(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-27
(54)【発明の名称】肉類似物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20231020BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20231020BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20231020BHJP
【FI】
A23L13/00 Z
A23J3/00 503
A23L13/60 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577641
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 IL2021051220
(87)【国際公開番号】W WO2022079717
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522181522
【氏名又は名称】リデファイン ミート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディコフスキー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハウスナー、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AC09
4B042AD36
4B042AE03
4B042AE05
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP23
4B042AP30
(57)【要約】
本開示は、食用肉類似物およびその製造方法であって、食用肉類似物が、複数のタンパク質ストランドおよびストランド間シース材料を含み、上記食用肉類似物の少なくとも1つの試料において、以下の条件:(i)複数のタンパク質ストランドが本質的に整列していること、(ii)タンパク質ストランドの少なくとも一部がストランド間シース材料によって少なくとも部分的に囲まれていること、(iii)ストランド間シース材料が、30℃を超える融点を有する少なくとも1つの成分を含むこと、(iv)ストランド間シース材料が、少なくとも2つの隣接する離間したタンパク質ストランド間を相互接続する網状構造を形成すること、が満たされ、前記ストランド間シース材料が、以下の物理的特性:(a)肉類似物の試験片の少なくとも46Nの平均硬度、および(b)肉類似物の試験片の少なくとも0.012MPaの平均引張強度のうちの少なくとも1つを提供するように選択される、食用肉類似物およびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタンパク質ストランドおよびストランド間シース材料を含む食用肉類似物であって、
前記食用肉類似物の少なくとも1つの試料において、以下の条件:
前記複数のタンパク質ストランドが、前記少なくとも1つの試料のP軸に沿って本質的に整列していること、
前記タンパク質ストランドの少なくとも一部が、前記ストランド間シース材料によって少なくとも部分的に囲まれていること、
前記ストランド間シース材料が、30℃を超える融点を有する少なくとも1つの成分を含むこと、
前記ストランド間シース材料が、少なくとも2つの隣接する離間したタンパク質ストランド間を相互接続する網状構造を形成すること
が満たされ、
前記ストランド間シース材料が、以下の物理的特性:
前記食用肉類似物の試験片における前記タンパク質ストランドの公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも46Nの平均硬度であること、および
前記食用肉類似物の試験片における前記ストランドの前記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも0.012MPaの平均引張強度であること
の少なくとも1つを提供するように選択される、
食用肉類似物。
【請求項2】
前記網状構造が、前記複数のストランドの一部間を相互接続する、請求項1に記載の肉類似物。
【請求項3】
前記タンパク質ストランドがテクスチャ加工タンパク質を含む、請求項1または2に記載の肉類似物。
【請求項4】
前記ストランド間シースが、隣接するストランド間の空間を占有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項5】
前記空間が、50μm~5mmの寸法を有する、請求項4に記載の肉類似物。
【請求項6】
前記ストランド間シースがタンパク質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項7】
前記ストランド間シースが多糖類を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項8】
前記スタンド間シースが、植物タンパク質、テクスチャ加工植物性タンパク質(TVP)および高水分押出(HME)タンパク質から選択されるタンパク質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項9】
前記スタンド間シースが、ペクチン、アルギネート、カラギーナン、キトサン、デンプン、セルロース誘導体、ガラクトマンナンおよびそれらの組み合わせから選択される多糖類を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項10】
前記スタンド間シース材料が、少なくとも1つのタンパク質と少なくとも1つの多糖類との組み合わせを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項11】
前記ストランド間シースがκ-カラギーナンを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項12】
前記ストランド間シースがグルテンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項13】
前記ストランド間シース材料が、異なる融点を有する2つ以上の成分の組み合わせを含み、30℃~70℃の温度で、少なくとも1つが固体であり、少なくとも1つが液体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項14】
前記ストランド間シース材料が、各タンパク質ストランドの少なくとも50%を囲む、請求項1~13のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項15】
以下の特徴:
-前記食用肉類似物の試験片における前記タンパク質ストランドの公称方向で測定した場合に、少なくとも0.5MPaの圧縮弾性率であること、
-前記肉類似物の試験片における前記ストランドの前記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも0.4MPaの平均圧縮弾性率であること、
-前記肉類似物の試験片の前記タンパク質ストランドの公称方向で測定した場合に、少なくとも52Nの硬度であること、
-前記肉類似物の試験片における前記ストランドの公称方向で測定した場合に、少なくとも0.035MPaの引張強度であること
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項16】
前記圧縮弾性率が、20mm×20mm×20mmの寸法を有する試験片で測定される、請求項15に記載の肉類似物。
【請求項17】
硬度が、20mm×20mm×20mmの寸法を有する試験片で測定される、請求項1~15のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項18】
前記引張強度が、50mm×20mm×10mmの寸法を有する試験片で測定される、請求項1~15のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項19】
前記タンパク質ストランドが前記肉類似物の長手方向軸に垂直な方向にあるステーキの形態である、請求項1~18のいずれか一項に記載の肉類似物。
【請求項20】
肉類似物を製造するための積層造形方法であって、以下のステップ:
(a)タンパク質の1つ以上のストランドを少なくとも1つのタンパク質層に分配するステップであって、各前記タンパク質層が本質的に整列したタンパク質ストランドを含み、前記タンパク質ストランドの少なくとも一部がその隣接するストランドから離間している、分配するステップ、
(b)1つ以上のタンパク質層上に、ストランド間シース材料を分配するステップ、および
(c)前記肉類似物の所望の寸法に達するまで、前記ステップ(a)および(b)を繰り返すステップ、
を含み、
前記ストランド間シース材料が隣接するストランド間の空間を占有する、方法。
【請求項21】
タンパク質ストランドが、その少なくとも一部が以前に分配されたタンパク質層のストランド間の空間に適合するように分配される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ストランド間シース形成材料が、少なくとも2つの連続したタンパク質層の間を相互接続するように分配される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
ストランド間の前記空間の少なくとも一部が、分配されたストランド間形成材料が、その上に重ねられるところの前記タンパク質層と交差し、以前に分配されたストランド間シース形成材料と接触することを可能にする寸法を有する、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ストランド間シースが、シートの形態でタンパク質層上に適用される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記シートが、0.05mm~1mmの断面寸法(厚さ)を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ストランド間シース材料が、フィルムまたは不織メッシュの形態である、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ストランド間シース形成材料が、前記タンパク質ストランドの少なくとも一部に適合するように構成された交互の細長い凹状セグメントを有する波状シートの形態で前記タンパク質ストランド層上に適用される、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ストランド間シース形成材料が液体形態で分配される、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
液体形態の前記ストランド間シース形成材料が、押出、噴霧、ブラッシング、ディッピング、分配、インクジェット印刷、スクリーン印刷のいずれかによって先行する層上に適用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ストランド間シース形成材料が粉末形態で分配される、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ストランド間シース形成材料の前記適用が、前記ストランド間シース形成材料が液体である温度で行われ、前記方法が、前記ストランド間シース形成材料が一旦適用されると、固化する温度まで冷却することを含む、請求項20~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
タンパク質層のタンパク質ストランドが、前記タンパク質層の平面に垂直な断面平面から前記タンパク質層を見たときに、前記タンパク質ストランドのハニカム様配列を形成するように、その先行するタンパク質層の2つの隣接するタンパク質ストランドの間の空間の上に適用される、請求項20~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
タンパク質層が、その中の前記タンパク質ストランドが以前に適用されたタンパク質層と本質的に整列するように適用される、請求項20~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記層に圧力を加えることを含む、請求項20~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
加えられた前記圧力が、前記肉類似物またはその一部の少なくとも5%の体積低減を引き起こす、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
加えられた前記圧力が、前記肉類似物またはその一部の密度の少なくとも5%の増加を引き起こす、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記圧力が、前記層の表面に垂直な方向に加えられる、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記圧力が真空圧力を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記肉類似物がその所望の寸法に達すると、またはN個のタンパク質層を分配した後に、前記圧力が加えられ、Nは1以上の整数である、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記複数のストランドが、単一の細長いストランドを、前記ストランドのセグメントを本質的に整列した構成に維持しながら、分配することによって形成される、請求項20~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記複数のストランドが、個々のストランドを分配することによって形成され、各ストランドが少なくとも隣接するストランドと本質的に整列している、請求項20~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
各タンパク質ストランドが、0.1mm~10mmの範囲内の断面寸法を有する、請求項20~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
各シースが、0.1mm~5mmの範囲内の厚さを有する、請求項20~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの熱処理を含む、請求項20~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ストランド間シース形成材料の少なくとも一部を適用した後に熱処理することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記熱処理が、前記肉類似物またはその一部を少なくとも40℃のコア温度まで制御して加熱することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記ストランド間シース材料が、以下の物理的特性:
前記食用肉類似物の試験片における前記タンパク質ストランドの公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも46Nの平均硬度であること、および
前記食用肉類似物の試験片における前記ストランドの前記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも0.012MPaの平均引張強度であること
のうちの少なくとも1つを提供するように選択される、請求項20~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記硬度が、20mm×20mm×20mmの寸法を有する試験片で測定される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記引張強度が、50mm×20mm×10mmの寸法を有する試験片で測定される、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食品産業に関し、具体的には肉類似物産業に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術文献
本開示の主題の背景として関連すると考えられる参考文献を以下に列挙する。
米国特許第2,682,466号明細書
米国特許第2,730,447号明細書
米国特許第2,730,448号明細書
国際特許出願公開第2020/152689号パンフレット
国際特許出願公開第2020/030628号パンフレット
国際特許出願公開第2020/030628号パンフレット
【0003】
本明細書における上記の参考文献の承認は、これらが本開示の主題の特許性に何らかの意味で関連することを意味すると推測されるべきではない。
【0004】
積層造形技術の開発は、食品産業、具体的には肉類似物産業において著しく成長している。
【0005】
既に1950年代には、高タンパク質人工(合成)肉の製造が米国特許第2,682,466号、第2,730,447号および第2,730,448号明細書に記載されており、これらによれば、食用結合剤を使用してある量のタンパク質フィラメント/繊維が互いに結合されている。
【0006】
最近、国際公開第2020/152689A1号パンフレットは、肉類似物内に別々に分布されたタンパク質ベース成分および脂肪ベース成分を含む肉類似物を記載しており、この肉類似物は、脂肪ベース成分から本質的になる少なくとも1つの他のセグメントとは化学的に異なる、タンパク質ベース成分から本質的になる少なくとも1つのセグメントを含み、以下の(i)肉類似物の立方体試料が異方性の物理的特性を示すこと、および(ii)肉類似物がタンパク質ベース成分および脂肪ベース成分の非均一的な分布を含むことのうちの少なくとも1つが満たされる。肉類似物を製造する方法もこの明細書に開示され、この方法は、好ましくは肉類似物のデジタル印刷を含んでいた。
【0007】
さらに最近では、国際公開第2020/030628号パンフレットは、肉の機械的特性に似せた圧縮および引張ヤング率を有する食用マイクロ押出製品、好ましくは肉代替品が記載されており、この食用製品は、粘弾性組成物から作製されたマイクロ押出要素のいくつかの層を含み、粘弾性組成物は、適切な食用溶媒中に大量のタンパク質および食用擬塑性ポリマーを含む。この製品は、特に3D印刷法を使用して得られる。
【0008】
またさらに、国際公開第2020/030628号パンフレットは、2層以上の粘弾性マイクロ押出要素を含む食用マイクロ押出製品を製造するための方法を記載しており、各押出要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマーおよび適切な食用溶媒を含む。食用複合製品も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2,682,466号明細書
【特許文献2】米国特許第2,730,447号明細書
【特許文献3】米国特許第2,730,448号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2020/152689号パンフレット
【特許文献5】国際特許出願公開第2020/030628号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
本開示は、その態様の第1のものに従って、複数のタンパク質ストランドおよび複数のストランド間シース材料を含む食用製品、好ましくは1つの模倣肉であって、
上記食用肉類似物の少なくとも1つの試料において、以下の条件:
上記複数のタンパク質ストランドが、上記少なくとも1つの試料において本質的に整列していること、
タンパク質ストランドの少なくとも一部が、ストランド間シース材料によって少なくとも部分的に囲まれていること、
上記ストランド間シース材料が、約30℃を超える融点を有する少なくとも1つの成分を含むこと、
上記ストランド間シース材料が、少なくとも2つの隣接する離間したタンパク質ストランド間を相互接続する網状構造を形成すること
が満たされ、
上記ストランド間シース材料が、上記食用製品に以下の物理的特性:上記食用製品の試験片におけるタンパク質ストランドの公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも46Nの平均硬度であること、および
上記食用製品の試験片におけるストランドの上記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも0.012MPaの平均引張強度であること
のうちの少なくとも1つを提供するように選択される、食用製品、好ましくは1つの模倣肉を提供する。
【0011】
本開示はまた、肉類似物を製造するための積層造形方法であって、以下のステップ:
(a)タンパク質の1つ以上のストランドを少なくとも1つのタンパク質層に分配するステップであって、各上記タンパク質層が本質的に整列したタンパク質ストランドを含み、上記タンパク質ストランドの少なくとも一部がその隣接するストランドから離間している、分配するステップ、
(b)1つ以上のタンパク質層上に、ストランド間シース材料を分配するステップ、および
(c)上記肉類似物の所望の寸法に達するまで、上記ステップ(a)および(b)を繰り返すステップ、
を含み、
上記シース材料が隣接するストランド間の空間を占有する、方法を提供する。
【0012】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、それを実際にどのように実行することができるかを例示するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】肉類似物スラブ(slab)の空間寸法を含む、XP軸(幅)、Z軸(高さ)およびP軸(長さ)を含む空間寸法の表示を有する肉類似物の3Dモデルを提供する。
【
図1B】肉類似物ステーキの空間寸法を含む、XP軸(幅)、Z軸(高さ)およびP軸(長さ)を含む空間寸法の表示を有する肉類似物の3Dモデルを提供する。
【
図2A】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、本質的にすべてのストランドが離間し、平坦なシース材料を使用して相互接続された構成を含む。
【
図2B】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、交互に対のストランドの層を有する構成を含む。
【
図2C】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、各タンパク質層が2つの本質的に整列した単層からなる構成を含む。
【
図2D】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、各層が単一または対のストランドの単層を含む構成を含む。
【
図2E】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、ストランド間にランダムなギャップを有する構成を含む。
【
図2F】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、波状シース材料およびタンパク質材料の多層を使用して製造された構成を含む。
【
図2G】本開示のいくつかの非限定的な構成によるタンパク質スタンドおよびシース材料のいくつかの組み立て平面の概略断面図(Z-XP平面)であり、各タンパク質単層が波状シース材料によって分離された構成を含む。
【
図3A】タンパク質ストランドの層の上に配置する前のストランド間シースの構成の概略図である。
【
図3B】タンパク質ストランドの層の上に配置する前のストランド間シースの別の構成の概略図である。
【
図3C】タンパク質ストランドの層の上に配置する前のストランド間シースのさらに別の構成の概略図である。
【
図3D】タンパク質ストランドの層の上に配置する前のストランド間シースのさらに別の構成の概略図である。
【
図3E】タンパク質ストランドの層の上に配置する前のストランド間シースのさらに別の構成の概略図である。
【
図4A】組み立て後の側面図を含む多層肉類似物の画像である。
【
図4B】組み立て後の上面図を含む多層肉類似物の画像である。
【
図4C】組み立てられた層を圧縮した後の側面図を含む多層肉類似物の画像である。
【
図5A】
図2Aに示すタイプの製造工程後に得られた肉類似物の画像であり、光学画像を提供する。
【
図5B】
図2Aに示すタイプの製造工程後に得られた肉類似物の画像であり、同じ画像をスケールと共に提供する。
【
図6A】引張試験を行うように構成されたシステムのグリッピング要素の画像であり、グリッパによって保持された肉類似物を示す。
【
図6B】引張試験を行うように構成されたシステムのグリッピング要素の画像であり、グリッパによる肉類似物の把持を可能にするグリッパの内側粗面を示す。
【
図9A】カラギーナンおよびグルテンを含む肉類似物試料(Car-Glu)の画像である。
【
図10A】アームおよびプレートを含むT字形固定要素を含む引張強度測定要素の図を提供する。
【
図10B】試験片を挟む一対のT字形固定具を含む引張強度測定要素の図を提供する。
【
図10C】動作中の引張強度測定システムの画像を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、結合組織、より具体的には筋周膜が、牛肉の物理的および感覚刺激特性において重要な役割を果たすという理解に基づいている。したがって、肉類似物の品質を改善するために、具体的には、少なくとも筋周膜の機能を模倣する、すなわち肉類似物の繊維状成分を一緒に保持することができる成分を任意の肉類似物内に組み込むことが重要であることが想定されている。
【0015】
上記の理解に基づいて、改善された肉類似物およびそれを得る方法が開発された。
【0016】
具体的には、本明細書に開示されるように、複数のタンパク質ストランドおよび複数のストランド間シース材料を含む食用肉類似物が提供される。肉類似物中の複数のタンパク質ストランドは、当該肉類似物の長手方向軸に沿って本質的に整列し、ストランドの少なくとも一部は隣接するストランドから離間し、タンパク質ストランドの少なくとも一部は、ストランド間シース材料によって少なくとも部分的に取り囲まれ、ストランド間シース材料は、30℃を超える融点を有する少なくとも1つの成分を含み、ストランド間シース材料は、少なくとも2つの隣接する離間したタンパク質ストランド間を相互接続する網状構造を形成する。ストランド間シース材料は、以下の物理的特性:
肉類似物の少なくとも1つの試験片におけるタンパク質ストランドの公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも46Nの平均硬度であること、および
肉類似物の少なくとも1つの試験片におけるストランドの上記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に、少なくとも0.012MPaの平均引張強度であること
のうちの少なくとも1つを有する食用肉類似物を提供するように選択される。
【0017】
本開示の文脈において、肉類似物製品の試験片または試料に言及する場合、製品全体ならびにストランドの整列の視覚化を可能にする少なくとも1つの切断片を包含すると理解されるべきである。いくつかの例では、試験片は、約1cm×1cm×1cmの寸法を有する試料である。試験片は、立方体形状である必要はなく、少なくとも2層の整列したストランドを含む限り、任意の構成を有することができる。
【0018】
本明細書で提供される肉類似物の特有の特徴は、味、食感、消費者体験、および当業者によって典型的に検査される他の特性に関して、それらが実際の肉製品に似ているか、または似せることを目的としていることである。理論に束縛されるものではないが、ストランド間シース材料の追加により、本物の肉の良好な模倣が達成されたと考えられる。
【0019】
いくつかの例では、肉類似物に言及する場合、3D印刷という用語でも知られる積層造形技術を使用して得られる本質的に(好ましくは排他的に)動物を含まない肉製品を包含すると理解されるべきである。
【0020】
いくつかの例では、積層造形技術はデジタル印刷を含む。
【0021】
積層造形の当業者によって理解されるように、本工程は、典型的にはデジタルモデルに基づいて、材料を1つずつ積層することによって物理的(または3D)物体を作成するために使用される。
【0022】
本明細書に開示される食用肉類似物は、層を含む。各層は、2つ以上の本質的に整列したタンパク質ストランドを含み、互いに積み重ねられた層の組み合わせは、上記複数のタンパク質ストランドを含む。
【0023】
タンパク質ストランドの整列を
図1A(スラブ図)および
図1B(ステーキ図/ステーキセグメント)に示す。
図1Aは、デカルト座標系に対するストランドの方向を示し、ストランドの本質的な整列は、P軸に本質的に平行である。
図1Bは、本開示によるステーキ102内のストランドの方向を示し、タンパク質ストランド110は本質的に平行であり、P軸と整列している。
図1Bはまた、断続的に、タンパク質ストランド110間にあるいくらかの脂肪材料150を示す。ストランドを相互接続するシース材料116も示されている。特に、
図1Bは、
図1Bに示すようなスラブのXP軸に沿って切断されたステーキを示す。しかしながら、ステーキは、スラブを印刷する方向に関係なく、他の線に沿ってスラブから切断することもできる。
【0024】
本開示の文脈において、「タンパク質ストランド」に言及する場合、1つ以上の食用タンパク質を含む組成物を指すと理解されるべきであり、ストランドまたはロッドの形状を有し、ストランドの形状を維持しながら印刷ベッドに堆積させることができる。これは、当技術分野で公知のように、組成物の形状を維持するのを助ける物質(例えばヒドロゲルの使用によって)をタンパク質組成物に組み合わせることによって、および/または組成物を硬化作用などに曝露することによって達成することができる。
【0025】
タンパク質組成物は、他の成分を含むことができる。
【0026】
いくつかの例では、タンパク質ストランドは、少なくとも10%w/w、時には少なくとも20%w/w、時には少なくとも30%w/wのタンパク質を含むタンパク質組成物を含む。
【0027】
いくつかの例では、タンパク質ストランドは少なくとも50%w/wの水を含む。
【0028】
いくつかの例では、タンパク質ストランドはテクスチャ加工タンパク質を含む。
【0029】
これに関連して、テクスチャ加工タンパク質物質に言及する場合、テクスチャ加工タンパク質ストランド内のタンパク質の物理的状態を定義すると理解されるべきである。いくつかの例では、タンパク質物質は、繊維状構造を作成するようにテクスチャ加工された、水に結合したタンパク質分子からなる。他の例では、テクスチャ加工タンパク質は、実質的に整列した繊維状構造を作成するように、特定の方向に実質的に整列したタンパク質分子を含む。タンパク質材料の整列は、例えば、すべて当技術分野で周知の調理押出工程、剪断(クエット)セルおよび/または紡糸によって、ならびに生地中のタンパク質性繊維の既存の束を押出方向に対して整列させるために狭い通路に押し込む冷間押出によって達成することができる。さらにまたはあるいは、テクスチャ加工タンパク質ストランドに言及する場合、ストランドがテクスチャ加工繊維、例えば本質的に軸方向に整列したタンパク質含有繊維の1つ以上の束を含むこと、およびテクスチャ加工繊維の各束が、構造的に組織化されたタンパク質材料の集合体を含むことを意味すると理解されるべきである。
【0030】
いくつかの例では、タンパク質材料は変性タンパク質を含む。変性タンパク質は、タンパク質の変性および/またはタンパク質フィラメントの整列および繊維状構成の生成をもたらす、当技術分野で公知の方法によって得られる種類のものであり得る。限定されないが、変性タンパク質は、機械的力(例えば、紡糸、撹拌、振盪、剪断、圧力、乱流の適用、衝突、合流、叩打、摩擦、波動などの工程において)、放射線(例えば、マイクロ波、電磁)、熱エネルギー(蒸気またはその他による加熱)、架橋、酵素反応(例えば、トランスグルタミナーゼ活性)および化学試薬(例えば、pH調整剤、コスモトロピック塩、カオトロピック塩、石膏、界面活性剤、乳化剤、脂肪酸、アミノ酸)を加えることによって得られる種類のものであり得る。
【0031】
本明細書に開示される肉類似物は、製品全体に同じタンパク質材料/組成物を含有することができるが、いくつかの例では、肉類似物は、異なるタイプのタンパク質の組み合わせ、すなわち異なるタイプのタンパク質ストランドを含有することができることに留意されたい。単一の肉類似物製品内のタンパク質ストランドの違いは、以下のいずれかによって示すことができる。
-ストランドを形成する成分の組成、例えば、異なるストランド内に含まれるタンパク質のタイプおよび/または純度の程度、および/または異なるストランド内に含まれるタンパク質の量(同じタンパク質が単一の肉類似物製品の異なるタンパク質ストランドの間で使用される場合であっても)における違い
-水の濃度、脂肪濃度、および/または食品産業で公知の食品添加物(香味材料、着色剤など)の異なるタイプおよび/または濃度における違い
-例えば、肉類似物製品内の一部のストランドが高度にテクスチャ加工され(好ましくは繊維状、好ましくは実質的に整列した繊維状)、一部がほとんどテクスチャ加工されず、一部が全くテクスチャ加工されないことにより、それらが異なるテクスチャ挙動を示すような、タンパク質のテクスチャにおける違い
-製品内の一部のストランドがゲルの形態であり、同じ製品内の他の一部のストランドが生地および/またはエマルジョンの形態であり得るようなストランドの形態における違い
【0032】
いくつかの例では、タンパク質ストランドの少なくともいくつかは、生地(例えば、濃厚な展性ペースト)の形態である。
【0033】
いくつかの他の例では、タンパク質ストランドの少なくともいくつかは、ゲルの形態である。
【0034】
いくつかの他の例では、タンパク質ストランドの少なくともいくつかは、エマルジョンの形態である。
【0035】
タンパク質ストランド中のタンパク質の量は、とりわけ、タンパク質のタイプ、所望の物理的(例えばテクスチャ)特性、それらが組み合わされる他の物質などに応じて変動し得る。しかし、いくつかの例では、タンパク質ストランドは、5重量%~80重量%、時には10重量%~60重量%(湿重量ベース)のタンパク質材料を含む。いくつかの他の例では、タンパク質ストランドは、少なくとも10%のタンパク質、時には少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、時には少なくとも70%のタンパク質材料を含む。残り(非タンパク質物質)は、脂肪、炭水化物、および主に水または水性媒体の1つまたは組み合わせである。
【0036】
タンパク質の量は、当技術分野で公知の技術によって決定することができる。例えば、特定のジョーンズ係数を使用したケルダール法によってである。
【0037】
本開示の文脈において、タンパク質組成物またはタンパク質材料に言及する場合、タンパク質ストランドを構成する組成物を指すと理解されるべきである。タンパク質組成物は、典型的には、水および食用タンパク質材料を含む。タンパク質材料は、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチドおよびアミノ酸の単一のタイプまたは組み合わせを含むことができる。
【0038】
いくつかの例では、タンパク質組成物は脂肪を含まない。
【0039】
いくつかの他の例では、タンパク質組成物は、例えばタンパク質ストランドのレオロジー特性、例えばタンパク質材料の可撓性を調節するために脂肪を含む。
【0040】
いくつかの例では、タンパク質ストランドは、水および脂肪を含む他の非タンパク質材料と組み合わせて1つ以上のタンパク質を含み、水成分および脂肪成分は以下でさらに論じられる。
【0041】
タンパク質は、ヒトの使用または消費にとって許容可能かつ安全な任意の供給源であり得る。
【0042】
いくつかの例では、タンパク質は非哺乳動物源のものである。非哺乳動物源としては、限定されないが、植物源、節足動物(例えば昆虫)、藻類、真菌(例えば酵母)、細菌または別の微生物が挙げられる。
【0043】
いくつかの他の例では、タンパク質は非動物源のものである。非動物源は、植物源、ならびに、細胞が動物細胞である場合でも、細胞培養から得られるタンパク質材料を含む。
【0044】
いくつかの例では、タンパク質は植物タンパク質を含む。植物タンパク質は、純粋タンパク質、タンパク質単離物、タンパク質濃縮物、タンパク質粉、テクスチャ加工植物性タンパク質(TVP)などのテクスチャ加工タンパク質の形態であり得る。
【0045】
本開示の文脈において、TVPは、テクスチャ加工植物性タンパク質の乾燥形態(膨張したTVPと見なされることもある)、ならびに高水分押出(HME)または高水分押出調理(HMEC)または同様のものの結果として当技術分野で公知の高水分形態の両方を示すために使用される。TVPはまた、テクスチャ加工植物性タンパク質の任意の「中間」形態を示すことができ、TVP中の水分レベルおよび/またはTVPの膨張の程度は、乾燥(膨張)形態およびHME(C)形態で典型的に見られるものの中間である。
【0046】
タンパク質は、任意の植物源であってもよく、これには、限定されないが、小麦、マメ科植物(パルス豆、豆、エンドウ豆、レンズ豆、ナッツ)、植物の種子および穀粒(例えば、ヒマワリ、キャノーラ、イネ)、茎または塊茎タンパク質(例えば、ジャガイモタンパク質)が含まれる。
【0047】
いくつかの例では、タンパク質はマメ科植物に由来する。マメ科植物/豆タンパク質の具体的であるが非限定的な例としては、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、ヒヨコ豆タンパク質、ルピナスタンパク質、緑豆タンパク質、インゲン豆タンパク質、黒豆タンパク質、アルファルファタンパク質が挙げられる。
【0048】
本明細書に開示される肉代替物に適したいくつかの具体的であるが非限定的なタンパク質は、ベータ-ゴングリシニン(beta-gonglycinin)、グリシニン、ビシリン、レグミン、アルブミン、グロブリン、グルテリン、グルテン、グリアジン、グルテニン、マイコタンパク質である。
【0049】
上記のように、ストランドを形成するタンパク質材料は、単一のタイプのタンパク質またはタンパク質のブレンドを含むことができる。単一のタンパク質として、または他のタンパク質と組み合わせて使用されるタンパク質の一例は、グルテンである。理論に束縛されるものではないが、そのようなグルテンベース繊維は、印刷ノズルを引っ張るかまたは押し込むことによって特定の方向に整列させることができる。
【0050】
ストランド中の唯一のタンパク質として、または他のタンパク質と組み合わせて使用することができるタンパク質の他の一例は、ベータコングリシニン大豆タンパク質(単離物または濃縮物)である。
【0051】
さらに別の例では、タンパク質ストランドの少なくとも一部は、動物由来成分、例えば、牛筋、鶏筋、卵タンパク質、乳タンパク質、昆虫ベースタンパク質などを含有するか、または、供給源が動物由来である場合でも、細胞培養技術によって達成される。
【0052】
さらに別の例では、タンパク質材料の少なくとも一部は、例えば植物、藻類、真菌、または微生物に由来する組換えタンパク質を含有する。
【0053】
タンパク質材料は、食用添加剤、例えば、限定されないが、デンプンおよび食物栄養繊維(および他の形態のセルロース系繊維)を含むがこれらに限定されない、タンパク質および/または炭水化物起源のいずれかに由来する繊維;着色剤(例えば、アナト抽出物、カラメル、エルダーベリー抽出物、リコペン、パプリカ、ウコン、スピルリナ抽出物、カロテノイド、クロロフィリン、アントシアニン、およびベタニン)、乳化剤、酸味料(例えば、酢、乳酸、クエン酸、酒石酸リンゴ酸およびフマル酸)、香味剤または香味増強剤(例えば、グルタミン酸一ナトリウム)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、ローズマリー抽出物、アスパラチン、ケルセチン、および様々なトコフェロール)、食物強化剤(例えば、アミノ酸、ビタミンおよびミネラル)、保存剤、安定剤、甘味料、ゲル化剤、増粘剤および食物繊維(例えば、柑橘類源に由来する繊維)を含んでもよい。
【0054】
タンパク質ストランドは、機能性材料でコーティングされてもよい。コーティングは、ストランドの外面の一部が機能性材料によって覆われるような部分コーティングであってもよく、またはコーティングは、ストランドの外面全体が機能性材料によって覆われる完全なコーティングであってもよい。
【0055】
本開示の文脈において、「機能性材料」という用語は、ストランドに物理的および/または化学的特性を付与する任意の物質を包含する。機能性材料は、上記1つ以上のストランドの外面の1つ以上の部分に結合した粉末、フィルムまたは液体の形態であり得る。
【0056】
いくつかの例では、機能性材料は、ストランドのテクスチャを改善するために選択された1つ以上の物質であり得る。一例では、機能性材料は、ストランドの可撓性を改善するように選択される。限定されないが、そのような物質は、水、ゲル化剤(例えば多糖類)、接着材料、さらに非限定的な例として、油、または時には非限定的な例として、デンプン、アルギネート、ワックス、セルロース、非食用であるが食品安全基準のポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、または他のタイプのフィルム膜/食品包装材料を含むことができる。非食用コーティングの場合、これらは通常、印刷前に除去される。
【0057】
さらにいくつかの他の例では、機能性材料は、例えば、テクスチャ加工タンパク質が水和または部分的であっても水和され、したがって酸化的損傷をより受けやすい場合に、繊維状材料を酸化から保護するものである。限定されないが、そのような酸化防止コーティング材料は、食品安全基準のポリマーを含むことができる。
【0058】
さらにいくつかの他の例では、機能性材料は細菌防除剤であり、すなわち、例えば、テクスチャ加工タンパク質が水和または部分的であっても水和され、したがって細菌汚染をより受けやすい場合に、ストランド上の細菌増殖を防止/遮断する。
【0059】
いくつかの例では、機能性材料は、少なくともストランドの表面に水分を与えるか、または含水量を増加させるために使用される水和/保湿材料である。限定されないが、そのような保湿材料は水であるか、または水を含む。
【0060】
いくつかの他の例では、機能性材料は、ストランドを強化するように選択された1つ以上の物質であり得る。限定されないが、このような物質は、セルロースベース、例えば、メチルセルロース(例えば粉末の形態で)、結晶性メチルセルロース(CMC)、アルギネート、ペクチン;固化防止剤;ゼイン粉末;食用鉱物粉末、親水コロイド、ならびに非食用であるが食品安全基準のポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、または他のタイプのフィルム膜/食品包装材料を含むことができる。非食用コーティングの場合、これらは通常、印刷前に除去される。
【0061】
いくつかの例では、機能性材料は、ストランドに結合したままであり、最終食品の一部を形成する食用添加材料(いくつかは上で定義されている)である。
【0062】
いくつかの例では、機能性材料は、接着剤前駆体、すなわち、例えば水和された/水と接触したときに活性化されて接着剤として作用することができる材料である。例えば、そのような機能性材料は、湿潤すると粘着性になり、接着剤として作用するデンプンおよび/またはグルテンを含むことができる。
【0063】
機能性材料は、ストランドに機能性材料を噴霧、粉末化、浸漬することのいずれか1つによって、タンパク質ストランドと結合させることができる。
【0064】
タンパク質ストランドは、その長さおよび幅によって定義することができる。本開示の文脈において、長さは、ストランドの長手方向軸に沿った寸法を定義し、幅は、長手方向軸に垂直な軸の寸法(断面寸法)を定義する。
【0065】
したがって、ストランドに言及する場合、短い、中程度の長さおよび長いストランドを包含すると理解されるべきであり、短いストランドは約10mm~約50mmの範囲内の長さを有し、中程度のストランドは約50mm~約100mmの範囲内の長さを有し、長いストランドは約10cmの最小長さ、時には約10cm~数メートル、またはさらには数十メートルを有する。
【0066】
ストランドは、その断面幅(例えば、ストランドが円形断面を有する場合は直径、またはストランドが多角形断面を有する場合は対角線)によって定義することもできる。
【0067】
いくつかの例では、ストランドは、約0.1mm~約10mm、時には約0.5mm~約10mm、時には約0.1mm~約5mm、時には約1mm~約5mm、時には約0.5mm~約3mm、時には約0.5mm~約2mm、時には約2mm~約4mm、時には約1mm~約5mmの範囲内の幅を特徴とする。
【0068】
ストランドは、代替的または追加的に、二次元比、例えば長さ対平均断面比によって定義することができ、例えば直径約2mmの約500mmのストランドは、約250の寸法比を有する。
【0069】
いくつかの例では、ストランドは、湾曲した(例えば、楕円形、円形)または多角形(例えば、三角形、正方形、五角形または六角形)の周縁を有する。
【0070】
いくつかの例では、ストランドは無定形の周縁を有する、すなわち、定義された断面形状を有さない。
【0071】
ストランドは、様々な技術によって得ることができる。
【0072】
いくつかの例では、ストランドは押出によって得られる。
【0073】
いくつかの例では、ストランドは剪断セルを使用することによって得られる。
【0074】
いくつかの他の例では、ストランドは、ストランドの機械的スライシングによって得られる。
【0075】
上記のように、ストランドは、公称方向を有するように本質的に平行または本質的に整列している。
【0076】
本開示の文脈において、「本質的に」という用語は、定義されたパラメータからの、1%、2%、3%、10%、またはさらには最大20%などの、ある程度のレベルの偏差を示すために使用される。
【0077】
これに関連して、「本質的に平行なストランド」または「平行に配向されたストランド」または「本質的に整列している」と言及する場合、ストランド(および/またはテクスチャ加工タンパク質ストランド内の繊維)の少なくとも80%、好ましくはストランド(および/または繊維)の95%、好ましくはストランド(および/または繊維)の99%が、試験片内で見たときに一方が他方に対してほぼ平行である配向を指すと理解されるべきである。これに関連して、本質的な整列とは、少なくとも1cm×1cm×1cmの寸法を有する試験片内である。
【0078】
「本質的に平行」または「ほぼ平行」という用語は、最大±10°、時には最大±3°、最大±1°である長手方向軸の公称方向を包含すると理解されるべきである。
【0079】
本明細書で使用される「公称方向」という用語は、ストランドをストランド方向に垂直な任意の方向から見たときに、ストランドおよび/またはストランド内の繊維の優に50%超が、その公称方向から±45度までの方向を有する方向を指す。さらに、「公称方向」という用語はまた、本明細書に記載の高倍率撮像を使用して見出されるストランドまたは繊維の方向の平均を指すことができる。公称方向は立体角であり、2つの図の各々における投影図は、この図で見られる平均方向である。
【0080】
タンパク質がテクスチャ加工タンパク質材料である場合、各タンパク質ストランドは、典型的には、本質的に軸方向に整列した繊維を含む。ストランド内の繊維は、単一または複数の別個の束として配置され得る。
【0081】
いくつかの例によれば、ストランド内のタンパク質繊維は長い繊維である。
【0082】
本明細書で使用される「本質的に軸方向に整列した繊維」という用語は、ストランドの長い軸の方向と本質的に同じである公称方向を有する繊維を含む繊維状タンパク質ストランドを指す。
【0083】
ストランド内の繊維状材料の整列は、様々な技術によって得ることができる。例えば、連続的に押すこと(例えば押出中に行われるように)、連続的に引っ張ること(例えば、紡糸で行われるように)および剪断すること(例えば、剪断クエットセルで行われるように)のいずれかによって、流動するタンパク質材料に一定の機械的力を特定の方向に加えることによって得ることができる。繊維状材料の整列技術は、得られる繊維の異方性特性を高めるために、熱効果(例えば、加熱または冷却)、化学剤(例えば酵素)などを利用することができる。
【0084】
いくつかの例では、ストランド内のタンパク質材料の整列は、熱間押出または冷間押出などの押出によって得られる。したがって、1つ以上のテクスチャ加工タンパク質ストランドは、タンパク質押出物を含む。
【0085】
いくつかの他の例では、ストランド内のタンパク質材料の整列は、例えば電界紡糸装置を使用して行われる紡糸によって得られる。タンパク質をテクスチャ加工するためのタンパク質の紡糸には、限定されないが、酵素的アプローチ(典型的にはゲル様構造を得るため)、脱水アプローチ(典型的にはタンパク質材料を剛性化するため)、温度アプローチ(タンパク質材料の流動性/溶解性に影響を及ぼすため);希釈防止アプローチ(典型的には湿式紡糸と呼ばれる);pHアプローチ(典型的には、タンパク質材料、例えば弱酸性条件でより可溶性であるキトサンの溶解性にも影響を及ぼすため)を含む様々なアプローチがある。
【0086】
いくつかの例では、本質的に整列したタンパク質材料の形成を促進するために、それを1つ以上の多糖類と組み合わせることができる。限定されないが、そのような多糖類は水溶性であるか、または特定のpHで可溶性であるポリマーである。そのようなポリマーとしては、限定されないが、グアムガム(Guam gum)、キサンタンガム、k-カラギーナン、キトサン、セルロース、デンプンおよびリグニンが挙げられる。
【0087】
肉類似物は、タンパク質材料およびストランド間シース形成材料だけでなく、追加の材料を含むことができる。
【0088】
いくつかの例では、肉類似物は脂肪材料を含む。本開示の文脈において、脂肪材料に言及する場合、親油性材料を含む物質の組成物として理解されるべきである。
【0089】
親油性材料という用語は、ヒトの使用または消費にとって許容可能かつ安全な親油性化合物の単一の種類または組み合わせを包含すると理解されるべきである。本開示の文脈において、親油性材料は、限定されないが、一般に脂肪酸、脂肪アルコール、油、脂質、バターおよび脂肪のいずれか1つまたは組み合わせを含むことができる。
【0090】
いくつかの例では、親油性材料は、1つ以上の親油性化合物を含む。
【0091】
いくつかの例では、親油性材料は、非哺乳動物源のものである。非哺乳動物源は、限定されないが、合成または半合成の親油性化合物、植物源を含むことができる。
【0092】
いくつかの例では、親油性材料は、植物由来の親油性化合物を含む。
【0093】
いくつかの例では、親油性材料は、少なくとも1つの油、具体的には植物由来油を含む。植物由来油の非限定的なリストには、トウモロコシ油、オリーブ油、大豆油、落花生油、クルミ油、アーモンド油、ゴマ油、綿実油、菜種油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、藻類油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ババス油、小麦胚芽油、および米ぬか油が含まれる。
【0094】
いくつかの例では、親油性材料は少なくともバターを含む。親油性材料内で使用することができる食用バターの非限定的なリストには、シアバター、マンゴーバター、ココアバター、およびククムバター(kukum butter)が含まれる。
【0095】
いくつかの例では、親油性材料は、少なくとも1つの脂肪酸(飽和および不飽和)を含む。いくつかの例では、脂肪酸はC6~C24飽和または不飽和脂肪酸である。
【0096】
いくつかの例では、親油性材料は、脂肪材料、例えば限定されないが、グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)を含む。トリグリセリドの具体的であるが非限定的な例は、レシチンまたはリゾレシチンである。
【0097】
いくつかの例では、親油性材料は、組換えまたは非組換えのいずれかで、藻類、真菌または微生物(例えば古細菌)に由来するものである。
【0098】
いくつかの例では、親油性材料は、動物源に由来するか、または動物ベース材料と同一の組換え由来の生成物を含有する。限定されないが、親油性材料は、動物に直接由来してもよく、または動物細胞培養物から抽出されてもよい。例としては、限定されないが、ブタ脂肪(ラード)、ウシ脂肪、ニワトリ脂肪、アヒル脂肪が挙げられる。
【0099】
いくつかの例では、親油性材料は、得られる製品のカロリーを低減するために、脂肪代替物を含有することができる。脂肪代替物は当技術分野で公知であり、炭水化物ベース(例えば、セルロース、デキストリン、改変デンプン、果実ベース繊維、穀物ベース繊維、親水コロイドガム、マルトデキストリン、ペクチン)、タンパク質ベース(例えば、微粒子タンパク質、改変ホエータンパク質濃縮物)、脂肪ベース(例えば、改変トリグリセリド、スクロースポリエステル、エステル化プロポキシル化グリセロール)およびこれらの組み合わせの4つのカテゴリーに分類することができる[Position of the American Dietetic Association:’’Fat replacers’’.Journal of the American Dietetic Association.105(2):266-275.2005、その内容は参照により本明細書に組み込まれる]。
【0100】
いくつかの例では、親油性材料は、30℃で3,000~1,000,000センチポアズ(cP)、時には10,000~300,000センチポアズの粘度を有する。
【0101】
いくつかの例では、親油性材料は、30℃~80℃の範囲の融点温度を有する。
【0102】
いくつかの例では、親油性材料は、オレオゲルまたはオルガノゲルを含む。オレオゲルは、疎水性液体(植物性油のような)からなる連続相を有する半固体系として定義することができ、自己組織化網状構造(構造化剤によって構成される)が液体の物理的捕捉を担う。所望の物理的特性および食品タイプ用途に従って、異なる特性を有するオレオゲルを製造することができる。構造的立体配座は、使用される構造化剤のタイプに依存し、これがオレオゲルの所望の最終用途を規定する[Martins,A.J.,Vicente,A.A.,Cunha,R.L.,&Cerqueira,M.A.(2018).Edible oleogels:an opportunity for fat replacement in foods.Food&Function,9(2),758-773.Doi:10.1039/c7fo01641g、その内容は参照により本明細書に組み込まれる]。
【0103】
食用オレオゲルに使用される構造化剤の非限定的なリストは、エチルセルロース(EC)、天然ワックス(植物および動物)および天然樹脂、フィトステロールおよびオリザノール、脂肪酸誘導体、ならびにレシチンを含む。
【0104】
肉類似物は、典型的には、水ベースまたは水性ベースまたは水分供給材料も含む。水ベース材料は、着色剤、塩、増粘剤、充填剤、安定剤、乳化剤などの様々な溶質および/または懸濁/分散材料を担持する水溶液または水ベースゲルを含む。
【0105】
いくつかの例では、水ベース材料は、15℃~80℃の範囲、時には20℃~65℃の範囲の温度でゲルの形態である。
【0106】
いくつかの例では、水ベース成分は、すべて当業者に公知の着色剤、乳化剤、安定剤、酸味料、香味剤、増粘剤、酸化防止剤、食物強化剤、保存剤、ビタミン、甘味料などの食用添加剤のいずれか1つまたは組み合わせを含む。
【0107】
本質的に整列したストランドはまた、隣接するストランド間に空間を有するように配置される。本開示の文脈において、そのような空間は、ストランドの少なくとも一部の間に存在し、すなわち、いくつかのストランドは接触しており、いくつかのストランドは離間している。これらの空間(ギャップ)は、数ミクロン~数mmの範囲の寸法を有し、層内では、ギャップは必ずしも同じ寸法を有するとは限らず、すなわち、ギャップは、層内、単層内、および/または、単層間および/または層間でその寸法は変動し得る。
【0108】
いくつかの例では、離間した2つのストランド間のギャップは、約50μm~約5mmの範囲内である。
【0109】
いくつかの例では、離間した2つのストランド間のギャップは、約50μm~約5mmの範囲内の任意の範囲内であり、これは、例えば、約50μm~約1mmまたは約100μm~約5mm、または約150μm~約5mmまたは約100μm~約1mmまたは約50μm~約500mmまたは約50μm~約2.5mmまたは約100μm~約2.5mmまたは約50μm~約250mmを含む。
【0110】
本質的に平行なストランドは、ストランド間シース材料と接触している。本明細書で提供される非限定的な例によって示されるように、タンパク質ストランドの少なくとも一部は、ストランド間シース形成材料によって囲まれている。言い換えれば、ストランドの一部は、ストランド間シース形成材料によって少なくとも部分的に包まれている。これは、いくつかのストランドが完全に包まれ、いくつかのストランドが少なくとも部分的に包まれ、いくつかのストランドがシース形成材料によって(シース形成材料と接触せずに)全く包まれないことを意味する。
【0111】
さらに、本明細書で提供される非限定的な例によってさらに示されるように、ストランド間シースは、少なくとも2つの隣接する離間したタンパク質間を相互接続する網状構造様構造を形成する。
【0112】
本開示の文脈において、「ストランド間シース」という用語は、少なくとも部分的にストランドを包む塊(材料)を示すために使用され、塊の組成はストランドを形成するタンパク質組成とは異なる。ストランド間シースの厚さは、ストランド間の距離によって規定され得る。いくつかの例では、ストランド間シースは、タンパク質層上に配置される前に、少なくとも約0.05mm;時には、少なくとも約0.6mm;時には、少なくとも約0.7mm;時には、少なくとも約0.8mm;時には、少なくとも約0.9mm;時には、少なくとも約0.1mmの厚さを有するように設計される。いくつかの例では、ストランド間シースは、タンパク質層上に配置される前に、約0.05mm~約5mm;時には、約0.1mm~約5mm、時には、約0.05mm~約2mm;時には、約0.1mm~約2mm;時には、約0.05mm~約1mm、時には、約0.1mm~約3mmの厚さを有するように設計される。言うまでもなく、最終製品内で、ストランド間シースの厚さは、とりわけ製品の製造中に行われる圧縮ステップに起因して、列挙された寸法を下回る場合がある。
【0113】
本開示の文脈において、「網状構造」という用語は、タンパク質/ストランド材料をウェブの「ボイド」内に保持する網状構造、ウェブまたは足場に似た、肉類似物の断面を取ったときのシース材料の外観を定義するために使用される。
図2A~
図2G、
図4A~
図4Cおよび
図5A~
図5Bの非限定的な例に示すように、網状構造/ウェブの各「ボイド」は、1つ以上のストランドによって占有され得る。
【0114】
いくつかの例では、網状構造およびストランドは、肉類似物の断面をストランドの公称方向に垂直な方向に取ったときに、ハニカム様の外観を提供するように配置される。網状構造の可能な外観の他の非限定的な例を
図2A~
図2Gに示す。
【0115】
本開示の特有の特徴は、1つの層のストランドの少なくとも一部が、以前に適用されたタンパク質層の層間の空間に適合するという事実である。これにより、ハニカム様の外観の形成が可能になる。タンパク質層内のタンパク質ストランドの少なくともいくつかの間の空間を、挟んでいるタンパク質層のタンパク質ストランドによって占有することは、その間にそのような専用の空間を有さないタンパク質ストランドの積層と比較して、得られた肉類似物の物理的特性を改善する(すなわち、本物の肉の感覚刺激特性によりよく似ている)ことが分かった。
【0116】
ストランド間シース材料は、ストランドを包む。しかし、必ずしもすべてのストランドがシース形成材料によって包まれているとは限らない。ストランドを一緒に保持するために、ストランドは、ストランドの周縁全体の少なくとも50%がシース形成材料によって包まれるように設計される。これは、肉類似物の任意のランダムに取った断面図から決定することができ、そこからシース形成材料が占有する体積%を決定することができる(断面スライスはその中のストランドの公称方向に対して垂直に取っている)。
【0117】
本開示によれば、ストランド間形成材料によって包まれているストランドが、ストランド間形成材料によって100%囲まれているとは限らないことに留意されたい。実際、包まれたストランドの少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%がシース形成材料によって囲まれ、残りがその隣接するストランドと本質的に直接接触していれば十分であり得る。さらに、好ましい例では、包まれたストランドの少なくとも70%が、シース形成材料によって囲まれている。
【0118】
ストランド間シースを形成する材料は、室温で固体である、すなわち、約30℃を超える、時には約40℃を超える、またはさらには時には50℃を超える融点を有する少なくとも1つの成分を含む。室温より高く、好ましくは30℃より高い融点を有する少なくとも1つの成分を含めることにより、肉類似物がその完全性を保持することが可能になり、とりわけ、いくらか足場のように作用してストランドを一緒に保持する。
【0119】
いくつかの例では、ストランド間シース材料は、約30℃~約70℃または約30℃~約100℃の融点を有する、すなわち室温で固体である少なくとも1つの成分を含む。
【0120】
いくつかの例では、ストランド間シース材料は、少なくとも50℃、または約50℃~約100℃の融点を有する少なくとも1つの成分を含む。
【0121】
いくつかの例では、ストランド間シース材料の少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%が、少なくとも50℃の融点を有する少なくとも1つの成分を含む。
【0122】
ストランド間シース形成材料は、単一の成分を含むことができ、この場合、上記で定義された融点を有する成分である。さらに、いくつかの他の例では、ストランド間シース材料は、材料の組み合わせを含み、少なくとも1つは上記融点を有する、すなわち室温で固体である。
【0123】
いくつかの例では、ストランド間シース形成材料は、ゲル形成材料を含む。これには、特に、以下に詳述するものなどの、ゲルを形成する食用多糖類が含まれる。
【0124】
いくつかの他の例では、ストランド間シース材料は、タンパク質を含む。場合によっては、タンパク質含有シースを形成するために、タンパク質溶液を型に流し込む。そのような場合、タンパク質溶液は、グルテン、ゼイン(トウモロコシプロラミン)、大豆単離物、エンドウ豆タンパク質などで作製することができる。
【0125】
さらに、いくつかの他の場合では、シースは、タンパク質塊を所望の厚さに圧縮することによって製造される。そのような場合、タンパク質は、TVPまたはHMEを含むことができ、湿潤状態にある間、それらを(場合により加熱して)プレスすることができる。
【0126】
さらにいくつかのさらなる例では、ストランド間シース形成材料は多糖類を含む。
【0127】
シースに含めることができる多糖類のいくつかの非限定的な例は、ペクチン、アルギネート、カラギーナン、キトサン、デンプン、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース)、ガラクトマンナン(例えばフェヌグリークガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、カシアガム)である。
【0128】
いくつかの例では、ストランド間シースがカラギーナンを含む場合、それは好ましくはκ-カラギーナンである。κ-カラギーナンの例示的な量は、シース形成材料の全組成の約5%であり得る。
【0129】
いくつかの例では、ストランド間シース材料は、ヒドロゲルの総体積の80重量%までを構成する量の水を含む特別に設計されたカラギーナンヒドロゲルを含み、わずかに乾燥した場合、すなわちヒドロゲルが50重量%~60重量%の含水量を有する場合、わずかに乾燥したヒドロゲルは、以下を特徴とする:
カラギーナンの量は、ヒドロゲルの総体積の少なくとも5%のCARである、
ヒドロゲルは、25℃~70℃の温度範囲内で少なくとも10KPaの貯蔵弾性率(G’)を有する、および
ヒドロゲルは、25℃で測定して、少なくとも600kPaの引張強度および少なくとも15%の破断時引張歪みを有する。
【0130】
上記の例示的なカラギーナンヒドロゲルは、水性媒体内でゲルの形態の少なくとも5重量%のCARを含むヒドロゲル形成混合物を処理することによって得ることができ、当該ゲルの処理は、貧溶媒(例えばエタノール)を用いて固化ヒドロゲルを形成し、固化ヒドロゲルを脱水して、50%までの水を含む脱水ヒドロゲルを得ることである。
【0131】
いくつかの例では、ストランド間シースは、材料の組み合わせを含む。材料の組み合わせを使用する場合、これらは同じまたは異なるタイプのもの、例えばタンパク質、多糖類、脂肪などであってもよい。しかし、いくつかの好ましい例では、シースが2つ以上の材料を含む場合、少なくとも1つが室温より高い融点を有することが必須である。
【0132】
いくつかの例では、シースが2つ以上の材料を含む場合、30℃~70℃、時には40℃~60℃、時には50℃~70℃の温度で、少なくとも1つは固体であり、少なくとも1つは液体である。
【0133】
例えば、シース形成材料は、すべてゲル形成材料とも見なされる、上記の多糖類などのゲル形成剤の組み合わせから作製することができる。
【0134】
さらに、例えば、シース形成材料は、ゲル形成材料(例えば、多糖類)と、セルロース繊維(マイクロまたはナノ)、柑橘類繊維(フィルムマトリックスを強化し、その融解温度を上昇させるため)、ならびにTVPまたはHMEなどの繊維状材料との組み合わせから作製することができる。
【0135】
肉類似物は、肉類似物製品の試験片/試料で測定されるいくつかの物理的パラメータによって特徴付けることができる。試験片の寸法は、実施される試験に応じて選択することができるが、非限定的な例に示すように、物理的パラメータは特定の試料寸法に限定されない。
【0136】
いくつかの例では、肉類似物は、その硬度によって特徴付けられる。肉類似物の硬度は、寸法約20mm×幅20mm×厚さ20mm(8000mm3)の試料を(硬度について)室温(20℃~25℃)でLloyd標準圧縮プレートを使用するテクスチャプロファイルアナライザ(TPA)システムによって決定することができる。圧縮速度は、50%の変形に達するまで90mm/分である。
【0137】
上記に関連して、硬度を測定する試料/試験片は、本質的に上記の寸法を有する単一の試料、または互いに積み重ねられた2つの試料から形成された試験片、例えば2つの試料の各々が10mmの厚さを有し、したがって合わせて20mmの厚さになる試験片とすることができることに留意されたい。いくつかの例では、2つの積み重ねられた試料を使用する場合、2つの試料を互いに確実に固定するために、間に接着剤を添加することができる。また、2つ以上の試料を積み重ねる場合、積み重ねられた試験片の硬度は、2つ以上の積み重ねられた試料間の接触面に対して垂直な方向に決定される。
【0138】
興味深いことに、試験片の硬度は、試験した試験片が単一の切断片からのものであるか切断片の組み合わせからのものであるかに関係なく、少なくとも46N(ストランドの方向に対して垂直、好ましくは
図1Aに示すZ方向またはXP方向に測定した場合)であることが分かった。したがって、本開示の目的のために、少なくとも46Nの硬度に言及する場合、測定方向に沿って約20mmの厚さを有する試料に積み重ねられる限り、より小さい試料の硬度も表すと理解されるべきである。
【0139】
いくつかの例では、肉類似物からの少なくとも1つの試料は、上記肉類似物の試料(試料は、例えば、上で定義した通りである)の測定方向に関係なく、少なくとも46Nの硬度を特徴とすることができる。
【0140】
いくつかの例では、肉類似物は、上記肉類似物のタンパク質ストランドの公称方向に測定した場合に、少なくとも52Nの硬度を特徴とすることができる。
【0141】
いくつかの例では、肉類似物は、その圧縮弾性率によって特徴付けられる。肉類似物の圧縮弾性率は、TPAシステム(硬度について記載された同じ条件、すなわち、寸法約20mm×幅20mm×厚さ20mm(8000mm3)の試料を(硬度について)室温(20℃~25℃)でLloyd標準圧縮プレートを使用するテクスチャプロファイルアナライザ(TPA)システム)によって決定することができる。圧縮速度は、50%の変形に達するまで90mm/分である。0.02~0.1の歪み範囲で弾性率を計算した。
【0142】
硬度測定と同様に、圧縮弾性率を測定する試料/試験片は、本質的に上記の寸法を有する単一の試料、または互いに積み重ねられた2つの試料から形成された試験片、例えば2つの試料の各々が10mmの厚さを有し(また、時には互いに接着され)、したがって合わせて20mmの厚さになる試験片とすることができることに留意されたい。
【0143】
いくつかの例では、肉類似物の少なくとも1つの試料/試験片は、ストランドのP軸/公称方向で測定した場合に少なくとも0.5MPaの圧縮弾性率(ヤング率)を特徴とする。
【0144】
いくつかの他の例では、肉類似物の少なくとも1つの試料は、ストランドの上記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向から測定した場合に少なくとも0.4MPaの平均圧縮弾性率を特徴とする。
【0145】
いくつかの例では、肉類似物は、その引張強度によって特徴付けられる。肉類似物の引張強度は、引張試験システムによって決定することができる。引張試験は、試料を引っ張るかまたは引き伸ばし、その結果、伸展/伸長および引張強度特性は、引き伸ばすために必要な力および引き伸ばすことができる距離に関して測定される。この目的のために、細長い形状の試験片を両端でグリップし、破断するまで引き伸ばす。
【0146】
本明細書に開示される肉類似物の引張強度を決定するために、約25×20×10mmまたはさらにはそれ以上、例えば50×20×10mmの試験片を使用することができる。グリッパ内での把持を確実にするために、各試験片は、その縁部でシアノアクリレート接着剤(例えば、Loctite 406(登録商標)、Henkel)の層でコーティングされ、次いで、3D印刷によって作製された、10×20mmの接触面積を有し、手動ねじで操作される鋭利な3mmのスパイク(例えば、
図6Aを参照されたい)を備えた2つのプレートを含むグリッパによってグリップされ得る。次いで、室温(約23℃±2℃)で、試験片の各々を、約20mm/分の速度で(3つの異なる方向、P、XP、およびZから)引き伸ばすことができる。
【0147】
引張強度を実行する目的で、本明細書の以下でさらに例示するように、他の試験片寸法、例えば20×20×10mmを使用することができることに留意されたい。したがって、本開示の文脈において、少なくとも0.012MPaの引張強度に言及する場合、測定の実行を可能にする寸法である限り、肉類似物からの切断片の寸法には関係ないと理解されるべきである。
【0148】
いくつかの例では、肉類似物の少なくとも1つの試料は、上記ストランドの公称方向で測定した場合、例えば本質的に整列したストランドの方向、例えば
図1Aまたは
図1BのP軸に沿って測定した場合に、少なくとも0.035MPaの引張強度を特徴とする。
【0149】
いくつかの他の例では、肉類似物の少なくとも1つの試料は、ストランドの上記公称方向に垂直な少なくとも2つの方向(P軸に垂直な方向、例えばXPおよび/またはZ方向)から測定した場合に、少なくとも0.012MPaの平均引張強度を特徴とする。
【0150】
いくつかの例では、肉類似物の少なくとも1つの試料は、ストランドを形成するタンパク質材料の引張強度よりも少なくとも50%高い引張強度を特徴とする。
【0151】
いくつかの例では、肉類似物の少なくとも1つの試料のレオロジー特性は、シース形成材料の物理的特性とタンパク質ストランド形成材料の物理的特性との間の関係によって定義することができる。したがって、肉類似物は、以下のいずれかを特徴とすることができる:
-ストランドの方向に垂直な方向に測定した場合に、ストランド材料の少なくとも2倍であるシース材料圧縮弾性率を有すること、
-ストランドの方向に垂直な方向に測定した場合に、ストランド材料の少なくとも2倍であるシース材料引張弾性率を有すること、
-ストランドの方向に垂直な方向に測定した場合に、ストランドの破断伸びよりも少なくとも50%高いシース材料破断伸びを有すること。
【0152】
本明細書に開示される肉類似物はまた、その異方性挙動を特徴とし、これは本物の肉の異方性挙動と同様であり、すなわち、肉類似物試料の異なる方向から物理的特性を測定した場合に、物理的特性に違いがある。例えば、肉類似物の試料の引張弾性率間および引張強度間の差は、XP方向とZ方向との間よりもP方向とXP/Z方向(
図1A~
図1Bおよびさらに以下に定義される方向の定義)との間で大きくなる。
【0153】
さらに、本明細書に開示される肉類似物は、調理後、約40℃の提供温度で、視覚的および感覚刺激的に本物の肉のストランドに類似するストランドを有することが、テイスティングパネルによって見出された。同じテイスティングパネルはまた、本肉類似物が本物の肉のものと同様の褐変反応(メイラード反応という用語でも知られる)を有すると判定した。理論に束縛されるものではないが、シース形成材料の存在は、その非存在下では生じない褐変反応に寄与すると考えられる。
【0154】
肉類似物の物理的パラメータのいくつかの非限定的な例は、本明細書の実施例に開示されている。具体的には、例示のみを目的として、タンパク質組成が同じであり、シース形成材料が異なる以下の肉類似物を試験した。
【0155】
タンパク質組成物(3つのすべて非限定的な、例示的な肉類似物について):15%グルテン(Sorpolによる活性小麦グルテン)、60%水道水、5%キャノーラ油(「Shufersal」)、5%赤色香辛料着色剤(「Texturot」)、および15%テクスチャ加工植物性タンパク質(TVP SUPRO MAX 5010 IP)を標準的な家庭用ミキサーで混合することによって調製した。
・肉類似物I:5%κ-カラギーナン(Genugel type wr-78、CPkelco)で作製されたシースを含むシース材料組成物(本明細書では「Car」)。
・肉類似物II:グルテンのみで作製されたシースを含むシース材料組成物(本明細書では「Glu」)。
・肉類似物III:水中5%κ-カラギーナンのシースを含み、この層が、両側のCarフィルムから、0.02g/cm2のグルテン粉末の外層でコーティングされている、シース材料組成物(本明細書では「Car-Glu」)。
【0156】
以下の表1A~表1Cおよび表2A~表2B(実施例)は、上記の条件下(本開示の一部を形成する表の含有量)で試験した非限定的な実施例の試料の圧縮弾性率、硬度および引張強度を提供する。
【0157】
肉類似物は、任意の形状または寸法であり得る。肉類似物は、その幅軸(「w」、XP軸とも呼ばれ、
図1A~
図1Bにおいて、ストランドの方向に垂直な方向である)、高さ軸(「h」、Z軸とも呼ばれ、
図1A~
図1Bでは、ストランドの方向に垂直な方向である)、または長さ軸(「l」、ストランド公称方向に平行で、P軸とも呼ばれ、
図1A~
図1Bにおいて、ストランドの方向に本質的に平行な方向である)を考慮して、空間寸法を使用して定義することができる。
【0158】
いくつかの例では、肉類似物は、肉スラブ全体の形態で提供され、ストランドの公称方向は、スラブの長手方向軸と本質的に平行である。
【0159】
さらに、スラブから切断されたステーキ寸法を定義する場合、その長さ、高さおよび幅寸法を指す。いくつかの例では、ステーキは、切断されるところのスラブの幅および高さと同じになるように、肉スラブからP軸に垂直に切断されるが、スラブが大、中または小スラブであるかに関係なく、長さの値(すなわち、ステーキの厚さ)は典型的には0.5~10cmである。
【0160】
いくつかの他の例では、ステーキはスラブの任意の方向から、すなわちストランドの方向に対して必ずしも垂直ではない方向から切断される。例えば、ステーキは、ストランドの方向に沿って切断することができる。切断の方向に関係なく、上記および以下に記載される物理的パラメータは、ストランドの方向に対して決定された方向に常に決定される。例えば、硬度は、典型的には、ストランドの方向に対して垂直に決定される。
【0161】
いくつかのさらなる例では、ステーキは、XP、PおよびZ方向に対して斜め方向に切断することができる。
【0162】
いくつかの例では、肉類似物は、ストランドの方向がステーキ部分の幅に沿っている(例えば、
図1Bを参照されたい)ステーキの形態で既に製造されている。したがって、ステーキ部分を製造する場合、印刷物の高さは、ステーキ部分の幅に対応し、ステーキ部分の厚さは、ストランドの長さに対応する。
【0163】
いくつかの非限定的な例では、本開示によるステーキの寸法は、長さ(P軸)が1cm~5cmの範囲、例えば約3cm、高さ(Z軸)が5cm~10cmの範囲、例えば約6cm、および幅(XP軸)が5cm~12cmの範囲、例えば約9cmである。
【0164】
本明細書に開示される肉類似物を得るために、タンパク質のストランドは、単一の畳み込まれたストランドまたは複数の個々のストランドが、単一ストランドの折畳み間または複数のストランド間のセグメントがそれらの長手方向軸に沿って優先的に本質的に平行であり、折畳みまたはストランドの少なくとも一部の間にギャップが維持された状態で、印刷ベッド上に載置または配置されるように、印刷ベッド上にデジタル印刷される。ストランドの層間には、ストランド間シース形成材料が適用される。このようにして、デジタル印刷の原理に従って、ストランドの多数の単層が3D食品に形成される。
【0165】
具体的には、本開示によって提供されるのは、肉類似物を製造するための積層造形方法であって、以下のステップ:
(a)タンパク質の1つ以上のストランドを少なくとも1つのタンパク質層に分配するステップであって、上記タンパク質層が本質的に整列したタンパク質ストランドを含み、上記タンパク質ストランドの少なくとも一部がその隣接ストランドから離間している、分配するステップ、
(b)上記少なくとも1つのタンパク質層上に、ストランド間シース材料を分配するステップ、
(c)上記肉類似物の所望の寸法に達するまで、上記ステップ(a)および(b)を繰り返すステップ、
を含み、
シース材料が隣接するストランド間の空間を占有するような、方法である。
【0166】
ステップ(a)の繰り返しは、好ましくは、1つの層内に配置されたストランドが、以前に配置された層内のストランドと本質的に同じ方向であるように行われることに留意されたい。言い換えれば、完全な製品中のストランドは、その任意の方向から見たときに、製品にわたって本質的に整列している。
【0167】
本開示の特有の特徴は、
図2A~
図2Gに示すように、タンパク質層内のタンパク質ストランドの少なくとも一部の間の空間またはギャップ、およびそのようなギャップに平行な、以前または以後に配置されたタンパク質層(すなわち、挟んでいる層)のストランドの少なくともいくつかの整列にある。ギャップは、隣接する層からタンパク質ストランドを受容/包含することができるように、ストランドの寸法に適合する寸法を有する。
【0168】
本開示の文脈において、タンパク質層に言及する場合、タンパク質ストランドの単一の単層、またはタンパク質ストランドの2つ以上の単層、例えば3D多層構造で互いに重なって形成された一組の単層から構成され得るタンパク質ストランドの層として理解されるべきである。単層は、完全な層、すなわち以前に形成された単層(その上にこの層が配置される)の表面全体に延在する層、または部分的な単層、例えば以前に形成された単層の一部のみを占有する層、またはさらには以前に形成された単層の上に配置された単一ストランドであってもよいことが理解されるべきである。
【0169】
いくつかの例では、タンパク質層は、タンパク質ストランドの単層を含む。いくつかの他の例では、タンパク質層は2つの単層を含み、1つの層がその以前に形成された単層の上に重ねられ、直接接触している。さらにいくつかの他の例では、タンパク質層は、層内に最大6層、時には最大5層、時には最大4層の単層を含み、各々がその以前に形成された単層の上に重ねられ、直接接触している。
【0170】
ストランド間シース形成材料は、2つの連続したタンパク質層の間を相互接続するように分配される。
【0171】
いくつかの例では、以前に印刷ベッドに置かれたストランド間の空間の少なくとも一部は、重ね合わされたストランド間形成材料が、その上に重ねられるところのタンパク質層と交差し、以前に分配されたストランド間シース形成材料と接触することを可能にする寸法を有する。
【0172】
いくつかの例では、ストランド間シース形成材料は、固体または半固体シート(フィルム)の形態でタンパク質層上に適用される。本開示の文脈において、シートは、平坦なシート、ならびに上記タンパク質ストランドの少なくとも一部に適合するように構成された交互の細長い凹状セグメントを有する波状シートであり得ると理解されるべきである。例えば、シートは、ジグザグ断面構成、または
図2Gに示すようなウェーブ状断面構成を有することができる。
【0173】
スタンド間シース材料で形成されたシート(フィルム)は、既に広げられたシート(例えばピックアンドプレースモード)としてストランド層上に配置することもでき、またはタンパク質ストランド層上に配置されたときに巻き出されるロール状シートとして提供することもできる。
【0174】
いくつかの例では、シートは繊維状要素(例えば、タンパク質、多糖類など)を含有する。そのような場合、シート(フィルム)は、電界紡糸技術を使用することによって製造することができる。いくつかの他の場合では、シートは、不織布産業からの技術を利用して形成された不織メッシュの形態であり得る。例えば、不織メッシュは、平面上のキャリア内に繊維状材料を分配することによって作成することができる。
【0175】
いくつかの他の例では、ストランド間シース形成材料は、噴霧、ブラッシング、ディッピング、分配、インクジェット印刷、スクリーン印刷および押出のいずれか1つによって液体形態で適用される。この目的のために、ストランド間シース形成材料の適用は、ストランド間シース形成材料が液体である温度で行われ、一旦冷却されると、ストランド間シース形成材料は固化する。
【0176】
いくつかの例では、スクリーン印刷技術を使用して、ストランド間シースを形成することができる。例えば、カラギーナン、ペクチン、キトサン、デンプンおよび/またはエチルセルロース溶融物などの多糖類が、既知の孔径および既知の幾何学的サイズを有するポリエステル網上に塗布される。次いで、シリコーンスクレーパの単一の動きにより、液体が基材上に配置される。基材は、ストランド層、またはそこからフィルムがストランド層に移動される二次基材であり得る。
【0177】
さらにいくつかの他の例では、ストランド間シース形成材料は、粉末の形態で適用され、次いで、粉末を液体化、溶解または水和して塊にし、それによってストランド間のギャップを占有する適用後工程に供される。適用後工程は、以下でさらに説明するように、とりわけ、水和および/または熱処理のいずれか1つまたは組み合わせを含むことができる。そのような適用後処理は、典型的には、ストランド間シースを形成する成分の硬化を活性化するためのものである。
【0178】
ストランド間シースを形成するための粉末材料は、大豆、グルテン、エンドウ豆、ジャガイモなどのタンパク質粉末、ならびに粉末形態のゲル形成多糖類から作製することができる。
【0179】
製造工程は、既に堆積したタンパク質および/またはシース形成材料の中または上に他の材料を適用することを含むことができる。例えば、製造工程は、脂肪材料をタンパク質ストランドの少なくとも一部に適用することを含むことができ、および/または食用添加剤を適用することができ、および/または水ベース成分を適用することを含むことができる。
【0180】
タンパク質ストランドならびに製品内に組み込まれる任意の他の材料は、組み立て計画に従って手動でまたはデジタル的に配置することができ、タンパク質ストランドの空間的配置は、あるストランドをその隣接するストランドに対して、またはストランドが折り畳まれたストランドである場合、折畳みをその隣接する折畳みに対して、シース形成材料を用いてその上に積層することと定義される。
【0181】
肉類似物組み立て計画は、タンパク質ストランド、ストランド間シース材料、および他の必要な成分(例えば、脂肪成分、水ベース成分)の異なる組み合わせ、ならびに層が互いに重なって組み立てられるときの異なる順序を記述するデータ点の詳細なリストを構築することによって準備することができる。
【0182】
組み立て計画の実行は、所望の組み立て計画に従って複雑な3Dモデルを作成することができるコンピュータプログラムを使用して実行することができ、次いで、当技術分野で公知のスライシングソフトウェアを使用して、肉組み立て計画のデータのすべてを含む最終ファイルを作成することができる。肉類似物組み立て計画は、典型的にはデジタルであり、txt、xml、htmlなどのフォーマットを有するデジタルファイルで提供される。場合によっては、肉類似物組み立て計画は、人間言語のファイルまたはコンピュータ可読言語とすることができる。
【0183】
いくつかの例では、組み立て計画は、デジタルファイル、すなわちtxtファイル、XMLファイル、CADファイル、3DSファイル、STLファイル、OBJファイル、またはgコードファイルのうちの少なくとも1つとして表される。
【0184】
場合によっては、組み立て計画は、SolidworksまたはCADなどの公知の産業用モデリングツールフォーマットを利用するデジタル3Dモデルファイルである。
【0185】
いくつかの例では、組み立て計画は、動作のシステムリストを制御するために追加のソフトウェアによって変換された3Dモデルファイルである。1つの非限定的な例は、3Dスライシングソフトウェアによって3DプリンタにアップロードされたG-Codeフォーマットファイルに変換されたSTL 3Dモデルファイルであり得る。
【0186】
いくつかの例では、肉類似物は、2つの3Dプリンタを使用して印刷される。
【0187】
いくつかの例では、3Dプリンタは、印刷された成分を提供するカートリッジ/シリンジを交換する必要なしに、少なくともタンパク質ストランドおよび少なくとも1つの他の非タンパク質材料(例えば、シース形成材料、脂肪成分、水ベース成分)の堆積を可能にするように、2つ以上のプリンタヘッド/堆積ヘッドを備える。いくつかの例では、2つ以上のプリンタヘッドを有する3Dプリンタの使用は、場合によっては異なる成分の印刷間の相互参照なしに、異なる成分の同時印刷を可能にする。
【0188】
タンパク質ストランドを形成するタンパク質材料は、異なるサイズのシリンジ、または調整可能な先端(例えば、Luer-Lok(商標))に適合するシリンジに装填することができる。各シリンジは、3Dプリンタで典型的に利用可能なモータ、制御ユニット、および調整可能なロッドを備える堆積機構を有する、別個の印刷ステーションに装填することができる。プリンタプロセッサは、モータ内の移動速度によって各シリンジの堆積速度を制御することができ、異なる量の成分材料がノズルを通過することを可能にするか、または印刷ベッドモータの移動と組み合わせて、単一のノズルサイズから異なる幅のストランドを作成する。
【0189】
関連するプリンタヘッドに使用される動作および機器は、それを通して分配される成分に基づいて、例えば成分の粘度または稠度に基づいて調整または具体的に選択することができる。例えば、高粘度材料の流れを可能にするように、異なるモータおよび異なるギアを導入して、押出ラム/オーガー・スクリュー/プログレッシブ・キャビティポンプにより強い力を与えることができる。
【0190】
さらに、既存の3Dプリンタは、より大きな堆積シリンジまたはキャニスタ、例えば、少なくとも60ml、少なくとも80ml、少なくとも100ml、少なくとも120ml、またはそれ以上の容量を有する食品グレードのステンレス鋼で作製された容器を含むように再設計することができる。
【0191】
加熱要素をカートリッジ/シリンジに設置して、分配されたタンパク質材料のテクスチャおよび/または流動性に影響を与えることもできる。例として、加熱は、インサイチュでタンパク質組成物のある程度の変性を引き起こし得るか、または脂肪、水分、およびタンパク質組成物のいずれかの粘度の調整を可能にし得る。
【0192】
タンパク質ストランドおよびシース形成材料は、中間または組み立て後の加工処理ステップに供することができる。
【0193】
「中間加工処理」という用語の使用は、既に堆積されたタンパク質ストランドおよび/またはタンパク質層ならびに少なくとも1つのストランド間シース材料に適用される加工処理ステップとして理解され、さらに、すべてのタンパク質ストランドおよびシース材料が完全に堆積される前である(すなわち、製造工程の途中である)と理解されるべきである。言い換えれば、加工処理ステップは、N個のタンパク質層および/またはM個のシース間形成材料を分配した後に適用され、NおよびMは同じかまたは異なり、それぞれ1以上の整数である。
【0194】
「組み立て後の加工処理ステップ」という用語の使用は、すべてのタンパク質層およびストランド間シース材料が組み立て計画に従って堆積された後に適用される加工処理ステップとして理解されるべきである。
【0195】
いくつかの例では、加工処理ステップは、既に堆積した材料から水分を除去または導入すること(再水和または脱水)を含む。
【0196】
いくつかの他の例またはさらなる例では、加工処理ステップは熱処理を含む。熱処理は、赤外線(IR)放射、加熱または冷却を含むことができる。
【0197】
いくつかの他の例またはさらなる例では、加工処理ステップはUV放射を含む。例えば、加工処理ステップは、光開始剤、例えばCIBA Irgacure 2959を約0.1%~1%w/wで利用して、350nm~420nmでピークを生成する、MercuryランプまたはUV LED光源への曝露を含むことができる。
【0198】
さらに1つの好ましい例では、加工処理ステップは、分配された層に圧力を加えることを含む。
【0199】
いくつかの例では、層の表面に垂直な方向(すなわち、ストランドの方向および/または堆積されたシースシートに対して垂直)に圧力が加えられる。
【0200】
いくつかの他の例では、圧力は真空圧力である。
【0201】
積層された製品に加えられた圧力により、製造された製品の体積低減および/または密度増加がもたらされる。
【0202】
体積の低減に言及する場合、圧力は、圧力の印加の前後に、堆積層の体積の少なくとも5%の変化をもたらし得る。
【0203】
密度の増加に言及する場合、圧力は、密度の少なくとも5%の増加をもたらし得る。密度の増加は、以下の式に従ってアルキメデス法、すなわち重力浮力法(aga gravimetric buoyancy method)によって決定することができる:
【数1】
ρ=試料の密度
A=空気中の試料の重量
B=補助液中の試料の重量
ρ
0=補助液の密度
ρ
L=空気の密度。
【0204】
これに束縛されるものではないが、圧力はまた、ストランド間に形成されたボイド内に閉じ込められた空気を除去するのを助け、それによって得られる肉類似物の完全性を改善すると考えられる。さらに、圧力は、層とストランド間シース材料との間の接着を改善することができる。時には、対向するストランドへのシース材料の接着を改善するために、グルテン粉末などの接着材料を添加することができる。
【0205】
中間または堆積後加工処理ステップはまた、以下のステップ:肉類似物の成分が堆積された後にそれを固化させるステップ、次の層を印刷する前に層を安定化させるステップ、堆積後にテクスチャ加工を誘導または促進し、堆積された材料内の成分の結合を誘導または促進するステップのいずれか1つをもたらすことができる。
【0206】
組み立てが完了した後、得られた製造された肉類似物は、焼く、茹でる、刻む、加熱調理などを含む従来の調理方法に従ってさらに加工処理することができる。
【0207】
可能な組み立て計画を示すために、
図2A~
図2Gを参照する。
図2A~
図2Gは、肉類似物を形成するためのタンパク質層およびストランド間シース材料の積層およびその後の本開示による加工処理ステップのいくつかの非限定的な例を示す。簡単にするために、
図2Aで使用されるものと同様の参照番号が
図2A~
図2Gでも使用される。
【0208】
図2Aは、本開示の一実施形態による肉類似物200Aを製造するための組み立て計画202Aの概略断面図を提供する。組み立て計画202Aは、別個のタンパク質ストランド210を含み、その各々は層214内の隣接するストランド間にギャップ212を有する。各層214は単層から形成され、各単層は、この図示の実施形態では平坦なシートとして提示されているストランド間シースフィルム216によって、(それぞれ、層の下または層の上に)以前または以後に配置される層から分離されている。層(タンパク質ストランドおよびシース材料)が適所に配置されると、矢印218によって示されるように、加工処理ステップが行われ、それにより、層の圧縮およびストランド間シース材料のストランド間ギャップへの押圧がもたらされ、したがって、空気で満たされたギャップはストランド間塊220に変換される。この組み立て構成の断面は、ハニカム構造に似ている。
【0209】
図2A~
図2Gのストランド、ギャップおよびシートは同じ寸法を有するものとして示されているが、これらは必ずしも同じではなく、必ずしも単一の肉類似物のものではなく、ストランドおよびシートの寸法(および組成)、およびギャップの寸法は変動する可能性があり、すべて事前に定義された組み立て計画によるものであることに留意されたい。
【0210】
図2Bは、組み立て計画202Bによる肉類似物200Bの別の可能な構成を提供する。具体的には、組み立て計画202Bは、2つの異なる層配置、すなわち、各ストランド210が層内でその隣接するストランドからギャップ212だけ離間している第1の層配置214と、ストランド230の対を含み、各対が層内でその隣接する対から対ギャップ232だけ離間している第2の層配置224とを含む。ギャップ212および対ギャップ232は、必ずしも同じ寸法である必要はない。圧力の印加218後、ストランド間シース材料216は、ストランド210間および対230間のギャップ212および対232に押し込まれ、ストランド間塊220を形成する。
【0211】
図2Cは、組み立て計画200Bに基づいた、肉類似物202Cのさらに別の可能な構成を提供する。具体的には、組み立て計画200Cは、各々がタンパク質ストランド234Aおよび234Bの2つの単層から構成されるタンパク質層214を形成するように設計される。
【0212】
図2Dは、組み立て計画200Dに基づいた、肉類似物202Dのさらに別の可能な構成を提供する。具体的には、組み立て計画200Dは、ストランド間の空間がランダムなタンパク質ストランドの層214を提供するように設計されており、層内のいくつかのストランドは、ストランド212などの隣接するストランドと接触することなく配置され、いくつかは、少なくとも1つの隣接するストランドからギャップなく配置されて、例えば、対のストランド230などの対のスタンドを形成し、いくつかは配置される。
【0213】
図2Eは、組み立て計画200Eに基づいた、肉類似物202Eのさらに別の可能な構成を提供する。具体的には、組み立て計画200Eは、ストランド間に低程度の(すなわち小さい)空間のみを有するタンパク質ストランドの層214を提供するように設計されており、ストランドのいくつかは、対のストランド230などのように対になり、層内のストランドのいくつかは、セグメント236などの連続する平行なストランドのセグメントを形成し、いくつかは、ストランド212などのように完全に離間している。
【0214】
図2Fは、組み立て計画200Aに基づいた、肉類似物202Fのさらに別の可能な構成を提供するが、いくつかのストランドは脂肪含有ストランド238で置き換えられている。
【0215】
図2Gは、組み立て計画200Gに基づいた、肉類似物202Gのさらに別の可能な構成を提供する。具体的には、組み立て計画200Gは、各層214の間に配置されたストランド間シース材料の波状フィルム240を利用するように設計されている。理論に束縛されるものではないが、
図2Gに示されるタイプの波状フィルムを使用することは、隣接するストランド間の空気ボイド形成の量を低減するかまたは防止するのを助ける。空気ボイドは、存在する場合、典型的には圧縮段階中に低減または除去されるが、波状シースを使用することは、さらに助けとなり得る。
【0216】
組み立て計画は層を構築する様式が異なり得るが、得られた肉類似物は同じ最終的な特性を有し得ることに留意されたい。これは、肉類似物202Aの概略図と肉類似物202Gの概略図との間の類似性によって示され得る。
【0217】
ストランド間シース材料は、異なるシート状構成を有するように調製することができ、その一部は
図3A~
図3Eに示されている。
【0218】
具体的には、より一般的な形態は、
図3Aに示すような1枚の完全なシートとしてであるが、シース材料は、例えば、
図3Bに示すように、互いに平行な形態でタンパク質層上に重ねられた個々のストライプとして適用することができる。
【0219】
いくつかの例では、ストライプは、
図3Cに示すようにフレームにすることができ、および/または
図3Dに示すように交差ストライプで補強することができる。
【0220】
さらにいくつかのさらなる例では、ストライプは、
図3Eに示すように、異なる材料、例えば2種類のシース形成材料(ストライプパターンによって区別される)のストライプと組み合わせることができる。
【0221】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の形は、文脈上他に明確に指示されない限り、単数および複数への言及を含む。例えば、「タンパク質ベースの成分」という用語は、肉類似物内にタンパク質ベースのセグメントを形成することができる異なるタンパク質組成物の1つ以上の成分を含む。
【0222】
さらに、本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、例えば成分、例えばタンパク質組成物が列挙されたタンパク質を含むが、脂肪および水などのタンパク質を含む他の物質を除外しないことを意味することを意図している。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、例えば、列挙された物質を含むが、得られる肉類似物の特性に本質的な有意性を有し得る他の物質を除外する成分を定義するために使用される。したがって、「からなる(consisting of)」は、微量を超える他の元素を除外することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0223】
さらに、例えば、本明細書に開示される成分を構成する要素の量または範囲に言及する場合、すべての数値は、記載された値から最大20%、時には最大10%、(+)または(-)に変動する近似値である。常に明示的に述べられているとは限らないが、すべての数値指定の前に「約」という用語があることを理解されたい。
【0224】
さらに、本明細書で使用される場合、「パーセント」または「%」という用語は、特に明記しない限り、重量パーセントを指す。
【0225】
ここで、本発明を、本発明に従って実施された実験の以下の説明において例示する。これらの例は、限定ではなく例示する性質のものであると意図していることを理解されたい。上記の教示に照らして、明らかに、これらの例の多くの修正および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書で以下に具体的に説明される以外に、無数の可能な方法で実施され得ることを理解されたい。
【0226】
非限定的な実施例
実施例1-タンパク質組成物およびシース組成物
タンパク質ストランド間のシースの存在および組成が異なる3つの肉類似物試験片を調製した。各肉類似物は、タンパク質ストランドを形成する生地中に同じタンパク質組成物を含有し、以下を含んでいた。
【0227】
タンパク質含有生地(ストランド形成材料)の調製:
タンパク質生地は、15%グルテン(Sorpol(商標)による活性小麦グルテン)、60%水道水、5%キャノーラ油(Shufersal(商標))、5%赤色香辛料着色剤(「Texturot」(商標))、および15%テクスチャ加工植物性タンパク質(TVP SUPRO MAX 5010 IP)を標準的な家庭用ミキサーで混合することによって調製した。タンパク質組成物は、本明細書では略語「NSH_参照」で参照される)
【0228】
シース形成材料の調製:
グルテン粉末からのフィルム:グルテンフィルムは、インサイチュで、すなわち0.002%~2%(gr/cm2)のグルテンでタンパク質ストランド層をコーティングし、続いて100℃に45分間加熱することによって配置されたフィルムによってフィルムの形成を活性化することによって形成した。グルテンフィルムは、本明細書では略語「Glu」で参照される。
【0229】
カラギーナンからのフィルム:フィルムは、5%カラギーナン(CPkelco Genugel wr78)の水溶液(w/w)を混合し、高剪断中に混合物を加熱することによって作製した。次いで、厚さ0.4mmのフィルムを形成するのに十分な量のホットメルトを型に入れ、フィルムを十分に(カラギーナンTm未満に)冷却する。カラギーナンフィルムは、本明細書では略語「Car」で参照される。
【0230】
カラギーナン-グルテンフィルムの調製:Car-Gluフィルムは、最初に、記載のようにカラギーナンフィルムを調製し、このカラギーナンフィルムを、フィルム1cm2当たりグルテン約0.02gの濃度のグルテン粉末でコーティングすることによって調製した。次いで、グルテンでコーティングされたフィルムをタンパク質スタンド層の上に配置し、コーティングされたフィルムを、Gluフィルムに関して記載したように、加熱によって活性化する。カラギーナン-グルテンフィルムは、本明細書では略語「Car-Glu」で参照される。
【0231】
肉類似物の形成:
調製したタンパク質生地を、4mmノズルを備えた電気コーキングガン(Makita DCG180)でストランドに抽出した。次いで、各層のストランドが離間するように(ストランドの各対の間の距離は本質的にストランドの厚さである)、ストランドを層状に整列させた。各タンパク質層の上に、フィルム形成(シース形成)材料を配置した(上で定義したいずれかのタイプ)。
【0232】
次いで、各ストランドが、以前に配置された2つの整列したストランドのギャップの上に適合するように、次のタンパク質ストランド層をシース材料の上に配置した。
【0233】
4つのタイプの肉類似物を調製した:
参照肉類似物:タンパク質ストランドのみを含む(「NSH-参照」)。
肉類似物I:5%κ-カラギーナン「Car」を含むシース材料組成物
肉類似物II:1cm2当たり0.02gのタンパク質スタンドにわたる被覆率で純粋なグルテン粉末を含むシース材料組成物(「Glu」)
肉類似物III:5%κ-カラギーナンを含み、フィルム1cm2当たり0.02gのグルテン粉末で両側から被覆されたシース材料組成物(「Car-Glu」)
【0234】
所望の肉類似物(スラブ寸法10cm×10cm)が得られるまで、層の構築およびシース形成材料の配置を続けた。
【0235】
すべてのスラブを、実験室の内部温度が95℃に達するまで100℃でSous Vide中で硬化させ、この温度で少なくとも15分間維持した。
【0236】
次いで、試験前に、異なるスラブを冷蔵庫で4℃で一晩冷却した。試料が周囲温度(20℃~25℃)に達した後に試験を行った。
【0237】
図4A~
図4Cは、グルテン粉末を含む組成物カラギーナンの肉類似物の組み立てられた層の画像である(Car-Glu、形成物III)。具体的には、
図4Aおよび
図4Bは、タンパク質ストランド(410)の組み立てられた層および交互のストランド間シースフィルム(416)の写真画像の側面図および上面図であり、
図4Cは、5~7mbarの真空を使用して組み立てられた層を圧縮した後の側面図を提供する。
【0238】
図5A~
図5Bは、
図2Aに示すタイプの製造工程後に得られた、カラギーナンフィルムの組成物を有する肉類似物の画像であり、
図5Aは、光学画像を提供し、
図5Bは、同じ画像をスケールと共に提供する。
【0239】
実施例2-特性評価
上記のように調製したNSH-参照、CarおよびCar-Gluの肉類似物の試料を調製し、
図2Aに示す組み立て計画に従って構築した。次いで、各肉類似物の硬度および引張特性を評価した。
【0240】
引張強度:
引張強度は、50×20×10mmの試験片(10cm×10cmの印刷スラブから切断)について測定した。グリッピング挙動を強化し、滑りを防止するために、試験片の縁部をシアノアクリレート接着剤でコーティングした。PLA材料を使用して3D印刷され、鋭利な3mmのスパイクを有する10×20mmの接触面積を有するグリッパ(
図6Aを参照)によって試験片をグリップし、手動ねじで操作した。次いで、試験片の各々を、室温(23℃±2℃)で、1KNロードセルを備えたLLOYD TPA機器を用いて20mm/sの速度で引き伸ばした。
図6Bは、形成物I(CAR)の引張強度測定の画像を提供し、2つのグリッパの間に保持されながら引き伸ばされた試験片を示す。
【0241】
P軸、XP軸およびZ軸に沿ったCARを含む試料の引張強度の測定結果をそれぞれ
図7A~
図7Cに提供する。
【0242】
結果を表1Aおよび
図8にも示す。具体的には、
図8は、3つの異なる方向における(表1Aのデータに基づく)評価された試料の引張強度を示す棒グラフである。
【0243】
表1Aは、異なる軸に沿った異なる試験片の引張強度を提供する。
【表1】
【0244】
この結果は、ストランドの方向であるP軸に高い引張強度が現れることを示している。さらに、表1Aおよび
図8は、本明細書に開示されているタイプのストランド間シースを使用した場合、参照と比較して、肉類似物の引張強度があらゆる方向で改善されることを示している。
【0245】
図9A~
図9Bは、肉類似物(CAR-Glu、
図9A)対本物の肉(
図9B)の画像であり、本物の肉における結合組織の挙動と同様の、ストランド間シース材料によるタンパク質ストランドの「保持」を示し、したがって、本技術の概念の実証を提供する。
【0246】
さらなる試験では、シース間形成材料としてCARを含む25×20×10mmのより小さい試験片を使用した。試験片を縁部で接着し、
図6Aに示すグリッパ間に配置した。表1Bは、2つの同一の試験片の最大荷重(MPa)を示す。
【表2】
【0247】
さらに別の試験では、20×20×10mmのさらに小さい試験片(CAR)を使用した。
図10A~
図10Cに示すように、各試験片を一対のT字形固定具の間に配置した。引き伸ばしを可能にするために、試験片をシアノアクリレート接着剤を使用してプレートに接着し、接着剤を乾燥させた後(約10分)、測定を開始した(20mm/分の速度)。
【0248】
具体的には、
図10Aは、プレート1010およびアーム1020を含む単一のT字形固定具1000を示し、
図10Bは、一対のT字形固定具1000aおよび1000b、ならびにそれらのそれぞれのアーム1020aおよび1020bを含み、各それぞれのT字形固定具のプレート1010aとプレート1010bとの間に試験片1030を保持するシステム1050を示す。
【0249】
引き伸ばし時に(20mm/分の速度)、
図10Cに示すように、試験片の接着した縁部は、プレート1010aおよび1010bに接着したまま維持した。
【0250】
T字形固定具を使用して(同じ寸法および組成の)4つの複製試験片の、ストランドの方向に垂直に測定した引張強度を表1Cに提供する。
【表3】
【0251】
上記の結果は、試験した試験片の寸法に関係なく、ストランドの方向に垂直な一方向で測定した場合の引張強度が少なくとも0.033MPaであることを示している。
【0252】
ヤング率および硬度:
ヤング率および硬度強度は、上記の肉類似物I(Car)およびIII(Car-Glu)を使用して、ならびにタンパク質ストランドのみを含む参照試料(Ref)で決定した。この目的のために、高さ20mm×幅20mm×厚さ20mm(8000mm
3)の寸法を有する肉類似物の立方体試験片を切断した。圧縮速度は、50%の変形に達するまで90mm/分である。0.02~0.1の歪み範囲で弾性率を計算した。圧縮弾性率(ヤング率)および硬度は、上記のように1KNロードセルを備えたLLOYD TPAシステムを使用して決定した。結果を以下の表2Aに提供する。
【表4】
【0253】
さらなる試験では、試験片は、2つのより細い切断片(XP方向で20×20×10mm)の組み合わせから調製し、次いで、これらの切断片を、2つの切断片のストランドの方向が本質的に整列するように互いに積み重ね、20×20×20mmの最終試験片を提供し、2つの圧縮プレートの間に配置した。次いで、試験片を初期寸法(一方向)の50%に圧縮し、XP方向に沿った硬度を3つの例示的な試験片(同じ組成および寸法)について決定した。結果(図示せず)は、本発明の範囲内であり、表2Aに示したものと同様であることが分かったので、硬度は(表2Aの試験片と比較して)より小さい寸法の切断片でも測定することができ、同じ全体寸法に組み合わせることができるという理解を支持する。
【国際調査報告】