(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-27
(54)【発明の名称】電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231020BHJP
【FI】
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521766
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 CN2020132350
(87)【国際公開番号】W WO2022110042
(87)【国際公開日】2022-06-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514257398
【氏名又は名称】東莞新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】DONGGUAN AMPEREX TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.1 Industrial West Road,Songshan Lake High-tech Industrial Development Zone, Dongguan City, Guangdong Province, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲暁▼欠
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
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5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA11
(57)【要約】
本発明は、電気化学装置および電子装置を提供し、電気化学装置は正極を含み、正極は集電体を含み、集電体は、活物質が設けられた塗工領域および活物質が設けられない未塗工領域を含む。未塗工領域の少なくとも一部に絶縁層が設けられ、絶縁層はバインダーおよび無機粒子を含み、絶縁層の総質量に対して、アルミニウム元素の質量百分率は20%~52%であり、絶縁層と集電体との間の粘着力Fは201N/mより大きくまたは201N/mである。本発明の電気化学装置において、正極の絶縁層と集電体との間の粘着力が良好であるため、電気化学装置の安全性が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極を含む電気化学装置であって、
前記正極は集電体を含み、
前記集電体は活物質が設けられた塗工領域および前記活物質が設けられない未塗工領域を含み、
前記未塗工領域の少なくとも一部に絶縁層が設けられ、
前記絶縁層はバインダーおよび無機粒子を含み、
前記絶縁層の総質量に対して、前記絶縁層におけるアルミニウム元素の質量百分率は20%~52%であり、
前記絶縁層と集電体との間の粘着力は201N/mより大きくまたは201N/mである、
電気化学装置。
【請求項2】
前記バインダーは、アクリロニトリル、アクリル酸塩、アクリルアミド、およびアクリル酸エステルのうちの少なくとも1種の単量体を重合してなるポリマーを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記ポリマーの総質量に対して、前記アクリロニトリルの質量百分率は25%~70%であり、前記アクリル酸塩の質量百分率は10%~60%であり、前記アクリルアミドの質量百分率は10%~60%であり、前記アクリル酸エステルの質量百分率は0%~10%である、請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記バインダーの重量平均分子量は、100,000~2,000,000である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記絶縁層の総質量に対して、前記バインダーの質量百分率は2%~50%であり、前記無機粒子の質量百分率は50%~98%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記絶縁層の被覆率は、90%より大きくまたは90%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記絶縁層の厚さは、0.02μm~10μmである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記絶縁層と集電体との間の粘着力は、300N/mより大きくまたは300N/mである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記無機粒子のDv99は、0.01μm~9.9μmである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記無機粒子は、ベーマイト、ダイアスポア、およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に関し、具体的には電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は比エネルギーが大きく、動作電圧が高く、自己放電率が低く、体積が小さく、重量が軽い等の特徴があり、電気エネルギー貯蔵、携帯型電子装置、および電気自動車等の分野に広く適用されている。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般に、正極、負極、およびセパレータを含み、セパレータは正極と負極との間に位置する。正極は、一般に、集電体、活物質層、および絶縁層を含み、ここで、正極全体の絶縁性能を向上させるために、集電体の表面の、活物質層が設けられない領域に絶縁層が設けられていることは一般である。発明者の検討によれば、従来のリチウムイオン電池では、絶縁層材料の成分の影響を受けるため、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させる必要があることが見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができる電気化学装置および電子装置を提供することにある。
【0005】
なお、以下では、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限らない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的な技術案は以下のとおりである。
【0007】
本発明の第一の態様は、電気化学装置を提供し、当該電気化学装置は正極を含み、当該正極は集電体を含み、集電体は活物質が設けられた塗工領域および前記活物質が設けられない未塗工領域を含む。未塗工領域の少なくとも一部に絶縁層が設けられ、絶縁層はバインダーおよび無機粒子を含み、絶縁層の総質量に対して、絶縁層におけるアルミニウム元素の質量百分率は20%~52%であり、好ましくは30%~50.3%であり、絶縁層と集電体との間の粘着力Fは201N/mより大きく、または201N/mである。
【0008】
本発明の電気化学装置において、正極の集電体の表面の、活物質が設けられた領域を塗工領域と称し、正極の集電体の表面の、活物質が設けられない領域を未塗工領域と称することができる。絶縁層は、上記の未塗工領域の少なくとも一部に設けられることができ、且つ異なる設置方式を採用してもよい。設置方式は、例えば、長手方向に沿った正極の両側に絶縁層を設けること、正極の始端側に絶縁層を設けること、正極の終端側に絶縁層を設けることが含まれるが、それに限定されていない。上記の設置方式は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。前記始端および終端とは、巻回構造を有するリチウムイオン電池における巻回構造の始端および終端を指す。
【0009】
本発明において、絶縁層の総質量に対して、絶縁層におけるアルミニウム元素の質量百分率は、絶縁層の強度および絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができるという観点から、20%~52%であり、好ましくは30%~50.3%である。絶縁層と集電体との間の粘着力Fは201N/mより大きくまたは201N/mであり、好ましくは300N/mより大きく、または300N/mであることにより、絶縁層が優れた粘着性能を有することを示す。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、バインダーは、ポリプロピレン、ポリアクリレート、アクリロニトリル多元共重合体、およびカルボキシメチルセルロース塩のうちの少なくとも1種を含んでもよい。バインダーを添加することにより、絶縁層の粘着性を向上させることができ、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができる。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、バインダーは、アクリロニトリル、アクリル酸塩、アクリルアミド、およびアクリル酸エステルのうちの少なくとも1種の単量体を重合してなるポリマーを含んでもよい。好ましくは、バインダーは、アクリロニトリル、アクリル酸塩およびアクリルアミドのうちの少なくとも1種の単量体を重合してなるポリマーを含んでもよい。
【0012】
本発明のバインダーは水性バインダーであってもよい。ここで、アクリル酸塩における金属イオンは一部の水素イオンを置換することができることにより、バインダーの親水性を増加させ、バインダーの電解液における膨潤を減少させ、高い粘着力を保持することができる。なお、水素イオンは電子を容易に獲得して水素ガスを形成するため、水素イオンが減少すると、水素イオンが多すぎるためリチウムイオン電池内部にガスが生じることを更に防止できる。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記ポリマーの総重量に対して、アクリロニトリルの質量百分率は25%~70%であり、アクリル酸塩の質量百分率は10%~60%であり、アクリルアミドの質量百分率は10%~60%であり、アクリル酸エステルの質量百分率は0%~10%である。いかなる理論により限定されるものではないが、アクリロニトリル、アクリル酸塩、アクリルアミド、およびアクリル酸エステルの質量百分率を上記の範囲内に制御することにより、良好な粘着性を有するバインダーを得ることができることにより、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができる。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、バインダーの重量平均分子量は、100,000~2,000,000であり、好ましくは、300,000~800,000である。いかなる理論により限定されるものではないが、バインダーの重量平均分子量が大きすぎると、バインダーの増粘作用が強くなり、スラリーの粘度が高くなりすぎて流動性が低下し、絶縁層スラリーの塗り残しが生じやすくなる。バインダーの重量平均分子量が小さすぎると、スラリーの粘度が低くなりすぎてスラリーの成膜性が低下し、絶縁層スラリーの塗布漏れも生じやすくなる。いかなる理論により限定されるものではないが、バインダーの重量平均分子量を上記の範囲内に制御することにより、絶縁層スラリーは集電体基材の表面に均一な厚さの膜を形成して絶縁層を形成することができ、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができる。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、絶縁層の総質量に対して、バインダーの質量百分率は2%~50%であり、無機粒子の質量百分率は50%~98%である。いかなる理論により限定されるものではないが、バインダーの含有量が低すぎる(例えば、2%未満)と、絶縁層の成膜性が悪く、被覆率の向上に不利である。バインダーの含有量が高すぎる(例えば、50%超える)と、絶縁層スラリーは成膜時に連続した膜を形成するため、絶縁層が大面積で集電体基材から脱落しやすくなる。バインダーおよび無機粒子の含有量を上記の含有量範囲内に制御することにより、絶縁層と集電体との間の粘着力を高めるのに有利である。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、前記絶縁層の被覆率は、90%より大きくまたは90%である。絶縁層の被覆率を90%より大きくまたは90%に制御することにより、正極の絶縁性能をより高めることができる。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、絶縁層の厚さは、0.02μm~10μmである。いかなる理論により限定されるものではないが、絶縁層の厚さが低すぎる(例えば、0.02μm未満)と、絶縁層の強度が低すぎて絶縁性能に影響を及ぼす。絶縁層の厚さが高すぎる(例えば、10μmを超える)と、正極における活物質の相対含有量が低下し、リチウムイオン電池のエネルギー密度に影響を及ぼす。絶縁層の厚さを上記の範囲内に制御することにより、絶縁層を、良好な強度および絶縁性能を有するものとすることができる。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、前記無機粒子のDv99は、0.01μm~10μmである。無機粒子のDv99が絶縁層の厚さを超えないことが好ましく、そうでなければ冷間圧延過程においてアルミニウム箔を傷つけやすく、凹凸を形成して目標絶縁層の厚さを超える。本発明において、Dv99とは、無機粒子の体積基準の粒度分布における小粒子径側から累積体積が99%になる粒子径を指す。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、前記無機粒子は、ベーマイト、ダイアスポア、およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む。無機粒子を添加することにより、絶縁層の強度および絶縁性能を向上させることができる。
【0020】
本発明のバインダーの調製方法は特に制限されず、当業者に知られている調製方法を使用することができ、例えば、以下の調製方法によって製造することができる。
【0021】
反応釜に蒸留水を加え、撹拌を始め、窒素ガスを流して酸素を除去した後、異なる質量比でアクリロニトリル、アクリル酸塩、アクリルアミド、およびアクリル酸エステルなどの上記成分のうちの少なくとも1種を加え、不活性雰囲気下で65℃程度に加熱して恒温にした後、開始剤を加えて反応を開始し、20時間程度反応させた後に終了する。
【0022】
本発明において、開始剤としては、単量体の重合を開始できるものであれば特に限定されないが、例えば、20%の過硫酸アンモニウム溶液が挙げられる。本発明において、蒸留水および開始剤の添加量は、添加された単量体の重合反応を確保することができる限り、特に限定されない。反応後、反応した沈殿物にアルカリ液を加えて中和し、pHを6.5~9に調整してもよい。さらに、反応生成物は、濾過、洗浄、乾燥、粉碎、篩い分け等の処理を行ってもよい。
【0023】
当業者が理解すべきことは、本発明の正極は、その一方の表面に活物質層を有していてもよく、その両方の表面に活物質層を有していてもよく、本発明の絶縁層は、正極の少なくとも一方の表面に設けられてもよく、例えば、正極の一方の表面に設けられてもよく、または、正極の両面に設けられてもよい、ことである。
【0024】
本発明の正極において、正極集電体は特に制限されなく、例えば、アルミ箔、アルミ合金箔又は複合集電体などの、本分野で公知の任意の正極集電体であってもよい。正極活物質層は、正極活物質を含み、正極活物質は特に制限されず、例えば、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(811、622、523、111)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リチウムリッチマンガン系材料、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム及びチタン酸リチウム等のうちの少なくとも1種を含む本分野での公知の任意の正極活物質を使用することができる。
【0025】
本発明の負極は特に制限されなく、本発明の目的が実現できるものであればよい。例えば、負極は、一般的に、負極集電体と負極活物質層とを含む。ここで、負極集電体は特に制限されなく、例えば銅箔、アルミ箔、アルミ合金箔及び複合集電体などの、本分野で公知の任意の負極集電体を用いてもよい。負極活物質層は負極活物質を含み、負極活物質は特に制限されなく、例えば、人工黒鉛、天然黒鉛、中間相炭素ミクロスフェア、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン、シリコンカーボン、チタン酸リチウムなどのうちの少なくとも1種を含む、本分野で公知の任意の負極活物質を使用することができる。
【0026】
本発明のリチウムイオン電池は、さらに電解質を含み、電解質は、ゲル電解質、固体電解質及び電解液のうちの1種以上であってもよく、電解液はリチウム塩及び非水溶媒を含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOB及びジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムからなる群から選ばれる1種以上のものである。例を挙げると、高いイオン導電率を与え、かつサイクル特性を改善することができるため、リチウム塩としてはLiPF6が用いられる。
【0028】
非水溶媒は、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、他の有機溶媒又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0029】
上記の炭酸エステル化合物は、鎖状炭酸エステル化合物、環状炭酸エステル化合物、フルオロ炭酸エステル化合物又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0030】
上記の鎖状炭酸エステル化合物の実例は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)及びそれらの組み合わせである。環状炭酸エステル化合物の実例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)及びそれらの組み合わせである。フルオロ炭酸エステル化合物の実例は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート及びそれらの組み合わせである。
【0031】
上記のカルボン酸エステル化合物の実例は、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン及びそれらの組み合わせである。
【0032】
上記のエーテル化合物の実例は、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン及びそれらの組み合わせである。
【0033】
上記の他の有機溶媒の実例は、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルメチルアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、及びリン酸塩並びにそれらの組み合わせである。
【0034】
本発明の第二の態様は、上記の第一の態様に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0035】
本発明の電子装置は特に限定されなく、先行技術で既知の任意の電子装置に使用したものであってもよい。いくつかの実施例において、電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、及びリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されていない。
【0036】
電気化学装置の調製過程は当業者に周知されたものであり、本発明に特に限定されない。例えば、電気化学装置は、正極と負極とを、セパレータに介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折る等してケースに入れ、ケースに電解液を注入して封口することで製造されることができる。そのうち、用いられたセパレータは、本発明に提供の前記セパレータである。また、電気化学装置の内部の圧力上昇、過充放電を防止するために、必要に応じて過電流防止素子、リード板等をケースに設けてもよい。
【0037】
本発明は、電気化学装置および電子装置を提供し、電気化学装置は正極を含み、正極は集電体を含み、集電体は活物質が設けられた塗工領域および前記活物質が設けられない未塗工領域を含む。前記未塗工領域の少なくとも一部に絶縁層が設けられ、絶縁層はバインダーおよび無機粒子を含む。絶縁層の総質量に対して、絶縁層におけるアルミニウム元素の質量百分率は20%~52%であり、絶縁層と集電体との間の粘着力Fは201N/mより大きくまたは201N/mであり、それにより、該絶縁層と集電体との間の粘着力が良好であり、電気化学装置の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の技術案及び先行技術の技術案をより明確に説明するために、以下では実施例及び先行技術に用いられる図面を簡単に説明する。下記の図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎないことは自明である。
【
図1】
図1は本発明の一つの実施態様に係る正極片の構成を示す模式図である。
【
図2a】
図2aは本発明のもう一つの一実施態様に係る正極片の構成を示す模式図である。
【
図2b】
図2bは本発明のさらに一つの実施態様に係る正極片の構成を示す模式図である。
【
図2c】
図2cは本発明のさらに一つの実施態様に係る正極片の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は本発明のさらに一つの実施態様に係る正極片の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、粘着力の測定における粘着力と距離との関係を示す模式図である。 図において、1は活物質層、2は絶縁層、3は集電体である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の目的、技術案、及び利点をよく明確にするために、以下では、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。説明された実施例は本発明の一部の実施例のみであり、全部の実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が得られた他のすべての技術案は、本発明の保護範囲にある。
【0040】
なお、本発明の発明を実施するための具体的な形態において、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限らない。
【0041】
図1は、本発明の一つの実施態様における正極片の構成を示す模式図(上面図)である。正極片は、通常、矩形であり、
図1に示すように、長手方向に沿った正極の両側には、未塗工領域(即ち活物質層1が設けられない領域)が存在する可能性があり、集電体3は、該未塗工領域から露出している。
図1において、絶縁層2は、未塗工領域に設けられてもよく、具体的に長手方向に沿った正極の両側に設けられてもよい。もちろん、長手方向に沿った正極の一方側のみに設けられてもよい。
【0042】
図2a-2cは、それぞれ、本発明の他の3種の実施態様における正極片の構成を示す模式図(上面図)である。正極片の始端及び終端には未塗工領域が存在する可能性もある。絶縁層2は、
図2aに示すように、正極片の始端側及び終端側に同時に設けられてもよく、
図2b又は
図2cに示すように、正極の始端側及び終端側のいずれか一側に設けられてもよい。
【0043】
図3は本発明のさらに一つの実施態様における正極片の構成を示す模式図(上面図)である。長手方向に沿った正極片の両側、始端および終端にいずれも未塗工領域が存在する可能性がある。
図3に示すように、絶縁層2は長手方向に沿った正極の両側、始端および終端に同時に設けられてもよい。
【0044】
図4は、粘着力の測定における粘着力と距離との関係を示す図である。
【0045】
実施例
以下では、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。各種の試験及び評価は下記の通りに行われる。なお、別に断らない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0046】
測定方法及び装置:
バインダーの重量平均分子量の測定:
絶縁層におけるバインダーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。本発明において、重量平均分子量は、質量に基づく平均した分子量を指す。
【0047】
粘着力の測定:
Gotech Testing Machines Inc.製の引張試験機で、90°剥離法により絶縁層と集電体との間の粘着力を測定した。完成品であるリチウムイオン電池における絶縁層部分を設けた極片を、20mm*60mmの短冊状試料に切り出し、その縦と横との値は、実際の状況に合わせて適宜調整してもよい。試料の長手方向に沿って、試料の一端の絶縁層面を両面テープで鋼板に粘着し、ここで、粘着長さは40mmより大きくまたは40mmである。続いて、鋼板をGotech Testing Machines Inc.製の引張試験機の対応する位置に固定し、鋼板に粘着されていない試料の他端を引き上げ、接続物を介して、または直接に極片サンプルをチャック内に入れてクランプし、ここで、引き上げられた試料部分と鋼板との空間的角度は90°であった。チャックは5mm/minの速度で極片を引っ張り、絶縁層と集電体を分離させ、安定領域の引っ張る力の平均値を絶縁層と集電体との間の粘着力として最終的に測定した。
図4に示すように、上記の安定領域における粘着力データの標準偏差と平均値との比は10%を超えないことが要求する。
【0048】
被覆率の測定:
1)絶縁コート層が塗布された極片を切り出し、絶縁層が塗布された極片サンプルを得て、絶縁層が塗布された一面の面積をS1とした。
【0049】
2)解像度が0.02μmのCCD顕微鏡を使用して、1)の極片サンプルにおける絶縁層を塗布した一面が絶縁材料で被覆されていない集電体の面積(即ち、塗り残しの面積)を統計し、S2とした。
【0050】
3)絶縁層の被覆率Bは、式B=(S1-S2)/S1×100%により算出した。
【0051】
無機粒子のDv99の測定:
レーザー式粒度分布測定装置を用いて、無機粒子のDv99を測定した。Dv99とは、無機粒子の体積基準の粒度分布における小粒子径側から累積体積が99%になる粒子径を指す。
【0052】
絶縁層の厚さの測定:
1)(25±3)℃の環境下で、絶縁コート層が塗布された極片を完成品である電池セルから取り出した。無塵紙で極片の表面に残留する電解液を拭いた。
【0053】
2)絶縁層が塗布された極片をプラズマで切断し、その横断面を得た。
【0054】
3)SEMで、2)で得られた極片の横断面を観察し、且つ片面の絶縁コート層の厚さを測定し、隣接する測定点の間隔が2~3mmであり、少なくとも15個の異なる点を測定して全ての測定点の平均値を絶縁コート層の厚さとした。
【0055】
絶縁層におけるアルミニウム含有量の測定:
1)(25±3)℃の環境下で、絶縁層を設けた電極片を、完成品であるリチウムイオン電池から取り出した。DMCでフィルム層に残留した電解液を洗浄し、ドラフトに乾燥させた。
【0056】
2)1)で得られた極片から、ステンレスブレードで絶縁層を削り取り、絶縁層粉末を得た。
【0057】
3)誘導結合プラズマ発光分光分析装置で、2)で得られた絶縁コート層サンプルにおけるアルミニウム元素含有量を測定した。
【0058】
釘刺し合格率の測定:
測定対象であるリチウムイオン電池を0.05Cの充電レートで電圧が4.45V(即ち、満充電電圧)になるまでに定電流充電し、続いて4.45Vで電流が0.025C(カットオフ電流)になるまで定電圧充電し、リチウムイオン電池を満充電状態に到達させ、測定前のリチウムイオン電池の外観を記録した。25±3℃の環境において電池に釘刺し測定を行い、鋼釘の直径は4mmであり、突刺し速度は30mm/sであり、釘刺し位置はリチウムイオン電池の側面に位置し、測定を3.5min実施した後又は電極アセンブリの表面温度が50℃まで低下した後に測定を停止する。10個のリチウムイオン電池を一組とし、測定過程におけるリチウムイオン電池の状況を観察する。リチウムイオン電池が燃焼・爆発しないことを判定基準とし、20回の釘刺し測定のうち15回以上を合格としたものを釘刺し測定の合格とした。
【0059】
実施例1
<正極片の調製>
<バインダーの調製>
反応釜に蒸留水を加え、撹拌を始め、窒素ガスを流して2h脱酸素した後、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを45:45:10の質量比で反応釜に仕込み、不活性雰囲気下で65℃に加熱して恒温に保持した後、開始剤として20%の過硫酸アンモニウム溶液を加えて反応を開始し、22時間反応した後に沈殿物を取り出し、アルカリ液を加えてpHを6.5~9に中和した。ここで、蒸留水と、単量体と、開始剤との質量比は89.5:10:0.5であった。反応後に、反応生成物を、濾過、洗浄、乾燥、粉碎、篩い分け等の処理を行って、バインダーが得られた。
【0060】
<絶縁層スラリーの調製>
製造されたバインダーおよび無機粒子であるベーマイトを脱イオン水に分散させ、スラリーの粘度が安定するまで均一に撹拌し、固形分含有量が30%の絶縁層スラリーを得た。ここで、バインダーと無機粒子との質量比は、50:50であった。バインダーの重量平均分子量は、500,000であり、無機粒子のDv99は、3μmであった。
【0061】
<絶縁層を含む正極片の調製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LCO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブを97:1.5:0.8:0.7の質量比で混合した後、溶剤としてN-メチルピロリドン(NMP)を加え、固形分含有量が75%のスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを集電体であるアルミニウム箔に均一に塗工し、90℃条件下で乾燥して厚み100μmの活物質層を得た。
【0062】
製造された絶縁層スラリーをアルミニウム箔の表面の活物質層が塗工されていない領域に塗工し、厚み6μmの絶縁層を得て、絶縁層の被覆率は90%であり、ここで、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率は50%であり、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率は50%であり、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率は22.5%であった。その後、当該正極片のもう一方の表面に上記のステップを繰り返し、両面に正極活物質層が塗工された正極片を得た。正極片を74mm×867mmに切り出し、タブを溶接して使用した。
【0063】
<負極片の調製>
負極活物質である黒鉛、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウムを97.5:1.3:1.2の重量比で混合し、溶剤として脱イオン水を加え、固形分含有量が70%のスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを負極集電体である銅箔に均一に塗工し、110℃条件下で乾燥させ、冷間圧延した後に負極活物質層の厚さが150μmである負極活物質層が片面に塗工された負極片を得た。
【0064】
以上のステップが完了した後、該負極の裏面にも同様の方法でこれらのステップを行い、両面に塗布された負極片を得た。塗布完了後、負極片を76mm×851mmのシートに切り出し、タブを溶接して使用した。
【0065】
<電解液の調製>
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジエチルカーボネートとをEC:EMC:DEC=30:50:20(質量比)で混合して有機溶液を得、そして有機溶媒にリチウム塩であるヘキサフルオロリン酸リチウムを溶解させ、均一まで混合し、リチウム塩の濃度が1.15Mol/Lである電解液が得られた。
【0066】
<セパレータの調製>
アルミナと、ポリアクリレートとを90:10の質量比で混合し、脱イオン水に溶解させ、固形分含有量が50%であるセラミックスラリーが形成された。そして、マイクログラビア塗布法で多孔基材(ポリエチレン、厚さ7μm、平均孔径0.073μm、孔隙率26%)の片面にセラミックスラリーを均一に塗布し、乾燥処理を実施した後、セラミックコートと多孔基材との二層構造が得られ、セラミックコートの厚さは50μmであった。
【0067】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、ポリアクリル酸エステルとを96:4の質量比で混合し、脱イオン水に溶解させ、固形分含有量が50%であるポリマースラリーが形成された。そして、マイクログラビア塗布法で上記のセラミックコートと多孔基材との二層構造の両方の表面にポリマースラリーを均一に塗布し、乾燥処理を実施した後、セパレータが得られた。ここで、ポリマースラリーからなる単層のコート層の厚さは2μmであった。
【0068】
<リチウムイオン電池の調製>
セパレータが正極片と負極片との間に介在して隔離の役割を果たすように、上記の製造された正極片、セパレータ、負極片を順に積層して、巻回し、電極アセンブリが得られた。電極アセンブリを外装であるアルミプラスチックフィルムに置き、80℃で水分を除去し、調製された電解液を注ぎ、真空パッケージ、静置、フォーメーション、整形等の工程を経てリチウムイオン電池を得た。
【0069】
実施例2
<絶縁層スラリーの調製>において、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を75%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を25%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を33.8%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0070】
実施例3
<絶縁層スラリーの調製>において、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を85%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を15%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を38.3%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0071】
実施例4
<絶縁層スラリーの調製>において、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を98%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を2%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を44.1%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0072】
実施例5
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子としてアルミナ(Al 2O 3)を用い、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を95%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を5%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を50.3%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0073】
実施例6
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子としてアルミナ(Al 2O 3)を用い、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を98%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を2%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を52%とした以外は、実施例1と同様にした。
【0074】
実施例7
<絶縁層スラリーの調製>において、バインダーとして、ポリアクリル酸ナトリウムを用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0075】
実施例8
<絶縁層スラリーの調製>において、バインダーとして、ポリアクリルアミドを用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0076】
実施例9
<バインダーの調製>において、アクリルアミドおよびアクリル酸ナトリウムを40:60の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0077】
実施例10
<バインダーの調製>において、アクリロニトリルおよびアクリルアミドを40:60の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0078】
実施例11
<バインダーの調製>において、アクリロニトリルおよびアクリル酸ナトリウムを40:60の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0079】
実施例12
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびアクリル酸エステルを27:60:10:3の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0080】
実施例13
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを30:60:10の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0081】
実施例14
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを30:10:60の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0082】
実施例15
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを50:10:40の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0083】
実施例16
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを55:35:10の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0084】
実施例17
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを70:20:10の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0085】
実施例18
<バインダーの調製>において、無機粒子として、ダイアスポアを用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0086】
実施例19
<バインダーの調製>において、無機粒子としてアルミナを用い、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を45%とした以外は、実施例3と同様にした。
【0087】
実施例20
<バインダーの調製>において、無機粒子として、ベーマイトおよびアルミナの混合物(ベーマイトとアルミナとの質量比が7:3である)を用い、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を40%とした以外は、実施例3と同様にした。
【0088】
実施例21
<バインダーの調製>において、無機粒子として、ベーマイト、アルミナおよびダイアスポアの混合物(ベーマイトと、アルミナと、ダイアスポアとの質量比が6:3:1である)を用い、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を40%とした以外は、実施例3と同様にした。
【0089】
実施例22
<バインダーの調製>において、バインダーの重量平均分子量を100,000とした以外は、実施例3と同様にした。
【0090】
実施例23
<バインダーの調製>において、バインダーの重量平均分子量を1,000,000とした以外は、実施例3と同様にした。
【0091】
実施例24
<バインダーの調製>において、バインダーの重量平均分子量を2,000,000とした以外は、実施例3と同様にした。
【0092】
実施例25
<絶縁層スラリーの調製>において、アクリルアミド、およびアクリル酸ナトリウムを40:60の質量比で用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0093】
実施例26
<絶縁層スラリーの調製>において、アクリルアミド、およびアクリル酸ナトリウムを40:60の質量比で用いた以外は、実施例2と同様にした。
【0094】
実施例27
<絶縁層スラリーの調製>において、アクリルアミド、およびアクリル酸ナトリウムを40:60の質量比で用いた以外は、実施例4と同様にした。
【0095】
実施例28
<絶縁層スラリーの調製>において、アクリルアミド、およびアクリル酸ナトリウムを40:60の質量比で用いた以外は、実施例22と同様にした。
【0096】
実施例29
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子のDv99を0.01μmとし、<絶縁層を含む正極片の調製>において、絶縁層の厚さを0.02μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0097】
実施例30
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子のDv99を1.0μmとし、<絶縁層を含む正極片の調製>において、絶縁層の厚さを2.0μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0098】
実施例31
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子のDv99を3.0μmとし、<絶縁層を含む正極片の調製>において、絶縁層の厚さを4.0μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0099】
実施例32
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子のDv99を5.0μmとし、<絶縁層を含む正極片の調製>において、絶縁層の厚さを6.0μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0100】
実施例33
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子のDv99を8.0μmとし、<絶縁層を含む正極片の調製>において、絶縁層の厚さを9.0μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0101】
実施例34
<絶縁層スラリーの調製>において、無機粒子のDv99を9.9μmとし、<絶縁層を含む正極片の調製>において、絶縁層の厚さを10.0μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0102】
比較例1
<絶縁層スラリーの調製>において、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を33%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を67%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を14.9%とした以外は、実施例3と同様にした。
【0103】
比較例2
<絶縁層スラリーの調製>において、前記絶縁層全質量に占める無機粒子の質量百分率を99%、絶縁層全質量に占めるバインダーの質量百分率を1%、絶縁層全質量に占めるアルミニウム元素含有量の質量百分率を52.4%とした以外は、実施例3と同様にした。
【0104】
比較例3
<バインダーの調製>において、バインダーの重量平均分子量を50,000とした以外は、実施例3と同様にした。
【0105】
比較例4
<バインダーの調製>において、バインダーの重量平均分子量を3,000,000とした以外は、実施例3と同様にした。
【0106】
比較例5
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウムおよびアクリルアミドを10:75:15の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0107】
比較例6
<バインダーの調製>において、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドを80:5:15の質量比で用いた以外は、実施例3と同様にした。
【0108】
比較例7
<バインダーの調製>において、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、バインダーの重量平均分子量を700,000とした以外は、実施例3と同様にした。
【0109】
比較例8
<正極片の調製>において、無機粒子であるベーマイトのDv99を11μmとし、絶縁層の厚さを12μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0110】
比較例9
<正極片の調製>において、無機粒子であるベーマイトのDv99を0.007μmとし、絶縁層の厚さを0.009μmとした以外は、実施例3と同様にした。
【0111】
各実施例および比較例の調製パラメーター及び測定結果は表1~2に示された。
【0112】
【0113】
【0114】
実施例1~34および比較例1~7から分かるように、本発明の絶縁層を有するリチウムイオン電池は、絶縁層と集電体との間の粘着力が顕著に向上している。
【0115】
また、実施例1~34および比較例1~7から分かるように、本発明の絶縁層を有するリチウムイオン電池は、絶縁層の被覆率が向上している。
【0116】
また、実施例1~34および比較例1~7から分かるように、本発明の絶縁層を有するリチウムイオン電池は、釘刺し合格率が顕著に向上している。
【0117】
実施例1、2、4、22および実施例25-28から分かるように、バインダーの含有量が同じであり、バインダーの重量平均分子量が同じであり、無機粒子が同じであり、無機粒子含有量が同じである場合、アクリロニトリル、アクリル酸ナトリウム、およびアクリルアミドという3種の単量体を重合してなるバインダーの方が、そのうちの2種の単量体を重合してなるバインダーより優れた粘着性能を有する。
【0118】
無機粒子のDv99および絶縁層は、絶縁層と集電体との間の粘着力に影響を与えるが、実施例28~34および比較例8~9から分かるように、無機粒子のDv99および絶縁層の厚さを本発明の範囲内にあるにすれば、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができる。
【0119】
絶縁層におけるAl元素の含有量は、絶縁層と集電体との間の粘着力に影響を与えるが、実施例1~28および比較例1~2から分かるように、絶縁層におけるAl元素の含有量を本発明の範囲内にあるにすれば、絶縁層と集電体との間の粘着力を向上させることができる。
【0120】
上記は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するためのものではなく、本発明の主旨と原則の範囲内で行われた変更、同等の代替、改善等は、いずれも、本発明の保護の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極を含む電気化学装置であって、
前記正極は集電体を含み、
前記集電体は活物質が設けられた塗工領域および前記活物質が設けられない未塗工領域を含み、
前記未塗工領域の少なくとも一部に絶縁層が設けられ、
前記絶縁層はバインダーおよび無機粒子を含み、
前記絶縁層の総質量に対して、前記絶縁層におけるアルミニウム元素の質量百分率は20%~52%であり、
前記絶縁層と集電体との間の粘着力は201N/mより大きくまたは201N/mである、
電気化学装置。
【請求項2】
前記絶縁層と集電体との間の粘着力は220N/mより大きくまたは220N/mである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記絶縁層と集電体との間の粘着力は300N/mより大きくまたは300N/mである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記バインダーは、アクリロニトリル、アクリル酸塩、アクリルアミド、およびアクリル酸エステルのうちの少なくとも1種の単量体を重合してなるポリマーを含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記ポリマーの総質量に対して、前記アクリロニトリルの質量百分率は25%~70%であり、前記アクリル酸塩の質量百分率は10%~60%であり、前記アクリルアミドの質量百分率は10%~60%であり、前記アクリル酸エステルの質量百分率は0%~10%である、請求項
4に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記バインダーの重量平均分子量は、100,000~2,000,000である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記バインダーの重量平均分子量は、300,000~800,000である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記絶縁層の総質量に対して、前記バインダーの質量百分率は2%~50%であり、前記無機粒子の質量百分率は50%~98%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記絶縁層の被覆率は、90%より大きくまたは90%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記絶縁層の厚さは、0.02μm~10μmである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記無機粒子のDv99は、0.01μm~9.9μmである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
前記無機粒子は、ベーマイト、ダイアスポア、およびアルミナのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【国際調査報告】