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特表2023-545304腎傷害による腸リンパ管の乱れを予防する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-27
(54)【発明の名称】腎傷害による腸リンパ管の乱れを予防する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20231020BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K31/137
A61P13/12
A61P1/04
A61P13/02
A61P9/00
A61P3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522523
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 US2021054872
(87)【国際公開番号】W WO2022081777
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/091,052
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511183973
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】VANDERBILT UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】305 Kirkland Hall,2201 West End Avenue,Nashville, Tennessee 37240, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】コン,ヴァレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】アブムラド,ナジ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィーズ,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ハイチュン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA81
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA66
4C206ZA70
4C206ZA81
(57)【要約】
isoLGスカベンジング有効量の、本発明の少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、蛋白尿性腎傷害を処置する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎損傷の処置を必要とする対象を特定し、
前記対象に、isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化1】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与すること
を含んでなる、蛋白尿性腎傷害を処置する方法。
【請求項2】
前記化合物が2-ヒドロキシベンジルアミン、メチル-2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン又は5'-O-ペンチル-ピリドキサミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が下記式:
【化2】
(式中:
R2は独立して、H、置換又は非置換のアルキルから選択され;
R3はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
のもの又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蛋白尿性腎傷害が腎疾患に由来する損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記損傷が腸リンパ管網に対するものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記損傷がリンパ管の収縮増大及びリンパ管内皮細胞の活性化である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記損傷がリンパ輸送及びリンパ管完全性の乱れである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が
【化3】
又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化4】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、腸リンパ機能をモジュレートして、腎傷害又は腎疾患を改善する方法。
【請求項10】
前記化合物が2-ヒドロキシベンジルアミン、メチル-2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン又は5'-O-ペンチル-ピリドキサミンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が下記式:
【化5】
(式中:
R2は独立して、H、置換又は非置換のアルキルから選択され;
R3はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
のもの又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化6】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、腎傷害又は腎疾患の全身性合併症を改善する方法。
【請求項13】
前記化合物が2-ヒドロキシベンジルアミン、メチル-2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン又は5'-O-ペンチル-ピリドキサミンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が下記式:
【化7】
(式中:
R2は独立して、H、置換又は非置換のアルキルから選択され;
R3はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
のもの又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記IsoLGが腸リンパ管網中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記全身性合併症が心血管、循環又は肥満に関連するものである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化8】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、腸リンパ管機能不全を改善する方法。
【請求項18】
前記化合物が2-ヒドロキシベンジルアミン、メチル-2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミン又は5'-O-ペンチル-ピリドキサミンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が下記式:
【化9】
(式中:
R2は独立して、H、置換又は非置換のアルキルから選択され;
R3はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
のもの又はその薬学的に許容し得る塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記機能不全が腸リンパ管形成である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
[0001]本発明は、米国国立衛生研究所により与えられた助成金番号NIH 1P01HL116263の下で政府支援を受けてなされた。米国政府は本発明に関して或る一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002]腎疾患は、腸の構造及び機能に影響を及ぼすことが知られている。腸リンパ管は、食事性脂質/リポタンパク質及び合成脂質/リポタンパク質の吸収及びリモデリングの中心であるが、腎傷害が腸リンパ管網又はそこに輸送されるリポタンパク質に影響を及ぼすかどうか、及びどのように影響を及ぼすかについてはほとんど知られていない。腸リンパ管及び腸間膜リンパに対する腎傷害の影響を調べるために、本発明者らは、2つのタンパク尿モデル(ピューロマイシンアミノグリコシド処置ラット及びNEP25トランスジェニックマウス)を用いた。
【0003】
[0003]本発明者らは、腎傷害が腸リンパ管網を拡張し、リンパ管内皮細胞を活性化し、腸間膜リンパ流を増加させることを発見した。腎臓を傷害した動物のリンパ液に含まれるサイトカイン、免疫細胞のレベルが増大し、アポリポタンパク質AI(apoAI)の産生量がより多くなっていた。さらに、腸起源の尿毒症性トキシンであるインドキシル硫酸は、反応性ジカルボニル、例えば、イソレブグランジン(IsoLG)の回腸オルガノイド産生を刺激した。IsoLGは、回腸及び腸間膜リンパ液において増加した。IsoLG修飾apoAIは、リンパ管収縮を直接増加させ、リンパ管内皮細胞を活性化し、マクロファージによるVEGF-Cの分泌を介してリンパ管形成を誘導した。したがって、本発明の実施形態は、腎疾患に付随する不都合な全身性転帰の基礎をなす、腎臓と腸との間のクロストークにおける新規メディエーター(IsoLG修飾apoAI)及び新しい経路(腸リンパ管網)を含む。
【0004】
[0004]腎疾患は、脂質及びリポタンパク質のレベル、組成及び機能の調節不全を引き起こすものとしてよく認識されている。腸リンパ管は、脂質吸収及びリポタンパク質の輸送/リモデリングにおいて重要である。本発明者らは、腎傷害が腸リンパ管形成を刺激し、リンパ管内皮細胞を活性化し、腸間膜リンパ流を増加させ、リポタンパク質(HDL/apoAI)及び炎症因子を含むリンパ液の組成を変化させることを発見した。重要なことに、腎傷害は、HDL/apoAIを修飾する反応性ジカルボニルの腸産生を刺激し、リンパ管の収縮増大及びリンパ管内皮細胞の活性化をもたらす。これらの結果は、腎疾患の不都合な結果の基礎をなす腎臓-腸クロストークにおける新規のメディエーター及び経路を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]2017年には世界人口の約9.1%、すなわち7億人が慢性腎疾患(CKD)に罹患したので、本発明は長年の切実な必要性を満たす。腎疾患の有病率並びにその関連する罹病率及び死亡率は、多くの要因、特に高齢化集団及び糖尿病の有病率の増加のために増加している。多くの臓器及び組織の構造及び機能は、腎疾患において乱され、合併症、例えば、感染症、心血管疾患(CVD)、末梢動脈疾患、骨疾患、貧血、及び急性腎傷害を引き起こし、入院及び死亡率の増加を伴う。
【0006】
[0006]本発明はまた、CKD関連合併症における腎臓-腸クロストークの重要性を詳述する。腎傷害又は腎疾患における腸リンパ管の変化については、これまでほとんど考慮されてこなかった。これは、腸リンパ管が、免疫/炎症細胞及びメディエーターの播種及び活性化のための部位を提供することによって、免疫において中心的な役割を果たすにもかかわらずである。腸リンパ管はまた、CVD進行に影響を及ぼす、キロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、及び高密度リポタンパク質(HDL)を含む、リポタンパク質の形態の食事性脂質及び内因性脂質を輸送する。さらに、多数の最近の研究では、特定の器官におけるリンパ管の機能不全が、癌、CVD、自己免疫疾患、及び神経変性疾患を含む、ある範囲の疾患を増強することが実証されている。腎リンパ管の機能及び成長は、急性腎傷害及びCKDの進行に影響を及ぼすようでさえあり、腎移植後に出現する。
【0007】
[0007]ピューロマイシンアミノグリコシド(PAN)処置ラットを使用して、本発明は、蛋白尿性腎傷害後に、血漿の同様の変化と並行して、腸リンパ流量の実質的な増加(>5倍)、腸リンパアルブミン輸送の減少、並びに腸リンパ脂質及びリポタンパク質(特にHDL及びアポリポタンパク質AI[apoAI])の増加があることを示す。また、データは、PANラットの血漿ではなく腸リンパ液において、Tヘルパー17細胞及びサイトカイン(インターロイキン-6、インターロイキン-10、及びインターロイキン-17を含む)が増加することを示す。PANラット及びNphs1-hCD25(NEP25)トランスジェニックマウス(蛋白尿性腎傷害の別のモデルとして使用される)の両方において、それらは、回腸におけるリンパ管内皮細胞(LEC)マーカー(ポドプラニン、血管内皮増殖因子受容体3[VEGFR3]、及びリンパ管内皮受容体1[LYVE-1]を含む)のmRNA発現の増加を示し、PANラットの回腸におけるポドプラニン陽性リンパ管の増加によって補完される。PANラットにおける腎傷害はまた、血管拡張(例えば、内皮特異的一酸化窒素、Nos3の増加)及び免疫細胞化学誘引(例えば、CCL21の増加及びSPHK2の向上と共に、スフィンゴシン-1-リン酸[S1P]産生の重要な調節因子であるSPNS2発現の減少(腸間膜リンパ液においては増加した))に関与する重要な遺伝子の回腸LEC発現を変化させた。
【0008】
[0008]本発明者らはまた、蛋白尿性腎傷害が腸リンパリポタンパク質をどのように改変するか、及びこれらの変化が腸LEC及びリンパ管を調節するかどうかを調査した。腎傷害は、酸化ストレス及び脂質過酸化を増大させ、一連の脂質アルデヒド類(例えば、イソレブグランジン(IsoLG))の生成をもたらす。IsoLGは、apoAI機能を損なう高反応性ジカルボニルである。PANラット及びNEP25トランスジェニックマウスの両方は、回腸において上昇した総IsoLGリジンを有し、そしてPANラットは、腸間膜リンパ液において上昇したIsoLG-リジンを有したが、血漿中では有さなかった。IsoLGは、ペルオキシダーゼであるミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって生成され得、この酵素は、タンパク尿ラットの腸管壁において上昇した。MPO活性がタンパク尿ラットの腸において上昇した理由は完全には明らかにされておらず、これは将来の研究の対象となり得る。IsoLGは、PANラットの回腸及び腸リンパ液においてapoAIと共局在していた。天然apoAIではなく、IsoLG修飾apoAIは、リンパ管収縮を直接的に増加させ、LECを活性化し、単離されたマクロファージからの前リンパ管新生因子血管内皮増殖因子C(VEGF-C)の分泌を増加させることがエクスビボで示された。本発明のジカルボニルスカベンジャーでのNEP25マウスの処置は、回腸におけるIsoLGを減少させ、腸におけるリンパ管マーカーポドプラニンを減少させ、IsoLGが、蛋白尿性腎傷害を有する齧歯類において観察される腸リンパ管変化を促進したことを裏付けた。
【0009】
[0009]本発明の一態様は、腎不全を伴わない蛋白尿性腎傷害の齧歯類モデルにおいて、腸リンパ管の組成、構造、及び機能が広範に修飾されていることである。これらの変化は、腎臓と、腸と、他の器官との間のクロストークをモジュレートする役割を果たし、腎疾患における全身性合併症の一因となる。
【0010】
[0010]全身のリンパ構造及び機能の変化は、腎傷害及び腎疾患の進行及び合併症の重要な一因であることが示されている。本発明者らは、増加したIsoLG修飾apoAIが、腎傷害を有する齧歯類において腸リンパ管構造及び収縮をモジュレートすること、並びにIsoLG形成の阻害剤がリンパ管新生を減少させることができることを特定する。したがって、本発明の一態様は、腎傷害及び腎疾患の進行及び合併症に影響を及ぼすこの阻害剤である。本発明者らはまた、腸リンパ管の脂質及びリポタンパク質の輸送が、腎傷害によってかなり改変されることを実証する。全身性脂質異常症は、CVDの重大な危険因子であり、腸リンパリポタンパク質トラフィッキングの正常化は、腎傷害及び腎疾患を有する患者における心血管合併症を低減するための処置であることが示されている。
【0011】
[0011]実験研究及び臨床研究の主な焦点は、臓器間、特に傷害した腎臓と腸との間のクロストークの病態生理を理解することであった。腎疾患は、トキシン、例えば、フェノール(p-クレシル硫酸)、インドール(インドキシル硫酸)及びトリメチルアミンN-オキシドを産生する腸内マイクロバイオームの組成及び代謝の強力なモジュレーターである。腎傷害はまた、細菌成分及びエンドトキシンの血液循環への転流を促進する腸バリアを乱し、次いで、免疫活性化及び炎症促進性シグナル伝達を開始する。腎臓-腸クロストークにおけるメディエーターの主要経路は、血管及び神経を含むと考えられる。リンパ管にはほとんど注意が払われていない。腸リンパ管は、間質液、高分子、免疫/炎症細胞を除去することに加えて、食事脂質の吸収及びリポタンパク質の輸送/リモデリングを担うという点で独特である。リンパ管はまた、末梢間質から血液循環へ高密度リポタンパク質(HDL)を輸送するための一次導管である。リンパ輸送及びリンパ管完全性の乱れは、近年、心血管疾患(CVD)、炎症性腸疾患、及び慢性腎疾患(CKD)を含む疾患の強力な増強因子として認識されている。腸リンパ管の数及び機能は、炎症及び脂質異常症によって影響を受けるが、炎症及び異常な脂質代謝を特徴とする腎傷害が腸リンパ管に影響を及ぼすかどうかは不明である。
【0012】
[0012]多くの疾患において観察される血漿脂質/リポタンパク質のレベル及び組成の異常は、肝臓による産生及び修飾の変化に起因している。対照的に、腸もまたapoAI/HDLの重要な供給源であるが、疾患において優勢な異常なリポタンパク質に対する腸の寄与についての情報はほとんどない。興味深いことに、腸内微生物の変異は、総コレステロール及びLDLの血漿レベルをモジュレートし、VLDL及びHDLの代謝(HDLのコレステロール逆輸送機能を含む)において特に重要であることが最近示された。apoAI/HDLの構造及び組成における修飾が粒子の有益な効果/有害な効果を決定するので、これは病態生理学的に密接な関係があり得る。
【0013】
[0013]リポタンパク修飾における重要な機構は、マロンジアルデヒド、4-ヒドロキシノネナール、4-オキソ-ネオネナール(neonenal)を含む反応性カルボニル、及び全てのカルボニルの中で最も反応性のあるイソレブグランジン(IsoLG)による付加を含む。個々のカルボニルは特定のapoAI/HDL機能に影響を及ぼすことができるが、IsoLGはapoAIの基本的な作用:コレステロール流出、抗炎症、及び抗酸化を減退させる。IsoLGはまた、apoAI機能の変化において、他のカルボニルよりも10~30倍低いレベルで有効である。腎疾患は、HDLの組成及び機能性を変化させ、血漿タンパク質付加物を増加させる。本発明者らは、IsoLGによるapoAI修飾によってHDL粒子が機能不全になり、このことがマクロファージからのコレステロール流出を促進するapoAI/HDLの能力を減退させ、HDLのサイトカイン誘発阻害能を低下させるだけでなく、LPS誘発IL-1β発現を増強することを示した。当業者は、腸が、apoAI/HDLの供給源であるだけでなく、リンパ管形成の調節を含む病態生理学的影響を有し得るapoAI/HDL修飾の部位でもあることを予想することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[0014]本発明者らは、腎疾患において優勢な脂質異常症及び炎症が腸リンパ管の構造及び機能に影響を及ぼし、本発明の実施形態がこの影響を処置、予防及び/又は改善していることを示す。
【0015】
[0015]したがって、腎疾患を有する対象を特定し、
前記対象に、isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化1】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与すること
を含んでなる、腸リンパ管の構造及び機能に対する腎疾患の影響を処置、予防及び/又は改善するための方法が開示される。
【0016】
[0016]また、isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化2】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与すること
を含んでなる、腸リンパ機能をモジュレートして、腎傷害又は腎疾患を改善する方法も開示される。
【0017】
[0017]また、isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化3】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与すること
を含んでなる、腎傷害又は腎疾患の全身性合併症を改善する方法も開示される。
【0018】
[0018]また、isoLGスカベンジング有効量の、下記式:
【化4】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩から選択される少なくとも1つの化合物を投与すること
を含んでなる、腸リンパ管機能不全を改善する方法も開示される。
【0019】
[0019]本発明の方法において、化合物は、下記式:
【化5】
(式中:
R2は独立して、H、置換又は非置換のアルキルから選択され;
R3はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)及びその薬学的に許容し得る塩のものであってもよい。
【0020】
[0020]一実施形態において、R2は独立して、H、エチル、メチルから選択される。
[0021]別の実施形態において、化合物は、2-ヒドロキシベンジルアミン、メチル-2-ヒドロキシベンジルアミン、エチル-2-ヒドロキシベンジルアミンである。
【0021】
[0022]別の実施形態において、化合物は、
【化6】
又はその薬学的に許容し得る塩である。
【0022】
[0023]別の実施形態において、化合物は、
【化7】
又はその薬学的に許容し得る塩である。
【0023】
[0024]別の実施形態において、化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、前記化合物又はその薬学的に許容し得る塩と薬学的に許容し得る担体とを含む組成物で投与される。
[0025]他の実施形態において、化合物又はその薬学的に許容し得る塩は、腎疾患及び/又は炎症に由来する損傷を処置する既知の副作用を有する別の活性薬剤と共投与される。
[0026]本発明の追加の利点及び実施形態は、以下の説明に記載され、一部は当該説明から明らかになるか又は本発明の実施によって知ることができる。本発明の利点及び実施形態は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素及び組合せによって実現され、達成される。前述の一般的な説明及び以下のより詳細な説明の両方は、例示的であり、例示的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】[0027]図1は、蛋白尿性腎傷害が腸間膜リンパ流を増加させ、リンパ液組成を変化させることを示す。(A)腸間膜血管におけるリンパ流量は、対照に対してPAN傷害動物において一貫して高かった。(B)腸間膜リンパ液におけるアルブミン濃度及び産生量は、PAN対対照において顕著に減少した。(C)腸間膜リンパ液におけるコレステロール及びトリグリセリド濃度は、PANにおいてより低く;腸間膜リンパ液におけるコレステロール及びトリグリセリドの総産生量は、対照に対してPANにおいて顕著により高かった。(D)腸間膜リンパ液中のリポタンパク質粒子のNMR分析は、PAN対対照において、類似のLDL粒子、より小さいトリグリセリド(TRL)含有粒子及びより大きいHDL粒子を示した。(E)FPLCシステムでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、PANが、球状HDL及びキロミクロンと一致する画分中のタンパク質、コレステロール、及びリン脂質を増加させ、キロミクロンに対応する画分中のトリグリセリドを増加させることを見出した。(F)リンパapoAI濃度は、PAN対対照において同様であった;総腸間膜リンパapoAI産生量は、PAN対対照において増加した。(G)血漿apoAI濃度は、PAN対対照において増加した。(H)apoAI(赤色)及びポドプラニン(緑色)による回腸組織の二重染色は、PANがapoAIを乳び管に向かって再分布させたことを示した。
図2】[0028]図2は、蛋白尿性腎傷害が腸間膜リンパ液中の免疫細胞及びサイトカインを変化させることを示す。(A)腸間膜リンパ液のフローサイトメトリーは、対照に対してPANのリンパ液においてより多くのTh17細胞(CD3+/CD4+/CCR6+)を示した。(B)腸間膜リンパ液は、PAN対対照においてより多くのIL-6、IL-10及びIL-17を示したが、IL-1は異ならなかった。
図3】[0029]図3は、蛋白尿性腎傷害が腸間膜リンパ管網を拡張し、リンパ管内皮細胞(LEC)を活性化することを示す。(A)PANは、ポドプラニン(PDPN)、LYVE-1(LYVE1)及びVEGFR3(FLT4)mRNAを含むリンパ管新生因子の回腸発現を増加させた。(B)PAN傷害ラットの染色は、対照に対して増加したポドプラニン発現を示した。(C)NEP25は、ポドプラニン(PDPN)及びVEGFR3(FLT4)の回腸遺伝子発現を増加させた。(D)NEP25回腸の染色は、対照マウスと比較して増加したポドプラニン発現を示した。(E)PANは、対照に対して回腸ポドプラニン陽性LECにおけるeNOS(Nos3)mRNA発現を増加させた。(F)PAN腎傷害は、回腸ポドプラニン陽性LECにおける化学誘引物質CCL21 mRNAの発現を顕著に増加させた。(G)PANの回腸から単離されたポドプラニン陽性LECは、正常対照の回腸に対して、より多いSPHK2 mRNA及びより少ないSPNS2 mRNAを示した。(H)PANラットからの腸間膜リンパ液は、対照リンパ液よりも多くのS1Pを有していた。
図4】[0030]図4は、蛋白尿性腎傷害がIsoLGの回腸産生を刺激することを示す。(A)PANは、対照に対して回腸組織におけるIsoLG付加物を増加させた。(B)PAN腸間膜リンパ液は、対照と比較してより多くのIsoLG付加物を含有していた。(C)尿毒症性トキシンインドキシル硫酸(IS)に曝露された培養エンテロイドは、ビヒクルに対してより多くのIsoLG付加物を産生した。(D)PANの回腸におけるapoAI(緑色)及びIsoLG(赤色)の二重染色は、apoAI(矢印)と共局在した乳び管内のIsoLG付加物を示した。
図5】[0031]図5は、IsoLG修飾apoAIが、培養リンパ管内皮細胞(LEC)を活性化し、単離腸間膜リンパ管の血管動態を変化させることを示す。インビトロでは、IsoLG-apoAIに曝露された培養LECは、非修飾apoAIに対して、(A)より多くのROSを産生し、(B)eNOS(Nos3)遺伝子発現を増加させた。IsoLG-apoAIは、非修飾apoAIに対して、(C)ベースラインからの収縮頻度を増加させ、(D)収縮末期径を変化させず、(E)ベースラインからの拡張末期径を減少させ、(F)ベースラインからの収縮幅を減少させた。
図6】[0032]図6は、蛋白尿性腎傷害がVEGF-Cの回腸マクロファージ産生を刺激することを示す。(A)PANは対照に対して回腸VEGF-Cを増加させた。(B)PANリンパ液中のVEGF-C濃度はより低かったが、VEGF-Cの総産生量は、対照に対してPANにおいて顕著に高かった。(C)VEGF-C(赤色)及びCD68(緑色)による回腸の二重染色は、対照に対してPANにおいて、VEGF-C(矢印)と共局在したCD68陽性細胞の数がより多いことを示した。(D)IsoLG-apoAIに曝露された培養マクロファージは、非修飾apoAIに対してより多くのVEGFC mRNAを発現した。
図7】[0033]図7は、本発明の化合物での処置が回腸リンパ管形成及びIsoLG付加物を減少させたことを示す。(A)PPMは、タンパク尿のNEP25マウスにおいて腸リンパ管形成を顕著に減少させた。(B)PPMはまた、NEP25マウスの回腸におけるIsoLG付加物を減少させた。
図8】[0034]図8は、本発明の化合物での処置が腸間膜リンパ液中のIsoLG-リシンを減少させることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0035]本発明者らは、腎傷害の影響の処置に有効な化合物を発見した。
[0036]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「当該(the)」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「官能基」、「アルキル」又は「残基」への言及は、2つ以上のそのような官能基、アルキル又は残基等の混合物を含む。
【0026】
[0037]範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、さらなる態様は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が、「約」との先行詞を使用することによって近似値として表される場合、特定の値がさらなる態様を形成することが理解されるであろう。範囲の各々の終点は、他方の終点との関係において有意であり、且つ他方の終点とは無関係に有意であることがさらに理解されるであろう。また、本明細書には多数の値が開示されており、各値は、値それ自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書に開示されていることも理解される。例えば、「10」との値が開示されている場合、「約10」も開示されている。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13及び14もまた開示される。
【0027】
[0038]本明細書で使用する場合、「任意選択の」又は「任意選択で」との用語は、その後に記載される事象又は状況が起こり得るか又は起こり得ないことを意味し、その記載は、前記事象又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含む。
[0039]本明細書で使用する場合、「対象」との用語は、投与の標的を指す。本明細書に開示される方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類又は両生類等のであり得る。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット又は齧歯類であり得る。当該用語は、特定の年齢又は性別を示さない。したがって、成体及び新生の対象、並びに胎児(雄性又は雌性のいずれか)が包含されることが意図される。患者は、疾患又は障害に罹患している対象を指す。「患者」との用語は、ヒト及び獣医学的対象を含む。
【0028】
[0040]本明細書で使用する場合、「処置」との用語は、疾患、病的状態又は障害を治癒、改善、安定化又は予防することを意図した患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的処置、すなわち、疾患、病的状態又は障害の改善に特に照準を合わせた処置を含み、また、原因療法、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の原因の除去に照準を合わせた処置も含む。加えて、この用語は、対症療法、すなわち、疾患、病的状態又は障害の治療ではなく症状の緩和のために設計された処置;予防的処置、すなわち、関連する疾患、病的状態若しくは障害の発症を最小限に抑えるか又は部分的若しくは完全に阻害することに照準を合わせた処置;及び支持療法、すなわち、関連する疾患、病的状態又は障害の改善に照準を合わせた別の特定の療法を補うために用いられる処置を含む。
【0029】
[0041]本明細書で使用する場合、「予防」又は「予防する」との用語は、特に事前の措置によって、何かが起こることを排除する、回避する、未然に防ぐ、予め阻害する、止める又は妨げることを指す。低減、阻害又は予防が本明細書で使用される場合、別段具体的に示されない限り、他の2つの単語の使用も明示的に開示されることが理解される。本明細書に見られるように、処置及び予防の定義には重複がある。
【0030】
[0042]本明細書で使用する場合、「診断された」との用語は、当業者、例えば医師による身体的診察を受け、本明細書に開示される化合物、組成物又は方法によって診断又は処置することができる状態があることが見出されたことを意味する。本明細書で使用する場合、「障害の処置を必要とすると特定された」との語句等は、当該障害の処置の必要性に基づく対象の選択を指す。例えば、対象は、当業者による早期診断に基づいて、障害(例えば、炎症に関連する障害)の処置の必要性を有すると特定され得、その後、当該障害に対する処置を受け得る。当該特定は、一態様において、診断を行う人とは異なる人によって実施され得ることが企図される。さらなる態様において、投与は、その後に投与を行った者によって行われ得ることも企図される。
【0031】
[0043]本明細書で使用する場合、「投与」及び「投与すること」との用語は、医薬製剤を対象に提供する任意の方法を指す。このような方法は、当業者に周知であり、そして経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、直腸内投与、及び非経口投与(注射可能なもの、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、連続的又は断続的であり得る。様々な態様において、製剤は、治療的に投与することができる;すなわち、既存の疾患又は状態を処置するために投与することができる。さらなる様々な態様において、製剤は、予防的に投与することができる、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与することができる。
【0032】
[0044]本明細書で使用する場合、「有効量」との用語は、所望の結果を達成するのに又は望ましくない状態に対して効果を有するのに十分な量を指す。例えば、「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するのに又は望ましくない症状に対する効果を有するのに十分であるが、一般に不都合な副作用を引き起こすには不十分である量を指す。任意の特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、処置中の障害及び当該障害の重篤度;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事;投与時間;投与経路;使用される特定の化合物の排泄速度;処置の期間;使用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む種々の因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることは、十分に当技術分野の技術の範囲内である。所望される場合、有効な1日用量は、投与の目的のために複数の用量に分割することができる。結果として、単一用量組成物は、1日用量を構成するような量又はその約数を含有し得る。投与量は、任意の禁忌の事象において、個々の医師によって調整され得る。投与量は変動することができ、1日又は数日間、毎日1回又は複数回の用量投与で投与することができる。所与のクラスの医薬品についての適切な投与量についてのガイダンスは、文献に見出すことができる。さらなる様々な態様において、製剤は、「予防有効量」、すなわち、疾患又は状態の予防に有効な量で投与することができる。
【0033】
[0045]本明細書で使用する場合、「スカベンジャー」又は「スカベンジング」との用語は、不純物又は望まれない反応生成物を除去又は不活性化するために投与することができる化学物質を指す。例えば、理論又は機序に束縛されるものではないが、IsoLGsは、タンパク質上のリジン残基に特異的に不可逆的に付加する。本発明のIsoLGsスカベンジャーは、それらがリジン残基に付加する前にIsoLGsと反応する。したがって、本発明の化合物は、IsoLGsを「スカベンジ」し、それによって、それらがタンパク質に付加するのを予防する。
【0034】
[0046]本明細書で使用する場合、「置換の」との用語は、有機化合物の全ての許容置換基を含むことが企図される。広範な態様において、許容置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、並びに芳香族及び非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容置換基は、適切な有機化合物に対して1つ又は複数であってよく、同じであっても異なっていてもよい。本開示の目的のために、ヘテロ原子、例えば、窒素は、水素置換基及び/又は当該ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容置換基を有することができる。本開示は、有機化合物の許容置換基によっていかなる方法においても限定されることを意図しない。また、「置換」又は「で置換された」との用語は、そのような置換が、置換された原子及び置換基の許容原子価に従い、その置換が、安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離等による変換を自発的に受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含む。
【0035】
[0047]本明細書中で用いる「アルキル」との用語は、1~24個の炭素原子の分枝又は非分枝飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等である。アルキル基は、環式又は非環式であり得る。アルキル基は、分枝又は非分枝であり得る。アルキル基はまた、置換又は非置換のものであり得る。例えば、アルキル基は、本明細書に記載されるように、任意選択で置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ又は複数の基で置換され得る。「低級アルキル」基は、1~6個(例えば、1~4個)の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0036】
[0048]本明細書全体を通して、「アルキル」は一般に、非置換のアルキル基及び置換のアルキル基の両方を指すために使用されるが、置換のアルキル基はまた、アルキル基上の特定の置換基(複数可)を特定することによって、本明細書において具体的に言及される。例えば、「ハロゲン化アルキル」との用語は、具体的には、1つ又は複数のハロゲン化物、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素で置換されたアルキル基を指す。「アルコキシアルキル」との用語は、具体的には、以下に記載されるように、1つ又は複数のアルコキシ基で置換されたアルキル基を指す。「アルキルアミノ」との用語は、具体的には、以下に記載されるような、1つ又は複数のアミノ基で置換されたアルキル基等を指す。「アルキル」がある事例に使用され、特定の用語、例えば、「アルキルアルコール」が別の事例に使用される場合、「アルキル」との用語が特定の用語、例えば、「アルキルアルコール」等も指さないことを意味するものではない。
【0037】
[0049]この慣例は、本明細書に記載される他の基にも使われる。すなわち、「シクロアルキル」のような用語は、非置換及び置換のシクロアルキル部分の両方を指すが、置換部分は、加えて、本明細書において具体的に特定され得、例えば、特定の置換のシクロアルキルは、例えば、「アルキルシクロアルキル」と称され得る。同様に、置換のアルコキシは、具体的には、例えば、「ハロゲン化アルコキシ」と称され得、特定の置換のアルケニルは、例えば、「アルケニルアルコール」等であり得る。また、一般的な用語、例えば、「シクロアルキル」及び特定の用語、例えば、「アルキルシクロアルキル」を用いる慣例は、当該一般的な用語が当該特定の用語も含まないことを意味するものではない。
【0038】
[0050]本明細書で使用される「シクロアルキル」との用語は、少なくとも3個の炭素原子から構成される非芳香族炭素系環である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル等が挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」との用語は、上で定義されたようなシクロアルキル基の一種であり、「シクロアルキル」との用語の意味の範囲内に含まれ、ここで、環の炭素原子の少なくとも1個は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄又はリンであるが、これらに限定されない)で置き換えられている。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、置換又は非置換のものであり得る。シクロアルキル基及びヘテロシクロアルキル基は、本明細書に記載されるように、任意選択で置換されたアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン化物、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホ-オキソ又はチオールを含むが、これらに限定されない1つ又は複数の基で置換され得る。
【0039】
[0051]本明細書において使用される「ポリアルキレン基」との用語は、互いに連結された2つ以上のCH2基を有する基である。ポリアルキレン基は、式-(CH2)a-(式中、「a」は2~500の整数である)によって表すことができる。
[0052]「アルコキシ」及び「アルコキシル」との用語は、エーテル結合を介して結合しているアルキル又はシクロアルキル基を指すために本明細書で使用される;すなわち、「アルコキシ」基は、-OA1(式中、A1は、上で定義したアルキル又はシクロアルキルである)と定義することができる。一例は、-O-ペンチルである。「アルコキシ」はまた、まさに記載されたようなアルコキシ基のポリマーを含む;すなわち、アルコキシは、ポリエーテル(例えば、-OA1-OA2又は-OA1-(OA2)a-OA3)であり得、式中、「a」は、1~200の整数であり、且つA1、A2及びA3は、アルキル基及び/又はシクロアルキル基である。
【0040】
[0053]本明細書で使用される「アミン」又は「アミノ」との用語は、式NA1A2A3によって表され、式中、A1、A2、及びA3は、独立して、水素、又は本明細書に記載されるように、任意選択で置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、シクロアルキニル、アリール、若しくはヘテロアリール基であり得る。
[0054]本明細書において使用される「ヒドロキシル」との用語は、式-OHによって表される。
【0041】
[0055]本明細書で使用される「ニトロ」との用語は、式-NO2によって表される。
[0056]「薬学的に許容し得る」との用語は、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない、すなわち、許容し得ないレベルの望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、有害な様式で相互作用することもない材料を表す。
【0042】
[0057]本発明の化合物の例としては、式:
【化8】
(式中:
Rは、N又はC-R2であり;
R2は独立して、H、置換又は非置換のC1~C10アルキル、C1~C10アルコキシ、ヒドロキシから選択され;
R3はH、ハロゲン、C1~C10アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のC1~C10アルキル、カルボキシルである)
から選択される化合物及びその薬学的に許容し得る塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
[0058]さらなる例としては、下記式:
【化9】
(式中:
R2は独立して、H、置換又は非置換のアルキルから選択され;
R3はH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロであり;
R4はH、置換又は非置換のアルキル、カルボキシルである)
の化合物及びその薬学的に許容し得る塩が挙げられる。
[0059]他の実施形態において、R2は独立して、H、エチル、メチルから選択される。
【0044】
[0060]他の実施形態において、化合物は、
【化10】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択されてもよい。
【0045】
[0061]化合物は、また、
【化11】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択されてもよい。
【0046】
[0062]化合物は、また、
【化12】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択されてもよい。
【0047】
[0063]化合物は、また、
【化13】
又はその薬学的に許容し得る塩から選択されてもよい。
【0048】
[0064]本明細書で使用する場合、「薬学的に許容し得る塩」との用語は、薬学的に許容し得る非毒性の塩基又は酸から調製された塩を指す。本発明の化合物が酸性である場合、その対応する塩は、無機塩基及び有機塩基を含む薬学的に許容し得る非毒性の塩基から簡便に調製することができる。そのような無機塩基から誘導された塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第二及び第一)、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第二及び第一)、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの塩である。薬学的に許容し得る有機非毒性の塩基から誘導された塩には、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミン、並びに環状アミン及び置換アミン(例えば、天然に存在する置換アミン及び合成された置換アミン)の塩が含まれる。塩が形成され得る他の薬学的に許容し得る有機非毒性の塩基には、イオン交換樹脂(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)が含まれる。
【0049】
[0065]本明細書で使用する場合、「薬学的に許容し得る非毒性の酸」との用語は、無機酸、有機酸、及びそれらから調製された塩、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸等を含む。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及び酒石酸が好ましい。
【0050】
[0066]したがって、本発明の一実施形態は、有効量の少なくとも1つの本発明のIsoLGスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を、それを必要とする患者に投与することを含む、蛋白尿性腎傷害を処置する方法である。好ましくは、化合物は、2-HOBA、メチル-2-HOBA又はエチル-2-HOBAである。
[0067]本発明の別の実施形態は、腎疾患に由来する損傷を処置する方法である。本発明の態様において、損傷は腸リンパ管網に対するものである。他の態様において、損傷はリンパ管の収縮増大及びリンパ管内皮細胞の活性化である。他の態様において、損傷はリンパ輸送及びリンパ管完全性の乱れである。
【0051】
[0068]本発明の別の実施形態は、腎傷害の処置を必要とする対象を特定し;前記対象に、isoLGスカベンジング有効量の、本発明の少なくとも1つの化合物を投与することを含む、蛋白尿性腎傷害を処置する方法である。
[0069]一態様において、蛋白尿性腎傷害は、腎疾患に由来する損傷である。別の態様において、損傷は腸リンパ管網に対するものである。別の態様において、損傷はリンパ管の収縮増大及びリンパ管内皮細胞の活性化である。さらに別の態様において、損傷はリンパ輸送及びリンパ管完全性の乱れである。
【0052】
[0070]本発明の別の実施形態は、isoLGスカベンジング有効量の、本発明の少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、腸リンパ機能をモジュレートして、腎傷害又は腎疾患を改善する方法である。
[0071]本発明の別の実施形態は、isoLGスカベンジング有効量の、本発明の少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、腎傷害又は腎疾患の全身性合併症を改善する方法である。一態様において、IsoLGは、腸リンパ管網内にある。別の態様において、全身性合併症は心血管、循環又は肥満に関連するものである。
【0053】
[0072]本発明の別の実施形態は、isoLGスカベンジング有効量の、本発明の少なくとも1つの化合物を投与することを含んでなる、腸リンパ管機能不全を改善する方法である。一態様において、機能不全は腸リンパ管形成である。
[0073]上記の実施形態は、有効量の、本発明の少なくとも1つのIsoLGスカベンジャー化合物又はその薬学的に許容し得る塩を、それを必要とする患者に投与することを含む。好ましくは、化合物は、2-HOBA、メチル-2-HOBA又はエチル-2-HOBAである。
【0054】
[0074]上述のように、本発明は、開示された化合物を含む医薬組成物に関する。すなわち、治療有効量の、少なくとも1つの開示された化合物又は開示された方法の少なくとも1つの生成物及び薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物が提供され得る。
[0075]ある特定の態様において、開示された医薬組成物は、活性成分としての開示された化合物(その薬学的に許容し得る塩(複数可)を含む)と、薬学的に許容し得る担体と、任意選択で、他の治療成分又はアジュバントとを含む。本発明の組成物には、経口、直腸、局所、及び非経口(皮下、筋肉内、及び静脈内を含む)投与に適したものが含まれるが、任意の所与の場合における最も適切な経路は、特定の宿主、並びに活性成分が投与されている状態の性質及び重篤度に依存する。医薬組成物は、単位剤形で簡便に提供することができ、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0055】
[0076]実際には、本発明の化合物、又は本発明のその薬学的に許容し得る塩は、従来の医薬配合技術に従って、医薬担体との均質混合物中の活性成分として組み合わせることができる。担体は、投与、例えば、経口又は非経口(静脈内を含む)に望ましい製剤の形態に応じて、多種多様な形態をとることができる。したがって、本発明の医薬組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、オブラート剤又は錠剤といった経口投与に適した個別の単位として提供することができる。さらに、組成物は、粉末として、顆粒として、溶液として、水性液体中の懸濁液として、非水性液体として、水中油型エマルジョンとして、又は油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。上記の一般的な剤形に加えて、本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容し得る塩(複数可)は、制御放出手段及び/又は送達デバイスによって投与することもできる。組成物は、薬学の方法のいずれかによって調製することができる。一般に、このような方法は、活性成分を、1つ又は複数の必要な成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体又は微細に分割された固体担体又はその両方と均一且つ均質に混合することによって調製される。次いで、生成物を所望の体裁に都合よく成形することができる。
【0056】
[0077]したがって、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体と本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容し得る塩とを含むことができる。本発明の化合物又はその薬学的に許容し得る塩はまた、1つ又は複数の他の治療的に活性な化合物と組み合わせて医薬組成物中に含まれ得る。使用される薬学的担体は、例えば、固体、液体、又は気体であり得る。固体担体の例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、糖シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、及び水である。気体担体の例としては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。
【0057】
[0078]経口剤形のための組成物を調製する際に、任意の好都合な医薬媒体を使用することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤等を使用して、経口液体製剤、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液を形成することができ;一方、担体、例えば、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、バインダ、崩壊剤を使用して、経口固体製剤、例えば、粉末、カプセル剤及び錠剤を形成することができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセル剤は、好ましい経口投与単位であり、それによって、固体医薬担体が使用される。任意選択で、錠剤は、標準的な水性技術又は非水性技術によってコーティングされ得る。
【0058】
[0079]本発明の組成物を含有する錠剤は、任意選択で1つ又は複数の補助成分又はアジュバントと共に、圧縮又は成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、バインダ、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と任意選択で混合された、粉末又は顆粒といった流動性形態の活性成分を、好適な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製することができる。
【0059】
[0080]本発明の医薬組成物は、活性成分としての本発明の化合物(又はその薬学的に許容し得る塩)と、薬学的に許容し得る担体と、任意選択で1つ又は複数の追加の治療剤又はアジュバントを含むことができる。
[0081]非経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、活性化合物の水中溶液又は懸濁液として調製することができる。好適な界面活性剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースを含めることができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び油中のそれらの混合物中で調製することができる。さらに、微生物の有害な増殖を予防するために保存剤を含めることができる。
【0060】
[0082]注射用途に好適な本発明の医薬組成物には、滅菌水溶液又は分散液が含まれる。さらに、当該組成物は、このような無菌の注射剤溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末の形態であり得る。全ての場合において、最終的な注射可能な形態は、無菌でなければならず、注射容易性(easy syringability)のために効果的に流動性でなければならない。医薬組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、したがって、好ましくは、微生物、例えば、細菌及び真菌の汚染作用に対して保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。
【0061】
[0083]本発明の医薬組成物は、局所用途に好適な形態、例えば、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、散布粉剤、マウスウォッシュ、含嗽剤等であり得る。さらに、組成物は、経皮デバイスにおける使用に好適な形態であり得る。これらの調合物は、本発明の化合物又はその薬学的に許容し得る塩を利用して、従来の加工方法によって調製することができる。一例として、クリーム又は軟膏は、親水性材料及び水を、約5重量%~約10重量%の化合物と一緒に混合することにより調製して、所望の稠度を有するクリーム又は軟膏を生成する。
[0084]本発明の医薬組成物は、担体が固体である、直腸内投与に好適な形態であり得る。混合物が単位用量坐剤を形成することが好ましい。好適な担体には、カカオバター及び当該分野で一般的に使用される他の材料が含まれる。坐剤は、最初に組成物を軟化又は融解した担体(複数可)と混合し、続いて冷却し、型内で成形することによって簡便に形成することができる。
【0062】
[0085]前述の担体成分に加えて、上記の医薬調合物は、必要に応じて、1つ又は複数の追加の担体成分、たとえば、希釈剤、緩衝剤、香味剤、バインダ、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)等を含むことができる。さらに、他のアジュバントを含めて、当該調合物を、目当てのレシピエントの血液と等張にすることができる。本発明の化合物及び/又はその薬学的に許容し得る塩を含有する組成物は、粉末又は液体濃縮物の形態で調製することもできる。
[0086]しかしながら、任意の特定の患者に対する具体的な用量レベルは、種々の要因に依存することが理解される。このような要因には、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事が含まれる。他の要因には、投与の時間及び経路、排泄速度、薬物の組合せ、並びに治療を受けている特定の疾患の型及び重篤度が含まれる。
【0063】
[0087]開示された組成物は、開示された化合物から調製することができることが理解される。開示された組成物は、開示された使用方法において使用することができることも理解される。
[0088]したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1つ又は複数の他の活性成分を含有するものを含む。
[0089]上記の組合せは、開示された化合物と1つの他の活性化合物との組合せだけでなく、2つ以上の他の活性化合物との組合せも含む。同様に、開示された化合物は、開示された化合物が有用である疾患又は状態の予防、処置、制御、改善、又はリスクの低減において使用される他の薬物と組み合わせて使用してもよい。このような他の薬物は、そのために一般的に使用される経路及び量で、本発明の化合物と同時に又は順次投与してもよい。本発明の化合物を1つ又は複数の他の薬物と同時に使用する場合、本発明の化合物に加えてそのような他の薬物を含有する医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて、1つ又は複数の他の活性成分も含有するものを含む。
【0064】
[0090]本発明の化合物と第2の活性成分との重量比は変動させることができ、各成分の有効用量に依存する。一般に、各々の有効用量が使用される。したがって、例えば、本発明の化合物を別の薬剤と組み合わせる場合、本発明の化合物と他の薬剤との重量比は、一般に、約1000:1~約1:1000及びその間の任意の量、好ましくは約200:1~約1:200の範囲である。本発明の化合物と他の活性成分との組合せもまた、一般に、前述の範囲内であるが、各場合において、各活性成分の有効用量が使用されるべきである。
[0091]そのような組合せにおいて、本発明の化合物及び他の活性薬剤は、別々に又は一緒に投与してもよい。加えて、1つの要素の投与は、他の薬剤(複数可)の投与の前、同時、又は後であり得る。
【0065】
[0092]したがって、主題の化合物は、単独で、又は主題の適応症において有益であることが知られている他の薬剤、又は開示された化合物の有効性、安全性、利便性を増加させるか、若しくは望まれない副作用若しくは毒性を低減させる受容体若しくは酵素に影響を及ぼす他の薬物と組み合わせて使用することができる。主題の化合物及び他の薬剤は、併用療法又は固定された組合せのいずれかで共投与してもよい。
[0093]その優れた安全性プロファイルに加えて、本発明の化合物は、その使用の実現可能性のためにも望ましい。投与の選択肢ではあるが、本発明の化合物は、経口的に生物学的に利用可能であるので、注射又は注入される必要はない。さらに、本発明の化合物は、室温で長い貯蔵寿命(>2年)を有する。本発明の化合物はまた、生物学的処置と比較して実質的により低いコストで製造され得、これは、患者の負担をさらに低下させ、そしてアクセスを確実にする。
【0066】
[0094]本発明の別の実施形態において、本発明の化合物は、腎傷害及び/又は炎症を処置する既知の副作用を有する別の活性成分と共に、それを必要とする患者に共投与することができる。
[0095]すなわち、本発明の化合物は、単独で、又は有効量の少なくとも1つの追加の活性薬剤と組み合わせて投与することができる。「組み合わせた」又は「組合せで(の)」又は「組合せ」は、機能的な共投与として理解されるべきであり、ここで、いくつか又は全ての化合物は、別々に、異なる調合物で、異なる投与様式(例えば、皮下、静脈内又は経口)及び異なる投与時間で投与してもよい。そのような組合せの個々の化合物は、別々の医薬組成物で順次投与しても、組み合わせた医薬組成物で同時に投与してもよい。
【0067】
[0096]本発明者らは、蛋白尿性腎傷害が腸間膜リンパ流を増加させ、リンパ液組成を変化させることを示した。本発明者らは、ラットにおける十分に確立されたピューロマイシンアミノグリコシド腎症(PAN)モデルを使用した。予想通り、PANラットは、対照と比較して、腹水、タンパク尿、低アルブミン血症、血漿コレステロール及びトリグリセリドの増加を発症した(下記表1)。
【0068】
【表1】
【0069】
[0097]タンパク尿傷害は、腸間膜リンパ流の際立った増加を引き起こした(図1A参照)。PAN中の腸間膜リンパ液はアルブミンを減少させ、リンパ液体積の増加にもかかわらず、総腸間膜アルブミン産出量は、対照に対してPANでは少なかった(図1B参照)。コレステロール及びトリグリセリドのリンパ液中濃度は、対照に対してPANではより低かったが、これらの脂質の総リンパ産生量は増加し、血漿脂質の上昇と並行していた(図1C、表1参照)。PANは、リンパLDL粒子サイズに影響を及ぼさなかったが、VLDLに対応するトリグリセリド含有粒子は、対照に対してPANのリンパ液においてより小さく、HDL粒子はより大きかった(図1D参照)。HDL粒子のさらなる分析は、球状HDLと一致する画分における総タンパク質、総コレステロール、及びリン脂質の増加を示した(図1E参照)。血漿HDL粒子サイズは変化しなかった(PAN:10.7±0.1対対照:10.5±0.1nm、pNS)。
【0070】
[0098]血液循環中のapoAIの30%は回腸に由来するので、本発明者らは、apoAIの腸レベル及びリンパ液中レベルも評価した。回腸apoAIタンパク質レベルは、群間で異ならなかったが(PAN:1.06±0.06対対照:1.16±0.17μg/mg、pNS)、apoAIの総腸間膜産生量は、対照に対してPANでは顕著に高かった(図1F参照)。これは、傷害のこの初期段階で、対照に対してPANではより高いレベルの血漿apoAIを伴った(図1G参照)。PANラットの回腸は、より目立ったapoAIタンパク質発現を示し、これは、上皮細胞の尖端側から管腔側に再分布し、腸絨毛内のリンパ乳び管と共局在した(図1H参照)。
【0071】
[0099]PAN傷害は、腸間膜リンパ液の免疫細胞組成に影響を及ぼし、Th17細胞(CD3+/CD4+/CCR6+)の数を増加させた(図2A参照)。PANリンパ液は、IL-6、IL-10及びIL-17を含むサイトカインを顕著に上昇させた(図2B参照)。特筆すべきは、同時に得られ、リンパ液試料と共にアッセイされた血漿サイトカインは、PAN対対照の間で異ならなかった。これらの結果は、蛋白尿性腎傷害が腸間膜リンパ流量、リンパ脂質、リポタンパク質、免疫細胞、及びサイトカインを増加させるが、これらの変化の多くは血漿の変化と並行しないことを実証する。
【0072】
[00100]本発明者らはまた、蛋白尿性腎傷害が腸リンパ管網を拡張し、リンパ管内皮細胞表現型を変化させることを示す。ポドプラニン、LYVE-1及びVEGFR3を含むリンパ管新生マーカーは全て、対照に対してPANの回腸において顕著に増加した(図3A参照)。より高次のmRNAを補完すると、PANにおける回腸は、IHC対対照によって、より大きなポドプラニン陽性リンパ管を示した(図3B参照)。これらの知見は、野生型マウスに対して、ポドプラニン及びVEGFR3(FLT4)の回腸遺伝子発現の増加を示したトランスジェニックNEP25マウスにおける結果によって裏付けられた(図3C参照)。PANラットと同様に、タンパク尿マウスの回腸では、非傷害マウスと比較して、ポドプラニン発現が増加した(図3D参照)。
【0073】
[00101]腎傷害がリンパ管内皮細胞(LEC)に影響を及ぼしたかどうかを決定するために、PANラット及び対照ラットの回腸から単離されたLECからの重要な遺伝子の発現をPCRによって定量化した。血管拡張の肝要なメディエーターである内皮特異的一酸化窒素(Nos3)は、対照ラットに対してPANから単離された腸LECにおいて顕著に増加した(図3E参照)。PANはまた、免疫細胞動員の重要なメディエーターであるケモカインCCL21の腸発現を顕著にアップレギュレートした(図3F参照)。PAN回腸から単離されたポドプラニン陽性LECはまた、より高いSPHK2発現及び減少したSPNS2発現(S1P産生の2つの重要な調節因子)を示し、これは次にリンパ球遊走及び生存を刺激する(図3G参照)。PANの腸間膜リンパ液は、対照に対してより多くのS1Pを含有していた(図3H参照)。まとめると、これらの結果は、蛋白尿性腎傷害が、リンパ管形成、血管拡張及び免疫細胞化学誘引に関与する腸LECにおける重要な遺伝子を増加させるという概念を支持する。
【0074】
[00102]本発明者らはまた、蛋白尿性腎傷害が、リンパ管内皮細胞及び血管動態を調節するIsoLG修飾リポタンパク質を増加させることを示す。腎傷害は、apoAIの機能性を損なう、IsoLGを含む脂質アルデヒド類の多様なファミリーを生成し得る酸化ストレス及び脂質過酸化を増加させる。PANラットは、対照と比較して、回腸においてより多くの総IsoLG-リジン含有量を有していた(図4A参照)。PANラットはまた、腸間膜リンパ液においてIsoLG-リジンレベルの顕著な増加を示したが(図4B参照)、血漿においては示さなかった(PAN:0.20±0.07対Cont:0.15±0.03 pmol/mgプロテイン、pNS)。興味深いことに、IsoLG付加物産生は、尿毒症性トキシンであるインドキシル硫酸(IS)に曝露された培養エンテロイドにおいて、ビヒクル処置エンテロイドと比較して顕著に増加した(図4C参照)。実際に、apoAI及びIsoLGの両方についての回腸の共染色は、PANラットの回腸におけるエピトープの重複及び共局在を示した(図4D参照)。
【0075】
[00103]IsoLG-apoAIがリンパ管に直接影響を及ぼすかどうかを決定するために、培養したLECをIsoLG-apoAIに曝露した。IsoLG-apoAIは、非修飾apoAIと比較して顕著に多いROSの産生を引き起こした(図5A参照)。さらに、IsoLG-apoAIに曝露されたLECは、非修飾apoAIで処置されたLECと比較して、Nos3が増加していた(図5B参照)。エクスビボ研究において、IsoLG-apoAIに曝露された単離した腸間膜リンパ管は、非修飾apoAIと比較して収縮頻度の増加を示した(図5C参照)。IsoLG-apoAIは収縮末期径(ESD)を顕著に変化させることはできなかったが(図5D参照)、拡張末期径(EDD)は顕著に減少し(図5E参照)、それと共に、IsoLG-apoAIで処置したリンパ管では収縮の振幅が顕著に減少した(図5F参照)。これらの研究は、天然apoAIとは異なるリンパ管動態に対するIsoLG-apoAIの直接的な効果を明らかにする。当該結果はまた、収縮頻度が、インビボでのリンパ流の増加における駆動力であることを示唆する。
【0076】
[00104]VEGF-Cは、リンパ管形成を促進する主要な成長因子である。VEGF-Cタンパク質レベルは、対照ラットに対してPANの回腸において顕著に増加した(図6A参照)。重要なことに、VEGF-Cタンパク質レベルは、PANの腸間膜リンパ液において顕著に増加したが(図6B参照)、対照ラットに対してPANにおける血漿VEGF-Cにおいて差異は観察されなかった(PAN:11.03±0.76 pg/ml対Cont:10.91±0.59 pg/ml、pNS)。PANは、VEGF-Cタンパク質と共局在する腸の乳び管により多くのCD68+細胞(マクロファージ)を有していた(図6C)。IsoLG-apoAIで処理したマクロファージは、非修飾apoAIと比較してVEGFC mRNA発現の顕著な増加を示したので(図6D参照)、リンパ液中のVEGF-Cタンパク質含有量の増加は、おそらくリンパHDL上のIsoLG修飾に関連している。これらのデータは、回腸がおそらく腸リンパ管における増加したVEGF-Cレベルの供給源であり、腸マクロファージがおそらく観察された増加の一因となるという仮説を支持する。
【0077】
[00105]未処置NEP25マウスと比較して、本発明の化合物で処置したNEPマウスは、腸のポドプラニン発現の顕著な減少を示した(図7A)。本発明の化合物はまた、回腸におけるIsoLG付加物のレベルを減少させた(図7B)。図8は、腸間膜リンパ液中のIsoLGを減少させる本発明の別の化合物を示す。
【0078】
[00106]実験データ及び臨床データは、腎傷害が遠隔臓器、例えば、心臓、肺及び腸に対して有害な結果を有することを確実に立証している。腎臓-腸クロストークにおいて、研究は、腸内マイクロバイオーム及びバリア機能不全に対する腎疾患の影響に主に焦点を当ててきた。本発明の態様は、脂質及びリポタンパク質の吸収、代謝、及び輸送、並びに免疫及び炎症の調節の中心である腸リンパ管に対する蛋白尿性腎傷害の効果を示す。2つのモデルを使用して、本発明者らは、蛋白尿性腎傷害が、腸リンパ管形成、腸間膜リンパ流、リンパ管収縮、及びリンパ管内皮細胞の活性化を増大させることを実証した。腸間膜リンパ液の組成も変化し、サイトカイン及び免疫細胞が増加した。本発明者らは、腎傷害が、局所apoAIを付加することができるIsoLGの腸内産生の増加をもたらすことを実証した。腸起源のIsoLG-apoAIは、次いで、例えば、VEGF-C、eNOS、ROSを刺激することによって、リンパ管網の成長及び動態を直接的及び間接的に変化させ、したがって、潜在的に有害な生理活性要素の伝達を増加させる。まとめると、これらのデータは、腎疾患の不都合な全身性転帰の根底にある腎臓と腸との間のクロストークにおいて、腸リンパ管網を導管とし、IsoLG-apoAIをこれらの効果の新規メディエーターとする新たな経路を指摘している。
【0079】
[00107]2つの異なる蛋白尿性腎傷害モデルは、リンパ管内皮マーカーであるポドプラニン、LYVE-1、及びVEGFR3のmRNA及び免疫染色の増加によって証明されるように、腸リンパ管形成を顕著に拡大した。 腎傷害はまた、腸LECの表現型を変化させた。PANラットの回腸から単離されたポドプラニン陽性LECは、顕著に増加したNos3 mRNAを有し、この結果は、eNOSのLEC同化がリンパ拡張における主要な要因であることを示す以前の研究と矛盾がない。データは、対照に対してPANラットで観察された腸間膜リンパ流の際立った増加と一致しており、eNOSがリンパ球及び他の免疫細胞のトラフィッキングを増幅し、抗原提示並びに自然免疫応答及び適応免疫応答の開始のためにそれらをリンパ節に向けるという観察に適合する。LECは、ケモカイン勾配、特に、樹状細胞、マクロファージ及びTリンパ球サブセットをリンパ網に動員するCCL21を生成することができる。本発明者らは、PANにおける回腸ポドプラニン陽性LECがCCL21発現を増加させたことを示した。腸LECは、免疫細胞トラフィッキングを調節する他の要因、例えば、S1P及びS1PR1の増加を示した。蛋白尿性腎傷害は、潜在的に毒性の免疫細胞(Th17リンパ球)及びサイトカイン(IL-6、IL-10、IL-17)のレベルを増加させた。まとめると、本発明者らのデータは、蛋白尿性腎傷害が腸リンパ管網を拡張し、次いで腸からのリンパ流を増強することを実証する。本発明者らはまた、蛋白尿性腎傷害が、血管運動性メディエーター及び免疫細胞/炎症細胞の化学誘引物質の発現の増加を伴う活性化リンパ管LECをもたらすことを示す。
【0080】
[00108]コレステロール及びトリグリセリド濃度は、対照に対してPANラットからの腸間膜リンパ液においてより低かった。しかしながら、増大したリンパ流に直面して、PANラットは、コレステロール及びトリグリセリドの総腸間膜産生量がより多く、これは、タンパク尿疾患に特徴的な重篤な混合型脂質異常症の一因となるおそれがある。コレステロール及びトリグリセリドは、キロミクロンに組み込まれるか、又はHDL中のapoAIに結合する。腸は全apoAIの3分の1を合成するので、本発明者らは次に、腸apoAIに対するPANの効果を試験した。食餌性リポタンパク質の産生を制限するために、本発明者らの研究における動物を絶食させた。本発明者らのデータは、対照に対するPANのリンパ液中の回腸apoAIタンパク質濃度の差を示すことができなかったが、IHCは、apoAIが上皮細胞の尖端から管腔側に再分布し、リンパ乳び管と共局在することを明らかにした。再分布及び/又は分泌の増強は、リンパ流の増加と共に、apoAIの腸間膜産生量の増加の一因となった可能性がある。apoAIの腸間膜産生量がより多いことに加えて、本発明者らの研究は、腎傷害の初期段階において、腸間膜リンパ液が、より大きなHDL粒子、より多くのサイトカイン、より高いVEGF-C、及び添加されたIsoLGを含有することを示した(以下に論じる)。興味深いことに、PANリンパ液中の多くの分子のレベルの増加は、対照ラットに対してPANの同時に得られた血漿では見られず、このデータは、腎傷害後の少なくとも初期段階において、腸が潜在的に有害な分子の供給源であるという考えを支持する。
【0081】
[00109]蛋白尿性腎傷害は、LPSへの結合能の低下、細胞コレステロールの流出、及びサイトカイン応答の阻害を含むapoAI/HDLの有益な作用の多くを低下させる強力な修飾因子である反応性過酸化生成物IsoLGの腸内生成を引き起こした。apoAI/HDLのIsoLG修飾は、敗血症、高血圧及びCVDの病理発生に関連している。ROSはこれらの条件下で増加し、IsoLG生成の強力な刺激である。本発明者らは、PANラットの腸間膜リンパ液がIsoLG中で濃縮されることを見出した。本発明者らのデータはまた、インドキシル硫酸(ROSを刺激することが知られている腸に由来するトキシン)が、培養された回腸オルガノイドにおいてIsoLG付加物を顕著に増加させたことを明らかにする。オルガノイドは、回腸内の異なる細胞を包含するので、IsoLGの生成を担う特定の細胞型は不明である。データは、対照に対してPANラットの回腸壁及び腸間膜リンパ液におけるIsoLG含有量の増加を示す本発明者らのインビボ結果と一致している。実際、本発明者らは、IsoLG-apoAIが、リンパ細胞マーカー及びIsoLGについての二重染色によって回腸リンパ管に局在することを実証した。したがって、当該研究は、腸で産生されたapoAI粒子及び血液循環に由来するapoAI粒子の両方がIsoLGによって修飾され得るが、タンパク尿傷害が腸のIsoLG産生を増加させ、次いでこれが局所的なapoAIを修飾し得ることを示す。
【0082】
[00110]データは、腸リンパ管がリポタンパク質輸送のための導管であるだけでなく、それらの効果の標的を提示することを示している。以前の研究は、apoAI/HDLがリンパ管形成及びリンパ液の統合性を調節することを記載している。本発明者らは、リンパ管又はLECに対するIsoLG-apoAIの効果が正常なapoAIとは異なるかどうかを調べた。IsoLG-apoAIは、非修飾apoAIと比較して、培養されたLECにおいてNos3 mRNAを増加させた。当該結果は、PAN回腸から単離されたLECがNos3 mRNAを増加させたという本発明者らのインビボでの結果を補完する。IsoLG-apoAIはまた、単離された腸間膜リンパ管の機能性を変化させた(非修飾apoAIに対して、血管動作の鈍化及び収縮頻度の増加を含む)。個々のリンパ管弁間部における動態のエクスビボ評価は、神経支配、循環サイトカイン、又はリンパ流からの寄与を含まないが、このアプローチは、他の変数からの最小限の入力により、IsoLG-apoAIの直接的影響を明らかにする。まとめると、当該結果は、IsoLG-apoAIが血管拡張剤のLEC産生を刺激し、リンパ管をより弛緩させることができることを示している。それにもかかわらず、収縮頻度が同時に増加することにより、より多くのリンパ流が促進され、したがって、対照に対してPANラットにおいて記録された腸内で生成された分子及び細胞の送達がより促進され得る。
【0083】
[00111]LECに直接影響を及ぼすことに加えて、IsoLG-apoAIは、リンパ網をモジュレートする他の細胞型も変化させた。VEGF-Cレベルは、対照に対してPANラットの腸及び腸間膜リンパ液において増加し、リンパ管形成及びポドプラニン免疫染色は、PANラット及びNEP25マウスの両方の回腸において増加した。本発明者らは、本発明者らのタンパク尿傷害モデルにおいてVEGF-Cの供給源を具体的に試験しなかったが、マクロファージは、VEGF-Cの重要な供給源として長い間認識されてきた。マクロファージの枯渇又はVEGF-Cシグナル伝達の遮断は、リンパ管形成を減衰させることが示されている。本研究において、腸絨毛のマクロファージ浸潤は、PAN中のVEGF-Cと共局在していた。これらのデータは、タンパク尿傷害において、マクロファージが腸VEGF-Cの重要な供給源であるという仮説を支持する。本発明者らの結果は、IsoLG-apoAIがVEGFCのマクロファージ発現を増加させることができるという当初の観察結果を追加するものである。まとめると、これらのデータは、リンパ管のIsoLG-apoAIモジュレーションのための機序が、LEC遺伝子の直接的なモジュレーション、並びにVEGF-Cのマクロファージ産生を介するリンパ網の間接的な増加を含むことを示唆する。
【0084】
[00112]したがって、本発明者らは、腎疾患と腸応答との間の新規な関係を発見した(図7)。本発明の態様は、腎傷害が、腸起源のapoAI/HDLを修飾するIsoLG付加物の腸内産生を刺激することを示す。本発明の他の態様は、腸/腸間膜リンパ網が、リンパ管形成、リンパ管収縮、LEC活性化、及びリンパ流の増加を増大させることによって、IsoLG-HDLの効果の標的及び加害者の両方として働くことを示す。正味の効果は、不都合な腎臓-腸クロストークの新たな機序を構成する腸由来分子の送達がより大きいことである。
【実施例
【0085】
方法
動物
[00113]成体雄Sprague Dawleyラット(200~225g、Charles River)を、12時間の明/暗サイクル下で収容し、通常のラット固形飼料及び水を自由に摂取させた。ピューロマイシンアミノグリコシド(PAN)(125 mg/kg体重、i.p.)の単回注射によって腎傷害を誘導し、一方、生理食塩水を注射したラットを対照(Cont)とした。注射の8日後、ラットを屠殺し、血液、尿、及び組織を採取した。本発明者らはまた、ポドサイト上にヒトCD25を発現する成体雄(12週齢)Nphs1-hCD25トランスジェニック(NEP25、C57bl/6バックグラウンド)マウスが、タンパク尿を生じさせる組換えイムノトキシン、抗Tac(Fv)-PE38(LMB2、1ng/g BW、i.v.、Ira Pastan博士によって寛大な提供を受けた)の注射によって選択的に傷害され得ることを研究した。これらのマウス及び野生型対照マウスを、常用の齧歯類用固形飼料及び水を自由に摂取できる通常の条件下で収容した。LMB2の2週間後、マウスを屠殺し、血液、尿及び組織を採取した。全ての動物手順は、Vanderbilt UniversityのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されていた。
【0086】
リンパ液、血漿及び尿組成物の評価
[00114]腸間膜リンパ管のカニューレ挿入後に、意識のあるラットのサブセットにおいて腸間膜リンパ液を収集した。ラットを、温度及び湿度が制御されたインキュベーター内のBollmanケージに入れ、リンパ液を少なくとも3時間にわたって1時間ごとに収集した。
[00115]アルブミン(Exocell)、apoAI(Mybio供給源)、スフィンゴシン-1リン酸(S1P)(Mybio供給源)及びVEGF-Cレベル(Mybio供給源)をELISAによって測定した。アルブミン尿を、尿アルブミン対クレアチニン比(ACR)(Nephrat II、Exocell)及びQuantiChrom(商標)クレアチニンアッセイキット(Bioassay Systems)としてそれぞれ測定した。血漿及びリンパ液の総コレステロール及びトリグリセリドを酵素的に測定した(Cliniqa)。HDL及びLDL画分を、臭化カリウムで調整した後、密度勾配超遠心分離によって血漿及びリンパ液から単離した。リポタンパク質粒径をNMR法(Liposcience)によって評価した。比色アッセイを使用して、タンパク質を測定した(BCA、ThermoFisher)。血漿及びリンパ液中のリポタンパク質を、Akta Pure高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)システム(GE Healthcare)を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分離した。LC/MSによる総IsoLG-タンパク付加物を、リンパ液サンプルの完全なタンパク分解消化後にIsoLG-リジンとして測定した。
【0087】
[00116]インターロイキン-6(IL-6)、IL-10、IL-17及びIL-1の血漿中及びリンパ液中レベルをLuminex multiplexによって決定した。リンパ液中の免疫細胞をフローサイトメトリーによって定量した。試料をFcブロッキング抗体(BD Biosciences)と共にインキュベートし、次いで、BV421コンジュゲート抗CD3(BD Biosciences)、PE/Cy7コンジュゲート抗CD4(Biolegend)、Percpコンジュゲート抗CD8(Biolegend)、Alexa Flour488コンジュゲート抗CD25(Biolegend)又はPEコンジュゲート抗CCR6(R&D Systems)と共に室温で30分間インキュベートした。細胞を、FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences)を備えたFACSCanto IIサイトメーターで分析した。
【0088】
腸組織の免疫染色
[00117]回腸切片を4%パラホルムアルデヒド/PBS中で固定し、脱水し、パラフィン包埋し、免疫染色のために切断した。本発明者らは、リンパ液が腸間膜リンパ管に排出され、回腸がapoAI合成において肝要であるため、小腸に焦点を当てた。ポドプラニン染色のために、回腸切片をマウス抗ポドプラニン抗体(1:1000、Novus)と共に一晩インキュベートし、続いて、HRP抗マウス抗体(Vector Laboratories)と共にインキュベートし、そしてジアミノベンジジンによってシグナルを可視化した。マウス回腸切片を、ハムスター抗ポドプラニン抗体(1:2000、ThermoFisher)と共に一晩インキュベートし、続いて、ビオチン化抗ハムスター抗体(Vector Laboratories)及びABC試薬と共にインキュベートし、そしてジアミノベンジジンによってシグナルを可視化した。
【0089】
[00118]apoAI及びポドプラニンについての二重染色は、抗原賦活化のためにクエン酸緩衝剤を使用し、続いて一次抗体apoAI(1:200;Novus)を一晩使用した。ImmPRESS reagent(Vector Laboratories)及びAlexa Fluor 546 Tyamide SuperBoost(Invitrogen)を二次抗体として使用した。切片を、マウス抗ラットポドプラニンと共に一晩インキュベートし、続いて、抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(ImmPRESS)及びAlexa Fluor 488 Tyamide SuperBoostと共にインキュベートした。IsoLG及びapoAIについての二重染色は、抗原賦活化のためにクエン酸緩衝剤を使用し、続いて抗IsoLG(1:10;Annet Kirabo博士からの寛大な寄贈品)を一晩使用した。二次抗体は、色素原としてImmPACT(登録商標)Vector(登録商標)Red Alkaline Phosphatase Substrate kit(Vector Laboratories)を使用した。次いで、切片をウサギ抗ラットapoAIと共に一晩インキュベートし、続いて、抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(ImmPRESS)及びAlexa Fluor 488 Tyamide SuperBoostと共にインキュベートした。CD68及びVEGF-Cについての二重染色は、抗原賦活化のためにクエン酸緩衝剤を使用し、続いて、CD68を標的とするビオチン化一次抗体(1:10;BioRad)を一晩使用した。二次抗体は、ABC reagent及びAlexa Fluor 488 Tyamide SuperBoostであった。次いで、切片をマウス抗ラットVEGF-C(1:200;Abcam)と共に一晩インキュベートし、続いて、抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(ImmPRESS)及びAlexa Fluor 546 Tyamide SuperBoostと共にインキュベートした。
【0090】
エクスビボでのリンパ動態の測定
[00119]腸間膜リンパ管を収集し、灌流チャンバーに据え付けた。チャンバーを、デジタル画像捕捉システム(IonOptix)を備えた倒立顕微鏡上に置き、弁前管腔内径及び収縮頻度を記録した。血管を37℃に温め、クレブス緩衝剤のカラムを用いて0.5mmHgに加圧し、平衡化させた(20~60分)。次いで、生存血管を、3.5mmHgの一定圧力まで段階的様式で加圧し、次いで、1モル等量の合成IsoLG又はビヒクル(DMSO)を使用して、精製apoAI又は修飾apoAIに曝露した。新鮮なクレブス緩衝剤を循環させて、洗い流しを容易にした。次に、血管をIsoLG修飾apoAIに曝露した。各チャレンジの後、内腔径をプラトーにした(40~60分)。
【0091】
腸リンパ管内皮細胞の特性決定
[00120]PAN及び対照ラットからの回腸を細かく刻み、次いでコラゲナーゼD型(Roche Applied Science)、1mLのHBSS培地及び10ml/mLのDNaseと共に1時間インキュベートした。70μm、次いで40μmの篩を使用して組織を濾過した。細胞を再懸濁し、ポドプラニン選択試薬(Novus)と共にインキュベートした。リンパ管内皮細胞、すなわちポドプラニン陽性細胞を、EasyEights磁気細胞分離システム(Stemcell Technologies)を使用して単離した。
【0092】
[00121]RNase Mini kit(QIAGEN)によって回腸溶解物及び回腸ポドプラニン陽性細胞から全RNAを単離した。逆転写は、High-Capacity cDNA 逆転写 Kit(Applied Biosystems)を用いて行った。12.5μLのUniversal Master Mix II、1.25μLのフォワード及びリバースプライマー[ポドプラニン(PDPN)、リンパ管内皮受容体(LYVE1)、血管内皮増殖因子受容体3(VEGFR3、FLT4)、スフィンゴシンキナーゼ2(SPHK2)、スフィンゴ脂質輸送体2(SPNS2)、C-Cモチーフケモカインリガンド21(CCL21)及び一酸化窒素シンターゼ3(eNOS、Nos3)](ThermoFisher)並びに11.25μLのcDNA(10ng/μL)を使用して、25μLの総反応体積で定量的リアルタイムPCRを実施した。定量的リアルタイムPCRは、CFX96TM Real-Time PCR Detection System(RT-PCR、Bio-Rad)を以下のサイクリングパラメータで使用した:95℃で10分間のポリメラーゼ活性化、並びに95℃で15秒間及び60℃で60秒間の40サイクルの増幅。実験サイクル閾値(Ct)値を、同じプレート上で測定された18Sに対して正規化し、遺伝子発現の倍率差を2-ΔΔCt法によって決定した。
【0093】
オルガノイド及び細胞培養
[00122]無傷の灌流腸を使用して、回腸オルガノイドを生成した。培養された回腸オルガノイドを、インドキシル硫酸(1mmol/L、Sigma)を含む又は含まない培地中で3日間インキュベートした。IsoLGの定量のために総タンパク質を抽出した。
[00123]初代成体皮膚リンパ管内皮細胞(LEC)(HMVEC-DLyAd、Lonza)を条件付き成長培地(Lonza)で培養した。コンフルエンスが~70%である継代数5~6の細胞を、無血清培地中で一晩飢餓状態にし、次いで、非修飾apoAI又はIsoLG修飾apoAI(apoAI:10μg/ml、IsoLG:1μM/L)と共に18時間インキュベートした。以前に、本発明者らは、この濃度のIsoLGが、インビボで観察されるレベルのIsoLG-リジン付加物を生じ、そして未反応のIsoLGを産生しないことを示した。eNOS(Nos3)及びβ-アクチン(ACTB)mRNAの定量をRT-PCRによって実施し、スーパーオキシドの産生を高速液体クロマトグラフィーによって評価した。
【0094】
[00124]THP-1細胞をプレーティングし、10%FBS及び50ng/mlホルボール12-ミリステート13-アセテートを含有するRPMI1670によって3日間マクロファージに分化させた。細胞を、非修飾又はIsoLG修飾apoAI(apoAI:10μg/ml、IsoLG:1μM/L)で48時間インキュベートした。VEGFC mRNAをRT-PCRによって評価した。
【0095】
統計分析
[00125]データは、平均±SEMとして表す。対応のないt検定によって差を決定し、p<0.05を有意とみなした。
【0096】
[00126]以下に列挙されるものを含む、本明細書中で言及される全ての刊行物は、刊行物が関連して引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中で論じた刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のいかなる部分も、本発明が先行発明によってこのような刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、本明細書中に記載された公開日は、実際の公開日とは異なる可能性があり、独立して確認する必要がある。
【0097】
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【0098】
[00127]このように本発明を説明してきたが、本発明を多くの方法で変更できることは明らかであろう。当業者には明らかであろうそのような変更は、本開示の範囲内であるとみなされるべきである。
[00128]別段の指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、反応条件といった特性等を表す全ての数は、全ての場合において「約」との用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明によって決定されることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
[00129]本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるが、実験の項又は実施例の項に記載された数値は、可能な限り正確に報告している。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じるある一定の誤差を本質的に含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】