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特表2023-545335改質黒鉛の製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
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  • 特表-改質黒鉛の製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】改質黒鉛の製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/205 20170101AFI20231023BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231023BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20231023BHJP
【FI】
C01B32/205
H01M4/587
H01M4/133
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553132
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2021115840
(87)【国際公開番号】W WO2023028894
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋子竜
(72)【発明者】
【氏名】沈睿
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC02B
4G146AC07B
4G146AC11B
4G146AC22B
4G146BA22
4G146BA27
4G146BB03
4G146BB06
4G146BC04
4G146BC36B
4G146BC37B
4G146DA04
4G146DA07
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本出願は、改質黒鉛の製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。前記改質黒鉛の製造方法は、石炭系針状コークスを破砕して、材料Aを得る破砕ステップと、材料Aを整形し且つ微粉を除去して、材料Bを得る整形ステップと、材料Bを反応釜に入れて熱処理を行った後、室温まで冷却して、材料Cを得る熱処理ステップと、材料Cを黒鉛化炉に入れて黒鉛化を行った後、室温まで冷却し、得られた生成物は改質黒鉛である黒鉛化ステップを含むことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質黒鉛の製造方法であって、
石炭系針状コークスを破砕して、材料Aを得る破砕ステップと、
前記材料Aを整形し且つ微粉を除去して、材料Bを得る整形ステップと、
前記材料Bを反応釜に入れて熱処理を行った後、室温まで冷却して、材料Cを得る熱処理ステップと、
前記材料Cを黒鉛化炉に入れて黒鉛化を行った後、室温まで冷却し、得られた生成物は前記改質黒鉛である黒鉛化ステップと、を含むことを特徴とする改質黒鉛の製造方法。
【請求項2】
前記石炭系針状コークスにおいて、質量パーセントで、揮発分含有量は5~9%であり、任意選択的に、6~8%であり、硫黄含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、0.1%以下であり、灰分含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、0.1%以下であり、キノリン不溶分含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量が0.1%以下であり、
且つ、前記石炭系針状コークスの真密度は1.35~1.48g/cmであり、任意選択的に、1.39~1.45g/cmである、ことを特徴とする請求項1に記載の改質黒鉛の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理ステップにおいて、前記熱処理温度は400~800℃であり、任意選択的に、500~700℃であり、前記熱処理時間は2~8時間であり、任意選択的に、3~6時間である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の改質黒鉛の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理ステップにおいて、前記昇温速度は1~15℃/minであり、任意選択的に、5~12℃/minである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の改質黒鉛の製造方法。
【請求項5】
前記黒鉛化ステップにおいて、前記黒鉛化温度は2500~3200℃であり、前記黒鉛化時間は55~65時間である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の改質黒鉛の製造方法。
【請求項6】
前記整形ステップにおいて、前記材料Bは、Dv50=5~12μm、任意選択的に、8~11μmを満たし、
且つ、5μm≧Dn10≧1.5μm、任意選択的に、5μm≧Dn10≧2.0μmを満たす、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の改質黒鉛の製造方法。
【請求項7】
前記破砕ステップにおいて、前記材料Aは、Dv50=3~12μm、任意選択的に、Dv50=6~9μmを満たす、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の改質黒鉛の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の改質黒鉛の製造方法によって製造される、改質黒鉛。
【請求項9】
負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される、請求項8に記載の改質黒鉛を含む負極材料層とを含む、負極板。
【請求項10】
請求項9に記載の負極板を含む、ことを特徴とする二次電池。
【請求項11】
請求項10に記載の二次電池を含む、ことを特徴とする電池モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の電池モジュールを含む、ことを特徴とする電池パック。
【請求項13】
請求項10に記載の二次電池、請求項11に記載の電池モジュール又は請求項12に記載の電池パックのうちの少なくとも一つを含む、ことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池技術分野に関し、特に改質黒鉛、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池の適用範囲がますます広くなるにつれて、リチウムイオン二次電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動ツール、電気自転車、電気バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの数多くの分野に広く適用されている。リチウムイオン二次電池が飛躍的な発展を遂げたため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対してもより高い要求が出されている。黒鉛は、コストが低く、生産が容易であり、実際の容量が理論容量に近いため、業務用リチウムイオン二次電池の改質黒鉛の第1の候補となっている。
【0003】
負極材料としての黒鉛が、通常、天然黒鉛と人造黒鉛などを含むが、人造黒鉛表面の欠陥は、通常、活性が比較的高く、電解液と副反応しやすく、活性リチウムを消耗する一方、活性リチウムイオンの損失は、リチウムイオン二次電池のサイクル性能を低下させるとともに、リチウムイオン二次電池の耐用年数に損害をもたらす。そのため、人造黒鉛に対する従来の改質技術にはまだ改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みて行われるものであり、改質黒鉛を含む二次電池に比較的高いエネルギー密度、比較的良好なサイクル性能と安全性能を持たせることができる改質黒鉛の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本出願は、改質黒鉛の製造方法、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の第1の態様による改質黒鉛の製造方法は、以下のステップを含む。
【0007】
破砕ステップ、石炭系針状コークスを破砕して、材料Aを得る。
【0008】
整形ステップ、前記材料Aを整形し且つ微粉を除去して、材料Bを得る。
【0009】
熱処理ステップ、前記材料Bを反応釜に入れて熱処理を行った後、室温まで冷却して、材料Cを得る。
【0010】
黒鉛化ステップ、前記材料Cを高温黒鉛化炉に入れて高温黒鉛化を行った後、室温まで冷却し、得られた生成物は改質黒鉛である。
【0011】
そのため、本出願では、揮発分を含む石炭系針状コークスを前駆体として選択し、密閉熱処理を行うことによって、石炭系針状コークスに含まれる揮発分は、逃散し且つ石炭系針状コークス前駆体の表面に富化し、石炭系針状コークス前駆体の表面に均一に被覆され、即ち黒鉛化前の自己被覆をする。黒鉛化後、得られた改質黒鉛は、被覆層を有し、負極材料として使用される場合、二次電池の初回クーロン効率を向上させることができる。メカニズムがまだよく分かっていないが、それが有する被覆層は、改質黒鉛の表面粗さを低下させ、改質黒鉛の表面欠陥を修復し、その比表面積BETの数値を適切な範囲に収めたと推測される。
【0012】
そのうち、石炭系針状コークスは、石炭ピッチの熱分解で得られたものである。石炭ピッチは、大量の縮合環芳香族炭化水素を含む複雑な混合物であり、適切な分子間作用力を有し、石油ピッチに比べて、芳香族性が高く、炭素収率が大きいため、石炭タールピッチは、高品質の針状コークスを合成する理想的な原料である。石炭系針状コークスの製造方法として、通常、石炭ピッチを、前処理した後、遅延コークス化し且つ高温で焼成し、最後に石炭系針状コークスを得る。石炭系針状コークスとして、新日化コークス、三菱コークス、鞍山コークスなどが挙げられる。
【0013】
任意の実施形態において、石炭系針状コークスは以下のことを満たす。質量パーセントで、揮発分含有量は5~9%であり、任意選択的に、含有量は6~8%であり、硫黄含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量は0.1%以下であり、灰分含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量は0.1%以下である。キノリン不溶分含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量は0.1%以下である。真密度は1.35~1.48g/cmであり、任意選択的に、1.39~1.45g/cmである。これによって、本出願は、特定の成分を有する石炭系針状コークスを原料として選択することによって、それ自体に含まれる揮発分を被覆剤として使用することができ、被覆剤を追加的に添加することなく、表面に被覆層を形成することができ、負極材料として使用される場合、負極材料の界面性能を改善することができる。そのうち、前記揮発分は、石炭系針状コークスにおける有機物が熱を受けて分解した、分子量が比較的小さい一部の液体(この場合には蒸気状態)とガス状生成物を指す。前記灰分は、石炭系針状コークスが空気又は酸素雰囲気で焼成した後、最後に残された無機物(例えば、酸化鉄、酸化ケイ素など)を指す。
【0014】
任意の実施形態において、熱処理ステップでは、熱処理温度は400~800℃であり、任意選択的に、500~700℃であり、恒温時間は2~8時間であり、任意選択的に、3~6時間である。これによって、本出願は、上記範囲内の熱処理温度と恒温時間を選択することによって、石炭系針状コークスにおける揮発分を逃散させ且つ十分に溶融させ、粒子表面に均一な被覆層を形成することができる。
【0015】
任意の実施形態において、熱処理ステップでは、昇温速度は1~15℃/minであり、任意選択的に、5~12℃/minである。これによって、本出願は、上記範囲内の昇温速度を選択することによって、石炭系針状コークスを一定速度で昇温させることができ、揮発分が徐々に溢れて、粒子表面に均一に付着し、被覆層を形成することができる。
【0016】
任意の実施形態において、黒鉛化ステップでは、黒鉛化温度は2500~3200℃であり、黒鉛化保温時間は55~65時間である。これによって、本出願は、上記範囲内の黒鉛化温度と黒鉛化保温時間を選択することによって、良好な黒鉛化度を有し、負極材料として使用される場合、製造した二次電池は優れた初回クーロン効率及びサイクル性能を有する。
【0017】
任意の実施形態において、整形ステップでは、材料Bは、Dv50=5~12μm、任意選択的に、8~11μmを満たし、且つ、5μm≧Dn10≧1.5μm、任意選択的に、5μm≧Dn10≧2.0μmを満たす必要がある。これによって、本出願は、上記粒径を有する材料Bを選択し、後続のプロセスの処理を容易にすることによって、電気化学的性能に優れた改質黒鉛を得る。
【0018】
任意の実施形態において、破砕ステップでは、材料AはDv50=3~12μmであり、任意選択的に、Dv50=6~9μmである。これによって、本出願は、原料を上記粒径まで破砕することによって、後続の加工の利便性を確保し、製造した負極材料が良好な電気化学的性能を有する。
【0019】
本出願の第2の態様による改質黒鉛は、本出願の第1の態様の方法により製造される。
【0020】
本出願の第3の態様による負極板は、本出願の第2の態様の改質黒鉛を含む。
【0021】
本出願の第4の態様による二次電池は、本出願の第3の態様の負極板を含む。
【0022】
本出願の第5の態様による電池モジュールは、本出願の第4の態様の二次電池を含む。
【0023】
本出願の第6の態様による電池パックは、本出願の第5の態様の電池モジュールを含む。
【0024】
本出願の第7の態様による電力消費装置は、本出願の第4の態様の二次電池、本出願の第5の態様の電池モジュール又は本出願の第6の態様の電池パックのうちから選択された少なくとも一つを含む。
【発明の効果】
【0025】
本出願は、改質黒鉛の製造方法、負極板、二次電池、電池モジュール、電池パック、電力消費装置を提供した。石炭系針状コークスを原料として選択し、この原料が一定含有量の揮発分を含み、黒鉛化前、石炭系針状コークスに対して密閉熱処理を行って、それに含まれる揮発分を逃散させ且つ前駆体表面に富化させることによって、前駆体表面を均一に被覆し、即ち黒鉛化前の自己被覆をする。黒鉛化後、得られた改質黒鉛は被覆層を有し、改質黒鉛の表面粗さを低下させ、改質黒鉛の表面欠陥を修復し、改質黒鉛による活性リチウムイオンに対する消耗及び電解液との間の副反応を減少させることによって、この改質黒鉛を含む二次電池の初回クーロン効率を改善し、さらにより良いサイクル性能と耐用年数を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本出願の改質黒鉛の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本出願の実施例1の初回充放電図である。
図3】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図4図3に示される本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図5】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図6】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図7図6に示される本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図8】本出願の一実施形態の二次電池を電源として使用する電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下は、本出願の改質黒鉛及びその制造方法、負極板、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施形態を、図面を適宜参照して詳細に説明する。しかし、不必要な詳細説明を省略する場合がある。例えば、周知されている事項に対する詳細な説明、実際に同じ構造に対する説明の繰り返しを省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを回避し、当業者の理解を容易にするためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者が本出願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0028】
本出願に開示されている「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、所定の範囲は、特定の範囲の境界を限定する下限と上限を選択することによって限定される。このように限定された範囲は、端値を含んでもよく、含まなくてもよく、そして任意に組み合わせることができ、即ち任意の下限は任意の上限と組み合わせて一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲が列挙されている場合、60-110と80-120の範囲も予想されていると理解することができる。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4と5が列挙されている場合、1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲は全て予想されている。本出願において、特に説明されていない限り、数値範囲「a-b」は、a~bの間の任意の実数組み合わせの短縮表現を表し、そのうち、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本明細書には「0-5」の間の全ての実数が列挙されていることを表し、「0-5」はこれらの数値組み合わせの短縮表現に過ぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、この参数が例えば整数の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示することに相当する。
【0029】
特に説明しない場合、本出願の全ての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新な技術案を形成することができる。
【0030】
特に説明しない場合、本出願の全ての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0031】
特に説明しない場合、本出願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、表示前記方法が、順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0032】
特に説明しない場合、本出願で言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0033】
特に説明しない場合、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、用語「A又はB」は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。さらに具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件、Aが偽であり(又は存在せず)Bが真である(又は存在する)条件、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)条件のうちのいずれも条件「A又はB」を満たす。
【0034】
改質黒鉛の製造
本出願の一実施形態において、本出願は、改質黒鉛の製造方法を提案した。この改質黒鉛の製造方法は、石炭系針状コークスを破砕して、材料Aを得る破砕ステップと、前記材料Aを整形し且つ微粉を除去して、材料Bを得る整形ステップと、前記材料Bを反応釜に入れて熱処理を行った後、室温まで冷却して、材料Cを得る熱処理ステップと、前記材料Cを黒鉛化炉に入れて黒鉛化を行った後、室温まで冷却し、得られた生成物は前記負極材料である黒鉛化ステップと、を含む。
【0035】
そのうち、石炭系針状コークスは、石炭ピッチの熱分解で得られたものである。石炭ピッチは、大量の縮合環芳香族炭化水素を含む複雑な混合物であり、適切な分子間作用力を有し、石油ピッチに比べて、芳香族性が高く、炭素収率が大きいため、石炭タールピッチは、高品質の針状コークスを合成する理想的な原料である。石炭系針状コークスの製造方法として、通常、石炭ピッチを、前処理した後、遅延コークス化し且つ高温で焼成し、最後に石炭系針状コークスを得る。石炭系針状コークスとして、新日化コークス、三菱コークス、鞍山コークスなどが挙げられる。
【0036】
メカニズムがまだよく分かっていないが、本出願人により、一定含有量の揮発分を含む石炭系針状コークスを前駆体として選択し、密閉熱処理によって、揮発分は逃散し且つ前駆体の表面に富化し、前駆体の表面が均一に被覆され、即ち黒鉛化前の自己被覆をすることが見出された。黒鉛化後、得られた改質黒鉛は被覆層を有する。図1は製造された改質黒鉛の走査型電子顕微鏡写真であり、図中の改質黒鉛は、滑らかで平坦な粒子表面を有するものであり、被覆層が改質黒鉛の表面粗さを効果的に低下させ、改質黒鉛の表面欠陥を修復し、改質黒鉛表面と電解液との間の副反応を減少させ、その初回クーロン効率を向上させるという目的を達成したことが証明された。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記石炭系針状コークスは以下のことを満たす。質量パーセントで、揮発分含有量は5~9%であり、任意選択的に、含有量は6~8%であり、硫黄含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量は0.1%以下であり、灰分含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量は0.1%以下であり、キノリン不溶分含有量は0.2%以下であり、任意選択的に、含有量は0.1%以下であり、真密度は1.35~1.48g/cmであり、任意選択的に、1.39~1.45g/cmである。石炭系針状コークスが前駆体とする場合、それ自体に含まれる揮発成分が被覆剤として使用することができ、被覆剤を追加的に添加することなく、その表面に被覆層を形成することができ、それによって、粒子表面の欠陥を修復し、粒子表面の粗さを低下させた。被覆層により修飾された改質黒鉛は、活性リチウムイオンに対する消耗を減少させたため、初回クーロン効率を向上させる。それとともに、前駆体の真密度は、製造された改質黒鉛のタップ密度に一定の影響を与える。そのため、真密度が上記範囲内にある石炭系針状コークスを前駆体として選択し、製造された改質黒鉛も比較的良いタップ密度を有し、さらにこの改質黒鉛を使用する二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記熱処理ステップにおいて、前記熱処理温度は400~800℃であり、任意選択的に、500~700℃であり、前記恒温時間は2~8時間であり、任意選択的に、3~6時間である。熱処理温度と恒温時間は、改質黒鉛の被覆層の形成に対して極めて重要である。熱処理温度が上記範囲内にあることによって、以下の状況を回避することができる。熱処理温度が低すぎ、恒温時間が短すぎる場合、石炭系針状コークスにおける揮発分が十分に溶融し、溢れ、粒子表面に被覆層を形成することができいため、粒子表面欠陥を修飾するという作用を失う可能性があり、熱処理温度が高すぎ、恒温時間が長すぎる場合、生産過程でのエネルギー消費が高すぎ、生産コストを増加させ、不必要な浪費をもたらす可能性がある。つまり、上記範囲内にある熱処理温度と恒温時間は、石炭系針状コークスにおける揮発分を溢れさせ且つ十分に溶融させ、粒子表面に均一な被覆層を形成し、活性リチウムイオンに対する消耗を減少させ、さらに初回クーロン効率を向上させることができるとともに、高いエネルギー消費による生産コストを追加的に増加しない。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記熱処理ステップにおいて、前記昇温速度は1~15℃/minであり、任意選択的に、5~12℃/minである。前記熱処理が上記範囲内にある場合、以下の状況を回避することができる。昇温速度が速すぎ、熱処理温度に達する時、石炭系針状コークスの揮発分が短時間内に迅速に溢れる可能性があり、揮発分が粒子表面を均一に包むことができないとともに、粒子凝集を引き起こす可能性がある。つまり、上記範囲内にある昇温速度により、石炭系針状コークスは、熱を均一に受け、一定の速度で昇温することができ、揮発分は、粒子表面を均一で徐々に付着し、被覆層を形成することができ、それに応じて製造された改質黒鉛も高い初回クーロン効率を有し、さらに良好なサイクル性能を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記黒鉛化ステップにおいて、前記黒鉛化温度は2500~3200℃であり、前記黒鉛化保温時間は55~65時間である。上記範囲内にある黒鉛化温度と黒鉛化保温時間で、この方法で製造された改質黒鉛は、良好な黒鉛化度を有し、良好な層間距離はリチウムイオンの吸蔵、放出を容易にし、さらに改質黒鉛の初回クーロン効率及びサイクル性能を向上させた。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記熱処理ステップにおいて、前記材料Bは、Dv50=5~12μm、任意選択的に、8~11μmを満たし、且つ、5μm≧Dn10≧1.5μm、任意選択的に、5μm≧Dn10≧2.0μmを満たす必要がある。上記粒径を有する材料Bを選択することによって、後続のプロセスの処理を容易にし、得られた改質黒鉛は、タップ密度が高く、電気化学的性能に優れている。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記破砕ステップでは、前記材料Aは、Dv50=3~12μmであり、任意選択的に、Dv50=6~9μmである。原料を上記の粒径まで破砕し、原料に対して熱処理と黒鉛化を行う時、原料が熱を均一に十分に受け、粒度が均一に分布するよう確保し、製造された改質黒鉛は、粒度が均一に分布し、被覆層が完全であり、黒鉛化度が高く、さらに改質黒鉛は、負極材料として使用される場合、初回クーロン効率が高く、サイクル性能が良い。
【0043】
また、前記石炭系針状コークスの揮発分含有量は、当分野で既知の方法でテストすることができる。例えば、YB/T5189-2007を参照して測定する。
【0044】
前記石炭系針状コークスの硫黄含有量は、当分野で既知の方法でテストすることができ、例えば、GB/T 2286-2008を参照して測定する。
【0045】
前記石炭系針状コークスの灰分含有量は、当分野で既知の方法でテストすることができ、例えば、GB/T 1429-2009を参照して測定する。
【0046】
前記キノリン不溶分は、石炭系針状コークスにおけるキノリンに不溶な成分を指し、前記石炭系針状コークスのキノリン不溶分含有量は、当分野で既知の方法でテストすることができ、例えば、GB/T2293-97を参照して測定する。
【0047】
前記平均体積分布粒径Dv50は、前記改質黒鉛の累積体積分布パーセントが50%に達した時に対応する粒径を指す。本発明において、改質黒鉛の体積平均粒径Dv50は、レーザ回折粒度分析法を採用して測定することができる。例えば、標準GB/T 19077-2016を参照し、レーザ粒度分析器(例えば、Malvern Master Size 3000)で測定する。
【0048】
前記改質黒鉛の比表面積(BET)テストは、比表面積分析器を使用して、『ガス吸着BET法による固体物質比表面積の測定』GB/T 19587-2017/ISO9277:2010に基づいて、サンプルの比表面積をテストすることができる。
【0049】
前記改質黒鉛の黒鉛化度テストは、X線回折装置を使用して、『人造黒鉛の格子パラメータ測定方法』JB/T 4220-2011に基づいて、サンプルの黒鉛化度をテストすることができ、黒鉛化度はg=(3.440-d002)/(3.440-3.354)である。
【0050】
前記改質黒鉛の真密度は、タップ密度テスターを使用して、『金属粉末タップ密度の測定』GB/T 5162-2006に基づいて、サンプルのタップ密度をテストすることができる。
【0051】
また、以下は、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置について、図面を適宜参照して説明する。
【0052】
本出願の一実施形態において、二次電池を提供する。
【0053】
通常、二次電池は、正極板と、負極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極板と負極板との間で往復して吸蔵と放出する。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導するという作用を果たす。セパレータは、正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する作用を奏するとともに、イオンを通過させることができる。
【0054】
[正極板]
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、正極材料を含む。
【0055】
例示的に、正極集電体は、それ自体の厚さ方向で対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設置されている。
【0056】
本出願の二次電池において、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成することができる。
【0057】
本出願の二次電池において、正極材料は、当分野でよく知られている電池用正極材料を採用してもよい。例示的に、正極材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。しかし、本出願では、これらの材料に限定されず、さらに電池の正極材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極材料は、一つのみを単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。そのうち、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811と略称されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えば、LiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。
【0058】
本出願の二次電池において、正極膜層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。例示的に、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリル酸エステル樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0059】
本出願の二次電池において、正極膜層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。例示的に、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0060】
本出願の二次電池において、以下の方式で正極板を製造することができる。正極板を製造するための上記成分、例えば、正極材料、導電剤、接着剤と任意の他の成分を、溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させて、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て正極板が得られる。
【0061】
[負極板]
負極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置される負極膜層とを含み、前記負極膜層は、本出願の第2の態様の改質黒鉛を含む。
【0062】
例示的に、負極集電体は、それ自体の厚さ方向で対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に設置されている。
【0063】
本出願の二次電池において、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一つの表面に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)に形成することによって形成することができる。
【0064】
本出願の二次電池において、負極膜層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0065】
本出願の二次電池において、負極膜層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0066】
本出願の二次電池において、負極膜層は、任意選択的に、他の助剤、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などをさらに含んでもよい。
【0067】
本出願の二次電池において、以下の方式で負極板を製造することができ、負極板を製造するための上記成分、例えば、負極材料、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えば、脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥、冷間加圧などの工程を経て負極板を得てもよい。
【0068】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導するという作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全て固体であってもよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホンイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトンン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記電解液は、任意選択的に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤と、正極成膜添加剤とを含んでもよく、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでもよい。
【0073】
[セパレータ]
電解液を採用する二次電池、及び固体電解質を採用するいくつかの二次電池において、セパレータをさらに含む。本出願では、セパレータの種類に対して特に制限することはなく、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよく、特に制限はない。
【0075】
いくつかの実施形態において、正極板、負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネントを製造することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含んでもよい。この外装は、上記電極コンポーネント及び電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質ケース、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどであってもよい。二次電池の外装は軟質バッグ、例えば、袋式軟質バッグであってもよい。軟質バッグの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0078】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図3は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0079】
いくつかの実施形態において、図4を参照すると、外装は、ケース51と蓋板53とを含んでもよい。そのうち、ケース51は、底板と、底板上に接続される側板とを含んでもよく、底板と側板は、囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容キャビティを閉鎖するように、前記開口に蓋設することができる。正極板、負極板とセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極コンポーネント52を形成することができる。電極コンポーネント52は、前記収容キャビティ内にパッケージされる。電解液は、電極コンポーネント52に浸潤されている。二次電池5に含まれる電極コンポーネント52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者により電池モジュールの用途と容量に基づいて選択されてもよい。
【0081】
図5は一例としての電池モジュール4である。図5を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列して設置されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、締結具によってこの複数の二次電池5を固定してもよい。
【0082】
任意選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者により電池パックの用途と容量に基づいて選択してもよい。
【0084】
図6図7は、一例としての電池パック1である。図6図7を参照すると、電池パック1は、電池箱及び電池箱内に設置される複数の電池モジュール4を含んでもよい。電池箱は、上部筺体2と下部筺体3とを含み、上部筺体2は下部筺体3を遮蔽し、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池箱内に配置されてもよい。
【0085】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。前記電力消費装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限られない。
【0086】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0087】
図8は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置が二次電池に対する高パワーと高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用してもよい。
【0088】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、通常、軽量化や薄型化を要求し、二次電池を電源として採用することができる。
【0089】
実施例
以下は、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なもので、本出願を解釈することのみに用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0090】
実施例1
LHJ型機械粉砕機(メーカー:▲維▼坊正遠粉体工程設備有限会社)で石炭系針状コークス原料を破砕する。そのうち、前記石炭系針状コークスにおいて、硫黄含有量は0.08%であり、灰分含有量は0.05%であり、揮発分含有量は5.1%であり、真密度は1.42g/cm3である。前記石炭系針状コークスをDv50=6~9μmまで破砕した後、分級処理を行って、得られた粒子生成物の粒径分布を後で容易に調整することができる。破砕された石炭系針状コークスをLHV型整形機(メーカー:▲維▼坊正遠粉体工程設備有限会社)で整形し、主機周波数は8Hzであり、且つ微粉を除去し、Dv50=9.8μmまで処理する。整形された材料を、WHR型横型加熱反応釜(メーカー:無錫慶▲金▼粉体設備有限会社)に入れて熱処理を行い、10℃/minで600℃まで加熱し4時間の恒温を保つ。熱処理で得られた生成物を黒鉛化炉に入れ、3000℃まで昇温し60時間保温して高温黒鉛化を行い、人造黒鉛を得る。これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.0μm、Dv10=5.4μm、BET=1.34m/gであり、黒鉛化度=95.3%、タップ密度が1.21g/cmである。
【0091】
実施例2
熱処理温度を500℃に調整し、整形処理後の粒子Dv50=11.4μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=10.5μm、Dv10=5.3μm、BET=1.35m/g、黒鉛化度=95.1%、タップ密度が1.18g/cmである。
【0092】
実施例3
熱処理温度を400℃に調整し、整形処理後の粒子Dv50=10.3μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.7μm、Dv10=5.8μm、BET=1.37m/g、黒鉛化度=95.0%、タップ密度が1.17g/cmである。
【0093】
実施例4
熱処理温度を800℃に調整し、整形処理後の粒子Dv50=10.0μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.5μm、Dv10=6.1μm、BET=1.38m/g、黒鉛化度=95.2%、タップ密度が1.20g/cmである。
【0094】
実施例5
熱処理時間を6時間に調整し、整形処理後粒子Dv50=10.8μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=10.2μm、Dv10=5.4μm、BET=1.33m/g、黒鉛化度=95.3%、タップ密度が1.18g/cmである。
【0095】
実施例6
熱処理時間を2時間に調整し、整形処理後の粒子Dv50=9.4μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=8.8μm、Dv10=5.1μm、BET=1.35m/g、黒鉛化度=95.2%、タップ密度が1.19g/cmである。
【0096】
実施例7
熱処理時間を8時間に調整し、整形処理後の粒子Dv50=9.7μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.1μm、Dv10=5.5μm、BET=1.36m/g、黒鉛化度=95.3%、タップ密度が1.17g/cmである。
【0097】
実施例8
石炭系針状コークスの揮発分含有量を6.4%、硫黄含有量を0.06%、灰分含有量を0.03%、キノリン不溶分含有量を0.07%、真密度を1.43g/cmに調整し、整形処理後の粒子Dv50=10.1μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.5μm、Dv10=5.1μm、BET=1.31m/g、黒鉛化度=95.1%、タップ密度が1.23g/cmである。
【0098】
実施例9
揮発分含有量を6.8%、硫黄含有量を0.07%、灰分含有量を0.04%、キノリン不溶分含有量を0.03%、真密度を1.36g/cmに調整し、整形処理後の粒子Dv50=10.5μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=10.1μm、Dv10=5.3μm、BET=1.33m/g、黒鉛化度=95.0%、タップ密度が1.21g/cmである。
【0099】
実施例10
揮発分含有量を7.5%、硫黄含有量を0.06%、灰分含有量を0.07%、キノリン不溶分含有量を0.04%、真密度を1.48g/cmに調整し、整形処理後の粒子Dv50=9.7μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.5μm、Dv10=5.1μm、BET=1.31m/g、黒鉛化度=95.1%、タップ密度が1.25g/cmである。
【0100】
比較例1
LHJ型機械粉砕機(メーカー:▲維▼坊正遠粉体工程設備有限会社)で石炭系針状コークス原料を破砕する。そのうち、石炭系針状コークスにおいて、硫黄含有量は0.08%であり、灰分含有量は0.05%であり、揮発分含有量は1.2%であり、キノリン不溶分含有量は0.04%であり、真密度は1.4g/cmである。石炭系針状コークスをDv50=6~9μmまで破砕した後、分級処理を行って、得られた粒子生成物の粒径分布を後から容易に調整することができる。破砕された石炭系針状コークスをLHV型整形機(メーカー:▲維▼坊正遠粉体工程設備有限会社)で整形し、主機周波数は8Hzであり、且つ微粉を除去し、Dv50=10.7μmまで処理する。整形された材料を、WHR型横型加熱反応釜(メーカー:無錫慶▲金▼粉体設備有限会社)に入れて熱処理を行い、10℃/minで600℃まで加熱し4時間の恒温を保つ。熱処理で得られた生成物を黒鉛化炉に入れ、3000℃まで昇温し60時間保温して高温黒鉛化を行い、人造黒鉛を得る。これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.2μm、Dv10=5.6μm、BET=1.57m/g、黒鉛化度=95.2%、タップ密度が1.13g/cmである。
【0101】
比較例2
原料を普通の石油コークスに変換し、揮発分含有量を10%に調整し、硫黄含有量が0.21%であり、灰分含有量が0.07%であり、キノリン不溶分がなく、真密度が1.45g/cm3であり、整形処理後の粒子Dv50=10.2μmであること以外、他の条件は、比較例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=16.5μm、Dv10=6.8μm、BET=1.52m/g、黒鉛化度=93.1%、タップ密度が1.09g/cmである。
【0102】
比較例3
石炭系針状コークスを熱処理するステップを取り消し、整形処理後の粒子Dv50=9.7μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.0μm、Dv10=5.4μm、BET=1.61m/g、黒鉛化度=95.0%、タップ密度が1.17g/cmである。
【0103】
比較例4
原料を普通の石油コークスに変換し、揮発分含有量を0.9%に調整し、硫黄含有量が0.30%であり、灰分含有量が0.15%であり、真密度が1.44g/cmであり、熱処理のステップを取り消し、整形処理後の粒子Dv50=10.7μmであること以外、他の条件は比較例2と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=10.3μm、Dv10=6.0μm、BET=1.49m/g、黒鉛化度=94.0%、タップ密度が1.26g/cmである。
【0104】
比較例5
熱処理温度を200℃に調整し、熱処理時間が1時間であり、整形処理後の粒子Dv50=9.5μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=8.9μm、Dv10=5.2μm、BET=1.53m/g、黒鉛化度=95.2%、タップ密度が1.03g/cmである。
【0105】
比較例6
熱処理時間を1時間に調整し、整形処理後の粒子Dv50=9.5μmであること以外、他の条件は実施例1と同じであり、これにより製造された改質黒鉛は、Dv50=9.0μm、Dv10=5.1μm、BET=1.51m/g、黒鉛化度=95.0%、タップ密度が1.24g/cmである。
【0106】
上記実施例1~10、比較例1~6の改質黒鉛に関する製造パラメータは下記表1に示されるとおりである。
【0107】
【表1】
【0108】
上記実施例1~10と比較例1~6で得られた改質黒鉛に対して、それぞれ平均体積粒径分布テスト、BETテスト、黒鉛化度テスト、タップ密度テストを行う。テスト結果は表2に示されるとおりである。
【0109】
【表2】
【0110】
また、上記実施例1~10と比較例1~6で得られた改質黒鉛をそれぞれボタン型電池と二次電池に以下に示されるように製造し、電気化学的性能テストを行う。テスト結果は表3に示されるとおりである。
【0111】
(1)ボタン型電池の製造
上記各実施例と比較例における改質黒鉛、導電剤Super P、接着剤(PVDF)を91.6:1.8:6.6の質量比で溶媒NMP(N-メチルピロリドン)と均一に混合し、スラリーを製造し、製造したスラリーを銅箔集電体に塗布し、オーブン内で乾燥した後、冷間加圧して使用に供し、圧密範囲は1.4~1.6g/cmであり、リチウム金属板を対電極とし、ポリエチレン(PE)フィルムをセパレータとして採用し、炭酸エチレン(EC)、炭酸エチレン(EMC)、炭酸エチレン(DEC)を1:1:1の体積比で混合し、そしてLiPFを上記溶液に均一に溶解して電解液を得て、そのうちLiPFの濃度は1mol/Lであり、アルゴンで保護されたグローブボックス内において、上記各部分をCR2430型ボタン型電池に組み立てることができる。
【0112】
(2)ボタン型電池の初期グラム容量、初回クーロン効率テスト
得られたボタン型電池を12時間静置した後、LAND CT2001Aを使用して0.05Cの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、50μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、10分間静置し、10μAの電流で0.005Vまで定電流放電し、三回の放電容量の合計は放電容量cであり、そして0.1Cの電流で2.000Vまで定電流充電し、充電容量cを記録する。製造された負極材料のグラム容量=充電容量c/負極材料質量mであり、初回クーロン効率=(充電容量c/放電容量c)*100%である。
【0113】
(3)二次電池の製造
上記各実施例と比較例における改質黒鉛を負極活物質として、導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)及び増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を90:5:2:2:1の重量比で、脱イオン水溶媒において十分に攪拌して均一に混合した後、銅箔に塗布し、乾燥し、冷間加圧して、負極板を得る。
【0114】
正極物質を導電剤であるアセチレンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を94:3:3の重量比で、N-メチルピロリドン溶媒において十分に攪拌して均一に混合した後、銅箔に塗布し、乾燥し、冷間加圧して、正極板を得る。
【0115】
ポリエチレン(PE)製の多孔質重合フィルムをセパレータとする。
【0116】
正極板、セパレータ及び負極板を順に重ね合わせることにより、セパレータは、正負極の間で隔離作用を果たし、且つ巻回してベアセルを得る。ベアセルを外装に入れ、上記(1)ボタン型電池製造に使用される電解液を注入し且つパッケージして、二次電池を得る。
【0117】
(4)二次電池の45℃でのサイクル性能テスト
上記製造された各二次電池を、まず25℃で1/3Cを3.65Vまで充電し(Cは電池の公称容量である)、3.65Vの定電圧で0.05Cまで充電し、そして1/3Cを2.5Vまで放電し、且つ放電容量Cを記録する。電池のサイクル性能を45℃の環境でテストし、2.5~3.65Vの間において1C/1Cのレートで電池に対して充放電サイクルを行い、電池の100サイクル目の放電容量はC100であり、100サイクル目のサイクル容量維持率はC100/Cである。
【0118】
【表3】
【0119】
上記結果から分かったように、実施例1~10において、被覆剤を追加的に添加していない場合、石炭系針状コークス自体に含まれる揮発性成分を被覆剤として利用し、製造された改質黒鉛が被覆層を有するため、粒子表面粗さを改善し、電解液における活性リチウムに対する消耗を減少させるなどのいずれの面でも良好な効果を得て、そのため、製造された改質黒鉛の電気化学的性能も向上した。図2に示されるように、図2は本出願の実施例1の改質黒鉛の初回充放電図である。実施例1における改質黒鉛は、初回放電グラム容量が376.9mAh/gであり、初回充電グラム容量が358.1mAh/gであり、初回クーロン効率が95.0%であるという優れた電気化学的性能を示している。全体的に、実施例1~10における改質黒鉛の初回クーロン効率は、いずれも95.0%以上であり、45℃での100サイクル後の容量維持率は、いずれも97.0%より大きい。
【0120】
これに対し、比較例1において、実施例1と同じ熱処理プロセス条件で、石炭系針状コークスの揮発分含有量が比較的低いため、揮発分が粒子表面を十分に均一に包むことができず、被覆層が黒鉛の界面性能を十分に改善することができないため、製造された改質黒鉛の初回クーロン効率は比較的低い。比較例2と比較例4は、実施例1~10に比べて、いずれも普通の石油コークスを原料として使用した。比較例2において、普通の石油コークスの熱処理過程で接着効果が発生し、粒子凝集を引き起こし、製造された改質黒鉛の初回クーロン効率を効果的に向上させることができない。比較例4において、普通の石油コークスの揮発分含有量が比較的低く、且つそれに対する熱処理プロセスが取り消され、製造された改質黒鉛に被覆層がなく、粒子表面の欠陥が依然として存在するため、それによる活性リチウムに対する消耗の減少及びその初回クーロン効率の向上に対する効果は良くない。
【0121】
比較例3、比較例5及び比較例6と実施例1との違いは、主に熱処理温度と熱処理時間である。比較例3において、石炭系針状コークスに対する熱処理が取り消され、揮発分が粒子表面に均一に被覆して被覆層を形成することができず、製造された改質黒鉛の界面性能を改善できないため、そのサイクル性能と初回クーロン効率は、いずれも実施例1~10における改質黒鉛の性能ほど良くない。比較例5において、熱処理温度が比較的低く、揮発分は粒子表面に十分に富化することができず、熱処理時間が比較的短く、揮発成分は、完全なコアシェル構造を形成して粒子表面を改善する效果を果たすことができない。そのため、黒鉛の界面性能と電気化学的性能の向上に対する效果はいずれも良くない。比較例6において、石炭系針状コークスに対する熱処理時間が比較的短く、粒子表面に被覆層を形成することで、改質黒鉛と電解液との間で発生する副反応を減少させることができない。そのため、製造された改質黒鉛の電気化学的性能と界面性能に対する改善効果には限界がある。
【0122】
なお、表2において、実施例1~10と比較例1~6から、実施例1~10における改質黒鉛のBETは、いずれも比較例1~6における改質黒鉛のBETより小さいことが分かった。改質黒鉛を二次電池の負極材料とする場合、そのBETの初回クーロン効率に関係し、例えば、BETが大きいほど、負極材料が電解液と副反応しやすくなり、活性リチウムを消耗することによって負極材料のサイクル性能に影響を与える。そのため、実施例1~10における改質黒鉛は、比較例1~6における改質黒鉛に比べてBETが比較的小さく、実施例1~10における改質黒鉛が負極材料としてより良い初回クーロン効率を有することを意味する。表3におけるデータもこの点を十分に証明した。それとともに、実施例1~10における改質黒鉛は、比較例1~6における改質黒鉛に比べて、タップ密度がより大きい。高タップ密度を有する負極材料も二次電池全体のエネルギー密度を確保した。
【0123】
説明すべきことは、本出願は上記実施形態に限定されない。上記実施形態は例示に過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0124】
1電池パック、2上部筺体、3下部筺体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極コンポーネント、53トップカバーコンポーネント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】