(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-27
(54)【発明の名称】キメラCD40リガンド及びコロナウイルスワクチンを使用する免疫の増強
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20231020BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231020BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231020BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231020BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231020BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231020BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20231020BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231020BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231020BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231020BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231020BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20231020BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20231020BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231020BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20231020BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K48/00
A61K39/215
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P31/14
A61P31/12 171
A61K31/7105
A61K31/711
A61K9/08
A61K9/14
A61K39/39
A61K35/76
C07K14/165 ZNA
C07K14/705
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516833
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 US2021049932
(87)【国際公開番号】W WO2022056302
(87)【国際公開日】2022-03-17
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226768
【氏名又は名称】メムゲン,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523091431
【氏名又は名称】マーク・ジェイ・キャントウェル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェイ・キャントウェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
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4H045FA74
(57)【要約】
本開示では、コロナウイルスワクチン及びキメラCD40Lポリペプチドを投与することにより免疫を増強するための方法及び組成物を提供する。コロナウイルスワクチンは、不活化コロナウイルス粒子又は抗原性ポリペプチド、好ましくは、コロナウイルススパイクタンパク質から構成され得る。コロナウイルス抗原性ポリペプチドは、精製した抗原性ポリペプチド又は抗原性ポリペプチドをコードする核酸発現構築物であり得る。本発明の組成物におけるキメラCD40Lポリペプチドは、精製したキメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸発現構築物であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
コロナウイルスワクチン、及び
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つ
を含む、組成物。
【請求項2】
前記CD40Lポリペプチドが、ISF30、ISF31、ISF32、ISF33、ISF34、ISF35、ISF36、ISF37、ISF38、ISF39、ISF40及びISF41からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸が、ISF35である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
キメラCD40Lポリペプチドをコードする前記核酸が、ベクターを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ベクターが、DNA又はRNAベクターである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ベクターが、ウイルスベクター又はプラスミドDNAベクターである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス及びピコルナウイルスからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記コロナウイルスワクチンが、コロナウイルス抗原をコードする発現構築物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記コロナウイルス抗原が、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のコロナウイルススパイクタンパク質である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記コロナウイルスワクチンが、コロナウイルス抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記コロナウイルス抗原が、精製ポリペプチドを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記精製ポリペプチドが、コロナウイルススパイクタンパク質である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記コロナウイルス抗原が、不活化コロナウイルス粒子を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
ヒト対象又は動物対象への投与に適する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
キメラCD40Lポリペプチド及び前記コロナウイルス抗原をコードする核酸が、同一発現ベクターからコードされる、請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
免疫を増強するための方法であって、
有効量の請求項1に記載の組成物をヒト又は動物に投与する工程
を含む、方法。
【請求項18】
有効量の請求項1に記載の組成物を投与する工程が、経口、経鼻、局所、及び注射からなる群から選択される投与経路を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与経路が、注射であり、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、気管内、及び腹腔内注射からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
免疫を増強する方法であって、
コロナウイルスワクチンを含む医薬製剤を投与する工程、及び
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つを含む医薬製剤を投与する工程
を含む、方法。
【請求項21】
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つを含む医薬製剤を投与する工程が、コロナウイルスワクチンを含む医薬製剤を投与する工程とほぼ同時に実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
免疫を増強する方法であって、
コロナウイルスワクチンを含む医薬製剤を、キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つを含む医薬製剤と混合する工程、
ヒト又は動物に前記混合された製剤を投与する工程
を含む、方法。
【請求項23】
前記混合する工程が、前記投与する工程の直前に生じる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
コロナウイルスワクチン及びキメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸構築物のうちの1つを含む医薬製剤を投与する工程を含む、免疫を増強する方法。
【請求項25】
ヒト又は動物への投与のためのキットであって、
コロナウイルスワクチンを含む医薬製剤、及び
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つを含む医薬製剤
を含む、キット。
【請求項26】
コロナウイルスワクチンを含む前記医薬製剤が、コロナウイルス抗原をコードするウイルス発現ベクターであり、前記製剤中のウイルス粒子の量が、le5~le12ウイルス粒子の範囲内である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
ウイルス粒子の前記量が、le8~le11ウイルス粒子の範囲内である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ウイルス粒子の前記量が、le10ウイルス粒子である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つを含む前記医薬製剤が、キメラCD40Lポリペプチドをコードするウイルス発現ベクターを含み、前記製剤中のウイルス粒子の量が、le5~le12ウイルス粒子の範囲内である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
ウイルス粒子の前記量が、le8~le11ウイルス粒子の範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ウイルス粒子の前記量が、le10ウイルス粒子である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記コロナウイルスワクチンが、精製コロナウイルススパイクタンパク質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
コロナウイルスワクチンの前記医薬製剤が、コロナウイルススパイクタンパク質を1マイクログラム~100マイクログラムの範囲内の量で含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
コロナウイルススパイクタンパク質の前記量が、20マイクログラムである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の前記少なくとも1つが、キメラCD40Lポリペプチドであり、前記ポリペプチドが、1マイクログラム~100マイクログラムの範囲内の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記キメラCD40Lポリペプチドの前記量が、20マイクログラムである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
組成物であって、
コロナウイルスワクチンの医薬製剤、及び
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つの医薬製剤
を含む、組成物。
【請求項38】
コロナウイルスワクチンの前記医薬製剤が、コロナウイルス抗原をコードするウイルス発現ベクターを含み、前記製剤中のウイルス粒子の量が、le5~le12ウイルス粒子の範囲内である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の少なくとも1つを含む前記医薬製剤が、キメラCD40Lポリペプチドをコードするウイルス発現ベクターを含み、前記製剤中のウイルス粒子の量が、le5~le12ウイルス粒子の範囲内である、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
コロナウイルスワクチンの前記医薬製剤が、コロナウイルススパイクタンパク質を含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
前記医薬製剤中のコロナウイルススパイクタンパク質の量が、1~100マイクログラムの範囲内である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸の前記少なくとも1つが、キメラCD40Lポリペプチドである、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
前記キメラCD40Lポリペプチドの量が、1~100マイクログラムの範囲内である、請求項42に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願では、2020年9月11日申請の米国特許仮出願第63/077,204号の利益を主張し、これは、参照により本明細書において組み込む。
【0002】
本発明の背景
1. 本発明の分野
本発明は、ワクチン及びワクチンアジュバント並びに感染性因子に対して免疫を増強するための方法に一般に関する。本発明は、詳細には、コロナウイルスワクチンに関する、ワクチンアジュバントとしてのキメラCD40リガンド(CD40L)の使用に特に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
体は、自然免疫系及び適応免疫系の両系を使用して感染性病原体及び微生物から防御する。自然免疫系は、鍵となるエフェクター細胞、例えば、好中球、マクロファージ及びナチュラルキラー細胞により、哺乳動物細胞上には一般に存在しない病原体上に見出される特徴的構造に対するこれらの認識及び応答によって、防御の第一線として一般に機能する。このような病原性構造は、シグナルとして機能し、傷害関連分子パターン(DAMP)及び病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれる。適応免疫系による第二の防御線は、液性及び細胞性免疫をそれぞれ構成するB細胞及びT細胞により主に媒介される。適応免疫系は、特定の病原体を特異的に標的として除去するだけでなく、病原体の再負荷又は侵襲時の長期監視及び応答をもたらすように発達し得る。
【0004】
ワクチンは、ヒトの免疫系を刺激して特定の疾患に対する免疫をもたらすことにより、この疾患からヒトを防御する製品である。ヒト又は動物には、これらの免疫系を刺激し、病原体上に存在する1つ又は複数の抗原に対する液性(抗体)及び/又は細胞(T細胞)免疫応答をもたらして、病原性感染から生じる疾患から防御しようとするワクチンを投与し得る。これは、将来、体が病原体に曝される場合、適応免疫系のメモリー細胞がこれを認識し、病原体を除去する体の応答がはるかに強力となるように、免疫系を刺激する。典型的ワクチンは、不活化若しくは弱毒化ウイルス粒子、抗原性ポリペプチド又は抗原性ポリペプチドをコードする遺伝子構築物からなる。最近のワクチン開発の特定の一領域は、例えば、SARS-CoV-1及びSARs-CoV-2を含むコロナウイルスに関する。
【0005】
多くのワクチンは、免疫応答の誘発に期待が持てるが、疾患からの完全な防御には、応答は十分ではない。このため一部のワクチンは、アジュバントと組み合わせている。アジュバントをワクチンと同時投与して、ワクチンを受けるヒト又は動物において更に強力な免疫応答をもたらし得る。
【0006】
このような背景技術において考察する主題はすべて、必ずしも先行技術ではなく、背景技術の節の考察の単なる結果として先行技術であると想定すべきではない。このような考え方に沿って、背景技術において考察するか又はこのような主題と関連する先行技術における課題のいかなる認識も、先行技術であると明示的に述べない限り、先行技術として扱うべきではない。代わりに、このような背景技術におけるいかなる主題の考察も、特定の課題に対する発明者の取組みの一部として扱うべきであり、これは、それ自体として進歩性をも有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,482,411号
【特許文献2】米国特許第5,565,321号
【特許文献3】米国特許第5,540,926号
【特許文献4】米国特許第5,716,805号
【特許文献5】米国特許第5,962,406号
【特許文献6】米国特許第6,087,329号
【特許文献7】米国特許第7,495,090号
【特許文献8】米国特許第7,524,944号
【特許文献9】米国特許第7,928,213号
【特許文献10】米国特許第8,138,310号
【特許文献11】米国特許第8,288,113号
【特許文献12】米国特許第5,641,670号
【特許文献13】米国特許出願公開第20100291065号
【特許文献14】米国特許出願公開第20140242107号
【特許文献15】米国特許出願公開第2014023213号
【特許文献16】米国特許出願公開第20150191710号
【特許文献17】米国特許出願公開第2010026678号
【特許文献18】米国特許第6,013,516号
【特許文献19】米国特許第5,994,136号
【特許文献20】米国特許第6,740,320号
【特許文献21】米国特許第5,139,941号
【特許文献22】米国特許第4,797,368号
【特許文献23】米国特許第4,683,202号
【特許文献24】米国特許第5,928,906号
【特許文献25】米国特許第5,925,565号
【特許文献26】米国特許第5,935,819号
【特許文献27】米国特許第5,789,215号
【特許文献28】米国特許第5,994,624号
【特許文献29】米国特許第5,981,274号
【特許文献30】米国特許第5,945,100号
【特許文献31】米国特許第5,780,448号
【特許文献32】米国特許第5,736,524号
【特許文献33】米国特許第5,702,932号
【特許文献34】米国特許第5,656,610号
【特許文献35】米国特許第5,589,466号
【特許文献36】米国特許第5,580,859号
【特許文献37】米国特許第5,384,253号
【特許文献38】国際公開第94/09699号
【特許文献39】国際公開第95/06128号
【特許文献40】米国特許第5,610,042号
【特許文献41】米国特許第5,322,783
【特許文献42】米国特許第5,563,055号
【特許文献43】米国特許第5,550,318号
【特許文献44】米国特許第5,538,877号
【特許文献45】米国特許第5,538,880号
【特許文献46】米国特許第5,302,523号
【特許文献47】米国特許第5,464,765号
【特許文献48】米国特許第5,591,616号
【特許文献49】国際公開第98/07408号
【特許文献50】米国特許仮出願第60/135,818号
【特許文献51】米国特許仮出願第60/133,116号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Grussら、Cytokines Mol Ther、1 :75~105、1995
【非特許文献2】Locksleyら、Cell、104:487~501、2001
【非特許文献3】Banchereau J.ら、Annu. Rev. Immunol. 12:881~922、1994
【非特許文献4】Cantwell M.ら、Nat. Med.、3:984~989、1997
【非特許文献5】Ranheim E. A.ら、Cell. Immunol.、161 :226~235、1995
【非特許文献6】Erikssonら、2008、Methods Mol Biol. vol. 454: 237~54
【非特許文献7】Nedaら、J Biol Chem 1991 vol 4: 14143~46
【発明の概要】
【0009】
本発明の概要
以下に本開示の単純化した概要を提示して、本開示の一部の態様の基本的理解を提供する。この概要は、本開示の徹底的概説ではない。これにより、本開示の鍵となるか又は重要な要素を同定することも、本開示の範囲を正確に説明することも意図していない。この唯一の目的は、後に考察する更に詳細な説明の導入として、単純化した形態により一部の概念を提示することである。
【0010】
本開示では、コロナウイルスワクチン及びキメラCD40Lポリペプチドを投与することにより、免疫を増強するための方法及び組成物を提供することによって、現在の技術と関連するいくつかの主要な課題を克服する。キメラCD40Lポリペプチドは、ポリペプチドとして、又はキメラCD40Lが発現可能な発現構築物の投与を介して提供することができる。詳細には、キメラCD40Lポリペプチドの発現構築物が、キメラCD40Lのタンパク質コード配列に動作可能に結合する真核生物転写プロモーター及び転写終止配列を含む、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス構築物であり得ることを検討する。以下に詳述するように、キメラCD40Lは、コロナウイルスワクチンとともに投与する場合、コロナウイルスに対して免疫を増強するアジュバントとして作用する。本発明では、コロナウイルスに対するワクチンが、不活化コロナウイルス粒子又は抗原性ポリペプチド、好ましくは、コロナウイルススパイクタンパク質を含み得ることを検討する。加えて、本発明では、コロナウイルスワクチンが、コロナウイルス抗原、好ましくは、コロナウイルススパイクタンパク質のタンパク質コード配列に動作可能に結合する真核生物転写プロモーター及び転写終止配列を含む、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス構築物であり得る、発現構築物を介して投与するコロナウイルス抗原を含み得ることを検討する。特定の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチド及びコロナウイルス抗原は、同一発現構築物から発現する。
【0011】
キメラCD40Lポリペプチドは、2つの異なる種由来の少なくとも1つのサブドメインを含む。特定の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチドは、ヒトCD40L及びマウスCD40Lの両方由来のドメイン及び/又はサブドメインを含む。例えば、キメラCD40Lポリペプチドは、ISF30、ISF31、ISF32、ISF33、ISF34、ISF35、ISF36、ISF37、ISF38、ISF39、ISF40及びISF41からなる群から選択される。特には、キメラCD40Lポリペプチドは、ISF35である。
【0012】
更なる態様では、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原は、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原のコード領域を、発現ベクターによって、かつこのキメラCD40Lポリペプチド、及び適用可能な場合、コロナウイルス抗原の発現を支持する条件下で真核細胞において活性なプロモーターの調節下で、提供することにより対象に投与する。一部の態様では、発現カセットは、ウイルスベクター内にある。例えば、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、コロナウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はポリオーマウイルスベクターである。特には、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。
【0013】
1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の説明に記載する。例となる一実施形態と関連させて例示又は記載する特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせ得る。したがって、種々の実施形態のいずれも必要に応じて修飾し、本明細書において同定する種々の特許、特許出願、及び公表文献の概念を利用して、また更なる実施形態を提供することができる。他の特徴、対象及び利点は、本説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0014】
図面の簡単な説明
次の図は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様を更に実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示する特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせた、このような図の1つ又は複数への参照によって、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】キメラCD40Lポリペプチドをコードするアデノウイルス発現構築物を示す図である。
【
図2】キメラCD40Lポリペプチド及びコロナウイルス抗原をコードするアデノウイルス発現構築物を示す図である。
【
図3】ELISPOT IFNγ分泌により測定したコロナウイルススパイクタンパク質抗原特異的T細胞の数を示す図である。
【
図4】ELISAにより測定したコロナウイルススパイクタンパク質特異的抗体(IgG)液性免疫応答を示す図である。
【0016】
配列の簡単な説明
配列番号1~12は、キメラヒト/マウスCD40L(それぞれISF30、ISF31、ISF32、ISF33、ISF34、ISF35、ISF36、ISF37、ISF38、ISF39、ISF40及びISF41と呼ばれるこれらの配列によりコードされるキメラヒト/マウスCD40L)をコードする核酸配列である。
【0017】
配列番号13~24は、キメラCD40Lアミノ酸配列(それぞれISF30、ISF31、ISF32、ISF33、ISF34、ISF35、ISF36、ISF37、ISF38、ISF39、ISF40及びISF41)の例である。
【0018】
配列番号25は、SARS-CoV-1のコロナウイルススパイクタンパク質をコードする核酸配列である。
【0019】
配列番号26は、SARS-CoV-1のコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0020】
配列番号27は、SARS-CoV-2のコロナウイルススパイクタンパク質をコードする核酸配列である。
【0021】
配列番号28は、SARS-CoV-2のコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の詳細な説明
本開示の種々の例示的実施形態を以下に記載する。明確とするために、本明細書における例となる実施形態では、実際の実行のすべての特徴は記載しない。このような任意の実際の実施形態の開発では、実行に応じて異なる開発者の特定の目標、例えば、システム及びビジネスに関連する制約の遵守を達成するために、多数の実行特異的な決定を行わなければならないことが勿論理解される。その上、このような開発努力は複雑であり得るが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって行うべき日常的なものであることが理解される。
【0023】
本開示では、キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする核酸と組み合わせた、少なくとも1つのコロナウイルスワクチンの組合せを提供することにより、免疫細胞の機能を増強するための方法及び組成物を提供することによって、現在の技術と関連するいくつかの主要な課題を克服する。
【0024】
本開示の方法の特定の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチドは、非ヒトCD40L切断部位及びヒトCD40受容体に結合するヒトCD40Lの細胞外サブドメインを含む。例えば、切断部位を含むヒトCD40Lの細胞外サブドメインは、非ヒトCD40L、例えば、マウスCD40Lの細胞外サブドメインにより置換する。特定の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチドは、ISF35である。一方法では、キメラCD40Lポリペプチドは、特には、真核細胞において活性なプロモーターの調節下で、ポリペプチドをコードする発現カセット、例えば、アデノウイルスベクターにより送達する。他の方法では、キメラCD40Lポリペプチド及びコロナウイルス抗原、例えば、コロナウイルススパイクタンパク質の両方は、特には、真核細胞において活性な1つ又は複数のプロモーターの調節下で、ポリペプチドをコードする発現カセット、例えば、アデノウイルスベクターにより送達する。
【0025】
A.定義
本明細書において使用する場合、「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味し得る。特許請求の範囲において使用する場合、用語「含む」と組み合わせて使用するとき、用語「a」又は「an」は、1つ又は2つ以上を意味し得る。
【0026】
本出願を通して、「約」の用語は、値が、装置、値を決定するために利用する方法、又は試験対象に存在する変動の、誤差の固有の変動を含むことを示すために使用する。
【0027】
本明細書における「抗体」の用語は、広範な意味において使用し、詳細には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及びそれらが所望の生物学的活性を示す限り、抗体断片を包含する。
【0028】
本明細書において使用する場合、「担体」は、任意及びすべての溶媒、分散培地、媒体、コーティング、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等を含む。医薬活性物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。従来の任意の媒体又は薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるこの使用を検討する。補足的活性成分も組成物に組み込み得る。
【0029】
本明細書において使用する場合、「CD40リガンド」、「CD40L」及び「CD154」の用語は、本明細書において互換的に使用する。例えば、キメラCD40リガンドをコードするアデノウイルス構築物は、ad-CD40Lと呼び得る。
【0030】
「キメラ」の用語は、少なくとも2つの異なる種由来の配列を有するものとして定義する。
【0031】
「キメラCD40L」又は「キメラISF構築物」の用語は、ある種由来のCD40Lの少なくとも1つのドメイン又はサブドメイン及び異なる種由来のCD40Lの少なくとも1つのドメイン又はサブドメインから構成されるリガンドを指す。特定の実施形態では、キメラCD40Lが由来する少なくとも2つの種は、ヒト及びマウスCD40Lである。
【0032】
本明細書において使用する場合、「切断部位」の用語は、プロテアーゼ、典型的には、発現細胞の表面からCD40Lを切断するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)により認識されるアミノ酸の配列を指す。CD40Lの切断部位は、CD40LのドメインIII及びIVの境界又はこの周囲に典型的に見出される。例えば、このような一切断部位は、ヒトCD40Lのアミノ酸108~116辺りの領域を含む。
【0033】
「調節エレメント」の用語は、プロモーター領域、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流制御ドメイン、複製起点、内部リボソーム進入部位(IRES)、エンハンサー、スプライスジャンクション等を集合的に指し、これらは、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写、転写後プロセシング及び翻訳を集合的にもたらす。選択されたコード配列を適切な宿主細胞において複製、転写及び翻訳することが可能である限り、このような調節エレメントがすべて存在する必要はない。
【0034】
「コロナウイルス抗原」の用語は、コロナウイルス感染に対して免疫応答を誘導するポリペプチド、例えば、コロナウイルススパイクタンパク質を指す。配列番号26では、SARs-CoV-1のコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列を提供する。配列番号28では、SARs-CoV-2のコロナウイルススパイクタンパク質のアミノ酸配列を提供する。本明細書において使用する場合、「コロナウイルススパイクタンパク質」は、配列番号26又は配列番号28のいずれかと実質的に相同なポリペプチドを指す。
【0035】
「コロナウイルスワクチン」の用語は、不活化若しくは弱毒化コロナウイルス粒子、コロナウイルス抗原、又はコロナウイルス抗原をコードする発現構築物のいずれかを含むワクチンを指す。
【0036】
本明細書において使用する場合、「対応する」の用語は、別の種のCD40Lのヌクレオチド又はアミノ酸配列と実質的に相同な、ある種のCD40Lのヌクレオチド又はアミノ酸の配列を指す。相同性は、異なる種のCD40Lにおける二次構造、例えば、ドメイン境界の位置の類似性に基づく。
【0037】
「有効量」は、特定の疾患の測定可能な改善又は防止をもたらすのに必要とされる少なくとも最少の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに個人において所望の応答を誘発するワクチン及び/又はアジュバントの能力のような因子に応じて変動し得る。また、有効量は、治療の任意の毒性又は有毒作用を、治療的に有益な作用が上回る量である。予防的使用では、有益であるか又は所望の結果は、疾患の生物化学的、組織学的及び/又は行動学的症候を含む、疾患、この合併症、並びに疾患の発症中に現れる中間の病理学的表現型の、リスクの除去若しくは低下、重症度の低減、又は発症の遅延のような結果を含む。治療的使用では、有益であるか又は所望の結果は、疾患から生じる1つ若しくは複数の症候の減少、疾患に罹患する者の生活の質の向上、疾患の治療に必要とされる他の医薬の用量の削減、例えば、標的化を介する、別の医薬の作用の増強、疾患の増悪の遅延、及び/又は生存の延長のような臨床結果を含む。有効量は、1回又は複数回の投与により投与することができる。本発明の目的では、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、予防的又は治療的処置を直接又は間接のいずれかにより達成するのに十分な量である。臨床的状況において理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と組み合わせて達成してもしなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ又は複数の治療剤を投与する状況において考えてもよく、単一薬剤は、1つ又は複数の他の物質と組み合わせて望ましい結果が達成され得るか又は達成される場合には、有効量で与えられると考えてもよい。
【0038】
「エンハンサー」の用語は、プロモーターの近位に位置する場合、エンハンサー配列の非存在下のプロモーターから生じる転写活性と比較して転写活性の向上を付与する核酸配列を意味する。
【0039】
「外因性」の用語は、細胞若しくは生物におけるタンパク質、遺伝子、核酸、若しくはポリヌクレオチドに関して使用する場合、人工若しくは天然の手段により細胞若しくは生物に導入されたタンパク質、遺伝子、核酸、若しくはポリヌクレオチドを指すか、又は細胞に関して使用する場合、この用語は、単離した後、人工若しくは天然の手段により他の細胞若しくは生物に導入された細胞を指す。外因性核酸は、異なる生物若しくは細胞由来であり得るか、又は生物若しくは細胞において天然に存在する核酸の1つ又は複数の更なるコピーであり得る。外因性細胞は、異なる生物由来であり得るか、又は同一の生物由来であり得る。例えば、外因性核酸は、天然細胞に存在する位置とは異なる染色体位置に存在するか、さもなければ、天然に見出される配列とは異なる核酸配列と隣接する、核酸であり得る。
【0040】
「発現構築物」又は「発現カセット」は、転写を方向づけることが可能な核酸分子を意味する。発現構築物は、1つ又は複数の所望の細胞型、組織又は器官において遺伝子発現を方向づける1つ又は複数の転写調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー又はこれらの構造機能的等価物)を少なくとも含む。転写終止シグナルのような更なるエレメントも含み得る。
【0041】
特異のタンパク質を「コードする」「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「コード領域」、「配列」、「セグメント」、「断片」又は「導入遺伝子」は、適切な制御配列の調節下に配置した場合、in vitro又はin vivoで転写され、任意選択で、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドに翻訳される核酸分子である。コード領域は、cDNA、ゲノムDNA又はRNA型のいずれかで存在し得る。DNA型で存在する場合、核酸分子は、一本鎖(即ち、センス鎖)又は二本鎖であり得る。コード領域の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドン及び3'(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定する。遺伝子は、原核生物又は真核生物mRNA由来のcDNA、原核生物又は真核生物DNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列を含み得るが、これらに限定されない。転写終止配列は、通常、遺伝子配列に対して3'に位置する。
【0042】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド間の同一性のパーセントを指す。一方及び他方の配列間の対応は、当技術分野において公知の技術により判定することができる。例えば、相同性は、配列情報をアラインメントし、容易に利用可能なコンピュータプログラムを使用することによる2つのポリペプチド分子間の配列情報の直接比較によって判定することができる。或いは、相同性は、相同領域間での安定な二本鎖の形成を促進する条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイズした後、一本鎖特異的ヌクレアーゼにより分解し、分解した断片のサイズを決定することにより判定することができる。2つのDNA又は2つのポリペプチド配列は、上記の方法を使用して判定する場合、ヌクレオチド又はアミノ酸の少なくとも約80%、特には、少なくとも約90%、とりわけ、少なくとも約95%が、定義の分子長にわたってそれぞれ適合するとき、相互に「実質的に相同」である。
【0043】
本明細書において使用する場合、「切断されにくい」又は「切断の減少」の句は、ある期間にわたって所与の数の細胞により産生された可溶性CD40Lの量により測定した場合、タンパク質分解性切断に対するキメラCD40Lの抵抗性が、天然ヒトCD40Lの抵抗性と比較して高いことを指す。特には、本発明のキメラCD40Lは、天然CD40Lのそれよりも少なくとも50%、少なくとも75%又は少なくとも90%未満の割合で切断されるため、「切断されにくい」。
【0044】
「核酸」の用語は、DNA、RNA又はこれらの誘導体若しくは模倣体の少なくとも1つの分子又は鎖を一般に指し、少なくとも1つの核酸塩基、例えば、DNAに見出される天然に存在するプリン又はピリミジン塩基(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」及びシトシン「C」)又はRNAに見出される天然に存在するプリン又はピリミジン塩基(例えば、A、G、ウラシル「U」及びC)等を含む。「核酸」の用語は、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」の用語を包含する。「オリゴヌクレオチド」の用語は、約3~約100核酸塩基長の少なくとも1つの分子を指す。「ポリヌクレオチド」の用語は、約100核酸塩基長を超える少なくとも1つの分子を指す。このような定義は、少なくとも1つの一本鎖分子を一般に指すが、特定の実施形態では、少なくとも1つの一本鎖分子に対して部分的、実質的、又は完全に相補性の少なくとも1つの更なる鎖をも包含する。したがって、核酸は、分子鎖を含む特定の配列の1つ又は複数の相補鎖又は「補体」を含む、少なくとも1つの二本鎖分子又は少なくとも1つの三本鎖分子を包含し得る。
【0045】
核酸分子に関する「動作可能に結合する」又は「同時発現する」は、2つ以上の核酸分子(例えば、転写される核酸分子、プロモーター及びエンハンサーエレメント)が、核酸分子の転写が可能となるように連結することを意味する。ペプチド及び/又はポリペプチド分子に関する「動作可能に結合する」又は「同時発現する」は、2つ以上のペプチド及び/又はポリペプチド分子が、各ペプチド及び/又はポリペプチド融合成分の少なくとも1つの性質を有する一本のポリペプチド鎖、即ち、融合ポリペプチドをもたらすように連結することを意味する。融合ポリペプチドは特に、キメラである。即ち、異種分子からなる。
【0046】
本開示では、選択肢のみ及び「及び/又は」を指す定義を支持するが、選択肢のみを指すか又は選択肢が相互排他的であることを明示的に指示しない限り、特許請求の範囲における「又は」の用語の使用は、「及び/又は」を意味するために使用する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2又はそれ以上のものを意味し得る。
【0047】
「医薬製剤」の用語は、活性成分の生物学的活性が有効となることが可能となり、製剤を投与する対象に対して許容されないほど毒性の更なる成分を含まない形態の調製物を指す。このような製剤は、無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(媒体、添加剤)は、利用する活性成分の有効用量をもたらすために、対象哺乳動物に合理的に投与可能なものである。
【0048】
一般の種類のベクターである「プラスミド」は、染色体DNAから独立的に複製可能な、染色体DNAから分離した染色体外DNA分子である。特定の場合では、これは、環状かつ二本鎖である。
【0049】
「プロモーター」の用語は、本明細書において、DNA制御配列を含むヌクレオチド領域を指すために通常の意味において使用し、ここで、制御配列は、RNAポリメラーゼに結合して下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することが可能な遺伝子に由来する。これは、核酸配列の特異的転写を開始するために、制御性タンパク質及び分子が結合し得る遺伝子エレメント、例えば、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子を含み得る。「動作可能に位置する」、「動作可能に結合する」、「調節下」及び「転写調節下」の句は、プロモーターが、核酸配列に関して、その配列の転写開始及び/又は発現を調節するのに正しい機能的位置及び/又は配位に存在することを意味する。
【0050】
「サブドメイン」の用語は、CD40Lのドメインの一部である少なくとも2つのアミノ酸の配列を指す。「サブドメイン」は、1つ又は複数のアミノ酸が欠失、付加されているか又は修飾されているアミノ酸配列をも包含し、配列の一方の末端から切断された1つ又は複数のアミノ酸を含む。
【0051】
「ベクター」又は「構築物」(遺伝子送達系又は遺伝子導入「媒体」と呼ぶこともある)は、in vitro又はin vivoのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子又は分子の複合体を指す。
【0052】
B. CD40及びCD40リガンド
CD40は、B細胞、樹状細胞、正常上皮及び一部の上皮癌の表面上に発現する50Kdの糖タンパク質である(Briscoeら、1998)。CD40のリガンドであるCD40Lは、活性化Tリンパ球、ヒト樹状細胞、ヒト血管内皮細胞、平滑筋細胞、及びマクロファージ上に発現する。CD40Lは、このような細胞上に三量体構造として存在し、この三量体構造により、結合時にこの受容体のオリゴマー形成が誘導される。
【0053】
CD40リガンド(CD40L、gp39又はCD154としても知られる)は、C末端の細胞外領域、膜貫通領域、及びN末端の細胞内領域を有するII型膜ポリペプチドである。CD40リガンドは、クローニング及びシーケンシングされており、ヒト(GenBank受託番号Z15017/S49392、D31793-7、X96710、L07414及びX67878/S50586)、マウス(GenBank受託番号X65453)、ウシ(GenBank受託番号Z48469)、イヌ(GenBank受託番号AF086711)、ネコ(GenBank受託番号AF079105)及びラット(GenBank受託番号AF116582、AF013985)の核酸及びアミノ酸配列が報告されている。また、このようなマウス、ウシ、イヌ、ネコ及びラット配列は、参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,482,411号に開示されている。更なるCD40リガンド核酸及びアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,565,321号及び第5,540,926号に開示されており、変異/キメラCD40リガンド配列は、それぞれを参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,716,805号、第5,962,406号、第6,087,329号、第7,495,090号、第7,524,944号、第7,928,213号、及び第8,138,310号に開示されている。
【0054】
C.キメラCD40Lポリペプチド
CD40Lは、TNFスーパーファミリーと集合的に呼ぶ、更に大型リガンドファミリーの一メンバーである(Grussら、Cytokines Mol Ther、1:75~105、1995及びLocksleyら、Cell、104:487~501、2001)。TNFスーパーファミリーのメンバーは、Fasリガンド(「FasL」)、TNFα、LTα、リンホトキシン(TNFβ)、CD154、TRAIL、CD70、CD30リガンド、4-1BBリガンド、APRIL、TWEAK、RANKリガンド、LIGHT、AITRリガンド、エクトジスプラシン、BLYS、VEGI及び0X40リガンドを含む。TNFスーパーファミリーメンバーは、4つのドメイン:ドメインI、細胞内ドメイン、細胞膜に及び、膜貫通ドメインとして知られるドメインII、細胞膜に最も近い細胞外アミノ酸からなるドメインIII、及び遠位の細胞外ドメインであるドメインIVを含む保存的二次構造を共有する。典型的には、ドメインIVの少なくとも一部は、親分子から切断され得る。切断した断片は、インタクトなリガンドと同一の生物学的活性を示すことが多く、TNFファミリーメンバーの「可溶型」と慣習的に呼ぶ。CD40リガンドの可溶性バージョンは、細胞外領域又はこの断片から生成することができ、可溶性CD40リガンドは、CD40リガンドの膜結合バージョンを発現する細胞、例えば、EL-4細胞の培養上清中に見出される。
【0055】
CD40Lとこの同族受容体CD40との間の相互作用は、免疫認識に重要である(Banchereau J.ら、Annu. Rev. Immunol. 12:881~922、1994)。CD40Lは、MHCクラスII分子を介して抗原提示細胞がT細胞受容体と結合した後にCD4+T細胞上に一過性に発現する(Cantwell M.ら、Nat. Med.、3:984~989、1997)。次いで、これによりB細胞、樹状細胞、単球、及びマクロファージを含むCD40発現抗原提示細胞(APC)の活性化が生じ得る(Ranheim E. A.ら、Cell. Immunol.、161 :226~235、1995)。このようなCD40活性化細胞は、外来抗原、例えば、ウイルス又は腫瘍に対する特異的かつ有効な免疫応答を引き起こす免疫活性化現象のカスケードを誘発し得る。
【0056】
ヒトCD40Lの少なくとも一部は、親分子から切断されて可溶性分子となるが、可溶型は、一般には望ましくないことが当技術分野において知られている。したがって、本開示のキメラCD40Lポリペプチドは、タンパク質分解酵素により認識される切断部位を含むヒトCD40Lのアミノ酸又はアミノ酸配列を、この切断部位を含まない非ヒトCD40Lのアミノ酸又はアミノ酸配列に置換することにより形成することができる。特定の実施形態では、非ヒトCD40Lは、マウスCD40Lである。或いは、キメラCD40Lポリペプチドは、切断部位の点変異又は切断部位の欠失を含み得る。
【0057】
一部の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチド配列は、ヒトCD40Lの切断部位に対応し、これを置換する非ヒトCD40Lの細胞外サブドメインをコードする第1のヌクレオチド配列を含む。キメラCD40Lポリペプチドは、CD40L切断部位を含むヒトCD40Lのサブドメインを、非ヒトCD40Lの対応するサブドメインと置換することにより生成することができ、その結果、ヒトCD40Lよりも顕著に切断されにくいキメラCD40Lをもたらす。他の実施形態では、切断部位のアミノ酸は、プロテアーゼによる切断に対する感受性を低下させるように修飾、変化又は欠失させる。第1のヌクレオチド配列は、ヒトCD40受容体への結合に関与するヒトCD40Lの細胞外サブドメインをコードする第2のヌクレオチド配列に動作可能に結合させることができる。この方法では、本開示のポリヌクレオチド配列は、CD40受容体を発現するヒト細胞に結合するキメラCD40Lをコードする。その上、一部の態様では、マウス及びヒトCD40Lの細胞外ドメインは、マウス及びヒト細胞膜上で分子の発現が可能となる少なくとも1つのアミノ酸又はアミノ酸の配列を含む。
【0058】
本開示のCD40Lポリペプチドは、少なくとも2つの異なる種由来の、一部の場合では、ヒト及びマウスCD40L由来のCD40Lドメイン又はサブドメインから構成され得る点において、キメラであり得る。このようなポリペプチドは、ヒト及び非ヒトCD40L領域を組み合わせて免疫応答の刺激を最大化するため、「免疫刺激因子」又はISFと名付けられる。詳細には、ヒトCD40Lの切断部位を含むCD40Lの少なくとも1つのドメイン又はサブドメインは、非ヒトCD40L、特には、マウスCD40Lの対応するドメイン又はサブドメインと置換する。加えて、キメラポリペプチドは、CD40受容体との結合を司るヒトCD40Lのドメイン又はサブドメインからなる。
【0059】
本開示における使用のためのキメラCD154又はCD40Lポリペプチドは、参照により本明細書にともに組み込む、米国特許第7,495,090号及び米国特許第7,928,213号に記載されている。例えば、ヒトCD40LのドメインIVは、マウスCD40LのドメインI、II及びIIIに結合させることができる。特には、このようなポリヌクレオチド配列の例は、配列番号1、3、5、7、9及び11として本明細書において提供し、ISF30、32、34、36、38及び40とそれぞれ名付けられるキメラCD40L構築物をコードする。加えて、マウスCD40LのドメインIVは、ヒトCD40LのドメインI、II及びIIIに結合し得る。このようなポリヌクレオチド配列の例は、配列番号2、4、6、8、10及び12として提供し、ISF31、33、35、37、39及び41とそれぞれ名付けられるキメラCD40L構築物をコードする。特定の実施形態では、本発明において使用するキメラCD40Lポリペプチドは、ISF35である。
【0060】
D.ポリペプチド送達の方法
一部の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原は、ナノ粒子により送達する。例えば、ナノ粒子は、生物分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(フマル酸-co-セバシン酸)無水キトサン及び修飾キトサンからなる。或いは、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原は、リポソーム、PEG化リポソーム、ニオソーム(niosome)又はアクアソーム(aquasome)により送達する。ペプチド又はタンパク質送達のための当技術分野において公知の他の方法、例えば、それらのすべてを参照により本明細書に組み込む、米国特許第8,288,113号及び第5,641,670号並びに米国特許出願公開第20100291065号、第20140242107号、第2014023213号、第20150191710号及び第2010026678号に記載の方法を使用し得る。
【0061】
一部の実施形態では、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原は、発現構築物により提供する。特には、キメラCD40L構築物は、膜安定化してタンパク質分解性切断に対して抵抗性となり、これにより可溶型のCD40Lが生成される可能性は低い。しかし、キメラCD40L構築物は、天然CD40Lの受容体結合機能を維持する。その上、特定のCD40L構築物は、ヒト投与後の受容体結合に重要なドメインにおいて免疫原性ではなく、このため機能的中和が回避される。
【0062】
当業者は、標準的組換え技術によりベクターを構築するのに十分な知識を有する(例えば、参照により本明細書にともに組み込むSambrookら、2001及びAusubelら、1996を参照)。ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス及び植物ウイルス)、並びに人工染色体(例えば、YAC)、例えば、レトロウイルスベクター(例えば、モロニーマウス白血病ウイルスベクター(MoMLV)、MSCV、SFFV、MPSV、SNV等に由来)、レンチウイルスベクター(例えば、HIV-1、HIV-2、SIV、BIV、FIV等に由来)、その複製可能、複製能欠損及び弱機能型を含むアデノウイルス(Ad)ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルス40(SV-40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター、エプスタイン・バーウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ハーベイマウス肉腫ウイルスベクター、マウス乳癌ウイルスベクター、コロナウイルスベクター、並びにラウス肉腫ウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。
【0063】
1.ウイルスベクター
キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原をコードするウイルスベクターを、本発明の特定の態様において提供し得る。組換えウイルスベクターの生成では、非必須遺伝子は、異種(又は非天然)タンパク質の遺伝子又はコード配列と典型的に置換する。ウイルスベクターは、核酸、場合により、タンパク質を細胞に導入する、ウイルス配列を利用する発現構築物の一種である。細胞に感染するか又は受容体により媒介されるエンドサイトーシスを介して細胞に進入し、宿主細胞ゲノムに融合してウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する特定のウイルスの能力によって、これらは、細胞(例えば、哺乳動物細胞)への外来核酸導入の魅力的な候補となった。本発明の特定の態様の核酸を送達するのに使用し得るウイルスベクターの非限定的な例を、以下に記載する。
【0064】
a.レンチウイルスベクター
レンチウイルスは、複雑なレトロウイルスであり、これは、一般的レトロウイルス遺伝子gag、pol及びenvに加えて、制御的又は構造的機能を有する他の遺伝子を含む。レンチウイルスベクターは、当技術分野において周知である(例えば、Naldiniら、1996; Zuffereyら、1997; Blomerら、1997;米国特許第6,013,516号及び第5,994,136号を参照)。
【0065】
組換えレンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することが可能であり、in vivo及びex vivo両方での遺伝子導入及び核酸配列の発現に使用することができる。例えば、適する宿主細胞にパッケージング機能、即ち、gag、pol及びenv並びにrev及びtatを保有する2つ以上のベクターをトランスフェクトする、非分裂細胞に感染可能な組換えレンチウイルスは、参照により本明細書に組み込む米国特許第5,994,136号に記載されている。
【0066】
b.アデノウイルスベクター
ウイルスベクターの別の例は、アデノウイルス発現ベクターであり、これは、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原の送達のための方法として使用することができる。アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAに組み込む能力が低いことが知られているが、この特徴は、このようなベクターによりもたらされる遺伝子導入効率が高いことにより相殺される。アデノウイルス発現ベクターは、(a)構築物のパッケージングを支持し、(b)そこにクローニングした組換え遺伝子構築物を最終的に発現するのに十分なアデノウイルス配列を含む構築物を含む。
図1は、キメラCD40Lポリペプチドをコードするアデノウイルス発現構築物の図を示す。特定の実施形態では、発現構築物において使用するキメラCD40L配列102は、ISF31、ISF32、ISF33、ISF34、ISF35、ISF36、ISF37、ISF38、ISF39、ISF40、ISF41若しくはISF42、好ましくは、ISF35をコードする配列のうちの1つから選択されるか、又は前述の配列のうちの1つと実質的に相同である。キメラCD40Lの転写は、典型的にはキメラCD40リガンド配列102の上流に存在するプロモーター/エンハンサー領域101及び典型的にはCD40リガンド配列の下流に存在するポリアデニル化配列103を含む、更なる制御領域を含むことにより調節する。
図1ではCMVプロモーター101を示すが、本明細書に開示のもののような別のプロモーターも、キメラCD40Lポリペプチドの発現を促進する限り、発現構築物において使用することができる。
図1ではアデノウイルスゲノムのE1欠失部位に挿入したキメラCD40Lカセットを示すが、キメラCD40L発現カセットのためのアデノウイルスゲノムへの代替挿入部位も、キメラCD40Lポリペプチドの発現を促進する限り、利用することができる。
図1に表すアデノウイルス発現構築物では、アデノウイルスゲノムのE1領域は、欠失させてキメラCD40Lカセット挿入物100と置換し、アデノウイルスゲノムのE3領域110は、欠失させた。
【0067】
MemVaxは、キメラCD40Lポリペプチドをコードするアデノウイルス発現ベクターを含む。詳細には、MemVax中のアデノウイルス発現ベクターは、ISF35をコードする。また、MemVaxは、保存と、注射、鼻腔内、又は経口によるものを含む複数の投与経路にわたるヒト又は動物への投与との両方が可能となる、TRIS-ラクトース緩衝液を含む保存製剤を含む。
【0068】
図2は、キメラCD40Lポリペプチド及びコロナウイルス抗原の両方をコードする、混合アデノウイルス発現構築物の図を示す。好ましくは、混合発現構築物において使用するキメラCD40L配列202は、ISF30、ISF31、ISF32、ISF33、ISF34、ISF35、ISF36、ISF37、ISF38、ISF39、ISF40若しくはISF41、好ましくは、ISF35をコードする配列のうちの1つから選択されるか、又はこのような配列のうちの1つと実質的に相同である。好ましくは、混合発現構築物において使用するコロナウイルス抗原配列212は、SARS-CoV-1又はSARS-CoV-2のコロナウイルススパイクタンパク質をコードする配列のうちの1つから選択される。キメラCD40L及びコロナウイルス抗原の両方の転写は、キメラCD40リガンド配列及びコロナウイルス抗原配列の上流に典型的に存在するプロモーター/エンハンサー領域、201及び211をそれぞれ含む、更なる制御領域を含むことにより調節する。
図2ではキメラCD40LのCMVプロモーター201及びコロナウイルス抗原のSV40プロモーター211を示すが、本明細書に開示のような他のプロモーターも、キメラCD40Lポリペプチド及びコロナウイルス抗原の発現を促進する限り、発現構築物において使用することができる。好ましい実施形態では、キメラCD40L及びコロナウイルス抗原に種々のプロモーターを使用して、ウイルス構築物の相同組換えのリスクを低下させる。また、
図2は、キメラCD40Lカセット挿入物200におけるポリアデニル化配列203を表す。
図2では、キメラCD40Lカセット挿入物200は、アデノウイルスゲノムのE1欠失部位に挿入し、コロナウイルス抗原カセット210は、アデノウイルスゲノムのE3欠失部位に挿入した。
図2では、アデノウイルスゲノムのE1欠失部位に挿入したキメラCD40Lカセット挿入物200及びアデノウイルスゲノムのE3欠失部位CMVプロモーター101に挿入したコロナウイルス抗原カセット210を示すが、各発現カセットのためのアデノウイルスゲノムへの代替挿入部位も、キメラCD40Lポリペプチド及びコロナウイルス抗原の発現を促進する限り、利用することができる。
【0069】
アデノウイルスの増殖及び操作は、当業者に公知であり、in vitro及びin vivoで広範な宿主範囲を示す。この群のウイルスは、高力価、例えば、1mlあたり109~1011プラーク形成単位(pfu)で得ることができ、高度に感染性である。アデノウイルスの生活環は、宿主細胞ゲノムへの組込みを必要としない。アデノウイルスベクターにより送達した外来遺伝子は、エピソーム性であり、このため宿主細胞に対する遺伝子毒性が低い。野生型アデノウイルスによるワクチン接種の試験において副作用は報告されておらず(Couchら、1963; Topら、1971)、in vivoでの遺伝子導入ベクターとして、これらの安全性及び治療可能性が実証されている。
【0070】
36kbで直鎖状の二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスの遺伝子構成の知識により、最大7kbの外来配列との大型のアデノウイルスDNA片の置換が可能となる(Grunhaus及びHorwitz、1992)。レトロウイルスとは対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染では、アデノウイルスDNAが、潜在的遺伝子毒性もなくエピソーム的に複製可能であるため、染色体への組込みは生じない。また、アデノウイルスは構造的に安定であり、大規模増幅後のゲノム再構成は検出されていない。
【0071】
アデノウイルスは、中型ゲノムであること、操作の容易さ、高力価、広範な標的細胞範囲、及び高感染性のため、遺伝子導入ベクターとしての使用に特に適する。ウイルスゲノムの両端は、100~200塩基対の逆位反復(ITR)を含み、これは、ウイルスDNAの複製及びパッケージングに必要なcisエレメントである。ゲノムの初期(E)及び後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の発生により分割された種々の転写単位を含む。E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及び少数の細胞遺伝子の転写制御を司るタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)の発現により、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成が生じる。このようなタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現、及び宿主細胞のシャットオフに関与する(Renan、1990)。ウイルスカプシドタンパク質の大多数を含む後期遺伝子の産物は、主要後期プロモーター(MLP)により生じる単一の一次転写物の著しいプロセシングの後にのみ発現する。MLP(16.8 m.u.に位置する)は、感染の後期において特に効率的であり、このプロモーターから生じるmRNAはすべて、これらが翻訳に特に効率的なmRNAとなる5'-トリパータイトリーダー(TPL)配列を有する。
【0072】
組換えアデノウイルスは、シャトルベクターとプロウイルスベクターとの間の相同組換えから生成することができる。2つのプロウイルスベクター間で組換えが生じる可能性のため、野生型アデノウイルスは、このプロセスから生成し得る。したがって、ウイルスの単一クローンを個々のプラークから単離し、このゲノム構造を調べる。
【0073】
アデノウイルスベクターは、複製欠損であり得るか、又は少なくとも条件的に欠損であり得、アデノウイルスベクターの性質は、本発明の実践の成功に不可欠であるとは考えられない。アデノウイルスは、42種の異なる公知の血清型又は亜群A~Fのいずれかであり得る。アデノウイルス5型の亜群Cは、本発明における使用のための条件的複製欠損アデノウイルスベクターを得るための特定の出発物質である。これは、アデノウイルス5型が、大量の生物化学及び遺伝子情報が知られているヒトアデノウイルスであり、アデノウイルスをベクターとして利用する殆どの構築に従来使用されているためである。
【0074】
核酸を、アデノウイルスベクターの、コード配列が除去された位置として導入することができる。例えば、複製欠損アデノウイルスベクターでは、E1コード配列が除去されていることがある。また、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを、Karlssonら(1986)により記載のようにE3置換ベクターの欠失したE3領域の代わりに挿入するか、又はE4領域に挿入してもよく、ここでは、ヘルパー細胞株若しくはヘルパーウイルスがE4欠損を補完する。
【0075】
複製欠損アデノウイルスベクターの生成及び増殖は、ヘルパー細胞株を用いて実施することができる。293と名付けられた独特な一ヘルパー細胞株を、ヒト胚性腎臓細胞からAd5 DNA断片により形質転換させてE1タンパク質を構成的に発現させた(Grahamら、1977)。E3領域はアデノウイルスゲノムから可欠であるため(Jones及びShenk、1978)、293細胞の助力を得たアデノウイルスベクターは、E1、E3又は両領域のいずれかに外来DNAを保有する(Graham及びPrevec、1991)。
【0076】
ヘルパー細胞株は、ヒト細胞、例えば、ヒト胚性腎臓細胞、筋肉細胞、造血細胞又は他の胚性間葉若しくは上皮細胞に由来し得る。或いは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスに許容的な他の哺乳動物種の細胞に由来し得る。このような細胞としては、例えば、ベロ細胞又は他のサル胚性間葉若しくは上皮細胞が挙げられる。上述のように、特定のヘルパー細胞株は、293である。
【0077】
組換えアデノウイルスを生成するための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に組み込む、米国特許第6,740,320号が挙げられる。また、Racherら(1995)では、293細胞を培養し、アデノウイルスを増殖させるための改良方法を開示している。一形式では、培地100~200mlを含む1リットルのシリコン処理スピナーフラスコ(Techne社、Cambridge、UK)に個々の細胞を播種することにより、天然細胞凝集物を増殖させる。40rpmで撹拌後、トリパンブルーを用いて細胞生存率を推定する。別の形式では、Fibra-Celマイクロキャリア(Bibby Sterlin社、Stone、UK)(5g/l)を次のように利用する。培地5mlに再懸濁した細胞接種材料を250mlのエルレンマイヤーフラスコ内の担体(50ml)に加え、時々撹拌しながら1~4時間、定常に置く。次いで、培地を新鮮培地50mlと交換して振盪を開始する。ウイルス生成では、細胞を約80%のコンフルエンスに増殖させた後、培地を交換して(最終容量25%)アデノウイルスを0.05のMOIで加える。培養物は、一晩、定常に置いた後、容量を100%に増加させて、更に72時間の振盪を開始する。
【0078】
c.レトロウイルスベクター
加えて、キメラCD40Lポリペプチド及び/又はコロナウイルス抗原は、レトロウイルスベクターによりコードされ得る。レトロウイルスは、逆転写のプロセスにより、感染細胞において、これらのRNAを二本鎖DNAに変換する能力により特徴づけられる、一本鎖RNAウイルスの一群である(Coffin、1990)。次いで、生じるDNAをプロウイルスとして細胞染色体に安定に組み込み、ウイルスタンパク質の合成を方向づける。この組込みにより、レシピエント細胞及びこの子孫においてウイルスゲノム配列が保持される。レトロウイルスゲノムは、カプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、及びエンベロープ成分をそれぞれコードする3つの遺伝子、gag、pol及びenvを含む。gag遺伝子の上流に見出される配列は、ゲノムをビリオンにパッケージングするためのシグナルを含む。2つの長い末端反復(LTR)配列が、ウイルスゲノムの5'及び3'末端に存在する。これらは、強力なプロモーター及びエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノムへの組込みにも必要とされる(Coffin、1990)。
【0079】
レトロウイルスベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードする核酸を、特定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入して、複製欠損のウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gag、pol及びenv遺伝子を含むが、LTR及びパッケージング成分を含まないパッケージング細胞株を構築する(Mannら、1983)。cDNAとともにレトロウイルスLTR及びパッケージング配列を含む組換えプラスミドをこの細胞株に導入する場合(例えば、リン酸カルシウム沈殿により)、パッケージング配列により、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングすることが可能となり、これらは次いで、培養培地中に分泌される(Nicolas及びRubenstein、1988; Temin、1986; Mannら、1983)。次いで、組換えレトロウイルスを含む培地を収集し、任意選択で、濃縮して、遺伝子導入に使用する。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染可能である。しかし、組込み及び安定な発現には、宿主細胞の分裂が必要とされる(Paskindら、1975)。
【0080】
欠損レトロウイルスベクターの使用に対する懸念は、パッケージング細胞において野生型複製可能ウイルスが出現する可能性を有することである。これは、組換えウイルスのインタクトな配列が、宿主細胞ゲノムに組み込まれたgag、pol、env配列の上流に挿入する組換え現象から生じ得る。しかし、組込み尤度を大いに低下させるはずのパッケージング細胞株が、利用可能である(Markowitzら、1988; Hersdorfferら、1990)。
【0081】
d.アデノ随伴ウイルスベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、組込みが高頻度であり、非分裂細胞に感染可能であるため、哺乳動物細胞への遺伝子の送達に有用なことから、本開示における使用のための魅力的なベクター系である(Muzyczka、1992)。AAVは、感染性について広範な宿主範囲を有し(Tratschinら、1984; Laughlinら、1986; Lebkowskiら、1988; McLaughlinら、1988)、これは、本発明での使用に適用可能であることを意味する。rAAVベクターの生成及び使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号及び米国特許第4,797,368号に記載されている。
【0082】
AAVは、培養細胞における増殖性感染を起こすために別のウイルス(アデノウイルス又はヘルペスウイルスファミリーのメンバーのいずれか)との同時感染を必要とする点において依存性のパルボウイルスである(Muzyczka、1992)。ヘルパーウイルスとの同時感染の非存在下では、野生型AAVゲノムは、その両端からヒト染色体19に融合し、ここで、プロウイルスとして潜伏状態で存在する(Kotinら、1990; Samulskiら、1991)。しかし、rAAVは、AAV Repタンパク質も発現しない限り、組込みが染色体19に制限されない(Shelling及びSmith、1994)。AAVプロウイルスを保有する細胞をヘルパーウイルスに重感染させると、AAVゲノムが染色体又は組換えプラスミドから「レスキュー」されて、正常な増殖性感染が確立される(Samulskiら、1989; McLaughlinら、1988; Kotinら、1990; Muzyczka、1992)。
【0083】
典型的には、組換えAAV(rAAV)ウイルスは、2つのAAV末端反復と隣接する目的の遺伝子を含むプラスミド(McLaughlinら、1988; Samulskiら、1989;それぞれ参照により本明細書に組み込む)と、末端反復を有しない野生型AAVコード配列を含む発現プラスミド、例えば、pIM45(McCartyら、1991)とを同時トランスフェクトすることにより生成する。また、細胞に、AAVヘルパー機能に必要とされるアデノウイルス又はアデノウイルス遺伝子を保有するプラスミドを感染又はトランスフェクトする。このような方法で生成されたrAAVウイルス株は、rAAV粒子から物理的に分離されなければならない(例えば、塩化セシウム密度遠心分離により)アデノウイルスが混入している。或いは、AAVコード領域を含むアデノウイルスベクター又はAAVコード領域を含む細胞株及びアデノウイルスヘルパー遺伝子の一部若しくはすべてを使用し得る(Yangら、1994; Clarkら、1995)。組込みプロウイルスとしてrAAV DNAを保有する細胞株も使用することができる(Flotteら、1995)。
【0084】
e.コロナウイルスベクター
コロナウイルスは、4つの属:アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルス及びデルタコロナウイルスからなるプラス鎖の一本鎖RNAウイルスである。SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2は、ベータコロナウイルスである。コロナウイルスは、4つの主要な構造タンパク質:スパイク(S)、膜(M)、ヌクレオカプシド(N)及びエンベロープ(E)を含む複数のウイルスタンパク質をコードする。アルファコロナウイルス及びベータコロナウイルスの両株を含む一般的ヒトコロナウイルスは、軽度から中等度の上気道疾病、例えば、感冒と関連する。更に重度の後天性呼吸器症候群疾病は、MERS-CoV、SARS-CoV-1及びSARS-CoV-2により生じる。コロナウイルスゲノムは、およそ30kbと比較的大きく、当技術分野において公知の組換え遺伝子操作により遺伝子修飾して、ウイルス又は外来性遺伝物質を除去するか又は組み入れ得る。
【0085】
組換えコロナウイルスベクターは、標的遺伝子修飾を含むように又は異種遺伝子発現のために生成することができる。一部の実施形態では、組換えコロナウイルスベクターは、キメラCD40Lを発現するように生成する。組換えコロナウイルスベクターを生成するための方法は、記載されている(Erikssonら、2008、Methods Mol Biol. vol. 454: 237~54)。キメラCD40Lを発現するように修飾した組換えコロナウイルスベクターは、ワクチンとして使用することができる。
【0086】
f.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターを構築物として本開示において利用し得る。ワクシニアウイルス(Ridgeway、1988; Baichwal及びSugden、1986; Couparら、1988)及びヘルペスウイルスのようなウイルスに由来するベクターを利用し得る。これらにより、種々の哺乳動物細胞に対して魅力的ないくつかの特徴がもたらされる(Friedmann、1989; Ridgeway、1988; Baichwal及びSugden、1986; Couparら、1988; Horwichら、1990)。
【0087】
分子クローニングしたベネズエラウマ脳炎(Venezuelan equine encephalitis、VEE)ウイルス株は、異種ウイルスタンパク質の発現のための複製可能ワクチンベクターとして遺伝子的に改良されている(Davisら、1996)。試験により、VEE感染によって強力なCTL応答が刺激されることが実証され、VEEが免疫化に極めて有用なベクターであり得ることが示唆されている(Caleyら、1997)。
【0088】
更なる実施形態では、キメラCD40L及び/又はコロナウイルス抗原をコードする核酸を、特異的結合リガンドを発現するように改変した感染性ウイルスに収容する。したがって、ウイルス粒子は、標的細胞の同族受容体に特異的に結合し、内容物を細胞に送達する。レトロウイルスベクターの特異的標的化が可能となるように設計した新規の手法は、レトロウイルスの化学的修飾に基づいてウイルスエンベロープへのラクトース残基の化学的付加により開発された(Nedaら、J Biol Chem 1991 vol 4: 14143~46)。この修飾により、シアロ糖タンパク質受容体を介する肝細胞の特異的感染が可能となり得る。
【0089】
例えば、組換えレトロウイルスの標的化が設計され、ここでは、レトロウイルスエンベロープタンパク質及び特異的細胞受容体に対するビオチン化抗体を使用した。抗体は、ビオチン成分を介してストレプトアビジンを使用することにより共役した(Rouxら、1989)。主要組織適合複合体クラスI及びクラスII抗原に対する抗体を使用して、このような表面抗原を有する多様なヒト細胞へのエコトロピックウイルスのin vitroでの感染が実証された(Rouxら、1989)。
【0090】
2.制御エレメント
本開示において有用なベクターに含まれる発現カセットは、タンパク質コード配列に動作可能に結合する真核生物転写プロモーター、介在配列を含むスプライスシグナル及び転写終止/ポリアデニル化配列を特に含む(5'から3'方向に)。真核細胞においてタンパク質コード遺伝子の転写を調節するプロモーター及びエンハンサーは、複数の遺伝子エレメントからなる。細胞機構は、各エレメントにより伝達される制御情報を集めて統合することが可能であり、これにより種々の遺伝子が、別個の大抵は複雑なパターンの転写制御を発達させることが可能となる。本発明の状況において使用するプロモーターは、構成的、誘導性、及び組織特異的プロモーターを含む。
【0091】
a.プロモーター/エンハンサー
発現構築物は、この構築物によりコードされるポリペプチドの発現を駆動するプロモーターを含む。プロモーターは、RNA合成の開始部位を配置するように機能する配列を一般に含む。この最も公知の例は、TATAボックスであるが、TATAボックスを欠く一部のプロモーター、例えば、哺乳動物末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーター及びSV40後期遺伝子のプロモーター等では、開始部位上を覆う分離したエレメントそれ自体が、開始位置を固定するのに役立つ。更なるプロモーターエレメントは、転写開始の頻度を制御する。多くのプロモーターが、開始部位の下流にも機能性エレメントを含むことがわかっているが、典型的には、これらは、開始部位から30~110bp上流の領域に位置する。コード配列をプロモーター「の調節下」に置くために、転写リーディングフレームの転写開始部位の5'末端を、選択したプロモーターの「下流」(即ち、この3')に配置する。「上流」プロモーターは、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0092】
プロモーターエレメント間の空間は、エレメントが相互に連動して反転又は移動する場合、プロモーター機能が保存されるように可動性であることが多い。例えば、tkプロモーターでは、プロモーターエレメント間の空間は、活性が低下し始める前に50bp離れるまで増大させることができる。プロモーターに応じて、個々のエレメントは、転写を活性化するように協同的又は独立的のいずれかで機能し得ると思われる。プロモーターは、「エンハンサー」と組み合わせて使用してもしなくてもよく、これは、核酸配列の転写活性化に関与するcis作用性制御配列を指す。
【0093】
プロモーターは、コードセグメント及び/又はエクソンの上流に位置する5'非コード配列を単離することにより得られ得る核酸配列と天然に結合する配列であり得る。このようなプロモーターは、「内因性」と呼び得る。同様に、エンハンサーは、この配列の下流又は上流のいずれかに位置する核酸配列と天然に結合する配列であり得る。或いは、コード核酸セグメントを組換え又は異種プロモーターの調節下に配置することにより特定の利点が得られ、これは、天然環境下で核酸配列と通常、結合しないプロモーターを指す。また、組換え又は異種エンハンサーは、天然環境下で核酸配列と通常、結合しないエンハンサーを指す。このようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、他の任意のウイルス又は原核若しくは真核細胞から単離したプロモーター又はエンハンサー、並びに「天然に存在」しない、即ち、種々の転写制御領域の種々のエレメント及び/又は発現を変化させる変異を含む、プロモーター又はエンハンサーを含み得る。例えば、組換えDNA構築において最も一般的に使用されているプロモーターは、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース及びトリプトファン(trp)プロモーター系を含む。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列の合成的生成に加えて、本明細書に開示の組成物と関連させて、PCR(商標)を含む組換えクローニング及び/又は核酸増幅技術を使用して配列を生成し得る(それぞれ参照により本明細書に組み込む、米国特許第4,683,202号及び第5,928,906号を参照)。その上、非核オルガネラ、例えば、ミトコンドリア、葉緑体等において配列の転写及び/又は発現を方向づける調節配列をも利用可能であることを検討する。
【0094】
当然、発現のために選択されたオルガネラ、細胞型、組織、器官、又は生物においてDNAセグメントの発現を効率的に方向づけるプロモーター及び/又はエンハンサーを利用することが重要である。分子生物学の技術分野の当業者は、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサー及び細胞型の組合せの使用を一般に理解している(例えば、参照により本明細書に組み込むSambrookら1989を参照)。利用するプロモーターは、導入したDNAセグメントの高レベル発現を方向づけるのに適切な条件下で構成的、組織特異的、誘導性、及び/又は有用である可能性を有し、例えば、組換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生成において有利である。プロモーターは、異種性又は内因性であり得る。
【0095】
プロモーターの非限定的な例としては、初期又は後期ウイルスプロモーター、例えば、SV40初期又は後期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)初期プロモーター;真核細胞プロモーター、例えば、ベータアクチンプロモーター(Ng、1989; Quitscheら、1989)、GADPHプロモーター(Alexanderら、1988、Ercolaniら、1988)、メタロチオネインプロモーター(Karinら、1989; Richardsら、1984)等;並びに連鎖状応答エレメントプロモーター、例えば、環状AMP応答エレメントプロモーター(cre)、血漿応答エレメントプロモーター(sre)、ホルボールエステルプロモーター(TPA)及び最小TATAボックス付近の応答エレメントプロモーター(tre)が挙げられる。
【0096】
特定の態様では、本開示の方法は、エンハンサー配列、即ち、プロモーターの活性を上昇させ、cisに、かつこれらの配向に関係なく、比較的長距離にもわたって(標的プロモーターから最大数キロベース離れて)作用する可能性を有する核酸配列にも関する。しかし、エンハンサーの機能は、これらが所与のプロモーターの直近でも機能し得るため、このような長距離に必ずしも制限されない。
【0097】
b.開始シグナル及び結合発現
また、本開示において提供する発現構築物において、コード配列の効率的翻訳のための、特定の開始シグナルを使用し得る。このようなシグナルとしては、ATG開始コドン又は隣接配列が挙げられる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳調節シグナルを提供する必要を有し得る。当業者は、これを決定し、必要なシグナルをもたらすことが容易に可能である。開始コドンは、「インフレーム」であり、所望のコード配列のリーディングフレームによって全挿入物の翻訳を確実としなければならないことが周知である。外因性翻訳調節シグナル及び開始コドンは、天然又は合成のいずれかであり得る。発現効率は、適切な転写エンハンサーエレメントを組み入れることにより増強し得る。
【0098】
特定の実施形態では、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用を、多重遺伝子又は多シストロン性メッセージを生成するために使用する。IRESエレメントにより、5'メチル化Cap依存的翻訳のリボソームスキャンモデルを迂回して内部部位における翻訳を開始することが可能である(Pelletier及びSonenberg、1988)。ピコルナウイルスファミリーの2つのメンバー(ポリオ及び脳心筋炎)由来のIRESエレメント(Pelletier及びSonenberg、1988)並びに哺乳動物メッセージ由来のIRES(Macejak及びSarnow、1991)が記載されている。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームに結合させることができる。複数のオープンリーディングフレームは、ともに転写し、それぞれIRESにより分離して、多シストロン性メッセージを生成することができる。IRESエレメントのおかげで、効率的翻訳のために、各オープンリーディングフレームがリボソームに接触可能となる。単一メッセージを転写する単一のプロモーター/エンハンサーを使用して、複数の遺伝子が効率的に発現可能である(それぞれ参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,925,565号及び第5,935,819号を参照)。
【0099】
加えて、特定の2A配列エレメントを使用して、本開示において提供する構築物において遺伝子の結合又は同時発現を生成することができる。例えば、切断配列を使用し、オープンリーディングフレームを結合して単一シストロンを形成することにより遺伝子を同時発現させることができる。例となる切断配列は、F2A(口蹄疫ウイルス2A)又は「2A様」配列(例えば、Thosea asignaウイルス2A; T2A)である(Minskaia及びRyan、2013)。
【0100】
c.複製起点
宿主細胞においてベクターを増殖させるために、複製が開始される特異的核酸配列である、1つ又は複数の複製起点部位(「ori」と呼ばれることが多い)、例えば、プログラミングにおいて同等か又は向上した機能を有する遺伝子改変したoriPを含み得る。或いは、上記の他の染色体外複製ウイルスの複製起点又は自己複製配列(ARS)を利用することができる。
【0101】
3.選択及びスクリーニング可能なマーカー
一部の実施形態では、本開示の構築物を含む細胞を、発現ベクターにマーカーを組み入れることによりin vitro又はin vivoで同定し得る。このようなマーカーにより、細胞に同定可能な変化が付与されて、発現ベクターを含む細胞の容易な同定が可能となる。一般には、選択マーカーは、選択が可能となる性質を付与するものである。正の選択マーカーは、マーカーの存在によりこの選択が可能となるものであり、一方、負の選択マーカーは、この存在によりこの選択を防ぐものである。正の選択マーカーの例は、薬物抵抗性マーカーである。
【0102】
通常、薬物選択マーカーを組み入れると、形質転換体のクローニング及び同定に役立ち、例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン(zeocin)及びヒスチジノールに対する抵抗性を付与する遺伝子は有用な選択マーカーである。条件の実行に基づく形質転換体の識別が可能となる表現型を付与するマーカーに加えて、スクリーニング可能なマーカー、例えば、比色分析に基づくGFPを含む他の種類のマーカーも検討する。或いは、負の選択マーカーとしてスクリーニング可能な酵素、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を利用し得る。また、当業者は、免疫マーカーを、場合により、FACS分析と組み合わせて、利用する方法を理解している。使用するマーカーは、遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現することが可能である限り、重要であるとは考えられない。選択及びスクリーニング可能なマーカーの更なる例は、当業者に周知である。
【0103】
B.核酸送達
キメラCD40L及び/又はコロナウイルス抗原をコードする核酸のウイルス送達に加えて、次は、所与の宿主細胞への組換え遺伝子送達の更なる方法であり、したがって、本開示において考慮する。
【0104】
核酸、例えば、DNA又はRNAの導入では、本明細書に記載の又は当業者に公知の、細胞の形質転換のための核酸送達に適する任意の方法を使用し得る。このような方法としては、DNAの直接送達、例えば、ex vivoでのトランスフェクションにより(Wilsonら、1989、Nabelら、1989)、マイクロインジェクション(参照により本明細書に組み込む、Harland及びWeintraub、1985;米国特許第5,789,215号)を含む注射により(それぞれ参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,994,624号、第5,981,274号、第5,945,100号、第5,780,448号、第5,736,524号、第5,702,932号、第5,656,610号、第5,589,466号及び第5,580,859号);エレクトロポレーションにより(参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,384,253号; Tur-Kaspaら、1986; Potterら、1984);リン酸カルシウム沈殿により(Graham及びVan Der Eb、1973; Chen及びOkayama、1987; Rippeら、1990);DEAEデキストランの後ポリエチレングリコールの使用により(Gopal、1985);直接超音波負荷(Fechheimerら、1987)により;リポソーム媒介トランスフェクション(Nicolau及びSene、1982; Fraleyら、1979; Nicolauら、1987; Wongら、1980; Kanedaら、1989; Katoら、1991)及び受容体媒介トランスフェクションにより(Wu及びWu、1987; Wu及びWu、1988);微粒子銃により(それぞれ参照により本明細書に組み込む、PCT出願国際公開第94/09699号及び第95/06128号;米国特許第5,610,042号、第5,322,783、第5,563,055号、第5,550,318号、第5,538,877号及び第5,538,880号);炭化ケイ素繊維による撹拌により(それぞれ参照により本明細書に組み込む、Kaepplerら、1990;米国特許第5,302,523号及び第5,464,765号);アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換により(それぞれ参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,591,616号及び第5,563,055号);乾燥/阻害媒介DNA取込みにより(Potrykusら、1985)、並びにこのような方法の任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。このような技術の適用により、オルガネラ、細胞、組織又は生物を安定に又は一過性に形質転換し得る。
【0105】
1.エレクトロポレーション
本開示のある特定の実施形態では、遺伝子構築物は、エレクトロポレーションにより標的高増殖性細胞に導入する。エレクトロポレーションは、高電圧放電への細胞(又は組織)及びDNA(又はDNA複合体)の曝露を含む。
【0106】
エレクトロポレーションを使用する真核細胞のトランスフェクションは、大きな成功を収めている。この方法により、マウスプレBリンパ球にヒトカッパ免疫グロブリン遺伝子をトランスフェクトしており(Potterら、1984)、ラット肝細胞にクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子をトランスフェクトしている(Tur-Kaspaら、1986)。
【0107】
種々のソース由来の高増殖性細胞のためのエレクトロポレーション条件を最適化し得ることを検討する。電圧、電気容量、時間及びエレクトロポレーション培地組成のようなパラメーターを最適化することを特に望み得る。他の通例の調整の実行については、当業者に公知である。例えば、Hoffman、1999; Hellerら、1996を参照されたい。
【0108】
2.脂質媒介形質転換
更なる実施形態では、キメラCD40L及び/又はコロナウイルス抗原は、リポソーム又は脂質製剤に捕捉し得る。リポソームは、リン脂質二重膜及び内部の水性培地により特徴づけられる小胞構造である。多重膜リポソームは、水性培地により分離する複数の脂質層を有する。これらは、過剰量の水溶液にリン脂質を懸濁させる場合、自然発生的に形成する。脂質成分は、自己再構成を経た後、閉構造を形成し、脂質二重層間に水及び溶解溶質を捕捉する(Ghosh及びBachhawat、1991)。また、リポフェクタミン(Gibco BRL社)と複合体形成した遺伝子構築物を検討する。
【0109】
in vitroでの脂質媒介核酸送達及び外来DNAの発現は、非常に成功している(Nicolau及びSene、1982; Fraleyら、1979; Nicolauら、1987)。Wongら(1980)は、培養トリ胚、HeLa及び肝癌細胞における脂質媒介送達及び外来DNAの発現の実現可能性を実証した。
【0110】
脂質に基づく非ウイルス製剤により、アデノウイルス遺伝子療法に対する選択肢がもたらされる。多くの細胞培養試験により脂質に基づく非ウイルス遺伝子導入が考証されているが、脂質に基づく製剤による全身的遺伝子送達は、制限されている。非ウイルス脂質に基づく遺伝子送達の主要な制限は、非ウイルス送達媒体を含むカチオン性脂質の毒性である。リポソームのin vivoでの毒性により、in vitro及びin vivo遺伝子導入結果間の矛盾が部分的に説明される。この矛盾したデータに寄与する別の因子は、血清タンパク質の存在及び非存在下での脂質媒体安定性の差である。脂質媒体及び血清タンパク質の間の相互作用は、脂質媒体の安定特性に対する劇的な影響を有する(Yang及びHuang、1997)。カチオン性脂質は、負荷電血清タンパク質を誘引して結合する。血清タンパク質と結合する脂質媒体は、マクロファージにより溶解するか又は取り込まれて、循環からこれらが除去される。現在のin vivoでの脂質送達方法では、皮下、皮内、腫瘍内、又は頭蓋内注射を使用して、循環におけるカチオン性脂質と関連する毒性及び安定性の問題を回避する。脂質媒体及び血漿タンパク質の相互作用は、in vitro(Feignerら、1987)及びin vivo(Zhuら、1993; Philipら、1993; Solodinら、1995; Liuら、1995; Thierryら、1995; Tsukamotoら、1995; Aksentijevichら、1996)の遺伝子導入効率間の相違の原因である。
【0111】
脂質製剤の進歩により、in vivoでの遺伝子導入の効率が向上した(Templetonら1997;国際公開第98/07408号)。等モル比の1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)及びコレステロールからなる新規の脂質製剤により、in vivoでの全身的遺伝子導入がおよそ150倍著しく増強される。DOTAP:コレステロール脂質製剤は、「サンドウィッチリポソーム」と呼ばれる独特の構造を形成する。この製剤は、陥入した二重層又は「壷」構造の間にDNAを「サンドウィッチする(挟む)」ことが報告されている。このような脂質構造の有利な特性は、陽性ρ、コレステロールによるコロイド安定化、二次元DNA充填及び血清安定性の向上を含む。米国特許仮出願第60/135,818号及び第60/133,116号では、本発明に使用し得る製剤について考察している。
【0112】
脂質製剤の生成は、(I)逆相蒸発、(II)脱水-再水和、(III)界面活性剤の透析、及び(IV)薄膜による水和後のリポソーム混合物の超音波処理又は連続放出により達成されることが多い。製造するとすぐに、脂質構造を使用して、循環する場合に毒性(化学療法剤)又は不安定な(核酸)化合物を封入することができる。脂質封入により、このような化合物の毒性が低下し、血清半減期が長くなった(Gabizonら、1990)。多数の疾患治療では、脂質に基づく遺伝子導入戦略を使用して、従来の療法を増強するか、新規療法、特に、過剰増殖性疾患を治療するための療法を確立している。
【0113】
E.コロナウイルスワクチン及び/又はキメラCD40Lポリペプチドの組成物
特定の実施形態では、コロナウイルスワクチンは、キメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする発現構築物と同時又はほぼ同時に投与する。一部の実施形態では、コロナウイルスワクチンは、キメラCD40Lポリペプチド又はCD40Lポリペプチドをコードする発現構築物と同一の医薬組成物に含まれる。コロナウイルスワクチンは、コロナウイルス抗原、例えば、コロナウイルススパイクタンパク質を含み得る。或いは、コロナウイルスワクチンは、不活化又は弱毒化コロナウイルス粒子を含んでもよく、特には、このコロナウイルス粒子は、不活化若しくは弱毒化SARS-CoV-1粒子又は不活化若しくは弱毒化SARS-CoV-2粒子であり得る。また別の実施形態では、コロナウイルスワクチンは、コロナウイルス抗原、例えば、コロナウイルススパイクタンパク質をコードする発現構築物を含み得る。好ましくは、コロナウイルスワクチンが発現構築物を含む場合、発現構築物は、SARS-CoV-1(配列番号26)又はSARS-CoV-2(配列番号28)のコロナウイルススパイクタンパク質と相同であるか又は実質的に相同であるコロナウイルススパイクタンパク質をコードする。
【0114】
本発明の精製ポリペプチド又はウイルスベクターは単離した物質として投与し得ると同時に、このようなウイルスベクターは医薬組成物の一部として投与することが好ましい。したがって、本発明では、コロナウイルスワクチン及びキメラCD40Lポリペプチド又はキメラCD40Lポリペプチドをコードする発現構築物を、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とともに含む、組成物を提供する。本発明の方法に従って投与する組成物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができる。投与に適する製剤としては、例えば、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤(bacteriostates)、及び対象とするレシピエントの血液により製剤を等張性とする溶質を含み得る注射用滅菌水溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単一用量又は複数用量の容器、例えば、密封したアンプル及びバイアルで提供してもよく、使用前に滅菌液体担体、例えば、注射用水の条件のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件下で保存してもよい。
【0115】
本発明の組成物の投与経路は、経口、経鼻、局所、又は注射(輸注を含む)投与経路であり得る。コロナウイルスワクチン及びキメラCD40Lを別々に投与する実施形態では、それぞれの投与経路は同一であるか又は異なってもよく、例えば、キメラCD40Lポリペプチドは、注射によるコロナウイルスワクチンの投与と実質的に同時に経鼻投与経路により投与し得る。注射可能な投与経路では、注射は、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、気管内、又は腹腔内注射であり得る。
【0116】
本発明による組成物の用量レベル、投薬頻度、投薬期間、及び投与の他の態様は、患者の臨床症状、体重、及び臨床管理の他の態様に従って最適化し得る。1つ又は複数のウイルスベクターを含む組成物では、各用量は、1ベクターあたりおよそle5~lel2ウイルス粒子(vp)、好ましくは、用量le8~le10vp/ベクターを含み得る。精製ポリペプチドを含む組成物では、各用量は、このような組成物に含まれる各ポリペプチドをおよそ100ng~1mg、好ましくは、用量1μg~100μgを含み得る。
【0117】
材料及び方法
実施例1. ELISPOTにより測定したキメラCD40L及びコロナウイルス抗原の投与に基づく免疫の増強
6~8週齢のBalb/c雌マウスを次のワクチン接種群:対照(リン酸緩衝食塩水);精製組換えSARS-CoV-1スパイクタンパク質(20ug/用量);MemVax(le10ウイルス粒子/用量);精製組換えSARS-CoV-1スパイクタンパク質(20ug/用量)プラスMemVax(le10ウイルス粒子/用量)に割り当てた。0及び15日目にマウス(n=5群)に筋肉内注射によりワクチン接種した。
【0118】
29日目に脾細胞をマウスから採取し、抗スパイクタンパク質特異的細胞応答をIFNγELISPOTにより測定した。96ウェルELISPOTプレートを抗マウスIFNγ捕捉抗体でコーティングした後、脾細胞プラスSARS-CoV-1スパイクタンパク質の全体に及ぶ15-merオーバーラップスパイクタンパク質ペプチド混合物を播種した。一晩インキュベーションして細胞を活性化させた後、プレートを洗浄し、ビオチン化抗IFNγ検出一次抗体プラスストレプトアビジン-セイヨウワサビペルオキシダーゼ二次抗体により、IFNγ結合サイトカインを検出した。HRP基質を発生させて、スポットを顕微鏡により定量した。このアッセイの結果は、
図3及び以下のTable 1(表1)に示す。
【0119】
【0120】
示すように、SARS-CoV-1スパイクタンパク質とのMemVaxの同時投与では、有意なT細胞特異的抗スパイクタンパク質応答がもたらされ、これは、コロナウイルススパイクタンパク質を使用するワクチン接種単独では、有意にはもたらされなかった。
【0121】
実施例2. ELISAにより測定したキメラCD40L及びコロナウイルス抗原の投与に基づく免疫の増強
6~8週齢のBalb/c雌マウスを次のワクチン接種群:対照(リン酸緩衝食塩水);精製組換えSARS-CoV-1スパイクタンパク質(20ug/用量);MemVax(le10ウイルス粒子/用量);精製組換えSARS-CoV-1スパイクタンパク質(20ug/用量)プラスMemVax(le10ウイルス粒子/用量)に割り当てた。0及び15日目にマウス(n=5群)に筋肉内注射によりワクチン接種した。
【0122】
ワクチン接種前(0日目)、14日目及び28日目にマウスから血清を採取した。抗スパイクタンパク質IgG抗体をELISAにより血清において測定した。組換えSARS-CoV-1スパイクタンパク質を96ウェルマイクロタイタープレートの表面上に固定化し、次いで、ブロッキング緩衝液によりブロッキングした。1:200で希釈した血清を加えて、任意の抗スパイクタンパク質抗体を複合体形成させた。セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗マウスIgG抗体を使用し、テトラメチルベンジジン(TMB)発色基質を発色させ、96ウェルプレートリーダーにより450nmの吸光度を測定して、抗IgG結合抗体を検出した。このアッセイの結果は、
図4及び以下のTable 2(表2)に示す。
【0123】
【0124】
コロナウイルススパイクタンパク質をMemVaxとともに受けたワクチン接種群は、ワクチン接種後に有意な抗スパイクタンパク質抗体応答をもたらすことが可能な唯一の群であった。コロナウイルススパイクタンパク質をMemVaxとともに受けたワクチン接種群は、単一ワクチン接種用量単独の後も有意な抗スパイクタンパク質抗体応答をもたらすことが可能であった。その上、コロナウイルススパイクタンパク質とMemVaxとの第2のワクチン用量では、単一用量ワクチン接種を上回って抗スパイクタンパク質抗体応答をブーストすることが可能であった。
【0125】
本明細書において開示及び主張する方法はすべて、本開示を踏まえて過度の実験の必要なく達成及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は、特定の実施形態に関して記載されているが、変形形態を、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び方法の工程又は一連の工程に適用し得ることが当業者に明らかとなる。より詳細には、ともに化学的かつ生理学的に関連する特定の物質が、本明細書に記載の物質に対して置換し得ると同時に、同一又は類似の結果が達成されることが明らかとなる。当業者に明らかな、このような類似の置換及び修正形態のすべては、添付の特許請求の範囲により定義する本発明の趣旨、範囲及び概念の範囲内であると考える。
【配列表】
【国際調査報告】