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  • 特表-炭化水素の合成プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】炭化水素の合成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 2/00 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
C10G2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504774
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 GB2021052421
(87)【国際公開番号】W WO2022079407
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】2016416.6
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518329767
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ デイヴィー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】クラクストン、ヘンリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】コー、アンドリュー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】マッケナ、マーク ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】タイスハースト、ポール ロバート
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA12
4H129BC43
4H129BC45
4H129KA15
4H129KB02
4H129KD22Y
4H129NA21
4H129NA43
4H129NA45
(57)【要約】
(a)合成ガス生成ユニット内で、供給原料から、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む合成ガスを製造する工程と、(b)二酸化炭素除去ユニット内で、上記合成ガスから二酸化炭素を除去し、二酸化炭素流、並びに、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガスを生成する工程と、(c)フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット内で、FT水流を共生成しながら、精製合成ガスから炭化水素の混合物を合成する工程と、を含む、炭化水素の合成プロセスであって、(i)上記FT水流の少なくとも一部分が電解ユニットに供給され、上記合成ガス生成ユニットに供給される酸素流、及び、水素流を提供し、(ii)上記二酸化炭素除去ユニットから回収される上記二酸化炭素流の少なくとも一部分、及び、上記電解ユニットにより生成される水素流の一部分が、逆水性ガスシフトユニットに供給され、一酸化炭素流を生成し、(iii)上記逆水性ガスシフトユニットからの一酸化炭素流の少なくとも一部分が、上記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給される、プロセスを記載する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)合成ガス生成ユニット内で、供給原料から、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む合成ガスを製造する工程と、(b)二酸化炭素除去ユニット内で、前記合成ガスから二酸化炭素を除去し、二酸化炭素流、並びに、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガスを生成する工程と、(c)フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット内で、FT水流を共生成しながら、前記精製合成ガスから炭化水素の混合物を合成する工程と、を含む、炭化水素の合成プロセスであって、(i)前記FT水流の少なくとも一部分が前記電解ユニットに供給され、前記合成ガス生成ユニットに供給される酸素流、及び、水素流を提供し、(ii)前記二酸化炭素除去ユニットから回収される前記二酸化炭素流の少なくとも一部分、及び、前記電解ユニットにより生成される前記水素流の一部分が、逆水性ガスシフトユニットに供給され、一酸化炭素流を生成し、(iii)前記逆水性ガスシフトユニットからの前記一酸化炭素流の少なくとも一部分が、前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給される、プロセス。
【請求項2】
前記供給原料が天然ガス、随伴ガス、石炭、バイオマス若しくは都市固形廃棄物、又は、非生物起源炭素を含有する同等物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記供給原料が天然ガスであり、前記合成ガス生成ユニットが、触媒部分的酸化ユニット、非触媒部分的酸化ユニット又は自己熱改質器を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記供給原料が石炭、バイオマス、若しくは都市固形廃棄物、又は非生物起源炭素を含有する同等物であり、前記合成ガス生成ユニットが、任意に、部分的酸化ユニット、タール改質ユニット、及び、精製材料を収容する精製反応器から選択される1つ以上の下流処理ユニットを備えたガス化装置を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記二酸化炭素除去ユニットが、物理的洗浄システム又は反応性洗浄システムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットが、フィッシャートロプシュ触媒を含有する触媒担体が冷却媒体によって冷却される1つ以上の管内に配置される管状反応器を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
水素化処理ユニット内の前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットで合成された炭化水素の混合物を品質向上して、炭化水素生成物を生成する工程(d)を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記水素化処理ユニットが、水素化異性化触媒、水素化触媒、水素化脱酸素触媒、及び/又は水素化分解触媒から選択される触媒を収容する1つ以上の容器を含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記電解ユニットからの前記水素流の一部分が、前記水素化処理ユニットに供給される、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記逆水性ガスシフトユニットにより生成される水流が前記電解ユニットに供給される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記電解ユニットからの前記水素流の一部分が前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記電解ユニットによって提供される酸素流を使用して、前記逆水性ガスシフトユニットに供給される二酸化炭素及び水素を含む供給ガスの一部分を燃焼させて、前記供給ガスの温度を上昇させる、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記逆水性ガスシフトユニット内で形成される水が前記電解ユニットに供給される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
メタン、エタン、プロパン、ブタン、及びC5~C10炭化水素のうちの1つ以上を含むテールガスが前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットから回収され、前記合成ガス生成ユニットに供給される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
メタン、エタン、プロパン、ブタン、及びC5~C10炭化水素のうちの1つ以上を含むテールガスが前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットから回収され、別個の改質工程にかけられて水素を含有する改質テールガスを形成し、前記改質テールガスが前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット及び/又は前記逆水性ガスシフトユニットに供給される、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記水素化処理ユニットから回収された前記炭化水素生成物が別個のユニットに供給され、C1~C4ガス、ナフサ留分、少なくとも1種の灯油及び/又は軽油留分、並びに重質留分が回収される、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
(a)供給原料から、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む合成ガスを製造するための合成ガス生成ユニットと、(b)前記合成ガスから二酸化炭素を除去し、二酸化炭素流、並びに、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガスを生成するための、前記合成ガス生成ユニットに連結された二酸化炭素除去ユニットと、(c)FT水流を共生成しながら、前記精製合成ガスから炭化水素の混合物を合成するための、前記二酸化炭素除去ユニットに連結されたフィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットと、を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセスを実施するためのシステムであって、(i)電解ユニットが、前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに連結されており、FT水の少なくとも一部分と共に供給され、前記合成ガス生成ユニットに供給されるように構成されている酸素流、及び、水素流を生成するように構成されており、(ii)逆水性ガスシフトユニットが、前記二酸化炭素除去ユニット及び前記電解ユニットに連結されており、前記二酸化炭素除去ユニットから、前記二酸化炭素流の少なくとも一部分、及び、前記電解ユニットにより生成された前記水素流の一部分と共に供給され、一酸化炭素流を生成するように構成されており、(iii)前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットが前記逆水性ガスシフトユニットに連結され、前記一酸化炭素流の少なくとも一部分を受ける、システム。
【請求項18】
炭化水素の混合物を品質向上して炭化水素生成物を生成するための、前記フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに連結された水素化処理ユニットを更に含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び一酸化炭素を含む合成ガスから炭化水素を合成するプロセスに関する。
【0002】
合成ガスから炭化水素を合成するプロセスは公知である。例えば、米国特許第9163180号は、非化石資源から生じる水素の生成段階及び逆水性ガス反応段階を含む、直接沸騰床液化及びガス化による間接液化とそれに続くフィッシャートロプシュ合成とを組み合わせたハイブリッド経路による炭素系材料の燃料ベースへの変換のためのプロセスについて開示している。電解は、液化、逆水性反応及びフィッシャートロプシュ合成のための水素源として使用される。米国特許第2014288195号は、バイオマスなどの炭素系供給原料を、主に水素及び一酸化炭素を含有する合成ガスに熱化学変換するためのプロセスであって、以下の工程:(a)電気及び熱のコジェネレーションを生成するための炭素系供給原料の酸素燃焼;(b)工程(a)で生成された熱を使用する水の高温電解;(c)工程(a)で生成された二酸化炭素及び工程(b)で生成された水素から出発する逆水性ガスシフト反応、を含む、プロセスを開示している。
【0003】
本発明者らは、プロセス効率が、逆水性ガスシフトユニット及びフィッシャートロプシュ合成ユニットに連結された電解ユニットにおいてフィッシャートロプシュ合成の水副生成物を使用することによって高まったことを認識した。
【0004】
したがって、本発明は、(a)合成ガス生成ユニット内で、供給原料から、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む合成ガスを製造する工程と、(b)二酸化炭素除去ユニット内で、合成ガスから二酸化炭素を除去し、二酸化炭素流、並びに、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガスを生成する工程と、(c)フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット内で、FT水流を共生成しながら、精製合成ガスから炭化水素の混合物を合成する工程と、を含む、炭化水素の合成プロセスであって、(i)FT水流の少なくとも一部分が電解ユニットに供給され、合成ガス生成ユニットに供給される酸素流、及び、水素流を提供し、(ii)二酸化炭素除去ユニットから回収される二酸化炭素流の少なくとも一部分、及び、電解ユニットにより生成される水素流の一部分が、逆水性ガスシフトユニットに供給され、一酸化炭素流を生成し、(iii)逆水性ガスシフトユニットからの一酸化炭素流の少なくとも一部分が、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給される、プロセスを提供する。
【0005】
本発明は更に、(a)供給原料から、水素、一酸化炭素、及び二酸化炭素を含む合成ガスを製造するための合成ガス生成ユニットと、(b)合成ガスから二酸化炭素を除去し、二酸化炭素流、並びに、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガスを生成するための、合成ガス生成ユニットに連結された二酸化炭素除去ユニットと、(c)FT水流を共生成しながら、精製合成ガスから炭化水素の混合物を合成するための、二酸化炭素除去ユニットに連結されたフィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットと、を含む、プロセスを実施するためのシステムであって、(i)電解ユニットが、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに連結されており、FT水の少なくとも一部分と共に供給され、合成ガス生成ユニットに供給されるように構成されている酸素流、及び、水素流を生成するように構成されており、(ii)逆水性ガスシフトユニットが、二酸化炭素除去ユニット及び電解ユニットに連結されており、二酸化炭素除去ユニットから、二酸化炭素流の少なくとも一部分、及び、電解ユニットにより生成された水素流の一部分と共に供給され、一酸化炭素流を生成するように構成されており、(iii)フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットが逆水性ガスシフトユニットに連結され、一酸化炭素流の少なくとも一部分を受ける、システムを提供する。
【0006】
本発明では、二酸化炭素除去ユニットによって合成ガスから回収された二酸化炭素は、FT水電解ユニットからの水素と合流し、逆水性ガスシフトユニットで使用され、追加の一酸化炭素を生成し、これはフィッシャートロプシュ合成に送られて炭化水素生成物収率を増加させる。FT水電解は、太陽、風又は潮力などの再生可能な供給源からの電気を都合よく使用してもよい。再生可能な電気を使用することによって、プロセスの全体的な炭素強度は負になり得、全体的に負の二酸化炭素排出をもたらす。これにより、炭素捕捉及び貯蔵の必要性もまた回避される。全体として、本発明のプロセスは、供給原料からの液体燃料の生成を最大にし、二酸化炭素排出を減少させるのに役立つ。
【0007】
本発明のプロセスにおいて、プロセスに供給される供給原料は、天然ガス若しくは随伴ガスなどの気体供給原料、又は石炭、バイオマス若しくは都市固形廃棄物若しくは非生物起源炭素を含有する同等物などの固体供給原料を好適に含んでもよい。したがって、供給原料は、石炭、バイオマス、藻類、固体炭化水素廃棄物、産業用ポリマー、有機廃棄物及び/又は家庭用プラスチックを含んでもよい。これらの供給原料は、単独で用いてもよく、これらの2つ以上の同じ割合又は異なる割合での混合物として用いてもよい。供給原料はまた、フィッシャートロプシュ合成から、又は供給原料のガス化から生じる流出物の一部分を含んでもよい。油及び/又は油の精製から得られる液体供給原料、これらの供給原料の熱化学変換又は熱水変換から得られる生成物を使用してもよい。本発明は、合成ガスが石炭、都市固形廃棄物又は同等物及びバイオマス供給原料から生成され、天然水素対一酸化炭素比が典型的には効率的なフィッシャートロプシュ合成に必要な2:1比よりも低い場合に、顕著な相乗効果を提供する。特に好ましい供給原料は、バイオマス、都市固形廃棄物若しくは非生物起源炭素を含有する同等物又はこれらの混合物である。
【0008】
気体供給原料は、望ましくは、合成ガス生成ユニットの上流で硫黄、水銀又は塩素化合物などの揮発性汚染物質を除去するように処理され、これはこれらの汚染物質が改質、逆水性ガスシフト及びフィッシャートロプシュ触媒を被毒することがあるためである。これらの汚染物質に好適な吸着剤は公知である。
【0009】
合成ガス生成ユニットは、供給原料を、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含む合成ガスに変換する任意のユニットであってよい。供給原料の性質に応じて、様々な合成ガス生成技術が好ましい場合がある。例えば、供給原料が天然ガスである場合、合成ガス生成ユニットは、好ましくは、触媒部分的酸化ユニット、非触媒部分的酸化ユニット又は自己熱改質器を含む。あるいは、供給原料が石炭、バイオマス若しくは都市固形廃棄物又は非生物起源炭素を含有する同等物である場合、合成ガス生成ユニットは、好ましくはガス化装置を含む。任意の既知のガス化技術を使用してもよい。好ましくは、ガス化は部分的酸化によって行われ、これは、原料合成ガスを得るために、空気又は酸素を用いて、概ね800℃~1600℃の高温で、化学量論量未満の条件下で供給原料を燃焼させることを含む。窒素を含まない合成ガスが所望である場合、このプロセスは、例えば空気分離ユニット(ASU)などの従来技術による空気蒸留によって生成される酸素を使用する。ガス化は、合成ガス、及び、タール油を含む残留画分を生成する。合成ガスは、概して、一酸化炭素、水素、水蒸気及び二酸化炭素を含むガス混合物である。更に、合成ガスは、典型的には、硫黄含有、窒素含有、及びハロゲン含有不純物を含む。一般的な硫黄含有不純物は、硫化カルボニル(COS)及び硫化水素(HS)である。これらの不純物は、存在する場合、望ましくは、洗浄(吸収)によって、原料合成ガスを好適な吸着剤の1つ以上の床に通すことによって、又はこれらの混合によって、1つ以上の汚染物質除去段階を使用して、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットの上流で除去される。合成ガス精製は、二酸化炭素除去ユニットの前及び/又は後の1つ以上の段階で行われてもよい。
【0010】
合成ガス生成ユニットは、電解ユニットによって提供され得る酸素を消費する。これは、空気分離プラントにおける資本投資を低減するという利点を有し、及び/又は必要に応じて、空気分離プラントによる電力消費を低減する。合成ガス生成ユニットに必要な酸素は、好ましくは、電解ユニットにおける電解による水の分解のみに由来する。これは、空気分離ユニットのサイズをなくす又は低減させるという利点を示す。
【0011】
合成ガス生成ユニットから回収された合成ガスは、必要に応じて、1つ以上の段階で露点未満に冷却して存在する水蒸気を凝縮させ、1つ以上の気液分離器を使用して凝縮物を除去することによって脱水してもよい。
【0012】
合成ガスは二酸化炭素を含み、二酸化炭素は二酸化炭素除去ユニットを使用して除去される。二酸化炭素除去は、1つ以上の容器が物理的洗浄システム又は反応性洗浄システム、好ましくは反応性洗浄システム、特にアミン洗浄システムを提供することを含み得る。二酸化炭素は、従来の酸性ガス回収ユニット(AGRU)によって除去してもよい。これは、別の方法では下流の触媒を被毒し得る硫化水素を、更に除去するという利点を有する。従来のAGRUでは、脱水された合成ガス流を、好適な吸収液、例えばアミン、例えばモノエタノールアミン(MEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)又はジメチルエタノールアミン(DMEA)の水溶液、特にメチルジエタノールアミン(MDEA)溶液の流れと接触させて、その結果、二酸化炭素を液体に吸収させて、吸収液と、二酸化炭素含有量が減少したガス流とを得る。次いで、詰められた吸収液は、加熱によって再生されて、二酸化炭素を脱着させ、また、再生された吸収液を得、これは、次いで二酸化炭素吸収段階に再循環される。詰められた吸収剤の再生により生じる熱は、プロセス内から回収することができる。例えば、合成ガス生成ユニットからの合成ガスの一部分は、詰められた吸収剤を加熱するために使用されてもよく、又は水蒸気を生成するために使用されてもよく、水蒸気の一部分は詰められた吸収剤を加熱するために使用されてもよい。あるいは、詰められた吸収剤は、フィッシャートロプシュ合成ユニットからの生成物流との熱交換で加熱されてもよい。あるいは、アミンによる洗浄の代わりに、二酸化炭素を捕捉するためのアミンと同様に、冷メタノール又はグリコールを使用してもよい。例えば、冷メタノールを使用するRectisol(登録商標)プロセスは、硫化カルボニル(COS)及び硫化水素(HS)、続いて二酸化炭素を除去するために、2段階で操作してもよい。二酸化炭素分離工程が単一の圧力プロセスとして操作される場合、すなわち、吸着工程及び再生工程において本質的に同じ圧力が採用される場合、再循環された二酸化炭素の再圧縮は、わずかしか必要とされない。
【0013】
合成ガスから二酸化炭素を除去すると、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガスが生成される。少量の二酸化炭素、メタン、及び窒素などの不活性ガスも存在し得るが、これはフィッシャートロプシュ合成ユニットにおけるそれらの蓄積を防止するのに望ましくない。したがって、所望の場合、精製合成ガスが本質的に水素及び一酸化炭素からなるように、1つ以上の精製ユニットを二酸化炭素除去ユニットの下流に設けてもよい。
【0014】
精製合成ガスは、所望の場合、任意の利用可能な熱源を使用して、フィッシャートロプシュ合成ユニットの入口温度まで加熱してもよい。
【0015】
精製合成ガスは、炭化水素生成物の混合物を合成するフィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給される。
【0016】
フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットは、フィッシャートロプシュ触媒を収容する1つ以上のフィッシャートロプシュ反応容器を含んでもよい。フィッシャートロプシュ変換段階は、特に鉄又はコバルトをベースとする既知の触媒のいずれか1つを使用して、既知のプロセスのいずれか1つに従って実施することができ、特定のプロセス又は触媒に限定されない。
【0017】
フィッシャートロプシュプロセスは、理想的には式(C2n+2)を有する様々な炭化水素を生成する一連の化学反応を伴う。より有用な反応は、以下のようにアルカンを生成する。
【化1】
[式中、nは、典型的には5~100以上であり、好ましい生成物は10~20の範囲のnを有する]。
【0018】
全般的に、以下のものが区別される:高温(320~350℃)。鉄系触媒を用いて操作するフィッシャートロプシュプロセス、及び「低温」(220~240℃)。鉄又はコバルトをベースとする触媒を用いて操作するフィッシャートロプシュプロセス。コバルト系触媒は、典型的には、供給ガス中の水素対一酸化炭素モル比が約2、多くの場合1.8~2.5、好ましくは2.15付近で良好に働く。フィッシャートロプシュ触媒が鉄をベースとする場合、0.8~2、概して1.2~1.8の水素対一酸化炭素モル比を使用してもよい。したがって、当業者は、利用可能な供給原料に応じて、本プロセスに最も好適なフィッシャートロプシュ合成触媒を選択してもよい。フィッシャートロプシュ合成ユニットのサイズ及びコストを低減し、炭化水素生成物を生成するプロセスの効率を高める、それらのより低いCO選択性により、コバルト触媒が好ましい場合がある。
【0019】
フィッシャートロプシュ合成のための供給ガスは、1.6~2.5:1の範囲の水素対一酸化炭素モル比を有することができる精製合成ガスと、逆水性ガスシフトユニットによって生成される一酸化炭素の少なくとも一部分、好ましくは全部とを含む。したがって、プロセスの最適な性能のために、フィッシャートロプシュ合成への供給ガスを電解ユニットからの水素の一部分で補充して、所望の比を達成することが必要な場合がある。コバルトが触媒するフィッシャートロプシュ合成のための供給ガス中の最適な水素対一酸化炭素モル比は、約2:15である。したがって、いくつかの実施形態では、電解ユニットからの水素流の一部分をフィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給してもよい。
【0020】
フィッシャートロプシュ反応は、固定床反応器、スラリー相反応器、バブルカラム反応器、ループ反応器、又は流動床反応器などの1つ以上の反応器を使用する連続又はバッチプロセスで実施してもよい。このプロセスは、0.1~10MPaの範囲の圧力、及び170~350℃の範囲の温度で操作してもよい。連続操作のガス毎時空間速度(GHSV)は、1000~25000hr-1の範囲である。フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットにおいて、供給ガスは、酸素含有生成物に、及び気体、液体又は固体形態の本質的に線状の炭化水素に触媒的に変換される。これらの生成物は、概してヘテロ原子不純物を含まず、芳香族、ナフテン、より全般的には環(特にコバルト触媒の場合)を実質的に含まないか、又はほとんど含まない。フィッシャートロプシュ合成は、望ましくは、炭素鎖長≧5の炭化水素を生成するように操作される。
【0021】
フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットから回収された未反応ガスは、効率を高めるために、ユニット内のループで1つ以上のフィッシャートロプシュ反応器に循環させてもよい。不活性ガスの蓄積を防止するために、パージをフィッシャートロプシュテールガスとしてループから取り出してもよい。テールガスは、典型的には、少量のメタン及びC2~C10炭化水素を含むが、それにもかかわらず、これらは価値のある炭素源である。したがって、いくつかの実施形態では、メタン、エタン、プロパン、ブタン及びC5~C10炭化水素のうちの1つ以上を含むテールガスは、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットから回収され、合成ガス生成ユニットに供給され、又は予備改質などの別個の改質工程にかけられて、水素を含有する改質テールガスを形成することができる。改質テールガスは、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット及び/又は逆水性ガスシフトユニットに供給されてもよい。テールガス又は改質テールガスから回収された水素は、水素化処理ユニットにおいて使用されてもよい。テールガスはまた、所望である場合、二酸化炭素除去ユニットに供給することによって、二酸化炭素除去工程に供されてもよい。
【0022】
好ましくは、フィッシャートロプシュ合成は、1つ以上の固定床反応器、すなわち、精製合成ガスが通過する容器内に固定された触媒床を有する反応容器を使用して行われる。任意のフィッシャートロプシュ触媒を使用することができるが、コバルト系フィッシャートロプシュ触媒は、二酸化炭素選択性が低いため、鉄系触媒よりも好ましい。好適なコバルトフィッシャートロプシュ触媒は公知であるが、本プロセスにおける好ましい触媒は、好適な担体材料上に担持された9~20重量%のCoを含む。したがって、好適な触媒としては、上に触媒活性金属、好ましくはコバルトが堆積されている、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア若しくはシリカ、又はそれらの混合物などの金属酸化物を含む凝集体、ペレット又は押出物が挙げられる。特に好ましい配置では、フィッシャートロプシュ触媒は、管状フィッシャートロプシュ反応器での使用に好適な触媒担体と組み合わせて使用され、触媒を含有する触媒担体は、加圧下で水などの冷却剤を循環させることによって冷却される1つ以上の管内に配置される。「触媒担体」とは、ガス及び/又は液体が担体に出入りし、担体内に配置された触媒又は触媒前駆体の床を通過して流れることを可能にするように構成された、例えばカップ又は缶の形態の触媒容器を意味する。任意の好適な触媒担体を使用してもよい。一構成では、触媒担体は、国際公開第2011/048361号に記載されているものであり、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。別の構成では、触媒担体は、国際公開第2012/136971号に開示されているような触媒モノリスを含んでもよく、その内容も参照により本明細書に組み込まれる。更に別の構成では、触媒担体は、国際公開第2016/050520号に開示されているものであってもよく、その内容も参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態では、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットは、フィッシャートロプシュ触媒を含有する触媒担体が冷却媒体によって冷却される1つ以上の管内に配置される管状反応器を含む。
【0023】
上記のフィッシャートロプシュ反応は、反応の副生成物としてFT水を生成する。このFT水は、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットにおいて、フィッシャートロプシュ反応によって生成された炭化水素混合物から分離される。分離は、1つ以上の気体-液体又は液体-液体分離器を使用して都合よく行ってもよい。
【0024】
このプロセスでは、FT水流の少なくとも一部分を電解ユニットに供給して酸素流を提供する。FT水は、電解ユニットの上流で処理されて、電解ユニットの動作に干渉し得る汚染物質を除去してもよい。
【0025】
FT反応段階で生成された生成混合物からのFT水の分離は、炭化水素の生成混合物の回収を可能にする。気体炭化水素は、販売のために回収されてもよいし、例えば、フィッシャートロプシュテールガスの一部として又はフィッシャートロプシュテールガスと共に合成ガス生成ユニットへの供給原料としてプロセスに再循環されてもよい。液体炭化水素は、販売のために回収されてもよく、又はより価値のある炭化水素生成物を提供するために品質向上に供されてもよい。したがって、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットは、望ましくは、周囲温度で液体である溶融炭化水素ワックス及び/又は軽質炭化水素凝縮物を含むがこれらに限定されない1つ以上の炭化水素流を生成する。
【0026】
フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットで合成された炭化水素生成物は、例えば基油を製造するために直接使用することができ、又は他の生成物を製造するために後で処理することができる。処理は、集中処理又はアップグレード施設であってもよい。
【0027】
望ましくは、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットは、溶融炭化水素ワックス液体を生成するように操作され、これは、水素化処理ユニットにおいて品質向上処理にかけられて液体燃料を生成する。したがって、幾つかの態様においては、フィッシャートロプシュ合成から得られる液体炭化水素混合物の少なくとも一部分、好ましくは全部を、水素の存在下で水素化処理ユニットに供給原料として供給してもよい。水素化処理ユニットは、好適な触媒を収容する1つ以上の容器を使用して、水素化異性化、水素化、水素化脱酸素、及び/又は水素化分解などの様々な変換を行ってもよい。水素は水素化処理ユニットで必要とされる。これは、様々な供給源によって提供されてもよいが、望ましくは、プロセスからの二酸化炭素排出を最小限に抑えるために電解ユニットによって提供される。したがって、いくつかの実施形態では、電解ユニットからの水素流の一部分を水素化処理ユニットに供給してもよい。
【0028】
水素化処理ユニットは、概ね200~450℃、好ましくは250~450℃、より好ましくは300~450℃、最も好ましくは320~420℃の温度;0.2~15MPa、好ましくは0.5~10MPa、より好ましくは1~9MPaの圧力;0.1~10h-1、好ましくは0.2~7h-1、より好ましくは0.5~5.0h-1の液毎時空間速度で操作することができ、水素含有量は、供給原料1リットル当たり100~2000リットルのH、好ましくは、供給原料1リットル当たり150~1500リットルのHであってよい。
【0029】
水素化処理段階は、好適には、370℃以上の沸点を有する生成物の、370℃未満の沸点を有する生成物への1パス当たりの変換率が40重量%超、より好ましくは少なくとも50重量%であるような条件下で行われてもよく、それにより、この種の燃料に対して効力のある仕様を満たすのに十分に良好な低温特性(流動点、凝固点)を有する中間留分(軽油及び灯油)が得られる。
【0030】
この段階で使用される触媒は公知である。例えば、水素化異性化及び水素化分解は、公知の触媒のいずれか1つを用いて、公知のプロセスのいずれか1つに従って行うことができ、特定のプロセス又は触媒に限定されない。水素化異性化/水素化分解に好適な触媒の大部分は、酸官能基と水素化官能基とを組み合わせた二官能性タイプのものである。酸官能基は概して、ハロゲン化(特に、塩素化若しくはフッ素化)アルミナ、リン含有アルミナ、酸化ホウ素と酸化アルミニウムとの組合せ、又はシリカ/アルミナなどの、表面酸性度を示す高比表面積(概ね150~800m/g)の担体を介して提供される。水素化機能は、概して、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金などの、元素周期表の第VIII族からの1種以上の金属によって、又はクロム、モリブデン及びタングステンなどの第VI族からの少なくとも1種の金属と第VIII族からの少なくとも1種の金属との組合せによってのいずれかで提供される。ほとんどの従来の水素化分解触媒は、シリカ/アルミナなどの弱酸性担体から構成される。これらの系は、典型的には、非常に良好な品質の中間留分を生成するために使用される。水素化分解市場の多くの触媒は、第VIII族からの金属と組み合わせたシリカ/アルミナをベースとする。これらの系は、中間留分に対して非常に良好な選択性を有し、形成される生成物は良好な品質のものである。好ましい一実施形態によれば、水素化異性化/水素化分解触媒は、第VIII族の貴金属、好ましくは白金及び/又はパラジウムから選択される少なくとも1種の水素化-脱水素化元素と、少なくとも1種の非晶質耐火性酸化物担体、好ましくはシリカ/アルミナとを含む。
【0031】
水素化処理ユニットから回収された炭化水素生成物は、分離ユニットに供給されて、貴重な炭化水素生成物を回収してもよい。分離ユニットは、一方で(C1~C4)ガス、ナフサ留分、少なくとも1種の灯油及び/又は軽油留分、次いで重質留分を分離する、1つ以上の常圧蒸留塔、及び任意選択的に1つ以上の減圧蒸留塔を含んでもよい。重質留分は、概ね、少なくとも350℃、好ましくは370℃超の初留点を示す。この留分は、有利には水素化処理ユニットに再循環される。灯油及び/又はディーゼル油の一部分を水素化処理ユニットに再循環させることも有利である場合がある。軽油及び灯油留分は別々に回収されてもされなくてもよく、カットポイントは所望の炭化水素生成物を生成するように調整されてもよい。
【0032】
ナフサ留分は、ガソリンを生成するために好ましくは異性化に供される軽質ナフサ留分(C5~C6)と、改質油を生成するために好ましくは触媒改質に供される重質ナフサ留分(C7-180℃)とに分離されてもよい。続いて、仕様を満たすガソリンを形成するために、異性化からの流出物及び改質からの流出物を混合してもよい。触媒改質中に生成された水素は、好ましくは水素化処理ユニットに再循環される。フィッシャートロプシュ合成における水素対一酸化炭素比を調整するために、触媒改質によって生成された水素、又は逆水性ガスシフトユニットへの供給原料を使用してもよい。
【0033】
本発明において、二酸化炭素除去ユニットを用いて合成ガスから回収された二酸化炭素は、逆水性ガスシフト触媒を収容する逆水性ガスシフト容器を含む逆水性ガスシフトユニットにおいて、逆水性ガスシフト反応に供することによって一酸化炭素に変換される。好ましい逆水性ガスシフトユニットは、バーナー及び逆水性ガスシフト触媒の固定床を収容する自己熱逆水性ガスシフト容器を含む。バーナーには二酸化炭素含有ガス及び酸素流が供給され、二酸化炭素含有ガス中に存在する水素及び任意の炭化水素の一部分を燃焼させ、それによって吸熱性逆水性ガスシフト反応のための熱を発生させる。
【0034】
逆水性ガスシフト反応は以下のように表してもよい。
【化2】
【0035】
この反応は水素を消費し、合成ガス生成ユニットは概してフィッシャートロプシュ合成に必要な水素を超えて水素を生成しないので、追加の水素源が必要である。本発明において、これは、フィッシャートロプシュ合成の副生成物として生成されるFT水の電解によって提供される。また、1つ以上の追加の水素源を使用してもよい。追加の水素源は、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットから回収されたフィッシャートロプシュテールガス及び/又は気体炭化水素の少なくとも一部分を水蒸気改質することによって発生させてもよい。これは、断熱水蒸気改質器若しくは予備改質器、従来の燃焼水蒸気改質器、自己熱改質器、小型改質器若しくはガス加熱改質器、又はこれらの任意の組合せを使用して行うことができる。
【0036】
逆水性ガスシフトユニットは、フィッシャートロプシュ反応によって炭素を液体炭化水素に変換すると同時に二酸化炭素排出量を低下させることを可能にし、これは炭素収率を改善する。
【0037】
逆水性ガスシフトユニットからの生成物ガス流は水蒸気を含む。水は、例えば、生成物ガス流を露点未満に冷却し、1つ以上の従来の気液分離器を用いて凝縮物を分離することによって回収してもよい。凝縮された水は、所望である場合、プロセスのための追加の水素を生成するために、少なくとも部分的に電解ユニットに再循環されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、逆水性ガスシフトユニットによって生成される水流、又は逆水性ガスシフトユニットから回収される水流は、電解ユニットに供給されてもよい。
【0038】
逆水性ガスシフトユニットからの生成物ガス流は未反応の二酸化炭素を含有することがあり、これは、望ましくは、一酸化炭素を含有するガスがフィッシャートロプシュ合成ユニットに供給される前に除去される。二酸化炭素は、例えば二酸化炭素除去ユニットについて上述したような任意の好適な吸収剤を使用して、逆水性ガスシフト流出物から除去されてもよい。あるいは、二酸化炭素は、膜分離ユニットによって分離されてもよい。いくつかの実施形態では、二酸化炭素は、逆水性ガスシフト生成物ガス流を、合成ガス生成ユニットに連結され合成ガスを供給した二酸化炭素除去ユニットに戻すことによって、逆水性ガスシフト生成物ガス流から除去されてもよい。あるいは、別個の専用の二酸化炭素除去ユニットを設けて、逆水性ガスシフト反応器から回収された生成物ガス流のみから二酸化炭素を除去してもよい。液体吸収剤が使用される場合、これは、生成物ガスから、水の少なくとも一部、加えて、二酸化炭素を除去するという更なる利点を有し得る。
【0039】
逆水性ガスシフト反応は、高温によって促進され、合成ガス生成と同様の温度及び圧力条件下で行ってもよい。圧力は、例えば、0.1~8MPa、好ましくは1~4MPaであってもよく、逆水性ガスシフト反応器出口における温度は、750~2000℃、好ましくは800~1800℃、より好ましくは850~1600℃であってもよい。触媒は、任意の好適な遷移金属酸化物触媒、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄又は酸化クロムに基づく触媒であってよいが、逆水性ガスシフト触媒として提供される他の触媒を使用してもよい。これらの条件下で操作すると、未変換メタン及び未変換二酸化炭素の含有量を制限しながら、水素対一酸化炭素モル比をフィッシャートロプシュ合成に望まれる値に近い値に調節することが可能である。
【0040】
逆水性ガスシフトユニットの効率的な操作に好適な高温を発生させるために、二酸化炭素流は、例えば再生可能エネルギーを使用して電気的に、又は好適な流体との熱交換で、又は燃焼加熱器で加熱されてもよい。好ましい実施形態では、二酸化炭素流及び水素流は、二酸化炭素及び水素含有流の一部分を酸化剤で燃焼させることによって、逆水性ガスシフトユニットの燃焼セクションにおいて加熱されてもよい。燃焼は、水素の一部を消費する。1:1のモル比を超える過剰の水素が、望ましくは供給ガス中に存在する。1.5~7.5:1の範囲の水素対二酸化炭素モル比を使用して、フィッシャートロプシュ合成のための所望のH:CO比を有する逆水性ガスシフトガスを生成することができる。所望である場合、メタン又は別の燃料が供給ガスに含まれてもよい。いくつかの実施形態では、フィッシャートロプシュテールガスは、逆水性ガスシフトユニットに直接供給されてもよく、又は、好ましくは、フィッシャートロプシュテールガスは、予備改質工程に供されてもよく、その場合、ニッケル触媒上で断熱水蒸気改質に供されて、テールガス中に存在する高級炭化水素をメタンに変換し、予備改質されたフィッシャートロプシュテールガスは、逆水性ガスシフトユニットに供給される。燃焼は、逆水性ガスシフト反応容器内に配置された逆水性ガスシフト触媒の床の上流の逆水性ガスシフト容器内の上流燃焼容器又は燃焼ゾーン内で行ってもよい。燃焼は、非触媒的に実施されてもよく、又は白金含有触媒などの好適な酸化触媒上で触媒的に実施されてもよい。酸化剤は、望ましくは純粋な酸素、例えば>98体積%のOであり、これは下流のフィッシャートロプシュ合成における不活性物質を最小限にするからである。この酸素は、電解ユニットによって都合よく提供されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、電解ユニットによって提供される酸素流を使用して、逆水性ガスシフトユニットに供給される二酸化炭素及び水素を含む供給ガスの一部分を燃焼させて、供給ガスの温度を上昇させてもよい。
【0041】
プロセスのための水素及び酸素は、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットから回収されたFT水が供給される電解ユニットを使用して生成される。電解ユニットは、典型的には、以下の一般式に従って作動する1つ以上の電解槽を含む。
【化3】
【0042】
電解は、電流の作用下で水を化学的に分解して酸素と水素とを得るプロセスである。工業的電解は、概ね200℃未満の温度で行われる。所望である場合、FT水を水酸化カリウムと組み合わせてもよく、その濃度は温度の関数として変化してもよい(典型的には、80℃で25重量%から160℃で40重量%まで)。水酸化カリウムは、本質的に同等の温度レベルでの優れた伝導性の理由により、水酸化ナトリウムよりも好ましい。あるいは、ポリマー電極膜電解槽を使用してもよい。あるいは、高温電解をプロセスにおいて使用してもよい。高温電解は、高温(700~900℃)及び減圧下で操作される。高温電解は、反応に必要なエネルギーの一部分が、多くの場合電気よりも安価である熱を介して提供され、電解反応が高温でより良好な収率を有するので、周囲温度でのプロセスよりも効率的である。
【0043】
電解ユニットにおける水素の生成に必要な電気エネルギーは、好ましくは、二酸化炭素を排出しないように非化石燃料ベースであり、又は二酸化炭素排出において中立である。非化石燃料エネルギー源の1つは原子力エネルギーである。二酸化炭素排出を含まない、又は二酸化炭素排出に関して中立である他のエネルギー源は、再生可能エネルギー、例えば太陽光発電エネルギー、風力エネルギー、潮力エネルギー、水力電力又は水力発電、海洋エネルギー源、地熱エネルギー及び/又はバイオマスである。これらの非化石燃料エネルギー源は、単独で使用してもよく、これらの2つ以上を等しい又は異なる割合で併用してもよい。
【0044】
本プロセスにおいて使用される水素は、好ましくは水の電解によって生成され、そのための電気エネルギーは、好ましくは再生可能エネルギー源、特に太陽エネルギー、風力エネルギー、潮力エネルギー、地熱エネルギー及び/又はバイオマスによって提供される。これは、これらのエネルギー源が、事実上無尽蔵であり、アクセスが容易であり、問題のある廃棄物を生成しないか、又は比較的わずかしか生成しないという点で区別されるからである。
【0045】
合成ガス生成ユニットにおける合成ガス生成に必要な酸素は、電解ユニットによって生成された酸素を含み、必要である場合、空気分離ユニットから生じる酸素によって補われる。電解によって生成される酸素の使用は、合成ガス生成ユニットに酸化剤を供給するために従来使用されていた空気分離ユニットを節約することを可能にする。
【0046】
本発明において、電解ユニットから回収された酸素の全てが、合成ガス生成のために使用されてもよい。しかしながら、電解ユニットは、プロセスの水素要件が必要とする場合、酸素供給物及び/又は逆水性ガスシフトユニットにおける燃焼のための酸素を必要とする他のプロセスへの移出のために過剰な酸素を提供してもよい。電解ユニットによって生成され、合成ガス生成ユニットに供給される酸素の部分は、電解酸素の総量の30~100体積%の範囲であってもよく、逆水性ガスシフト燃焼の場合、電解によって生成される酸素の部分は、電解酸素の総量の0~70体積%、好ましくは10~50体積%、より好ましくは10~25体積%の範囲であってもよい。
【0047】
電解ユニットからの水素は、逆水性ガスシフトユニットのための供給ガスでプロセスにおいて使用される。水素の一部分はまた、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニットに供給されてもよく、すなわち、電解ユニットからの水素の一部分は、逆水性シフトユニットを迂回してもよい。加えて、又は代わりに、水素の一部分を水素化処理ユニットに供給してもよい。逆水性ガスシフトユニットに供給される電解ユニットによって生成された水素の部分は、電解水素の総量の30~100体積%、好ましくは30~60体積%、より好ましくは40~50体積%の範囲であってもよい。好ましくは、電解水素の40~60%がフィッシャートロプシュ合成に供給される。任意選択的に、電解水素の0~10%が水素化処理ユニットに供給されてもよい。
【0048】
電解ユニットに加えて、水素の外部供給源がプロセスにおいて使用されてもよいが、これはあまり好ましくなく、概して要件ではない。
【0049】
それによって、本発明のプロセスは、価値のあるフィッシャートロプシュ炭化水素生成物を生成する、従来技術のプロセスよりも効率的で環境に優しい方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明は、添付の図面を参照することによって説明される:
図1】本発明の一実施形態の図式的フローシートである。
【0051】
図面は図式的であること、また、商業用プラントにおいて、還流ドラム、コンプレッサ、ポンプ、真空ポンプ、温度センサ、圧力センサ、圧力逃がし弁、制御弁、フローコントローラ、レベルコントローラ、保持タンク、貯蔵タンクなどの装置の更なる品目が必要とされることがあることは、当業者には理解される。このような装置の付属品を提供することは、本発明の一部を形成せず、従来の化学工学的実施に従うものである。
【0052】
図1において、都市固形廃棄物又は同等の供給原料は、ライン10を介して、電解ユニット16で生成される、ライン14を介して酸素ガス流を供給した、ガス化装置を備える合成ガス生成ユニット12に供給される。ガス化装置において、供給原料は、高められた温度及び圧力で酸素と反応して、水素、一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気を含む合成ガス流を生成する。合成ガス生成ユニットは、供給原料の合成ガスへの完全な変換を行うために、ガス化装置の下流に別個の部分的酸化又はタール改質ユニットを更に含むことができる。合成ガス生成ユニット12は、合成ガスを露点未満に冷却するための熱交換装置と、合成ガスから凝縮物を回収するための1つ以上の気液分離容器とを更に備えてもよい。
【0053】
合成ガスは、好適な温度及び圧力で、合成ガス生成ユニット12からライン18を介して、液体吸収剤洗浄システムを使用する吸収によって動作する二酸化炭素除去ユニット20に送られる。二酸化炭素除去ユニット内の洗浄システムは、二酸化炭素流と、水素及び一酸化炭素を含む精製合成ガス流とを生成する。二酸化炭素除去ユニットの上流で、1つ以上の精製工程(図示せず)を使用して、合成ガス生成ユニットから回収された合成ガスから、硫化カルボニル、シアン化水素、及び重金属、例えば水銀などの不要の汚染物質を除去してもよい。
【0054】
二酸化炭素流は、二酸化炭素除去ユニット20からライン22を介して回収され、必要である場合、精製ユニット(図示せず)において硫化水素などの残留汚染物質を除去するために処理され、好適な遷移金属酸化物逆水性ガスシフト触媒を収容する容器を含む逆水性ガスシフトユニット24に好適な温度及び圧力で供給される。逆水性ガスシフトユニットには、ライン26を介して水素流が供給される。逆水性ガスシフトユニットが供給ガスを予熱するための燃焼セクションを含む場合、酸素流は、任意選択的に、ライン41を介して電解ユニット16から提供されてもよい。二酸化炭素及び水素は、逆水性ガスシフト触媒上で反応して、一酸化炭素及び水蒸気を含む生成物ガス流を生成する。逆水性ガスシフトユニットは、逆水性ガスシフト反応器の下流で生成物ガスを露点未満に冷却する熱交換装置と、得られた凝縮物を分離して一酸化炭素含有ガス流を提供する1つ以上の気液分離器とを含む。
【0055】
逆水性ガスシフトユニット24から回収された一酸化炭素含有ガス流は、未反応の二酸化炭素を含有してもよく、その場合、一酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素除去ユニット20に供給されてもよく、又は、好ましくは、逆水性ガスシフトユニット24内の1つ以上の気液分離器の下流の別個の二酸化炭素除去ユニット(図示せず)に供給される。逆水性ガスシフトユニット内で別個の二酸化炭素除去ユニットを使用する利点は、二酸化炭素が汚染物質を含有する可能性が低く、したがって、二酸化炭素除去ユニットを異なるように操作することができ、かつ/又は、より小規模で異なる吸収剤を使用することができることである。一酸化炭素含有ガス流から回収された二酸化炭素は、逆水性ガスシフト反応器に再循環される。
【0056】
任意の二酸化炭素除去工程を含む、逆水性ガスシフトユニットからの産出物は、一酸化炭素ガス流である。
【0057】
一酸化炭素ガス流は、ライン28を介して逆水性ガスシフトユニット24から回収され、ライン30を介して二酸化炭素除去ユニット20から回収された合成ガスと合流して、ライン32において合流ガス混合物を形成する。所望である場合、二酸化炭素除去ユニット20の下流、及び、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38の上流において、合流ガス混合物を精製ユニット(図示せず)で処理し、硫化水素などの、残留汚染物質及びFT触媒被毒を除去してもよい。
【0058】
ライン32における合流ガス混合物を任意選択的に、水素対一酸化炭素モル比を調整するために、ライン34により供給される水素ガス流と、所望である場合、好適な温度及び圧力で、ライン36を介してフィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38に供給される、得られた混合物と合流させてもよい。
【0059】
フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38は、反応器内の複数の管内に配置されたコバルトフィッシャートロプシュ触媒を含有する触媒担体を収容する管状反応容器を含む。水素及び一酸化炭素は触媒上で反応して、気体及び液体炭化水素の混合物、並びに副生成物としてのFT水を形成する。炭化水素の混合物は、炭化水素合成ユニット38内で処理されて、FT水を気体及び液体炭化水素から分離する。FT水は、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38から回収され、ライン40を介して電解ユニット16に供給される。
【0060】
電解ユニット16は、電気エネルギー供給源(図示せず)によって提供される電気エネルギーを使用してFT水40を酸素及び水素に変換する、1つ以上の電解槽を備える。電解ユニットによって生成された酸素は、ライン14を介して合成ガス生成ユニット12に供給される。燃焼ユニットが逆水性ガスシフトユニットに設けられる場合、酸素は、ライン41を介して電解ユニット16によって燃焼ユニットに提供されもよい。過剰な酸素は、移出ライン(図示せず)によって別個のプロセスに送られてもよい。水素は、ライン42を介して電解ユニット16から回収される。ライン42からの水素は、ライン26を介して逆水性ガスシフトユニット24に供給される。任意選択的に、ライン42中の水素の一部分は、逆水性ガスシフト装置24を迂回し、ライン34を介してフィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38のための供給ガスに直接供給されてもよい。任意選択的に、ライン42からの水素の一部分を、ライン56を介して水素化処理ユニット46に供給してもよい。
【0061】
フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38は、周囲温度で液体である溶融炭化水素ワックス及び/又は軽質炭化水素凝縮物を含むがこれらに限定されない、1つ以上の炭化水素流を生成する。フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38からの1つ以上の炭化水素生成物は、好適な温度及び圧力でライン44を介して水素化処理ユニット46に供給される。水素化処理ユニットは、炭化水素ワックス又は炭化水素凝縮物を1つ以上の貴重な炭化水素生成物に変換する、水素化異性化、水素化、水素化脱酸素、及び/又は水素化分解触媒などの触媒を収容する1つ以上の容器を含む。水素化処理ユニットには水素が供給される。任意の水素源を使用してよいが、好適には、水素化処理ユニット46には、電解ユニット16によって生成された水素の一部分がライン56を介して供給される。灯油などの貴重な炭化水素生成物は、ライン48を介して水素化処理ユニット46から回収される。
【0062】
更なる実施形態では、プロセスは以下のように強化されてもよい。
【0063】
1. 逆水性ガスシフトユニット24は副生成物として水を生成する。水又はその一部分は、逆水性ガスシフトユニット24からライン52を介して電解ユニットに供給されて、FT水を補充してもよい。FT水はまた、必要である場合、ライン54を介して補充水供給物で補充されてもよい。
【0064】
2. フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38は、炭化水素混合物の一部として気体炭化水素を生成する。気体炭化水素の一部分は、フィッシャートロプシュ炭化水素合成ユニット38から回収され、ライン58を介してFTテールガスとして合成ガス生成ユニット12に戻され、そこで燃料として使用され、及び/又は水蒸気改質され、及び/又は部分的酸化に供されて、プロセスで使用するための水素/一酸化炭素含有ガス流を形成し、又は供給原料と合流してもよい。あるいは、又は更に、FTテールガスの一部分は、逆水性ガスシフトユニット24に直接供給され得、又は断熱水蒸気改質(予備改質)の工程に供されて、高級炭化水素をメタンに変換し得、そして得られた予備改質ガス混合物は、逆水性ガスシフトユニット24に供給される。
【0065】
3. 極低温空気分離ユニット(ASU)(図示せず)を使用して、ライン60を介して合成ガス生成ユニットに供給される補充酸素を生成してもよい。
【0066】
更に、電解ユニット16からのOが逆水性ガスシフト反応器の燃焼セクションに供給され、ライン42からの水素の一部分がライン56を介して水素化処理ユニット46に供給された図1によるフローシートの以下の計算例を参照することによって、本発明を更に説明する。フローシートは、合成ガス生成ユニット12からの1000kmol/hの合成ガスに基づいており、「CH」として表される最終FT生成は、最終比較を提供するためにCO含有量に基づいていた。
【表1】
【表2】
【0067】
電解ユニット16に連結された逆水性ガスシフトユニット24のない比較例も同じ基準でモデル化した。結果は以下のとおりであった。
【表3】
【表4】
【0068】
この301kmol/hでの場合のFT生成物は、逆水性ガスシフトユニットを収容する場合よりも41%少ない。
図1
【国際調査報告】