(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】寒冷大気圧プラズマを用いた呼吸器感染および肺がんの処置のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20231023BHJP
A61M 16/12 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61M16/10 Z
A61M16/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562068
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 US2020067503
(87)【国際公開番号】W WO2021206771
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522396089
【氏名又は名称】ジェローム カナディ リサーチ インスティチュート フォー アドバンスト バイオロジカル アンド テクノロジカル サイエンシズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】カナディ, ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】チュワン, タイセン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シャオチィエン
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフスキー, エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】マーティー, サラヴァナ
(72)【発明者】
【氏名】スマナセナ, ブッディカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, フェン
(72)【発明者】
【氏名】カナディ, チェフレン
(72)【発明者】
【氏名】マックイーン, ジェローム
(57)【要約】
呼吸器感染症または肺がんの寒冷大気圧プラズマ処置を実施するためのシステムであって、キャリア・ガスの供給源、キャリア・ガスの供給源に接続された寒冷大気圧プラズマ発生器、圧縮空気の供給源、圧縮空気の供給源に接続された加湿器、酸素の供給源、加湿器および酸素の供給源の出力に接続された入力を有する人工呼吸器、誘電体から形成された内部チャンバを有するミキサー、内部チャンバの内部のアクティブ電極、およびグラウンドに接続された外側電極を有し、ミキサーは、寒冷大気圧プラズマ発生器のガス出力および人工呼吸器の出力に接続された流体入力ポート、および、組み合わされた加湿済み空気および寒冷大気圧プラズマを患者の呼吸器系に送達するためにミキサーの出力に接続された送達部材を有する、呼吸器感染症または肺がんの寒冷大気圧プラズマ処置を実施するためのシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステムであって、
キャリア・ガスの供給源(110)と、
キャリア・ガスの前記供給源(110)に接続された加湿器(130)と、
フィード・ガスの供給源(150)と、
フィード・ガスの前記供給源(150)に接続された加湿器(130)と、
前記キャリア・ガスをプラズマになるようプラズマ化するように構成されるプラズマ発生器(300)と、
誘電体から形成された内部チャンバ、前記内部チャンバの内部にあり、前記プラズマ発生器(300)の電気出力に接続されたアクティブ電極(230)、およびグラウンドに接続された外側電極(220)を有するミキサー(140)であって、キャリア・ガスの前記供給源(110)に接続された第1の流体入力ポート(202)およびフィード・ガスの前記供給源(150)に接続された第2の流体入力(204)を有する、ミキサー(140)と、
前記ミキサー(140)内で発生した活性種を患者に送達するために前記ミキサー(140)の出力(206)に接続された流体送達部材(190)と
を備える、呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項2】
前記キャリア・ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、および酸素のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項3】
前記送達部材(190)は気管内チューブを備える、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項4】
前記送達部材(190)は、鼻カニューレおよびマスクの一方を備える、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項5】
フィード・ガスの前記供給源(150)は、人工呼吸器および持続気道陽圧デバイスの一方を備える、請求項1に記載のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項6】
前記フィード・ガスは空気と酸素の混合気を含む、請求項5に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項7】
前記プラズマ発生器(300)は、10kHz~200kHzの範囲内の周波数および3kV~6kVの範囲内の出力ピーク電圧で動作するように構成される、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項8】
前記プラズマ発生器(300)は、40kHz、100kHz、および200kHzのうちの1つの周波数の25kHz以内の周波数を有する電気エネルギーを発生する、請求項1に記載のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項9】
前記プラズマ発生器(300)は、高周波電気外科発生器および低周波変換器を備える、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項10】
前記プラズマ発生器(300)は、
電力モジュール(350)と、
前記電力モジュール(350)を制御するためのCPU(310)と、
前記CPU(310)に接続されたメモリ(311)と、
前記CPU(310)に接続された電源(302)と
を備える、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項11】
前記プラズマ発生器(300)は、
タッチスクリーン・ディスプレイ(420)と、
前記タッチスクリーン・ディスプレイ(420)に接続されたコントローラと、
前記タッチスクリーン・ディスプレイ(420)上にデータを表示し、前記タッチスクリーン・ディスプレイ(420)を通してユーザからの入力を受信するように構成されるグラフィカル・ユーザ・インターフェースと
をさらに備える、請求項10に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項12】
前記プラズマ発生器(300)は、
ガス・モジュール(1000)を
さらに備える、請求項10に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項13】
キャリア・ガスの前記供給源(110)は前記ガス・モジュール(1000)に接続され、前記ガス・モジュール(1000)は、前記ミキサー(140)への前記キャリア・ガスの流れを制御する、請求項12に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項14】
前記第1の加湿器(130)は、前記ガス・モジュール(1000)と前記ミキサー(140)との間に接続される、請求項13に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項15】
前記第1の加湿器(130)は、前記ガス・モジュール(1000)とキャリア・ガスの前記供給源(110)との間に接続される、請求項13に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項16】
前記第1の加湿器(130)は、キャリア・ガスの前記供給源(110)から流れるキャリア・ガスを少なくとも湿度70%まで加湿するように構成され、前記第2の加湿器(130)は、フィード・ガスの前記供給源(150)から流れるフィード・ガスを少なくとも湿度50%まで加湿するように構成される、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項17】
前記第1の加湿器(130)は、キャリア・ガスの前記供給源(110)から流れるキャリア・ガスを湿度100%まで加湿するように構成され、前記第2の加湿器(130)は、フィード・ガスの前記供給源(150)から流れるフィード・ガスを少なくとも湿度50%まで加湿するように構成される、請求項1に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項18】
呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステムであって、
キャリア・ガスをプラズマになるようプラズマ化するために電気エネルギーを発生するように構成される電気エネルギー発生器(300)と、
誘電体バリア放電ミキサー(140)とを備え、前記誘電体バリア放電ミキサー(140)は、
誘電体から形成された内部チャンバであって、加湿済みキャリア・ガスの供給源(110)に流体接続するように構成される第1の入力(202)、加湿済みフィード・ガスの供給源(150)に接続するように構成される第2の入力(204)、および送達部材(190)に接続するように構成される出力(206)を有する、内部チャンバ、
前記内部チャンバの内部にあり、前記電気エネルギー発生器の電気出力に接続されたアクティブ電極(230)、ならびに、
グラウンドに接続された外側電極(220)
を備え、
加湿済みフィード・ガスおよび加湿済みキャリア・ガスが共に、前記内部チャンバに流入している間に、前記電気エネルギー発生器(300)から前記内部電極(230)に電気エネルギーが供給されるとき、プラズマが前記内部チャンバ内で発生する、呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項19】
前記誘電体バリア放電アセンブリ(140)内の前記チャンバの前記第1の入力(202)に流体接続された第1の加湿器(130)と、
前記誘電体バリア放電アセンブリ(140)内の前記チャンバの前記第2の入力(204)に流体接続された第2の加湿器(130)と
をさらに備える、請求項18に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【請求項20】
前記第1の加湿器の入力に接続されたヘリウムの供給源(110)と、
前記第2の加湿器の入力に接続された空気の供給源(150)と
をさらに備える、請求項19に記載の呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,510号、2020年4月15日に出願された米国仮特許出願第63/010,565号、2020年4月23日に出願された米国仮特許出願第63/014,657号、および2020年6月2日に出願された米国仮特許出願第63/033,561号の出願日の利益を主張する。
【0002】
上記仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし
【0004】
本発明は、呼吸器感染、肺がん、肺炎、または呼吸器系の他のがんを処置するために寒冷大気圧プラズマを使用するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0005】
プラズマ医療は、低温または寒冷大気圧プラズマの応用における熱心な研究努力の後に新しい科学分野として認定された。Keidar M、Beilis II、“Plasma Engineering: application in aerospace,nanotechnology and bionanotechnology,”Oxford:Elsevier;2013。寒冷大気圧プラズマ(「CAP:cold atmospheric plasmas」)が、活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)および活性窒素種(RNS:reactive nitrogen species)を含む種々の化学活性種を生成することが知られている。Chauvin,J.,Judee,F.,Yousfi,M.等“Analysis of reactive oxygen and nitrogen species generated in three liquid media by low temperature helium plasma jet,”Sci Rep 7,4562(2017)。CAPは、過渡的電界、UV、および帯電種と組み合わせた、ROSおよびRNSを含むカクテルである。
【0006】
CAPは、創傷治癒、皮膚疾患、病院衛生、殺菌、抗真菌処置、歯のケア、および美容標的細胞/組織除去において有効であることが既にわかっている。CAPの最も最近の応用のうちの1つは、がん治療においてである。M.Keidar等“Cold plasma selectivity and the possibility of a paradigm shift in cancer therapy,”British Journal of Cancer(2011)105(9),1295-1301。室温に近い温度のイオン化ガスとして、寒冷大気圧プラズマ(CAP)は、がん細胞の選択的死をインビトロで引き起こすことによってがん処置におけるその有望な能力を立証した。Yan D,Sherman J H およびKeidar M,“Cold atmospheric plasma,a novel promising anti-cancer treatment modality,”Oncotarget.8 15977-15995(2017);Keidar M,“Plasma for cancer treatment,”Plasma Sources Sci.Technol.24 33001(2015);Hirst A M,Frame F M,Arya M,Maitland N J およびO‘Connell D,“Low temperature plasmas as emerging cancer therapeutics:the state of play and thoughts for the future,”Tumor Biol.37 7021-7031(2016)を参照されたい。マウス内の幾つかの皮下異種移植腫瘍およびメラノーマに対するCAP処置は、その潜在的な臨床応用も立証した。Keidar M,Walk R,Shashurin A,Srinivasan P,Sandler A,Dasgupta S,Ravi R, Guerrero-Preston R およびTrink B,“Cold plasma selectivity and the possibility of a paradigm shift in cancer therapy,”Br.J.Cancer.105 1295-301(2011);Chernets N,Kurpad D S,Alexeev V,Rodrigues D B およびFreeman T A,“Reaction chemistry generated by nanosecond pulsed dielectric barrier discharge treatment is responshible for the tumor eradication in the B16 melanoma mouse model,”Plasma Process.Polym.12 1400-1409 (2015)を参照されたい。
【0007】
さらに、種々の実験が、ウイルスに対するCAPの効果に関連して実施された。J.Zimmerman等“Effects of cold atmospheric plasmas on adenoviruses in solution,”J.Phys.,D:44(2011)505201において、空気中で働く表面マイクロ放電技術を使用して溶液内でのアデノウイルス、ノンエンベロープ2重鎖DNAウイルスの成功裏の不活化を著者等は報告した。X.Su等“Inactivation Efficacy of Nonthermal Plasma- Activated Solutions Against Newcastle Disease Virus,”Applied and Environmental Microbiology,May 2018,vol.84,issue 9において、非熱プラズマ活性溶液によるニューカッスル病ウイルスの不活化有効性の調査について著者等は報告した。T.Xie等“Inactivation of airborne viruses using a packed bed non-thermal plasma reactor,”J.Phys.Appl.Phys.52(2019)において、エアロゾル内のバクテリオファージMS2を不活化するための、充填層誘電体バリア放電(DBD:dielectric barrier discharge)NTP反応器の有効性の研究について著者等は報告した。「Production of Immune-response Stimulating Aerosols by Non-thermal Plasma Treatment of Airborne Pathogens」という名称の米国公開特許公報第2020/0016286号も参照されたい。
【0008】
寒冷大気圧プラズマ(CAP)処置を実施するための幾つかの異なるシステムおよび方法が開示された。例えば、米国特許第10,213,614号は、がん細胞のCAP処置のための2電極システムを開示している。
【0009】
別の例の寒冷大気圧プラズマ・システムは、米国特許第9,999,462号に開示されている。開示されたシステムは、2つのユニット、すなわち、変換ユニット(CU:Conversion Unit)および寒冷プラズマ・プローブ(CPP:Cold Plasma Probe)を有する。変換ユニットは、高周波電気外科発生器(ESU:electrosurgical generator)出力に接続され、ESU信号を、寒冷大気圧プラズマ手技を実施するのに適切な信号に変換する。寒冷プラズマ・プローブは、変換ユニット出力に接続される。寒冷プラズマ・プローブの端部において、寒冷プラズマは、生成され、生体組織に対して熱的に無害である、すなわち、プラズマは組織に対して熱傷を引き起こす可能性がない。しかしながら、この寒冷プラズマは、正常細胞が影響を受けないままにしながら、がん細胞にとって死をもたらす。開示された寒冷プラズマ変換ユニットは、電気外科ユニットから、電圧をアップコンバートする(1.5~50kV)、周波数をダウンコンバートする(<300kHz)、そして、高電圧出力の電力をダウンコンバートする(<30W)ために高電圧変圧器を利用する点でユニークである(米国特許第9,999,462号)。
【0010】
これらのCAPシステムは媒体を刺激するために使用することができ、その媒体を、その後、がん処置のために使用することができることをさらなる研究(research)が示した。例えば、米国特許第10,479,979号は、がん処置において使用するためのCAP被刺激媒体を調製するための方法を開示している。CAP被刺激媒体を調製するための別の方法は米国公開特許公報第2019/0279849号に開示されている。
【0011】
さらに、ガス流およびグラフィカル・ユーザ・インターフェースを有する統合化ガス支援電気外科発生器を制御するための種々のシステムおよび方法は、「Electrosurgical Gas Control Module」という名称のWO2018/191265および「Gas Enhanced Electrosurgical Generator」という名称のWO2019199281に開示されている。
【0012】
種々の医療人工呼吸器システムが開示された。医療人工呼吸器は、通常、加圧済み酸素の供給源を有し、加圧済み酸素の供給源は、導管を通して患者に流体接続される。例えば、米国特許第10,350,374号は、呼吸回路に結合された人工呼吸器を有する医療システムを開示している。一部の人工呼吸器システムは、患者データをモニターするための手段を付加する。例えば、米国特許第8,554,298号は、医療人工呼吸器によって換気されている患者の換気を管理するための、そして特に、オキシメータ・データを医療人工呼吸器と統合するためのシステムおよび方法を開示している。別の例は、米国公開特許公報第20150034082号であり、人工呼吸器-体外式膜型ガス交換(ECGE:extracorporeal membrane gas-exchange)システムを開示している。さらに別の例は、米国公開特許公報第20170164873号であり、ガス認識を使用することによる肺炎および肺炎細菌病分析機能を有する医療人工呼吸器を開示している。
【0013】
さらに他のシステムは、人工呼吸器を用いて医療ガスを供給するための手段を含む。米国公開特許公報第2013/0092159号は、人工呼吸器の助けを借りて、人工呼吸を受ける患者に少なくとも1つの医療ガスを供給するための方法およびデバイスを開示している。人工呼吸器の呼吸ガス流およびその流れに付加される医療ガスによって提供されるガス混合気は、YピースまたはYコネクタ等の接続ピースに供給され、接続ピースから、患者フィード・ラインが、機械的に換気される患者につながり、接続ピースから、さらなるラインが分岐する。このさらなるラインによって、少なくとも、患者が吐き出したガスおよび人工呼吸器によって第1のラインに導入された呼吸ガスの割合および患者が吸入しなかった第1のラインに給送された医療ガスは、第2のラインを介して放出される。例えば、米国公開特許公報第20150059743号は、酸素および酸素以外の医療ガスの混合ガスを患者に供給するための人工呼吸器を開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
好ましい実施形態において、本発明は、呼吸器感染症または呼吸器系のがんを処置するために、特に、COVID-19を有する患者を処置するために、寒冷大気圧プラズマを使用するためのシステムおよび方法である。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、呼吸器感染症のプラズマ処置を実施するためのシステムである。本明細書で使用される「呼吸器感染症のプラズマ処置(plasma treatment of respiratory infections)」は、患者の呼吸器系に送達される活性種を発生するプラズマの使用を指す。システムは、キャリア・ガスの供給源と、キャリア・ガスの供給源に接続された加湿器と、フィード・ガスの供給源と、フィード・ガスの供給源に接続された加湿器と、キャリア・ガスをプラズマになるようプラズマ化するように構成されるプラズマ発生器と、ミキサーと、ミキサー内で発生した活性種を患者に送達するためにミキサーの出力に接続された流体送達部材とを有する。ミキサーは、誘電体から形成された内部チャンバ、内部チャンバの内部にあり、プラズマ発生器の電気出力に接続されたアクティブ電極、およびグラウンドに接続された外側電極を有し、ミキサーは、キャリア・ガスの供給源に接続された第1の流体入力ポートおよびフィード・ガスの供給源に接続された第2の流体入力を有する。ミキサーの構造は、プラズマを発生するための誘電体バリア放電システムを形成する。キャリア・ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素、および酸素のうちの少なくとも1つを含むことができる。送達部材は、例えば、気管内チューブ、鼻カニューレ、または顔マスクとすることができる。フィード・ガスの供給源は、人工呼吸器および持続気道陽圧デバイスの一方を備え、空気および酸素の混合気を含むことができる。
【0016】
プラズマ発生器は、好ましくは、10kHz~200kHzの範囲内の周波数および3kV~6kVの範囲内の出力ピーク電圧で動作する。好ましい実施形態において、プラズマ発生器は、40kHz、100kHz、および200kHzのうちの1つの周波数の5kHz以内の周波数を有する電気エネルギーを発生する。別の好ましい実施形態において、プラズマ発生器は、122kHzの周波数を有する電気エネルギーを発生する。プラズマ発生器は、高周波電気外科発生器および低周波変換器の組み合わせ体とすることができる。プラズマ発生器は、電力モジュールと、電力モジュールを制御するためのCPUと、CPUに接続されたメモリと、CPUに接続された電源とを有することができる。なおさらに、プラズマ発生器は、タッチスクリーン・ディスプレイと、タッチスクリーン・ディスプレイに接続されたコントローラと、タッチスクリーン・ディスプレイ上にデータを表示し、タッチスクリーン・ディスプレイを通してユーザからの入力を受信するように構成されるグラフィカル・ユーザ・インターフェースとを有することができる。プラズマ発生器は、ガス・モジュールを有することができる。キャリア・ガスの供給源はガス・モジュールに接続することができ、ガス・モジュールは、ミキサーへのキャリア・ガスの流れを制御する。第1の加湿器は、ガス・モジュールとミキサーとの間に接続することができる、または、ガス・モジュールとキャリア・ガスの供給源との間に接続することができる。
【0017】
好ましい実施形態において、第1の加湿器は、キャリア・ガスの供給源から流れるキャリア・ガスを少なくとも湿度70%まで加湿するように構成され、第2の加湿器は、フィード・ガスの供給源から流れるフィード・ガスを少なくとも湿度50%まで加湿するように構成される。例えば、第1の加湿器は、キャリア・ガスの供給源から流れるキャリア・ガスを湿度100%まで加湿するように構成され、第2の加湿器は、フィード・ガスの供給源から流れるフィード・ガスを少なくとも湿度50%まで加湿するように構成される。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、呼吸器系のプラズマ処置を実施するためのシステムである。システムは、キャリア・ガスをプラズマになるようプラズマ化するために電気エネルギーを発生するように構成される電気エネルギー発生器と、誘電体バリア放電(「DBD:dielectric barrier discharge」)ミキサーとを有する。DBDミキサーは、誘電体から形成された内部チャンバであって、加湿済みキャリア・ガスの供給源に流体接続するように構成される第1の入力、加湿済みフィード・ガスの供給源に接続するように構成される第2の入力、および送達部材に接続するように構成される出力を有する、内部チャンバ、内部チャンバの内部にあり、電気エネルギー発生器の電気出力に接続されたアクティブ電極、および、グラウンドに接続された外側電極を有する。加湿済みフィード・ガスおよび加湿済みキャリア・ガスが共に、内部チャンバに流入している間に、電気エネルギー発生器から内部電極に電気エネルギーが供給されるとき、プラズマが内部チャンバ内で発生する。システムはさらに、誘電体バリア放電アセンブリ内のチャンバの第1の入力に流体接続された第1の加湿器と、誘電体バリア放電アセンブリ内のチャンバの第2の入力に流体接続された第2の加湿器とを有することができる。なおさらに、システムは、第1の加湿器の入力に流体接続された非加湿ヘリウムの供給源と、第2の加湿器の入力に流体接続された非加湿空気の供給源とを有することができる。
【0019】
本発明のさらに他の態様、特徴、および利点は、単に好ましい実施形態および実装態様を示すことによって、以下の詳細な説明から容易に明らかである。本発明は、他のおよび異なる実施形態も可能であり、その幾つかの詳細は、全て、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の明白な点で変更することができる。したがって、図面および説明は、事実上例証的であると見なされ、制限的であると見なされない。本発明のさらなる目的および利点は、一部は、以下に続く説明において述べられることになり、一部は、説明から明らかであることになる、または本発明の実施によって学習することができる。
【0020】
本発明および本発明の利点のより完全な理解のために、ここで、以下の説明および添付図面に対して参照が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】好ましい実施形態による、呼吸器感染症の処置のためにCAPジョイント・ミキサーを有する寒冷大気圧プラズマ・システムのブロック・ダイヤグラムであり、キャリア・ガスおよびフィード・ガスは共に加湿されている。
【0022】
【
図1B】
図1Aの誘電体バリア放電アセンブリおよび接続ホースについてのシステム・レイアウトの図である。
【0023】
【
図1C】
図1Aの誘電体バリア放電アセンブリおよび接続ホースについてのシステム・レイアウトのクローズアップ図である。
【0024】
【
図1D】
図1Aの誘電体バリア放電アセンブリおよび接続ホースについてのシステム・レイアウトの分解図である。
【0025】
【
図1E】
図1Aの誘電体バリア放電アセンブリおよび接続ホースについてのシステム・レイアウトのクローズアップ分解図である。
【0026】
【
図1F】
図1Aの誘電体バリア放電アセンブリおよび接続ホースについてのシステム・レイアウトのクローズアップ断面図である。
【0027】
【
図2A】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の等角図である。
【0028】
【
図2B】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の分解図である。
【0029】
【
図2C】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の部分断面図である。
【0030】
【
図2D】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の正面図である。
【0031】
【
図2E】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の背面図である。
【0032】
【
図2F】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の上面図である。
【0033】
【
図2G】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の底面図である。
【0034】
【
図2H】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の左側面図である。
【0035】
【
図2I】本発明の好ましい実施形態による、CAPジョイント・ミキサーまたは誘電体バリア放電(DBD)アセンブリの好ましい実施形態の右側面図である。
【0036】
【
図3A】本発明の好ましい実施形態による寒冷大気圧プラズマ発生器のブロック・ダイヤグラムである。
【0037】
【
図3B】本発明の代替の好ましい実施形態のプラズマ発生器のブロック・ダイヤグラムである。
【0038】
【
図3C】本発明の別の代替の好ましい実施形態のプラズマ発生器のブロック・ダイヤグラムである。
【0039】
【
図3D】本発明の別の代替の好ましい実施形態の複数のガス・モジュールを有する統合化ガス強化電気外科発生器のブロック・ダイヤグラムである。
【0040】
【
図4】本発明の好ましい実施形態の統合化ガス強化電気外科発生器の斜視図である。
【0041】
【
図5】本発明の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するための方法を示すフロー・ダイヤグラムであり、キャリア・ガスおよびフィード・ガスは共に加湿されている。
【0042】
【
図6】本発明の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するための方法を示すフロー・ダイヤグラムであり、キャリア・ガスおよびフィード・ガスは共に加湿されており、CAP発生器は単一処置中に複数の設定を通して掃引する。
【0043】
【
図7A】第2の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するためのCAPジョイント・ミキサーを有する寒冷大気圧プラズマ・システムのブロック・ダイヤグラムであり、キャリア・ガスは加湿されている。
【0044】
【
図7B】第2の好ましい実施形態による本発明の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するための方法を示すフロー・ダイヤグラムであり、キャリア・ガスは加湿されている。
【0045】
【
図8A】第3の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するためのCAPジョイント・ミキサーを有する寒冷大気圧プラズマ・システムのブロック・ダイヤグラムであり、フィード・ガスは加湿されている。
【0046】
【
図8B】第3の好ましい実施形態による本発明の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するための方法を示すフロー・ダイヤグラムであり、フィード・ガスは加湿されている。
【0047】
【
図9】好ましい実施形態による、内視鏡または腹腔鏡使用のためのCAPジョイント・ミキサーを有する寒冷大気圧プラズマ・システムのブロック・ダイヤグラムである。
【0048】
【
図10A】
図1Cの呼吸器感染症を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システムに関するH
2O
2の濃度のグラフである。
【
図10B】
図1Cの呼吸器感染症を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システムに関するNO
2-の濃度のグラフである。
【0049】
【
図10C】加湿済みのO
2および空気混合気ならびに種々のO
2パーセンテージを用いて、最大4分間、本発明によって処置されたA549細胞の生存率のグラフである。
【0050】
【
図10D】加湿済み空気/O
2混合気および24%O
2を有する乾燥Heを用いて、最大17分間、本発明によって処置されたA549細胞の生存率のグラフである。
【0051】
【
図10E】加湿済みヘリウムおよび乾燥O
2および空気混合気(24%O
2を有する)を用いて、最大17分間、本発明によって処置されたA549細胞の生存率のグラフである。
【0052】
【
図10F】加湿済み空気/O
2混合気(24%O
2を有する)および種々のヘリウム湿度を用いて、5または10分間、本発明によるシステムによって処置されたA549細胞の生存率のグラフである。
【0053】
【
図10G】加湿済み空気/O
2混合気およびHe+湿度0~100%を用いて、1~5分間、本発明の好ましい実施形態によるシステムによって処置された、処置後48時間における肺がん細胞A549の生存率のグラフである。
【0054】
【
図10H】乾燥空気/O
2混合気およびHe+湿度0~100%を用いて、1~5分間、本発明の好ましい実施形態によるシステムによって処置された、処置後48時間における肺がん細胞A549の生存率のグラフである。
【0055】
【
図11】別の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するためのCAPジョイント・ミキサーを有する寒冷大気圧プラズマ・システムのブロック・ダイヤグラムであり、キャリア・ガス、フィード・ガス、および第3のガスは加湿されている。
【0056】
【
図12】空気および酸素の供給物が異なる場所でCAPジョイント・ミキサーに入り、それにより、空気および酸素の少なくとも一方が、内側電極の下流でCAPジョイント・ミキサーに入るCAPジョイント・ミキサーの代替の実施形態のダイヤグラムである。
【0057】
【
図13A】加湿済み空気/O
2混合気を用いた、本発明の好ましい実施形態によるシステムによって処置された細胞A549の生存率のグラフである。
【0058】
【
図13B】加湿済み空気および加湿済みO
2を別々に用いた、本発明の好ましい実施形態によるシステムによって処置された細胞A549の生存率のグラフである。
【0059】
【
図14A】加湿済みのまたは乾燥した空気/O
2混合気およびHe+湿度0~100%を用いた、本発明の好ましい実施形態によるシステムによるオゾン生成レートのグラフである。
【0060】
【
図14B】異なる電圧における、加湿済み空気および加湿済みO
2の混合気または別々の加湿済み空気および加湿済みO
2ならびに加湿済みHeを用いた、本発明の好ましい実施形態によるシステムによるオゾン生成レートのグラフである。
【0061】
【
図14C】35~40Vに及ぶ異なる電圧における、加湿済み空気および加湿済みO
2の混合気または別々の加湿済み空気および加湿済みO
2ならびに加湿済みHeを用いた、本発明の好ましい実施形態によるシステムによるオゾン生成レートの実験結果の第1のセットのグラフである。
【0062】
【
図14D】第1のセットと異なる日に採取した、35~40Vに及ぶ異なる電圧における、加湿済み空気および加湿済みO
2の混合気または別々の加湿済み空気および加湿済みO
2ならびに加湿済みHeを用いた、本発明の好ましい実施形態によるシステムによるオゾン生成レートの実験結果の第2のセットのグラフである。
【0063】
【
図15A】本発明の好ましい実施形態によるシステムによる過酸化水素(H
2O
2)生成レートのグラフである。PBSは、8分または15分間、連続してまたは所定の間隔で、CAPおよびガス混合気(He、空気、およびO
2)を用い、加湿済み空気/O
2および加湿済みHe
2を用いて処置された。
【0064】
【
図15B】本発明の好ましい実施形態によるシステムによる亜硝酸(NO
2-)生成レートのグラフである。PBSは、8分または15分間、連続しておよび所定の間隔で、CAPおよびガス混合気(He、空気、およびO
2)を用い、加湿済み空気/O
2および加湿済みHeを用いて処置された。
【0065】
【
図15C】本発明の好ましい実施形態によるシステムによる硝酸(NO
3-)生成レートのグラフである。PBSは、8分または15分間、連続しておよび所定の間隔で、CAPおよびガス混合気(He、空気、およびO
2)を用い、加湿済み空気/O
2および加湿済みHe
2を用いて処置された。
【発明を実施するための形態】
【0066】
寒冷大気圧プラズマ(CAP:cold atmospheric-pressure plasma)は、ヒドロキシ・ラジカル(・OH)、1重項酸素(1O2)、窒素イオン(N2
+)、原子酸素(O)等の多数の活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)、ならびに、電子、イオン、および光子を発生する。これらの種の最大濃度は、ガス中の最適量の湿度で達成することができる。CAPによって発生したROSおよびRNSは、生体液と相互作用すると、過酸化水素(H2O2)、亜硝酸(NO2-)、硝酸(NO3-)、ペルオキシ亜硝酸(ONOO-)を形成することができる。プラズマ相内の活性種およびラジカル(・OH、N2
+、1O2、O)は短半減期種であり、一方、水溶液相内のH2O2、NO2-、NO3-、ONOO-は長半減期種である。長半減期種は、細胞内種および代謝経路とさらに相互作用することになり、細胞アポトーシスを誘発する。本発明は、寒冷大気圧プラズマ(非熱プラズマ)を発生することができ、従来システムの場合に比べてずっと長い距離にわたって活性種を患者まで送達することができるシステムおよび方法を提供する。従来システムは、典型的には、ターゲット組織から2~10cmの距離で使用されるが、本発明は、10cmより長い距離から患者にプラズマを送達させる。
【0067】
本発明の第1の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システムは、
図1を参照して説明される。この実施形態において、キャリア・ガスはヘリウムであり、フィード・ガスは空気である。ヘリウム・ガスの供給源110は、2つのライン112、114に分割され、2つのラインのそれぞれはマス・フロー・コントローラ(MFC:mass flow controller)120によって制御される。ライン112は、第1の加湿器130に流体接続される。ライン112内のヘリウム・ガス流(50~1000mL/分)は、H
2O充填済みコンテナ(加湿器130)を通過し、その後、混合チャンバ140に給送される。ライン114内のヘリウム・ガス流は、混合チャンバ140に直接給送される。こうして、ライン112、114上のマス・フロー・コントローラ120によって、チャンバ140を出るガス内の相対的H
2O飽和を調整することができる。2つのライン112、114内でのガス流の調整は、チャンバ140を出るガス流の全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。この実施形態における総ヘリウム流は、全ての場合に、0.5L/分~5L/分まで変動する可能性がある。チャンバ140内のヘリウム・ガスの湿度は、較正済み高精度湿度および温度計142によって測定される。チャンバ140からの加湿済みヘリウム・ガスは、本明細書で「寒冷大気圧プラズマ(CAP)発生器」と呼ばれる電気外科発生器300に給送される。種々の電気外科発生器が、当技術分野で知られており、本発明と共に使用することができる。寒冷大気圧プラズマ(CAP)発生器300に給送されるガスは、本明細書で「キャリア・ガス(carrier gas)」と呼ばれる。
【0068】
同時に、非加湿空気供給物150(フィード・ガス)は、2つのライン152、154に分割される。各ライン152、154は、マス・フロー・コントローラ(MFC)120によって制御される。ライン152は、第2の加湿器130に流体接続される。ライン152内の空気ガス流は、H2O充填済みコンテナ(加湿器130)を通過し、その後、混合チャンバ140に給送される。ライン114内の空気ガス流は、混合チャンバ140に直接給送される。こうして、ライン152、154上のマス・フロー・コントローラ120によって、チャンバ140を出る空気フィード内の相対的H2O飽和を調整することができる。2つのライン152、154内での空気流の調整は、全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。チャンバ140内の空気の湿度は、較正済み高精度湿度および温度計142によって測定される。チャンバ140からの加湿済み空気および酸素供給部160からの酸素は、人工呼吸器、CPAP機械、BIPAP機械、または他の知られている呼吸送達システム等の呼吸送達システム170に提供される。呼吸送達システム170は、排気、酸素、およびCO2を混合し、調整し、その患者吸気の圧力、流量、比、および周波数を測定することになる。呼吸送達システム170の出力は、例えば、チュービング174およびコネクタ176を介してCAPジョイント・ミキサーに接続される。試験において、ヘリウム流を湿度100%まで、空気流を湿度50%まで加湿することは、有効(effective)であることがわかった。
【0069】
CAP発生器300および呼吸送達システム170の出力は、本明細書で「CAPジョイント・ミキサー(CAP joint mixer)」と呼ばれる誘電体バリア放電(DBD)アセンブリ200に接続される。グラウンド・ケーブル198は、CAPジョイント・ミキサー200の外側電極をCAP発生器300内のグラウンドに接続する。グラウンド・ケーブル198は、
図1のチュービング194と別個であると示されるが、グラウンド・ケーブル198が、例えば、チュービング194とハーネス内で結合される他の配置構成が可能である。H
2Oが存在するために、He
++e
-化学反応に至るヘリウムおよびH
2Oのイオン化が同時に起こることになる。寒冷プラズマ発生活性種(H
2O
2、NO
2-、NO
3-、ONOO
-、および02
-)が生成される。
【0070】
CAPジョイント・ミキサー200の出力は、送達部材190であって、例えば、気管内チューブ、酸素CPAP(:continuous positive airway pressure、持続気道陽圧)、BIPAP(:Bilevel Positive Airway Pressure、2相性気道陽圧)、人工呼吸器顔マスク、または鼻O2カニューレ190とすることができる、送達部材190に接続されて、システムにより発生する活性種192、例えば、H2O2、NO2-、NO3-、ONOO-、および02-を患者呼吸器系に送達する。
【0071】
誘電体バリア放電(DBD)アセンブリまたはCAPジョイント・ミキサー200の好ましい実施形態は、
図2A~2Iを参照して説明される。DBDアセンブリ200は、第1のガス(例えば、キャリア・ガス)の流れを収納するための第1の入口ポート202、第2のガス(例えば、フィード・ガス)を収納するための第2の入口ポート204、およびDBDアセンブリ内で発生したガスおよび活性種がそこを通ってアセンブリを出る出口ポート206を有する。アセンブリは、第1のハウジング210を有し、第1のハウジング210は、第1のハウジング210内でチャンバ212aを形成する部分212を有する。少なくともチャンバ212aを形成する部分212は誘電体材料である。好ましい実施形態において、第1のハウジング210全体は、誘電体材料で形成されるが、チャンバ212aを形成する部分212を含む第1のハウジング210の一部分のみが誘電体材料で形成される他の実施形態が可能である。さらに他の実施形態において、第1のハウジング210と別個の誘電体材料がチャンバ212aを囲むことができる。第1のハウジング210の部分212は、気管内チューブまたは他のタイプのチューブ等の送達部材をそこに接続することができる出口ポート206を形成する。本発明は、任意の特定のタイプの送達部材または送達部材と出口ポート206との間の接続に限定されない。第1のハウジング210は、第1のガスであって、この実施形態においてキャリア・ガス(例えば、ヘリウム)である、第1のガスを収納するための第1の入力ポート202を形成する第1のネックまたはコネクタ部分214、および、チャンバ212aにつながるチャネルを有する。ネック部分214の内部は、内部電極230を収納するためにねじが切られている。第1のハウジング210は、第2のガスであって、この実施形態においてフィード・ガス(例えば、空気/酸素混合気)である、第2のガスを収納するための第2の入力ポート204を形成する第2のネックまたはコネクタ部分216、および、チャンバ212aにつながるチャネル216aを有する。伝導性材料、例えば、銅で作られた第2の外側電極220は、チャンバ212aを形成する誘電体の外部を囲む。
図2Aおよび2Bに示すように、外側絶縁層219は外側電極220をカバーする。外側絶縁層219は
図2Cに示されない。
図1に示すように、外側電極220はグラウンドに接続される。ハウジング210は、外側電極220に当接するリップまたはリッジ218を有する。リップまたはリッジ218の上側部分内に穴チャネル218aが存在し、穴チャネル218aは、外側電極220が、接続ワイヤ220aを介してグラウンド・ワイヤ198(
図1参照)に接続されることを可能にする。
【0072】
内側電極230は、伝導性材料で作られ、内側電極230内に、第1のガス(キャリア・ガス)がそこを通って流れるチャネル240を有する。電極230は、チャンバ212a内に延在するネック232を有する。チャネル240は、第1のガス(キャリア・ガス)がチャンバ212aに流入することができるように、ネック232を通して延在する。電極230の外部は、2つのねじ山付き部分230a、230bおよびリップまたはリッジ234を有する。ねじ山付き部分230aは、第1のハウジング210のネック214のねじ山付き内部に係合して、内側電極230を第1のハウジング210内に固定する。電極230のリッジまたはリップ234は、電極230がネック214に完全にねじ込まれると停止部を提供する。
【0073】
誘電体バリア放電(DBD)アセンブリ200は、第2のハウジング250をさらに有し、第2のハウジング250は、第2のハウジング250内に、第1のガス(キャリア・ガス)がそこを通って内側電極230内のチャネル240に流れるチャネルを有する。第2のハウジング250は、電極230のねじ山付き部分230bに係合し、それにより、第2のハウジングを電極230および第1のハウジング210に固定するためにねじを切られた内部を有する部分252を有する。第2のハウジング250は、ねじ山付き部分252の端部に、電極リッジまたはリップ234を収納し、第1のハウジング210のネック214に当接するための凹所を有する。第2のハウジング250は、誘電体バリア放電(DBD)アセンブリをCAP発生器300に接続するためにホースまたは他のチュービング194およびコネクタ196に接続するためのコネクタ構造254、254a、254bをさらに有する。第2のハウジング250内に、第1のガス(キャリア・ガス)がそこを通って流れるチューブ260が存在する。チューブ260内に、伝導性コネクタ270に(例えば、はんだによって)接続される細長い電極またはワイヤが存在する。伝導性コネクタ270は、内側電極230に当接し、したがって、内側電極230に電気接続される。
【0074】
図3Aに示すように、例示的な寒冷大気圧プラズマ(CAP)発生器300は、電源302、CPU(またはプロセッサまたはFPGA)310、およびメモリまたはストレージ311を有する。システムは、タブレット・コンピュータのディスプレイとすることができるディスプレイ420(
図4)をさらに有する。CPU310は、システムを制御し、ディスプレイ420上に表示されるグラフィカル・ユーザ・インターフェースを通してユーザからの入力を受信する。CAP発生器は、CAPジョイント・ミキサーへのキャリア・ガスの流れを制御するために、ヘリウム等のCAPキャリア・ガスの供給源310に接続されたガス制御モジュール1000をさらに有する。CAP発生器300は、高周波(RF:radio frequency)エネルギーを発生するための高周波(RF)電力モジュール350をさらに有する。RF電力モジュールは、電気外科発生器内でRF電力を提供するために知られているような従来の電子部品を含む。RF電力モジュールは、10~200kHzの間の周波数および3kV~6kVの出力ピーク電圧で、そして好ましくは40kHz、100kHz、または200kHzに近い(その25%以内の)周波数で動作する。ガス・モジュール1000およびRF電力モジュール350は、コネクタ360に接続され、コネクタ360は、CAPジョイント・ミキサー200(または、
図11Aおよび11BのCAPアプリケータ1100)が、電気コネクタ196aおよびガス・コネクタ196bを有するコネクタを介して発生器300に接続されることを可能にする。
【0075】
図3Bに示すように、キャリア・ガスおよび電気エネルギーの送達のための他の配置構成は、本発明と共に使用することができる。
図3Bにおいて、キャリア・ガス(この例において、ヘリウム)の供給源110は、制御された流量でガスをCAPジョイント・ミキサー200に供給する任意のタイプのガス制御システム370に対して設けられる。従来の電気外科発生器350aは、高周波(HF:high frequency)エネルギーを低周波変換器350bに供給し、低周波変換器350bは、10kHz~200kHzの範囲内の周波数および3kV~6kVの範囲内の出力電圧を有する電気エネルギーを出力する。
【0076】
図3Cに示す別の実施形態は、従来のガス制御システム370に接続されたキャリア・ガス供給源110を有し、キャリア・ガス供給源110は、次に、CAPジョイント・ミキサー200に接続され、従来の電気外科発生器351もCAPジョイント・ミキサー200に接続される。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によるCAP対応ガス強化電気外科発生器300用の発生器ハウジング400は
図4に示される。発生器ハウジング400は、従来の電気外科発生器のハウジングについて使用される材料と同様のプラスチックまたは金属等の頑丈な材料で作られたハウジング410を有する。ハウジング410は取り外し可能カバー414を有する。ハウジング410およびカバー414は、ねじ、トング、および溝、またはカバーをハウジングに取り外し可能に固定するための他の構造等の手段を有する。カバー414は、ハウジングの上面だけ、または、ハウジング410の、上面、右側面、および左側面等の複数の側面を備えることができる。ハウジング410は、ハウジングの底面に取り付けられた複数のフットまたはレッグを有することができる。ハウジング410の底面は、ガス強化発生器の内部から通気するための複数のベントを有することができる。
【0078】
ハウジング414の面上に、タッチスクリーン・ディスプレイ420、および、種々のアクセサリ、例えば、アルゴン・プラズマ・プローブ、ハイブリッド・プラズマ・プローブ、寒冷大気圧プラズマ・プローブ、または任意の他の電気外科アタッチメントを発生器に接続するための複数のコネクタ432、434が存在する。ハウジング410の面は、ハウジング410の上面および底面に対して90度以外の角度にあって、ユーザによるタッチスクリーン・ディスプレイ420の容易な観察および使用を提供する。ガス制御モジュールの1つまたは複数は、ガス強化電気外科発生器300内に搭載することができる。
【0079】
CAP対応ガス支援電気外科発生器は、タッチスクリーン・ディスプレイ420を使用してシステムのコンポーネントを制御するためのグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI:graphical user interface)を有する。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、例えば、ロボティクス、アルゴン単極cut/coag、ハイブリッド・プラズマcut、寒冷大気圧プラズマ、双極、プラズマ・シーラ、血行動態、または音声起動を制御することができる。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、蛍光誘導式外科手術と共に使用することができる。グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)は、CT、MRI、または超音波等の誘導画像と共にさらに使用することができる。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、RFID(種々の電気外科アタッチメントにおいて見出すことができるような)と通信することができ、使用データを収集し、記憶媒体に記憶することができる。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:field-programmable gate array)と通信し、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイは、灌注ポンプ、吸入器、電力出力を調整するためのフル・ブリッジ、電力を(DCからACに)調節するためのフライ・バック、およびフット・ペダルを制御することができる。GUIは、CPU310を介して、関連する予測されるCAP設定または投与量を有するデータのデータベースとさらに通信する。データベース・ストレージは、内部メモリあるいは他の内部ストレージ311または外部ストレージとすることができる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態による呼吸器感染症を処置するための方法であって、フィード・ガス(空気)およびキャリア・ガス(ヘリウム)が共に加湿されている、方法は、
図5を参照して説明される。加圧済みフィード・ガス(空気)は加湿器に供給される510。加圧済み空気は加湿器において加湿される520。酸素は、加湿済み空気流に付加される530。加湿済み空気および酸素流は、人工呼吸器または他の呼吸送達システムによって制御される540。同時に、ヘリウム等のCAPキャリア・ガスは加湿器に供給される514。キャリア・ガスは加湿器において加湿される522。加湿済みキャリア・ガスはCAP発生器に供給される。CAP発生器からの加湿済みCAPキャリア・ガスおよび人工呼吸器の出力は共に、CAPジョイント・ミキサーに供給される550、552。電気エネルギーは、CAPジョイント・ミキサー内の内側電極に印可される560。CAPジョイント・ミキサーの出力は、その後、例えば、呼吸顔マスク、鼻カニューレ、または気管内チューブによって、患者の呼吸器系に供給される570。
【0081】
寒冷大気圧プラズマを使用するがんの処置に関する研究において、CAP処置が、用量依存的にがん細胞の生存率を減少させることが見出された。Rowe,W.等“The Canady Helios Cold Plasma Scalpel Significantly Decreases Viability in Malignant Solid Tumor Cells in a Dose-Dependent Manner,”Plasma,2018.1(1):p. 177-188。
【0082】
本発明の別の好ましい実施形態による呼吸器感染症を処置するための方法であって、フィード・ガス(空気)およびキャリア・ガス(ヘリウム)が共に加湿されている、方法は、
図6を参照して説明される。この実施形態において、処置時間全体にわたって単一設定(例えば、70V)で、CAPジョイント・ミキサー内の内側電極に電気エネルギーが印可される(
図5のステップ560)のではなく、発生器は、複数の設定を通して自動的に掃引し、複数の設定は、患者に出力を供給しながら570、第1の時間t
1の間、第1の設定(例えば、70V)を適用し562、その後、患者に出力を供給しながら572、第2の時間t
2の間、第2の設定(例えば、40V)を適用する564。
【0083】
本明細書で「ヘリウム・ガス湿度調整セットアップ(Helium Gas Humidity Adjustment Setup)」と呼ばれるシステム700の代替の実施形態は
図7Aを参照して説明される。ヘリウム・ガス供給源110は、2つのライン112、114に分割され、2つのラインのそれぞれは、マス・フロー・コントローラ(MFC)120によって制御される。ライン112内のヘリウム・ガス流(50~1000mL/分)は、H
2O充填済みコンテナ(加湿器130)を通過し、その後、混合チャンバ140に給送される。ライン114内のヘリウム・ガス流は、混合チャンバ140に直接給送される。こうして、ライン112、114上のマス・フロー・コントローラ120によって、チャンバ140を出るガス内の相対的H
2O飽和を調整することができる。2つのライン112、114内のガス流の調整は、チャンバ140を出るガス流の全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。この実施形態における総ヘリウム流は、全ての場合に、0.5L/分~5L/分まで変動する可能性がある。このヘリウム・ガス湿度調整セットアップにおいて、ヘリウムH
2O蒸気量は、実験中に変動した。チャンバ140内のヘリウム・ガスの湿度は、
図7Aに示す較正済み高精度湿度および温度計142によって測定された。チャンバ140からの加湿済みヘリウム・ガスは、CAP発生器300に給送される。
【0084】
同時に、非加湿空気タンク150および非加湿酸素タンク160は、人工呼吸器、CPAP(持続気道陽圧)システム、またはBIPAP(2相性気道陽圧)システム等の呼吸送達システム170に空気および酸素をそれぞれ給送する。これらは、「フィード・ガス(feed gas)」と呼ばれる。呼吸送達システム170は、空気、酸素、およびCO2を混合し、調整し、その患者吸気の圧力、流量、比、および周波数を測定することになる。CAP発生器300および呼吸送達システム170の出力は、誘電体バリア放電(DBD)アセンブリ200に接続される。CAPジョイント・ミキサー200の出力は、送達部材190に接続され、送達部材190は、例えば、気管内チューブ、酸素CPAP(持続気道陽圧)、BIPAP(2相性気道陽圧)、人工呼吸器顔マスク、または鼻O2カニューレ190とすることができ、システムにより発生する活性種192、例えば、H2O2、NO2-、NO3-、ONOO-、および02-を患者の呼吸器系に送達する。
【0085】
図7Aのシステムを用いて呼吸器感染症を処置するための方法は、
図7Bを参照して説明される。ヘリウム等のCAPキャリア・ガスは加湿器に供給される714。キャリア・ガスは加湿される722。加湿済みキャリア・ガスはCAP発生器に供給される。同時に、加圧済みフィード・ガス(空気)が供給される710。酸素は、空気流に付加される730。空気および酸素流は、人工呼吸器または他の呼吸送達システムによって制御される740。CAP発生器からの加湿済みCAPキャリア・ガスおよび人工呼吸器の出力は共に、CAPジョイント・ミキサーに供給される750、752。電気エネルギーは、CAPジョイント・ミキサー内の内側電極に印可される760。CAPジョイント・ミキサーの出力は、その後、例えば、呼吸顔マスク、鼻カニューレ、または気管内チューブによって、患者の呼吸器系に供給される770。
【0086】
呼吸器感染症を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システム800の別の実施形態は
図8Aを参照して説明される。ヘリウム・ガス供給源110は、電気外科発生器300に給送される。同時に、非加湿空気供給物150(フィード・ガス)は、2つのライン152、154に分割される。各ライン152、154は、マス・フロー・コントローラ(MFC)120によって制御される。ライン152内の空気ガス流は、H
2O充填済みコンテナ(加湿器130)を通過し、その後、混合チャンバ140に給送される。ライン114内の空気ガス流は、混合チャンバ140に直接給送される。こうして、ライン152、154上のマス・フロー・コントローラ120によって、チャンバ140を出る空気フィード内の相対的H
2O飽和を調整することができる。2つのライン152、154内での空気流の調整は、全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。チャンバ140内の空気の湿度は、較正済み高精度湿度および温度計142によって測定される。チャンバ140からの加湿済み空気140および酸素供給部160からの酸素は、人工呼吸器、CPAP機械、BIPAP機械、または他の知られている呼吸送達システム等の呼吸送達システム170に提供される。呼吸送達システム170は、排気、酸素、およびCO
2を混合し、調整し、その患者吸気の圧力、流量、比、および周波数を測定することになる。
【0087】
CAPジョイント・ミキサー200の出力は、送達部材190に接続され、送達部材190は、例えば、気管内チューブ、酸素CPAP(持続気道陽圧)、BIPAP(2相性気道陽圧)、人工呼吸器顔マスク、または鼻O2カニューレ190とすることができ、システムにより発生する活性種192、例えば、H2O2、NO2-、NO3-、ONOO-、および02-を患者の呼吸器系に送達する。
【0088】
本発明の好ましい実施形態による呼吸器感染症を処置するための方法であって、フィード・ガス(空気)が加湿されている、方法は、
図8Bを参照して説明される。加圧済みフィード・ガス(空気)は加湿器に供給される810。加圧済み空気は加湿器において加湿される820。酸素は、加圧済み空気流に付加される830。加湿済み空気および酸素流は、人工呼吸器または他の呼吸送達システムによって制御される840。同時に、ヘリウム等のCAPキャリア・ガスはCAP発生器に供給される812。CAP発生器からのCAPキャリア・ガスおよび人工呼吸器の出力は共に、CAPジョイント・ミキサーに供給される850、852。電気エネルギーは、CAPジョイント・ミキサー内の内側電極に印可される860。CAPジョイント・ミキサーの出力は、その後、例えば、呼吸顔マスク、鼻カニューレ、または気管内チューブによって、患者の呼吸器系に供給される870。プラズマが、例えば、内視鏡または腹腔鏡デバイスを通して患者に送達される本発明の他の実施形態が可能である。なおさらに、他の実施形態において、本発明は、CAPジョイント・ミキサーの出力を、例えば、腹腔鏡またはトロカールを介して腹部に給送することによって、腹部内のがんを処置することができる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態による内視鏡または腹腔鏡を介して患者を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システムは、
図9を参照して説明される。ヘリウム・ガス供給源110は、2つのライン112、114に分割され、2つのラインのそれぞれは、マス・フロー・コントローラ(MFC)120によって制御される。ライン112内のヘリウム・ガス流(50~1000mL/分)は、H
2O充填済みコンテナ(加湿器130)を通過し、その後、混合チャンバ140に給送される。ライン114内のヘリウム・ガス流は、混合チャンバ140に直接給送される。こうして、ライン112、114上のマス・フロー・コントローラ120によって、チャンバ140を出るガス内の相対的H
2O飽和を調整することができる。2つのライン112、114内のガス流の調整は、チャンバ140を出るガス流の全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。この実施形態における総ヘリウム流は、全ての場合に、0.5L/分~5L/分まで変動する可能性がある。チャンバ140内のヘリウム・ガスの湿度は、較正済み高精度湿度および温度計142によって測定される。チャンバ140からの加湿済みヘリウム・ガスは電気外科発生器300に給送される。種々の電気外科発生器が当技術分野で知られており、本発明と共に使用される可能性がある。寒冷大気圧プラズマ(CAP)発生器300に給送されるガスは、本明細書で「キャリア・ガス」と呼ばれる。
【0090】
同時に、非加湿空気供給物150(フィード・ガス)は、2つのライン152、154に分割される。各ライン152、154は、マス・フロー・コントローラ(MFC)120によって制御される。ライン152内の空気ガス流は、H
2O充填済みコンテナ(加湿器130)を通過し、その後、混合チャンバ140に給送される。ライン154内の空気ガス流は、混合チャンバ140に直接給送される。こうして、ライン152、154上のマス・フロー・コントローラ120によって、チャンバ140を出る空気フィード内の相対的H
2O飽和を調整することができる。2つのライン152、154内での空気流の調整は、全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。チャンバ140内の空気の湿度は、較正済み高精度湿度および温度計142によって測定される。チャンバ140からの加湿済み空気140および酸素供給部160からの酸素は、ガス制御システム171に接続される。代替の実施形態において、
図3Dに示すような複数のガス制御モジュール1000a、1000b、1000cを有する統合化ガス強化電気外科発生器を使用することができる。そのようなシステムにおいて、流動ヘリウム、空気、および酸素は全て、単一ハウジング内にあり単一化制御システムを有するガス・モジュールによって制御される。
【0091】
CAP発生器300の出力ならびにガス制御システム170からの加湿済み空気および酸素は、本明細書で「CAPジョイント・ミキサー」と呼ばれる誘電体バリア放電(DBD)アセンブリ200に接続される。グラウンド・ケーブル198は、CAPジョイント・ミキサー200の外側電極をCAP発生器300内のグラウンドに接続する。グラウンド・ケーブル198は、
図1のチュービング194と別個であると示されるが、グラウンド・ケーブル198が、例えば、チュービング194とハーネス内で結合される他の配置構成が可能である。H
2Oが存在するために、He
++e
-化学反応に至るヘリウムおよびH
2Oのイオン化が同時に起こることになる。寒冷プラズマ発生活性種(H
2O
2、NO
2-、NO
3-、ONOO
-、および02
-)が生成される。
【0092】
CAPジョイント・ミキサー200の出力は、細長い送達部材190aに接続され、送達部材190aは、例えば、そのスコープが、気管支スコープであれ、結腸スコープであれ、外科手術応用で使用される任意の他のタイプのスコープであれ、任意のタイプの内視鏡または腹腔鏡のチャネルに嵌合することになるサイズの硬質または柔軟性チューブとすることができる。
【0093】
フィード・ガス(空気)およびキャリア・ガス(ヘリウム)が共に加湿されている
図1Aに示す実施形態は、フィード・ガスおよびキャリア・ガスの一方のみが加湿されている実施形態に比べて、CAPジョイント・ミキサーにおいて高い湿度を提供する。
図1Aの実施形態において、湿度の増加によって、肺がん細胞について100%キル・レートを達成するために必要である処置時間は、フィード・ガスおよびキャリア・ガスの一方のみが加湿されている実施形態の場合の約17分に対して、5分に低減することができることを実験が示した。さらに、オゾンの生成は、
図7Aおよび8Aの実施形態の場合のほぼ20ppm(パーツ・パー・ミリオン)から
図1Aの実施形態の3ppm未満(約2ppm)に低減することができる。
【0094】
本発明によるガス制御モジュール1000は、ガス強化電気外科システムのために設計される。従来、ガス強化電気外科システムは、別個のハウジングを有する電気外科発生器およびガス制御ユニットを有する。従来のガス制御ユニットは、典型的には、アルゴン、CO2、またはヘリウム等の単一ガスのみを制御する。本発明は、ガス制御ユニット内で、または、電気外科発生器としてまたガス制御ユニットとして両方で機能する組み合わせ式ユニット内で使用することができるガス制御モジュール1000を使用する。さらに、本発明による複数のガス制御モジュールは、単一ガス制御ユニットまたは組み合わせ発生器/ガス制御ユニット内で組み合わされて、複数ガスの制御を提供し、アルゴン・ガス凝固、ハイブリッド・プラズマ電気外科システム、および寒冷大気圧プラズマ・システム等の複数のタイプのガス強化外科手術について制御を提供することができる。
【0095】
なおさらに、ヘリウムは、開示される実施形態で使用されるキャリア・ガスであるが、アルゴン、窒素、酸素、または空気等の他のガスが、キャリア・ガスとして使用されてもよい。
【0096】
好ましい実施形態が、人工呼吸器に関して説明されるが、持続気道陽圧(CPAP)システム等の他の医療呼吸デバイスが、本発明と共に使用される可能性がある。
【0097】
実験
空気のみが加湿された呼吸器感染症を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システムは、アルゴンCoagモードおよびSprayモードの発生器が、それぞれ3分間、100kHzに近い周波数で動作する状態で、12ウェル・プレート内の1mLリン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffer saline)を処置するために使用された。電圧は70Vであるように設定された。酸素および空気流量は共に、1LPMであるように設定された。酸素(O2)および空気の混合気はDI水を通した発泡によって加湿された。混合気の相対湿度(RH:relative humidity)は約80%である。ヘリウム、寒冷大気圧プラズマ(CAP)用のキャリア・ガスの流量は3LPMに設定された。したがって、気管内チューブからの最終出力ガスのO2パーセンテージは、O2-空気-ヘリウム混合気内で約24%であった。
【0098】
被処置溶液内のプラズマ発生活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)のカクテルの中で、過酸化水素(H2O2)および亜硝酸(NO2-)は、最も一般的に研究される長半減期種である。それらの濃度は、CAPオンまたはオフの状態で、Griess Reagent System(Promega、G2930)および比色法の過酸化水素アッセイ・キット(Hydrogen Peroxide Assay Kit)(Sigma-Aldrich、MAK311-1KT)を使用して、被処置リン酸緩衝生理食塩水(PBS)内で測定された。結果は、吸光度について550nmおよび595nmにおいてBioTekマイクロプレート・リーダーによってそれぞれ読み取られた。
【0099】
電気外科発生器は、典型的には、「cut」または切開動作モードあるいは「coag」または凝固動作モードを含む複数の動作モードを有する。cutモードは、典型的には、高いデューティ・サイクル、例えば、100%を有する低電圧波形(例えば、1KV)を有することになる。電気外科発生器のcoagモードは、典型的には、止血(凝固)を達成するために、大きい振幅であるが、短い継続時間の「スパイク(spike)」を有する波形を作成する。例えば、電気外科発生器に関するcoagモードは、6%デューティ・サイクルの高電圧波形を使用することができる。異なる程度の止血(凝固)は、いろいろの程度の「ブレンドした(blended)」波形、例えば、50%オン/50%オフ、40%オン/60%オフ、または25%オン/75%オフを利用することによって達成することができる。電気外科発生器は、アルゴン・プラズマ凝固モードまたは「アルゴンcoag」モードも有する。アルゴン・プラズマ凝固(APC:Argon Plasma Coagulation)は、電気外科ハンド・ピースから周囲空気内に排出する数ミリメートル径のアルゴン流のイオン化によって生成されるプラズマを利用する。cutモードと比較すると、発生器に関するアルゴン凝固モードは、高電圧(例えば、cutモードの場合、1KVに対してアルゴンcoagの場合、4KV)、より少ない電流(cutの場合、500mAに対してアルゴンcoagの場合、200mA)、およびより低い周波数(cutの場合、390KHzに対してアルゴンcoagの場合、30KHz)を使用することができる。電気外科発生器は、アルゴンcoagモードと同様である(同様の電圧および電流)「Sprayモード」も有するが、例えば、10~30KHzからの周波数のランダム・ウォークを有し、ランダム・ウォークは、異なる組織インピーダンスを周波数がカバーすることを可能にする。
【0100】
本システムの処置に関するH
2O
2およびNO
2-の濃度は、
図14Aおよび14Bにプロットされた。CAPがオンされた状態で、両方の種は、Sprayモードで処置されるときと比べて、アルゴンCoagモードで処置されるときに高い。ガスのみの処置も、対照として実施された。
図10Aおよび10Bに示すように、3分の処置によって、70VのアルゴンCoagモードは90μMのH
2O
2および18μMのNO
2-を発生した;一方、70VのSprayモードは、25μMのH
2O
2および検出不能な量のNO
2-を発生した。ガス混合気は単独で、有意の量のROSおよびRNSを発生しない。
【0101】
CAPプラズマ人工呼吸器妥当性確認
寒冷大気圧プラズマは、空中浮遊ウイルスの不活化(Xia, t.等「Inactivation of airborne viruses using a packed bed non-thermal plasma reactor」Journal of Physics D:Applied Physics,2019. 52(25))、CAP処置中に正常肝臓機能を保ちながらの肝炎Bウイルスの失活(Shi, X.-M.等「Effect of Low -Temperature Plasma on Deactivation of Hepatitis B Virus」IEEE Transactions on Plasma Science,2012.40(10):p.2711-2716)、HIV複製の阻止(Volotskova,O.等「Cold Atmospheric Plasma Inhibits HIV-1 Replication in Macrophages by Targeting Both the Virus and the Cells」PLoS One,2016.11(10):p.e0165322)、ワクチン調製のために抗原決定基を破壊することのないニューカッスル病ウイルスおよび鳥インフルエンザウイルスの不活化(Wang,G.等「Non-thermal plasma for inactivated-vaccine preparation」Vaccine,2016.34(8):p.1126-32)等を誘発することが報告された。この研究において、CAPは、人工呼吸器システムと組み合わされて、患者の呼吸器系全体を通したCAPの送達ならびにウイルスの処置を達成する。
【0102】
Wu等(Wu,Y.等「MS2 virus inactivation by atmospheric-pressure cold plasma using different gas carriers and power levels」Appl Environ Microbiol,2015.81(3):p.996-1002)は、キャリア・ガスとしての周囲空気が、ガス・キャリアAr-O2(2%、vol/vol)およびHe-O2(2%、vol/vol)を伴って、20および24Wの電力レベルにおいて最も高いレベルの不活化を生成したことを示した。さらに、空気は、全ての人工呼吸器についての必要とされる入力ガスである。したがって、キャリア・ガスとしての空気は、CAP装備人工呼吸器についての最良のオプションである。空気の重要な因子としての相対湿度(RH)は、放電電圧(V)および処置時間(t)を含むCAP処置パラメータに加えて、最適構成について研究されることになる。
【0103】
CAPによって発生した活性種
CAPによって発生した活性種は、発光分光分析(OES:optical emission spectroscopy)を使用してプラズマ・ビーム内で、また、種に基づくキットによって水性溶液内で確認することができる。
【0104】
プラズマ・ビーム内の活性種
発光分光分析器(Ocean Optics HR2000)が使用されて、200~900nmの範囲内のプラズマ・ビーム内の種を検出する。プラズマ発光は、コリメーティング・レンズを使用して、プラズマ・ビーム軸に垂直な方向にかつ軸方向に1mm増分で収集される。プラズマ発光は、光ファイバを介して分光計に伝達される。
【0105】
溶液内の活性種
Kondeti等は、CAP処置済み生理食塩水および水内で発生した種に関する徹底的な調査を、それらの半減期に基づいて行った。Kondeti,V.等「Long-lived and short-lived reactive species produced by a cold atmospheric pressure plasma jet for the inactivation of Pseudomonas aeruginosa and Staphylococcus aureus」Free Radic Biol Med,2018.124:p.275-287。Kondeti等は、プラズマが生理食塩水と直接接触状態でなかったときに、長半減期種が主要な役割を果たし;一方、プラズマが液体に接触したときに、短半減期種がより重要であった、と結論付けた。NO2-およびH2O2のようなCAP処置済み溶液内の長半減期種の濃度は、CAPオンまたはオフの状態で、Griess Reagent System(Promega、G2930)および蛍光法過酸化水素アッセイ・キット(Sigma-Aldrich、MAK165-1KT)を使用して、空気流処置済みリン酸緩衝生理食塩水(PBS)内で測定することができる。結果は、吸光度の場合540nmでまた蛍光の場合540/590nmでBioTekマイクロプレート・リーダーによってそれぞれ読み取られることになる。
【0106】
オゾンは、人間の健康に有害な影響を及ぼす可能性があるため、CAPベース人工呼吸器についての懸念となる可能性がある。オゾン濃度は、人工呼吸器の排気時に測定され、空気質基準に合うようにフィルタによって低減されるべきである。
【0107】
細胞に対するCAPの影響
肺がん細胞株A549は、CAP処置の有効性について使用されることになる。空気流のみの処置は、対照群として使用されることになる。細胞の生存率は、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-yl)-2,5-ジフェニル・テトラゾリウム・ブロミド(MTT)アッセイによって評価されることになる。
【0108】
結論として、調整済み構成によって、CAPベース人工呼吸器は、肺炎、COVID-19、または肺がんのような呼吸器疾患を有する患者に利益をもたらす可能性がある。
【0109】
CAPプラズマ・ウイルス不活化妥当性確認
COVID-19および重症急性呼吸器症候群(SARS:severe acute respiratory syndrome)等の呼吸器疾患を引き起こすウイルスは、感染ウイルスを含むエアロゾル化された液滴によって伝達される。寒冷大気圧プラズマ(CAP)は、過酸化水素(H2O2)、1重項酸素(1O2)、オゾン(O3)、一酸化窒素(・NO)、およびヒドロキシ・ラジカル(・OH)等の多数の活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)、ならびに、電子、イオン、および光子を発生し、・OH、1O2、・NO、O2
・
-、・NO2、およびONOO-は短半減期種であり、一方、H2O2、NO2-、およびNO3-は長半減期種である。CAPがウイルスおよび他の病原菌を不活化することができることを、種々の研究が示した。CAPによるウイルスの考えられる不活化メカニズムは、多数のフリー・ラジカルを生成することによって高い酸化還元電位(ORP:oxidation-reduction potential)および電気伝導率に導くことによる。活性酸素および窒素種は、炭水化物と反応し、脂肪酸側鎖の脂質過酸化反応および架橋結合を始動させることができ、化学結合および分子構造の変質をもたらす。両者は、タンパク質過酸化反応を引き起こし、ウイルス・エンベロープの破壊を誘起することによって、酸化ストレスを誘起し、1重項酸素は、システインと急速に反応して、ジスルフィドを有するシスチンの主生成物(R-cys-S-S-cys-R)を発生することができ、両者は、チロシン、トリプトファン、およびヒスチジンと選択的に反応して、ヒドロオペルオキシドを生成し、タンパク質凝集をもたらし、最終的に、ウイルス形態に対する変化をもたらす。さらに、両者は、グアニンを酸化することによって、酵素をコードするウイルス核酸を損傷し、遺伝子発現の低減およびウイルス複製の排除に寄与する、グアニンとリシンとの間の架橋結合を誘起することができ、それにより、ウイルス不活化につながる。本発明の寒冷プラズマ・システムは、加湿済みセットアップにおいてイオン化寒冷プラズマを発生して、気管内チューブを介してウイルス感染患者に給送される活性種を生成する。システムの出力は、患者の気管支細胞内に存在するウイルスを不活化することになる活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)を含む。
【0110】
人上皮肺がん細胞株A549(ATCC, CCL-185)は、本発明の有効性を研究するために使用された。A549細胞は、12ウェル・プレート内で105/ウェルの密度で培養され、最大17分間処置された。周波数はほぼ100kHzであった。電圧は70Vであるように設定された。ヘリウム、寒冷大気圧プラズマ(CAP)用のキャリア・ガスの流量は3LPMに設定された。酸素(O2)および空気の総流量は、2LPMであるように設定された。気管内チューブからの最終出力ガスのO2パーセンテージは、O2-空気-He混合気内で、約16、24、および32%であった。
【0111】
O2および空気混合気のフィード・ガスまたはHeは、DI水を通した発泡によって加湿された。加湿済みガスの相対湿度(RH)は、湿度センサによって常に測定された。
【0112】
ブルー・テトラゾリウム臭化チアゾリル(MTT)は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)から購入され、生存率アッセイは、製造業者のプロトコルに従って、CAP処置後48時間、実施された。結果は、吸光度について570nmにおいてBioTekマイクロプレート・リーダーによって読み取られた。
【0113】
本発明によって処置されたA549細胞の生存率は、
図10C~10Eに示すようにプロットされた。
図10Cは、最大4分間、空気混合気湿度調整を有する本発明のセットアップによって処置されたA549細胞の生存率を示す。A549細胞の生存率は、処置時間を増加することに伴って徐々に減少した。4分の処置によって、生存率は60%に減少した(処置なしと比較して)。酸素割合がガス混合気内で増加することは、
図10Cから、処置の弱化効果を示した。
【0114】
フィード・ガス内に24%O
2を有する同じセットアップは、その後、最大17分間、細胞を処置するために使用された(
図10D)。細胞生存率は、処置なしに比較して、処置の10分後に40%より低い値に減少し、細胞は、処置の17分後に完全に排除された。
【0115】
17分間のヘリウム湿度調整によってヘリウムのみが加湿されているセットアップによって処置されると、全てのがん細胞は、CAP処置によっても排除された(
図10Eに示すデータ)。
【0116】
加湿済み空気/O2混合気および加湿済みヘリウムによる処置の効果
A549細胞は、2LPMの流量(O2割合24%)の100%加湿済み空気/O2混合気(1:1 v/v)によって処置された。ヘリウム流量は3LPMであり、湿度は、0%、50%、および100%に設定された。
【0117】
処置なしのA549細胞は、培養皿にしっかり付着し、核は無傷であった。この実験における対照は、10分間、空気/O2およびHe混合気処置された。細胞は、処置なしと比較して、形態変化を全く示さなかった。
【0118】
He湿度が0%に設定される(乾燥ヘリウム)と、細胞は、寒冷プラズマ・システム処置の5分以内に収縮し始めたが、かなりの量の細胞は生存能力があった。処置時間を10分まで増加した後、細胞死が同定された。
【0119】
He湿度が50%まで増加されると、5分の処置時間で、細胞は、収縮および膜のブレブ形成を示した。細胞収縮は、10分処置時間でより深刻であり、死細胞は、浮遊パターンで可視化された。
【0120】
He湿度が、5または10分の処置で100%まで増加されると、ほとんど全ての細胞は、断片化され、生存能力がなかった。
【0121】
MTT生存率アッセイは細胞に対して実施された。結果は、
図10Fに示される。0%のHe湿度(乾燥He)および5分処置時間は、生存率を60%まで減少させ、10分で、生存率は、処置なしと比較して、40%まで減少した。He湿度が50%または100%に設定されると、5または10分の処置で、生存能力がある細胞は存在しなかった。
【0122】
より包括的な研究が、A549細胞の排除のために必要とされる最小処置時間を決定するために実施された。A549細胞は、2LPMの流量(O2割合24%)の加湿済みまたは乾燥空気/O2混合気(1:1 v/v)によって、1~5分間、処置された。ヘリウム流量は3LPMであり、湿度は、0%、50%、および100%に設定された。画像は、CAP処置後24時間で採取された。
【0123】
本発明の好ましい実施形態によるシステムによって、1~5分間、加湿済みまたは乾燥空気/O2混合気および種々の湿度のHeによって処置されたA549細胞の位相コントラスト画像が採取された。He湿度が0%に設定される(乾燥ヘリウム)と、細胞数は、5分の処置で減少し始めたが、細胞形態は著しく変化しなかった;He湿度が50%に設定されると、細胞数は、4分の処置で、減少し始めた;He湿度が100%に設定されると、細胞数は、2分の処置で、減少し始め、細胞膜および核は、4分の処置で、著しく収縮し始めた。空気/O2の湿度は、有意の形態変化を誘起しなかった。
【0124】
MTT生存率アッセイは細胞に対して実施された(
図10Gおよび10H)。0%のHe湿度(乾燥He)は、5分の処置においてさえも、処置なしと比較して、細胞死をそれほど誘起しなかった。He湿度が50%に設定されると、細胞生存率は、処置時間の増加に伴って徐々に減少した。約50%の細胞は、5分の処置で生存能力があった。He湿度が100%に設定されると、3分のCAP処置は、生存率を50%未満に減少させることができ、4分のCAP処置は、細胞を完全に排除した。空気/O
2の湿度は、生存率データの有意の差をもたらさなかった。これらの結果に基づいて、肺がん細胞を根絶するために、ヘリウムの加湿が、寒冷プラズマ・システムについての決定的因子であると結論付けることができる。
【0125】
空気流から酸素流を分離すること
本発明の第1の好ましい実施形態による、呼吸器感染症を処置するための寒冷大気圧プラズマ・システムは、
図11を参照して説明される。ヘリウム・ガス供給源110は、2つのライン1112、1114に分割され、2つのラインのそれぞれはマス・フロー・コントローラ(MFC)1120によって制御される。ライン1112内のヘリウム・ガス流(50~1000mL/分)は、H
2O充填済みコンテナ(加湿器1130a)を通過し、その後、混合チャンバ1140aに給送される。ライン1114内のヘリウム・ガス流は、混合チャンバ1140aに直接給送される。こうして、ライン1112、1114上のマス・フロー・コントローラ1120によって、チャンバ1140aを出るガス内の相対的H
2O飽和を調整することができる。2つのライン1112、1114内でのガス流の調整は、チャンバ1140aを出るガス流の全体の流量および湿度の微調整を可能にする。湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。この実施形態における総ヘリウム流は、全ての場合に、0.5L/分~5L/分まで変動する可能性がある。チャンバ1140a内のヘリウム・ガスの湿度は、例えば、較正済み高精度湿度および温度計(図示せず)によって測定することができる。チャンバ1140aからの加湿済みヘリウム・ガスは、本明細書で「寒冷大気圧プラズマ(CAP)発生器」と呼ばれる電気外科発生器300に給送される。種々の電気外科発生器が、当技術分野で知られており、本発明と共に使用することができる。寒冷大気圧プラズマ(CAP)発生器300に給送されるガスは、本明細書で「キャリア・ガス」と呼ばれる。
【0126】
同時に、非加湿空気供給物1150(フィード・ガス)は、マス・フロー・コントローラ(MFC)1120によって制御される。空気ガス流は、第2のH2O充填済みコンテナ(加湿器1130b)を通過し、その後、混合チャンバ1140bに給送される。同時にまた、非加湿で加圧済みの第3のガスの供給源1160、この場合、酸素は、第3のH2O充填済みコンテナ(加湿器1130c)に接続される。加湿済みの第3のガス(酸素)は、チャンバ1140bに給送され、そこで、加湿済みの第3のガスが加湿済み空気と混合する。こうして、空気および酸素ライン上のマス・フロー・コントローラ(MFC)1120によって、チャンバ1140bを出る相対的酸素パーセンテージを調整することができる。空気および酸素のそれぞれの湿度は、20%~100%の範囲内とすることができ、少なくとも70%の好ましい湿度を有する。チャンバ1140b内の混合気の湿度は、例えば、較正済み高精度湿度および温度計(図示せず)によって測定することができ、酸素含有量は、例えば、酸素センサによって測定することができる。チャンバ1140bからの加湿済み空気および酸素は、人工呼吸器、CPAP機械、BIPAP機械、または他の知られている呼吸送達システム等の呼吸送達システム1170に提供される。呼吸送達システム1170は、排気、酸素、およびCO2を混合し、調整し、その患者吸気の圧力、流量、比、および周波数を測定することになる。呼吸送達システム170の出力は、例えば、チュービング1174およびコネクタ1176を介してCAPジョイント・ミキサーに接続される。
【0127】
CAP発生器300および呼吸送達システム1170の出力は、本明細書で「CAPジョイント・ミキサー」と呼ばれる誘電体バリア放電(DBD)アセンブリ200に接続される。グラウンド・ケーブル1198は、CAPジョイント・ミキサー200の外側電極をCAP発生器300内のグラウンドに接続する。グラウンド・ケーブル1198は、
図11のチュービング1194と別個であると示されるが、グラウンド・ケーブル1198が、例えば、チュービング1194とハーネス内で結合される他の配置構成が可能である。H
2Oが存在するために、He
++e
-化学反応に至るヘリウムおよびH
2Oのイオン化が同時に起こることになる。寒冷プラズマ発生活性種(H
2O
2、NO
2-、NO
3-、ONOO
-、および02
-)が生成される。
【0128】
CAPジョイント・ミキサー200の出力は、送達部材1190に接続され、送達部材1190は、例えば、気管内チューブ、酸素CPAP(持続気道陽圧)、BIPAP(2相性気道陽圧)、人工呼吸器顔マスク、または鼻O2カニューレ1190とすることができ、システムにより発生する活性種1192、例えば、H2O2、NO2-、NO3-、ONOO-、および02-を患者呼吸器系に送達する。
【0129】
オゾン測定
本発明の好ましい実施形態によるシステムにより発生したオゾン(O
3)は、オゾン検出器(Forensics detectors、CA)によって気管内チューブの端部で測定された。測定は、上記で試験された全ての設定を用いて実施された、すなわち、CAPは、2LPMの流量(O
2割合24%)の加湿済みまたは乾燥空気/O
2混合気(1:1 v/v)と共に70Vに設定され、ヘリウム流量は3LPMであり、湿度は、0%、50%、および100%に設定された。オゾン・レベルは
図14Aに示された。同じヘリウム湿度において、乾燥空気/O
2は、加湿済み空気/O
2と比較してより高いO
3レベルをもたらした(yield)。ヘリウムのより高い湿度は、より高い濃度のO
3を発生し、それは、
図10Gおよび10Hで先に示したように、細胞に対するより強い低減効果をもたらした。この対応は、本発明の好ましい実施形態によるシステムにより発生したカクテルにおいてO
3が決定的な種であることを示す。
図14Bは、オゾン生成レートがより低い電圧で著しく減少したことを示す。したがって、安全のために、70Vの代わりに、35または40Vが、細胞生存率を試験するために使用された(
図13Aおよび13B)。O
3生成レートは、別々の空気およびO
2注入(
図14B)と比較して、空気およびO
2が混合気としてシステムに給送されたとき(
図14B)に高かった。
【0130】
しかしながら、寒冷プラズマ・システムであって、上記で示した設定を有する、すなわち、CAPが、2LPMの流量(O
2割合24%)の加湿済みまたは乾燥空気/O
2混合気(1:1 v/v)と共に70Vに設定され、ヘリウム流量が3LPMであり、湿度が、0%、50%、および100%に設定された、寒冷プラズマ・システムは、OSHA基準による安全限界を超える大量のオゾン(セクション2に示したデータ)を生成した。オゾン発生を低下させるために、より低い電圧(35~40V)が、細胞を処置するために利用された。空気/O
2混合気内の酸素の存在がオゾン生成を刺激するため、空気およびO
2は、ジョイントCAPミキサーに入って別々に融合されて、O
3形成を低下させる。低いO
3レベル(すなわち、より低い電圧および空気およびO
2の分離)を有する設定で処置されたA549細胞の生存率データは、
図14Aおよび14Bに示される。
【0131】
空気およびO
2が混合気としてシステムに付加される(
図13A)と、がん生存率を減少させることに関するCAPの能力は、空気およびO
2がシステムに対して別々に融合された場合(
図13B)と比較して高い。空気/O
2混合気による40Vにおける8分のCAP処置または空気およびO
2分離による40Vにおける15分のCAP処置は、がん細胞生存率を5パーセント未満まで低下させることができた。
【0132】
被処置媒体における活性種検出
本発明の好ましい実施形態によるシステムは、連続してまたは所定間隔で8または15分間、アルゴン凝固モードによって12ウェル・プレート内の1mLリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を処置するために使用された。所定間隔の処置の場合、CAPは、各間隔の間に5分休止がある状態で、3+3+2分または4+4+4+3分方式で投与された。電圧は35または40Vに設定された。ヘリウム、O2、空気は全て加湿された。ヘリウムの流量は3LPMに設定された。酸素流量および空気流量は共に、1LPMに設定された。
【0133】
被処置溶液内のカクテル・プラズマ発生活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)の中で、過酸化水素(H2O2)、亜硝酸(NO2-)、および硝酸(NO3-)は、最も一般的に研究される長半減期種である。それらの濃度は、CAPオンまたはオフの状態で、比色法過酸化水素アッセイ・キット(Sigma-Aldrich、MAK311-1KT)、Griess Reagent System(Promega、G2930)、および比色法亜硝酸/硝酸アッセイ・キット(Sigma-Aldrich 23479)を使用して、被処置PBS内で測定された。結果は、吸光度について595nm、550nm、および540/570nmにおいてBioTekマイクロプレート・リーダーによってそれぞれ読み取られた。
【0134】
本発明の好ましい実施形態によるシステムによるH
2O
2、NO
2-、およびNO
3-の濃度がプロットされた。先の生存率データは、40Vにおいて、空気およびO
2混合気セットアップによる8分間の連続処置または空気およびO
2分離セットアップによる15分間の連続処置は共に、A549の生存率を5%未満に低下させることができることを証明した。
図15A~15Cに示すように、40Vでの空気およびO
2混合気セットアップの8分は、3+3+2分間隔処置が470μMのH
2O
2、12.5μMのNO
2-、および2.2μMのNO
3-を発生したことと比較して、725μMのH
2O
2、11.9μMのNO
2-、および3.3μMのNO
3-を発生し、一方、40Vでの空気およびO
2分離セットアップの連続15分は、4+4+4+3分間隔処置が952μMのH
2O
2、45μMのNO
2-、および12μMのNO
3-を発生したことと比較して、806μMのH
2O
2、33μMのNO
2-、および4.3μMのNO
3-を発生した。硝酸(NO
3-)は、設定のほとんどにおいて、低過ぎて検出できなかった。ガス混合気は、単独で、有意の量のROSまたはRNSを発生しない。
【0135】
8分連続処置の場合、H2O2は、5LPMのガス流を用いたCAP処置による1mLの媒体内で発生した。検出された種は以下の通りであった:
・724×10-6mol/l×34g/mol=24.6×10-3mg/mL=H2O2の24.6g/m3は、40Lのガス混合気によって発生した、
・H2O2レベルは、24.6×10-3/40=0.615×10-3mg/L=0.615mg/m3である、
・3+3+2分間隔処置の場合、H2O2レベルは0.4mg/m3である、
・15分連続処置の場合、H2O2レベルは0.365mg/m3である、
・4+4+4+3分間隔処置の場合、H2O2レベルは0.43 mg/m3である。
【0136】
全ての場合に、0.615、0.4、0.38、および0.42mg/m3は、1.4mg/m3である、H2O2についてのNIOSHおよびOSHA許容可能曝露限界より低い(https://www.cdc.gov/niosh/npg/npgd0335.html)。
【0137】
本発明の好ましい実施形態の上記説明は、例証および説明のために提示された。網羅的であることまたは開示される正確な形態に本発明を限定することは意図されず、変更および変形が、上記教示を考慮して可能である、または、本発明の実施から得られることができる。企図される特定の使用に適するように当業者が種々の実施形態で本発明を利用することを可能にするため、本発明の原理およびその実用的な応用を説明するために実施形態が選択され説明された。本発明の範囲が、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって規定されることが意図される。上記文書のそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】