim1|より大きい場合、制御ユニット(300)は、眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための第1のコマンドの実施に進行(PROC CMD1)する(S45)。
【0134】
このような場合、初期値から第1の値までの光強度の変動と初期値から第2の値までの光強度の変動の両方が第1の閾値を超える。このように、光強度の変動は激しく、まぶしさを防ぐために眼用レンズ(100)の透過率を直ちに適応させる必要があることが確認される。
【0135】
逆に、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が第1の閾値ΔElim1の絶対値|ΔElim1|以下である場合、制御ユニット(300)は、眼用レンズ(100)の透過率を変化させるための第1のコマンドの実施を中断(INT CMD1)する(S43)。
【0136】
そのような場合、初期値から第2の値への光強度の変動は、第1の閾値を超えず、激しいとは見なされない。結果として、眼用レンズ(100)の透過率の変動は、オーバーシュートなしで実行され得る。
【0137】
このような場合、制御ユニット(300)は、更に、眼用レンズ(100)の透過率を一時的な透過率値から第3の目標透過率値に変化させるための第3のコマンドを生成(GEN CMD3)する(S44)。
【0138】
第3の目標透過率値は、光強度の第2の値に基づいて決定される。例えば、照度の変化ΔEの絶対値|ΔE|が第2の閾値ΔElim2の絶対値|ΔElim2|以下である場合、これは、照度の変化ΔEが初期値からの透過率の変動を必要としないことを意味する。このような場合、第3の目標透過率値は初期透過率値Tに設定される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変透過率眼用レンズの光透過率を制御するために制御ユニットによって実施される方法であって、
周囲光センサから、装着者の環境の照度に関連する測定パラメータの値を受け取ることと、
所定の時間間隔中に前記測定パラメータの値からの照度の変化を計算することと、
計算された前記照度の変化を第1の閾値と比較することと、
計算された前記照度の変化が前記第1の閾値よりも大きい場合、前記可変透過率眼用レンズの透過率を、現在の透過率値に対応する初期透過率値から第1の目標透過率値まで、前記透過率が前記第1の目標透過率値をオーバーシュートする第1のフェーズと、前記透過率が前記第1の目標透過率値に戻る第2のフェーズとを含む第1の変動プロファイルに従って、変化させるように構成された第1のコマンドを実施することと、を含む方法。
【請求項2】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、単調変動プロファイルに従って前記可変透過率眼用レンズの透過率を変化させるための第2のコマンドを実施することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、前記可変透過率眼用レンズの透過率値を前記初期透過率値に維持することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、
計算された前記照度の変化を第2の閾値と比較することと、
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第2の閾値の絶対値より大きい場合、単調変動プロファイルに従って前記可変透過率眼用レンズの透過率を前記初期透過率値から第2の目標透過率値に変化させるための第2のコマンドを実施することと、
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第2の閾値の絶対値以下である場合、前記可変透過率眼用レンズの透過率値を前記初期透過率値に維持することと、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコマンドが、標準関数とオーバーシュート関数との和に従って経時的に前記可変透過率眼用レンズの透過率を変化させるための命令を含み、
前記標準関数は、前記初期透過率値から前記第1の目標透過率値までの透過率の単調変動を定義し、
前記オーバーシュート関数は、透過率オーバーシュート値、オーバーシュートフェーズの持続時間、及び減衰フェーズの持続時間を定義する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
計算された前記照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、単調変動プロファイルに従って前記可変透過率眼用レンズの透過率を変化させるための第2のコマンドを実施することを更に含み、
前記第2のコマンドが、前記標準関数に従って経時的に前記可変透過率眼用レンズの透過率を変化させるための命令を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
計算された前記照度の変化の符号が正か負かに応じて、異なるオーバーシュート関数が使用される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の目標透過率値が照度の関数として決定される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
透過率オーバーシュート値が、計算された前記照度の変化と前記第1の閾値との間の差の関数として決定される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のコマンドを実施した後、前記可変透過率眼用レンズの透過率関数が一時的な値を有し、
受け取った前記測定パラメータの値に基づいて、更なる時間間隔中の更なる照度の変化を計算することと、
計算された前記更なる照度の変化を前記第1の閾値と比較することと、
計算された前記更なる照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値よりも大きい場合、前記第1のコマンドの結果として生じる前記透過率の変動を中断し、前記可変透過率眼用レンズの透過率を前記一時的な透過率値から第3の目標透過率値に変化させるための第3のコマンドを実施することと、
計算された前記更なる照度の変化の絶対値が前記第1の閾値の絶対値以下である場合、前記第1のコマンドの結果として生じる透過率の変動を続行することと、
を更に含む請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の閾値が前記装着者の生理学的パラメータに基づく、請求項に記載の方法。
【請求項12】
請求項に記載の方法を実施するように構成された制御ユニット。
【請求項13】
装着者が装着するための眼鏡であって、
少なくとも1つの可変透過率眼用レンズと、
環境の照度に関連するパラメータの値を測定するように構成された周囲光センサと、
前記可変透過率眼用レンズ及び前記周囲光センサに結合された制御ユニット(300)であって、請求項に記載の方法を実施するように構成された制御ユニットと、を備える眼鏡。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、請求項に記載の方法を実施する一連の命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記憶している非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】