(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-27
(54)【発明の名称】カラー電気泳動ディスプレイから以前の状態情報を除去するための駆動シーケンス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1685 20190101AFI20231020BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20231020BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20231020BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
G02F1/1685
G02F1/167
G09G3/34 C
G09G3/20 611D
G09G3/20 642J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521732
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 US2021057335
(87)【国際公開番号】W WO2022094264
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ペイキン, アイリーナ
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クラウンス, ケネス アール.
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BB06
2K101BB13
2K101BD22
2K101BD61
2K101EC07
2K101EC08
2K101EC09
2K101ED13
2K101ED22
2K101ED25
2K101ED51
2K101ED74
2K101ED75
5C080AA10
5C080AA13
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD10
5C080FF01
5C080FF11
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
(57)【要約】
多粒子色電気泳動媒体を駆動するときに、前の状態情報を効率的に消去するための方法であって、例えば、粒子のうちの少なくとも2つが、着色され、かつ減法的であり、粒子のうちの少なくとも1つが、散乱性である、方法。典型的には、そのようなシステムは、白色粒子と、シアン色、黄色、およびマゼンタ色の減法原色粒子とを含む。消去パルスは、交互するインパルスの2つの異なる部分を含んでもよく、全体的な波形は、DC平衡され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの異なるタイプの電気泳動粒子を有する、電気泳動媒体を含む、電気泳動ディスプレイを駆動する方法であって、各タイプの電気泳動粒子は、異なる色と、電荷極性および電荷の大きさの明確に異なる組み合わせとを有し、前記方法は、
大きさV
2および長さt
2のインパルスと交互する、大きさV
1および長さt
1のインパルスの第1のセットであって、V
1は、正電圧であり、V
2は、V
1より低い大きさの負電圧である、インパルスの第1のセットと、長さV
4および長さt
4のインパルスと交互する、大きさV
3および長さt
3のインパルスの第2のセットとを備える、消去パルスを提供することであって、比V
1・t
1/V
2・t
2は、比V
3・t
3/V
4・t
4よりも大きい、ことと、
大きさV
5および長さt
5のプッシュインパルスと、大きさV
6および長さt
6のプルインパルスを有する、プッシュプル色アドレス指定パルスを提供することであって、V
5とV
6とは、反対の極性を有する、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記電気泳動ディスプレイは、異なる電荷の大きさを伴う、2つのタイプの正荷電電気泳動粒子と、異なる電荷の大きさを伴う、2つのタイプの負荷電電気泳動粒子とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つのタイプの正荷電粒子は、シアン色およびマゼンタ色であり、前記2つのタイプの負荷電粒子は、白色および黄色である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
大きさV
1および長さt
1の少なくとも3つのインパルスと、大きさV
2および長さt
2の少なくとも3つのインパルスと、大きさV
3および長さt
3の少なくとも3つのインパルスと、長さV
4および長さt
4の少なくとも3つのインパルスとを提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
大きさV
1および長さt
1の少なくとも2つのインパルスは、大きさV
2および長さt
2のインパルスを点在させ、大きさV
3および長さt
3の少なくとも2つのインパルスは、大きさV
4および長さt
4のインパルスを点在させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
大きさV
7および長さt
7の第1のDC平衡インパルスと、大きさV
8および長さt
8の第2のDC平衡インパルスとを含む、DC平衡パルスを提供することをさらに含み、V
7およびV
8は、反対の極性を有し、前記正電圧パルスの全ての電圧-時間面積の合計は、前記負電圧パルスの全ての電圧-時間面積の合計に等しい、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
【数11】
であり、式中、n=1~8であり、V
nおよびt
nは、上記に定義される通りである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記DC平衡パルスは、前記消去パルスおよび前記プッシュプル色アドレス指定パルスに先行する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記DC平衡パルスは、前記消去パルスと前記プッシュプル色アドレス指定パルスとの間にある、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記電気泳動ディスプレイは、第1の光透過性電極層と、複数のピクセル電極を備える第2の電極層と、前記第1の光透過性電極層と前記第2の電極層との間に配置されている、前記電気泳動媒体を備える電気泳動層とを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電気泳動層は、前記電気泳動媒体を含有する、複数のマイクロセルを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電気泳動層は、前記電気泳動媒体を含有する、複数のマイクロカプセルを備える、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本願は、2020年11月2日に出願された、米国仮特許出願第63/108,713号の優先権を主張する。本明細書に開示される、全ての特許および公開の内容は、参照することによって、全体として組み込まれる。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、電気光学ディスプレイを駆動するための方法に関し、具体的には、排他的ではないが、複数の着色粒子、例えば、白色、シアン色、黄色、およびマゼンタ色粒子を備える、電気泳動材料の単一層を使用して、2つを上回る色をレンダリング可能である、電気泳動ディスプレイに関し、2つの粒子が、正荷電であり、2つの粒子が、負荷電であり、1つの正荷電粒子および1つの負荷電粒子が、厚いポリマーシェルを有する。
【0003】
他の色および電荷の組み合わせも、可能性として考えられ、異なる用途にとってより良好に好適であり得る。例えば、3色ディスプレイ(黒色、白色、赤色、および黒色、白色、黄色)、4色ディスプレイ(黒色、白色、赤色、黄色)、および5色ディスプレイ(黒色、白色、赤色、黄色、青色)が、達成可能である。いくつかの実施形態では、これらの粒子の全て(黒色を除く)は、反射性/散乱性であり、信頼可能な飽和状態である色をもたらし、広告にとって非常に好適である。他の実施形態では、粒子のうちの1つのみが、反射性(例えば、白色)である一方、残りの粒子は、吸収性であり、より大きな色域をもたらす。いくつかの用途では、正の粒子のセットの数は、負の粒子セットの数と平衡ではない。例えば、4粒子ディスプレイは、1つの負の白色粒子のセットと、3つの正の粒子のセットを含んでもよく、これは、例えば、シアン色、マゼンタ色、および黄色であり得る。
【0004】
黒色および白色電気泳動ディスプレイの動作と同様に、3つまたは4つの反射性顔料を伴う、電気泳動ディスプレイは、所望の色粒子が、視認表面に対して駆動されるため、単純な黒色および白色ディスプレイと同様に動作する。本駆動スキームは、黒色および白色のみのものよりはるかに複雑であるが、最終的には、粒子の光学機能は、同一である。
【0005】
高度カラー電子ペーパー(ACeP(登録商標))は、4つの粒子を含むが、シアン色、黄色、およびマゼンタ色粒子が、反射性ではなく、減法的であり、それによって、数千色が、各ピクセルにおいて生産されることを可能にする、E Ink Corporationによって販売される、特定のタイプのカラー電気泳動ディスプレイである(ACeP型ディスプレイは、1つの粒子が、散乱し、他の粒子が、減法的である、4粒子システムを指す)。本色プロセスは、オフセット印刷およびインクジェットプリンタにおいて長い間使用されてきた、印刷方法と機能的に同等である。所与の色は、明るい白色ペーパー背景上で、シアン色、黄色、およびマゼンタ色の正しい比率を使用することによって生産される。ACePの事例では、視認表面に対する、シアン色、黄色、マゼンタ色、および白色粒子の相対的な位置が、各ピクセルにおける色を決定するであろう。本タイプの電気泳動ディスプレイは、各ピクセルにおいて数千色を可能にするが、厚さ約10~20ミクロンの作業空間内で、(50~500ナノメートルサイズの)顔料のそれぞれの位置を慎重に制御することが、極めて重要である。明白なこととして、顔料の位置の変動は、誤った色が、所与のピクセルにおいて表示されることをもたらすであろう。故に、精緻な電圧制御が、そのようなシステムに対して要求される。本システムのさらなる詳細は、以下の米国特許、すなわち、米国特許第9,361,836号、第9,921,451号、第10,276,109号、第10,353,266号、第10,467,984号、および第10,593,272号において入手可能であり、その全てが、参照することによって全体として組み込まれる。
【0006】
米国特許第10.593,272号は、ACeP型電気泳動ディスプレイ、とりわけ、トッププレーン切替を使用する、ACeP型電気泳動ディスプレイにおける、以前の状態を消去するための具体的な波形を説明している。米国特許第10.593,272号からの駆動図が、
図1として転載される。
図1では、ACeP型カラー電気泳動ディスプレイをアドレス指定するための汎用波形が、図示され、横座標は、時間(任意単位)を表し、縦座標は、ピクセル電極と共通のフロント電極との間の電圧差を表す。
図1に図示される駆動スキームにおいて使用される、3つの正電圧の大きさは、約+3V~+30Vにあり、3つの負電圧の大きさは、約-3V~-30Vにあり得る。
【0007】
先行技術は、ディスプレイ上にレンダリングされる、前の画像を削除する(すなわち、ディスプレイを「リセット」する)役割を果たす、+V
maxおよび-V
maxにおいて供給される、2つの明確に異なるパルスを教示する。これらのパルスの長さ(t
1およびt
3)および残りの長さ(すなわち、それらの間のゼロ電圧の期間(t
2およびt
4)は、波形全体(すなわち、
図1に図示されるように、全体的な波形にわたる、時間に対する電圧の積分)が、DC平衡である(すなわち、時間の経過に伴う電圧の積分は、実質的にゼロである)ように選定されてもよい。注目すべきこととして、大きさ+V
maxと-V
maxとが、一致され、より容易なDC平衡を可能にする。
【0008】
図1に示されるタイプの先行技術リセットパルスは、波形の初期条件を設定するため、および全体的な遷移をDC平衡するための高電圧双極子を備える、ある相を使用する。本DC平衡相は、所望の最終的な色を形成するために使用される、パルスのシーケンスに先行する。波形のDC平衡部分は、少なくとも2つのパルス、すなわち、1つの正および1つの負から成り、波形のDC平衡部分の正味インパルスは、それに追従する、色形成パルスの正味インパルスと等しく、かつ反対である。
【0009】
経時的に、
図1に示されるタイプの波形が、ある不利点を有することが、明白になっている。特に、
図1に類似する波形は、高水準の「残影」(すなわち、最終光学状態への以前の状態の影響)を有する。その結果として、第1の光学状態から第2の光学状態への多くの遷移は、例えば、2つのカラー画像遷移の間に白色状態への遷移を挿入することによって、付加的な先行消去を要求する。白色状態を通した付加的な「トリップ」は、最大20秒の非常に長い合計遷移時間をもたらし得る。加えて、単一のプッシュプルシーケンスが、色を作製するために使用された(すなわち、従来の波形のリセット/DC平衡相が欠如している、波形を使用する)実験では、1つの色から別の色へのある直接的な遷移のみが、可能性として考えられることが見出された。特に、黄色成分を伴う、任意の色(すなわち、黄色、緑色、赤色、および黒色)から、マゼンタ色は別として、黄色成分を伴わない、任意の色(青色、シアン色、および白色)への直接的な遷移を作製することは、可能性として考えられなかった。
【0010】
残影およびヌル色遷移のための1つの提案される機構は、前の更新の間の1つ以上の顔料の望ましくない分極である。特に、参照することによって組み込まれる、米国特許第9,697,778号に説明されるように、負荷電ポリマー官能化チタニア粒子は、その電気泳動移動度が、実際に反転する程度まで分極され得ることが示された。本挙動は、白色顔料の表面上の電荷制御剤の蓄積、ならびにチタニア粒子の周囲の逆電荷の局所的球形の一時的な作成を含む、他の非線形挙動に起因する可能性が高い。故に、全ての波形の更新の間に、白色状態への遷移を追加することは、粒子の電気泳動移動度を正規化し、電気泳動材料が、そこから全ての後続の色がアクセス可能である、中性状態を達成することに役立つことが、理論化されている。他の粒子セットもまた、以前の色状態に駆動された後、分極された状態になっていることが可能性として考えられ、電気泳動媒体を白色状態に駆動することはまた、これらの望ましくない分極を無効にしている。
【0011】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、何年にもわたって、精力的研究および開発の対象となっている。そのようなディスプレイでは、複数の荷電粒子(時として、顔料粒子とも称される)が、電場の影響下で流体を通して移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したときに、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に伴う問題は、その広範な使用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらのディスプレイの不十分な耐用年数をもたらす。
【0012】
前述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を要求する。大部分の先行技術電気泳動媒体では、本流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産されることもできる。例えば、Kitamura, T., et al., Electrical toner movement for electronic paper-like display, IDW Japan, 2001, Paper HCS1-1およびYamaguchi, Y., et al., Toner display using insulative particles charged triboelectrically, IDW Japan, 2001, Paper AMD4-4を参照されたい。また、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベースの電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直面に配置される看板等、媒体がそのような沈降を可能にする配向で使用されるとき、粒子沈降に起因して、液体ベースの電気泳動媒体と同一タイプの問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、液体のものと比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度が、電気泳動粒子のより高速な沈降を可能にするため、ガスベースの電気泳動媒体では、液体ベースのものより深刻な問題であると考えられる。
【0013】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義である、多数の特許および出願は、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体内で使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小型カプセルを備え、それ自体がそれぞれ、電気泳動的可動粒子を流体媒体中に含有する内相と、内相を囲繞するカプセル壁とを備える。典型的には、カプセルは、それ自体が、ポリマー結合剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術として、以下が挙げられる。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号参照)
(d)マイクロセルを充填およびシールするための方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号参照)
(e)電気光学材料を含有するフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照)
(f)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)
(g)色形成および色調節(例えば、米国特許第6,017,584号、第6,545,797号、第6,664,944号、第6,788,452号、第6,864,875号、第6,914,714号、第6,972,893号、第7,038,656号、第7,038,670号、第7,046,228号、第7,052,571号、第7,075,502号、第7,167,155号、第7,385,751号、第7,492,505号、第7,667,684号、第7,684,108号、第7,791,789号、第7,800,813号、第7,821,702号、第7,839,564号、第7,910,175号、第7,952,790号、第7,956,841号、第7,982,941号、第8,040,594号、第8,054,526号、第8,098,418号、第8,159,636号、第8,213,076号、第8,363,299号、第8,422,116号、第8,441,714号、第8,441,716号、第8,466,852号、第8,503,063号、第8,576,470号、第8,576,475号、第8,593,721号、第8,605,354号、第8,649,084号、第8,670,174号、第8,704,756号、第8,717,664号、第8,786,935号、第8,797,634号、第8,810,899号、第8,830,559号、第8,873,129号、第8,902,153号、第8,902,491号、第8,917,439号、第8,964,282号、第9,013,783号、第9,116,412号、第9,146,439号、第9,164,207号、第9,170,467号、第9,170,468号、第9,182,646号、第9,195,111号、第9,199,441号、第9,268,191号、第9,285,649号、第9,293,511号、第9,341,916号、第9,360,733号、第9,361,836号、第9,383,623号、および第9,423,666号、ならびに米国特許出願公開第2008/0043318号、第2008/0048970号、第2009/0225398号、第2010/0156780号、第2011/0043543号、第2012/0326957号、第2013/0242378号、第2013/0278995号、第2014/0055840号、第2014/0078576号、第2014/0340430号、第2014/0340736号、第2014/0362213号、第2015/0103394号、第2015/0118390号、第2015/0124345号、第2015/0198858号、第2015/0234250号、第2015/0268531号、第2015/0301246号、第2016/0011484号、第2016/0026062号、第2016/0048054号、第2016/0116816号、第2016/0116818号、および第2016/0140909号参照)
(h)ディスプレイを駆動するための方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,514,168号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、ならびに米国特許出願公開第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/0262255号、第2015/0262551号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号参照)(これらの特許および出願は、以降、MEDEOD(電気光学ディスプレイを駆動するための方法)出願と称され得る)
(i)ディスプレイの用途(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照)
(j)非電気泳動ディスプレイ(例えば、米国特許第6,241,921号、ならびに米国特許出願公開第2015/0277160号、ならびに米国特許出願公開第2015/0005720号および2016/0012710号参照)
【0014】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体内の離散マイクロカプセルを囲繞する壁が、連続相と置換され、したがって、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の離散液滴と、ポリマー材料の連続相とを備える、いわゆる「ポリマー分散型電気泳動ディスプレイ」を生産し得、そのようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散液滴は、いかなる離散カプセル膜も各個々の液滴と関連付けられないにもかかわらず、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0015】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、代わりに、伝搬媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に留保される。例えば、両方ともSiPix Imaging, Inc.に譲渡されている、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい。
【0016】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透過性であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通る可視光の透過を実質的に遮断するため)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態が実質的に不透過性であり、1つが光透過性である、いわゆる「シャッタモード」で動作するように作製されることができる。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。誘電泳動ディスプレイは、電気泳動ディスプレイと類似するが、電場強度の変動に依拠し、類似のモードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイもまた、シャッタモードで動作することが可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのために、多層構造で使用されることができる。そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接する少なくとも1つの層は、シャッタモードで動作して、視認表面からより離れた第2の層を暴露または隠蔽する。
【0017】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多種多様な可撓性および剛性基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する(「印刷」という語の使用は、限定ではないが、前計量コーティング、例えば、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等、ロールコーティング、例えば、ナイフオーバーロールコーティング、フォワード・リバースロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、吹き付けコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電気印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動析出(米国特許第7,339,715号参照)、および他の類似技法を含む、あらゆる形態の印刷およびコーティングを含むことを意図している)。したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷されることができるため、ディスプレイ自体は、安価に作製されることができる。
【0018】
上記に示されるように、最も単純な先行技術電気泳動媒体は、本質的に、2つの色のみを表示する。そのような電気泳動媒体は、第2の異なる色を有する着色流体中の第1の色を有する単一タイプの電気泳動粒子(その場合、第1の色は、粒子がディスプレイの視認表面に隣接して存在するときに表示され、第2の色は、粒子が視認表面から離間されるときに表示される)、または非着色流体中の異なる第1および第2の色を有する第1および第2のタイプの電気泳動粒子(その場合、第1の色は、第1のタイプの粒子がディスプレイの視認表面に隣接して存在するときに表示され、第2の色は、第2のタイプの粒子が視認表面に隣接して存在するときに表示される)のいずれかを使用する。典型的には、2つの色は、黒色および白色である。フルカラーディスプレイが所望される場合、色フィルタアレイが、モノクロ(黒色および白色)ディスプレイの視認表面にわたって堆積されてもよい。色フィルタアレイを伴うディスプレイは、面積共有および色混成に依拠して、色刺激を作成する。利用可能なディスプレイ面積は、赤色/緑色/青色(RGB)または赤色/緑色/青色/白色(RGBW)等の3または4原色間で共有され、フィルタが、1次元(ストライプ)または2次元(2×2)反復パターンで配列されることができる。他の選択肢の原色または3つを上回る原色もまた、当技術分野において公知である。3つ(RGBディスプレイの場合)または4つ(RGBWディスプレイの場合)のサブピクセルが、意図される視認距離において、それらが視覚的にともに均一色刺激(「色混成」)を伴う単一ピクセルに混成するように十分に小さくあるように選定される。面積共有の固有の不利点は、着色剤が常時存在し、色が、下層モノクロディスプレイの対応するピクセルを白色または黒色に切り替える(対応する原色をオンまたはオフに切り替える)ことによってのみ変調されることができることである。例えば、理想的RGBWディスプレイでは、赤色、緑色、青色、および白色原色のそれぞれは、ディスプレイ面積の4分の1(4つのうちの1つのサブピクセル)を占有し、白色サブピクセルは、下層モノクロディスプレイの白色と同程度に明るいが、着色サブピクセルのそれぞれは、モノクロディスプレイの白色の3分の1より明るくない。全体としてディスプレイによって示される白色の明るさは、白色サブピクセルの明るさの2分の1を上回り得ない(ディスプレイの白色面積は、各4つのうちの1つの白色サブピクセルに加えて、白色サブピクセルの3分の1に匹敵するその着色形態における各着色サブピクセルを表示することによって生産され、したがって、組み合わせられる3つの着色サブピクセルは、1つの白色サブピクセルを上回って寄与しない)。色の明るさおよび飽和は、黒色に切り替えられる色ピクセルとの面積共有によって低下される。面積共有は、黄色を混合するとき、それが、等しい明るさの任意の他の色より明るく、飽和された黄色が、白色とほぼ同程度に明るいため、特に問題となる。青色ピクセル(ディスプレイ面積の4分の1)から黒色への切替は、黄色を著しく暗くさせる。
【0019】
多層積層電気泳動ディスプレイは、当技術分野において公知であり、例えば、J. Heikenfeld, P. Drzaic, J-S Yeo and T. Koch, Journal of the SID, 19(2), 2011, pp. 129-156を参照されたい。そのようなディスプレイでは、周囲光は、従来のカラー印刷と精密に類似して、減法三原色のそれぞれの画像を通して通過する。米国特許第6,727,873号は、その中に切替可能セルの3つの層が、反射性背景を覆って設置される、積層電気泳動ディスプレイを説明している。着色粒子が、側方に移動される(国際出願第WO2008/065605号参照)、または垂直および側方運動の組み合わせを使用して、マイクロセルの中に隔離される、類似するディスプレイが、公知である。両方の場合において、各層は、ピクセル単位で着色粒子を集中または分散させる役割を果たす、電極を具備し、それによって、3つの層のそれぞれは、薄膜トランジスタ(TFT)の層(TFTの3つの層のうち2つが、実質的に透明でなければならない)と、光透過性の対電極とを要求する。電極のそのような複雑な配列は、製造するために費用がかかり、先行技術の現在の状態では、特に、ディスプレイの白色状態が、電極のいくつかの層を通して視認されなければならないため、ピクセル電極の適正に透明な平面を提供することは、困難である。多層ディスプレイはまた、ディスプレイ積層の厚さが、ピクセルサイズに近似する、または超過するため、視差の問題にも悩まされる。
【0020】
米国特許第2012/0008188号および第2012/0134009号は、独立してアドレス指定可能ピクセル電極と、共通の光透過性フロント電極とを備える、単一バックプレーンを有する、多色電気泳動ディスプレイを説明している。バックプレーンとフロント電極との間には、複数の電気泳動層が配置される。これらの出願に説明されるディスプレイは、原色のいずれか(赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色)を任意のピクセル場所にレンダリングすることが可能である。しかしながら、アドレス指定電極の単一セット間に位置する複数の電気泳動層の使用に対して不利点がある。特定の層内の粒子によって被られる電場は、同一電圧でアドレス指定される単一電気泳動層の場合に該当するであろうものより低い。加えて、視認表面に最も近い電気泳動層内の光学損失(例えば、光散乱または望ましくない吸光によって生じる)は、下層電気泳動層内に形成される画像の外観に影響を及ぼし得る。
【0021】
単一電気泳動層を使用してフルカラー電気泳動ディスプレイを提供するための試みが、成されている。例えば、米国特許出願公開第2013/0208338号は、クリアかつ無色または着色溶媒中に分散される1つまたは2つのタイプの顔料粒子を備える、電気泳動流体を備える、カラーディスプレイであって、電気泳動流体が、共通電極と複数のピクセルまたは駆動電極との間に配置される、カラーディスプレイを説明している。駆動電極は、背景層を暴露するように配列される。米国特許出願公開第2014/0177031号は、反対電荷極性を帯び、2つのコントラスト色である、2つのタイプの荷電粒子を備える、電気泳動流体で充填される、ディスプレイセルを駆動するための方法を説明している。2つのタイプの顔料粒子は、着色溶媒またはその中に分散される非荷電もしくは弱荷電着色粒子を伴う溶媒中に分散される。本方法は、全駆動電圧の約1~約20%である駆動電圧を印加することによって、ディスプレイセルを駆動し、溶媒の色または非荷電もしくは弱荷電着色粒子の色を表示することを含む。米国特許出願公開第2014/0092465号および第2014/0092466号は、電気泳動流体と、電気泳動ディスプレイを駆動するための方法とを説明している。流体は、第1、第2、および第3のタイプの顔料粒子を備え、その全ては、溶媒または溶媒混合物中に分散される。第1および第2のタイプの顔料粒子は、反対電荷極性を帯び、第3のタイプの顔料粒子は、第1または第2のタイプの電荷レベルの約50%未満である電荷レベルを有する。3つのタイプの顔料粒子は、異なるレベルの閾値電圧、または異なるレベルの移動度、または両方を有する。これらの特許出願はいずれも、その用語が以下で使用される意味でのフルカラーディスプレイを開示していない。
【0022】
米国特許出願公開第2007/0031031号は、各ピクセルが、白色、黒色、および1つの他色を表示することが可能である、ディスプレイ媒体上に、画像を表示するために、画像データを処理するための画像処理装置を説明している。米国特許出願公開第2008/0151355号、第2010/0188732号、および第2011/0279885号は、可動粒子が、多孔質構造を通して移動する、カラーディスプレイを説明している。米国特許出願公開第2008/0303779号および第2010/0020384は、異なる色の第1、第2、および第3の粒子を備える、ディスプレイ媒体を説明している。第1および第2の粒子は、凝集体を形成することができ、より小さな第3の粒子は、凝集された第1および第2の粒子間に残された、開口を通して移動することができる。米国特許出願公開第2011/0134506号は、対の基板の間に包囲される、複数のタイプの粒子を含む、電気泳動ディスプレイ要素を含む、表示デバイスであり、基板の少なくとも1つは、半透明であり、個別の複数のタイプの粒子のそれぞれは、同一極性を用いて荷電され、光学性質において異なり、移動の速さおよび/または移動のための電場閾値のいずれかにおいて異なり、半透明のディスプレイ側電極は、半透明の基板が配置される、基板側に提供され、第1の背面側電極は、ディスプレイ側電極に面する、他方の基板の側面に提供され、第2の背面側電極は、ディスプレイ側電極に面する、他方の基板の側面に提供され、電圧制御区画は、ディスプレイ側電極、第1の背面側電極、および第2の背面側電極に印加される電圧を制御し、それによって、複数のタイプの粒子から最速の移動速さを有する、粒子のタイプ、または複数のタイプの粒子から最低閾値を有する、粒子のタイプが、異なるタイプの粒子のそれぞれによって、順に、第1の背面側電極に、または第2の背面側電極に、移動され、次いで、第1の背面側電極に移動した粒子が、ディスプレイ側電極に移動されることを説明している。米国特許出願公開第2011/0175939号、第2011/0298835号、第2012/0327504号、および第2012/0139966号は、複数の粒子の凝集および閾値電圧に依拠する、カラーディスプレイを説明している。米国特許出願公開第2013/0222884号は、荷電群含有ポリマーと、着色剤とを含有する、着色粒子と、着色粒子に付着されている、分岐シリコーンベースポリマーとを含有し、共重合成分として、反応性モノマーと、具体的なモノマー群から選択される、少なくとも1つのモノマーとを含有する、電気泳動粒子を説明している。米国特許出願公開第2013/0222885号は、分散媒体と、分散媒体内に分散され、電場内で移動する、着色電気泳動粒子群と、移動せず、電気泳動粒子群のものとは異なる色を有する、非電気泳動粒子群と、中性極性基と、疎水性基とを有する、化合物とを含有する、電気泳動ディスプレイのための分散液であって、分散液全体に基づいて、約0.01~約1質量%の比率で、分散媒体内に含有される、分散液を説明している。米国特許出願公開第2013/0222886号は、着色剤と、親水性樹脂とを含有する、コア粒子と、コア粒子のそれぞれの表面を被覆し、7.95(J/cm3)1/2またはそれを上回る、溶解度パラメータにおける差を伴う、疎水性樹脂を含有する、シェルとを含有する、浮遊粒子を含む、ディスプレイのための分散液を説明している。米国特許出願公開第2013/0222887号および第2013/0222888号は、規定される化学組成を有する、電気泳動粒子を説明している。最後に、米国特許出願公開第2014/0104675号は、電場に応答して移動する、第1および第2の着色粒子と、分散媒体とを含む、粒子分散液であって、第2の着色粒子は、第1の着色粒子より大きな直径と、第1の着色粒子の充電特性と同一の充電特性とを有し、ディスプレイの単位面積あたりの第1の着色粒子の電荷量Csと第2の着色粒子の電荷量Clの比(Cs/Cl)は、5未満またはそれに等しい、分散液を説明している。前述のディスプレイのうちのいくつかは、フルカラーを提供するが、長くかつ煩雑なアドレス指定方法を要求するという代償を払う。
【0023】
米国特許出願公開第2012/0314273号および第2014/0002889号は、絶縁液体中に含まれる、複数の第1および第2の電気泳動粒子を含む、電気泳動デバイスであって、第1および第2の粒子は、相互と異なる充電特性を有し、デバイスはさらに、絶縁液体中に含まれ、繊維状構造物から形成される、多孔質層を備える、電気泳動デバイスを説明している。これらの特許出願は、用語が下記に使用される意味において、フルカラーディスプレイではない。
【0024】
米国特許出願公開第2011/0134506号および前述の出願第14/277,107号も参照されたい。後者は、着色流体中の3つの異なるタイプの粒子を使用する、フルカラーディスプレイを説明するが、着色流体の存在は、ディスプレイによって達成され得る、白色状態の品質を限定する。
【0025】
高分解能ディスプレイを取得するために、ディスプレイの個々のピクセルは、隣接ピクセルからの干渉を伴わずに、アドレス指定可能でなければならない。本目的を達成するための1つの方法は、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生産するために、各ピクセルと関連付けられた少なくとも1つの非線形要素を伴う、トランジスタまたはダイオード等の非線形要素のアレイを提供することである。1つのピクセルをアドレス指定する、アドレス指定またはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して、適切な電圧源に接続される。典型的には、非線形要素がトランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され、本配列は、以下の説明において仮定されるであろうが、本質的に、恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。従来、高分解能アレイでは、ピクセルは、任意の具体的ピクセルが、1つの規定された行および1つの規定された列の交差点によって一意に画定されるように、行および列の2次元アレイで配列される。各列内の全トランジスタのソースは、単一列電極に接続される一方、各行内の全トランジスタのゲートは、単一行電極に接続される。再び、行へのソースおよび列へのゲートの割当は、従来のものであるが、本質的に、恣意的であり、所望に応じて、逆転され得る。行電極は、行ドライバに接続され、これは、本質的に、任意の所与の瞬間において、1つのみの行が選択される、すなわち、選択された行内の全トランジスタが伝導性であることを確実にするような選択電圧が選択された行電極に印加される一方、これらの非選択された行内の全トランジスタが非伝導性のままであることを確実にするように、非選択電圧が全ての他の行に印加されることを確実にする。列電極は、列ドライバに接続され、これは、種々の列電極上に、選択された行内のピクセルをその所望の光学状態に駆動するように選択された電圧をかける(前述の電圧は、従来、電気光学媒体の非線形アレイと反対側に提供され、全体的ディスプレイを横断して延在する、共通フロント電極に対して相対的なものである)。「ラインアドレス時間」として知られる事前に選択された間隔後、選択された行は、選択解除され、次の行が、選択され、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変更される。本プロセスは、ディスプレイ全体が行毎様式で書き込まれるように繰り返される。
【0026】
従来、各ピクセル電極は、ピクセル電極およびコンデンサ電極がコンデンサを形成するように、それと関連付けられたコンデンサ電極を有する。例えば、国際特許出願第WO01/07961号を参照されたい。いくつかの実施形態では、N型半導体(例えば、非晶質シリコン)が、トランジスタを形成するために使用されてもよく、ゲート電極に印加される「選択」および「非選択」電圧は、それぞれ、正および負であることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第10,593,272号公報
【特許文献2】米国特許第9,697,778号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
(発明の要約)
ディスプレイのリセットは、残留電圧と、前に表示された色に特有の顔料構成とを含む、前の状態の任意のメモリを理想的に削除し、多粒子電気泳動ディスプレイが、同一駆動スキームを用いて、同一の色状態を確実に達成することを可能にする。一般的には、本発明のリセットパルスは、高い(大きさ)正電圧の後に、より低い(大きさ)負電圧を含み、正電圧パルスの(時間の)長さは、負電圧パルスの(時間の)長さより短くなければならない。消去波形は、DC平衡またはDC非平衡であってもよい。リセットパルスは、高い(大きさ)正電圧の2つ以上の異なるセットと、より低い(大きさ)負電圧の2つ以上の異なるセットとを含んでもよい。例えば、リセットパルスの第1の部分は、最適な可能性として考えらえられる消去を達成するために、普遍的な色開始状態、例えば、マゼンタ色を達成するためのプッシュプルシーケンスを含んでもよい。第2の部分は、白色同様の中性状態を備え、これは、そこから全ての後続の色が、簡略化されたプッシュプルカラー遷移を伴って作成されることができる、状態である。
【0029】
一側面では、本発明は、4つの異なるタイプの電気泳動粒子を有する、電気泳動媒体を含む、電気泳動ディスプレイを駆動する方法を含み、各タイプの電気泳動粒子は、異なる色と、電荷極性および電荷の大きさの明確に異なる組み合わせとを有する。本方法は、大きさV2および長さt2のインパルスと交互する、大きさV1および長さt1のインパルスの第1のセットであって、V1は、正電圧であり、V2は、V1より低い大きさの負電圧である、インパルスの第1のセットと、長さV4および長さt4のインパルスと交互する、大きさV3および長さt3のインパルスの第2のセットとを備える、消去パルスを提供することであって、比V1・t1/V2・t2は、比V3・t3/V4・t4よりも大きい、ことと、大きさV5および長さt5のプッシュインパルスと、大きさV6および長さt6のプルインパルスを有する、プッシュプル色アドレス指定パルスを提供することであって、V5とV6とは、反対の極性を有する、こととを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、電気泳動ディスプレイは、異なる電荷の大きさを伴う、2つのタイプの正荷電電気泳動粒子と、異なる電荷の大きさを伴う、2つのタイプの負荷電電気泳動粒子とを含む。いくつかの実施形態では、2つのタイプの正荷電粒子は、シアン色およびマゼンタ色であり、2つのタイプの負荷電粒子は、白色および黄色である。いくつかの実施形態では、本方法はまた、大きさV
1および長さt
1の少なくとも3つのインパルスと、大きさV
2および長さt
2の少なくとも3つのインパルスと、大きさV
3および長さt
3の少なくとも3つのインパルスと、長さV
4および長さt
4の少なくとも3つのインパルスとを提供することを含む。いくつかの実施形態では、大きさV
1および長さt
1の少なくとも2つのインパルスは、大きさV
2および長さt
2のインパルスを点在させ、大きさV
3および長さt
3の少なくとも2つのインパルスは、大きさV
4および長さt
4のインパルスを点在させる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、大きさV
7および長さt
7の第1のDC平衡インパルスと、大きさV
8および長さt
8の第2のDC平衡インパルスとを含む、DC平衡パルスを提供することを含み、V
7およびV
8は、反対の極性を有し、正電圧パルスの全ての電圧-時間面積の合計は、負電圧パルスの全ての電圧-時間面積の合計に等しい。そのような特徴は、
【数1】
として、表され得、式中、n=1~8であり、V
nおよびt
nは、上記に定義される通りである。いくつかの実施形態では、DC平衡パルスは、消去パルスおよびプッシュプル色アドレス指定パルスに先行する。いくつかの実施形態では、DC平衡パルスは、消去パルスとプッシュプル色アドレス指定パルスとの間にある。
【0031】
いくつかの実施形態では、電気泳動ディスプレイは、第1の光透過性電極層と、複数のピクセル電極を備える第2の電極層と、第1の光透過性電極層と第2の電極層との間に配置される、電気泳動媒体を備える電気泳動層とを備える。いくつかの実施形態では、記電気泳動層は、電気泳動媒体を含有する、複数のマイクロセルを備える。いくつかの実施形態では、電気泳動層は、電気泳動媒体を含有する、複数のマイクロカプセルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、ACeP型電気泳動ディスプレイのための先行技術消去波形を示す。
図1は、米国特許第10,593,572号の
図6の均等物である。
【0033】
【
図2】
図2は、黒色、白色、減法三原色、および加法三原色を表示するときの本発明の電気泳動媒体内の種々の着色粒子の位置を示す、概略断面図である。
【0034】
【
図3A】
図3Aは、概略形態において、多粒子電気泳動媒体内で使用される4つのタイプの異なる顔料粒子を示す。
【0035】
【
図3B】
図3Bは、概略形態において、多粒子電気泳動媒体内で使用される4つのタイプの異なる顔料粒子を示す。
【0036】
【
図3C】
図3Cは、概略形態において、多粒子電気泳動媒体内で使用される4つのタイプの異なる顔料粒子を示す。
【0037】
【
図4】
図4は、電気泳動ディスプレイの単一ピクセルの例示的等価回路を図示する。
【0038】
【
図5】
図5は、例示的電気泳動カラーディスプレイの層を示す。
【0039】
【
図6】
図6は、1つの反射性(白色)粒子と、3つの減法的(シアン色、黄色、マゼンタ色)粒子とを含む、最適化されたシステムにおいて、原色のセットを達成するために使用され得る、単純なプッシュプル波形を示し、2つの粒子は、負荷電であるが、異なる大きさを有し、2つの粒子は、正荷電であるが、異なる大きさを有する。
【0040】
【
図7A】
図7Aは、一般化された消去パルスであり、V
1、t
1およびV
2、t
2の交互パルスを有する。V
1は、V
2よりも大きさが大きく、t
1は、t
2より短い。
【0041】
【
図7B】
図7Bは、一般化された消去パルスであり、V
1、t
1およびV
2、t
2の交互パルスを有する、第1の部分と、V
3、t
3、およびV
4、t
4の交互パルスを有する、第2の部分とを含む。
【0042】
【
図8】
図8は、消去パルスの具体的な実施例であり、ACeP型媒体をマゼンタ色状態に向かって駆動する、第1の部分と、ACeP型媒体を中性白色状態に向かって駆動する、第2の部分とを含む。
【0043】
【
図9】
図9は、金属酸化物バックプレーンを有するディスプレイの中に組み込まれ、7レベルドライバを使用するとき、ACeP型電気泳動媒体において、所望の色を達成するために好適なプッシュプル波形に結合される、本発明の例示的な消去パルスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(詳細な説明)
本発明は、多粒子色電気泳動媒体を駆動するときに、前の状態情報を効率的に消去するための方法を詳述し、粒子のうちの少なくとも2つは、着色かつ減法的であり、粒子のうちの少なくとも1つは、散乱性である。典型的には、そのようなシステムは、白色粒子、ならびにシアン色、黄色、およびマゼンタ色減法原色粒子を含む。そのようなシステムが、
図2に図式的に示され、これは、全てのピクセルにおいて、白色、黄色、赤色、マゼンタ色、青色、シアン色、緑色、および黒色を提供することができる。
【0045】
ACePの事例では、8つの主要色(赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、黒色、および白色)のそれぞれは、4つの顔料の異なる配列に対応し、それによって、視認者には、白色顔料の視認側にある、それらの着色顔料のみ(すなわち、光を散乱する顔料のみ)が見える。これらの色を作製するために、4つの顔料を適切な構成に配列するための波形は、少なくとも5つの電圧レベル(高い正、低い正、ゼロ、低い負、高い負)を必要とすることが見出されている。
図2を参照されたい。広範囲な色を達成するためには、付加的な電圧レベルが、顔料のより微妙な制御、例えば、7つの電圧レベル、例えば、9つの電圧レベルのために使用されなければならない。しかしながら、背景において議論されるように、全ての第2の色状態が、全ての第1の色状態から使用可能であるとは限らず、これは、より複雑な(かつより長い)駆動波形をもたらすことが見出されている。本明細書に説明される発明は、不整合電圧のプッシュプル消去波形を提供することによって、本困難を克服する。本タイプの消去波形は、顕著な閃光を伴わずに、殆どの色状態間の高速な遷移を可能にする。
【0046】
本明細書で使用されるように、用語「色」は、白色および黒色を含む。白色粒子は、多くの場合、光散乱型である。用語「グレー状態」は、結像技術におけるその従来的な意味で本明細書で使用され、2つの極限ピクセルの光学状態の中間の状態を指し、必ずしもこれら2つの極限状態の間の黒色-白色遷移を含意するわけではない。例えば、下記に参照されるE Ink特許および公開された出願のうちのいくつかは、中間グレー状態が実際には淡い青色であろうように、極限状態が白色および濃青色である、電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに述べられたように、光学状態の変化は、色の変化では全くない場合もある。用語「黒色および白色」は、以降では、ディスプレイの2つの極限光学状態を指すために使用され得、通常、厳密に黒色および白色ではない、極限光学状態、例えば、前述の白色および濃青色状態を含むものとして理解されたい。
【0047】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で本明細書で使用され、少なくとも1つの光学性質が異なる第1および第2の表示状態を有する、表示要素を備え、それによって、その第1または第2の表示状態のいずれかを呈するように、有限持続時間のアドレス指定パルスを用いて、任意の所与の要素が駆動されてから、アドレス指定パルスが終了した後に、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が持続するであろう、ディスプレイを指す。グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、その極限黒色および白色状態においてだけではなく、また、その中間グレー状態においても安定しており、同じことがいくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイに当てはまることが、米国特許第7,170,670号に示されている。本タイプのディスプレイは、適切には、「双安定」ではなく、「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書では、双安定および多安定ディスプレイの両方を網羅するために使用され得る。
【0048】
用語「インパルス」は、電気泳動ディスプレイの駆動を指すために使用されるとき、ディスプレイが駆動される周期の間の時間に対する、印加される電圧の積分を指すために本明細書で使用される。
【0049】
広帯域または選択された波長のいずれかにおいて、光を吸収、散乱、または反射させる、粒子は、本明細書では、着色または顔料粒子と称される。染料またはフォトニック結晶等の光を吸収または反射させる、顔料(不溶性着色材料を意味するとものとしてのその用語の厳密な意味において)以外の種々の材料もまた、本発明の電気泳動媒体およびディスプレイにおいて使用されてもよい。
【0050】
減法三原色を提供する3つの粒子は、例えば、ACePシステムに対して、実質的非光散乱(「SNLS」)であってもよい。SNLS粒子の使用は、色の混合を可能にし、同一数の散乱粒子を用いて達成され得るものより多くの色結果を提供する。これらの閾値は、粒子間のクロストークを回避するために、電圧駆動レベルに対して相対的に十分に分離されなければならず、本分離は、いくつかの色に対して高アドレス指定電圧の使用を余儀なくする。加えて、最高閾値を伴う着色粒子をアドレス指定することはまた、全ての他の着色粒子を移動させ、これらの他の粒子は、続いて、より低い電圧において、その所望の位置に切り替えられなければならない。そのような段階的な色アドレス指定スキームは、望ましくない色の閃光および長い遷移時間を生産する。
【0051】
付随の図面の
図2は、黒色、白色、減法三原色、および加法三原色を表示するときのACeP型電気泳動媒体内の種々の粒子の位置を示す、概略断面である。
図2では、ディスプレイの視認表面は、(図示されるように)上部にあると仮定され、すなわち、ユーザは、ディスプレイを本方向から視認し、光は、本方向から入射する。すでに述べられたように、好ましい実施形態では、本発明の電気泳動媒体において使用される4つの粒子のうちの1つのみが、光を実質的に散乱させ、
図2では、本粒子は、白色顔料であると仮定される。本光散乱白色粒子は、白色反射体を形成し、(
図2に図示されるように)それに対して白色粒子の上方の任意の粒子が、視認される。これらの粒子を通して通過する、ディスプレイの視認表面に進入する光は、白色粒子から反射され、これらの粒子を通して戻って通過し、ディスプレイから出現する。したがって、白色粒子の上方の粒子は、種々の色を吸収し得、ユーザに対して現れる色は、白色粒子の上方の粒子の組み合わせから生じるものである。白色粒子の下方(ユーザの視点から背後)に配置される任意の粒子は、白色粒子によってマスクされ、表示される色に影響を及ぼさない。第2、第3、および第4の粒子が、実質的に非光散乱性であるため、相互に対して相対的なその順序または配列は、重要ではないが、すでに述べられた理由から、白色(光散乱)粒子に対するその順序または配列は、重要である。
【0052】
より具体的には、シアン色、マゼンタ色、および黄色粒子が、白色粒子の下方に存在するとき(
図2における状況[A])、白色粒子の上方に粒子は、存在せず、ピクセルは、単に、白色を表示する。単一粒子が、白色粒子の上方にあるとき、その単一粒子の色が、それぞれ、
図2における状況[B]、[D]、および[F]において黄色、マゼンタ色、およびシアン色で表示される。2つの粒子が白色粒子の上方に存在するとき、表示される色は、これらの2つの粒子のものの組み合わせである。すなわち、
図2において、状況[C]では、マゼンタ色および黄色粒子は、赤色を表示し、状況[E]では、シアン色およびマゼンタ色粒子は、青色を表示し、状況[G]では、黄色およびシアン色粒子は、緑色を表示する。最後に、全3つの着色粒子が、白色粒子の上方に存在するとき(
図2における状況[H])、全ての入射光は、減法三原色着色粒子によって吸収され、ピクセルは、黒色を表示する。
【0053】
1つの減法原色が、光を散乱させる粒子によってレンダリングされ得ることが可能性として考えられ、それによって、ディスプレイは、2つのタイプの光散乱粒子を備え、そのうちの一方が白色であり、他方が着色であるであろう。しかしながら、本場合では、白色粒子を覆う他の着色粒子に対する、光散乱着色粒子の位置が、重要となるであろう。例えば、黒色をレンダリングする際(全3つの着色粒子が白色粒子を覆って存在するとき)、散乱着色粒子は、非散乱着色粒子を覆って存在することができない(そうでなければ、それらは、散乱粒子の背後に、部分的または完全に隠蔽され、レンダリングされる色は、散乱着色粒子のものであり、黒色ではないであろう)。
【0054】
1つを上回るタイプの着色粒子が、光を散乱する場合、黒色をレンダリングすることは容易ではないであろう。
【0055】
図2は、色が汚染されない(すなわち、光散乱白色粒子が、白色粒子の背後に存在する、任意の粒子を完全にマスクする)、理想的状況を示す。実際は、白色粒子によるマスクは、非完璧であり得、それによって、理想的には完全にマスクされるであろう粒子による、光のわずかな吸収が存在し得る。そのような汚染は、典型的には、レンダリングされている色の明度および彩度の両方を低減させる。本発明の電気泳動媒体では、そのような色汚染は、形成される色が、色レンダリングのための産業規格に匹敵する点まで、最小限にされるべきである。特に好ましい規格は、SNAP(新聞広告生産のための規格)であり、これは、上記に参照される8原色毎にL
*、a
*、およびb
*値を規定する(以降、「原色」は、
図2に示されるように、8つの色、すなわち、黒色、白色、減法三原色、および加法三原色を指すために使用されるであろう)。
【0056】
図3Aおよび3Bは、ACeP型電気泳動ディスプレイにおいて使用される、4つの顔料タイプ(1-4、5-8)の概略断面表現を示す。
図3Aでは、コア顔料に吸着されるポリマーシェルは、暗色陰影によって示される一方、コア顔料自体は、陰影されないものとして示される。当技術分野において周知であるように、球状、針状、または別様に非等軸のより小さい粒子の凝集体(すなわち、「ぶどうの房」)、結合剤中に分散される小顔料粒子または染料を備える、複合粒子等、様々な形態が、コア顔料のために使用されてもよい。ポリマーシェルは、当技術分野において周知であるように、グラフト結合プロセスまたは化学吸着によって作製される、共有結合されたポリマーであってもよい、または粒子表面上に物理吸着されてもよい。例えば、ポリマーは、不溶性および可溶性区画を備える、ブロック共重合体であってもよい。
【0057】
図3Aの実施形態では、第1および第2の粒子タイプは、好ましくは、第3および第4の粒子タイプより実質的なポリマーシェルを有する。光散乱白色粒子は、第1または第2のタイプである(負または正のいずれかに荷電される)。続く議論では、白色粒子は、負電荷(すなわち、タイプ1)を担持すると仮定されるが、説明される一般原理が、白色粒子が正荷電される粒子のセットにも適用されるであろうことは、当業者に明白であろう。
【0058】
加えて、
図3Bに描写されるように、第3および第4の粒子タイプと比較して、第1および第2の粒子タイプは、差動ポリマー外殻を有することは要求されない。
図3Bに示されるように、4つの粒子上の十分な差動電荷は、粒子の電気泳動的制御および視認表面における所望色の作成を可能にするであろう。例えば、粒子5は、粒子7より大きい大きさの負電荷を有する一方、粒子6は、粒子8と比較して、より大きな大きさの正電荷を有し得る。ポリマーの官能性および電荷(または粒子サイズ)の他の組み合わせも、使用され得ることが可能性として考えられるが、しかしながら、全4つの粒子が、好適な電場、例えば、商業用デジタル電子機器を用いて生産され得る、より低い電圧電場の存在下で、相互から分離され得ることが該当しなければならない。
【0059】
本発明の
図3Aのシステムでは、電荷制御剤を含有する懸濁溶媒中のタイプ3および4の粒子の混合物から形成される凝集体を分離するために要求される電場は、2つのタイプの粒子の任意の他の組み合わせから形成される凝集体を分離するために要求されるものより大きい。一方、第1および第2のタイプの粒子間に形成される凝集体を分離するために要求される電場は、第1および第4の粒子間または第2および第3の粒子間に形成される凝集体を分離するために要求されるものより小さい(当然ながら、第3および第4の粒子を分離するために要求されるものより小さい)。
【0060】
図3Aでは、粒子を構成するコア顔料は、ほぼ同一サイズを有するように示され、各粒子のゼータ電位も、図示されないが、ほぼ同一であると仮定される。変動するのは、各コア顔料を囲繞するポリマーシェルの厚さである。
図3Aに示されるように、本ポリマーシェルは、タイプ1および2の粒子のためには、タイプ3および4の粒子のためより厚い。
【0061】
本発明では、全ての着色顔料が、
図3Aおよび3Bを参照して上記に説明されるように挙動することは必要とされない。
図3Cに示されるように、第3の粒子は、実質的なポリマーシェルを有してもよく、弱正を含む、広範囲の電荷を有してもよい。本場合では、第3の粒子の表面化学物質は、第1の粒子のものと異ならなければならない。例えば、第1の粒子は、好ましくは疎水性である、アクリルまたはスチレンモノマーから成り得る、ポリマーをグラフト化される、共有結合的に取着されたシラン外殻を担持してもよい。第3の粒子は、共有結合的に取着されないが、分散重合によって、コア粒子の表面の上に堆積される、ポリマーシェルを備えてもよい。そのような場合では、本発明は、
図3Aおよび3Bを参照して上記に説明される、機構に限定されない。
【0062】
高分解能ディスプレイを取得するために、ディスプレイの個々のピクセルは、隣接ピクセルからの干渉を伴わずに、アドレス指定可能でなければならない。本目的を達成するための1つの方法は、「アクティブマトリクス」ディスプレイを生産するために、各ピクセルと関連付けられた少なくとも1つの非線形要素を伴う、トランジスタまたはダイオード等の非線形要素のアレイを提供することである。1つのピクセルをアドレス指定する、アドレス指定またはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して、適切な電圧源に接続される。典型的には、非線形要素がトランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され、本配列は、以下の説明において仮定されるであろうが、本質的に、恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。従来、高分解能アレイでは、ピクセルは、任意の具体的ピクセルが、1つの規定された行および1つの規定された列の交差点によって一意に画定されるように、行および列の2次元アレイで配列される。各列内の全トランジスタのソースは、単一列電極に接続される一方、各行内の全トランジスタのゲートは、単一行電極に接続される。再び、行へのソースおよび列へのゲートの割当は、従来のものであるが、本質的に、恣意的であり、所望に応じて、逆転され得る。行電極は、行ドライバに接続され、これは、本質的に、任意の所与の瞬間において、1つのみの行が選択される、すなわち、選択された行内の全トランジスタが伝導性であることを確実にするような選択電圧が選択された行電極に印加される一方、これらの非選択された行内の全トランジスタが非伝導性のままであることを確実にするように、非選択電圧が全ての他の行に印加されることを確実にする。列電極は、列ドライバに接続され、これは、種々の列電極上に、選択された行内のピクセルをその所望の光学状態に駆動するように選択された電圧をかける(前述の電圧は、従来、電気光学媒体の非線形アレイと反対側に提供され、全体的ディスプレイを横断して延在する、共通フロント電極に対して相対的なものである)。「ラインアドレス時間」として知られる事前に選択された間隔後、選択された行は、選択解除され、次の行が、選択され、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変更される。本プロセスは、ディスプレイ全体が行毎様式で書き込まれるように繰り返される。ディスプレイ内のアドレス指定間の時間は、「フレーム」として公知である。したがって、60Hzにおいて更新されるディスプレイは、16ミリ秒である、フレームを有する。
【0063】
従来、各ピクセル電極は、ピクセル電極およびコンデンサ電極がコンデンサを形成するように、それと関連付けられたコンデンサ電極を有する。例えば、国際特許出願第WO01/07961号を参照されたい。いくつかの実施形態では、N型半導体(例えば、非晶質シリコン)が、トランジスタを形成するために使用されてもよく、ゲート電極に印加される「選択」および「非選択」電圧は、それぞれ、正および負であることができる。
【0064】
付随の図面の
図4は、電気泳動ディスプレイの単一ピクセルの例示的等価回路を描写する。図示されるように、回路は、ピクセル電極とコンデンサ電極との間に形成される、コンデンサ10を含む。電気泳動媒体20は、並列のコンデンサおよび抵抗器として表される。いくつかの事例では、ピクセルと関連付けられたトランジスタのゲート電極とピクセル電極との間の直接または間接結合静電容量30(通常、「寄生静電容量」と称される)は、望ましくない雑音をディスプレイにもたらし得る。通常、寄生静電容量30は、貯蔵コンデンサ10のものよりはるかに小さく、ディスプレイのピクセル行が、選択または選択解除されるとき、寄生静電容量30は、「キックバック電圧」としても知られる、わずかな負のオフセット電圧をピクセル電極にもたらし得、これは、通常、2ボルト未満である。いくつかの実施形態では、望ましくない「キックバック電圧」を補償するために、V
comがキックバック電圧(V
KB)と等しい値に設定されるとき、ディスプレイに供給される全ての電圧が、同一量だけオフセットされ、正味DC非平衡が被られ得ないように、共通電位V
comが、各ピクセルと関連付けられたトッププレーン電極およびコンデンサ電極に供給されてもよい。
【0065】
4つの粒子を有するカラー電気泳動ディスプレイを駆動するための波形のセットが、参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第9,921,451号に説明されている。米国特許第9,921,451号では、7つの異なる電圧が、ピクセル電極に印加され、すなわち、3つの正、3つの負、およびゼロである。しかしながら、いくつかの実施形態では、これらの波形において使用される最大電圧は、非晶質シリコン薄膜トランジスタによって扱われ得るものより高い。そのような事例では、好適な高電圧は、トッププレーン切替の使用によって取得されることができる。しかしながら、トッププレーン切替が使用されるとき、Vcom設定と同数の別個の電力供給源を使用することは、コストがかかり、かつ不便である。さらに、トッププレーン切替は、キックバックを増加させ、それによって、色状態の安定性を劣化させることが知られている。
【0066】
ACeP型電気泳動ディスプレイを加工するための方法は、先行技術において議論されてきた。電気泳動流体は、マイクロカプセル内にカプセル化される、またはマイクロセル構造の中に組み込まれ、その後、ポリマー層でシールされてもよい。マイクロカプセルまたはマイクロセル層は、導電性材料の透明コーティングを担持するプラスチック基板またはフィルム上にコーティングまたはエンボス加工されてもよい。本アセンブリは、導電性接着剤を使用して、ピクセル電極を担持するバックプレーンにラミネートされてもよい。代替として、電気泳動流体は、ピクセル電極のアクティブマトリクスを含む、バックプレーン上に配列されている、薄い連続セルグリッド上に直接分注されてもよい。充填されたグリッドは、次いで、統合される保護用シート/光透過性電極とともに上部シールされ得る。
【0067】
図5は、ACeP型電気泳動ディスプレイのディスプレイ構造200の概略断面図面(縮尺通りではない)を示す。ディスプレイ200では、電気泳動流体が、マイクロカップに閉じ込められるように図示されているが、マイクロカプセルを組み込む、同等構造も使用され得る。ガラスまたはプラスチックであり得る、基板202は、個々にアドレス指定される区画であるか、またはアクティブマトリクス配列内の薄膜トランジスタと関連付けられるかのいずれかである、ピクセル電極204を担持する(基板202と電極204との組み合わせは、従来の方法では、ディスプレイのバックプレーンと称される)。層206は、バックプレーンに適用される、本発明による、随意の誘電体層である(好適な誘電体層を堆積する方法が、参照することによって組み込まれる、米国特許出願第16/862,750号に説明される)。ディスプレイのフロントプレーンは、透明な導電性コーティング220を担持する、透明な基板222を備える。覆っている電極層220は、随意の誘電体層218である。層(または複数の層)216は、透明な電極層220へのマイクロカップの接着のためのプライマ層を備え得る、ポリマー層であり、いくつかの残留ポリマーは、マイクロカップの底部を構成する。マイクロカップ212の壁は、電気泳動流体214を含有するために使用される。マイクロカップは、層210とともにシールされ、フロントプレーン構造全体が、導電性接着剤層208を使用して、バックプレーンに接着される。マイクロカップを形成するためのプロセスが、先行技術において、例えば、米国特許第6,930,818号に説明されている。いくつかの事例では、マイクロカップは、深さ20μm未満、例えば、深さ15μm未満、例えば、深さ12μm未満、例えば、深さ約10μm、例えば、深さ約8μmである。
【0068】
大部分の商業用電気泳動ディスプレイは、加工設備のより幅広い可用性および種々の出発材料の費用のために、アクティブマトリクスバックプレーン(202/024)の構築において、非晶質シリコンベースの薄膜トランジスタ(TFT)を使用する。残念ながら、非晶質シリコン薄膜トランジスタは、約+/-15Vより高い電圧の切替を可能にするであろうゲート電圧を供給されるとき、不安定になる。それにもかかわらず、下記に説明されるように、ACePの性能は、高い正電圧および負電圧の大きさが、+/-15Vを超過することを可能にされるときに改良される。故に、先の開示に説明されるように、トッププレーン切替としても公知である、バックプレーンピクセル電極上のバイアスに対する、上部光透過性電極のバイアスを付加的に変更することによって、改良された性能が、達成される。したがって、(バックプレーン対して相対的に)+30Vの電圧が、必要とされる場合、トッププレーンは、-15Vに切り替えられ得る一方、適切なバックプレーンピクセルが、+15Vに切り替えられる。トッププレーン切替を用いて、4粒子電気泳動システムを駆動するための方法が、例えば、米国特許第9,921,451号により詳細に説明されている。
【0069】
トッププレーン切替アプローチに対して、いくつかの不利点が存在する。第1に、(典型的であるように)トッププレーンが、ピクセル化されないが、ディスプレイの全体的表面にわたって延在する、単一電極であるとき、その電位は、ディスプレイ内の全てのピクセルに影響を及ぼす。これが、バックプレーン(例えば、最大正電圧)から使用可能な最大の大きさの電圧のうちの1つと一致するように設定される場合、本電圧が、バックプレーン上にアサートされるとき、インクを横断して、正味電圧は存在しないであろう。任意の他の使用可能な電圧が、バックプレーンに供給されるとき、ディスプレイ内の任意のピクセルに供給される、負極性の電圧が、常時、存在するであろう。したがって、波形が、正電圧を要求する場合、これは、トッププレーン電圧が変更されるまで、いずれのピクセルにも供給されることができない。第3の実施形態の多色ディスプレイ内での使用のための典型的な波形は、正および負極性の両方の複数のパルスを使用し、これらのパルスの長さは、異なる色を作製するために使用される波形において、同一の長さではない。加えて、波形の位相は、異なる色に対して異ならない場合もある。換言すると、正パルスは、いくつかの色に対して、負パルスに先行するが、負パルスは、他の色に対して、正パルスに先行し得る。そのような場合に適応させるために、「レスト」(すなわち、一時停止)が、波形の中に構築されなければならない。実際には、これは、波形が、理想的に必要とするものよりはるかに長い(2倍程度)という結果をもたらす。
【0070】
第2に、トッププレーン切替では、選定され得る電圧レベルに限界がある。トッププレーンに印加される電圧が、それぞれ、Vt+およびVt-と表され、バックプレーンに印加される電圧が、それぞれ、Vb+およびVb-と表される場合、電気泳動流体を横断してゼロボルト条件を達成するためには、|Vt+|=|Vb+|および|Vt-|=|Vb-|が該当しなければならない。しかしながら、正および負電圧の大きさが、同一である必要はない。
【0071】
高度カラー電子ペーパー(ACeP(登録商標))の先の実施形態では、本発明のディスプレイのバックプレーンのピクセル電極に印加される波形(電圧対時間曲線)が、説明およびプロットされるが、フロント電極は、接地される(すなわち、ゼロ電位)と仮定される。電気泳動媒体によって被られる電場は、当然ながら、バックプレーンとフロント電極との間の電位差と、それらを分離する距離とによって判定される。ディスプレイは、典型的には、そのフロント電極を通して視認され、したがって、これは、ピクセルによって表示される色を制御する、フロント電極に隣接する粒子であり、時として、バックプレーンに対して相対的なフロント電極の電位が考慮される場合、伴われる光学遷移を理解することがより容易である。これは、単に、以下に議論される波形を反転させることによって行われることができる。
【0072】
図6は、上記に説明される、4粒子カラー電気泳動ディスプレイシステムを駆動するために使用される、(簡略化された形態での)典型的な波形を示す。そのような波形は、「プッシュプル」構造を有し、すなわち、それらは、反対の極性の2つのパルスを備える、双極子から成る。これらのパルスの大きさおよび長さは、取得される色を決定する。最低限、5つのそのような電圧レベルが存在するべきである。
図6は、高いおよび低い正電圧および負電圧ならびにゼロボルトを示す。典型的には、「低い」(L)は、約5~15Vの範囲を指す一方、「高い」(H)は、約15~30Vの範囲を指す。一般に、「高い」電圧の大きさが高くなればなるほど、ディスプレイによって達成される色域は、より良好になる。「中程度」(M)レベルは、典型的には、約15Vであるが、しかしながら、Mに対する値は、幾分、粒子の組成、ならびに電気泳動媒体の環境に依存するであろう。3つの電圧(すなわち、+V
high、0、および-V
high)のみが、利用可能である場合、電圧V
highのパルスを伴うが、1/nのデューティサイクルを伴う、アドレス指定によって、より低い電圧(例えば、V
high/nであり、nは、正の整数>1である)におけるアドレス指定と同一結果を達成することが可能であり得る。
図6のプッシュプル波形を用いて有用である、電気泳動粒子のセットは、負荷電白色粒子、負荷電黄色粒子、正荷電マゼンタ色粒子、および正荷電シアン色粒子を含み得る。
【0073】
代替実施形態では、7つのレベルのドライバが、トッププレーン切替に対する必要性を伴わずに、各ピクセルを直接アドレス指定するために使用されてもよい。しかしながら、十分な電圧振幅を伴う、7レベルドライバを実装することは、標準の非晶質シリコンバックプレーンを用いる場合、困難である。より高い電子移動度を有する、あまり一般的ではない材料から制御トランジスタを使用することは、トランジスタが、7レベル駆動を実装するために必要とされるような、より大きな制御電圧、例えば+/-30Vを切り替えることを可能にすることが見出されている。新たに開発されたアクティブマトリクスバックプレーンは、タングステン酸化物、スズ酸化物、インジウム酸化物、および亜鉛酸化物等の金属酸化物材料を組み込む、薄膜トランジスタを含み得る。これらの適用では、チャネル形成領域は、そのような金属酸化物材料を使用して、トランジスタ毎に形成され、例えば、約-27V~+27Vの範囲内のより高い電圧のより高速な切替を可能にする。そのようなトランジスタは、典型的には、ゲート電極と、ゲート絶縁フィルム(典型的には、SiO2)と、金属ソース電極と、金属ドレイン電極と、少なくとも部分的に、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極と重合する、ゲート絶縁フィルムを覆う金属酸化物半導体フィルムとを含む。そのようなバックプレーンは、Sharp/Foxconn、LG、およびBOE等の製造業者から入手可能である。そのような適用のための1つの好ましい金属酸化物材料は、インジウムガリウム亜鉛酸素(IGZO)である。IGZO-TFTは、非晶質シリコンの20~50倍の電子移動度を有する。アクティブマトリクスバックプレーン内でIGZO TFTを使用することによって、好適なディスプレイドライバを介して、30Vよりも大きい電圧を提供することが可能性として考えられる。
【0074】
本明細書では、用語「フレーム」は、ディスプレイ内の全ての行の単一の更新を指す。薄膜トランジスタ(TFT)アレイを使用して駆動される、本発明のディスプレイでは、
図6の横座標上の使用可能な時間増分が、典型的には、ディスプレイのフレームレートによって量子化されるであろうことは、当業者に明白であろう。同様に、ディスプレイが、フロント電極に対して相対的に、ピクセル電極の電位を変更することによって、アドレス指定されること、およびこれが、ピクセル電極またはフロント電極のいずれか、または両方の電位を変更することによって達成され得ることも明白であろう。先行技術の現在の状態では、典型的には、ピクセル電極のマトリックスは、バックプレーン上に存在するが、フロント電極は、全てのピクセルに共通である。したがって、フロント電極の電位が、変更されるとき、全てのピクセルのアドレス指定は、影響を受ける。
図6を参照して上記に説明される、波形の基本構造は、変動する電圧が、フロント電極に印加されるかどうかにかかわらず、同一である。
【0075】
ディスプレイのリセットは、残留電圧と、前に表示された色に特有の顔料構成とを含む、前の状態の任意のメモリを理想的に削除し、多粒子電気泳動ディスプレイが、同一駆動スキームを用いて、同一の色状態を確実に達成することを可能にする。一般化された消去パルスが、
図7Aに示される。一般的には、本発明のリセットパルスは、高い正電圧(V
H)の後に、より低い負電圧(V
L)を含み、正電圧パルスの長さ(t)は、負電圧パルスの長さ(t’)より短くなければならない。時間の関数としての電圧の各周期は、「インパルス」と称されてもよく、各インパルスiは、電圧V
iおよび時間t
iを有するものとして説明されてもよい。波形は、DC平衡またはDC非平衡であってもよい。波形は、正電圧パルスの全ての電圧-時間面積の合計が、負電圧パルスの全ての電圧-時間面積の合計に等しいという結果をもたらす、付加的なインパルスを加算することによって、DC平衡であってもよい。数学的には、DC平衡は、以下のように表されることができ、
【数2】
式中、n=1~8であり、V
nおよびt
nは、上記に定義される通りである。さらに、プッシュプルシーケンスにおける各インパルスの大きさおよび持続時間は、変動されてもよく、随意に、「レスト」(すなわち、その間、電圧が印加されない周期)が、インパルス間に挿入されてもよい。いくつかの実施形態では、
【0076】
他の実施例では、消去波形は、特定の目的のためにそれぞれ具体的に設計される、2つの部分を含む。例えば、
図7Bに示されるように、以前の状態の消去相の第1の部分は、最適な可能性として考えらえられる消去を達成するために、普遍的な色開始状態、例えば、マゼンタ色を達成するためのプッシュプルシーケンスを実装する。第2の部分は、白色様の中性状態を備え、これは、そこから全ての後続の色が、簡略化されたプッシュプルカラー遷移を伴って作成されることができる、状態である。いくつかの実施形態では、第1の部分は、大きさV
2および長さt
2のパルスと交互する、大きさV
1および長さt
1のパルスを含み、V
1は、正電圧であり、V
2は、V
1より低い大きさの負電圧である。そのような実施形態では、第2の部分は、長さV
4および長さt
4のパルスと交互する、大きさV
3および長さt
3のパルスを含む。比V
1・t
1/V
2・t
2は、比V
3・t
3/V
4・t
4よりも大きい。
【0077】
例示的波形は、例えば、
図8に示されるように、電気泳動媒体を未知の状態からマゼンタ色の光学状態に、次いで、中性白色状態に駆動し得る。上記に説明されるように、
図8では、インパルスの差異、すなわち、|V
1・t
1|-|V
2・t
2|は、白色状態をレンダリングするシーケンスに対してより、マゼンタ色状態をレンダリングするシーケンスに対しての方が大きい。
【0078】
本発明の以前の状態の消去パルスは、例えば、
図6に示されるように、全ての色波形と組み合わせられることができる。例えば、前述の米国特許第9,921,451号に説明される、波形のいくつかでは、7つの異なる電圧が、ピクセル電極に印加されることができ、すなわち、3つの正、3つの負、およびゼロである。
図9は、ピクセルにおいて、所望色を消去し、表示するために使用される、1つのそのような波形を概略的に描写する。
図9に示されるように、全ての色に関する波形は、同一の基本形態、すなわち、(A)ディスプレイの「リセット」を、そこから任意の色が再現可能に取得され得、その間に波形の残りのDC非平衡と等しくかつ反対であるDC非平衡が提供される、状態に提供するために使用される、予備的一連のフレームと、(B)レンダリングされるべき色に特定の一連のフレームとを有する。DC平衡パルスが、波形内に含まれる場合、DC平衡パルスは、消去パルスの前、または消去パルスの後であるが、プッシュプル色アドレス指定パルスの前に来てもよい。
図9は、色アドレス指定パルスと組み合わせられる、消去パルスの一般化であることを認識されたい。
図7Bに示されるタイプの2値消去パルスは、
図9に示される1値消去パルスの代替として使用されてもよい。したがって、インパルスV
1・t
1およびV
2・t
2は、
図9のインパルスV
3・t
3およびV
4・t
4に先行するであろう。
【0079】
比較のために、
図1〔先行技術〕を注視されたい。相A(リセット相)では、本相が、(点線によって図示される)等しい持続時間の2つの区分に分割されていることが分かる。トッププレーン切替が、使用されるとき、トッププレーンは、これらの区分のうちの第1の区分では、1つの電位において、第2の区分では、反対の極性のある電位において保持されるであろう。
図1の特定の場合では、第1のそのような区分の間、V
nH-V
pHの電気泳動流体を横断して、電位降下を達成するために、トッププレーンは、V
pHに保持されており、バックプレーンは、V
nHに保持されている(本場合では、トッププレーンのものに対して相対的なバックプレーン電位を参照する慣例が、使用される)。第2の区分の間、トッププレーンは、V
nHに保持されており、バックプレーンは、V
pHに保持されている。示されるように、第2の区分の間、電気泳動流体は、V
pH-V
nH、すなわち、利用可能な最高電位の電位に曝されていたであろう。しかしながら、ある色のレンダリングのための本高電圧への暴露は、そこから理想的な最終的な構成が、達成されることを困難にするであろう、初期顔料配列をもたらし得る。例えば、先行技術において言及されるように、シアン色をレンダリングするためには、(シアン色顔料と同一の電荷極性を有する)マゼンタ色顔料が、黄色顔料と凝集して、結び付けられることが必要である。そのような凝集体は、高い印加される電位によって分割され、したがって、マゼンタ色は、制御されず、シアン色を汚染するであろう。
【0080】
波形の前述の議論、具体的には、DC平衡の議論は、キックバック電圧の問題点を無視している。実際は、前述のように、全てのバックプレーン電圧は、キックバック電圧VKBと等しい量だけ、電力供給源によって供給される電圧からオフセットされる。したがって、使用される電力供給源が、3つの電圧+V、0、および-Vを提供する場合、バックプレーンは、実際には、電圧V+VKB、VKB、および-V+VKBを受信するであろう(VKBは、非晶質シリコンTFTの場合、通常、負の数であることに留意されたい)。しかしながら、同一の電力供給源は、任意のキックバック電圧オフセットを伴わずに、+V、0、および-Vをフロント電極に供給するであろう。したがって、例えば、フロント電極が、-Vを供給されるとき、ディスプレイは、最大電圧2V+VKBおよび最小電圧VKBを被るであろう。コストがかかり、不便であり得る、別個の電力供給源を使用して、VKBをフロント電極に供給する代わりに、波形は、フロント電極が、正電圧、負電圧、およびVKBを供給される、区分に分割されてもよい。
【0081】
したがって、本発明は、多粒子電気泳動ディスプレイのための消去波形を提供する。これまで、本願の技術のいくつかの側面および実施形態が説明されたが、種々の改変例、修正例、および改良例が、当業者に容易に想起されるであろうことを理解されたい。そのような改変例、修正例、および改良例は、本願に説明される技術の精神および範囲内であるように意図される。例えば、当業者は、本明細書に説明される機能を実施する、ならびに/もしくは結果および/または利点のうちの1つ以上を取得するための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そのような変形例および/または修正例はそれぞれ、本明細書に説明される実施形態の範囲内であると見なされる。当業者は、単なる日常的実験を使用して、本明細書に説明される具体的実施形態の多くの均等物を認識する、またはそれを確認することが可能であろう。したがって、前述の実施形態は、一例としてのみ提示され、添付の請求項およびその均等物の範囲内において、本発明の実施形態は、具体的に説明されるものと別様に実践されてもよいことを理解されたい。加えて、本明細書に説明される、2つ以上の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせも、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が、相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。
【国際調査報告】